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特表2024-506483銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-14
(54)【発明の名称】銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/02 20060101AFI20240206BHJP
   C04B 35/591 20060101ALI20240206BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240206BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20240206BHJP
   C22C 5/08 20060101ALI20240206BHJP
   B23K 35/30 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
C04B37/02 B
C04B35/591
B22F1/00 K
B22F1/00 L
B22F1/00 R
B22F1/14 500
C22C5/08
B23K35/30 310B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543222
(86)(22)【出願日】2022-01-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 CN2022072347
(87)【国際公開番号】W WO2022156634
(87)【国際公開日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】202110075100.0
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510087966
【氏名又は名称】中国科学院上海硅酸塩研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 学建
(72)【発明者】
【氏名】張 輝
(72)【発明者】
【氏名】姚 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】劉 岩
(72)【発明者】
【氏名】蒋 金弟
(72)【発明者】
【氏名】黄 政仁
(72)【発明者】
【氏名】陳 忠明
【テーマコード(参考)】
4G026
4K018
【Fターム(参考)】
4G026BA17
4G026BB22
4G026BF16
4G026BF24
4G026BF42
4G026BG02
4G026BG23
4G026BH07
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA03
4K018BB04
4K018BC12
4K018BD10
4K018CA07
4K018KA32
(57)【要約】
本発明は、銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法に関し、前記銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の構造は、窒化ケイ素セラミック基板と、窒化ケイ素セラミック基板の上下両側に配置する銅板と、銅板と窒化ケイ素セラミック基板との間に配置する溶接層とを含み、前記窒化ケイ素セラミック基板の成分は窒化ケイ素相及び粒界相を含み、前記窒化ケイ素相の含有量≧95wt%であり、前記粒界相は少なくともY、Mg、Oの3つ元素を含有する混合物であり、前記粒界相の含有量≦5wt%であり、且つ粒界相における結晶相の含有量≧40vol%であり、作製された窒化ケイ素セラミック基板に使用される焼結助剤はYとMgOであり、両者のモル比は1.0~1.4:2.5~2.9であり、前記二段階焼結プロセスは、窒素雰囲気で、雰囲気圧力が0.5~10MPaであり、まず1600~1800℃で低温熱処理した後、さらに1800~2000℃で高温熱処理を行い、前記窒化ケイ素セラミック基板の厚さは0.2~2.0mmである。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法であって、
前記銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板は、窒化ケイ素セラミック基板と、窒化ケイ素セラミック基板の上下両側に配置する銅板と、銅板と窒化ケイ素セラミック基板との間に配置する溶接層とを含み、
前記窒化ケイ素セラミック基板の成分は窒化ケイ素相及び粒界相を含み、
前記窒化ケイ素相の含有量≧95wt%であり、
前記粒界相は少なくともY、Mg、Oの3つ元素を含有する混合物であり、二段階焼結プロセスにより粒界相の成分及び含有量を調整することで前記粒界相の含有量≦5wt%、且つ粒界相における結晶相の含有量≧40vol%にし、
窒化ケイ素セラミック基板の作製に使用される焼結助剤は、Y及びMgOであり、両者のモル比は1.0~1.4 : 2.5~2.9であり、前記二段階焼結プロセスは、雰囲気圧力が0.5~10MPaである窒素雰囲気で、まず1600~1800℃で低温熱処理した後、さらに1800~2000℃で高温熱処理を行うステップを含み、
前記窒化ケイ素セラミック基板の厚さが0.2~2.0mmであり、
前記溶接層の成分がAgCuTiであり、ここでAg:Cu:Tiの質量比がx:y:zであり、x=0.60~0.65、y=0.33~0.37、z=0.01~0.04であり、且つx+y+z=1であり、前記溶接層の厚さが20~60ミクロンであり、
前記銅板の厚さが0.1~1.5mmであり、
銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の構造に従って、銅板と、溶接層として形成されたはんだ箔片と、窒化ケイ素セラミック基板とを積層し、保護雰囲気で剥離した後、さらに860~920℃で5~20分間保温する条件で真空溶接して前記銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板が得られるステップと、を含む、
ことを特徴とする銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項2】
前記窒化ケイ素セラミック基板における不純物総量≦1.0wt%であり、前記不純物は、格子酸素、金属不純物イオン、不純物炭素のうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項3】
前記銅板の厚さは0.2mm~1.0mmである、請求項1に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項4】
前記剥離のパラメータとしては、N雰囲気の圧力が0.1~0.2MPa、処理温度が500~800℃、処理時間が1~3時間である、請求項1に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項5】
前記はんだ箔片の作製過程は、
銀粉、銅粉、チタン粉、有機溶剤及び接着剤を保護雰囲気で混合し、混合スラリーが得られるステップ(1)と、
得られたスラリーを保護雰囲気でテープキャスティング成形及び乾燥を行い、はんだ箔片が得られるステップ(2)と、を含む、請求項1に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項6】
前記銀粉は平均粒子径が5~20μm、酸素含有量が0.05%以下であり、
前記銅粉は、平均粒子径が5~20μm、酸素含有量が0.05%以下であり、
前記チタン粉は、平均粒子径が1~5μm、酸素含有量が0.2%以下であり、
前記保護雰囲気は窒素雰囲気である、請求項5に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項7】
温度が上昇する流れ熱N雰囲気を用いて、キャストフィルム生地に対して乾燥し、熱N雰囲気の温度範囲は40~85℃であり、雰囲気の圧力は、0.1~0.2MPaである、請求項5に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項8】
前記窒素雰囲気の温度段階は二段階であり、
前段階の雰囲気温度範囲が40~65℃、後段階の雰囲気温度範囲が60~85℃であり、且つ前段階の雰囲気温度<後段階の雰囲気温度である、請求項5に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項9】
前記窒化ケイ素セラミック基板の作製方法は、
シリカフューム及び窒化ケイ素粉末のうちの少なくとも1つを原料粉末とし、Y粉末及びMgO粉末を焼結助剤とし、さらに有機溶剤及び接着剤を添加し、保護雰囲気で混合し、混合スラリーが得られるステップ(1)と、
得られた混合スラリーを保護雰囲気でテープキャスティング成形によって、生地を取得するステップ(2)と、
得られた生地を還元雰囲気に置いて、500~800℃で前処理を行い、ラフボディが得られるステップ(3)と、
得られたラフボディを窒素雰囲気に置いて、まず1600~1800℃で低温熱処理した後に、さらに1800~2000℃で高温熱処理を行い、前記窒化ケイ素セラミック基板が得られるステップ(4)と、を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項10】
前記窒化ケイ素セラミック基板の作製方法で使用される保護雰囲気は、不活性雰囲気又は窒素雰囲気であり、
使用される還元雰囲気は水素含有量が5vol%以下である水素・窒素混合雰囲気である、請求項9に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項11】
前記窒化ケイ素セラミック基板の作製方法は、
シリカフューム及び窒化ケイ素粉末のうちの少なくとも1つを原料粉末とし、Y粉末及びMgO粉末を焼結助剤とし、保護雰囲気で、混合され成形され、生地が得られるステップ(1)と、
得られた生地を還元雰囲気に置いて、500~800℃で前処理を行い、ラフボディが得られるステップ(2)と、
得られたラフボディを窒素雰囲気に置いて、まず1600~1800℃で低温熱処理した後に、さらに1800~2000℃で高温熱処理を行い、前記窒化ケイ素セラミック基板が得られるステップ(3)と、を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項12】
前記窒化ケイ素セラミック基板の作製方法で使用される保護雰囲気は、不活性雰囲気又は窒素雰囲気であり、使用される還元雰囲気は水素含有量が5vol%以下である水素・窒素混合雰囲気である、請求項11に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法に関し、半導体材料及びデバイス分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスは、高出力化、高周波化、集積化の方向へ急速に発展している。半導体デバイスの作動によって生成した熱は、半導体デバイスの故障を引き起こす要因であるが、絶縁基板の熱伝導率は、半導体デバイスの全体の放熱に影響する重要な要素である。また、例えば電気自動車、高速鉄道、鉄道交通等の分野では、半導体デバイスの使用中に、常に衝撃、振動等の複雑な力学的環境に臨むことがあり、使用される材料の信頼性に対して厳しく要求される。
【0003】
高熱伝導性窒化ケイ素(Si)セラミックスは、その優れた力学的及び熱的性能のため、高強度と高熱伝導率を備えた最適の半導体絶縁基板材料であると考えられ、ハイパワー絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の放熱適用の面で素晴らしい潜在力を持っている。窒化ケイ素晶体の理論熱伝導率は、400W・m-1・K-1以上に達することができ、高熱伝導性基板となる潜在力を持っている。優れた力学的性能及び高熱伝導性の潜在力によって、窒化ケイ素セラミックスは、アルミナ、窒化アルミニウム等の既存のセラミック基板材料の欠点を補うことが期待され、ハイエンド半導体デバイス、特にハイパワーIGBT放熱基板への応用において大きな潜在力を持っている。しかし、従来の窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率は、20~30W・m-1・K-1のみあり、ハイパワー半導体デバイス基板の放熱の適用需要を全く満たすことができない。
【0004】
一方、窒化ケイ素は、強い共有結合化合物であり、固相拡散によって緻密的に焼結され難しく、適量(添加量は通常5wt%よりも大きい)の希土類酸化物及び(又は)金属酸化物を焼結助剤(例えばY、La、MgO、Al、CaO等)として添加する必要があるが、焼結助剤の添加によって窒化ケイ素セラミックスの熱伝導率が顕著に低下し、低い焼結助剤の含有量は、高熱伝導の取得に寄与するが、低い焼結助剤含有量は、窒化ケイ素セラミックス焼結の緻密化の問題をもたらす。
【0005】
そして、パワーデバイス(LED、LD、IGBT、CPV等を含む)の発展に伴って、放熱は、デバイス性能及び安定性に影響するキーテクノロジーとなる。電子デバイスにとって、通常に温度が10℃上昇するごとに、デバイスの有効的な寿命は30%~50%低減する。したがって、適当なパッケージング材料及びプロセスの選択、デバイス放熱能力の向上は、パワーデバイスを開発する技術的なボトルネックとなる。
【0006】
セラミックス基板はセラミックス回路基板とも称され、セラミックス基板及び金属線路層を含む。電子パッケージングにとって、パッケージング基板は、中間体として、内部と外部の放熱チャネルを接続するという重要な役割を果たすと同時に、電気的相互接続及び機械的サポートの機能も持っている。窒化ケイ素セラミックスは、熱伝導率が高く、耐熱性がよく、機械的強度が高く、熱膨張係数が低い等の利点を有し、パワー半導体デバイスのパッケージングに好ましい基板材料である。ここで、銅板付きセラミック基板は、ハイパワーデバイスの重要な組成部材であり、セラミックスの高熱伝導性、高電気絶縁性、高機械強度、低膨張等の特性を有し、無酸素銅の高い導電性と優れたはんだ付け性を兼ね、且つポリマー基板PCB回路基板のように様々なグラフィックをエッチングすることができる。
【0007】
パッケージング構造及び適用の要求に応じて、セラミックス基板は、平面セラミックス基板及び三次元セラミックス基板の2種類に分けることができる。作製原理及びプロセスによって、平面セラミックス基板は、薄膜セラミック基板、厚膜印刷セラミック基板、直接接合銅セラミック基板、活性金属ろう付けセラミック基板、直接電気めっき銅セラミック基板、およびレーザー活性化サーメット基板に分けてもよい。その中、活性金属ろう付けセラミック基板(活性金属接合法、Active Metal Brazing、AMB)として、AMBセラミックス基板は、少量の活性金属元素を含有するはんだにより銅箔とセラミックス基板との間の溶接を実現する。AMB基板は、活性はんだとセラミックス界面との間に化学反応が発生することに依存して接合を実現するので、接合強度が高く、耐高低温衝撃失効能力が強く、安定性が高い等の独自の利点を有し、新世代の半導体及び新型ハイパワー電子デバイスに好まれるパッケージング材料となっている。
【0008】
セラミックス基板と銅箔のAMB溶接プロセスは、まず、セラミックス基板の表面に活性金属はんだ層をコーティングし、その後真空条件で加熱して活性金属元素とセラミックス基板の表面元素との間に化学接合が発生するようにして、両者の高い強度の接続を実現する。基板の表面にはんだ層をコーティングする方法は、主にスクリーン印刷法、メッキ法、スパッタリング法、スプレー法等があり、異なるプロセス方法は各自の特徴を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】中国特許出願公開第104409425号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第1597614号明細書
【特許文献3】中国特許出願公開第108585881号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第108383532号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第3156366号明細書
【特許文献6】特開2002-293641号公報
【発明の概要】
【0010】
本発明は、上記問題に対して、銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板及びその作製方法を提供することを目的とする。
【0011】
一態様で、本発明は、銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法を提供する。本発明の窒化ケイ素セラミック基板の作製方法は、前記銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板が、窒化ケイ素セラミック基板と、窒化ケイ素セラミック基板の上下両側に配置する銅板と、銅板と窒化ケイ素セラミック基板との間に配置する溶接層とを含み、前記窒化ケイ素セラミック基板が、成分として窒化ケイ素相及び粒界相を含み、前記窒化ケイ素相の含有量≧95wt%であり、前記粒界相は少なくともY、Mg、Oの3つ元素を含有する混合物であり、二段階焼結プロセスにより粒界相の成分及び含有量を調整することで、前記粒界相の含有量≦5wt%、且つ粒界相における結晶相の含有量≧40vol%にし、窒化ケイ素セラミック基板の作製に使用される焼結助剤は、Y及びMgOであり、両者のモル比は1.0~1.4:2.5~2.9であり、前記二段階焼結プロセスは、雰囲気圧力が0.5~10MPaである窒素雰囲気で、まず1600~1800℃で低温熱処理した後、さらに1800~2000℃で高温熱処理を行うステップを含み、前記窒化ケイ素セラミック基板の厚さが0.2~2.0mmであり、前記溶接層の成分がAgCuTiであり、ここでAg:Cu:Tiの質量比がx:y:zであり、x=0.60~0.65、y=0.33~0.37、z=0.01~0.04であり、且つx+y+z=1であり、溶接層の厚さが20~60ミクロンであり、前記銅板の厚さが0.1~1.5mmであり、銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の構造に従って、銅板と、溶接層として形成されたはんだ箔片と、窒化ケイ素セラミック基板とを積層し、保護雰囲気で剥離した後、さらに860~920℃で5~20分間保温する条件で真空溶接して前記銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板が得られるステップと、を含む。
好ましくは、前記窒化ケイ素セラミックス材料における不純物の総量≦1.0wt%であり、前記不純物は、格子酸素、金属不純物イオン、不純物炭素のうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
好ましくは、前記銅板の厚さは0.2mm~1.0mmである。
【0013】
好ましくは、前記銀粉は平均粒子径が5~20μm、酸素含有量が0.05%以下であり、前記銅粉は、平均粒子径が5~20μm、酸素含有量が0.05%以下であり、前記チタン粉は、平均粒子径が1~5μm、酸素含有量が0.2%以下であり、前記保護雰囲気は窒素雰囲気である。
【0014】
好ましくは、温度が上昇する流れ熱N雰囲気を用いてキャストフィルムブランクを乾燥し、前記N雰囲気の温度範囲は40~85℃であり、雰囲気圧力は0.1~0.2MPaであり、好ましくは、窒素雰囲気の温度段階は二段階であり、前段階の雰囲気温度範囲が40~65℃、後段階の雰囲気温度範囲が60~85℃であり、且つ前段階の雰囲気温度<後段階の雰囲気温度である。
【0015】
好ましくは、前記剥離のパラメータとしては、N雰囲気の圧力が0.1~0.2MPa、処理温度が500~800℃、処理時間が1~3時間である。
【0016】
好ましくは、前記窒化ケイ素セラミック基板の作製方法は、シリカフューム及び窒化ケイ素粉末のうちの少なくとも1つを原料粉末とし、Y粉末及びMgO粉末を焼結助剤とし、さらに有機溶剤及び接着剤を添加し、保護雰囲気で混合し、混合スラリーが得られるステップ(1)と、得られた混合スラリーを保護雰囲気でテープキャスティング成形し、生地が得られるステップ(2)と、
得られた生地を還元雰囲気に置いて、500~800℃で前処理を行い、ラフボディが得られるステップ(3)と、得られたラフボディを窒素雰囲気に置いて、まず1600~1800℃で低温熱処理した後、さらに1800~2000℃で高温熱処理を行い、前記窒化ケイ素セラミック基板が得られるステップ(4)とを含み、好ましくは、前記保護雰囲気は、不活性雰囲気又は窒素雰囲気であり、好ましくは窒素雰囲気であり、前記還元雰囲気は水素含有量が5vol%以下である水素・窒素混合雰囲気である。
【0017】
好ましくは、前記窒化ケイ素セラミック基板の作製方法は、シリカフューム及び窒化ケイ素粉末のうちの少なくとも1つを原料粉末とし、Y粉末及びMgO粉末を焼結助剤とし、保護雰囲気で、混合され成形され、生地が得られるステップ(1)と、得られた生地を還元雰囲気に置いて、500~800℃で前処理を行い、ラフボディが得られるステップ(2)と、得られたラフボディを窒素雰囲気に置いて、まず1600~1800℃で低温熱処理した後に、さらに1800~2000℃で高温熱処理を行い、前記窒化ケイ素セラミック基板が得られるステップ(3)と、を含み、好ましくは、前記保護雰囲気は不活性雰囲気又は窒素雰囲気であり、好ましくは窒素雰囲気であり、前記還元雰囲気は水素含有量が5vol%以下である水素・窒素混合雰囲気である。
【発明の効果】
【0018】
本発明で、作製プロセス過程中の酸素含有量の制御(ミックス及び生地成形過程において原料酸化回避、還元雰囲気前処理を含む)、金属不純物イオンの含有量の制御、炭素含有量の制御によって、晶格空孔、転位等の構造欠陥の量を減らし、窒化ケイ素セラミック材料の熱伝導率と破壊電界強度を向上させる目的を達成する。同時に、二段階の焼結プロセスによって粒界相の成分及び含有量を調整し、低温焼結段階で焼結助剤が液相を生成する促進し、緻密化を促進し、高温段階で残りのMgO焼結助剤が揮発するようにすると同時に、粒界相におけるガラス相の含有量を更に低減し、これによって粒界相の含有量の減少、粒界相の結晶化度合を増加し、さらに熱伝導率を向上させる目的に達成する。同時に、材料の高い破壊電界強度は、ハイパワーデバイスにおける適用に寄与するとともに、基板材料の厚さの低減及び熱抵抗の低下に寄与し、この材料を用いて作製された被覆銅板に耐熱衝撃性、高信頼性、長寿命の代表的な特性を呈させる。本発明では、活性金属粉末が均一に混合した上で、まず、テープキャスティング成形方法を採用してはんだ箔片生地の成形を実現し、はんだ中の各成分の均等分布及び厚さの一致を保証し、はんだのミックスや成形の過程において不活性雰囲気を用いて保護することで、金属粉末の酸化を回避し、さらに銅板付き窒化ケイ素セラミック基板の高強度の溶接を保証する。同時に、成形はんだ箔片生地の方式を採用してはんだのセラミックス基板表面における均一なコーティングを実現し、従来のスクリーン印刷のプロセスが起こしやすい、はんだの不均一現象を回避し、銅板付き窒化ケイ素セラミック基板の低応力溶接を実現し、セラミックス基板と銅片との間に金属はんだ層が均一に分布し、はんだ付けミスを防ぎ、信頼性を向上させるという特徴を有する。また、従来の窒化アルミニウム、アルミナ、ジルコニア強化アルミナ(ZTA)セラミックス基板から作製された銅板付きセラミック基板は、厚さが薄い銅箔(一般的に0.8mm以下)のみに溶接されることができる。銅箔の厚さが大きすぎると、安定性が急に低下する。一方、本発明の方法は、高熱伝導セラミック基板と厚膜銅箔(0.1~1.5mm)の溶接に適用し、厚さが1mm以上の銅箔に対しても、依然として高い強度、低い応力、高い安定性の銅板付き窒化ケイ素セラミック基板を作製することができるが、厚い銅箔は、より大きい電流密度に耐え、より高いパワー半導体デバイスに適用する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1で作製された窒化ケイ素セラミックス材料のXRDパターンである。
図2】実施例1で作製された窒化ケイ素セラミックス材料の典型的なSEM微細構造である。
図3】実施例1で作製された窒化ケイ素セラミックス材料の典型的なTEM微細構造である。
図4】実施例6で窒化後に作製された材料のXRDパターンである。
図5】実施例6で高温焼結後に作製された材料のXRDパターンである。
図6】実施例6で作製された窒化ケイ素セラミックス材料の典型的なSEM微細構造である。
図7】本発明で作製された活性金属はんだ箔片の生地である。
図8】銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の構造概略図である。
図9】実施例12で作製された銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板である。
図10】銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の溶接領域の微細構造である。
図11】銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の溶接領域の微細構造(a)及びその成分分析(b)である。
図12】銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の高温・低温サイクル熱衝撃後の超音波スキャンマップである。
図13】表1は窒化ケイ素セラミックス材料の組成及びその作製プロセスである。
図14】表2は窒化ケイ素セラミックス材料の相組成及び性能パラメータである。
図15】表3は本発明で作製されたはんだ箔片の成分である。
図16】表4は本発明における銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製パラメータ及び性能パラメータである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、下記実施形態を参照しながら本発明をさらに説明する。理解すべきこととしては、以下の実施形態は本発明を説明するためのものだけであり、本発明を限定するものではない。
【0021】
本開示で、窒化ケイ素セラミックス材料には95%以上の窒化ケイ素相と、結晶相含有量が40%以上である粒界相とが含まれる。そして、得られた窒化ケイ素セラミックス材料のうち、格子酸素、金属不純物イオン、炭素不純物等の含有量が低く、総量が1.0wt%以下である。故に、本発明における窒化ケイ素セラミックス材料は、高い熱伝導率及び破壊電界強度を有する。
【0022】
本発明の一実施形態において、クリーニング化で、保護雰囲気での作製プロセスを採用することによって、空気又は熱空気が材料に接触することを回避し、セラミックス作製における不純物の含有量及び酸素の含有量を制御し、材料の曲げ強度を低下しない前提で、材料の熱伝導率及び破壊電界強度を向上させる目的を達成する。以下、本発明で提供される窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法を例示的に説明する。
【0023】
この窒化ケイ素セラミックス材料の作製方法は、具体的に、保護雰囲気でのミックス及び生地成形、還元雰囲気での前処理、窒素雰囲気での焼結、焼結制度制御というステップを含む。
【0024】
保護雰囲気でのミックス
原料粉末、焼結助剤Y粉末及びMgO粉末を密閉容器で溶剤としての無水エタノールを加えて、保護雰囲気で保護して均一に混合してから、乾燥し、混合粉末が得られる。或いは、原料粉末、焼結助剤Y粉末及びMgO粉末を密閉容器に置いてから、有機溶剤としての無水エタノール、接着剤としてのPVBを添加し、その後、保護雰囲気で保護して均一に混合し、混合スラリーが得られる。そのうち、接着剤は、原料粉末+焼結助剤の総質量の5~9wt%であってもよい。得られた混合スラリーの固有含有量は50~70wt%である。
【0025】
選択可能な実施形態において、ミックスに使用される保護雰囲気は、不活性雰囲気又は窒素雰囲気であり、好ましくは窒素雰囲気である。好ましくは、ポリウレタン又はナイロンライニングを有する密閉容器を用いてミックスし、容器に窒素を注入し、空気の侵入を避ける。
【0026】
選択可能な実施形態において、原料粉末は、窒化ケイ素粉末、シリカフューム、又は窒化ケイ素粉とシリカフュームとの混合粉末である。そのうち、窒化ケイ素とケイ素の混合粉末のうち、シリカフュームの質量割合は75%以上であり、即ち、Si粉窒化処理後に生成した窒化ケイ素がすべての窒化ケイ素相に占める質量割合は80%以上である。
【0027】
選択可能な実施形態において、焼結助剤(Y粉末とMgO粉末)の総質量は、原料粉末+焼結助剤の総質量の5wt%以下である。焼結助剤が多すぎると、作製された窒化ケイ素セラミックス材料のうち、粒界相含有量が増えるため、材料の熱伝導率及び破壊電界強度が低下する。焼結助剤が少な過ぎると、緻密化を十分に促進することができず、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の密度が比較的に低く、気孔が増加し、材料の熱伝導率及び破壊電界強度が低下する。さらに好ましくは、焼結助剤のうち、YとMgOとのモル比は、1.0~1.4:2.5~2.9であってもよい。MgOが過剰すると、焼結助剤によって形成された液相共融点温度が比較的に低く、MgOが高温で深刻に揮発することから、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率の破壊電界強度が比較的に低い。MgOが少量であれば、焼結助剤のうち、MgO比率が比較的に低いため、焼結助剤によって形成された液相共融点温度が比較的に高く、材料緻密化の効果が比較的に悪いため、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度は、いずれも明らかに低下する。
【0028】
保護雰囲気での生地成形
保護雰囲気で、混合粉末を直接的にプレス成形し、生地が得られる。ここで、プレス成形の方式は、乾式プレス成形、等静圧圧縮成形等を含むが、これらに限定されない。或いは、保護雰囲気中で、混合スラリーを直接的にテープキャスティング成形し、生地(片状生地)が得られる。好ましくは、テープキャスティング成形の前に、混合スラリーを真空脱気処理する(真空度は一般に-0.1~-10kPaであり、処理時間は4~24時間である)。より好ましくは、テープキャスティング成形のスクレーパー高さを制御することによって、片状生地の厚さを調整する。選択可能な実施形態において、生地成形に使用される保護雰囲気は不活性雰囲気又は窒素雰囲気であってもよく、好ましくは窒素雰囲気である。一般的に、成形中に直接的に窒素を注入して保護する。
【0029】
還元雰囲気での成形生地の前処理
還元雰囲気で、一定温度で成形生地の前処理を行い、原料粉末中の酸素を除去し、成形生地中の有機物を除去する。選択可能な実施形態中、原料粉末がシリカフューム、又は窒化ケイ素とケイ素との混合粉末である時に、成形生地は、まず還元雰囲気で、一定温度で前処理した後に、さらに還元雰囲気で窒化処理する。
【0030】
選択可能な実施形態において、前記前処理は、水素含有量が5%以下である還元性窒素雰囲気で行われることができ、還元雰囲気のガス圧は0.1~0.2MPaである。前処理温度は、500~800℃であってもよく、保温時間は1~3時間であってもよい。
【0031】
選択可能な実施形態において、前記窒化処理は、水素含有量が5%以下である窒素雰囲気で行われることができ、雰囲気圧力は0.1~0.2MPaである。窒化処理温度は1350~1450℃であり、保温時間は3~6時間である。
【0032】
ラフボディの焼結処理は、低温熱処理と高温熱処理を含む。具体的に、高窒素の圧力で、段階的な焼結プロセスで焼結緻密化にし、前記段階的な焼結プロセスは、焼結助剤における低融点物質が揮発することを抑制する低温熱処理と、それを緻密化するさらなる高温焼結とを含む。本発明で、焼結処理は、高い窒素圧力条件でのガス圧焼結を採用すべきであり、雰囲気圧力は0.5~10MPaであってもよい。ラフボディをBN坩堝に入れて焼結処理することができる。ここで、低温熱処理(低温焼結)の温度は、1600~1800℃であってもよく、保温時間は1.5~2.5時間であってもよい。高温熱処理(高温焼結)の温度は1800~2000℃であってもよく、保温時間は4~12時間であってもよい。
【0033】
本発明では、作製された窒化ケイ素セラミックス中の、格子酸素、金属不純物イオン、不純物炭素等の含有量が低く、高熱伝導、高い破壊電界強度の特徴を有し、その熱伝導率が90W・m-1・K-1以上であると同時に、破壊電界強度が30KV/mm以上である。
【0034】
本開示において、活性金属ろう付けプロセスを用いて銅板付き窒化ケイ素セラミック基板を作製し、はんだの混合、はんだ箔片生地の成形、はんだ箔片生地の切取り及び積層、積層片の剥離及び窒化ケイ素被覆銅板の真空溶接等を含む。以下、本発明で提供される銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法を例示的に説明する。
【0035】
はんだの混合
密閉容器及びN雰囲気保護で、銀粉、銅粉、チタン粉、有機溶剤及び接着剤を均一的に混合し、混合スラリーが得られる。具体的には、密閉容器を用いて湿式ボールミリングによってミックスし、容器に0.1MPaのN雰囲気を注入し、空気の侵入を避ける。ここで、銀粉は質量パーセントが60~65%であってもよく、平均粒子径が5~20μmであってもよく、酸素含有量が0.05%以下であり、銅粉は質量パーセントが33~37%であってもよく、平均粒子径が5~20μmであってもよく、酸素含有量が0.05%以下であり、チタン粉は質量パーセントが1~4%であってもよく、平均粒子径が1~5μmであってもよく、酸素含有量が0.2%以下である。選択可能な実施形態において、接着剤は、ポリビニルブチラール(PVB)であってもよく、接着剤の加入量は銀粉、銅粉及びチタン粉の総質量の5~15wt%であってもよい。好ましくは、このスラリーには、他の助剤、例えば消泡剤、分散剤、可塑剤のうちの少なくとも1つがさらに含まれる。消泡剤は、オレイン酸であってもよく、添加量は銀粉、銅粉及びチタン粉の総質量の0.2~1.0wt%であってもよい。分散剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、リン酸トリエチル(TEP)のうちの少なくとも1つであってもよく、添加量は銀粉、銅粉及びチタン粉の総質量の0.2~1.0wt%であってもよい。可塑剤は、フタル酸ジエチル(DEP)、フタル酸ジブチル(DBP)、ポリエチレングリコール(PEG)のうちの少なくとも1つであってもよく、添加量は銀粉、銅粉及びチタン粉の総質量の2~6wt%であってもよい。このはんだの混合スラリーの固有含有量は55~75wt%であってもよい。
【0036】
はんだ箔片生地の成形
混合スラリーをN雰囲気でテープキャスティング成形し、且つ熱N雰囲気で乾燥し、厚さが均一であるはんだ箔片生地の作製を実現する。前記成形はんだ箔片生地の厚さは20~60μmであり、厚さ偏差は±10μm以下である。
【0037】
選択可能な実施形態において、温度が上昇する流れ熱N雰囲気を用いて、キャストフィルム生地を乾燥する。熱N雰囲気の温度範囲は40~85℃であり、雰囲気の圧力は、0.1~0.2MPaである。前記温度が上昇する流れ熱N雰囲気において、前段階の雰囲気温度範囲が40~65℃、後段の階雰囲気温度範囲が60~85℃である。
【0038】
はんだ箔片生地の切取り及び積層
乾燥したはんだ箔片生地を、窒化ケイ素セラミック基板のサイズに合わせる箔片に切取り、窒化ケイ素セラミック基板、はんだ生地箔片及び銅箔の積層を行う。ここで、はんだ生地の積層は、窒化ケイ素基板の上下面に1枚のはんだ箔片生地をそれぞれ置いて、さらにはんだ箔片生地の外側に1層のサイズが合わせる銅箔をそれぞれ配置する。
【0039】
積層片の剥離
微陽圧で、一定の温度条件で積層片を熱処理する。ここで、前記積層片の剥離は、N雰囲気を注入することによって微陽圧を生成し、雰囲気の圧力は0.1~0.2MPa、処理温度は500~800℃、処理時間は1~3時間である。
【0040】
窒化ケイ素被覆銅板の真空溶接
真空で、一定の温度条件で積層片に対して真空溶接を行う。ここで、真空溶接のパラメータとしては、真空度が10-2~10-4Pa、溶接温度が860~920℃、保温時間が5~20分間である。
【0041】
本発明で、窒化ケイ素セラミックス材料を被覆銅板に作製した後に、ハイパワー絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)モジュールの放熱基板に用いても良い。得られた窒化ケイ素セラミックスから作製した被覆銅板を採用すると、耐熱衝撃性、高信頼性、長使用寿命等の特徴を有する。
【0042】
以下、さらに実施例をあけて本発明を詳細的に説明する。同様に、以下の実施例は本発明をさらに説明するだけに用いられ、本発明の保護範囲を限定するものと理解すべきではない。当業者による、本発明の上記内容に基づいてなされたいくつかの本質的な改良及び調整は、いずれも本発明の保護範囲に属する。下記例示的なプロセスパラメータ等も適当な範囲のうちの一例である。すなわち当業者は、本明細書の説明により適当な範囲において選択を行うことができ、以下の例示的な具体的数値に限定されるものではない。
【0043】
実施例1
まず、95gのSi、5gの焼結助剤粉末(Y:MgO=1.2:2.5,モル比)、1gのヒマシ油、1gのPEG、70gの無水エタノール及び200gの窒化ケイ素研磨ボールを、雰囲気保護機能を有するポリウレタン裏地付きのボールミルタンクに入れた。ボールミルタンクキャップをパッケージングした後に順に真空引き、N保護雰囲気を注入し、6時間ボールミーリング混合した後にスラリーが得られた。上記スラリーに5gのPVB及び3gのDBPをさらに添加し、続いてN雰囲気保護で6時間ボールミーリングした後に均一なスラリーが得られた。次に、スラリーに対して6時間真空脱ガス処理を行い、N雰囲気保護で基板生地がテープキャスティング成形された。基板生地の厚さはd±0.05mm(d=0.2~2.0)であった。再び、成形基板生地を所要の形状に切り取ってBN坩堝に入れ、カーボンチューブ炉に置き、その後、以下のプロセス順序で熱処理が行われた。
(1)0.15MPaのN(5%のH含有)雰囲気保護で、5℃/minの速度で600℃まで昇温した後に2時間剥離前処理が行われ、
(2)2MPaのN雰囲気保護で、5℃/minの速度で1650℃まで昇温した後に2時間低温熱処理が行われ、
(3)8MPaのN雰囲気保護で、3℃/minの速度で1950℃まで昇温した後に8時間高温焼結し、
(4)炉で室温まで冷却する。
【0044】
本実施例1によって作製された窒化ケイ素セラミックス基板材料は、曲げ強度が810MPa、熱伝導率が106W・m-1・K-1、破壊電界強度が45KV/mmであった。この材料のXRDパターンは、図1に示されるように、高い強度のβ-Si回折ピークのみが存在し、且つ明らかな蒸しパン状ピーク(steamed bread-shaped peaks)がなかった。これは、作製された材料におけるβ-Si相の含有量が95wt%よりも大きく、粒界相の含有量が5%よりも小さいことを示している。材料の典型的なSEM微細構造は、図2に示されるように、材料が高致密度を有し、微細構造が均一であった。Si晶粒(灰色の黒い領域)は、典型的な二峰性分布を呈し、細小の等軸状Si晶粒及び大きい長い柱状Si晶粒から互いに象嵌して組成される。粒界相(グレー領域)の含有量は低く、Siマトリックスに均一的に拡散分布される。さらに少なくとも10枚のSEM図面から統計的に分析し、原料における焼結助剤の総引入量≦5wt%を参照すると、本実施例で作製された窒化ケイ素セラミックス材料における粒界相の含有量が5%よりも小さいことが確認された。材料の典型的なTEM微細構造は、図3図3中のBは図3中のAの点線のボックス領域の部分拡大図である)に示されるように、Si晶粒(灰色の黒い領域)の間で粒界相(グレー領域)が分散的に分布されるが、粒界相はガラス相(明るい領域)と結晶相(暗い領域)とからなる。少なくとも10枚のTEM図から統計的に分析した結果、本実施例の作製した窒化ケイ素セラミックス材料の粒界相における結晶相の含有量は、約54vol%であった。
【0045】
実施例2~5
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータを表1(図13)に示す。プロセス過程については実施例1を参照し、作製された材料組成及び性能を表2(図14)に示す。
【0046】
実施例6
まず、3gのSi粉末、55gのSi粉末、4.5gの焼結助剤粉末(Y:MgO=1.4:2.6,モル比)、0.7gのヒマシ油、0.6gのPEG、50gの無水エタノール及び130gの窒化ケイ素の研磨ボールを、雰囲気保護機能を有するポリウレタン裏地付きのボールミルタンクに入れた。ボールミルタンクキャップをパッケージングした後に、順に真空引き、N保護雰囲気を注入し、8時間ボールミーリング混合した後、スラリーが得られた。上記スラリーに4gのPVB及び2.5gのDBPをさらに添加し、続いてN雰囲気保護で6時間ボールミーリングした後、均一なスラリーが得られた。次に、スラリーに対して6時間真空脱ガス処理を行い、N雰囲気保護下で基板生地がテープキャスティング成形された。再び、成形基板生地を所要の形状に切り取ってBN坩堝に入れ、カーボンチューブ炉に置き、その後、下記のプロセス順序で熱処理が行われ、
(1)0.2MPaのN(5%のH含有)雰囲気保護で、4℃/minの速度600℃まで昇温した後に3時間剥離前処理が行われ、
(2)0.2MPaのN(5%のH)雰囲気保護で、5℃/minの速度で1450℃まで昇温した後、6時間窒化処理が行われ、
(3)3MPaのN雰囲気保護で、6℃/minの速度で1700℃まで昇温した後に、2時間低温熱処理が行われ、
(4)8MPaのN雰囲気保護で、5℃/minの速度で1950℃まで昇温した後に、10時間高温焼結し、
(5)炉で室温まで冷却した。
【0047】
本実施例6によって作製された窒化ケイ素セラミックス基板材料は、曲げ強度が710MPa、熱伝導率が110W・m-1・K-1、破壊電界強度が48KV/mmであった。この材料の窒化処理プロセス(上記プロセス過程(2))後のXRDパターンは、図4に示されるように、主晶相がα-Siであると同時に、少量のβ-Si物相(5~10%)を含有する。この材料の高温焼結プロセス(上記プロセス過程(4))後のXRDパターンは、図5に示されるように、β-Si回折ピークのみ存在し、且つ明らかな蒸しパン状ピークがなかった。これは、作製された材料におけるβ-Si相の含有量が95wt%よりも大きく、粒界相の含有量が5wt%よりも小さいことを示している。さらに上記実施例1と同一の方法を用いて、作製された材料粒界相における結晶相の含有量が約60vol%であることが測定された。材料断口の典型的なSEM微細構造は、図6に示されるように、材料が高い密度を有し、微細構造が均一であり、細小の等軸状Si晶粒及び大きな長い柱状Si晶粒から互いに象嵌し組成される。
【0048】
実施例7~10
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス、窒化処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータを表1(図13)に示す。プロセス過程について実施例6を参照し、作製された材料組成及び性能を表2(図14)に示す。
【0049】
実施例11
本実施例11では、窒化ケイ素セラミックス材料の作製過程について実施例1を参照し、主に相違点として、95gのSi粉末、5gの焼結助剤粉末(Y:MgO=1.2:2.5,モル比)、1gのヒマシ油、1gのPEG、70gの無水エタノール及び200gの窒化ケイ素研磨ボールを、雰囲気保護機能を有するポリウレタン裏地付きのボールミルタンクに入れた。ボールミルタンクキャップをパッケージングした後に、順に真空引き、N保護雰囲気を注入し、6時間ボールミーリングしてスラリーが得られた。そして、窒素雰囲気で乾燥、ふるい分け、乾式プレス成形(20MPa)及び冷間等静圧圧縮(200MPa)が行われ、生地が得られた。
【0050】
比較例1
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図13)を参照)、プロセス過程について実施例1を参照し、相違点として、ボールミルミックス及び生地成形等のプロセス過程で窒素雰囲気保護措置が採用されない。作製された材料組成及び性能を表1(図13)に示す。材料作製プロセス過程で本発明に記載の窒素雰囲気保護措置が採用されないため、原料における窒化ケイ素粉に異なる度合の酸化が発生し、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度はいずれも明らかに低下したが、曲げ強度は基本的に変わらない。
【0051】
比較例2
焼結助剤組成比率、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図13)を参照)、相違点として、焼結助剤の総量が増加する。作製された材料組成及び性能を表2(図14)に示す。焼結助剤の含有量が比較的に高いため、焼結助剤によって形成された低い熱伝導率特性を有する粒界相の含有量が比較的に高く、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度はいずれも明らかに低下したが、曲げ強度は基本的に変わらない。
【0052】
比較例3
原材料配合、焼結助剤種類及び総量、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図13)を参照)、相違点として、焼結助剤の配合が異なる(Y:MgO=1.2:4.0)。作製された材料組成及び性能を表2(図14)に示す。焼結助剤におけるMgOの比率が比較的に高いため、焼結助剤によって形成された液相共融点温度が相対的に低く、高温で揮発するのは深刻であり、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度はいずれも明らかに低下した。
【0053】
比較例4
原材料配合、焼結助剤種類及び総量、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図13)を参照)、相違点として、焼結助剤の配合が異なる(Y:MgO=1.3:2.0)。作製された材料組成及び性能を表2(図14)に示す。焼結助剤におけるMgOの比率が比較的に低いため、焼結助剤によって形成された液相共融点温度が相対的に高く、材料緻密化の効果が比較的に悪いため、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度は、いずれも明らかに低下した。
【0054】
比較例5
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図13)を参照)、プロセス過程は実施例1と類似し、相違点として、焼結プロセスが一段階焼結である。作製された材料組成及び性能を表2(図14)に示す。低温熱処理過程が含まれないため、十分に緻密化していないまま深刻なMgO揮発が発生し、材料の緻密化効果が相対的に悪く、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度はいずれも明らかに低下した。
【0055】
比較例6
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例1と同一であり(表1(図13)を参照)、プロセス過程について実施例1と同一であり、相違点として、低温熱処理の温度が比較的に低い。作製された材料組成及び性能を表2(図14)に示す。低温熱処理の温度が比較的に低いため、材料の緻密化効果が相対的に悪く、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の熱伝導率及び破壊電界強度はいずれも明らかに低下した。
【0056】
比較例7~8
原材料配合、焼結助剤組成、前処理プロセス、焼結プロセス等の具体的なパラメータは実施例8と同一であり(表1(図13)を参照)、プロセス過程について実施例8と同一であり、相違点として、窒化処理温度が比較的に低く(比較例7)又は比較的に高い(比較例8)。作製された材料組成及び性能を表2(図14)に示す。窒化処理の温度が比較的に低く(比較例7)又は比較的に高い(比較例8)ため、材料におけるSi粉窒化処理が不充分(比較例7)又は一部のケイ素化現象が発生し(比較例8)、作製された窒化ケイ素セラミックス材料の力学的、熱学的及び電学的性能はいずれも明らかに低下した。
【0057】
実施例12
はんだ箔片生地の作製
(1)Ag粉(平均粒子径8μm、酸素含有量0.01%)、Cu粉(平均粒子径6μm、酸素含有量0.01%)及びTi粉(平均粒子径2μm、酸素含有量0.1%)を、質量比63:35:2で秤量した後、ポリウレタン裏地付きのボールミルタンクに置いて、同時に0.2%のオレイン酸、0.5%のPEG、2%のPVA、1%のDEP、200%の窒化ケイ素研磨ボール及び110%の無水エタノールを加入し、真空引いた後に、1atmのN雰囲気を注入して保護し、100rpmで8時間ボールミルミックスした後、分散が均一、凝集がないスラリーが得られた。
(2)作製されたスラリーに対して8時間真空バブル除去処理を行なった。真空度は-0.5kPaである。
(3)N保護雰囲気で上記バブル除去後のスラリーに対してテープキャスティング成形し、スクレーパーの高さを制御することによってキャストフィルムブランクの厚さを50±10μmに制御し、温度を上昇させながら熱N雰囲気を流してキャストフィルムブランクを乾燥し、N雰囲気の圧力が0.12MPa、前後二段階のN雰囲気の温度がそれぞれ45℃及び65℃とした。
(4)乾燥後のキャストフィルムブランクを、実施例1で作製された窒化ケイ素セラミック基板に合わせたサイズに切り取って、はんだ箔片生地を作製した。作製された活性金属はんだ箔片生地は、図7に示されるように、箔片の厚さが50±5μmであり、表面が均一、滑らかで平らで、柔軟性に優れ、カールしたりカットしたりできた。
【0058】
AMB真空ろう付け
(1)作製された窒化ケイ素セラミック基板、はんだ箔片生地及び厚さ0.3mmの無酸素銅箔を組み立て、図8に示される積層片部品とした。
(2)積層片部品を0.15MPaのN雰囲気で650℃で2時間保温して剥離させた。
(3)剥離後の積層片部品を真空ろう付け炉に置いて、10-3Paの真空度で、900℃で10分間保温して溶接した。
(4)得られた銅板付き窒化ケイ素セラミック基板を、炉で室温まで冷却した。
【0059】
図9は、作製された高い強度、低い応力、高い安定性の銅板付き窒化ケイ素セラミック基板を示す。ここで、接合強度(銅箔剥離強度)は15N/mm(GB/T4722-2017「プリント回路用硬質被覆銅板の試験方法」を参照して検出した)であり、被覆銅板の平面度は0.2mmである。図10及び図11は、それぞれ窒化ケイ素被覆銅板溶接領域の微細構造及びその成分分析写真を示す。これら図面より分かるように、窒化ケイ素セラミック基板と銅箔層との間に幅が約50μmである溶接領域(幅ははんだ箔片の幅と一致する)があり、溶接領域は、主にCu(薄い灰色の領域)とAg(グレー領域)からなり、Cuが基本的な連続相を形成し、Agが拡散分散したAg粒子(オフホワイトの小さな粒子)及び部分領域のAg連続相(オフホワイトのメッシュ構造)を形成し、窒化ケイ素セラミックスと溶接領域の間に幅が約100nmである元素拡散反応遷移領域があり、Ti及びSi元素が反応して形成された新しい物相(例えばTiSi)を形成し、溶接強度を保証し、200回の高温・低温サイクル熱衝撃後(300℃で10分間保温した直後に室温の水浴に入れて10分間冷ますのは一回の熱衝撃である)、作製された窒化ケイ素被覆銅板は無傷で(高温・低温サイクル熱衝撃の極端な実験が行われない)、微小な亀裂、反り、亀裂等の目に見える欠陥が生じなかった(図12)。
【0060】
実施例13~16
はんだ組成、テープキャスティング成形、銅箔厚さ、剥離及び真空溶接プロセス等の具体的なパラメータを表3(図15)に示し、プロセス過程について実施例12を参照し、作製された銅板付き窒化ケイ素セラミック基板特性を表4(図16)に示す。
【0061】
実施例17~18
はんだ組成、テープキャスティング成形、銅箔厚さ、剥離及び真空溶接プロセス等の具体的なパラメータを表3(図15)に示し、プロセス過程について実施例12を参照し、相違点として、実施例8で作製された窒化ケイ素セラミックス材料を窒化ケイ素セラミック基板として選択し、その厚さが0.5mmである。作製された銅板付き窒化ケイ素セラミック基板特性を表4(図16)に示す。
【0062】
比較例9~10
はんだ組成、テープキャスティング成形、銅箔厚さ、剥離及び真空溶接プロセス等の具体的なパラメータを表3(図15)に示し、プロセス過程について実施例12を参照し、作製された銅板付き窒化ケイ素セラミック基板特性を表4(図16)に示す。はんだ組成において、活性金属Tiの含有量が低すぎ(比較例9)又は高すぎる(比較例10)ため、作製された銅板付きセラミック基板の銅層剥離強度及び熱衝撃サイクル寿命はいずれも明らかに低下した(それぞれ120回及び150回の熱衝撃サイクルの後、セラミックス基板及び溶接銅箔の一部溶接領域に亀裂欠陥が発生した)。
【0063】
比較例11~12
はんだ組成、テープキャスティング成形、銅箔厚さ、剥離及び真空溶接プロセス等の具体的なパラメータを表3(図15)に示し、プロセス過程について実施例12を参照し、作製された銅板付き窒化ケイ素セラミック基板特性を表4(図16)に示す。はんだ箔片の厚さが小さすぎ(比較例11)又は大きすぎる(比較例12)ため、作製された銅板付きセラミック基板の銅層剥離強度は部分的に低下し(比較例11)、又は明らかに低下し(比較例12)、熱衝撃サイクル寿命はいずれも明らかに低下した(それぞれ120回及び100回の熱衝撃サイクルの後、セラミックス基板及び溶接銅箔の一部溶接領域に亀裂欠陥が発生した)。
【0064】
比較例13
はんだ組成、テープキャスティング成形、銅箔厚さ、剥離及び真空溶接プロセス等の具体的なパラメータを表3(図15)に示し、プロセス過程について実施例12を参照し、作製された銅板付き窒化ケイ素セラミック基板特性を表4(図16)に示す。溶接された銅箔の厚さが大きすぎる(2mm)ため、作製された銅板付きセラミック基板の銅層剥離強度は比較的に高いが、熱衝撃サイクル過程に発生する熱応力が大きく、熱衝撃寿命が明らかに低下した(80回の衝撃サイクル後、セラミックス基板と銅箔との間に亀裂欠陥が発生した)。
【0065】
比較例14
はんだ組成、テープキャスティング成形、銅箔厚さ、剥離及び真空溶接プロセス等の具体的なパラメータを表3(図15)に示し、プロセス過程について実施例12を参照し、作製された銅板付き窒化ケイ素セラミック基板特性を表4(図16)に示す。真空溶接過程における真空度が比較的に低いため、両者間の接合力が低く、作製された銅板付きセラミック基板の銅層剥離強度及び熱衝撃サイクル寿命は明らかに低下した(130回の衝撃サイクルの後、セラミックス基板と銅箔との間に亀裂欠陥が発生した)。
【0066】
比較例15
はんだ組成、テープキャスティング成形、銅箔厚さ、剥離及び真空溶接プロセス等の具体的なパラメータを表3(図15)に示し、プロセス過程について実施例12を参照し、作製された銅板付き窒化ケイ素セラミック基板特性を表4(図16)に示す。真空溶接プロセスの温度が高すぎ、明らかにはんだの共融点温度を超えるため、はんだが高温で溶けた後にオーバーフローし、セラミックス基板と銅箔との間に有効的な溶接が形成されておらず、直接的に亀裂した。
【0067】
比較例16
はんだ組成、テープキャスティング成形、銅箔厚さ、剥離及び真空溶接プロセス等の具体的なパラメータを表3(図15)に示し、プロセス過程について実施例12を参照し、作製された銅板付き窒化ケイ素セラミック基板特性を表4(図16)に示す。真空溶接プロセスの温度が低すぎ、はんだの共融点温度に十分に達しないため、活性金属は十分に拡散せず良い化学的接合を形成せず、作製された銅板付きセラミック基板の銅層剥離強度及び熱衝撃サイクル寿命は明らかに低下した。
【0068】
比較例17~18
はんだ組成、テープキャスティング成形、銅箔厚さ、剥離及び真空溶接プロセス等の具体的なパラメータを表3(図15)に示し、プロセス過程について実施例12を参照し、作製された銅板付き窒化ケイ素セラミック基板特性を表4(図16)に示す。真空溶接プロセス温度での保温時間が長すぎ(比較例17)又は短すぎる(比較較18)ため、両者は最適の接合状態に達せず、作製された銅板付きセラミック基板の銅層剥離強度及び熱衝撃サイクル寿命はいずれも低下した。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3(A)】
図3(B)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2023-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法であって、
前記銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板は、窒化ケイ素セラミック基板と、窒化ケイ素セラミック基板の上下両側に配置する銅板と、銅板と窒化ケイ素セラミック基板との間に配置する溶接層とを含み、
前記窒化ケイ素セラミック基板の成分は窒化ケイ素相及び粒界相を含み、
前記窒化ケイ素相の含有量≧95wt%であり、
前記粒界相は少なくともY、Mg、Oの3つ元素を含有する混合物であり、二段階焼結プロセスにより粒界相の成分及び含有量を調整することで前記粒界相の含有量≦5wt%、且つ粒界相における結晶相の含有量≧40vol%にし、
窒化ケイ素セラミック基板の作製に使用される焼結助剤は、Y及びMgOであり、両者のモル比は1.0~1.4 : 2.5~2.9であり、
前記二段階焼結プロセスは、雰囲気圧力が0.5~10MPaである窒素雰囲気で、まず1600~1800℃で低温熱処理した後、さらに1800~2000℃で高温熱処理を行うステップを含み、
前記窒化ケイ素セラミック基板の厚さが0.2~2.0mmであり、
前記溶接層の成分がAgCuTiであり、ここでAg:Cu:Tiの質量比がx:y:zであり、x=0.60~0.65、y=0.33~0.37、z=0.01~0.04であり、且つx+y+z=1であり、
前記溶接層の厚さが20~60ミクロンであり、
前記銅板の厚さが0.1~1.5mmであり、
銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の構造に従って、銅板と、溶接層として形成されたはんだ箔片と、窒化ケイ素セラミック基板とを積層し、保護雰囲気で剥離した後、さらに860~920℃で5~20分間保温する条件で真空溶接して前記銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板が得られるステップと、を含む、
ことを特徴とする銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項2】
前記剥離のパラメータとしては、N雰囲気の圧力が0.1~0.2MPa、処理温度が500~800℃、処理時間が1~3時間である、請求項1に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項3】
前記はんだ箔片の作製過程は、
銀粉、銅粉、チタン粉、有機溶剤及び接着剤を保護雰囲気で混合し、混合スラリーが得られるステップ(1)と、
得られたスラリーを保護雰囲気でテープキャスティング成形及び乾燥を行い、はんだ箔片が得られるステップ(2)と、を含む、請求項1に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項4】
前記銀粉は平均粒子径が5~20μm、酸素含有量が0.05%以下であり、
前記銅粉は、平均粒子径が5~20μm、酸素含有量が0.05%以下であり、
前記チタン粉は、平均粒子径が1~5μm、酸素含有量が0.2%以下であり、
前記保護雰囲気は窒素雰囲気である、請求項に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【請求項5】
温度が上昇する流れ熱N雰囲気を用いて、キャストフィルム生地に対して乾燥し、熱N雰囲気の温度範囲は40~85℃であり、雰囲気の圧力は、0.1~0.2MPaである、請求項に記載の銅板付きの窒化ケイ素セラミック基板の作製方法。
【国際調査報告】