(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】剥離によって層が除去されたドナー基板の残留物を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240207BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
H01L21/02 B
H01L21/304 631
H01L21/304 621E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023541625
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 FR2022050260
(87)【国際公開番号】W WO2022180321
(87)【国際公開日】2022-09-01
(32)【優先日】2021-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】フエット, イザベル
(72)【発明者】
【氏名】カペッロ, ルシアナ
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA43
5F057BA12
5F057DA03
5F057DA11
5F057DA21
5F057DA33
(57)【要約】
本発明は、ドナー基板の残留物(1’)を調製するための方法であって、残留物(1’)は、主面(10)の周辺ゾーン(13)上に周辺リングを含む、方法に関する。本方法は、周辺リングの少なくとも一部を除去する第1のステップと、表面層を除去することを目的として、残留物(1’)の主面(10)を処理する第2のステップと、第2のステップの後に、残留物(1’)の主面(10)の周辺ゾーン(13)を研削する第3のステップであって、周辺ゾーン(13)の高さを低減することを目的とする、第3のステップとを含む。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナー基板(1)の残留物(1’)を調製するための方法であって、薄層(3)が、軽い種の導入によって形成された脆弱面(2)での剥離によって前記ドナー基板(1)から除去されており、前記残留物(1’)が、主面(10)の周辺ゾーン(13)上に、前記ドナー基板(1)の除去されていない部分に対応する周辺リング(11)を含み、前記方法が、
前記周辺リング(11)の少なくとも一部を除去する第1のステップと、
表面層(4)を除去することを目的として、前記残留物(1’)の前記主面(10)を処理する第2のステップと、
前記第2のステップの後に、前記残留物(1’)の前記主面(10)の前記周辺ゾーン(13)をイオンエッチング研削する第3のステップであって、前記周辺ゾーン(13)の高さを低減することを目的とする、第3のステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第2の処理ステップが、前記第1の除去ステップの後である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のステップが、前記周辺リング(11)を研削することによって実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のステップが、前記主表面(10)の化学機械研磨によって実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
除去された前記表面層(4)の厚さが、5ミクロン未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記イオンエッチングが、アルゴンイオンを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第3の研削ステップが、前記周辺ゾーン(13)を所定のプロファイルに成形することを目的とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記周辺ゾーン(13)が、前記第3の研削ステップの完了時に、前記中央部分(12)の平均高さ面(E)の高さ以下である最大高さ(M’)を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記残留物(1’)が、中間支持体(1b)上に配置された材料の厚い層(1a)を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記厚い層(1a)の前記材料が、強誘電体材料である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記厚い層(1a)が、接着材料の層によって前記中間支持体上に組み付けられる、請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドナー基板の残留物を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2020/0186117号は、中間支持体上の材料の厚い層によって形成された複合ドナー基板の予備形成と、ドナー基板の厚い層から薄層を除去することと、この薄層を最終支持体に転写することとを含む、薄層を調製するための方法を記載している。除去ステップ及び転写ステップは、スマートカット(Smart Cut)(商標)技術によって実施される。
【0003】
本調製方法は、薄層を形成する材料が、最終的な支持体を形成する材料とは全く異なる熱膨張係数を有する場合に特に適している。
【0004】
薄層を除去するステップ及び転写するステップは、埋め込み脆弱面を形成するために、軽い種をドナー基板に、この場合は複合ドナー基板の厚い層に、この基板の「主面」と呼ばれる面(又は表面)を通して導入することを含む。転写される層は、この埋め込み脆弱面とドナー基板の主表面との間に規定される。その後のステップにおいて、ドナー基板を、その主表面を介して最終支持体上に組み付け、熱処理をこの組立体に加え、任意選択で機械的な力を補足的に加えることによって、脆弱面において薄層を分離し、この薄層を最終支持体に転写する。
【0005】
ドナー基板の残留物、すなわち薄層が除去された後のこの基板の残りの部分は、別の除去-再調整サイクルで使用するために再調整することができる。スマートカット(商標)法の完了時に得られる残留物を再調整するためのこのような方法は、例えば、欧州特許第1427002号、欧州特許第1427001号、米国特許出願公開第2009/0061545号、米国特許出願公開第2010/0200854号、米国特許出願公開第2018/0033609号から知られている。これらの方法は、一般に、脆弱面での材料の破砕によって生成される表面欠陥を除去するために、最終支持体に転写されないドナー基板の周辺部分に対応する、しばしばリングと呼ばれる周辺段差を除去し、残留物の主表面を調製することを試みる。
【0006】
米国特許出願公開第2020/0186117号で提案されている方法の場合、厚い層と中間支持体とは異なる熱膨張係数を有するため、複合ドナー基板は、一般に、この基板に凸状の強度を与える曲率を有する傾向があり、この基板の主表面(厚い層の露出面)は、わずかに外側に湾曲している。
【0007】
組み付けステップが分子接着によって行われる場合、ドナー基板を、この基板の主表面の中央部分に位置する凸部の頂点において最終支持体と接触させる。次いで、2つの対向面を互いに接触させる傾向がある接合波が開始され、この波は、初期接触点からドナー基板及び最終支持体の外縁部に向かって同心円状に伝播する。
【0008】
このような構成では、ドナー基板と最終支持体との間の界面に接合欠陥が現れる傾向があり、これらの欠陥は、接合波の伝播端において、組立体の縁部の近くに配置された小さな気泡の形態をとる。これらの気泡は、最終支持体へのドナー基板の適切な接着を局所的に妨げ、その結果、これらの欠陥の上に覆いかぶさる、又はその近傍にある薄層の部分は、完全には除去されず、最終支持体に転写されない。したがって、薄層は、「孔」タイプの欠陥を呈し、又は輪郭が非常に不規則になる。
【0009】
本出願人は、薄層の孔の密度、又は薄層の輪郭の不均一な性質が、ドナー基板のリサイクルの程度、すなわちこの基板が受けた除去-再調整サイクルの数とともに増加する傾向があることに気付いた。
【0010】
もちろん、この欠陥は望ましくなく、特定のしきい値を超えると、薄層と最終支持体とで構成されたハイブリッド基板は使用できなくなる。同時に、特に複合ドナー基板が使用される場合、残留物を再調整するコストと比較して調製するのにはるかに費用がかかるため、同じ基板をかなりの回数使用できることは経済的に有益である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ドナー基板を何度も使用できるようにし、この複数回の使用にもかかわらず、従来技術の方法を使用した場合に指摘されたような、除去及び転写された薄層の品質の劣化を抑えることである。本発明は、ドナー基板が、中間支持体上に配置された厚い層によって形成されたハイブリッド基板である場合に特に興味深い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明の主題は、軽い種の導入によって形成された脆弱面での剥離によってドナー基板から層が除去された、ドナー基板の残留物を調製するための方法を提案し、残留物は、主表面の周辺ゾーン上に、ドナー基板の除去されていない部分に対応する周辺リングを含む。
【0013】
本方法は、
-周辺リングの少なくとも一部を除去する第1のステップと、
-表面層を除去することを目的として、残留物の主表面を処理する第2のステップと、
-第2のステップの後に、残留物の主表面の周辺ゾーンをイオンエッチング研削する第3のステップであって、第3の研削ステップが、周辺ゾーンの高さを低減することを目的とする、第3のステップと
を含む。
【0014】
本発明の他の有利で非限定的な特徴によると、個々に、又は任意の技術的に実現可能な組合せに従って、以下が得られる。
-第2の処理ステップは、前記第1の除去ステップの後であり、
-第1のステップは、周辺リングを研削することによって実施され、
-第2のステップは、主表面の化学機械研磨によって実施され、
-除去された表面層の厚さは、5ミクロン未満であり、
-イオンエッチングは、アルゴンイオンを含み、
-第3の研削ステップは、周辺ゾーンを所定のプロファイルに成形することを目的し、
-周辺ゾーンは、第3の研削ステップの完了時に、中央部分の平均高さ面の高さ以下の最大高さを有し、
-残留物は、中間支持体上に配置された材料の厚い層を含み、
-厚い層の材料は、強誘電体材料であり、
-厚い層は、接着材料の層によって中間支持体上に組み付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【
図1a】ドナー基板の残留物を概略的に示す図である。
【
図1b】ドナー基板の残留物を概略的に示す図である。
【
図2a】本発明による調製方法の第1の除去ステップの適用後の残留物を示す図である。
【
図2b】本発明による調製方法の第2の処理ステップの適用後の残留物を示す図である。
【
図2c】本発明による調製方法の適用後の再調整された残留物を示す図である。
【
図3】本発明による、調製された残留物を使用することができる、薄層を除去及び転写するための方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1a及び
図1bは、スマートカット(商標)技術を実施する方法のステップに従って、ドナー基板、すなわち、軽い種の導入によって形成された脆弱面での剥離によって薄層が除去された基板の残留物1’を概略的に示す。
【0017】
この残留物1’の主面10には、周辺リング11が位置し、このリングは、図示された例の場合には環状であり、残留物1’は、ドナー基板の除去されなかった部分に対応する円形ウエハの形態である。より具体的には、周辺リング11は、残留物1’の周辺ゾーン13に収容されており、転写方法の組み付けステップ中に最終支持体と十分に接着せず、その結果、ドナー基板から除去することができなかった、ドナー基板内に規定された薄層の部分に対応する。
図1aの断面は、周辺リング11の下方に、除去されていない薄層のこの部分を規定する脆弱面3を示す。
【0018】
周辺リング11は段差を形成し、その幅lは0.5mm~8mmの範囲にある可能性があり、その高さhは100nm~1.5ミクロンに達する可能性がある。周辺ゾーンは、主表面上で、リングの幅よりも大きい幅l’、典型的にはリングの幅lの1~3倍、より一般的には0.5mm~2.5cmの範囲にある幅をとる。
【0019】
この段差の存在により、この残留物1’を新しい薄層を除去するために直接使用することはできない。さらに、主表面10の中央部分12、すなわち周辺ゾーン13の周辺リング11の内側に含まれる表面は、特に粗い表面仕上げ及び硬化した表面厚さを有し、これも、残留物1’が再び使用可能になる前に調製されなければならない。中央部分12のこの表面仕上げは、薄層を除去するステップに起因するものであり、中央部分12は、ドナー基板に導入された軽い種によって生成された脆弱面Pに特に対応し、この脆弱面Pに沿って薄層が除去されている。
【0020】
本発明は、このような残留物1’を再調整して、スマートカット(商標)法を実施する薄層を除去及び転写するための方法の適用において、この残留物をさらなる使用に適するようにすることを目的とする。より具体的には、本発明は、最終基板上に再調整されたドナー基板(より具体的には、ドナー基板の再調整された残留物)を組み付けることによって形成される界面の周辺部における接合欠陥の発生を防止するか、又はこれらの欠陥の密度を制限しようとするものである。
【0021】
残留物1’を調製するための方法は、周辺リング11の少なくとも一部を除去する第1のステップを含む。本ステップは、研削によって実施することができる。このような実施形態では、研削機器の砥石には研磨粒子(例えば、ダイヤモンド)が設けられる。砥石は、処理される残留物の主表面10の一部、この場合は周辺リング11に対して位置決めされ、リング11を形成する材料を機械的研磨によって徐々に除去するように、残留物に対して相対的に回転する。この除去により、
図2aに見られるように、残留物1’の周辺ゾーン13が露出し、本図は、この第1の除去ステップの適用後の残留物を示す。
【0022】
除去ステップは、好ましい研削技術以外の技術を実施することができる。例えば、これには、両面化学機械研磨などの研磨技術が含まれ得る。
【0023】
したがって、この第1の除去ステップが完了すると、周辺リング11が少なくとも部分的に除去され、残留物1’の周辺ゾーンの露出表面13は、残留物1’の中央部分12の高さと実質的に同一の高さを有することができる。周辺ゾーン13も、特にリングが研削によって除去されている場合は、特に粗くなる。
【0024】
また、残留物1’を調製するための方法は、表面層4を除去するために、残留物1’の主面10、すなわち残留物1’の中央部分12及び周辺ゾーン13を処理する第2のステップも提供する。この表面層4は、中央部分12の硬化した厚さを含むのに十分な厚さであり、一般に、分子接着による最終支持体への組み付けを可能にするのに十分に滑らかな表面仕上げを主表面に提供するのに十分な厚さである。この表面仕上げは、5ミクロン×5ミクロンの測定範囲にわたって、二乗平均平方根値として0.5nm未満(有利には0.3nm未満)の粗さによって特徴付けることができる。この第2の処理ステップは、化学機械研磨によって実施することができる。したがって、除去された表面層4の厚さは、100nm~5ミクロンの範囲にある可能性がある。
【0025】
第1の除去ステップが第2の処理ステップとは別個である場合、第2の処理ステップは、除去ステップの後に行われる。或いは、残留物の露出表面の化学機械研磨を含む技術を用いて、これらの2つのステップを組み合わせて行うことができる。
【0026】
また、これらの2つのステップをそれぞれ、化学機械研磨技術を用いて行うが、これらのステップのそれぞれを、別個のパラメータ及び/又は消耗品(特に研磨布)を用いて行うことを企図することも可能である。
【0027】
いずれの場合も、残留物の主面10を処理する第2のステップが完了すると、
図2bに示すように、分子接着によって別の基板に接着することができるほど十分に滑らかで平らな主表面10を呈する、部分的に再調整された残留物1’が得られる。
【0028】
しかしながら、第2の処理ステップの完了時に残留物1’を綿密に検査すると、残留物1’が、「立ち上がり(rising)」縁部フランジを有すること、すなわち、この基板の露出表面の高さプロファイルが、その周辺ゾーン13において、周辺ゾーン13の内側に含まれるこの基板の中央部分12の一部の平均面Eの高さよりも大きい最大値Mを有することが明らかになる。縁部フランジを規定する周辺表面3のこの高さプロファイルは、いくつかの別個の半径に沿って、一般的には、これらの半径のすべての角度方向において確立された露出表面の高さプロファイルを観察することによって見ることができる。したがって、周辺ゾーンの最大高さの点Mは、この基板の中央部分12の残りの部分(すなわち、周辺ゾーン13の内側に含まれる部分)の平均面Eよりも上に500nmまで立ち上がることができる。
【0029】
この「立ち上がり」縁部フランジの原因には、数多くの可能性がある。この縁部フランジは、方法の第1のステップ中の周辺リング11の不完全な除去に関連している可能性がある。しかしながら、この縁部フランジは、この第1のステップ中に周辺リングが完全且つ全面的に除去された場合であっても、第2の処理ステップ中に、特にこの処理ステップが化学機械研磨によって実施される場合に現れる縁部効果に関連している可能性もある。
【0030】
このプロファイルは、薄層を除去及び転写するための方法のさらなる適用中に、
図2bの部分的に再調整された残留物を、分子接着によって最終支持体に組み付けることを妨げないことに留意されたい。特に、その表面は、接触とボンディング波の伝播とのステップを実施するのに十分に平らで滑らかである。しかしながら、この「立ち上がり」縁部フランジは、本出願の冒頭で述べた接合欠陥の発生を助長する傾向がある。
【0031】
さらに、周辺ゾーン13の最大高さMと中央部分12の平均面Eの高さとの間に存在する差の大きさは、ドナー基板のリサイクルの程度、すなわち、同じドナー基板に対して行われる除去-再調整サイクルの数とともに増加する傾向がある。
【0032】
また、この現象を防止し、このようなドナー基板を何度も(好ましくは3回、又は5回、又はさらには10回を超えて)再利用できるようにするために、本発明に従って残留物を調製するための方法は、主面10を処理する第2のステップに続いて、周辺ゾーン13を修正(rectifying)する第3のステップを提供し、この第3のステップは、この周辺ゾーンの高さを低減することを目的とする。
【0033】
この第3のステップは、第1及び第3のステップとは異なり(より一般的には、これらの3つのステップは互いに別個である)、すなわち、これらのステップは、残留物1’に適用するために同じ技術及び同じ機器を使用しない。
【0034】
有利には、第3のステップの完了時に、周辺ゾーン13は、中央部分12の平均面Eの高さ以下である最大高さM’を有する。実施した実験は、「立ち下がる」プロファイルを有するこのような縁部フランジが、接合欠陥を効果的に減少させることができることを示す傾向にある。
図2cは、上述の3つのステップが適用された後の残留物1’を、周辺ゾーン13が中央部分12の平均面Eの高さ以下の最大高さM’となる研削ステップの有利な構成で示す。
【0035】
周辺ゾーンの最大高さM’を、第2のステップの完了時の高さに対して単純に減少させることは、たとえその高さが平均面Eの高さよりも高いままであっても、リサイクルの程度とともに接合欠陥の発生が増加するのを抑制するのに十分である可能性があることに留意されたい。したがって、ごく一般的には、この第3の研削ステップは、周辺ゾーンを所定のプロファイルに成形しようとする。
【0036】
周辺ゾーン13を必要な精度で修正することができるようにするために、本ステップは、有利には、非機械的作用によって(より具体的には、外部ツールとのいかなる研磨接触もなしに)、例えば、化学エッチングによって、又は好ましくはイオンビームトリミング若しくはイオンエッチングによって行われる。
【0037】
この手法によると、イオン又はイオンのクラスタが、残留物1’の構成材料の性質に応じて、十分なエネルギーで残留物1’の周辺ゾーン13に投射され、このゾーンの表面厚さを(原子レベルで)徐々に侵食する。イオンは、有利には、アルゴン、ネオン又はクリプトンイオンなどの重イオンである。
【0038】
したがって、イオンビームは、周辺ゾーン13に向けられ、このゾーンを決定されたプロファイルに徐々に且つ非常に正確に成形する。イオンビームは、周辺ゾーン13の一部のみに投射され、ビームを残留物に対して相対的に移動させて、このゾーン全体を徐々に処理することができ、ビームがゾーンの一部を通過する時間が、除去される材料の量を決定する。もちろん、ビームを数回通過させることも考えられる。
【0039】
第3の研削ステップの適用中に中央ゾーン12の特徴を劣化させることを回避するために、例えば樹脂製のマスクを周辺ゾーン13の外側に配置することができる。
【0040】
周辺ゾーン13及び中央ゾーン12の高さプロファイルを記録するために、第3の研削ステップの前、間及び/又は後に、残留物1’を検査する1つ又は複数のステップを設けることができる。このようにして、イオンエッチング(又はより一般的には第3の研削ステップ)のパラメータを調整して、残留物1’上の決定された高さプロファイルを効果的に制御し、再現することができる。
【0041】
第3の研削ステップの適用の完了時に得られる
図2cの基板は、本発明に従って再調整された残留物1’を形成し、この残留物は、したがって、薄層を除去及び転写するための方法のさらなる適用においてドナー基板1として使用することができる。
【0042】
適用例
この特定の例は、一般に、シリコン製の最終支持体7に転写された薄い強磁性層3によって形成されたハイブリッド基板9を形成することが意図されている。これを
図3に示す。
【0043】
最初に、複合ドナー基板1(
図3のステップ3A)が生成され、この基板は、直径150mmの円形ウエハの形態のシリコン製の中間支持体1bと、厚さが5~400ミクロンの範囲にある可能性がある強誘電体材料の厚い層1aとによって形成されている。厚い層1aを形成する強誘電体材料は、モノドメインであり、例えば、LiTaO3、LiNbO3、LiAlO3、BaTiO3、PbZrTiO3、KNbO3、BaZrO3、CaTiO3、PbTiO3、KTaO3で形成される。この材料の結晶配向は、意図された用途に応じて選択される。したがって、SAWフィルタを形成するために、転写された薄層3の特性を使用することが意図されている場合は、通常、30°~60°RY、又は40°~50°RYの範囲にある配向が選択される。しかしながら、本発明は、決して特定の結晶配向に限定されない。
【0044】
本例では、厚い層1aは、中間支持体と同じ円形であり、実質的に同じ大きさであるため、ドナー基板1も直径150mmの円形を呈する。このドナー基板1の具体的な製造は、本出願の冒頭で引用した米国特許出願公開第2020/0186117号に提供されている教示に従うことができる。
【0045】
したがって、第1の手法によると、厚い層1aは、分子接着によって中間支持体1bを形成するシリコンウエハ上に組み付けられる。また、シリコンウエハ1bと厚い層1aとの間に、この接着を容易にする層(例えば、酸化シリコン又は窒化シリコン)を挿入することができる。
【0046】
別の手法によると、厚い強磁性層1aは、ポリマなどの接着材料の層によってシリコンウエハ1b上に保持される。
【0047】
残留物1’を研削する第3のステップで提案したように、厚い強磁性層の自由表面の高さプロファイルを研削して、ドナー基板に所定のプロファイル、例えば上述したような「立ち下がり(falling)」縁部フランジを設けることができる。このようにして、層除去方法の最初の反復中に接合品質が保証される。
【0048】
シリコンウエハ上に厚い強磁性層を組み付けるために選択される手法に関係なく、複合ドナー基板1は、スマートカット(商標)技術を実施する方法のドナー基板として使用される。この目的のために、複合基板1の主面(厚い強磁性層1aの露出面)の側に、あるドーズ量の軽い種を導入し、その結果、厚い層1aに埋め込み脆弱面2が形成される。この面は、ドナー基板の主面とともに、除去される薄い強磁性層3を規定する。注入される種の性質、ドーズ量及び注入エネルギーは、転写される薄層の厚さと、ドナー基板1の厚い層1aの物理化学的特性とに応じて選択される。LiTaO3からなる厚い層の場合、30~250keVの範囲のエネルギーで1E16~5E17at/cm2の範囲のドーズ量の水素を注入して、200~1,500nm程度の薄い層3を規定することができる。
【0049】
除去方法の続くステップ3Cにおいて、厚い層1aの主表面は、直径150mmのシリコンウエハの露出面に分子接着によって組み付けられ、したがってこのシリコンウエハは、ドナー基板1の中間支持体を形成するウエハと類似する。このウエハは、薄層3の最終支持体7を形成する。本出願の冒頭で既に述べたように、ドナー基板1は、凸形状を呈することができ、外側に向いた凸面の頂点は、厚い強磁性層の側に配置される。この凸面の撓みは、150mmのウエハを例にとると、200ミクロン程度とすることができる。その結果、ドナー基板は、実質的に基板の中心に配置された頂点を有することができる。
【0050】
組み付けステップ中、ドナー基板1の頂点を、最終支持体7と接触させる。次いで、基板同士を近づけようとする力を一方の基板の縁部に加えることによって、接合が開始される。この力の印加により、接合波が、最終基板と接触しているドナー基板1の頂点からこの基板の周縁部に向かって実質的に同心円状に伝播する。この波により、2つの基板1、7は、表面が互いに密着するように変形する。
【0051】
続くステップ3Dにおいて、ドナー基板及び最終支持体7によって形成された組立体を熱的及び/又は機械的に処理し、ドナー基板を脆弱面2で破砕して、薄層1を剥離し、除去し、最終支持体7に転写する。
【0052】
こうして、一方では、厚い層1aから除去された薄い強磁性層3と、最終支持体7を形成するシリコンウエハとによって形成された第1のハイブリッド基板9が得られる。他方では、
図1のものと一致する残留物1’も得られる。
【0053】
この残留物1’は、先の一般的な説明に記載されたステップに従って調製される。この特定の例では、周辺リング11を第1の除去ステップ中に研削によって最初に除去して、このリング11が収容される周辺ゾーン13の高さを中央部分12の平均面の高さにする。次いで、残留物の主表面10全体、すなわち中央部分12及び周辺ゾーン13を化学機械研磨によって処理し、表面層から1ミクロンまでを除去し、この表面の粗さを二乗平均平方根値として0.3nm未満に低減する。最後に、アルゴンイオンビームを投射することによって、第3の研削ステップを周辺ゾーンに、この場合はウエハの縁部から1cmの周辺部分に適用して、この周辺部分の高さを減少させる。
【0054】
これらのステップが完了すると、残留物1’は完全に再調整される。分子接着組み付けステップに適合する表面粗さに加えて、残留物は、「立ち下がり」縁部フランジを有し、すなわち、周辺ゾーン13における最大高さは、中央部分12の平均高さ面内又はそれより下にある。
【0055】
この再調整された基板を使用する後続のサイクルでは、前述の除去-再調整サイクルが再び適用され、それぞれがシリコンウエハ7上に配置された薄い強磁性層3を含む複数のハイブリッド基板9が提供される。サイクルの回数は、複合ドナー基板1の厚い層1aの残っている厚さによって制限され、厚い層1aが最初に十分に厚い、例えば、ほぼ400ミクロンの厚さである場合、10サイクルに達することができ、それを超えることさえできる。
【0056】
順次得られるハイブリッド基板9は、(特に基板の縁部での接着欠陥に起因する)欠陥レベルが、サイクル数とともに、すなわち複合ドナー基板のリサイクルの程度とともに必ずしも増加しないことが分かる。
【0057】
もちろん、本発明は、記載された実施形態及び実施例に限定されず、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、代替の実施形態を使用することができる。
【0058】
したがって、本発明は、軽い種の導入によって形成された脆弱面での剥離によって層が除去されたあらゆるタイプのドナー基板に適用可能である。このドナー基板は、中間基板上に載置された厚い層によって形成された「複合」タイプである必要はない。
【0059】
このドナー基板も、このタイプの層除去に適合する任意の性質を呈することができる。特に、このドナー基板は、任意の半導体材料、例えば、シリコン、炭化ケイ素、ゲルマニウムなどで構成することができる。
【0060】
一般に、基板は、任意の適切な形態を呈することができ、本発明は、例として使用されてきたような円形ウエハに決して限定されない。
【国際調査報告】