(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】全固体二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240209BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240209BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240209BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240209BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240209BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20240209BHJP
H01B 1/10 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01B1/06 A
H01B1/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023549092
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 KR2021019656
(87)【国際公開番号】W WO2022177124
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0020688
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユン・チェ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・キュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジン・フン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ギュ・チョ
(72)【発明者】
【氏名】サン・イル・ハン
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA05
5G301CA16
5G301CA19
5G301CD01
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ28
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ07
5H029HJ14
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050FA02
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】
正極層、負極層、正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を含む全固体二次電池であり、負極層と固体電解質層との間に2μm以下の厚さを有する混合層が含まれ、混合層は、負極層材料及び固体電解質層材料を含み、負極層と混合層との厚さ比は、2:1ないし50:1であり、混合層において負極層材料と固体電解質との混合体積比は、2:1ないし1:1である全固体二次電池またはその製造方法が提示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、負極層、前記正極層と負極層との間に配置された固体電解質層を含む全固体二次電池であり、
前記負極層と前記固体電解質層との間に2μm以下の厚さを有する混合層が含まれ、
前記混合層は、負極層材料及び固体電解質層材料を含み、
前記負極層と前記混合層との厚さ比は、2:1ないし50:1であり、
前記混合層において負極層材料と固体電解質との混合体積比は、2:1ないし1:1である、全固体二次電池。
【請求項2】
前記負極層の厚さは、1~100μmであり、混合層の厚さは、0.1~2μmである、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項3】
前記負極層材料は、第1負極活物質及びバインダを含み、前記固体電解質層材料は、固体電解質及びバインダを含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項4】
前記負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記負極集電体と前記負極活物質層及びそれらの間の領域は、前記全固体二次電池の初期状態または放電後状態でリチウム(Li)を含んでいないLiフリー(free)領域である、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項5】
前記全固体二次電池は、充電中または充電後の負極集電体と負極活物質との間にリチウム析出層を含む、請求項4に記載の全固体二次電池。
【請求項6】
前記負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記負極集電体と前記第1負極活物質層との間に金属薄膜または半金属薄膜がさらに含まれる、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項7】
前記金属薄膜または前記半金属薄膜は、金(Au)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、シリコン(Si)、錫(Sn)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、またはそれらの組合わせ物を含み、
前記金属薄膜または前記半金属薄膜の厚さは、1~800nmである、請求項6に記載の全固体二次電池。
【請求項8】
前記負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記負極集電体と前記第1負極活物質層の間に配置された金属層をさらに含み、前記金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項9】
前記負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記第1負極活物質層の上部、前記負極集電体と前記第1負極活物質層とのうち1つ以上に第2負極活物質層が配置され、前記第2負極活物質層は、リチウムまたはリチウム合金を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項10】
前記負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記第1負極活物質層と前記固体電解質層との間にカーボン層がさらに含まれる、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項11】
前記固体電解質層は、硫化物系固体電解質を含む、請求項1に記載の全固体二次電池。
【請求項12】
前記硫化物系固体電解質は、Li
2S-P
2S
5、Li
2S-P
2S
5-LiX(Xは、ハロゲン元素)、Li
2S-P
2S
5-Li
2O、Li
2S-P
2S
5-Li
2O-LiI、Li
2S-SiS
2、Li
2S-SiS
2-LiI、Li
2S-SiS
2-LiBr、Li
2S-SiS
2-LiCl、Li
2S-SiS
2-B
2S
3-LiI、Li
2S-SiS
2-P
2S
5-LiI、Li
2S-B
2S
3、Li
2S-P
2S
5-Z
mS
n(m、nは、正の数、Zは、Ge、ZnまたはGaのうち1つ)、Li
2S-GeS
2、Li
2S-SiS
2-Li
3PO
4、Li
2S-SiS
2-Li
pMO
q(p、qは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのうち1つ)、Li
7-xPS
6-xCl
x(0≦x≦2)、Li
7-xPS
6-xBr
x(0≦x≦2)、及びLi
7-xPS
6-xI
x(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上である、請求項11に記載の全固体二次電池。
【請求項13】
前記硫化物系固体電解質がLi
6PS
5Cl、Li
6PS
5Br及びLi
6PS
5Iのうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型の固体電解質である、請求項11に記載の全固体二次電池。
【請求項14】
負極集電体と第1負極活物質層とを含む負極層を提供する段階と、
正極層を提供する段階と、
前記負極層と前記正極層との間に固体電解質層を提供して積層体を設ける段階と、
前記積層体を加圧(press)する段階と、を含み、請求項1~13のうちいずれか1項に記載の全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法。
【請求項15】
前記固体電解質層は、固体電解質、バインダ及び溶媒を含む組成物を25~40℃で乾燥する、請求項14に記載の全固体二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体二次電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、産業上の要求によってエネルギー密度と安全性との高い電池の開発が活発になされている。例えば、リチウムイオン電池は、情報関連機器、通信機器分野だけではなく、自動車分野でも実用化されている。自動車分野においては、生命にかかわるので、特に安全が重要視されている。
【0003】
現在市販されているリチウムイオン電池は、可燃性有機溶媒を含み、電解液が用いられているので、短絡が発生した場合、過熱及び火災の可能性がある。これに対して、電解液の代わりに、固体電解質を用いた全固体電池が提案されている。
【0004】
全固体電池は、可燃性有機溶媒を使用しないことから、短絡が発生しても、火災や爆発の発生可能性を大きく減らしうる。したがって、そのような全固体電池は、電解液を使用するリチウムイオン電池に比べて、大きく安全性を高めることができる。
【0005】
全固体電池の負極層/電解質層の界面特性を向上させるために加圧する過程を経る。そのような加圧過程を経ると、負極層と電解質層との界面結着は優秀になるが、加圧力が不均一に印加される場合、負極層材料または固体電解質材料の損傷が発生しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面は、全固体二次電池を提供することである。
【0007】
本発明の他の側面は、前記全固体二次電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面によって、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を含む全固体二次電池であり、前記負極層と前記固体電解質層との間に2μm以下の厚さを有する混合層が含まれ、前記混合層は、負極層材料及び固体電解質層材料を含み、前記負極層と前記混合層との厚さ比は、2:1ないし50:1であり、前記混合層において負極層材料と固体電解質との混合体積比は、2:1ないし1:1である全固体二次電池が提供される。
【0009】
他の側面によって、負極集電体と第1負極活物質層とを含む負極層を提供する段階と、正極層を提供する段階と、前記負極層と前記正極層との間に固体電解質層を提供して積層体を設ける段階と、前記積層体を加圧(press)する段階と、を含み、上述した全固体二次電池を製造する全固体二次電池の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
一側面による全固体二次電池は、負極層と固体電解質層との間に混合層を形成すれば、負極層と固体電解質層との界面抵抗が減少して出力特性及び寿命特性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1の固体電解質に係わる電子走査顕微鏡写真である。
【
図2A】実施例1の固体電解質に対するSEM-EDS分析結果を示す図面である。
【
図2B】実施例1の固体電解質に対するSEM-EDS分析結果を示す図面である。
【
図3】一具現例による全固体二次電池の構造を概略的に示す図面である。
【
図4】他の一具現例による全固体二次電池の構造を概略的に示す図面である。
【
図5】さらに他の一具現例による全固体二次電池の構造を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一具現例による全固体二次電池及び製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0013】
正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された固体電解質層と、を含む全固体二次電池であり、前記負極層と前記固体電解質層との間に2μm以下の厚さを有する混合層が含まれ、前記混合層は、負極層材料及び固体電解質層材料を含み、前記負極層と前記混合層との厚さ比は、2:1ないし50:1であり、前記混合層において負極層材料と固体電解質との混合体積比は、2:1ないし1:1である全固体二次電池が提供される。
【0014】
全固体電池において負極層と固体電解質層との界面特性を向上させるために加圧する過程を経る。ところで、そのような加圧過程を経ると、負極層と電解質層との界面結着は優秀になるが、加圧時、圧力が不均一に印加されて負極層材料または固体電解質材料の破損または損傷が発生しうる。
【0015】
本発明では、上述した問題点を解決して負極層と固体電解質層との間に混合層を形成し、負極層と固体電解質層との接触面積が増加することにより、負極層と固体電解質層との界面抵抗が減少して出力特性が改善された全固体二次電池を製造することができる。
【0016】
混合層は、厚さが2μm以下の厚さを有し、負極層材料及び固体電解質層材料を含む。
【0017】
一具現例による負極層と混合層との厚さ比は、2:1ないし50:1、3:1ないし40:1、3.5:1ないし35:1、4:1ないし30:1、5:1ないし20:1、5:1ないし15:1、または5:1ないし10:1である。負極層と混合層の厚さは、それぞれ全固体二次電池の作製時、加圧過程を経た後、加圧された負極層と加圧された混合層の厚さを言い、SEM分析などを通じて測定したものである。負極層に対する混合層の厚さが前記範囲より薄ければ、負極層と固体電解質層との界面特性改善効果が微々たるものであり、前記範囲より厚ければ、混合層として消耗される負極層材料の含量が相対的に増加して負極の特性が一部低下する恐れがある。
【0018】
混合層の厚さは、0.1~2μm、0.15~1.9μm、0.2~1.8μm、0.3~1.7μm、0.4~1.6μmまたは0.5~1.5μmである。混合層の厚さは、全固体二次電池の作製時、加圧過程を経た後、混合層の厚さを言い、SEM分析などを通じて測定したものである。もし、混合層の厚さが2μmを超過すれば、混合層として消耗される負極量が増加して負極の特性が低下しうる。
【0019】
前記負極層の厚さは、1~100μmである。
【0020】
前記混合層において負極層材料と固体電解質層材料との混合体積比は、2:1ないし1:2、1.7:1ないし1:1.7、1.8:1ないし1:1.8、1.6:1ないし1:1.6、1.5:1ないし1:1.5、1.4:1ないし1:1.4、1.3:1ないし1:1.3、または1.2:1ないし1:1.2である。混合層において負極層材料と固体電解質材料との混合体積比が、前記範囲であるとき、負極層と固体電解質層との界面特性が改善される。
【0021】
本明細書において「負極層材料」は、負極層固形分として、例えば、負極活物質及びバインダを含み、「固体電解質層材料」は、固体電解質層固形分として、例えば、固体電解質及びバインダを含む。そして、負極層材料と固体電解質材料との混合体積比は、SEM-EDS分析を通じて負極層と固体電解質層との間に存在する混合層で負極層材料及び固体電解質層が占める体積を測定して計算したものである。
【0022】
混合層に対するSEM分析を通じて混合層は、表面に凹凸などが形成されて表面に不均一な界面を有する。そのような混合層が負極層と固体電解質層との間に介在されれば、負極層と固体電解質層との接触面積が増加し、それらの間の結着力が優秀になる。したがって、従来の全固体二次電池の作製時、加圧過程で起こる負極層と固体電解質層との一部損傷、破損などの問題点が予め予防されるだけではなく、界面特性が向上する。
【0023】
一具現例による全固体二次電池において負極層は、負極集電体と第1負極活物質層とを含み、前記負極集電体と前記負極活物質層及びそれらの間の領域は、前記全固体二次電池の初期状態または放電後状態でリチウム(Li)を含んでいないLiフリー(free)領域である。
【0024】
一具現例による全固体二次電池は、充電中または充電後の負極集電体と負極活物質との間にリチウム析出層を含む。
【0025】
図3を参照すれば、全固体二次電池1は、正極層10、負極層20、及び正極層10と負極層20との間に配置された固体電解質を含む固体電解質層13を含む。負極層20と固体電解質層13には、混合層40が存在する。
【0026】
第1負極活物質層の厚さは、1~20μm、例えば、1~10μm、例えば、2~8μm、例えば、4~6μmである。
【0027】
前記負極集電体と前記第1負極活物質層との間に金属または半金属薄膜がさらに含まれる。前記金属または半金属薄膜は、金(Au)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、シリコン(Si)、錫(Sn)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、またはそれらの組合わせ物を含み、前記金属または半金属薄膜の厚さは、1~800nm、例えば、10~30nmである。
【0028】
前記第1負極活物質層は、多孔性構造を有する。第1負極活物質層の気孔度は、30%以下、例えば、5~25%である。第1負極活物質層の気孔度が前記範囲であるとき、デンドライトが正極活物質層側まで成長することを効果的に抑制し、デンドライトによる短絡の発生を抑制し、高電圧、高容量及び寿命特性に優れた全固体二次電池を製造することができる。
【0029】
固体電解質層と負極集電体との界面で金属リチウムの析出点になって金属リチウムが析出されうる。析出されたリチウムは、固体電解質層の空隙を通じて正極活物質層側にデンドライトが成長して全固体二次電池に短絡が発生しうる。
【0030】
しかし、第1負極活物質層の気孔度が前記範囲であるとき、デンドライトが正極活物質層側まで成長することを効果的に抑制し、デンドライトによる短絡の発生を抑制し、高電圧、高容量及び寿命特性に優れた全固体二次電池を製造することができる。
【0031】
本明細書において気孔度は、水銀気孔率測定法または電子走査顕微鏡(SEM)などを通じて確認することができる。水銀気孔率測定器による測定方法は、水銀をサンプルに投入させながら、投入された水銀の量を測定して気孔サイズ及び気孔分布を計算するものである。
【0032】
一具現例による負極層は、第2負極活物質層をさらに含む。第2負極活物質層は、第1負極活物質層の上部、及び前記負極集電体と第1負極活物質層との間のうち1つ以上に配置されうる。第2負極活物質層は、リチウムと合金を形成する金属、半金属元素またはそれらの組合わせ物を含む。第2負極活物質層は、例えば、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層でもある。一具現例によれば、前記第2負極活物質層の表面は、フッ化リチウム(LiF)を含む。
【0033】
第2負極活物質層は、全固体二次電池の初期状態または放電後、リチウム金属またはリチウム合金を含んでいないリチウムフリー領域でもある。充電前に負極層は、負極集電体、金属または半金属膜及び第1負極活物質層を含む構造を有する。そのような負極層を充電した後、第1負極活物質層の上部に第2負極活物質層が形成されうる。第2負極活物質層は、非多孔性でもある。
【0034】
前記第1負極活物質層と前記固体電解質層との間にカーボン層がさらに含まれる。カーボン層は、例えば、カーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、炭素ナノチューブ、グラフェン、またはそれらの組み合わせを用いて形成する。このようにカーボン層を形成すれば、第1負極活物質層と固体電解質層との間の抵抗を低め、リチウムデンドライトを抑制しうる。したがって、カーボン層がさらに形成された負極層を備えた全固体二次電池は、カーボン層が形成されていない負極層を備えた全固体二次電池と比較して寿命特性がさらに改善されうる。
【0035】
以下、一具現例による全固体二次電池の製造方法を説明する。
【0036】
まず、負極集電体と第1負極活物質層とを含む負極層を提供する。
【0037】
それと別途に正極層を提供する。
【0038】
前記負極層と前記正極層との間に固体電解質層を提供して積層体を準備した後、前記積層体を加圧(press)する段階を含む。
【0039】
固体電解質層は、固体電解質、バインダ及び溶媒を含む組成物を25℃~80℃で乾燥して製造される。組成物の粘度は、200cP~10,000cP程度に制御する。そのような粘度を有する組成物を用いて固体電解質層を形成すれば、負極層との界面結着に優れた固体電解質層を製造することができる。
【0040】
一具現例によれば、乾燥は、25℃~75℃に制御された対流(convection)オーブンで実施することができる。
【0041】
他の一具現例によれば、乾燥は、多段階で実施し、例えば、2段階で実施することができる。乾燥は、25~70℃で1次乾燥を実施した後、30~75℃で2次乾燥を実施する。1次乾燥は、2次乾燥より高い温度で実施するとき、負極層と固体電解質層との界面特性が改善される。
【0042】
前記乾燥時間は、30分~24時間、1~20時間または2~15時間である。
【0043】
前記積層体加圧時に、加圧(roll press)、平板加圧(flat press)、ホットプレス(hot press)、静水圧(warm isostatic press: WIP)などによって実施され、例えば、静水圧を利用することができる。
【0044】
加圧は、常温(20-25℃)~90℃の温度で遂行される。あるいは、加圧が100℃以上の高温で遂行される。加圧が加えられる時間は、例えば、30分以下、20分以下、15分以下または10分以下である。加圧が加えられる時間は、1ms~30分、1msないし20分、1msないし15分または、1msないし10分である。加圧方法は、例えば、静水圧加圧(isotactic press)、ロール加圧(roll press)、平板加圧(flat press)などであるが、必ずしもそのような方法に限定されず、当該技術分野で使用する加圧であれば、いずれも使用可能である。そのような加圧によって、例えば、固体電解質粉末が焼結されて1つの固体電解質層を形成する。
【0045】
加圧時間は、温度及び圧力によって異なるが、例えば、30分未満、または20分未満である。
【0046】
加圧を実施した後、正極活物質層の厚さは、約100~150μmであり、負極活物質層の厚さは、10~15μmであり、固体電解質層の厚さは、100~150μmである。
【0047】
一具現例によれば、加圧は、WIPによって実施され、圧力は、200~600MPa、300~550MPa、350~520MPa、380~500MPa、または400~500MPaである。
【0048】
加圧時温度は、60℃~90℃、65℃~88℃、70℃~85℃、または75~85℃で実施される。そして、加圧時間は、加圧時の温度及び圧力によって異なり、10分~6時間、15分~5時間、20分~3時間、20分~2時間、または30分~1時間である。
【0049】
上述した全固体二次電池の製造方法は、量産可能であり、積層後、圧力を加えるとき、容易に前記電極層と前記固体電解質層との間に緊密な界面を形成することができる。また、前記全固体二次電池の作製方法は、正極層と固体電解質層との界面抵抗を減少させながら、同時に率特性及び寿命特性のような電池性能が向上しうる。
【0050】
全固体二次電池において負極層は、第1負極活物質、バインダ及び溶媒を含む組成物をコーティング及び乾燥して製造される。
【0051】
バインダとしては、水系バインダ、有機系バインダまたはそれらの組み合わせを使用することができる。バインダは、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリレーティドスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンまたはそれらの組み合わせを利用することができる。
【0052】
水系バインダとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)またはそれらの組み合わせを使用することができる。水系バインダを使用する場合には、溶媒として水を利用する。
【0053】
有機系バインダとしては、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)などを利用し、そのような有機系バインダを使用する場合には、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)などを使用する。
【0054】
以下、例示的な具現例による全固体二次電池についてさらに詳細に説明する。
【0055】
[全固体二次電池]
図3を参照すれば、全固体二次電池1は、正極層10、負極層20、及び正極層10と前記負極層20との間に配置された固体電解質層30を含み、前記負極層20と固体電解質層30との間には、一具現例による混合層40が2μm以下の厚さを有するように形成される。ここで、負極層20と混合層40との厚さ比は、2:1ないし50:1である。正極10が正極集電体11、及び正極集電体11上に配置された正極活物質層12を含み、負極層20が負極集電体21及び負極集電体上に配置され、一具現例による第1負極活物質層22を含む。
【0056】
[正極層:正極集電体]
正極集電体11は、例えば、インジウム(In)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、ゲルマニウム(Ge)、リチウム(Li)またはそれらの合金からなる板状体(plate)またはホイル(foil)などを使用する。正極集電体11は、省略可能である。
【0057】
[正極層:正極活物質]
正極活物質層12は、例えば、正極活物質及び固体電解質を含む。正極層10に含まれた固体電解質は、固体電解質層30に含まれる固体電解質と類似しているか、異なってもいる。固体電解質についての詳細な内容は、固体電解質層30の部分を参照する。
【0058】
正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵(absorb)及び放出(desorb)できる正極活物質である。正極活物質は、例えば、リチウムコバルト酸化物(LCO)、リチウムニッケル酸化物(Lithium nickel oxide)、リチウムニッケルコバルト酸化物(lithium nickel cobalt oxide)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(NCA)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(NCM)、リチウムマンガン酸化物(lithium manganate)、リチウムリン酸鉄酸化物(lithium iron phosphate)などのリチウム遷移金属酸化物、硫化ニッケル、硫化銅、硫化リチウム、酸化鉄、または酸化バナジウム(vanadium oxide)などであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野で正極活物質として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。正極活物質は、それぞれ単独、または2種以上の混合物である。
【0059】
リチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiaA1-bBbD2(前記式において、0.90≦a≦1、及び0≦b≦0.5である);LiaE1-bBbO2-cDc(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bBbO4-cDc(前記式において、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobBcDα(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobBcO2-αFα(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cCobBcO2-αF2(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbBcDα(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbBcO2-αFα(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbBcO2-αF2(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiaNibCocMndGeO2(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiaNiGbO2(前記式において、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiaCoGbO2(前記式において、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiaMnGbO2(前記式において、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiaMn2GbO4(前記式において、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiIO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);LiFePO4の化学式のうちいずれか1つで表現される化合物である。そのような化合物において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、Fは、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。そのような化合物表面にコーティング層が付け加えられた化合物の使用も可能であり、上述した化合物とコーティング層が付け加えられた化合物の混合物の使用も可能である。そのような化合物の表面に付け加えられるコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキサイド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシドカーボネートのコーティング元素化合物を含む。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはそれらの混合物である。コーティング層の形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内で選択される。コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野に従事する者においてよく理解されうる内容なので、詳細な説明は省略する。
【0060】
正極活物質は、例えば、上述したリチウム遷移金属酸化物のうち、層状岩塩型(layered rock salt type)構造を有する遷移金属酸化物のリチウム塩を含む。「層状岩塩型構造」は、例えば、立方晶岩塩型(cubic rock salt type)構造の<111>方向に酸素原子層と金属原子層とが交互に規則的に配され、これにより、それぞれの原子層が二次元平面を形成している構造である。「立方晶岩塩型構造」は、結晶構造の一種である塩化ナトリウム型(NaCl type)構造を示し、具体的には、陽イオン及び陰イオンのそれぞれが形成する面心立方格子(face centered cubic lattice、fcc)が互いに単位格子(unit lattice)のリッジ(ridge)の1/2だけずれて配置された構造を示す。そのような層状岩塩型構造を有するリチウム遷移金属酸化物は、例えば、LiNixCoyAlzO2(NCA)またはLiNixCoyMnzO2(NCM)(0<x<1、0<y<1、0<z<1、x+y+z=1)などの三元系リチウム遷移金属酸化物である。正極活物質が層状岩塩型構造を有する三元系リチウム遷移金属酸化物を含む場合、全固体二次電池1のエネルギー(energy)密度及び熱安定性がさらに向上する。
【0061】
正極活物質は、上述したように被覆層によって覆われてもいる。被覆層は、全固体二次電池の正極活物質の被覆層として公知されたものであれば、いかなるものでも使用可能である。被覆層は、例えば、Li2O-ZrO2(LZO)などである。
【0062】
正極活物質が、例えば、NCAまたはNCMなどの三元系リチウム遷移金属酸化物としてニッケル(Ni)を含む場合、全固体二次電池1の容量密度を上昇させ、充電状態で正極活物質の金属溶出の減少が可能である。結果として、全固体二次電池1の充電状態におけるサイクル(cycle)特性が向上する。
【0063】
正極活物質の形状は、例えば、真球、楕円球状などの粒子形状である。正極活物質の粒径は、特に制限されず、従来の全固体二次電池の正極活物質に適用可能な範囲である。正極10の正極活物質の含量も特に制限されず、従来の全固体二次電池の正極に適用可能な範囲である。
【0064】
[正極層:固体電解質]
正極活物質層12は、例えば、固体電解質を含む。正極層10が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質と同一であるか、異なってもいる。固体電解質についての詳細な内容は、固体電解質層30の部分を参照する。
【0065】
正極活物質層12が含む固体電解質は、固体電解質層30が含む固体電解質に比べてD50平均粒径が小さい。例えば、正極活物質層12が含む固体電解質のD50平均粒径は、固体電解質層30が含む固体電解質のD50平均粒径の90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、または、20%以下でもある。
【0066】
[正極層:バインダ]
正極活物質層12は、バインダを含む。バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などである。
【0067】
[正極層:導電材]
正極活物質層12は。導電材を含。導電材は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェン(Ketjen)ブラック、炭素繊維、金属粉末などである。
【0068】
[正極層:その他添加剤]
正極層10は、上述した正極活物質、固体電解質、バインダ、導電材以外に、例えば、フィラー(filler)、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などの添加剤をさらに含みうる。
【0069】
正極層10が含むフィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などとしては、一般的に全固体二次電池の電極に使用される公知の材料を使用することができる。
【0070】
[固体電解質層]
固体電解質は、硫化物系固体電解質でもある。
【0071】
[固体電解質層:硫化物系固体電解質]
図3ないし
図5を参照すれば、固体電解質層30は、正極10と負極層20との間に配置された硫化物系固体電解質を含む。
【0072】
硫化物系固体電解質は、例えば、Li2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiX(Xは、ハロゲン元素)、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn(m、nは、正の数、Zは、Ge、Zn、またはGaのうち1つ)、Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LipMOq(p、qは、正の数、Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのうち1つ)、Li7-xPS6-xClx(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBrx(0≦x≦2)及びLi7-xPS6-xIx(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上である。硫化物系固体電解質は、例えば、Li2S、P2S5などの出発原料を溶融急冷法や機械的ミーリング(mechanical milling)法などによって処理して作製される。また、そのような処理後、熱処理を遂行することができる。固体電解質は、非晶質であるか、結晶質であるか、それらが混合された状態でもある。また、固体電解質は、例えば、上述した硫化物系固体電解質材料のうち、少なくとも構成元素として硫黄(S)、リン(P)及びリチウム(Li)を含む。例えば、固体電解質は、Li2S-P2S5を含む材料でもある。固体電解質を形成する硫化物系固体電解質材料としてLi2S-P2S5を含むものを利用する場合、Li2SとP2S5の混合モル比は、例えば、Li2S:P2S5=50:50ないし90:10程度の範囲である。
【0073】
硫化物系固体電解質は、例えば、Li7-xPS6-xClx(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBrx(0≦x≦2)、及びLi7-xPS6-xIx(0≦x≦2)のうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型(Argyrodite-type)の化合物でもある。特に、硫化物系固体電解質は、Li6PS5Cl、Li6PS5Br及びLi6PS5I のうちから選択された1つ以上を含むアルジロダイト型の化合物でもある。
【0074】
アルジロダイト型の固体電解質の密度が1.5~2.0g/ccでもある。アルジロダイト型の固体電解質が1.5g/cc以上の密度を有することにより、全固体二次電池の内部抵抗が減少し、Liによる固体電解質の貫通(penetration)を効果的に抑制することができる。
【0075】
前記固体電解質の弾性係数は、例えば、15~35GPaである。
【0076】
[固体電解質層:バインダ]
固体電解質層30は、例えば、バインダを含む。固体電解質層30に含まれるバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンなどであるが、それらに限定されず、当該技術分野においてバインダとして使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。固体電解質層30のバインダは、正極活物質層12と負極活物質層22が含むバインダと同一であるか、異なってもいる。
【0077】
[負極層]
[負極層構造]
第1負極活物質層22の厚さは、例えば、正極活物質層厚さの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下である。第1負極活物質層の厚さは、例えば、1μm~20μm、2μm~10μm、または3μm~7μmである。第1負極活物質層の厚さが過度に薄ければ、第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層を崩壊させて全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。負極活物質層の厚さが過度に増加すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層による全固体二次電池1の内部抵抗が増加して全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0078】
第1負極活物質層の厚さが減少すれば、例えば、第1負極活物質層の充電容量も減少する。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下または2%以下である。第1負極活物質層22の充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、0.1%~50%、0.1%~40%、0.1%~30%、0.1%~20%、0.1%~10%、0.1%~5%、または0.1%~2%である。第1負極活物質層22の充電容量が過度に小さければ、第1負極活物質層22の厚さが非常に薄くなり、繰り返される充放電過程で第1負極活物質層22と負極集電体21との間に形成されるリチウムデンドライトが第1負極活物質層22を崩壊させて全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。第1負極活物質層22の充電容量が過度に増加すれば、全固体二次電池1のエネルギー密度が低下し、第1負極活物質層22による全固体二次電池1の内部抵抗が増加して全固体二次電池1のサイクル特性が向上し難い。
【0079】
正極活物質層12の充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に正極活物質層12のうち正極活物質の質量を乗算して得られる。正極活物質が複数種使用される場合、正極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、該値の総和が正極活物質層12の充電容量である。第1負極活物質層22の充電容量も同様の方法によって計算される。すなわち、第1負極活物質層22の充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に第1負極活物質層22のうち負極活物質の質量を乗算して得られる。負極活物質が複数種使用される場合、負極活物質ごとに充電容量密度×質量値を計算し、該値の総和が第1負極活物質層22の容量である。ここで、正極活物質及び負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を用いて推定された容量である。全固体半電池(half-cell)を用いた充電容量測定によって正極活物質層12と第1負極活物質層22の充電容量が直接測定される。測定された充電容量をそれぞれ活物質の質量で除算すれば、充電容量密度が得られる。あるいは、正極活物質層12と第1負極活物質層22の充電容量は、1サイクル目の充電時に測定される初期充電容量でもある。
【0080】
[負極層:負極集電体]
負極集電体21は、例えば、リチウムと反応しない、すなわち、合金及び化合物をいずれも形成しない材料からなる。負極集電体21を構成する材料は、例えば、銅(Cu)、ステンレススチール、チタン(Ti)、鉄(Fe)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)などであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野で電極集電体として使用するものであれば、いずれも使用可能である。負極集電体の厚さは、1~20μm、例えば、5~15μm、例えば、7~10μmである。
【0081】
負極集電体21は、上述した金属のうち1種からなるか、2種以上の金属の合金または被覆材料からなる。負極集電体21は、例えば、板状または箔状(foil)である。
【0082】
図4を参照すれば、全固体二次電池1は、例えば、負極集電体21上に、リチウムと合金を形成する元素を含む薄膜24をさらに含む。薄膜24は、負極集電体21と前記第1負極活物質層22との間に配置される。第1負極活物質層22と固体電解質層30との間に一具現例による混合層40が配置される。
【0083】
薄膜24は、例えば、リチウムと合金を形成する元素を含む。リチウムと合金を形成する元素は、例えば、金、銀、亜鉛、錫、インジウム、ケイ素、アルミニウム、ビスマスなどであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野でリチウムと合金を形成する元素であれば、いずれも使用可能である。薄膜24は、これらの金属のうち1つからなるか、複数種の金属の合金からなる。薄膜24が負極集電体21上に配置されることにより、例えば、薄膜24と第1負極活物質層22との間に析出される第2負極活物質層(図示せず)の析出形態がさらに平坦化され、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0084】
薄膜の厚さd24は、例えば、1nm~800nm、10nm~700nm、50nm~600nm、または100nm~500nmである。薄膜の厚さd24が1nm未満になる場合、薄膜24による機能が発揮され難い。薄膜の厚さd24が過度に厚ければ、薄膜24自体がリチウムを吸蔵し、負極層においてリチウムの析出量が減少して全固体電池のエネルギー密度が低下し、全固体二次電池1のサイクル特性が低下しうる。薄膜24は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、メッキ法などによって負極集電体21上に配置されるが、必ずしもそのような方法に限定されず、当該技術分野で薄膜24を形成する方法であれば、いずれも使用可能である。
【0085】
[負極層:負極活物質]
負極層20は、負極集電体21及び負極集電体上に配置された負極活物質層22を含む。負極活物質層22は、例えば、負極活物質及びバインダを含む。
【0086】
負極活物質層22の含む負極活物質は、例えば、粒子形態を有する。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、4μm以下、2μm以下、1μm以下、または900nm以下である。粒子形態を有する負極活物質の平均粒径は、例えば、10nm~4μm、10nm~2μm、または10nm~900nmである。負極活物質がそのような範囲の平均粒径を有することにより、充放電時にリチウムの可逆的な吸蔵(absorbing)及び/または放出(desorbing)がさらに容易である。負極活物質の平均粒径は、例えば、レーザー式粒度分布計を使用して測定したメジアン(median)直径(D50)である。
【0087】
負極活物質は、例えば、炭素系負極活物質及び金属または半金属負極活物質のうちから選択された1つ以上を含む。
【0088】
炭素系負極活物質は、特に非晶質炭素(amorphous carbon)である。非晶質炭素は、例えば、カーボンブラック(carbon black、CB)、アセチレンブラック(acetylene black、AB)、ファーネスブラック(furnace black、FB)、ケッチェンブラック(ketjen black、KB)、グラフェン(graphene)などであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野において非晶質炭素と分類されるものであれば、いずれも使用可能である。非晶質炭素は、結晶性を有さないか、結晶性が非常に低い炭素であって、結晶性炭素または黒鉛系炭素と区分される。
【0089】
金属または半金属負極活物質は、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含むが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野でリチウムと合金または化合物を形成する金属負極活物質または半金属負極活物質として使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。例えば、ニッケル(Ni)は、リチウムと合金を形成しないので、金属負極活物質ではない。
【0090】
負極活物質層22は、そのような負極活物質のうち一種の負極活物質を含むか、複数の互いに異なる負極活物質の混合物を含む。例えば、負極活物質層22は、非晶質炭素のみを含むか、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上を含む。あるいは、第1負極活物質層22は、非晶質炭素と、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)からなる群から選択される1つ以上との混合物を含む。非晶質炭素と金などの混合物の混合比は、重量比で、例えば、10:1ないし1:2、5:1ないし1:1、または4:1ないし2:1であるが、必ずしもそのような範囲に限定されず、要求される全固体二次電池1の特性によって選択される。負極活物質がそのような組成を有することにより、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0091】
負極活物質層22が含む負極活物質は、例えば、非晶質炭素からなる第1粒子、及び金属または半金属からなる第2粒子の混合物を含む。金属または半金属は、例えば、例えば、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、シリコン(Si)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、ビズマス(Bi)、錫(Sn)及び亜鉛(Zn)などを含む。あるいは、半金属は、半導体でもある。第2粒子の含量は、混合物の総重量を基準に8~60重量%、10~50重量%、15~40重量%、または20~30重量%である。第2粒子がそのような範囲の含量を有することにより、例えば、全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。
【0092】
[負極層:バインダ]
負極活物質層22が含むバインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートなどであるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野においてバインダとして使用可能なものであれば、いずれも使用可能である。バインダは、単独または複数の互いに異なるバインダからなりうる。
【0093】
負極活物質層22がバインダを含むことにより、負極活物質層22が負極集電体21上に安定化される。また、充放電過程で負極活物質層22の体積変化及び/または相対的な位置変更にもかかわらず、負極活物質層22のクラックが抑制される。例えば、負極活物質層22がバインダを含んでいない場合、負極活物質層22が負極集電体21から容易に分離されうる。負極集電体21から負極活物質層22が離脱することにより、負極集電体21が露出された部分で、負極集電体21が第2固体電解質層23と接触することにより、短絡の発生可能性が増加する。負極活物質層22は、例えば、負極活物質層22を構成する材料が分散されたスラリーを負極集電体21上に塗布し、乾燥して作製される。バインダを負極活物質層22に含めることにより、スラリー中に負極活物質の安定した分散が可能である。例えば、スクリーン印刷法でスラリーを負極集電体21上に塗布する場合、スクリーンの目詰まり(例えば、負極活物質の凝集体による目詰まり)を抑制することが可能である。
【0094】
[負極層:その他添加剤]
負極活物質層22は、従来の全固体二次電池1に使用される添加剤、例えば、フィラー、コーティング剤、分散剤、イオン伝導性補助剤などをさらに含むことが可能である。
【0095】
負極活物質層22は、
図4に示されたように第1負極活物質層22aであるか、または
図5に示されたように第3負極活物質層22bでもある。
【0096】
[負極層:第1負極活物質層]
第1負極活物質層22aの厚さは、例えば、正極活物質層12の厚さの50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、または5%以下である。第1負極活物質層22aの厚さは、例えば、1μm~20μm、2μm~10μm、または3μm~7μmである。第1負極活物質層22aの厚さが前記範囲であるとき、全固体二次電池1のサイクル特性に優れ、第1負極活物質層22aの充電容量に優れる。第1負極活物質層22aの充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、50%以下、30%以下、10%以下、5%以下または2%以下である。第1負極活物質層22aの充電容量は、例えば、正極活物質層12の充電容量に比べて、0.1%~50%、0.1%~30%、0.1%~10%、0.1%~5%、または0.1%~2%である。第1負極活物質層22aの充電容量が前記範囲であるとき、第1負極活物質層22aの厚さが適切な範囲内に制御されて繰り返される充放電過程で全固体二次電池1のサイクル特性及びエネルギー密度が優秀である。
【0097】
正極活物質層12の充電容量は、正極活物質の充電容量密度(mAh/g)に正極活物質層12のうち正極活物質の質量を乗算して得られる。正極活物質が複数種使用される場合、正極活物質ごとに充電容量密度X質量値を計算し、該値の総和が正極活物質層12の充電容量である。第1負極活物質層22aの充電容量も同様の方法で計算される。すなわち、第1負極活物質層22aの充電容量は、負極活物質の充電容量密度(mAh/g)に第1負極活物質層22aのうち負極活物質の質量を乗算して得られる。負極活物質が複数種使用される場合、負極活物質ごとに充電容量X質量値を計算し、該値の総和が第1負極活物質層22aの容量である。ここで、正極活物質及び負極活物質の充電容量密度は、リチウム金属を相対電極として使用した全固体半電池(half-cell)を利用して推定された容量である。全固体半電池(half-cell)を用いた充電容量測定によって正極活物質層12と第1負極活物質層22aの充電容量が直接測定される。測定された充電容量をそれぞれ活物質の質量で除算すれば、充電容量密度が得られる。あるいは、正極活物質層12と第1負極活物質層22aの充電容量は、1サイクル目の充電時に測定される初期充電容量でもある。
【0098】
[負極層:析出層]
図5を参照すれば、全固体二次電池1は、充電によって、例えば、負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置される第2負極活物質層23をさらに含む。図示されていないが、全固体二次電池1は、充電によって固体電解質層30と第1負極活物質層22との間に配置される第2負極活物質層23をさらに含むか、単独で含む構成も可能である。第2負極活物質層23は、リチウムまたはリチウム合金を含む金属層である。金属層は、リチウムまたはリチウム合金を含む。したがって、第2負極活物質層23は、リチウムを含む金属層なので、例えば、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。リチウム合金は、例えば、Li-Al合金、Li-Sn合金、Li-In合金、Li-Ag合金、Li-Au合金、Li-Zn合金、Li-Ge合金、Li-Si合金などであるが、それらに限定されず、当該技術分野からリチウム合金で使用するものであれば、いずれも使用可能である。第2負極活物質層23は、そのような合金のうち1つまたはリチウムからなっているか、複数種の合金からなる。
【0099】
第2負極活物質層の厚さd23は、特に制限されないが、例えば、1μm~1000μm、1μm~500μm、1μm~200μm、1μm~150μm、1μm~100μm、または1μm~50μmである。第2負極活物質層の厚さd23が過度に薄ければ、第2負極活物質層23によるリチウム貯蔵庫(reservoir)の役割を遂行し難い。第2負極活物質層の厚さd23が過度に厚ければ、全固体二次電池1の質量及び体積が増加し、サイクル特性がむしろ低下する可能性がある。第2負極活物質層23は、例えば、そのような範囲の厚さを有する金属箔でもある。
【0100】
全固体二次電池1において第2負極活物質層23は、例えば、全固体二次電池1の組み立ての前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間に配置されるか、全固体二次電池1の組み立て後に充電によって負極集電体21と第1負極活物質層22との間に析出される。
【0101】
全固体二次電池1の組み立て前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間に第2負極活物質層23が配置される場合、第2負極活物質層23がリチウムを含む金属層なので、リチウム貯蔵庫(reservoir)として作用する。第2負極活物質層23を含む全固体二次電池1のサイクル特性がさらに向上する。例えば、全固体二次電池1の組み立て前に負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムホイルが配置される。
【0102】
全固体二次電池1の組み立て後に充電によって第2負極活物質層23が配置される場合、全固体二次電池1の組み立て時に第2負極活物質層23を含んでいないので、全固体二次電池1のエネルギー密度が増加する。例えば、全固体二次電池1の充電時、第1負極活物質層22の充電容量を超過して充電する。すなわち、第1負極活物質層22を過充電する。充電初期には、第1負極活物質層22にリチウムが吸蔵される。すなわち、第1負極活物質層22が含む負極活物質は、正極層10から移動してきたリチウムイオンと合金または化合物を形成する。第1負極活物質層22の容量を超過して充電すれば、例えば、第1負極活物質層22の背面、すなわち、負極集電体21と第1負極活物質層22との間にリチウムが析出され、析出されたリチウムによって第2負極活物質層23に該当する金属層が形成される。第2負極活物質層23は、主にリチウム(すなわち、金属リチウム)からなる金属層である。そのような結果は、例えば、第1負極活物質層22に含まれる負極活物質がリチウムと合金または化合物を形成する物質で構成されることにより得られる。放電時には、第1負極活物質層22及び第2負極活物質層23、すなわち、金属層のリチウムがイオン化されて正極層10方向に移動する。したがって、全固体二次電池1においてリチウムを負極活物質として使用することできる。また、第1負極活物質層22は、第2負極活物質層23を被覆するので、第2負極活物質層23、すなわち、金属層の保護層の役割を行うと共に、リチウムデンドライト(dendrite)の析出成長を抑制する役割を遂行する。したがって、全固体二次電池1の短絡及び容量低下を抑制し、結果的に全固体二次電池1のサイクル特性を向上させる。また、全固体二次電池1の組み立て後に充電によって第2負極活物質層23が配置される場合、負極集電体21と前記第1負極活物質層22及びそれらの間の領域は、例えば、全固体二次電池の初期状態または放電後状態でリチウム(Li)を含んでいないLiフリー(free)領域である。
【0103】
一具現例による全固体二次電池は、中大型電池または電力保存装置(energy storage system: ESS)に適用可能である。
【0104】
以下、実施例及び比較例を通じて本創意的思想をさらに具体的に説明する。但し、実施例は、本創意的思想を例示するためのものであって、これらだけで本創意的思想の範囲が限定されるものではない。
【0105】
製造例1
aLi2O-ZrO2コーティング膜を有する正極活物質は、大韓民国公開特許10-2016-0064942に開示された方法によって製造し、下記方法によって製造されたものを使用した。
【0106】
正極活物質LiNi0.9Co0.05Mn0.05O2(NCM)を、リチウムメトキシド、ジルコニウムプロポキシド、エタノールと、アセト酢酸エチルの混合液中において30分間撹拌及び混合してaLi2O-ZrO2(a=1)のアルコール溶液(aLi2O-ZrO2被覆用塗布液)を製造した。ここで、リチウムメトキシド及びジルコニウムプロポキシドの含量は、正極活物質の表面に被覆されるaLi2O-ZrO2(a=1)の含量が0.5モル%になるように調節した。
【0107】
次いで、前記aLi2O-ZrO2被覆用塗布液を上述した正極活物質微細粉末と混合し、該混合溶液を撹拌しながら、40℃程度に加熱してアルコールなどの溶媒を蒸発乾燥させた。この際、混合溶液には、超音波を照射した。
【0108】
前記過程を実施して正極活物質微細粉末の粒子表面にaLi2O-ZrO2の前駆体を担持することができた。
【0109】
また、正極活物質の粒子表面に担持されたaLi2O-ZrO2(a=1)の前駆体を約350℃で1時間、酸素雰囲気下で熱処理した。該熱処理過程で正極活物質の上部に存在するaLi2O-ZrO2(a=1)の前駆体がaLi2O-ZrO2(a=1)に変化した。 Li2O-ZrO2(LZO)の含量は、NCM 100重量部を基準にして約0.4重量部である。
【0110】
上述した製造過程によれば、aLi2O-ZrO2コーティング膜を有するLiNi0.9Co0.05Mn0.05O2(NCM)が得られた。aLi2O-ZrO2においてaは、1である。
【0111】
実施例1
(負極層製造)
負極集電体として厚さ10μmのSUS箔を準備した。また、負極活物質として平均粒径が約60nmであるAgナノ粒子、カーボンブラック、水系バインダである2:1重量比のSBR(styrene butadiene rubber)及びCMC(sodium carboxymethyl cellulose)を25:75:6:3重量比で混合して混合物を製造した。前記SBR及び前記CMCは、溶媒である水を用いてバインダ溶液を製造した。
【0112】
前記混合物をシンキー混合機で撹拌して適切な粘度に調節した。次いで、2mmジルコニアボールを添加し、シンキー混合機で撹拌してスラリーを製造した。撹拌したスラリーをSUSフォイル上にコーティングした後、100℃で真空乾燥して10μm厚さの負極層を製造した。
【0113】
(固体電解質層の製造)
アルジロダイト型固体電解質Li6PS5Clにバインダ溶液としてイソブチリル酢酸エチル(isobutylyl isobutylate、IBIB)を投入して混合した。この際、前記混合物をシンキー混合機(Thinky mixer)で撹拌して適切な粘度に調節した。固体電解質とバインダとの混合重量比は、98.5:1.5である。混合物の粘度を2,000cPに調節した後、2mmの平均直径を有するジルコニアボールを添加し、シンキー混合機で再撹拌してスラリーを製造した。前記スラリーを離型ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にキャスティングし、常温(25℃)で乾燥して固体電解質層を製造した。
【0114】
(正極層製造)
正極活物質として製造例1によって得たLi2O-ZrO2(LZO)コーティングされたLiNi0.9Co0.05Mn0.05O2(NCM)を準備した。固体電解質としてアルジロダイト(Argyrodite)型結晶体であるLi6PS5Cl固体電解質(D50=1μm以下、結晶質)を使用した。そして、バインダとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダ(デュポン社のテフロン(登録商標)バインダ)を準備し、導電材である炭素ナノ繊維(CNF)を準備した。そのような材料を正極活物質:固体電解質:導電材:バインダ=85:15:3:1.5の重量比でキシレン(xylene)と混合した正極活物質組成物をシート状に成形した後、45℃で2時間真空乾燥させて約150μm厚さを有する正極層を製造した。
【0115】
(全固体二次電池の製造)
正極層と負極層との間に固体電解質層を配置して積層体を準備した。準備された積層体を80℃で500MPaの圧力、WIPで60分間加圧して全固体二次電池を製造した。そのような加圧処理によって固体電解質層が焼結されて電池特性が向上する。焼結された固体電解質層の厚さは、約45μmであった。加圧された正極活物質層の厚さは、約120μmであり、負極活物質層の厚さは、12μmであり、固体電解質層の厚さは、120μmであり、混合層の厚さは、2μmでった。
【0116】
実施例2-5及び比較例1-4
全固体二次電池の負極層と固体電解質との界面に配置された混合層の厚さ、混合層内の負極層材料と固体電解質層材料の比率及び混合層と負極層の厚さ比率が、下記表1に示されたようになるように固体電解質層の製造条件及び積層体加圧条件を調節したことを除いては、実施例1と同じ方法によって実施した。
【0117】
下記表1において、混合層において負極層材料と固体電解質層材料との混合体積比は、SEM-EDS分析のSEM分析において、混合層で負極層材料に該当する体積及び固体電解質層の体積比を測定して評価した。
【0118】
【0119】
評価例1:電子走査顕微鏡
実施例1によって製造された負極層/混合層/固体電解質層積層体の断面構造に対するSEM分析を実施した。SEM分析写真は、
図1に示された通りである。
【0120】
図1を参照して、負極層と固体電解質層の加圧工程を通じて電解質層と負極層との界面にストレスを加えて混合を誘導して混合層が約2μm以下の厚さに存在することを知り得た。前記混合層は、
図1に示されたように表面に凹凸などが形成されて負極層と固体電解質層との接着面積が増加し、これらの接合力が改善された。
【0121】
評価例2:SEM-EDS分析
実施例1によって製造された負極層/混合層/固体電解質層積層体の断面構造に対するSEM-EDS分析を実施した。SEM-EDS写真は、
図2A及び
図2Bに示された通りである。
【0122】
図2Aを参照して、混合層において負極層材料と固体電解質の体積を計算してこれらの混合比を知ることができ北。そして、
図2Bを参照して、負極層と固体電解質層との界面において2成分(負極:炭素及び銀(Ag)、電解質:硫黄(S)、リン(P)及び塩素(Cl))が重畳されることを確認した。
【0123】
評価例3.初期放電容量
実施例1ないし5及び比較に1ないし4で製造した全固体二次電池に対して充放電を遂行して電池寿命特性を評価した。電池寿命の評価時、45℃で0.1C 4.25V CC/CV(0.05C cutoff)充電後、1C2.5V CC放電の条件で初期放電容量を下記方法によって評価した。
【0124】
充放電試験は、全固体二次電池を45℃の恒温槽に入れて遂行した。
【0125】
電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で約10時間、そして4.25Vの定電圧で電流が0.05Cになるまで充電した後、10分休止(rest)時間を有し、その後、電池電圧が2.5Vになるまで1Cの定電流で約10時間放電を実施した。その過程を経た後、1C初期放電容量を評価して下記表2に示した。
【0126】
評価例4:容量保有率
電池寿命の評価時、45℃で0.33C 4.25V CC/CV(0.1C cutoff)充電、0.33C 2.5V CC放電の条件で充放電を遂行した。初期容量と100回の寿命評価後、初期容量に対する残存容量の比を下記表1に示した。その評価方法を具体的に説明すれば、次の通りである。
【0127】
実施例1ないし5及び比較例1ないし4で製造された全固体二次電池の充放電特性を次の充放電試験によって評価した。充放電試験は、全固体二次電池を45℃の恒温槽に入れて遂行した。
【0128】
電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した後、電池電圧が2.5Vになるまで0.05Cの定電流で放電を20時間実施した(第1サイクル)。
【0129】
次いで、電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した後、電池電圧が2.5Vになるまで0.33Cの定電流で3時間放電を実施した(第2サイクル)。
【0130】
その後、電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した。次いで、電池電圧が2.5Vになるまで0.5Cの定電流で2時間放電を実施した(第3サイクル)。
【0131】
その後、電池電圧が4.25Vになるまで0.1Cの定電流で10時間充電した。次いで、電池電圧が2.5Vになるまで1Cの定電流で1時間放電を実施した(第4サイクル)。
【0132】
その後、電池電圧が4.25Vになるまで0.33Cの定電流で3時間充電した。次いで、電池電圧が2.5Vになるまで0.33Cの定電流で3時間放電を実施した(第5サイクル)。
【0133】
前記サイクルを総100回繰り返してサイクル数による容量変化及び容量保有率をそれぞれ評価した。
【0134】
容量保有率(寿命)特性は、下記式1によって評価され、評価結果を下記表2に示した。
【0135】
<式1>
容量保有率(%)=(100サイクル後の放電容量/第1サイクルの放電容量)X100
【0136】
【0137】
表2を参照して、実施例1ないし5の全固体二次電池は、比較例1ないし4の全固体二次電池と比較して、初期放電容量及び容量保有率が改善された。以上、添付図面を参照して、例示的な一具現例について詳細に説明したが、本創意的思想は、そのような例に限定されない。本創意的思想が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で各種の変更例または修正例を導出可能であるということは自明であり、これらが本創意的思想の技術的範囲に属するということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0138】
1 全固体二次電池
10 正極層
11 正極集電体
12 正極活物質層
20 負極層
21 負極集電体
22 第1負極活物質層
30 固体電解質層
40 混合層
【国際調査報告】