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特表2024-507399コーティング、2D物体形成及び3D印刷のための、光重合性液体及びエポキシ前駆体を含む硬化性組成物
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  • 特表-コーティング、2D物体形成及び3D印刷のための、光重合性液体及びエポキシ前駆体を含む硬化性組成物 図1
  • 特表-コーティング、2D物体形成及び3D印刷のための、光重合性液体及びエポキシ前駆体を含む硬化性組成物 図2
  • 特表-コーティング、2D物体形成及び3D印刷のための、光重合性液体及びエポキシ前駆体を含む硬化性組成物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-19
(54)【発明の名称】コーティング、2D物体形成及び3D印刷のための、光重合性液体及びエポキシ前駆体を含む硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/18 20060101AFI20240209BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240209BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240209BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240209BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240209BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240209BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20240209BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20240209BHJP
【FI】
C08G59/18
B29C64/106
B29C64/314
B33Y70/00
B33Y10/00
B33Y80/00
C08F20/00 510
C08F2/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552011
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2022053422
(87)【国際公開番号】W WO2022179867
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/077876
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ファン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チョン,シー
(72)【発明者】
【氏名】カイ,チー,チョン
【テーマコード(参考)】
4F213
4J011
4J036
【Fターム(参考)】
4F213AA39
4F213AB03
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4J011AA05
4J011AC04
4J011QA13
4J011QA14
4J011QA19
4J011QB19
4J011QB24
4J011SA84
4J011TA10
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA02
4J036AB07
4J036AD08
4J036AF06
4J036AH02
4J036AH07
4J036DA10
4J036DD05
4J036EA01
4J036EA02
4J036EA04
4J036EA09
4J036FA11
4J036JA01
4J036JA15
(57)【要約】
本開示は、(a)少なくとも1つの光重合性液体、(b)成分(a)に溶解した少なくとも1つのエポキシ前駆体、及び(c)少なくとも1つの光開始剤を含む硬化性組成物に関するものであり、その硬化性組成物が示す25℃での粘度の増加は、室温で7日後に15%以下である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
(a)少なくとも1つの光重合性液体、
(b)成分(a)に溶解した少なくとも1つのエポキシ前駆体、及び
(c)少なくとも1つの光開始剤
を含む、硬化性組成物であって、
25℃での粘度の増加が室温で7日後に15%以下である、硬化性組成物。
【請求項2】
25℃での粘度の増加が、室温で7日後に10%以下、好ましくは5%以下である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
成分(a)が、エチレン性不飽和官能基を持つ窒素原子を有する少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤(a1)を含む、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
反応性希釈剤(a1)がN-ビニル複素環式化合物であり、好ましくは、前記N-ビニル複素環式化合物中の1つの環炭素原子がオキソ基を持ち、より好ましくは、前記オキソ基を持つ該環炭素原子が、N-ビニル部位の窒素原子と共にラクタム構造を形成する、請求項3に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記N-ビニル複素環式化合物の複素環が、N-ビニル部位の窒素原子に加えて、N、O及びSから選択される0~3個(好ましくは1又は2個)のヘテロ原子を含有する5~8員環である、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
反応性希釈剤(a1)が、式(A):
【化1】
(式中、R、R、R及びRは、互いに独立して水素原子又は10個以下の炭素原子、好ましくは6個以下の炭素原子を有する有機基、例えばC~Cアルキル基、又はC~Cアルコキシ基である)
のN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム及びN-ビニルオキサゾリジノンからなる群から選択される、請求項3から5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
反応性希釈剤(a1)の量が、前記硬化性組成物の総質量に対して10~50質量%、好ましくは15~50質量%、より好ましくは20~45質量%の範囲である、請求項3から6のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
成分(a)が少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つの光重合性化合物(a2)をさらに含み、好ましくは光重合性化合物(a2)が(メタ)アクリレートをベースとする、請求項3から7のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
成分(a)の量が、前記硬化性組成物の総質量に対して20~94質量%、好ましくは30~92質量%、より好ましくは40~90質量%又は40~75質量%の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
成分(b)としての前記エポキシ前駆体が、エポキシ/アミン、エポキシ/ヒドロキシル、及びそれらの混合物からなる群から選択される反応性末端基を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
成分(b)としての前記エポキシ前駆体が、少なくとも1つのエポキシ化合物(b1)及び少なくとも1つの潜在性エポキシ架橋剤(b2)を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
潜在性エポキシ架橋剤(b2)の融点が、100~250℃、好ましくは130~220℃、より好ましくは150~190℃の範囲である、請求項11に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
前記潜在性エポキシ架橋剤がジアミノジフェニルスルホン及び/又はその誘導体である、請求項11又は12に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
前記潜在性エポキシ架橋剤が、式(I)の化合物、式(II)の化合物及び式(III)の化合物:
【化2】
(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立してH又はC~Cアルキルである)
【化3】
(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立してH又はC~Cアルキルである)
【化4】
(式中、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立してH又はC~Cアルキルである)
からなる群から選択される、請求項11から13のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項15】
成分(a)と成分(b)との質量比が1:5~20:1、好ましくは1:2~10:1の範囲である、請求項1から14のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
単層コーティング又は2D物体を形成する方法であって、以下の工程:
(i) 前記組成物の層を構造物の表面上に適用する工程、
(ii) 光を適用して請求項1から15のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させて中間コーティング又は2D物体を形成する工程、
(iii) 硬化したコーティング又は2D物体全体を加熱及び/又はマイクロ波照射によって処理して最終的なコーティング又は2D物体を形成する工程
を含む方法。
【請求項17】
3D物体を形成する方法であって、以下の工程:
(i) 光を適用して請求項1から15のいずれか一項に記載の硬化性組成物を層ごとに硬化させて中間3D物体を形成する工程、
(ii) さらに光を適用して中間3D物体を全体として硬化させて硬化した3D物体を形成する工程、及び
(iii) 硬化した3D物体全体を加熱及び/又はマイクロ波照射によって処理して最終的な3D物体を形成する工程
を含む方法。
【請求項18】
請求項1から15のいずれか一項に記載の硬化性組成物から形成された、単層コーティング又は2D物体又は3D物体。
【請求項19】
配管設備、家庭用品、玩具、治具、型、及び車両内の内装部品及びコネクタが含まれる、請求項18に記載の3D物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単層又は多層を有する物体、例えばコーティング、二次元(以下「2D」という)物体形成、及び三次元(以下「3D」という)印刷を製作するための化学材料の技術分野に関するものであり、そして特に、コーティング、2D物体形成、及び3D印刷用の1Kエポキシ二重硬化性組成物、すなわち光重合性液体及びエポキシ前駆体を含む硬化性組成物、該組成物を用いて単層又は多層を有する物体を形成する方法、及び単層又は多層を有する物体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光重合体(photopolymer)は、光に曝されると、しばしば電磁スペクトルの紫外又は可視領域においてその性質が変化するポリマー材料の一種である。このような変化は、例えば光に曝されたときの架橋の結果、液体樹脂が固まって固体になるなど、構造的に現れることが多い。この特徴により、光重合体はUVコーティング、2D物体形成用のUVインク、及び3D印刷など幅広い用途に利用されている。
【0003】
UVコーティングは表面処理プロセスであり、構造物に外層を適用して、UV保護、耐湿性及び耐久性の向上をもたらす。
【0004】
2D物体の形成は、設計された形状の層を構造体上に製作するプロセスである。
【0005】
3D印刷又は付加製造(AM)は、減法的(例えば機械加工及びアブレーション)であるか又は造形的(例えば成形及びキャスティング)である従来の製造技術を回避しようとする製造方法であり、そうすることにより設計の自由度という点でかなりの利点を活用している。UV硬化性光重合体は3D印刷可能な材料の一種であり、プラスチック部品の試作、金属インベストメントキャスティング、歯科用途など、さまざまな用途で広く使用されている。現在までに市販されているUV硬化性光重合体は、プロトタイプ及びデモンストレーション品の作成には好適であるが、熱的及び機械的特性を必要とする実際の用途には適していないことがある。試作から実際の製造までのギャップを埋めるには、対象とする産業用途に応じた特定の特性を持つ高度な材料を用意することが重要である。
【0006】
自動車産業は、ポリマーの3番目に重要な消費分野である。燃費効率と軽量化に対する要求の高まりにより、3D印刷は、車両内のプラスチック構成要素、例えば内装部品、コネクタ及び機能性プロトタイプ製造の有望な技術となっている。これらの用途では通常、材料が適切な熱変形温度(HDT)及び機械的性能を有することが要求されるが、従来のアクリレートベースの光重合体では、これを達成することはほぼ不可能である。従って、従来の製造方法で製造された既存のプラスチックに匹敵する高度な性能を実現するためには、3D材料開発において新しい化学/プロセスを用いることが極めて重要になる。
【0007】
この課題を解決するために、エポキシ前駆体を光重合性液体(light polymerizable liquid)と組み合わせる試みがなされてきた。しかし、エポキシ前駆体、例えばエポキシ/アミン及びエポキシ/ヒドロキシルの混合物は、通常、混合時に速やかに反応するため、予備混合プロセスを必要としない1Kエポキシ樹脂組成物として使用することはできない。従って、HDTが高く且つ靭性が高い単層又は多層を有する物体の開発を可能とする、良好な貯蔵安定性を有する1Kエポキシ二重硬化性組成物を提供することが強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、HDTが高く且つ靭性が高い単層又は多層を有する物体の開発を可能とする、良好な貯蔵安定性を有する硬化性組成物を提供することであり、その硬化性組成物は、(a)少なくとも1つの光重合性液体、(b)成分(a)に溶解した少なくとも1つのエポキシ前駆体、及び(c)少なくとも1つの光開始剤を含み、且つその硬化性組成物が示す25℃での粘度の増加は、室温で7日後に15%以下である。
【0009】
本発明の別の目的は、本発明の硬化性組成物から形成された単層又は多層を有する物体物体を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、本発明の硬化性組成物を用いて、単層又は多層を有する物体物体を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、上記目的は、以下の実施形態によって実現できることが見出された:
1. 以下の成分、
(a)少なくとも1つの光重合性液体、
(b)成分(a)に溶解した少なくとも1つのエポキシ前駆体、及び
(c)少なくとも1つの光開始剤
を含む、硬化性組成物であって、
25℃での粘度の増加が室温で7日後に15%以下である、硬化性組成物。
【0012】
2. 25℃での粘度の増加が、室温で7日後に10%以下、好ましくは5%以下である、項目1による硬化性組成物。
【0013】
3. 成分(a)が、エチレン性不飽和官能基を持つ窒素原子を有する少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤(a1)を含む、項目1又は2による硬化性組成物。
【0014】
4. 反応性希釈剤(a1)がN-ビニル複素環式化合物であり、好ましくは、そのN-ビニル複素環式化合物中の1つの環炭素原子がオキソ基を持ち、より好ましくは、そのオキソ基を持つ該環炭素原子が、N-ビニル部位の窒素原子と共にラクタム構造を形成する、項目3による硬化性組成物。
【0015】
5. N-ビニル複素環式化合物の複素環が、N-ビニル部位の窒素原子に加えて、N、O及びSから選択される0~3個(好ましくは1又は2個)のヘテロ原子を含有する5~8員環である、項目4による硬化性組成物。
【0016】
6. 反応性希釈剤(a1)が、式(A):
【化1】
(式中、R、R、R及びRは、互いに独立して水素原子又は10個以下の炭素原子、好ましくは6個以下の炭素原子を有する有機基、例えばC~Cアルキル基、又はC~Cアルコキシ基である)
のN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム及びN-ビニルオキサゾリジノンからなる群から選択される、項目3から5のいずれかによる硬化性組成物。
【0017】
7. 反応性希釈剤(a1)の量が、硬化性組成物の総質量に対して10~50質量%、好ましくは15~50質量%、より好ましくは20~45質量%の範囲である、項目3から6のいずれかによる硬化性組成物。
【0018】
8. 成分(a)が少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つの光重合性化合物(a2)をさらに含み、好ましくは光重合性化合物(a2)が(メタ)アクリレートをベースとする、項目3から7のいずれかによる硬化性組成物。
【0019】
9. 成分(a)の量が、硬化性組成物の総質量に対して20~94質量%、好ましくは30~92質量%、より好ましくは40~90質量%又は40~75質量%の範囲である、項目1から8のいずれかによる硬化性組成物。
【0020】
10. 成分(b)としてのエポキシ前駆体が、エポキシ/アミン、エポキシ/ヒドロキシル、及びそれらの混合物からなる群から選択される反応性末端基を含む、項目1から9のいずれかによる硬化性組成物。
【0021】
11. 成分(b)としてのエポキシ前駆体が、少なくとも1つのエポキシ化合物(b1)及び少なくとも1つの潜在性エポキシ架橋剤(b2)を含む、項目1から10のいずれかによる硬化性組成物。
【0022】
12. 潜在性エポキシ架橋剤(b2)の融点が、100~250℃、好ましくは130~220℃、より好ましくは150~190℃の範囲である、項目11による硬化性組成物。
【0023】
13. 潜在性エポキシ架橋剤がジアミノジフェニルスルホン及び/又はその誘導体である、項目11又は12による硬化性組成物。
【0024】
14. 潜在性エポキシ架橋剤が、式(I)の化合物、式(II)の化合物及び式(III)の化合物:
【化2】
(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立してH又はC~Cアルキルである)
【化3】
(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立してH又はC~Cアルキルである)
【化4】
(式中、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立してH又はC~Cアルキルである)
からなる群から選択される、項目11から13のいずれかによる硬化性組成物。
【0025】
15. 成分(a)と成分(b)との質量比が1:5~20:1、好ましくは1:2~10:1の範囲である、項目1から14のいずれかによる硬化性組成物。
【0026】
16. 単層コーティング又は2D物体を形成する方法であって、以下の工程:
(i) 組成物の層を構造物の表面上に適用する工程、
(ii) 光を適用して項目1から15のいずれかによる硬化性組成物を硬化させて中間コーティング又は2D物体を形成する工程、
(iii) 硬化したコーティング又は2D物体全体を加熱及び/又はマイクロ波照射によって処理して最終的なコーティング又は2D物体を形成する工程
を含む方法。
【0027】
17. 3D物体を形成する方法であって、以下の工程:
(i) 光を適用して項目1から15のいずれかによる硬化性組成物を層ごとに硬化させて中間3D物体を形成する工程、
(ii) さらに光を適用して中間3D物体を全体として硬化させて硬化した3D物体を形成する工程、及び
(iii) 硬化した3D物体全体を加熱及び/又はマイクロ波照射によって処理して最終的な3D物体を形成する工程
を含む方法。
【0028】
18. 項目1から15のいずれかによる硬化性組成物から形成された、単層コーティング又は2D物体又は3D物体。
【0029】
19. 配管設備(plumbing fixtures)、家庭用品、玩具、治具、型、及び車両内の内装部品及びコネクタが含まれる、項目18による3D物体。
【0030】
本発明による硬化性組成物は、光重合性液体及びエポキシ前駆体の両方を含む1Kエポキシ二重硬化性組成物であり、これは優れた貯蔵安定性及び優れた印刷精度を示し、HDTが高く且つ靭性が高い単層又は多層を有する物体の開発を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1(a)は標準ベンチマークモデルの画像を、そして図1(b)は標準ベンチマークモデルに従って実施例4の組成物を印刷して得られた3D印刷した物体の画像を示す。
図2図2は、実施例4の組成物を印刷して得られた3D印刷した物体の画像を示す。
図3図3は、異なる日における実施例5及び比較例2、3及び4の組成物の正規化した粘度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
不定冠詞「a」「an」「the」は、当該冠詞に続く用語によって指定された1つ以上の種を意味する。
【0033】
本開示の文脈において、特徴について言及された任意の特定の値(終点として範囲内で言及された特定の値を含む)を再結合して新しい範囲を形成することができる。
【0034】
本開示の文脈において、コーティングとは、組成物をきれいなスライド上に均一にコーティングし、これをUV源下で露光するプロセスを指す。2D物体形成とは、組成物を用いて2Dパターンを形成するプロセスを指し、そして3D印刷とは、組成物を用いて3D印刷した物体を形成するプロセスを指す。
【0035】
硬化性組成物
本発明の1つの側面は、以下の成分、
(a)少なくとも1つの光重合性液体、
(b)成分(a)に溶解した少なくとも1つのエポキシ前駆体、及び
(c)少なくとも1つの光開始剤
を含み、
25℃での粘度の増加が室温で7日後に15%以下である、硬化性組成物を対象とする。
【0036】
本発明の硬化性組成物は液体組成物である。「液体組成物」という用語は、組成物が自重で流動することを意味する。
【0037】
本発明の硬化性組成物は、1Kエポキシ二重硬化性組成物である。本発明の硬化性組成物は、優れた貯蔵安定性を示す。
【0038】
本発明によれば、硬化性組成物は、室温で7日後に15%以下、例えば14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、好ましくは10%以下、例えば9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、より好ましくは5%以下、4%以下、3%以下の25℃での粘度の増加を示し、又は室温で7日後に2%以下の25℃での粘度の増加を示す。
【0039】
好ましい実施形態では、硬化性組成物は、室温で14日後に25%以下、例えば20%以下、18%以下、15%以下、12%以下、好ましくは10%以下、例えば9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、より好ましくは5%以下、4%以下、3%以下の25℃での粘度の増加を示し、又は室温で14日後に2%以下の25℃での粘度の増加を示す。
【0040】
室温とは、一般的に25±2℃の温度を指す。
【0041】
粘度(例えば硬化性組成物の粘度)は、Brookfield AMETEK DV3Tレオメーターを使用して測定することができる。各試験に約0.65mlのサンプルを使用し、粘度に応じて1秒-1から30秒-1の間のせん断速度を選択した。
【0042】
本発明の硬化性組成物の粘度は、特定の印刷プロセスに依存する。通常、本発明の硬化性組成物は、1500mPa・s以下、好ましくは1300mPa-s以下、より好ましくは1200mPa・s以下、特に1100mPa・s以下の25℃での粘度を有する。
【0043】
本開示で使用される表現「(b)成分(a)に溶解した少なくとも1つのエポキシ前駆体」又は「成分(a)中に溶解した成分(b)」又は同様の表現は、成分(b)及び成分(a)が、固体粒子を含まない液体混合物を形成できることを意味する。
【0044】
成分(a)
本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの光重合性液体を成分(a)として含む。
【0045】
本発明の好ましい実施形態によれば、光重合性液体の官能価は、1~12の範囲、例えば1.2、1.5、1.8、2、2.2.2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、11、好ましくは1~8、又は1.5~6、又は1.5~4とすることができる。
【0046】
本発明によれば、成分(a)は、エチレン性不飽和官能基を持つ窒素原子を有する少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤(a1)を含むことができる。当業者であれば、本開示の文脈におけるエチレン性不飽和官能基が光硬化性基であることを理解するであろう。
【0047】
反応性希釈剤(a1)は、N-ビニル複素環化合物とすることができ、好ましくはN-ビニル複素環化合物中の1つの環炭素原子はオキソ基を持ち、より好ましくはオキソ基を持つ環炭素原子は、N-ビニル部位の窒素原子と共にラクタム構造を形成する。
【0048】
好ましい実施形態では、N-ビニル複素環化合物の複素環は、N-ビニル部位の窒素原子に加えて、N、O及びSから選択される0~3個(好ましくは1又は2個)のヘテロ原子を含有する5~8員環である。例えば、N-ビニル複素環化合物の複素環は、5員環又は6員環とすることができる。複素環は、N-ビニル部位の窒素原子に加えてさらなるヘテロ原子を含有しないことも可能である。好ましい実施形態では、複素環は、N-ビニル部位の窒素原子に加えて、N、O及びS、好ましくはOから選択される0~3個、好ましくは1又は2個のヘテロ原子をさらに含有することができる。
【0049】
好ましい実施形態では、反応性希釈剤(a1)は、式(A):
【化5】
(式中、R、R、R及びRは、互いに独立して水素原子又は10個以下の炭素原子を有する有機基である)
のN-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム及びN-ビニルオキサゾリジノンからなる群から選択することができる。
【0050】
好ましくは、式(A)のR~Rの少なくとも2つは水素原子である。
【0051】
特に好ましい実施形態では、式(A)のR~Rの少なくとも2つは水素原子であり、そして任意の残りのR~Rは10個以下の炭素原子を有する有機基である。
【0052】
好ましくは、有機基は6個以下の炭素原子、より好ましくは4個以下の炭素原子を有する。特に好ましい実施形態では、有機基はアルキル基又はアルコキシ基である。好ましい実施形態では、有機基は、C~Cアルキル基、又はC~Cアルコキシ基であり、より好ましくはC~Cアルキル基、又はC~Cアルコキシ基である。最も好ましい実施形態では、有機基はメチル基である。
【0053】
式(A)のN-ビニルオキサゾリジノン化合物の例として、R、R、R及びRが水素原子(N-ビニルオキサゾリジノン(VOX)である、又は
がC~Cアルキル基、特にメチル基であり、そしてR、R及びRが水素原子(N-ビニル-5-メチルオキサゾリジノン(VMOX))である、又は
及びRが水素原子であり、そしてR及びRがC~Cアルキル基、特にメチル基である、化合物が挙げられる。
【0054】
特に好ましいのはVOX及びVMOXであり、最も好ましいのはVMOXである。
【0055】
反応性希釈剤(a1)の量は、硬化性組成物の総質量に対して、10~50質量%、例えば15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%又は45質量%、好ましくは15~50質量%又は10~40質量%、より好ましくは20~45質量%又は15~30質量%の範囲とすることができる。
【0056】
本発明によれば、成分(a)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つの光重合性化合物(a2)をさらに含む。光重合性化合物(a2)の官能価は、1.2~12、例えば1.5、1.8、2、2.2.2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9、10、11、好ましくは1.5~8、又は1.5~6、又は1.5~4の範囲とすることができる。
【0057】
本発明の実施形態では、エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素不飽和結合、例えば以下の官能基、アリル、ビニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、アクリルアミド、メタクリルアミド、アセチレニル、マレイミドなど、に見られるものを含み、好ましくは、エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素不飽和二重結合を含む。
【0058】
好ましい実施形態では、エチレン性不飽和官能基は、(メタ)アクリレートを含む。好ましくは、成分(a2)は(メタ)アクリレートをベースとする。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、光重合性化合物(a2)は、エチレン性不飽和官能基に加えて、ウレタン基、エーテル基、エステル基、カーボネート基、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0060】
好適な光重合性化合物(a2)には、例えば、エチレン性不飽和官能基と任意に連結基を介して連結したコア構造を含有するオリゴマーが含まれる。連結基は、エーテル、エステル、アミド、ウレタン、カーボネート、又はカーボネート基とすることができる。ある例では、連結基はエチレン性不飽和官能基の一部、例えばアクリルオキシ基又はアクリルアミド基である。コア基は、アルキル(直鎖及び分枝鎖アルキル基)、アリール(例えばフェニル)、ポリエーテル、ポリエステル、シロキサン、ウレタン、又は他のコア構造及びそれらのオリゴマーとすることができる。好適なエチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素二重結合、例えばメタクリレート、アクリレート、ビニルエーテル、アリルエーテル、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はそれらの組み合わせを含んでよい。ある実施形態では、好適な光重合性化合物(a2)は、単官能及び/又は多官能アクリレート、例えばモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート又はより高次の(メタ)アクリレート、又はそれらの組み合わせを含む。任意に、単層又は多層を有する物体の製作用の放射線硬化性組成物の硬化、可撓性及び/又はさらなる特性をさらに改善するために、光重合性化合物(a2)にシロキサン骨格が含まれていてよい。
【0061】
ある実施形態では、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する光重合性化合物(a2)としてのオリゴマーは、以下の種類、ウレタン(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するウレタンベースのオリゴマー)、ポリエーテル(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエーテルベースのオリゴマー)、ポリエステル(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルベースのオリゴマー)、ポリカーボネート(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリカーボネートベースのオリゴマー)、ポリエステルカーボネート(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルカーボネートベースのオリゴマー)、エポキシ(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するエポキシベースのオリゴマー)、シリコーン(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するシリコーンベースのオリゴマー)又はそれらの任意の組み合わせから選択することができる。好ましくは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する反応性オリゴマーは、以下の種類、ウレタンベースのオリゴマー、エポキシベースのオリゴマー、ポリエステルベースのオリゴマー、ポリエーテルベースのオリゴマー、ポリエーテルウレタンベースのオリゴマー、ポリエステルウレタンベースのオリゴマー又はシリコーンベースのオリゴマー、及びそれらの任意の組み合わせから選択することができる。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する光重合性化合物(a2)は、ウレタン繰り返し単位と、1個、2個又はそれ以上のエチレン性不飽和官能基、例えば炭素-炭素不飽和二重結合、例えば(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基及びビニル基を含む、ウレタンベースのオリゴマーを含む。好ましくは、光重合性化合物(a2)は、オリゴマー分子の骨格内に少なくとも1つのウレタン結合(例えば、1つ、2つ又はそれ以上のウレタン結合)と、オリゴマー分子にペンダント状に結合した少なくとも1つのアクリレート及び/又はメタクリレート官能基(例えば、1つ、2つ又はそれ以上のアクリレート及び/又はメタクリレート官能基)とを含有する。ある実施形態では、脂肪族、脂環式、又は混合脂肪族及び脂環式ウレタン繰り返し単位が好適である。ウレタンは、典型的には、ジイソシアネートとジオールとの縮合によって調製される。繰り返し単位当たり少なくとも2つのウレタン部分を有する脂肪族ウレタンが有用である。さらに、ウレタンを調製するために用いられるジイソシアネート及びジオールは、同一であっても異なっていてもよい2価の脂肪族基を含む。
【0063】
一実施形態では、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する光重合性化合物(a2)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルウレタンベースのオリゴマー又はポリエーテルウレタンベースのオリゴマーを含む。エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素不飽和二重結合、例えばアクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アクリルアミド、メタクリルアミドなど、好ましくはアクリレート及びメタクリレートとすることができる。これらのポリエステル又はポリエーテルウレタンベースのオリゴマーの官能価は1以上であり、具体的にはオリゴマー分子1個あたりエチレン性不飽和官能基約2個である。
【0064】
好適なウレタンベースのオリゴマーは当技術分野で既知であり、多くの様々な手順によって容易に合成し得る。例えば、多官能アルコールをポリイソシアネート(好ましくは、化学量論的過剰のポリイソシアネート)と反応させてNCO末端プレオリゴマーを形成し、その後、これをヒドロキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、例えばヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートと反応させてよい。多官能アルコールは、1分子当たり2個以上のOH基を含有する任意の化合物でよく、モノマーポリオール(例えば、グリコール)、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどであってよい。本発明の一実施形態におけるウレタンベースのオリゴマーは、(メタ)アクリレート官能基を含有する脂肪族ウレタンベースのオリゴマーである。
【0065】
好適なポリエーテル又はポリエステルウレタンベースのオリゴマーには、脂肪族又は芳香族ポリエーテル又はポリエステルポリオールと、(メタ)アクリレート基などのエチレン性不飽和官能基を含有するモノマーで官能化された脂肪族又は芳香族ポリイソシアネートとの反応生成物が含まれる。好ましい実施形態では、ポリエーテル及びポリエステルは、それぞれ脂肪族ポリエーテル及びポリエステルである。好ましい実施形態では、ポリエーテル及びポリエステルウレタンベースのオリゴマーは脂肪族ポリエーテル及びポリエステルウレタンベースのオリゴマーであり、(メタ)アクリレート基を含む。
【0066】
少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するエポキシベースのオリゴマーは、エポキシベースの(メタ)アクリレートオリゴマーとすることができる。エポキシベースの(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させることによって得ることができる。
【0067】
好適なエポキシドの例には、エポキシ化オレフィン、芳香族グリシジルエーテル又は脂肪族グリシジルエーテル、好ましくは芳香族又は脂肪族グリシジルエーテルのものが含まれる。
【0068】
可能なエポキシ化オレフィンの例には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンが含まれ、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はエピクロロヒドリンが特に好ましく、そしてエチレンオキシド及びエピクロロヒドリンが非常に特に好ましい。
【0069】
芳香族グリシジルエーテルは、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、フェノール/ジシクロペンタジエンのアルキル化生成物、例えば、2,5-ビス[(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]オクタヒドロ-4,7-メタノ-5H-インデン(CAS番号[13446-85-0])、トリス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]メタン異性体(CAS番号[66072-39-7])、フェノールベースのエポキシノボラック(CAS番号[9003-35-4])、及びクレゾールベースのエポキシノボラック(CAS番号[37382-79-9])である。
【0070】
脂肪族グリシジルエーテルの例には、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,1,2,2-テトラキス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エタン(CAS番号[27043-37-4])、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル(α,ω-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ポリ(オキシプロピレン)、CAS番号[16096-30-3])、及び水素化ビスフェノールA(2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン、CAS番号[13410-58-7])が含まれる。
【0071】
好ましい実施形態では、エポキシベースの(メタ)アクリレートオリゴマーは、芳香族グリシジル(メタ)アクリレートである。
【0072】
少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するポリカーボネートベースのオリゴマーは、ポリカーボネートベースの(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことができ、これは、例えばEP-A92269に記載のように、カルボン酸エステルを多価アルコール、好ましくは二価アルコール(ジオール、例えばヘキサンジオール)でトランスエステル化し、続いて遊離OH基を(メタ)アクリル酸でエステル化するか、あるいは(メタ)アクリル酸エステルでトランスエステル化することによって、簡易に得ることができる。これらは、ホスゲン、尿素誘導体を多価アルコール、例えば二価アルコールと反応させることによっても得ることができる。
【0073】
ポリカーボネートポリオールの(メタ)アクリレート、例えば、前述のジオール又はポリオールの1つとカルボン酸エステル及びヒドロキシル含有(メタ)アクリレートとの反応生成物も考えられる。
【0074】
好適なカルボン酸エステルの例には、エチレンカーボネート、1,2-又は1,3-プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はジブチルカーボネートが含まれる。
【0075】
好適なヒドロキシル含有(メタ)アクリレートの例として、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリルモノ-及びジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ-及びジ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールモノ-、ジ-、及びトリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0076】
光重合性化合物(a2)として、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するエポキシベースのオリゴマー、特にエポキシベースの(メタ)アクリレートオリゴマーが特に好ましい。
【0077】
光重合性化合物(a2)としてのオリゴマーは、好ましくは200~20000、より好ましくは200~10000g/モル、及び非常に好ましくは250~3000g/モルの数平均モル質量Mnを有する。
【0078】
一実施形態では、光重合性化合物(a2)としてのオリゴマーは、0~200℃、例えば5℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、80℃、100℃、120℃、150℃、180℃又は190℃、好ましくは10~180℃、より好ましくは30~150℃の範囲にガラス転移温度を有する。
【0079】
オリゴマーの代替として、又はオリゴマーに加えて、光重合性化合物(a2)は、反応性希釈剤(a1)とは異なる少なくとも1つのモノマーも含むことができ、このモノマーは、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、20個以下の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸及びそれらの無水物、及びビニル置換複素環化合物からなる群から選択することができる。
【0080】
(メタ)アクリレートモノマーは、単官能又は多官能(例えば二官能、三官能)の(メタ)アクリレートモノマーとすることができる。(メタ)アクリレートモノマーの例には、C~C20アルキル(メタ)アクリレート、C~C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、C~C10シクロアルキル(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、2-(2-エトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、エトキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0081】
~C20アルキル(メタ)アクリレートの具体例には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)メタクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-セチル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート(ISTA)が含まれる。C~C18アルキル(メタ)アクリレート、特にC~C16アルキル(メタ)アクリレート又はC~C12アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0082】
~C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばC~Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、又は3-ヒドロキシ-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0083】
~C10シクロアルキル(メタ)アクリレートの具体例には、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート及びトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートが含まれる。
【0084】
多官能(メタ)アクリレートモノマーの例として、(メタ)アクリル酸エステル、及び特に多官能アルコールのアクリル酸エステル、特にヒドロキシル基以外にはさらなる官能基を含まないもの、又はそれらがいずれかを含む場合にはエーテル基を含むものが挙げられる。このようなアルコールの例は、例えば、二官能性アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、及び縮合度がより高いそれらの対応物、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど、1,2-、1,3-又は1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化フェノール化合物、例えばエトキシル化及び/又はプロポキシル化ビスフェノール、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジメタノール、官能価3以上のアルコール、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、及び対応するアルコキシル化されたアルコール、特にエトキシル化及び/又はプロポキシル化されたアルコールである。
【0085】
本開示の文脈において、用語「(メタ)アクリルアミドモノマー」は、モノマーが(メタ)アクリルアミド部位を含むことを意味する。(メタ)アクリルアミド部位の構造は、CH=CR-CO-Nであり、式中、Rは水素又はメチルである。(メタ)アクリルアミドモノマーの具体例には、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)メタクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタメタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド及びN,N-ジエチルメタクリルアミドが含まれる。(メタ)アクリルアミドモノマーは単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0086】
20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族化合物の例には、例えばスチレン及びC~C-アルキル置換スチレン、例えばビニルトルエン、p-tert-ブチルスチレン及びα-メチルスチレンが含まれる。
【0087】
20個以下の炭素原子(例えば2~20個又は8~18個の炭素原子)を有するカルボン酸のビニルエステルの例には、ビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピオネート及びビニルアセテートが含まれる。
【0088】
3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸の例として、アクリル酸が挙げられる。
【0089】
好ましいモノマーは、(メタ)アクリレートモノマーである。
【0090】
一実施形態では、60℃での光重合性化合物(a2)の粘度は、10~100000cP、例えば20cP、50cP、100cP、200cP、500cP、800cP、1000cP、2000cP、3000cP、4000cP、5000cP、6000cP、7000cP、8000cP、10000cP、20000cP、30000cP、40000cP、50000cP、60000cP、70000cP、80000cP、90000cP、95000cP、好ましくは20~60000cP、例えば100~15000cP、又は500~60000cPの範囲とすることができる。
【0091】
成分(a)の量は、硬化性組成物の総質量に対して、20~94質量%、例えば25質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、70質量%、80質量%、90質量%、92質量%、好ましくは30~92質量%、より好ましくは40~90質量%又は40~75質量%、又は40~65質量%の範囲とすることができる。
【0092】
エポキシ前駆体(b)
本発明の硬化性組成物は、成分(b)として少なくとも1つのエポキシ前駆体を含む。本発明によれば、前記成分(b)を成分(a)中に溶解させる。
【0093】
本開示の文脈において、エポキシ前駆体とは、前駆体をさらに反応させてエポキシ樹脂(硬化エポキシ樹脂)が形成されることを意味する。
【0094】
一実施形態では、成分(b)としてのエポキシ前駆体は、エポキシ/アミン、エポキシ/ヒドロキシル、及びそれらの混合物からなる群から選択される反応性末端基を含む。
好ましい実施形態では、成分(b)としてのエポキシ前駆体は、少なくとも1つのエポキシ化合物(b1)及び少なくとも1つの潜在性エポキシ架橋剤(b2)を含む。
【0095】
エポキシ化合物は一般に、1分子あたり平均1個を超えるエポキシド基を有し、好適な硬化剤(架橋剤)との反応により、エポキシ樹脂に変換される又は硬化する。
【0096】
エポキシ化合物(b1)は、通常、1分子当たり2~10個、好ましくは2~6個、非常に特に好ましくは2~4個、及び特に2個のエポキシ基を有する。エポキシ基は特に、アルコール基とエピクロロヒドリンとの反応中に生成するグリシジルエーテル基を伴う。エポキシ化合物は、一般に1000g/モルより小さい平均モル質量(Mn)を有する低分子量化合物、又はより高分子量の化合物(ポリマー)を伴うことができる。エポキシ化合物(b1)は、好ましくは2~25、特に好ましくは2~10の単位のオリゴマー化度を有する。これらは、(シクロ)脂肪族化合物、又は芳香族基を有する化合物を伴うことができる。特に、エポキシ化合物は、2つの芳香族又は脂肪族6員環を有する化合物、又はこれらのオリゴマーを伴う。工業的に重要な材料は、エピクロロヒドリンと少なくとも2個の反応性H原子を有する化合物、特にポリオールとの反応によって得ることができるエポキシ化合物である。特に重要な材料は、エピクロロヒドリンと、少なくとも2個、好ましくは2個のヒドロキシ基を含み、2個の芳香族又は脂肪族6員環を含む化合物との反応により得ることができるエポキシ化合物である。本発明のこれらのエポキシ化合物(b1)として挙げることができる例は、特にビスフェノールA及びビスフェノールF、及び水素化ビスフェノールA及びビスフェノールFであり、対応するエポキシ化合物は、ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテル、又は水素化ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテルである。本発明において、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)をエポキシ化合物(b1)として用いることが通常である。本発明において、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DEGBA)及びビスフェノールFジグリシジルエーテル(DGEBF)という表現は、対応するモノマーだけでなく、対応するオリゴマーも意味する。本発明のエポキシ化合物(b1)は、好ましくはモノマー又はオリゴマーのジオールのジグリシジルエーテルである。ここでのジオールは、好ましくは、ビスフェノールA又はビスフェノールF、又は水素化ビスフェノールA又はビスフェノールFからなる群から選択されるものであり、そしてオリゴマージオールのオリゴマー化度は、好ましくは2~25、特に好ましくは2~10の単位である。
【0097】
本発明の他の好適なエポキシ化合物(b1)は、テトラグリシジルメチレンジアニリン(TGMDA)及びトリグリシジルアミノフェノール、及びそれらの混合物である。エピクロロヒドリンと他のフェノールとの反応生成物、例えばクレゾールとの反応生成物、又はフェノール-アルデヒド付加物、例えばフェノール-ホルムアルデヒド樹脂、特にノボラックとの反応生成物を使用することも可能である。エピクロロヒドリンに由来しないエポキシ化合物も適している。使用できるものの例としては、グリシジル(メタ)アクリレートとの反応によりエポキシ基を含むエポキシ化合物が挙げられる。
【0098】
本発明によれば、使用されるエポキシ化合物(b1)又はその混合物は、室温で液体であり、特に8000~12000Pa・sの範囲の粘度を有することが好ましい。エポキシ当量(EEW)から、エポキシ基1モル当たりのエポキシ化合物の平均質量がg単位で得られる。本発明のエポキシ化合物(b1)は、150~250、特に170~200の範囲のEEWを有することが好ましい。
【0099】
エポキシ化合物(b1)の量は、硬化性組成物の総質量に対して、5~50質量%、例えば10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、又は45質量%、好ましくは10~50質量%、15~50質量%、20~50質量%、25~50質量%、30~50質量%、又は5~45質量%、10~45質量%、15~45質量%、20~45質量%、25~45質量%、又は30~45質量%の範囲とすることができる。
【0100】
本発明によれば、成分(b)としてのエポキシ前駆体は、少なくとも1つのエポキシ化合物(b1)に加えて、少なくとも1つの潜在性エポキシ架橋剤(b2)を含むことができる。
【0101】
好ましい実施形態では、潜在性エポキシ架橋剤(b2)の融点は、100~250℃、例えば110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、220℃又は240℃、好ましくは130~220℃、130~195℃又は140~195℃、より好ましくは150~190℃又は160~185の範囲とすることができる。
【0102】
好ましい実施形態によれば、潜在性エポキシ架橋剤(b2)は、ジアミノジフェニルスルホン及び/又はその誘導体とすることができる。
【0103】
潜在性エポキシ架橋剤は、式(I)の化合物、式(II)の化合物及び式(III)の化合物:
【化6】
(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立してH又はC~Cアルキルである)
【化7】
(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立してH又はC~Cアルキルである)
【化8】
(式中、R、R10、R11、及びR12は、それぞれ独立してH又はC~Cアルキルである)
からなる群から選択することができる。
【0104】
好ましくは、式(I)中のR、R、R及びRは、それぞれ独立してH又はC~Cアルキル、より好ましくはH、メチル又はエチル、特にHである。
【0105】
好ましくは、式(II)中のR、R、R及びRは、それぞれ独立してH又はC~Cアルキル、より好ましくはH、メチル又はエチル、特にHである。
【0106】
好ましくは、式(III)中のR、R10、R11及びR12は、それぞれ独立してH又はC~Cアルキル、より好ましくはH、メチル又はエチル、特にHである。
【0107】
好ましい実施形態では、潜在性架橋剤(b2)は反応性希釈剤(a1)中に可溶である。反応性希釈剤(a1)に対する潜在性架橋剤(b2)の溶解度は、1g/100mL超、5g/100mL超、10g/100mL超、20g/100mL超、例えば30g/100mL超、又は40g/100mL超、又は50g/100mL超とすることができる。
【0108】
好ましい実施形態では、エポキシ化合物(b1)及び潜在性架橋剤(b2)の両方が反応性希釈剤(a1)中に可溶である。
【0109】
潜在性架橋剤(b2)の量は、一般にエポキシ化合物(b1)の量に依存する。通常、潜在性架橋剤(b2)の量は、硬化性組成物の総質量に対して、2~30質量%、例えば5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、好ましくは10~30質量%又は10~25質量%又は10~20質量%の範囲とすることができる。
【0110】
成分(b)の総量は、7~79質量%、例えば8質量%、9質量%、10質量%、15質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%、60質量%、又は70質量%、好ましくは7~69質量%、又は9~59質量%、より好ましくは20~59質量%、又は30~55質量%の範囲とすることができる。
【0111】
成分(a)と成分(b)との質量比は、1:5~20:1、例えば1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、5:1、10:1、15:1、好ましくは1:3~10:1又は1:3~5:1、1:2~10:1又は1:2~5:1、1:1.5~10:1又は1:1.5~5:1、1:1.1~10:1又は1:1.1~5:1の範囲とすることができる。
【0112】
光開始剤(C)
硬化性組成物は、成分(C)として少なくとも1つの光開始剤を含む。例えば、光開始剤成分(C)には、少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤及び/又は少なくとも1つのイオン性光開始剤、及び好ましくは少なくとも1つ(例えば1つ又は2つ)のフリーラジカル光開始剤が含まれてよい。例えば、3D印刷用の組成物で用いるために、当技術分野で既知のあらゆる光開始剤を使用することが可能であり、例えば、SLA、DLP又はPPJ(フォトポリマー噴射)のプロセスが使用される技術分野で既知の光開始剤を使用することが可能である。
【0113】
光開始剤の例には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、塩素化アセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノンエステル、ベンゾイン及び誘導体(例えばベンゾインアセテート、ベンゾインアルキルエーテル)、ジメトキシベンゾイン、ジベンジルケトン、ベンゾイルシクロヘキサノール及び他の芳香族ケトン、アルファ-アミノケトン化合物、フェニルグリオキシレート化合物、オキシムエステル、アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキシド、アシルホスホネート、ケトスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジフェニルジチオカーボネート、それらの混合物及びアルファ-ヒドロキシケトン化合物との混合物、又はアルファ-アルコキシケトン化合物が含まれる。
【0114】
好適なアシルホスフィンオキシド化合物の例は、式(XII):
【化9】
(式中、
50は、非置換のシクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ナフチル又はビフェニリルであり、又は1つ以上のハロゲン、C~C12アルキル、C~C12アルコキシ、C~C12アルキルチオ又はNR5354で置換されたシクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ナフチル又はビフェニリルであり、
又はR50は、非置換のC~C20アルキル、又は1つ以上のハロゲン、C~C12アルコキシ、C~C12アルキルチオ、NR5354又は-(CO)-O-C~C24アルキルで置換されたC~C20アルキルであり、
51は、非置換のシクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ナフチル又はビフェニリルであり、又は1つ以上のハロゲン、C~C12アルキル、C~C12アルコキシ、C~C12アルキルチオ又はNR5354で置換されたシクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ナフチル又はビフェニリルであり、又はR51は-(CO)R’52であり、又はR51は、非置換の又は1つ以上のハロゲン、C~C12アルコキシ、C~C12アルキルチオ、又はNR5354によって置換されたC~C12アルキルであり、
52及びR’52は、互いに独立して、非置換のシクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ナフチル又はビフェニリルであるか、又は1つ以上のハロゲン、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシにより置換されたシクロヘキシル、シクロペンチル、フェニル、ナフチル又はビフェニリルであるか、又はR52はS原子又はN原子を含む5員又は6員の複素環であり、
53及びR54は、互いに独立して水素、非置換のC~C12アルキル又は1つ以上のOH又はSHで置換されたC~C12アルキルであり、アルキル鎖は任意に1~4個の酸素原子によって中断されており、又はR53及びR54は、互いに独立してC~C12アルケニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル又はフェニルである)
のものである。
【0115】
光開始剤の具体的な例には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-N,N-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとの組み合わせ、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル1-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシドと、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オンと、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネートと、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシドとの組み合わせ、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0116】
特に好ましい実施形態では、光開始剤(C)は、式(XII)の化合物、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニル)ホスフィン酸エステル、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジペントキシフェニルホスフィンオキシド、及びビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドである。
【0117】
光開始剤(C)の量は、組成物の総質量に対して0.1~10質量%、例えば0.2質量%、0.5質量%、0.8質量%、1質量%、2質量%、3質量%、5質量%、8質量%、又は10質量%、好ましくは0.1~5質量%、又は0.5~5質量%、又は0.5~3質量%の範囲とすることができる。
【0118】
一実施形態では、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(a) 20~94質量%の少なくとも1つの光重合性液体、
(b) 5~79質量%の少なくとも1つのエポキシ前駆体、及び
(c) 0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を、硬化性組成物の総質量に対して含む。
【0119】
一実施形態では、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(a) 30~92質量%の少なくとも1つの光重合性液体、
(b) 7~69質量%の少なくとも1つのエポキシ前駆体、及び
(c) 0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を、硬化性組成物の総質量に対して含む。
【0120】
一実施形態では、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(a) 40~90質量%の少なくとも1つの光重合性液体、
(b) 9~59質量%の少なくとも1つのエポキシ前駆体、及び
(c) 0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を、硬化性組成物の総質量に対して含む。
【0121】
一実施形態では、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(a) 40~75質量%の少なくとも1つの光重合性液体、
(b) 20~59質量%の少なくとも1つのエポキシ前駆体、及び
(c) 0.1~5質量%の少なくとも1つの光開始剤
を、硬化性組成物の総質量に対して含む。
【0122】
一実施形態では、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(a) 40~75質量%の少なくとも1つの光重合性液体、
(b) 20~59質量%の少なくとも1つのエポキシ前駆体、及び
(c) 0.5~5質量%の少なくとも1つの光開始剤
を、硬化性組成物の総質量に対して含む。
【0123】
好ましい実施形態では、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(a1) 10~50質量%の少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤、
(a2) 10~60質量%の、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つの光重合性化合物、
(b1) 5~50質量%の少なくとも1つのエポキシ化合物、
(b2) 2~30質量%の少なくとも1つの潜在性エポキシ架橋剤、及び
(c) 0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を、硬化性組成物の総質量に対して含む。
【0124】
好ましい実施形態では、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(a1) 15~50質量%の少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤、
(a2) 10~55質量%の、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つの光重合性化合物、
(b1) 10~50質量%の少なくとも1つのエポキシ化合物、
(b2) 10~30質量%の少なくとも1つの潜在性エポキシ架橋剤、及び
(c) 0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を、硬化性組成物の総質量に対して含む。
【0125】
好ましい実施形態では、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(a1) 10~40質量%の少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤、
(a2) 15~50質量%の、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つの光重合性化合物、
(b1) 15~50質量%の少なくとも1つのエポキシ化合物、
(b2) 10~25質量%の少なくとも1つの潜在性エポキシ架橋剤、及び
(c) 0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を、硬化性組成物の総質量に対して含む。
【0126】
好ましい実施形態では、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(a1) 10~40質量%の少なくとも1つの単官能性反応性希釈剤、
(a2) 15~50質量%の、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する少なくとも1つの光重合性化合物、
(b1) 15~50質量%の少なくとも1つのエポキシ化合物、
(b2) 10~25質量%の少なくとも1つの潜在性エポキシ架橋剤、及び
(c) 0.5~5質量%の少なくとも1つの光開始剤
を、硬化性組成物の総質量に対して含む。
【0127】
耐衝撃性改質剤(D)
本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの耐衝撃性改質剤(D)を任意に含むことができる。
【0128】
一実施形態では、耐衝撃性改質剤は、アクリルゴム、ASAゴム、ジエンゴム、オルガノシロキサンゴム、EPDMゴム、SBS又はSEBSゴム、ABSゴム、MBSゴム、グリシジルエステル、ポリスチレン-ポリブタジエン、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)、ポリスチレン-ポリイソプレン、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン-ポリ(α-メチルスチレン)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)及びメチルメタクリレート-ブチルアクリレート、ポリメチルメタクリレートをグラフトしたポリアルキルアクリレート、スチレン-アクリロニトリルコポリマーをグラフトしたポリアルキルアクリレート、ポリエチルメタクリレートをグラフトしたポリオレフィン、スチレン-アクリロニトリルコポリマーをグラフトしたポリオレフィン、ブタジエンコア-シェルポリマー、ポリフェニレンエーテル-ポリアミド、ポリアミド、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリブタジエンにグラフトしたスチレン-アクリロニトリルコポリマー、又は任意の2つ以上の組み合わせから選択することができる。
【0129】
一実施形態では、耐衝撃性改質剤は、第一の成分及び第二の成分を含み、第一の成分は、エチレンと不飽和エポキシドとのコポリマーであり、そして第二の成分は、エチレンとアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーである。不飽和エポキシドは、典型的には、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、グリシジルマレエート及びグリシジルイタコネート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-シクロヘキセン-1-グリシジルエーテル、シクロヘキセン-4,5-ジグリシジルカルボキシレート、シクロヘキサン-4-グリシジルカルボキシレート、5-ノルボルネン-2-メチル-2-グリシジルカルボキシレート、又はエンド-シス-ビシクロ-(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジグリシジルジカルボキシレートから選択される。アルキル(メタ)アクリレートは、典型的には、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、又は2-エチルヘキシルアクリレートから選択される。
【0130】
一実施形態では、有用な耐衝撃性改質剤は、実質的に非晶質のコポリマー樹脂であり、限定するものではないが、アクリルゴム、ASAゴム、ジエンゴム、オルガノシロキサンゴム、EPDMゴム、SBS又はSEBSゴム、ABSゴム、MBSゴム及びグリシジルエステル耐衝撃性改質剤が含まれる。
【0131】
アクリルゴムは、架橋した又は部分的に架橋した(メタ)アクリレートゴム状コア相、好ましくはブチルアクリレートを有する、多段階のコア-シェル型インターポリマー組成物である。この架橋したアクリル酸エステルのコアには、アクリル系樹脂又はスチレン系樹脂、好ましくはメチルメタクリレート又はスチレンの外殻が結合しており、この外殻がゴム状コア相を相互貫通している。樹脂シェル内にアクリロニトリル又は(メタ)アクリロニトリルなどの少量の他のモノマーを組み込むことも、好適な耐衝撃性改質剤を提供する。相互貫入ネットワークは、樹脂相を形成するモノマーが、先に重合及び架橋した(メタ)アクリレートゴム状相の存在下で重合及び架橋するときに提供される。具体例には、架橋ポリブチルアクリレートコアと、乳化重合により調製され、そして噴霧乾燥により単離されたポリメチルメタクリレートシェルからなるコアシェルアクリルポリマー粒子(Dow Chemical Co社のPARALOID EXL2300G)が含まれる。
【0132】
別の実施形態では、ブロックコポリマー及びゴム状耐衝撃性改質剤が提供される。例えば、A-B-Aトリブロックコポリマー及びA-Bジブロックコポリマーである。耐衝撃性改質剤として使用できるA-B及びA-B-Aタイプのブロックコポリマーゴム添加剤には、典型的にはスチレンブロックである1つ又は2つのアルケニル芳香族ブロックと、ゴムブロック、例えば部分的に水素化されていてよいブタジエンブロックとから構成される熱可塑性ゴムが含まれる。これらのトリブロックコポリマーとジブロックコポリマーの混合物が、特に有用である。
【0133】
好適なA-B及びA-B-A型のブロックコポリマーは、例えば、米国特許第3,078,254号、第3,402,159号、第3,297,793号、第3,265,765号、及び第3,594,452号、及び英国特許第1,264,741号に開示されている。A-B及びA-B-Aブロックコポリマーの典型的な種の例としては、ポリスチレン-ポリブタジエン(SBR)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)、ポリスチレン-ポリイソプレン、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン(SBR)、ポリスチレン-ポリ(エチレン-プロピレン)-ポリスチレン、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン-ポリ(α-メチルスチレン)、及びこれらの選択的水素物などが挙げられる。前述のブロックコポリマーの少なくとも1つを含む混合物も有用である。このようなA-B及びA-B-Aブロックコポリマーは、Phillips Petroleum社から商標SOLPRENEで、Shell Chemical Co.社から商標KRATONで、Dexco社から商標VECTORで、及びKuraray社から商標SEPTONで市販されている。
【0134】
耐衝撃性改質剤として有用な他のゴムとしては、ポリメチルメタクリレート又はスチレン-アクリロニトリルコポリマーをグラフトしたポリアルキルアクリレート又はポリオレフィンを含む、0℃未満、好ましくは約40℃~約-80℃のTg(ガラス転移温度)を有するゴム状成分を有するグラフト及び/又はコアシェル構造体が挙げられる。ゴム含有量は、ある実施形態では少なくとも約40質量%、他の実施形態では少なくとも約60質量%、そしてさらに他の実施形態では約60質量%~約90質量%である。
【0135】
耐衝撃性改質剤として使用するのに好適な他のゴムは、Rohm&Haas社からP ARALO ID(登録商標)EXL2600の商品名で販売されているタイプのブタジエンコア-シェルポリマーである。最も好ましくは、耐衝撃性改質剤は、ブタジエンをベースとするゴム状コアと、メチルメタクリレート単独又はスチレンとの組み合わせから重合された第2段とを有する2段ポリマーを含む。この種の耐衝撃性改質剤には、架橋ブタジエンポリマーにグラフトしたアクリロニトリル及びスチレンを含むものも含まれ、これは米国特許第4,292,233号に開示されている。
【0136】
ここで有用な他の耐衝撃性改質剤として、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、又はポリフェニレンエーテルとポリアミドとの組み合わせを含むものが挙げられる。組成物はまた、ビニル芳香族-シアン化ビニルコポリマーを含んでもよい。好適なシアン化ビニル化合物として、アクリロニトリル及び置換されたシアン化ビニル、例えばメタクリロニトリルが挙げられる。好ましくは、耐衝撃性改質剤は、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(以下、SAN)を含む。好ましいSAN組成物は、いくつかの実施形態では少なくとも10質量%のアクリロニトリル(AN)を含み、他の実施形態では約25質量%~約28質量%のANを含み、残りはスチレン、p-メチルスチレン、又はアルファ-メチルスチレンである。ここで有用なSANの別の例として、SANをゴム状基材、例えば1,4-ポリブタジエンにグラフトしてゴム状グラフトポリマー耐衝撃性改質剤を製造することによって改質されたものが挙げられる。この種の高ゴム含量(50質量%超)の樹脂(HRG-ABS)は、ポリエステル樹脂及びそのポリカーボネートブレンドの耐衝撃性改良に特に有用である。
【0137】
いくつかの実施形態では、耐衝撃性改質剤は高ゴムグラフトABS改良剤であり、ポリブタジエンにグラフトされた90質量%以上のSANを含み、残りは遊離のSANである。いくつかの例示的な実施形態には、アクリロニトリル約8質量%、ブタジエン43質量%及びスチレン49質量%の組成物、及びアクリロニトリル約7質量%、ブタジエン50質量%及びスチレン43質量%の組成物が含まれる。これらの材料は、それぞれBLENDEX336及びBLENDEX41の商品名で市販されている(G.E.Plastics社、マサチューセッツ州ピッツフィールド)。
【0138】
他の好適な耐衝撃性改質剤として、アルキルアクリレート、スチレン及びブタジエンを用いた乳化重合により製造されたコアシェル耐衝撃性改質剤を含む混合物が挙げられる。これらには、例えば、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)及びメチルメタクリレート-ブチルアクリレートコアシェルゴムが含まれる。
【0139】
他の好適な耐衝撃性改質剤として、エチレンと不飽和エポキシドとの共重合によって、又は不飽和エポキシドをポリエチレンにグラフトすることによって得ることができる、エチレンと不飽和エポキシドとのコポリマーである少なくとも第一の成分、及びエチレンとアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーである少なくとも第二の成分を有するものが挙げられる。
【0140】
第一の成分は、典型的には、エチレンと不飽和エポキシドとのコポリマーであり、エチレンと不飽和エポキシドとの共重合によって、又は不飽和エポキシドをポリエチレンにグラフトすることによって得ることができる。このようなグラフトは、過酸化物の存在下、溶媒相中で、又は溶融ポリエチレン上で行ってもよい。エチレンと不飽和エポキシドとの共重合は、フリーラジカル重合法として実施することができる。フリーラジカル重合は、約200バール~約2500バールの圧力で行ってよい。
【0141】
第一の成分で使用するのに好適な不飽和エポキシドとして、限定するものではないが、脂肪族グリシジルエステル及びエーテル、例えばアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、グリシジルマレエート及びグリシジルイタコネート、グリシジル(メタ)アクリレート、及び脂環式エステル及びエーテル、例えば2-シクロヘキセン-l-グリシジルエーテル、シクロヘキセン-4,5-ジグリシジルカルボキシレート、シクロヘキサン-4-グリシジルカルボキシレート、5-ノルボルネン-2-メチル-2-グリシジルカルボキシレート及びエンド-シス-ビシクロ-(2,2,1)-5-ヘプテン-2,3-ジグリシジルジカルボキシレートが挙げられる。いくつかの実施形態では、エポキシドはグリシジル(メタ)アクリレートである。
【0142】
第一の成分に組み込むことができる他のモノマーとして、限定するものではないが、α-オレフィン、例えばプロピレン、1-ブテン、及びヘキサン、飽和カルボン酸のビニルエステル、例えばビニルアセテート又はビニルプロピオネート、及び飽和カルボン酸のエステル、例えば2~24個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0143】
不飽和エポキシドを他のポリマーにグラフトする場合、好適な他のポリマーとして、限定するものではないが、ポリエチレン(PE)、エチレンとアルファ-オレフィンとのコポリマー、エチレンと飽和カルボン酸の少なくとも1つのビニルエステル、例えばビニルアセテート又はビニルプロピオネートとのコポリマー、エチレンと、不飽和カルボン酸の少なくとも1つのエステル、例えば2~24個の炭素原子を有するアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマー、エチレン/プロピレンゴム(EPR)エラストマー、エチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)エラストマー、及び任意の2つ以上のこのようなポリマーの混合物が挙げられる。例えば、VLDPE(超低密度のPE)、ULDPE(超低密度のPE)、又はPEメタロセンポリマーなどの材料を使用してよい。ここで使用するPEメタロセンポリマーは、初期遷移金属メタロセンなどのメタロセン触媒を用いて製造されたポリエチレンポリマーである。チタノセンジクロリド及びジルコノセンジクロリドは、当業者に既知の2つのそのような例である。
【0144】
いくつかの実施形態では、第一の成分は、最大40質量%のアルキル(メタ)アクリレートを含有するエチレン/アルキル(メタ)アクリレート/不飽和エポキシドコポリマーである。
【0145】
耐衝撃性改質剤に使用するのに好適なアルキル(メタ)アクリレートとして、限定するものではないが、2~24個の炭素原子を有するものが挙げられる。例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートが、使用できるいくつかのものである。アルキル(メタ)アクリレートの量は、約20質量%~約35質量%の範囲であってよい。
【0146】
前述のように、カルボン酸無水物官能基を第一の成分に組み込んでよい。好適な例は、エチレン、アルキル(メタ)アクリレート、及び不飽和カルボン酸の無水物のコポリマー、及びエチレン、飽和カルボン酸のビニルエステル、及び不飽和カルボン酸の無水物のコポリマーである。いくつかの実施形態では、無水物官能基は、不飽和ジカルボン酸の無水物である。例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸及び無水テトラヒドロフタル酸が例として挙げられる。不飽和カルボン酸無水物の量は、コポリマーに対して15質量%以下、そしてエチレンの量は少なくとも50質量%とすることができる。
【0147】
いくつかの実施形態では、第一の成分の流動性指数(MFI)は、190℃、2.16kgで約0.1~約50g/10分であり、他の実施形態では、190℃、2.16kgで約2~約40g/10分であり、そしてさらに他の実施形態では、190℃、2.16kgで約5~約20g/10分である。
【0148】
第二の成分は、典型的には、エチレンとアルキル(メタ)アクリレートとのコポリマーである。好適なアルキル(メタ)アクリレートには上述のものが含まれ、限定するものではないが、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートが含まれる。第二の成分中のアルキル(メタ)アクリレートの量は、約20質量%~約40質量%の範囲である。
【0149】
耐衝撃性改質剤を形成する際、混合物中の第一の成分の質量%比は、いくつかの実施形態では約10質量%~約50質量%、いくつかの他の実施形態では約15質量%~約40質量%、そしていくつかのさらなる実施形態では約20質量%~約30質量%の範囲である。エチレン-アルキル(メタ)アクリレートコポリマーが豊富な耐衝撃性改質剤は、室温以下で改善された耐衝撃性を示す。このような耐衝撃性は、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート-グリシジルアクリレートコポリマーに富む組成物の耐衝撃性よりも高い。
【0150】
本発明の硬化性組成物中の耐衝撃性改質剤は、硬化性組成物の総質量に対して0~15質量%、例えば1~15質量%、より好ましくは3~12質量%の量で存在し得る。
【0151】
補助剤(E)
本発明の組成物は、1つ以上の補助剤をさらに含んでよい。
【0152】
補助剤として、表面活性物質、難燃剤、核剤、潤滑剤ワックス、染料、顔料、触媒、UV吸収剤及び安定剤、例えば酸化、加水分解、光、熱又は変色に対する安定剤、無機及び/又は有機充填剤、強化材料及び可塑剤が好ましい例として挙げられる。加水分解阻害剤として、オリゴマー及び/又はポリマーの脂肪族又は芳香族カルボジイミドが好ましい。本発明の硬化された材料を、老化及び破壊的な環境影響に対して安定化させるために、好ましい実施形態では安定化剤が系に添加される。
【0153】
本発明の組成物が使用中に熱酸化による損傷に曝される場合、好ましい実施形態では、酸化防止剤が添加される。フェノール系酸化防止剤が好ましい。フェノール系酸化防止剤、例えばBASF SE社からのIrganox(登録商標)1010は、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel編、Hanser Publishers,Munich、2001年、第98~107頁、第116頁及び第121頁に記載されている。
【0154】
本発明の組成物は、UV光に曝される場合、UV吸収剤を用いてさらに安定化することが好ましい。UV吸収剤は、高エネルギーのUV光を吸収してエネルギーを放散する分子として一般に知られている。産業において使用される慣用のUV吸収剤は、例えば、桂皮酸エステル、ジフェニルシアンアクリレート、ホルムアミジン、ベンジリデンマロネート、ジアリールブタジエン、トリアジン及びベンゾトリアゾールの群に属する。市販のUV吸収剤の例は、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel編、Hanser Publishers,Munich、2001年、第116~122頁に見出される。
【0155】
上述の補助剤に関するさらなる詳細は、専門文献、例えばPlastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel編、Hanser Publishers,Munich、2001年に見出される。
【0156】
本発明によれば、補助剤は、硬化性組成物の総質量に対して、0~50質量%、0.01~50質量%、例えば0.5~30質量%の量で存在してよい。
【0157】
組成物の調製
本開示のさらなる側面は、組成物の成分の混合を含む、本発明の硬化性組成物の調製方法に関する。
【0158】
本発明の実施形態によれば、混合は室温で、又は好ましくは上昇させた温度(例えば30~90℃、好ましくは35~80℃)で、撹拌しながら行うことができる。組成物が均一に共に混合される限り、混合時間及び撹拌速度に特に制限はない。具体的な実施形態では、混合は1000~3000RPM、好ましくは1500~2500RPMで、5~60分間、より好ましくは6~30分間行うことができる。
【0159】
コーティング及びその調製
本開示の1つの側面は、本発明の硬化性組成物又は本発明の方法によって得られた硬化性組成物を使用することを含む、コーティングの方法に関する。
【0160】
一実施形態では、コーティングの方法は、以下の工程:
(i) 組成物の層を構造物の表面上に適用する工程、
(ii) 光を適用して本発明による硬化性組成物を硬化させて中間コーティングを形成する工程、
(iii) 硬化したコーティングを加熱及び/又はマイクロ波照射によって処理して最終的なコーティングを形成する工程
を含む。
【0161】
具体的な実施形態では、放射光の波長は350~420nm、例えば355、360、365、385、395、405、420nmの範囲とすることができる。放射線のエネルギーは0.5~2000mw/cm、例えば1mw/cm、2mw/cm、3mw/cm、4mw/cm、5mw/cm、8mw/cm、10mw/cm、20mw/cm、30mw/cm、40mw/cm、又は50mw/cm、100mw/cm、200mw/cm、400mw/cm、500mw/cm、1000mw/cm、1500mw/cm又は2000mw/cm、好ましくは200~2000mw/cmの範囲とすることができる。放射時間は0.5~10秒、好ましくは0.6~6秒の範囲とすることができる。
【0162】
通常、工程(iii)の熱処理における温度は、130~220℃、好ましくは150~200℃の範囲である。本発明によれば、工程(iii)の処理時間は、30分~500分、例えば60分、120分、180分、250分、300分、400分、好ましくは60分~250分の範囲とすることができる。
【0163】
2D物体及びその調製
本開示の1つの側面は、本発明の硬化性組成物又は本発明の方法によって得られた硬化性組成物を使用することを含む、2D物体を形成する方法に関する。
【0164】
一実施形態では、2D物体を形成する方法は、以下の工程:
(i) 基材上に組成物を施与して設計されたパターンを形成する工程、
(ii) 光を適用して本発明による硬化性組成物を硬化させて中間2D物体を形成する工程、
(iii) 硬化した2D物体全体を加熱及び/又はマイクロ波照射によって処理して最終的な2D物体を形成する工程
を含む。
【0165】
具体的な実施形態では、放射線光の波長は350~420nmの範囲、例えば355、360、365、385、395、405、420nmとすることができる。放射線のエネルギーは、0.5~2000mw/cmの範囲とすることができる。放射時間は0.5~10秒、好ましくは0.6~6秒の範囲とすることができる。
【0166】
2D物体を形成する方法には、インクジェット印刷、フォトリソグラフィ、及び当業者に既知の他の技術が含まれる。
【0167】
好ましくは、複雑な形状の硬化した2D物体の製造は、例えば長年知られているインクジェット印刷によって行われる。この技術では、2つの工程(1)及び(2)を交互に繰り返しながら、インク施与装置の助けを借りて、放射線硬化性組成物から所望の形状の物品を作製する。工程(1)では、放射線硬化性組成物の層が基材上の所望の位置に施与され、この間、インク施与装置の動きはコンピュータによって制御される。工程(2)では、施与された組成物に放射線が照射され、2D物体が形成される。
【0168】
複雑な形状の硬化した2D物体の製造は、例えばフォトリソグラフィによっても行うことができる。この技術では、所望の形状の物品は、形成される形状の物品の所望の断面積に対応する表面領域内で、適切な画像化放射線、好ましくはコンピュータ制御された走査レーザービームからの画像化放射線の助けを借りて、放射線硬化性組成物から形成される。
【0169】
通常、工程(iii)の熱処理における温度は、130~220℃、好ましくは150~200℃の範囲である。本発明によれば、工程(iii)の処理時間は、30分~500分、例えば60分、120分、180分、250分、300分、400分、好ましくは60分~250分の範囲とすることができる。
【0170】
3D印刷した物体及びその調製
本開示の1つの側面は、本発明の硬化性組成物又は本発明の方法によって得られた硬化性組成物を使用することを含む、3D印刷した物体を形成する方法に関する。
【0171】
一実施形態では、3D物体を形成する方法は、以下の工程:
(i) 光を適用して本発明による硬化性組成物を層ごとに硬化させて中間3D物体を形成する工程、
(ii) さらに光を適用して中間3D物体を全体として硬化させて硬化した3D物体を形成する工程、及び
(iii) 硬化した3D物体全体を加熱及び/又はマイクロ波照射によって処理して最終的な3D物体を形成する工程
を含む。
【0172】
具体的な実施形態では、放射光の波長は350~420nm、例えば355、360、365、385、395、405、420nmの範囲とすることができる。放射線のエネルギーは、デジタル光処理については0.5~2000mw/cm、例えば1mw/cm、2mw/cm、3mw/cm、4mw/cm、5mw/cm、8mw/cm、10mw/cm、20mw/cm、30mw/cm、40mw/cm、又は50mw/cm、100mw/cm、200mw/cm、400mw/cm、500mw/cm、1000mw/cm、1500mw/cm又は2000mw/cm、好ましくは0.5~50mw/cmの範囲、又はステレオリソグラフィーについては0.5~400mw/cmの範囲、又はフォトポリマー噴射については0.5~2000mw/cmの範囲とすることができる。放射時間は0.5~10秒、好ましくは0.6~6秒の範囲とすることができる。
【0173】
3D印刷した物体を形成するプロセスには、ステレオリソグラフィー(SLA)、デジタル光処理(DLP)、又はフォトポリマー噴射(PPJ)、及び当業者に既知の他の技術が含まれる。好ましくは、複雑な形状の硬化した3D物体の製造は、例えば、長年知られているステレオリソグラフィーによって行われる。この技術では、2つの工程(1)及び(2)を交互に繰り返しながら、放射線硬化性組成物から所望の形状の成形品が組み立てられる。工程(1)では、その1つの境界が組成物の表面である放射線硬化性組成物の層を、適切な画像化放射線、好ましくはコンピュータ制御された走査レーザビームからの画像化放射線によって、形成される成形品の所望の断面積に対応する表面領域内で硬化させ、そして工程(2)において、硬化させた層を放射線硬化性組成物の新しい層で覆い、そして工程(1)及び工程(2)の連続を、所望の形状が完成するまでしばしば繰り返す。
【0174】
通常、工程(iii)の熱処理における温度は、130~220℃、好ましくは150~200℃の範囲である。本発明によれば、工程(iii)の処理時間は、30分~500分、例えば60分、120分、180分、250分、300分、400分、好ましくは60分~250分の範囲とすることができる。
【0175】
本開示のさらなる側面は、本発明の硬化性組成物から形成された、又は本発明の方法によって得られた3D印刷した物体に関する。
【0176】
3D印刷した物体には、配管設備、家庭用品、玩具、治具、型、及び車両内の内装部品及びコネクタが含まれる。
【0177】
本発明の3D印刷した物体は、100℃超、好ましくは115℃超、より好ましくは125℃超の1.82MPaでのHDT、及び/又は120℃超、好ましくは130℃超、より好ましくは140℃超、特に145℃超の0.455MPaでのHDTを有することができる。
【実施例
【0178】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、これらは本発明を説明するために記載するものであり、限定するものとして解釈されるものではない。他に断りのない限り、全ての部及びパーセンテージは質量によるものである。
【0179】
材料及び略語
成分(a):
Miramer PE210:二官能性エポキシアクリレート、質量平均分子量520、MIWON社製造、
Miramer M240:エチレンオキシド(平均4モル)変性ビスフェノールAジアクリレート(BisA-EO4-DA)、MIWON社製造、25℃でのモノマー粘度、1100ミリパスカル秒、質量平均分子量512、MIWON社製造、
Bomar BRC-843D:二官能性ウレタンアクリレート、Tg45℃、粘度60℃で4200cP、Dymax社製造、
Sartomer SR833S:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、Sartomer Co社、Exton,PAから入手可能、
DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート、
VMOX:ビニルメチルオキサゾリジノン、DDSのVMOXに対する溶解度は60%超である、
NVP:N-ビニルピロリドン、DDSのNVPに対する溶解度は40%超である、
NVCL:N-ビニルカプロラクタム、DDSのNVCLに対する溶解度は50%超である。
【0180】
成分(b):
DGEBA:ビスフェノールAジグリシジルエーテル、Araldite MY790-1、二官能性ビスフェノールAベースのエポキシ樹脂。分子量:338~352g/モル、エポキシ価:5.7~5.9当量/kg、Huntsman社製、
DDS:4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、固体、Mp175℃、
MTHPA:メチルテトラヒドロフタル酸無水物、液体、
MHHPAメチルヘキサヒドロフタル酸無水物、液体、
MNA:メチルナジン酸無水物、液体。
【0181】
成分(c):
TPO:Omnicure社の2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド。
【0182】
成分(d):
PARALOID EXL2300G:架橋ポリブチルアクリレートコア及びポリメチルメタクリレートシェルからなるコアシェルアクリルポリマー粒子、乳化重合により調製され、噴霧乾燥により単離された(Dow Chemical Co社)、
Albidur(登録商標)EP2240A:ビスフェノールAベースのエポキシ樹脂に高性能エラストマーを分散させたもので、シリコーンゴム含有量は40質量%、EEWは290~315g/当量(Evonik社)。
【0183】
方法
(1) 引張試験
引張試験は、ISO527-5A:2009に準拠して、Zwick社、Z050引張装置を用いて行った。使用したパラメータには、開始位置:50mm、予負荷:0.02MPa、試験速度:50mm/分が含まれていた。
【0184】
(2) 粘度
粘度はBrookfield AMETEK DV3Tレオメーターを用いて測定した。各試験に約0.65mlのサンプルを使用し、せん断速度は粘度に応じて1秒-1から30秒-1の間で選択した。
【0185】
(3) アイゾットノッチ衝撃強さ(ASTM-D256-10)
(4) アイゾットノッチなし衝撃強さ(ASTM-D4812-11)
(5) 熱たわみ温度(HDT)(ASTM-D648-07)
【0186】
実施例1 - VMOX中のDGEBA/DDSの貯蔵安定性
エポキシ化合物DGEBAは、潜在性エポキシ架橋剤DDS(VMOXに予め溶解)と混合した。各成分の量及び室温貯蔵後のDGEBA/DDS/VMOX混合物(EP1)の粘度を以下の表1に示した。
【0187】
【表1】
【0188】
実施例2及び3
実施例2及び3の硬化性組成物は、表2に示す量の全成分をプラスチックバイアルに添加し、スピードミキサーにより2000RPMで10分間、50℃で混合して液体の硬化性組成物を得ることによって調製した。
【0189】
硬化性組成物は、UVキャスティング法を用いて試験片に調製し、そのUVキャスティング法では、硬化性組成物をあらかじめ定義されたテフロン(登録商標)/シリコーン製の型に流し込み、その後UV照射を行った。硬化性組成物のUV硬化は、2つのFirefly LEDランプ(385nm及び405nm)を備えたJSCCコンベア式硬化器を用いて行った。一貫性のため、照射するUV量はサンプルの厚さに基づいて決定した。厚さ2mmのISO527A引張試験片は、搬送速度3m/分で4回、片面2回ずつ硬化させた。厚さ3mmのASTM D256A衝撃強さ試験片については、サンプルを合計6回硬化させた。その後、サンプルを150℃で1時間、続いて200℃で3時間加熱する熱処理を行った。
【0190】
実施例2及び3の組成物からキャスティングにより得られた硬化サンプルの物理的性状も表2に示した。
【0191】
【表2】
【0192】
実施例4及び比較例1
実施例4の硬化性組成物は、表3に示す量の全成分をプラスチックバイアルに添加し、スピードミキサーにより2000RPMで10分間、50℃で混合して液体の硬化性組成物を得ることによって調製した。
【0193】
【表3】
【0194】
実施例4の硬化性組成物を、光の波長が405nmの卓上型デジタル光処理(DLP)3DプリンタであるMiiCraft150 3Dプリンタを用いて印刷した。典型的な印刷プロセスでは、硬化性組成物をプリンター内のバットに装填した。詳細な印刷パラメータを以下の通りまとめる:UVエネルギー4.75mW/cm、ベース硬化時間6.0秒、ベース層1、硬化時間2.0秒、バッファ層5。
【0195】
3D印刷プロセス後、印刷した部品をエタノールに浸し、10秒間振って表面の未硬化樹脂を除去し、その後圧縮空気で乾燥させた。NextDent社の後硬化ユニット(LC-3DPrint box)を用いて40分間UV後硬化を行った後、表面が滑らかに乾燥した部品を得ることができた。熱処理は、サンプルを150℃で1時間、次いで200℃で3時間加熱して行った。
【0196】
実施例4の組成物から3D印刷により得られた硬化サンプルの物理的性状を表4に示した。比較例1の組成物は、Carbon社の市販品Carbon-EPX81(2K樹脂)であり、この市販品の物理的性状も表4に示した。
【0197】
【表4】
*ASTM-D638(5)に準拠して試験した。
【0198】
標準ベンチマークモデルに従って実施例4の組成物を印刷して得られた3D印刷した物体の写真を図1(b)に示した。標準ベンチマークモデル(図1(a))及び図1(b)との比較により、本発明の硬化性組成物によって良好な印刷精度が達成できることが示された。
【0199】
実施例4の組成物を印刷して得られた3D印刷した物体の写真を図2に示した。
【0200】
実施例5及び比較例2、3及び4
実施例5、及び比較例2、3及び4の硬化性組成物は、表5に示す量の全成分をプラスチックバイアルに添加し、スピードミキサーにより2000RPMで10分間、50℃で混合して液体の硬化性組成物を得ることによって調製した。異なる日数の間室温で貯蔵した後の各組成物の粘度も、表5に示した。実施例5、及び比較例2、3及び4の組成物を、異なる日数の間室温で貯蔵した後の正規化した粘度を図3に示した。
【0201】
【表5】
【0202】
表からわかるように、実施例5の組成物の粘度は7日後にやや上昇しただけであり、7~14日まで粘度の変化はなかった。比較例2、3及び4の組成物は、わずか7日で粘度が18%以上増加した。
【0203】
実施例6、7、8
実施例6、7及び8の硬化性組成物は、表6に示す量の全成分をプラスチックバイアルに添加し、スピードミキサーにより2000RPMで10分間、50℃で混合して液体の硬化性組成物を得ることによって調製した。これらの組成物からキャスティングにより得られたサンプルの物理的性状も表6に示した。キャスティング方法は、実施例2及び3に記載したキャスティング方法(UV硬化及び熱処理の両方を含む)と同じであった。
【0204】
【表6】
【0205】
実施例6の組成物の粘度は実施例7の組成物の粘度よりも低く、これは実施例6の組成物の印刷適性が実施例7の組成物の印刷適性より優れていることを意味する。
図1
図2
図3
【国際調査報告】