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特表2024-507563複合排気チューブを有するインゴット引き上げ装置および排気チューブの下側部分および上側部分の長さを選択する方法
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  • 特表-複合排気チューブを有するインゴット引き上げ装置および排気チューブの下側部分および上側部分の長さを選択する方法 図1
  • 特表-複合排気チューブを有するインゴット引き上げ装置および排気チューブの下側部分および上側部分の長さを選択する方法 図2
  • 特表-複合排気チューブを有するインゴット引き上げ装置および排気チューブの下側部分および上側部分の長さを選択する方法 図3
  • 特表-複合排気チューブを有するインゴット引き上げ装置および排気チューブの下側部分および上側部分の長さを選択する方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-20
(54)【発明の名称】複合排気チューブを有するインゴット引き上げ装置および排気チューブの下側部分および上側部分の長さを選択する方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240213BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C30B29/06 502C
C30B15/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551256
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 US2022016188
(87)【国際公開番号】W WO2022182534
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】63/153,012
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】チ,ジュンファン
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ウジン
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ベンジャミン マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハドソン,カリシマ マリー
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジェウ
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BB03
4G077CF10
4G077EG21
4G077EG25
(57)【要約】
複合排気チューブを有するインゴット引き上げ装置および複合排気チューブの下側部分および上側部分の長さを選択するための方法を開示する。いくつかの実施形態では、複合排気チューブの上側部分は、グラファイトで作られており、下側部分は、ステンレス鋼で作られている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン融液から単結晶シリコンを成長させるためのインゴット引き上げ装置であって、
成長チャンバを画定するハウジングであって、前記ハウジングは、底部と、前記底部から延びた側壁とを有する、前記ハウジングと、
前記シリコン融液を保持するために前記成長チャンバ内に配置されたるつぼと、
前記成長チャンバから前記ハウジングの前記底部まで延びた排気チューブであって、前記排気チューブは、排気ガスを前記成長チャンバから排出するための排気流路を画定する、前記排気チューブと
を備え、
前記排気チューブは、
第1材料から作られた上側部分と、
前記上側部分に結合し、前記第1材料とは異なる第2材料から作られた下側部分と
を備える、インゴット引き上げ装置。
【請求項2】
前記第1材料は、グラファイトである、請求項1に記載のインゴット引き上げ装置。
【請求項3】
前記第2材料は、金属である、請求項1または2に記載のインゴット引き上げ装置。
【請求項4】
前記第2材料は、ステンレス鋼である、請求項3に記載のインゴット引き上げ装置。
【請求項5】
前記第1材料は、グラファイトであり、前記第2材料は、ステンレス鋼である、請求項1に記載のインゴット引き上げ装置。
【請求項6】
前記第1材料は、前記第2材料の融解温度よりも高い融解温度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のインゴット引き上げ装置。
【請求項7】
前記下側部分は、前記上側部分に受け入れられるカラーを含み、
前記カラーは、前記上側部分内で摩擦嵌めされる、請求項1から6のいずれか一項に記載のインゴット引き上げ装置。
【請求項8】
前記インゴット引き上げ装置は、複数の排気チューブを備え、
各排気チューブは、
前記第1材料から作られた上側部分と、
前記上側部分に結合し、前記第2材料から作られた下側部分と
を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載のインゴット引き上げ装置。
【請求項9】
インゴット引き上げ装置の複合排気チューブの下側金属部分の長さを選択するための方法であって、前記複合排気チューブは、第1材料から作られた上側部分と、前記上側部分に結合され、金属である第2材料から作られた下側部分とを備え、前記第2材料は、前記第1材料と異なり、前記複合排気チューブは、ハウジングの底部から上方に向けて断熱層を通過して延びており、
前記方法は、
前記排気チューブの前記下側金属部分のための閾値温度を決定し、
前記排気チューブの径方向位置を決定し、
インゴット成長の溶融フェーズ中の前記排気チューブの前記径方向位置での前記インゴット引き上げ装置の軸方向温度プロファイルを決定し、前記軸方向温度プロファイルは、前記断熱層の上側部分から前記ハウジングの底部に向けて低下し、
前記下側金属部分の上端が、前記下側金属部分の温度がインゴット成長の溶融フェーズ中において前記閾値温度よりも低くなる軸方向位置にあるように、前記排気チューブの前記下側金属部分の長さを選択する
ことを含む、方法。
【請求項10】
前記排気チューブの前記径方向位置での前記軸方向温度プロファイルは、前記溶融フェーズ中に前記インゴット引き上げ装置内で温度を測定することで決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記排気チューブの前記径方向位置での前記軸方向温度プロファイルは、前記溶融フェーズ中に前記インゴット引き上げ装置内での温度をモデリングすることで決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記閾値温度は、前記排気チューブの前記下側金属部分の前記第2材料の融解温度に関連する、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記閾値温度は、前記排気チューブの前記下側金属部分の前記第2材料の融解温度である、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記閾値温度は、第1閾値温度であり、
前記排気チューブの前記下側金属部分の長さは、前記排気チューブの前記上側部分の全長が第2閾値温度を上回るように選択される、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2閾値温度は、前記排気チューブの前記上側部分に少なくともいくつかの堆積物が形成される最高温度である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記堆積物は、少なくともシリコン酸化物、シリコン、およびシリコンカーバイドである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記上側部分が作られている前記第1材料は、グラファイトであり、前記第2閾値温度は、1200℃である、請求項14から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記下側部分が作られている前記第2材料は、ステンレス鋼である、請求項9から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記上側部分が作られている前記第1材料は、グラファイトである、請求項9から18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年2月24日に出願された米国仮特許出願第63/153012号に基づく優先権を主張する。なお、優先権の基礎とした出願は、全体として参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
本開示の分野は、複合排気チューブを有するインゴット引き上げ装置および複合排気チューブの下側部分および上側部分の長さを選択する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
単結晶シリコンインゴットは、単結晶シリコンシードがるつぼ内に保持されたシリコン融液に接触される所謂チョクラルスキー法により用意されることがある。単結晶シリコンシードが融液から引き抜かれ、単結晶シリコンインゴットが融液から引き上げられる。インゴットは、多結晶シリコンが最初にるつぼ内で溶融され、るつぼ内の溶融したシリコンが枯渇するまでシリコンインゴットが融液から引き抜かれるバッチシステムで用意されることがある。代替的には、インゴットは、インゴット成長中にシリコン融液を補充するためにポリシリコンが断続的または連続的に融液に添加される連続的なチョクラルスキー法で引き抜かれることもある。
【0004】
結晶の引き上げは、インゴット引き上げ装置のハウジング内の雰囲気の存在下で行われることがある。バッチチョクラルスキープロセスおよび連続的なチョクラルスキープロセスの両方において、アルゴンなどのシリコンに対して不活性なプロセスガスは、ハウジングに連続的に導入され、プラーの排気システムを通して引き抜かれる。プロセスガスが引き抜かれると、プラーチャンバと比較して低温の排気システムに化合物(例えば、シリコンカーバイドおよびシリコン酸化物の化合物)が堆積することがある。そのような堆積物は、定期的に排気システムから取り除かれるが、インゴット引き上げ装置の運転を停止する必要があり、処理コストが増加する場合がある。ハウジング内の圧力を維持する必要が有るが、これは断面積の大きな排気チューブでは難しいため、排気システムのサイズを大きくすることは難しい。
【0005】
インゴット引き上げ装置の排気システム上での堆積物の形成を低減することを特徴とし、インゴット引き上げ装置の環境(例えば、温度)に耐えることができる結晶引き上げシステムに対するニーズが存在する。
【0006】
本セクションは、以下に説明および/またはクレームされる本開示の様々な態様に関連し得る技術の様々な態様を読者に紹介することを意図している。本議論は、本開示の様々な態様をより理解するための背景情報を読者に提供する上で有用であると考えられる。したがって、これらの記述は、この観点で読まれるべきであり、先行技術を認めるものではないことを理解されたい。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一態様は、シリコン融液から単結晶シリコンインゴットを成長させるためのインゴット引き上げ装置に関する。装置は、成長チャンバを画定するハウジング含む。ハウジングは、底部と、底部から延びた側壁とを有する。るつぼは、シリコン融液を保持するために成長チャンバ内に配置されている。排気チューブは、成長チャンバからハウジングの底部まで延びている。排気チューブは、排気ガスを成長チャンバから排出するための排気流路を画定している。排気チューブは、第1材料から作られた上側部分と、上側部分に結合した下側部分とを含む。下側部分は、第1材料とは異なる第2材料から作られている。
【0008】
本開示の他の態様は、インゴット引き上げ装置の複合排気チューブの下側金属部分の長さを選択するための方法に関する。複合排気チューブは、第1材料から作られた上側部分と、上側部分に結合された下側部分とを含む。下側部分は、金属である第2材料から作られている。第2材料は、第1材料と異なる。複合排気チューブは、ハウジングの底部から上方に向けて断熱層を通過して延びている。本方法は、排気チューブの下側金属部分のための閾値温度を決定することを含む。排気チューブの径方向位置を決定される。インゴット引き上げ装置の軸方向温度プロファイルが、インゴット成長の溶融フェーズ中に排気チューブの径方向位置で決定される。軸方向温度プロファイルは、断熱層の上側部分からハウジングの底部に向けて低下する。排気チューブの下側金属部分の長さは、下側金属部分の上端が、下側金属部分の温度がインゴット成長の溶融フェーズ中において閾値温度よりも低くなる軸方向位置にあるように、選択される。
【0009】
本開示の上述した態様に関連して記載された特徴には、様々な改良が存在する。同様に、更なる特徴が、本開示の上述した態様に組み込まれてもよい。これらの改良および追加の特徴は、個別に存在してもよく、任意の組み合わせで存在してもよい。例えば、本開示の図示された実施形態のいずれかに関連して後述される様々な特徴は、本開示の上述した態様のいずれかに、単独または任意の組み合わせで、組み込まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、溶融中の多結晶シリコンのチャージを有するインゴット引き上げ装置の断面図である。
図2図2は、溶融後かつシリコンインゴット成長前のインゴット引き上げ装置の断面図である。
図3図3は、シリコンインゴット成長中のインゴット引き上げ装置の断面図である。
図4図4は、インゴット引き上げ装置の排気チューブの斜視図である。
図5図5は、排気チューブの上側部分および下側部分を示す排気チューブの分解図である。
【0011】
図面を通して、対応する参照符号は、対応する部品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の提供は、複合排気チューブを有するインゴット引き上げ装置と、排気チューブの下側部分(例えば、金属下側部分)の長さを選択するための方法とに関する。インゴット引き上げ装置は、一般に、単結晶シリコンインゴットを引き上げるように構成された任意のインゴット引き上げ装置で実施されてもよい。インゴット引き上げ装置(またはより簡単にインゴットプラー)の一例は、図1において全体として「100」で示されている。インゴット引き上げ装置100は、サセプタ106により支持された、シリコンなどの半導体またはソーラーグレード材料の融液104(図2)を保持するためのるつぼ102を含む。インゴット引き上げ装置100は、シリコンインゴット113(図3)を融液104から引き上げ軸Aに沿って引き上げるための成長チャンバ152を画定するインゴット引き上げハウジング108を含む。るつぼ102は、成長チャンバ152内に配置されている。インゴット引き上げ装置100は、一般的に、ポリシリコンの初期チャージ101からインゴットを完全に成長させるバッチ・チョクラルスキー成長に適している。他の実施形態では、ポリシリコンは連続的なチョクラルスキープロセスのように、インゴット成長中に添加される。
【0013】
るつぼ102は、フロア129と、フロア129から上方に延びた側壁131とを含む。側壁131は、概ね垂直である。フロア129は、側壁131の下方で延びたつぼ102の湾曲部を含む。るつぼ102内には、融液表面111(すなわち、融液-インゴット界面)を有するシリコン融液104(図3)がある。
【0014】
いくつかの実施形態では、るつぼ102は、層状である。例えば、るつぼ102は、石英ベース層と、石英ベース層上に配置された合成石英層とから作られてもよい。
【0015】
サセプタ106は、シャフト105により支持されている。サセプタ106、るつぼ102、シャフト105、およびインゴット113は、共通の長手方向軸Aまたは「引き上げ軸」Aを有する。
【0016】
インゴット引き上げハウジング108は、ハウジング底部116と、底部116から上方に延びたハウジング側壁121とを含む。インゴット引き上げ装置100は、汚染物質が底部断熱層110から成長チャンバ152に入ることを防止するために、断熱キャップ125を含む。側部断熱材124は、ハウジング側壁121から径方向内側に延びている。
【0017】
インゴット引き上げ装置100内には、インゴット113(図3)を成長させ、融液104から引き上げるための引き上げ機構114が設けられている。引き上げ機構114は、引き上げケーブル118と、引き上げケーブル118の一端に結合したシードホルダまたはチャック120と、シードホルダまたはチャック120に結合し、結晶成長を開始するためのシリコンシード結晶122とを含む。引き上げケーブル118の一端は、プーリー(図示せず)またはドラム(図示せず)、もしくは任意の他の適切な種類の昇降機構、例えばシャフトに接続されており、他端は、シード結晶122を保持するチャック120に接続されている。動作中、シード結晶122は、下降され、融液104に接触する。引き上げ機構114は、シード結晶122が上昇するように動作する。これにより、単結晶インゴット113(図3)は、融液104から引き上げられる。
【0018】
加熱中および結晶引き上げ中にるつぼ駆動ユニット107(例えば、モータ)は、るつぼ102およびサセプタ106を回転させる。昇降機構112は、成長プロセス中、るつぼ102を引き上げ軸Aに沿って上昇および下降させる。例えば、図1に示すように、るつぼ102は、予めるつぼ102に添加された固相多結晶シリコンの初期チャージ101が溶融される最低位置(底部ヒータ126の近く)にあることがある。結晶成長は、融液104をシード結晶122に接触させ、引き上げ機構114によりシード結晶122を上昇させることにより開始する。インゴット113が成長すると、シリコン融液104が消費され、るつぼ102内のシリコン融液104の高さが減少する。るつぼ102およびサセプタ106は、融液表面111をインゴット引き上げ装置100(図3)に対して同じ位置またはその近傍に維持するように、上昇してもよい。
【0019】
結晶駆動ユニット(図示せず)は、引き上げケーブル118およびインゴット113(図3)を、るつぼ駆動ユニット107がるつぼ102を回転させる方向とは反対の方向に回転させてもよい(例えば、逆回転)。単方向回転を用いる実施形態では、結晶駆動ユニットは、引き上げケーブル118を、るつぼ駆動ユニット107がるつぼ102を回転させる方向と同じ方向に、回転させてもよい。また、結晶駆動ユニットは、成長プロセス中に所望に応じて、融液表面111に対してインゴット113を上昇または下降させる。
【0020】
インゴット引き上げ装置100は、アルゴンなどの不活性ガスを成長チャンバ152に導入または成長チャンバ152から引き出すための不活性ガスシステムを含んでもよい。インゴット引き上げ装置100は、ドーパントを融液104に導入するためのドーパント供給システム(図示せず)を含んでもよい。
【0021】
チョクラルスキー単結晶成長プロセスによれば、多量の固体多結晶シリコン101、すなわちポリシリコンがるつぼ102に装入される。るつぼ102に導入される半導体またはソーラーグレード材料の初期チャージ101は、1または複数の加熱要素から提供される熱により溶融し、るつぼ102内にシリコン融液104(図2)を形成する。インゴット引き上げ装置100は、成長チャンバ152に熱を維持するために底部断熱層110および側部断熱材124を含む。インゴット引き上げ装置100の一部は、冷却されてもよい(例えば、装置100の底部において流体冷却されてもよい)。図示された実施形態では、インゴット引き上げ装置100は、るつぼフロア129の下方に配置された底部ヒータ126を含む。図1に示すように、るつぼ102は、底部ヒータ126がるつぼ102内の多結晶チャージ101を溶融するように、底部ヒータ126に比較的近接するように移動されてもよい。
【0022】
インゴット113(図3)を形成するために、シード結晶122は、融液104の表面111と接触させられる。引き上げ機構114は、融液104からシード結晶122を引き上げるように動作される。図3を参照すると、インゴット113は、クラウン部142を含み、クラウン部142では、インゴット113がシード結晶122から外側に移行しつつテーパし、目標直径に達する。インゴット113は、引き上げ速度を上げることで成長する結晶113の一定直径の部分145または筒状の「本体」を含む。インゴット113の本体145は、比較的一定の直径を有する。インゴット113は、本体145の後にインゴットが径方向にテーパするテールまたはエンドコーン(図示せず)を含む。直径が十分に小さくなったとき、インゴット113は、融液104から分離される。
【0023】
インゴット引き上げ装置100は、側部ヒータ135と、結晶成長中に融液104の温度を維持するためにるつぼ102を取り囲むサセプタ106とを備える。側部ヒータ135は、るつぼ102が引き上げ軸Aに上下に移動するときに、るつぼの側壁131の径方向外側に配置されている。側部ヒータ135および底部ヒータ126は、側部ヒータ135および底部ヒータ126が本明細書で説明したように動作可能な任意の種類のヒータであってもよい。いくつかの実施形態では、ヒータ135,126は、抵抗ヒータである。側部ヒータ135および底部ヒータ126は、融液104の温度が引き上げプロセスの全体を通して制御されるように、コントロールシステム(図示せず)により制御されてもよい。底部ヒータ126および側部ヒータ135は、例示であり、インゴット引き上げ装置100は、ヒータの異なる配置(例えば、異なる位置にあるヒータおよび/または追加のヒータ)を含んでもよい。
【0024】
インゴット引き上げ装置100は、熱シールド151を含んでもよい。熱シールド151は、インゴット113を取り囲んでもよく、結晶成長中に(図3)るつぼ102内に部分的に配置されてもよい。
【0025】
インゴット引き上げ装置100は、排気チューブ140を含む。排気チューブ140は、ハウジング108の底部116を通過し、底部断熱層110を通過し、断熱キャップ125を通過して、成長チャンバ152まで延びている。排気チューブ140は、断熱キャップ125と位置合わせされてもよい上端143と、ハウジング108の底部116と位置合わせされた下端149とを含む。排気チューブ140は、上端143から下端149に延びた全長L140(図4)を有する。排気チューブ140は、成長チャンバ152から排気ガスを排出するための排気流路166(図1)を画定する。排気チューブ140は、排気ポート(図示せず)に一体化されてもよい。排気ポートは、排気ガスをろ過システムおよび真空ポンプに導く外部導管に(例えば、フランジ接続により)接続されてもよい。
【0026】
インゴット引き上げ装置100は、単一の排気チューブ140と共に示されているが、インゴット引き上げ装置100は、少なくとも2、3、4、5、6、またはそれ以上の排気チューブ140などの複数の排気チューブ140(および関連する排気ポート)を含んでもよい。そのような実施形態では、各排気チューブ140は、本明細書において説明した複合排気チューブであってもよい。
【0027】
図4を参照すると、排気チューブ140は、上側部分147と、上側部分147に結合された下側部分155とを含む。上側部分147は第1材料から作られており、下側部分155は、第1材料とは異なる第2材料から作られている。本開示のいくつかの実施形態によれば、上側部分147が作られている第1材料は、下側部分155が作られている第2材料の融解温度よりも高い融解温度を有する。いくつかの実施形態では、排気チューブ140の上側部分147が作られている第1材料は、グラファイトである。排気チューブ140の下側部分155が作られている第2材料は、ステンレス鋼などの金属であってもよい(例えば、上側部分147はグラファイトであり、下側部分155はステンレス鋼である)。
【0028】
図4-5に示される排気チューブ140は例示であることに留意されたい。例えば、上側部分147および/または下側部分155は、2つまたはそれ以上の層を含んでもよい(例えば、上側部分147は、内側にグラファイトの層を含んでもよく、外側に金属の層を含んでもよい)。いくつかの実施形態では、複合排気チューブ140は、異なる材料から作られた追加部分を含んでいる。
【0029】
排気チューブ140の上側部分147および下側部分155は、2つの異種材料を接続するための任意の既知の方法により互いに結合されてもよい。例えば、図5に示すように、下側部分155は、カラー158を含む。2つの部分147,155が互いに結合されているとき、カラー158は、上側部分147(例えば、上側部分147に形成された座ぐり)に受け入れられている。カラー158は、上側部分147内に摩擦嵌めされてもよい(例えば、上側部分147の重量および/または底部断熱層110内のボアが接続を維持するのに役立つ)。
【0030】
排気チューブの上側部分147は、上端154から下端156に延びた長さL147を有する。下側部分155は、上端164から下端164に延びた長さL155を有する(すなわち、長さL155は、カラー158を含む)。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態によれば(例えば、排気チューブ140の下側部分155がステンレス鋼などの金属である場合)、排気チューブ140の下側部分155の長さL155は、排気チューブ140の下側部分155の変形および/または破壊を防止するように選択されてもよい。排気チューブ140の下側部分155の長さL155を選択するために、排気チューブ140の下側(例えば金属)部分のための閾値温度が決定される。閾値温度は、排気チューブ140の下側部分155の第2材料の融解温度に関連してもよい(例えば、排気チューブ140の下側部分155が作られる第2材料の融解温度よりも10℃低いか、または融解温度よりも25℃低いか、融解温度よりも50℃低いか、排気チューブ140の下側部分155が作られる第2材料の融解温度よりも100℃低い)。いくつかの実施形態では、閾値温度は、排気チューブ140の下側部分155の第2材料の融解温度である。
【0032】
下側部分155がステンレス鋼(例えば、一般に1400℃から1420℃の範囲の融解温度を有する304Lステンレス鋼)から作られている実施形態では、閾値温度は、1400℃以下であってもよく、1375℃以下であってもよく、または1330℃以下であってもよい。
【0033】
排気チューブ140の下側部分155の長さL155を選択する方法の実施形態は、インゴット成長の溶融フェーズ中に排気チューブ140の径方向位置R140(図1)でのインゴット引き上げ装置100の軸方向温度プロファイル(すなわち、排気チューブ140の長さL140に沿ったインゴット引き上げ装置内の温度)を決定することを含む。複合排気チューブ140が従来の排気チューブに後付けされる既存のインゴットプラー100では、排気チューブ140の径方向位置140(図1)は、単に、インゴットプラー100でのチューブの位置である。新規のインゴット引き上げ装置100では、径方向位置R140は、新規のインゴット引き上げ装置100を設計するときに排気チューブ140が配置される位置を決定することにより、設定される。
【0034】
排気チューブ140の径方向位置での軸方向温度プロファイルは、インゴット成長の溶融フェーズ中のインゴット引き上げ装置100内の温度を測定する(例えば、1または複数の温度センサを有するインゴット引き上げ装置100内の実温度を測定する)ことにより決定される。いくつかの実施形態では、排気チューブ140の径方向位置での軸方向温度プロファイルは、溶融フェーズ中のインゴット引き上げ装置100内の温度をモデリングすることにより決定される。溶融中のインゴット引き上げ装置100の温度プロファイルは、CrysVun(Fraunhofer Institute IISBのCrystal Growth Laboratory(ドイツ、エアランゲン)のCrysVunソフトウェア)、COMSOL(COSMOL社(アメリカ、マサチューセッツ、バーリントン)のCOSMOLマルチフィジックスソフトウェア)、Fluent(Ansys(アメリカ、ペンシルバニア、カノンズバーグ)により管理される商用ソフトウェア)およびCGSim(STR Group社(ロシア、サンクトペテルブルク)により商業化されたCGSimソフトウェア)などの商業的に利用可能なツールを用いてモデリングされてもよい。これらのツールは、例示であり、溶融中のプラーでの熱伝達をモデル化する他のソフトウェアコード(例えば、任意の定常状態の2Dシミュレーション)が使用されてもよい。
【0035】
本開示の実施形態によれば、インゴット引き上げ装置100の温度プロファイルは、るつぼ102に添加された固相多結晶シリコンの初期チャージ101(図1)が溶融する溶融フェーズ中に決定される。溶融中、るつぼ102は、通常、底部ヒータ(または複数のヒータ)126に最も近い最低位置に下降される。溶融中、排気チューブ140は、最高温度になる場合があり、下側部分155は、閾値温度に最も近づく。排気チューブ140の径方向位置R140での軸方向温度プロファイルは、一般的に、上端143から下端149に向かって温度が低下する。
【0036】
排気チューブ140の径方向位置でのインゴット引き上げ装置100の温度プロファイルが溶融中に決定されると、排気チューブ140の下側金属部分155の長さL155が選択される。下側金属部分155の上端164(図5)が、下側金属部分155の全体の温度がインゴット成長の溶融フェーズ中(すなわちシリコンチャージ101(図1)が溶融しているとき)において閾値温度よりも低くなる軸方向位置にあるように、排気チューブ140の下側金属部分155の長さL155は選択される。これに関して、排気チューブの下側部分155の長さL155は、排気チューブ140の下側部分155の全体が閾値温度以下になることを保証するために、カラー158を含んでもよいことを留意されたい。
【0037】
排気チューブ140の長さL140(図4)が底部断熱層110の厚みにより比較的固定されるため、排気チューブの下側部分155の長さを選択することで、排気チューブ140の上側部分147の長さL147が設定されることに留意されたい(すなわち、複合排気チューブ140が2つの部分のみを含み、カラー158の高さが固定されている実施形態において)。
【0038】
いくつかの実施形態では、第2閾値温度は、排気チューブ140の上側部分147のために設置される(すなわち、上述の閾値温度を第1閾値温度とする)。そのような実施形態では、排気チューブの下側部分155の長さL155は、下側部分155の上端164が第1閾値温度より低いことを保証するように短縮されてもよい一方で、排気チューブ140の上側部分147の全長L147が第2閾値温度より高くなることを可能にするように底部155が十分長くなるように、長さL155が選択されてもよい。例えば、第2閾値温度は、少なくともいくつかの堆積物が排気チューブ140の上側部分147上に形成される最大温度であってもよい(すなわち、第2閾値温度は、そのような堆積物が第2閾値温度より高い温度では形成されない温度であってもよい)。堆積物の例には、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン(例えば、シリコン凝縮による)、およびシリコンカーバイド(SiC)(SiCとSiOxの複合物を含む)が含まれる。上側部分147がグラファイトから作られている実施形態では、上側部分147が第2閾値温度より高い温度に維持され(すなわち、上側部分147の全体を底部断熱層110のより高温の部分に維持するように下側部分155を十分な長さL155にすることにより)、第2閾値温度は、1200℃であってもよい。
【0039】
従来のインゴット引き上げ装置と比較して、本開示のインゴット引き上げ装置は、複数の利点を有する。複合排気チューブを使用することにより、排気チューブは、排気チューブに形成される堆積物を減らすように適合され得る。上側部分がグラファイトから作られている実施形態では、上側部分は、比較的単純であり、安価で製造できる。グラファイトは比較的安価な材料である。そのような実施形態では、グラファイトは、比較的温度が高く、堆積物が形成されにくい排気チューブの上側部分に限定される。排気チューブの下側部分がステンレス鋼から作られる実施形態では、ステンレス鋼は、堆積物の形成に耐性があり、これは、より冷却され、堆積物がより発生しやすい排気チューブの下側部分において有益である。堆積物を減らすことで、インゴット引き上げ装置のランタイムを長くすることができ、これにより生産性を向上する。ランタイムが長いと、より安定した処理が可能になり(これにより歩留まりが向上する)、ホットゾーンの分解頻度が少なくなるため、ホットゾーンへのダメージが軽減される。更に、排気チューブの交換頻度を減らすことができ、これにより運転コストを低減させることができる。インゴット引き上げ装置の温度をモデリングすることにより、チューブの下側部分の長さは、排気チューブの上側部分が、下側部分の材料(例えばステンレス鋼)が変形または溶融し始める閾値温度よりも低い温度になるように選択されてもよい。代替的にまたは追加的に、チューブの下側部分の長さは、チューブの上側部分の長さが、チューブの上側部分が作られる材料上に堆積物が形成される温度より高い温度(例えばグラファイトでは1200℃より高い温度)であることを保証するように、十分に短くなるように選択されてもよい。
【0040】
(実施例)
本開示のプロセスは、以下の実施例により更に説明される。これらの実施例は、限定的な意味で捉えられるべきではない。
実施例1:複合排気チューブの使用
【0041】
複合排気チューブは、図1から3に示されるインゴット引き上げ装置100に類似するインゴット引き上げ装置で使用された。排気チューブは、グラファイトで作られた上側部分とステンレス鋼で作られた下側部分とを含んでいた。インゴット成長中、排気チューブのステンレス鋼下側部分の上側の部分は、溶融した。インゴット引き上げ装置の温度プロファイルは、従来のツールを使用してモデリングされた。チューブのステンレス鋼部分の溶融した部分と、その下の溶融しなかった部分との境界は、一般に、インゴット引き上げ装置の温度プロファイルにおける1330℃の等高線の位置に対応していた(すなわち、実際に溶融が生じた等高線は、排気チューブの下側金属部分の最大閾値温度として使用されてもよい)。
【0042】
グラファイトから作られた上側部分とステンレス鋼から作られた下側部分とを含んだ第2排気チューブを、インゴット引き上げ装置で使用した。第2排気チューブのステンレス鋼下側部分の長さを、ステンレス鋼部分全体がインゴット引き上げ装置のモデリングされた温度プロファイルの1330℃の等高線よりも下方に位置するように、短くした(それに対応したグラファイト上側部分の長さを長くした)。ステンレス鋼部分は、インゴット成長中に溶融しなかった。排気チューブでは、上側グラファイト部分において堆積物が過度に形成されず、下側ステンレス部分では堆積物が最小限であった。
【0043】
本明細書で使用されるように、「約(about)」、「実質的に(substantially)」、「本質的に(essentially)」、および「約(approximately)」の用語は、寸法、密度、温度、または他の物理的または化学的な性質もしくは特徴の範囲と関連して使用されるとき、性質または特徴の範囲の上限および/または下限に存在し得る変動を包含することを意味する。当該変動は、例えば、丸め、測定方法、または他の統計的変動から生じる変動を含む。
【0044】
本開示または本開示の実施形態の要素を紹介するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、要素が1以上存在することを意味することを意図している。用語「備える(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、および「有する(having)」は、包括的であることを意図しており、列挙された要素以外の追加の要素が存在してもよいことを意味している。特定の向きを示す用語(例えば「上部(top)」、「底部(bottom)」、「側部(side)」)の使用は、説明の便宜上のものであり、説明された物品の特定の向きを必要とするものではない。
【0045】
本開示の範囲から逸脱することなく、上述の構造および方法において、様々な変更が可能であるため、上述の説明に含まれ、添付の図面に示される全ての事項は、限定的な意味ではなく例示として解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】