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特表2024-506918マイクロリソグラフィ用の投影露光装置の多部品ミラーを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-15
(54)【発明の名称】マイクロリソグラフィ用の投影露光装置の多部品ミラーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20240207BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G02B5/08 C
G03F7/20 503
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548931
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2022052162
(87)【国際公開番号】W WO2022171469
(87)【国際公開日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】102021201396.1
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ツァツェック
(72)【発明者】
【氏名】エリック ロープシュトラ
(72)【発明者】
【氏名】エリック エヴァ
【テーマコード(参考)】
2H042
2H197
【Fターム(参考)】
2H042DA01
2H042DA02
2H042DA12
2H042DA16
2H042DC09
2H042DC10
2H042DD05
2H042DE00
2H197BA02
2H197BA21
2H197CA10
2H197CC02
2H197GA01
2H197GA13
2H197GA21
2H197GA23
2H197HA03
(57)【要約】
本発明は、マイクロリソグラフィ用の投影露光装置のミラー(26)を製造する方法であって、熱膨張係数が非常に小さい材料からなり、且つ少なくとも1つの材料パラメータが指定値から最小偏差よりも大きくずれる不良ゾーン(33)を有する、少なくとも1つの材料ブランク(34)を用意する方法に関する。第1接続面(29)を有する第1ミラー部品(27)が、材料ブランク(34)から製造される。第2接続面(30)を有する第2ミラー部品(28)が、上記材料ブランク(34)又は別の材料ブランク(34)から製造される。第1ミラー部品(27)及び第2ミラー部品(28)は、第1ミラー部品(27)の第1接続面(29)及び第2ミラー部品(28)の第2接続面(30)の領域で相互に恒久的に接続される。上記材料ブランク(34)のうち第1ミラー部品(27)を製造する体積領域及び/又は上記材料ブランク(34)又は上記別の材料ブランク(34)のうち前記第2ミラー部品(28)を製造する体積領域は、上記材料ブランク(34)又は上記材料ブランク(34)若しくは上記別の材料ブランク(34)の不良ゾーン(33)の空間的形成に基づいて決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置(1)のミラー(26)を製造する方法であって、
熱膨張係数が非常に小さい材料からなり、且つ少なくとも1つの材料パラメータが指定値から最小偏差よりも大きくずれる不良ゾーン(33)を有する、少なくとも1つの材料ブランク(34)を用意し、
第1接続面(29)を有する第1ミラー部品(27)を、前記材料ブランク(34)から製造し、
第2接続面(30)を有する第2ミラー部品(28)を、前記材料ブランク(34)又は別の材料ブランク(34)から製造し、
前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)を、前記第1ミラー部品(27)の前記第1接続面(29)及び前記第2ミラー部品(28)の前記第2接続面(30)の領域で相互に恒久的に接続し、
前記材料ブランク(34)のうち前記第1ミラー部品(27)を製造する体積領域及び/又は前記材料ブランク(34)又は前記別の材料ブランク(34)のうち前記第2ミラー部品(28)を製造する体積領域を、前記材料ブランク(34)又は前記材料ブランク(34)若しくは前記別の材料ブランク(34)の前記不良ゾーン(33)の空間的形成に基づいて決定し、
前記材料ブランク(34)又は前記材料ブランク(34)若しくは前記別の材料ブランク(34)のうち前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)の体積領域を、前記第1ミラー部品(27)と前記第2ミラー部品(28)との接続後に前記不良ゾーン(33)が前記第1ミラー部品(27)から前記第2ミラー部品(28)に続くように選択する方法。
【請求項2】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置(1)のミラー(26)を製造する方法であって、
熱膨張係数が非常に小さい材料からなり、且つ少なくとも1つの材料パラメータが指定値から最小偏差よりも大きくずれる不良ゾーン(33)を有する、少なくとも1つの材料ブランクを用意し、
第1接続面(29)を有する第1ミラー部品(27)を、前記材料ブランク(34)から製造し、
第2接続面(30)を有する第2ミラー部品(28)を、前記材料ブランク(34)から製造し、
前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)を、前記第1ミラー部品(27)の前記第1接続面(29)及び前記第2ミラー部品(28)の前記第2接続面(30)の領域で相互に恒久的に接続し、
前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)を、前記第1ミラー部品(27)の製造用の材料追加量と前記第2ミラー部品(28)の製造用の材料追加量との和だけ相互に離間した前記材料ブランク(34)の体積領域から製造する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)を、少なくとも特定の領域で湾曲状の分離面(35)に沿って前記材料ブランク(34)から分離する方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)が相互に接続される相対的な向きを、前記材料ブランク(34)又は前記材料ブランク(34)若しくは前記別の材料ブランク(34)における前記不良ゾーン(33)の空間的形成に基づいて決定する方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)を、前記材料ブランク(34)の横方向にオフセットした体積領域から製造する方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)を、前記材料ブランク(34)の外面又は軸に対して傾いた前記材料ブランク(34)の体積領域から製造する方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法において、前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)を、前記材料ブランク(34)にあるときと同じ相対的な向きで相互に接続する方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法において、前記材料ブランク(34)又は前記材料ブランク(34)若しくは前記別の材料ブランク(34)のうち前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)の体積領域を、前記第1ミラー部品(27)の前記第1接続面(29)の場所及び前記第2ミラー部品(28)の前記第2接続面(30)の場所それぞれにおける前記不良ゾーン(33)の出現が限界値未満であるように選択する方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法において、各区域を、前記不良ゾーン(33)の空間的形成が同様であるように材料ブランク(34)毎に選択し、前記第1ミラー部品(27)を、複数の前記区域のうち1区域内の体積領域から製造し、前記第2ミラー部品(28)を、別の区域内の体積領域から製造する方法。
【請求項10】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置(1)のミラーであって、
該ミラー(26)は、熱膨張係数が非常に小さい材料から製造される第1ミラー部品(27)及び第2ミラー部品(28)を有し、
前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)は、前記第1ミラー部品(27)の第1接続面(29)及び前記第2ミラー部品(28)の第2接続面(30)の領域で相互に恒久的に接続され、
前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)は、少なくとも1つの材料パラメータが指定値から最小偏差よりも大きくずれる不良ゾーン(33)を有し、
前記第1ミラー部品(27)の前記不良ゾーン(33)は、前記第1接続面(29)の場所でそれらが占める全面積の50%以上で前記第2ミラー部品(28)の前記不良ゾーン(33)に隣接するミラー。
【請求項11】
請求項10に記載のミラーにおいて、前記不良ゾーン(33)は、前記第1ミラー部品(27)から前記第2ミラー部品(28)に続くミラー。
【請求項12】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置(1)のミラーであって、
該ミラー(26)は、熱膨張係数が非常に小さい材料から製造される第1ミラー部品(27)及び第2ミラー部品(28)を有し、
前記第1ミラー部品(27)及び前記第2ミラー部品(28)は、前記第1ミラー部品(27)の第1接続面(29)及び前記第2ミラー部品(28)の第2接続面(30)の領域で相互に恒久的に接続され、
前記第1ミラー部品(27)は、該第1ミラー部品(27)に前記第1接続面(29)から10mmの距離まで及ぶ第1体積領域において、ゼロクロス温度の第1平均値を有し、
前記第2ミラー部品(28)は、該第2ミラー部品(28)に前記第2接続面(30)から10mmの距離まで及ぶ第2体積領域において、ゼロクロス温度の第2平均値を有し、
ゼロクロス温度の前記第1平均値は、ゼロクロス温度の前記第2平均値から1K未満のずれがあるミラー。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載のミラー(26)を有する照明光学ユニット。
【請求項14】
請求項10~12のいずれか1項に記載のミラー(26)を有する投影光学ユニット。
【請求項15】
請求項13に記載の照明光学ユニット(4)及び/又は請求項14に記載の投影光学ユニット(10)を備えたマイクロリソグラフィ投影露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロリソグラフィ用の投影露光装置の多部品ミラーを製造する方法に関する。本発明は、マイクロリソグラフィ用の投影露光装置の多部品ミラー、照明光学ユニット、投影光学ユニット、及びマイクロリソグラフィ用の投影露光装置にも関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置は、特に半導体の製造に用いられ、概して照明光学ユニット及び投影光学ユニットを有する。照明光学ユニットは、光源の光から、マスクとも称することが多いレチクルの照明に望まれる光分布を生成する。光は、この場合は一般的な電磁放射線の意味で理解されたく、すなわち特定の波長に限定されない。したがって、以下において用語「光」及び「放射線」は同義に用いられ、すなわち光源を放射源と称することもでき、光分布を放射線分布と称することもでき、その逆も同様である。投影光学ユニットにより、レチクルは、特に半導体材料のウェハ又は他の何らかの基板に塗布された感光材料に結像される。このように、感光材料は、レチクルにより所定のパターンに構造化して露光される。レチクルは、高精度で基板に転写されることが意図される微小な構造要素を有するので、照明光学ユニットが所望の光分布を正確且つ再現可能に生成すると共に、投影光学ユニットよる結像が正確且つ再現可能に行われる必要がある。
【0003】
さらなる光学素子に加えて、照明光学ユニット及び投影光学ユニットは、光路に少なくとも1つのミラーを有することができ、これは、その光学面での反射により光を所定の方法で偏向させる。具体的な光の偏向の仕方は、光学面の形状に応じて変わる。光学面は、例えば金属層として、又は屈折率が交互に変わる一連の層として形成され得る。
【0004】
例えばミラーが冷却チャネルを有するものとなる場合、又はミラーがミラーの製造に利用可能な材料ブランクよりも大きいものとなる場合、ミラーを2つ以上の部品から形成することが有利であり得るか又は必要でさえあり得る。
【0005】
冷却チャネルを有する多部品ミラーが、先行文献ではない特許文献1から既知である。
【0006】
ミラーの多部品実施形態は、特にミラー部品が全く同じ材料特性を有しない場合に、ミラーの光学特性に悪影響を及ぼし得る。
【0007】
ミラーが照明光学ユニットの構成部品である場合、照明光学ユニットにより生じる光分布が仕様からずれる可能性がある。ミラーが投影光学ユニットの構成部品である場合、投影光学ユニットを用いた結像中に結像収差が生じる可能性がある。
【0008】
半導体製造における小型化が進むにつれ、レチクルの照明及び結像をさらにより高い精度で実行しなければならない。これにより、照明光学ユニット又は投影光学ユニットで用いられる光学素子、例えばミラーの光学特性に課される要求がますます厳しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願第102020208648.6号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、光学特性が非常に厳しい要求を満たすようにマイクロリソグラフィ用の投影露光装置の多部品ミラーを開発するという目的に基づく。特に、ミラーは、良好な光学特性を有し且つ熱負荷下でも確実に使用可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の特徴の組み合わせにより達成される。
【0012】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置のミラーを製造する本発明による方法の第1変形形態において、熱膨張係数が非常に小さい材料からなり、且つ少なくとも1つの材料パラメータが指定値から最小偏差よりも大きくずれる不良ゾーンを有する、少なくとも1つの材料ブランクが用意される。第1接続面を有する第1ミラー部品が、材料ブランクから製造される。第2接続面を有する第2ミラー部品が、上記材料ブランク又は別の材料ブランクから製造される。第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、第1ミラー部品の第1接続面及び第2ミラー部品の第2接続面の領域で相互に恒久的に接続される。上記材料ブランクのうち第1ミラー部品を製造する体積領域及び/又は上記材料ブランク又は上記別の材料ブランクのうち第2ミラー部品を製造する体積領域は、上記材料ブランク又は上記材料ブランク若しくは上記別の材料ブランクの不良ゾーンの空間的形成に基づいて決定される。この場合、上記材料ブランク又は上記材料ブランク若しくは上記別の材料ブランクのうち第1ミラー部品及び第2ミラー部品の体積領域は、第1ミラー部品と第2ミラー部品との接続後に不良ゾーンが第1ミラー部品から第2ミラー部品に続くように選択される。
【0013】
本発明による方法は、光学特性が非常に厳しい要求を満たす、マイクロリソグラフィ用の投影露光装置の多部品ミラーの製造を可能にするので有利である。材料ブランク内の不良ゾーンの空間的形成を考慮することにより、非常に良好な熱的挙動を示し且つ熱負荷下でも良好な光学特性を有するミラーを製造することが可能である。
【0014】
第1ミラー部品から第2ミラー部品への不良ゾーンの連続は、不良ゾーンが横方向オフセットなしで又は小さな横方向オフセットのみで第1ミラー部品から第2ミラー部品に続くように規定され得る。この場合、50%以上、好ましくは80%以上の不良ゾーンの横方向オフセットが、オフセットの方向の各不良ゾーンの寸法の50%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは10%未満であるような、不良ゾーンの小さな横方向オフセットが規定され得る。この場合、オフセットの方向は、不良ゾーン毎に個別に、第1ミラー部品と第2ミラー部品との間の横方向オフセットが各不良ゾーンで最大である方向と考えることができる。
【0015】
特に、材料ブランクのうち第2ミラー部品の体積領域は、材料ブランクのうち第1ミラー部品の体積部分に対して不良ゾーンに沿って変位するように選択することができる。このようにして、第1ミラー部品から第2ミラー部品への不良ゾーンの連続に伴う特性、例えば、接続面の領域における小さな機械的応力を、目標通りに用いることができる。
【0016】
例として、指定値は、各材料ブランクの全体積又は体積の一部での平均化により生成された材料パラメータの平均値であり得る。これは、以下で説明する本発明による方法のさらなる変形形態にも当てはまる。
【0017】
マイクロリソグラフィ用の投影露光装置のミラーを製造する本発明による方法のさらに別の変形形態において、熱膨張係数が非常に小さい材料からなり、且つ少なくとも1つの材料パラメータが指定値から最小偏差よりも大きくずれる不良ゾーンを有する少なくとも1つの材料ブランクが用意される。第1接続面を有する第1ミラー部品が、材料ブランクから製造される。さらに、第2接続面を有する第2ミラー部品が、上記材料ブランクから製造される。第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、第1ミラー部品の第1接続面及び第2ミラー部品の第2接続面の領域で相互に恒久的に接続される。第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、材料ブランクのうち第1ミラー部品の製造用の材料追加量と第2ミラー部品の製造用の材料追加量との和だけ相互に離間した体積領域から製造される。この場合、2つのミラー部品の製造用の材料追加量はそれぞれ、例えば研削及び研磨による各ミラー部品の加工用の材料追加量に加えて、例えば鋸断又は切削による材料ブランクからのミラー部品の分離用の材料追加量を相応に含み得る。結果として、個々の材料追加量は、各加工ステップによる材料アブレーション、すなわち例えば切削損失、研削損失、又は研磨損失にそれぞれ対応する。特に、距離は、必要な材料追加量のみが辛うじて観察できるようにできる限り小さく抑えるべきである。
【0018】
本発明による方法のこのさらなる変形形態は、非常に良好な光学特性及び非常に良好な熱的挙動を有するマイクロリソグラフィ用の投影露光装置の多部品ミラーの製造も可能にする。このさらなる変形形態のさらなる利点は、比較的少ない費用しか必要ないことにある。不良ゾーンの空間的形成を把握することは必須ではない。しかしながら、製造されたミラーの特性を推定できるようにするにはこれが有用である。
【0019】
2つの変形形態の利点は、ミラー部品間の移行部で生じる可能性のある不良ゾーンの横方向オフセットを低減できることである。これはさらに、ミラーの耐久性及びその熱的特性に好影響を及ぼし得る。
【0020】
本発明による方法の範囲内で、特に少なくとも1つの材料ブランクは、石英ガラス、チタンドープ石英ガラス、又はガラスセラミックから提供され得る。これらの材料は、非常に良好な品質で利用可能であり、マイクロリソグラフィ用の投影露光装置での使用に対して優れた適性を有する。石英ガラス又はチタンドープ石英ガラスでできた材料ブランクは、例えば直接堆積法又はスート法で製造することができる。これらのプロセスを用いて、正確に規定された仕様を有する高品質の材料ブランクを製造することができる。
【0021】
第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、同じ材料ブランクから又は2つの別個の材料ブランクから製造することができる。1つの材料ブランクからの製造は、材料パラメータが概してごく僅かにしか変わらず、したがって両方のミラー部品が事実上全く同じ材料からなるという利点がある。2つの別個の材料ブランクの使用は、ミラー部品の不良ゾーンの配置に対する自由度が高くなるという利点がある。2つの材料ブランクの場合、不良ゾーンの空間的形成が同様であるべきである。例として、これは、同じ製造装置を時間的に間断なく用いて、且つ同じプロセスパラメータを用いて材料ブランクを製造することにより実施することができる。同様に形成された不良ゾーンにより、2つのミラー部品間の連続的な移行が可能となり、接続されたミラー部品が相互に切り離されるリスクが低減する。
【0022】
材料パラメータは、材料組成に関する仕様、例えばチタン含有量若しくはOH含有量、又は材料特性に関する仕様、例えばゼロクロス温度若しくは熱膨張係数の勾配であり得る。
【0023】
本発明による方法の一実施形態において、材料ブランクのうち投影露光装置の動作中の像収差が最小になる第1ミラー部品及び第2ミラー部品の体積領域は、不良ゾーンの空間的形成に基づいてシミュレートすることができる。シミュレーションは、投影露光装置の特定の使用シナリオに基づき得る。このようにして、特に良好な光学特性を得ることができると共に、製造されたミラーが要件を満たさないというリスクを低減することができる。さらに、利用可能な材料ブランクの最適な使用が可能になる。
【0024】
第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、少なくとも特定の領域で、湾曲状の分離面に沿って材料ブランクから分離することができる。湾曲状の分離面は、第1ミラー部品の体積領域と第2ミラー部品の体積領域との間に延び得る。特に、湾曲状の分離面は、材料ブランクのうち第1ミラー部品の第1接続面及び第2ミラー部品の第2接続面の形成用に設けられた部分間に延び得る。さらに、分離面の曲率は、第1ミラー部品の第1接続面及び第2ミラー部品の第2接続面の曲率に実質的に対応し得る。これらの措置は、第1接続面の領域における第1ミラー部品の製造に必要な材料追加量と、第2接続面の領域における第2ミラー部品の製造に必要な材料追加量とを小さく抑えることができるという利点がある。さらに、これにより、第1ミラー部品及び第2ミラー部品の体積領域を材料ブランク内で相互に非常に短い距離で設けることができる。したがって、このようにして製造されたミラー部品の不良ゾーンが、第1接続面の場所及び第2接続面の場所で酷似して形成され、相互に顕著な横方向オフセットがない、すなわち横方向オフセットをさらに低減できる可能性が十分にある。湾曲状の分離面に沿った分離は、分離ボール研削により実施することができる。
【0025】
第1ミラー部品及び第2ミラー部品が相互に接続される相対的な向きは、上記材料ブランク又は上記材料ブランク若しくは上記別の材料ブランクにおける不良ゾーンの空間的形成に基づいて決定することができる。例として、接続中の相対的な向きは、不良ゾーンが顕著な横方向オフセットを伴わずに第1ミラー部品から第2ミラー部品に続くように選択される。不良ゾーンが顕著な横方向オフセットを伴って第1ミラー部品から第2ミラー部品に続くように、接続中の相対的な向きを選択することも可能である。特に、最大限の横方向オフセットを選択することが可能である。両方の手順が、ミラー部品の接続面の領域における局部応力の形成とミラーの熱的挙動とに異なる効果を及ぼす結果として、この点で目標通りに影響を及ぼすことが可能である。例えば投影露光装置の瞳近傍のミラーの場合、すなわち瞳面又はそれと共役な投影露光装置の平面の近傍に配置されたミラーの場合、大きな横方向オフセットが有利であり得る。特に、周期的に形成された不良ゾーンの場合に大きな横方向オフセットが有利であり得る。
【0026】
特に、第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、材料ブランクの横方向にオフセットした体積領域から製造することができる。この場合、体積領域の横方向オフセットは、材料ブランク内の不良ゾーンの空間的形成に基づいて指定され得る。このように、例えば不良ゾーンのプロファイルは、体積領域のオフセットにより再現することができ、結果として、ミラー部品の加工中の材料損失が完成ミラーのミラー部品間の不良ゾーンの横方向オフセットをもたらすことを防止することが可能である。
【0027】
同様に、第1ミラー部品及び第2ミラー部品を、材料ブランクの外面又は軸に対して傾いた材料ブランクの体積領域から製造することも可能である。この場合、材料ブランクの体積領域は、材料ブランクの全ての外面に対して傾き得る。特に、体積領域は、材料ブランクにおける不良ゾーンが、光学面が形成される第2ミラー部品の外面の形成のために設けられた材料ブランクの部分と略平行に延びるように、傾けることができる。結果として、ごく僅かな不良ゾーンしか、この外面と交わらず、その材料硬度が僅かに異なる結果として第2ミラー部品の加工時に光学面に悪影響を及ぼす波状の表面の形成を促さない。
【0028】
第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、材料ブランクにあるときと同じ相対的な向きで相互に接続されることができる。このように、例えばミラー部品の捩れに起因する第1ミラー部品と第2ミラー部品との間の不良ゾーンのオフセットを回避することができる。少なくとも1つの補助フレームを用いてもよく、又は材料ブランクに向きを記すために少なくとも1つのマーキングを材料ブランクに取り付けてもよい。結果として、比較的単純な手段を用いて同じ相対的な向きでの接続を確保することができる。
【0029】
上記材料ブランク又は上記材料ブランク若しくは上記別の材料ブランクのうち第1ミラー部品及び第2ミラー部品の体積領域は、第1ミラー部品の第1接続面の場所及び第2ミラー部品の第2接続面の場所それぞれにおける不良ゾーンの出現が限界値未満であるように選択することができる。結果として、不良ゾーンの位置姿勢に関係なく、不良ゾーンの生じ得る悪影響を接続面の領域で制限することができる。特に、各接続面における不良ゾーンの面積の割合が閾値未満であれば常に、不良ゾーンの出現は限界値未満である。換言すれば、不良ゾーン全体が占める各接続面の領域を各接続面の全面積で割ったものが、閾値未満でなければならない。
【0030】
閾値は、上記材料ブランク又は上記材料ブランク若しくは上記別の材料ブランクにおける第1ミラー部品及び第2ミラー部品の体積領域の配置を変えた場合の、各接続面における不良ゾーンの面積の割合の最大値及び最小値の算術平均として定義され得る。この場合、第1ミラー部品及び第2ミラー部品の面積の割合に対して各最小値及び最大値を別個に求め、それに従って第1接続面及び第2接続面に対する各閾値を設定することも可能である。
【0031】
さらに、不良ゾーンの面積の割合の最小値と閾値との間の間隔の例えば30%以上、特に60%以上、閾値を下回ることを要求することが可能である。
【0032】
各区域を、不良ゾーンの空間的形成が同様であるように材料ブランク毎に選択することができ、第1ミラー部品は、複数区域のうち1区域内の体積領域から製造することができ、第2ミラー部品は、別の区域内の体積領域から製造することができる。特に、第1ミラー部品及び第2ミラー部品の体積領域は、第2ミラー部品の体積領域を不良ゾーンに対してその位置姿勢を維持しつつ第1ミラー部品の体積領域を含む区域に転写した場合に、相互に直接隣接するように配置される。上記転写により第1接続面及び第2接続面が体積領域の直接隣接する部分から製造されるようになる体積領域の配置が、特に有利である。これらの措置は、ミラー部品の切出し及び加工時の材料損失にもかかわらず、ミラー部品間の不良ゾーンの横方向オフセットを小さく保つことができるという利点がある。
【0033】
本発明は、マイクロリソグラフィ用の投影露光装置のミラーにも関する。本発明によるミラーは、熱膨張係数が非常に小さい材料から製造された第1ミラー部品及び第2ミラー部品を有する。第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、第1ミラー部品の第1接続面及び第2ミラー部品の第2接続面の領域で相互に恒久的に接続される。第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、少なくとも1つの材料パラメータが指定値から最小偏差よりも大きくずれる不良ゾーンを有する。第1ミラー部品の不良ゾーンは、第1接続面の場所でそれらが占める全面積の50%以上で第2ミラー部品の不良ゾーンに隣接する。
【0034】
本発明によるミラーは、非常に良好な熱的挙動を示し且つ特に熱負荷下でも光学特性が非常に高い要求を満たすという利点がある。第1ミラー部品から第2ミラー部品への移行中に材料パラメータの急激な変化により生じ得る問題を、小さく抑えることができる。これは、このような急激な変化の影響を特に受けやすい投影露光装置のミラー、例えば視野近傍のミラー、すなわち例えば物体面又はそれと共役な投影露光装置の平面の近傍に配置されたミラーにとって特に重要である。
【0035】
例として、指定値は、各ミラー部品の全体積又は体積の一部での平均化により生成された材料パラメータの平均値であり得る。
【0036】
特に、第1ミラー部品の不良ゾーンは、第1接続面の場所でそれらが占める全面積の75%以上、特に好ましくは90%以上で第2ミラー部品の不良ゾーンに隣接し得る。
【0037】
第2ミラー部品は、光学面を有し得る。
【0038】
第2ミラー部品の不良ゾーンが光学面と実質的に平行に延びることも同様に可能である。特に、光学面が形成される第2ミラー部品の表面は、10個以下、好ましくは5個以下、特に好ましくは2個以下の不良ゾーンを有し得る。
【0039】
これにより、第2ミラー部品の表面硬度の局所的なばらつきに起因し得る光学面の望ましくない起伏を制限することができる。
【0040】
第1ミラー部品及び/又は第2ミラー部品は、チタン及び/又はOHを含有し得る。特に、第1ミラー部品及び/又は第2ミラー部品は、石英ガラス、チタンドープ石英ガラス、又はガラスセラミックから製造され得る。質量に関して、第1ミラー部品及び/又は第2ミラー部品は、400ppm未満のOH含有量を有し得る。質量に関して、第1ミラー部品及び/又は第2ミラー部品が600ppmを超えるOH含有量を有することも可能である。ミラーは、第1ミラー部品の領域及び/又は第2ミラー部品の領域に冷却チャネルを有し得る。
【0041】
不良ゾーンを規定する材料パラメータは、例えば、チタン含有量、OH含有量、ゼロクロス温度、又は熱膨張係数の勾配であり得る。
【0042】
光学面の側方領域で平均すると、第2ミラー部品は、第1ミラー部品のゼロクロス温度から-0.5K~3K、好ましくは-0.5K~+1.5Kずれたゼロクロス温度を有し得る。特に、第2ミラー部品は、このように平均すると、第1ミラー部品よりも高いゼロクロス温度を有することができる。第2ミラー部品は、投影露光装置の動作中に第1ミラー部品よりも高い温度を有する傾向があるので、結果としてゼロクロス温度が高いほど熱膨張が小さい。第2ミラー部品は、第1ミラー部品よりも体積にわたって均一なゼロクロス温度の分布を有し得る。第2ミラー部品は光学面を有するので、第2ミラー部品の材料特性は、第1ミラー部品の材料特性よりもミラーの光学特性にとって重要である。
【0043】
第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、第1ミラー部品に第1接続面から10mmの距離まで及ぶ第1体積領域と、第2ミラー部品に第2接続面から10mmの距離まで及ぶ第2体積領域とにおいて、同様のチタン含有量及び/又は同様のOH含有量を有し得る。特に、第2ミラー部品の第2体積領域の二酸化チタン含有量は、第1体積領域の二酸化チタン含有量から0.04質量%未満、好ましくは0.02質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満のずれがあり得る。さらに、第2ミラー部品の第2体積領域のOH含有量は、第1体積領域のOH含有量から5質量%未満、好ましくは2質量%未満、特に好ましくは1質量%未満のずれがあり得る。したがって、OH含有量の場合、このずれに関するパーセンテージの仕様は、相対値としてのOH含有量に関係する。各体積領域における平均値は、二酸化チタン含有量及びOH含有量の値として用いることができる。第2ミラー部品が厚さ10mm未満である場合、第2ミラー部品全体を第2体積領域として用いることができる。
【0044】
不良ゾーンは、第1ミラー部品から第2ミラー部品に続くことができる。特に、不良ゾーンは、横方向オフセットなしで又は小さな横方向オフセットのみで第1ミラー部品から第2ミラー部品に続くことができる。例として、50%以上、好ましくは80%以上の不良ゾーンの横方向オフセットは、オフセットの方向の各不良ゾーンの寸法の50%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは10%未満であり得る。この場合、オフセットの方向は、不良ゾーン毎に個別に、第1ミラー部品と第2ミラー部品との間の横方向オフセットが各不良ゾーンで最大である方向と考えることができる。
【0045】
さらに、本発明は、マイクロリソグラフィ投影露光装置のミラーであって、熱膨張係数が非常に小さい材料から製造される第1ミラー部品及び第2ミラー部品を有し、第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、第1ミラー部品の第1接続面及び第2ミラー部品の第2接続面の領域で相互に恒久的に接続されるミラーに関する。第1ミラー部品は、第1ミラー部品に第1接続面から10mmの距離まで及ぶ第1体積領域において、ゼロクロス温度の第1平均値を有する。第2ミラー部品は、第2ミラー部品に第2接続面から10mmの距離まで及ぶ第2体積領域において、ゼロクロス温度の第2平均値を有する。ゼロクロス温度の第1平均値は、ゼロクロス温度の第2平均値から1K未満のずれがある。
【0046】
本発明によるミラーは、非常に良好な熱的挙動を示し且つ特に熱負荷下でも光学特性が非常に高い要求を満たすという利点がある。特に、接続面の領域におけるゼロクロス温度の平均値の差が小さい結果として、ミラー温度の変化時に、光学面の変形につながり得る機械的応力が形成されるリスクが低減される。
【0047】
特に、ゼロクロス温度の第1平均値は、ゼロクロス温度の第2平均値から特に0.5K未満、特に好ましくは0.1K未満のずれがあり得る。
【0048】
第2ミラー部品が厚さ10mm未満である場合、第2ミラー部品全体を第2体積領域として用いることができる。
【0049】
第1体積領域外で、第1ミラー部品は、ゼロクロス温度の第1平均値よりもゼロクロス温度の第2平均値から大きくずれたゼロクロス温度の第3平均値を有し得る。
【0050】
特に、ゼロクロス温度の第3平均値は、ゼロクロス温度の第2平均値からゼロクロス温度の第1平均値よりも0.1K以上、好ましくは1K以上、特に好ましくは3K以上のずれがあり得る。
【0051】
本発明は、本発明によるミラーを有する照明光学ユニットにも関する。
【0052】
さらに、本発明は、本発明によるミラーを有する投影光学ユニットに関する。
【0053】
最後に、本発明は、本発明による照明光学ユニット及び/又は本発明による投影光学ユニットを有するマイクロリソグラフィ用の投影露光装置に関する。
【0054】
添付図に示す例示的な実施形態に基づき、本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】EUV投影リソグラフィ用の投影露光装置の例示的な実施形態を子午線断面で概略的に示す。
図2】DUV投影リソグラフィ用の投影露光装置の例示的な実施形態の概略図を示す。
図3】本発明によるミラーの例示的な実施形態の概略断面図を示す。
図4】本発明によるミラーの第1構成に従ったミラーの製造用の材料ブランクの概略断面図を示す。
図5】本発明によるミラーのさらに別の構成に従ったミラーの製造用の材料ブランクの概略断面図を示す。
図6】本発明によるミラーのさらに別の構成に従ったミラーの製造用の材料ブランクの概略断面図を示す。
図7】本発明によるミラーのさらに別の構成に従ったミラーの製造用の材料ブランクの概略断面図を示す。
図8】本発明によるミラーのさらに別の構成に従ったミラーの製造用の材料ブランクの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1は、EUV投影リソグラフィ用の投影露光装置の例示的な実施形態を子午線断面で概略的に示す。
【0057】
以下において、まず図1を参照して、マイクロリソグラフィ投影露光装置1の必須構成要素を例として説明する。投影露光装置1及びそのコンポーネントの基本構成の説明は、ここでは限定的とみなすべきではない。
【0058】
投影露光装置1の照明系2の一実施形態は、光源又は放射源3に加えて、物体面6の物体視野4の照明用の照明光学ユニット4を有する。代替的な実施形態において、放射源3は、残りの照明系とは別個のモジュールとして設けることもできる。この場合、照明系は放射源3を含まない。
【0059】
物体視野5に配置されたレチクル7が露光され、これはマスクとも称する。レチクル7は、レチクルホルダ8により保持される。レチクルホルダ8は、レチクル変位ドライブ9により特に走査方向に変位可能である。
【0060】
説明のために、直交xyz座標系を図1に示す。x方向は図の平面に対して垂直に延びる。y方向は水平に延び、z方向は鉛直に延びる。走査方向は図1ではy方向に沿って延びる。z方向は物体面6に対して垂直に延びる。
【0061】
投影露光装置1は、投影光学ユニット10を備える。投影光学ユニット10は、物体視野5を像面12の像視野11に結像する働きをする。像面12は、物体面6と平行に延びる。代替として、物体面6と像面12との間では0°以外の角度も可能である。
【0062】
レチクル7上の構造が、像面12の像視野11の領域に配置されたウェハ13又は他の何らかの基板の感光層に結像される。ウェハ13は、ウェハホルダ14により保持される。ウェハホルダ14は、ウェハ変位ドライブ15により特にy方向に変位可能である。第1にレチクル変位ドライブ9によるレチクル7の変位と、第2にウェハ変位ドライブ15によるウェハ13の変位とは、相互に同期するように実施され得る。
【0063】
放射源3は、EUV放射源である。放射源3は、特に以下で使用放射線又は照明光とも称する照明放射線16を出射する。図示の例示的な実施形態において、照明放射線16は、EUV領域の、5nm~30nmの範囲の波長を有する。放射源3は、プラズマ源、例えばLPP(レーザ生成プラズマ)源又はGDPP(ガス放電プラズマ)源であり得る。これは、シンクロトロンベースの放射源でもあり得る。同様に、放射源3は自由電子レーザ(FEL)であり得る。
【0064】
放射源3から出る照明放射線16は、コレクタ17により集束される。コレクタ17は、1つ又は複数の楕円反射面及び/又は双曲反射面を有するコレクタであり得る。照明放射線16は、コレクタ17の少なくとも1つの反射面に斜入射(GI)で、すなわち45°よりも大きな入射角で、又は垂直入射(NI)で、すなわち45°よりも小さな入射角で入射し得る。コレクタ17は、第1に照明放射線16に対する反射率を最適化するために、第2に外来光を抑制するために構造化且つ/又はコーティングされ得る。
【0065】
コレクタ17の下流で、照明放射線16は中間焦点面18の中間焦点を伝播する。中間焦点面18は、放射源3及びコレクタ17を有する放射源モジュールと照明光学ユニット4との間の分離を表し得る。
【0066】
照明光学ユニット4は、偏向ミラー19と、ビーム経路でその下流に配置された第1ファセットミラー20とを備える。偏向ミラー19は、平面偏向ミラーであり得るか、あるいは純粋な偏向効果を超えたビーム影響効果を有するミラーであり得る。代替として又は追加として、偏向ミラー19は、照明放射線16の使用光波長をそこから逸脱する波長の外来光から分離する分光フィルタの形態で具現され得る。第1ファセットミラー20が、視野平面として物体平面6と光学的に共役な照明光学ユニット4の平面に配置される場合、これを視野ファセットミラーとも称する。第1ファセットミラー20は、以下で視野ファセットとも称する複数の個別の第1ファセット21を含む。これらの第1ファセット21のいくつかのみを図1に例として示す。
【0067】
第1ファセット21は、巨視的なファセットとして、特に矩形ファセットとして、又は弧状の周辺輪郭又は部分円の周辺輪郭を有するファセットとして具現することができる。第1ファセット21は、平面ファセットとして、あるいは凸状又は凹状に湾曲したファセットとして具現することができる。
【0068】
例えば独国特許出願公開第10 2008 009 600号明細書から既知のように、第1ファセット21自体も、それぞれ複数の個別ミラー、特に複数のマイクロミラーから構成することができる。第1ファセットミラー20は、特に微小電気機械システム(MEMSシステム)の形態であり得る。詳細は独国特許出願公開第10 2008 009 600号明細書を参照されたい。
【0069】
照明放射線16は、コレクタ17と偏向ミラー19との間で水平に、すなわちy方向に進む。
【0070】
照明光学ユニット4のビーム経路で、第1ファセットミラー20の下流に第2ファセットミラー22が配置される。第2ファセットミラー22が照明光学ユニット4の瞳面に配置される場合、これを瞳ファセットミラーとも称する。第2ファセットミラー22は、照明光学ユニット4の瞳面から離れて配置することもできる。この場合、第1ファセットミラー20及び第2ファセットミラー22の組み合わせを鏡面反射器とも称する。鏡面反射器は、米国特許出願公開第2006/0132747号明細書、欧州特許第1 614 008号明細書、及び米国特許第6,573,978号明細書から既知である。
【0071】
第2ファセットミラー22は、複数の第2ファセット23を含む。瞳ファセットミラーの場合、第2ファセット23を瞳ファセットとも称する。
【0072】
第2ファセット23も同様に、例えば円形、矩形、又は六角形の境界を有し得る巨視的なファセットであり得るか、あるいはマイクロミラーから構成されたファセットであり得る。この点に関して、独国特許出願公開第10 2008 009 600号明細書を同様に参照されたい。
【0073】
第2ファセット23は、平面反射面、あるいは凸状又は凹状に湾曲した反射面を有し得る。
【0074】
照明光学ユニット4は、結果として二重ファセットシステムを形成する。この基本原理は、フライアイコンデンサ(フライアイインテグレータ)とも称する。
【0075】
第2ファセットミラー22を投影光学ユニット10の瞳面と光学的に共役な平面に正確に配置しないことが有利であり得る。特に、例えば独国特許出願公開第10 2017 220 586号明細書に記載のように、第2ファセットミラー22は、投影光学ユニット10の瞳面に対して傾斜するように配置され得る。
【0076】
第2ファセットミラー22を用いて、個々の第1ファセット21が物体視野5に結像される。第2ファセットミラー22は、物体視野5の上流のビーム経路で最後のビーム整形ミラー又は実際に照明放射線16に対する最終ミラーである。
【0077】
照明光学ユニット4のさらに別の実施形態(図示せず)において、特に物体視野5への第1ファセット21の結像に寄与する転写光学ユニットが、第2ファセットミラー22と物体視野5との間のビーム経路に配置され得る。転写光学ユニットは、厳密に1つのミラー、あるいは照明光学ユニット4のビーム経路に連続して配置された2つ以上のミラーを含むことができる。特に、転写光学ユニットは、1つ又は2つの垂直入射ミラー(NIミラー)及び/又は1つ又は2つの斜入射ミラー(GIミラー)を含むことができる。
【0078】
図1に示す実施形態において、照明光学ユニット4は、コレクタ17の下流に厳密に3つのミラー、具体的には偏向ミラー19、第1ファセットミラー20、及び第2ファセットミラー22を有する。
【0079】
照明光学ユニッ4のさらに別の実施形態では、偏向ミラー19は不要でもあるので、照明光学ユニット4は、その場合はコレクタ17の下流に厳密に2つのミラー、具体的には第1ファセットミラー20及び第2ファセットミラー22を有することができる。
【0080】
第2ファセット23による、又は第2ファセット23及び転写光学ユニットを用いた、物体面6への第1ファセット21の結像は、通常は近似的な結像にすぎない。
【0081】
投影光学ユニット10は、複数のミラーMiを含み、これらには投影露光装置1のビーム経路におけるそれらの配置に従って番号を付す。
【0082】
図1に示す例において、投影光学ユニット10は、6個のミラーM1~M6を含む。4個、8個、10個、12個、又は任意の他の数のミラーMiでの代替も同様に可能である。投影光学ユニット10は、二重遮蔽光学ユニットである。最後から2番目のミラーM5及び最終ミラーM6はそれぞれ、ウェハ13の露光中に露光に寄与する放射線がレチクル7からウェハ13への途中で通過する通過開口を有する。投影光学ユニット10は、0.5よりも大きく、0.6よりも大きくてもよく、例えば0.7又は0.75であり得る像側開口数を有する。
【0083】
ミラーMiの反射面は、回転対称軸のない自由曲面の形態であり得る。代替として、ミラーMiの反射面は、反射面形状の回転対称軸が厳密に1つである非球面として設計することができる。照明光学ユニット4のミラーと同様に、ミラーMiは、照明放射線16に対して高反射コーティングを有することができる。これらのコーティングは、特にモリブデン及びケイ素の交互層を有する多層コーティングとして設計することができる。
【0084】
投影光学ユニット10は、物体視野5の中心のy座標と像視野11の中心のy座標との間にy方向の大きな物体-像オフセットを有する。y方向の上記物体-像オフセットは、物体面6と像面12との間のz距離と略同じサイズであり得る。
【0085】
投影光学ユニット10は、特にアナモルフィックな形態を有することができる。特にこれは、x方向及びy方向に異なる結像スケールβx、βyを有する。投影光学ユニット10の2つの結像スケールβx、βyは、好ましくは(βx,βy)=(+/-0.25,+/-0.125)である。正の結像スケールβは、像反転のない結像を意味する。結像スケールβの負の符号は、像反転のある結像を意味する。
【0086】
投影光学ユニット10は、結果として、x方向に、すなわち走査方向に対して垂直な方向に4:1の比でサイズを縮小させる。
【0087】
投影光学ユニット10は、y方向に、すなわち走査方向に8:1でサイズを縮小させる。
【0088】
他の結像スケールも同様に可能である。x方向及びy方向で同じ符号及び同じ絶対値の、例えば0.125又は0.25の絶対値の結像スケールも可能である。
【0089】
物体視野5と像視野11との間のビーム経路におけるx方向及びy方向の中間像面の数は、投影光学ユニット10の実施形態に応じて同じであっても異なっていてもよい。x方向及びy方向のこのような中間像の数が異なる投影光学ユニット10の例は、米国特許出願公開第2018/0074303号明細書から既知である。
【0090】
第2ファセット23のそれぞれが、物体視野5を照明する照明チャネルをそれぞれ形成するために第1ファセット21の厳密に1つに割り当てられる。これにより、特にケーラーの原理に従った照明を得ることができる。遠視野は、第1ファセット21を用いて複数の物体視野5に分解される。第1ファセット21は、それぞれに割り当てられた第2ファセット23に中間焦点の複数の像を生成する。
【0091】
割り当てられた第2ファセット23により、第1ファセット21は、物体視野5を照明する目的で重なり合ってレチクル7にそれぞれ結像される。物体視野5の照明は、特にできる限り均一である。その均一性誤差は2%未満であることが好ましい。異なる照明チャネルを重ね合わせることにより、視野均一性を得ることができる。
【0092】
投影光学ユニット10の入射瞳の照明は、第2ファセット23の配置により幾何学的に規定することができる。導光する照明チャネル、特に第2ファセット23のサブセットを選択することにより、投影光学ユニット10の入射瞳における強度分布を設定することができる。この強度分布を照明設定又は照明瞳充填とも称する。
【0093】
照明光学ユニット4の照明瞳の規定の照明部分の領域における同様に好ましい瞳均一性を、照明チャネルの再分配により達成することができる。
【0094】
物体視野5の、特に投影光学ユニット10の入射瞳の照明のさらなる態様及び詳細を、以下で説明する。
【0095】
投影光学ユニット10は、特に共心入射瞳を有し得る。これはアクセス可能とすることができる。これはアクセス不可能とすることもできる。
【0096】
投影光学ユニット10の入射瞳は、多くの場合に第2ファセットミラー22で正確に照明することができない。第2ファセットミラー22の中心をウェハ13にテレセントリックに結像する投影光学ユニット10の結像時に、開口光線は一点で交わらないことが多い。しかしながら、開口光線の対で求められた間隔が最小になる面を見つけることが可能である。この面は、入射瞳又はそれと共役な実空間面を表す。特に、この面は有限の曲率を有する。
【0097】
投影光学ユニット10は、タンジェンシャルビーム経路とサジタルビーム経路とで入射瞳の位置が異なる場合がある。この場合、結像素子、特に転写光学ユニットの光学構成部品を、第2ファセットミラー22とレチクル7との間に設けるべきである。この光学素子を用いて、タンジェンシャル入射瞳及びサジタル入射瞳の位置姿勢の相違を考慮することができる。
【0098】
図1に示す照明光学ユニット4のコンポーネントの配置において、第2ファセットミラー22は、投影光学ユニット10の入射瞳と共役な面に配置される。第1ファセットミラー20は、物体面6に対して傾斜するように配置される。第1ファセットミラー20は、偏向ミラー19により画定された配置面に対して傾斜するように配置される。
【0099】
第1ファセットミラー20は、第2ファセットミラー22により画定された配置面に対して傾斜するように配置される。
【0100】
図2は、DUV投影リソグラフィ用の投影露光装置1の例示的な実施形態を概略図で示す。ここで、DUVは「新紫外線」を指す。特に、投影露光装置は、193nmの波長での動作用に設計され得る。
【0101】
投影露光装置1は、照明光学ユニット4及び投影光学ユニット10を有する。いずれの場合も例えば光学コンポーネント、センサ、マニピュレータ等を含む、照明光学ユニット4の内部構造及び投影光学ユニット10の内部構造は、詳細に図示しない。投影光学ユニット10の場合、ミラーMがその光学コンポーネントの代表として示される。ミラーMは、冷却装置24により供給される冷却媒体を用いて冷却され得る。冷却媒体は、流体、例えば水である。追加として又は代替として、照明光学ユニット4は、1つの冷却されたミラーM及び1つの関連する冷却装置24を有し得る。投影光学ユニット10の及び/又は照明光学ユニット4は、複数の冷却されたミラーM及び冷却装置24を有することもできる。照明光学ユニット4の場合及び投影光学ユニット10の場合、レンズ及び冷却されているか又はされていないさらなるミラーが、さらなる光学コンポーネントとして存在し得る。
【0102】
同様に、図1に示す投影露光装置1の例示的な実施形態でも、例えばミラーM3に接続され得る少なくとも1つの冷却装置24を設けることができる。
【0103】
投影露光装置1の動作に必要な放射線は、放射源3により生成される。放射源3は、波長193nmの照明放射線16を生成する特にエキシマレーザ、例えばフッ化アルゴンレーザであり得る。
【0104】
照明光学ユニット2と投影光学ユニット10との間にはレチクルホルダ8が配置され、そこにレチクル7が固定される。レチクルホルダは、レチクル変位ドライブ9を有する。放射方向に見て投影光学ユニット10の下流には、ウェハホルダ14が配置され、これはウェハ13又は他の何らかの基板を支持し、ウェハ変位ドライブ15を有する。
【0105】
図2はさらに、制御装置25も示し、これは、照明光学ユニット4、投影光学ユニット10、冷却装置24、放射源3、レチクルホルダ8又はレチクル変位ドライブ9、及びウェハホルダ14又はウェハ変位ドライブ15に接続される。同様に、図1の投影露光装置も、対応するコンポーネントに接続され得る制御装置25を有する。
【0106】
投影露光装置1は、レチクル7をウェハ13に高精度で結像するという目的を果たす。この目的で、レチクル7は、照明光学ユニット4を用いて照明され、照明されたレチクル7は、投影光学ユニット10を用いてウェハ13に結像される。具体的には、以下の手順が採用される。
【0107】
照明光学ユニット4は、その光学コンポーネントを用いて放射源3が発生させた照明放射線16を正確に規定された方法で変換し、レチクル7へ導く。実施形態に応じて、照明光学ユニット4は、レチクル7の全体又はレチクル7の部分領域のみを照明するように形成され得る。照明光学ユニット4は、レチクル7の各照明点で略同一の照明条件となるようにレチクル7を照明することが可能である。特に、入射した照明放射線16の強度及び角度分布は、レチクル7の照明点毎に略同一である。
【0108】
照明光学ユニット4は、場合によっては複数の異なる角度分布の照明放射線16でレチクル7を照明することが可能である。照明放射線のこれらの角度分布を照明設定とも称する。所望の照明設定は、概してレチクル7に形成された構造要素に応じて選択される。例えば比較的多くの場合に用いられるのは、二重極又は四重極照明設定であり、その場合、照明放射線16は、それぞれ2つの異なる方向又は4つの異なる方向からレチクル7の各照明点に入射する。照明光学ユニット4の形態に応じて、例えばズームアキシコン光学ユニットと組み合わせた異なる回折光学素子により、又は相互に並べて配置されて角度位置を個別に設定可能である複数の小さなミラーをそれぞれが有するミラーアレイにより、異なる照明設定を生じることができる。
【0109】
レチクル7は、例えばガラス板として形成することができ、これは照明光学ユニット4により供給された照明放射線16に対して透明であり、例えばクロムコーティングの形態の不透明構造が施される。
【0110】
投影露光装置1は、照明光学ユニット4によりレチクル7全体が同時に照明されて、単一の露光ステップで投影光学ユニット10によりウェハ13に完全に結像されるように形成され得る。
【0111】
代替として、レチクル7の部分領域のみが照明光学ユニット4により同時に照明され、制御装置25によるレチクル変位ドライブ9の制御により、ウェハ13の露光中にレチクル7を照明光学ユニット4に対して移動させる結果として照明された部分領域がレチクル7全体にわたって移動するように、投影露光装置1を形成することもできる。ウェハ13は、投影光学ユニット10の結像特性も考慮するウェハ変位ドライブ15の適切に適合した制御により、同期して移動させられるので、レチクル7のそれぞれ照明された部分領域は、それに備えたウェハ13の部分領域に結像される。レチクル及びウェハ13のこの移動を走査とも称する。
【0112】
投影露光装置1の両方の実施形態におけるウェハ13の露光により生成された潜像を物理構造に転写することができるように、感光層がウェハ13に塗布される。レチクル7の像は、露光によりこの感光層に形成され、後続の化学プロセスを用いてそこからウェハ13に永久構造を生成することができる。
【0113】
レチクル7は、概してウェハ13に1回ではなく並んで複数回結像される。この目的で、ウェハ13へのレチクル7の結像毎に、ウェハホルダ14は、ウェハ13上のレチクル7の像のサイズに対応して横方向に変位する。レチクル7の結像は、ここではそれぞれ全体として又は走査により順次実行され得る。ウェハ13の化学処理は、ウェハ13へのレチクル7の結像が所望の回数行われてからしか開始されない。
【0114】
図3は、本発明によるミラー26の例示的な実施形態の概略断面図を示す。
【0115】
ミラー26は、図1及び図2に示す投影露光装置1の1つで用いることができ、下側部品27及び上側部品28を有する。用語「下側部品」及び「上側部品」の選択は、下側部品27が概して上側部品28よりもはるかに厚く形成され、したがっていわば上側部品28を支持することによる。しかしながら、これらの用語は、ミラー26の取付状態での重力方向に対するミラー26の向きとは関係ない。投影露光装置1の動作中、上側部品28は、重力方向に対して下側部品27の上又は下又は横に配置されてもよく、又はこれに対して他の何らかの相対位置をとってもよい。下側部品27は、第1ミラー部品とも称する。上側部品28は、第2ミラー部品とも称する。
【0116】
下側部品27及び上側部品28は、下側部品27の接続面29及び上側部品28の接続面30の領域で相互に剛接続される。図示の例示的な実施形態において、下側部品27の接続面29は、凹面状に形成される。その曲率は、球面、非球面、又は自由曲面に従って形成され得る。上側部品28の接続面30は、下側部品27の接続面29と相補的に湾曲し、それゆえ球面、非球面、又は自由曲面に従って形成され得る凸曲率を有する。したがって、上側部品28の接続面30及び下側部品27の接続面29は、相互に密着することができる。湾曲状に形成する代わりに、上側部品28の接続面30を平面状に形成してもよい。
【0117】
下側部品27は、その接続面29とは反対側の、図3の下部に示す側では平面状に形成される。上側部品28は、その接続面30とは反対側の、図3の上部に示す側では凹面状に形成され、同一の曲率を有する反射光学面31を有する。その曲率は、球面、非球面、又は自由曲面に従って形成され、特に上側部品28の接続面30の曲率に対応してこれと平行に延び得る。この代替として、光学面31が平面状に形成される可能性もある。これは、特に下側部品27の接続面29及び上側部品28の接続面30が平面状に形成される場合に当てはまる。
【0118】
光学面31は、特に上側部品28に塗布されたコーティングとして具現される。コーティングの形成は、光学面31がその反射効果をもたらすことが意図される波長に応じて変わる。DUV領域の反射が望まれる場合、すなわち図2のミラーMの場合、コーティングは、概して誘電補強されてコーティングにより酸化から保護されたアルミニウム層として形成される。他方では、例えば図1のミラーM3等の場合のようにEUV領域の反射が意図される場合、コーティングは、特にケイ素及びモリブデンの交互に連続する層、及び場合によっては例えば保護層として働く異なる組成の1つ又は複数のさらなる層から形成され得る。
【0119】
下側部品27は、相互に平行に且つ下側部品27の接続面29と平行に延び、光学面31の領域で側方に、場合によってはそれをいくらか越えた範囲に及ぶ、複数の細長い冷却チャネル32を有する。したがって、図示の例示的な実施形態の場合の冷却チャネル32は、湾曲状に形成される。冷却チャネル32は、下側部品27の接続面29の方に開放するよう形成される。冷却チャネル32の横断寸法は、約0.2mm~10mm、冷却チャネル32の深さ、すなわち図3の例示的な実施形態において上側部品28の接続面30に対して略垂直な寸法は、幅、すなわち上側部品28の接続面30と略平行な寸法と略同じサイズであり得る。しかしながら、冷却チャネル32の深さをその幅よりも実質的に大きくすることも可能である。例えば、冷却チャネル32の深さは、冷却チャネル32の幅の2倍を超えてもよい。
【0120】
例として、図3では見えないさらなるチャネルを用いて、冷却チャネル32を図2に示す冷却装置24に接続してもよく、冷却装置24を用いて、冷却チャネル32を通る流体の流れを発生させ、ひいてはミラー26から熱を除去することができる。ミラー26への熱流入は、例えば、投影露光装置1の動作中に光学面31により反射される放射線により実現され得る。光学面31は、入射放射線を完全に反射しないので、放射線の一部は光学面31により吸収され、光学面31の形成に応じて、上側部品28にも吸収されて熱に変換される。光学面31及び上側部品28は一定の熱伝導率を有するので、この熱の一部は冷却チャネル32へ導かれてそこで流体に取り込まれて運び去られ得る。このように、放射線により生じるミラー26の温度上昇を制限することができ、冷却されないミラー26と比べて熱膨張効果により生じる光学面31の変形を低減することができる。結果として、変形により生じる結像収差も低減される。
【0121】
冷却措置にもかかわらず生じる温度変動の悪影響をできる限り小さく抑えるために、熱膨張係数が非常に小さい材料を用いて下側部品27及び上側部品28が製造される。適当な材料は、例えば石英ガラス、チタンドープ石英ガラス、又は特殊ガラスセラミックである。
【0122】
例として、材料は、その体積にわたって平均して、材料の熱膨張が最小であり理想的な場合にはゼロに等しい22℃~25℃のゼロクロス温度を有し得る。ここで、平均ゼロクロス温度は、投影露光装置1の動作中にミラー26の冷却を考慮して所期の温度に一致するよう調整される。材料を製造する方法に応じて、22℃での熱膨張係数の増加は、約1.35ppb/K~1.8ppb/K未満であることが好ましい。ゼロクロス温度の均一性は、光学面31の側方領域では±5Kよりも良好であり、すなわちゼロクロス温度はこの領域での空間依存的な変動が±5K未満である。特に冷却に加えてミラーの局部加熱が与えられる場合、平均ゼロクロス温度を大幅に高くすることも可能である。
【0123】
下側部品27及び上側部品28は、下側部品27に第1接続面29から10mmの距離まで及ぶ第1体積領域と、上側部品28に第2接続面30から10mmの距離まで及ぶ第2体積領域とにおいて、同様のチタン含有量及び/又は同様のOH含有量を有し得る。特に、上側部品28の第2体積領域の二酸化チタン含有量は、第1体積領域の二酸化チタン含有量から0.04質量%未満、好ましくは0.02質量%未満、特に好ましくは0.01質量%未満のずれがあり得る。さらに、上側部品28の第2体積領域のOH含有量は、第1体積領域のOH含有量から第1体積領域のこのOH含有量の5質量%未満、好ましくは2質量%未満、特に好ましくは1質量%未満のずれがあり得る。OH含有量の場合、ずれに関するパーセンテージの仕様は、相対値としてのOH含有量に関係する。各体積領域における平均値は、二酸化チタン含有量及びOH含有量の値として用いることができる。上側部品28が厚さ10mm未満である場合、上側部品28全体を第2体積領域として用いることができる。
【0124】
下側部品27は、第1体積領域においてゼロクロス温度の第1平均値を有する。上側部品28は、第2体積領域においてゼロクロス温度の第2平均値を有する。ゼロクロス温度の第1平均値は、ゼロクロス温度の第2平均値から1K未満、特に0.5K未満、特に好ましくは0.1K未満のずれがあり得る。
【0125】
上側部品28が厚さ10mm未満である場合、上側部品28全体を第2体積領域として用いることができる。
【0126】
第1体積領域外で、下側部品27は、ゼロクロス温度の第1平均値よりもゼロクロス温度の第2平均値から大きくずれたゼロクロス温度の第3平均値を有し得る。特に、ゼロクロス温度の第3平均値は、ゼロクロス温度の第2平均値からゼロクロス温度の第1平均値よりも0.1K以上、好ましくは1K以上、特に好ましくは3K以上のずれがあり得る。
【0127】
上側部品28が、光学面31の側方領域で平均すると、下側部品27のゼロクロス温度から-0.5K~+3Kのずれを有することも可能である。光源に比較的近いミラー26の場合又は能動的に加熱されたミラー26の場合、このずれは最大+5Kであり得る。ずれは、-0.5K~+1.5Kであることが好ましい。低温側と高温側とに関して許容偏差が非対称なのは、上側部品28が概して投影露光装置1の動作中に下側部品27よりも高い温度を有し、熱膨張がゼロクロス温度付近で最小であることに基づく。
【0128】
ミラー26は、下側部品27の領域及び上側部品28の領域の両方に不良ゾーン33を有し、当該不良ゾーン内では、指定値からの少なくとも1つの材料パラメータが最小偏差よりも大きくずれる。例として、指定値は、下側部品27及び上側部品28それぞれの全体積又は体積の一部での平均化により生成される、材料パラメータの平均値であり得る。材料パラメータは、材料組成に関する仕様、例えばチタン含有量若しくはOH含有量、又は材料特性に関する仕様、例えばゼロクロス温度若しくは熱膨張係数の勾配であり得る。不良ゾーン33は、様々な程度で現れる、すなわち指定値からの偏差の大きさが異なり得る。
【0129】
不良ゾーン33は、図3の例示的な実施形態では帯状の形態を有し、すなわち図の平面に向かって略不変の断面で延びる。不良ゾーン33は、相互に略平行に延び、図3の図示では垂直線に対して僅かに傾いており、したがって下側部品27の接続面29とは反対側に対して垂直に延びていない。図示の例示的な実施形態はさらに、不良ゾーン33が横方向オフセットなしで下側部品27から上側部品28に続くことを特徴とする。同様に、下側部品27から上側部品28への移行時に不良ゾーン33の横方向オフセットもあり得る。この場合、50%以上、好ましくは80%以上の不良ゾーン33の横方向オフセットは、オフセットの方向の各不良ゾーン33の寸法の50%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは10%未満であり得る。この場合、オフセットの方向は、不良ゾーン33毎に個別に、下側部品27と上側部品28との間の横方向オフセットが各不良ゾーン33で最大である方向と考えることができる。
【0130】
不良ゾーン33は、異なる空間的形成を有し得る。しかしながら、一般に、下側部品27の不良ゾーン33が、接続面29の場所でそれらが占める全面積の50%以上で上側部品28の不良ゾーン33に隣接すれば有利である。代替として、下側部品27の接続面29及び/又は上側部品28の接続面30の領域で不良ゾーン33の重なりを僅かにしか設けず、したがって下側部品27から上側部品28への移行時に大きな横方向オフセットを設けるという選択肢もある。このように、例えば、不良ゾーン33の影響をある程度まで補償するよう試みることが可能である。
【0131】
ミラー26を製造するために、下側部品27及び上側部品28は、別個の部品として製造されてから、例えば熱接着プロセスにより相互に接続される。光学面31は、特にその形状に関して最大限の精度を達成し、且つ接続プロセス中の光学面31の損傷を回避するために、概して下側部品27及び上側部品28の接続後にのみ形成される。
【0132】
下側部品27及び上側部品28の製造及びミラー26を形成するためのそれらの組み合わせのいくつかの態様を、以下で説明する。
【0133】
図4は、本発明による方法の第1構成に従ったミラー26の製造用の材料ブランク34の概略断面図を示す。下側部品27及び上側部品28の輪郭も図4に示す。
【0134】
例えば、材料ブランク34は、チタンドープ石英ガラス、特に二酸化チタンが添加された石英ガラスからなり得る。同様に、材料ブランク34は、ケイ素及びチタンに加えてさらに別の金属を含有する三元化合物も含有し得る。さらに、フッ素のドープが可能である。チタンドープ石英ガラスでできた材料ブランク34は、バッチ毎に例えばチタン含有量、OH含有量、ゼロクロス温度等が異なり得る。さらに、同じ材料ブランク34内の異なる場所で対応する変化、したがってこの点での指定値からの無視できない偏差もあり得る。例として、指定値は、材料ブランク34の全体積又は体積の一部での平均化により生成される各材料パラメータの平均値であり得る。例として、指定値からの偏差が最小値を超える不良ゾーン33を、材料ブランク34に形成してもよい。
【0135】
バッチばらつきの悪影響を制限するために、ミラー26の下側部品27及び上側部品28は、同じ材料ブランク34から分離され得る。材料ブランク34からのミラー26の製造時に不良ゾーン33を考慮することにより、不良ゾーン33の悪影響を制限することができる。
【0136】
例えば材料ブランク34の製造方法及び幾何学的形状に応じて、材料ブランク34からの下側部品27及び上側部品28の分離と、下側部品27及び上側部品28からのミラー26の組立てとに関して、複数の手順が生じ、これらについて以下で詳細に説明する。
【0137】
図4に示す材料ブランク34を、直接堆積法で製造した。その質量に関して、材料ブランク34は600ppmを超えるOH含有量を有する。指定値からのチタン及びOHの濃度の局所的な偏差により生じる不良ゾーン33は、図3に関して既に記載したように相互に平行に延びる複数の帯からなる3次元帯パターンとして形成することができ、対応する指定値からの熱膨張係数及びゼロクロス温度の勾配の対応する偏差を伴う。図3と同様に、図4の帯の長手方向の広がりは、図の平面に対して略垂直に延びるので、図4は、帯状の不良ゾーン33の長手方向の広がりを横切って延びるその断面を示す。図3のように、帯状の不良ゾーン33は、図4の垂直線に対しても傾いており、したがって材料ブランク34の外面に対して平行にも垂直にも延びない。
【0138】
こうして具現された材料ブランク34の場合、1つの可能な手順は、下側部品27の接続面29と上側部品28の接続面30とを相互に対向させて、下側部品27及び上側部品28を両者間の距離を最小限にして材料ブランク34から分離することからなる。この点で可能な分離面35を図4に示す。分離面35は、平面形態を有し、図示の切断面の領域に直線状に延びる。これにより、比較的単純な設計の分離用工具を用いることができる。
【0139】
分離後に、下側部品27及び上側部品28は、例えばフライス削り、研削、及び研磨により所望の形状にされる。そのため、下側部品27及び上側部品28の切出し時に、分離手順用の材料追加量に加えて、後続の加工用の付加的な材料追加量をそれぞれ設けるべきである。したがって、下側部品27の製造のためには、分離手順用の相応の材料追加量及び下側部品27の加工用の材料追加量を材料追加量として接続面29の領域に設けるべきである。上側部品28の製造のためには、分離手順用の相応の材料追加量及び上側部品28の加工用の材料追加量を材料追加量として接続面30の領域に設けるべきである。したがって、下側部品27及び上側部品28を製造する材料ブランク34の体積領域間の最小限の距離は、下側部品27の製造用の材料追加量と上側部品28の製造用の材料追加量との和、又は換言すれば下側部品27及び上側部品28の分離用の材料追加量と、下側部品27のその後の加工用の材料追加量と、上側部品28のその後の加工用の材料追加量との和に対応する。
【0140】
下側部品27の接続面29は、特に、後で上側部品28に形成される光学面31の所期の形態に略対応する形態にされ得る。
【0141】
最小限の距離での切出しにより、下側部品27の接続面29の領域及び上側部品28の接続面30の領域の不良ゾーン33が酷似した形態を有するようになる。さらに、下側部品27及び上側部品28の加工に伴う材料アブレーションと関連した垂直線に対する不良ゾーン33の傾きにより起こる、下側部品27の接続面29と上側部品28の接続面30との間の不良ゾーン33の横方向オフセットは、比較的小さい。結果として、ミラー26において不良ゾーン33が下側部品27から上側部品28に事実上不変に続くように、下側部品27の接続面29及び上側部品28の接続面30の領域で下側部品27及び上側部品28を相互に接続することが可能である。
【0142】
これを達成するために、下側部品27及び上側部品28は、実質的に正確な位置姿勢で、すなわち材料ブランク34と略同じ相対位置及び向きで相互に接続される。例として、接続は熱接着により行うことができる。この場合、接続面29、30をブランク状態で直接相互接続することができるか、又は接続面29、30に添加材を塗布することができる。しかしながら、接続面29、30上に恒久的に残る添加剤は、熱膨張係数が異なる場合があるので、可能であれば回避される。場合によっては、下側部品27及び上側部品28は、接着前にオプティカルコンタクト接合により相互接続することができる。
【0143】
平面の分離面35に沿った分離及びその後の材料アブレーション面加工を可能にするために、下側部品27及び上側部品28が完成したミラー26では相互に接触し、材料ブランク34では相互に慣れて配置されることから、材料ブランク34における相対位置に関する若干のずれが生じる。前述のように、この位置ずれは、図4に示す不良ゾーン33の傾きと共に、下側部品27から上側部品28への移行時の不良ゾーン33の若干の横方向オフセットにつながる。
【0144】
材料ブランク34内で下側部品27及び上側部品28が相互に対してとる相対的な向きは、下側部品27及び上側部品28の接続時に非常に正確に維持することができる。例として、これは、補助フレームの使用又は材料ブランク34への1つ又は複数のマーキングの形成により確保することができる。マーキングは、下側部品27の製造用に材料ブランク34から分離される領域内及び/又は上側部品28の製造用に材料ブランク34から分離される領域内に形成することができる。例として、マーキングは、穿孔、切欠き、又は溝として形成することができる。
【0145】
マーキングを用いて、接続中に下側部品27及び上側部品28を相互に対して高精度で位置決めすることもでき、すなわち角度座標だけでなく空間座標も維持することができる。しかしながら、材料ブランク34における相対的な位置決めの再現に関しては、一方では下側部品27及び上側部品28が接触面29、30の領域で接触して間隔を空けずに相互接続される結果として、他方では材料がその加工中に接触面29、30の領域でアブレーションされる、つまり材料ブランク34において接続面29、30間に間隔がなければならない結果として、制限が生じる。以下でより詳細に説明する本発明による方法の構成を用いて、材料損失を、したがって材料ブランク34で必要な間隔及びこれに伴う制限を減らすことが可能である。
【0146】
図4の図示から逸脱するが、材料ブランク34は、下側部品27及び上側部品28の製造に必要であるよりも実質的に大きく形成することもできる。特に、材料ブランク34は、非常に大きくすることができるので、複数の下側部品27及び/又は複数の上側部品28をそこから製造することができる。その場合、それに応じて個々の下側部品27及び/又は上側部品28を切り出すためにより多くの分離面35が必要である。1つの下側部品27及び1つの上側部品28のみの製造に用いられる材料ブランク34の場合でも、特に材料ブランク34が下側部品27及び上側部品28の製造に必要であるよりも大幅に大きければ、過剰な材料を分離するためにさらなる分離面35を設けることが可能である。
【0147】
図5は、本発明による方法のさらに別の構成に従ったミラー26の製造用の材料ブランク34の概略断面図を示す。図4と同様に、図5に示す構成の場合、下側部品27及び上側部品28は、分離面35に沿って材料ブランク34から分離され、続いて複数の加工ステップにより所望の形状にされる。図4に関する残りの説明は、図5にも同様に当てはまる。しかしながら、材料ブランク34からの下側部品27及び上側部品28の切出し時の手順と、分離面35の形成とに関して相違点がある。
【0148】
図5において、分離面35は、下側部品27の接続面29と上側部品28の接続面30との間の領域で平面状ではなく曲面状の形態を有する。
【0149】
特に、分離面35は、この領域で球面形態を有し得る。分離面35の曲率は、下側部品27及び上側部品28の接続面29、30の曲率に略対応する。このようにして、材料ブランク34における下側部品27と上側部品28との間の距離が図4の構成の場合よりも小さい場合でも、下側部品27の接続面29及び上側部品28の接続面30の両方の加工に必要な材料追加量を得ることができる。換言すれば、下側部品27及び上側部品28を湾曲状の分離面35に沿って材料ブランク34から分離することにより、接続面29、30間の材料損失を減らし、したがって材料ブランク34における下側部品27と上側部品28との間の必要距離を減らすことが可能である。したがって、材料ブランク34における状況と比べて、下側部品27及び上側部品28の接続時の位置ずれも低減される。これにより、完成したミラー26において、下側部品27から上側部品28に不良ゾーン33が連続する際の変化が、図4に示す構成よりもはるかに小さくなる。不良ゾーン33が傾いた配置である場合、これによりさらに、図4に示す構成よりも下側部品27から上側部品28への移行時の不良ゾーン33の横方向オフセットが小さくなる。
【0150】
湾曲状の分離面35に沿った材料ブランク34からの下側部品27及び上側部品28の分離は、分離ボール研削とも称するプロセスを用いて実施することができる。このプロセス中に、湾曲した回転面として具現された回転研削工具を、図5の鉛直な軸周りに回転する材料ブランク34に徐々に食い込ませて最終的に切断する。このようにして材料ブランク34から分離された下側部品27及び上側部品28は、回転研削工具での加工の領域でそれぞれ曲面を有する。分離ボール研削は、独国特許出願公開第102 333 777号に詳細に記載されている。
【0151】
本発明による方法の2つの上記構成は、できる限り近くにある体積領域での材料ブランク34からの下側部品27及び上側部品28の分離に主に基づく。さらに別の可能な手順は、同様の条件下にあり、特に不良ゾーン33の空間分布が同様である材料ブランク34の領域から、下側部品27及び上側部品28を分離することからなる。これを図6に基づいて以下でより詳細に説明する。
【0152】
図6は、本発明による方法のさらに別の構成に従ったミラー26の製造用の材料ブランク34の概略断面図を示す。図4と同様に、図6に示す構成の場合、下側部品27及び上側部品28は、破線を用いて示す分離面35に沿って材料ブランク34から分離され、続いて複数の加工ステップにより所望の形状にされる。図4に関する残りの説明は、図6にも同様に当てはまる。しかしながら、材料ブランク34からの下側部品27及び上側部品28の切出し時の手順と、その後の上側部品28の加工とに関して相違点がある。
【0153】
図6の構成では、上側部品28の輪郭が下側部品27の輪郭に対して横方向にオフセットする結果として、上側部品28の接続面30は下側部品27の接続面29と垂直同一平面内にない。これを説明するために、垂直補助線を図6に(点線を用いて)示す。さらに、横方向オフセットの方向を矢印で示す。下側部品27に対する上側部品28の横方向オフセットの絶対値は、不良ゾーン33の傾きにより生じる下側部品27の接続面29と上側部品28の接続面30との間の不良ゾーン33の横方向オフセットの絶対値に略対応する。
【0154】
これにより、加工に必要な材料追加量にもかかわらず、不良ゾーン33の横方向オフセットなしで又は小さな横方向オフセットのみで、上側部品28を下側部品27に接続することが可能となる。この目的で、下側部品27及び上側部品28は、図6に示す分離面35に沿って材料ブランク34から分離される。続いて、下側部品27及び上側部品28が接続面29、30に関して同一平面内にあるように接続された場合に、接続面29、30の領域で下側部品27と上側部品28との間に不良ゾーン33のオフセットが全く又は僅かにしかないように、上側部品28の側面、すなわち図6の図示で上側部品28の左右の境界を定める面がフライス削り且つ/又は研削される。この目的で、上側部品28の外側輪郭に対する不良ゾーン33の横方向変位を得るために、上側部品28の側面の異なる箇所で異なる大きさの材料アブレーションが行われる。不良ゾーン33の傾きは概して一軸の形態なので、不良ゾーン33の最適な横方向変位は、この傾きの角度と、材料ブランク34における接続面29と接続面30との間の距離に対応する接続面29、30上の材料アブレーション量の和とから決定することができる。分離面35に沿った材料ブランク34からの下側部品27及び上側部品28の分離時に顕著な材料損失がある場合、横方向変位の決定時の精度を僅かでも高めるために、この材料損失を接続面29上の材料アブレーション量及び接続面30上の材料アブレーション量にそれぞれ比例的に加算することができる。
【0155】
代替として、接続面29、30の領域の不良ゾーン33の横方向分布を求めて、自己相関により最適な横方向変位を求める可能性もある。
【0156】
同様に、材料ブランク34における不良ゾーン33の空間的形成を用いて、所与の動作条件下の投影露光装置1の動作中の像収差が最小となる横方向変位の絶対値及び方向をシミュレートすることができ、上側部品28をそれに従って加工することができる。しかしながら、このようにして決定された変位により、接続面29、30間の不良ゾーン33の横方向オフセットが最小になるとは限らない。シミュレーションにおいて、図6の図示で鉛直な軸周りの下側部品27に対する上側部品28の捩れを、さらなる変数として付加的に用いることができる。場合によっては、適当な横方向変位の決定時に、像収差だけでなく、接続面29、30の領域の不良ゾーン33の横方向オフセットから生じる局部応力を含める可能性もあるが、それは局部応力が下側部品27と上側部品28との間の接続の耐久性に悪影響を及ぼし得るからである。
【0157】
上側部品28の側面の加工後に、下側部品27及び上側部品28のさらなる加工及び下側部品27と上側部品28との接続を、既に上述した本発明による方法の構成と同様に実施することができる。
【0158】
不良ゾーン33の横方向オフセットは、下側部品27及び上側部品28が分離ボール研削により材料ブランク34から分離される図5に示す構成で、上側部品28の側面のフライス削り又は研削により少なくとも部分的に補償することもできる。
【0159】
これまで記載した不良ゾーン33の追加として又は代替として、材料ブランク34は、材料ブランク34からの下側部品27及び上側部品28の分離時に考慮する必要があるさらなる不良ゾーン33を有する場合がある。これを図7に基づいて説明する。
【0160】
図7は、本発明による方法のさらに別の構成に従ったミラー26の製造用の材料ブランク34の概略断面図を示す。材料ブランク34は、図4に示す構成と同様に直接堆積法で製造した。製造プロセス中の材料の積層堆積の結果として、図7で鉛直に延びる方向にチタン含有量及びOH含有量の周期的変動があり得る。結果として、約2層/mm~30層/mmの層状の不良ゾーン33が生じる。これらの不良ゾーン33は、図4に示す不良ゾーン33に加えて生じ得る。以下の説明は、層状の不良ゾーン33に焦点を当てる。
【0161】
明確化のために、いくつかの不良ゾーン33のみを図7に示す。不良ゾーン33が平坦に形成されるのではなく湾曲層として形成されることが、図7から明らかである。下側部品27及び上側部品28が水平面と平行に材料ブランク34から分離される場合、多くの不良ゾーン33が、光学面31が形成される上側部品28の領域と交わることになる。第1に、この領域は研削及び研磨により加工され、第2に、不良ゾーン33は僅かに異なる材料組成、したがって異なる硬度も有するので、アブレーション速度が硬度に応じて変わる結果として、層パターンに対応する凹凸分布がこの領域で形成されてしまう。
【0162】
これを回避するために、下側部品27及び上側部品28は、材料ブランク34のうち不良ゾーン33の形成に適合した向きを有する体積領域から製造することができ、すなわち、図7に示す下側部品27及び上側部品28の輪郭は、材料ブランク34の外面又は軸に対して傾けられる。したがって、材料ブランク34からの下側部品27及び上側部品28の分離は、同様に傾いた分離面35に沿って実施することもできる。図7に示すように、これは例えば、分離面35を不良ゾーン33の局所プロファイルに応じて水平線に対して傾けて、分離面35が不良ゾーン33と略平行に延びるようにすることにより達成することができる。代替として、不良ゾーン33のプロファイルは、下側部品27と上側部品28との間に楔状の切断ギャップを有することにより、材料ブランク34からの上側部品28の分離時にのみ考慮することもできる。図7の図示では、これは、上側部品28の向きは変わらないが下側部品27は水平な向きとなることを意味する。いずれの場合も、上側部品28は、光学面31がその後形成される上側部品28の面が不良ゾーン33と略平行に延びるようにさらに加工され、この面と交わる不良ゾーン33ができる限り少なくなるようにする。特に、光学面33が形成される上側部品28の面は、10個以下、好ましくは5個以下、特に好ましくは2個以下の不良ゾーン33を有し得る。それ以外は、下側部品27及び上側部品28の加工は、既に上述したものと同様に実施することができる。
【0163】
下側部品27及び上側部品28は、直接堆積ではなく別の方法で製造された材料ブランク34から分離することもできる。例として、材料ブランク34は、円柱状に形成されたロッドをバーナのアレイの上方で回転させ、気相からの材料を円柱に連続的に堆積させるスート法で製造することができる。個々のバーナの領域における材料の堆積速度が僅かに異なる結果として、不良ゾーン33が形成され得る。不良ゾーン33は、それぞれが円柱の断面全体に及び、円柱軸に対して垂直に延び、複数の不良ゾーン33が円柱軸に沿って連続し得る。このようにして製造された円柱は、軟化するまで加熱された円柱を金型に流し込むことにより、材料ブランク34に再整形することができる。このようにして製造された2つの材料ブランク34を図8に示す。
【0164】
図8は、本発明による方法のさらに別の構成に従ったミラー26の製造用の2つの材料ブランク34の概略断面図を示す。質量に関して、材料ブランク34のOH含有量は最大400ppmである。材料ブランク34は、それぞれスート法により製造して金型に流し込むことにより再整形した。再整形プロセスの結果として、円柱軸に対して垂直な向きの平面状の不良ゾーン33から湾曲した不良ゾーン33ができ、材料ブランク34がそれぞれ複数の連続的な湾曲した不良ゾーン33を有するようになる。
【0165】
例として、下側部品27及び上側部品28を、図8の左側に示す材料ブランク34から同じ分離面35に沿って切り出した場合、下側部品27及び上側部品28を加工後に組み立ててミラー26を形成すると、下側部品27及び上側部品28のこの後続の加工による材料損失に起因したギャップが湾曲した不良ゾーン33に生じることになる。このようなギャップは、様々な措置により回避又は少なくとも低減することができる。
【0166】
1つの措置は、不良ゾーン33の空間分布に関して酷似した実施形態を有する異なる材料ブランク34から、下側部品27及び上側部品28を分離することからなる。特に、同じ製造装置を用いて材料ブランク34を製造し、同じプロセスパラメータを用いて材料ブランク34を時間的に間断なく製造することにより、類似した形態の不良ゾーン33を達成することができる。図8に示す2つの材料ブランク34は、このようにして製造された同様の実施形態の材料ブランク34である。したがって、2つの材料ブランク34は、不良ゾーン33が酷似して又は同一に形成され、図8の左側に示す材料ブランク34は、下側部品27の製造に用いられ、図8の右側に示す材料ブランク34は、上側部品28の製造に用いられる。具体的には、以下の手順が採用される。
【0167】
下側部品27は、図8の左側に示す材料ブランク34から分離面35に沿って分離される。続いて、下側部品27は、図8の左側に示す輪郭を有するまで既に上述したように加工される。
【0168】
図8の右側に示す材料ブランク34では、下側部品27の輪郭は、不良ゾーン33に対する相対的配置に関して、図8の左側に示す材料ブランク34における下側部品27の輪郭の位置に相当する位置に点線を用いて示されている。右側に示す材料ブランク34の場合に示される下側部品27の輪郭の向きも、左側に示す材料ブランク34の場合の下側部品27の輪郭の向きに対応する。上側部品28の輪郭も同様に、右側に示す材料ブランク34に示されており、下側部品27の接続面29と上側部品28の接続面30とが相互に直接隣接するように下側部品27の輪郭に直接隣接する。しかしながら、下側部品27は、右側に示す材料ブランク34から分離されていない。その代わりに、上側部品28のみが右側に示す材料ブランク34から分離され、分離面35は左側に示す材料ブランク34と比べて下側部品27の方にオフセットしている。下側部品27を切り出すための分離面35と上側部品28を切り出すための分離面35との間のオフセットは、接続面29、30の領域における下側部品27及び上側部品28の材料追加量の和に対応する。下側部品27のように、上側部品28も、既に上述したような分離後に加工される。
【0169】
続いて、下側部品27及び上側部品28を組み立ててミラー26が形成される。ミラー26は、接続面29、30の領域で不良ゾーン33にギャップが全く又は僅かにしかない。これは、2つの同様の材料ブランク34からの下側部品27及び上側部品28のオフセット分離により、分離及び加工中に生じる材料損失をなくすことができることに基づき、これにより最終的に、下側部品27及び上側部品28が同じ材料ブランク34の直接隣接する体積領域から材料損失なく製造されたのと同じ結果が得られる。換言すれば、図8に下側部品27の輪郭で示す下側部品27の体積領域を、不良ゾーン33に対するその位置姿勢を維持したまま左側に示す材料ブランク34から右側に示す同様の実施形態の材料ブランク34に転写した場合、この体積領域は、上側部品28の輪郭で示す上側部品28の体積領域に直接隣接する。その結果として、完全に加工された下側部品27の接続面29及び完全に加工された上側部品28の接続面30は、不良ゾーン33の空間分布に対して同一に配置される。したがって、不良ゾーン33は、完成したミラー26において下側部品27から上側部品28への移行部で継目なく続き、不良ゾーン33が基づく材料パラメータに関して下側部品27の接続面29と上側部品28の接続面30との間に急変がない。
【0170】
したがって、下側部品27と上側部品28との接合時に生じる不良ゾーン33におけるギャップのサイズは、下側部品27を製造した図8の左側に示す材料ブランク34の体積領域と、上側部品28を製造した図8の右側に示す材料ブランク34の体積領域とに応じて変わる。
【0171】
材料ブランク34が十分に大きな空間的寸法を有していれば、図8に基づいて記載した手順は単一の材料ブランク34の場合にも適用することができる。
【0172】
さらに別の措置は、下側部品27及び上側部品28の切出し及び加工時の材料損失を、比較的小さなギャップが生じる程度まで低減することからなる。この目的で、下側部品27及び上側部品28は、例えば既に述べた分離ボール研削により、湾曲状の分離面35に沿って材料ブランク34から分離することができる。材料損失をできる限り小さく抑えるために、分離面35の曲率を接続面29、30の曲率に適合させることができる。
【0173】
湾曲状の分離面35に沿った分離は、平面状の分離面35に沿った分離に対する改善を伴うが、ミラー26を形成するための下側部品27及び上側部品28の組立て時に、接続面29、30の領域で、材料ブランク34に存在しなかった不良ゾーン33におけるギャップが生じる。
【0174】
さらに別の措置として、材料ブランク34を特性評価し、顕著な不良ゾーン33がない材料ブランク34の領域に下側部品27及び上側部品28を切り出すための分離面35をそれぞれ配置することも可能である。この措置は、材料ブランク34が十分なサイズを有していれば単一の材料ブランク34の場合にも適用可能である。さらに、この手順は、異なる形態の不良ゾーン33及び/又は異なる製法の材料ブランク34で用いることもできる。特に、1つ又は複数の材料ブランク34のうち下側部品27及び上側部品28の体積領域は、下側部品27の第1接続面29の場所及び上側部品28の第2接続面の場所それぞれにおける不良ゾーン33の出現が限界値未満であるように選択され得る。特に、接続面29又は接続面30における不良ゾーンの面積の割合が閾値未満であれば常に、不良ゾーンの出現は限界値未満である。閾値は、1つ又は複数の材料ブランク34における下側部品27及び上側部品28の体積領域の配置を変えた場合の、接続面29又は接続面30における不良ゾーン33の面積の割合の最大値及び最小値の算術平均として定義され得る。この場合、下側部品27及び上側部品28の面積の割合に対して各最小値及び最大値を別個に求め、それに従って接続面29及び接続面30の各閾値を設定することも可能である。さらに、不良ゾーン33の面積の割合の最小値と閾値との間の間隔の例えば30%以上、特に60%以上、閾値を下回ることを要求することが可能である。
【0175】
さらに別の措置として各材料ブランク34を均質化するよう試みることができる。この点での選択肢及び手順は、材料及び製造プロセスに応じて変わる。
【0176】
本発明による方法の記載した構成の全てにおいて、材料ブランク34の不良ゾーン33のプロファイルを維持する代わりに、下側部品27及び上側部品28の接続時に不良ゾーン33の元のプロファイルから意図的に逸脱することも可能である。例として、接続中の下側部品27及び上側部品28の相互に対する位置及び向きは、下側部品27から上側部品28への移行部で不良ゾーン33の横方向オフセットができる限り大きくなるようなものにすることができる。結果として、下側部品27の接続面29及び上側部品28の接続面30の領域の不良ゾーン33は、ある意味で相互に逆位相で配置されることができ、不良ゾーン33に伴う材料組成又は材料特性のずれは、接続面29、30の領域で部分的に補償することができる。
【0177】
材料ブランク34から分離された上側部品28の使用の代わりに、溶融金属上への流し出し(フロートガラス)により、長いブレイクアウェイエッジにわたる流し込みにより、ガラススートの加圧焼結により、又は灰色体により間接的に、上側部品28を製造することも可能である。これらの方法を用いて、厚さ数ミリメートルの均質性が良好なスラブを製造することが可能である。
【符号の説明】
【0178】
1 投影露光装置
2 照明系
3 放射源
4 照明光学ユニット
5 物体視野
6 物体面
7 レチクル
8 レチクルホルダ
9 レチクル変位ドライブ
10 投影光学ユニット
11 像視野
12 像面
13 ウェハ
14 ウェハホルダ
15 ウェハ変位ドライブ
16 照明放射線
17 コレクタ
18 中間焦点面
19 偏向ミラー
20 第1ファセットミラー
21 第1ファセット
22 第2ファセットミラー
23 第2ファセット
24 冷却装置
25 制御装置
26 ミラー
27 下側部品
28 上側部品
29 接続面
30 接続面
31 光学面
32 冷却チャネル
33 不良ゾーン
34 材料ブランク
35 分離面
M ミラー
M1 ミラー
M2 ミラー
M3 ミラー
M4 ミラー
M5 ミラー
M6 ミラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】