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特表2024-507234機械に統合され、ねじインサートを適用するための自動システムを備えた、管及び外形部分のレーザー加工用の機械を操作する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-16
(54)【発明の名称】機械に統合され、ねじインサートを適用するための自動システムを備えた、管及び外形部分のレーザー加工用の機械を操作する方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/06 20060101AFI20240208BHJP
   B23K 26/382 20140101ALI20240208BHJP
【FI】
B23P19/06
B23K26/382
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550241
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-25
(86)【国際出願番号】 IB2022051404
(87)【国際公開番号】W WO2022175855
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】102021000003977
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508138955
【氏名又は名称】アディジェ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】リオルファッティ,リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】ブリガドゥエ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】カプラ,ジャンカルロ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD12
(57)【要約】
管及び外形部分のレーザー切断用の機械を操作するための方法であって、当該機械が、加工対象の管又は外形部分(T)の表面にレーザービームを合焦させるように構成された集束装置(18)を有する加工ヘッド(12)と、加工ヘッド(12)が搭載されるキャリッジ(28)と、レーザービームによって管又は外形部分(T)の壁(w)に形成された収容部(H)にねじインサート(I)を設置する自動インサート適用システム(30)とを備える。自動インサート適用システムは、機械に統合され、加工ヘッド(12)と連携して作動するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管又は外形部分のレーザー切断用の機械を操作するための方法であって、当該機械が、
加工対象の管又は外形部分(T)の表面上に合焦されたレーザービームを放射するように構成された集束装置(8)が設けられた加工ヘッド(12)と、
前記加工ヘッド(12)を搭載し、加工対象の前記管又は外形部分に対して、加工対象の前記管又は外形部分(T)の長手軸に直交する第1横方向(y)と、当該第1横方向(y)にも前記長手軸にも直交する第2横方向(z)との両方向に相対移動可能に取り付けられたキャリッジ(28)と、
前記機械に統合され、前記加工ヘッドと連携して作動するように構成され、前記レーザービームにより前記管又は外形部分(T)の壁(w)に形成された収容部(H)にねじインサート(I)を設置する自動インサート適用システム(30)と、
を備え、
前記自動インサート適用システム(30)は、前記ねじインサート(I)の把持及び設置のため、前記ねじインサート(I)のねじ穴(B)と係合するように構成されたねじ付き回転ピン(32)が設けられた固定器(31)を備え、
前記加工ヘッド(12)及び前記固定器(31)は、スライド(28)に取り付けられ、当該スライドは、前記第1横方向(y)及び前記第2横方向(z)の両方向において前記加工ヘッド(12)及び前記固定器(31)と一体に移動可能になっており、
前記自動インサート適用システム(30)は、インサート供給アセンブリ(35)と、前記インサート供給アセンブリからインサートを個別に受け取るように構成されたインサート取出し座(36)とを更に備え、前記インサート供給アセンブリ及び前記インサート取出し座は前記キャリッジ(28)に隣接して配置され、
前記自動インサート適用システム(30)は、前記インサート取出し座(36)における前記ねじインサート(I)の存在を検出するように構成された近接センサ(35e)を更に備え、
前記方法は、
a)前記加工ヘッド(12)で前記管又は外形部分(T)に収容部(H)を形成する工程と、
b)前記キャリッジ(28)を前記管又は外形部分(T)から前記インサート取出し座(36)に移動させる工程と、
c)前記固定器(31)で前記インサート取出し座(36)からねじインサート(I)を把持する工程と、
d)前記キャリッジ(28)を前記インサート取出し座(36)から前記管又は外形部分(T)に移動させる工程と、
e)前記固定器(31)で前記管又は外形部分の前記収容部(H)に前記ねじインサート(I)を設置する工程と、
f)前記加工ヘッド(12)で切断操作を実行する工程と、
を備え、
前記近接センサ(35e)は、前記インサート取出し座(36)からの前記ねじインサート(I)の取出しに起因してその状態を変更し、その結果として検出信号を供給するように構成され、前記工程c)は、
c1)前記固定器(31)で前記ねじインサート(I)を把持し、前記ねじインサート(I)を前記インサート取出し座(36)から持ち上げる工程と、
c2)前記検出信号に基づいて、ピッキング中に前記ねじインサート(I)が到達した検出ピッキング高さであって、前記近接センサ(35e)がその状態を変更させた検出ピッキング高さを決定する工程と、
c3)前記検出ピッキング高さを、前記ねじインサート(I)の幾何学的パラメータに応じて予想されるピッキング高さと比較する工程と、
c4)前記検出ピッキング高さが、前記予想されるピッキング高さと異なる場合に、前記ねじインサート(I)を前記インサート取出し座(36)内に再配置し、前記ねじインサート(I)を解放し、工程c)~c3)を繰り返す工程と、
c5)前記検出ピッキング高さが前記予想されるピッキング高さと依然異なる場合に、前記ねじインサート(I)を廃棄する工程と、
を備える、方法。
【請求項2】
前記自動インサート適用システム(30)は、前記キャリッジに搭載されるリニアアクチュエータ(30)を更に備え、前記固定器(31)が前記リニアアクチュエータに取り付けられ、前記リニアアクチュエータは、前記固定器(31)を前記第2横方向において静止位置と加工位置との間で前記キャリッジに対して移動させるように構成されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固定器(31)が、前記インサート取出し座(36)から前記ねじインサート(I)を把持可能となり、また、前記加工ヘッドによって実行される穴切断操作と、その次の切断操作との間で前記ねじインサート(I)を前記管又は外形部分(T)に設置可能となるように、前記キャリッジは、前記管又は外形部分(T)と前記インサート取出し座(36)との間で往復するように構成されている、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記近接センサ(35e)は、前記インサート供給アセンブリ(36)から供給される前記ねじインサート(I)が前記インサート取出し座(36)に受け取られたことに起因してその状態を変更し、その結果として検出信号を供給するように構成され、
前記工程c)は、前記インサート取出し座(36)での前記ねじインサート(I)の受け取りが失敗した場合において、前記インサート供給アセンブリ(35)による前記ねじインサート(I)の供給を繰り返すことを備える、
請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記工程e)は、
e1)前記管又は外形部分(T)の前記収容部(H)が係合されるまで、前記ねじインサート(I)付きの前記固定器(31)を下降させる工程と、
e2)前記固定器(31)が到達する検出加工高さを決定する工程と、
e3)前記検出加工高さを、前記管又は外形部分(T)の寸法に応じて予想される加工高さと比較する工程と、
e4)前記検出高さが前記予想される加工高さと異なる場合に、前記ねじインサート(I)を廃棄する工程と、
を備える、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記工程a)は、前記管又は外形部分(T)における前記収容部(H)の重心の指示位置と、適用されるべき前記ねじインサート(I)の幾何学的パラメータとを備える入力データに基づいて実行される、
請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管及び外形部分(profiled section)のレーザー切断用の機械に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の明細書及び特許請求の範囲において、用語「管(tube)」及び「外形部分(profiled section)」は、(機械加工公差を除いて)長手軸に沿って均一な断面を有する任意の長尺物を特定するために使用される。断面は、閉じているか(例えば、円形、長方形、又は正方形)開いているか(例えば、L状、C状、U状など)に関わらず、任意の形状である。更に、用語「長手(longitudinal)」及び「横(transverse)」は、管又は外形部分の長手軸の方向、及び長手方向に直交する方向をそれぞれ特定するために使用される。
【0003】
DE102016106067A1は、管又は外形部分のレーザー切断用の機械について記載しており、当該機械はねじ穴を形成するように構成されている。
【0004】
よく知られるとおり、管又は外形部分が比較的薄い壁を有する場合には、管又は外形部分の壁に直接ねじ穴を開ける代わりに、ねじインサートが管又は外形部分の壁に形成された収容部に適用されることがある。このねじインサートは、必要とされるねじ穴を有する。FR2313998A1は、インサート適用システムについて記載している。DE102004006407A1は、チップ除去穴を形成するための機械について記載しており、当該機械は、インサート適用システムを装備している。
【発明の概要】
【0005】
管及び外形部分をレーザー切断するための公知の機械においては、作業員がねじインサートを手動で挿入するために、又はオフライン機械でインサートを挿入するために、機械によって製造されたワークピースを取り出さなければならない。これにより、生産時間が比較的に長くなる。
【0006】
本発明は、ねじインサートを備える管及び外形部分の生産時間を短縮するための解決策を提供することを目的とする。
【0007】
この目的及び他の目的は、添付の独立請求項1において特定された特徴を有する、管及び外形部分のレーザー切断用の機械の操作のための方法により、本発明に従って完全に達成される。
【0008】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題であり、その内容は、以下の説明の統合的な部分として理解されるべきである。
【0009】
要約すると、本発明は、管及び外形部分のレーザー切断用の機械の操作のための方法を実現するという着想に基づく。前記機械は、
加工対象の管又は外形部分の表面で合焦されるレーザービームを放射するように構成された集束装置を備える加工ヘッドと、
加工ヘッドを搭載し、加工対象の管又は外形部分に対して、加工対象の管又は外形部分の長手軸に直交する第1横方向と、第1横方向にも長手軸にも直交する第2横方向との両方向に相対移動可能に取り付けられたキャリッジと、
機械に統合され、加工ヘッドと連携して作動するように構成され、レーザービームにより管又は外形部分の壁に形成された収容部にねじインサートを設置する自動インサート適用システムと、を備え、
自動インサート適用システムが、ねじインサートの把持及び設置のため、ねじインサートのねじ穴と係合するように構成されたねじ付き回転ピンが設けられたリベッタないし固定器(riveter)を備え、
加工ヘッド及び固定器は、第1横方向及び第2横方向の両方向においてキャリッジと一体に移動するようにしてキャリッジに搭載され、
自動インサート適用システムは、インサート供給アセンブリと、インサート供給アセンブリから個別にインサートを受け取るように構成されたインサート取出し座とを更に備え、インサート供給アセンブリ及びインサート取出し座はキャリッジに隣接して配置され、
自動インサート適用システムは、インサート取出し座におけるねじインサートの存在を検出するように構成された近接センサを更に備え、
前記方法は、
a)加工ヘッドで管又は外形部分に収容部を形成する工程と、
b)キャリッジを管又は外形部分からインサート取出し座に移動させる工程と、
c)固定器でインサート取出し座からねじインサートを把持する工程と、
d)キャリッジをインサート取出し座から管又は外形部分に移動させる工程と、
e)固定器で管又は外形部分の収容部にねじインサートを設置する工程と、
f)加工ヘッドで切断操作を実行する工程と、
を備え、近接センサは、インサート取出し座からのねじインサートの取出しに起因してその状態を変更し、その結果として検出信号を提供するように構成され、工程c)は、
c1)固定器でねじインサートを把持し、インサート取出し座からねじインサートを持ち上げる工程と、
c2)検出信号に基づいて、ピッキング中にねじインサートが到達した検出ピッキング高さであって、近接センサがその状態を変更させた検出ピッキング高さを決定する工程と、
c3)検出ピッキング高さを、ねじインサートの幾何学的パラメータに応じて予想されるピッキング高さと比較する工程と、
c4)検出ピッキング高さが予想されるピッキング高さと異なる場合に、インサート取出し座にねじインサートを配置し、ねじインサートを解放し、工程c1)~c3)を繰り返す工程と、
c5)検出ピッキング高さが予想されるピッキング高さと依然異なる場合に、ねじインサート(I)を廃棄する工程と、を備える。
【0010】
このような方法により、機械に完全に統合されたシステムが使用される。事前にレーザーで切断された管又は外形部分に、様々なサイズのねじインサートを挿入できる。このようにして、機械はもはや、インサート挿入のための再加工を必須とするレーザー切断片を生産するにとどまらず、すぐに使用可能な完成品としてのワークピースを生産できる。したがって、生産時間が明らかに短縮される。
【0011】
好ましくは、自動インサート適用システムは、キャリッジに搭載されるリニアアクチュエータを更に備え、固定器がリニアアクチュエータに取り付けられ、リニアアクチュエータは、固定器を第2横方向において静止位置と加工位置との間でキャリッジに対して移動させるように構成されている。
【0012】
好ましくは、キャリッジは、管又は外形部分とインサート取出し座との間で往復するように構成され、固定器は、インサート取出し座からねじインサートを把持することが可能となり、加工ヘッドによって実行される穴切断操作とその次の切断操作との間で管又は外形部分にねじインサートを設置することが可能となる。
【0013】
当該方法の実施形態によれば、近接センサが、インサート供給アセンブリによって供給されるねじインサートがねじ取出し座に受け取られたことに起因して状態を変更し、その結果として検出信号を供給するように構成され、工程c)は、ねじインサートがインサート取出し座に受け取られなかった場合において、インサート供給アセンブリからのねじインサートの供給を繰り返すことを備える。
【0014】
当該方法の更なる実施形態によれば、工程e)は、
e1)管又は外形部分の収容部が係合されるまで、ねじインサート付きの固定器を下降させる工程と、
e2)固定器が到達した検出加工高さを決定する工程と、
e3)検出加工高さを、管又は外形部分の寸法に応じて予想される加工高さと比較する工程と、
e4)検出加工高さが予想される加工高さと異なる場合に、ねじインサートを廃棄する工程と、を備える。
【0015】
当該方法の更なる実施形態によれば、工程a)は、管又は外形部分における収容部の重心の指示位置と、適用されるべきねじインサートの幾何学的パラメータとを備える入力データに基づいて実行される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照して単に非限定的な例として与えられた以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
図1】本発明の実施形態に係る、自動インサート適用システムが設けられた管又は外形部分のレーザー加工用の機械を部分的に示す斜視図である。
図2図1の機械を異なる操作段階ごとに示した正立面図である。
図3図1の機械を異なる操作段階ごとに示した正立面図である。
図4図1の機械を異なる操作段階ごとに示した正立面図である。
図5図1の機械を異なる操作段階ごとに示した正立面図である。
図6図1の機械を異なる操作段階ごとに示した正立面図である。
図7図1の機械を異なる操作段階ごとに示した正立面図である。
図8図1の機械を異なる操作段階ごとに示した正立面図である。
図9】ねじインサートを管又は外形部分に設置している間における、図1の機械の固定器を示す正立面図である。
図10】管又は外形部分に適用されたねじインサートを示す正立面図である。
図11図1の機械の自動インサート適用システムの一部を示す斜視図である。
図12図1の機械の自動インサート適用システムの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の主題である管及び外形部分のレーザー加工用の機械が、管の加工に適用される場合を例にとって説明及び図示されているが、当該機械は、外形部分の加工にも同等に利用可能であることが理解される。機械が加工できる管又は外形部分は、様々な形状及びサイズの断面を有し得る。
【0018】
図面を参照して、本発明の一実施形態に係る管のレーザー加工用の機械は、それ自体公知の方法で、ベース10と、管T(図2図8に示す)にレーザー切断処理を実行するように構成された加工ヘッド12と、長手方向x(管の長手軸の方向と一致し、且つ図2図8の図面用紙に直交する)に沿って管Tを前進させるように構成された供給装置(図示せず)と、供給装置により管が前進していくに伴って管Tを案内するように構成された案内装置(図示せず)と、管Tの断面の外形の少なくとも一部(例えば、上部)を走査するように構成された走査システム(図示せず)と、を備える。
【0019】
加工ヘッド12は、それ自体公知の方法で、管Tの表面に合焦されるレーザービームを放射するように構成された集束装置18を備える。加工ヘッド12は、ヘッド支持構造26によって支持される。ヘッド支持構造26及び加工ヘッド12は、キャリッジ28に搭載され、縦方向(方向Z)に移動可能となる。次に、キャリッジ28は、機械のベース10に対し、横方向(方向y)に移動可能なように取り付けられている。横方向yは、図示例においては水平方向であるが、水平に対して特定の角度で傾斜した方向であってもよい(なお、管の長手軸に直交する平面内にあることは明らかである)。したがって、加工ヘッド12は、鉛直方向移動の1自由度、及び横方向移動の1自由度との2自由度を持って、垂直横断面、すなわち管Tの長手軸xに垂直な面内で、移動可能である。更に、図示された例示的な実施形態で示されるとおり、加工ヘッド12は、横方向に向けられた振動軸周りに(又は、不図示の実施形態によれば、互いに直交する2つの振動軸周りに)振動可能なように、ヘッド支持構造26に搭載されていてもよい。
【0020】
好ましくは、機械供給装置は、長手軸xの方向に沿った管Tの並進運動(ワークピースの加工中における前進運動又は後進運動)のみならず、長手軸x周りの管Tの回転運動を駆動するように構成される。管用のレーザー加工機の場合には、加工ヘッド12の運動(鉛直方向zに沿った並進、横方向yに沿った並進、振動軸周りの回転、及び可能ならば長手軸xの方向に沿った並進)の自由度と、管Tの運動(長手軸xの方向に沿った並進、及び長手軸x周りの回転)の自由度との組み合わせにより、任意の切断線に沿って管Tの壁を切断することが可能になる。
【0021】
機械は、参照符号30でまとめて示す自動インサート適用システムを更に備える。このようなシステムは、ねじインサートI(図9及び図10に示す)を対応する穴又は収容部Hに設置するように構成されている。穴又は収容部は、レーザー加工によって管又は外形部分Tの壁wに事前に形成される。自動インサート適用システム30は、機械に統合され、加工ヘッド12と連携して作動するように構成されている。
【0022】
本発明に係る機械に適用可能なインサートは、例えば、ブッシング本体と、フランジ又は頭部Fとを備える標準的なインサートである。ブッシング本体の外表面Sは、多角形、特に六角形の断面を有し、フランジ又は頭部は、ブッシング本体の近位端に形成される。ブッシング本体には、近位セグメントB1及び遠位セグメントB2を備えるねじ穴Bが形成されており、近位セグメントB1は、より大きい径を有し、頭部Fに配置され、遠位セグメントB2は、より小さい径を有し、ねじ山が設けられている。本発明に係る機械に適用可能な標準的なインサートは、例えば、円筒形頭部付きの開放六角形インサートM4,M5,M6,M8、円筒形頭部付きの閉鎖六角形インサートM4,M5,M6,M8、縮径頭部付きの開放六角形インサートM4,M5,M6,M8、及び縮径頭部付きの閉鎖六角形インサートM4,M5,M6,M8である。図9及び図10は、円筒形頭部付き開放六角形インサートを示す。
【0023】
自動インサート適用システム30は、それ自体公知のタイプの固定器(riveter)31を備え、固定器には、ねじインサートIの把持及び設置のため、ねじインサートIのねじ穴Bに係合するように構成されたねじ付き回転ピン32が設けられている。この目的で、固定器31は、それ自体公知の方法で、ねじ付きピン32の回転を駆動するモータ又はアクチュエータ31aを備える。ねじ付きインサートIの配置は、頭部Fが管又は外形部分Tの壁wと接触するまで、固定器31でねじインサートIを収容部Hに強制的に挿入することによって行われる。次に、固定器31が僅かに引き抜かれ、遠位ねじセグメントB2と管又は外形部分Tの壁wとの間に設けられ、大径の穴セグメントB1の存在に起因して厚さが減少したインサートの一部が変形する。このようにして、管又は外形部分Tの壁wが、頭部Fと、ねじインサートの変形部分との間にクランプされる。最後に、しっかりと固定されたねじインサートIからねじ付きピン32を緩めることにより、固定器31が取り外される。
【0024】
固定器31は、支持構造33に取り付けられ、支持構造33は、キャリッジ28に取り付けられている。したがって、固定器31は、キャリッジ28と共に移動し、また、加工ヘッド12とも一緒に移動する。固定器31は、横方向y及び縦方向zの両方向において、加工ヘッド12と一体に移動可能である。有利には、固定器31の位置は、加工ヘッド12と同一の平面yz(管又は外形部分の軸xと直交する)上に正確に置かれてもよい。このようにして、加工ヘッド12で管又は外形部分Tに穴を形成した後に、固定器をy軸及びz軸のみに移動させるだけで、加工対象の管又は外形部分Tを移動させる必要なしに且つ/又は固定器31を別の制御軸で移動させる必要なしに、固定器31を移動させてインサートIを同じ穴に挿入することができる。
【0025】
リニアアクチュエータ34は、支持構造33と固定器31との間に介在し、z軸に平行な方向に沿って固定器31をキャリッジ28ひいては加工ヘッド12に対して移動させるように構成されている。特に、固定器31は、リニアアクチュエータ34の上端位置と対応する静止位置(図1及び図2に示す)と、リニアアクチュエータ34の下端位置と対応する下降位置(図7に示す)との間で、移動可能である。固定器31のストロークは、図2図8において矢印z2で示されている。
【0026】
自動インサート適用システム30は、ベース10と一体となった部分を備える。当該部分は、インサート供給アセンブリ35を備え、図示例において、インサート供給アセンブリは、振動カップ供給装置35aを備え、その出口はシュート35bに接続されている。シュート35bは、図11及び図12に示されるとおり、取出しキャリッジ35c用の単系統供給器としての役割を果たす。換言すれば、シュート35bは、ねじインサートTを取出しキャリッジ35cに一度に1つずつ供給する。インサート取出し座36が、取出しキャリッジ35cに形成され、取出しキャリッジ35cの後退位置ではシュート35bに対向する。図12において、インサート取出し座36がより見やすくなるように、シュート35bが省略されている。
【0027】
インサート取出し座36は、ねじインサートIを一度に1つのみ受け取るように構成され、受け取ったねじインサートがその中心軸周りに回転するのを阻止するように形成されている。
【0028】
取出しキャリッジ35cは、図11及び図12に示す後退位置から、図2図8に示す前進位置に移動可能である。取出しキャリッジ35cが前進位置にあるとき、後述する方法で、金属インサートIを固定器31で取り出すことができるようになる。後退位置から前進位置へと取出しキャリッジ35cが前進している間にねじインサートIがインサート取出し座36から脱落するのを防止するため、ガイド(図示せず)が設けられ、取出しキャリッジ35に沿って配置されている。上記の構成により、インサート取出し座36がインサートIを個別に受け取ることができ、固定器31でインサートを加工できるようになる。
【0029】
図1図8に示すように、インサート供給アセンブリ35及びインサート取出し座36は、キャリッジ28ひいては固定器31に隣接して配置されている。したがって、キャリッジ28は、管又は外形部分Tと、インサート取出し座36との間で往復するように構成され、固定器31は、インサート取出し座36からねじインサートIを把持可能となり、また、固定器31は、加工ヘッド12によって管又は外形部分Tに対して実行される穴切断操作とその次の切断操作との間に、管又は外形部分Tにねじインサートを設置可能となる。本発明の目的で、「穴切断操作hole cutting operation」は、管又は外形部分Tの壁wに穴又は収容部Hが形成される操作を意味し、「切断操作cutting operation」は、より一般的には、管又は外形部分Tに実行される任意のレーザー切断操作を意味し、前述の穴切断操作を含む。
【0030】
供給アセンブリ35上には、光電セルのようなプレゼンスセンサ35eも配置され、当該センサは、取出しキャリッジ35cが前進位置で発見されると、インサート取出し座36におけるねじインサートIの存在を検出するように構成されている。前進位置における取出しキャリッジ35と共にインサート取出し座36の位置が、図12において破線で示されている。
【0031】
図2図8を参照して、上述の機械を操作するための手順を説明する。
【0032】
図2は、管又は外形部分Tのレーザー切断による穴切断工程を示す。この工程では、収容部Hが、加工ヘッド12によって管又は外形部分Tに形成される。レーザー切断中、静止位置にある固定器31が邪魔にならず、機械が制限なく加工可能となる。
【0033】
図3は、インサートIを取り出すための準備工程を示す。この工程では、キャリッジ28は、管又は外形部分Tからインサート取出し座26に移動する。具体的には、キャリッジ28及び切断ヘッド12を移動させるy軸及びz軸を移動させることによって、固定器31が、インサートIの軸上に鉛直に位置付けられる。インサートIは、前進位置にあるキャリッジ35cと共にインサート取出し座36に配置されている。
【0034】
図4は、取出し位置にある固定器31の下降工程を示す。リニアアクチュエータ34で固定器31を中間位置まで下降させることにより、インサートIをピックアップする準備がなされる(使用されるリニアアクチュエータのタイプは、2つの端位置の途中で停止可能である必要がある)。
【0035】
図5は、インサート取出し工程を示す。固定器31のねじ付きピン32がインサートIのねじ穴Bと係合するように回転している間にキャリッジ8をZ軸で下降させることにより、インサートIが固定器31で把持される。
【0036】
図6は、インサート付きの固定器退出工程を示す。この工程では、キャリッジ28をZ軸で上昇させることにより、固定器31が、インサート取出し座36からインサートIを引き抜き、以前に形成された穴又は収容部Hへの適用工程の準備が整う。
【0037】
図7は、加工対象の管又は外形部分へのインサート適用工程を示す。キャリッジ28及び切断ヘッド12のy軸及びz軸を適用位置に移動させることにより、固定器31が、以前に形成された穴又は収容部HにインサートIを適用する。なお、固定器31は、その下端位置又は加工位置へ更に移動する。ねじインサートIの管又は外形部分Tの壁wへの固定を達成するため、固定器31は、図9及び図10を参照して上述した方法で作動する。
【0038】
最後に、切断位置への復帰工程が図8に示されている。リニアアクチュエータ34により固定器31を上昇させ、キャリッジ28のy軸及びz軸を適切に移動させることにより、加工ヘッド12によるレーザー切断工程に戻る。
【0039】
好ましくは、上述の機械の自動制御が、インサートのタイプと、インサート取出し座から適切なインサートの取出しとを検査するための手順を備える。この目的で、プレゼンスセンサ35eは、ねじインサートIのインサート取出し座36からの取出しに起因して状態を変更し、その結果として検出信号を提供するように構成されている。例えば、プレセンスセンサ35eは、インサートIでの反射によって作動する光電セルである場合に、インサートIがインサート取付け座36に存在するときには、プレゼンスセンサ35eは通電状態になり得る。インサートIがインサート取付け座36に存在しないときには、プレゼンスセンサ35eは、非通電状態となる。
【0040】
固定器31によって把持されたねじインサートIがインサート取付け座36から上昇すると、プレゼンスセンサ35eは、加工されているインサートのタイプに応じた正確な高さz(予想されるピッキング高さ)で非通電となることが想定される。したがって、予想されるピッキング高さと、プレゼンスセンサ35eの状態変化が検出されたときに固定器31が到達した高さ(検出ピッキング高さ)との比較により、機械の自動制御が行われる。検出ピッキング高さが予想される高さと一致するとき、その次に実行される工程は、管又は外形部分TにインサートIを適用するためにキャリッジ28及び固定器31を移動させる工程である。他方、検出ピッキング高さが予想されるピッキング高さと一致しない場合には、次のことを意味する。
-取り出されたインサートが、誤った型式である、又は
-インサートが、固定器31によって適切にねじ込まれていなかった。
【0041】
そこで、新たなピッキング試行が、同じインサートに対して行われる。
【0042】
この新たな試行も失敗した場合、再び機械のy軸及びz軸のみを使用して、固定器31が取出し位置の近くに位置付けられる。そこでは、廃棄されるべきインサートを把持して保持する小さな空圧クランプ(図示せず)が設けられており、固定器31はインサートから緩めることができる。次に、クランプが開き、切断屑(図示せず)用のシャフト内に落ち、固定器31は新たなピッキングのために再始動する。
【0043】
好ましくは、上述した機械の自動制御は、前進位置にある取出しキャリッジ35cと共にインサート取出し座36におけるインサートの存在を検査する手順を更に備える。実際、供給シュート35bとセレクタキャリッジ35cとの間の移行中に、インサートが下降せず、それによりセレクタキャリッジ35cが空で出てくることが起こり得る。この場合、プレゼンスセンサ35eは、セレクタキャリッジ35cが到着しても状態を変更せず(インサートが存在しないため)、2回目のピッキング試行を指令する。シュート35bからのインサートの下降を補助するため、シュートに沿って配置され、下降方向に送風する送風機(図示せず)が設けられていてもよい。
【0044】
好ましくは、上述の機械の自動制御が、管又は外形部分にインサートが正しく挿入されたことを検査する手順を更に備える。機械が、事前にレーザーで切断された収容部Hにインサートを導入すると、インサートIは図7に示す位置に配置されるはずである。
【0045】
この位置は、以下と対応する。
a)固定器31を下端位置に移動させるリニアアクチュエータ34。
b)加工される管又は外形部分の寸法の関数として知られる、正確な高さz。
【0046】
2つの条件のうち1つを満たさない場合、何か問題が発生し、挿入が正しく行われなかったことを意味する(固定器31が固定されているシリンダのキャリッジの位置は、リニアアクチュエータと平行に配置されたリニアトランスデューサを介して制御される)。挿入に失敗した場合には、インサートを廃棄するため、固定器は、空圧クランプで上述の位置に位置付けられる。
【0047】
好ましくは、上述の機械の自動制御は、レーザー切断によってねじインサート用の収容部を準備する手順を更に備える。
【0048】
レーザー切断システム上のねじインサートを管に適用する処理には、最初に、ねじインサートが適用されるべき管又は外形部分から材料を除去することが含まれる。
【0049】
当該領域は、ねじインサートの収容部として定義される。
【0050】
収容部を形成するための材料の除去は、レーザー加工によって実行される。
【0051】
当該加工は、予備レーザー形状(preparatory laser geometry)と呼ばれる。
【0052】
予備レーザー形状には、選択及びピッキング処理中にねじインサートが想定する方向と一致するように方向づけされた多角形状、特に六角形の切断が含まれる。この方向づけは、固定器31によって保たれ、ねじインサートを収容部に適切に挿入するために常に同じ向きとされる。
【0053】
予備レーザー形状をプログラミング及び実行する処理を備えた方法について説明する。
【0054】
CAD/CAMプログラミング(オフィス)
管に実行されるべき加工を計画するためのCAD/CAMプログラミング環境において、必ずしも予備レーザー形状を描画しなくてもよい。
【0055】
この環境においては、ねじインサートが適用されるべき箇所の重心(centroid)と対応する位置基準(プレースホルダー)を挿入しさえすればよい。
【0056】
機械におけるプログラミング
機械上では、CAD/CAMプログラミング中に挿入されたプレースホルダーに、特定のタイプのねじインサートを割り当てれば十分である。
【0057】
ねじインサートは、機械が収容部のサイズ及び形状を認識できる一連の幾何学的パラメータで記述される。
【0058】
ねじインサートの記述情報により、また、リベッタ31上のインサートの向きがわかっていることにより、機械は、プレースホルダーによって決定される位置基準を使用して、予備形状を自動的に実行する。必要に応じて、ユーザーは、寸法を予備的に調整することができ、特定のレーザー切断パラメータを適用することができる。
【0059】
当然ながら、本発明の原理を損なうことなく、実施形態及び構成の詳細は、単に非限定的な例として説明及び図示されたものに対し、以下に添付するクレームで特定される本発明の範囲から逸脱することなく、広く変更することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】