(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】電気化学的水素ポンプ
(51)【国際特許分類】
C25B 9/77 20210101AFI20240214BHJP
C25B 1/02 20060101ALI20240214BHJP
C01B 3/00 20060101ALI20240214BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20240214BHJP
C25B 9/07 20210101ALI20240214BHJP
【FI】
C25B9/77
C25B1/02
C01B3/00 Z
C25B9/23
C25B9/07
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548628
(86)(22)【出願日】2022-01-31
(85)【翻訳文提出日】2023-10-04
(86)【国際出願番号】 IB2022050814
(87)【国際公開番号】W WO2022172120
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517316096
【氏名又は名称】エドワーズ バキューム リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ダンバー ザカリー ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4G140
4K021
【Fターム(参考)】
4G140AB03
4K021AA01
4K021CA01
(57)【要約】
第2の電気化学的水素ポンプ段に流体接続された第1の電気化学的水素ポンプ段を備える多段電気化学的水素ポンプが提供される。第1の電気化学ポンプ段は、水素ガスを含む第1のガス混合物を受け取り、第1のガス混合物から水素ガスを電気化学的に分離して第2のガス混合物を生成し、第2のガス混合物を第2の電気化学ポンプ段に出力するように構成されている。第2の電気化学的水素ポンプ段は、第1の電気化学的水素ポンプ段から第2のガス混合物を受け取り、第2のガス混合物から水素ガスを電気化学的に分離して第3のガス混合物を生成し、第3のガス混合物を出力するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第2の電気化学的水素ポンプ段に流体接続された第1の電気化学的水素ポンプ段を備える多段電気化学的水素ポンプであって、
前記第1の電気化学的ポンプ段は、水素ガスを含む第1のガス混合物を受け取り、前記第1のガス混合物から水素ガスを電気化学的に分離して第2のガス混合物を生成し、前記第2のガス混合物を前記第2の電気化学的ポンプ段に出力するように構成され、
前記第2の電気化学的水素ポンプ段は、前記第1の電気化学的水素ポンプ段から前記第2のガス混合物を受け取り、前記第2のガス混合物から水素ガスを電気化学的に分離して第3のガス混合物を生成し、前記第3のガス混合物を出力するように構成されている、多段電気化学的水素ポンプ。
【請求項2】
前記第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段の一方又は両方は、互いに並列に流体接続された複数の電気化学セルを備える、請求項1に記載の多段電気化学的水素ポンプ。
【請求項3】
前記第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段の一方又は両方の前記複数の電気化学セルは、スタックとして配置されている、請求項2に記載の多段電気化学的水素ポンプ。
【請求項4】
前記第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段の各々は、互いに並列に流体接続された複数の電気化学セルを備え、前記第1の電気化学的水素ポンプ段の前記複数の電気化学セルの各々の出力は、前記第2の電気化学的水素ポンプ段の前記複数の電気化学セルの各々の入力に流体接続されている、請求項2又は3のいずれかに記載の多段電気化学的水素ポンプ。
【請求項5】
前記第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段は、流体ラインを介して、又はバイポーラプレートによって画定された流路を介して、互いに流体接続されている、請求項1から4のいずれかに記載の多段電気化学的水素ポンプ。
【請求項6】
ハウジングをさらに備え、前記第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段は、前記ハウジング内に配置される、請求項1から5のいずれかに記載の多段電気化学的水素ポンプ。
【請求項7】
前記第2のガス混合物は、前記第1のガス混合物に比べて水素ガスの割合が多く、前記第3のガス混合物は、前記第2のガス混合物に比べて水素ガスの割合が多い、請求項1から6のいずれかに記載の多段電気化学的水素ポンプ。
【請求項8】
前記第1の混合ガスは、水素ガスと、1又は2以上の他の種類のガスとで構成され、前記1又は2以上の他の種類のガスは、窒素ガス、二酸化炭素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、一酸化炭素ガスからなる群から選択される、請求項1から7のいずれかに記載の多段電気化学的水素ポンプ。
【請求項9】
前記水素ガスは、プロチウム、ジュウテリウム、及びトリチウムの1又は2以上を含む、請求項1から8のいずれかに記載の多段電気化学的水素ポンプ。
【請求項10】
前記第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段に直列に流体接続された1又は2以上のさらなる電気化学的水素ポンプ段をさらに備える、請求項1から9のいずれかに記載の多段電気化学的水素ポンプ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の多段電気化学的水素ポンプを備える真空ポンプシステム。
【請求項12】
前記多段電気化学的水素ポンプは、真空ポンプに流体接続され、前記真空ポンプから前記第1の混合ガスを受け取るように構成されている、請求項11に記載の真空ポンプシステム。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の真空排気システムを備える極端紫外線リソグラフィシステム。
【請求項14】
前記第1のガス混合物は、水素ガスと窒素ガスから構成される、請求項13に記載の極端紫外リソグラフィシステム。
【請求項15】
水素ガスをポンプ送給するために請求項1から10のいずれかに記載の多段電気化学的水素ポンプの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的水素ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的水素ポンプは、様々な異なる産業(例えば、金属線アニーリング)で使用される既知のタイプのポンプである。電気化学的水素ポンプは、通常、1又は2以上の電気化学セルを使用して、混合ガスから水素ガスを分離することによって機能する。
【0003】
図1は、従来の電気化学的水素ポンプ100を示す概略図である(縮尺通りではない)。電気化学的水素ポンプ100は、ハウジング110、複数の電気化学セル120、第1の電流コレクタ130、第2の電流コレクタ140、入力ライン150、及び出力ライン160を備える。
【0004】
ハウジング110は、電気化学的水素ポンプ100の残りの構成要素が配置される空間を画定する。具体的には、複数の電気化学セル120、第1の電流コレクタ130、第2の電流コレクタ140、入力ライン150、及び出力ライン160は、ハウジング110によって画定される空間に配置される。
【0005】
複数の電気化学セル120の各々は、水素ガスを含む第1のガス混合物を受け取り、第1のガス混合物から水素ガスを電気化学的に分離し、分離された水素ガスを含む第2のガス混合物を出力するように構成されている。複数の電気化学セル120は、スタックに配置され、互いに並列に流体接続される。複数の電気化学セル120の各々は、陽極室122、陰極室124、及びイオン交換機構126を備える。各陽極室122は陽極を備え、入力ライン150から第1の混合ガスを受け取るように構成されている。各陰極室124は陰極を備え、第2の混合ガスを出力ライン160に出力するように構成されている。各イオン交換機構126は、それぞれの陽極室及び陰極室122、124の間に配置され、それぞれの陽極室及び陰極室122、124を互いから分離し、イオン交換機構126は、それぞれの陽極室及び陰極室122、124の間の流体の流れに対する部分的な障壁として作用するようになっている。各電気化学セル120のイオン交換機構126は、半透過性であり、水素イオンがそれぞれの陽極室122からそれぞれの陰極室124へ移動するために、選択的にそこを通過するのを許容するが、第1のガス混合物の他の成分がそこを通過するのを実質的に阻止するように構成されている。
【0006】
第1の混合ガスは、1又は2以上の他の種類のガスが混合された水素ガスで構成されている。第2の混合ガスは、電気化学セル120によって行われる電気化学的水素分離の産物であり、第1の混合ガスと比較して水素ガスの割合がはるかに高い。具体的には、第2のガス混合物は、ほぼ水素ガスのみで構成されるが、イオン交換機構126の不完全性などに起因して、何とかしてイオン交換機構126を横切って移動した1又は2以上の他の種類のガス(不純物又は汚染物質と呼ぶことができる)を依然として微小量だけ含む。
【0007】
陽極は、炭素微粒子に担持することができる又はそうではない場合もある白金ナノ粒子を含む触媒材料で作ることができる。同様に、陰極は、炭素微粒子に担持することができる又はそうではない場合もある白金ナノ粒子を含む触媒材料で作ることができる。イオン交換機構126は、限定されるものではないが、ナフィオン又はポリベンゾイミダゾール(PBI)などのイオン交換機構材料で作ることができる。しかしながら、構成要素が本明細書に記載される方法で機能することができる限り、何らかの適切な材料又は材料の組み合わせを使用できることを理解されたい。
【0008】
第1及び第2の電流コレクタ130、140は、複数の電気化学セル120の陽極及び陰極を電源(図示せず)に電気的に接続して、陽極の正電位及び陰極の負電位を維持する。
【0009】
入力ライン150は、電気化学的水素ポンプ100から離れた供給源(図示せず)から第1のガス混合物を受け取り、第1のガス混合物を複数の電気化学セル120の陽極室122に送るように構成されている。
出力ライン160は、複数の電気化学セル120の陰極室124から第2のガス混合物を受け取り、第2のガス混合物を電気化学的水素ポンプ100から離れた所望の場所(図示せず)に送るように構成されている。
【0010】
電気化学セル120の動作の背後にある正確な物理的/化学的機構は周知であり、簡潔にするために本明細書では詳述しない。しかしながら、簡単に説明すると、電気化学的水素ポンプ100の動作中、第1の混合ガス中の水素ガスは、陽極室122内の陽極で酸化され、水素イオンが生成される。その後、水素イオンは、イオン交換機構126を通って陰極室124に入り、陰極で還元反応を受けて水素ガスに改質される。イオン交換機構126は、水素イオンがそこを通過するのを選択的に許容するが、第1のガス混合物の他の成分がそこを通過するのを実質的に阻止するので、第2のガス混合物中の水素ガスの濃度は、第1のガス混合物中の水素ガスの濃度に比べて増加する。従って、水素ガスは、電気化学セル220によって、第1のガス混合物から効果的に選択的にポンプ送給される(又は分離される)。
【0011】
図2は、イオン交換機構126のより詳細な断面図を示す概略図である(縮尺通りではない)。イオン交換機構は、陽極、陰極、イオン交換膜126a、陽極触媒層126b、陰極触媒層126c、陽極ガス拡散層126d、及び陰極ガス拡散層126eを備える膜電極組立体(MEA)の一部を形成する。いくつかの実施形態では、陽極触媒層126bは、MEAの陽極である。いくつかの実施形態では、陰極触媒層126cは、MEAの陰極である。イオン交換膜126aは、陽極触媒層126bと陰極触媒層126cとの間に挟まれている。陽極触媒層126bは、イオン交換膜126aと陽極ガス拡散層126dとの間に挟まれている。陰極触媒層126cは、イオン交換膜126aと陽極ガス拡散層126eとの間に挟まれている。換言すれば、イオン交換膜126a、陽極触媒層126b、陰極触媒層126c、陽極ガス拡散層126d及び陰極ガス拡散層126eは、イオン交換機構として作用する層状スタックを形成する。MEAが機能する正確な方法は周知であり、簡潔にするために、本明細書ではこれ以上詳しく説明しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した従来の電気化学的水素ポンプ100を改良することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様では、第2の電気化学的水素ポンプ段に流体接続された第1の電気化学的水素ポンプ段を備える多段電気化学的水素ポンプが提供される。第1の電気化学ポンプ段は、水素ガスを含む第1のガス混合物を受け取り、第1のガス混合物から水素ガスを電気化学的に分離して第2のガス混合物を生成し、第2のガス混合物を第2の電気化学ポンプ段に出力するように構成されている。第2の電気化学的水素ポンプ段は、第1の電気化学的水素ポンプ段から第2のガス混合物を受け取り、第2のガス混合物から水素ガスを電気化学的に分離して第3のガス混合物を生成し、第3のガス混合物を出力するように構成されている。
【0014】
第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段の一方又は両方は、互いに並列に流体接続された複数の電気化学セルを備えることができる。
【0015】
第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段の一方又は両方の複数の電気化学セルは、スタックとして配置することができる。
【0016】
第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段の各々は、互いに並列に流体接続された複数の電気化学セルを備えることができる。
【0017】
第1の電気化学的水素ポンプ段の複数の電気化学セルの各々の出力は、第2の電気化学的水素ポンプ段の複数の電気化学セルの各々の入力に流体接続することができる。
【0018】
第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段は、流体ラインを介して、又はバイポーラプレートによって画定される流路を介して、互いに流体接続することができる。
【0019】
多段電気化学的水素ポンプは、ハウジングをさらに備えることができ、第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段は、ハウジング内に配置される。
【0020】
第2のガス混合物は、第1のガス混合物に比べて水素ガスの割合が多く、第3のガス混合物は、第2のガス混合物に比べて水素ガスの割合が多い。
【0021】
第1のガス混合物は、水素ガスと、1又は2以上の他の種類のガスとで構成することができ、1又は2以上の他の種類のガスは、窒素ガス、二酸化炭素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、一酸化炭素ガスからなる群から選択される。
【0022】
水素ガスは、プロチウム、ジュウテリウム、及びトリチウムのうちの1又は2以上を含むことができる。
【0023】
多段電気化学的水素ポンプは、第1及び第2の電気化学的水素ポンプ段に直列に流体接続された1又は2以上のさらなる電気化学的水素ポンプ段をさらに備えることができる。
【0024】
第2の態様では、第1の態様の多段電気化学的水素ポンプを備える真空ポンプシステムが提供される。
【0025】
多段電気化学的水素ポンプは、真空ポンプに流体接続され、真空ポンプから第1のガス混合物を受け取るように構成することができる。
【0026】
第3の態様では、第2の態様の真空ポンプシステムを備える極端紫外線リソグラフィシステムが提供される。
【0027】
第1のガス混合物は、水素ガスと窒素ガスから構成することができる。
【0028】
第4の態様では、第1の態様の多段電気化学的水素ポンプの使用が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】従来の電気化学的水素ポンプを示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図2】従来の電気化学的水素ポンプのイオン交換機構の断面を示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図3】多段電気化学的水素ポンプを示す概略図である(縮尺通りではない)。
【
図4】別の多段電気化学的水素ポンプを示す概略図である(縮尺通りではない)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図3は、一実施形態による多段電気化学的水素ポンプ200を示す概略図である(縮尺通りではない)。電気化学的水素ポンプ200は、ハウジング210、第1の電気化学的水素ポンプ段300、第2の電気化学的水素ポンプ段400、第1の電流コレクタ230、及び第2の電流コレクタ240を備える。
【0031】
ハウジング210は、電気化学的水素ポンプ200の残りの構成要素が配置される空間を画定する。具体的には、第1の電気化学的水素ポンプ段300、第2の電気化学的水素ポンプ段400、第1の電流コレクタ230、及び第2の電流コレクタ240は、ハウジング110によって画定される空間に配置される。
【0032】
第1の電気化学的水素ポンプ段300は、複数の第1の電気化学セル220a、第1の入力ライン250a、及び第1の出力ライン260aを備える。
複数の第1の電気化学セル220aの各々は、水素ガスを含む第1のガス混合物を受け取り、第1のガス混合物から水素ガスを電気化学的に分離し、分離された水素ガスを含む第2のガス混合物を出力するように構成されている。
【0033】
第1及び第2のガス混合物中の水素ガスは、水素の異なる同位体(すなわち、プロチウム、ジュウテリウム、トリチウム)のいずれか1つ又は何らかの組み合わせを含むことができる。
【0034】
複数の第1の電気化学セル220aは、スタックに配置され、互いに並列に流体接続される。複数の第1の電気化学セル220aの各々は、第1の陽極室222a、第1の陰極室224a、及び第1のイオン交換機構226aを備える。各第1の陽極室222aは陽極を備え、第1の入力ライン250aから第1の混合ガスを受け取るように構成されている。各第1の陰極室224aは陰極を備え、第2の混合ガスを第1の出力ライン260aに出力するように構成されている。各第1のイオン交換機構226aは、それぞれの第1の陽極室及び陰極室222a、224aの間に配置され、それぞれの第1の陽極室及び陰極室222a、224aを互いから分離し、第1のイオン交換機構226aは、それぞれの第1の陽極室及び陰極室222a、224aの間の流体の流れに対する部分的な障壁として作用するようになっている。各第1の電気化学セル220aの第1のイオン交換機構226aは、半透過性であり、水素イオンが、それぞれの第1の陽極室222aからそれぞれの第1の陰極室224aへ移動するために、選択的にそこを通過するのを許容するが、第1のガス混合物の他の成分がそこを通過するのを実質的に防止するように構成されている。各第1イオン交換機構226aは、
図2を参照して上述したイオン交換機構126と同じ構造を有する。
【0035】
第1の混合ガスは、1又は2以上の他の種類のガス(例えば、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、一酸化炭素)が混合された水素ガスで構成されている。例えば、第1の混合ガスは、50%の水素ガスと50%の1又は2以上の他の種類のガスとすることができる。第2のガス混合物は、第1の電気化学セル220aによって行われる電気化学的水素分離の産物であり、第1のガス混合物と比較して水素ガスの割合がはるかに高い。具体的には、第2のガス混合物は、ほぼ水素ガスのみで構成されるが、例えば第1のイオン交換機構226の選択的透過性の不完全性に起因して、何とかして第1のイオン交換機構226を横切って移動した1又は2以上の他の種類のガスを依然として微小量だけ含む。例えば、第2の混合ガスは、約100ppm(parts per million)の1又は2以上の他の種類のガス(すなわち、不純物又は汚染物質)を有し、残りは水素ガスである。
【0036】
第1の入力ライン250aは、電気化学的水素ポンプ200から離れた供給源(図示せず)から第1のガス混合物を受け取り、第1のガス混合物を複数の第1の電気化学セル220aの第1の陽極室222aに送るように構成されている。第1の入力ライン250aは、流体ラインであり、例えば、何らかの適切な材料から作られたパイプ又は管体である。
【0037】
第1の出力ライン260aは、複数の第1の電気化学セル220aの第1の陰極室224aから第2のガス混合物を受け取り、第2のガス混合物を第2の電気化学的水素ポンプ段400に送るように構成されている。第1の出力ライン260aは、流体ラインであり、例えば、何らかの適切な材料から作られたパイプ又は管体である。
【0038】
第2の電気化学的水素ポンプ段400は、複数の第2の電気化学セル220b、第2の入力ライン250b、及び第2の出力ライン260bを備える。
【0039】
複数の第2の電気化学セル220bの各々は、第2のガス混合物を受け取り、第2のガス混合物から水素ガスを電気化学的に分離し、分離された水素ガスを含む第3のガス混合物を出力するように構成されている。複数の第2の電気化学セル220bは、スタックに配置され、互いに並列に流体接続される。複数の第2の電気化学セル220bの各々は、第2の陽極室222b、第2の陰極室224b、及び第2のイオン交換機構226bを備える。各第2陽極室222bは陽極を備え、第2の入力ライン250bから第2の混合ガスを受け取るように構成されている。各第2の陰極室224bは陰極を備え、第3の混合ガスを第2の出力ライン260bに出力するように構成されている。各第2のイオン交換機構226bは、それぞれの第2の陽極室及び陰極室222b、224bの間に配置され、それぞれの第2の陽極室及び陰極室222b、224bを互いに分離し、第2のイオン交換機構226bは、それぞれの第2の陽極室及び陰極室222b、224bの間の流体の流れに対する部分的な障壁として作用するようになっている。各第2の電気化学セル220bの第2のイオン交換機構226bは、半透過性であり、水素イオンが、それぞれの第2の陽極室222bからそれぞれの第2の陰極室224bへ移動するために、選択的にそこを通過するのを許容するが、第2のガス混合物の他の成分がそこを通過するのを実質的に阻止するように構成されている。各第2のイオン交換機構226bは、
図2を参照して上述したイオン交換機構126と同じ構造を有する。
【0040】
第3のガス混合物は、第2の電気化学セル220bによって行われる電気化学的水素分離のさらなる段階の産物であり、第2のガス混合物と比較して水素ガスの割合がさらに高い。換言すれば、第3のガス混合物は、第2のガス混合物よりも水素ガスでないガスの割合がさらに低い。例えば、第3の混合ガスは、約40ppb(parts per billion)の不純物又は汚染物質を有し、残りは水素ガスである。
【0041】
第2の入力ライン250bは、第1の出力ライン260aに流体的に接続されている。第2の入力ライン250bは、第1の電気化学的水素ポンプ段300の第1の出力ライン160aから第2のガス混合物を受け取り、第2のガス混合物を複数の第2の電気化学セル220bの第2の陽極室222bに送るように構成されている。第2の入力ライン250bは、流体ラインであり、例えば、何らかの適切な材料から作られたパイプ又は管体である。
【0042】
第2の出力ライン260bは、複数の第2の電気化学セル220bの第2の陰極室224bから第3のガス混合物を受け取り、第3のガス混合物を電気化学的水素ポンプ200から離れた所望の場所(図示せず)に送るように構成されている。第2の出力ライン260bは、流体ラインであり、例えば、何らかの適切な材料から作られたパイプ又は管体である。
【0043】
第1及び第2の電流コレクタ230、240は、第1及び第2の電気化学セル220a、220bの負極及び正極を電源(図示せず)に電気的に接続し、負極の正電荷及び正極の負電荷を維持する。
【0044】
第1及び第2の電気化学セル220a、220bの動作の背後にある正確な物理的/化学的機構は周知であり、簡潔にするために本明細書では詳述しない。しかしながら、簡単に説明すると、電気化学的水素ポンプ200の作動中、第1の混合ガス中の水素ガスは、第1及び第2の陽極室222a、222bの陽極で酸化され、水素イオンが生成される。その後、水素イオンは、第1及び第2のイオン交換機構226a、226bを通って第1及び第2の陰極室224a、224bに入り、陰極で還元反応を受けて水素ガスに改質される。第1及び第2のイオン交換機構226a、226bは、水素イオンがそこを通過するのを選択的に許容するが、第1及び第2のガス混合物の他の成分がそこを通過するのを実質的に阻止するので、第2のガス混合物中の水素ガスの濃度は、第1のガス混合物中の水素ガスの濃度よりも増加し、第3のガス混合物中の水素ガスの濃度は、第2のガス混合物中の水素ガスの濃度よりも増加する。従って、水素ガスは、第1及び第2の電気化学セル220a、220bのそれぞれによって、第1及び第2のガス混合物から効果的に選択的にポンプ送給される(又は分離される)。
【0045】
図4は、別の実施形態による多段電気化学的水素ポンプ500を示す概略図である(縮尺通りでなはい)。
図4の実施形態は、流体ラインを使用するのではなく、陽極室及び陰極室が、各電気化学セルを挟むバイポーラプレート(図示せず)によって画定される(又はその中に機械加工される)流路及び孔を介して流体的に接続される点を除いて、
図3の実施形態と同じである。この実施形態では、各電気化学セルは、それぞれの一対のバイポーラプレートの間に挟まれており、各電気化学セルの陽極室及び陰極室の各々は、一対のバイポーラプレートのそれぞれの一方とその電気化学セルのイオン交換機構との間に画定されている。
【0046】
より具体的には、第1の電気化学的水素ポンプ段の第1の陽極室は、バイポーラプレートを貫通して延びる第1の流路510a及びバイポーラプレートのそれぞれの第1の孔520aを介して互いに流体連通している。第1の陽極室は、第1の流路510a及び第1の孔520aを介して、電気化学的水素ポンプ500から離れた供給源から第1の混合ガスを受け取るように構成されている。
【0047】
第2の電気化学的水素ポンプ段の第2の陰極室は、バイポーラプレートを貫通して延びる第2の流路510b及びバイポーラプレートのそれぞれの第2の孔520bを介して互いに流体連通している。第2の陰極室は、第2の孔520b及び第2の流路510bを介して、第3の混合ガスを電気化学的水素ポンプ500の外に出力するように構成されている。
【0048】
第1の電気化学的水素ポンプ段の第1の陰極室は、バイポーラプレートを貫通して延びる第3の流路510c及びバイポーラプレートのそれぞれの第3の孔520cを介して互いに流体連通している。第1の陰極室は、第3の孔520cを介して第3の流路510cに第2の混合ガスを出力するように構成されている。
【0049】
第2の電気化学的水素ポンプ段の第2の陽極室は、第3の流路510c及びそれぞれの第4の孔520dを介して互いに流体連通している。第2の陽極室は、第4の孔520dを介して第3の流路510cから第2の混合ガスを受け取るように構成されている。
【0050】
第1の電気化学的水素ポンプ段の第1の陰極室と第2の電気化学水素ポンプ段の第2の陽極室は、第3の流路510cを介して互いに流体連通している。第3の流路510cは、第2の混合ガスを第1の電気化学的水素ポンプ段の第1の陰極室から第2の電気化学的水素ポンプ段の第2の陽極室に送るように構成されている。従って、有利には、
図4の実施形態は、比較的コンパクトであり、上述の機能を実行するためのパイプなどの流体ラインを使用しない、2つの電気化学的水素ポンプ段を流体的に接続する方法を利用することになる。
このようにして、多段電気化学的水素ポンプが提供される。
【0051】
上述の多段電気化学的水素ポンプは、それを必要とする何らかの適切なシステムにおいて、水素ガスを供給するために使用することができる。例えば、上述の多段電気化学的水素ポンプは、極端紫外線(EUV)リソグラフィシステムの一部として使用することができる。具体的には、多段電気化学的水素ポンプは、EUVリソグラフィシステムの真空ポンプシステムの一部とすることができ、真空ポンプから第1のガス混合物を受け取り、EUVリソグラフィシステムで必要とされる場所に第3のガス混合物を出力するように構成されている。このような場所の例としては、セミクローズドループ水素リサイクルプロセスの一部として、EUVリソグラフィツールの入力部が挙げられる。EUVツールは大量の水素を必要とし、これは最終的には真空排気システムを通して(不純物と共に)排出される。不純物を除去し、多段電気化学ポンプで水素を加圧することで、通常は汚染廃棄物として廃棄されることになる水素をEUVリソグラフィツールに再利用することができる。EUVリソグラフィシステムでは、第1の混合ガスは、水素ガス及び窒素ガスで構成することができる。
【0052】
有利には、上述の多段電気化学的水素ポンプは、
図1によって示される従来の単段電気化学的水素ポンプと比較して、水素ガスの割合が高い最終混合ガスを出力する傾向がある。換言すれば、上述の多段電気化学的水素ポンプによって出力される最終混合ガス(すなわち、第3の混合ガス)は、水素ではないガス(すなわち、汚染物質又は不純物)の量が少ない傾向がある。例えば、
図3及び4を参照して上述したような多段電気化学的水素ポンプの出力は、40ppbの不純物を有する傾向があるのに対し、
図1を参照して上述したような単段電気化学的水素ポンプの出力は、100ppmの不純物を有する(すなわち、多段のものの出力の約2500倍)傾向があることが、試験により判明している。従って、上述の多段電気化学的水素ポンプは、従来の単段電気化学的水素ポンプよりもはるかに高純度の出力を有する傾向がある。そのため、多段電気化学ポンプの使用は、極端紫外線(EUV)リソグラフィシステムなど、非常に高純度の水素ガスが必要とされるシステムでの使用に特に有益である傾向がある。
【0053】
上述の実施形態では、多段電気化学的水素ポンプは、直列に接続された2つの電気化学的水素ポンプ段のみを有する。しかしながら、他の実施形態では、多段電気化学的水素ポンプによって出力されるガス中の不純物又は汚染物質の割合をさらに低減するために、直列に接続された3以上の電気化学的水素ポンプ段が使用される。
【符号の説明】
【0054】
100、200、500 電気化学的水素ポンプ
110、210 ハウジング
120、220a、220b 電気化学セル
122、222a、222b 陽極室
124、224a、224b 陰極室
126、226a、226b イオン交換機構
126a イオン交換膜
126b 陽極触媒層
126c 陰極触媒層
126d 陽極ガス拡散層
126e 陰極ガス拡散層
130、230 第1の電流コレクタ
140、240 第2の電流コレクタ
150、250a、250b 入力ライン
160、260a、260b 出力ライン
300 第1の電気化学的水素ポンプ段
400 第2の電気化学的水素ポンプ段
510a 第1の流路
510b 第2の流路
510c 第3の流路
520a 第1の孔
520b 第2の孔
520c 第3の孔
520d 第4の孔
【国際調査報告】