IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローバルウェーハズ カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2024-506372結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム
<>
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図1
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図2
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図3
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図4
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図5
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図6
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図7
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図8
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図9
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図10
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図11
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図12
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図13
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図14
  • 特表-結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-13
(54)【発明の名称】結晶引き上げ装置の領域の過渡熱応答を取得する方法とシステム
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240205BHJP
   C30B 15/26 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
C30B29/06 502Z
C30B15/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548845
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 US2022016475
(87)【国際公開番号】W WO2022177910
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】63/200,119
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ジェン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チ-ユン
(72)【発明者】
【氏名】ツェン,シエン-タ
(72)【発明者】
【氏名】バガバト,スミート エス
(72)【発明者】
【氏名】ハラジャデー,バヒッド
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077EG18
4G077EG19
4G077EH06
4G077EH07
4G077PF04
4G077PF07
(57)【要約】
シリコンインゴットの製造のためのシステムであって、結晶引き上げ装置と、高温計と、赤外線(IR)カメラと、制御装置とを含む。結晶引き上げ装置は、1つ以上の構成要素をその中に有するホットゾーンを含み、その中でシリコンインゴットを引き上げることができる。高温計は、ホットゾーン内の対象領域を監視するために配置されている。IRカメラは、ホットゾーン内の1つ以上の追加の対象領域を監視するために配置されている。制御装置は、結晶引き上げ装置、高温計、IRカメラに接続されている。制御装置は、シリコンインゴットを製造するために結晶引き上げ装置を制御し、シリコンインゴットを製造している間に高温計からホットゾーン内の対象領域の温度データを受信し、シリコンインゴットを製造している間にIRカメラから1つ以上の追加の対象領域のIR画像を受信するようにプログラムされている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンインゴットを製造するためのシステムであって、
内部に複数の構成要素を含むホットゾーンを有し、シリコンインゴットが引き上げられる結晶引き上げ装置と、
前記ホットゾーン内の対象領域を監視するように配置された高温計と、
前記ホットゾーン内の1つ以上の追加の対象領域を監視するように配置された赤外線(IR)カメラと、
前記結晶引き上げ装置、前記高温計、前記IRカメラに接続された制御装置と、
を含み、
前記制御装置は、以下の1つまたは両方:
前記結晶引き上げ装置を制御して、前記複数の構成要素の1つ以上の構成要素の特性に段階的な変化を導入し、
前記特性の段階的な変化が導入される前、導入中、導入後に、前記高温計から前記ホットゾーン内の前記対象領域の温度データを受信すること、
および、
前記特性の段階的な変化が導入される前、導入中、導入後に、前記IRカメラから前記1つ以上の追加の対象領域のIR画像を受信すること、
を実行するようにプログラムされている
システム。
【請求項2】
前記ホットゾーン内の前記1つ以上の構成要素は、サセプタと、反射体と、るつぼと、サイドヒータと、底ヒータと、冷却ジャケットとを含み、
シリコンインゴットが製造されている場合には、前記るつぼ内のシリコン融液および前記シリコン融液から延ばされるシリコンインゴットを含む
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ホットゾーン内の前記対象領域は、前記サセプタの一部またはシリコン融液の表面の一部を含む、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上の追加の対象領域は、前記反射体の一部、前記シリコンインゴットの一部、前記シリコン融液の表面の一部から選択される
請求項2または請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上の構成要素の特徴の前記段階的な変化は、
前記るつぼの1つ以上の位置の段階的な変化と、
前記サセプタの位置の段階的な変化と、
前記サイドヒータの電力出力の段階的な変化と、
前記底ヒータの電力出力の段階的な変化と、
前記反射体の位置の段階的な変化と、
前記冷却ジャケットの位置の段階的な変化と、
前記サイドヒータまたは前記底ヒータの位置の変化と、を含む
請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
シリコンインゴットを製造するためのシステムであって、
内部に1つ以上の構成要素を有するホットゾーンを含み、シリコンインゴットを引き上げることができる結晶引き上げ装置と、
前記ホットゾーン内の対象領域を監視するように配置された高温計と、
前記ホットゾーン内の1つ以上の追加の対象領域を監視するように配置された赤外線(IR)カメラと、
前記結晶引き上げ装置と、高温計と、前記IRカメラとが接続された制御装置と、を含み、
前記制御装置は、シリコンインゴットを製造するために、前記結晶引き上げ装置を制御し、
前記シリコンインゴットを製造しながら、前記高温計から前記ホットゾーン内の前記対象領域の温度データを受信し、
前記シリコンインゴットを製造しながら、前記IRカメラから1つ以上の追加の対象領域のIR画像を受信するようにプログラムされている
システム。
【請求項7】
前記ホットゾーン内の前記1つ以上の構成要素は、サセプタと、反射体と、るつぼと、シリコンインゴットが製造される場合には、前記るつぼ内のシリコン融液および前記シリコン融液から延びるシリコンインゴットとを含む
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ホットゾーン内の前記対象領域は、前記サセプタの一部または前記シリコン融液の表面の一部を含む
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記1つ以上の追加の対象領域は、前記反射体の一部と、前記シリコンインゴットの一部と、前記シリコン融液の表面の一部とから選択される
請求項7または請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御装置に通信可能に結合されたコンピューティングデバイスをさらに含み、
前記コンピューティングデバイスは、
前記シリコンインゴットを製造するための前記結晶引き上げ装置の動作に関する動作データを受信し、
前記シリコンインゴットの製造中に取得された前記ホットゾーン内の前記対象領域の前記温度データを受信し、
前記シリコンインゴットの製造中に取得された前記1つ以上の追加の対象領域の前記IR画像を受信するようにプログラムされている
請求項6から9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記コンピューティングデバイスは、さらに、
前記受信したIR画像からIR温度データを抽出し、
前記抽出されたIR温度データ、前記受信した動作データ、および前記受信した温度データを、前記コンピューティングデバイスによる前記シリコンインゴットの製造のシミュレーションに使用される対応するデータと比較し、
前記抽出されたIR温度データ、前記受信した操作データ、および前記受信した温度データとの比較に基づいて、前記対応するデータを更新するようにプログラムされている
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御装置は、さらに、
前記受信したIR画像からIR温度データを抽出し、
前記抽出されたIR温度データ、前記受信した動作データ、および前記受信した温度データを、コンピューティングデバイスによる前記シリコンインゴットの製造のシミュレーションに使用される対応するデータと比較し、
前記抽出されたIR温度データ、前記受信した操作データ、および前記受信した温度データとの比較に基づいて、前記対応するデータを更新するようにプログラムされている
請求項6から9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
結晶引き上げ装置のホットゾーン内の対象領域を監視するように高温計を配置し、
前記結晶引き上げ装置の前記ホットゾーンは、その中に第1の複数の構成要素を含む第1の構成を有し、
前記ホットゾーン内に1つ以上の追加の対象領域を監視できるように赤外線(IR)カメラを配置し、
前記結晶引き上げ装置を制御して、前記複数の構成要素の1つ以上の構成要素の特性に段階的な変化を導入し、
以下の1つまたは両方:
前記特性の段階的な変化が前記ホットゾーンの前記第1の構成に導入される前、導入中、導入後に、前記高温計から前記ホットゾーン内の前記対象領域の第1の温度データを受信すること、
および、
前記特性の段階的な変化が前記ホットゾーンの前記第1の構成に導入される前、導入中、導入後に、前記IRカメラから前記1つ以上の追加の対象領域の第1のIR画像を受信すること
を実行し、
前記結晶引き上げ装置の前記ホットゾーン内の少なくとも1つの構成要素を変更し、第2の複数の構成要素を有する前記ホットゾーンの第2の構成を生成し、
前記結晶引き上げ装置をコントロールして、前記ホットゾーンの前記第2の構成の前記特性に前記段階的な変化を再導入し、
以下の1つまたは両方:
前記特性の段階的な変化が前記ホットゾーンの前記第2の構成に再導入される前、導入中、導入後に、前記高温計から前記ホットゾーン内の前記対象領域の第2の温度データを受信すること、
および、
前記特性の段階的な変化が前記ホットゾーンの前記第2の構成に再導入される前、導入中、導入後に、前記IRカメラから前記1つ以上の追加の対象領域の第2のIR画像を受信すること、
を実行する
ことを含む方法。
【請求項14】
さらに、コンピューティングデバイスを使用して、前記第1の温度データと前記第2の温度データ、前記第1のIR画像および前記第2のIR画像、
または、
前記第1の温度データと前記第2の温度データ、前記第1のIR画像と前記第2のIR画像、
を分析し、前記ホットゾーンの前記第1の構成と前記ホットゾーンの前記第2の構成の熱特性を比較することを含む
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ホットゾーンの前記第1の構成または前記ホットゾーンの前記第2の構成を好ましい熱特性を有するものとして選択することをさらに含む
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ホットゾーンの前記第1の構成または前記ホットゾーンの前記第2の構成のうち選択された1つを有するシリコンインゴットを製造するように前記結晶引き上げ装置を制御することをさらに含む
請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【出願との相互参照】
【0001】
本出願は、2021年2月16日に出願された米国仮特許出願第63/200,119号に対する優先権を主張し、その開示全体が参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、結晶引き上げ装置および単結晶インゴットの製造に関し、より具体的には、結晶引き上げ装置内の領域の過渡的な熱応答を捕捉するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
単結晶インゴットは、結晶引き上げ装置で高温および真空条件下で製造される。結晶の温度、結晶を引き上げる融液、および結晶引き上げ装置内の構成要素は、シリコンインゴットの生産に影響を与える。シリコンインゴットの製造中、これらの温度は、条件や変数の変化に応じて変化する。現在のところ、結晶引き上げ装置内部の温度場の過渡特性を測定する実用的で信頼できる正確な方法はない。特に、シリコンインゴット(本明細書では結晶とも呼ぶ)、インゴットを引き上げる融液、または結晶引き上げ装置のホットゾーン内の表面の温度場の過渡特性を測定するそのような方法はない。一般的な接触または非接触の測定方法では、結晶炉やホットゾーンの静的な温度場の測定が困難であり、ましてやそのような温度場の過渡特性を測定することは困難である。
【0004】
1つの既知の方法では、例えば、高温計を利用して、選択された1点の結晶表面温度を監視する。この測定値を結晶引上げ速度とともに使用することで、時間経過に伴う冷却速度と急冷速度を計算できる。このような方法では1点の温度しか捕捉できず、温度場や過渡特性に関する完全な情報を捕捉することはできない。
【0005】
この背景のセクションは、以下に記載及び/又は特許請求される本開示の様々な側面に関連し得る技術の様々な側面を読者に紹介することを意図している。この考察は、本開示の様々な側面をよりよく理解するための背景情報を読者に提供するのに役立つと思われる。従って、これらの記述はこのような観点から読まれるべきであり、先行技術を認めるものではないと理解すべきである。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様は、インゴットを製造するためのシステムであり、このシステムは、結晶引き上げ装置、高温計、赤外線(IR)カメラ、および制御装置を含む。結晶引き上げ装置は、内部に1つ以上の構成要素を有するホットゾーンを含み、その中でシリコンインゴットを引き上げることができる。高温計は、ホットゾーン内の対象領域を監視するように配置される。IRカメラは、ホットゾーン内の1つ以上の追加の対象領域を監視するように配置される。制御装置は、結晶引き上げ装置、高温計、IRカメラに接続されている。制御装置は、結晶引き上げ装置を制御してシリコンインゴットを製造し、シリコンインゴットを製造しながら高温計からホットゾーン内の対象領域の温度データを受信し、シリコンインゴットを製造しながらIRカメラから1つ以上の追加の対象領域のIR画像を受信するようにプログラムされている。
【0007】
別の態様では、シリコンインゴットを生産するためのシステムは、結晶引き上げ装置、高温計、赤外線(IR)カメラ、および制御装置を含む。結晶引き上げ装置は、内部に複数の構成要素を有するホットゾーンを含み、その中でシリコンインゴットを引き上げることができる。高温計は、ホットゾーン内の対象領域を監視するように配置される。IRカメラは、ホットゾーン内の1つ以上の追加の対象領域を監視するように配置される。制御装置は、結晶引き上げ装置、高温計、IRカメラに接続されている。制御装置は、複数の構成要素のうちの1つ以上の構成要素の特性に段階的な変化を導入するように、結晶引き上げ装置を制御するようにプログラムされている。制御装置は、特性に対する段階的な変化が導入される前、導入中、および導入後に、高温計からホットゾーン内の対象領域の温度データを受信することと、特性に対する段階的な変化が導入される前、導入中、および導入後に、IRカメラから1つ以上の追加の対象領域のIR画像を受信することの一方または両方を実行するようにプログラムされている。
【0008】
本開示の別の態様は方法である。この方法は、結晶引き上げ装置のホットゾーン内の対象領域を監視するために高温計を位置決めすることを含み、結晶引き上げ装置のホットゾーンは、その中に第1の複数の構成要素を含む第1の構成を有する。赤外線(IR)カメラは、ホットゾーン内の1つ以上の追加の対象領域を監視できるように配置されている。結晶引き上げ装置は、複数の構成要素のうちの1つ以上の構成要素の特性に段階的な変化を導入するように制御される。この方法は、特性に対する段階的な変化が導入される前、導入されている間、および導入された後に、高温計からホットゾーン内の対象領域の第1の温度データを受信することと、特性に対する段階的な変化が導入される前、導入されている間、および導入された後に、IRカメラから1つ以上の追加の対象領域の第1のIR画像を受信することとの一方または両方を含む。結晶引き上げ装置のホットゾーン内の少なくとも1つの構成要素が変更されて、第2の複数の構成要素を有するホットゾーンの第2の構成が生成される。結晶引き上げ装置は、段階的な変化をホットゾーンの第2の構成の特性に再導入するように制御される。この方法は、特性に対する段階的な変化がホットゾーンの第2の構成に再導入される前、その最中、およびその後に、高温計からホットゾーン内の対象領域の第2の温度データを受信することと、特性に対する段階的な変化がホットゾーンの第2の構成に再導入される前、その最中、およびその後に、IRカメラから1つ以上の追加の対象領域の第2のIR画像を受信することとの一方または両方を実行することを含む。
【0009】
上述の態様に関連して述べた特徴には、さまざまな改良が存在する。さらなる特徴も同様に上述の態様に組み込むことができる。これらの改良および追加機能は、個々に存在してもよいし、任意の組み合わせで存在してもよい。例えば、図示した実施形態のいずれかに関連して後述する様々な特徴を、単独でまたは任意の組み合わせで、上述の態様に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、シリコン融液から単結晶インゴットを引き上げるインゴット引き上げ装置の断面図である。
図2図2はインゴット引き上げ装置の断面図である。
図3図3は、チョクラルスキー法によって成長させた単結晶シリコンインゴットの部分正面図である。
図4図4は、図1のインゴット引き上げ装置の制御システムで使用されるコンピューティングデバイスのブロック図である。
図5図5は、図1のインゴット引き上げ装置のIRカメラが撮影した画像の例である。
図6図6は、図1のインゴット引き上げ装置における第1の領域の温度プロファイルを、るつぼの高さとヒータ出力を3つの異なる組み合わせで、IRカメラと、同じ領域と組み合わせでシミュレートされた温度プロファイルとで測定したグラフである。
図7図7は、図1のインゴット引き上げ装置において、るつぼの高さとヒータ出力を、3つの異なる組み合わせでIRカメラとシミュレートされた温度プロファイルを用いて測定した、同じ領域と組み合わせの第2の領域の温度プロファイルのグラフである。
図8図8は、インゴット引き上げ装置のサイドヒータと底ヒータの電力に段階的な変化を導入したことを示すグラフである。
図9図9は、図8に示した段階的な変化において、サイドヒータの電力と高温計が測定したサセプタの温度のグラフである。
図10図10は、高温計が測定したサセプタの温度と、図8に示した段階的な変化中のサセプタの温度変化率のグラフである。
図11図11は、サセプタ(およびサセプタを取り付けたるつぼ)の位置における段階的な変化と、サセプタの温度を同じ時間で示したグラフである。
図12図12は、図11のデータの一部のグラフである。
図13図13は、図1のインゴット引き上げ装置を基準として、2つの異なるホットゾーンがインゴット引き上げ装置に対して2つの異なる温度設定を行った場合の第1の過渡現象Δ1のグラフである。
図14図14は、図13で使用した2つの異なる出力設定における、2つの異なるホットゾーンに対する第2の過渡現象Δ2のグラフである。
図15図15は、図13図14で使用した2つの異なる電力設定における、2つの異なるホットゾーンの第2の過渡現象Δ2の時定数のグラフである。
【0011】
様々な図面における同様の参照符号は、同様の要素を示す。
【詳細説明】
【0012】
単結晶インゴットを成長させるためのインゴット引き上げ装置(またはより簡単に「インゴット引上げ装置」または「結晶引き上げ装置」)は、図1において全体的に「100」で示されている。インゴット引き上げ装置100は、シリコンまたは同様の半導体材料の融液104からインゴット113を引き抜くための成長チャンバ152を画定する結晶引き上げ装置ハウジング108を含む。制御システム172(「制御装置」とも呼ばれる)は、インゴット引上げ装置100およびその構成部品の動作を制御する。インゴット引き上げ装置100は、シリコンの融液104を保持するために成長チャンバ152内に配置されたるつぼ102を含む。るつぼ102は、サセプタ106によって支持されている。
【0013】
るつぼ102は、床129と、床129から上方に延びる側壁131とを含む。側壁131は概ね垂直である。床129は、側壁131の下方に延びるるつぼ102の湾曲部分を含む。るつぼ102内には、融液面111(すなわち、融液-インゴット界面)を有するシリコン融液104がある。サセプタ106はシャフト105によって支持されている。サセプタ106、るつぼ102、シャフト105及びインゴット113は、共通の長手方向軸A又は「プル軸(pull axis)」Aを有する。
【0014】
インゴット引き上げ装置100内には、融液104からインゴット113を成長させて引き上げるための引き上げ機構114が配置されている。引き上げ機構114は、引っ張りケーブル118と、引っ張りケーブル118の一端に結合されたシードホルダーまたはチャック120と、結晶成長を開始するためにシードホルダーまたはチャック120に結合された種結晶122とを含む。引っ張りケーブル118の一端は、プーリ(図示せず)またはドラム(図示せず)、あるいは他の適切なタイプの持ち上げ機構、例えばシャフトに接続され、他端は種結晶122を保持するチャック120に接続される。作動中、種結晶122は融液104に接触するように下降する。引き上げ機構114は、種結晶122を上昇させるように操作される。これにより、単結晶インゴット113が融液104から引き上げられる。
【0015】
加熱および結晶引き上げの間、るつぼ駆動ユニット107(例えば、モーター)は、るつぼ102およびサセプタ106を回転させる。リフト機構112は、成長プロセス中、プル軸Aに沿って、るつぼ102を昇降させる。インゴットが成長するにつれて、シリコン融液104は消費され、るつぼ102内の融液の高さは減少する。るつぼ102およびサセプタ106を上昇させて、融液面111をインゴット引き上げ装置100に対して同じ位置またはその近くに維持できる。
【0016】
結晶駆動ユニット(図示せず)はまた、引っ張りケーブル118およびインゴット113を、るつぼ駆動ユニット107がるつぼ102を回転させる方向とは反対の方向に回転させる(例えば、逆回転)ことができる。等回転を使用する実施形態では、結晶駆動ユニットは、るつぼ駆動ユニット107がるつぼ102を回転させるのと同じ方向に引っ張りケーブル118を回転させることができる。さらに、結晶駆動ユニットは、成長過程で必要に応じてインゴット113を融液面111に対して昇降させる。
【0017】
インゴット引き上げ装置100は、成長チャンバ152からアルゴンのような不活性ガスを導入したり引き抜いたりする不活性ガス装置を含んでもよい。インゴット引き上げ装置100は、ドーパントを融液104に導入するためのドーパント供給装置(図示せず)を含んでもよい。
【0018】
チョクラルスキー単結晶成長プロセスによれば、ある量の多結晶シリコン、またはポリシリコンがるつぼ102に投入される(例えば、250kg以上の投入量)。多結晶シリコンの供給源としては、例えば、流動床反応器でシランまたはハロシランの熱分解によって製造される粒状多結晶シリコン、またはシーメンス反応器で製造される多結晶シリコンなど、さまざまなものを使用できる。るつぼに多結晶シリコンを加えてチャージ(charge)を形成したら、チャージを概ねシリコンの溶融温度(例えば、約1412℃)よりも高い温度まで加熱してチャージを融解する。いくつかの実施形態では、チャージ(すなわち、得られた融液)は、少なくとも約1425℃、少なくとも約1450℃、または少なくとも約1500℃の温度まで加熱される。インゴット引き上げ装置100は、引き上げ装置100内の熱を保持するために、底部断熱材110と側部断熱材124を含む。図示の実施形態では、インゴット引き上げ装置100は、るつぼ床129の下方に配置された底ヒータ126を含む。るつぼ102は、るつぼ102に装入された多結晶を溶融するために、底ヒータ126に比較的近接するように移動されてもよい。
【0019】
インゴットを形成するために、種結晶122は融液104の表面111に接触される。引き上げ機構114は、融液104から種結晶122を引き上げるために操作される。インゴット113はクラウン部分142を含み、クラウン部分142ではインゴットが移行し、種結晶122から外側へ向かってテーパして目標直径に達する。インゴット113は、引上げ速度を増加させることによって成長する結晶の一定直径部分145または円筒形の「本体」を含む。インゴット113の本体145は比較的一定の直径を有する。インゴット113は、本体145の後にインゴットの直径が先細りになるテールまたはエンドコーン(図示せず)を含む。直径が十分に小さくなると、インゴット113は融液104から分離される。インゴット113は、クラウン部分142およびインゴット113の終端を通って延びる中心長手軸Aを有する。
【0020】
インゴット引き上げ装置100は、サイドヒータ135と、結晶成長中に融液104の温度を維持するためにるつぼ102を包囲するサセプタ106とを含む。サイドヒータ135は、るつぼ102がプル軸Aを上下に移動するときに、るつぼ側壁131に対して半径方向外側に配置される。サイドヒータ135および底ヒータ126は、本明細書に記載されるように動作することを可能にする任意のタイプのヒータであってもよい。いくつかの実施形態では、ヒータ135、126は抵抗ヒータである。サイドヒータ135および底ヒータ126は、融液104の温度が引き上げプロセス全体にわたって制御されるように、制御システム172によって制御されてもよい。
【0021】
インゴット引き上げ装置100はまた、成長チャンバ152内でインゴット成長中にインゴット113を覆う融液104の上に配置された反射体151(または「熱シールド」)を含む。反射体151は、結晶成長中にるつぼ102内に部分的に配置されることがある。熱シールド151は、引き上げ機構114によってインゴット113が引っ張られる際に、インゴット113を受け入れるための中央通路160を画定している。
【0022】
反射体151は一般に、それ自体の下と融液104の上に熱を保持するようになっている熱シールドである。この点に関しては、当該技術分野で知られている反射体の設計および構造材料(例えば、グラファイトまたは灰色石英)を制限なく使用できる。反射体151は底部138(図2)を有し、反射体151の底部138は、インゴットの成長中、融液の表面から距離HRだけ離れている。
【0023】
高温計174及び赤外線(IR)カメラ176は、シリコン結晶インゴットの製造中に、ホットゾーン(すなわち、るつぼ102及びサセプタ106などの成長チャンバ152の下部)、結晶インゴット113、又は融液104の選択された領域を視察するように配置される。本明細書では、高温計174とIRカメラ176を総称して温度監視システムと呼ぶことがある。
【0024】
高温計174は通常、高温計によって監視したい温度範囲にわたって温度を測定する能力を有するように選択される。一例として、高温計174は700℃から3500℃までの温度測定が可能である。別の例では、高温計174は200℃から1400℃までの温度を測定できる。これらの例では、高温計は2つの異なるセンサを含むことができ、1つは温度を測定し、もう1つは放射率を測定する。他の実施形態は、より広い温度範囲またはより狭い温度範囲を含む任意の他の適切な温度範囲にわたって温度を測定するように動作可能な高温計カメラ174を含むことができる。
【0025】
IRカメラ176は、通常、IRカメラ176によって監視される温度の範囲内で温度を測定する能力についても選択される。一例として、IRカメラ176は600℃から1600℃までの温度を測定できる。別の実施形態では、IRカメラ176は800℃から3000℃までの温度を測定できる。他の実施形態は、より広い温度範囲またはより狭い温度範囲を含む、任意の他の適切な温度範囲にわたって温度を測定するように動作可能なIRカメラ176を含むことができる。
【0026】
高温計174は、引き上げ装置100の上部に取り付けられ、結晶引き上げ装置100およびインゴット113の中心軸Aに沿って位置合わせされる。例示の実施形態では、高温計174は引き上げ機構114の一部に取り付けられている。この位置から、高温計174は、サセプタ106、融液面111、結晶インゴット113、および反射体151の少なくとも一部を監視することができる。結晶引き上げ装置100の一部が、操作中に高温計174の視界を遮ることがある。したがって、高温計は、結晶引き上げ作業中に監視すべき場所に狙いを定め、必要に応じて再び狙いを定めてもよい。
【0027】
IRカメラ176は、ビューポート178を通して成長チャンバ152の内部を監視ように位置決めされており、ビューポート178は、オペレータのビューポートまたはIR光が通過する他の任意の部分であってもよい。IRカメラ176は、ビューポート178を通して、融液104、結晶インゴット113の表面、および反射体151の少なくとも一部を監視することができる。例示的な実施形態では、IRカメラ176は、約780nmから1080nmまでの近赤外波長範囲で画像を捕捉する。他の実施形態では、IRカメラ176によって、他の任意の適切な赤外波長または赤外波長範囲の画像を撮影できる。例示的な実施形態では、IRカメラ176は、3軸ギア付きカメラヘッド(図示せず)に取り付けられ、IRカメラを所望の位置に調整し、その位置に常時保持するか、または所望の位置に一貫して繰り返し移動させることができるようになっている。いくつかの実施形態では、IRカメラ176および高温計174は、IRカメラ176および高温計174の両方によって監視される共通の領域を位置合わせするように較正され得る。
【0028】
本開示の実施形態および一般にチョクラルスキー法に従って製造された単結晶シリコンインゴット113を図3に示す。インゴット113は、ネック116、外側に広がるフレア部分142(同義語で「クラウン」または「コーン」)、ショルダ119、および一定直径の本体145を含む。ネック116は、融液と接触し、引き上げられてインゴット113を形成した種結晶122に取り付けられる。本体145はネック116から吊り下げられている。ネック116は、インゴット113のコーン部142が形成され始めると終了する。
【0029】
図3に見られるように、インゴット113の一定直径部分145は、周縁150を有する。中心軸Aは周縁150と平行であり、半径Rは中心軸Aから周縁145まで延びている。中心軸Aもコーン部142とネック116を通る。主インゴット本体145の直径(すなわち、半径Rの2倍)は様々であってよく、いくつかの実施形態では、直径は、約150mm、約200mm、約300mm、約300mmより大きい直径、約450mm、または約450mmよりさらに大きい直径であってもよい。
【0030】
単結晶シリコンインゴット113は、一般に任意の抵抗率を有し得る。単結晶シリコンインゴット113は、ドープされていてもドープされていなくてもよい。
【0031】
図4は、制御システム172として、または制御システム172の一部として使用できるコンピューティングデバイス400の例である。コンピューティングデバイス400は、プロセッサ402、メモリ404、メディア出力構成要素406、入力デバイス408、および通信インターフェース410を含む。他の実施形態は、異なる構成要素、追加構成要素を含み、および/または図4に示されたすべての構成要素を含まない。さらに、いくつかの実施形態では、制御システム172とは別に(加えて)コンピューティングデバイス400が含まれる。別のコンピューティングデバイス400は、例えば、データ(例えば、本明細書に記載の技術を用いて取得されたもの)を受信して処理し、結晶引き上げシミュレーションを実行し、受信したデータに基づいてシミュレーションパラメータを調整するために使用できる。
【0032】
プロセッサ402は命令を実行するように構成されている。いくつかの実施形態では、実行可能命令はメモリ404に格納される。プロセッサ402は、1つ以上の処理ユニット(例えば、マルチコア構成)を含むことができる。本明細書で使用するプロセッサという用語は、中央処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロ制御装置、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理回路(PLC)、および本明細書で説明する機能を実行できるその他の回路またはプロセッサを指す。上記は単なる例であり、「プロセッサ」という用語の定義および/または意味をいかなる形でも制限することを意図したものではない。
【0033】
メモリ404は、本明細書に記載の技術を実行するための非一時的なコンピュータ可読命令を格納する。このような命令は、プロセッサ402によって実行されると、プロセッサ402に本明細書に記載の方法の少なくとも一部を実行させる。いくつかの実施形態では、メモリ404は、メディア出力構成要素406を介してユーザにユーザインタフェースを提供し、入力デバイス408から入力を受信して処理するためのコンピュータ読み取り可能な命令を記憶する。メモリ404は、ダイナミックRAM(DRAM)またはスタティックRAM(SRAM)などのランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、および不揮発性RAM(NVRAM)を含み得るが、これらに限定されない。プロセッサ402とは別個に示されているが、いくつかの実施形態では、メモリ404は、マイクロ制御装置またはマイクロプロセッサなどにおいてプロセッサ402と組み合わされるが、依然として個別に参照される場合がある。上記のメモリの種類は一例であり、コンピュータ・プログラムの保存に使用可能なメモリの種類を限定するものではない。
【0034】
メディア出力構成要素406は、ユーザ(例えば、システムのオペレータ)に情報を提示するように構成されている。メディア出力構成要素406は、ユーザに情報を伝えることができるあらゆる構成要素である。いくつかの実施形態では、メディア出力構成要素406は、ビデオアダプタおよび/またはオーディオアダプタなどの出力アダプタを含む。出力アダプタは、プロセッサ402に動作可能に接続され、ディスプレイ装置(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、陰極線管(CRT)、「電子インク」ディスプレイ、1つ以上の発光ダイオード(LED))またはオーディオ出力装置(例えば、スピーカーやヘッドフォン)などの出力装置に動作可能に接続される。
【0035】
コンピューティングデバイス400は、ユーザからの入力を受け取るための入力デバイス408を含むか、または接続されている。入力デバイス408は、コンピューティングデバイス400が、視覚、音声、タッチ、ボタン押下、スタイラスタップなどを含むアナログおよび/またはデジタルコマンド、指示、または他の入力をユーザから受け取ることを可能にする任意の装置である。入力デバイス408は、例えば、可変抵抗器、入力ダイヤル、キーボード/キーパッド、ポインティングデバイス、マウス、スタイラス、タッチセンシティブパネル(例えば、タッチパッドまたはタッチスクリーン)、ジャイロスコープ、加速度計、位置検出器、オーディオ入力デバイス、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。タッチスクリーンのような単一の構成要素が、メディア出力構成要素406と入力デバイス408の両方の出力デバイスとして機能することもある。
【0036】
通信インターフェースは、コンピューティングデバイス400が遠隔センサ、遠隔データベース、遠隔コンピューティングデバイスなどの遠隔装置およびシステムと通信することを可能にし、複数の遠隔装置またはシステムと通信するために複数の通信インターフェースを含むことができる。通信インターフェースは、コンピューティングデバイス400が遠隔の装置およびシステムと直接またはネットワークを介して通信することを可能にする有線または無線の通信インターフェースであってもよい。無線通信インターフェースは、無線周波数(RF)トランシーバー、Bluetooth(登録商標)アダプタ、Wi-Fiトランシーバー、ZigBee(登録商標)トランシーバー、近距離無線通信(NFC)トランシーバー、赤外線(IR)トランシーバー、および/または無線通信のための他の任意のデバイスおよび通信プロトコルを含むことができる。(Bluetoothはワシントン州カークランドのBluetooth Special Interest Groupの登録商標であり、ZigBeeはカリフォルニア州サンラモンのZigBee Allianceの登録商標である)。有線通信インターフェースは、USB、RS232、I2C、SPI、アナログ、および独自のI/Oプロトコルを含むがこれらに限定されない、直接通信のための任意の適切な有線通信プロトコルを使用できる。幾つかの実施形態では、有線通信インターフェースは、コンピューティングデバイス400をインターネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メッシュネットワーク、及び/又はネットワークを介して遠隔装置及びシステムと通信するための任意の他のネットワークなどのネットワークに結合することを可能にする有線ネットワークアダプタを含む。
【0037】
本明細書で説明するコンピュータシステムは、本明細書の他の場所で説明するものを含め、追加の機能、より少ない機能、または代替の機能を含むことができる。本明細書で論じられるコンピュータシステムは、非一時的なコンピュータ可読媒体または媒体に格納されたコンピュータ実行可能命令を含むか、またはそれを介して実装され得る。
【0038】
IRカメラ176と高温計174は、ホットゾーン、結晶、または融液の選択された部分の表面温度を連続的に監視するために使用される。監視された温度は、シリコンインゴット113の引き上げ工程中に、対象領域の温度を監視するために使用できる。これらの監視された温度は、シミュレーションされた温度と比較され、結晶引上げプロセスのシミュレーションの較正と改善に使用される。さらに、いくつかの実施形態では、段階的な変化または一連の段階的な変化は、IRカメラ176および高温計174を使用して選択された領域の温度を捕捉しながら、ヒータ135および126の電力、るつぼ102の位置および反射体151の位置などの選択されたプロセス条件で導入され得る。そうすることで、段階的な変化によって引き起こされる温度場の過渡的な特性を把握し、異なるホットゾーンやプロセス間で比較できる。これには、主要なホットゾーン構成部品からの放射および伝導による加熱または冷却効果によって、特定の所定の位置で誘発される表面温度の変化が含まれるが、これらに限定されない。これらの過渡特性を定量的に捉えることは、効率的なホットゾーンや結晶プロセスの設計に役立つだろう。
【0039】
図5は、IRカメラ176が撮影した画像500の例である。画像500には、3つの対象領域がマークされている。第1の領域502は、サセプタ106の中心である。第2の領域504は、反射体151の一部、例えば反射体151のノッチである。第3の領域506は、第1の領域502とサセプタ106の外縁を結ぶ直線の領域である。対象領域(例えば、第1の領域502、第2の領域504、第3の領域506)の温度プロファイルおよび勾配プロファイルは、IRカメラ176によって撮像された画像(画像500の例)から抽出できる。
【0040】
図6および図7を参照すると、IRカメラ176および高温計174から収集されたデータは、熱シミュレーションの較正基準を提供し、その精度を向上させ、ホットゾーン材料の熱伝導率などの入力特性からの誤差を低減するために使用できる。図6は、るつぼ102の高さとヒータ135、126のパワーの3つの異なる組み合わせで、IRカメラ176で測定した第1の領域502(すなわち、サセプタ106の中心部-図5に示す)の温度プロファイルのグラフであり、同じ領域と組み合わせのシミュレートされた温度プロファイルである。図7は、るつぼ102の高さおよびヒータ135、126の電力の3つの異なる組み合わせにおいてIRカメラ176で測定された第2の領域504(すなわち、反射体151の部分-図5に示す)の温度プロファイルのグラフであり、同じ領域および組み合わせについてシミュレートされた温度プロファイルが測定された。図6図7を見ると、IRカメラ176で測定された温度プロファイルは、シミュレートされた温度プロファイルの傾向によく追従しているが、一定の偏りを示している。したがって、IRカメラ176から取得したデータを使用することにより、IRカメラ176によって測定された温度プロファイルに対して較正を行いながら、入力特性を修正することによって、このような偏りを排除または低減できる。その結果、より正確なシミュレートされた温度プロファイルを必要に応じて作ることができる。
【0041】
上述したデータはIRカメラ176を使用して取得されたものであるが、高温計174を使用して取得されたデータにも同じ技術を適用できる。IRカメラ176と高温計174は、結晶引き上げ装置100の同じポイントに関する温度データを捕捉するために使用されてもよいし、結晶引き上げ装置の異なるポイントに関するデータをそれぞれ捕捉してもよい。いくつかの実施形態では、IRカメラ176は、ある時間または短時間内に複数の選択されたスポットの温度を取得するために使用され、高温計174は、比較的長期間にわたって1つの特定のスポットの温度を取得するために使用される。高温計174によって取得された温度データを参照して追加の例を以下に説明するが、同様のデータをIRカメラ176(追加的または代替的に)を使用して取得し、同様の目的で使用してもよい。
【0042】
温度監視システムは、結晶引き上げ装置100の動作の1つ以上の変数における段階的な変化に応じた結晶引き上げ装置100内の温度過渡状態を監視するために使用され得る。すなわち、IRカメラ176および高温計174の一方または両方は、結晶引き上げ装置100の制御変数(るつぼの高さ、様々なヒータの電力など)が既知の量だけ意図的に変化させられている間に、結晶引き上げ装置100内の対象領域の温度データを収集できる。以下に述べる技術は、るつぼにシリコンを入れても入れなくてもよく、結晶成長中に行ってもよい。
【0043】
図8、9、10を参照すると、高温計174がサセプタ106の温度を測定している間に、ヒータ135、126の電力における段階的な変化が導入される。図8は、約260分の時点でサイドヒータ135および底ヒータ126の電力に段階的な変化が導入されたことを示すグラフである。サイドヒータの電力は0kWから60kWに増加し、底ヒータの電力は0kWから5kWに増加する。図9は、サイドヒータの電力と、高温計174によって測定されたサセプタ106の温度のグラフである。本実施例で使用した高温計174は、低い温度検出閾値が700℃であったため、700℃未満の温度データは取得されない。他の実施形態は、700℃より低い温度検出しきい値を持つ高温計174を含み、追加温度データの取得を可能にできる。図10は、高温計174が測定したサセプタ106の温度と、サセプタ106の温度変化率のグラフである。図10に示すように、この特定の結晶引き上げ装置100(特定のヒータ126、135、特定のサセプタ106、および引上げ装置100の他の特定の構成要素を使用)において、0kWから60kWまでのサイドヒータの電力および0kWから5kWまでの底ヒータの電力の段階的な変化によって引き起こされる温度過渡の時定数は、温度変化率の減衰によって示されるように、900分または15時間である。したがって、図10に示した結果から、この特定の変更(他の変更はなし)は、実質的に定常状態に達するまで約15時間かかることがわかる。さらに、その15時間内の任意の時点の特定の温度を、温度変化率の減衰に基づいて計算および予測できる。
【0044】
温度モニターシステムの別の応用例を図11~14に示す。本願では、サセプタ106は、段階的な変化を4時間間隔で順次、ホットゾーンの遮熱板及びアクティブ冷却装置である反射体151及び冷却ジャケット(図示せず)に近づけて上昇させる。サセプタ106の位置(サセプタ106が取り付けられているるつぼ102の位置によって決まる)における段階的な変化を図11に示す。図11はまた、サセプタ106の位置の段階的な変化を含む期間における、高温計174によって監視されたサセプタ106の監視温度を示す。図11の領域1200は、図12で拡大されている。図11に示すように、段階的な変化は各ステップで2つの温度過渡現象を発生させるが、その詳細は図12で説明する。図12のT1とT2は、各過渡現象の終了時のサセプタの温度であり、次の過渡現象の開始時の温度でもある。Δ1、Δ2は、各過渡現象の開始時と終了時のサセプタ温度の差である。各段階的な変化において、サセプタ106は冷却ジャケットおよび反射体151に近づき、サセプタ151の温度過渡は、冷却ジャケットからの冷却効果と反射体151からの放射線遮蔽効果によって引き起こされる。Δ1とΔ1の時定数を測定することで、サセプタ106をこの2つの部分に向けて移動させることによる過渡特性を捉えることができる。
【0045】
このような過渡特性を異なるホットゾーン設計間で比較することにより、所望の効率を達成できる設計を決定できる。例えば、上記の測定は、2つの異なるホットゾーンに対して2つの異なる出力設定でそれぞれ行われた。図13は、2つの異なる温度設定(60kWのサイドヒータ電力と5kWの底ヒータ電力、および90kWのサイドヒータ電力と5kWの底ヒータ電力)における2つの異なるホットゾーン(LH-ロングヒータ構成、SH-ショートヒータ構成)のΔ1のグラフである。見てわかるように、SH構成はるつぼの位置が高いほど大きな影響を与えるが、225mm以下のるつぼの位置では影響が小さくなる。各段階的な変化における他の温度過渡現象は、反射体や側面断熱材などの近傍のホットゾーン部品によって引き起こされる。第1の過渡現象Δ1におけるサセプタ106の温度と位置の変化は、放射と伝導の組み合わせにより、それらの近くのホットゾーンの部品の温度変化を引き起こす。第2の過渡現象Δ2は、これらの部品が温度平衡に達し、サセプタ106の温度に再び影響を及ぼした結果である。すなわち、Δ2は、段階的な変化を定位置に導入した後、るつぼ102が一定の位置に保持されている間に、ホットゾーンの成分が安定する(例えば、平衡状態または定常状態に達する)ときの温度の変化である。図14は、2つの異なる出力設定における2つの異なるホットゾーンのΔ2のグラフである。見てわかるように、SHコンフィギュレーションは、るつぼのすべての位置で、またどちらのパワー設定でも、より大きなインパクトを与えている。第2の過渡現象Δ2は、ホットゾーンの部品が温度安定化することによって発生するため、その時定数(例えば、過渡現象の継続時間)は長くなり、関連するホットゾーンの部品の熱特性を反映している。図15は、2つの異なる電力設定における2つの異なるホットゾーンに対する時定数のΔ2のグラフである。図15に示すように、SH構成では、るつぼ102のすべての位置で過渡時間が長くなる。各構成(SHまたはLH)において、時定数は異なる出力設定でも実質的に同じである。このことは、ヒータ126、135の電力設定が、この過渡現象を支配する材料の熱特性に大きな影響を与えないことを示している。
【0046】
上記では、サセプタ106(及びそれが取り付けられているるつぼ102)の位置の段階的な変化を参照して説明したが、上記の技術は、移動、段階的な変化、又はホットゾーンの任意の構成要素への大幅な変更、又は温度場に影響を与える可能性のある任意の操作設定に適用できる。このプロセスは、同じホットゾーンに影響を与える異なる変更を比較するため、または異なるホットゾーンを比較するために使用できる。さらに、上記の説明では、高温計からの温度測定に頼ったが、IRカメラからの温度測定(例えば、高温計からは監視できない対象領域の測定や、より広い対象領域や温度勾配の測定)を同様に使用してもよい。したがって、これらの技術は、ホットゾーンと結晶成長プロセスの能力を評価するのに役立つ。
【0047】
図に描かれている論理フローは、望ましい結果を得るために、特定の順序や連続した順序を必要とするものではない。さらに、説明したフローに他のステップを追加したり、ステップを削除したり、説明したシステムに他の構成要素を追加したり、削除したりすることもできる。従って、他の実施形態は以下の請求の範囲に含まれる。
【0048】
特に詳細に説明した上記の実施形態は、単なる例示または可能な実施形態に過ぎず、他にも多くの組み合わせ、追加、または代替があり得ることが理解されよう。
【0049】
また、構成要素の特定の命名、用語の大文字化、属性、データ構造、またはその他のプログラミングまたは構造的側面は必須または重要ではなく、開示またはその機能を実装するメカニズムは、異なる名前、形式、または異なるプロトコルを持つことができる。さらに、本システムは、説明したようにハードウェアとソフトウェアを組み合わせて実装してもよいし、完全にハードウェア要素で実装してもよい。また、本明細書で説明する様々なシステム構成要素間の特定の機能分担は、単なる一例であり、必須ではない。単一のシステム構成要素によって実行される機能を、代わりに複数の構成要素によって実行してもよく、複数の構成要素によって実行される機能を、代わりに単一の構成要素によって実行してもよい。
【0050】
本明細書および特許請求の範囲を通じて本明細書で使用される近似表現は、関連する基本機能の変更をもたらさずに許容できる範囲で変化する可能性のある任意の定量的表現を修正するために適用できる。したがって、「約」や「実質的に」などの用語で修飾された値は、指定された正確な値に限定されるものではない。少なくともいくつかの例では、近似言語は、値を測定するための機器の精度に対応し得る。本明細書および特許請求の範囲全体を通じて、範囲の限定は、組み合わせおよび/または入れ替えが可能であり、そのような範囲は、文脈または文言がそうでないことを示さない限り、特定され、そこに含まれるすべての部分的な範囲を含む。
【0051】
本開示の教示における様々な変更、修正および改変は、その意図する精神および範囲から逸脱することなく、当業者によって企図され得る。本開示はこのような変更や修正を包含することを意図している。
【0052】
本明細書は、最良の態様を含む本開示を説明するために実施例を用いており、また、任意の装置またはシステムの製造および使用、ならびに組み込まれた任意の方法の実行を含め、当業者が本開示を実施できるようにするために実施例を用いている。本開示の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者に思いつく他の例を含むことができる。このような他の実施例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない同等の構造要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】