(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-09
(54)【発明の名称】細胞治療用組成物及びTGF-Bシグナル伝達を調節する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240202BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240202BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240202BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240202BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240202BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20240202BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240202BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240202BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240202BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240202BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240202BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240202BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240202BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N5/0783
C12N5/10
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/85 Z
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K35/17
A61P37/04
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/7088
A61K35/12
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548964
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 IB2022000063
(87)【国際公開番号】W WO2022172085
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】クーン、シャンタル
(72)【発明者】
【氏名】シャピロ、ゲイリー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC12
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
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4C084ZB27
4C085AA13
4C085AA14
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZB27
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA12
4C087CA20
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
ポリペプチドを使用してトランスフォーミング成長因子β(TGFβ)シグナル伝達(例えば、TGFβまたはTGFβ受容体に特異的に結合するTGFβ受容体、抗体、またはその抗原結合断片)を調節する方法を提供する。抗体またはその断片を含む組成物、及びそれをTGFβ活性が関与する疾患の治療に使用する方法を提供する。核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、抗原結合断片、ならびにこれらの抗原結合剤及びその断片を含む医薬組成物も開示する。本発明はまた、本明細書で提供されるTGFβシグナル伝達モジュレーターを利用するための治療方法も提供する。
【選択図】
図1A、
図1B、
図1C、
図1D、
図1E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん関連抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターを含む、遺伝子改変されたT細胞の集団。
【請求項2】
前記CARが、ADGRE2、CLEC12、CAIX、CEA、CD5、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD133、CD138、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞抗原、CEACAM5、クラウジン18.2、EGP-2、EGP-40、EpCAM、erb-B2,3,4、FBP、胎児アセチルコリン受容体、葉酸受容体-a、GCC(GUCY2Cとしても知られる)、GD2、GD3、HER-2、hTERT、IL-13R-a2、x-軽鎖、KDR、LeY、LI細胞接着分子、MAGE-AI、MUC1、MUC13、メソテリン、NKG2Dリガンド、NY-ES0-1、がん胎児性抗原(h5T4)、PSCA、PSMA、PTK7、ROR1、TAG-72、TROP2、VEGF-R2、及びWT-1からなる群から選択される抗原を認識する、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項3】
前記TGFβシグナル伝達経路モジュレーターが、TGFβまたはTGFβ受容体に結合する、請求項1または2に記載の細胞集団。
【請求項4】
前記TGFβシグナル伝達経路モジュレーターが、表1から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項5】
前記CARが、CD19 CARまたはGCC CARである、請求項1~4のいずれかに記載の細胞集団。
【請求項6】
前記細胞が自家である、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項7】
前記細胞が同種異系である、請求項1に記載の細胞集団。
【請求項8】
前記細胞が、CARポリペプチドをコードする第1の核酸及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターをコードする第2の核酸を含むベクターを使用して遺伝子改変される、請求項1~7のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項9】
前記細胞が、2つのベクター、すなわち、CARポリペプチドをコードする核酸を含む第1のベクター、及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターをコードする核酸を含む第2のベクターを使用して遺伝子改変される、請求項1~8のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項10】
前記CARが、CD3ζ鎖、CD97、2B4、GDI 1a-CD18、CD2、ICOS、CD27、CD154、CDS、OX40、4-1BB、DAP10、DAP12、CD28シグナル伝達ドメイン、またはそれらの組み合わせ及び変形からなる群から選択される細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項11】
前記CARが、CD3、CD8、CD28、OX40、CD27、4-1BB、DAP10、DAP12、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される膜貫通ドメイン由来の膜貫通ドメインを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の細胞集団。
【請求項12】
CARポリペプチドをコードする第1の核酸及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターをコードする第2の核酸を含むベクター。
【請求項13】
配列内リボソーム進入部位をさらに含む、請求項12に記載のベクター。
【請求項14】
2A自己切断部位をさらに含む、請求項12に記載のベクター。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか1項に記載のベクターで改変された免疫細胞。
【請求項16】
前記細胞がT細胞である、請求項15に記載の免疫細胞。
【請求項17】
請求項1に記載の免疫細胞の集団を含む、医薬組成物。
【請求項18】
宿主における免疫応答の調節方法であって、前記方法が、請求項1に記載の細胞集団を前記宿主に投与することを含み、前記免疫応答の調節が、宿主免疫細胞によるIFNγ産生の増加、IL-2産生の増加、抗原提示の増加、及び増殖の増加のうちの1つ以上を含む、前記調節方法。
【請求項19】
がんの治療を必要とする対象における、前記がんの治療方法または予防方法であって、前記方法が、前記対象に、有効量の請求項1に記載の細胞集団を投与することを含む、前記治療方法または予防方法。
【請求項20】
前記がんが、白血病、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトロームマクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、肉腫、癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫、及びそれらの転移からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月15日に出願された米国仮出願第63/149,628号及び2022年2月4日に出願された米国仮出願第63/306,836号に対する優先権を主張し、それぞれの開示はその全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
がん特異的抗原を標的とする改変された細胞を使用する免疫療法は、一部のがんの治療に有効であることが示されている。しかしながら、悪性細胞は、免疫による認識や排除から自らを守るために、免疫抑制的な微小環境を生成するように適応する。腫瘍微小環境における高レベルのTGFβは、一部の種類のがん細胞の維持と進行に寄与し得る。腫瘍微小環境は、標的細胞療法の場合など、免疫応答の刺激を伴う治療法に重大な課題をもたらす。したがって、がんを治療するための新規治療戦略が望まれている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、とりわけ、がん(例えば、固形腫瘍)の治療に使用するための、TGFβシグナル伝達を調節するための新規の系を提供する。本発明は、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)シグナル伝達の調節が、標的改変キメラ抗原受容体(CAR)療法などの養子細胞療法を強化できるという発見に部分的に基づいている。本明細書に記載される、抗体(例えば、抗TGFβまたは抗TGFβR)、TGF-βR2の抗原結合断片または組換え細胞外ドメインの系によって影響を受けるようなTGF-βシグナル伝達の調節は、腫瘍における免疫抑制性微小環境を軽減し、免疫療法の効果を増強する。
【0004】
T細胞ベースの免疫療法は、合成生物学の新たなフロンティアとなっており、これらの非常に強力な細胞を腫瘍微小環境に向かわせるために、複数のプロモーターと遺伝子産物が想定されており、腫瘍微小環境において、T細胞は、負の調節シグナルを回避し、効果的な腫瘍の死滅を媒介することができる。AP1903による誘導性カスパーゼ9構築物の薬物誘導二量体化による不要なT細胞の除去は、T細胞集団を制御することができる強力なスイッチを薬理学的に開始することができる1つの方法を示している(Di Stasi A et al. N Engl J Med.2011;365(18):1673-83)。したがって、CARは内在性T細胞受容体と同様の方法でT細胞活性化を引き起こし得るように思われるが、この技術の臨床応用に対する主な障害は、これまでのところ、CAR+ T細胞のin vivoでの増殖、注入後の細胞の急速な消失、及び期待外れの臨床活動に限定されている。したがって、当技術分野では、望ましくない影響(例えば、高い毒性、不十分な有効性)を伴わずに特異的かつ有効な抗腫瘍効果を示し得るアプローチを用いたがんの治療のための新規組成物及び方法を発見することが緊急に必要とされている。
【0005】
本発明は、免疫細胞(例えば、T細胞)において発現するCAR及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターを含む免疫調節系を提供することによって、これらのニーズに対処する。免疫調節系を含む組成物及び治療方法を使用して、がん及び他の疾患及び/または病態を治療することができる。特に、本発明は、TGFβの調節不全性の発現に関連する疾患、障害または病態(例えば、がん、固形腫瘍)の治療に使用され得る、アーマー化CARを発現する改変免疫細胞を提供する。TGFβモジュレーターを共発現するアーマー化CAR T細胞は、形質導入されたT細胞上でCARの高い表面発現を示し、がん細胞の細胞溶解を増強する。したがって、本発明は、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドを含む免疫調節系(例えば、改変されたCAR T細胞)を使用して、がん及び病原体に対する免疫応答を増強するための方法及び組成物を提供する。
【0006】
本発明は、部分的に、TGFβシグナル伝達経路モジュレーターを含む改良されたCARポリペプチド、そのようなポリペプチドをコードする核酸分子、改良されたCARを発現するように遺伝子改変された細胞(例えば、T細胞)、及びがん(例えば、固形腫瘍がん)を治療するために養子細胞療法において改変された細胞を使用する方法を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、必要とする対象に投与した場合に、TGFβシグナル伝達経路モジュレーターを発現しないCAR-T細胞(本明細書では「非アーマー化CAR-T細胞」とも呼ばれる)と比較して、対象において免疫応答を誘発することができる、TGFβシグナル伝達経路モジュレーターを発現するように改変されたCAR-T細胞(本明細書では「TGFβアーマー化CAR-T細胞」とも呼ばれる)を提供する。
【0008】
いくつかの態様では、本発明は、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドを含む抗原受容体を有する免疫応答性細胞(例えば、T細胞)を提供し、その場合、抗原受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)であり得る。これらの改変された免疫応答性細胞(例えば、CAR-T細胞)は抗原指向性であり、免疫抑制に抵抗し、及び/または免疫活性化特性が強化されている。
【0009】
一態様では、本発明は、がん関連抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターを含む、遺伝子改変されたT細胞の集団を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、ADGRE2、CLEC12、CAIX、CEA、CD5、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD133、CD138、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞抗原、CEACAM5、クラウジン18.2、EGP-2、EGP-40、EpCAM、erb-B2,3,4、FBP、胎児アセチルコリン受容体、葉酸受容体-a、GCC(GUCY2Cとしても知られる)、GD2、GD3、HER-2、hTERT、IL-13R-a2、x-軽鎖、KDR、LeY、LI細胞接着分子、MAGE-AI、MUC1、MUC13、メソテリン、NKG2Dリガンド、NY-ES0-1、がん胎児性抗原(h5T4)、PSCA、PSMA、PTK7、ROR1、TAG-72、TROP2、VEGF-R2、及びWT-1からなる群から選択される抗原を認識するCARを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、CD19 CARまたはGCC CARを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、TGFβまたはTGFβ受容体に結合するTGFβシグナル伝達経路モジュレーターを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、表1から選択されるアミノ酸配列を含むTGFβシグナル伝達経路モジュレーターを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、細胞集団は自家である。
【0015】
いくつかの実施形態では、細胞集団は同種異系である。
【0016】
いくつかの実施形態では、細胞集団は初代細胞である。いくつかの実施形態では、細胞集団は、人工多能性幹細胞(iPSC)由来である。
【0017】
いくつかの実施形態では、細胞集団を、CARポリペプチドをコードする第1の核酸及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターをコードする第2の核酸を含むベクターを使用して遺伝子改変する。
【0018】
いくつかの実施形態では、細胞集団を、2つのベクター、すなわち、CARポリペプチドをコードする核酸を含む第1のベクターと、TGFβシグナル伝達経路モジュレーターをコードする核酸を含む第2のベクターを使用して遺伝子改変する。
【0019】
いくつかの実施形態では、細胞集団を、Crisprを使用して遺伝子改変する。いくつかの実施形態では、細胞集団を、レトロウイルス形質導入(g-レトロウイルスを含む)、レンチウイルス形質導入、トランスポゾン及びトランスポザーゼ(Sleeping Beauty及びPiggyBac系)、メッセンジャーRNA転移媒介遺伝子発現、遺伝子編集(遺伝子挿入または遺伝子欠失/破壊)、CRISPR-Cas9、ZFN(ジンクフィンガーヌクレアーゼ)、またはTALEN(転写活性因子様エフェクターヌクレアーゼ)系を使用して遺伝子改変する。
【0020】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、CD3ζ鎖、CD97、2B4、GDI 1a-CD18、CD2、ICOS、CD27、CD154、CDS、OX40、4-1BB、DAP10、DAP12、CD28シグナル伝達ドメイン、またはそれらの組み合わせ及び変形からなる群から選択される細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、細胞集団は、CD3、CD8、CD28、OX40、CD27、4-1BB、DAP10、DAP12、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される膜貫通ドメインに由来する膜貫通ドメインを含むCARを含む。
【0022】
一態様では、本発明は、CARポリペプチドをコードする第1の核酸及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターをコードする第2の核酸を含むベクターを提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、CARポリペプチドをコードする第1の核酸及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターをコードする第2の核酸を含むベクターは、配列内リボソーム進入部位を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、ベクターは、2Aリボソーム配列をさらに含む。
【0025】
一態様では、本発明は、CARポリペプチドをコードする第1の核酸及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターをコードする第2の核酸を含むベクターで改変された免疫細胞を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、免疫細胞はT細胞である。
【0027】
一態様では、本発明は、宿主における免疫応答の調節方法を提供し、この方法は、がん関連抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)、及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターを含む遺伝子改変されたT細胞の集団を宿主に投与することを含み、免疫応答の調節には、宿主免疫細胞による以下の1つ以上が含まれる:IFNγ産生の増加、IL-2産生の増加、抗原提示の増加、及び増殖の増加。
【0028】
一態様では、本発明は、がん関連抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターを含む、遺伝子改変されたT細胞の集団を含む医薬組成物を提供する。
【0029】
一態様では、本発明は、治療または予防を必要とする対象におけるがんの治療方法または予防方法を提供し、この方法は、がん関連抗原及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターを認識するキメラ抗原受容体(CAR)を含む、有効量の遺伝子改変されたT細胞集団を対象に投与することを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、がんは、白血病、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトロームマクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、肉腫、癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽腫、及びそれらの転移からなる群から選択される。
【0031】
一態様では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列、及びTGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチド(例えば、TGFβシグナル伝達モジュレーター)をコードする核酸配列を含む免疫調節系を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、可変重鎖(vH)を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、可変重鎖(vH)及び可変軽鎖(vL)を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、IgA抗体、IgG抗体、IgE抗体、IgM抗体、二重または多重特異性抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片、単離CDRまたはそれらのセット、単鎖可変断片(scFv)、ポリペプチド-Fc融合体、単一ドメイン抗体(sdAb)、ラクダ抗体、マスク抗体、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、単鎖、タンデムダイアボディ、VHH、Anticalin、ナノボディ、humabody、ミニボディ、BiTE、アンキリンリピートタンパク質、DARPIN、アビマー、DART、TCR様抗体、Adnectin、Affilin、トランスボディ、Affibody、TrimerX、マイクロタンパク質、Fynomer、センチリン、及びKALBITOR、またはそれらの断片からなる群から選択される抗原結合分子を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、単鎖可変断片(scFv)を含む。いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、単一ドメイン抗体(sdAb)を含む。いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、重鎖のみ抗体を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、TGF-βシグナル伝達を調節するポリペプチドは、表1から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、二量体抗原結合剤を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、TGF-bに結合する。
【0039】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、TGF-b受容体に結合する。
【0040】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、TGF-b受容体2(TGF-bR2)に結合する。
【0041】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、TGF-b受容体2(TGF-bR2)またはその断片を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、TGF-bR2の細胞外ドメイン(TGF-bR2)を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、CARは、ADGRE2、CLEC12、CAIX、CEA、CD5、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD133、CD138、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞抗原、CEACAM5、クラウジン、18.2、EGP-2、EGP-40、EpCAM、erb-B2,3,4、FBP、胎児アセチルコリン受容体、葉酸受容体-a、GCC(GUCY2Cとしても知られる)、GD2、GD3、HER-2、hTERT、IL-13R-a2、x-軽鎖、KDR、LeY、LI細胞接着分子、MAGE-AI、MUC1、MUC13、メソテリン、NKG2Dリガンド、NY-ES0-1、がん胎児性抗原(h5T4)、PSCA、PSMA、PTK7 ROR1、TAG-72、TROP2、VEGF-R2、及びWT-1からなる群から選択される抗原に結合する。
【0044】
いくつかの実施形態では、CARは、CD19またはGCCに結合する。
【0045】
いくつかの実施形態では、CARは、CD3ζ鎖、CD97、2B4、GDI 1a-CD18、CD2、ICOS、CD27、CD154、CDS、OX40、4-1BB、DAP10、DAP12、CD28シグナル伝達ドメイン、またはそれらの組み合わせ及び変形からなる群から選択される細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0046】
前記CARが、CD3、CD8、CD28、OX40、CD27、4-1BB、DAP10、DAP12、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される膜貫通ドメイン由来の膜貫通ドメインを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の免疫調節系。
【0047】
特定の実施形態では、修飾されたCD3zポリペプチドは、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)の全部または一部を欠いており、その場合、ITAMは、ITAM1、ITAM2、及びITAM3である。特定の実施形態では、修飾されたCD3zポリペプチドはさらに、塩基性リッチストレッチ(BRS)領域の全部または一部を欠いており、その場合、BRS領域は、BRS1、BRS2、及びBRS3である。
【0048】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の免疫調節系を含む核酸を提供し、その場合、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする配列と、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードする配列は、単一の構築物上に存在する。
【0049】
いくつかの実施形態では、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする配列と、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードする配列は、異なる構築物上に存在する。
【0050】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の免疫調節系をコードする核酸を含むベクターを提供する。
【0051】
いくつかの実施形態では、ベクターは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、ベクターは、2Aリボソーム配列を含む。いくつかの実施形態では、2Aリボソーム配列は、P2AまたはT2Aである。
【0053】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の免疫調節系を含む免疫応答性細胞を提供する。
【0054】
一態様では、本発明は、腫瘍関連抗原またはストレスリガンドに対して特異性を有する標的化剤、及びTGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドをコードする核酸を含む免疫応答性細胞を提供する。
【0055】
いくつかの実施形態では、標的化剤は、MIC-A、MIC-B、ULBP1-6からなる群から選択されるストレスリガンドに特異的に結合する。
【0056】
一態様では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)、及びTGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドをコードする核酸を含む免疫応答性細胞を提供する。
【0057】
いくつかの実施形態では、CARと、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードする核酸を、同じポリヌクレオチド上に提供する。
【0058】
いくつかの実施形態では、CARと、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードする核酸を、別個のポリヌクレオチド上に提供する。
【0059】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドは、細胞から分泌される。
【0060】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドは、可変重鎖(vH)を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドは、可変重鎖(vH)及び可変軽鎖(vL)を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドは、単鎖可変断片(scFv)を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドは、二量体抗原結合剤を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、TGF-bに結合する。
【0065】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドは、TGF-b受容体2(TGF-bR2)またはその断片を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドは、TGF-bR2の細胞外ドメインを含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、TGF-b受容体に結合する。
【0068】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドは、TGF-b受容体2(TGF-bR2)に結合する。
【0069】
いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞は、ベクター、改変されたmRNA、または宿主細胞の染色体に組み込まれた配列から発現するCARを含む。いくつかの実施形態では、CARをコードする配列を、エンドヌクレアーゼを使用して宿主細胞染色体に組み込む。いくつかの実施形態では、CARをコードする配列を、Crispr/Cas9、Cas12a、またはCas13を使用して宿主細胞染色体に組み込む。
【0070】
いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞は、ベクター、改変されたmRNA、または宿主細胞の染色体に組み込まれた配列から発現し、TGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードする配列を、Crispr/Cas9、Cas12a、またはCas13を使用して宿主細胞染色体に組み込む。
【0071】
いくつかの実施形態では、免疫反応性細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラー(NK)T細胞、γδT細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ヒト胚性幹細胞、B細胞、マクロファージ、及びリンパ系細胞へ分化する可能性のある多能性幹細胞(例えば、iPSC由来のNK細胞またはT細胞)からなる群から選択される。
【0072】
いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞は、改変された自家細胞である。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞は、改変された同種異系細胞である。
【0073】
いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞は、ADGRE2、CLEC12、CAIX、CEA、CD5、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD133、CD138、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞抗原、CEACAM5、クラウジン、18.2、EGP-2、EGP-40、EpCAM、erb-B2,3,4、FBP、胎児アセチルコリン受容体、葉酸受容体-a、GCC(GUCY2Cとしても知られる)、GD2、GD3、HER-2、hTERT、IL-13R-a2、x-軽鎖、KDR、LeY、LI細胞接着分子、MAGE-AI、MUC1、MUC13、メソテリン、NKG2Dリガンド、NY-ES0-1、がん胎児性抗原(h5T4)、PSCA、PSMA、PTK7、ROR1、TAG-72、TROP2、VEGF-R2、及びWT-1からなる群から選択される腫瘍抗原に結合するCARを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、CARは、CD19またはGCCに結合する。いくつかの実施形態では、CARは、GCCに結合する。
【0075】
いくつかの実施形態では、CARは、CD3ζ、CD97、2B4、GDI 1a-CD18、CD2、ICOS、CD27、CD154、CDS、OX40、4-1BB、DAP10、DAP12、CD28シグナル伝達ドメイン、またはそれらの組み合わせ及び変形に由来する細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、CARは、CD3、CD8、CD28、OX40、CD27、4-1BB、DAP10、DAP12、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される膜貫通ドメインに由来する膜貫通ドメインを含む。
【0077】
特定の実施形態では、修飾されたCD3zポリペプチドは、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)の全部または一部を欠いており、その場合、ITAMは、ITAM1、ITAM2、及びITAM3である。特定の実施形態では、修飾されたCD3zポリペプチドはさらに、塩基性リッチストレッチ(BRS)領域の全部または一部を欠いており、その場合、BRS領域は、BRS1、BRS2、及びBRS3である。
【0078】
いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞は、キメラ共刺激受容体(CCR)を含む。いくつかの実施形態では、CARは、共刺激ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは、細胞内シグナル伝達ドメインを含まない。いくつかの実施形態では、CARは、CD3zドメインを含まない。
【0079】
いくつかの実施形態では、TGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドは、免疫応答性細胞の免疫応答を増強する。
【0080】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の有効量の免疫調節系を含む医薬組成物を提供する。
【0081】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の免疫調節系をコードする有効量の核酸配列を含む医薬組成物を提供する。
【0082】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の免疫調節系をコードする有効量のベクターを含む医薬組成物を提供する。
【0083】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の有効量の免疫応答細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0084】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0085】
一態様では、本発明は、がんを治療するキットを提供し、キットは、キメラ抗原受容体(CAR)、及びTGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドをコードする核酸を含む免疫応答性細胞を含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の免疫調節系をコードする核酸またはベクターを含む。
【0087】
一態様では、本発明は、対象におけるがんまたはその転移を治療または予防する方法を提供し、方法は、キメラ抗原受容体(CAR)、及びTGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドをコードする核酸を含む有効量の免疫応答性細胞を投与することを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物を、造血系のがんを治療するために使用することができる。他の実施形態では、本明細書に記載の組成物を、固形腫瘍がんを治療するために使用することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、がんは、白血病、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病、真性多血症、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ワルデンシュトロームマクログロブリン血症、重鎖病、固形腫瘍、肉腫、癌腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、結腸直腸癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起膠腫、神経鞘腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、及び網膜芽腫からなる群から選択される。
【0090】
いくつかの実施形態では、方法は、対象に第2の治療剤を投与することをさらに含む。
【0091】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤を、対象に全身的に投与する。
【0092】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤を、CAR及びTGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドをコードする核酸とは別に投与する。
【0093】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、PD1/PD-L1、CXCR2、及び/またはIL-15を標的とする。
【0094】
いくつかの実施形態では、第2の治療剤は、PD1/PD-L1阻害剤である。
【0095】
一態様では、本発明は、免疫細胞の活性を調節する方法を提供し、方法は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸、及びTGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドをコードする核酸を投与することを含む。
【0096】
一態様では、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)の活性を調節する方法を提供し、方法は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸、及びTGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドをコードする核酸を投与することを含む。
【0097】
一態様では、本発明は、対象における腫瘍負荷を軽減する方法を提供し、方法は、本明細書に記載の核酸、ベクター、または免疫応答性細胞を含む有効量の免疫調節系を投与することを含む。
【0098】
いくつかの実施形態では、この方法は、腫瘍細胞の数を減少させる。いくつかの実施形態では、この方法は、腫瘍サイズを縮小させる。いくつかの実施形態では、この方法は、対象の腫瘍を根絶する。
【0099】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の核酸、ベクター、または免疫応答性細胞を含む免疫調節系を対象に投与することを含む、対象におけるがん細胞に応答した免疫活性化サイトカイン産生を増加させる方法を提供する。
【0100】
一態様では、本発明は、抗原特異的免疫応答性細胞の産生方法を提供し、方法は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列、及びTGF-bシグナル伝達を調節する組換えポリペプチドをコードする核酸を免疫応答性細胞に導入することを含む。
【0101】
前述の一般的な説明及び以下の発明を実施するための形態はどちらも例示的かつ説明的なものであるにすぎず、特許請求される発明を限定するものではないと理解すべきである。
【0102】
以下の図で構成される、本明細書に含まれる図面は、単に例示目的にすぎず、限定するためではない。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1A】免疫応答性細胞(例えば、形質導入されたT細胞)におけるCAR及びTGF-βシグナル伝達モジュレーターの例示的な発現を示す。リンパ球の集団を示す。
【
図1B】免疫応答性細胞(例えば、形質導入されたT細胞)におけるCAR及びTGF-βシグナル伝達モジュレーターの例示的な発現を示す。シングレットを示す。
【
図1C】免疫応答性細胞(例えば、形質導入されたT細胞)におけるCAR及びTGF-βシグナル伝達モジュレーターの例示的な発現を示す。CD3+生細胞の集団を示す。
【
図1D】免疫応答性細胞(例えば、形質導入されたT細胞)におけるCAR及びTGF-βシグナル伝達モジュレーターの例示的な発現を示す。TGF-βを発現するアーマー化(armored)ヒトCAR-T細胞におけるCAR発現を評価する例示的なフローサイトメトリー結果を示す。
【
図1E】免疫応答性細胞(例えば、形質導入されたT細胞)におけるCAR及びTGF-βシグナル伝達モジュレーターの例示的な発現を示す。CD19 CARのみで形質導入された非アーマー化細胞、及びTGFb scFv VH-VL1(配列番号1)、TGFb scFv VH-VL2(配列番号2)、TGFb scFv VL-VH(配列番号3)、TGFbR2 scFv VH-VL(配列番号4)、TGFbR2 scFv VL-VH(配列番号5)、mTGFbR2 VH1(配列番号6)及びhTGFbR2 VH1(配列番号8)でアーマー化されたCD19 CAR-T細胞、または非形質導入細胞を使用した、形質導入効率をCAR染色陽性の生細胞(%)として示す棒グラフを示す。
【
図2】エフェクターを使用した、CD19+Raji細胞(A)及びCD19ko Raji細胞(B)に対する抗CD19 CAR及びTGF-βシグナル伝達モジュレーターを共発現する免疫応答性細胞の例示的なin vitro死滅アッセイ結果を、CD19 CARのみで形質導入された非アーマー化細胞、ならびにTGFb scFv VH-VL1(配列番号1)、TGFb scFv VH-VL2(配列番号2)、TGFb scFv VL-VH(配列番号3)、TGFbR2 scFv VH-VL(配列番号4)、TGFbR2 scFv VL-VH(配列番号5)、mTGFbR2 VH1(配列番号6)、及びhTGFbR2 VH1(配列番号8)でアーマー化されたCD19 CAR-T細胞、または非形質導入細胞の標的と比較して示すグラフである。
【
図3】Aは、TGF-β結合剤の分泌を示す例示的なELISA結果を示す棒グラフを示し、Bは、ヒトCAR-T細胞によるTGFβR2結合剤の分泌及びそれらの同族抗原に結合する能力を示す例示的なELISA結果を示す棒グラフを示す。
【
図4】構築物TGFb scFv VH-VL1(配列番号1)、TGFb scFv VH-VL2(配列番号2)、TGFb scFv VL-VH(配列番号3)、TGFbR2 scFv VH-VL(配列番号4)、TGFbR2 scFv VL-VH(配列番号5)、mTGFbR2 VH1(配列番号6)及びhTGFbR2 VH1(配列番号8)を分泌するCAR-T細胞由来の上清によるTGF-βシグナル伝達の阻害を評価するルシフェラーゼアッセイの例示的な結果を示す棒グラフを示す。
【
図5A】TGFb-scFv VH-VL1 G4S二量体(配列番号17)、TGFb-scFv VH-VL1 2×G4S二量体(配列番号18)、TGFb-scFv VH-VL1ミニボディ(配列番号21)、TGFb-scFv VH-VL1ミニボディ+ヒンジ(配列番号19)を分泌するCAR-T細胞由来の上清によるTGF-βシグナル伝達の阻害を評価するルシフェラーゼアッセイの例示的な結果を示す棒グラフを示す。
【
図5B】TGF-βに対する多量体結合剤の分泌についてのルシフェラーゼレポーターアッセイを使用して設計し、スクリーニングした例示的なTGF-βモジュレーターの概略図を示す。
【
図5C】VHH結合ドメインを含む例示的なTGF-βモジュレーターの概略図を示す。
【
図6】Aは、CARのみを発現する非アーマー化細胞と比較した、単量体TGFb-scFv VH-VL1(配列番号1)及び二量体TGFb-scFv VH-VL1 G4S二量体(配列番号17)結合剤を共発現するアーマー化CAR T細胞の相対遮断活性を評価するルシフェラーゼアッセイの例示的な結果を示す棒グラフを示す。Bは、TGFβR2 VHH及びscFv単量体及び二量体構築物の相対的な遮断活性を評価するために使用されるルシフェラーゼアッセイの例示的な結果を示す棒グラフを示す。非アーマー化CAR-T細胞、mTGFbR2 VH2単量体、mTGFbR2 VH2 G4S二量体、mTGFbR2 VH2 G4S三量体、hTGFbR2 VH2単量体、hTGFbR2 VH2 G4S二量体、hTGFbR2 VH3単量体、hTGFbR2 VH3 G4S二量体、hTGFbR2 scFv VH-VL単量体、hTGFbR2 scFv VH-VL G4S二量体。
【
図7A】例示的なTGFbモジュレーターがヒトTGFbR2に結合することを示す例示的なELISA結果を示す棒グラフを示す。非アーマー化CAR-T細胞、mTGFbR2 VH2単量体、mTGFbR2 VH2 G4S二量体、mTGFbR2 VH2 G4S三量体、hTGFbR2 VH2単量体、hTGFbR2 VH2 G4S二量体、hTGFbR2 VH3単量体、hTGFbR2 VH3 G4S二量体、hTGFbR2 scFv VH-VL単量体、hTGFbR2 scFv VH-VL G4S二量体。
【
図7B】例示的なTGFbモジュレーターがマウスTGFbR2には結合しないことを示す例示的なELISA結果を示す棒グラフを示す。非アーマー化CAR-T細胞、mTGFbR2 VH2単量体、mTGFbR2 VH2 G4S二量体、mTGFbR2 VH2 G4S三量体、hTGFbR2 VH2単量体、hTGFbR2 VH2 G4S二量体、hTGFbR2 VH3単量体、hTGFbR2 VH3 G4S二量体、hTGFbR2 scFv VH-VL単量体、hTGFbR2 scFv VH-VL G4S二量体。
【
図8A】実施例6に記載のEMT6-hCD19-Fluc腫瘍細胞の腫瘍増殖を評価するための例示的な注射タイムラインを示す。
【
図8B】非アーマー化CAR-T細胞または非形質導入CAR-T細胞と比較した、TGF-β結合剤を分泌するCAR-T細胞を投与したマウスにおける例示的な腫瘍体積の経時変化を示す。
【
図8C】非アーマー化または非形質導入CAR-T細胞と比較した、TGF-β結合剤を分泌するCAR-T細胞で処置したマウスにおける例示的な肝転移を示す。
【
図8D】非アーマー化または非形質導入CAR-T細胞と比較した、TGF-β結合剤を分泌するCAR-T細胞で処置したマウスにおける例示的な肺転移を示す。
【
図8E】肝臓及び肺の組織におけるルシフェラーゼ発現腫瘍細胞の例示的な画像化結果を示す。
【
図9】異なるTGF-bリガンドトラップ(TGF-b scFv VH-VL1~TGFbR2 ECD単量体、ホモ二量体(A)及びヘテロ二量体(B))を分泌するアーマー化マウスCAR-T由来の上清を、非アーマー化CAR-T細胞と比較するSBE-Luc TGF-bレポーターアッセイの例示的な結果を示す棒グラフを示す。
【
図10A】EMT6-hCD19-Fluc腫瘍細胞の腫瘍増殖を評価するための例示的な注射タイムラインを示す。
【
図10B】非形質導入T細胞または非アーマー化CAR-T細胞(TGFβシグナル伝達モジュレーターを共発現しないCAR-T細胞)を投与したマウスにおける経時的な例示的な腫瘍体積を示す。
【
図10C】TGFbR1+2ECD二量体を共発現するアーマー化CAR-T細胞または非アーマー化CAR-T細胞(TGFβシグナル伝達モジュレーターを共発現しないCAR-T細胞)を投与したマウスにおける経時的な例示的な腫瘍体積を示す。
【
図10D】全身性抗TGFb抗体(1D11)または非アーマー化CAR-T細胞(TGFβシグナル伝達モジュレーターを共発現しないCAR-T細胞)を投与したマウスにおける経時的な例示的な腫瘍体積を示す。
【
図11】CD19を発現するMC38細胞から発生したマウスにおける例示的な腫瘍体積を経時的に示すグラフを示す。非形質導入T細胞、非アーマー化抗CD19 CAR-T細胞、またはTGF-bに対する阻害結合剤を分泌するCAR-T細胞(TGF-b scFv VH-VL1)をマウスに投与した。
【
図12】TGF-b(TGF-b scFv VH-VL1(配列番号1))に対する結合剤を分泌するCAR-T細胞による宿主免疫応答の活性化の増強を示す例示的なRNA配列分析を示すグラフを示す。
【
図13】TGF-b scFv VH-VL1(配列番号1)を分泌するCAR-T細胞を投与したマウス由来の腫瘍における腫瘍浸潤性T細胞(CD3d+、CD3e+、CD3g+)、CD8+T細胞(CD8a+)及び細胞傷害性T細胞(GzmB+)の例示的なバイオマーカースコアを示す。
【
図14】CAR-T細胞を分泌するTGF-b scFv VH-VL1(配列番号1)を投与したマウス由来の腫瘍におけるT細胞シグネチャー及びIFNgシグネチャーの増加を示す例示的な単一試料Gene Set Enrichment Analysis(GSEA)の濃縮スコアを示す。
【
図15】非形質導入対照T細胞、非アーマー化CD19 CAR-T細胞、または抗TGF-b scFv VH-VL1(配列番号1)単量体分泌CAR-T細胞を投与したマウスにおける、TCRa/b、CD8a、CD4、CD25、CD62L、CD11b、Gr1、CD11c、CD45.1、及びCD45を含む例示的な表面マーカー分析を示す。
【
図16A】抗TGF-bまたは抗TGFbR2遮断抗体でアーマー化されたヒトGCC-CAR-T細胞の機能向上を示す、GSU異種移植モデルにおける例示的なin vivo分析を示すグラフである。
【
図16B】抗TGF-bまたは抗TGFbR2遮断抗体でアーマー化されたヒトGCC-CAR-T細胞の機能向上を示す、GSU異種移植モデルにおける例示的なin vivo分析を示すグラフである。
【
図17A】抗Flag免疫捕捉LC/MSアッセイを使用して測定された、TGF-b scFv VH-VL1及びTGFbR2 VHHを共発現する抗GCC CAR-T細胞によって分泌されるTGFbモジュレーターの腫瘍濃度及び/または血漿濃度を示す。
【
図17B】抗Flag免疫捕捉LC/MSアッセイを使用して測定された、TGF-b scFv VH-VL1及びTGFbR2 VHHを共発現する抗GCC CAR-T細胞によって分泌されるTGFbモジュレーターの腫瘍濃度及び/または血漿濃度を示す。
【
図17C】抗Flag免疫捕捉LC/MSアッセイを使用して測定された、TGF-b scFv VH-VL1及びTGFbR2 VHHを共発現する抗GCC CAR-T細胞によって分泌されるTGFbモジュレーターの腫瘍濃度及び/または血漿濃度を示す。
【
図17D】抗Flag免疫捕捉LC/MSアッセイを使用して測定された、TGF-b scFv VH-VL1及びTGFbR2 VHHを共発現する抗GCC CAR-T細胞によって分泌されるTGFbモジュレーターの腫瘍濃度及び/または血漿濃度を示す。
【
図18】TGFbの非存在下(A)及びTGFbの存在下(B)における、非アーマー化抗GCC CAR-T細胞、抗TGFbR2 VHH単量体アーマー化抗GCC CAR-T細胞、及び抗TGFbR2 VHH二量体アーマー化抗GCC CAR-T細胞を用いた、HT29-GCC陽性細胞における例示的なin vitro死滅アッセイ結果を示すグラフである。Cは、TGFbの存在下及び非存在下でのCAR T細胞の増殖を示す。
【
図19】反復抗原刺激後の細胞上のPD-1/Lag3発現を示す例示的なフローサイトメトリー結果を示す。
【
図20A】アーマー化及び非アーマー化CAR-T細胞、ならびにドミナントネガティブTGFbR2(dnTGFbR2)を発現するCAR-T細胞で処置したGCC発現細胞GSUの(皮下)異種移植モデルを示す。
【
図20B】アーマー化及び非アーマー化CAR-T細胞、ならびにドミナントネガティブTGFbR2(dnTGFbR2)を発現するCAR-T細胞で処置したGCC発現細胞HT55の(皮下)異種移植モデルを示す。
【
図20C】アーマー化及び非アーマー化CAR-T細胞、ならびにドミナントネガティブTGFbR2(dnTGFbR2)を発現するCAR-T細胞で処置したGCC発現細胞MDA-MB-231-FP4 Lucの(皮下)異種移植モデルを示す。
【
図21A】アーマー化抗GCC CAR T細胞で処置したHT55肝臓転移モデルの例示的な結果を示す。
【
図21B】アーマー化抗GCC CAR T細胞で処置したHT55肝臓転移モデルの例示的な結果を示す。
【
図21C】アーマー化抗GCC CAR T細胞で処置したHT55肝臓転移モデルの例示的な結果を示す。
【
図22】Aは、示された時点で実施したフローサイトメトリー及びFACS表現型解析によってカウントされたCAR-T細胞を示す。Bは、Mslnに対するCARを、TGFβモジュレーター(例えば、TGFβR2-VHもしくはdnTGFbR2)またはGFPに対する対照VH(Msln-対照VH)と共に共発現する抗Msln CAR-T細胞における細胞傷害性の割合を示す。
【0104】
定義
本発明が、より容易に理解されるように、特定の用語を以下に最初に定義する。以下の用語及び他の用語に関するさらなる定義は、本明細書によって記載される。
【0105】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法(a method)」への言及は、本明細書に記載される種類の1つ以上の方法、及び/またはステップを含み、及び/または本開示などを読む際に当業者には明らかになる。
【0106】
投与する:本明細書で使用される場合、対象に組成物を「投与する」とは、対象に組成物を与えるか、塗布するか、または接触させることを意味する。投与は、例えば、局所、経口、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、髄腔内、及び皮内などの多数の経路のいずれかによって達成され得る。
【0107】
養子細胞療法:本明細書で互換的に使用される場合、「養子細胞療法」または「養子細胞移植」または「細胞療法」または「ACT」という用語は、細胞、例えば、本明細書に記載の遺伝子改変細胞の集団を、必要とする患者に投与することを指す。細胞は、それを必要とする患者から採取して、増殖させることができ(すなわち、自家細胞)、または患者以外のドナーから採取した細胞とすることもできる(すなわち、同種異系細胞)。いくつかの実施形態では、細胞は、本明細書に記載されるように、CAR及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターを発現するように改変されたリンパ球などの免疫細胞(例えば、TGFβアーマー化CAR-T細胞)である。ACTには、ナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、CD8+細胞、CD4+細胞、γδ T 細胞、制御性T細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、iPSC由来T細胞、iPSC由来NK細胞、造血幹細胞(HSC)、間葉幹細胞(MSC)、及び末梢血単核球などの様々な細胞型を使用することができるが、これらに限定されない。
【0108】
親和性:本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、結合部分(例えば、抗原結合剤(例えば、本明細書に記載される可変ドメイン))と標的(例えば、抗原(例えば、TGFBまたはTGFBR))との間の結合相互作用の特性を指し、それは結合相互作用の強さを示す。いくつかの実施形態では、親和性の尺度は、解離定数(KD)として表される。抗原結合タンパク質のその標的に対する結合親和性は、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)またはラジオイムノアッセイ(RIA))、反応速度論(例えば、BIACORE(商標)分析)、または当技術分野で公知の他の方法によって決定され得る。
【0109】
結合活性:本明細書で使用する場合、用語「結合活性」とは、例えば相互作用の価数を考慮した、複数の部位における2つの分子の相互結合の強さの合計である。
【0110】
動物:本明細書で使用する場合、用語「動物」とは、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、発達の任意の段階にあるヒトを指す。いくつかの実施形態では、「動物」は、発達の任意の段階にある非ヒト動物を指す。特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳類(例えば、齧歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/またはブタ)である。いくつかの実施形態では、動物には、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚、昆虫、及び/またはワームが含まれるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子改変された動物、及び/またはクローンであってもよい。
【0111】
自家:本明細書で使用される場合、用語「自家」とは、任意の材料が後に個体に再導入される場合の同じ個体に由来する任意の材料を指す。
【0112】
同種異系:本明細書で使用される場合、「同種異系」とは、物質が導入される個体と同じ種の異なる動物に由来する任意の物質を指す。1つ以上の遺伝子座の遺伝子が同一でない場合、2つ以上の個体は、互いに同種異系であると言われる。いくつかの態様では、同じ種の個体に由来する同種異系物質は、抗原的に相互作用するために遺伝的に十分に異なり得る。
【0113】
抗体または抗原結合剤:本明細書で使用される場合、用語「抗体」または「抗原結合剤」とは、特定の標的抗原に対して特異的結合を付与するのに十分な古典的免疫グロブリン配列要素を含むポリペプチドを指す。当業者であれば、これらの用語が本明細書では同じ意味で使用され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される場合、用語「抗体」または「抗原結合剤」はまた、「抗体断片(複数可)」も指し、これは例えば、抗体の抗原結合領域または可変領域などのインタクトな抗体の一部を含む。「抗体断片」の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、トリアボディ、テトラボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体に含まれるCDR含有部分が挙げられる。当業者であれば、用語「抗体断片」が、任意の特定の生成様式を示唆するものではなく、また、それに限定されないことを理解するであろう。抗体断片は、任意の適切な手法を使用して作製されてよく、その手法としてはインタクトな抗体の切断、化学合成、組換え産生などが挙げられるが、これらに限定されない。当技術分野において公知のように、自然界で産生されるようなインタクトな抗体は、およそ150kDの四量体薬剤であり、これは2つの同一の重鎖ポリペプチド(各々約50kD)及び2つの同一の軽鎖ポリペプチド(各々約25kD)で構成され、互いに会合して「Y字型」構造と一般的に称される構造になる。各重鎖は、少なくとも4つのドメイン(各約110アミノ酸長)で構成され、これらは、アミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置している)、それに続く3つの定常ドメイン:CH1、CH2、及びカルボキシ末端CH3(Y字の幹の基部に位置している)である。「スイッチ」として知られる短い領域は、重鎖可変領域及び定常領域を連結させる。「ヒンジ」は、CH2及びCH3ドメインを抗体の残部に連結させる。このヒンジ領域中の2つのジスルフィド結合は、インタクトな抗体中で2つの重鎖ポリペプチドを互いに連結させる。各軽鎖は2つのドメインで構成され、これらは、アミノ末端可変(VL)ドメイン、それに続く別の「スイッチ」によって互いに分離された、カルボキシ末端定常(CL)ドメインである。インタクトな抗体四量体は、2つの重鎖-軽鎖二量体で構成され、その場合に重鎖及び軽鎖が1つのジスルフィド結合によって互いに連結され、2つの他のジスルフィド結合が、重鎖ヒンジ領域を互いに連結させるため、二量体が互いに連結されて四量体が形成される。天然に産生される抗体も、通常、CH2ドメイン上でグリコシル化される。天然抗体中の各ドメインは、圧縮された逆平行βバレル中で互いに圧縮されている2つのβシート(例えば、3本鎖、4本鎖、または5本鎖シート)から形成される「免疫グロブリンフォールド」を特徴とする構造を有する。各可変ドメインは、「相補性決定領域」(CDR1、CDR2、及びCDR3)として知られる3つの超可変ループならびに4つのやや不変の「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)を含有する。天然抗体が折り畳まれる場合、FR領域は、ドメインに構造的フレームワークを提供するβシートを形成し、重鎖及び軽鎖の両方に由来するCDRループ領域が三次元空間でまとまるため、それらは、Y構造の先端に位置する単一の超可変抗原結合部位を形成する。抗体ポリペプチド鎖間のアミノ酸配列比較によって、2本の軽鎖(κ及びλ)クラス、いくつかの重鎖(例えば、μ、γ、α、ε、δ)クラス、ならびに特定の重鎖サブクラス(α1、α2、γ1、γ2、γ3、及びγ4)が定義される。抗体クラス(IgA[IgA1、IgA2を含む]、IgD、IgE、IgG[IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む]、ならびにIgM)は、利用される重鎖配列のクラスに基づいて定義される。
【0114】
本発明の目的のために、特定の実施形態では、天然抗体中に認められるような、十分な免疫グロブリンドメイン配列を含むいずれのポリペプチドまたはポリペプチドの複合体も、そのようなポリペプチドが天然に産生される(例えば、抗原に反応する生物によって生成される)か、あるいは組換え改変、化学合成、または他の人工系もしくは手法によって産生されるかどうかにかかわらず、「抗体」または「抗原結合剤」と称され得、及び/またはそれとして使用され得る。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナルであり、いくつかの実施形態では、抗体はポリクローナルである。いくつかの実施形態では、抗体は、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒト抗体に特徴的な定常領域配列を有する。いくつかの実施形態では、抗体配列要素は、当技術分野において公知であるような、ヒト化、霊長類化、キメラ化などが行われている。さらに、用語「抗体」または「抗原結合剤」は、本明細書で使用される場合、適切な実施形態では、代替の提示において抗体の構造的及び機能的特徴を獲得するために当技術分野で公知の、または開発された構築物またはフォーマットのいずれかを指し得ることを(別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り)包含すると理解される。例えば、いくつかの実施形態では、本用語は、二重または他の多重特異性(例えば、zybodyなどの)抗体、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、単鎖抗体、ラクダ抗体、及び/または抗体断片を指し得る。いくつかの実施形態では、抗体は、天然に産生される場合に有することになる共有結合修飾(例えば、グリカンの結合)を欠いている場合がある。いくつかの実施形態では、抗体は、共有結合修飾(例えば、グリカンの結合、ペイロード[例えば、検出可能部分、治療的部分、触媒部分など]、または他のペンダント基[例えば、ポリエチレングリコールなど])を含有する場合がある。
【0115】
およそまたは約:本明細書で使用される場合、用語「およそ」または「約」とは、1つ以上の目的の値に適用される場合に規定の参照値に類似した値を指す。特定の実施形態では、用語「およそ」または「約」とは、別途記載のない限り、あるいは別様に前後関係から明白な場合を除いて、表示された参照値(を上回るかまたは下回る)のいずれかの25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、もしくはそれ未満の範囲内に含まれる値域を指す(この数が可能な値の100%を超える場合を除く)。用語「約」または「およそ」が、記載された参照値を修飾するために使用される場合、記載された参照値自体は、記載された参照値のいずれかの側の記載された参照値に近い値と共に網羅されることが理解される。
【0116】
アーマー化CAR-T細胞:本明細書で使用される場合、用語「アーマー化CAR細胞」または「アーマー化CAR-T細胞」とは、腫瘍免疫抑制及び腫瘍誘発性CAR-T機能不全を回避する能力を有する遺伝子改変された細胞を指す。いくつかの実施形態では、アーマー化CAR T細胞は、がん関連抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)及びTGFβシグナル伝達経路モジュレーターを含む。
【0117】
相補性決定領域(CDR):可変ドメインの「CDR」とは、Kabat、Chothia、KabatとChothiaとの両方の蓄積、AbM、contactの定義、及び/または立体構造の定義、あるいは当技術分野で周知の任意のCDR決定法に従って同定される可変領域内のアミノ酸残基である。抗体のCDRは、Kabatらによって最初に定義された超可変領域として識別される場合がある。例えば、Kabat et al.,1992,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,NIH,Washington D.Cを参照のこと。CDRの位置は、Chothia及び他によって最初に記載された構造的ループ構造として識別される場合もある。例えば、Chothia et al.,Nature 342:877-883,1989を参照のこと。CDR同定のための他のアプローチとしては、KabatとChothiaとの折衷案であり、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェア(現在のAccelrys(登録商標))を使用して導出される「AbM定義」、またはMacCallum et al.,J.Mol.Biol.,262:732-745,1996に記載されている、観察された抗原接触部位に基づくCDRの「接触定義」が挙げられる。本明細書でCDRの「立体構造定義」と称される別のアプローチでは、CDRの位置は、抗原結合にエンタルピー的に寄与する残基として同定される場合がある。例えば、Makabe et al.,Journal of Biological Chemistry,283:1 156-1166,2008を参照のこと。さらに他のCDR境界定義は、上記のアプローチの1つに厳密に従わない場合があるが、特定の残基もしくは残基の群またはCDR全体でさえ、抗原結合に大きな影響を与えないという予測または実験的発見に照らして短縮または延長される可能性があるが、それでもKabatのCDRの少なくとも一部と重複する。本明細書で使用される場合、CDRは、アプローチの組み合わせを含む、当技術分野で公知の任意のアプローチによって定義されるCDRを指し得る。本明細書で使用される方法では、これらのアプローチのいずれかに従って定義されるCDRを利用してもよい。複数のCDRを含む任意の所与の実施形態について、CDRは、Kabat、Chothia、拡張、AbM、contact、及び/または立体構造の定義に従って画定され得る。
【0118】
抗体依存性細胞傷害またはADCCは、特定の細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFc受容体(FcR)上に結合した分泌Igによって、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が、抗原を保有する標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒を用いて標的細胞を死滅させることができる細胞傷害性の形態を指す。抗体によって細胞傷害性細胞が「武装化」され、これはこの機構による標的細胞の死滅に必要である。ADCCを媒介するための主な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現する一方で、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFc発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991)の464ページの表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されるアッセイなどのin vitro ADCCアッセイを実施してもよい。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性を、in vivoで、例えば、Clynes et al.,PNAS USA 95:652-656(1998)に開示されるモデルなどの動物モデルで評価してもよい。
【0119】
抗原:本明細書で使用される場合、用語「抗原」とは、免疫応答を誘発する作用因子、及び/またはT細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示される場合)によって結合されるか、もしくは生物に曝露もしくは投与される場合に抗体(例えば、B細胞によって産生される)に結合する作用因子を指す。いくつかの実施形態では、抗原は、生物内で(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)体液性応答を誘発し、あるいはまたはさらに、いくつかの実施形態では、抗原は、生物内で(例えば、T細胞の受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞に関与する)細胞応答を誘発する。当業者であれば、特定の抗原が、標的生物(例えば、マウス、ウサギ、霊長類、ヒト)の1つまたはいくつかのメンバーにおいて免疫応答を誘発し得るが、標的生物種のすべてのメンバーにおいて誘発するとは限らないことを理解するであろう。いくつかの実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%で免疫応答を誘発する。いくつかの実施形態では、抗原は、抗体及び/またはT細胞受容体に結合し、生物内で特定の生理学的応答を誘導する場合もあれば、誘導しない場合もある。いくつかの実施形態では、例えば、抗原は、そのような相互作用がin vivoで生じるか否かにかかわらず、in vitroで抗体及び/またはT細胞受容体に結合し得る。いくつかの実施形態では、抗原は、異種免疫原によって誘導される産物を含む、特定の体液性または細胞性免疫の産物と反応する。
【0120】
~に関連する:本明細書でこの用語が使用される場合、2つの事象または実体は、一方の存在、レベル及び/または形態が、他方のそれらと相関する場合に互いに「関連」している。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド)は、その存在、レベル及び/または形態が、(例えば、関連する集団にわたって)疾患、障害、または病態の発症率及び/または感受性と相関する場合に、特定の疾患、障害、または病態と関連するとみなされる。いくつかの実施形態では、2つ以上の実体は、それらが直接的または間接的に相互作用することで、それらが互いに物理的に近接し、近接したままである場合、互いに物理的に「関連」している。いくつかの実施形態では、互いに物理的に関連した2つ以上の実体は、互いに共有結合し、いくつかの実施形態では、互いに物理的に関連した2つ以上の実体は、互いに共有結合していないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性、及びこれらの組み合わせにより、非共有的に相互作用する。いくつかの実施形態では、「がん細胞に関連する抗原」に関する用語「に関連する」は、がん細胞の表面上に特定の抗原が存在することを指す。
【0121】
結合:本明細書で使用される場合、用語「結合」とは一般に、2つ以上の実体間での、またはこれらにまたがる、非共有結合的会合を意味することが理解される。「直接」結合は、実体または部分間での物理的接触を含み、間接結合は、1つ以上の中間実体との物理的接触による物理的相互作用を含む。2つ以上の実体間での結合は、相互作用する実体または部分が、単独で、またはより複雑な系との関連において研究される場合(例えば、担体実体と共有結合もしくは別の方法で会合する場合、及び/または生物系もしくは細胞内における場合)を含む、様々な文脈のいずれかで評価され得る。本明細書で使用される場合、「Ka」とは、結合部分/標的複合体を形成するための特定の結合部分と標的との結合速度を指す。本明細書で使用される場合、「Kd」とは、特定の結合部分/標的複合体の解離速度を指す。本明細書で使用される場合、「KD」とは解離定数を指し、これはKdとKaとの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。KD値は、当技術分野で十分に確立された方法を使用して、例えば、表面プラズモン共鳴を使用するか、Biacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用することによって決定され得る。
【0122】
担体:本明細書で使用される場合、用語「担体」とは、組成物と共に投与する希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。いくつかの例示的な実施形態では、担体としては、滅菌液、例えば、水及び油など、例えば、石油、動物油、植物油、または合成起源の油、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、担体は、1つ以上の固体成分であるか、またはそれらを含む。
【0123】
特徴的部分:本明細書で使用される場合、用語「特徴的部分」は最も広義に使用され、物質の存在(または不存在)が、物質の特定の特徴、属性、または活性の存在(または不存在)と相関する物質の一部を指す。いくつかの実施形態では、物質の特徴的部分とは、その物質と、特定の特徴、属性、または活性を共有する関連物質には認められ、特定の特徴、属性、または活性を共有しない物質には認められない部分である。
【0124】
キメラ抗原受容体:本明細書で使用される用語「キメラ抗原受容体」または「CAR」とは、1つ以上の細胞外標的結合ドメイン(例えば、抗体由来の)、膜貫通領域、及び1つ以上の細胞内エフェクタードメインからなる、改変された受容体を指す。CARは通常、所望の細胞表面抗原またはMHCペプチド複合体に対する特異性を再配向するために、T細胞などの免疫細胞に導入される。これらの合成受容体は、通常、単一の融合分子内の柔軟なリンカーを介して1つ以上のシグナル伝達ドメインに関連する標的結合ドメインを含む。標的結合ドメインは、免疫細胞(例えば、T細胞)を病的細胞(例えば、がん細胞)の表面上で、特定の標的に配向するために使用され、シグナル伝達ドメインは、免疫細胞(例えば、T細胞)の活性化及び増殖のための分子機構を含む。通常、免疫細胞(例えば、T細胞)の膜を通過する柔軟なリンカー(すなわち、膜貫通ドメインの形成)により、CARの標的結合ドメインの細胞膜提示が可能になる。CARは、リンパ腫及び固形腫瘍など、様々な悪性腫瘍の腫瘍細胞の表面に発現する抗原に対して免疫細胞(例えば、T細胞)を再配向することに成功している(Gross et al.,(1989)Transplant Proc.,21(1 Pt 1):127-30;Jena et al.,(2010)Blood,116(7):1035-44)。CARの細胞外結合ドメインは、マウスまたはヒト化モノクローナル抗体の可変重鎖領域と軽鎖領域との融合に由来する単鎖可変断片(scFv)で構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、細胞外結合ドメインは、単一ドメイン抗体を含む。あるいは、(例えば、Fabライブラリから得られた抗体由来ではなく)Fabに由来するscFvを使用してもよい。様々な実施形態において、このscFvを、膜貫通ドメインに融合させ、次いで細胞内シグナル伝達ドメインに融合させる。
【0125】
少なくとも3世代のCARが開発されている。第1世代のCARは、CD3ζの細胞質領域またはFc受容体γ鎖に由来するシグナル伝達ドメインに結合した標的結合ドメインで構成された。第1世代のCARは、選択された標的にT細胞をうまく再配向することが示されたが、in vivoでの長期の増殖及び抗腫瘍活性をもたらすことはできなかった。第2世代及び第3世代のCARでは、CD28、OX-40(CD134)、及び4-1BB(CD137)などの共刺激分子を含めることにより、改変されたT細胞の生存率を高め、増殖を増加させることに重点を置いている。本明細書に記載される実施形態は、部分的には、例えば、CAR-TをTGFβシグナル伝達経路モジュレーターでアーマー化することによって、CAR-Tを含む免疫療法をさらに改善し、それによってがん、特に固形腫瘍がんを治療する際に免疫療法をより効果的にすることに重点を置いている。本明細書で提供されるアーマー化CARは、非アーマー化CAR-T細胞と比較して、適していない腫瘍微小環境に直面した場合のCAR-Tの機能及び生存率を向上または増強する。
【0126】
コドン最適化:本明細書で使用される場合、「コドン最適化」核酸配列とは、核酸配列の翻訳及び得られたタンパク質の発現が、特定の発現系に対する最適化について改善されるように変更されている核酸配列を指す。「コドン最適化」核酸配列は、「コドン最適化」核酸配列が基づく非最適化親配列と同じタンパク質をコードする。例えば、核酸配列は、哺乳類細胞(例えば、CHO細胞、ヒト細胞、マウス細胞など)、細菌細胞(例えば、E.coli)、昆虫細胞、酵母細胞、または植物細胞における発現のために「コドン最適化」される場合がある。
【0127】
同等:用語「同等」とは、本明細書で使用される場合、互いに同一ではない場合があるが、それらの間における比較を可能にするのに十分に類似し、観察される差または類似性に基づいて結論が合理的にもたらされる場合があるような、2つ以上の薬剤、実体、状況、状態のセットなどを指す。当業者であれば、文脈内において2つ以上のそのような薬剤、実体、状況、状態のセットなどが任意の所与の状況において同等とみなされるには、どの程度の同一性が求められるかを理解するであろう。
【0128】
~に対応する:本明細書で使用される場合、用語「に対応する」は、多くの場合、目的のポリペプチドにおけるアミノ酸残基の位置/同一性を指定するために使用される。当業者であれば、簡潔化のために、ポリペプチド中の残基が参照関連ポリペプチドに基づく古典的な番号付け方式を使用して多くの場合に指定されるため、例えば、190位の残基「に対応する」アミノ酸は、実際には特定のアミノ酸鎖の190番目のアミノ酸である必要はなく、むしろ参照ポリペプチドの190位に見られる残基に対応すると理解し、当業者は「対応する」アミノ酸の同定方法を容易に理解している。
【0129】
由来:本明細書で使用される場合、語句「指定配列に由来する」または「指定配列に特異的な」配列とは、例えば、指定配列の隣接領域に対応する、すなわち、それと同一の、またはそれに相補的な少なくともおよそ6つのヌクレオチドもしくは少なくとも2つのアミノ酸、少なくとも約9つのヌクレオチドもしくは少なくとも3つのアミノ酸、少なくとも約10~12のヌクレオチドもしくは4つのアミノ酸、または少なくとも約15~21のヌクレオチドもしくは5~7つのアミノ酸の連続配列を含む配列を指す。特定の実施形態では、配列は、指定されたヌクレオチドまたはアミノ酸配列のすべてを含む。配列は、当技術分野で公知の技術によって決定されるような、特定の配列に固有の配列領域に相補的であるか(ポリヌクレオチド配列の場合)、またはそれと同一であり得る。配列が由来し得る領域としては、特定のエピトープをコードする領域、CDRをコードする領域、フレームワーク配列をコードする領域、定常ドメイン領域をコードする領域、可変ドメイン領域をコードする領域に加えて、非翻訳及び/または非転写領域が挙げられるが、これらに限定されない。得られた配列は、必ずしも試験中の目的の配列に物理的に由来しているとは限らないが、ポリヌクレオチドが由来する領域(複数可)の塩基配列によって提供される情報に基づく、化学合成、複製、逆転写または転写を含むが、これらに限定されないいかなる方法によっても生成され得る。したがって、配列は、元のポリヌクレオチドのセンス方向またはアンチセンス方向のいずれかを表す場合がある。加えて、指定配列の領域に対応する領域の組合せを、使用目的と一致するように、当技術分野で公知の方法で改変または組み合わせてもよい。例えば、配列は、2つ以上の連続配列を含む場合があり、その各々が指定配列の一部を含み、指定配列と同一ではないが、指定配列に由来する配列を表すことを意図する領域が挿入されている。抗体分子に関して、「それに由来する」は、比較抗体に機能的または構造的に関連する抗体分子を含み、例えば、「それに由来する」は、類似した、または実質的に同じ配列または構造を有する、例えば、同じまたは類似したCDR、フレームワークまたは可変領域を有する抗体分子を含む。抗体の「それに由来する」はまた、残基、例えば、1つ以上、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたはそれを超える残基を含み、これは連続していても、していなくともよいが、番号付けスキームまたは一般的な抗体構造に対する相同性または比較配列の、すなわち、CDRまたはフレームワーク領域内での三次元近接によって定義または同定される。用語「それに由来する」は、それに物理的に由来することに限定されず、任意の方法、例えば、別の抗体を設計するために比較抗体からの配列情報を使用することによる生成を含む。
【0130】
決定する:本明細書に記載される多くの手法は、「決定する」ステップを含む。当業者は、本明細書を読むと、そのような「決定する」ことが、例えば、本明細書で明示的に言及される特定の技術を含む、当業者に利用可能な様々な技術のいずれかを利用し得ると理解するであろう。いくつかの実施形態では、決定は、物理的試料の操作を伴う。いくつかの実施形態では、決定は、例えば、コンピュータまたは関連する分析を実施するために適合された他の処理ユニットを利用する、データまたは情報の考察及び/または操作を伴う。いくつかの実施形態では、決定は、供給源から関連する情報及び/または材料を得ることを伴う。いくつかの実施形態では、決定することは、試料または実体の1つ以上の特徴を同等の参照物と比較することを伴う。
【0131】
改変された:用語「改変された」は、本明細書で使用される場合、人間によって設計もしくは改変され、及び/またはそれを存在させ、産生するために、人為的介入及び/または活動を必要とするポリヌクレオチド、ポリペプチド、または細胞について記載している。例えば、改変された細胞は、特定の効果、かつ同じ種の天然の細胞の効果とは異なる効果を引き出すように意図的に設計されている。いくつかの実施形態では、改変された細胞は、本明細書に記載のキメラ抗原受容体を発現する。
【0132】
エフェクター機能:本明細書で使用される場合、用語「エフェクター機能」とは、本明細書に記載される抗原結合剤に起因するような生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合及び補体依存性細胞傷害、Fc受容体結合、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、貪食、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が挙げられる。「減少または最小化した」抗体エフェクター機能は、野生型または非改変抗体から少なくとも50%(あるいは、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%)減少していることを意味する。抗体エフェクター機能の決定は、当業者によって容易に決定可能及び測定可能である。いくつかの実施形態では、補体結合、補体依存性細胞傷害及び抗体依存性細胞傷害の抗体エフェクター機能が影響を受ける。いくつかの実施形態では、エフェクター機能は、グリコシル化を排除した定常領域における変異、例えば、「エフェクターレス変異」によって排除される。一態様では、エフェクターレス変異は、CH2領域におけるN297AまたはDANA変異(D265A+N297A)である。Shields et al.,J.Biol.Chem.276(9):6591-6604(2001)。あるいは、減少または排除したエフェクター機能をもたらす追加の変異としては、K322A及びL234A/L235A(LALA)が挙げられる。あるいは、エフェクター機能は、産生技術、例えば、グリコシル化しない宿主細胞(例えば、E.coli)またはエフェクター機能を促進する際に無効もしくは効果が弱いグリコシル化パターンの変更をもたらす宿主細胞における発現などによって減少または排除され得る(例えば、Shinkawa et al.,J.Biol.Chem.278(5):3466-3473(2003)。
【0133】
エピトープ:本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」は、免疫グロブリン(例えば、抗体または受容体)結合成分によって全体的または部分的に特異的に認識される任意の部分を含む。いくつかの実施形態では、エピトープは、抗原内の複数のアミノ酸で構成される。いくつかの実施形態では、そのようなアミノ酸残基は、抗原が関連する三次元立体構造を取る場合に表面に露出する。いくつかの実施形態では、アミノ酸残基は、抗原がそのような立体構造を取る場合に、空間内で互いに物理的に近接しているか、または互いに形が合う。いくつかの実施形態では、アミノ酸のうち少なくともいくつかは、抗原が別の立体構造を取る(例えば、線状化する)場合、互いに物理的に分離されている(例えば、非線状エピトープ)。
【0134】
賦形剤:本明細書で使用される場合、用語「賦形剤」とは、例えば、所望の稠度または安定化効果を提供するか、またはこれに寄与するために医薬組成物に含まれる場合がある非治療剤を指す。好適な医薬賦形剤としては、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0135】
発現:用語「発現」または「発現される」とは、本明細書で核酸に関連して使用される場合、以下の事象のうち1つ以上を指す:(1)DNA鋳型のRNA転写産物の産生(例えば、転写による)、(2)RNA転写産物のプロセシング(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/または3’末端形成による)、(3)ポリペプチドへのRNAの翻訳、及び/または(4)ポリペプチドの翻訳後修飾。
【0136】
Ex vivo:本明細書で使用される場合、用語「ex vivo」とは、細胞を生物から取り出し、生物の外部(例えば、試験管内、培養バッグ内、バイオリアクター内)で増殖させるプロセスを意味する。
【0137】
融合タンパク質:本明細書で使用される場合、用語「融合タンパク質」とは、2つの異なる(例えば、異種)タンパク質の少なくとも一部をコードする核酸配列から改変された核酸配列によってコードされるタンパク質を指す。当業者が疑いなく認識している通り、融合タンパク質を作製するために、得られる読み取り配列が内部終止コドンを含有しないように核酸配列を連結させる。
【0138】
宿主:用語「宿主」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、非ヒト霊長類)または系(例えば、細胞もしくは細胞株)を指すために本明細書で使用される。いくつかの実施形態では、宿主は、本明細書に記載のCAR及び/またはTGFβモジュレーターを発現する細胞または細胞集団を投与されている生物である。いくつかの実施形態では、細胞集団を投与すると、宿主における免疫応答が改善される。
【0139】
宿主細胞:本明細書で使用される場合、語句「宿主細胞」とは、外来DNA(組換えまたは別の方法)が導入されている細胞を指す。例えば、宿主細胞を使用して、標準的な組換え技術によって本明細書に記載の改変CAR分子を産生してもよい。当業者であれば、本開示を読むことにより、そのような用語が特定の対象細胞のみを指すだけでなく、そのような細胞の子孫も指すことを理解するであろう。突然変異または環境の影響のいずれかにより、特定の修飾が後続の世代で生じ得るため、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一ではない場合があるが、それでも、本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に含まれる。
【0140】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ヒト細胞を指す。いくつかの実施形態では、宿主細胞としては、外来DNA(例えば、組換え核酸配列)を発現するのに適した任意の原核細胞及び真核細胞が挙げられる。例示的な細胞としては、原核生物及び真核生物の細胞(単細胞もしくは多細胞)、細菌細胞(例えば、E.coli、Bacillus種、Streptomyces種などの株)、マイコバクテリア細胞、真菌細胞、酵母細胞(例えば、S.cerevisiae、S.pombe、P.pastoris、P.methanolicaなど)、植物細胞、昆虫細胞(例えば、SF-9、SF-21、バキュロウイルス感染昆虫細胞、Trichoplusia niなど)、非ヒト動物細胞、ヒト細胞、または細胞融合体、例えば、ハイブリドーマもしくはクアドローマなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒト、サル、類人猿、ハムスター、ラット、またはマウス細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は真核細胞であり、以下の細胞:CHO(例えば、CHO K1、DXB-11 CHO、Veggie-CHO)、COS(例えば、COS-7)、網膜細胞、Vero、CV1、腎臓(例えば、HEK293、HEK293T、293EBNA、MSR293、MDCK、HaK、BHK)、HeLa、HepG2、WI38、MRC5、Colo205、HB8065、HL-60(例えば、BHK21)、Jurkat、Daudi、A431(表皮)、CV-1、U937、3T3、L細胞、C127細胞、SP2/0、NS-0、MMT060562、セルトリ細胞、BRL 3A細胞、HT1080細胞、骨髄腫細胞、腫瘍細胞、及び上述した細胞に由来する細胞株から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、1つ以上のウイルス遺伝子を含み、例えば、ウイルス遺伝子を発現する網膜細胞(例えば、PER.C6(商標)細胞)である。
【0141】
免疫応答:本明細書で使用される場合、用語「免疫応答」とは、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージ、または多形核などの免疫系の細胞が、抗原またはワクチンなどの刺激に対して応答することを指す。免疫応答は、例えば、インターフェロンまたはサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御応答に関与する身体の任意の細胞を含み得る。免疫応答としては、自然免疫応答及び/または適応免疫応答が挙げられるが、これらに限定されない。免疫応答を測定する方法は当技術分野において周知であり、例えば、リンパ球(B細胞またはT細胞など)の増殖及び/または活性、サイトカインもしくはケモカインの分泌、炎症、抗体産生などを測定することを含む。いくつかの実施形態では、免疫応答は、本明細書に記載のアーマー化または非アーマー化CAR-T細胞の投与後に観察される免疫応答を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアーマー化CAR-T細胞の投与後の免疫応答は、CAR発現細胞の増殖の増加、CAR発現細胞によるIFNg産生の増加、CAR発現細胞のIL-2産生の増加、宿主免疫細胞の増殖の増加、宿主免疫細胞によるIFNg産生の増加、宿主免疫細胞のIL-2産生の増加、宿主抗原提示細胞による抗原提示の増加、宿主抗原提示細胞による共刺激の増加、内皮の活性化の増加、または免疫細胞(例えば、NK細胞、T細胞、マクロファージ)の腫瘍ホーミングの増加のうちの1つ以上によって測定される。
【0142】
in vitro:本明細書で使用される場合、用語「in vitro」とは、多細胞生物内ではなく、人工環境で、例えば、試験管内または反応容器内、細胞培養下などで生じる事象を指す。
【0143】
in vivo:本明細書で使用される場合、用語「in vivo」とは、ヒト及びヒト以外の動物などの多細胞生物内で起こる事象を指す。細胞ベースの系に関して、この用語は、生細胞内で発生する事象を指すために使用される場合がある(例えば、in vitroの系とは対照的に)。
【0144】
単離される:本明細書で使用される場合、用語「単離された」とは、(1)最初に生成される場合にそれが会合していた構成要素のうち少なくともいくつかと分離されている(天然において、及び/または実験設定のいずれでも)、及び/または(2)ヒトの介入によって設計、産生、調製、及び/または製造された物質及び/または実体を指す。単離された物質及び/または実体は、それらが最初に会合した他の構成要素の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超とは分離されている場合がある。いくつかの実施形態では、単離された薬剤は、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超の純度である。本明細書で使用される場合、物質が実質的に他の構成要素を含まない場合、その物質は「純粋」である。いくつかの実施形態では、当業者によって理解されるように、物質は、特定の他の構成要素、例えば、1つ以上の担体または賦形剤など(例えば、緩衝液、溶媒、水など)と組み合わされた後でも依然として「単離されている」か、または「純粋」とさえみなされる場合があり、そのような実施形態では、物質の単離パーセントまたは純度パーセントは、そのような担体または賦形剤を含めることなく算出される。一例を示すと、いくつかの実施形態では、天然のポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの生体ポリマーは、a)その起源または誘導の供給源によって、天然におけるその天然状態でポリマーに付随する構成要素の一部またはすべてと関連しない場合、b)ポリマーが、天然においてそれを生成する種に由来する同じ種の他のポリペプチドまたは核酸を実質的に含まない場合、c)天然においてポリマーを生成する種のものではない細胞または他の発現系に由来する構成要素によって発現されるか、またはさもなければそれらと関連する場合に「単離されている」とみなされる。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、化学的に合成されるか、または天然においてポリペプチドを産生する細胞とは異なる細胞系で合成されるポリペプチドは、「単離された」ポリペプチドであるとみなされる。いくつかの実施形態では、細胞は、細胞に天然に付随する分子及び/または細胞成分から分離された「単離細胞」であり得る。あるいは、またはさらに、いくつかの実施形態では、1つ以上の精製技術に供されている細胞は、a)天然において細胞が会合し、及び/またはb)最初に産生された時に細胞が会合していた他の構成要素からその細胞が分離されている限り、「単離された」細胞であるとみなされ得る。
【0145】
リンカー:本明細書で使用される場合、用語「リンカー」とは、2つ以上のポリペプチドまたは核酸を共有結合して互いに接続する官能基(例えば、化学物質またはポリペプチド)を指す。本明細書で使用される場合、「ペプチドリンカー」とは、2つのタンパク質を一緒に結合する(例えば、VHドメインとVLドメインを結合する)ために使用される1つ以上のアミノ酸を指す。
【0146】
調節するまたはモジュレーター:本明細書で使用される場合、用語「調節する」または「モジュレーター」とは、関連する機能をプラスまたはマイナスに変化させる構成要素の能力を指す。例示的な調節には、約1%、約2%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%、または約100%の変化が含まれる。例えば、本明細書において、TGFβ受容体のシグナル伝達を変化させるかまたは阻害することができるTGFBシグナル伝達モジュレーターを提供する。当業者は、これが、TGFβRのシグナル伝達を活性化するサイトカイン(すなわち、TGFβ)、または受容体自体(例えば、TGFβ抗体もしくはその断片、TGFBR抗体もしくはその断片)のいずれかを結合することによって達成され得ることを理解するであろう。したがって、この用語は、TGFβに結合する分子とTGFβRに結合する分子の両方を包含する。一実施形態では、本開示のモジュレーターは、TGFβRIIを介してTGFβシグナル伝達を中和することができる。「中和する」とは、TGFβの存在がTGFβRIIシグナル伝達に対して中立的な影響を与えるように、TGFβの正常なシグナル伝達効果が遮断されることを意味する。いくつかの実施形態では、TGFβモジュレーターは、宿主における免疫応答を改善する。
【0147】
核酸:本明細書で使用される場合、語句「核酸」とは、その最も広義にはオリゴヌクレオチド鎖内に組み込まれる、または組み込まれ得る任意の化合物及び/または物質を指す。いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合によってオリゴヌクレオチド鎖内に組み込まれる、または組み込まれ得る化合物及び/または物質である。文脈から明らかとなる通り、いくつかの実施形態では、「核酸」は、個別の核酸残基(例えば、ヌクレオチド及び/またはヌクレオシド)を指し、いくつかの実施形態では、「核酸」は、個別の核酸残基を含むオリゴヌクレオチド鎖を指す。いくつかの実施形態では、「核酸」はRNAであるか、またはRNAを含み、いくつかの実施形態では、「核酸」はDNAであるか、またはDNAを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の天然核酸残基であるか、それらを含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の核酸類似体であるか、それらを含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸類似体は、それがホスホジエステル骨格を利用しないという点で核酸とは異なる。例えば、いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の「ペプチド核酸」であるか、それらを含むか、またはそれらからなり、「ペプチド核酸」は当技術分野で公知であり、ホスホジエステル結合の代わりに骨格内にペプチド結合を有し、これらは本発明の範囲内であるとみなされる。あるいはまたはさらに、いくつかの実施形態では、核酸は、ホスホジエステル結合ではなく、1つ以上のホスホロチオエート及び/または5’-N-ホスホロアミダイト結合を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上の天然ヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシン、及びデオキシシチジン)であるか、それらを含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のヌクレオシド類似体(例えば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、2-チオシチジン、メチル化塩基、挿入塩基、及びこれらの組合せ)であるか、それらを含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、核酸は、天然核酸中の糖と比較した場合に1つ以上の修飾糖(例えば、2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、及びヘキソース)を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、RNAまたはタンパク質などの機能的遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、1つ以上のイントロンを含む。いくつかの実施形態では、核酸は、天然源からの単離、相補的鋳型に基づく重合による酵素合成(in vivoまたはin vitro)、組換え細胞または系における再産生、及び化学合成のうちの1つ以上によって調製される。いくつかの実施形態では、核酸は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、20、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、またはそれ以上の残基長である。いくつかの実施形態では、核酸は単鎖であり、いくつかの実施形態では、核酸は二本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、ポリペプチドをコードするか、またはポリペプチドをコードする配列の補体である、少なくとも1つのエレメントを含むヌクレオチド配列を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、酵素活性を有する。
【0148】
薬学的に許容されるビヒクル:本開示において有用な薬学的に許容される担体(ビヒクル)は従来のものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences,by E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,15th Edition(1975)は、1つ以上の治療用組成物の医薬送達に適した組成物及び製剤について記載している。一般に、担体の性質は、用いられている特定の投与方法に依存する。例えば、非経口製剤は通常、薬学的及び生理学的に許容される流体、例えば、水、生理食塩水、平衡塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどをビヒクルとして含む注射用流体を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセル形態)の場合、従来の非毒性固体担体は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含み得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与する医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、及びpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートなどを含有し得る。
【0149】
ポリペプチド:「ポリペプチド」は、一般的に言えば、ペプチド結合によって互いに結合される少なくとも2つの一連のアミノ酸である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、少なくとも3~5つのアミノ酸を含む場合があり、その各々は、少なくとも1つのペプチド結合によって他のアミノ酸に結合される。当業者は、ポリペプチドが「非天然」アミノ酸または他の実体を含む時もあり、それにもかかわらず、それらは任意でポリペプチド鎖内に組み込むことができると理解することになる。いくつかの実施形態では、用語「ポリペプチド」は、ポリペプチドの特定の機能クラス、例えば、抗体、キメラ抗原受容体、または共刺激ドメインポリペプチドなどを指すために使用される。そのような各クラスでは、本明細書は、クラス内の既知の例示的なポリペプチドのアミノ酸配列に関するいくつかの例を提供し、及び/またはそれらは当技術分野によって認識され、いくつかの実施形態では、1つ以上のそのような既知のポリペプチドは、クラスの参照ポリペプチドである。そのような実施形態では、用語「ポリペプチド」とは、関連する参照ポリペプチドとの十分な配列相同性または同一性を示すクラスの任意のメンバーを指し、当業者は、それがクラス内に含まれるべきであると理解する。多くの実施形態では、代表的なクラスのメンバーはまた、参照ポリペプチドと顕著な活性を共有する。例えば、いくつかの実施形態では、メンバーポリペプチドは、参照ポリペプチドとの配列相同性または同一性の全体的な程度を示し、それは少なくとも約30~40%であり、多くの場合に約50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%超もしくはそれを超え、及び/または多くの場合に90%超もしくはさらに95%、96%、97%、98%、もしくは99%の非常に高い配列同一性を示す、少なくとも1つの領域(すなわち、多くの場合に特徴的な配列要素を含む、保存領域)を含む。そのような保存領域は通常、少なくとも3~4つ、多くの場合に最大で20以上のアミノ酸を包含し、いくつかの実施形態では、保存領域は、少なくとも一続きの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはそれを超える連続アミノ酸を包含する。
【0150】
本発明の抗体及び抗原結合剤は、追加の保存的または非必須アミノ酸置換を有する場合があると理解されるが、これらはポリペプチド機能に実質的な影響を及ぼさない。特定の置換が許容されるか否か、すなわち、結合活性などの所望の生物学的特性に悪影響を与えないかは、Bowie,J U et al.Science 247:1306-1310(1990)またはPadlan et al.FASEB J.9:133-139(1995)に記載されるように決定され得る。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられている置換である。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野において定義されている。これらのファミリーとしては、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。
【0151】
予防:用語「予防」とは、本明細書で使用される場合、予防、疾患発現の回避、発症の遅延、及び/または特定の疾患、障害、もしくは病態(例えば、がん)の1つ以上の症状の頻度及び/または重症度の軽減を指す。いくつかの実施形態では、予防は、疾患、障害、または病態の1つ以上の症状の発生、頻度、及び/または強度における統計的に有意な減少が、疾患、障害、または病態に罹患しやすい集団で観察される場合、特定の疾患、障害、または病態を薬剤が「予防する」とみなされるように集団ベースで評価される。
【0152】
純度:本明細書で使用される場合、薬剤または実体が実質的に他の構成要素を含まない場合、それは「純粋」である。例えば、約90%超の特定の薬剤または実体を含有する製剤は、通常、純粋な製剤であると考えられる。いくつかの実施形態では、薬剤または実体は、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%純粋である。
【0153】
組換え:本明細書で使用される場合、用語「組換え」とは、組換え手段によって設計、改変、調製、発現、作製、または単離されるポリペプチド(例えば、本明細書に記載されるようなポリペプチド)、例えば、宿主細胞にトランスフェクトした組換え発現ベクターを使用して発現されるポリペプチド、組換えコンビナトリアルポリペプチドライブラリから単離されたポリペプチド、または選択された配列要素を互いにスプライシングすることを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製、もしくは単離されるポリペプチドなどを指すことを意図する。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素のうち1つ以上が、天然に認められる。いくつかの実施形態では、そのような選択された配列要素及び/またはそれらの組合せのうち1つ以上を、in silicoで設計する。いくつかの実施形態では、1つ以上のそのような選択された配列要素は、同じポリペプチド中には天然に存在しない複数(例えば、2つ以上)の既知の配列要素の組合せに由来する。
【0154】
参照:用語「参照」は、目的の薬剤、個体、集団、試料、配列、または値と比較する標準または対照薬剤、個体、集団、試料、配列、または値について記載するために、本明細書で多くの場合に使用される。いくつかの実施形態では、目的の薬剤、個体、集団、試料、配列、または値の試験または測定と実質的に同時に、参照の薬剤、個体、集団、試料、配列、または値を試験及び/または測定する。いくつかの実施形態では、参照薬剤、個体、集団、試料、配列、または値は、有形媒体に任意選択で具現化された、過去の参照である。一般的には、当業者によって理解されるように、目的の薬剤、個体、集団、試料、配列、または値を測定または特性評価するために利用される条件と同等の条件下で、参照の薬剤、個体、集団、試料、配列、または値を測定または特性評価する。
【0155】
単一ドメイン抗体:本明細書で使用される場合、用語「単一ドメイン抗体(sdAb)」、「可変単一ドメイン」または「免疫グロブリン単一可変ドメイン(ISV)」「単一重鎖可変ドメイン(VH)抗体」とは、標的抗原に結合する抗体の単一可変断片を指す。これらの用語は、本明細書では同じ意味で使用される。sdAbは、3つの相補性決定領域(CDR)を有する単一抗原結合ポリペプチドである。sdAbは単独で、対応するCDR含有ポリペプチドと対形成することなく抗原に結合することができる。いくつかの場合では、単一ドメイン抗体は、ラクダ科HCAbから改変され、それらの重鎖可変ドメインは、「VHH」と称される。いくつかのVHHはまた、ナノボディとしても知られ得る。ラクダ科sdAbは、既知の最小の抗原結合抗体断片の1つである(例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-8(1993)、Greenberg et al.,Nature 374:168-73(1995)、Hassanzadeh-Ghassabeh et al.,Nanomedicine(Lond),8:1013-26(2013)を参照のこと)。基本的なVHHは、N末端からC末端まで、以下の構造:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を有し、構造中、FR1~FR4は、それぞれフレームワーク領域1~4を指し、CDR1~CDR3は、相補性決定領域1~3を指す。当技術分野で利用可能な標準的な技術に従ってラクダ科VHHドメインをヒト化してもよく、そのようなドメインは「ドメイン抗体」とみなされる。本明細書で使用される場合、VHにはラクダ科のVHHドメインが含まれ、VHHという用語は、重鎖のみを含むヒトまたはラクダ科起源のドメイン抗体を指すのに使用され得る。以下に説明するように、本発明の様々な態様のいくつかの実施形態は、軽鎖の非存在下でTGFB抗原に結合する単一重鎖可変ドメイン抗体/免疫グロブリン重鎖単一可変ドメインを含む結合剤に関する。
【0156】
対象:本明細書で使用される場合、用語「対象」とは、ヒトを含む任意の哺乳類を意味する。本発明の特定の実施形態では、対象は、成人、青年、または乳幼児である。いくつかの実施形態では、用語「個体」または「患者」が使用され、それらは「対象」と同じ意味であることが意図されている。医薬組成物の投与及び/または子宮内での治療方法の実施もまた、本発明によって企図される。例えば、対象は、がん(例えば、胃腸起源の)、がん(細胞の少なくとも一部がTGFβを発現する)の症状、またはがん(細胞の少なくとも一部がTGFβを発現する)に対して素因を有する、患者(例えば、ヒト患者または動物患者)であり得る。本発明の用語「非ヒト動物」は、別段の注記がない限り、すべての非ヒト脊椎動物、例えば、非ヒト哺乳類及び非哺乳類、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両性類、爬虫類などを含む。
【0157】
実質的に:本明細書で使用される場合、用語「実質的に」は、目的となる特徴もしくは性質のすべてまたはほぼすべての範囲もしくは程度を表す定性的状態を指す。生物学分野における当業者であれば、生物学的及び化学的な現象が、あるとしてもめったに完全にまで至らないか及び/または完全性まで進まないかあるいは確かな結果に達しないまたはそれを回避しないものと理解するであろう。したがって、用語「実質的に」は、本明細書において、多くの生物学的及び化学的現象に内在する完全性の欠如の可能性を表現するために使用される。
【0158】
治療剤:本明細書で使用される場合、用語「治療剤」とは、生物活性を有する薬剤(例えば、抗原結合剤)を指す。本用語は、化学化合物、化学化合物の混合物、生体高分子、または生体物質から作製された抽出物を示すために本明細書で使用される。いくつかの実施形態では、治療剤は、抗がん剤または化学療法剤であってよい。本明細書で使用される場合、用語「抗がん剤」または「化学療法剤」とは、ヒトにおいて新生物、特に悪性(がん性)病変、例えば、がん腫、肉腫、リンパ腫、または白血病などの発症または進行を阻害する機能特性を有する薬剤を指す。転移または血管新生の阻害は、多くの場合、抗がん剤または化学療法剤の特性である。化学療法剤は、細胞傷害剤または細胞増殖抑制剤であってよい。用語「細胞増殖抑制剤」とは、細胞増殖及び/または細胞の増殖を阻害または抑制する薬剤を指す。
【0159】
形質転換:本明細書で使用される場合、外来DNAが宿主細胞内に導入される任意のプロセスを指す。形質転換は、当技術分野で周知の様々な方法を使用して、自然条件下または人工条件下で起こり得る。形質転換は、外来核酸配列を原核生物または真核生物の宿主細胞に挿入するための任意の既知の方法に依存し得る。いくつかの実施形態では、特定の形質転換手法は、形質転換される宿主細胞に基づいて選択され、これとしては、ウイルス感染、エレクトロポレーション、交配、リポフェクションが挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、「形質転換」細胞は、挿入されたDNAが自律複製プラスミドとして、または宿主染色体の一部としてのいずれかで複製可能という点で、安定に形質転換される。いくつかの実施形態では、形質転換細胞は、導入された核酸を、限定的な期間にわたって一過性に発現する。
【0160】
トランスフォーミング成長因子-β(TGFβ):本明細書で使用する場合、用語「TGF-β」、「TGFb」、「TGFβ」及び「トランスフォーミング成長因子-β」は、本明細書では同じ意味で使用され、前駆体及び成熟TGF-βの会合型または非会合型複合体(「潜在型TGF-β」)を含む、ヒト由来のTGF-βのいずれかの完全長の天然アミノ酸配列を有する分子のファミリーを指す。本明細書におけるそのようなTGF-βへの言及は、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、TGF-β4、及びTGF-β5、ならびにそれらの潜在的バージョンを含む現在同定されている形態のいずれか1つ、ならびに任意の既知のTGF-βの配列に由来し、その配列に対して少なくとも約75%、好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約85%、さらに好ましくは少なくとも約90%、さらにより好ましくは少なくとも約95%相同であるポリペプチドを含む、将来同定されるヒトTGF-β種への言及であると理解されるであろう。特定の用語「TGF-β1」、「TGF-β2」、及び「TGF-β3」、ならびに「TGF-β4」及び「TGF-β5」とは、文献、例えば、Derynck et al.,Nature,前出、Seyedin et al.,J.Biol.Chem.,262,前出、及びdeMartin et al.,前出で定義されているTGF-βを指す。用語「TGF-β」とは、ヒトTGF-βをコードする遺伝子を指す。好ましいTGF-βは、天然配列のヒトTGF-βである。
【0161】
TGF-βファミリーのメンバーは、分子の成熟部分に9個のシステイン残基を有し、成熟領域の他の既知のTGF-β配列と少なくとも65%の相同性を共有し、同じ受容体をめぐって競合する可能性があるものとして定義される。さらに、それらはすべて、N末端付近の高い相同性領域を共有する、より大きな前駆体としてコードされていると考えられ、後でプロセシングによって除去される前駆体の部分に3つのシステイン残基が保存されていることを示している。さらに、TGF-βは、4つまたは5つのアミノ酸を含むプロセシング部位を有するものと思われる。
【0162】
トランスフォーミング成長因子β受容体(TGFβR):本明細書で使用される場合、用語「TGF-bR」または「TGF-b受容体」または「TGF-β受容体」または「TGFβR」とは、TGFβRファミリーの3つのサブタイプ(すなわち、TGFβR1、TGFβR2、TGFβR3)のすべてを包含するために使用される。TGFβ受容体はセリン/スレオニンキナーゼ活性を特徴とし、ホモ二量体またはヘテロ二量体となり得るいくつかの異なるアイソフォームで存在する。
【0163】
TGFβシグナル伝達経路モジュレーターまたはTGFβモジュレーター:本明細書で使用される場合、用語「TGFβシグナル伝達経路モジュレーター」または「TGFβモジュレーター」とは、本明細書で同じ意味で使用される場合、TGFβシグナル伝達経路を調節することができる(例えば、阻害、遮断または中和作用を有する)分子(例えば、抗体またはその断片)を指し、これは、TGFβ自体に結合するか、または細胞上のTGFβ受容体に結合し得る。いずれの場合でも、モジュレーターは、(例えば、サイトカイン(すなわち、TGFβ)自体に結合することによって)またはTGFβの受容体に結合することによって、TGFβシグナル伝達経路を阻害する。したがって、本用語は、TGFβに結合するモジュレーターとTGFβ受容体に結合するモジュレーターの両方のタイプを包含する。本明細書に記載の様々な実施形態では、改変された免疫細胞(例えば、CAR-T細胞)中で、TGFβシグナル伝達経路モジュレーターをキメラ抗原受容体と共に発現させる。そのようなTGFβシグナル伝達経路モジュレーターを発現するCAR-T細胞を、本明細書ではTGFβアーマー化CAR-T細胞と称する。
【0164】
治療する、または治療:本明細書で使用される場合、用語「治療する」または「治療」とは、治療剤を、対象、例えば、患者に投与するか、または対象由来の単離組織もしくは細胞に、例えば、塗布し、これを対象へと戻すことによって投与することとして定義される。いくつかの実施形態では、治療剤はアーマー化CAR-T細胞(例えば、TGFβモジュレーターを共発現する改変されたCAR-T細胞)である。治療は、障害、障害の症状または障害に対する素因、例えば、がんを治癒する、治す、軽減する(alleviate)、緩和する、変化させる、修復する、改善する(ameliorate)、軽減する(palliate)、改善する(improve)、またはこれに影響を及ぼすことであり得る。理論に束縛されることを望むものではないが、治療は、in vitroもしくはin vivoでの細胞の阻害、除去、もしくは死滅、またはさもなければ、細胞、例えば、異常細胞が障害、例えば、本明細書に記載されるような障害(例えば、がん)を媒介する能力の減少を引き起こすと考えられている。
【0165】
本明細書に記載の発明は、治療的、予防的、または予防的処置のために「有効量」で使用される。本明細書に記載のアーマー化CAR-T細胞(例えば、CAR及びTGFβシグナル伝達モジュレーターを共発現する改変細胞)の治療有効量は、疾患(例えば、がん)の1つ以上の症状を改善もしくは軽減するか、または予防もしくは治癒するのに有効な量である。
【0166】
可変領域またはドメイン:本明細書で使用される場合、抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」及び「VL」と称され得る。これらのドメインは、一般的に、抗体の最も可変性の高い部分であり(同じクラスの他の抗体と比較して)、抗原結合部位を含む。重鎖のみ抗体は、単一の重鎖可変領域を有する。
【0167】
ベクター:本明細書で使用される場合、用語「ベクター」とは、核酸分子が連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの一種は「プラスミド」であり、これは追加のDNAセグメントがライゲートされ得る環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲートされ得る。特定のベクターは、それらが導入されている宿主細胞内で自律複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞への導入時に宿主細胞のゲノム内に組み込まれ得、それによって宿主ゲノムと共に複製される。さらに、特定のベクターは、それらが機能的に連結されている遺伝子の発現を誘導することができる。そのようなベクターは、本明細書において「発現ベクター」と称される。
【発明を実施するための形態】
【0168】
本発明は、TGFβシグナル伝達を調節するポリペプチドでアーマー化された改変免疫細胞(例えば、CAR-T細胞)を使用して、がん及び病原体に対する免疫応答を増強するための方法及び組成物を提供する。本発明は、特定の方法、及び記載される実験条件に限定されないため、そのような方法及び条件は変動する場合がある。本発明の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることになるため、本明細書で使用される専門用語は、指示がない限り、特定の実施形態の記載のみを目的とし、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0169】
TGF-B/SMADシグナル伝達
トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)は、もともと正常な線維芽細胞を足場非依存的な増殖が可能な細胞に形質転換する能力にちなんで名付けられた多機能サイトカインである。TGF-βシグナル伝達は、増殖、分化、生存、遊走、及び上皮間葉転換などの多くの重要な細胞機能を制御する。それは、細胞外マトリックス形成、創傷治癒、胚発生、骨発生、造血、免疫応答及び炎症反応、ならびに悪性転換などの多様な生物学的プロセスを調節する。TGF-βの調節不全は、先天異常、がん、慢性炎症、ならびに自己免疫疾患及び線維性疾患などの病理学的状態を引き起こす。
【0170】
主に造血細胞及び腫瘍細胞によって産生されるTGF-βは、正常組織及び腫瘍組織の両方の起源の様々な細胞の増殖及び分化を調節、すなわち刺激または阻害することができ(Spom et al.,Science,233:532(1986))、様々な間質成分の形成及び同化を刺激する。TGF-βは、細胞の増殖及び分化、胚発生、細胞外マトリックスの形成、骨発生、創傷治癒、造血、ならびに免疫応答及び炎症反応など、多くの増殖性及び非増殖性の細胞プロセスに関与する。
【0171】
TGF-βは、リンホカイン活性化キラー(LAK)及び細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の阻害、B細胞リンパ球生成及びκ軽鎖発現の抑制、造血の負の制御、腫瘍細胞上のHLA-DR発現の下方制御、ならびにB細胞増殖因子に応答した抗原活性化Bリンパ球の増殖の阻害などの免疫抑制活性も有する。多くのヒト腫瘍及び多くの腫瘍細胞株がTGF-βを産生するが、これは、これらの腫瘍が通常の免疫学的監視を回避する機構を有している可能性を示唆している。この負の免疫調節は、特定の形質転換細胞株が自己分泌的にTGF-βに応答する能力を失っていること、及びTGF-βが間質形成を刺激し、腫瘍の免疫監視を低下させるという観察と相まって、新生物の調節解除及び増殖の魅力的なモデルを示唆している。
【0172】
TGF-βシグナル伝達は、健康な細胞とがんの制御の両方にとって重要であるため、TGF-βを全身的に標的にすると、望ましくない副作用が生じ得る。特にがんに関しては、TGF-βファミリーのメンバーは、腫瘍形成(血管形成を含む)及び転移に関連する多くの生物学的活性を有することが知られている。TGF-βは、毛細血管内皮細胞や平滑筋細胞を含む多くの細胞型の増殖を阻害する。TGF-βは、インテグリン発現(内皮細胞遊走に関与するα1β1、α2β1、及びαvβ3)を下方制御する。インテグリンは、転移性細胞を含むすべての細胞の遊走に関与する。TGF-βは、血管新生と転移の両方に必要なマトリックスメタロプロテイナーゼの発現を下方制御する。TGF-βは、血管新生と転移に必要なプロテイナーゼカスケードを阻害するプラスミノーゲン活性化因子阻害因子を誘導する。TGF-βは、正常細胞を誘導して形質転換細胞を阻害する。例えば、TGF-βの調節解除が、がん及び線維症を含む様々な疾患の発症に関与していることを開示すると共に、がん治療薬、バイオマーカー/診断薬としてのTGF-βシグナル伝達阻害剤を評価するための理論的根拠、開発中の小分子阻害剤の構造、ならびにそれらの開発に適用されている標的創薬モデルを提示しているYingling et al.,Nature Reviews,3(12):1011-1022(2004)を参照されたい。
【0173】
本明細書で使用される場合、用語「TGF-βシグナル伝達経路」は、TGF-β及びTGF-β様リガンドに起因すると考えられる下流のシグナル伝達事象を記述するために使用される。例えば、あるシグナル伝達経路では、TGF-βリガンドがII型TGF-β受容体に結合して活性化する。II型TGF-β受容体は、I型TGF-β受容体を動員してヘテロ二量体を形成する。結果として生じるヘテロ二量体は、I型受容体のリン酸化を可能にし、それが今度はSMADファミリーのタンパク質のメンバーをリン酸化して活性化させる。シグナル伝達カスケードが誘発され、これは当業者には周知であり、最終的には、細胞増殖、細胞分化、腫瘍形成、アポトーシス、及び細胞恒常性などに関与するメディエーターの発現が制御される。他のTGF-βシグナル伝達経路も、本明細書に記載の方法による操作のために企図される。
【0174】
TGF-βシグナル伝達経路モジュレーター
本発明は、TGF-βシグナル伝達モジュレーター(例えば、TGF-βシグナル伝達を調節するポリペプチド、またはTGF-βシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードする核酸配列)を含む免疫調節系を提供する。いくつかの実施形態では、TGF-βシグナル伝達モジュレーターは、TGF-βまたはTGF-β受容体に結合すると細胞反応を引き起こす。いくつかの実施形態では、TGF-βシグナル伝達モジュレーターは、細胞から分泌される。
【0175】
様々な実施形態において、本発明は、TGF-βシグナル伝達モジュレーターと共にキメラ抗原受容体を発現する改変された免疫細胞(例えば、T細胞)を提供する。そのようなモジュレーターは、TGF-β自体またはTGF-β受容体に結合し得る。そのようなモジュレーターを発現するCAR-T細胞を、本明細書ではTGF-βアーマー化CAR-T細胞と称する。
【0176】
抗TGFβ及び抗TGFβR2抗原結合分子
いくつかの実施形態では、TGF-βシグナル伝達モジュレーターは、抗原結合分子(例えば、抗体またはその抗原結合断片)である。いくつかの実施形態では、抗原結合分子(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、TGF-βに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、抗原結合分子(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、TGF-β受容体(TGFβR)(例えば、TGFβR1、TGFβR2)に特異的に結合する。
【0177】
TGF-βシグナル伝達モジュレーター(例えば、抗TGFβ抗体分子または抗TGFβR抗体分子)は、本明細書に記載のCDRまたは重鎖のすべて、または抗原結合サブセットを含み得る。可変領域を含む、本明細書に記載の抗TGFβまたは抗TGFβR2抗原結合剤の例示的なアミノ酸配列を表1に示す。さらなる抗TGFβまたは抗TGFβR2抗体は、米国特許第7,723,486号及び第9,783,604号、米国特許出願公開第US20160017026A1号及び第US20180105597号、第US20190119387号、ならびに国際特許出願第WO2012093125A1号、第WO2011/012609号、第WO2017/141208A1号にも記載されており、これらのそれぞれの全体は、参照により本明細書に援用される。本明細書に記載の免疫調節系において有用な抗原結合剤としては、抗原(例えば、TGFβRエピトープ)と特異的に結合する、抗体、(Fab’)2などの二価断片、Fabなどの一価断片、単鎖抗体、単鎖Fv(scFv)、単一ドメイン抗体、多価単鎖抗体、ダイアボディ、トリアボディなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
いくつかの実施形態では、免疫調節系は、表1に示す配列と、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のTGF-βシグナル伝達モジュレーター(例えば、抗TGFβまたは抗TGFβR2抗原結合剤)を含む。いくつかの実施形態では、免疫調節系は、表1に記載の抗体またはその断片の1つ以上のCDR配列を含むTGF-βシグナル伝達モジュレーターを含む。いくつかの実施形態では、本発明のTGF-bシグナル伝達モジュレーターは、表1に示すVH配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、TGF-βシグナル伝達モジュレーターのVHは、単一ドメイン抗体(VH)である。
【0179】
いくつかの実施形態では、TGF-βシグナル伝達モジュレーターは、リーダー配列を含む。いくつかの実施形態では、TGF-βシグナル伝達モジュレーターは単量体である。いくつかの実施形態では、TGF-βシグナル伝達モジュレーターは二量体である。いくつかの実施形態では、TGF-βシグナル伝達モジュレーターは三量体である。
【0180】
いくつかの実施形態では、TGF-βシグナル伝達モジュレーターは、ドメインをタンデムに接続するためのリンカーを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGS(配列番号59)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、(GGGGS)n(配列番号59)を含み、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号61)を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、TGF-βシグナル伝達モジュレーターは、表1に示すVL配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗TGFβ抗原結合剤は、表1に示すVH配列と同一の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、本発明のTGF-βシグナル伝達モジュレーターは、表1に示すvH配列と、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本発明のTGF-βシグナル伝達モジュレーターは、表1に示すvH配列と同一の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、TGFβシグナル伝達モジュレーターのVH(例えば、単一ドメイン抗体)は、表1において少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であるとするリーダー配列を含む。いくつかの実施形態では、vH抗TGFβ抗原結合剤(例えば、単一ドメイン抗体)は、表1に示すリーダー配列を含む。
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
いくつかの実施形態では、抗TGFβまたは抗TGFβR抗原結合剤は抗体である。天然の哺乳類抗体の構造単位は、四量体が典型的である。各四量体は、2つのポリペプチド鎖対で構成され、各対は、1本の「軽」鎖(約25kDa)及び1本の「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する約100~110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能に関与する定常領域を画定する。ヒト軽鎖は、κ軽鎖及びλ軽鎖に分類され得る。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεに分類され得、それぞれ、抗体のアイソタイプは、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEと定義される。軽鎖及び重鎖内において、可変領域及び定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって結合され、重鎖は約10以上のアミノ酸の「D」領域も含む。概して、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照のこと。各軽鎖/重鎖対の可変領域は、抗体結合部位を形成する。抗TGFβ抗体分子の好ましいアイソタイプは、IgG免疫グロブリンであり、これは異なるγ重鎖を有する4つのサブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4に分類され得る。大半の治療用抗体が、IgG1型のヒト、キメラ、またはヒト化抗体である。特定の実施形態では、抗TGFβ抗体分子は、IgG1アイソタイプを有する。
【0192】
各重鎖及び軽鎖対の可変領域は、抗原結合部位を形成する。したがって、インタクトなIgG抗体は、同一の2つの結合部位を有する。しかしながら、二機能性または二重特異性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対を有し、2つの異なる結合部位をもたらす人工的なハイブリッド構築物である。
【0193】
鎖はすべて、相補性決定領域またはCDRとも呼ばれる3つの超可変領域によって結合された、比較的保存されたフレームワーク領域(FR)の同じ一般構造を示す。各対の2本鎖のCDRは、フレームワーク領域によってアラインされ、特異的エピトープとの結合が可能となる。N末端からC末端まで、軽鎖及び重鎖の両方とも、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987及び1991))、またはChothia&Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987)、Chothia et al.Nature 342:878-883(1989)の定義に従う。本明細書で使用される場合、CDRは、重鎖(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及び軽鎖(LCDR1、LCDR2、LCDR3)のそれぞれについて言及される。
【0194】
したがって、一実施形態では、抗体分子には以下の一方または両方が含まれる:
【0195】
(a)上記で参照したヒトハイブリドーマ、選択されたリンパ球、またはマウス抗体のうちの1つの1、2、3、または抗原結合数の軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、及び/またはLCDR3)。実施形態では、CDR(複数可)は、以下のようなLCDR1~3の1つ以上またはすべてのアミノ酸配列を含み得る:LCDR1、または1~7個のアミノ酸が保存的に置換されている改変LCDR1)、LCDR2、または1つもしくは2つのアミノ酸が保存的に置換されている改変LCDR2)、あるいはLCDR3、または1つもしくは2つのアミノ酸が保存的に置換されている改変LCDR3、ならびに
【0196】
(b)上記で参照したヒトハイブリドーマ、選択されたリンパ球、またはマウス抗体のうちの1つの1、2、3、または抗原結合数の重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、及び/またはHCDR3)。実施形態では、CDR(複数可)は、以下のようなHCDR1~3の1つ以上またはすべてのアミノ酸配列を含み得る:HCDR1、または1もしくは2個のアミノ酸が保存的に置換されている改変HCDR1、HCDR2、または1つ~4つのアミノ酸が保存的に置換されている改変HCDR2、あるいはHCDR3、または1つもしくは2つのアミノ酸が保存的に置換されている改変HCDR3。
【0197】
いくつかの実施形態では、本発明の抗TGFβ抗体分子または抗TGFβR(例えば抗TGFβR2)抗体分子は、TGFβを発現する細胞、例えば腫瘍細胞に対して抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘発することができる。IgG1及びIgG3アイソタイプを有する抗体は、Fc受容体と結合するそれらの能力ゆえに、抗体依存性細胞傷害能においてエフェクター機能を誘発するのに有用である。IgG2及びIgG4アイソタイプを有する抗体は、Fc受容体と結合するそれらの能力が低いため、ADCC反応を最小限に抑えるのに有用である。関連する実施形態では、Fc領域に置換を導入し、あるいは、例えば改変された真核細胞株で増殖させることにより抗体のグリコシル化組成を変化させて、抗TGFβ抗体または抗TGFβR(例えば、抗TGFβR2)抗体が結合するFc受容体の認識、結合、及び/または細胞傷害の媒介能力を増強することができる(例えば、米国特許第7,317,091号、同第5,624,821号、及びWO00/42072を含む公報、Shields,et al.J.Biol.Chem.276:6591-6604(2001)、Lazar et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.103:4005-4010(2006)、Satoh et al.Expert Opin Biol.Ther.6:1161-1173(2006)を参照のこと)。特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片(例えば、ヒト起源の抗体、ヒト抗体)は、機能(例えば、エフェクター機能)を変化または調整するアミノ酸置換または置換えを含み得る。例えば、ヒト起源の定常領域(例えば、γ1定常領域、γ2定常領域)を設計して、補体活性化及び/またはFc受容体結合を低下させることができる。(例えば、米国特許第5,648,260号(Winter et al.)、米国特許第5,624,821号(Winter et al.)及び米国特許第5,834,597号(Tso et al.)を参照のこと(その教示の全体が参照により本明細書に援用される))。好ましくは、そのようなアミノ酸置換または置換えを含有するヒト起源の定常領域のアミノ酸配列は、未変化のヒト起源定常領域のアミノ酸配列と全長にわたって少なくとも約95%同一であり、より好ましくは、未変化のヒト起源定常領域のアミノ酸配列と全長にわたって少なくとも約99%同一である。追加の抗TGFβ抗原結合分子は、米国特許第8,785,600号(Nam et al.)にさらに記載されており、その教示の全体が参照により本明細書に援用される。
【0198】
さらに別の実施形態では、抗体のグリコシル化パターンを調節することによってエフェクター機能を変化させることもできる。変化とは、抗体に認められる1つ以上の炭水化物部分の欠失、及び/または抗体中に存在しない1つ以上のグリコシル化部位の付加を意味する。例えば、抗体のFc領域に結合しているフコースを欠く成熟炭水化物構造を有する、ADCC活性が増強した抗体が、米国特許出願公開第2003/0157108号(Presta)に記載されている。米国特許出願公開第2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)も参照のこと。Glycofiは、特定のグリコフォームの抗体を産生可能な酵母細胞株も開発した。
【0199】
さらにまたは代わりに、グリコシル化型が変化した抗体、例えば、フコシル残基の量が減少した低フコシル化抗体または二分化GlcNac構造が増加した抗体などを作製することができる。そのようなグリコシル化パターンの変化により、抗体のADCC能力が増加することが示されている。そのような炭水化物修飾は、例えば、グリコシル化機構を変化させた宿主細胞で抗体を発現させることによって達成することができる。グリコシル化機構を変化させた細胞は当技術分野で記載されており、本発明の組換え抗体を発現するように改変した宿主細胞として使用することにより、グリコシル化を変化させた抗体を産生することができる。例えば、Hang et al.によるEP1,176,195には、機能的に破壊されたFUT8遺伝子を有する細胞株について記載されており、この細胞株はフコシルトランスフェラーゼをコードするため、そのような細胞株で発現する抗体は、低フコシル化を示す。PrestaによるPCT公開WO03/035835には、Asn(297)結合炭水化物にフコースを結合させる能力が低下しており、さらにその宿主細胞で発現する抗体の低フコシル化を生じさせるバリアントCHO細胞株のLec13細胞について記載されている(Shields,R.L.et al.,2002 J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照のこと)。Umana et al.によるPCT公開WO99/54342には、改変された細胞株で発現する抗体が、抗体のADCC活性の増加をもたらす二分化GlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように改変された細胞株について記載されている(Umana et al.,1999 Nat.Biotech.17:176-180も参照のこと)。
【0200】
ヒト化抗体はまた、CDR移植アプローチを使用して作製することもできる。そのようなヒト化抗体の生成技術は、当技術分野で公知である。一般的に、ヒト化抗体は、TGFβに結合する抗体の可変重鎖配列及び可変軽鎖配列をコードする核酸配列を取得し、可変重鎖配列及び可変軽鎖配列中の相補性決定領域、すなわち「CDR」を同定し、CDR核酸配列をヒトフレームワーク核酸配列上に移植することによって産生される。(例えば、米国特許第4,816,567号及び同第5,225,539号を参照のこと)。CDR及びフレームワーク残基の位置は、決定することができる(Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242、及びChothia,C.et al.J.Mol.Biol.196:901-917(1987)を参照のこと)。
【0201】
いくつかの実施形態では、本発明の免疫調節系は、表1に記載の抗体分子由来CDRを含む抗TGFβまたは抗TGFβR抗体分子をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の治療方法で使用するために、TGFβまたはTGFβRを認識する分子に表1の配列を組み込むことができる(例えば、免疫調節系、免疫応答性細胞、またはそれらを含む治療方法)。選択されるヒトフレームワークは、in vivo投与に適したもの、すなわち、免疫原性を示さないものを意味する。例えば、そのような決定は、そのような抗体のin vivo使用及びアミノ酸類似性の研究を含む以前の経験によって行われ得る。好適なフレームワーク領域は、ドナー抗体、例えば、抗TGFβ抗体分子の等価部分(例えば、フレームワーク領域)のアミノ酸配列内において、フレームワーク領域の長さにわたって少なくとも約65%のアミノ酸配列同一性、好ましくは少なくとも約70%、80%、90%、または95%のアミノ酸配列同一性を有するヒト起源の抗体から選択され得る。アミノ酸配列同一性は、CLUSTAL Wなどの好適なアミノ酸配列アラインメントアルゴリズムを使用し、デフォルトパラメータを使用して決定され得る。(Thompson J.D.et al.,Nucleic Acids Res.22:4673-4680(1994)。)
【0202】
ヒト化されているクローン化抗体のCDR及びFRが同定されると、CDRをコードするアミノ酸配列が同定され、対応する核酸配列が、選択されたヒトFR上に移植される。これは、既知のプライマー及びリンカーを使用して行うことができ、その選択は当技術分野で公知である。特定のヒト抗体に関するすべてのCDRを非ヒトCDRの少なくとも一部で置き換えてもよく、またはCDRの一部のみを非ヒトCDRで置き換えてもよい。ヒト化抗体と所定の抗原との結合に必要なCDRの数を置き換えることだけが必要である。CDRを、選択されたヒトFR上に移植した後、得られる「ヒト化」可変重鎖及び可変軽鎖配列を発現させ、TGFβまたはTGFβRに結合するヒト化Fvまたはヒト化抗体を産生する。好ましくは、CDR移植(例えば、ヒト化)抗体は、ドナー抗体の親和性と同様の、実質的に同じ、またはより良好な親和性でTGFβまたはTGFβRと結合する。通常、ヒト化可変重鎖及び軽鎖配列を、ヒト定常ドメイン配列との融合タンパク質として発現させるため、TGFβに結合するインタクトな抗体が得られる。しかしながら、定常配列を含有しないヒト化Fv抗体を産生することができる。
【0203】
特定のアミノ酸が置換、欠失または付加されているヒト化抗体もまた、本発明の範囲内である。特に、ヒト化抗体は、抗原への結合を改善するなどのために、フレームワーク領域内にアミノ酸置換を有し得る。例えば、ヒト化免疫グロブリン鎖の選択された少数のアクセプターフレームワーク残基を、対応するドナーアミノ酸で置き換えることができる。置換の位置としては、CDRに隣接するか、またはCDRと相互作用できるアミノ酸残基が挙げられる(例えば、米国特許第5,585,089号または同第5,859,205号を参照のこと)。アクセプターフレームワークは、成熟ヒト抗体フレームワーク配列またはコンセンサス配列であり得る。本明細書で使用される場合、用語「コンセンサス配列」とは、最も頻繁に認められる配列、または関連ファミリーメンバー間の領域内における配列の各位置で最も一般的な残基から考案された配列を指す。ヒト可変領域の異なるサブグループのコンセンサス配列を含む、多数のヒト抗体コンセンサス配列が利用可能である(Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,U.S.Government Printing Office(1991)を参照のこと)。Kabatデータベース及びそのアプリケーションは、例えば、米国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)、Bethesda,Md.のIgBLASTによってオンラインで自由に入手可能である(Johnson,G.and Wu,T.T.,Nucleic Acids Research 29:205-206(2001)も参照のこと)。
【0204】
特定の実施形態では、TGFβまたはTGFβR抗体分子は、ヒト抗TGFβまたは抗TGFβR IgG1抗体である。そのような抗体はTGFβまたはTGFβR分子に対して所望の結合を有するため、そのような抗体のいずれか1つが容易にアイソタイプスイッチし、例えば、ヒトIgG4アイソタイプを生成し得るが、同じ可変領域(抗体の特異性及び親和性をある程度定義する)を依然として有している。したがって、上述のような所望の「構造」属性を満たす抗体候補を生成する場合、それらは一般に、アイソタイプスイッチングによって所望される少なくとも特定の追加の「機能」属性を有し得る。
【0205】
単鎖抗体
単鎖抗体は、その由来となる抗体全体の定常ドメインの一部またはすべてを欠いている。したがって、単鎖抗体は、抗体全体を使用することに付随する問題のいくつかを克服することができる。例えば、単鎖抗体は、重鎖定常領域と他の生体分子との間の特定の望ましくない相互作用を起こさない傾向にある。さらに、単鎖抗体は抗体全体よりもかなり小さく、抗体全体よりも透過性が高いため、単鎖抗体は、より効率的に標的の抗原結合部位に局在化し、結合することができる。さらに、単鎖抗体のサイズは比較的小さいため、抗体全体に比べてレシピエントに望ましくない免疫応答を引き起こす可能性が低くなる。
【0206】
いくつかの実施形態では、TGFβシグナル伝達モジュレーターは、TGFβに特異的に結合する単鎖抗原結合分子(例えば、scFv)である。いくつかの実施形態では、TGFβシグナル伝達モジュレーターは、TGF-B受容体(TGFβR)(例えば、TGFβR1、TGFβR2)に特異的に結合する単鎖抗原結合分子(例えば、scFv)である。
【0207】
複数の単鎖抗体(各単鎖は、第1のペプチドリンカーによって共有結合した1つのVHドメイン及び1つのVLドメインを有する)は、少なくとも1つ以上のペプチドリンカーによって共有結合して、単一特異性または多重特異性であり得る多価単鎖抗体を形成することができる。多価単鎖抗体の各鎖は、可変軽鎖断片及び可変重鎖断片を含み、ペプチドリンカーによって少なくとも1つの他の鎖と連結する。ペプチドリンカーは、少なくとも15個のアミノ酸残基からなる。リンカーアミノ酸残基の最大数はおよそ100である。
【0208】
2つの単鎖抗体を組み合わせて、二価二量体としても知られるダイアボディを形成することができる。ダイアボディは、2本の鎖と2つの結合部位を有し、単一特異性または二重特異性であり得る。ダイアボディの各鎖には、VLドメインに接続されたVHドメインが含まれている。これらのドメインは、同じ鎖上のドメイン間の対形成を防ぐのに十分な短いリンカーで接続されているため、異なる鎖上の相補的ドメイン間の対形成が促進され、2つの抗原結合部位が再形成される。
【0209】
3つの単鎖抗体を組み合わせて、三価三量体としても知られるトリアボディを形成することができる。トリアボディは、VLまたはVHドメインのアミノ酸末端をVLまたはVHドメインのカルボキシル末端に直接融合して、すなわちリンカー配列を使用せずに構築される。トリアボディは、3つのFvヘッド部を有し、これらのポリペプチドは、環状に頭部から尾部へ向かって配置されている。トリアボディの考えられる立体構造は平面状であり、3つの結合部位が互いに120度の角度で平面内に位置する。トリアボディは、単一特異性、二重特異性、または三重特異性であり得る。
【0210】
単一ドメイン抗体
単一ドメイン抗体(sdAb)は、単一の単量体抗体可変ドメインを有することにより、従来の4鎖抗体とは異なる。例えば、ラクダ科動物及びサメは、重鎖のみの抗体(HcAb)という名称のsdAbを産生し、これは軽鎖を天然に欠いている。ラクダ科の重鎖のみ抗体の各アームにおける抗原結合断片は、単一重鎖可変ドメイン(VHH)を有し、これは軽鎖の支援なしに抗原に対して高い親和性を有し得る。ラクダ科VHHは、およそ15kDの分子量を有する最小の機能的抗原結合断片として既知である。
【0211】
本出願の一態様は、ヒトTGFβR2などのTGFβRに特異的に結合する単離された単一ドメイン抗体(本明細書では「抗TGFβR sdAb」と称される)を提供する。いくつかの実施形態では、抗TGFβR sdAbは、TGFβ活性を調節する。いくつかの実施形態では、抗TGFβ sdAbはアンタゴニスト抗体である。本明細書に記載される抗TGFβR sdAbのいずれか1つに由来する抗原結合断片、及び本明細書に記載される抗TGFβR sdAbのいずれか1つを含む抗原結合タンパク質を、さらに提供する。いくつかの実施形態では、抗TGFβR sdAbは、表1に示す1つ、2つ、及び/または3つのCDR配列を含む。例示的な抗TGFβR sdAbを表1に示す。
【0212】
いくつかの実施形態では、CDR配列の一部またはすべて、すなわち、重鎖を、別の抗原結合剤、例えば、CDR移植抗体分子、ヒト化抗体分子、またはキメラ抗体分子に使用することができる。実施形態は、TGFβへの結合を可能にするのに十分なCDR、例えば、上述した重鎖可変領域の1つに由来する3つすべてのCDRを含む抗体分子を含む。
【0213】
いくつかの実施形態では、CDR、例えばすべてのHCDRを、ヒトまたはヒト由来のフレームワーク領域(複数可)に埋め込む。ヒトフレームワーク領域の例としては、ヒト生殖細胞系フレームワーク配列、親和性成熟した(in vivoもしくはin vitroのいずれかで)ヒト生殖細胞系配列、または合成ヒト配列、例えば、コンセンサス配列が挙げられる。一実施形態では、重鎖フレームワークは、IgG1またはIgG2フレームワークである。
【0214】
いくつかの実施形態では、本発明のTGFβモジュレーターは、表1に示す重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗TGFβ抗原結合剤は、単一ドメイン重鎖のみ抗体(例えば、免疫グロブリン軽鎖を含まない抗原結合剤)である。
【0215】
in vivo治療または診断用途のための抗体断片は、それらの血清半減期を改善する修飾から恩恵を受けることができる。抗体のin vivo血清半減期の増加が意図される好適な有機部分としては、親水性ポリマー基(例えば、直鎖もしくは分岐ポリマー(例えば、ポリアルカングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、モノメトキシポリエチレングリコールなど)、炭水化物(例えば、デキストラン、セルロース、多糖類など)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリリジン、ポリアスパラギン酸など)、ポリアルカンオキシド及びポリビニルピロリドン)、脂肪酸基(例えば、モノカルボン酸もしくはジカルボン酸)、脂肪酸エステル基、脂質基(例えば、ジアシルグリセロール基、スフィンゴ脂質基(例えば、セラミジル))またはリン脂質基(例えば、ホスファチジルエタノールアミン基)から選択される1つ、2つまたはそれを超える直鎖または分岐鎖部分が挙げられ得る。好ましくは、有機部分によって、得られる免疫複合体の機能が非複合化抗体部分と比較して損なわれない(例えば、抗原結合親和性を低下させない)所定の部位に、有機部分を結合させる。有機部分は、約500Da~約50,000Da、好ましくは約2000、5000、10,000、または20,000Daの分子量を有し得る。ポリペプチド、例えば、抗体を有機部分で修飾するための例及び方法は、例えば、米国特許第4,179,337号及び同第5,612,460号、PCT公開第WO95/06058号及び同第WO00/26256号、ならびに米国特許出願公開第20030026805号に見出され得る。
【0216】
TGFβR細胞外ドメイン
本明細書に記載の免疫調節系での使用が企図されるTGF-β受容体は、アクチビン様キナーゼファミリー(ALK)、骨形成タンパク質(BMP)ファミリー、結節性ファミリー、増殖分化因子ファミリー(GDF)、ならびに受容体のTGF-β受容体ファミリー由来のものを含む任意のTGF-β受容体であり得る。TGF-β受容体は、細胞内の様々な増殖及び分化経路に影響を与えるセリン/スレオニンキナーゼ受容体である。いくつかの実施形態では、TGFβシグナル伝達モジュレーターは、TGFβ受容体(例えば、TGFβR1、TGFβR2)の改変された組換え細胞外ドメイン(ECD)である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫調節系に有用なTGF-β受容体は、II型TGF-β受容体(例えば、TGF-βR2)である。
【0217】
いくつかの実施形態では、TGFβモジュレーターは、表2に示すTGFβRを含む。いくつかの実施形態では、TGFβモジュレーターは、表2に示す配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一の配列を含む。
【0218】
【0219】
【0220】
キメラ抗原受容体
いくつかの態様では、本発明は、TGF-βシグナル伝達モジュレーター(例えば、TGF-βシグナル伝達を調節するポリペプチド、またはTGF-βシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードする核酸配列)及び目的の抗原に結合することができるキメラ抗原受容体(CAR)を含む免疫調節系を提供する。CARは、3つの必須ユニット:(1)細胞外抗原結合モチーフ、(2)連結/膜貫通モチーフ、及び(3)細胞内T細胞シグナル伝達モチーフを含むハイブリッド分子である(Long A H,Haso W M,Orentas R J.Lessons learned from a highly-active CD22-specific chimeric antigen receptor.Oncoimmunology.2013;2(4):e23621 いくつかの実施形態では、本発明のCARは、N末端からC末端に向かって、シグナルペプチドまたはリーダーペプチド、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び/またはヒンジドメイン、共刺激ドメイン、ならびに細胞内ドメインを含む。いくつかの実施形態では、CARは「第1世代CAR」であり、これには、例えば、抗原結合時にCD3ζシグナルのみを提供するCARが含まれ、「第2世代」CARには、共刺激(例えば、CD28またはCD137)及び活性化(CD3ζ)の両方を提供するCARが含まれる。「第3世代」CARには、複数の共刺激(CD28及びCD137)ならびに活性化(CD3)を提供するCARが含まれる。様々な実施形態において、CARは、抗原に対して高い親和性または結合活性を有するように選択される。
【0221】
CARの抗原結合モチーフは一般に、単鎖可変断片(ScFv)、すなわち、免疫グロブリン(Ig)分子の最小結合ドメインまたは単一ドメイン抗体の後に形成される(例えば、WO2018/028647A1)。受容体リガンド(すなわち、IL-13が腫瘍発現IL-13受容体と結合するように設計されている)、インタクトな免疫受容体、ライブラリ由来のペプチド、及び自然免疫系エフェクター分子(NKG2Dなど)などの代替抗原結合モチーフも設計されている。CAR発現のための代替の細胞標的(NK細胞またはγδT細胞など)も開発中である(Brown C E et al. Clin Cancer Res.2012;18(8):2199-209;Lehner M et al. PLoS One.2012;7(2):e31210)。
【0222】
いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは単鎖可変断片である。いくつかの実施形態では、CARの抗原結合ドメインは単鎖ドメイン抗体である。いくつかの実施形態では、CARは、N末端からC末端に向かって、シグナルまたはリーダーペプチド、vH、CD28膜貫通及びヒンジ、CD28共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞内ドメインを含む。
【0223】
CARの連結モチーフは、IgGの定常ドメインなどの比較的安定した構造ドメインとするか、または拡張された柔軟なリンカーとなるように設計することができる。構造モチーフ、例えば、IgG定常ドメインに由来する構造モチーフを使用して、T細胞原形質膜表面から離れるようにScFv結合ドメインを拡張することができる。これは、結合ドメインが腫瘍細胞表面膜に特に近接している一部の腫瘍標的にとって重要な場合がある(ジシアロガングリオシドGD2に対するものなど、Orentas et al.、未発表の観察結果)。今日まで、CARに使用されるシグナル伝達モチーフが常にCD3-ζ鎖を含むのは、そのコアモチーフがT細胞活性化の重要なシグナルだからである。最初に報告された第2世代CARは、CD28シグナル伝達ドメイン及びCD28膜貫通配列を特徴としていた。このモチーフは、CD137(4-1BB)シグナル伝達モチーフを含有する第3世代CARでも同様に使用された(Zhao Y et al.J Immunol.2009;183(9):5563-74)。新規技術の出現によって、抗CD3及び抗CD28抗体に連結したビーズによるT細胞の活性化、ならびにCD28からの古典的な「シグナル2」の存在は、もはやCAR自体によってコードされる必要がなくなった。ビーズ活性化を使用した場合、in vitroアッセイでは第3世代ベクターが第2世代ベクターよりも優れていなかったことが判明し、それらは白血病のマウスモデルでは第2世代ベクターよりも明らかな利益はなかった(Haso W,Lee D W,Shah N N,Stetler-Stevenson M,Yuan C M,Pastan I H,Dimitrov D S,Morgan R A,FitzGerald D J,Barrett D M,Wayne A S,Mackall C L,Orentas R J.Anti-CD22-chimeric antigen receptors targeting B cell precursor acute lymphoblastic leukemia,Blood.2013;121(7):1165-74、Kochenderfer J N et al.Blood.2012;119(12):2709-20)。これは、第2世代CD28/CD3-ζ(Lee D W et al.American Society of Hematology Annual Meeting.New Orleans,La.;Dec.7-10,2013)及びCD137/CD3-ζシグナル伝達型(Porter D L et al.N Engl J Med.2011;365(8):725-33)におけるCD19特異的CARの臨床的成功によって裏付けられている。CD137に加えて、OX40などの他の腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバーも、CAR形質導入T細胞において重要な持続シグナルを提供できる(Yvon E et al.Clin Cancer Res.2009;15(18):5852-60)。同様に重要なのは、CAR T細胞集団を培養した培養条件である。
【0224】
CARの特徴としては、T細胞の特異性及び反応性をMHCに拘束されない手法で選択された標的に再誘導するそれらの能力、ならびにモノクローナル抗体の抗原結合特性を利用することが挙げられる。非MHC拘束性の抗原認識により、抗原プロセシングに依存しない抗原認識能力が、CARを発現するT細胞に付与されるため、腫瘍エスケープの主要な機構が回避される。さらに、T細胞において発現する場合、CARは、利点として、内在性T細胞受容体(TCR)のα鎖及びβ鎖と二量体化することがない。
【0225】
細胞外ドメイン
本明細書に記載されるように、CARは、別の方法では抗原結合ドメインまたは部分と称される標的特異的結合エレメントを含む。ドメインの選択は、リガンドの種類及び数によって異なり、これにより、標的細胞の表面が規定される。例えば、抗原結合ドメインを、特定の疾患状態(例えば、がん)と関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンド(例えば、がん抗原)を認識するように選択してもよい。したがって、CARの抗原結合ドメインに対するリガンドとして作用し得る細胞表面マーカーの例としては、ウイルス、細菌、及び寄生虫の感染、自己免疫疾患ならびにがん細胞と関連するCARが挙げられる。
【0226】
いくつかの実施形態では、CARの細胞外ドメインは、がん抗原に特異的に結合する抗原結合剤を含む。特定の実施形態では、CARは、腫瘍抗原に結合する。任意の腫瘍抗原(抗原ペプチド)を、本明細書に記載の腫瘍関連の実施形態において使用することができる。抗原の供給源には、がんタンパク質が含まれるが、これに限定されない。抗原は、ペプチドとして、またはインタクトなタンパク質もしくはその一部として発現させることができる。インタクトなタンパク質またはその一部は、天然の、または突然変異誘発されたものであり得る。腫瘍抗原の非限定的な例としては、炭酸脱水酵素IX(CA1X)、がん胎児性抗原(CEA)、CD8、CD7、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CLL1、CD34、CD38、CD41、CD44、CD49f、CD56、CD74、CD133、CD138、CD123、CD44V6、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原(例えば、細胞表面抗原)、上皮糖タンパク質-2(EGP-2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、受容体チロシンプロテインキナーゼerb-B2,3,4(erb-B2,3,4)、葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児性アセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、グアニリルシクラーゼC(GCC)、ヒト上皮成長因子受容体2(ITER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、インターロイキン13受容体サブユニットα-2(IL-13Rcx2)、k-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1CAM)、黒色腫抗原ファミリーA,1(MAGE-A1)、ムチン16(MUC16)、ムチン1(MUC1)、メソセリン(MSLN)、ERBB2、MAGEA3、p53、MART1、GP100、プロテイナーゼ3(PR1)、チロシナーゼ、サバイビン、hTERT、EphA2、NKG2Dリガンド、がん精巣抗原NY-ES0-1、がん胎児性抗原(h5T4)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、PTK7 ROR1、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、及びウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、BCMA、NKCS1、EGF1R、EGFR-VIII、CD99、CD70、ADGRE2、CCR1、LILRB2、PRAME CCR4、CD5、CD3、TRBC1、TRBC2、TIM-3、インテグリンB7、ICAM-I、CD70、Tim3、CLEC12A、及びERBBが挙げられる。
【0227】
特定の実施形態では、CARは、CD19ポリペプチドに結合する。特定の実施形態では、CARは、ヒトCD19ポリペプチドに結合する。特定の実施形態では、CARは、CD19タンパク質の細胞外ドメインに結合する。特定の実施形態では、CD19 CARは、表3に示す配列を含む。
【0228】
特定の実施形態では、CARは、GCCポリペプチドに結合する。特定の実施形態では、CARは、ヒトGCCポリペプチドに結合する。特定の実施形態では、CARは、GCCタンパク質の細胞外ドメインに結合する。特定の実施形態では、抗GCC CARは、表3に示す配列を含む。
【0229】
特定の実施形態では、CARは、メソセリンポリペプチドに結合する。特定の実施形態では、CARは、ヒトメソセリンポリペプチドに結合する。特定の実施形態では、CARは、メソセリンタンパク質の細胞外ドメインに結合する。
【0230】
特定の実施形態では、CARは、例えば免疫不全の対象における病原体感染または他の感染症の治療及び/または予防に使用するために、病原体抗原に結合する。病原体の非限定的な例としては、疾患を引き起こす可能性のあるウイルス、細菌、真菌、寄生虫、及び原生動物が挙げられる。
【0231】
ウイルスの非限定的な例としては、レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス、例えば、HIV-1(HDTV-III、LAVE、もしくはHTLV-IIELAV、またはHIV-IIIとも呼ばれる)、及びHIV-LPなどの他の分離株、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス)、カルシウイルス科(例えば、胃腸炎を引き起こす株)、トガウイルス科(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス)、フラビウイルス科(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス)、コロノウイルス科(例えば、コロナウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス)、フィロウイルス科(例えば、エボラウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、パラインフルエンザウイルス、おたふく風邪ウイルス、麻疹ウイルス、RSウイルス)、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)、ブンガウイルス科(例えば、ハンターンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス、及びナイラウイルス)、アリーナウイルス科(出血熱ウイルス)、レオウイルス科(例えば、レオウイルス、オービウイルス、及びロタウイルス)、ビルナウイルス科ヘパドナウイルス科(B型肝炎ウイルス)、パルボウイルス科(パルボウイルス)、パポーバウイルス科(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス)、アデノウイルス科(ほとんどのアデノウイルス)、ヘルペスウイルス科(単純ヘルペスウイルス(HSV)1及び2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス科(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス)、及びイリドウイルス科(例えば、アフリカブタコレラウイルス)、ならびに未分類ウイルス(例えば、D型肝炎の病原体(B型肝炎ウイルスの欠陥サテライトであると考えられている)、非A型非B型肝炎の病原体(クラス1=体内感染、クラス2=非経口感染(すなわちC型肝炎))、ノーウォークウイルス及び関連ウイルス、ならびにアストロウイルス)が挙げられる。
【0232】
細菌の非限定的な例としては、Pasteur ella、Staphylococci、Streptococcus、Escherichia coli、Pseudomonas種、及びSalmonella種が挙げられる。感染性細菌の具体例としては、Helicobacter pyloris、Borelia burgdorferi、Legionella pneumophilia、Mycobacteria種(例えば、M.tuberculosis、M.avium、M.intracellulare、M.kansaii、M.gordonae)、Staphylococcus aureus、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Listeria monocytogenes、Streptococcus pyogenes(A群Streptococcus)、Streptococcus agalactiae(B群Streptococcus)、Streptococcus(viridans群)、Streptococcus faecalis、Streptococcus bovis、Streptococcus(anaerobic種)、Streptococcus pneumoniae、pathogenic Campylobacter種、Enterococcus種、Haemophilus influenzae、Bacillus antracis、corynebacterium diphtheriae、corynebacterium種、Erysipelothrix rhusiopathiae、Clostridium perfringers、Clostridium tetani、Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Pasturella multocida、Bacteroides種、Fusobacterium nucleatum、Streptobacillus moniliformis、Treponema palladium、Treponema pertenue、Leptospira、Rickettsia、及びActinomyces israeliiが挙げられるが、これらに限定されない。
【0233】
特定の実施形態では、病原体抗原は、サイトメガロウイルス(CMV)に存在するウイルス抗原、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に存在するウイルス抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に存在するウイルス抗原、またはインフルエンザウイルスに存在するウイルス抗原である。
【0234】
特定の実施形態では、CARの細胞外ドメインは、リンカーを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGS(配列番号59)を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、(GGGGS)n(配列番号59)を含み、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である。いくつかの実施形態では、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号61)を含む。
【0235】
いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、IgA抗体、IgG抗体、IgE抗体、IgM抗体、二重または多重特異性抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片、単離CDRまたはそれらのセット、単鎖可変断片(scFv)、ポリペプチド-Fc融合体、単一ドメイン抗体(sdAb)、ラクダ抗体、マスク抗体、Small Modular ImmunoPharmaceuticals(「SMIPs(商標)」)、単鎖、タンデムダイアボディ、VHH、Anticalin、ナノボディ、humabody、ミニボディ、BiTE、アンキリンリピートタンパク質、DARPIN、アビマー、DART、TCR様抗体、Adnectin、Affilin、トランスボディ、Affibody、TrimerX、マイクロタンパク質、Fynomer、センチリン、及びKALBITOR、またはそれらの断片を含む。
【0236】
いくつかの実施形態では、CARの細胞外抗原結合ドメインは、単鎖可変断片(scFv)を含む。いくつかの実施形態では、CARの細胞外抗原結合ドメインは、単一ドメイン抗体(sdAb)を含む。いくつかの実施形態では、単一ドメイン抗体(sdAb)、
【0237】
膜貫通ドメイン
本明細書に記載されるように、CARは、膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインに関して、CARは、CARの細胞外抗原結合ドメインに融合した1つ以上の膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、天然源または合成源のいずれかに由来し得る。供給源が天然の場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来し得る。
【0238】
本明細書に記載されるCARにおける特定の用途の膜貫通領域は、T細胞受容体のα鎖、β鎖、またはζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、メソテリン、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154に由来し得る(すなわち、少なくともその膜貫通領域(複数可)を含む)。あるいは、膜貫通ドメインは合成によるものであってもよく、その場合、それは主にロイシン及びバリンなどの疎水性残基を含む。いくつかの実施形態では、フェニルアラニン、トリプトファン、及びバリンのトリプレットが、合成膜貫通ドメインの各末端に見出される。任意選択で、好ましくは2~10アミノ酸長の短いオリゴまたはポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間に結合を形成する場合がある。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-セリン二重リンカーまたは三重アラニンリンカーである。
【0239】
いくつかの実施形態では、上記の膜貫通ドメインに加えて、CARのドメインのうちの1つと天然に会合する膜貫通ドメインを使用する。いくつかの実施形態では、そのようなドメインと、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインとの結合を避けて、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限に抑えるために、膜貫通ドメインをアミノ酸置換によって選択することができる。
【0240】
いくつかの実施形態では、本発明のCARの膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。いくつかの実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号42)の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、CD28膜貫通ドメインは、配列番号42のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号42のアミノ酸配列の少なくとも1、2、もしくは3個の修飾(例えば、置換)、ただし20、10、もしくは5個以下の修飾(例えば、置換)を有する配列、または配列番号42のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有する配列を含む。
【0241】
CARでは、ヒンジドメインとも称されるスペーサードメインが、細胞外ドメインと膜貫通ドメインとの間、または細胞内ドメインと膜貫通ドメインとの間に配置され得る。スペーサードメインは、膜貫通ドメインを細胞外ドメインと、及び/または膜貫通ドメインを細胞内ドメインと連結するように機能する任意のオリゴペプチドまたはポリペプチドを意味する。スペーサードメインは、最大で300アミノ酸、好ましくは10~100アミノ酸、最も好ましくは25~50アミノ酸を含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、リンカーは、存在する場合、エフェクター分子または検出可能マーカーと抗体または抗原結合断片との間の距離が増加するように、リンカーのサイズを増加させるスペーサーエレメントを含み得る。例示的なスペーサーは当業者に公知であり、それらとしては、米国特許第7,964,566号、同第7,498,298号、同第6,884,869号、同第6,323,315号、同第6,239,104号、同第6,034,065号、同第5,780,588号、同第5,665,860号、同第5,663,149号、同第5,635,483号、同第5,599,902号、同第5,554,725号、同第5,530,097号、同第5,521,284号、同第5,504,191号、同第5,410,024号、同第5,138,036号、同第5,076,973号、同第4,986,988号、同第4,978,744号、同第4,879,278号、同第4,816,444号、及び同第4,486,414号に加えて、米国特許公開第20110212088号及び同第20110070248号(その各々の全体が参照により本明細書に援用される)に列挙されるものが挙げられる。
【0243】
スペーサードメインは、CARと抗原との結合を促進し、細胞内へのシグナル伝達を増強する配列を有することが好ましい。結合を促進することが期待されるアミノ酸の例としては、荷電アミノ酸であるシステイン、ならびに潜在的なグリコシル化部位のセリン及びスレオニンが挙げられ、これらのアミノ酸は、スペーサードメインを構成するアミノ酸として使用され得る。
【0244】
いくつかの実施形態では、CARは、ヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKP(配列番号41)の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号41のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号41のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの修飾(例えば、置換)を有するが、20、10もしくは5つ以下の修飾(例えば、置換)を有する配列または配列番号41のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0245】
いくつかの実施形態では、ヒンジドメインと膜貫通ドメインは、同じ分子に由来する。他の実施形態では、ヒンジドメイン及び膜貫通ドメインは、異なる分子に由来する(例えば、CD28に融合したCD8)。いくつかの実施形態では、CARは、ヒンジドメインを含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、IEVMYPPPYLDNEKSNGTIIHVKGKHLCPSPLFPGPSKPFWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV(配列番号43)の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号43のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ヒンジドメインは、配列番号43のアミノ酸配列の少なくとも1、2、または3個の修飾(例えば、置換)、ただし20、10、または5個以下の修飾(例えば、置換)を有する配列を含む。
【0246】
細胞内ドメイン
CARの細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、CARが配置されている免疫細胞の正常なエフェクター機能のうち少なくとも1つの活性化に関与する。用語「エフェクター機能」とは、細胞の特殊化した機能を指す。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。したがって、用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、エフェクター機能シグナルを伝達し、特殊化した機能を細胞に実施するように促すタンパク質の一部を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体が用いられ得るが、多くの場合に鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮部分を使用する限り、それがエフェクター機能シグナルを伝達する限り、そのような短縮部分をインタクトな鎖の代わりに使用してもよい。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の短縮部分を含むことを意味する。
【0247】
CARに使用するための細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、抗原受容体の結合後、シグナル伝達を開始するように協働して作用するT細胞受容体(TCR)及び共受容体の細胞質配列に加えて、同じ機能的能力を有する、それらの配列及び任意の合成配列の任意の誘導体またはバリアントが挙げられる。TCRのみによって生成されるシグナルは、T細胞の完全な活性化には不十分であり、二次または共刺激シグナルも必要である。したがって、T細胞活性化は、2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列:すなわち、TCRによって抗原依存性一次活性化を開始する配列(一次細胞質シグナル伝達配列)及び抗原非依存的手法で作用し、二次または共刺激シグナルを提供する配列(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されると言うことができる。
【0248】
一次細胞質シグナル伝達配列は、刺激的様式、または阻害的様式のいずれかでTCR複合体の一次活性化を制御する。刺激的様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容活性化チロシンモチーフ、すなわちITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有する場合がある。本明細書に開示されるCARにおいて特定の用途を有するITAM含有一次細胞質シグナル伝達配列の例としては、TCRζ(CD3ζ)、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dに由来するものが挙げられる。ITAMの特定の非限定的な例としては、CD3.ζ.(NCBI RefSeq:NP.sub.--932170.1)のアミノ酸番号51~164、Fc.ε.RI.γ.(NCBI RefSeq:NP.sub.--004097.1)のアミノ酸番号45~86、Fc.ε.RI.β.(NCBI RefSeq:NP.sub.--000130.1)のアミノ酸番号201~244、CD3.γ.(NCBI RefSeq:NP.sub.--000064.1)のアミノ酸番号139~182、CD3.δ.(NCBI RefSeq:NP.sub.--000723.1)のアミノ酸番号128~171、CD3.ε.(NCBI RefSeq:NP.sub.--000724.1)のアミノ酸番号153~207、CD5(NCBI RefSeq:NP.sub.--055022.2)のアミノ酸番号402~495、0022(NCBI RefSeq:NP.sub.--001762.2)のアミノ酸番号707~847、CD79a(NCBI RefSeq:NP.sub.--001774.1)のアミノ酸番号166~226、CD79b(NCBI RefSeq:NP.sub.--000617.1)のアミノ酸番号182~229、及びCD66d(NCBI RefSeq:NP.sub.--001806.2)のアミノ酸番号177~252の配列を有するペプチド、ならびにこれらのペプチドが有するものと同じ機能を有するそれらのバリアントが挙げられる。本明細書に記載されるNCBI RefSeq IDまたはGenBankのアミノ酸配列情報に基づくアミノ酸番号は、各タンパク質の前駆体(シグナルペプチド配列などを含む)の全長に基づいて番号付けされる。一実施形態では、CAR内の細胞質シグナル伝達分子は、CD3ζに由来する細胞質シグナル伝達配列を含む。
【0249】
いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを単独で、またはCARとの関連において有用な任意の他の、所望の細胞質ドメイン(複数可)と組み合わせて含むように設計され得る。例えば、CARの細胞内ドメインは、CD3ζ鎖部分及び共刺激シグナル伝達領域を含み得る。共刺激シグナル伝達領域は、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部を指す。共刺激分子は、抗原に対するリンパ球の効率的な応答に必要な抗原受容体またはそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。そのような共刺激分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83と特異的に結合するリガンドなどが挙げられる。そのような共刺激分子の特定の非限定的な例としては、CD2(NCBI RefSeq:NP.sub.--001758.2)のアミノ酸番号236~351、CD4(NCBI RefSeq:NP.sub.--000607.1)のアミノ酸番号421~458、CD5(NCBI RefSeq:NP.sub.--055022.2)のアミノ酸番号402~495、CD8.α.(NCBI RefSeq:NP.sub.--001759.3)のアミノ酸番号207~235、CD83(GenBank:AAA35664.1)のアミノ酸番号196~210、CD28(NCBI RefSeq:NP.sub.--006130.1)のアミノ酸番号181~220、CD137(4-1BB、NCBI RefSeq:NP.sub.--001552.2)のアミノ酸番号214~255、CD134(OX40、NCBI RefSeq:NP.sub.--003318.1)のアミノ酸番号241~277、及びICOS(NCBI RefSeq:NP.sub.--036224.1)のアミノ酸番号166~199の配列を有するペプチド、ならびにこれらのペプチドが有するものと同じ機能を有するそれらのバリアントが挙げられる。したがって、本明細書の開示は、共刺激シグナル伝達エレメントとして主に4-1BBによって例示されるが、他の共刺激エレメントも本開示の範囲内である。
【0250】
CARの細胞質シグナル伝達部分内の細胞質シグナル伝達配列は、ランダムまたは特定の順序で互いに連結させてよい。任意選択で、好ましくは2~10アミノ酸長の短いオリゴまたはポリペプチドリンカーが、結合を形成する場合がある。いくつかの実施形態では、リンカーは、グリシン-セリン二重リンカーまたは三重アラニンリンカーである。
【0251】
いくつかの実施形態では、細胞内ドメインを、CD28共刺激シグナル伝達ドメインを含むように設計する。いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメインは、RSKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRS(配列番号44)と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0252】
いくつかの実施形態では、細胞内ドメインを、CD3ζのシグナル伝達ドメイン及びCD28のシグナル伝達ドメインを含むように設計する。
【0253】
いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、1つ以上の改変された免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有するCD3ζを含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、「1XX」と命名された、3つの免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)のうちの1番目に非改変型ITAM、ならびに2番目及び3番目に改変されたITAMを有するCD3ζを含む。いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメインは、RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLFNELQKDKMAEAFSEIGMKGERRRGKGHDGLFQGLSTATKDTFDALHMQALPPR(配列番号45)と少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0254】
いくつかの実施形態では、CARは、天然ITAM1、天然BRS1、天然BRS2、天然BRS3、2つの機能喪失変異を有するITAM2バリアント、及び2つの機能喪失変異を有するITAM3バリアントを含む修飾CD3zポリペプチド(例えば、修飾ヒトCD3zポリペプチド)、ならびにCD28ポリペプチド(例えば、ヒトCD28ポリペプチド)を含む共刺激シグナル伝達領域を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0255】
別の実施形態では、細胞内ドメインを、CD3ζのシグナル伝達ドメイン及び4-1BBのシグナル伝達ドメインを含むように設計する。さらに別の実施形態では、細胞内ドメインを、CD3ζのシグナル伝達ドメインならびにCD28及び4-1BBのシグナル伝達ドメインを含むように設計する。
【0256】
いくつかの実施形態では、CARの細胞内ドメインを、4-1BBのシグナル伝達ドメイン及びCD3ζのシグナル伝達ドメインを含むように設計する。
【0257】
いくつかの実施形態では、CARは、表3に示すアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
CARの機能的特徴
本明細書に開示されるCARの機能部分もまた、本発明の範囲内に明示的に含まれる。用語「機能部分」とは、CARに関連して使用される場合、本明細書に開示されるCARのうちの1つ以上の任意の部分または断片を指し、その部分または断片は、それが一部となっているCAR(親CAR)の生物活性を保持している。機能部分は、例えば、親CARと同様の程度、同程度、またはより高い程度で標的細胞を認識するか、または疾患を検出、治療、もしくは予防する能力を保持するCARの部分を包含する。親CARに関連して、機能部分は、例えば、親CARの約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%、またはそれ以上を含み得る。
【0264】
機能部分は、その部分のアミノ末端もしくはカルボキシ末端、または両方の末端に追加のアミノ酸を含み得、その追加のアミノ酸は、親CARのアミノ酸配列には認められないアミノ酸である。望ましくは、追加のアミノ酸は、機能部分の生物学的機能、例えば、標的細胞の認識、がんの検出、がんの治療または予防などを妨害しない。より望ましくは、追加のアミノ酸は、親CARの生物活性と比較した場合に、生物活性を増強する。
【0265】
本明細書に開示されるCARの機能的バリアントは、本開示の範囲内に含まれる。用語「機能的バリアント」とは、本明細書で使用される場合、親CARと実質的または有意な配列同一性または類似性を有するCAR、ポリペプチド、またはタンパク質を指し、その機能的バリアントは、そのバリアントであるCARの生物活性を保持している。機能的バリアントは、例えば、親CARと同様の程度、同程度、またはより高い程度で標的細胞を認識する能力を保持する、本明細書に記載されるCAR(親CAR)のバリアントを包含する。親CARに関連して、機能的バリアントは、例えば、アミノ酸配列において親CARと少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、98%、またはそれ以上同一であり得る。
【0266】
機能的バリアントは、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する親CARのアミノ酸配列を含み得る。あるいはまたはさらに、機能的バリアントは、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する親CARのアミノ酸配列を含み得る。その場合、非保存的アミノ酸置換は、機能的バリアントの生物活性を妨害または阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は、機能的バリアントの生物活性を増強する場合があり、それにより、機能的バリアントの生物活性は、親CARと比較して増加する。
【0267】
CARのアミノ酸置換は、好ましくは保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は当技術分野で公知であり、これには、特定の物理的及び/または化学的特性を有する1つのアミノ酸を、同じまたは類似した化学的または物理的特性を有する別のアミノ酸に交換するアミノ酸置換が含まれる。例えば、保存的アミノ酸置換は、別の酸性/負荷電極性アミノ酸と置換される酸性/負荷電極性アミノ酸(例えば、AspまたはGlu)、非極性側鎖を有する別のアミノ酸と置換される非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、He、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Valなど)、別の塩基性/正荷電極性アミノ酸と置換される塩基性/正荷電極性アミノ酸(例えば、Lys、His、Argなど)、極性側鎖を有する別の非荷電アミノ酸と置換される極性側鎖を有する非荷電アミノ酸(例えば、Asn、Gin、Ser、Thr、Tyrなど)、β分岐側鎖を有する別のアミノ酸と置換されるβ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、He、Thr、及びVal)、芳香族側鎖を有する別のアミノ酸と置換される芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、His、Phe、Trp、及びTyr)などであり得る。
【0268】
CARは、他の構成要素、例えば、他のアミノ酸が機能的バリアントの生物活性を実質的に変化させないように、特定のアミノ酸配列または本明細書に記載される配列から本質的になり得る。
【0269】
CAR(機能部分及び機能的バリアントを含む)は、CAR(またはその機能部分もしくは機能的バリアント)が、それらの生物活性、例えば、抗原に特異的に結合する能力、哺乳類における疾患細胞の検出能力、または哺乳類における疾患の治療もしくは予防能力などが保持されている限り、任意の長さであり得、すなわち、任意の数のアミノ酸を含み得る。例えば、CARは、約50~約5000アミノ酸長、例えば、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、またはそれ以上のアミノ酸長であり得る。
【0270】
CAR(本発明の機能部分及び機能的バリアントを含む)は、1つ以上の天然に存在するアミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含み得る。そのような合成アミノ酸は当技術分野で公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、trans-3-及びtrans-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリンβ-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、a-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オミチン、-アミノシクロペンタンカルボン酸、a-アミノシクロヘキサンカルボン酸、a-アミノシクロヘプタンカルボン酸、a-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、γ-ジアミノ酪酸、β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、ならびにa-tert-ブチルグリシンが挙げられる。
【0271】
CAR(機能部分及び機能的バリアントを含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、例えば、ジスルフィド架橋による環化、あるいは酸付加塩に変換及び/または任意選択で二量体化もしくは重合化、または複合化され得る。
【0272】
置換及びバリアント
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードする核酸配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。そのような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内における残基からの欠失、及び/または残基への挿入、及び/または残基の置換が挙げられる。最終構築物が所望の特性、例えば、抗原結合を有する限りにおいて、最終構築物に到達するために欠失、挿入、及び置換の任意の組合せを行うことができる。
【0273】
a)置換、挿入、及び欠失バリアント
いくつかの実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントを提供する。置換変異誘発の目的の部位としては、HVR及びFRが挙げられる。アミノ酸側鎖のクラスに関して、以下にさらに記載する。目的の抗体内にアミノ酸置換を導入し、その生成物を、所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の減少、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングしてもよい。
【0274】
アミノ酸を、共通の側鎖特性に従って分類してもよい:
【0275】
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
【0276】
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
【0277】
(3)酸性:Asp、Glu、
【0278】
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
【0279】
(5)鎖配向に影響を与える残基:Gly、Pro、
【0280】
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0281】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0282】
ある種類の置換型変異形は、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。一般に、さらなる研究のために選択される、得られるバリアント(複数可)は、親抗体と比較して特定の生物学的特性に改変(例えば、改善)(例えば、親和性の増加、免疫原性の低下)を有し、及び/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持している。例示的な置換バリアントは親和性成熟抗体であり、例えば、ファージディスプレイに基づく親和性成熟技術、例えば、本明細書に記載されるものなどを使用して簡便に生成され得る。簡潔に述べると、1つ以上のHVR残基を変異させて、バリアント抗体がファージ上に提示させ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。
【0283】
例えば、抗体親和性を改善するために、HVRにおいて改変(例えば、置換)を行ってもよい。そのような改変を、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異するコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008)を参照のこと)、及び/またはSDR(a-CDR)において実施し、得られたバリアントVHまたはVLを、結合親和性について試験してもよい。二次ライブラリの構築及びそこからの再選択による親和性成熟は、例えば、Hoogenboom et al.のMethods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、チェーンシャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指定変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子中に多様性を導入する。次いで、二次ライブラリを作製する。次いで、ライブラリをスクリーニングし、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6つの残基)を無作為化するHVR特異的アプローチを伴う。例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、抗原結合に関与するHVR残基を特異的に同定してもよい。多くの場合、特にCDR-H3及びCDR-L3が標的とされる。
【0284】
いくつかの実施形態では、置換、挿入、または欠失を、そのような改変が抗原と結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つ以上のHVR内で行ってもよい。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)を、HVRにおいて行ってもよい。そのような改変は、HVR「ホットスポット」またはCDRの外側であってもよい。上記のバリアントVHH配列のいくつかの実施形態では、各HVRは、非改変であるか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を有するかのいずれかである。
【0285】
変異誘発のために標的とされ得る、抗体の残基または領域の有用な同定方法は、Cunningham and Wells(1989)Science,244:1081-1085によって記載されるような、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれている。本方法では、標的残基の残基または群(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)を同定して、中性または負荷電アミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)で置換し、抗体と抗原との相互作用に影響を及ぼすかどうかを判定する。最初の置換に対して機能感受性を示すアミノ酸位置に、さらなる置換を導入してもよい。あるいは、またはさらに、抗体と抗原との間の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び隣接残基を、置換の候補として標的とするか、または排除してもよい。バリアントをスクリーニングして、それらが所望の特性を有するかどうかを判定してもよい。
【0286】
アミノ酸配列の挿入には、アミノ末端及び/またはカルボキシル末端への1残基~100残基以上を含有するポリペプチドの長さの範囲の融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、抗体のN末端もしくはC末端と酵素との融合体(例えば、ADEPTのための)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドとの融合体が挙げられる。
【0287】
b)グリコシル化バリアント
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体を、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように改変する。抗体に対するグリコシル化部位の付加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が作製または除去されるようにアミノ酸配列を変化させることによって簡便に行ってもよい。
【0288】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合する炭水化物を改変してもよい。哺乳類細胞によって産生される天然抗体は、通常、一般にFc領域のCH2ドメインのAsn297にN結合によって結合する、分岐した二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright et al.TIBTECH 15:26-32(1997)を参照のこと。オリゴ糖としては、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸に加えて、二分岐オリゴ糖構造の「幹」においてGlcNAcに結合するフコースが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作製するために、本出願の抗体中のオリゴ糖の修飾を行ってもよい。
【0289】
いくつかの実施形態では、Fc領域に結合する(直接的または間接的に)フコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントを提供する。例えば、そのような抗体のフコース量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であってよい。フコース量は、例えば、WO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分析法によって測定する場合、Asn297に結合するすべての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)の合計と比較した、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体における軽微な配列多様性に起因して、297位から約±3アミノ酸だけ上流または下流に、すなわち、294~300位の間に位置する場合もある。そのようなフコシル化バリアントは、改善したADCC機能を有し得る。例えば、米国特許公開第US2003/0157108号(Presta,L.)、同第US2004/0093621号(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関連する刊行物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004)、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生できる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化を欠いているLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986)、米国特許出願第US2003/0157108A1号、Presta,L、及びWO2004/056312A1、Adams et al.)、ならびにノックアウト細胞株、例えば、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、すなわち、FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)、Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006)、及びWO2003/085107を参照のこと)などが挙げられる。
【0290】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分されている二分オリゴ糖を有する抗体バリアントをさらに提供する。そのような抗体バリアントは、減少したフコシル化及び/または改善したADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.)、米国特許第6,602,684号(Umana et al.)、及びUS2005/0123546(Umana et al.)に記載されている。Fc領域に結合するオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供する。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、例えば、WO1997/30087(Patel et al.)、WO1998/58964(Raju,S.)、及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0291】
CAR(その機能部分及び機能的バリアントを含む)は、当技術分野で公知の方法によって取得することができる。CARは、ポリペプチドまたはタンパク質を作製する任意の好適な方法によって作製され得る。ポリペプチド及びタンパク質を新規合成する好適な方法は、参考文献、例えば、Chan et al.,Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2000、Peptide and Protein Drug Analysis,ed.Reid,R.,Marcel Dekker,Inc.,2000、Epitope Mapping,ed.Westwood et al.,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2001、及び米国特許第5,449,752号などに記載されている。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組換え方法を使用し、本明細書に記載される核酸を使用して組換え産生され得る。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.2001、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley&Sons,NY,1994を参照のこと。さらに、CAR(その機能部分及び機能的バリアントを含む)の一部は、供給源、例えば、植物、細菌、昆虫、哺乳類、例えば、ラット、ヒトなどから単離及び/または精製され得る。単離及び精製の方法は、当技術分野において周知である。あるいは、本明細書に記載されるCAR(その機能部分及び機能的バリアントを含む)は、企業によって商業的に合成され得る。この点に関して、CARは、合成、組換え、単離、及び/または精製され得る。
【0292】
検出可能なマーカー及びタグ
本明細書に開示される抗原の1つ以上に特異的なCAR、CARを発現するT細胞、モノクローナル抗体、その抗原結合断片は、タグタンパク質と共に発現(例えば、共発現)させることができる。いくつかの実施形態では、フューリン認識部位及び下流の2Aリボソーム配列を、タグ配列とCAR配列の同時バイシストロニック発現のために設計する。いくつかの実施形態では、2A配列は、GSGATNFSLLKQAGDVEENPGP 配列番号58の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、フューリン及びP2A配列は、配列番号58のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、P2Aタグは、配列番号58のアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を有する配列を含む。
【0293】
本明細書に開示される抗原の1つ以上に特異的なCAR、CARを発現するT細胞、モノクローナル抗体、その抗原結合断片を、検出可能なマーカー、例えば、ELISA、分光光度法、フローサイトメトリー、顕微鏡法または画像診断技術(コンピュータ断層撮影法(CT)、コンピュータ横断断層(CAT)スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、核磁気共鳴画像法NMRI)、磁気共鳴断層撮影法(MTR)、超音波、光ファイバー検査、及び腹腔鏡検査など)によって検出可能な検出可能なマーカーと複合化することもできる。検出可能なマーカーの特定の非限定的な例としては、フルオロフォア、化学発光剤、酵素結合、放射性同位体及び重金属または化合物(例えば、MRIによる検出を目的とした超常磁性酸化鉄ナノ結晶)が挙げられる。例えば、有用な検出可能なマーカーとしては、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、5-ジメチルアミン-1-ナフタレンスルホニルクロリド、フィコエリトリン、ランタニド蛍光体などを含む、蛍光化合物が挙げられる。生物発光マーカー、例えば、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)なども有用である。CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分はまた、検出に有用な酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどと複合化することもできる。CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分を検出可能な酵素と複合化する場合、それは、区別され得る反応生成物を生成するために酵素が使用する追加の試薬を添加することによって検出され得る。例えば、作用因子の西洋ワサビペルオキシダーゼが存在する場合、過酸化水素及びジアミノベンジジンの添加によって、視覚的に検出可能な着色反応生成物が得られる。CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分はまた、ビオチンと複合化させて、アビジンまたはストレプトアビジン結合の間接測定によって検出してもよい。アビジン自体は、酵素または蛍光標識と複合化され得ることに留意すべきである。
【0294】
CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分を、ガドリニウムなどの常磁性体と複合化させてもよい。超常磁性酸化鉄などの常磁性体も標識として有用である。抗体はまた、ランタニド(ユウロピウム及びジスプロシウムなど)、ならびにマンガンと複合化させることもできる。抗体または抗原結合断片はまた、二次レポーターによって認識される所定のポリペプチドエピトープ(ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグなど)で標識してもよい。
【0295】
CAR、CARを発現するT細胞、抗体、またはその抗原結合部分はまた、放射性標識アミノ酸と複合化させることもできる。放射性標識は、診断目的及び治療目的の両方に使用され得る。例えば、放射性標識は、本明細書に開示される抗原及び抗原発現細胞のうち1つ以上をX線、発光スペクトル、または他の診断技術によって検出するために使用され得る。さらに、放射性標識は、対象における腫瘍の治療、例えば、神経芽細胞腫の治療のために毒素として治療的に使用され得る。ポリペプチドの標識の例としては、以下の放射性同位体または放射性ヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない:3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I。
【0296】
そのような検出可能なマーカーを検出する手段は、当業者には周知である。したがって、例えば、放射性標識は、写真フィルムまたはシンチレーションカウンターを使用して検出され得、蛍光マーカーは、放出された照明を検出する光検出器を使用して検出され得る。酵素標識は通常、酵素に基質を提供し、基質に対する酵素の作用によって生成される反応生成物を検出することによって検出され、比色標識は、着色した標識を可視化するだけで検出される。
【0297】
免疫応答性細胞及び宿主細胞
本出願の一態様は、改変された免疫エフェクター細胞(例えば、免疫応答性細胞)を提供する。本明細書で使用される場合、「免疫応答性細胞」とは、免疫応答において機能する細胞、もしくはその前駆細胞、または子孫細胞を指す。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞は、本明細書に記載の免疫調節系(例えば、腫瘍関連抗原またはストレスリガンドに対する特異性を有する標的化剤、及びTGF-βシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードする核酸配列を含む細胞)を含む。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞は、本明細書に記載の免疫調節系(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列、及びTGF-βシグナル伝達を調節するポリペプチドをコードする核酸配列)を含む。
【0298】
いくつかの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核球(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、または胚幹細胞である。いくつかの実施形態では、免疫応答性細胞はT細胞である。
【0299】
本明細書の目的のために、T細胞は、任意のT細胞、例えば、培養T細胞、例えば、初代T細胞、または培養T細胞株に由来するT細胞、例えば、Jurkat、SupT1など、あるいは哺乳類から取得したT細胞などであり得る。哺乳類から取得する場合、T細胞は、血液、骨髄、リンパ節、胸腺、または他の組織もしくは体液を含むが、これらに限定されない多数の供給源から取得することができる。T細胞はまた、濃縮または精製され得る。T細胞はヒトT細胞であってもよい。T細胞は、ヒトから単離されたT細胞であってもよい。T細胞は任意のT細胞型であり得、任意の発達段階のものであり得、例えば、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞、例えば、Th1及びTh2細胞、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、腫瘍浸潤細胞、メモリーT細胞、メモリー幹細胞、すなわち、Tscm、ナイーブT細胞などが含まれるが、これらに限定されない。T細胞は、CD8+T細胞またはCD4+T細胞であってもよい。
【0300】
一実施形態では、本明細書に記載されるようなCARを、好適な非T細胞に使用することができる。そのような細胞は、免疫エフェクター機能を有する細胞、例えば、NK細胞、及び多能性幹細胞から生成されたT様細胞などである。
【0301】
実施形態は、本明細書に記載される組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞をさらに提供する。本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」とは、本発明の組換え発現ベクターを含有し得る任意の細胞型を指す。宿主細胞は、真核細胞、例えば、植物、動物、真菌、もしくは藻類であり得るか、または原核細胞、例えば、細菌もしくは原生動物であり得る。宿主細胞は、培養細胞または初代細胞、すなわち、生物、例えば、ヒトから直接単離された細胞であり得る。宿主細胞は、接着細胞または懸濁細胞、すなわち、懸濁状態で増殖する細胞であり得る。好適な宿主細胞は当技術分野で公知であり、例えば、DH5α E.coli細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、サルVERO細胞、COS細胞、HEK293細胞などが挙げられる。組換え発現ベクターを増幅または複製する目的では、宿主細胞は原核細胞、例えばDH5a細胞であってもよい。組換えCARを産生する目的では、宿主細胞は哺乳類細胞であってもよい。宿主細胞はヒト細胞であってもよい。宿主細胞は、任意の細胞型のものであり得、任意の組織型に由来し得、任意の発達段階のものであり得るが、宿主細胞は、末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核球(PBMC)であってもよい。宿主細胞はT細胞であってもよい。
【0302】
また、一実施形態により、本明細書に記載の少なくとも1つの宿主細胞を含む細胞集団を提供する。細胞集団は、少なくとも1つの他の細胞、例えば、宿主細胞(例えば、T細胞)に加えて、記載される組換え発現ベクターのいずれかを含む宿主細胞を含む異種集団であり得、これは組換え発現ベクターのいずれか、またはT細胞以外の細胞、例えば、B細胞、マクロファージ、好中球、赤血球、肝細胞、内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、脳細胞などを含まない。あるいは、細胞集団は、実質的に均一集団であり得、その場合に集団は、組換え発現ベクターを含む(例えば、本質的にそれからなる)宿主細胞を主に含む。集団はまた、クローン細胞集団であり得、その場合、集団のすべての細胞が、組換え発現ベクターを含む単一宿主細胞のクローンであり、その結果、集団のすべての細胞がその組換え発現ベクターを含む。本発明の一実施形態では、細胞集団は、本明細書に記載されるような組換え発現ベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0303】
CAR(その機能部分及びバリアントを含む)、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞(その集団を含む)、ならびに抗体(その抗原結合部分を含む)は、単離及び/または精製され得る。例えば、精製した(または単離した)宿主細胞調製物は、宿主細胞が、体内の細胞の自然環境における細胞よりも純粋な調製物である。そのような宿主細胞は、例えば、標準的な精製技術によって産生され得る。いくつかの実施形態では、宿主細胞の調製物は、宿主細胞が調製物の全細胞含有量の少なくとも約50%、例えば、少なくとも約70%に相当するように精製される。例えば、純度は、少なくとも約50%であり得、約60%、約70%、もしくは約80%超であり得るか、または約100%であり得る。
【0304】
核酸及び発現ベクター
さらに、本発明の実施形態により、本明細書に記載のCAR、抗体、またはその抗原結合部分(その機能部分及び機能的バリアントを含む)のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本発明の核酸は、本明細書に記載されるリーダー配列、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び/または細胞内T細胞シグナル伝達ドメインのいずれかをコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0305】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列を、コドン改変してもよい。特定の理論に束縛されるものではないが、ヌクレオチド配列のコドン最適化は、mRNA転写産物の翻訳効率を増加させると考えられている。ヌクレオチド配列のコドン最適化は、天然コドンを、同じアミノ酸をコードする別のコドンに置換することを含み得るが、細胞内でより容易に利用可能なtRNAによって翻訳されることにより、翻訳効率が向上し得る。ヌクレオチド配列の最適化は、翻訳を妨害する二次mRNA構造も減少させることにより、翻訳効率が向上する場合がある。
【0306】
本発明の一実施形態では、核酸は、本発明のCARの抗原結合ドメインをコードするコドン改変ヌクレオチド配列を含み得る。本発明の別の実施形態では、核酸は、本明細書に記載されるCAR(その機能部分及び機能的バリアントを含む)のいずれかをコードするコドン改変ヌクレオチド配列を含み得る。
【0307】
発現ベクターとしては、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、YAC、EBV由来エピソームなどが挙げられる。簡便なベクターは、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするベクターであり、任意のVH配列またはVL配列が容易に挿入され、発現可能であるように適切な制限酵素部位が設けられている。そのようなベクターでは、スプライシングは通常、挿入されたJ領域のスプライスドナー部位とヒトC領域前のスプライスアクセプター部位との間、及びヒトCHエクソン内で生じるスプライス領域でも行われる。好適な発現ベクターは、多数の構成要素、例えば、複製起点、選択可能マーカー遺伝子、1つ以上の発現制御エレメント、例えば、転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、もしくはターミネーター)など、及び/または1つ以上の翻訳シグナル、シグナル配列もしくはリーダー配列などを含有し得る。ポリアデニル化及び転写終結は、コード領域の下流の天然染色体部位で行われる。得られたキメラ抗体を、任意の強力なプロモーターに結合させてもよい。使用可能な好適なベクターの例としては、哺乳類宿主に適していて、ウイルス複製系、例えば、シミアンウイルス40(SV40)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、アデノウイルス2、ウシパピローマウイルス(BPV)、パポーバウイルスBK変異体(BKV)、またはマウス及びヒトサイトメガロウイルス(CMV)、ならびにモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)、天然Igプロモーターなどに基づくものが挙げられる。種々の好適なベクターが、当技術分野で公知であり、単一コピーもしくは複数のコピーで維持されるか、または例えば、LTRを介して、もしくは複数の組込み部位で改変された人工染色体を介して宿主細胞染色体中に組み込まれるベクターが挙げられる(Lindenbaum et al.Nucleic Acids Res.32:e172(2004)、Kennard et al.Biotechnol.Bioeng.Online May 20,2009)。好適なベクターのさらなる例を、後の節に列挙する。
【0308】
したがって、本発明は、抗体、抗体の抗原結合断片(例えば、ヒト、ヒト化、キメラ抗体もしくは前述のいずれかの抗原結合断片)、抗体鎖(例えば、重鎖、軽鎖)またはTGFβもしくはTGFβRと結合する抗体鎖の抗原結合部分をコードする核酸を含む1つ以上の発現ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、TGFβRの核酸細胞外ドメインを含む1つ以上の発現ベクターを提供する。
【0309】
真核宿主細胞での発現は、そのような細胞が原核細胞よりも、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立てて分泌する可能性が高いため、有用である。しかしながら、不適切な折り畳みのために不活性である産生されたいずれの抗体も、公知の方法に従って再生可能な場合がある(Kim and Baldwin,“Specific Intermediates in the Folding Reactions of Small Proteins and the Mechanism of Protein Folding”,Ann.Rev.Biochem.51,pp.459-89(1982))。宿主細胞が、軽鎖二量体または重鎖二量体などのインタクトな抗体の一部を産生する可能性があり、これらは本発明による抗体相同体でもある。
【0310】
また、本明細書に記載されるCAR構築物をコードする核酸のいずれかと少なくとも約70%以上、例えば、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。
【0311】
一実施形態では、核酸は、組換え発現ベクター中に組み込まれ得る。この点に関して、実施形態は、核酸のいずれかを含む組換え発現ベクターを提供する。本明細書の目的のために、用語「組換え発現ベクター」とは、構築物が、mRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、mRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを細胞内で発現させるのに十分な条件下でベクターを細胞と接触させる場合に、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの発現を可能にする遺伝子改変オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド構築物を意味する。ベクターは、全体として天然に存在するものではない。
【0312】
しかしながら、ベクターの一部は、天然に存在し得る。組換え発現ベクターは、DNA及びRNAを含むが、これらに限定されない任意の種類のヌクレオチドを含み得、これらは単鎖または二本鎖であり、天然源から部分的に合成または取得され得、天然、非天然、または改変されたヌクレオチドを含有し得る。組換え発現ベクターは、天然もしくは非天然のヌクレオチド間結合、または両方の種類の結合を含み得る。好ましくは、非天然もしくは改変されたヌクレオチドまたはヌクレオチド間結合は、ベクターの転写または複製を妨げない。
【0313】
一実施形態では、組換え発現ベクターは、任意の好適な組換え発現ベクターであり得、任意の好適な宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトするために使用され得る。好適なベクターとしては、伝播及び増殖のために、もしくは発現のために、またはその両方のために設計されるベクター、例えば、プラスミド及びウイルスが挙げられる。ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences、Glen Burnie,Md.)、pBluescriptシリーズ(Stratagene、LaJolla,Calif.)、pETシリーズ(Novagen、Madison,Wis.)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech、Uppsala,Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech、Palo Alto,Calif.)からなる群から選択され得る。
【0314】
λ、λZapII(Stratagene)、EMBL4、及びλNMI149などのバクテリオファージベクターも使用され得る。植物発現ベクターの例としては、pBIO1、pBI101.2、pBHO1.3、pBI121及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-C1、pMAM、及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。組換え発現ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターであり得る。レンチウイルスベクターは、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来するベクターであり、特にMilone et al.,Mol.Ther.17(8):1453-1464(2009)で提供されるような自己不活性化レンチウイルスベクターを含む。臨床で使用され得るレンチウイルスベクターの他の例としては、例えば、限定されないが、Oxford BioMedica plcのLENTIVECTOR(登録商標)遺伝子送達技術、LentigenのLENTIMAX(商標)ベクター系などが挙げられる。非臨床型のレンチウイルスベクターも利用可能であり、当業者には公知であろう。
【0315】
多数のトランスフェクション技術が、一般に当技術分野で公知である(例えば、Graham et al.,Virology,52:456-467(1973)、Sambrook et al.,上記、Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier(1986)、及びChu et al,Gene,13:97(1981)を参照のこと。
【0316】
トランスフェクション法としては、リン酸カルシウム共沈(例えば、Graham et al.,上記を参照のこと)、培養細胞への直接マイクロインジェクション(例えば、Capecchi,Cell,22:479-488(1980)を参照のこと)、エレクトロポレーション(例えば、Shigekawa et al.,BioTechniques,6:742-751(1988)を参照のこと)、リポソーム媒介遺伝子導入(例えば、Mannino et al.,BioTechniques,6:682-690(1988)を参照のこと)、脂質媒介形質導入(例えば、Feigner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413-7417(1987)を参照のこと)、及び高速マイクロプロジェクタイルを使用した核酸送達(例えば、Klein et al,Nature,327:70-73(1987)を参照のこと)が挙げられる。
【0317】
一実施形態では、組換え発現ベクターは、例えば、Sambrook et al.,上記、及びAusubel et al.,上記に記載されている標準的な組換えDNA技術を使用して調製され得る。環状または線状である発現ベクターの構築物は、原核または真核宿主細胞で機能する複製系を含有するように調製され得る。複製系は、例えば、ColE1、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルスなどに由来し得る。
【0318】
組換え発現ベクターは、転写及び翻訳開始コドン及び終止コドンなどの調節配列を含む場合があり、これらは、ベクターが適宜導入される宿主細胞型(例えば、細菌、真菌、植物、または動物)に特異的であり、また、ベクターがDNAベースであるか、またはRNAベースであるかが考慮に入れられる。組換え発現ベクターは、クローニングを容易にするために制限酵素部位を含み得る。
【0319】
組換え発現ベクターは、1つ以上のマーカー遺伝子を含み得、これらは形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞の選択を可能にする。マーカー遺伝子としては、殺生物剤耐性、例えば、抗生物質、重金属などに対する耐性、栄養要求性宿主における原栄養性を提供するための相補性などが挙げられる。本発明の発現ベクターに適したマーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、及びアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0320】
組換え発現ベクターは、CAR(その機能部分及び機能的バリアントを含む)をコードするヌクレオチド配列に、またはCARをコードするヌクレオチド配列に相補的であるか、もしくはハイブリダイズするヌクレオチド配列に作動可能に連結する天然または非天然プロモーターを含み得る。例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的及び発生特異的なプロモーターの選択は、当業者の技術範囲内である。同様に、ヌクレオチド配列とプロモーターとの組合せも、当業者の技術範囲内である。プロモーターは、非ウイルスプロモーターまたはウイルスプロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、またはマウス幹細胞ウイルスの長い末端反復配列に認められるプロモーターであり得る。
【0321】
組換え発現ベクターは、一過性発現、安定発現、またはその両方のいずれかのために設計され得る。また、組換え発現ベクターは、構成的発現または誘導発現のために作製され得る。
【0322】
さらに、組換え発現ベクターは、自殺遺伝子を含むように作製され得る。本明細書で使用される場合、用語「自殺遺伝子」とは、自殺遺伝子を発現する細胞を死滅させる遺伝子を指す。自殺遺伝子は、遺伝子が発現する細胞に薬剤、例えば、薬物に対する感受性を付与し、細胞が薬剤と接触するか、または薬剤に曝露される場合に細胞を死滅させる遺伝子であり得る。自殺遺伝子は、当技術分野で公知であり(例えば、Suicide Gene Therapy:Methods and Reviews,Springer,Caroline J.(Cancer Research UK Centre for Cancer Therapeutics at the Institute of Cancer Research,Sutton,Surrey,UK),Humana Press,2004を参照のこと)、例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、シトシンダミナーゼ、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ、及びニトロレダクターゼが挙げられる。
【0323】
治療方法
本発明は、抗TGFβ、抗TGFβR抗原結合分子、またはTGFβRの細胞外ドメインを対象に投与することを含む治療方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCAR及び抗原結合分子は、哺乳動物の疾患を治療または予防する方法に使用され得る。この点に関して、一実施形態は、哺乳類におけるがんの治療方法または予防方法を提供し、本方法は、哺乳類にCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体及び/またはその抗原結合部分、及び/または哺乳類のがんを治療もしくは予防するのに効果的な量の医薬組成物を投与することを含む。
【0324】
いくつかの実施形態では、CARは、ドナー細胞上で発現し、これらの細胞から、抗TGFβ、抗TGFβR抗原結合分子、またはTGFβRの細胞外ドメインが分泌される。いくつかの実施形態では、T細胞療法に使用するためのドナーT細胞を、患者から採取する(例えば、自己T細胞療法のために)。他の実施形態では、T細胞療法に使用するためのドナーT細胞を、患者ではない対象から採取する(例えば、同種異系T細胞療法のために)。CAR+T細胞は、治療有効量で投与してもよい。例えば、T細胞の治療有効量は、少なくとも約104細胞、少なくとも約105細胞、少なくとも約106細胞、少なくとも約107細胞、少なくとも約108細胞、少なくとも約109、または少なくとも約1010であってよい。
【0325】
いくつかの実施形態では、T細胞の治療有効量は、約104細胞、約105細胞、約106細胞、約107細胞、または約108細胞である。いくつかの実施形態では、CAR T細胞の治療有効量は、約2×106細胞/kg、約3×106細胞/kg、約4×106細胞/kg、約5×106細胞/kg、約6×106細胞/kg、約7×106細胞/kg、約8×106細胞/kg、約9×106細胞/kg、約1×107細胞/kg、約2×107細胞/kg、約3×107細胞/kg、約4×107細胞/kg、約5×107細胞/kg、約6×107細胞/kg、約7×107細胞/kg、約8×107細胞/kg、または約9×107細胞/kgである。いくつかの実施形態では、CAR陽性生存T細胞の治療有効量は、約1×106~約2×106のCAR陽性生存T細胞/kg体重から、最大で最高用量の約1×108のCAR陽性生存T細胞である。
【0326】
いくつかの実施形態では、CAR陽性生存T細胞の治療有効量は、約0.25×106~2×106である。いくつかの実施形態では、CAR陽性生存T細胞の治療有効量は、約0.25×106、0.3×106、0.4×106、約0.5×106、約0.6×106、約0.7×106、約0.8×106、約0.9×106、約1.0×106、約1.1×106、約1.2×106、約1.3×106、約1.4×106、約1.5×106、約1.6×106、約1.7×106、約1.8×106、約1.9×106、または約2.0×106のCAR陽性生存T細胞である。
【0327】
いくつかの実施形態では、CAR陽性生存T細胞の治療有効量は、約0.4×108~約2×108のCAR陽性生存T細胞である。いくつかの実施形態では、CAR陽性生存T細胞の治療有効量は、約0.4×108、約0.5×108、約0.6×108、約0.7×108、約0.8×108、約0.9×108、約1.0×108、約1.1×108、約1.2×108、約1.3×108、約1.4×108、約1.5×108、約1.6×108、約1.7×108、約1.8×108、約1.9×108、または約2.0×108のCAR陽性生存T細胞である。
【0328】
一実施形態は、本明細書に開示されるCARを投与する前に、哺乳類でリンパ球枯渇させることをさらに含む。リンパ球枯渇の例としては、骨髄非破壊的リンパ球枯渇化学療法、骨髄破壊的リンパ球枯渇化学療法、全身照射などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0329】
宿主細胞または細胞集団を投与する方法を目的として、細胞は、哺乳類にとって同種異系または自家の細胞であり得る。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳類にとって自家である。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳類にとって同種異系である。本明細書で使用される場合、同種異系とは、物質が導入される個体と同じ種の異なる動物に由来する任意の物質を意味する。1箇所以上の遺伝子座の遺伝子が同一ではない場合、2つ以上の個体は、互いに同種異系であると言われる。いくつかの態様では、同種の個体に由来する同種異系の物質は、抗原的に相互作用するために遺伝的に十分に異なり得る。本明細書で使用される場合、用語「自家」とは、任意の物質が後に個体に再導入される場合の同じ個体に由来する任意の物質を意味する。
【0330】
本明細書で言及される哺乳類は、任意の哺乳類であり得る。本明細書で使用される場合、用語「哺乳類」とは、マウス及びハムスターなどの齧歯目の哺乳類、ならびにウサギなどのウサギ目の哺乳類を含むが、これらに限定されない任意の哺乳類を指す。哺乳類は、ネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ)を含む、食肉目由来の哺乳類であってよい。哺乳類は、ウシ科(ウシ)及びブタ(ブタ)を含む偶蹄目、またはウマ科(ウマ)を含む奇蹄目由来の哺乳類であってもよい。哺乳類は、霊長目、Ceboid目、もしくはSimoid目(サル)、または真猿亜目(ヒト及び類人猿)の哺乳類であってもよい。いくつかの実施形態では、哺乳類はヒトである。
【0331】
本方法に関して、がんは、急性リンパ性癌、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、膀胱癌(例えば、膀胱癌腫)、骨癌、脳癌(例えば、髄芽腫)、乳癌、肛門、肛門管、または肛門直腸の癌、眼の癌、肝内胆管の癌、関節の癌、頸部、胆嚢、または胸膜の癌、鼻、鼻腔、または中耳の癌、口腔の癌、外陰部の癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性癌、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、頭頸部癌(例えば、頭頸部扁平上皮癌)、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、液性腫瘍、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌及び肺腺癌)、リンパ腫、中皮腫、肥満細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、B慢性リンパ性白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、バーキットリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜癌、網癌、及び腸間膜癌、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌、皮膚癌、小腸癌、軟組織癌、固形腫瘍、滑膜肉腫、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、ならびに尿管癌のいずれかを含む、任意のがんであり得る。
【0332】
特定の実施形態では、がんは胃腸癌である。いくつかの実施形態では、がんは胃癌である。いくつかの実施形態では、がんは結腸直腸癌である。いくつかの実施形態では、がんは結腸癌である。いくつかの実施形態では、がんは、異常なTGFβ発現または異常なTGFβシグナル伝達を有する。
【0333】
用語「治療する」、及び「予防する」、ならびにそれらに由来する単語は、本明細書で使用される場合、必ずしも100%または完全な治療または予防を示唆するとは限らない。むしろ、当業者が潜在的な利益または治療効果を有すると認識する、様々な程度の治療または予防が存在する。この点に関して、本方法は、哺乳類におけるがんの任意の量または任意のレベルの治療または予防を提供し得る。
【0334】
さらに、本方法によって提供される治療または予防は、治療または予防される疾患、例えば、がんの1つ以上の病態または症状の治療または予防を含み得る。また、本明細書の目的のために、「予防」は、疾患、またはその症状もしくは病態の発症を遅延させることを包含し得る。
【0335】
標的細胞を認識する能力及び抗原特異性についてCARを試験する方法は、当技術分野で公知である。例えば、Clay et al.,J.Immunol,163:507-513(1999)は、サイトカイン(例えば、インターフェロン-γ、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子a(TNF-α)またはインターロイキン2(IL-2))の放出を測定する方法について教示している。さらに、Zhao et al,J.Immunol,174:4415-4423(2005)に記載されているように、細胞傷害の測定によってCAR機能を評価することができる。
【0336】
別の実施形態は、哺乳類における増殖性障害、例えば、がんの治療または予防のための、本発明のCAR、核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体、もしくはその抗原結合部分、及び/または医薬組成物の使用を提供する。がんは、本明細書に記載されるがんのいずれであってもよい。
【0337】
開示される治療剤には、局所投与及び全身投与を含む任意の投与方法を使用することができる。例えば、局所、経口、静脈内などの血管内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、皮内、髄腔内、及び皮下投与を使用することができる。特定の投与様式及び投与レジメンは、症例の詳細(例えば、対象、疾患、関与する疾患状態、及び治療が予防的かどうか)を考慮して、担当臨床医によって選択される。2つ以上の薬剤または組成物を投与する場合、1つ以上の投与経路を使用してもよく、例えば、化学療法剤を経口投与してもよく、抗体または抗原結合断片または複合体または組成物を、静脈内投与してもよい。投与方法には、注射が含まれ、CAR、CAR T細胞、複合体、抗体、抗原結合断片、または組成物が、水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、5%ヒト血清アルブミン、固定油、オレイン酸エチル、またはリポソームなどの非毒性の薬学的に許容される担体中に提供される。いくつかの実施形態では、開示される化合物の局所投与は、例えば、抗体または抗原結合断片を、腫瘍が除去された組織の領域、または腫瘍が発生しやすいと疑われる領域に塗布することによって使用され得る。いくつかの実施形態では、治療有効量の抗体または抗原結合断片を含む医薬調製物の持続的な腫瘍内(または腫瘍近傍での)放出が有効であり得る。他の例では、複合体を点眼薬として角膜に局所的に、または硝子体内に塗布する。
【0338】
開示される治療剤は、正確な用量の個別投与に適した単位剤形で製剤化され得る。さらに、開示される治療剤は、単回用量または複数回用量のスケジュールで投与してもよい。複数回の投与スケジュールとは、一次治療経過が、複数回の別個の用量、例えば、1~10回の投与、続いて必要に応じて、その後の時間間隔で他の投与を行い、組成物の作用を維持または補強し得るスケジュールである。治療は、数日から数か月、またはさらに数年間にわたる化合物(複数可)の1日用量または複数日用量を含み得る。したがって、投与レジメンはまた、少なくとも部分的に、治療される対象の特定の必要性に基づいて決定され、投与施術者の判断に依存することになる。
【0339】
抗体または複合体の典型的な用量は、約0.01~約30mg/kg、例えば、約0.1~約10mg/kgなどの範囲であり得る。
【0340】
特定の例では、対象に、複合体、抗体、組成物、CAR、CAR T細胞、または追加の薬剤のうちの1つ以上を含む治療用組成物を、複数日の、例えば、少なくとも2日連続、10日連続などの投薬スケジュールで、例えば、数週間、数か月間、または数年間投与する。一例では、対象に、少なくとも30日間、例えば、少なくとも2か月、少なくとも4か月、少なくとも6か月、少なくとも12か月、少なくとも24か月、または少なくとも36か月などの期間、複合体、抗体、組成物、または追加の薬剤を投与する。
【0341】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、開示される抗体、抗原結合断片、複合体、CAR、またはCARを発現するT細胞と組み合わせて(例えば、順次、実質的に同時に、または同時に)、外科手術、放射線療法、及び/または化学療法薬を対象に提供することを含む。そのような薬剤及び治療の方法及び治療用量は、当業者に公知であり、熟練した臨床医によって決定され得る。追加の薬剤の調製及び投薬スケジュールは、製造業者の指示に従って、または当業者によって経験的に決定されるように使用してもよい。そのような化学療法の調製及び投薬スケジュールは、Chemotherapy Service,(1992)Ed.,M.C.Perry,Williams&Wilkins,Baltimore,Mdにも記載されている。
【0342】
いくつかの実施形態では、併用療法は、治療有効量の追加のがん抑制剤を対象に投与することを含み得る。併用療法と共に使用され得る追加の治療剤の非限定的な例としては、微小管結合剤、DNAインターカレーターまたは架橋剤、DNA合成阻害剤、DNA及びRNA転写阻害剤、抗体、酵素、酵素阻害剤、遺伝子調節剤、ならびに血管新生阻害剤が挙げられる。これらの薬剤(治療有効量で投与する)及び治療は、単独でまたは組み合わせて使用され得る。例えば、任意の好適な抗がん剤または抗血管新生剤を、本明細書に開示されるCAR、CAR-T細胞、抗体、抗原結合断片、または複合体と組み合わせて投与することができる。そのような薬剤の方法及び治療用量は、当業者に公知であり、熟練した臨床医によって決定され得る。
【0343】
追加の化学療法剤としては、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミド、及びメルファラン)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、フォテムスチン、ロムスチン、及びストレプトゾシン)、白金化合物(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、及びBBR3464)、ブスルファン、ダカルバジン、メクロレタミン、プロカルバジン、テモゾロミド、チオテパ、ならびにウラムスチンなど、代謝拮抗薬、例えば、葉酸(例えば、メトトレキサート、ペメトレキセド、及びラルチトレキセド)、プリン(例えば、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリン、及びチオグアニン)、ピリミジン(例えば、カペシタビン)、シタラビン、フルオロウラシル、ならびにゲムシタビンなど、植物アルカロイド、例えば、ポドフィルム(例えば、エトポシド、及びテニポシド)、タキサン(例えば、ドセタキセル及びパクリタキセル)、ビンカ(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、及びビノレルビン)など、細胞傷害性/抗腫瘍抗生物質、例えば、アントラサイクリンファミリーメンバー(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、及びバルルビシン)、ブレオマイシン、リファンピシン、ヒドロキシ尿素、ならびにマイトマイシンなど、トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、トポテカン及びイリノテカンなど、モノクローナル抗体、例えば、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、パニツムマブ、ペルツズマブ、及びトラスツズマブなど、光増感剤、例えば、アミノレブリン酸、アミノレブリン酸メチル、ポルフィマーナトリウム、及びベルテポルフィンなど、ならびに他の薬剤、例えば、アリトレチノイン、アルトレタミン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アキシチニブ、ベキサロテン、ベバシズマブ、ボルテゾミブ、セレコキシブ、デニロイキンジフチトクス、エルロチニブ、エストラムスチン、ゲフィチニブ、ヒドロキシカルバミド、イマチニブ、ラパチニブ、パゾパニブ、ペントスタチン、マソプロコール、ミトタン、ペグアスパラガーゼ、タモキシフェン、ソラフェニブ、スニチニブ、ベムラフィニブ、バンデタニブ、及びトレチノインなどが挙げられるが、これらに限定されない。そのような薬剤の選択及び治療用量は、当業者に公知であり、熟練した臨床医によって決定され得る。
【0344】
併用療法は相乗効果をもたらし、相乗的であることを証明し得る、すなわち、活性成分が共に使用される場合に達成される効果は、化合物を別々に使用することから生じる効果の総和を上回る。相乗効果は、活性成分を(1)共製剤化し、投与するか、もしくは組み合わせた単位剤形で同時に送達するか、(2)別個の製剤として交互に、もしくは並行して送達するか、または(3)いくつかの他のレジメンによる場合に達成され得る。交互に送達する場合、相乗効果は、化合物が、例えば、別個のシリンジによる異なる注射によって順次投与または送達する場合に達成され得る。一般に、交互に投与する間、有効用量の各活性成分を順次、すなわち、連続して投与する一方で、併用療法では、有効用量の2つ以上の活性成分を一緒に投与する。
【0345】
様々な実施形態では、本明細書に記載されるようなTGFβシグナル伝達モジュレーターを含む免疫調節系は、対象に少なくとも1つの追加の薬剤を投与することをさらに含む一連の治療に含まれ得る。様々な実施形態では、本明細書に記載されるようなTGFβシグナル伝達モジュレーターを含む免疫調節系と組み合わせて投与する追加の薬剤は、化学療法剤であってもよい。様々な実施形態では、本明細書に記載されるような抗原結合剤と組み合わせて投与する追加の薬剤は、炎症を抑制する薬剤であってもよい。
【0346】
いくつかの実施形態では、TGFβシグナル伝達モジュレーターは、ヒトTGFβに対する特異性を有する単一ドメイン抗体または分泌性scFvである。いくつかの実施形態では、TGFβシグナル伝達モジュレーターは、ヒトTGFβRに対する特異性を有する単一ドメイン抗体または分泌性scFvである。いくつかの実施形態では、TGFβシグナル伝達モジュレーターは、がん細胞に結合し、がん細胞に治療剤を送達し、ヒトTGFβを発現するがん細胞を死滅させるために、治療剤(例えば、化学療法剤及び放射性原子)に複合化(例えば、連結)され得る。いくつかの実施形態では、TGFβシグナル伝達モジュレーターを、治療剤に連結する。いくつかの実施形態では、治療剤は、化学療法剤、サイトカイン、放射性原子、siRNA、または毒素である。いくつかの実施形態では、治療剤は化学療法剤である。いくつかの実施形態では、薬剤は放射性原子である。
【0347】
いくつかの実施形態では、本方法を、TGFβシグナル伝達異常を伴う障害に対して、他の療法と併用して実施することができる。例えば、組成物を、化学療法と同時に、その前に、またはその後に対象に投与することができる。いくつかの実施形態では、組成物を、養子療法と同時に、その前に、またはその後に対象に投与することができる。
【0348】
様々な実施形態において、本明細書に記載のTGFβシグナル伝達モジュレーターを含む免疫調節系と併用して投与する追加の薬剤を、TGFβシグナル伝達モジュレーターと同時に、同じ日に、または同じ週に投与してもよい。様々な実施形態では、本明細書に記載されるようなTGFβシグナル伝達モジュレーターと併用して投与する追加の薬剤を、単一の製剤中で免疫調節系と共に投与してもよい。特定の実施形態では、追加の薬剤を、本明細書に記載されるようなTGFβシグナル伝達モジュレーターの投与とは時間的に離れた様式で、例えば、TGFβシグナル伝達モジュレーターの投与の1時間以上前もしくは後に、1日以上前もしくは後に、1週間以上前もしくは後に、または1か月以上前もしくは後に投与する。様々な実施形態では、1つ以上の追加の薬剤の投与頻度は、本明細書に記載されるようなTGFβシグナル伝達モジュレーターの投与頻度と同じか、それと同様か、またはそれとは異なり得る。
【0349】
いくつかの実施形態では、組成物を、1つ以上の追加の治療剤、例えば、対象におけるTGFβ関連障害(例えば、がんまたは自己免疫障害)を治療または予防するための追加の療法と共に製剤化することができる。対象におけるTGFβ関連障害を治療するための追加の薬剤は、治療しようとする特定の障害に応じて異なるが、リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン、オスファミド(osfamide)、カルボプラチン、エトポシド、デキサメタゾン、シタラビン、シスプラチン、シクロホスファミド、またはフルダラビンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0350】
組成物
遺伝子治療、免疫療法及び/または細胞療法に使用するために、組成物を本明細書で提供し、組成物は、開示されるCAR、またはCARを発現するT細胞、抗体、抗原結合断片、複合体、CAR、または本明細書で開示される1つ以上の抗原に特異的に結合するCARを発現するT細胞のうちの1つ以上を、担体(薬学的に許容される担体など)内に含む。組成物は、対象に投与するための単位剤形で調製され得る。投与の量及びタイミングは、所望の結果を達成するために、治療する臨床医の裁量による。組成物は、全身(静脈内など)または局所(腫瘍内など)投与用に製剤化され得る。一例では、開示されるCAR、またはCARを発現するT細胞、抗体、抗原結合断片、複合体を、静脈内投与などの非経口投与のために製剤化する。本明細書に開示されるようなCAR、またはCARを発現するT細胞、複合体、抗体、または抗原結合断片を含む組成物は、例えば、腫瘍、例えば、限定されないが、神経芽細胞腫の治療及び検出に有用である。いくつかの例では、組成物は、がん腫の治療または検出に有用である。本明細書に開示されるようなCAR、またはCARを発現するT細胞、複合体、抗体、または抗原結合断片を含む組成物はまた、例えば、病的血管新生の検出に有用である。
【0351】
投与用の組成物は、水性担体などの薬学的に許容される担体中に溶解されたCAR、またはCARを発現するT細胞、複合体、抗体、または抗原結合断片の溶液を含み得る。様々な水性担体、例えば、緩衝生理食塩水などを使用することができる。それらの溶液は無菌であり、一般に望ましくない物質を含まない。これらの組成物を、従来の周知の滅菌技術によって滅菌してもよい。組成物は、おおよその生理学的条件に必要な場合に、薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤、アジュバント剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有してもよい。これらの製剤中におけるCAR、またはCARを発現するT細胞、抗体もしくは抗原結合断片または複合体の濃度は、幅広く変動し得、選択された特定の投与様式及び対象の要望に従って、主に、液量、粘度、体重などに基づいて選択される。遺伝子治療、免疫療法及び/または細胞療法に使用するためのそのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であるか、または当業者には明らかである。
【0352】
静脈内投与用の典型的な組成物は、1対象につき1日あたり約0.01~約30mg/kgの抗体もしくは抗原結合断片または複合体(あるいは対応する用量のCAR、またはCARを発現するT細胞、抗体もしくは抗原結合断片を含む複合体)を含む。投与可能な組成物を調製する実際の方法は、当業者に公知であるか、または当業者には明らかであり、Remington’s Pharmaceutical Science,19th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.(1995)などの刊行物でさらに詳細に記載されている。
【0353】
制御放出非経口製剤は、インプラント、油性注射として、または微粒子系として作製され得る。タンパク質送達系の広範な概要については、Banga,A.J.,Therapeutic Peptides and Proteins:Formulation,Processing,and Delivery Systems,Technomic Publishing Company,Inc.,Lancaster,Pa.,(1995)を参照のこと。微粒子系としては、マイクロスフェア、微粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、及びナノ粒子が挙げられる。マイクロカプセルは、治療用タンパク質、例えば、細胞毒または薬物などを中核として含有する。マイクロスフェアでは、治療薬が粒子全体に分散している。約1μmよりも小さい粒子、マイクロスフェア、及びマイクロカプセルは一般に、それぞれナノ粒子、ナノスフェア、及びナノカプセルと称される。毛細血管の直径はおよそ5μmであるため、ナノ粒子のみが静脈内投与される。微粒子は通常、直径約100μmであり、皮下または筋肉内に投与される。例えば、Kreuter,J.,Colloidal Drug Delivery Systems,J.Kreuter,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,pp.219-342(1994)、及びTice&Tabibi,Treatise on Controlled Drug Delivery,A.Kydonieus,ed.,Marcel Dekker,Inc.New York,N.Y.,pp.315-339,(1992)を参照のこと。
【0354】
本明細書に開示されるCAR、もしくはCARを発現するT細胞、抗体もしくは抗原結合断片または複合体組成物のイオン制御放出のために、ポリマーを使用することができる。制御された薬物送達に使用するための様々な分解性及び非分解性ポリマーマトリックスが、当技術分野で公知である(Langer,Accounts Chem.Res.26:537-542,1993)。例えば、ブロックコポリマーであるポラキサマー(polaxamer)407は、低温では粘性だが流動性液体として存在する一方で、体温では半固体ゲルを形成する。これは、組換えインターロイキン-2及びウレアーゼの製剤化及び持続送達のための効果的なビヒクルであることが示されている(Johnston et al.,Pharm.Res.9:425-434,1992、及びPec et al.,J.Parent.Sci.Tech.44(2):58-65,1990)。あるいは、ヒドロキシアパタイトは、タンパク質の制御放出のためのマイクロキャリアとして使用されている(Ijntema et al.,Int.J.Pharm.112:215-224,1994)。さらに別の態様では、リポソームを、脂質カプセル化薬物の制御放出及び薬物標的化のために使用する(Betageri et al.,Liposome Drug Delivery Systems,Technomic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,Pa.(1993))。治療用タンパク質の制御送達を目的とした多数の追加の系が公知である(米国特許第5,055,303号、同第5,188,837号、同第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、同第4,957,735号、同第5,019,369号、同第5,055,303号、同第5,514,670号、同第5,413,797号、同第5,268,164号、同第5,004,697号、同第4,902,505号、同第5,506,206号、同第5,271,961号、同第5,254,342号、及び同第5,534,496号を参照のこと)。
【0355】
キット
一態様では、本明細書に開示されるCARを用いるキットも提供する。例えば、対象の腫瘍を治療するためのキット、または本明細書に開示されるCARのうちの1つ以上を発現するCAR T細胞を作製するためのキット。キットは通常、開示される抗体、抗原結合断片、複合体、核酸分子、本明細書に開示されるようなCARまたはCARを発現するT細胞を含む。開示される抗体、抗原結合断片、複合体、核酸分子、CAR、またはCARを発現するT細胞のうちの複数が、キット内に含まれ得る。
【0356】
キットは、容器及び容器上の、または容器と関連するラベルまたは添付文書を含み得る。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は通常、開示される抗体、抗原結合断片、複合体、核酸分子、CAR、またはCARを発現するT細胞のうちの1つ以上を含む組成物を保持する。いくつかの実施形態では、容器は、滅菌アクセスポートを有する場合がある(例えば、容器は、静脈内輸液バッグまたは皮下注射針によって穿刺可能な栓を有するバイアルであってもよい)。ラベルまたは添付文書は、組成物を特定の病態を治療するために使用することを示す。
【0357】
ラベルまたは添付文書は通常、例えば、腫瘍の治療方法もしくは予防方法、またはCAR T細胞の作製方法における開示される抗体、抗原結合断片、複合体、核酸分子、CAR、またはCARを発現するT細胞の使用説明書をさらに含む。添付文書は、通常、そのような治療用製品の使用に関する適応症、使用、用量、投与、禁忌、及び/または警告についての情報を含有する、治療用製品の商業用パッケージに通例含まれる説明書を含む。説明書は、電子形式(コンピュータディスケットもしくはコンパクトディスクなど)で記載され得るか、または視覚的形式(ビデオファイルなど)であり得る。キットはまた、キットが設計された特定の用途を容易にするための追加の構成要素も含み得る。したがって、例えば、キットは、標識を検出する手段(酵素標識のための酵素基質、蛍光標識を検出するためのフィルターセット、二次抗体などの適切な二次標識など)をさらに含み得る。キットには、特定の方法の実施に日常的に使用される緩衝液及び他の試薬がさらに含まれていてもよい。そのようなキット及び適切な内容物は、当業者には周知である。
【0358】
別段の記載がない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語及び科学用語ならびに語句は、当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載される方法及び材料と同様の、または同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法及び材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物は、参照により本明細書に援用される。
【0359】
組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養及び形質転換に標準的な技術を使用してもよい(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)。酵素反応及び精製技術を、製造業者の仕様書に従って、または当技術分野において一般に行われるように、または本明細書に記載されるように実施してもよい。前述の技術及び手順は一般に、当技術分野において周知の従来方法に従って、また本明細書全体を通して引用かつ議論される様々な一般的かつより具体的な参考文献に記載されるように実施してもよい。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989))を参照し、これはあらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0360】
本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は、その全体が参照により援用される。本発明は、以下の実施例を参照することによって、より完全に理解される。
【実施例】
【0361】
これらの実施例は、本発明の理解を補助するために記載されるが、本発明の範囲を制限することを決して意図するものではなく、またそのように解釈されるべきではない。実施例は、当業者に周知であろう従来の方法(分子クローニング技術など)の詳細な説明を含まない。
【0362】
実施例1. キメラ抗原受容体(CAR)及びTGF-Bシグナル伝達モジュレーターを共発現する免疫応答性細胞
本実施例は、ヒトT細胞における免疫調節系を使用したTGF-βシグナル伝達モジュレーターとCARの共発現を示す。TGF-Bシグナル伝達モジュレーター(例えば、抗TGFβ及び抗TGFβR2)及び抗ヒトCD19 CAR(SJ25C1細胞外抗原結合ドメイン)をコードする免疫調節構築物を、レトロウイルス送達用にパッケージ化した。Phoenix Aレトロウイルスパッケージング細胞株(ATCC)を、DMEM 20%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシン中で50~70%コンフルエントになるまで増殖させた。TGF-Bシグナル伝達モジュレーター及びCAR構築物をコードするそれぞれのプラスミド、ヘルパープラスミドgag-pol及びpVSVG、ならびに形質導入試薬Fugene HD(Promega)を製造業者のプロトコルに従って使用して、DNA複合体を調製した。トランスフェクションの20~48時間後、ウイルス上清を採取し、等分して、さらなる使用のために凍結した。
【0363】
ヒトPBMCを、密度勾配を使用してLeukopaksから単離し、さらに使用するまで凍結した。事前に凍結させたPBMCから、ヒトT細胞を磁気選択(T細胞分離キット、Stemcell)によって分離した。精製ヒトT細胞を、2ng/mlのヒトIL-2(Miltenyi)及びT細胞Transactビーズ(Miltenyi)を含有する完全オプティマイザー培地(オプティマイザー基礎培地(ThermoFisher #A10221-01)+26ml OptiMizer サプリメント(ThermoFisher #A10484-02)+20ml ICSR(CTS Immune Cell SR)、ThermoFisher #A25961-01)+10mlの200mM L-グルタミン、(Gibco 25030-081)+PenStrep、(Gibco 15140-122))中で2日間培養した。
【0364】
T細胞をレトロネクチンでコーティングしたプレート(Takara、40ug/mlレトロネクチン)に移し、適切な量のウイルスでスピン形質導入した。形質導入は、様々な時点でフローサイトメトリーによって確認し、定量した。簡潔に述べると、細胞を、FACS緩衝液中で250ngのhCD19-hFcタンパク質(RnD Systems)または社内で生成したhGCC-Fcタンパク質と共に4℃で1時間インキュベートした。FACS緩衝液で洗浄した後、細胞をヒトFCに対する二次抗体(Biolegend)を用いて室温で20分間再懸濁した。いくつかの実験では、CD4、CD8、または他の表面マーカーに対する抗体を加えた。fixable viability dye(Thermofisher)を使用して、死細胞を分析から除外した。細胞をPBS 2%FCS 4%ホルムアルデヒドで固定した後、フローサイトメトリー(FACS Fortessa、BD Biosciences)によって分析した。形質導入効率を、CAR染色陽性の生細胞(%)として示す。フローサイトメトリーの結果は、87.6%のリンパ球、76.1%のシングレット、78.3%の生CD3+細胞の集団を示し、75.8%の細胞がCAR発現を示した(
図1A~1D)。形質導入効率を、CAR染色陽性の生細胞(%)として示す(
図1E)。
【0365】
実施例2. TGF-β調節ヒトCAR-T細胞を使用したin vitro死滅
本実施例は、TGF-βシグナル伝達モジュレーターを共発現するヒトCAR-T細胞によるin vitroでの死滅を示す。アーマー化ヒトCAR-T細胞によるin vitro死滅は、非アーマー化CAR-T細胞と同等である。
【0366】
Raji(ATCC CD19陽性)またはRaji CD19ko(ヒトCD19陰性)細胞を、製造業者のプロトコルに従って増殖色素efluor 450(Thermofisher)で染色し、実施例1に記載のTGF-β調節性CAR-T細胞を添加する少なくとも2時間前に96ウェルプレートにプレーティングした。CAR-T細胞をエフェクター:標的比0:1、0.3:1、1:1、3:1、9:1で添加し、T細胞のみを37℃で一晩インキュベートした。翌日、ヒトCD107a(LAMP-1)(Biolegend)、TCR α/β(Biolegend)、及びヒトCD4抗体(Biolegend)に対する蛍光標識抗体を使用してFACS染色を実施した。製造業者のプロトコルに従って、細胞を抗体と共に4℃で30分間インキュベートし、PBSで洗浄し、fixable viability dye(Thermofisher)で染色した。C細胞を1×Annexin V Binding Buffer(Biolegend)で洗浄し、Annexin V FITCで染色した。細胞を、cytofix(BD Biosciences)で固定した後、FACS Fortessa(BD Biosciences)で取得した。TGF-β調節性CD19 CAR-T細胞は、CD19陽性Raji細胞に対して標的特異的in vitro死滅を示したが(
図2A)、CD19陰性対照細胞(Raji CD19ko)に対しては示さなかった(
図2B)。
【0367】
実施例3. 免疫応答性細胞からのTGF-βモジュレーターの分泌
本実施例は、TGF-β調節性CAR-T細胞が、共発現させたTGF-βモジュレーター(例えば、TGF-βに結合する抗TGF-β及びTGFβR2に結合する抗TGFβR2)を分泌することを示す。
【0368】
TGF-β調節性CAR-T細胞由来の上清をELISAによってアッセイして、抗TGF-β抗体及び抗TGFβR2抗体を検出した。Maxisorp 96ウェルプレートを、100μlのコーティング緩衝液中の組換えヒトTGF-β(4μg/ml、RnD System)またはhTGFβR2-Fc(0.1mg/ml、RnD System)で4℃にて一晩コーティングした。プレートを1×洗浄緩衝液で洗浄し、試薬希釈液を用いて室温で1時間ブロッキングした。CAR-T上清、組換えTGFβR2-flag、または組換えTGF-β-flag抗体を添加し、室温で2時間インキュベートした。
【0369】
もう1回洗浄ステップを行った後、HRP複合化flagタグ抗体を添加し、室温で30分間インキュベートした。プレートを洗浄し、TMB基質を10~20分間添加した。停止試薬を使用して反応を停止させ、Pherastar Plateリーダーを使用してプレートを450nmで読み取った。コーティングされたTGF-bを用いたELISAでは、結合剤検出のための抗flagタグHRP抗体を用いたTGF-b scFv VL-VHと比較して、高レベルのTGF-b scFv VH-VL1及びTGF-b scFv VH-VL2が検出された(
図3A)。コーティングされたTGFbR2-Fcを用いたELISAでは、ヒトCAR-Tから高レベルのTGFbR2 scFv VH-VL、TGFbR2 scFv VL-VH及びhTGFbR2 VH1が検出されたが、mTGFbR2 VH1は検出することができなかった(
図3B)。TGF-β結合剤及びTGFβR2結合剤は、TGF-β調節性CAR-T細胞によって分泌され、それらの同族抗原に結合する。
【0370】
実施例4. ヒトCAR-T細胞はTGF-β/TGFβR2に対する中和抗体を分泌する
本実施例は、TGF-β調節性CAR-T上清中にTGF-β/TGFβR2に対する中和抗体が存在することを示す。
【0371】
TGF-β/SMADシグナル伝達経路の活性をモニタリングするために設計されたSBE-Lucレポーター細胞(Smad結合エレメント(SBE)(BPS Biosciences)の制御下でホタルルシフェラーゼを発現するHEK293細胞)を使用して、CAR-T細胞の上清中のTGF-βブロッキング結合剤の機能評価を実施した。TGF-βタンパク質は、細胞表面の同族受容体に結合し、シグナル伝達カスケードを開始させ、SMAD2及びSMAD3をリン酸化し、活性化し、次いでSMAD4と複合体を形成させることをもたらす。SMAD複合体は核に移行し、SMAD結合エレメント(SBE)に結合し、TGF-β/SMAD応答性遺伝子の転写及び発現を引き起こす。ブロッキング結合剤の存在は、SBE-Lucレポーター細胞におけるTGF-βにより誘導されるルシフェラーゼ発現を阻害する能力によって検出された。TGF-βにより誘導されるレポーター活性を阻害する能力を評価するための例示的なアッセイを以下のように実施した。
【0372】
SBE-Luc細胞を、Poly-Dリジンでコーティングした96ウェルプレートに、100μlの新鮮な培地(1×ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するX-VIVO15)中、1×105細胞/ウェルの濃度で播種し、37℃及び5%CO2にて4時間インキュベートした。CAR-T細胞由来の上清またはその希釈液を等量のTGF-β(X-VIVO15中4ng/ml)と混合し、室温で15分間インキュベートして、TGF-βをCAR-T上清中に含まれるTGF-bと複合化させた。100μlの混合物をSBE-Lucレポーター細胞に2つ組で添加し、37℃及び5%CO2にて一晩インキュベートした。TGF-βの最終濃度は1ng/mlであった。各実験には、1ng/mlのTGF-βの存在下でのTGF-β抗体(1D11(BioXcell)またはTGF-β結合剤またはTGFβR2結合剤)の段階的希釈の滴定曲線が含まれていた。
【0373】
翌日、100μlの培養上清を除去し、100μlのルシフェリン-D含有検出試薬(ONE-Step(商標)Luciferase Assay System)を添加した。細胞を再懸濁し、白色検出プレートに移し、Pherastarプレートリーダーを使用して発光を測定した。ルシフェラーゼ活性をCPMとして記録した。MS ExcelまたはGraphpadプリズムを使用してデータを解析した。Graphpadプリズムの用量反応シグモイド曲線(可変傾き)を使用して非線形回帰フィッティングを実行した。IC50値を計算した。
【0374】
阻害活性(%)は、次式を使用して計算した。
阻害(%)=(1-試料のCPM/TGF-β(1ng/ml)処理試料の最大CPM)×100
【0375】
結果からは、構築物TGF-β scFv VH-VL1(配列番号1)及びTGF-β scFv VH-VL2(配列番号2)を分泌するCAR-T細胞由来の上清が、TGF-βシグナル伝達を阻害することが示された(
図4)。追加の構築物を設計し、TGF-βまたはTGFβR2に対する多量体結合剤の分泌についてのルシフェラーゼレポーターアッセイを使用してスクリーニングした(
図5及び
図6)。TGF-β及びTGFβR2に対する多量体抗体を分泌した、TGF-β調節性CAR-T細胞が同定された。多量体TGF-b結合剤は、ヒトCAR-T細胞によって分泌され、リンカーに関係なくTGF-bシグナル伝達を阻害する。以下の図に示すように、4つの異なるリンカーを分析した。同様の結果が、ヒト抗GCC CAR-T細胞を使用して観察された(データは示さず)。
【0376】
実施例5. TGF-B調節性CAR-T細胞は、TGF-βまたはTGFβR2に対する多量体結合剤を分泌する
本実施例は、TGF-βまたはTGFβR2に対する多量体結合剤を分泌するマウスCAR-T細胞のスクリーニング及び同定を説明する。マウスCAR-T細胞を生成するために、Platinum-E レトロウイルスパッケージング細胞株をDMEM 20%FBS及びペニシリン/ストレプトマイシン中で50~70%コンフルエントになるまで増殖させた。CAR構築物及びTGFBモジュレーター(例えば、抗TGF-b scFv単量体、抗TGF-b scFv二量体)をコードする免疫調節系プラスミド、パッケージング構築物、及び形質導入試薬Fugene HDを使用して、製造業者のプロトコルに従ってDNA複合体を調製した。溶液を混合し、室温で10分間インキュベートし、細胞の10cm2ディッシュあたり850μlの複合体を添加した。マウスT細胞を、それぞれBalb/cまたはC57BL/6マウスの脾臓からT細胞分離キットを使用して磁気選択によって分離した。精製マウスT細胞を、RPMI 10%熱不活化FCS、ペニシリン/ストレプトマイシン及びマウスIL-2(30U/ml)中でマウスT細胞活性化ビーズ(1:1比)と共に2日間培養した。トランスフェクションの約48時間後にウイルスを回収し、0.4μmシリンジフィルターで濾過した。T細胞をレトロネクチン(製造業者のプロトコルに従って40μg/mlのレトロネクチンでコーティング)コーティングしたプレートに移し、適切な量のウイルスでスピン形質導入した。形質導入は、様々な時点でフローサイトメトリーによって確認し、定量した。
【0377】
細胞をFACS緩衝液中の250ngのhCD19-hFcタンパク質と共に4℃で1時間インキュベートした。FACS緩衝液で洗浄した後、細胞をヒトFCに対する二次抗体を用いて室温で20分間再懸濁した。いくつかの実験では、CD4、CD8、または他の表面マーカーに対する抗体を加えた。fixable viability dyeを使用して死細胞を分析から除外した。細胞をPBS 2%FCS 4%ホルムアルデヒドで固定した後、フローサイトメトリー(FACS Fortessa)によって分析した。形質導入効率を、CAR染色陽性の生細胞の割合(%)として示す。
【0378】
フローサイトメトリーの結果から、非アーマー化T細胞、TGF-β単量体、TGF-β二量体、及び非形質導入細胞の相対的な割合が示された。形質導入後2日目に採取したマウスCAR-T細胞由来の上清を、TGF-bシグナル伝達の阻害について、SBE-Luc TGF-bレポーターアッセイ(実施例4に記載の方法)において調べた。TGF-b scFv単量体及び二量体を分泌するマウスCAR-T由来の上清は、ルシフェラーゼレポーター活性に基づいてTGF-bシグナル伝達を阻害した。TGF-β及びTGFβR2に対する多量体抗体を分泌した、マウスCAR-T細胞が同定された。
【0379】
形質導入の2日後に上清を回収し、ELISAに使用するまで-80℃で凍結した。ELISAを実施例3に記載のように行った。ヒトTGFbR2に対する結合剤を捕捉するためにヒト組換えTGFbR2-Fcタンパク質を使用し、マウスTGFbR2へのTGFbR2結合剤の結合を調べるためにマウス組換えTGFbR2-Fcタンパク質を使用した。抗flag HRP抗体及びそれぞれの基質を使用して、結合を検出した。
図7に示すように、結合剤hTGFbR2-VH2及びhTGFbR2-VH3単量体及び二量体、ならびにTGFbR2 scFv VH-VL単量体及び二量体の分泌、ならびにそれらのヒトTGFbR2への結合を示す。試験した上清由来の結合剤は、いずれもマウスTGFbR2に結合せず、ヒトTGFBR2に対する特異性が確認された。
【0380】
実施例6. TGF-βシグナル伝達モジュレーターを分泌するCAR-T細胞のin vivo抗腫瘍効果
本実施例は、抗TGF-β mAb分泌CAR-T細胞のin vivo抗腫瘍効果を示す。マウスのアーマー化CAR-T細胞(抗ヒトCD19 CAR及びTGFbシグナル伝達モジュレーターを共発現する)は、非アーマー化CAR-T細胞よりも同系EMT6-hCD19腫瘍の増殖を阻害する。さらに、アーマー化CAR-T細胞は、肝臓と肺の転移を軽減する。CAR-T標的抗原としてヒトCD19とホタルルシフェラーゼを過剰発現するEMT6乳癌細胞株を生成した。EF1aプロモーター制御下のヒトCD19及びピューロマイシン耐性をコードするプラスミドを保有するウイルスをEMT6細胞に形質導入した。ピューロマイシンを使用してEMT6-hCD19細胞を陽性選択し、FACSソーティングによってさらに精製した。EMT6-hCD19細胞に、EF1aプロモーター制御下のホタルルシフェラーゼ及びネオマイシン耐性をコードするプラスミドを保有するウイルス(Amsbio)を5×107IFU/mLで形質導入した(MOI=10、ポリブレン存在下)。G418(500μg/ml)を使用してEMT6-hCD19-Fluc細胞を陽性選択した。
【0381】
6~16週齢のメスのBalb/cマウス(Jackson Labs)の乳房脂肪体(同所性)に0.2×106個の生存可能なEMT6-hCD19-Fluc腫瘍細胞を接種した。移植の6日後、腫瘍サイズは約50mm3に達し、マウスを同様の平均腫瘍サイズ(平均約50mm3)を有する処置群に無作為に割り付け、シクロホスファミド(CPA、200mg/kg 腹腔内)で処置した。翌日、類遺伝子性のCD45.1 Balb/cマウス由来の500,000個のマウスCAR-T細胞を尾静脈に注射した。群1には非形質導入T細胞を投与し、群2にはCAR-T細胞を投与し、群3には抗TGF-β scFv VH-VL1分泌CAR-T細胞を投与した。体重を週2回測定して、毒性をモニタリングした。
【0382】
腫瘍サイズを週2回測定し、腫瘍体積を式:腫瘍体積(mm
3)=長さ×幅×高さ×0.5236を使用して計算した(
図8)。2000mm
3を上回る腫瘍または潰瘍化腫瘍を有するマウスはすべて殺処分した。抗腫瘍効果を、非形質導入T細胞を注射した対照マウスと比較した腫瘍サイズの減少として評価した。完全レスポンダーは、検出可能な腫瘍を有していないマウスとして定義した。
【0383】
TGF-β結合剤を分泌するCAR-T細胞は、非アーマー化CAR-T細胞または非形質導入CAR-T細胞と比較して、高い抗腫瘍効果を示した。ルシフェリンの注射及びIVISによる画像化によって、ホタルルシフェラーゼを発現する腫瘍細胞について、肝臓と肺を画像化した。D-ルシフェリン溶液(D-ルシフェリン、カリウム塩 Vivo Glo tm ルシフェリン)を15mg/mlで調製し、150mg/kgで使用した。TGF-β結合剤を分泌するCAR-T細胞で処置したマウスは、肝臓及び肺の転移を減少させることができた(
図8A~8E)。
【0384】
TGF-β(TGF-b scFv VH-VL1)に対する阻害抗体を分泌するヒトCD19に対するマウスCAR-Tは、非アーマー化CAR-T細胞よりも同系EMT6-hCD19腫瘍の増殖を阻害し、肝臓及び肺への転移を減少させる。アーマー化CAR-T細胞の活性の向上を識別するために、非アーマー化CAR-Tに対して次善の効果を与えるようにCAR-T細胞の数を事前に滴定した。
【0385】
実施例7. TGFbR2細胞外ドメイン(ECD)を分泌するアーマー化マウスCAR-T細胞はTGFbシグナル伝達を阻害する
異なるTGF-βリガンドトラップ(TGF-β scFv VH-VL1~TGFbR2 ECD単量体、ホモ二量体(
図9A)及びヘテロ二量体(
図9B)を分泌するアーマー化マウスCAR-T由来の上清を、非アーマー化CAR-Tと比較するSBE-Luc TGF-βレポーターアッセイを実施した。SBE-Luc TGF-βレポーターアッセイは、TGFβR2細胞外ドメイン(ECD)二量体を分泌するヒトCD19に対するアーマー化マウスCAR-T由来の上清が良好に阻害し、TGF-β scFv VH-VL1二量体と同等の阻害を示すが、単量体はそうではなかったことを示した。形質導入の2日後に上清を回収した。TGFβR2 ECD及びTGFβR1 ECDを含むTGFβR2 ECDヘテロ二量体の阻害を評価した。TGF-β scFV VH-VL1よりも強力にTGF-bシグナル伝達を阻害するTGFβR2 ECDヘテロ二量体を同定した。例示的なTGFβR2 ECD配列を表4に示す。
【0386】
【0387】
【0388】
実施例8. TGF-βシグナル伝達モジュレーターを分泌するアーマー化CAR-T細胞の抗腫瘍効果
本実施例は、抗TGFβ mAbまたはTGFβ R2-ECD分泌CAR-T細胞の相対的なin vivo抗腫瘍効果を示す。
【0389】
TGFβR2 ECD1+2二量体を分泌するマウスCAR-Tは、非アーマー化CAR-T細胞と比較して、in vivoでの抗腫瘍機能の向上を示す。6~16週齢のメスのBalb/cマウス(Jackson Labs)の乳房脂肪体(同所性)に0.2×106個の生存可能なEMT6-hCD19-Fluc腫瘍細胞を接種した。移植の6日後、腫瘍サイズは約50mm3に達し、マウスを同様の平均腫瘍サイズ(平均約50mm3、群あたりn=8)を有する処置群に無作為に割り付け、シクロホスファミド(CPA、200mg/kg 腹腔内)で処置した。翌日、類遺伝子性のCD45.1 Balb/cマウス由来の2百万個のマウスCAR-T細胞を尾静脈に注射した。群1には非形質導入対照T細胞を投与し、群2には非アーマー化CAR-T細胞を投与し、群3にはTGFbR1+2 ECD二量体分泌CAR-T細胞を投与し、群4には全身性抗TGF-β抗体(クローン1D11.16.8、10mg/kg、注射3回/週、静脈内)を投与した。体重を週2回測定して、毒性をモニタリングした。腫瘍サイズを週2回測定し、腫瘍体積を式:腫瘍体積(mm3)=長さ×幅×高さ×0.5236を使用して計算した。2000mm3を上回る腫瘍または潰瘍化腫瘍を有するマウスはすべて、研究所の動物衛生プロトコルに従って殺処分した。抗腫瘍効果を、非形質導入T細胞を注射した対照マウスと比較した腫瘍サイズの減少として評価した。完全レスポンダーは、検出可能な腫瘍を有していないマウスとして定義した。
【0390】
TGF-βリガンドトラップ(mTGFbR2 ECD1+2二量体1)を分泌するヒトCD19に対するマウスCAR-Tは、非アーマー化CAR-T細胞よりも同系EMT6-hCD19腫瘍の増殖を阻害し、非アーマー化CAR-T細胞もしくは非形質導入T細胞を投与するか、または全身性抗TGF-β抗体(1D11、10mg/kg、週3回静脈内投与)で処置した対照マウスでは完全奏効がなかったのに対して、3つの完全奏効を誘導した。(
図10)
【0391】
実施例9.同系腫瘍モデル(MC38-hCD19)におけるTGF-βシグナル伝達モジュレーターを分泌するアーマー化CAR-T細胞の抗腫瘍効果
本実施例は、抗TGFβ mAbまたはTGFβ R2-ECD分泌CAR-T細胞の相対的なin vivo抗腫瘍効果を示す。異なる同系腫瘍モデル(MC38-hCD19)での、抗TGF-b mAb(TGF-b scFv VH-VL1)でアーマー化されたマウスCAR-T細胞の機能の向上。
【0392】
CAR-T標的抗原としてのヒトCD19、及びホタルルシフェラーゼを過剰発現するMC38結腸直腸癌細胞株を生成し、画像化に使用した。簡潔に述べると、EF1aプロモーター制御下のヒトCD19、及びピューロマイシン耐性をコードするプラスミドを保有するウイルス(CD19_FL_WT_pLVX-EF1a-IRES-Puro)をMC38細胞に形質導入した。MC38-hCD19細胞をピューロマイシンを使用して陽性選択した。MC38-hCD19細胞に、EF1aプロモーター制御下のホタルルシフェラーゼ、及びネオマイシン耐性をコードするプラスミドを保有するウイルス(Amsbio、カタログ番号LVP435-PBS、5×10^7IFU/mL、MOI=10)をポリブレンの存在下で形質導入した。MC38-hCD19-Fluc細胞を、G418(ジェネティシン)を使用して陽性選択した。
【0393】
6~16週齢のメスC57BL/6マウス(Jackson Labs)に、0.2×106個の生存可能なMC38-hCD19-Fluc腫瘍細胞を皮下接種した。移植の7日後、腫瘍サイズは約50mm3に達し、マウスを同様の平均腫瘍サイズ(平均約50mm3、群あたりn=8)の処置群に無作為に割り付け、シクロホスファミド(CPA、200mg/kg 腹腔内)で処置した。翌日、類遺伝子性のCD45.1 C57BL/6マウス由来の100,000個のマウスCAR-T細胞(または陰性対照としての非形質導入T細胞)を尾静脈に注射した。群1には、非形質導入T細胞を投与した。群2には、非アーマー化CAR-T細胞を投与した。群3には、抗TGF-β分泌CAR-T細胞(TGF-b scFv VH-VL1)を投与した。体重を週2回測定して、毒性をモニタリングした。腫瘍サイズを週2回測定し、腫瘍体積を式:腫瘍体積(mm3)=長さ×幅×高さ×0.5236を使用して計算した。2000mm3を上回る腫瘍または潰瘍化腫瘍を有するマウスはすべて、研究所の動物衛生プロトコルに従って殺処分した。抗腫瘍効果を、非形質導入T細胞を注射した対照マウスと比較した腫瘍サイズの減少として評価した。完全レスポンダーは、検出可能な腫瘍を有していないマウスとして定義した。
【0394】
TGF-βに対する阻害結合剤(TGF-b scFv VH-VL1)を分泌するCAR-T細胞は、非アーマー化CAR-Tよりも優れた有効性を示し、等量の非アーマー化CAR-T細胞または非形質導入T細胞のいずれかを投与した対照群では完全奏効がなかったのに対し、8匹の処置マウスのうち、7匹で完全奏効を誘導した。(
図11)
【0395】
実施例10. TGF-βシグナル伝達モジュレーターを分泌するCAR-T細胞は宿主免疫応答の活性化を増強する
本実施例は、TGF-βに対する結合剤を分泌するCAR-T細胞によって、宿主の免疫応答の活性化が増強されることがRNA Seqで示されたことを示す。
【0396】
6~16週齢のメスのBalb/cマウス(Jackson Labs)の乳房脂肪体(同所性)に0.2×106個の生存可能なEMT6-hCD19-Fluc腫瘍細胞を接種した。移植の6日後、腫瘍サイズは約50mm3に達し、マウスを同様の平均腫瘍サイズ(平均約50mm3、群あたりn=8)を有する処置群に無作為に割り付け、シクロホスファミド(CPA、200mg/kg 腹腔内)で処置した。翌日、類遺伝子性のCD45.1 Balb/cマウス由来の2百万個のマウスCAR-T細胞を尾静脈に注射した。群1には非形質導入対照T細胞を投与し、群2には非アーマー化CAR-T細胞を投与し、群3には抗TGF-βscFv VH-VL1分泌CAR-T細胞を投与した。群4は全身性抗TGF-β抗体(クローン1D11.16.8、BioXcell、10mg/kg、週3回、静脈内)で処置し、群5にはアイソタイプ対照抗体(クローンMOPC21、BioXcell、10mg/kg、週3回、静脈内)を投与した。体重を週2回測定して、毒性をモニタリングした。腫瘍サイズを週2回測定し、腫瘍体積を式:腫瘍体積(mm3)=長さ×幅×高さ×0.5236を使用して計算した。
【0397】
マウスを+12日目に安楽死させ、腫瘍を採取し、急速冷凍して-80℃で保存した。
図12に示すように、RNAを抽出し、RNA-Seqとそれに続く計算分析を行った。
【0398】
TGF-βscFv VH-VL1を分泌するCAR-Tを投与したマウス由来の腫瘍は、他の群のマウスに比べて、腫瘍浸潤性T細胞(CD3d+、CD3e+、CD3g+)、特にCD8+T細胞(CD8a+)、及び細胞傷害性T細胞(GzmB+)について、スコアが有意に増加していた(
図13)。
【0399】
ssGSEA濃縮スコアでは、TGF-βcFv VH-VL1を分泌するCAR-Tを投与したマウス由来の腫瘍において、T細胞シグネチャー及びIFNgシグネチャーの増加が示され、CAR-T細胞の浸潤の増加及び/または内在性免疫系の活性化が示された。TGF-βscFv VH-VL1を分泌するCAR-Tを投与したマウス由来の腫瘍における内皮活性化、共刺激、及び抗原提示のシグネチャーの増加は、内在性免疫系の活性化を明らかに示している。したがって、遮断抗体(または他の結合剤)によるCAR-T細胞のアーマー化は、内在性免疫応答を向上させることによって、少なくとも部分的にTGF-β経路の抗腫瘍効果を阻害する(
図14)。
【0400】
実施例11. 非アーマー化CAR-T細胞で処置したEMT6-hCD19マウス由来の腫瘍試料のFACS
6~16週齢のメスのBalb/cマウス(Jackson Labs)の乳房脂肪体(同所性)に0.2×106個の生存可能なEMT6-hCD19-Fluc腫瘍細胞を接種した。移植の6日後、腫瘍サイズは約50mm3に達し、マウスを同様の平均腫瘍サイズ(平均約50mm3、群あたりn=8)を有する処置群に無作為に割り付け、シクロホスファミド(CPA、200mg/kg 腹腔内)で処置した。翌日、類遺伝子性のCD45.1 Balb/cマウス由来の2百万個のマウスCAR-T細胞を尾静脈に注射した。群1には非形質導入対照T細胞を投与し、群2には非アーマー化CAR-T細胞を投与し、群3には抗TGF-b scFv VH-VL1単量体を分泌するCAR-T細胞を投与した。体重を週2回測定して、毒性をモニタリングした。腫瘍サイズを週2回測定し、腫瘍体積を式:腫瘍体積(mm3)=長さ×幅×高さ×0.5236を使用して計算した。
【0401】
マウスを+7日目に安楽死させ、腫瘍を採取し、重量を測定し、FACS分析のために処理した。簡潔に述べると、腫瘍を小片に切断し、マウス腫瘍解離キット(Miltenyi)を製造業者の指示に従って使用して消化した。試料をPBS 2%FCSに再懸濁し、濾過し、FACS染色のために96ウェルプレートにプレーティングした。Fc受容体をブロッキングし(TruStain FcX(抗マウスCD16/32)抗体、Biolegend)、CARをrhuCD19(RnD Systems)を使用して4℃で1時間標識し、その後、抗ヒトIgG Fc抗体、TCRa/b、CD8a、CD4、CD25、CD62L、CD11b、Gr1、CD11c、CD45.1、及びCD45を含む表面マーカーを使用してhCD19-Fcについて標識し、固定可能な生死判定色素(ebioscience)を使用して生細胞を染色し、GzmB、Ki67、及びFoxP3を含む細胞内抗原をeBioscience Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Set(Thermofisher)を使用して染色した。試料を濾過し、フローサイトメーターBD Fortessaで取得した。
【0402】
図15に示すように、FACS染色では、非形質導入細胞または非アーマー化CAR-Tを投与した対照と比較して、TGF-β scFv VH-VL分泌CAR-Tを投与したマウス由来の試料において、hCD19+腫瘍細胞の減少と、T細胞浸潤の増加(mg腫瘍組織あたり)が示された。CD45.1+及びCD45.1- T細胞のゲーティングでは、特に内在性T細胞浸潤(CD45.1-)の増加が示される。これらの試料から移入されたCAR-T細胞(CD45.1+)はより高いCAR発現レベルを示し、CD8+T細胞は、より高いCD25発現を示し、活性化の増加を示した。宿主T細胞(CD45.1-)由来のCD8+T細胞ではGzmBの発現が高かったが、これは細胞傷害性が高いことを示している。まとめると、これらのFACSデータは、TGF-βに対する結合剤によるCAR-T細胞のアーマー化がCAR-T細胞の機能及び内在性免疫応答を増強することを示している。
【0403】
実施例12.異種移植モデルは、抗TGF-βまたは抗TGFβR2遮断抗体でアーマー化したヒトGCC-CAR-T細胞の機能の向上を示す
6~16週齢のメスのNSGマウス(Jackson Labs)に2×10
6個の生存可能なGSU腫瘍細胞を皮下接種した。移植の7日後、腫瘍サイズは約50mm3に達し、マウスを同様の平均腫瘍サイズ(平均約50mm3、群あたりn=6)を有する処置群に無作為に割り付けた。翌日、500,000個または100,000個のヒトGCC CAR-T細胞を尾静脈に注射した。群1には非形質導入対照T細胞を投与し、群2には非アーマー化CAR-T細胞を投与し、群3には抗TGF-b scFv VH-VL1単量体を分泌するCAR-T細胞を投与し、群4には抗TGFβR2 VH3単量体を投与し、群5には抗TGFβR2 VHH二量体を分泌するCAR T細胞を投与した。体重を週2回測定して、毒性をモニタリングした。腫瘍サイズを週2回測定し、腫瘍体積を式:腫瘍体積(mm
3)=長さ×幅×高さ×0.5236を使用して計算した。抗TGF-βまたは抗TGFβR2遮断抗体でアーマー化したGCC-CAR-T細胞は、500,000個の移入細胞において非アーマー化対照CAR-Tよりも速い応答を示し、100,000個の移入CAR-T細胞においては、抗腫瘍効果の向上を示した。(
図16)。
【0404】
TGFβモジュレーターの腫瘍濃度及び血漿濃度を、抗Flag免疫捕捉LC/MSアッセイを使用して測定した。
図17A~17Dに示すように、アーマー化CAR-T細胞で処置したマウスの循環中に分泌されたTGF-β抗体または抗TGFbR2抗体は少量であった。示された量のアーマー化または非アーマー化抗GCC CAR-T細胞で処置したマウスから、EDTAチューブを使用して血漿を採取した。
【0405】
図20A~20Cに示すように、アーマー化CAR-T細胞はまた、GCC陽性GSU、HT55、及びMDA-MB-231-FP4 Luc異種移植片モデルにおいて抗腫瘍活性を示した。
【0406】
HT55腫瘍細胞の脾臓内注射とその後のCAR-T細胞の静脈内注射を使用して肝転移を評価した。アーマー化CAR-T細胞は、アイソタイプ対照と比較して肝臓への転移を遅延させた(
図21A~21C)
【0407】
実施例13.GCC陽性腫瘍における抗原刺激の繰り返し
100,000個の非アーマー化またはアーマー化された抗GCC CAR-T細胞(抗GCC CAR及びTGFβモジュレーター(例えば、TGFβR2-VHH)を共発現する)を、TGF-β(1ng/mlまたは10ng/ml)の存在下または非存在下で、200,000個のHT29-GCCまたはHT29親(GCC陰性)腫瘍細胞と共に2つ組で共培養した。3~4日ごとに、ウェルあたり半分のCAR-T細胞を、同じ条件下(TGF-β 1ng/mlまたは10ng/mlの存在下または非存在下)で新しい腫瘍細胞のプレートに移した。上清を採取し、後の評価のために凍結させた。細胞を、細胞計数、及びFACS染色分析で評価した。
【0408】
CellTiterGlo(Promega)を製造業者のプロトコルに従って使用して、腫瘍細胞を評価した。Pherastarプレートリーダーを使用してプレートを分析した。死滅率は、次式を使用して評価した:
死滅率(%)=(1-(試験ウェルからのシグナル/対照ウェルからのシグナル))*100
【0409】
対照ウェルには、CAR-T細胞に使用したものと同じドナー由来の非形質導入T細胞と共培養した腫瘍細胞が含まれていた。ヒトCD4、CD8、CD25に対する蛍光標識抗体、ならびに枯渇マーカーPD-1、TIM-3、Lag-3、及びTIGIT抗体(Biolegend)を使用して、FACS染色を週1回実施した。固定可能な生死判定色素efluor506(Thermofisher、製造業者のプロトコルに従って)を使用して死細胞を除外した。CAR発現細胞をGCC-hFcと共に4℃で1時間インキュベートし、PBS 2%FCSで洗浄し、マウス抗ヒトIgG二次抗体で検出した(30分、4℃)。
【0410】
慢性的な抗原活性化をシミュレートする標的細胞による数回の再刺激の後、TGF-βは、CAR-T細胞機能の阻害を誘導する。TGFβモジュレーター(例えば、TGFβR2 VHH二量体)を分泌するCAR-T細胞のみが、TGF-β(1ng/mlまたは10ng/ml)刺激の阻害効果から保護される(
図18A~18C)。CAR-T死滅に対する阻害効果は、増殖の阻害及び疲労マーカーLag3の誘導と相関する。
【0411】
実施例14.メソテリン(Msln)陽性腫瘍における抗原刺激の繰り返し
Mslnに対するCAR及びTGFβモジュレーター(例えば、TGFβR2-VHもしくはdnTGFbR2)、またはGFPに対する対照VH(Msln対照VH)を共発現する、およそ100,000個のiPSC由来抗Msln CAR-T細胞を、TGF-β(R&D Systems、10ng/ml)の存在下または非存在下で、ヒトMslnを過剰発現する40,000個のMiaPaca-2腫瘍細胞と共に2つ組で共培養した。TGFβR2-VHは、CAR-T細胞から分泌され、dnTGFbR2は、CAR-T細胞の膜に結合した。3~4日ごとに、ウェルあたり半分のCAR-T細胞を、同じ条件下(TGF-β 10ng/mlの存在下または非存在下)で新しい腫瘍細胞のプレートに移した。上清を採取し、後の評価のために凍結させた。選択された時点でCAR-T細胞をフローサイトメトリーによって計数し、FACS表現型解析を実施した(
図22A)。
【0412】
CellTiterGlo(Promega)を製造業者のプロトコルに従って使用して、腫瘍細胞の生存率を評価した。Pherastarプレートリーダーを使用してプレートを分析した。死滅率は、次式を使用して評価した:
【0413】
【0414】
対照ウェルには、エフェクター(すなわち、CAR-T)細胞は含まれず、腫瘍細胞のみが含まれていた。細胞傷害率を
図22Bに示す。
Sytox Red色素(Thermofisher、製造業者のプロトコルに従って)を使用して死細胞を除外することによって細胞数を計測し、HTSユニットを使用してFortessaフローサイトメーター(BD Biosciences)上で等量の細胞懸濁液を取得した。生存CAR-T細胞を、生存細胞、単一細胞、及びサイズをゲーティングすることによって計数した。結果を外挿してウェルあたりの細胞数を取得した。
【0415】
慢性抗原活性化をシミュレートする標的細胞による数回の再刺激の後、TGF-βが、CAR-T細胞機能の阻害(すなわち死滅)を誘導し、CAR-T細胞の増殖を阻害したことが観察された。TGFβモジュレーター(例えば、TGFβR2 VH二量体の分泌または膜結合dnTGFbR2の発現)を発現するCAR-T細胞のみが、TGF-β(10ng/ml)の阻害効果から保護され、対照VHは保護されなかった。
【0416】
配列表
以下の表5は、分類記載及び本明細書に開示される配列を示す。
【0417】
【0418】
【0419】
【0420】
【0421】
【0422】
【0423】
【0424】
【0425】
【0426】
【0427】
【0428】
【0429】
均等物及び範囲
当業者は、ただの日常的な実験を使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記説明に限定されることを意図するものではなく、むしろ以下の特許請求の範囲に記載されるとおりである。
【0430】
このように、本発明の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様について記載してきたが、当業者には様々な変更、修正、及び改善が容易に明らかとなることが十分に理解される。そのような変更、修正、及び改善は、本開示の一部であることを意図し、本発明の趣旨及び範囲内であることを意図する。したがって、前述の記載及び図面は単なる一例にすぎず、本発明は以下の特許請求の範囲によって詳細に記載される。
【0431】
本請求要素を修正するために、特許請求の範囲内における「第1」、「第2」、「第3」などの通常用語の使用は、それ自体が、1つの請求要素の任意の優先度、優先権、もしくは順序を別の請求要素に対して暗示するものではないか、または方法のその行為が行われる時間的順序を暗示するものでもないが、ある特定の名称を有する1つの請求要素を、同じ名称を有する(通常用語の使用を別として)別の請求要素と区別し、当該請求要素を区別するための単なる標識として使用される。
【0432】
「a」及び「an」という冠詞は、本明細書及び特許請求の範囲において本明細書で使用される場合、特に明確な反対の指示がない限り、複数の指示対象を含むと理解されるべきである。群の1つ以上のメンバー間に「または」を含む請求項または説明は、特に反対の指示がない限り、さもなければ文脈から明らかでない限り、群のメンバーのうち1つ、2つ以上、またはすべてが、所与の生成物またはプロセス中に存在するか、それに用いられるか、さもなければそれに関連する場合に満たされると考えられる。本発明は、群のうちの正確に1つのメンバーが、所与の生成物またはプロセス中に存在するか、それに用いられるか、さもなければそれに関連する実施形態を含む。本発明はまた、群のメンバーのうち2つ以上、または全体が、所与の生成物またはプロセス中に存在するか、それに用いられるか、さもなければそれに関連する実施形態を含む。さらに、本発明は、別段の指示がない限り、または矛盾もしくは不一致が生じることになると当業者に明らかでない限り、列挙されている請求項のうち1つ以上からの1つ以上の制限、要素、条項、記述用語などが、同じ基本請求項(または関連するような、任意の他の請求項)に従属する別の請求項に導入されるすべての変更、組合せ、及び順列を包含すると理解されるべきである。要素が一覧表として(例えば、マーカッシュ群または同様の形式で)提示される場合、その要素の各部分群も開示され、いずれの要素(複数可)もこの群から除去され得ることが理解されるべきである。一般に、本発明、または本発明の態様が特定の要素、特徴などを含むとみなされる場合、本発明の特定の実施形態または本発明の態様が、そのような要素、特徴などからなるか、またはそれらから本質的になると理解されるべきである。簡潔にするために、それらの実施形態は、いずれの場合においても本明細書では多数の用語で具体的に記載されているわけではない。特定の除外が本明細書に列挙されているかどうかにかかわらず、本発明の任意の実施形態または態様が、特許請求の範囲から明示的に除外され得ることも理解されるべきである。本発明の背景を記載し、その実施に関する追加の詳細を提供するために本明細書で言及される刊行物、ウェブサイト及び他の参考資料は、参照によって本明細書に援用される。
【国際調査報告】