(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】測定値違反解析を使用したプロセス異常の識別
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240214BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
G05B19/418 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023545836
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 US2022012595
(87)【国際公開番号】W WO2022164662
(87)【国際公開日】2022-08-04
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ナハス セリム
(72)【発明者】
【氏名】ドックス ジョセフ ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ラガム ヴィシャリ
(72)【発明者】
【氏名】ウォーレン エリック ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン シジン
(72)【発明者】
【氏名】ラーゴ チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】リーヴス クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】コラル ランディ レイナルド
【テーマコード(参考)】
3C100
【Fターム(参考)】
3C100AA56
3C100AA58
3C100AA62
3C100BB13
3C100BB15
3C100CC02
3C100EE06
(57)【要約】
本明細書の主題は、特に、製造プロセスにおける現在のサンプルに対する動作の現在の計測学データを受け取る方法、システムおよび/または装置において実施することができる。この計測学データは、現在のサンプル上の1つまたは複数の位置の各々におけるパラメータの現在の値を含む。この方法は、1つまたは複数の位置の各々に対するパラメータのパラメータ値の基準変化率を取得することを含む。この方法はさらに、1つまたは複数の位置の各々に対するパラメータ値の現在の変化率を決定することを含む。この現在の変化率は現在のサンプルに関連する。この方法はさらに、パラメータ値の現在の変化率をパラメータ値の基準変化率と比較すること、およびこの比較に基づいて製造プロセスの異常の実例を識別することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの処理装置によって、製造プロセスにおける現在のサンプルに対する動作の現在の計測学データを受け取ることであり、前記計測学データが、前記現在のサンプル上の1つまたは複数の位置の各々におけるパラメータの現在の値を含む、受け取ること、
前記少なくとも1つの処理装置によって、前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータのパラメータ値の基準変化率を取得すること、
前記少なくとも1つの処理装置によって、前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータ値の現在の変化率を決定することであり、前記パラメータ値の前記現在の変化率が前記現在のサンプルに関連する、決定すること、
前記少なくとも1つの処理装置によって、前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータ値の前記現在の変化率を、前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータ値の前記基準変化率と比較すること、および
前記少なくとも1つの処理装置によって、前記パラメータ値の前記現在の変化率と前記パラメータ値の前記基準変化率との比較に基づいて、前記製造プロセスの異常の実例を識別すること
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの処理装置によって、前記異常の実例に関連した機械の動作またはプロセスの実施態様の少なくとも一方を変更すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パラメータ値の前記基準変化率が、前記製造プロセスにおける1つまたは複数の以前のサンプルに対する前記動作の履歴計測学データからの前記パラメータ値の1つまたは複数の履歴変化率を使用して決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータ値の前記基準変化率が、前記パラメータ値の前記履歴変化率の前記1つまたは複数を用いた分散分析(ANOVA)を実行することによって決定される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記処理装置によって、前記パラメータ値の関連する基準変化率よりも大きな前記パラメータ値の関連する現在の変化率を各々が有する1つまたは複数の違反位置を識別すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記処理装置によって、前記1つまたは複数の違反位置に関連したサンプルパターンを決定すること、および
前記処理装置によって、前記異常の実例を、前記サンプルパターンに基づいて識別すること
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記処理装置によって、前記製造プロセスの1つまたは複数のプロセス従属性を検索すること、および
前記処理装置によって、前記製造プロセスの前記異常の実例を、前記プロセス従属性の1つまたは複数に基づいて識別すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記処理装置によって、前記異常の実例に関連した機械またはプロセスの視覚的表示器を提示するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を提供すること
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
メモリと、
前記メモリに通信可能に結合された少なくとも1つの処理装置と
を備え、前記少なくとも1つの処理装置が、
製造プロセスにおける現在のサンプルに対する動作の現在の計測学データを受け取ることであり、前記計測学データが、前記現在のサンプル上の1つまたは複数の位置の各々におけるパラメータの現在の値を含む、受け取ること、
前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータのパラメータ値の基準変化率を取得すること、
前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータ値の現在の変化率を決定することであり、前記パラメータ値の前記現在の変化率が前記現在のサンプルに関連する、決定すること、
前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータ値の前記現在の変化率を、前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータ値の前記基準変化率と比較すること、および
前記パラメータ値の前記現在の変化率と前記パラメータ値の前記基準変化率との比較に基づいて、前記製造プロセスの異常の実例を識別すること
を行うためのものである、システム。
【請求項10】
前記処理装置がさらに、
前記異常の実例に関連した機械の動作またはプロセスの実施態様の少なくとも一方を変更する
ためのものである、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記パラメータ値の前記基準変化率が、前記製造プロセスにおける1つまたは複数の以前のサンプルに対する前記動作の以前の計測学データからの前記パラメータ値の1つまたは複数の以前の変化率を使用して決定される、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記パラメータ値の前記基準変化率がさらに、前記パラメータ値の前記1つまたは複数の以前の変化率を用いた分散分析(ANOVA)を実行することによって決定される、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記処理装置がさらに、
前記パラメータ値の関連する基準変化率よりも大きな前記パラメータ値の関連する現在の変化率を各々が有する1つまたは複数の違反位置を識別する
ためのものである、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記処理装置がさらに、
前記1つまたは複数の違反位置に関連したサンプルパターンを決定し、
前記異常の実例を、前記サンプルパターンに基づいて識別する
ためのものである、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記処理装置がさらに、
前記製造プロセスの1つまたは複数のプロセス従属性を検索し、
前記製造プロセスの前記異常の実例を、前記プロセス従属性の1つまたは複数に基づいて識別する
ためのものである、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記処理装置がさらに、
グラフィカルユーザインタフェース(GUI)上に提示するために前記異常の実例に関連した機械の動作またはプロセスの実施態様を提供する
ためのものである、請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
命令を含む非一過性機械可読ストレージ媒体であって、前記命令が、少なくとも1つの処理装置によって実行されたときに、前記少なくとも1つの処理装置に、
製造プロセスにおける現在のサンプルに対する動作の現在の計測学データを受け取ることであり、前記計測学データが、前記現在のサンプル上の1つまたは複数の位置の各々におけるパラメータの現在の値を含む、受け取ること、
前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータのパラメータ値の基準変化率を取得すること、
前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータ値の現在の変化率を決定することであり、前記パラメータ値の前記現在の変化率が前記現在のサンプルに関連する、決定すること、
前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータ値の前記現在の変化率を、前記1つまたは複数の位置の各々に対する前記パラメータ値の前記基準変化率と比較すること、および
前記パラメータ値の前記現在の変化率と前記パラメータ値の前記基準変化率との比較に基づいて、前記製造プロセスの異常の実例を識別すること
を行わせる、非一過性機械可読ストレージ媒体。
【請求項18】
前記処理装置がさらに、
前記パラメータ値の関連する基準変化率よりも大きな前記パラメータ値の関連する現在の変化率を各々が有する1つまたは複数の違反位置を識別する
ためのものである、請求項17に記載の非一過性機械可読ストレージ媒体。
【請求項19】
前記処理装置がさらに、
前記1つまたは複数の違反位置に関連したサンプルパターンを決定し、
前記異常の実例を、前記サンプルパターンに基づいて識別する
ためのものである、請求項18に記載の非一過性機械可読ストレージ媒体。
【請求項20】
前記処理装置がさらに、
前記製造プロセスの1つまたは複数のプロセス従属性を検索し、
前記製造プロセスの前記異常の実例を、前記プロセス従属性の1つまたは複数、および前記パラメータ値の前記現在の変化率と前記パラメータ値の前記基準変化率との前記比較に基づいて識別する
ためのものである、請求項17に記載の非一過性機械可読ストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明のいくつかの実施形態は一般に、サンプル測定値違反解析(sample measurement violation analysis)を使用して製造システムの異常を検出するシステム、方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造、例えば半導体デバイスの製造においては、計測学ツールを使用して製品品質を直接的に測定すること、およびプロセス機器センサを監視することによって製品品質を間接的に測定することができる。この情報は、製品製造ライフサイクルの異なる時点で収集される。プロセスツールまたは結果として生じる製品の問題を識別する必要があるとき、製造技師は、多数のデータ点(例えば測定されたさまざまなパラメータを含む多くのサンプルの計測学データ)を解析する労力とコストがかかるプロセスを経なければならない。例えば、製品の潜在的問題を知らされたとき、技師は、対応する計測学データを精査して、製品の警告的特性を見つけなければならない。計測学違反を識別する一般的な手法は、統計的プロセス制御(statistical process control)(SPC)を使用する手法である。
【0003】
統計的プロセス制御(SPC)は、統計的方法を使用してプロセスを監視および制御する品質制御法である。SPCは、制御された変動でプロセスが動作し、仕様により合致した製品をより少ない無駄(例えば作り直しまたは廃棄)で生成することを保証するのに役立ちうる。SPCは、合致した製品(例えば仕様を満たしている製品)出力を測定することができるさまざまなプロセスに適用することができる。SPCは、製造プロセス中に品質を測定および制御するための業界標準の方法を含むことができる。製造中に、製品およびプロセス測定値の形態の品質データをリアルタイムで取得することができる。次いで、計算された制御限界でグラフ上にデータをプロットすることができる。データに境界を引くためにしばしば使用される2つの限界は、第1に、プロセスの能力によって決定されうる制御限界、および第2に、所望の結果によって決定されうる仕様限界(例えばある仕様要件を満たす測定値の範囲)を含む。
【発明の概要】
【0004】
製造プロセスの異常の実例(例えば源)を識別するための方法およびシステム。この方法は、製造プロセスにおける現在のサンプルに対する動作の現在の計測学データを受け取ることを含む。この計測学データは、現在のサンプルおよび以前の測定学プロセスステップによるサンプル上の1つまたは複数の位置の各々におけるパラメータの現在の値を含む。この方法は、1つまたは複数の位置の各々に対するパラメータのパラメータ値の基準変化率を取得することを含む。この方法はさらに、1つまたは複数の位置の各々に対するパラメータの現在のパラメータ変化率を決定することを含む。この現在の変化率は現在のサンプルに関連する。この方法はさらに、パラメータ値の現在の変化率をパラメータ値の基準変化率と比較すること、およびこの比較に基づいて製造プロセスの異常の実例を識別することを含む。
【0005】
添付図面の図において、本発明は例として示されており、限定するものとしては示されていない。添付図面の図では、同様の参照符号が同様の要素を示している。本開示の「一」実施形態または「1つの」実施形態に対する異なる言及は必ずしも同じ実施形態を指してはおらず、そのような言及は少なくとも1つを意味することに留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の態様による、製造システムを示すブロック図である。
【
図2】本開示の態様による、製造システムの製造プロセスを示すブロック図である。
【
図3】本開示の態様による、製造プロセスにおける動作に対するさまざまなサンプルのパラメータ値の変化率の分布を示す図である。
【
図4】本開示の態様による、サンプルパターンに対する例示的なグラフィカルユーザインタフェースを示す図である。
【
図5】本開示の態様による、プロセス故障モード影響解析(FMEA)を示すブロック図である。
【
図6】本開示の態様による、製造プロセスの異常の実例を識別する方法の流れ図である。
【
図7】製造プロセスの異常の実例を識別することができる例示的なコンピューティング装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
製造(例えばマイクロファブリケーション、ウエハ製造、基板生成および/または他の同種のもの)においては、所望の結果(例えば所望の仕様を満たしているまたは所望の特性を有するサンプル)を生み出すためにさまざまな処理ツールおよび手順が使用されている。製造プロセスは、さまざまな製造ステップおよび計測学ステップを含むことがある。計測学ステップは、以前に実行された製造ステップの品質および成功を示す計測学データを計測するために製造ステップと製造ステップの間に使用することができる。計測学データは、サンプルを含むウエハ上のさまざまな位置で測定された多数のパラメータサイト測定値(例えば厚さ、粗さ、深さ、粒子数、表面勾配など)からなることができる。サンプルが製造プロセスを経るときに、サンプルが現在のパラメータ値にどのように達したのかを示すために、多くの計測学ステップにより履歴計測学データを計測し、そのデータを記憶することができる。製造システムは、規格に違反している測定値にフラグを立てることができる。例えば、SPCでは、測定値が、制御限界から外れている場合、所定のルールに違反している場合、仕様限界から外れている場合、またはその他の理由で測定値が許容できないとみなされた場合にその測定値は違反していることがある。違反測定値は、とりわけ、故障した製造機械またはプロセスによって生じることがある。例えば、製造機械は、通常どおりの性能を発揮しない壊れたツールまたは摩損した機器を含むことがある。違反測定値の源の識別はコストがかかることがあり、幻想であることがある。例えば、製造ダウンタイム、不適切な製品の製造、ならびに/または製造異常の源を識別および修復するためのコストのせり上がりは、コスト高およびリソース集約的であることがある。
【0008】
従来、SPC違反解析は手動で実行されている。識別された測定値違反を有するSPCチャートをユーザに提示することができる。ユーザには、ユーザの知識によって、欠陥を有する可能性がある機械、装置、手順などを含む製造プロセスの異常を識別する作業が課せられる。しかしながら、製造システムがより複雑になり、ますます自動化されるにつれて、より多くのデータを測定および採取する能力は向上し、自分の知識だけに依存してユーザが処理するのにはデータ量が手に負えないものになっている。さらに、人間の頭脳で達成することができるものを超える知識および記憶を必要とする多くの異なるプロセス(例えば製造された結果に到達するためにさまざまな機械、装置および/または手順を使用するさまざまな基板レシピおよび多様なサンプル)を取り扱うように製造システムを設計することができる。さらに、製造プロセスの現在のまたは最後の動作の前に製造プロセスの動作に関連して使用または実行された機械および/またはプロセスの上流故障を決定するのに、SPC結果に基づく異常の判定は不十分である。例えば、第1の機械が異常の源であるとしても、プロセスは20の機械を使用することがあり、この使用後にエラーの源が隠されまたは希釈されることがあり、それによって源の識別が難しくなることがある。
【0009】
本開示の態様および実施態様は、製造プロセスに関連したサンプルの測定データを使用して製造プロセスの異常の実例(例えば故障した機械、欠陥のある動作、摩耗したツールなど)を識別することによって、既存の技術のこれらの短所およびその他の短所を解決する。最初に、処理装置が、製造プロセスにおける現在のサンプルに対する動作の現在の計測学データを受け取ることができる。この計測学データは、現在のサンプル上の1つまたは複数の位置の各々におけるパラメータの現在の値を含むことができる。処理装置は、1つまたは複数の位置の各々に対するパラメータのパラメータ値の基準変化率を取得することができる。パラメータ値の現在の変化率は現在のサンプルに関連したものとすることができる。処理装置はさらに、パラメータ値の現在の変化率をパラメータ値の基準変化率と比較すること、およびこの比較に基づいて、製造プロセスの異常の実例を識別することを含むことができる。
【0010】
本開示の態様の結果、エネルギー消費(例えば電池または電力消費)、バンド幅、待ち時間などがかなり低減する。例えば、開示された方式で計測学データを処理および解析することによって、従来のシステムよりも速くデータを処理することができ、従来のシステムよりも効率的なデータの記憶および取得を可能にすることができる。さらに、異常を修復するためにとる推奨是正処置を従来のシステムよりも早く識別および適用することができ、その結果、修正される前に欠陥のあるサンプルまたは機能不良のサンプルを製造することによる低減されたコストを低減させることができ、摩耗した、壊れたまたは他の態様の欠陥のある機器によるさらなる損傷を防ぐことができ、近い将来に起こる可能性がある異常、欠陥、故障および/またはエラーを予測し、先回りして是正処置をとることができる。
【0011】
図1は、本開示の態様による、製造システム100を示すブロック図である。
図1に示されているように、製造システム100は、製造実行システム102、計測学システム110、統計的プロセス制御(SPC)システム116、データストア122、クライアント装置128および機器エンジニアリングシステム130を含む。製造実行システム102、計測学システム110、SPCシステム116、データストア122および/または機器エンジニアリングシステム130はそれぞれ、サーバコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ノートブックコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、移動通信装置、セル式電話、スマートフォン、ハンドヘルドコンピュータまたは同種のコンピューティング装置を含む1つまたは複数のコンピューティング装置をホストとすることができる。
【0012】
製造実行システム102、計測学システム110、SPCシステム116、データストア122、機器エンジニアリングシステム130およびクライアント装置128は、製造実行システム102内の異常の実例を識別するためにネットワーク140を介して互いに結合されたものとすることができる。いくつかの実施形態では、ネットワーク140が、製造システム100のそれぞれの要素に互いへのアクセスおよび公的に利用可能な他のコンピューティング装置へのアクセスを提供する公衆ネットワークである。いくつかの実施形態では、ネットワーク140が、製造システム100のそれぞれの要素に互いへのアクセスおよび私的に利用可能な他のコンピューティング装置へのアクセスを提供する私設ネットワークである。ネットワーク140は、1つまたは複数のワイドエリアネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、有線ネットワーク(例えばイーサネットネットワーク)、無線ネットワーク(例えば802.11ネットワークまたはWi-Fiネットワーク)、セル方式ネットワーク(例えばロングタームエボルーション(LTE)ネットワーク)、ルータ、ハブ、スイッチ、サーバコンピュータおよび/またはこれらの組合せを含むことができる。その代わりにまたはそれに加えて、製造システム100の要素のいずれかが、ネットワーク140を使用することなしに一緒に統合されていてもよく、または他の方式で結合されていてもよい。
【0013】
クライアント装置128は、パーソナルコンピュータ(PC)、ラップトップ、移動電話、タブレットコンピュータ、ネットブックコンピュータ、ネットワークに接続されたテレビジョン(「スマートTV」)、ネットワークに接続されたメディアプレーヤ(例えばBlu-rayプレーヤ)、セットトップボックス、オーバーザトップ(OOT)ストリーミング装置、オペレータボックスなどであってもよく、またはこれらを含むものであってもよい。クライアント装置128は、ブラウザ、アプリケーションおよび/または測定値違反ツールを含むことができる。いくつかの実施形態では、クライアント装置128を、本明細書に記載されているように、製造実行システム102、計測学システム110、SPCシステム116、データストア122および/または機器エンジニアリングシステム130に(例えばブラウザまたはアプリケーションを使用してネットワーク140を介して)アクセスすることができ、違反解析のさまざまな段階において違反測定値の指示、識別された異常および計測学データを伝達する(例えば送信および/または受信する)ことができるものとすることができる。
【0014】
製造実行システム102は、さまざまな製造プロセスに関する機械動作104、プロセス実施態様106およびプロセス従属性108を含むことができる。製造プロセスは、1つまたは複数の機械動作104を1つまたは複数の異なるプロセス実施態様106を使用して実行するために1つまたは複数の機械を利用するさまざまなステップまたは動作を含むことができる。例えば、さまざまな機械には、エッチングチャンバ、堆積チャンバ(原子層堆積、化学気相堆積もしくはプラズマ強化化学気相堆積用のチャンバを含む)、アニールチャンバおよび/または他の同種のチャンバなどの専用チャンバを含めることができる。別の例では、機械が、機械間およびプロセスステップ間でサンプルを輸送するためのサンプル輸送システム(例えばセレクティブコンプライアンスアセンブリロボットアーム(selective compliance assembly robot arm)(SCARA)ロボット、移送チャンバ、フロントオープニングポッド(FOUP)、サイドストレージポッド(SSP)および/または他の同種のもの)を含むことができる。
【0015】
プロセス実施態様106は、製造プロセスにおいて機械動作104を実行するためのさまざまな仕様を含むことができる。例えば、プロセス実施態様106は、機械動作104の持続時間、その動作に使用される機械ツール、機械(例えばチャンバ)の温度、流量、圧力等、堆積順序および他の同種のものなどのプロセス仕様を含むことができる。別の例では、プロセス実施態様が、さらなるプロセスステップにサンプルを輸送するためまたは計測学システム110によって測定するためにサンプルを輸送するための移送命令を含むことができる。
【0016】
製造レシピまたは製造プロセス命令とも呼ばれるプロセス従属性108は、指定された順序で適用されたときに、製造されたサンプル(例えば所定の特性を有しまたは所定の仕様を満たす基板またはウエハ)を生成するプロセス実施態様106を用いる機械動作104の順序付けを含む。いくつかの実施形態では、製造プロセスのプロセス従属性108が、データストアに記憶されており、または、その代わりにもしくはそれに加えて、製造プロセスのステップもしくは動作を示すデータのテーブルを生成するやり方で記憶されている。例えば、計測学システム110、SPCシステム116および/または機器エンジニアリングシステム130のうちの1つまたは複数は、現在測定されているサンプルまたは関連計測学データが処理されているサンプルのプロセス従属性をリクエストすることができる。さらなる例では、製造プロセスにおける現在のサンプルに対する動作の前の指定された数のステップ(例えば製造プロセスの最後の5つ、10個、15個またはn個のプロセスステップ)に関するプロセス従属性をリクエストすることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、製造実行システム102が、サンプル(例えば基板またはウエハ)を製造するための全ての命令、機械およびプロセスを含み、他の実施形態では、製造実行システム102が、サンプルを製造する際にさまざまな機械、ツールおよびプロセスを制御および調整する。他の実施形態では、計測学システム110と組み合わされた製造実行システム102が、製造プロセスの全体を通じて製造プロセスと計測学プロセスとを交互に実行するように設計された1つのシステムを形成してもよい。
【0018】
計測学システム110は、製造実行システム102によって製造されているサンプル上のさまざまな位置でパラメータを測定するための計測学ツール114を含む。これらのパラメータは、製造実行システム102による製造プロセスによって実行された動作の品質を示すさまざまな測定値を含むことができる。例えば、パラメータは、サンプルの厚さ、エッチング速度、抵抗率、粒子数などを含むことができる。いくつかの実施形態では、計測学ツールが、それぞれのサンプル上の特定の所定の位置で測定された測定値を調整する。例えば、特定の製造動作(例えば堆積またはエッチング動作)の後、それぞれのサンプルは計測学システム110へ送られる。計測学ツール114は、サンプルごとに同じ位置で1つまたは複数のパラメータを測定する。製造プロセスの特定の動作に関連した測定値の履歴レコードを作成するため、計測学システム110はこのデータをSPCシステム116に転送することができる。計測学システム110および/またはSPCシステム116は履歴サンプルデータ124を使用して、製造プロセスの同じ動作の後のプロセスである全てのサンプルの範囲にわたってパラメータ測定値のレコードを作成することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、製造実行システム102によって製造されたサンプルが、製造レシピのステップごとに計測学システム110によって測定される。いくつかの実施形態では、プロセス従属性108または製造レシピが、あらゆるサンプルが同じプロセス従属性108を用いて製造され、あらゆるサンプルが同じ動作後に同じ条件下で測定されるような態様の測定ステップを含むことができる。
【0020】
図1に示されているように、統計的プロセス制御(SPC)システム116は、統計的プロセスツール118と、SPCデータベース120などのSPCデータストアとを含むことができる。SPCシステム116は、計測学システム110および/または機器エンジニアリングシステム130から計測学データを受け取る。SPCシステムは、製造実行システム102、計測学システム110、データストア122および/または機器エンジニアリングシステム130から、コンテキストデータ(例えばチャネルID、機器ID、製品、プロセス名プロセスステップ番号ロットIDなど)を受け取ることができる。SPCシステム116は、計測学データを適切なチャート(例えば厚さ、エッチング速度、抵抗率、粒子数など)に適用し、計測学データを解析して違反(例えば予め定められたしきい値よりも大きなまたは小さな製品特性)を検出し、検出された違反を有する製品に関する情報(例えばロットID、ウエハID、レシピ名)を生成し、この情報を機器エンジニアリングシステム130に提供する。さらに、SPCシステム116は、クライアント装置128などのSPCクライアントにSPCチャートを提示する。例えば、それらのSPCチャートを、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、移動電話などのクライアント装置128をホストとするクライアントアプリケーションおよび/またはウェブベースのブラウザアプリケーションにおいて提示することができる。
【0021】
SPCデータベース120は履歴計測学データを含む。例えば、履歴計測学データは、過去のSPCチャート(例えば厚さ、エッチング速度、抵抗率、粒子数など)および測定値違反データを含むことができる。SPCデータベース120は、履歴サンプルデータ124の基準パラメータ変化率121を計算することができる。例えば、製造実行システム102によって製造された後に計測学システム110によって測定されたサンプルの1つまたは複数の履歴変化率について、分散分析(analysis of variance)(ANOVA)を計算することができる。いくつかの実施形態では、SPCシステム116が、パラメータ値の基準変化率121および履歴サンプルデータを記憶し、他の実施形態では、SPCシステム116が、パラメータ値の変化率および履歴サンプルデータをデータストア122に記憶する。
【0022】
データストア122は、メモリ(例えばランダムアクセスメモリ)、ドライブ(例えばハードドライブ、フラッシュドライブ)、データベースシステム、またはデータを記憶することができる別のタイプの構成要素もしくは装置とすることができる。データストア122は、履歴サンプルデータ124および故障モード影響解析(FMEA)データ126の1つまたは複数を記憶することができる。履歴サンプルデータ124は、さまざまな製造プロセス(例えば
図2の製造プロセス200)中に製造されたサンプルから測定されたさまざまなパラメータのパラメータ値を含むことができる。履歴サンプルデータ124は、以前に製造プロセス中に製造された1つまたは複数の以前のサンプル上のそれぞれの位置におけるそれぞれのパラメータのパラメータ値の基準変化率を含むことができる。FMEAデータ126は、故障モード影響解析ツール138に関連したデータを記憶することができ、故障モード影響解析をより一般的に処理することができる(例えば
図5のプロセス故障モード影響解析500を参照されたい)。
【0023】
機器エンジニアリングシステム130は測定値違反ツール132を含むことができる。測定値違反ツールは、プロセス従属性ツール134、変化率ツール135、パターンマッピングツール137および故障モード影響解析(FMEA)ツール138を含む。機器エンジニアリングシステム130は、計測学システム110および/または製造実行システム102から計測学データを受け取り、その計測学データをSPCシステム116に送る。機器エンジニアリングシステム130は、その計測学データに関連した製造プロセスの機械、ツールおよび/またはプロセス動作に関連したSPCデータを受け取る。
【0024】
プロセス従属性ツール134は、計測学ツール114によって計測された計測学データに関連した、製造実行システム102および/またはデータストア122からのプロセス従属性108データをリクエストする。プロセス従属性ツール134は、以前の機械動作104およびプロセス実施態様106を現在のサンプルの測定値と突き合わせる。
【0025】
変化率ツール135は、計測学システム110によって測定されている現在のサンプルの現在の変化率を計算する。現在の変化率は、現在のパラメータ値の変化率の決定を含むことができる。例えば、計測学システム110がパラメータを測定し、サンプル全体のさまざまな位置において一組のパラメータ値を取得する。これらのパラメータ値を履歴パラメータ値と比較して、現在のパラメータ値がどれくらい変化したのかを決定する。いくつかの実施形態では、現在のパラメータ値を現在のサンプルの直前に製造されたサンプルと比較することによってパラメータ値の変化率が計算される。現在のパラメータ値と現在のサンプルの直前に製造されたサンプルから計測されたパラメータ値との差は、パラメータ値の変化率を与えることができる。他の実施形態では、多数の履歴測定値が、パラメータ値の変化率のさまざまな計算技法とともに使用される。例えば、変化率は、移動平均、平均統計量、長期統計量、短期統計量、微分係数、積分および/または知られている変化率計算方法のうちの1つを使用することによって計算することができる。
【0026】
変化率ツール135は、SPCシステム116から受け取ったまたは機器エンジニアリングシステム130によって局所的に計算されたパラメータ値の基準変化率(例えばパラメータ値の履歴変化率)を、現在のサンプルのパラメータ値の現在の変化率と比較する。いくつかの実施形態では、パラメータ値の基準変化率が、製造プロセスにおける1つまたは複数の以前のサンプルに対する動作の履歴計測学データからのパラメータ値の1つまたは複数の履歴変化率を使用して決定される。
【0027】
いくつかの実施形態では、パラメータ値の現在の変化率とパラメータ値の基準変化率との比較に基づいて、変化率ツール135が、パラメータ値の関連する基準変化率よりも大きなパラメータ値の関連する現在の変化率を各々が有する1つまたは複数の違反位置を識別する。
【0028】
分散分析(ANOVA)ツール136は、変化率ツール135とともに機能して1つまたは複数の違反位置を識別する。ANOVAツール136は、パラメータ値の履歴変化率の1つまたは複数を用いてANOVAを実行して、パラメータ値の基準変化率を決定する。さらなる実施形態では、このANOVAの結果を使用して、製造プロセスにおける現在のサンプルに対する動作に関する1つまたは複数の位置の各々におけるパラメータのパラメータ値の許容可能な変化率または非違反変化率のしきい値範囲を決定することができる。いくつかの実施形態では、パラメータ値の基準変化率を、ANOVAツール136によってパラメータ値の1つまたは複数の履歴変化率から統計的に計算された非違反値の範囲とすることができる。
【0029】
パターンマッピングツール137は、変化率ツール135および/またはANOVAツール136の1つから1つまたは複数の違反位置を受け取り、現在のサンプル上のその1つまたは複数の違反位置に関連付けられたサンプルパターンを生成する。いくつかの実施形態では、パターンマッピングツール137が、傾向または以前のサンプル上に記録された共通パターンに基づいて、異なる違反位置に対してスケーリング(例えばデータ点の正規化)を適用する。
【0030】
故障モード影響解析(FMEA)ツール138は、パラメータ値の現在の変化率とパラメータ値の基準変化率との比較に基づいて、製造プロセスの異常の実例を識別する。いくつかの実施形態では、FMEAツール138が、パターンマッピングツール137からサンプルパターンを受け取り、そのサンプルパターンに基づいて異常の実例を識別する。
【0031】
FMEAツール138は、データストア122からFMEAデータ126を検索することができる。FMEAデータ126は、各々に関連した知られている兆候を有する所与の機器に関する知られている問題および根本原因のリストを含むことができる。FMEAツール138によって受け取られたパターンサンプルデータは、知られている問題のリストに適用され、違反位置の共通の原因を識別するレポートが生成される。例えば、FMEAツール138はサンプルパターンを受け取り、製造プロセスの欠陥のあるツール、機械または動作を識別することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、FMEAツール138をプロセス従属性ツール134とともに使用して、現在のサンプル上で実行されている現在の機械動作から、上流で動作したツール、機械またはプロセス(例えば同じ製造プロセスの現在の製造ステップの前に実行された動作ステップ)を識別することができる。例えば、現在のサンプルが最近、第1の機械による第1の動作を受けたとする。いくつかの実施形態では、プロセス従属性ツール134とFMEAツール138の組合せが、第2の機械またはツールによる第2の動作などサンプルに対する過去の動作を探索することができる。FMEAツール138はサンプルパターンを使用して、第2の機械または第2のツールが異常の源であることを識別することができる。
【0033】
異常の実例が識別された後、FMEAツール138は続けて、異常の実例に関連した機械の動作もしくはプロセスの実施態様の少なくとも一方を変更すること、および/または異常の実例に関連した機械もしくはプロセスの視覚的表示器を提示するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を提供することのうちの一方を実行することができる。このGUIは、ネットワーク140を通して送られ、クライアント装置128上に提示することができる。いくつかの実施形態では、機械の動作またはプロセスの実施態様を変更することが、プロセスレシピまたはプロセス従属性108に関連した機械動作104および/またはプロセス実施態様106を変更するよう命じる命令を製造実行システム102に送ることを含むことができる。
【0034】
製造システム100は、異なるいくつかのシステムおよび/または装置として図示および説明されているが、さまざまな装置を一緒に組み合わせて、
図1上では別々のものとして示されている実体の機能を実行することができることに留意すべきである。例えば、製造実行システム102を計測学システム110と組み合わせて、製造および計測学動作を通して製造プロセスを実行することができる。別の例では、機器エンジニアリングシステム130をSPCシステム116と組み合わせて、SPC解析および変化率解析からの両方のデータを、統計的プロセスツール118および変化率ツール135を使用して解析することができる。別の例では、製造実行システム102、計測学システム110、SPCシステム116、機器エンジニアリングシステム130および/またはクライアント装置128の1つまたは複数上にデータストア122を格納することができる。さらに、
図1では、ネットワーク140を使用して互いに通信するとして示されているが、製造実行システム102、計測学システム110、SPCシステム116、データストア122、クライアント装置128および/または機器エンジニアリングシステム130のいずれかを直接結合することができ、それらは互いにネットワーク140を必要とすることなく通信することができる。
【0035】
図2は、本開示の態様による、製造システム(例えば
図1の製造システム100)の製造プロセス200を示すブロック図である。製造プロセス200は、1つまたは複数の製造動作202A~Bおよび1つまたは複数の計測学動作204A~Bを含むことができる。製造動作202A~Bは、製造実行システム(例えば
図1の製造実行システム102)によって実行することができる。計測学動作204A~Bは、計測学システム(例えば
図1の計測学システム110)によって実行することができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、製造プロセス200が、完了したときに、所定の特性および/または仕様を有する製造されたサンプルを形成する一連の製造動作202A~Bおよび計測学動作204A~Bを含むことができる。例えば、多層基板を製造する製造プロセスは、各々が基板上に層を堆積させるさまざまな層堆積動作を含むことができる。製造動作202A~Bは、正確な層順を有する多層基板を形成する所定の順序で完了するように設計されたものとすることができる。
【0037】
製造動作202A~Bは、サンプルを製造するさまざまな方法を含むことができる。例えば、製造動作は、エッチング(例えばドライエッチング、プラズマエッチング、ウェットエッチング、化学エッチングなど)、堆積(例えば原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)もしくはプラズマ強化CVD)、パターニング(例えばフォトリソグラフィ、マスキングなど)、マイクロフォーミングおよび/または他の同種のものを含むことができる。
【0038】
計測学動作204A~Bは、製造プロセス200のさまざまな段階において、製造されたサンプル上の1つまたは複数の位置にわたって一組のパラメータ206A~D、208A~Dを測定するためのさまざまな方法および技法を含むことができる。この一組のパラメータ206A~D、208A~Dは、製造動作202A~Bに関連したさまざまな測定値を含むことができる。例えば、この一組のパラメータ206A~D、208A~Dは、サンプルのチャネルの厚さ、層または領域の厚さ、エッチング速度、抵抗率、粒子数などを測定することを含むことができる。パラメータの測定値は、実行された製造動作の品質レベルを示すことができる。いくつかの実施形態では、製造プロセス200が、それぞれのサンプル全体にわたる12~20個の位置にわたって25~50個のパラメータを測定する。
【0039】
いくつかの実施形態では、計測学動作204A~B中に測定されたパラメータが以前の製造動作の品質を示す。あるいは、計測学動作204A~B中に測定されたパラメータが、以前の製造動作のうちの1つまたは複数の製造動作の品質を示すものであってもよい。例えば、製造動作202Aと202Bがともに層堆積動作であってもよく、パラメータ(例えば208A)が基板の厚さを示すものであってもよい。計測学動作204B中の基板の厚さは製造動作202Aおよび202Bの影響を受けることがある。このパラメータと動作の間の関係を、製造プロセスレシピまたはプロセス従属性(例えば
図1のプロセス従属性108)の一部として記憶することができる。プロセス従属性は、製造動作202A~Bおよび下流プロセス(例えば同じ製造プロセスの将来において現在の機械動作またはプロセス実施態様として実行される機械動作およびプロセス実施態様)の影響、または指定された製造動作後に実行されるプロセスの影響を追跡および管理することができる。さらに、パラメータ値が処理または解析されたとき、プロセス従属性データは、以前の動作と、製造プロセス200の指定された段階における製造サンプルの現在の製造品質との間のリンクを提供することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、製造プロセスの全体を通じて製造動作202A~Bと計測学動作204A~Bが交互に実行される。いくつかの実施形態では、計測学動作204A~B間に多数の製造動作202A~Bを実行することができることに留意すべきである。同様に、製造動作202A~B間にさまざまな計測学動作を実行することもできる。製造動作202A~Bおよび計測学動作204A~Bの手順および流れは、特定の製造プロセス200に依存することができる。
【0041】
図3は、本開示の態様による、製造プロセスにおける動作に対するさまざまなサンプルのパラメータ変化率の分布300を示している。
図2に関して述べたとおり、製造プロセス(例えば
図2の製造プロセス200)は、さまざまな製造動作(例えば
図2の製造動作202A~B)、およびそれらのさまざまな製造動作に関連したさまざまな計測学動作(例えば
図2の計測学動作204A~B)を含むことができる。製造プロセスを使用して多数のサンプルを生成することができる。その結果として、一組のサンプル上の1つまたは複数の位置の各々における所与のパラメータ(例えば
図2のパラメータ206A~D、208A~D)の値が測定される。
【0042】
図3に示されているように、一組のサンプル(例えばサンプル1、サンプル2、サンプル3およびサンプル4)上の指定された位置で、製造プロセスにおける動作に関するパラメータが測定される。生の計測学データを処理して、パラメータ値の現在の変化率およびパラメータ値の基準または履歴変化率を決定するために、変化率ツール(例えば
図1の変化率ツール135)を使用することができる。
【0043】
現在のサンプルの現在の測定値および現在のサンプルの直前に製造されたサンプルの以前の測定値を使用して、パラメータ値の現在の変化率を計算することができる。いくつかの実施形態では、サンプル1を、サンプル2の前に製造されたものとすることができ、サンプル2を、サンプル3の前に製造されたものとすることができ、サンプル3を、サンプル4の前に製造されたものとすることができ、サンプル4を、現在のサンプルとすることができる。現在のサンプル変化率は、現在のサンプルと直前のサンプル(例えばそれぞれサンプル4とサンプル3)の差を計算することを含むことができる。パラメータ値のこの現在の変化率は、サンプル上の後続のそれぞれの位置について計算することができる。さらに、パラメータ値の現在の変化率は、全てのパラメータについて計算することができる。
【0044】
パラメータ値の基準変化率は、履歴計測学データ(例えば履歴サンプルデータ124)を使用して計算することができる。例えば、以前のサンプル(例えばサンプル1、サンプル2および/またはサンプル3)を使用して、サンプル上の特定の位置におけるパラメータのパラメータ値の履歴変化率を計算することができる。例えば、パラメータ値の変化率は、移動平均、平均統計量、長期統計量、短期統計量、微分係数、積分および/または知られている変化率計算方法のうちの1つを使用して計算することができる。
【0045】
パラメータ値の現在の変化率はパラメータ値の基準変化率と比較される。一実施形態では、この比較が、パラメータ値の基準変化率に統計的分布を適用して、パラメータ値の現在の変化率とパラメータ値の基準変化率との間の分散を識別することによって実行される。例えば、パラメータ値の履歴変化率から平均および標準偏差を計算し、それらをパラメータ値の現在の変化率と比較して、パラメータ値の現在の変化率がパラメータ値の1つまたは複数の履歴変化率の平均から標準偏差いくつ分離れているのかを識別する。
【0046】
いくつかの実施形態では、パラメータ値の異常な現在の変化率を有する位置を識別するために、所定の制御限界またはしきい値限界(例えば標準偏差1つ分、標準偏差2つ分、標準偏差3つ分など)が使用される。本明細書で識別される制御限界は、従来のSPC制御限界とは異なることがあることに留意すべきである。SPC制御は測定値のしきい値範囲を識別し、一方、本明細書で識別される制御限界は、サンプルの静的測定値の評価の代わりにパラメータ値の変化率のしきい値範囲を識別する。この違いによって、従来のSPC解析ではフラグが立てられない可能性がある違反位置が識別されることがある。
【0047】
いくつかの実施形態では、規定されたサンプリング窓を使用して、パラメータ値の基準変化率を計算することができる。例えば、現在のサンプルの前に生成されたn個のサンプルによってパラメータ値の基準変化率を生成することができる。例えば、パラメータ値の基準変化率を、1つの時間(例えば最後の24時間、1週、1月など)内に製造されたサンプル、または1つの量のサンプル(例えば製造された最後の10、100、1000個などのサンプル)に限定することができる。パラメータ値の基準変化率は、サンプル上のそれぞれの位置またはサイトで計算されることにも留意すべきである。パラメータ値の現在の変化率は、サンプルの表面を横切る位置ごとの比較で比較される。
【0048】
いくつかの実施形態では、サンプル上の違反位置を、スコアリングシステムによって、またはそれぞれの位置を違反測定値の2値指示ではなく違反の階層または程度に配置することによって、示すことができる。例えば、位置を、「合格」、「レベル1違反」、「レベル2違反」、「レベル3違反」などの階層に分類することができる。これらの違反階層は、それぞれの位置におけるパラメータ値の基準変化率からのパラメータ値の現在の変化率の分散に対応することができる。例えば、標準偏差1つ分未満離れた位置を「合格」と分類することができ、標準偏差1つ分と標準偏差2つ分の間の位置を「レベル1違反」と分類することができ、標準偏差2つ分と標準偏差3つ分の間の位置を「レベル2違反」と分類することができ、以下同様に分類することができる。
図4に関して説明するように、それぞれの違反に、サンプルパターンをさらに確立する目的に使用することができる重みまたはスコアを割り当てることができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、パラメータ値の変化率がサンプル遷移ごとに計算される。例えば、
図3を参照すると、パラメータ値データセットの履歴変化率を形成するために、サンプル1からサンプル2まで、サンプル2からサンプル3までおよびサンプル3からサンプル4までの変化率を計算することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、データをウエハ間で比較するために特定のプロセスステップおよびパラメータのサンプル内およびサンプルを横切る変動を識別するために、それぞれのプロセスステップ、パラメータおよび位置に対して第1の分散分析(ANOVA)が計算される。いくつかの実施形態では、ウエハ内の位置を比較するために、特定のプロセスステップおよびパラメータの位置内でおよび特定のプロセスステップおよびパラメータの位置を横切って第2のANOVAが計算される。いくつかの実施形態では、パラメータ値の履歴変化率データセットの全体内でおよびパラメータ値の履歴変化率データセットの全体を横切って第3のANOVAが計算される(例えば第1のANOVAと第2のANOVAの組合せ)。次いで、第1のANOVA、第2のANOVAおよび/または第3のANOVAを使用して、現在のサンプルおよび以前の履歴サンプルに対する、製造プロセスの所与のパラメータおよびプロセスステップに関するサンプルパターンを生成することができる。
【0051】
図4は、本開示の態様による、サンプルパターン404に対する例示的なグラフィカルユーザインタフェース(GUI)400を示している。GUI400は、サンプル上の1つまたは複数の位置402、1つまたは複数のサンプルパターン404、それぞれのパターンに関連したスコア406、結論408、サイト結論410および全体結論412を識別する。
【0052】
1つまたは複数の位置402は、違反していると識別された位置の第1のサブセット、および合格または合致と識別された位置の第2のサブセットを含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の位置402が、それぞれの位置が違反している程度(例えば合格、階層1違反、階層2違反など)を定量化したスコアを含むことができる。
【0053】
サンプルパターン404は、製造プロセス中にサンプルが受ける可能性がある違反のさまざまな組合せを含むことができる。これらのサンプルパターン404は、サンプル上の共通の違反グルーピングに基づくことができる。例えば、機能不良のツールは、サンプル上の互いに近接した複数の位置を不正確に処理することがある。いくつかの実施形態では、サンプルパターン404が、
図5に関連して説明する故障モード影響解析(FMEA)のプロセス機能502、パラメータ504、潜在的故障モード506および潜在的故障影響508の違反パターンに関連付けられている。例えば、サンプルパターン404の識別は、ウエハの中心または直角位相のエッジサイトまたはディッシング問題を識別することを含むことができる。別の例では、サンプルパターン404が、特定の位置、ゾーン、またはプロセスツール、機械もしくは動作に固有の振る舞いを識別することができる。
【0054】
(例えば
図1のANOVAツール136に関連して)前に説明したとおり、いくつかの実施形態では、データをウエハ間で比較するために特定のプロセスステップおよびパラメータのサンプル内およびサンプルを横切る変動を識別するために、それぞれのプロセスステップ、パラメータおよび位置に対して第1の分散分析(ANOVA)が計算される。いくつかの実施形態では、ウエハ内の位置を比較するために、特定のプロセスステップおよびパラメータの位置内でおよび特定のプロセスステップおよびパラメータの位置を横切って第2のANOVAが計算される。いくつかの実施形態では、パラメータ値の履歴変化率データセットの全体内でおよびパラメータ値の履歴変化率データセットの全体を横切って第3のANOVAが計算される(例えば第1のANOVAと第2のANOVAの組合せ)。次いで、第1のANOVA、第2のANOVAおよび第3のANOVAを使用して、現在のサンプルおよび以前の履歴サンプルに対する、製造プロセスの所与のパラメータおよびプロセスステップに関するサンプルパターンを生成することができる。
【0055】
結論408は、現在のプロセスにおけるウエハ間の変動に重点が置かれている。結論408は、第1のANOVAに関連したデータを処理することを含むことができる。例えば、第1のANOVAは、指定されたパラメータを有する特定のプロセスステップのサンプル内およびサンプルを横切る変動を識別することができる。結論408は、現在のウエハを以前のウエハと比較し、単一のパラメータを解析して、異なるウエハにわたって故障している共通のパラメータを有するパターンが存在するかどうかを判定する処理ロジックに基づいて提供することができる。
【0056】
サイト結論410は、現在のプロセスに関するサンプルセット内に存在する変動に重点が置かれている。サイト結論410は、第2のANOVAに関連したデータを処理することによって提供することができる。例えば、第2のANOVAは特定のサイトを識別することができ、さまざまなパラメータおよびサンプルが特定のサイトでどのように実行されるのかを決定することができる。サイト結論410は、現在のサンプルおよび履歴サンプルからの特定のサイトに関連したデータを比較して、それぞれのサンプル上の特定の位置においてさまざまなパラメータおよびさまざまなサンプルの値が適切でないパターンが存在するかどうかを判定する処理ロジックに基づいて提供することができる。
【0057】
全体結論は、現在のプロセスの結果に影響を及ぼす可能性がある上流プロセスに由来する継承された変動を識別することに重点が置かれている。全体結論412は、第3のANOVAに関連した処理データによって提供することができる。例えば、第3のANOVAは、さまざまなサンプルにわたる多数の位置に対するプロセス従属性を含む、データセット全体にわたるパターンを識別することができる。例えば、全体結論412は、履歴計測学データ(例えばパラメータの基準変化率)を、さまざまな位置における計測学データ(例えばパラメータの現在の変化率)およびさまざまなパラメータと比較して、上流測定値からのまたは履歴計測学データの履歴または継承違反測定値と第3のANOVAに関連したデータからの現在の計測学データの現在の違反測定値との間にパターンが存在するかどうかを判定する処理ロジックに基づくことができる。
【0058】
図5は、本開示の態様による、プロセス故障モード影響解析(FMEA)500を示すブロック図である。プロセスFMEAは、プロセス機能502、パラメータ504、潜在的故障モード506および潜在的故障影響508を含む。プロセスFMEAは、プロセスFMEAツール(例えば
図1の故障モード影響解析ツール138)を使用して実行することができる。プロセスFMEAは、製造システム、計測学システムおよび/またはSPCシステムの1つからプロセス機能502を受け取る。プロセス機能502をプロセス従属性に編成することができる。例えば、プロセス機能502を従属性テーブルに格納することができ、従属性は、特定のプロセス機能502が影響を及ぼすパラメータおよびサンプル上の位置を識別する。例えば、プロセス機能502は、機械動作(例えばリソグラフィ、エッチング、堆積など)を定義することができる。
【0059】
プロセスFMEAは、パラメータ504に関連したデータを受け取る。いくつかの実施形態では、
図4に関して説明したように、パラメータデータをサンプルパターンとして受け取ることができる。あるいは、パラメータデータを、違反位置および所定のしきい値範囲の違反しているパラメータのリストとして受け取ることもできる。パラメータデータは、違反測定値を有する位置を識別することができる。違反測定値は、(
図2に関して説明した)特定の位置における所与のパラメータのパラメータ値の許容可能な基準変化率を超える測定のパラメータ値の変化率など、所定のしきい値を満たしていないデータを含むことができる。
【0060】
プロセスFMEA500は、製造システム(例えば
図1の製造システム100)の潜在的故障モード506および潜在的故障影響508を含む。例えば、FMEAテーブルは、所与の機械、ツールおよび/または機器に関する知られている問題および根本原因ならびにそれぞれの問題および根本原因に関連した兆候のリストを含む。プロセスFMEA500は、プロセス機能502および/またはパラメータ504を潜在的故障モード506および/または潜在的故障影響508にリンクするロジックを含むことができる。プロセスFMEA500は、処理された計測学データを受け取り、製造システムの異常の実例を識別することができる。例えば、計測学データは、本明細書に記載された他の実施形態を使用して処理することができ、プロセスFMEAツールによって受け取ることができる。プロセスFMEAツールは、データを解析し、1つまたは複数の欠陥のある機械、ツールおよび/または機器を識別し、さらに、製造されたサンプルに対する欠陥のあるツールの影響を識別することができる。例えば、プロセスFMEAは、壊れている、故障している、または他の態様で修理もしくは交換を必要としている堆積ツールを識別することができ、さらに、サンプル上の異なる位置にわたって、その機能の実行に対する堆積ツールの現在の状態の影響(平らでない層、非常に薄いまたは非常に厚い層など)を記述することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、機器エンジニアリングシステム(例えば
図1の機器エンジニアリングシステム130)が、プロセスFMEA500によって識別された製造プロセスの異常の実例に関連した機械の動作またはプロセスの実施態様の一方を変更するための命令を、プロセスFMEA500が生成することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、機器エンジニアリングシステム(例えば
図1の機器エンジニアリングシステム130)が、異常の実例に関連した機械またはプロセスの視覚的表示器を提示するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を提供するための命令を、プロセスFMEA500が生成することができる。例えば、この視覚的表示器を、製造プロセスを実行する製造実行システムを製造プロセスのエンジニアまたはオペレータが手動で変更するためにクライアント装置(例えば
図1のクライアント装置128)に送ることができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の訓練された機械学習モデルを生成する機械学習(ML)アルゴリズム、ディープMLアルゴリズム、および/またはパラメータデータを解析するための他の信号処理アルゴリズムを使用して、製造システムの潜在的故障モード506および潜在的故障影響508を決定することができる。これらのモデル、解析および/またはアルゴリズムを使用して、潜在的故障モード506および潜在的故障影響508を予測および識別するためのプロセス機能502とパラメータ504との組合せを計算、予測および評価することができる。いくつかの実施形態では、計測学システム(例えば
図1の計測学システム110)または履歴サンプルデータ(例えば
図1の履歴サンプルデータ124)によって、MLモデルを訓練するための訓練データを取得することができる。
【0064】
使用することができる機械学習モデルの1つのタイプは、ディープニューラルネットワークなどの人工ニューラルネットワークである。人工ニューラルネットワークは一般に、特徴を所望の出力空間にマップする分類器または回帰層を有する特徴表現構成要素を含む。例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、多数の畳み込みフィルタ層のホストとなる。プーリングが実行され、畳み込み層によって抽出された最上層特徴を判断(例えば分類出力)にマップする、一般的にその上に多層パーセプトロンが付加されるより低い層で非線形性に対処することができる。ディープラーニングは、非線形処理ユニットの多数の層のカスケードを特徴抽出および変換に使用する機械学習アルゴリズムの一種である。連続するそれぞれの層は、直前の層からの出力を入力として使用する。ディープニューラルネットワークは、教師あり(例えば分類)および/または教師なし(例えばパターン解析)で学習することができる。ディープニューラルネットワークは層の階層を含み、異なる層は、異なる抽象化レベルに対応する異なるレベルの表現を学習する。ディープラーニングでは、その入力データをわずかにより抽象的で複合的な表現に変形するように、それぞれのレベルが学習する。例えば、プロセス異常用途では、生の入力を現在の計測学データおよび履歴計測学データとすることができ、第1の表現層が、位置およびパラメータ値を抽出することができ、第2の層が、基本的違反位置を構成およびコード化することができ、第3の層が、サンプルパターンをコード化することができ、第4の層が、データを認識し、製造プロセスの潜在的故障モードおよび潜在的故障影響に対して突き合わせることができる。特に、ディープラーニングプロセスは、どの特徴がどのレベルに最適に配置するのかを単独で学習することができる。「ディープラーニング」の「ディープ」は、そこを通ってデータが変換される層の数に関する。より正確には、ディープラーニングシステムは、かなりの貢献度分配経路(Credit Assignment Path)(CAP)深さを有する。CAPは、入力から出力までの変換の鎖である。CAPは、入力と出力の間の潜在的に原因となる接続を記述する。フィードフォワードニューラルネットワークに関しては、CAPの深さをネットワークの深さとすることができ、隠れ層の数に1を加えたものとすることができる。1つの層を通って信号が2回以上伝搬することがあるリカレントニューラルネットワークに関しては、CAPの深さが潜在的に無限である。
【0065】
一実施形態では、多数のデータ点を含む訓練データセットを使用してニューラルネットワークが訓練され、それぞれのデータ点は、パラメータ504、サンプル上の位置およびプロセス機能502を含む。それぞれの訓練データ点はさらに、潜在的故障モード506および/もしくは潜在的故障影響508を含むことができ、または潜在的故障モード506および/もしくは潜在的故障影響508に関連付けられていてもよい。訓練データセットを使用して、ニューラルネットワークを、プロセス機能、サンプル上の位置およびパラメータの入力を受け取り、製造システムの異常の実例の識別を出力するように訓練することができる。その代わりにまたはそれに加えて、ニューラルネットワークは、
図4に関して説明したように、サンプルパターンを訓練データセットの入力または出力として使用することを含むことができる。
【0066】
図6は、本開示の態様による、製造プロセスの異常の実例を識別する方法600の流れ図である。説明を単純にするため、方法600は、一連の操作として図示および説明されている。しかしながら、この開示による操作は、さまざまな順序で実施することができ、かつ/または本明細書に提示されていないおよび記載されていない他の操作と同時に実施することができる。さらに、開示された主題による方法600を実施するのに、示された全ての操作が実行されるわけではない。さらに、その代わりに、方法600を、状態図によって互いに関係する一連の状態として表すこと、または一連の事象として表すことができることを当業者は理解および認識するであろう。
【0067】
図6を参照すると、ブロック601で、処理ロジックは、製造プロセスにおける現在のサンプルに対する動作の現在の計測学データを受け取る。この計測学データは、現在のサンプル上の1つまたは複数の位置の各々におけるパラメータ値を含むものとすることができる。この現在の計測学データは、計測学システム(例えば
図1の計測学システム110)、製造実行システム(
図1の製造システム102)またはSPCシステム(例えば
図1のSPCシステム116)から受け取ることができる。この計測学データは、製造プロセス(例えば
図2の製造プロセス200)の機械動作(例えば
図1の機械動作104)および/またはプロセス実施態様(例えば
図1のプロセス実施態様106)に関連したものとすることができる。
【0068】
ブロック602で、処理ロジックは、1つまたは複数の位置の各々に対するパラメータのパラメータ値の基準変化率を取得する。いくつかの実施形態では、パラメータ値の基準変化率が、製造プロセスにおける1つまたは複数の以前のサンプルに対する動作の履歴計測学データからのパラメータ値の1つまたは複数の履歴変化率を使用して決定される。その代わりにまたはそれに加えて、基準変化率は、本明細書に開示された開示された実施形態のいずれかによって(例えば
図1および3に関して説明したようにパラメータ値の基準変化率を計算することによって)取得してもよい。いくつかの実施形態では、基準変化率が、SPCシステム(例えば
図1のSPCシステム116)または変化率ツール(例えば
図1の変化率ツール135)によって計算される。
【0069】
ブロック603で、処理ロジックは、1つまたは複数の位置の各々に対するパラメータ値の現在の変化率を決定する。このパラメータ値の現在の変化率は、現在のサンプルに関連するものとすることができる。現在のサンプルに関連したパラメータ値の現在の変化率の決定は、本明細書に開示された開示された統計およびデータ処理技法(例えば
図3に関連して開示された統計およびデータ処理技法)のいずれかまたは全部を含むことができる。
【0070】
ブロック604で、処理ロジックは、1つまたは複数の位置の各々に対するパラメータ値の現在の変化率を比較する。いくつかの実施形態では、処理ロジックがさらに、パラメータ値の関連する基準変化率よりも大きなパラメータ値の関連する現在の変化率を各々が有する1つまたは複数の違反位置を識別することを含むことができる。違反測定値の識別は、本明細書に開示された開示された統計およびデータ処理技法(例えば
図3に関連して開示された統計およびデータ処理技法)のいずれかまたは全部を含むことができる。
【0071】
ブロック605で、処理ロジックは、パラメータ値の現在の変化率とパラメータ値の基準変化率との比較に基づいて、製造プロセスの異常の実例を識別する。いくつかの実施形態では、このプロセスがさらに、製造プロセスの1つまたは複数のプロセス従属性を検索すること、および製造プロセスの異常の実例を、プロセス従属性の1つまたは複数に基づいて識別することを含むことができる。異常の実例には、欠陥のある機械、ツールもしくは機器、または不適切に実施されたプロセス動作を含めることができる。異常の実例の識別は、異常の源(例えば機械、ツール、機器、プロセスなど)、または異常の影響(例えば、損傷したサンプル、他の機械に対する潜在的損傷、仕様要件を満たしそうにないパラメータ)を識別することを含むことができる。
【0072】
ブロック606で、処理ロジックは、任意選択で、異常の実例に関連した機械の動作またはプロセスの実施態様の少なくとも一方を変更する。機械の動作またはプロセスの実施態様の変更には、機械を停止させること、プロセスを停止すること、または、エラーを知らせ、動作を再開する前に動作モードを停止もしくは調整するためのユーザ入力を待つことを含めることができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、処理ロジックが、異常の実例に関連した機械またはプロセスの視覚的表示器を提示するグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を提供することができる。例えば、測定値違反ツール(例えば
図1の測定値違反ツール132)が、異常の実例(例えば欠陥のある機械、ツール、プロセス実施態様)を識別すること、およびクライアント装置(例えば
図1のクライアント装置128)上に異常の実例の視覚的表示器を提示するための準備をすることができる。ユーザ(例えばエンジニアまたは製造システムオペレータ)はこの表示器を使用して、異常を修正するための修復措置を命じることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、処理ロジックがさらに、パラメータ値の関連する基準変化率よりも大きなパラメータ値の関連する現在の変化率を各々が有する1つまたは複数の違反位置を識別することができる。さらなる実施形態では、処理ロジックがさらに、1つまたは複数の違反位置に関連したサンプルパターンを決定すること、および異常の実例を、そのサンプルパターンに基づいて識別することを含むことができる。
【0075】
図7は、製造プロセスの異常の実例を識別することができる例示的なコンピューティング装置700のブロック図を示している。例示のためのさまざまな例では、コンピューティング装置700のさまざまな構成要素が、
図1に示された製造実行システム102、計測学システム110、SPCシステム116、データストア122、クライアント装置128、機器エンジニアリングシステム130およびネットワーク140のさまざまな構成要素を表すことができる。
【0076】
例示的なコンピューティング装置700は、LAN、イントラネット、エクストラネットおよび/またはインターネットで他のコンピュータ装置に接続されたものとすることができる。コンピューティング装置700は、クライアントサーバネットワーク環境内のサーバの容量内で動作することができる。コンピューティング装置700は、パーソナルコンピュータ(PC)、セットトップボックス(STB)、サーバ、ネットワークルータ、スイッチもしくはブリッジとすることができ、または、その装置が実行すべき動作を指定する一組の命令を(逐次的にもしくは他のやり方で)実行することができる任意の装置とすることができる。さらに、単一の例示的なコンピューティング装置だけが示されているが、用語「コンピュータ」はさらに、本明細書で論じた方法の1つまたは複数を実行するために一組の(または数組の)命令を別々にまたは一緒に実行するコンピュータの集合を含むと解釈される。
【0077】
例示的なコンピューティング装置700は、処理装置702(プロセッサまたはCPUとも呼ぶ)、主メモリ704(例えばリードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、例えばシンクロナスDRAM(SDRAM))など)、スタティックメモリ706(例えばフラッシュメモリ、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)など)、および2次メモリ(例えばデータストレージ装置718)を含むことができ、これらはバス730を介して互いに通信することができる。
【0078】
処理装置702は、マイクロプロセッサ、中央処理ユニットまたは他の同種のものなどの1つまたは複数の汎用処理装置を表す。より具体的には、処理装置702は、複雑命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、他の命令セットを実装したプロセッサ、または命令セットの組合せを実装したプロセッサとすることができる。処理装置702を、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号処理プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサまたは他の同種のものなどの1つまたは複数の特殊目的処理装置とすることもできる。本開示の1つまたは複数の態様によれば、処理装置702を、
図6に示された方法600を実施する命令を実行するように構成されたものとすることができる。
【0079】
例示的なコンピューティング装置700はさらにネットワークインタフェース装置708を含むことができ、ネットワークインタフェース装置708は、ネットワーク720に通信可能に結合されたものとすることができる。例示的なコンピューティング装置700はさらに、ビデオディスプレイ710(例えば液晶ディスプレイ(LCD)、タッチスクリーンまたは陰極線管(CRT))、文字数字入力装置712(例えばキーボード)、カーソル制御装置714(例えばマウス)および音響信号発生装置716(例えばスピーカ)を含むことができる。
【0080】
データストレージ装置718は、一組また数組の実行可能命令722がその上に記憶された機械可読ストレージ媒体(またはより詳細には非一過性機械可読ストレージ媒体)728を含むことができる。本開示の1つまたは複数の態様によれば、実行可能命令722は、
図6に示された方法600を実行することに関連した実行可能命令を含むことができる。
【0081】
実行可能命令722はさらに、例示的なコンピューティング装置700、主メモリ704および処理装置702による実行可能命令722の実行中、やはりコンピュータ可読ストレージ媒体を構成する主メモリ704内および/または処理装置702内に完全にまたは少なくとも部分的にあってもよい。実行可能命令722はさらに、ネットワークインタフェース装置708を介してネットワークを横切って送信または受信されてもよい。
【0082】
図7では、コンピュータ可読ストレージ媒体728が単一の媒体として示されているが、用語「コンピュータ可読ストレージ媒体」は、一組または数組のオペレーティング命令を記憶した単一の媒体または多数の媒体(例えば集中型もしくは分散型データベースならびに/または関連キャッシュおよびサーバ)を含むと解釈すべきである。用語「コンピュータ可読ストレージ媒体」はさらに、機械によって実行するための一組の命令であって、本明細書に記載された方法のうちの1つまたは複数を機械に実行させる一組の命令を記憶またはコード化することができる任意の媒体を含むと解釈される。したがって、用語「コンピュータ可読ストレージ媒体」は、限定はされないが、固体メモリならびに光学および磁気媒体を含むと解釈される。
【0083】
上記の詳細な説明のいくつかの部分は、コンピュータメモリ内のデータビットに対する操作のアルゴリズムおよび記号表現に関して提示される。これらのアルゴリズム的記述および表現は、自身の成果の内容を他の技術者に最も効果的に伝達するためにデータ処理分野の技術者が使用する手段である。ここでは、アルゴリズムが、一般に、所望の結果に至るステップの首尾一貫したシーケンスであると考えられる。それらのステップは、物理量の物理的操作を必要とするステップである。必ずというわけではないが、これらの量は普通、記憶すること、転送すること、結合すること、比較すること、およびその他のやり方で操作することができる電気または磁気信号の形態をとる。時に、主として一般的な使用上の理由から、これらの信号をビット、値、要素、記号、文字、項、数または他の同種のものと呼ぶ方が都合のよいことが分かっている。
【0084】
しかしながら、これらの用語および同種の用語は全て、適切な物理量に関連付けられること、およびそれらは単に、これらの量に適用される都合のよいラベルでしかないことに留意すべきである。そうではないと特に述べられていない限り、以下の議論から明らかなとおり、この説明の全体を通じて、「識別する」、「決定する」、「記憶する」、「調整する」、「引き起こす」、「返す」、「比較する」、「生成する」、「停止する」、「ロードする」、「コピーする」、「投入する」、「交換する」、「実行する」または他の同種の用語などの用語を利用した議論は、コンピュータシステムのレジスタおよびメモリ内の物理(電子)量として表されたデータを操作し、それらのデータを、コンピュータシステムメモリもしくはレジスタ内または他のそのような情報ストレージ、伝送もしくは表示装置内の物理量として同様に表された他のデータに変換するコンピュータシステムまたは同種の電子コンピューティング装置の動作およびプロセスに関することが理解される。
【0085】
本開示の例はさらに、本明細書に記載された方法を実行するための装置に関する。この装置は、求められた目的のために特に構築されたものとすることができ、またはコンピュータシステムに記憶されたコンピュータプログラムによって選択的にプログラムされた汎用コンピュータシステムとすることもできる。このようなコンピュータプログラムは、限定はされないが、コンピュータシステムバスにそれぞれ結合された、光ディスク、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)および光磁気ディスクを含む任意のタイプのディスク、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブルリードオンリーメモリ(EEPROM)、磁気ディスクストレージ媒体、光学ストレージ媒体、フラッシュメモリデバイス、機械がアクセス可能な他のタイプのストレージ媒体、または電子命令を記憶するのに適した任意のタイプの媒体などのコンピュータ可読ストレージ媒体に記憶することができる。
【0086】
本明細書に提示された方法およびディスプレイは本来、特定のコンピュータまたは他の装置に関係していない。本明細書の教示によるプログラムとともにさまざまな汎用システムを使用することができ、または必要な方法ステップを実行するためにはより専門化された装置を構築した方が都合がよいと分かることもある。これらのさまざまなシステムに対して求められる構造は下記の説明に記載されている。さらに、本開示の範囲は特定のプログラミング言語に限定されない。本開示の教示を実施するためにさまざまなプログラミング言語を使用することができることが理解される。
【0087】
上記の説明は例示のためであることが意図されており、限定するものではないことを理解すべきである。上記の説明を読み理解した当業者には実施形態の他の多くの例が明らかであろう。本開示は特定の例を記述しているが、本開示のシステムおよび方法は、本明細書に記載された例に限定されず、添付の特許請求の範囲に含まれる変更を加えて実施することができることが理解される。したがって、本明細書および図面は、例示のためのものとみなすべきであり、限定するものとみなすべきではない。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそのような特許請求の範囲が権利を与えられる等価物の完全な範囲に関して決定されるべきである。
【国際調査報告】