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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】表面弾性波センサデバイス
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/50 20230101AFI20240214BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20240214BHJP
   H10N 30/30 20230101ALI20240214BHJP
   H03H 9/145 20060101ALI20240214BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20240214BHJP
【FI】
H10N30/50
H10N30/20
H10N30/30
H03H9/145 D
H10N30/853
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547061
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2022055371
(87)【国際公開番号】W WO2022184815
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】2102072
(32)【優先日】2021-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】バランドラス, シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ラローシュ, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】クルジョン, エミリー
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA30
5J097DD17
(57)【要約】
本発明は、第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)と、第1の反射構造(M1)と、第2の反射構造(M2)と、第1の上面を含み、第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)と第1の反射構造(M1)との間に形成された第1の共振キャビティと、第2の上面を含み、第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)と第2の反射構造(M2)との間に形成された第2の共振キャビティと、を備える弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)に関し、第1及び第2の上面の少なくとも一方がメタライゼーション層又はパッシベーション層によって少なくとも部分的に覆われている。本発明は、弾性波センサアセンブリにも関する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)と、
第1の反射構造(M1)と、
第2の反射構造(M2)と、
第1の上面を含み、前記第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)と前記第1の反射構造(M1)との間に形成された第1の共振キャビティと、
第2の上面を含み、前記第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)と前記第2の反射構造(M2)との間に形成された第2の共振キャビティと、
を備え、
前記第1及び第2の上面の少なくとも一方がメタライゼーション層又はパッシベーション層によって少なくとも部分的に覆われている、
弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項2】
第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)と、
第1の反射構造(M1)と、
第2の反射構造(M2)と、
第1の上面を含み、前記第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)と前記第1の反射構造(M1)との間に形成された第1の共振キャビティと、
第2の上面を含み、前記第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)と前記第2の反射構造(M2)との間に形成された第2の共振キャビティと、
を備え、
前記第1及び第2の共振キャビティが、それらの一方が他方と比較して何らかの物理的及び/又は化学的な改質を呈するという点で互いに異なる、
弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項3】
前記第1の上面又は前記第2の上面のいずれかが、メタライゼーション層又はパッシベーション層によって少なくとも部分的に覆われている、請求項1又は2に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項4】
前記第1及び第2の上面が異なる材料で覆われている、請求項1又は2に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項5】
前記第2の共振キャビティが、前記第1の反射構造(M1)と前記第2の反射構造(M2)との間に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項6】
前記第1の共振キャビティ及び前記第2の共振キャビティが前記第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)の同じ側に形成されている、請求項5に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項7】
前記第1の反射構造又は前記第2の反射構造のうちの少なくとも1つが、溝又はエッジ反射構造或いは3つ以下の電極を含む短い反射体を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項8】
前記第1の反射構造又は前記第2の反射構造のうちの少なくとも1つが、ブラッグミラーを含むか、又はブラッグミラーで構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項9】
第3の反射構造(M3)をさらに備え、前記交互嵌合型トランスデューサ(T)が前記第3の反射構造(M3)と前記第1の共振キャビティとの間に配置されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20c)。
【請求項10】
前記メタライゼーション層が、AlCu及びTiのうちの少なくとも1つを含むか、又はこれらのうちの少なくとも1つで構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項11】
前記パッシベーション層が、Si、Al、AlN、Ta及びSiOのうちの少なくとも1つを含むか、又はこれらのうちの少なくとも1つで構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項12】
第2の交互嵌合型トランスデューサ、及び前記第1の交互嵌合型トランスデューサと前記第2の交互嵌合型トランスデューサとの間に配置された第4の反射構造をさらに備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項13】
前記第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)が第1の数の電極(C、C’)を備え、前記第2の交互嵌合型トランスデューサが第2の数の電極(C、C’)を備え、電極(C、C’)の前記第1の数が前記第2の数とは異なる、請求項12に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項14】
前記第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)が第1の数の電極(C、C’)を備え、前記第2の交互嵌合型トランスデューサが第2の数の電極(C、C’)を備え、前記第1の数の電極(C、C’)の前記電極(C、C’)のうちの少なくとも一部の長さが、前記第2の数の電極(C、C’)の前記電極(C、C’)のうちの少なくとも一部の長さとは異なる、請求項12又は13に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項15】
前記第1の交互嵌合型トランスデューサの開口部が、前記第2の交互嵌合型トランスデューサの開口部とは異なる、請求項12又は13又は14に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項16】
前記第1の共振キャビティ(g1)が、前記第1の反射構造(M1)の第1の反射サブ構造によって互いに分離された第1の共振サブキャビティを備え、前記第2の共振キャビティ(g2)が、前記第2の反射構造(M2)の第2の反射サブ構造によって互いに分離された第2の共振サブキャビティを備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項17】
前記第1の共振キャビティが第1の延在長さ(g1)を有し、前記第2の共振キャビティが第2の延在長さ(g2)を有し、前記第1の延在長さ(g1)と前記第2の延在長さ(g2)が互いに異なる、請求項1~16のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項18】
平坦面を含む石英材料層をさらに備え、
前記第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)並びに前記第1及び第2の反射構造(M1、M2)が、前記石英材料層上に又は前記石英材料層の上方に形成され、前記第1及び第2の共振キャビティが前記石英材料層の一部を含み、
前記石英材料層の前記平坦面が、-14°~-24°の範囲の角度φ、-25°~-45°の範囲の角度θ、及び+8°~+28°の範囲の角度ψ、特に、-17°~-22°の範囲の角度φ、-30°~-40°の範囲の角度θ、及び+10°~+25°の範囲の角度ψ、より詳細には、-19°~-21°の範囲の角度φ、-33°~-39°の範囲の角度θ、及び+15°~+25°の範囲の角度ψを有する前記石英材料層の石英材料の結晶カットによって定義され、特に、前記結晶カットの前記角度がφ=-20°、θ=-36°、及びψ=15°~25°、特に17°であってもよい、
請求項1~17のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項19】
バルク基板、特にSiバルク基板と、
前記バルク基板上に形成された誘電体層、特にSiO層と、
圧電層、特にLiNbO層又はLiTaO層と、
をさらに含み、
前記第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)並びに前記第1及び第2の反射構造(M1、M2)が、前記圧電層上に又は前記圧電層の上方に形成され、前記第1及び第2の共振キャビティが前記圧電層を含む、
請求項1~18のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項20】
前記弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)が、温度、化学種、歪み、圧力、又は回転軸のトルクのうちの1つから選択される周囲パラメータを感知するように構成された受動表面弾性波センサデバイスである、請求項1~19のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項21】
前記第1の交互嵌合型トランスデューサ(T、T1)、前記第1の反射構造(M1)、前記第2の反射構造(M2)、前記第1の共振キャビティ、及び前記第2の共振キャビティが、1つのラインに沿って配置されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(20a、20b、20c、31a、32a、31b、32b)。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(31a、32a)を備え、請求項1~21のいずれか一項に記載の弾性波センサデバイス(31a、32a)に直列又は並列に接続された別の弾性波センサデバイス(31b、32b)をさらに備える弾性波センサアセンブリ(30a、30b)であって、前記別の弾性波センサデバイス(31b、32b)が、
第3の交互嵌合型トランスデューサと、
第5の反射構造及び第6の反射構造と、
第3の上面を含み、前記第3の交互嵌合型トランスデューサと前記第5の反射構造との間に形成された第3の共振キャビティと、
第4の上面を含み、前記第3の交互嵌合型トランスデューサと前記第5の反射構造との間に形成された第4の共振キャビティと、を備える、
弾性波センサアセンブリ(30a、30b)。
【請求項23】
前記第1及び第2の上面が両方とも、特に同じ材料で作られているか若しくは同じ材料を含むメタライゼーション層又はパッシベーション層によって少なくとも部分的に覆われ、前記第3及び第4の上面が、メタライゼーション層又はパッシベーション層によって覆われていない、請求項22に記載の弾性波センサアセンブリ(30a、30b)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波タイプのセンサに関し、詳細には、交互嵌合型トランスデューサ及び共振キャビティを含む表面弾性波センサデバイスに関する。
【0002】
センサの重要性は増しており、日常生活において広く普及している。微小電気機械システム(MEMS)は、小型化及びコスト削減とともに、センサの性能向上に対する要求に応えるための魅力的な選択肢である。表面弾性波(SAW)センサ、及びそれほどではないがバルク弾性波(BAW)センサ又はラム波音響センサ或いはラブ波音響センサは、例えば温度、圧力、歪み、及びトルクを含む多種多様な測定可能な周囲パラメータのために、特に有利な選択肢を提供する。
【0003】
弾性波センサは、圧電効果を利用して、電気信号を機械的波/弾性波に変換する。SAWベースのセンサは、特にシリコン上に堆積させた、石英(SiO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ランガサイト(LGS)のような単結晶圧電材料、又は窒化アルミニウム(AlN)若しくは酸化亜鉛(ZnO)のような多結晶圧電材料上に構築され、さらには、必要に応じて、例えば酸化ケイ素層のような接合層によって例えばシリコンのような支持基板に接合された圧電材料、特に例えばタンタル酸リチウム又はニオブ酸リチウムなどの単結晶材料の層を含むピエゾ-オン-インシュレータ(POI)複合材料上に構築される(一般に、熱弾性特性又は音響品質のような特定の特性の観点から、単結晶圧電材料と非圧電基板との任意の組合せを使用することができる)。
【0004】
表面弾性波センサの場合、交互嵌合型トランスデューサ(IDT)が電気信号の電気エネルギーを弾性波エネルギーに変換する。弾性波は、いわゆる遅延線を介してデバイス基板の表面(又はバルク)にわたって、弾性波を検出可能な電気信号に再変換する別のトランスデューサ、特にIDTに伝搬する。一部のデバイスでは、干渉パターンを防止し、挿入損失を低減するために、機械的な吸収体及び/又は反射体が設けられている。一部のデバイスでは、他方の(出力)IDTは、生成された弾性波を反射して、センサデバイスの遠隔質問のためにアンテナに結合され得る(入力)IDTに戻す反射体によって置き換えられる。有利には、測定は完全に受動的に行うことができ、すなわち、センサは電源によって電力供給される必要はない。
【0005】
特定のクラスの弾性波センサは、変化する周囲条件に従って変化する共振周波数を示す共振器を含む。図1は、共振弾性波センサの例を示す。弾性表面波共振器は、交互嵌合型櫛型電極CとC’がブラッグミラーM間に配置された電気音響交互嵌合型トランスデューサIDTを含む。櫛型電極は、反対の電位+V及び-Vにそれぞれ設定されている。電極の幾何学的形状は、ピッチp、すなわち、励起された表面弾性波の伝搬方向におけるインターリーブ電極C及びC’の空間繰り返し周波数、励起された表面弾性波の伝搬方向に垂直な方向における電極CとC’との間のギャップの長さ、ギャップ間の電極C及びC’の長さによって与えられる音響開口領域の長さ、並びにいわゆるメタライゼーション比a/pを決定する電極C及びC’の幅aによって規定される。IDTは、例えば、励起された表面弾性波の波長λがピッチpの2倍に等しいブラッグ条件で動作することができる。
【0006】
共振周波数では、反射体間の同期の条件が満たされることにより、反射体の下で起こる様々な反射のコヒーレント加算が可能になる。共振キャビティ内では、音響エネルギーの最大値が観察され、電気的観点からは、トランスデューサによって許容される電流の振幅の最大値が観察される。原理的には、差動弾性波センサは、異なる共振周波数を示す2つ以上の共振器、又はマルチモード(いくつかの共振周波数)で動作する共振器を備えることができ、測定周波数の差が、例えば温度、圧力又は歪みとして測定される周囲パラメータ(測定量)の変動を反映する。
【0007】
しかしながら、最近の工学的進歩にもかかわらず、質問器が適切な高周波信号を送信し、この信号が受信アンテナを介して弾性波センサによって受信され、トランスデューサによって表面弾性波(又はバルク弾性波センサタイプのデバイスの場合にはバルク波)に変換され、この表面弾性波が放射アンテナを介して再送信される高周波信号に変換され、質問器によって受信され、分析されるという質問プロセス全体が、依然として厳しい技術的問題を提起している。さらに、当技術分野で知られている比較的かさばる構成は、比較的高いスペースを必要とする。
【0008】
信頼できる測定結果を得るためには、測定量に対して使用される共振器の共振の適切な差分感度に基づいた真の差分測定値を正確に観測しなければならない。このことは、製造プロセスの公差と、ウエハごとの物理的特性の再現性とに対して厳しい要求を課す。加えて、センサデバイスと質問器との間の相対的な動きはいずれも、センサデバイス及び質問器によって誘導的、容量的、又は放射的に形成されるRFリンクに起因して、測定結果に大きな影響を及ぼす可能性がある。測定環境における他の環境の影響、例えば温度変化も、測定結果の信頼性に影響を及ぼす。
【0009】
したがって、本発明の目的は、当技術分野の弾性波センサデバイスと比較して、より高い信号対雑音比及びより信頼性の高い測定結果並びに/又はよりコンパクトな設計を可能にする弾性波センサを提供することである。
【0010】
本発明は、特に櫛型電極を含む第1の交互嵌合型トランスデューサと、第1の反射構造と、第2の反射構造と、第1の上面を含み、第1の交互嵌合型トランスデューサと第1の反射構造との間に形成された第1の共振キャビティと、第2の上面を含み、第1の交互嵌合型トランスデューサと第2の反射構造との間に形成された第2の共振キャビティと、を備え、第1及び第2の上面の少なくとも一方が、メタライゼーション層又はパッシベーション層によって少なくとも部分的に覆われている、弾性波センサデバイスを提供することによって上述の目的に対処する。代替として、又は加えて、第1及び第2の上面の少なくとも一方は、他の手段によって、例えば、それぞれの表面を凹ませることによって、物理的及び/又は化学的に改質されてもよい。
【0011】
本発明は、第1の交互嵌合型トランスデューサと、第1の反射構造と、第2の反射構造と、第1の上面を含み、第1の交互嵌合型トランスデューサと第1の反射構造との間に形成された第1の共振キャビティと、第2の上面を含む、第1の交互嵌合型トランスデューサと第2の反射構造との間に形成された第2の共振キャビティとを備え、第1及び第2の共振キャビティが、それらの一方が他方と比べて何らかの物理的及び/又は化学的な改質を呈するという点で互いに異なる弾性波センサデバイスを提供することによって上述の目的に対処する。
【0012】
第1の上面又は第2の上面のいずれかは、メタライゼーション層又はパッシベーション層によって少なくとも部分的に覆われていてもよい。代替として、第1及び第2の上面は、異なる材料によって覆われていてもよい。
【0013】
第1の反射構造は、(互いに平行に配置された細長い電極を含む)ブラッグミラーを含むか若しくはブラッグミラーで構成することができ、及び/又は第2の反射構造は、(互いに平行に配置された他の細長い電極を含む)ブラッグミラーを含むか若しくはブラッグミラーで構成することができる。或いは、第1又は第2の反射構造の少なくとも一方は、溝又はエッジ反射構造或いは3つ以下の電極を含む短い反射体を備えてもよい。このような反射構造は、容易に形成することができ、高い反射率を提供することができる。当業者であれば、所与の結晶配向、波の偏波及び電極の性質に対して達成可能な20%を越える反射係数を提供するために、溝の深さ又は電極の厚さをどのように調整すべきかを知っているであろう。
【0014】
弾性波センサデバイスは、圧電層及び非圧電バルク基板を含む基板を含むことができ、又は(均一な)圧電基板を含むことができる。非圧電バルク基板は、シリコン基板であってもよく、任意選択で、その表面にいわゆるトラップリッチ層(例えば、多結晶シリコンの層によって提供される)を含むことができる。トラップリッチ層は、シリコン基板との界面に誘起される電荷トラップに起因する挿入損失及びRF損失を低減することができる。
【0015】
メタライゼーション層又はパッシベーション層は、圧電層又は圧電基板の上又は上方にそれぞれ形成されてもよい。メタライゼーション層は、AlCu及びTiのうちの少なくとも1つを含んでもよく、又はこれらで構成されてもよく、パッシベーション層は、Si、Al、AlN、Ta及びSiOのうちの少なくとも1つを含んでもよく、又はこれらで構成されてもよいが、これらに限定されない。メタライゼーション層は、第1のトランスデューサの電極と同じ材料で作られてもよい(したがって、電極の形成に使用されるものと同じ処理ステップで形成されてもよい)。
【0016】
ブラッグミラーが反射構造として使用される場合、ブラッグミラーは、メタライゼーション層及び/又は第1のトランスデューサの電極の形成に使用されるものと同じ金属材料で作られてもよい。
【0017】
メタライゼーション層又はパッシベーション層によって共振キャビティの第1及び第2の上面の一方を改質することにより、交互嵌合型トランスデューサによって生成される弾性波の伝搬特性が、第2の共振キャビティと、第1の共振キャビティとで異なるという結果を得ることができる。これにより、非常に信頼性が高く、感度の高い差動センサデバイスを提供することができる。
【0018】
改質がなければ、第1及び第2の上面は、自由(露出)表面、特に圧電層の自由表面である(以下の説明を参照)。第2の上面のみに材料層を形成してもよく、又は第2の上面にある材料層を形成し、第1の上面に(第2の上面に形成された材料層と比べて異なる材料で作られた)別の材料層を形成してもよい。
【0019】
一実施形態によると、第1のトランスデューサは、第1の共振キャビティの片側に配置され、第2の共振キャビティは、第1の共振キャビティの他方の側に配置されてもよく、第1の反射構造は、第1の共振キャビティを第2の共振キャビティから分離する。したがって、第2の共振キャビティは、第1の反射構造と第2の反射構造との間に形成されてもよい。このような構成では、共振キャビティの分離は、トランスデューサによってではなく、中間反射構造(すなわち、第1の反射構造)によって提供される。このような構成により、コンパクトな設計を達成することができる。
【0020】
このような構成では、第3の反射構造が設けられてもよく、交互嵌合型トランスデューサは、第3の反射構造と第1の共振キャビティとの間に配置されてもよい。第3の反射構造は、(表面弾性波の発生源及び反射体の両方として動作する)第1のトランスデューサによって提供される反射率を向上させることができる。第3の反射構造は、(互いに平行に配置された細長い電極を含む)ブラッグミラーを含むか、又はブラッグミラーで構成されてもよい。当業者であれば、エネルギーを第2の共振キャビティに伝達することができるようにするために、第1の反射構造をどのように調整するかを知っている。
【0021】
一実施形態によると、弾性波センサデバイスは、第2の交互嵌合型トランスデューサ、及び第1の交互嵌合型トランスデューサと第2の交互嵌合型トランスデューサとの間に配置された第4の反射構造をさらに備える。第1の交互嵌合型トランスデューサは、第1の数の電極を備え、第2の交互嵌合型トランスデューサは、第2の数の電極を備え、電極の第1の数は、第2の数と異なっていてもよい。加えて、又は代替として、第1の数の電極のうちの少なくとも一部の電極の長さは、第2の数の電極のうちの少なくとも一部の電極の長さ(すなわち、表面弾性波の進行方向に垂直な方向の2つのトランスデューサの長さ)と異なってもよい。さらに、第1及び第2のトランスデューサの開口部は、互いに異なっていてもよい。このような手法によって、散乱、波の速度の変化、最適な共振条件の変化などに起因する、メタライゼーション層又はパッシベーション層によって引き起こされる固有損失を補償するための微調整が利用可能になる。
【0022】
上述の実施形態では、第1及び第2のトランスデューサは、単一のトランスデューサの(並列に動作する)分割された部分と考えられてもよい。このような構成は、個々の共振キャビティ間を十分に明確に分離できるほど第1のトランスデューサの反射係数が十分に強くないという動作状況において有利である。
【0023】
さらに、上述した実施形態のうちの1つによる弾性波センサデバイスにおいてカスケード共振キャビティを形成し、共振の数を減らして一意の測定結果を得ることができる。したがって、上述した例のうちの1つによる弾性波センサデバイスは、第1の共振キャビティが、第1の反射構造の第1の反射サブ構造によって互いに分離された第1のサブキャビティを備え、第2の共振キャビティが、第2の反射構造の第2の反射サブ構造によって互いに分離された第2の共振サブキャビティを備えるように構成されてもよい。反射サブ構造のそれぞれは、互いに平行に配置された細長い電極で構成されてもよい。
【0024】
一実施形態によると、弾性波センサデバイスは、平坦面を含む石英材料層をさらに備え、第1の交互嵌合型トランスデューサ並びに第1及び第2の反射構造が、石英材料層上又は上方に形成され、第1及び第2の共振キャビティが、石英材料層の一部を含み、石英材料層の平坦面が、-14°~-24°の範囲の角度φ、-25°~-45°の範囲の角度θ、及び+8°~+28°の範囲の角度ψ、特に、-17°~-22°の範囲の角度φ、-30°~-40°の範囲の角度θ、及び+10°~+25°の範囲の角度ψ、より詳細には、-19°~-21°の範囲の角度φ、-33°~-39°の範囲の角度θ、及び+15°~+25°の範囲の角度ψを有する石英材料層の石英材料の結晶カットによって定義される。特に、結晶カットの角度は、φ=-20°、θ=-36°、及びψ=15°~25°、特に17°であってもよい。
【0025】
上記の定義は、Z軸の周りに回転させた結晶カットの対称条件(すなわち、所与の結晶カットのゼロでない角度φ及びψ)に従って、+14°~+24°の範囲の角度φ、-25°~-45°の範囲のθ、及び-8°~-28°の範囲のψと等価であることに留意されたい。より明確には、対称規則に従って、(YXwlt)/+φ/+θ/+ψカットは、(YXwlt)/-φ/+θ/-ψカットと等価であると述べることができる。
【0026】
結晶カット、したがって平坦面を規定する角度は、IEEE176 1949 Standards on Piezoelectric Crystals, 1949 from 12-12-1949に従って規定されている。石英の結晶は、切断面(X、Z)に対して、基準系(X”、Y”、Z”)において定義された切断面(X”、Z”)を有することができ、X、Y、Zは石英の結晶軸であり、波の伝播方向は軸X’’’に沿って定義され、第1の切断面(X’、Z’)は、軸Z’が軸Zと同じである第1の基準系(X’、Y’、Z’)を定義するように、平面(X、Z)の軸Zを中心とした角度φの回転によって定義され、第2の切断面(X”、Z”)は、軸X’’が軸X’と同じである第2の基準系(X’’、Y’’、Z’’)を定義するように、平面(X’、Z’)の軸X’を中心とした角度θの回転によって定義され、軸X’’’に沿った伝播方向は、軸Y’’を中心とした平面(X’’、Z’’)における軸X’’の角度ψの回転によって定義され、本開示によると、φは-14°~-24°の範囲であり、θは-25°~-45°の範囲であり、ψは+8°~+28°の範囲である。
【0027】
実験によると、このような種類の結晶カットから得られる弾性波センサデバイス用の石英材料層は、機械的応力に対する感度が低く、環境の影響に対する測定の堅牢性を提供することができることが示されている。差動周波数感度の線形な感度(温度-周波数依存性の線形性)を達成することができる。実際、得られる共振周波数感度は、提供される弾性波センサデバイスによる温度測定の状況下において、1ケルビン当たり1ppmを超える測定感度を可能にする。2ppbK-2又はさらには1ppbK-2の差分周波数の二次温度係数の変動を達成することができる。
【0028】
石英材料層は、石英バルク基板又は非圧電バルク基板上に形成された石英層とすることができる。後者の場合、非圧電バルク基板は、シリコン基板であってもよく、任意選択で、その表面に(例えば、多結晶シリコンの層によって提供される)いわゆるトラップリッチ層を含む。トラップリッチ層により、挿入損失が低減され、シリコン基板との界面に誘起される電荷トラップによるRF損失を低減することが可能になる。基板の前記粘弾性損失を最小限に抑えることによって共振の品質係数を最大化するのに非常に興味深いサファイア基板とすることもできる。サファイアは、(イットリウム系ガーネット、より詳細にはイットリウム・アルミニウム・ガーネット-YAGとともに)その態様により最も有利な材料の1つであることが知られている。
【0029】
上述の例のうちの1つによる弾性波センサデバイスは、POIデバイスであってもよく、したがって、バルク基板、特にSiバルク基板又は石英基板と、バルク基板上に形成された誘電体層、特にSiO層とを含んでもよい。さらに、弾性波センサデバイスは、バルク基板上に又はバルク基板の上方に形成された圧電層、特にLiNbO又はLiTaO層を含んでもよい。この場合、第1の交互嵌合型トランスデューサ並びに第1及び第2の反射構造は、圧電層の上面上に又は上面の上方に形成され、第1及び第2の共振キャビティは、圧電層(の一部)を含む。
【0030】
上述した実施形態すべてにおいて、第1の共振キャビティの共振のスペクトル応答と第2の共振キャビティの共振のスペクトル応答とを互いにより明確に分離するために、(弾性波の伝播方向の)第1の共振キャビティの延在長さと第2の共振キャビティの延在長さは、互いに異なっていてもよい。
【0031】
一般に、上述の例のうちの1つによる弾性波センサデバイスは、周囲パラメータ、例えば、温度、化学種、歪み、圧力、又は回転軸のトルクのうちの1つを感知するように構成された受動表面弾性波センサデバイスであってもよい。
【0032】
一実施形態では、第1の交互嵌合型トランスデューサ、第1の反射構造、第2の反射構造、第1の共振キャビティ及び第2の共振キャビティは、1つのラインに沿って配置されてもよい。交互嵌合型トランスデューサによって生成される弾性波の伝搬特性が、第2の共振キャビティと、第1の共振キャビティとで異なるように、共振キャビティの第1及び第2の上面の一方が、特にメタライゼーション層又はパッシベーション層によって改質されている場合、単一ラインアーキテクチャを有するセンサデバイス、特に差動センサデバイスを提供することができ、これは、2つのラインを使用するセンサ設計と比較してよりコンパクトな設計に対応する。
【0033】
さらに、上述の例のうちの1つによる1つ又は複数の弾性波センサデバイスを備える弾性波センサアセンブリが提供される。特に、弾性波センサアセンブリは、上述の例のうちの1つによる弾性波センサデバイスを備えることができ、上述の例のうちの1つによる弾性波センサデバイスに直列又は並列に接続された他の弾性波センサデバイスをさらに備えることができ、他の弾性波センサデバイスは、第3の交互嵌合型トランスデューサと、第5の反射構造及び第6の反射構造と、第3の上面を含み、第3の交互嵌合型トランスデューサと第5の反射構造との間に形成された第3の共振キャビティと、第4の上面を含み、第3の交互嵌合型トランスデューサと第5の反射構造との間に形成された第4の共振キャビティと、を備える。
【0034】
このような弾性波センサアセンブリでは、第1及び第2の上面は両方とも、メタライゼーション層又はパッシベーション層、例えば、第1の共振キャビティの第1の上面及び第2の共振キャビティの第2の上面の上の同じ材料で作られた又は同じ材料を含むメタライゼーション層又はパッシベーション層によって少なくとも部分的に覆われていてもよく、他の弾性波センサデバイスの共振キャビティの第3及び第4の上面は、覆われていなくてもよく、又は第1及び第2の上面に対して異なるメタライゼーション層又は異なるパッシベーション層によって覆われていてもよい。
【0035】
直列接続(反共振に基づく測定用、米国特許出願公開第2017/033840A1号参照)又は並列接続(共振に基づく測定用)された2つの表面弾性波センサデバイスを備える弾性波センサアセンブリによって、測定の差分感度が1つの単一の弾性波センサデバイスの採用と比較して向上する可能性がある。第1及び第2の共振キャビティによって提供される共振は、1つ又は複数のメタライゼーション又はパッシベーション層の形成に起因して、互いに等しくない場合がある。特に、メタライズされた共振キャビティによって提供される品質係数は、自由表面を有する共振キャビティと比較して低下する可能性がある。互いに接続された2つの弾性波センサデバイスを設ける場合、2つの弾性波センサデバイスのそれぞれは、応答のダイナミクスを改善し、実際の作業明細書によって与えられる任意の所望の動作点を満たすために、(例えば、2つの弾性表面波センサデバイスのそれぞれのトランスデューサの電極の長さ及び数に関して)互いに別々に構成することができる。
【0036】
さらに、周囲パラメータ、例えば、温度、歪みレベル、圧力又は回転軸のトルクレベル、化学種などを監視/測定するためのシステムが設けられ、このシステムは、質問デバイスと、質問デバイスに通信可能に結合された上述の実施形態のうちの1つによる弾性波センサデバイス及び/又は弾性波センサアセンブリとを備える。
【0037】
弾性波センサに質問を行うための質問デバイスは、弾性波センサデバイスに高周波質問信号を送信するように構成された送信アンテナと、送受信アンテナを含むこともできる弾性波センサデバイスから高周波応答信号を受信するように構成された受信アンテナと、感知されるべき周囲パラメータを決定するために高周波応答信号を処理/分析するための処理手段と、を備えることができる。
【0038】
本発明のさらなる特徴及び利点は、図面を参照して説明される。説明では、本発明の好ましい実施形態を例示することが意図された添付の図面を参照する。このような実施形態は、本発明の全範囲を表すものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】従来技術による表面弾性波センサデバイスの一例である。
図2a】本発明の一実施形態による、トランスデューサの片側のみに共振キャビティが配置された表面弾性波センサデバイスの一例である。
図2b】本発明の別の実施形態による、トランスデューサの片側のみに共振キャビティが配置された表面弾性波センサデバイスの一例である。
図2c】本発明のさらに別の実施形態による、トランスデューサの片側のみに共振キャビティが配置された表面弾性波センサデバイスの一例である。
図3a】本発明の一実施形態による表面弾性波センサアセンブリの一例である。
図3b】本発明の別の実施形態による表面弾性波センサアセンブリの一例である。
【0040】
本発明は、高い信号対雑音比、感度及び信頼性を特徴とする弾性波センサ、特に受動SAWセンサを提供する。温度測定に関しては、例えば、取得可能な共振周波数感度により1ケルビン当たり1ppmを超える測定感度が可能になる。弾性波センサは、質問された弾性波センサからの応答スペクトルを決定するように構成された任意の質問器によって質問され得る。質問される弾性波センサは、例えば、共振器デバイス、例えば、差動SAWセンサとすることができる。言うまでもなく、本発明は、弾性波センサ又は誘電体共振器、RLC回路などを使用する任意のデバイスで実施することができる。
【0041】
本発明の弾性波センサデバイスのうちの1つに質問する質問デバイス(ユニットとも呼ばれる)は、高周波質問信号をセンサデバイスに送信するための送信アンテナと、センサデバイスから高周波応答信号を受信するための受信アンテナとを備えることができる。送信アンテナによって送信される高周波質問信号は、高周波シンセサイザ又は制御発振器、並びに任意選択で、送信アンテナによって送信される信号の適切な周波数転換及び/又は増幅を提供する何らかの信号整形モジュールを備えることができる信号発生器によって生成されてもよい。信号発生器によって生成された高周波質問信号は、周波数が弾性波センサデバイスの共振周波数に応じて選択されたパルス信号又はバースト信号であってもよい。放射アンテナと受信アンテナは、同じアンテナであってもよいことに留意されたい。この場合、例えば、適切に制御されたスイッチによって、放射プロセスと受信プロセスを互いに同期させるべきである。
【0042】
さらに、質問デバイスは、受信アンテナに接続された処理手段を備えることができる。処理手段は、フィルタリング手段及び/又は増幅手段を備えることができ、受信アンテナによって受信された高周波応答信号を分析するように構成されてもよい。例えば、センサデバイスは、434MHz又は866MHz又は915MHz又は2.45GHz(前記ISMバンド)の共振周波数で動作する。
【0043】
質問デバイスは、長い高周波パルスを送信することができ、送信が停止した後、センサデバイスの共振キャビティは、Q/πFに等しい時定数τで、それらの共振固有周波数で放電し、ここで、Fは中心周波数であり、Qは共振の品質係数であり、Qは、共振中心周波数と、質問プロセスで使用される帯域通過の半値幅との比に相当する。例えば、Qは、共振器が前記共振で動作するように設計されている場合、共振器のアドミタンス(前記コンダクタンス)の実部に基づいて推定される共振品質係数に相当する。質問デバイスの処理手段によって実行されるスペクトル分析により、1つ又は複数の共振器周波数を計算することができ、以て周囲パラメータを感知することができる。受信された高周波応答信号は、処理手段によって、当技術分野で知られているように、いわゆるI-Qプロトコルに従って高周波質問信号と混合されて、実部及び虚部(信号振幅がY及び信号位相がφの同相成分I=Ycosφ及び直交成分Q=Ysinφ)を抽出することができ、次いで、そこから係数(modulus)及び位相を導出することができる。
【0044】
図2aは、本発明の表面弾性波(SAW)センサデバイス20aの例示的な実施形態を示す。本発明の一実施形態によるSAWセンサデバイス、例えば、図2aに示すSAWセンサデバイス20aは、トランスデューサTを備える。トランスデューサTは、電磁波E1(高周波質問信号)を受信し、電磁波E1を表面弾性波に変換するためのアンテナ(図2aには図示せず)に接続された交互嵌合型(櫛型)トランスデューサ(IDT)の形態で構築されている。
【0045】
表面弾性波センサデバイス20aは、第1のブラッグミラー構造M1及び第2のブラッグミラー構造M2を備える。長さg1の第1の共振キャビティは、第1のブラッグミラー構造M1と第2のブラッグミラー構造M2との間に規定され、長さg2の第2の共振キャビティは、トランスデューサTと第1のブラッグミラー構造M1との間に規定されている。したがって、トランスデューサTは、アンテナによって受信された高周波質問信号E1を表面弾性波に変換し、この表面弾性波は、それぞれ長さg1及びg2の共振キャビティのブラッグミラーM1及びM2によって反射されて戻り、トランスデューサによって高周波信号S1に逆変換される。逆変換された弾性波は、当然ながら、アンテナ(又は別のアンテナ)によって、高周波応答信号として送信される。表面弾性波センサ20a(並びに図の他のデバイスを参照して以下に説明するデバイス)は、励起された表面弾性波の波長が櫛型トランスデューサTの櫛型電極のピッチの数倍であるブラッグ条件で動作することができる。ブラッグ条件で動作が行われる場合、櫛型トランスデューサT自体が実質的にミラーとして機能する。このミラーとして機能する効率は、波の偏波、障害物の性質及び形状、並びに基板の特性に依存することに留意されたい。当業者であれば、第1の共振キャビティと第2の共振キャビティとの間でエネルギーを交換することができるように、第1のブラッグミラー構造M1をどのように適合させるか(例えば、電極フィンガの数を減らすことによって)を知っていることに留意されたい。
【0046】
第1のブラッグミラー構造M1と第2のブラッグミラー構造M2のミラー格子は、(図2aに示すように)互いに異なっていてもよく、最適な共振条件をもたらすように適切に構成されていてもよい。(表面弾性波の進行方向に沿った)共振キャビティの長さg1とg2は、互いに異なっていてもよく、共振キャビティの一方の長さを変更することは、波伝搬特性を局所的に変更することにつながる。異なる実施形態によると、2つ以上の共振キャビティが設けられてもよい。図2aに示す実施形態によるSAWセンサデバイスによってコンパクトな設計を実現することができることに留意されたい。さらに、図示された構成によって、満足のいく応答ダイナミクスを達成することができる。
【0047】
センサデバイス20aは、特にシリコン上に堆積させた、石英(SiO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ランガサイト(LGS)のような単結晶圧電材料、又は窒化アルミニウム(AlN)若しくは酸化亜鉛(ZnO)のような多結晶圧電材料上に構築されたSAWベースのセンサを含むことができ、さらには、必要に応じて、例えば酸化ケイ素層のような接合層によって例えばシリコンのような支持基板に接合された圧電材料、特に例えばタンタル酸リチウム又はニオブ酸リチウムなどの単結晶材料の層を含むピエゾ-オン-インシュレータ(POI)複合材料上に構築されたSAWベースのセンサを含むことができる。既に述べたように、いわゆるトラップリッチ層(例えば、多結晶シリコン)がシリコン支持基板との界面に存在し得る。
【0048】
図2aに示す実施形態では、長さg1とg2の設けられた共振キャビティは、それぞれ、それらの一方(長さg1の方)が、他方と比較して、黒色で示される何らかの物理的及び/又は化学的な改質を呈するという点で、互いに異なる。物理的及び/又は化学的な改質によって、異なる伝播条件、したがって異なる共振特性が異なる共振キャビティに提供される。複数の共振キャビティによる複数の共振、したがって、複数の共振キャビティのそれぞれを特徴付ける共振を比較したときの差分効果が、以て生じる。
【0049】
差分パラメトリック感度を示す伝搬波モードを達成するために、物理的及び/又は化学的な改質を施すための様々な手段がある。これらの手段には、例えば、メタライゼーション層及び/又はパッシベーション層の形成による物理的及び/又は化学的な改質の実現が含まれる。例えば、長さg1の共振キャビティの領域に約100nmの厚さのメタライゼーション層を形成してもよく、長さg2の共振キャビティにメタライゼーション層を形成しなくてもよい。メタライゼーション層は、トランスデューサT並びに/又はブラッグミラー構造M1及び/若しくはブラッグミラー構造M2の電極と同じ材料で形成されてもよい。
【0050】
櫛型トランスデューサT並びにブラッグミラー構造M1及びM2の形成と電極のメタライゼーションに同じ材料を使用する場合、これらの素子はすべて同じ堆積プロセスで堆積させることができる。
【0051】
他の実施形態では、メタライゼーションに異なる材料が使用される。例えば、ある材料のあるメタライゼーション層又はパッシベーション層が長さg1の第1の共振キャビティ上に形成され、別の材料の別のメタライゼーション層又はパッシベーション層が長さg2の第2の共振キャビティ上に形成される。別の例によると、共振キャビティの一方に正の温度シフト材料、例えばSiO又はTaが形成され、共振キャビティの他方に負の温度シフト材料、例えばSi又はAlNが形成されるか、或いは追加の材料が形成されない。
【0052】
パッシベーションは、Si、Al、又はAlNで作られた、又はこれらを含むパッシベーション層を形成することによって実現されてもよい。他の実施形態によると、両方の共振キャビティ上に材料層を形成することができる。さらに、1つ又は複数の共振キャビティ上に形成された材料層は、弾性波の伝搬方向に沿って不均一な厚さを有してもよい。さらに、1つ又は複数の共振キャビティ上に多層を形成してもよい。これに関連して、一般に、共振キャビティ上に材料層を設けると、特に、Pt、Au又はWのような大きな原子番号の材料の層を使用した場合、質量負荷効果に起因して弾性波の位相速度が低下する可能性があることに留意すべきである。この効果は、比較的高い音響速度を示す層、例えば、圧電材料層に隣り合うAlN、Si、Alを追加することによって補償することができる。共振キャビティは、表面処理の違いによって、得られる共振特性が異なるため、測定量に対して異なる感度を呈し、したがって、差分測定が可能になる。
【0053】
改質の異なるキャビティを使用することによって、トランスデューサ構造と、第1及び第2の反射構造と、第1及び第2のキャビティとを備える差動センサデバイス20aを、同一かつ1つのライン上にのみ形成することができる。この場合、このようなデバイスは、ダブルライン又はデュアルラインアーキテクチャよりもコンパクトなシングルラインアーキテクチャを有する。
【0054】
別の実施形態によると、物理的及び/又は化学的な改質を含む、例えば金属層の形態の表面弾性波センサデバイス20bの第1の共振キャビティは、物理的及び/又は化学的な改質を含まなくてもよい他の第2の共振キャビティよりもトランスデューサに近い(図2b参照)。ここでもまた、センサデバイス20bのすべての素子は、単一のライン上に配置されている。
【0055】
図2a及び図2bにそれぞれ示すセンサデバイス20a及び20bの両方において、トランスデューサTの反射率は、追加の反射構造、例えば、図2cに示すような第3のブラッグミラー構造M3によって高めることができる。この場合、トランスデューサTは、追加のブラッグミラー構造M3と共振キャビティとの間に配置される。センサデバイス20aに関して上述したように、センサデバイス20cのすべての素子、したがってトランスデューサT及びミラーM1~M3は、すべて同一のライン上に配置され、単一ラインアーキテクチャのセンサデバイスを形成することができる。
【0056】
上述した実施形態のすべてにおいて、共振キャビティを形成するためにブラッグミラーが設けられている。しかしながら、代替の実施形態によると、ブラッグミラーのうちの1つ又は複数は、純粋なせん断モードでの誘導のための側部/エッジ反射構造に置き換えられてもよい。これにより、ブラッグ反射がエネルギー損失又はモード変換なしに、平面反射に置き換えられるという点で、非常にコンパクトな構成を達成することができる。純粋なせん断モードでの誘導のための側部/エッジ反射構造を有する構成は、液体中の周囲パラメータを感知するのに特に有用である。せん断波は、液体中でのプロービングに非常に適している。特に、(例えば、誘電率kが30よりも大きい)高k材料とともに、高結合モード(>5%)は、液体中での用途にとって魅力的である。他の実施形態によると、1つ又は複数の反射構造は、3つ以下の電極を含む短い反射体の形態で実現される。
【0057】
ブラッグミラーを含む上述の実施形態のすべてにおいて、単純な共振キャビティが採用されている。しかしながら、これらのすべて実施形態は、複数のミラー電極構造を含むカスケード接続された共振キャビティを採用してもよい。2つの共振間のスペクトル距離並びに共振の結合係数は、ミラー電極構造及び共振サブキャビティの数によって制御することができる。
【0058】
カスケード接続された共振器キャビティを使用する場合、ブラッグ条件で動作しないトランスデューサを使用することが可能である。例えば、トランスデューサは、1波長あたり3本又は4本のフィンガ、さらには2波長あたり5本のフィンガ、一般的には、IDT電極で波が反射することなく所与の同期で波を励起させることができるすべての適切な構造を呈することができる。
【0059】
さらに、本明細書では、トランスデューサの反射係数が、キャビティの共振間の十分に明確な分離を可能にするほど十分に強くないという動作状況も想定されていることに留意されたい。この場合、(例えば、上述の実施形態のすべてにおいて)キャビティの共振分離を改善するために、2つの部分の中間に追加の反射体を設けて、トランスデューサTを2つの部分に分割する(すなわち、並列に動作する2つのトランスデューサを設ける)ことができる。これは、レイリー波、又はより一般的には、石英、ランガサイト、タンタル酸リチウム単結晶基板、並びにGaN、AlN及びZnO層を含む複合基板上の楕円偏波に対して特に有用である。なぜなら、対応するモードが、一般に、1%未満の結合係数、及び5%未満、典型的には3%未満、さらには1%以下の固有電極上での反射係数を示すからである。反射係数は、一般に、機械的な部分(弾性負荷効果及び質量負荷効果)と電気的な部分(電気的負荷効果)で構成されているため、結合係数とある程度関連する。IDTは、本明細書で提供されるSAWセンサデバイスの構成のいずれにおいても、特に図2a~図2cに示す構成において、2つの部分に分割され得る。2つの部分(又は2つのトランスデューサ)は、最適な共振条件を達成するために、(表面弾性波の進行方向に対して垂直な)長さ、電極の数、開口部などに関して互いに異なっていてもよい。
【0060】
電気機械結合が5%を超えるLiTaO層を使用するPOI構成については、計算によって、反射係数は5%よりも大きく、10%又はさらにそれ以上に達することができることを実証することができる(実測で15%、金属の原子番号が大きいことを考慮して計算すると20%超)。石英の場合、トランスデューサ内部に中央ミラーを追加することにより、2つのキャビティモードの分離を得ることが可能になることを示すことができる。この考慮は、AlCuベースの電極に特に当てはまる。例えば、モリブデン又は金又は白金又はタングステンのような原子番号の高い電極を使用することで、大きな反射係数を得ることができる(特に、AlN又はGaNベースの層状基板ではなく、単結晶の場合)。また、このような構成では、やはり、キャビティの共振間の分離を容易にするために、所与の方向への波の放出を促進するために、単相一方向性変換器(SPUDT)を使用することも興味深い。
【0061】
一般に、上述の例のうちの1つによる弾性波センサデバイスは、周囲パラメータ、例えば、温度、化学種、歪み、圧力、又は回転軸のトルクのうちの1つを感知するように構成された受動表面弾性波センサデバイスであってもよい。
【0062】
上述の例のうちの1つによる弾性波センサデバイスは、本明細書でも提供される弾性波センサアセンブリの一部であってもよい。このような弾性波センサアセンブリの例示的な実施形態が、図3a及び図3bに示されている。
【0063】
本発明の一実施形態による弾性波センサアセンブリ、例えば図3aに示す弾性波センサアセンブリ30aは、第1のSAWセンサデバイス31a及び第2のセンサデバイス32aを備える。2つのタイプの共振器(SAWセンサデバイス31a及び32a)は、バランスのとれた共振器応答から利益を得るという考えに焦点を当てて、互いに独立して有利に最適化することができる。例えば、ある共振器の開口部又はIDTの長さを変更して、応答のダイナミクスを改善し、課された作業明細書に従って任意の動作点を満たすことができる。第1のSAWセンサデバイス31aは、第1のIDT T1と、第1のブラッグミラー構造M1と、第2のブラッグミラー構造M2とを備える。第1の共振キャビティR1は、第1のブラッグミラー構造M1と第1のIDT T1との間に形成され、第2の共振キャビティR2は、第2のブラッグミラー構造M2と第1のIDT T1との間に形成されている。第1の共振キャビティR1及び第2の共振キャビティR2は、同じ長さg1であってもよく、又は異なる長さであってもよい。
【0064】
さらに、第2のSAWセンサデバイス32aは、第2のIDT T2と、第3のブラッグミラー構造M3と、第4のブラッグミラー構造M4とを備える。第3の共振キャビティR3は、第3のブラッグミラー構造M3と第2のIDT T2との間に形成され、第4の共振キャビティR4は、第4のブラッグミラー構造M4と第2のIDT T2との間に形成されている。第3の共振キャビティR3及び第4の共振キャビティR4は、同じ長さg2であってもよく、又は異なる長さであってもよい。長さg1と長さg2は、同じであってもよく、異なっていてもよい。ブラッグミラー構造M1~M4のうちの1つ又は複数は、上述したように、溝又はエッジ反射構造或いは3つ以下の電極を含む短い反射体で置き換えられてもよい。当業者であれば、所与の結晶配向、波の偏波及び電極の性質に対して達成可能な20%を越える反射係数を提供するために、溝の深さ又は電極の厚さをどのように調整すべきかを知っているであろう。
【0065】
図3aに示す実施形態によると、弾性波センサアセンブリ30aの第1のSAWセンサデバイス31aの第1及び第2の共振キャビティR1、R2は、物理的及び/又は化学的な改質(図3aにおいて灰色で示されている)、例えば、上述の物理的及び/又は化学的な改質のうちの1つ、特に、メタライゼーション又はパッシベーション層を含む。例えば、第1のSAWセンサデバイス31aの第1及び第2の共振キャビティR1、R2は、同じ材料の金属層によって覆われる。一方、図3に示す例では、弾性波センサアセンブリ30aの第2のSAWセンサデバイス32aの第3の共振キャビティR3及び第4の共振キャビティR4の表面は自由表面である。第1のSAWセンサデバイス31aと第2のSAWセンサデバイス32aは、互いに並列に接続され(共振動作)、すなわち、アンテナ(図示せず)によって受信された同じ電磁波E1(高周波質問信号)を並列に(同期して)表面弾性波に変換し、次いで、これを出力信号S1に再転送する。
【0066】
原理的には、第1のSAWセンサデバイス31aの第1のトランスデューサT1及び/又は第2のSAWセンサデバイス32aの第2のトランスデューサT2は、上述したように、追加の反射構造(例えば、ブラッグミラー構造)が2つの部分の間に配置された2つの部分に分割されてもよい。さらに、第1のトランスデューサT1の長さ軸に関して対称な2つの共振キャビティを設けるのではなく、第1のトランスデューサT1は、2つの共振キャビティR1、R2の左又は右に位置してもよく、この場合、その反射率は、追加の反射構造、例えば、ブラッグミラー構造(図2a~図2cに示す構成を参照)によって高めることができる。同様に、第2のトランスデューサT2は、2つの共振キャビティR3、R4の左又は右に位置してもよく、この場合、その反射率は、追加の反射構造、例えば、ブラッグミラー構造(図2a~図2cに示す構成を参照)によって高めることができる。
【0067】
表面弾性波センサデバイスの上述の実施形態はすべて、弾性波センサアセンブリ30aの第1のSAWセンサデバイス31a及び/又は第2のSAWセンサデバイス32aに実装することができる。特に、弾性波センサアセンブリ30aは、特にシリコン上に堆積させた、石英(SiO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ランガサイト(LGS)のような単結晶圧電材料、又は窒化アルミニウム(AlN)若しくは酸化亜鉛(ZnO)のような多結晶圧電材料上に構築されたSAWベースのセンサを含むことができ、さらには、必要に応じて、例えば酸化ケイ素層のような接合層によって例えばシリコンのような支持基板に接合された圧電材料、特に例えばタンタル酸リチウム又はニオブ酸リチウムなどの単結晶材料の層を含むピエゾ-オン-インシュレータ(POI)複合材料上に構築されたSAWベースのセンサを含むことができる。既に述べたように、いわゆるトラップリッチ層(例えば、多結晶シリコン)がシリコン支持基板との界面に存在し得る。
【0068】
メタライズされた表面キャビティ及び自由表面のキャビティに関連付けられた共振は、厳密には互いに等価ではない。メタライズされた表面キャビティは、自由表面を有する表面キャビティと比較して、品質係数が低く、動的応答が遅くなる可能性がある。アンバランスな応答は、センサの質問プロセス全体に関して不利である可能性がある。このような問題は、上述したような弾性波センサアセンブリに2つのSAWセンサデバイスを設け、SAWセンサデバイスのそれぞれを最適な共振条件に関して個々に調整できるようにすることによって軽減することができる。
【0069】
図3bは、弾性波センサアセンブリ30bの2つのSAWセンサデバイス31b及び32bが互いに直列に接続された代替の実施形態を示す(反共振動作)。
【0070】
したがって、例えば図3bに示す弾性波センサアセンブリ30bのような、本発明の別の実施形態による弾性波センサアセンブリは、第1のSAWセンサデバイス31b及び第2のSAWセンサデバイス32bを備える。この場合も、2つのタイプの共振器(SAWセンサデバイス31b及び32b)は、有利には、互いに独立して最適化することができる。第1のSAWセンサデバイス31bは、第1のIDT T1と、第1のブラッグミラー構造M1と、第2のブラッグミラー構造M2とを備える。第1の共振キャビティR1は、第1のブラッグミラー構造M1と第1のIDT T1との間に形成され、第2の共振キャビティR2は、第2のブラッグミラー構造M2と第1のIDT T1との間に形成されている。第1の共振キャビティR1及び第2の共振キャビティR2は、表面弾性波の進行方向に沿って同じ長さg1であってもよく、又は異なる長さであってもよい。
【0071】
さらに、第2のSAWセンサデバイス32bは、第2のIDT T2と、第3のブラッグミラー構造M3と、第4のブラッグミラー構造M4とを備える。第3の共振キャビティR3は、第3のブラッグミラー構造M3と第2のIDT T2との間に形成され、第4の共振キャビティR4は、第4のブラッグミラー構造M4と第2のIDT T2との間に形成されている。第3の共振キャビティR3及び第4の共振キャビティR4は、同じ長さg2であってもよく、又は異なる長さであってもよい。長さg1と長さg2は、同じであってもよく、異なっていてもよい。ブラッグミラー構造M1~M4のうちの1つ又は複数は、上述したように、溝又はエッジ反射構造或いは3つ以下の電極を含む短い反射体で置き換えられてもよい。
【0072】
図3bに示す実施形態によると、弾性波センサアセンブリ30bの第1のSAWセンサデバイス31bの第1及び第2の共振キャビティR1、R2は、物理的及び/又は化学的な改質(図3bにおいて灰色で示されている)、例えば、上述の物理的及び/又は化学的な改質のうちの1つ、特に、メタライゼーション又はパッシベーション層を含む。例えば、第1のSAWセンサデバイス31bの第1及び第2の共振キャビティR1、R2は、同じ材料の金属層によって覆われている。一方、弾性波センサアセンブリ30bの第2のSAWセンサデバイス32bの第3の共振キャビティR3及び第4の共振キャビティR4の表面は、自由表面である。
【0073】
原理的には、第1のSAWセンサデバイス31bの第1のトランスデューサT1及び/又は第2のSAWセンサデバイス32bの第2のトランスデューサT2は、上述したように、追加の反射構造(例えば、ブラッグミラー構造)が2つの部分の間に配置された2つの部分に分割されてもよい。さらに、第1のトランスデューサT1の長さ軸に関して対称な2つの共振キャビティを設けるのではなく、第1のトランスデューサT1は、2つの共振キャビティR1、R2の左又は右に位置してもよく、この場合、その反射率は、追加の反射構造、例えば、ブラッグミラー構造(図2a~図2cに示す構成を参照)によって高めることができる。同様に、第2のSAWセンサデバイス32bの第2のトランスデューサT2は、2つの共振キャビティR3、R4の左又は右に位置してもよく、この場合、その反射率は、追加の反射構造、例えば、ブラッグミラー構造(図2a~図2cに示す構成を参照)によって高めることができる。
【0074】
表面弾性波センサデバイスの上述の実施形態はすべて、弾性波センサアセンブリ30bの第1のSAWセンサデバイス31b及び/又は第2のSAWセンサデバイス32bに実装することができる。特に、弾性波センサアセンブリ30bは、特にシリコン上に堆積させた、石英(SiO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ランガサイト(LGS)のような単結晶圧電材料、又は窒化アルミニウム(AlN)若しくは酸化亜鉛(ZnO)のような多結晶圧電材料上に構築されたSAWベースのセンサを含むことができ、さらには、必要に応じて、例えば酸化ケイ素層のような接合層によって例えばシリコンのような支持基板に接合された圧電材料、特に例えばタンタル酸リチウム又はニオブ酸リチウムなどの単結晶材料の層を含むピエゾ-オン-インシュレータ(POI)複合材料上に構築されたSAWベースのセンサを含むことができる。既に述べたように、いわゆるトラップリッチ層(例えば、多結晶シリコン)がシリコン支持基板との界面に存在し得る。
【0075】
上述したすべての実施形態は、限定を意図するものではなく、本発明の特徴及び利点を示す例としての役割を果たす。上述した特徴の一部又は全部は、異なる方法で組み合わせることもできることを理解されたい。
【0076】
本開示では、結晶カットは、IEEE176 1949 Standards on Piezoelectric Crystals, 1949 from 12-12-1949に従って定義されている。この規格では、SAW用途のための結晶カットは、3つの角度、すなわち、前記結晶の基準構成に従って結晶の回転を定義するφ及びθと、波が伝搬する方向、したがって前記波を送出することができるトランスデューサの位置を示す平面(φ、θ)内で定義される伝搬方向ψとによって一意に定義される。Y及びXは、結晶プレートの初期状態を定義するための基準と考えられる結晶軸を示す。第1の軸は、前記プレートに垂直な軸であり、第2の軸は、プレートの長さに沿っている。プレートは長方形と仮定され、その長さl、その幅w、及びその厚さtによって特徴付けられる。所与の(YX)軸系を考慮すると、長さlは結晶軸Xに沿っており、幅wはZ軸に沿っており、厚さtはY軸に沿っている。
【0077】
ここで、どの角度もゼロではないと仮定して、3回転又は3回転カットの一般的な場合を考える。この状況では、石英の結晶は、切断面(X、Z)に対して、基準系(X”、Y”、Z”)で定義された切断面(X”、Z”)を有し、ここで、X、Y、Zは石英の結晶軸であり、波の伝播方向は軸X’’’に沿って定義され、第1の切断面(X”、Z”)は、軸Z’が軸Zと同じである第1の基準系(X’、Y’、Z’)を定義するように、平面(X、Z)の軸Zを中心として角度φだけ回転することによって定義され、第2の切断平面(X’’、Z’’)は、軸X’’が軸X’と同じである第2の基準系(X’’、Y’’、Z’’)を定義するように、平面(X’、Z’)の軸X’を中心として角度θだけ回転することによって定義され、軸X’’’に沿った伝播方向は、軸Y’’を中心として平面(X’’、Z’’)において軸X’’の角度ψの回転によって定義される。
【0078】
以下、石英についていくつかの対称性規則について振り返る。石英は、クラス32の三方晶である。したがって、石英は、三元軸、すなわちZ軸によって特徴付けられ、その周りに以下の関係を確立することができる。
(YXw)/φ=(YXw)/φ+120°
他の2つの軸は二元であり、したがって、以下の対称関係が成り立つ。
(YXl)/θ=(YXl)/θ+180°、(YXt)/ψ=(YXt)/ψ+180°
単純な幾何学的理由から、以下の軸のセットが等価であることを示すのは容易である。
(YXwlt)/+φ/+θ/+ψ=(YXwlt)/-φ/+θ/-ψ
実際には、上面をφのプラス符号(表面波が伝搬すると仮定される面)で識別すると仮定すると、プレートの底面は、符号をマイナスに変えることによって得られる。対称操作によってψの符号が変わらないことを考慮すると、符号ψは、底部側のZ’’’の方向は変わらないと考えられるが、実際には180°回転している。したがって、上面の状況を回復するには、ψに180°の回転を加えることが必須であり、これは、実際には符号の変化と等価である。Z(φ=0°)を中心とした回転のない結晶カットについては、以下の対称性が有効であることに留意されたい。
【0079】
(YXlt)/+θ/+ψ=(YXlt)/+θ/-ψ。

図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
【国際調査報告】