(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】ポリフェニレンオキシドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 65/44 20060101AFI20240213BHJP
C08G 65/40 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C08G65/44
C08G65/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550105
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 KR2022009454
(87)【国際公開番号】W WO2023277624
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0087374
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0087375
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キョンシン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジヒョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】チュンファ・イ
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA24
4J005BB01
4J005BB02
(57)【要約】
本発明では、フェノールに対するアルキル化反応後に生成されるオルト-クレゾールに対する別途の分離精製工程が不要でエネルギー費用を節減し、また、温和な酸化カップリング反応条件で加工性に優れたポリフェニレンオキシドを優れた収率で製造できる製造方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノールをメタノールでアルキル化反応させて、2,6-キシレノールおよびオルト-クレゾールを含む混合物を製造する第1段階;
前記混合物を、銅系触媒およびアミン系添加剤の存在下、酸化カップリング反応させる第2段階;および
前記第2段階の結果として得られた反応生成物からオルト-クレゾールを分離し、下記の化学式1で表される繰り返し単位からなるポリフェニレンオキシドを得る第3段階;を含み、
前記混合物は、2,6-キシレノール1モルに対してオルト-クレゾールを0.2~0.8のモル比で含み、
前記アミン系添加剤は、2級アミン、ピリジン系化合物、またはこれらの混合物を含む、
ポリフェニレンオキシドの製造方法:
【化1】
前記化学式1において、nは、1以上の整数である。
【請求項2】
前記段階は、一連の連続した反応で行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記銅系触媒は、酸化第一銅、ハロゲン化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅、酸化第二銅、ハロゲン化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、およびこれらの塩からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記銅系触媒は、2,6-キシレノール1モル基準0.001~0.1モルの比で使用される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記2級アミンは、分子中にC
1-20脂肪族アルキル基を2個有する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記2級アミンは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-i-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-i-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、またはメチルブチルアミンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ピリジン系化合物は、アミノピリジン系化合物、モノアルキルピリジン系化合物、またはジアルキルピリジン系化合物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ピリジン系化合物は、2-アミノピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2,3-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,6-ジアミノピリジン、2-アミノ-6-メチルピリジン、3-アミノ-6-イソプロピルピリジン、4-ピロリジノピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2,3-ジメチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,5-ジメチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、3,4-ジメチルピリジン、または3,5-ジメチルピリジンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記アミン系添加剤は、2,6-キシレノール1モル基準0.1~1モルの比で使用される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記銅系触媒は、酸化第一銅、ハロゲン化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅、およびこれらの塩からなる群より選択される1種以上であり、前記アミン系添加剤は、ピリジン系化合物であるか;または
前記銅系触媒は、酸化第二銅、ハロゲン化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、およびこれらの塩からなる群より選択される1種以上であり、前記アミン系添加剤は、2級アミンである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項11】
前記酸化カップリング反応は、エアバブリングによって80~350cc/minの速度で空気を投入して行われる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項12】
前記オルト-クレゾールは、分別蒸留によって分離される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ポリフェニレンオキシドは、数平均分子量が1,600~3,500g/molであり、分子量分布が1.7~3であり、ガラス転移温度が140~180℃であるオリゴマー型ポリフェニレンオキシドである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第3段階で得られたポリフェニレンオキシドを、銅系触媒およびアミン系添加剤の存在下、2次酸化カップリング反応させる段階をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第3段階でのオルト-クレゾールの分離後、分離されたオルト-クレゾールを前記第1段階でのアルキル化反応に投入する段階をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2021年7月2日付の韓国特許出願第10-2021-0087374号および同日付の韓国特許出願第10-2021-0087375号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ポリフェニレンオキシドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリフェニレンオキシド(polyphenylene oxide;PPO)は、耐薬品性および高耐熱性を示し、機械的特性と電気的特性に優れたエンジニアリングプラスチックの一種である。通常、商業化された製品のPPOは、2万~6万g/molの数平均分子量を有し、フェノール系モノマーを用いて酸化カップリングにより合成される。商業化された製品のPPOは、数平均分子量1,300~2,700g/mol水準のオリゴマーと、数平均分子量17,000~29,000g/molの高分子とからなる。
【0004】
一方、PPOの製造に使用されるフェノール系モノマーのうち、2,6-キシレノール(2,6-xylenol)は、フェノールに対するアルキル化(alkylation)により得られるが、この時、2,6-キシレノール以外に、オルト-クレゾール(o-cresol)および2,4,6-トリメチルフェノールの副生成物が一緒に生成される。このため、前記副生成物の分離精製工程が必要であるが、これらの副生成物は2,6-キシレノールと沸点の差が10℃程度であるため、分離精製が難しく、また、多くの費用がかかる。特に、主な副生成物であるオルト-クレゾールを分離するために、140段のカラムを用いるか、またはデカンと共に共沸蒸留する方法が用いられているが、これは2,6-キシレノールの製造およびこれを用いたPPOの製造費用の上昇を招く主な要因になっている。
【0005】
そこで、エネルギー費用を節減できるPPOの製造方法の開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書は、フェノールに対するアルキル化反応後に生成されるオルト-クレゾールに対する別途の分離精製工程が不要でエネルギー費用を節減し、また、温和な酸化カップリング反応条件でポリフェニレンオキシドを優れた収率で製造できる、ポリフェニレンオキシドの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、フェノールをメタノールでアルキル化反応させて、2,6-キシレノールおよびオルト-クレゾールを含む混合物を製造する第1段階;前記混合物を、銅系触媒およびアミン系添加剤の存在下、酸化カップリング反応させる第2段階;および前記第2段階の結果として得られた反応生成物からオルト-クレゾールを分離し、下記の化学式1で表される繰り返し単位からなるポリフェニレンオキシドを得る第3段階;を含み、前記混合物は、2,6-キシレノール1モルに対してオルト-クレゾールを0.2~0.8のモル比で含み、前記アミン系添加剤は、2級アミン、ピリジン系化合物、またはこれらの混合物を含む、ポリフェニレンオキシドの製造方法を提供する:
【0008】
【0009】
前記化学式1において、nは、1以上の整数である。
【0010】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに用いられ、前記用語は1つの構成要素を他の構成要素と区別するための目的でのみ使用される。
【0011】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。
【0012】
単数の表現は、文脈上、明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0013】
本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらの組み合わせを説明するためのものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、構成要素、これらの組み合わせまたは付加の可能性を排除するものではない。
【0014】
本発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有することができるが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定するものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明によるポリフェニレンオキシドの製造方法は、
フェノールをメタノールでアルキル化反応させて、2,6-キシレノールおよびオルト-クレゾールを含む混合物を製造する第1段階;
前記混合物を、銅系触媒、およびアミン系添加剤の存在下、酸化カップリング反応させる第2段階;および
前記第2段階の結果として得られた反応生成物からオルト-クレゾールを分離し、下記の化学式1で表される繰り返し単位からなるポリフェニレンオキシドを得る第3段階;を含み、
前記混合物は、2,6-キシレノール1モルに対してオルト-クレゾールを0.2~0.8のモル比で含み、
前記アミン系添加剤は、2級アミン、ピリジン系化合物、またはこれらの混合物を含む:
【0017】
【0018】
前記化学式1において、nは、1以上の整数である。
【0019】
本発明の発明者らは、2,6-キシレノールの酸化カップリング反応によるポリフェニレンオキシドの製造に際し、フェノールに対するアルキル化反応により製造された2,6-キシレノールを副反応によって生成されたオルト-クレゾールと混合された状態でそのまま使用しかつ、前記アルキル化反応条件の調節により2,6-キシレノールに対するオルト-クレゾールの含有量比を制御し、また、酸化カップリング反応触媒と共に、前記触媒に対してリガンド作用が可能なアミン系添加剤を使用することによって、加工性に優れたポリフェニレンオキシドを優れた収率で製造できることを確認した。
【0020】
また、通常、オルト-クレゾールは、2,6-キシレノールと沸点の差が小さくて分離精製が容易でないだけでなく、分離精製費用が多くかかる問題点がある。これに対し、本発明では、このような2,6-キシレノールに対するオルト-クレゾールの分離精製工程を省略することができ、また、前記酸化カップリング反応によるポリフェニレンオキシドの製造後、反応系内に残留するオルト-クレゾールを沸点の差を利用して分離除去することによって、エネルギー費用を大きく節減することができる。
【0021】
また、本発明では、前記酸化カップリング反応を従来に比べて温和な条件で行うことによって、工程安定性が改善できる。
【0022】
一方、本発明において、前記段階、つまり、第1~第3段階は、一連の連続した反応で進行できる。
【0023】
以下、各段階別に詳しく説明する。
【0024】
第1段階
本発明によるポリフェニレンオキシドの製造方法において、第1段階は、フェノールに対するアルキル化反応により2,6-キシレノールとオルト-クレゾールとを含む混合物を製造する段階である。
【0025】
本発明による製造方法において、前記混合物は、2,6-キシレノール1モルに対してオルト-クレゾールを0.2~0.8のモル比で含む。
【0026】
通常、アルキル化反応の結果として得られる反応生成物は、2,6-キシレノールとオルト-クレゾールとを、反応生成物の総重量に対して95重量%以上で含み、2,4,6-トリメチルフェノールを5重量%以下で含む。また、前記95重量%以上の2,6-キシレノールとオルト-クレゾールとの混合物中には、2,6-キシレノールが60重量%以上、オルト-クレゾールが40重量%以下で存在し、より具体的には、2,6-キシレノールが75~80重量%、オルト-クレゾールが20~25重量%で存在する。これによって、従来のポリフェニレンオキシドの製造方法では、オルト-クレゾールによる影響を防止または最小化するために、アルキル化反応後に得られた反応生成物に対してオルト-クレゾールを分離除去する工程を必須として行って、オルト-クレゾールが分離除去された2,6-キシレノールを使用した。
【0027】
しかし、本発明の発明者らは、最適な含有量範囲内では、オルト-クレゾールがポリフェニレンオキシド製造のための酸化カップリング反応時に溶媒の誘電定数(dielectric constant)と触媒の溶解度を向上させることを確認し、ポリフェニレンオキシドの製造時に使用される混合物中のオルト-クレゾールの含有量を制御した。
【0028】
これによって、本発明によるポリフェニレンオキシドの製造方法では、前記アルキル化反応後、2,6-キシレノールと一緒に生成されたオルト-クレゾールに対する分離除去工程を別途に行わない。その結果、本発明では、後の酸化カップリング反応段階に使用される混合物でのオルト-クレゾールの含有量が、上述のように、従来の2,6-キシレノールの副生成物として含まれる場合に比べて高い。
【0029】
具体的には、前記混合物は、2,6-キシレノール1モルに対してオルト-クレゾールを0.2~0.8のモル比で含むことによって、前記オルト-クレゾールが酸化カップリング反応で使用される溶媒の誘電定数および触媒の溶解度を改善させ、その結果、PPOの収率を向上させることができる。もし、オルト-クレゾールの含有量が0.2モル未満の場合、溶媒の誘電定数および触媒の溶解度に対する改善効果がわずかであり、その結果、PPOの収率が低下し、また、製造されるPPOの物性、特に分子量分布特性が低下しうる。また。オルト-クレゾールの使用量が0.8のモル比を超える場合には、過度に高い含有量によってオルト-クレゾールが触媒に配位されて触媒活性を低下させることがあり、また、製造されるPPOにオルト-クレゾールが共重合されてPPOの物性が低下しうる。最終製造されるPPOのガラス転移温度(Tg)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(PDI)の制御による加工性改善の効果を考慮する時、前記混合物は、より具体的には、2,6-キシレノール1モルに対してオルト-クレゾールを0.2モル以上、または0.3モル以上、または0.35モル以上、または0.4モル以上、または0.45モル以上、または0.48モル以上かつ、0.8モル以下、または0.75モル以下、または0.6モル以下、または0.55モル以下、または0.5モル以下で含むことができる。
【0030】
これによって、本発明による製造方法において、前記第1段階でのアルキル化反応は、最終的に得られる混合物中のオルト-クレゾールの含有量比条件を満足するように、反応物およびその投入量、触媒、反応温度などの反応条件を適切に調節することができる。
【0031】
具体的には、前記アルキル化反応時、メタノールは、フェノール1モルに対して2~8モルの比で使用できる。フェノールに対するメタノールの比が過度に小さければ、オルト-クレゾールの生成量が大きく増加し、これに対し、フェノールに対するメタノールの比が大きければ、2,6-キシレノールの含有量は増加するが、未反応メタノールによる副反応生成の恐れがある。このため、アルキル化反応の結果として得られる2,6-キシレノールおよびオルト-クレゾール含む混合物での2,6-キシレノールとオルト-クレゾールとの含有量比を考慮して、前記範囲内でメタノールの投入量を適切に調節することが好ましい。より具体的には、前記モル比条件を実現できるように、前記メタノールは、フェノール1モルに対して2モル以上、または3モル以上かつ、8モル以下、または5モル以下の比で使用できる。
【0032】
また、前記アルキル化反応は、ジルコニウム-タングステン系触媒、酸化マグネシウム系触媒、鉄-バナジウム酸化物系触媒、マンガン酸化物系触媒、コバルト-フェライト型触媒、アルミナ触媒、またはY-ゼオライト型触媒などのアルキル化反応触媒の存在下で行われる。
【0033】
前記アルキル化反応触媒は、シリカなどの担体に担持された担持触媒の形態で使用できる。
【0034】
より具体的には、本発明では、アルキル化反応時に優れた触媒活性を示す、ジルコニウム-タングステン系触媒が使用可能であり、前記触媒は、シリカに担持された担持触媒であってもよい。
【0035】
また、前記アルキル化反応時、水が選択的に投入され、この場合、フェノール1モルに対して3モル以下、より具体的には1~3モルの比で投入される。
【0036】
また、前記アルキル化反応は、250℃~500℃、より具体的には250℃以上、または300℃以上かつ、500℃以下、または450℃以下の温度で行われる。
【0037】
さらに、前記アルキル化反応は、1atm~3atm、より具体的には1atm以上、または1.2atm以上かつ、3atm以下、または1.5atm以下の圧力条件で行われる。
【0038】
また、前記アルキル化反応は、窒素、アルゴンなどの不活性気体雰囲気下で行われ、使用触媒に応じて水素などの還元雰囲気で行われてもよい。
【0039】
このようなアルキル化反応の結果として、2,6-キシレノールと一緒にオルト-クレゾールが副反応物として生成され、生成されたオルト-クレゾールは、先に説明したような含有量比条件を満足する。また、必要に応じて、2,6-キシレノールまたはオルト-クレゾールを追加的にさらに投入して、前記含有量比範囲内で、2,6-キシレノールに対するオルト-クレゾールの含有量比を追加的に調節してもよい。この場合、本発明による製造方法は、前記アルキル化反応後、得られる混合物に対して前記オルト-クレゾールの含有量条件を満足するように、2,6-キシレノールまたはオルト-クレゾールを投入する工程を選択的にさらに含むことができる。
【0040】
また、前記アルキル化反応の結果として、2,4,6-トリメチルフェノールなどの異性体が副反応生成物としてさらに生成されてもよい。これによって、本発明における混合物は、2,6-キシレノールおよびオルト-クレゾールを前記含有量比範囲条件を満足するように含みかつ、追加的に2,4,6-トリメチルフェノールを含むこともできる。2,4,6-トリメチルフェノールをさらに含む場合、前記混合物の総重量に対して0重量%超過、または0.0001重量%以上かつ、2重量%未満、または1重量%以下、または0.1重量%以下、または0.01重量%以下で2,4,6-トリメチルフェノールをさらに含むことができる。
【0041】
第2段階
第2段階は、前記第1段階で製造した混合物を酸化カップリング反応させる段階である。
【0042】
具体的には、前記酸化カップリング反応は、銅系触媒およびアミン系添加剤の存在下で行われる。
【0043】
前記銅系触媒としては、酸化第一銅、ハロゲン化第一銅、硫酸第一銅、または硝酸第一銅などの第一銅化合物;酸化第二銅、ハロゲン化第二銅、硫酸第二銅、または硝酸第二銅などの第二銅化合物;またはこれらの塩が挙げられ、これらのいずれか1または2以上の混合物が使用できる。
【0044】
前記銅系触媒は、具体的には、2,6-キシレノール1モル基準0.001~0.1モルの比で使用できる。前記含有量範囲内で使用される場合、十分な触媒活性でポリフェニレンオキシドの収率が改善され、また、触媒による発色を防止することができる。前記銅系触媒の使用量が0.001モル未満であれば、ポリフェニレンオキシドの収率が低く、0.1モルを超えると、後の触媒除去のために多量の酸処理が必要であり、また、触媒が除去されずに残留する場合には、発色の恐れがある。前記効果の増進を考慮する時、前記銅系触媒は、より具体的には、2,6-キシレノール1モル基準0.001モル以上、または0.003モル以上、または0.005モル以上、または0.0075モル以上、または0.008モル以上、または0.01モル以上かつ、0.1モル以下、または0.05モル以下、または0.03モル以下の量で使用できる。
【0045】
一方、前記アミン系添加剤は、前記銅系触媒に対してリガンドの役割を果たす。
【0046】
前記アミン系添加剤は、具体的には、2級アミン、ピリジン系化合物、またはこれらの混合物を含む。
【0047】
前記2級アミンは、具体的には、分子中にC1-20脂肪族アルキル基を2個有する。より具体的には、C1-20直鎖または分枝状アルキル基を2個有する。このような構造によって銅系触媒との配位が容易であり、結果として触媒反応性を増加させることができる。これによって、1級アミン、3級アミン、分子中に2個のアミノ基を含むジアミン、またはシクロアルキル基や芳香族環構造を含む2級アミンを使用する時と比較してポリフェニレンオキシドの収率を大きく増加させることができる。前記2級アミンの具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-i-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン(またはジブチルアミン)、ジ-i-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、またはメチルブチルアミンなどが挙げられ、これらのいずれか1または2以上の混合物が使用できる。
【0048】
また、前記ピリジン系化合物は、具体的には、2-アミノピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、2,3-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,6-ジアミノピリジン、2-アミノ-6-メチルピリジン、3-アミノ-6-イソプロピルピリジン、または4-ピロリジノピリジンなどのアミノピリジン系化合物;2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジンなどのモノアルキルピリジン系化合物;または2,3-ジメチルピリジン(または2,3-ルチジン(2,3-lutidine))、2,4-ジメチルピリジン、2,5-ジメチルピリジン、2,6-ジメチルピリジン、3,4-ジメチルピリジン、または3,5-ジメチルピリジンなどのジアルキルピリジン系化合物;などが挙げられ、これらのいずれか1または2以上の混合物が使用できる。さらに、前記アルキルは、C1-20アルキル、またはC1-10アルキル、またはC1-4アルキルであってもよい。
【0049】
前述した銅系触媒の種類によって前記アミン系添加剤を適切に選択、使用することができる。銅系触媒とアミン系添加剤とが最適に組み合わされて使用される場合、ポリフェニレンオキシドの収率がさらに増加し、製造されるポリフェニレンオキシドの物性もさらに向上できる。
【0050】
具体的には、前記銅系触媒として第一銅化合物、具体的には、酸化第一銅、ハロゲン化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅、またはこれらの塩が使用され、前記アミン系添加剤としてピリジン系化合物が使用される場合、ポリフェニレンオキシドの収率が増加し、製造されるポリフェニレンオキシドの加工性が改善できる。前記第一銅化合物は、より具体的には、塩化第一銅、臭化第一銅などのハロゲン化第一銅化合物であってもよく、さらにより具体的には、塩化第一銅であってもよい。さらに、前記ピリジン系化合物は、2-アミノピリジン、3-アミノピリジン、または4-アミノピリジンなどのアミノピリジン系化合物であってもよい。前記アミノピリジン系化合物は、触媒との配位が容易な構造的特徴によって、より優れたポリフェニレンオキシドの収率改善効果およびポリフェニレンオキシドの加工性改善効果を示すことができる。
【0051】
前記銅系触媒として第二銅化合物、具体的には、酸化第二銅、ハロゲン化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、またはこれらの塩が使用され、前記アミン系添加剤として2級アミンが使用される場合、ポリフェニレンオキシドの収率が増加し、製造されるポリフェニレンオキシドの加工性が改善できる。前記第二銅化合物は、より具体的には、塩化第二銅、臭化第二銅などのハロゲン化第二銅化合物であってもよく、さらにより具体的には、塩化第二銅であってもよい。また、前記2級アミンは、C1-8、またはC2-6の鎖状アルキル基を2個有するものであってもよく、さらにより具体的には、ジ-n-ブチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-ヘキシルアミン、またはジ-n-プロピルアミンであってもよい。前記2級アミンは、触媒との配位が容易なだけでなく、配位された複合体(complex)が高い反応性を示すことが可能で、ポリフェニレンオキシドの収率をさらに改善させ、また、製造されるポリフェニレンオキシドの分子量増加および熱的特性改善の効果を実現することができる。
【0052】
前記アミン系添加剤は、前記2,6-キシレノール1モル基準0.1~1モルの比で使用できる。前記含有量比条件を満足するように使用する場合、過剰のアミン系添加剤による副反応発生の恐れなく、優れた収率でポリフェニレンオキシドを製造することができる。より具体的には、前記アミン系添加剤は、前記2,6-キシレノール1モル基準0.1モル以上、または0.2モル以上、または0.3モル以上、または0.34モル以上、または0.4モル以上かつ、1モル以下、または0.8モル以下、または0.7モル以下、または0.68モル以下、または0.5モル以下で使用できる。
【0053】
また、本発明による製造方法において、前記酸化カップリング反応は、酸素または空気条件下で行われる。特に、空気条件下でも酸化カップリング反応が行われるため、従来の酸素投入の条件で行われる酸化カップリング反応に比べて温和な反応条件での製造工程の実行が可能である。より具体的には、前記酸化カップリング反応は、エアバブリングによって80~350cc/minの速度で空気を投入して行われる。
【0054】
また、前記空気中の酸素含有量は、具体的には30%以下、より具体的には21%以下であり、10%以上であってもよい。空気中の酸素は、酸化カップリング反応を促進させる作用をするが、従来のように酸化カップリング反応が酸素投入の条件で行われる場合、収率が低下し、爆発などの問題があった。これに対し、本発明では、上述のように酸素含有量が低い空気条件で酸化カップリング反応を行うことによって、工程安全性および収率を改善できる。
【0055】
また、前記空気は、前述のように80~350cc/minの速度で投入される。投入速度が過度に遅ければ、反応系内の空気が均一に混合されにくく、結果としてポリフェニレンオキシドの収率が低下し、鎖延長が制限されて物性が低下しうる。さらに、投入速度が過度に速ければ、溶媒中の酸素濃度が増加してオルト-クレゾールが共重合されたり、2,6-キシレノールのカップリング反応が起きて副生成物が発生する恐れがある。本発明では、前記速度範囲で空気が投入されることによって、ポリフェニレンオキシドの収率および物性改善の効果をさらに増進させることができる。より具体的には、前記空気は、80cc/min以上、または90cc/min以上または100cc/min以上かつ、350cc/min以下、または330cc/min以下、または300cc/min以下の速度でエアバブリングによって投入される。
【0056】
また、前記空気は、反応系内に均一に混合できるように、前記投入速度を満足する条件下でエアバブリングによって投入される。
【0057】
前記酸化カップリング反応は、ベンゼン、トルエン、またはキシレンなどの芳香族系溶媒中で行われる。これらの芳香族系溶媒は、触媒およびポリフェニレンオキシドに対して高い溶解度を示してポリフェニレンオキシドの製造により有利である。
【0058】
第3段階
第3段階は、前記第2段階の結果として得られた反応生成物から、オルト-クレゾールを分離し、ポリフェニレンオキシドを得る段階である。
【0059】
この時、前記オルト-クレゾールの分離とポリフェニレンオキシドの収得工程の実行順序は特に限定されない。具体的には、ポリフェニレンオキシドが得られた後、オルト-クレゾールを分離する工程が行われてもよく、またはオルト-クレゾールを分離した後、ポリフェニレンオキシドを得るための工程が行われてもよい。あるいは、オルトクレゾールの分離工程によりポリフェニレンオキシドを得ることもできる。
【0060】
一例として、ポリフェニレンオキシドの収得工程の後、オルト-クレゾールの分離工程を行う場合、酸化カップリング反応の結果として得られた反応生成物に対してアルコールを投入してポリフェニレンオキシドを沈殿させ、ろ過および乾燥して得た後、前記ろ過の結果として得られた濾液を180~220℃、または190~200℃の温度範囲で分別蒸留してオルト-クレゾールを分離することができる。
【0061】
前記ポリフェニレンオキシドの沈殿のために投入されるアルコールとしては、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの、炭素数1~3の低級アルコールが使用できる。なかでも、メタノールの投入時により優れた収率でポリフェニレンオキシドを沈殿させることができ、また、後の分別蒸留による除去の面でもより有利である。
【0062】
投入されるアルコールの量は特に限定されず、ポリフェニレンオキシドとの沈殿反応が十分に起こるように投入する。
【0063】
また、前記アルコールの投入時、ポリフェニレンオキシドの沈殿反応促進およびそれによる収率向上のために、塩酸などの酸が選択的にさらに投入されてもよい。この時、酸は、アルコール100重量部に対して0.01~0.5重量部、より具体的には0.1~0.3重量部投入される。
【0064】
前記アルコールの投入でポリフェニレンオキシドが沈殿すれば、ろ過して分離し、分離されたポリフェニレンオキシドを乾燥することによって得ることができる。
【0065】
この時、前記ろ過および乾燥工程は、通常の方法により行うことができる。一例として、前記ろ過は、フィルタを用いて行われ、前記乾燥は、オーブンなどを用いた加熱乾燥方式で行われる。また、前記乾燥は、真空または不活性気体雰囲気下で行われることが好ましい。
【0066】
また、前記ポリフェニレンオキシドを得るための沈殿、ろ過および乾燥工程は、2回以上繰り返し行われる。
【0067】
前記沈殿、ろ過および乾燥によるポリフェニレンオキシドの収得後、前記ろ過工程の結果として得られた濾液に対して、180~220℃、または190~210℃の温度範囲での分別蒸留工程を行ってオルト-クレゾールを分離することができる。
【0068】
前記オルト-クレゾールを分離するための分別蒸留工程は、前記温度条件で行われることを除けば、通常の方法により行われる。
【0069】
一方、前記濾液中には、オルト-クレゾール以外にも、酸化カップリング反応中に副反応により形成された2,4,6-トリメチルフェノールなどの異性体、酸化カップリング反応時に使用されたトルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、そして前記ポリフェニレンオキシドの沈殿反応時に投入されたアルコールなどが残留するが、これらの化合物も前記分別蒸留により分離除去可能である。例えば、前記温度範囲での加熱時、沸点が低い前記アルコールが50~80℃、または60~80℃の温度範囲で最も先に蒸発により分離除去され、次に、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒が100~150℃、または110~130℃の温度範囲で蒸発により分離除去され、以後、180~220℃、または190~210℃の温度範囲でオルトクレゾールが分離除去される。
【0070】
他の例として、前記第2段階の結果として得られた反応生成物に対するオルト-クレゾールの分離後、ポリフェニレンオキシドを得るための工程を行う場合、前記第2段階の結果として得られた反応生成物を180~220℃、または190~210℃の温度範囲で分別蒸留してオルト-クレゾールを分離し、以後、結果の反応物にアルコールを投入してポリフェニレンオキシドを沈殿させ、ろ過乾燥して得ることができる。
【0071】
前記第2段階の酸化カップリング反応の結果としてポリフェニレンオキシドが生成されるが、反応系内には酸化カップリング反応時に投入された混合物中にオルトクレゾールが存在する。前記オルトクレゾールの沸点とポリフェニレンオキシドの沸点(または分解温度)とは差が大きいため、本発明では、分別蒸留によりオルト-クレゾールを分離除去することができる。具体的には、オルト-クレゾールの沸点が191℃であり、ポリフェニレンオキシドの分解温度(degradation temperature)は400℃以上であるので、180~220℃、または190~200℃の温度範囲での分別蒸留によりオルト-クレゾールを分離することができる。
【0072】
前記オルト-クレゾールを分離するための分別蒸留工程は、前記温度条件で行われることを除けば、通常の方法により行われる。
【0073】
また、前記第2段階の結果として得られた反応生成物中には、オルトクレゾール以外にも、2,4,6-トリメチルフェノールなどの異性体がさらに存在しうる。これらの異性体もポリフェニレンオキシドとの沸点の差が大きいため、前記分別蒸留工程でこれらの異性体を同時に分離することができ、結果としてポリフェニレンオキシドをさらに高純度で得ることができる。
【0074】
前記オルト-クレゾールの分離後、結果の反応物に対してアルコールを投入し、ポリフェニレンオキシドを沈殿させてろ過、分離することによって得る。
【0075】
この時、ポリフェニレンオキシドの沈殿、ろ過および分離工程は、先に説明したのと同様の方法で行うことができる。ただし、前記結果の反応物が固体状で得られる場合には、反応物を溶媒に溶解した後、アルコールを投入してポリフェニレンオキシドの沈殿反応を行うことができる。
【0076】
一方、前記分別蒸留により分離されたオルト-クレゾールは、2,6-キシレノール製造のためのアルキル化反応において2,6-キシレノール合成の中間体として再利用できる。これによって、本発明による製造方法は、前記オルト-クレゾールの分離後、分離されたオルト-クレゾールを前記アルキル化反応時に投入する工程をさらに含むことができる。
【0077】
前記製造方法によって、温和な酸化カップリング反応条件でPPOを優れた収率で製造することができる。具体的には、前記製造方法によって、PPOを70重量%以上、または80重量%以上、または90重量%以上、または95重量%以上、または99重量%以上の高い収率で製造することができる。
【0078】
この時、前記収率は、PPOの製造時に投入された2,6-キシレノールの量と、最終製造されたPPOの量とから、下記数式1により計算できる。
【0079】
[数式1]
収率(重量%)=[製造されたPPOの重量/投入された2,6-キシレノールの重量]×100
【0080】
また、前記製造方法により製造されるPPOは、下記の化学式1で表される繰り返し単位のみからなる線状のホモ重合体である:
【0081】
【0082】
前記化学式1において、nは、1以上の整数であり、より具体的には10~100であってもよい。
【0083】
従来の製造方法によるポリフェニレンオキシドの製造時、2,6-キシレノールに副生成物として含まれているオルト-クレゾール由来構造が重合体の繰り返し単位として含まれるが、本発明による製造方法は、反応物としてオルト-クレゾールが高い含有量で含まれているにもかかわらず、2,6-キシレノールに対して高い選択性を示して前記ホモ重合体を製造することができる。
【0084】
これによって、前記製造方法により製造されるPPOは、1H NMR分析時、6.8~7.4ppmの範囲でのオルト-クレゾールのピークが現れない。
【0085】
前記PPOに対する1H NMR分析は、以下の実験例に記載された方法および条件で行われる。
【0086】
また、前記製造方法で製造される前記PPOは、数平均分子量が1,600~3,500g/molのオリゴマー型PPOであり、これと共に、1.7~3の分子量分布(PDI、Mw/Mn)および140~180℃のガラス転移温度(Tg)を有することによって優れた加工性を示すことができる。
【0087】
具体的には、前記PPOは、数平均分子量が1,600g/mol以上かつ、3,500g/mol以下、または3,000g/mol以下で、従来の製造方法で製造されたオリゴマー型PPOと比較して高いMnを有する。これによって、これを用いたコンパウンドの製造時に優れた加工性を示すことができる。より具体的には、前記PPOの数平均分子量は、1,600g/mol以上、1,750g/mol以上、または1,900g/mol以上、または2,000g/mol以上、または2,100g/mol以上、または2,200g/mol以上、または2,300g/mol以上、または2,400g/mol以上かつ、3,500g/mol以下、または3,300g/mol以下、または3,200g/mol以下、または3,000g/mol以下、または2,800g/mol以下、または2,700g/mol以下である。
【0088】
また、前記PPOは、分子量分布(PDI、Mw/Mn)が1.7~3で、従来の製造方法で製造されたオリゴマー型PPOと比較して広い分子量分布を有し、結果として優れた加工性を示すことができる。より具体的には、前記PPOの分子量分布は、1.7以上、または1.8以上、または1.9以上、または2.0以上、または2.1以上、2.2以上、または2.3以上、または2.45以上かつ、3以下、または2.8以下、または2.7以下、または2.5以下である。
【0089】
また、前記PPOは、ガラス転移温度が140~180℃である。ガラス転移温度が高ければ、加工温度が増加して加工性が低下し、ガラス転移温度が低ければ、熱安定性が低下する。本発明によるPPOは、前記範囲内のガラス転移温度を有することによって、熱安定性の低下なく、優れた加工性を示すことができる。より具体的には、前記PPOのガラス転移温度は、140℃以上、または145℃以上、または148℃以上、または150℃以上、または152℃以上、または155℃以上、または156℃以上かつ、180℃以下、または175℃以下、または170℃以下、または169℃以下、または165℃以下、または162℃以下、または160℃以下、または159℃以下である。
【0090】
一方、前記PPOの数平均分子量および分子量分布(PDI、Mw/Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定することができ、ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用いて測定することができる。具体的な測定方法および条件は、以下の実験例で詳しく説明する。
【0091】
また、前記製造方法により製造される前記オリゴマー型PPOに対して、銅触媒およびアミン系添加剤の存在下での酸化カップリング反応を追加的に行うことによって、高分子量のPPO(または高分子型PPO)、具体的には、数平均分子量4,000g/mol以上の高分子量のPPOを製造することもできる。これによって、本発明による製造方法は、前記オルト-クレゾールの分離後、得られたポリフェニレンオキシド、具体的には、オリゴマー型PPOを、銅系触媒およびアミン系添加剤の存在下、2次酸化カップリング反応させる段階をさらに含むことができる。
【0092】
前記高分子量のPPOの製造時に使用可能な銅系触媒、アミン系添加剤および酸化カップリング反応条件は、先に説明した通りである。
【0093】
ただし、前記銅系触媒は、オリゴマー型PPO1モル基準0.001~0.1モルの比で使用可能であり、より具体的には、オリゴマー型PPO1モル基準0.001モル以上、または0.003モル以上、または0.005モル以上かつ、0.1モル以下、または0.05モル以下、または0.01モル以下で使用可能である。
【0094】
また、前記アミン系添加剤は、前記オリゴマー型PPO1モル基準0.1~1モルの比で使用可能であり、より具体的には、前記オリゴマー型PPO1モル基準0.1モル以上、または0.3モル以上、または0.5モル以上かつ、1モル以下、または0.8モル以下、または0.7モル以下、または0.68モル以下で使用可能である。
【0095】
前記製造工程で製造される前記高分子量のPPOは、具体的には、数平均分子量が4,000g/mol以上、または5,000g/mol以上、または8,000g/mol以上、または10,000g/mol以上、または12,000g/mol以上かつ、20,000g/mol以下、または18,000g/mol以下、または16,500g/mol以下、または16,200g/mol以下、または15,000g/mol以下である。
【0096】
また、前記高分子量のPPOは、前記数平均分子量と共に、分子量分布(PDI、Mw/Mn)が2~3、より具体的には2以上、または2.1以上、または2.2以上かつ、3以下、または2.8以下、または2.6以下、または2.5以下で、従来に比べて広い分子量分布を有して優れた加工性を示すことができる。
【0097】
一方、前記高分子型PPOの数平均分子量および分子量分布は、ゲル透過クロマトグラフィー分析により測定することができ、その具体的な測定方法および条件は、以下の実験例で詳しく説明する。
【発明の効果】
【0098】
本発明の製造方法によれば、フェノールに対するアルキル化反応後に生成されるオルト-クレゾールに対する別途の分離精製工程が不要でエネルギー費用を節減することができ、また、温和な酸化カップリング反応条件でPPOを優れた収率で製造することができる。さらに、製造されたPPOは、優れた加工性を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】実施例1-1で製造したポリフェニレンオキシドに対する
1H NMR分析グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0100】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0101】
実施例1-1
ヒュームドシリカ(fumed silica)10gをメタノール50mlに入れた後、ZrO2を1g添加した。結果の混合物にアンモニア水を入れて、pHが9以上となるようにした。以後、常温(25±3℃)で3時間撹拌を進行させ、ガラスフィルタを通してすべての溶媒を除去した後、110℃のオーブンで乾燥した。結果として得られた乾燥物を、1.4gのWO3を水20mLに溶解させて製造した溶液と混合し、常温(25±3℃)で2時間反応させた。結果の反応物をガラスフィルタを通して溶媒をすべて除去した後、750℃で焼成して、シリカ担体にジルコニウムおよびタングステンが担持されたジルコニウム-タングステン系アルキル化触媒を製造した。
【0102】
前記製造したアルキル化触媒10gをシリンダ型反応器に充填し、混合ガス(アルゴン97体積%と水素3体積%とを含む)を流しながら、反応器内の温度を400℃まで上げて前記アルキル化触媒を活性化させた。活性化がすべて終わった後、フェノールとメタノールおよび水の混合物(フェノール:メタノール:水の混合モル比=1:5:1)を10mL/hの速度で前記混合ガスと共に注入させながら、フェノール転換率が98%まで到達するまで反応させた。結果として2,6-キシレノールとオルト-クレゾールとを含む混合物を得た。
【0103】
前記得られた混合物約1.43g(2,6-キシレノール(1g、8.2mmol)およびオルト-クレゾール(0.43g、4mmol、2,6-キシレノール1モル基準0.49のモル比に相当)を含む)をマグネチックバー入りのガラス瓶に入れて、これにトルエン10mlを入れて撹拌しながら溶解させた。
【0104】
結果として得られた溶液に、触媒CuCl2を前記2,6-キシレノール1モル基準0.0075のモル比で入れて、25℃で5分間撹拌させた後、ジ-n-ブチルアミン2.8mmol(前記2,6-キシレノール1モル基準0.34のモル比に相当)を入れて、エアバブリング(air bubbling)して重合反応を進行させた。この時、エアバブリングは、流動制御器(flow controller)を用いて100cc/minの速度で行った。
【0105】
反応が完了した後、結果の反応物をHCl/MeOH溶液(HCl含有量:0.1重量%)100ml入りのフラスコにゆっくり入れながら、合成された重合体、つまり、ポリフェニレンオキシドを沈殿させた。沈殿した重合体をフィルタでろ過して分離し、真空オーブンで乾燥させた。乾燥した重合体をジクロロメタンに溶解させた後、メタノールを用いて沈殿させる過程を2回繰り返し行ってポリフェニレンオキシドを得た。
【0106】
前記ポリフェニレンオキシドの分離後に残る溶液には、メタノール、トルエンおよびオルト-クレゾールが含まれている。これに前記溶液を190~220℃で加熱しながら、65℃、110℃および190℃の温度付近でメタノール、トルエンおよびオルト-クレゾールを順に分別蒸留して、分離した。また、前記分別蒸留により分離したオルト-クレゾールは、以後、2,6-キシレノールのアルキル化反応時に中間体として再利用した。
【0107】
実施例1-2~1-10
下記表1に記載の条件で反応物の投入量および重合条件を変更することを除けば、前記実施例1-1と同様の方法で行ってポリフェニレンオキシドを製造した。
【0108】
実施例1-11
ヒュームドシリカ(fumed silica)10gをメタノール50mlに入れた後、ZrO2を1g添加した。結果の混合物にアンモニア水を入れて、pHが9以上となるようにした。以後、常温(25±3℃)で3時間撹拌を進行させ、ガラスフィルタを通してすべての溶媒を除去した後、110℃のオーブンで乾燥した。結果として得られた乾燥物を、1.4gのWO3を水20mLに溶解させて製造した溶液と混合し、常温(25±3℃)で2時間反応させた。結果の反応物をガラスフィルタを通して溶媒をすべて除去した後、750℃で焼成して、シリカ担体にジルコニウムおよびタングステンが担持されたジルコニウム-タングステン系アルキル化触媒を製造した。
【0109】
前記製造したアルキル化触媒10gをシリンダ型反応器に充填し、混合ガス(アルゴン97体積%と水素3体積%とを含む)を流しながら、反応器内の温度を400℃まで上げて前記アルキル化触媒を活性化させた。活性化がすべて終わった後、フェノールとメタノールおよび水の混合物(フェノール:メタノール:水の混合モル比=1:5:1)を10mL/hの速度で前記混合ガスと共に注入させながら、フェノール転換率が98%まで到達するまで反応させた。結果として2,6-キシレノールとオルト-クレゾールとを含む混合物を得た。
【0110】
前記得られた混合物約1.43g(2,6-キシレノール(1g、8.2mmol)およびオルト-クレゾール(0.43g、4mmol、2,6-キシレノール1モル基準0.49のモル比に相当)を含む)をマグネチックバー入りのガラス瓶に入れて、これにトルエン10mlを入れて撹拌しながら溶解させた。
【0111】
結果として得られた溶液に、触媒CuClを前記2,6-キシレノール1モル基準0.01のモル比で入れて、25℃で5分間撹拌した後、3-アミノピリジン2.8mmol(前記2,6-キシレノール1モル基準0.34のモル比に相当)を入れて、エアバブリングして重合反応を進行させた。この時、エアバブリングは、流動制御器を用いて100cc/minの速度で行った。
【0112】
反応が完了した後、結果の反応物をHCl/MeOH溶液(HCl含有量:0.1重量%)100ml入りのフラスコにゆっくり入れながら、合成された重合体、つまり、ポリフェニレンオキシドを沈殿させた。沈殿した重合体をフィルタでろ過して分離し、真空オーブンで乾燥させた。乾燥した重合体をジクロロメタンに溶解させた後、メタノールを用いて沈殿させる過程を2回繰り返し行ってポリフェニレンオキシドを得た。
【0113】
前記ポリフェニレンオキシドの分離後に残る溶液には、メタノール、トルエンおよびオルト-クレゾールが含まれている。これに前記溶液を190~220℃で加熱しながら、65℃、110℃および190℃の温度付近でメタノール、トルエンおよびオルト-クレゾールを順に分別蒸留して、分離した。また、前記分別蒸留により分離したオルト-クレゾールは、以後、2,6-キシレノールのアルキル化反応時に中間体として再利用した。
【0114】
実施例1-12~1-19
下記表2に記載の条件で反応物の投入量および重合条件を変更することを除けば、前記実施例1-11と同様の方法で行ってポリフェニレンオキシドを製造した。
【0115】
一方、実施例1-17および1-18において、混合物中のオルト-クレゾールの含有量は、2,6-キシレノール1モル基準、それぞれ0.61のモル比および0.73のモル比に相当する。
【0116】
比較例1-1
アルキル化反応段階を行わず、2,6-キシレノールとオルト-クレゾールとを含む混合物の代わりに2,6-キシレン(1g、8.2mmol)を用いることを除けば、実施例1-1と同様の方法で行ってポリフェニレンオキシドを製造した。
【0117】
比較例1-2
下記表1に記載の条件で反応物の投入量および重合条件を変更することを除けば、前記実施例1-1と同様の方法で行ってポリフェニレンオキシドを製造した。
【0118】
比較例1-3
アルキル化反応段階を行わず、2,6-キシレノールとオルト-クレゾールとを含む混合物の代わりにオルト-クレゾール(9.2mmol)を用いることを除けば、実施例1-1と同様の方法で行った。しかし、反応性がなくてポリフェニレンオキシドを製造できなかった。
【0119】
比較例1-4および1-5
下記表1に記載の条件で反応物の投入量および重合条件を変更することを除けば、前記実施例1-1と同様の方法で行ってポリフェニレンオキシドを製造した。
【0120】
比較例1-6
下記表2に記載の条件で反応物の投入量および重合条件を変更することを除けば、前記実施例1-11と同様の方法で行ってポリフェニレンオキシドを製造した。
【0121】
比較例1-7
アルキル化反応段階を行わず、2,6-キシレノールとオルト-クレゾールとを含む混合物の代わりに2,6-キシレン(1g、8.2mmol)を用いることを除けば、実施例1-11と同様の方法で行ってポリフェニレンオキシドを製造した。
【0122】
比較例1-8および1-9
下記表2に記載の条件で反応物の投入量および重合条件を変更することを除けば、前記実施例1-11と同様の方法で行ってポリフェニレンオキシドを製造した。
【0123】
【0124】
【0125】
実験例1
前記実施例1-1で得られたポリフェニレンオキシド(PPO)に対して、NMR分析を行った。
【0126】
具体的には、実施例1-1で製造したPPOをそれぞれCDCl
3に溶解させた後、Varian社の500MHz NMRを用いて
1H NMR分析を行った。その結果を
図1に示した。
【0127】
報告された文献によれば、オルト-クレゾールが重合体に共重合された場合、
1H NMRスペクトルで6.8~7.4ppmの範囲にオルト-クレゾールのピークが観察される。しかし、
図1に示されているように、本発明の製造方法で製造された実施例1-1のPPOではオルト-クレゾールのピークが観察されなかった。
【0128】
これから、本発明の製造方法で製造されたPPOは、2,6-キシレノール由来繰り返し単位のみからなるホモ重合体であることが分かる。
【0129】
実験例2
前記実施例および比較例で得られたPPOに対して、下記のような方法で収率、ガラス転移温度、数平均分子量および分子量分布を測定し、その結果を下記表3および4に示した。
【0130】
(1)収率(%)
実施例および比較例によるPPOの製造時に投入された2,6-キシレノールの量と、最終製造されたPPOの量とから、下記数式1により収率を計算した。
【0131】
[数式1]
収率(重量%)=[製造されたPPOの重量/投入された2,6-キシレノールの重量]×100
【0132】
(2)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC)を用いて、下記の条件でガラス転移温度を測定した:
測定装置:DSC250(TA Instruments社)
測定温度:0~300℃
昇温速度:10℃/min
測定環境:N2
【0133】
(3)数平均分子量(Mn)および分子量分布(PDI)
実施例および比較例で製造した重合体をクロロホルムに溶解させた後、下記の条件でゲル透過クロマトグラフィー(GPC)分析し、その結果からPPOの数平均分子量(Mn)および分子量分布(PDI)を算出した。
【0134】
GPC装置としてはWaters PL-GPC220機器を用い、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長のカラムを用いた。この時、測定温度は40℃であり、クロロホルムを溶媒として用い、流速は1.0mL/minとした。実施例および比較例による重合体のサンプルは、それぞれGPC分析機器(PL-GP220)を用いて、BHT0.0125%が含まれているクロロホルムで160℃、10時間溶かして前処理し、1mg/1mLの濃度に調製した後、100μlの量で供給した。ポリスチレン標準試験片を用いて形成された検定曲線を利用して重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の値を誘導し、また、重量平均分子量を数平均分子量で割って分子量分布(PDI、Mw/Mn)を計算した。この時、ポリスチレン標準試験片の重量平均分子量(Mw)は2000g/mol、10000g/mol、30000g/mol、70000g/mol、200000g/mol、700000g/mol、2000000g/mol、4000000g/mol、10000000g/molの9種を使用した。
【0135】
<測定条件>
カラム:PLgel Mixed-B×2
溶媒:クロロホルム(stabilized with BHT)
流速:1.0ml/min
試料濃度:1mg/ml
注入量:100μl
カラム温度:40℃
検出器(Detector):Waters RI detector
データ処理(Data processing):Empower
【0136】
【0137】
【0138】
実験の結果、銅系触媒と本発明におけるアミン系添加剤との組み合わせ使用により、従来に比べてPPOの収率が大きく増加し、また、製造されるPPOが最適範囲のTg、MnおよびPDIを有して優れた加工性を示すことを確認した。また、本発明の製造方法で空気投入の温和な条件でもオリゴマー型PPOの重合が可能であることを確認した。
【0139】
具体的には、実施例1-1~1-4の実験結果から、本発明による製造方法でPPOを製造する時、一定範囲内で触媒量が増加することによって収率が増加し、また、アミン系添加剤の量が増加することによってPPOのTgと分子量またはPDIが増加することを確認した。
【0140】
また、アミン系添加剤としてアミノピリジン系化合物の使用時により高い分子量および広い分子量分布、そして最適範囲のTgを有して優れた加工性を示すPPOを顕著に増加した収率で製造できることを確認した。一方、アルキルピリジン系化合物を用いた実施例1-15の場合、アルキルピリジン系化合物のバルキーな特性によって、アミノピリジン系化合物を用いた実施例1-11に比べて収率がやや低くなった。
【0141】
さらに、実施例1-11と実施例1-16の結果から、銅系触媒として塩化第一銅の代わりに臭化第一銅を用いる場合、反応性の面では大差がなかったが、製造されるPPOの分子量分布が増加することを確認した。
【0142】
また、実施例1-1、1-7および1-8の結果から、触媒の優れた溶解性(solubility)特性によって、同一の条件で一定水準まではオルト-クレゾールの含有量が増加することによって、製造されるPPOのTg、分子量および分子量分布が増加するが、一定水準、具体的には2,6-キシレン1モルに対して0.6のモル比を超えると、製造されるPPOのTg、分子量および分子量分布は相対的に減少することを確認した。
【0143】
一方、オルト-クレゾールなしに2,6-キシレンのみを用いた比較例1-1の場合、触媒投入量の増加にもかかわらず、同一の条件で2,6-キシレンとオルト-クレゾールとを最適混合比で混合して用いた実施例1-2、1-5および1-6と比較してPPOの収率が低下し、また、製造されたPPOのTgおよびMnは過度に増加し、PDIは減少して加工性が低下した。なお、比較例1-7の場合にも、実施例1-14と比較してPPOの重合がうまく進行しなかった。このような結果は、酸化カップリング反応時にオルト-クレゾールが溶媒の誘電定数(dielectric constant)と触媒の溶解度を向上させる役割を果たすが、比較例1-1および1-7は、オルト-クレゾールを使用しないことにより触媒の溶解度が低下したからである。
【0144】
また、2,6-キシレンと同量でオルト-クレゾールを含む混合物を用いた比較例1-2の場合、PPOの収率が大きく低下し、2,6-キシレンなしにオルト-クレゾールのみを用いた比較例1-3の場合には、反応性がなくてPPOを製造できなかった。
【0145】
さらに、アミン系添加剤としてトリエチルアミンを用いた比較例1-4、n-ブチルアミンを用いた比較例1-6は、実施例1-2、1-8、および1-14と比較してPPOの収率が大きく低下し、また、製造されるPPOのTgが低く、MnおよびPDIが減少することを確認した。
【0146】
実施例2-1
前記実施例1-1で製造したオリゴマー型ポリフェニレンオキシド(PPO)をマグネチックバー入りのガラス瓶に入れて、これにトルエン10mlを入れて撹拌しながら溶解させた。
【0147】
前記得られた溶液に、触媒CuCl2を前記オリゴマー型PPO1モル基準0.005のモル比で入れた後、25℃で5分間撹拌し、次に、アミン系添加剤としてジ-n-ブチルアミンを前記オリゴマー型PPO1モル基準0.68のモル比で入れて、エアバブリング(air bubbling)して重合反応を進行させた。この時、エアバブリングは、流動制御器(flow controller)を用いて300cc/minの速度で行った。
【0148】
反応が完了した後、結果の反応物をHCl/MeOH溶液(HCl含有量:0.1wt%)100ml入りのフラスコにゆっくり入れながら、合成された重合体を沈殿させた。沈殿した重合体をフィルタでろ過して分離し、真空オーブンで乾燥させた。乾燥した重合体をジクロロメタンに溶解させた後、メタノールを用いて沈殿させる過程を2回繰り返し行って高分子量のポリフェニレンオキシドを得た。
【0149】
実施例2-2および2-3
下記表5に記載の条件で反応物の投入量および重合条件を変更することを除けば、前記実施例2-1と同様の方法で行ってポリフェニレンオキシドを製造した。
【0150】
実施例2-4
前記実施例1-11で製造したオリゴマー型PPOをマグネチックバー入りのガラス瓶に入れて、これにトルエン10mlを入れて撹拌しながら溶解させた。
【0151】
前記得られた溶液に、触媒CuCl2を前記オリゴマー型PPO1モル基準0.005のモル比で入れた後、25℃で5分間撹拌させ、次に、アミン系添加剤としてジ-n-ブチルアミンを前記オリゴマー型PPO1モル基準0.28のモル比で入れて、エアバブリング(air bubbling)して重合反応を進行させた。この時、エアバブリングは、流動制御器(flow controller)を用いて300cc/minの速度で行った。
【0152】
反応が完了した後、結果の反応物をHCl/MeOH溶液(HCl含有量:0.1wt%)100ml入りのフラスコにゆっくり入れながら、合成された重合体を沈殿させた。沈殿した重合体をフィルタでろ過して分離し、真空オーブンで乾燥させた。乾燥した重合体をジクロロメタンに溶解させた後、メタノールを用いて沈殿させる過程を2回繰り返し行って高分子量のポリフェニレンオキシドを得た。
【0153】
実施例2-5
下記表5に記載の条件で反応物の投入量および重合条件を変更することを除けば、前記実施例2-4と同様の方法で行ってポリフェニレンオキシドを製造した。
【0154】
実験例3
前記実施例2-1~2-5で製造した高分子量のポリフェニレンオキシドに対して、実験例2と同様の方法でGPC分析を行って数平均分子量(Mn)および分子量分布(PDI、Mw/Mn)を測定した。その結果を下記表5に示した。
【0155】
【0156】
実験の結果、本発明の製造方法で製造されたオリゴマー型PPOを再び触媒によって酸化カップリング反応させることによって、高分子量のPPOを製造できることを確認した。
【国際調査報告】