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特表2024-506866プロセス冷却剤の流れを調整するための自己感知及び自己作動バルブ
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  • 特表-プロセス冷却剤の流れを調整するための自己感知及び自己作動バルブ 図1
  • 特表-プロセス冷却剤の流れを調整するための自己感知及び自己作動バルブ 図2A
  • 特表-プロセス冷却剤の流れを調整するための自己感知及び自己作動バルブ 図2B
  • 特表-プロセス冷却剤の流れを調整するための自己感知及び自己作動バルブ 図3
  • 特表-プロセス冷却剤の流れを調整するための自己感知及び自己作動バルブ 図4
  • 特表-プロセス冷却剤の流れを調整するための自己感知及び自己作動バルブ 図5
  • 特表-プロセス冷却剤の流れを調整するための自己感知及び自己作動バルブ 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】プロセス冷却剤の流れを調整するための自己感知及び自己作動バルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/70 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
F16K31/70 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547350
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 US2022014395
(87)【国際公開番号】W WO2022173599
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】17/173,146
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラセカール, シヴァーラム
(72)【発明者】
【氏名】ナガラジャン, クマレサン
【テーマコード(参考)】
3H057
【Fターム(参考)】
3H057AA02
3H057BB09
3H057BB49
3H057CC05
3H057DD13
3H057EE01
3H057FA22
3H057FC04
3H057FD19
(57)【要約】
バルブは、処理チャンバから出る第1の戻りラインに取り付けるための第1のインライン区画と、冷却剤源に入る第2の戻りラインに取り付けるための第2のインライン区画とを含む。第1のインライン区画と第2のインライン区画との間には、流れ区画が取り付けられ、この流れ区画を通って、冷却剤が冷却剤源に戻ることになる。第1のインライン区画と流れ区画との間に、第1の入口オリフィスと第2の入口オリフィスが位置決めされる。プランジャは、第2の入口オリフィスを可変的に開閉するための先端を有している。プランジャ上に、形状記憶合金(SMA)ばねが配置され、先端に取り付けられており、SMAばねは、冷却剤の温度に従って、第2の入口オリフィスを通る冷却剤の流量を可変的に増減させる。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバの加熱された構成要素を冷却する冷却剤を供給するための冷却剤源と、
前記処理チャンバと前記冷却剤源との間に連結された前記冷却剤のための戻りラインと
を備え、前記戻りラインはバルブを有し、前記バルブは、
前記冷却剤のデフォルトの流量をサポートする第1の入口と出口を有する流れ区画であって、第2の入口も有する流れ区画と、
前記戻りラインとインライン関係にあり、前記冷却剤を前記第1の入口及び前記第2の入口を通して前記流れ区画内に供給することになる第1の区画と、
プランジャの遠位端に先端を有するプランジャであって、前記先端が、前記冷却剤の流量を前記デフォルトの流量から変化させるために前記第2の入口を可変的に開閉する、プランジャと、
前記プランジャの近位端に位置決めされたバイアスばねと、
前記バイアスばねと前記先端との間の前記プランジャ上に位置決めされた形状記憶合金(SMA)ばねであって、閾値温度値を上回る前記冷却剤の温度上昇に応じて、前記先端を前記第2の入口から可変的に引き出すために、前記先端に取り付けられたSMAばねと
を含む、冷却システム。
【請求項2】
前記バルブが、
前記出口を備え、前記戻りラインとインライン関係にある第2の区画と、
前記第1の区画と前記第2の区画との間の流れを遮断する仕切りと
を更に備える、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記先端は円錐形である、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記バルブが、
前記プランジャが挿入される、前記第1の区画のオリフィスと、
前記オリフィスを囲み、前記第1の区画の外面に取り付けられた1つ又は複数の延長壁と、
前記1つ又は複数の延長壁に取り付けられ、前記バイアスばねの近位端と接触しているバックストップと
を更に備え、
前記プランジャは、前記バイアスばねの遠位端がバイアスされるフランジを有する、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記SMAばねは、前記オリフィスにおける前記第1の区画の内壁と前記プランジャの前記先端との間に連結され、前記SMAばねは、前記閾値温度値を上回る温度に上昇する冷却剤への曝露に応じて、前記内壁に対して圧縮される、請求項4に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記冷却剤は、ウンウントリウムを含む混合流体である、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記バルブの前記デフォルトの流量が毎分3ガロンと5ガロンとの間を含み、前記バルブの最大流量が毎分14ガロンと18ガロンとの間を含む、請求項1に記載の冷却システム。
【請求項8】
処理チャンバと冷却剤源との間の戻りラインからの冷却剤のデフォルトの流量をサポートする第1の入口と出口とを有する流れ区画であって、第2の入口も有する流れ区画と、
前記戻りラインとインライン関係にあり、前記冷却剤を前記第1の入口及び前記第2の入口を通して供給することになる第1の区画と、
プランジャの遠位端に先端を有するプランジャであって、前記先端が、前記冷却剤の流量を前記デフォルトの流量から変化させるために前記第2の入口を可変的に開閉する、プランジャと、
前記プランジャの近位端に位置決めされたバイアスばねと、
前記バイアスばねと前記先端との間の前記プランジャ上に位置決めされた形状記憶合金(SMA)ばねであって、閾値温度値を上回る前記冷却剤の温度上昇に応じて、前記先端を前記第2の入口から可変的に引き出すために、前記先端に取り付けられたSMAばねと
を備える、バルブ。
【請求項9】
前記出口を備え、前記戻りラインとインライン関係にある第2の区画と、
前記第1の区画と前記第2の区画との間の流れを遮断する仕切りと
を更に備える、請求項8に記載のバルブ。
【請求項10】
前記プランジャの前記先端は円錐形である、請求項8に記載のバルブ。
【請求項11】
前記プランジャが挿入される、前記第1の区画のオリフィスと、
前記オリフィスを囲み、前記第1の区画の外面に取り付けられた1つ又は複数の延長壁と、
前記1つ又は複数の延長壁に取り付けられ、前記バイアスばねの近位端と接触しているバックストップと
を更に備え、
前記プランジャは、前記バイアスばねの遠位端がバイアスされるフランジを有する、請求項8に記載のバルブ。
【請求項12】
前記SMAばねは、前記オリフィスにおける前記第1の区画の内壁と前記プランジャの前記先端との間に連結され、前記SMAばねは、前記閾値温度値を上回る温度に上昇する冷却剤への曝露に応じて、前記内壁に対して圧縮される、請求項11に記載のバルブ。
【請求項13】
前記バルブの前記デフォルトの流量が毎分3ガロンと5ガロンとの間を含み、前記バルブの最大流量が毎分14ガロンと18ガロンとの間を含む、請求項8に記載のバルブ。
【請求項14】
処理チャンバから出る第1の戻りラインに取り付けるための第1のインライン区画と、
冷却剤源に入る第2の戻りラインに取り付けるための第2のインライン区画と、
前記第1のインライン区画と前記第2のインライン区画との間に取り付けられた流れ区画であって、前記流れ区画を通って冷却剤が前記冷却剤源に戻ることになる、流れ区画と、
前記第1のインライン区画と前記流れ区画との間に位置決めされた第1の入口オリフィス及び第2の入口オリフィスと、
前記第2の入口オリフィスを可変的に開閉するための先端を有するプランジャと、
前記プランジャ上に位置決めされ、前記先端に取り付けられた形状記憶合金(SMA)ばねであって、前記冷却剤の温度に従って前記第2の入口オリフィスを通る前記冷却剤の流量を可変的に増減させるためのSMAばねと
を備える、バルブ。
【請求項15】
前記プランジャは、前記流れ区画を通る前記冷却剤の流れに対して直交して動くことになる、請求項14に記載のバルブ。
【請求項16】
前記プランジャが挿入される、前記第1のインライン区画のオリフィスと、
前記オリフィスを囲み、前記第1のインライン区画の外面に取り付けられた1つ又は複数の延長壁と、
前記プランジャの近位端に位置決めされたバイアスばねと、
前記1つ又は複数の延長壁に取り付けられ、前記バイアスばねの近位端と接触しているバックストップと
を更に備え、
前記プランジャは、前記バイアスばねの遠位端がバイアスされるフランジを有する、請求項14に記載のバルブ。
【請求項17】
前記先端は円錐形の先端であり、前記SMAばねは、閾値温度値を上回る前記冷却剤の温度上昇に応じて、前記第2の入口オリフィスから前記円錐形の先端を可変的に引き出すように適合される、請求項14に記載のバルブ。
【請求項18】
前記SMAばねは、前記第1のインライン区画の内壁と前記円錐形の先端との間に連結され、前記SMAばねは、前記閾値温度値を上回る温度に上昇する冷却剤への曝露に応じて比例して前記内壁に対して圧縮される、請求項17に記載のバルブ。
【請求項19】
前記第2の入口オリフィスが前記円錐形の先端によって完全に閉じられるときの前記バルブのデフォルトの流量は、毎分3ガロンと5ガロンとの間を含み、前記バルブの最大流量は、毎分14ガロンと18ガロンとの間を含む、請求項17に記載のバルブ。
【請求項20】
前記SMAばねは、ニッケルチタン(Ni-Ti)、ニッケルチタン鉄(Ni-Ti-Fe)、又はニッケルチタン銅(Ni-Ti-Cu)のうちの1つから構成されている、請求項14に記載のバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示のいくつかの実施形態は、概して、プロセス冷却剤の流れを調整するための自己感知及び自己作動バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス冷却剤は、摂氏数百度以上の温度を発生させる様々な処理構成要素の熱消費を低下させるために、プロセスツールの処理チャンバ(数ある処理機器の中で)全体に循環させることができる。処理ツールの冷却剤ラインを通してプロセス冷却剤を調整することは、半導体デバイス製造を実行するプロセスツールのエネルギーフットプリントを低減する機会を提供する。サーボ制御されるバルブの使用は、機能的ではあるが、センサ、制御ロジック、及びアクチュエータの追加コストと複雑さを伴う1つのソリューションである。更に、サーボ制御されるバルブは、プロセスツールのセットアップのための制御パラメータを調整するオーバーヘッドを伴い、これには時間とコストがかかりうる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書で説明するいくつかの実施形態は、プロセスツールを冷却するための冷却システムを対象とする。例えば、1つの実施形態による冷却システムは、処理チャンバの加熱された構成要素を冷却する冷却剤を供給するための冷却剤源と、処理チャンバと冷却剤源との間に連結された冷却剤のための戻りラインとを含む。戻りラインはバルブを有し、このバルブは、冷却剤のデフォルトの流量をサポートする第1の入口と出口を有する流れ区画であって、第2の入口も有する流れ区画を含む。バルブは、戻りラインとインライン関係にあり、第1の入口と第2の入口を通して冷却剤を供給することになる第1の区画を更に含む。バルブは、プランジャの遠位端に先端を有するプランジャを更に含み、この先端は、冷却剤の流量をデフォルトの流量から変化させるために第2の入口を可変的に開閉する。バルブは、プランジャの近位端に位置決めされたバイアスばねを更に含む。バルブは、バイアスばねと先端との間のプランジャ上に位置決めされた形状記憶合金(SMA)ばねであって、閾値温度値を上回る冷却剤の温度上昇に応じて、先端を第2の入口から可変的に引き出すために、先端に取り付けられたSMAばねを更に含む。
【0004】
いくつかの実施形態では、冷却システムのバルブは、処理チャンバと冷却剤源との間の戻りラインからの冷却剤のデフォルトの流量をサポートする第1の入口と出口とを有する流れ区画であって、第2の入口も有する流れ区画を含む。バルブは、戻りラインとインライン関係にあり、第1の入口と第2の入口を通して冷却剤を供給することになる第1の区画を更に含む。バルブは、プランジャの遠位端に先端を有するプランジャを更に含み、この先端は、冷却剤の流量をデフォルトの流量から変化させるために第2の入口を可変的に開閉する。バルブは、プランジャの近位端に位置決めされたバイアスばねを更に含む。バルブは、バイアスばねと先端との間のプランジャ上に位置決めされた形状記憶合金(SMA)ばねであって、閾値温度値を上回る冷却剤の温度上昇に応じて、先端を第2の入口から可変的に引き出すために、先端に取り付けられたSMAばねを更に含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、冷却システムのバルブは、処理チャンバから出る第1の戻りラインに取り付けるための第1のインライン区画を含む。バルブは、冷却剤源に入る第2の戻りラインに取り付けるための第2のインライン区画を更に含む。バルブは、第1のインライン区画と第2のインライン区画との間に取り付けられた流れ区画であって、該流れ区画を通って冷却剤が冷却剤源に戻ることになる、流れ区画を更に含む。バルブは、第1のインライン区画と流れ区画との間に位置決めされた第1の入口オリフィスと第2の入口オリフィスを更に含む。バルブは、第2の入口オリフィスを可変的に開閉するための先端を有するプランジャを更に含む。バルブは、プランジャ上に位置決めされ、先端に取り付けられた形状記憶合金(SMA)ばねであって、冷却剤の温度に従って第2の入口オリフィスを通る冷却剤の流量を可変的に増減させるためのSMAばねを更に含む。
【0006】
本開示は、限定ではなく、例として、図解されており、添付図面の図では、類似の参照番号が類似の要素を示している。本開示における「ある(an)」又は「1つの(one)」実施形態に対する様々な言及は、必ずしも同じ実施形態に対するものではなく、そのような言及は、少なくとも1つの実施形態を意味するが、複数の実施形態に対して言及しうることに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態による例示的な処理システムの概略ブロック図である。
図2A】実施形態による、冷却剤温度が閾値温度未満である間、処理チャンバと冷却剤源との間の冷却剤の流れを制御する例示的なバルブの断面図である。
図2B】実施形態による、冷却剤温度が閾値温度値を超えている間の図2Aの例示的なバルブの断面図である。
図3】実施形態による、図2A~2Bのバルブの低流量と高流量との間の例示的な移行ゾーンのグラフである。
図4】いくつかの実施形態による、図2A~2Bのバルブの熱モデルの概略ブロック図である。
図5】実施形態による、冷却剤温度が閾値温度値未満である間に処理チャンバと冷却剤源との間の冷却剤の流れを制御する例示的なデュアルバルブ(dual-valve)の断面図である。
図6図5のデュアルバルブの、低流量と中流量との間の例示的な第1の移行ゾーン、及び中流量と高流量との間の第2の移行ゾーンのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態は、プロセス冷却剤の流れを調整するための自己感知及び自己作動バルブを提供し、このバルブは、現行のサーボ制御ソリューションにおける上述の欠陥を解決する。更に、プロセス冷却剤の流れを調整することは、処理システム(又はツール)全体の熱エネルギーを節約し、冷却剤温度の上昇に反応する方法で、冷却剤ラインを通る冷却剤の流量を一定に保持しようとすることができる。いくつかの実施形態では、バルブは、処理チャンバ(又は他の処理機器)と冷却剤リザーバなどの冷却剤源との間の冷却剤システムの戻りライン上にインラインで載置することができる。バルブはまた、冷却剤の温度に基づいて、戻りラインを通る冷却剤の流れを機械的に制限又は増加させるように適合させることができる。
【0009】
1つの実施形態では、バルブはマルチ区画方式を採用しており、インライン区画が処理チャンバから冷却剤を受け取り、冷却剤を冷却剤源に戻す一方で、インライン区画間で取り付けられる流れ区画により、冷却剤がバルブを通して自由に流れられるようにする。第1のインライン区画(バルブの入力部)と流れ区画との間の2つのオリフィスのうちの第2のオリフィスを通る流れは、第2のオリフィスを完全に塞ぐことができる先端を有する形状記憶合金(SMA)ばね対応プランジャ(spring-enabled plunger)を使用することにより、可変的に制御することができる。先端は、1つの実施形態では、例えば、第2のオリフィスを塞ぐ可変レベルを可能にするために、円錐形(例えば、円錐体)にすることができる。
【0010】
より具体的には、バルブは、処理チャンバから出る第1の戻りラインに取り付けるための第1のインライン区画を含みうる。バルブは、冷却剤源に入る第2の戻りラインに取り付けるための第2のインライン区画を更に含みうる。流れ区画は、第1のインライン区画と第2のインライン区画との間に取り付けることができ、そこを通って冷却剤が冷却剤源に戻ることになる。バルブは、第1のインライン区画と流れ区画との間に位置決めされた第1の入口オリフィスと第2の入口オリフィスを更に含みうる。バルブは、バルブを通る冷却剤の流れを可変的に制御するために、第2の入口オリフィスを可変的に開閉するための先端を有するプランジャを更に含みうる。バルブは、プランジャ上に位置決めされ、先端に取り付けられたSMAばねを更に含みうる。SMAばねは、冷却剤の温度に従って、第2の入口オリフィスを通る冷却剤の流量を可変的に増減させうる。
【0011】
本開示の実施形態の利点は、外部センサ、制御ロジック、又はアクチュエータの必要性を排除する、機械的に用いられる感知及び速度変調能力(バルブ内のSMA対応プランジャを介する)を含むが、これらに限定されるものではなく、そのようなサーボ制御ソリューションの制御パラメータを調整するために必要なオーバーヘッドの必要性も含まれる。更に、開示されるバルブは、排出される冷却剤自体の熱エネルギーを利用する際に、外部エネルギー源を必要としない。更に、バルブは、連続的な流量調整でも、冷却剤の温度に基づく所定のステップ調整でも機能するように適合させることができる。したがって、開示されたバルブは、複雑さを軽減し、外部エネルギー源への依存をなくすという点でコスト効率が高い。更に、このバルブは、様々な種類の冷却剤や腐食性の高い環境での作業に適応することができる。これらの利点及び他の利点は、以下の開示で言及され、及び/又は半導体デバイス処理の技術分野における通常の当業者には明らかであろう。
【0012】
図1は、実施形態による例示的な処理システム100の概略ブロック図である。処理システム100(又は処理ツール)は、冷却される処理機器を表す処理チャンバ102と、処理チャンバ102に冷却剤を供給する冷却剤源120(例えば、冷却剤ライン内)と、処理チャンバ102と冷却剤源120との間に連結された戻りライン105上に位置決めされたバルブ110とを含みうる。戻りライン105は、処理チャンバ102の冷却剤ラインとバルブ110との間に取り付けられた第1の戻りライン105Aと、バルブ110と冷却剤源120との間に取り付けられた第2の戻りライン105Bとを含みうる。バルブ110は、冷却剤の温度に基づいて、戻りラインを通る冷却剤の流れを機械的に制限又は増加させるように適合させることができる。
【0013】
前述のように、冷却剤源120は、設備流体入口から冷却剤が供給され、設備流体出口を介して冷却剤を再利用できるリザーバ、容器などでありうる。冷却剤は、水性冷却剤でありうるが、そうである必要はない。1つの実施形態では、冷却剤はウンウントリウム(UUT)を含む混合流体である。例えば、ウンウントリウムが水及び/又は他の流体と混合されうる。他の実施形態では、冷却剤は気体ベースであり、混合ガスを含む。
【0014】
図2Aは、実施形態による、冷却剤温度が閾値温度値未満である間、処理チャンバと冷却剤源との間の冷却剤の流れを制御する例示的なバルブ210の側面図である。この実施形態では、バルブ210は図1のバルブ110と同一でありうる。様々な実施形態では、バルブ210は、第1の区画204(例えば、第1のインライン区画)と、第2の区画208(例えば、第2のインライン区画)と、第1の区画204と第2の区画208との間に取り付けられた流れ区画206とを含む。
【0015】
流れ区画206は、第1の入口203(例えば、第1の入口オリフィス)及び出口207(例えば、出口オリフィス)を有しうる。これらは、単一の矢印で示される冷却剤のデフォルトの流量、例えば、第1の区画204から第2の区画(com)への冷却剤のデフォルトの流量(GPM)又は他の許容可能な低い流量をサポートする。1つの実施形態では、低い流量は3.7 GPMである。流れ区画206は、バルブ210を通る冷却剤の可変的な追加の流れを提供するための第2の入口205(例えば、図2Bに最もよく見られる第2の入口オリフィス)を更に含むことができる。
【0016】
様々な実施形態では、第1の区画204は、第1の戻りライン105Aとインライン関係にあり、第1の入口203及び第2の入口205を通って流れ区画206内に冷却剤を供給する。これらの実施形態では、第2の区画208は、第2の戻りライン105Bとインライン関係にあり、また出口207を含む。第2の区画の仕切り211は、第1の区画204と第2の区画208との間の流れを遮断しうる。
【0017】
様々な実施形態では、バルブ210は、プランジャ212、バイアスばね230、バックストップ220、及びSMAばね240を含むバルブアセンブリを更に含む。プランジャ212は、フランジ216及び先端224を含みうるか、又はこれに取り付けられうる。これらの実施形態では、先端224は、プランジャ212の遠位端に位置決めされ、第2の入口205を可変的に開閉して、冷却剤の流量をデフォルトの流量から変化させる。いくつかの実施形態では、プランジャは、流れ区画206を通る冷却剤の流れに直交して動くように適合される。1つの実施形態では、先端224は、円錐形、例えば円錐形の先端、である。他の実施形態では、先端224は、別の幾何学的形状(例えば、球形、角を用いたブロック形状)であり、第2の入口205を塞ぎ、先端224が第2の入口205から引き出されると、第1の区画204と流れ区画203との間により多くの冷却剤の流れを可変的に許容しうる。従って、バルブ210のデフォルトの流量は、第2の入口205が先端224によって完全に閉じられたときの冷却剤の流量である。
【0018】
いくつかの実施形態では、バイアスばね230は、プランジャ212の近位端に位置決めされ、先端224が第2の入口205を塞ぐ位置内にプランジャ212を戻すようにバイアスする一定の剛性を有する。様々な実施形態では、SMAばね240は、バイアスばね230と先端224との間のプランジャ上に位置決めされる。SMAばね240は、閾値温度値(図2B)を上回る冷却剤の温度上昇に応じて、第2の入口205から先端224を可変的に引き出すように、先端224に取り付けることができる。SMAばね240は、数ある可能性の中で、ニッケルチタン(Ni-Ti)、ニッケルチタン鉄(Ni-Ti-Fe)、又はニッケルチタン銅(Ni-Ti-Cu)のうちの1つといった、温度に基づいて膨張又は収縮する形状記憶合金で作られうる(又は構成されうる)。
【0019】
様々な実施形態では、バルブ210は、プランジャ212が挿入される第1の区画204のオリフィス217(図2Bに符号が付されている)を更に含む。1つ又は複数の延長壁225は、オリフィスを囲み、第1の区画204の外面に取り付けられうる(又は形成されうる)。バックストップ220は、1つ又は複数の延長壁225に取り付けられ、バイアスばね230の近位端と接触しうる。これらの実施形態では、バイアスばね230の遠位端は、フランジ216に対してバイアスされうる。更に、SMAばね240は、オリフィス217における第1の区画204の内壁とプランジャ212の先端224との間に連結されうる。SMAばね240は、閾値温度値を超えて温度が上昇する冷却剤に曝されるのに応じて、内壁に対して圧縮させることができ、これにより、先端224が第2の入口205から可変的に引き出される。本明細書で議論されるバルブ210及びバルブ210の様々な区画と構成要素は、腐食性環境に耐性があり、様々な異なる冷却剤で機能する構成要素で製造されうる。
【0020】
図2Bは、実施形態による、冷却剤温度が閾値温度値を超えている間の図2Aの例示的なバルブ210の側面図である。冷却剤の温度が閾値を超えると(例えば30℃、33℃、36℃など)、SMAばね240が圧縮し、プランジャ212の先端224が第2の入口205から引き出され始める。バルブ210を通過する冷却剤の流れの増加が、二重矢印で示されている。SMAばね240は、最大収縮率、ひいては最大流量に達するまで、冷却剤の継続的な温度上昇に応じて比例的に(又は関数に従って)圧縮し続けうる。最大流量は、SMAばね240の材料と冷却剤の温度範囲に応じて、例えば14~18GPMの間、あるいは他の適切な高い流量でありうる。
【0021】
図3は、実施形態による、図2A~2Bのバルブ210の低流量と高流量との間の例示的な移行ゾーン301のグラフ300である。グラフ300は、バルブ開プロット302とバルブ閉プロット304を含み、流量の軌跡が、冷却剤が加熱中か冷却中かに応じて変化しうることを示している。説明したように、バルブのデフォルト(低)流量は毎分3~5ガロンの間であり、バルブの最大流量は毎分14~18ガロンの間でありうる。これらの流量範囲は、SMAばね240の合金の種類、並びに/又は冷却剤の種類及び予想される冷却剤の温度範囲に応じて調整することができよう。
【0022】
図4は、いくつかの実施形態による図2A~2Bのバルブ210の熱モデル400の概略ブロック図である。熱モデル400は、一定の設定点温度(TS)を仮定しうる。熱モデル400は、第1の戻りライン105Aからバルブ210に入る第1の温度(T)、バルブ210内の平均温度(Tav)、及びバルブ210から出て第2の戻りライン105Bに入る冷却剤の第2の温度(T)を考慮しうる。SMAばね240の機能をモデル化するために、抵抗440が図示されている。様々な実施形態では、
ここで、Kは流体の種類に対する定数である。したがって、式(1)と式(2)から、以下のことが導かれる。
Dittus Boelterの方程式に従えば、n=0.8であり、したがってn-1は-0.2である。ゆえに、
であるため、式(4)は非線形反復相関を有している。バルブの動作範囲は、温度振動を低減するための帯域幅を有するべきである。したがって、いくつかの実施形態では、mdotが増加するにつれて、Tは減少し、バルブ210は、より低いmdotでトリガーし、その逆も同様である。
【0023】
図5は、実施形態による、冷却剤温度が閾値温度値未満である間、処理チャンバと冷却剤源との間の冷却剤の流れを制御する例示的なデュアルバルブ510の断面図である。1つの実施形態では、デュアルバルブ510は図1のバルブ110と同一でありうる。デュアルバルブ510は、図2A~2Bのバルブ210の延長部分として理解されうるため、ここでは変更点のみを説明する。例えば、第1の区画204は、第1の入口203、第2の入口205A、及び第3の入口205Bを含むように拡張されうる。
【0024】
デュアルバルブ510の実施形態では、単一のバルブアセンブリの代わりに、2つのバルブアセンブリが存在し、各々1つずつ、第2の入口205A及び第3の入口205Bをそれぞれ選択的に開放又は閉鎖する。したがって、第1のバルブアセンブリは、第1のプランジャ212A、第1のバイアスばね230A、及び第1のSMAばね240Aを含みうる。第1のプランジャ212Aは、第1のフランジ216A及び第1の先端224Aを含みうるか、又はこれらに取り付けられうる。これらの実施形態では、第1の先端224Aは、第1のプランジャ212Aの遠位端に位置決めされ、第2の入口205Aを可変的に開閉して、冷却剤の流量をデフォルトの流量から変化させる。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1のバイアスばね230Aは、第1のプランジャ212Aの近位端に位置決めされ、第1の先端224Aが第2の入口205Aを塞ぐ位置に第1のプランジャ212Aをバイアスして戻す一定の剛性を有する。様々な実施形態では、第1のSMAばね240Aは、第1のバイアスばね230Aと第1の先端224Aとの間の第1のプランジャ212A上に位置決めされる。第1のSMAばね240Aは、第1の閾値温度値(図2B)を上回る冷却剤の温度上昇に応じて、第2の入口205Aから第1の先端224Aを可変的に引き出すように、第1の先端224Aに取り付けられうる。
【0026】
これらの実施形態では、第2のバルブアセンブリは、第2のプランジャ212B、第2のバイアスばね230B、及び第2のSMAばね240Bを含みうる。第2のプランジャ212Bは、第2のフランジ216B及び第2の先端224Bを含みうるか、又はこれに取り付けられうる。これらの実施形態では、第2の先端224Bは、第2のプランジャ212Bの遠位端に位置決めされ、第3の入口205Bを可変的に開閉して、冷却剤の流量をデフォルトの流量から変化させる。
【0027】
いくつかの実施形態では、第2のバイアスばね230Bは、第2のプランジャ212Bの近位端に位置決めされ、第2の先端224Bが第3の入口205Bを塞ぐ位置に第2のプランジャ212Bをバイアスして戻す一定の剛性を有する。様々な実施形態では、第2のSMBばね240Bは、第2のバイアスばね230Bと第2の先端224Bとの間の第2のプランジャ212B上に位置決めされる。第2のSMAばね240Bは、第2の閾値温度値(図2B)を上回る冷却剤の温度上昇に応じて、第3の入口205Bから第2の先端224Bを可変的に引き出すように、第2の先端224Bに取り付けられうる。バックストップ220(図2A~2B)は、より大きく変更され、従って、1つ又は複数の延長壁225に取り付けられ、第1のバイアスばね230A及び第2のバイアスばね203Bの近位端と接触するように適合されうる。
【0028】
様々な実施形態では、第1のSMAばね240Aは、第2のSMAばね240Bとは異なるSMA材料で作られうるので、第1の閾値温度値は、第2の閾値温度値とは異なりうる。説明を簡単にするため、第1の閾値温度値が第2の閾値温度値より低いと仮定する。よって、第1のバルブアセンブリは、第1のSMAばね240Aを使用して、デュアルバルブ510を通る流量をほぼ中流量まで可変的に増加させ、その後、第2のバルブアセンブリは、第2のSMAばね240Bを使用して、流量をほぼ中流量から最高の流量まで可変的に増加させうる。したがって、例えば、最高の流量では、図2Bの単一のバルブアセンブリを参照して図示されるように、第1及び第2のSMAばね240A及び240Bの両方が、第1の区画204の内壁に対して完全に圧縮される。冷却剤流量の段階的かつ可変的な増加が、図6のグラフに図示される。
【0029】
図5では、2つのバルブアセンブリのみで流量を変化させることが示されているが、1つ又は複数の追加SMAばねの更に異なる材料を含む付加的バルブアセンブリを追加することができ、これにより、マルチバルブ装置における冷却剤流量の可変帯域幅を更に大きくすることができる。いくつかの実施形態では、マルチバルブ装置の各バルブアセンブリの流量範囲はある程度重複し、1つ又は複数の異なるSMAばねの作動による流量増加のタイミングを介して、更に多くの可能な流量が形成されうる。
【0030】
図6は、図5のデュアルバルブ510の、低流量と中流量との間の例示的な第1の移行ゾーン601A、及び中流量と高流量との間の第2の移行ゾーン601Bのグラフ600である。いくつかの実施形態では、図示されているように、第1の移行ゾーン601Aと第2の移行ゾーン602Bはある程度重なっている。これにより、異なるSMAばねに関連する異なる圧縮率と閾値温度値に基づいて、流量がバルブアセンブリの開閉間で徐々に移行可能となる。
【0031】
図6を更に参照すると、グラフ600は、デュアルバルブ510の第1のバルブアセンブリの第1のバルブ開プロット602A及び第1のバルブ閉プロット604Aを含み、流量の軌跡は、冷却剤が加熱されているか冷却されているかに応じて変化しうることを示している。グラフ600は更に、デュアルバルブ510の第2のバルブアセンブリの第2のバルブ開プロット602B及び第2のバルブ閉プロット604Bを含み、流量の軌跡は、冷却剤が加熱されているか冷却されているかに応じて更に変化しうることを示している。
【0032】
図6に示されるように、グラフ600のX軸にわたる温度上昇により、第1のバルブアセンブリを通る流量がY軸の中央で「中流(med flow又はmedium flow)」量に達すると、第2のバルブアセンブリを通る流量は徐々に増加し始める。第1のバルブアセンブリを通る流量が高いまま(且つおそらく最大値)である間、第2のバルブアセンブリを通る流量は、デュアルバルブ510の最大流量に達するまで徐々に増加しうる。この更なる増加は、バルブ210を通る場合(図2A-2B)と比較して、デュアルバルブ510を通る冷却剤の、より高い可能流量、ゆえに、より大きな全体的流量範囲を提供する。
【0033】
前述の説明は、本開示のいくつかの、実施形態の良好な理解を提供するために、特定のシステム、構成要素、方法などの例などの多数の特定の詳細を明記している。しかしながら、本開示の少なくともいくつかの実施形態は、これらの特定の詳細なしに実施されうることが、当業者には明らかであろう。他の例では、本開示を不必要に曖昧にすることを回避するために、周知の構成要素又は方法は、詳細に説明されないか、又は単純なブロック図形式で提示される。したがって、記載された特定の詳細は、単に例示的なものである。特定の実施態様は、これらの例示的な詳細とは異なり、なおも本開示の範囲内にあると考えられうる。
【0034】
本明細書全体を通して、「1つの実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所における「1つの実施形態では」又は「実施形態では」という語句が現れても、必ずしもすべてが同じ実施形態を参照しているわけではない。加えて、「又は」という用語は、排他的な「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することを意図している。「約(about)」又は「ほぼ(approximately)」という用語が本明細書で使用される場合、これは、提示される公称値が±10%以内で正確であることを意味することが意図される。
【0035】
本明細書の方法の工程は特定の順序で図示され説明されるが、特定の工程が逆の順序で実行され、特定の工程が他の工程と同時に少なくとも部分的に実行されるように、各方法の工程の順序が変更されてもよい。別の実施形態では、別個の工程の命令又はサブ工程は、断続的及び/又は交互でありうる。
【0036】
上記の説明は、限定ではなく例示を意図するものであると理解すべきである。上記の説明を読み理解すれば、多くの他の実施形態が当業者に明らかになるだろう。したがって、開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照し、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に決定されるべきである。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】