(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】がん治療のための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20240205BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240205BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240205BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240205BHJP
C07D 519/00 20060101ALI20240205BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20240205BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240205BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
C07D519/00 301
C07D519/00 CSP
A61K31/454
A61K31/496
A61P15/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547714
(86)(22)【出願日】2022-02-04
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 IB2022050999
(87)【国際公開番号】W WO2022167999
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】大橋 紹宏
(72)【発明者】
【氏名】岩井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】南部 忠洋
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジェ
(72)【発明者】
【氏名】エング、カート
(72)【発明者】
【氏名】クランダ、マイケル ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4C072
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C072MM02
4C072UU01
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZA81
4C084ZB26
4C084ZC41
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC37
4C086BC50
4C086CB26
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物、ならびに1つ以上のPARP阻害剤を含む併用療法を使用するがんの治療に関する。
【化1】
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療を必要とする患者においてがんを治療するための方法であって、前記患者に治療有効量の化合物1
【化1】
及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物;ならびに1つ以上のPARP阻害剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記PARP阻害剤は、ニラパリブである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PARP阻害剤は、オラパリブである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記がんは、卵巣癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記がんは、乳癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
化合物1
【化2】
及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物;ならびに1つ以上のPARP阻害剤を含む、医薬組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
がんの治療のために1つ以上のPARP阻害剤と組み合わせて使用するための、化合物1
【化3】
及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物。
【請求項9】
がんの治療のために1つ以上のPARP阻害剤と組み合わせて使用するための医薬の製造のための、化合物1
【化4】
及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、(i)化合物1
【0002】
【0003】
及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物、ならびに(ii)1つ以上のPARP阻害剤を含む併用療法を使用するがんの治療に関する。
【背景技術】
【0004】
CDC7は、MCM2をリン酸化することによってDNA複製の開始に寄与するセリン/スレオニンキナーゼである。CDC7のキナーゼ活性は、細胞周期依存的な様式でその結合タンパク質Dbf4によって制御される。最近の研究は、CDC7がDNA複製はもとよりDNA損傷応答(DDR)にも関与することを明らかにし、これは、CDC7がS期中の細胞増殖及びDDRにおけるゲノム安定性の両方において重要な役割を果たすことを示唆する。さらに、CDC7発現の上昇が様々ながんで報告されており、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、口腔扁平上皮癌、乳腺腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍及び肺腫瘍においてなど不良な予後と相関関係がある。
【0005】
CDC7がDNA複製及びDDRの2つの重要な機能に関与するなら、CDC7は、がん細胞の増殖及び生存に重要な遺伝子であると考えられ、CDC7の阻害により、特定の臓器タイプのがんに限定されない広範囲のがんにおいて抗増殖及びアポトーシスを誘導することが予想される。CDC7阻害剤を含む併用療法などの、新規のがん療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本開示は、がんの治療を必要とする患者においてがんを治療するための方法であって、患者に治療有効量の化合物1
【0007】
【0008】
及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物;ならびに1つ以上のPARP阻害剤を投与することを含む、方法を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、ニラパリブである。
【0010】
いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、オラパリブである。
【0011】
いくつかの実施形態では、がんは、卵巣癌である。
【0012】
いくつかの実施形態では、がんは、乳癌である。
【0013】
本開示の別の態様は、化合物1
【0014】
【0015】
及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物;ならびに1つ以上のPARP阻害剤を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0017】
本開示の別の態様は、がんの治療のために1つ以上のPARP阻害剤と組み合わせて使用するための、化合物1
【0018】
【0019】
及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物を提供する。
【0020】
本開示の別の態様は、がんの治療のために1つ以上のPARP阻害剤と組み合わせた、化合物1
【0021】
【0022】
及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ニラパリブと組み合わされた化合物1が、PHTXS-13Oヒト原発性卵巣癌異種移植片に対していずれか1つの治療単独と比較して強い抗腫瘍活性を示すことを示す。
【
図2】オラパリブと組み合わされた化合物1が、PHTXS-13Oヒト原発性卵巣癌異種移植片に対していずれか1つの治療単独と比較して強い抗腫瘍活性を示すことを示す。
【
図3】PHTXS-13Oヒト原発性卵巣癌異種移植片を有するBALB/cヌードマウスにおける化合物1及びニラパリブの併用抗腫瘍活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
他に定義されない限り、本明細書中で使用するすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。したがって、以下の用語は、以下の意味を有することを意図する:
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、その文脈に別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、開示される化合物の「投与」は、例えば、本明細書に記載の任意の好適な配合物または投与経路を使用して、本明細書に記載の化合物、またはそのプロドラッグもしくは他の薬学的に許容される誘導体を対象に送達することを包含する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」は、以下に示されるように、疾患の治療を含むが、これに限定されない目的の用途を達成するのに十分な、本明細書に記載される化合物または医薬組成物の量を指す。いくつかの実施形態では、検出可能な癌細胞の死滅または成長もしくは拡散の阻害、腫瘍のサイズまたは数、あるいは癌のレベル、ステージ、進行または重症度の他の尺度に効果的な量である。治療有効量は、目的の用途(インビトロもしくはインビボ)、または処置されている対象及び疾患状態、例えば、対象の体重及び年齢、疾患状態の重症度、投与手法などに応じて変動し得、当業者はその量を容易に決定することができる。本用語は、標的細胞中で特定の応答、例えば、細胞遊走の低下を誘導することになる用量にも適用される。特定の用量は、例えば、選択された特定の化合物、対象の種及びそれらの年齢/既存の健康状態または健康状態のリスク、従うべき投薬レジメン、疾患の重症度、他の剤と組み合わせて投与されるか否か、投与のタイミング、投与される組織、ならびに運ばれる物理的送達システムに応じて変動する。
【0028】
本明細書で使用するとき、「治療」及び「治療すること」は、治療上の利益を含むが、これに限定されない有益なまたは所望の結果を得るためのアプローチを指す。治療上の利益は、治療される基礎障害の根絶または改善を意味する。また、治療上の利益は、患者が依然として基礎障害に罹患している可能性があっても、改善がその患者で観察されるような、基礎障害と関連する生理学的症状のうちの1つ以上の根絶または改善で達成される。
【0029】
本明細書で使用される場合、投与が想定される「対象」または「患者」は、ヒト(すなわち、あらゆる年齢層の男性もしくは女性)または他の霊長類を含むが、これらに限定されない。
【0030】
「含むまたは含むこと」という用語は、「を含むが、これに限定されない」を指す。
【0031】
本開示は、治療を必要とする患者においてがんを治療するための方法を提供する。方法は、それを必要とする患者に治療有効量の(i)化合物1
【0032】
【0033】
及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物、ならびに(ii)1つ以上のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤を投与することを含む。
【0034】
本開示は、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物ならびにPARP阻害剤を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0035】
本開示は、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物を含む組成物ならびにPARP阻害剤を含む組成物を含む薬学的組み合わせをさらに提供する。
【0036】
本開示は、がんを治療するために使用するための説明書と共にそれぞれ別々に包装された化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物ならびにPARP阻害剤を含む組み合わせを含有する販売用物品を含むキットをさらに提供する。
【0037】
本開示の併用療法は、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物を含む。化合物1は、以下の構造を有する。
【0038】
【0039】
化合物1の化学名は、2-[(2S)-1-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-2-イル]-6-(3-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(3H)-オンである。化合物1は、Cdc7キナーゼ阻害剤である。
【0040】
化合物1以外のCDC7阻害剤も、PARP阻害剤と組み合わせて良好な抗腫瘍効果を示すことが予想される。したがって、別の実施形態では、本開示は、(i)化合物1以外のCDC7キナーゼ阻害剤及び(ii)PARP阻害剤を含む併用療法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、CDC7キナーゼ阻害剤は、LY3143921、KC-459、MSK-777またはRXDX-103から選択されてもよい。したがって、本開示は、がんの治療を必要とする患者においてがんを治療するための方法であって、患者に治療有効量のCDC7キナーゼ阻害剤及び1つ以上のPARP阻害剤を投与することを含む、方法も提供する。
【0041】
化合物1の互変異性体または化合物1の薬学的に許容される塩もしくは水和物も、本開示に包含される。化合物1が互変異性体を有する場合、各異性体も本開示に含まれる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「化合物1及び/またはその互変異性体」などの語句はすべて、化合物1及びすべてのその互変異性体型を意味すると理解される。非限定例として、互変異性化は、化合物1のピラゾール及びピリミジン基で生じる可能性がある。化合物1で生じる可能性のある互変異性化の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0043】
【0044】
化合物1及び/またはその互変異性体は、薬学的に許容される塩の形態で使用されてもよい。薬学的に許容される塩の例としては、無機塩基との塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、及び塩基性または酸性アミノ酸との塩が挙げられる。
【0045】
化合物1及び/またはその互変異性体は、水和物(例えば、半水和物)、非水和物、溶媒和物または非溶媒和物であってもよく、そのすべてが本開示に包含される。いくつかの実施形態では、化合物1及び/またはその互変異性体は、半水和物である。
【0046】
化合物1及び/またはその互変異性体またはその薬学的に許容される塩またはその水和物またはその結晶形は、PCT公開番号WO2011/102399、米国特許第8,722,660号、米国特許第8,921,354号、米国特許第8,933,069号、及び米国特許公開第US2015/158882号に記載の製造方法に従って得ることができる。これらは、参照によりその全体及びすべての目的のために本明細書に組み込まれるか、またはそれに類似する方法である。
【0047】
化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物は、結晶の形態(例えば、結晶状形態A、結晶状形態Iなど)であってもよく、結晶の結晶形態は、単一または複数であり得、これらは両方とも化合物1に含まれる。結晶は、2017年10月5日に公開のPCT公開第WO2017/172565号(あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている形態であり得るか、その方法によって生成され得る。いくつかの実施形態では、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物は、WO 2017/172565に記載されている結晶状形態Iの形態であってもよい。いくつかの実施形態では、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物は、化合物1半水和物(すなわち、2-[(2S)-l-アザビシクロ[2.2.2]オクタ-2-イル]-6-(3-メチル-lH-ピラゾル-4-イル)チエノ[3,2-d]ピリミジン-4(3H)-オン半水和物)の結晶状形態である。例えば、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物は、化合物1の半水和物の結晶状形態Iであり得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、併用療法は、PARP阻害剤を含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、ニラパリブ、オラパリブ、ベリパリブ、ルカパリブ、パミパリブ、イニパリブ及びテラゾパリブからなる群から選択される。
【0050】
いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、ニラパリブである。
【0051】
いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、オラパリブである。
【0052】
下記実施例のセクションでは、PARP阻害剤を使用した併用療法のインビボ試験について記載する。多数のPARP阻害剤を、がん細胞株において試験した。結果は、本開示の併用療法の有効性を示している。
【0053】
いくつかの実施形態では、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物ならびにPARP阻害剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,19th Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,1995で開示されているものなどの従来の技術に従って薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに任意の他の既知の補助薬及び賦形剤と共に医薬組成物として製剤化されてもよい。
【0054】
本開示の実施形態で使用される医薬組成物としては、希釈剤、増量剤、塩、バッファー、界面活性剤(例えば、Tween-80などの非イオン性界面活性剤)、安定剤(例えば、糖もしくはタンパク質を含まないアミノ酸)、保存料、組織固定剤、可溶化剤、及び/または医薬組成物に含めるのに適した他の材料も挙げることができる。
【0055】
本開示の実施形態で使用される化合物は、経口、経鼻、吸入、局所(頬、経皮、及び舌下を含む)、直腸、膣、及び/または非経口経路などの任意の適した経路を介して投与され得る。
【0056】
特定の実施形態において、本開示で使用される1つ以上の化合物は、例えば、不活性希釈剤または同化性食用担体と共に経口投与される。活性成分は、硬質または軟質殻ゼラチンカプセルに封入され得るか、または錠剤に圧縮され得る。経口投与に適した医薬組成物には、当該技術分野において適切であることが知られているような担体を含有する、消化性錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁剤、シロップ、オブラートなどが含まれる。
【0057】
特定の実施形態では、本開示で使用される1つ以上の化合物は、非経口投与される。本明細書で使用される場合、「非経口投与」及び「非経口投与される」という語句は、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、通常、注射によるものであり、上皮、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入を含む。
【0058】
本開示の方法は、がんを有する患者に効果的な治療を提供する。いくつかの実施形態では、本開示の併用療法で治療されるがんは、Cdc7が関係するがん(例えば、結腸直腸癌(例えば、転移性結腸直腸癌)、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(例えば、扁平上皮非小細胞肺癌(局所進行性扁平上皮非小細胞肺癌及び転移性扁平上皮非小細胞肺癌など))、中皮腫、膵癌(例えば、転移性膵癌)、咽頭癌、喉頭癌、食道癌(例えば、扁平上皮食道癌)、胃癌、十二指腸癌、小腸癌、乳癌、卵巣癌、精巣腫瘍、前立腺癌、肝癌、甲状腺癌、腎癌、子宮癌、脳腫瘍、網膜芽細胞腫、皮膚癌、骨腫瘍、膀胱癌、血液癌(例えば、多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫、ホジキン病、慢性骨髄増殖性疾患)である。
【0059】
いくつかの実施形態では、本開示の併用療法で治療されるがんは、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(例えば、局所進行扁平上皮非小細胞肺癌及び転移性扁平上皮非小細胞肺癌を含む扁平上皮非小細胞肺癌))、結腸直腸癌(例えば、転移性結腸直腸癌)、卵巣癌、乳癌及び膵癌(例えば、転移性膵癌)からなる群から選択される。
【0060】
いくつかの実施形態では、本開示の併用療法で治療されるがんは、卵巣癌である。いくつかの実施形態では、本開示の併用療法で治療されるがんは、乳癌である。
【0061】
いくつかの実施形態では、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物の用量強度は、5から200mgの範囲である。例えば、いくつかの実施形態では、医薬品は、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、または200mgの用量強度の化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物を含む。いくつかの実施形態では、成人(体重約60kg)に投与される化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物の1日当たりの用量は、10から200mgの範囲である。他の実施形態では、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物の成人に対する1日当たりの用量は、約1から1000mg、約3から300mg、または約10から200mgであり、1回の投与で与えられるか、または1日2回もしくは3回に分けて投与され得る。いくつかの実施形態では、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物は、経口投与される。
【0062】
いくつかの実施形態では、併用療法はニラパリブを含み、ニラパリブは、約100mg/日から約300mg/日の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ニラパリブは、経口投与される。いくつかの実施形態では、ニラパリブは、毎日投与される。
【0063】
いくつかの実施形態では、併用療法はオラパリブを含み、オラパリブは、約400mg/日から約600mg/日の用量で投与される。いくつかの実施形態では、オラパリブは、経口投与される。いくつかの実施形態では、オラパリブは、毎日投与される。
【0064】
特定の実施形態では、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物は、経口投与される。いくつかの実施形態では、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物は、毎日、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、週に1回、2週間に1回、または4週間に1回投与される。
【0065】
特定の実施形態では、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物ならびにPARP阻害剤は、同時にまたは任意の順序で連続的に投与されてもよい。特定の実施形態では、それらは、別々に、または1つ以上の医薬組成物中で一緒に投与されてもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物は、がんを有する患者へのPARP阻害剤の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間前)、それと同時に、またはその後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、もしくは12週間後)に投与されてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、併用療法は28日サイクルを含み、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物は、1~28日目に1日1回投与され、ニラパリブは、1~28日目に1日1回投与される。
【0068】
いくつかの実施形態では、併用療法は28日サイクルを含み、化合物1及び/またはその互変異性体あるいはその薬学的に許容される塩または水和物は、1~28日目に1日1回投与され、オラパリブは、1~28日目に1日2回投与される。
【実施例】
【0069】
実施例1 患者由来の異種移植(PDX)モデルにおけるPARP阻害剤と組み合わせた化合物1のインビボ抗腫瘍活性
PARP阻害剤と組み合わせた化合物1のインビボ抗腫瘍活性を調査するために、患者由来の異種移植(PDX)モデルを使用した試験を行った。患者由来の腫瘍を以下の方法によって接種した。
方法:腫瘍小片(およそ2×2×2mm)をヌードマウスに皮下接種することによって、患者由来の腫瘍をヌードマウスに維持した。異種移植試験のために腫瘍サイズがおよそ130mm3(例えば、125~130mm3)のマウスを投薬の開始日の前日(0日目)に各用量群にランダムに割り当てた。化合物1(結晶状形態I)を、0.5w/v%メチルセルロースを含む溶液に懸濁させ、マウスに経口投与した。併用薬物を表2に示す通りに投与した。腫瘍サイズをノギスによって測定し、腫瘍体積を方程式V=(LW2)/2を使用して推定した。式中、L及びWはそれぞれ、腫瘍の長さ及び幅であり、立方ミリメートル単位で報告する。この試験の結果を表2に示した。腫瘍増殖に対する併用効果の統計分析を以下の通りに行った。すべての腫瘍値(腫瘍体積または光子束)は、log10形質転換前に1の値がそれらに追加される。これらの値を治療群全体にわたり比較して、経時的な傾向の差が統計学的に有意であるかどうかを評価した。治療群の組を比較するために、最尤法を使用して以下の混合効果線形回帰モデルをデータに適合させた。
【0070】
【0071】
式中、Yijkは、i回目の治療におけるk番目の動物のj番目の時点におけるlog10腫瘍値であり、Yi0kは、i回目の治療におけるk番目の動物の0日目(ベースライン)log10腫瘍値であり、dayjは中心時点中央値であり、(day2
jと共に)連続変数として扱われ、eijkは残余誤差である。空間べき乗則共分散行列を使用して、同じ動物に対して経時的に繰り返した測定を説明した。交互作用項ならびにday2
j項は、統計学的に有意でない場合は除去した。尤度比検定を使用して、所与の組の治療群が統計学的に有意な差を示したかどうかを評価した。フルモデルの-2対数尤度をいかなる治療(treat)項も伴わないもの(制約モデル)と比較し、値の差を、カイ二乗検定を使用して検定した。検定の自由度は、フルモデルの自由度と制約モデルの自由度の間の差として計算した。対数腫瘍値の予測される差(Yijk-Yi0k、log10(0日目からの倍率変化)と解釈することができる)を上記のモデルから取得して、各治療群の平均AUC値を計算した。次に、dAUC値を以下の通り計算した。
【0072】
【0073】
この仮定されるAUCctlは正であった。AUCctlが負の場合、上記の式に-1を乗じた。相乗効果分析では、観察された対数腫瘍値の差を使用して、各動物のAUC値を計算した。治療群の動物が試験から除去された場合、最後に観察された腫瘍値を、後に続くすべての時点に繰り越した。対照またはビヒクル群のAUCを、上記のペアワイズモデルからの予測値を使用して計算した。本発明者らは、相乗効果の尺度を次の通り定義した。
【0074】
【0075】
式中、Ak及びBkは、個々の治療群のk番目の動物であり、ABkは、併用治療群のk番目の動物である。AUCctlは、モデルが予測した対照群のAUCであり、変動のない定数として扱った。相乗効果スコアの標準誤差を、群A、B、及びABの標準誤差の二乗和平方根として計算した。自由度は、ウェルチ-サタスウェイトの式を用いて推定した。仮説検定を実施して、相乗効果スコアが0と異なるか否かを判断した。P値を、相乗効果スコアを標準誤差で割ることによって計算し、t分布(両側)に対して上で計算した自由度を用いて検定した。この効果を4つの異なるカテゴリーに分類した。相乗効果スコアが0未満の場合は相乗的と見なし、相乗効果スコアが統計学的に0と異ならない場合は相加的と見なした。相乗効果スコアが0より大きいが、併用の平均AUCが2つの単剤治療間の最低平均AUCよりも低い場合、併用は、相加的未満であった。相乗効果スコアが0より大きく、併用の平均AUCが少なくとも1つの単剤治療の平均AUCよりも高い場合、併用は拮抗的であった。間隔分析は、必要に応じて、別の治療群及び時間間隔と比較される指定された治療群及び時間間隔を対象とした。所与の群、時間間隔、及び動物に関して、1日当たりの腫瘍増殖率を以下によって推定した。
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式中、ΔYは、対象の間隔にわたるlog10腫瘍体積の差であり、Δtは、時間間隔の長さである。これらの時点の一方または両方がない場合は、その動物を無視した。次に、動物全体にわたる平均率を、不等分散での両側独立t検定を使用して比較した。この試験の試験的性質から、調査した複数の比較及びエンドポイントに対して予め指定された調整はなかった。この分析では、0.05未満のすべてのP値は、統計学的に有意であると見なした。
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投与開始後の平均腫瘍体積の変化を
図1及び2に示す。ニラパリブまたはオラパリブと組み合わせた化合物1は、良好な抗腫瘍効果を示した。
【0080】
【0081】
図3は、PHTXS-13Oヒト原発性卵巣癌異種移植片を有するBALB/cヌードマウスにおける化合物1及びPARP阻害剤、ニラパリブの別の併用抗腫瘍活性を示す。異種移植したマウスに化合物1を60mg/kg及びニラパリブを50mg/kg、1日1回(qd)21日間投与した。有効性データは、ビヒクル対照における平均腫瘍体積(n=8)としてプロットした。薬物治療の終了後、指定した期間、腫瘍サイズを継続的に測定した。
【国際調査報告】