(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】補助前駆体、薄膜前駆体組成物、薄膜形成方法、及びこれから製造された半導体基板
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20240214BHJP
C23C 16/34 20060101ALI20240214BHJP
C23C 16/40 20060101ALI20240214BHJP
C23C 16/06 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C23C16/455
C23C16/34
C23C16/40
C23C16/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023550058
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 KR2022002564
(87)【国際公開番号】W WO2022177403
(87)【国際公開日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0023530
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0022728
(32)【優先日】2022-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】321001986
【氏名又は名称】ソウルブレイン シーオー., エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ジェ ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,チャン ボン
(72)【発明者】
【氏名】イ,スン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ジ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソン ウ
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA11
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA01
4K030BA18
4K030BA29
4K030BA38
4K030BA42
4K030CA04
4K030CA12
4K030HA01
4K030JA10
4K030LA15
(57)【要約】
本発明は、補助前駆体、薄膜前駆体組成物、これを用いた薄膜形成方法、及びこれから製造された半導体基板に関するものであって、薄膜前駆体化合物に反応安定性を示す、所定構造の化合物を補助前駆体として含む薄膜前駆体組成物を提供し、薄膜蒸着工程にて前記薄膜前駆体組成物を用いて副反応を抑制し、薄膜成長率を適切に制御し、さらに薄膜内の工程副産物を除去することにより、複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成する場合でも、段差被覆性(step coverage)、薄膜の厚さ均一性、及び比抵抗特性を大きく向上させることができ、腐食や劣化が低減され、薄膜の結晶性が向上し、薄膜の電気的特性が改善されるという効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される直鎖状、分岐状、環状 または芳香族化合物であり、薄膜前駆体化合物と混合して使用されることを特徴とすることを特徴とする、補助前駆体。
[化学式1]
AnBmXoYiZj
(前記化学式1において、前記Aは炭素またはケイ素であり、前記Bは水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数3~10のシクロアルキル、または炭素数1~10のアルコキシであり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)のうちの1種以上であり、前記Y及びZは独立して酸素、窒素、硫黄及びフッ素からなる群から選択される1種以上であり、互いに同じでなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記iとjは0~3の整数である。)
【請求項2】
前記補助前駆体は、前記補助前駆体に対する
1H-NMRスペクトラム対比、前記補助前駆体と薄膜前駆体化合物を1:1モル比で混合して加圧後、測定した
1H-NMRスペクトラムで新たに生成されたピーク頂点の積分値が0.1%未満を示す化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の補助前駆体。
【請求項3】
下記化学式1で表される直鎖状、分岐状、環状または芳香族化合物である補助前駆体、及び下記化学式2で表される薄膜前駆体化合物を含むことを特徴とする、薄膜前駆体組成物。
[化学式1]
AnBmXoYiZj
(前記化学式1において、前記Aは炭素またはケイ素であり、前記Bは、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数3~10のシクロアルキル、または炭素数1~10のアルコキシであり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(I)のうちの1種以上であり、前記Y及びZは独立して酸素、窒素、硫黄及びフッ素からなる群から選択される1種以上であり、互いに同じでなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記i及びjは0~3の整数である。)
[化学式2]
MxLy
(前記化学式2において、前記xは1~3の整数であり、前記MはLi、Be、C、P、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Te、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Th、Pa、U、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Pt、At及びTnからなる群から選択することがありえ、yは0~6の整数であり、前記Lはそれぞれ独立してH、C、N、O、F、P、S、Cl、BrまたはIであるか、またはH、C、N、O、F、P、S、Cl及びBrからなる群から選択される2種以上の組み合わせからなるリガンドである。)
【請求項4】
前記補助前駆体と前記薄膜前駆体化合物とは、1:99~99:1の重量比を有することを特徴とする、請求項1に記載の薄膜前駆体組成物。
【請求項5】
前記補助前駆体は、下記化学式3~化学式14で表される化合物の中から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項3に記載の薄膜前駆体組成物:
[化学式3~化学式14]
(前記化学式3~化学式14において、線は結合であり、別途の元素を記載しない、結合と結合とが交わる地点は炭素であり、前記炭素の原子価を満たす数の水素は省略されている。)
【請求項6】
前記薄膜前駆体組成物は、原子層蒸着(ALD)工程、プラズマ原子層蒸着(PEALD)工程、化学蒸着(CVD)工程またはプラズマ化学蒸着(PECVD)工程に使用されることを特徴とする、請求項3に記載の薄膜前駆体組成物。
【請求項7】
請求項3の薄膜前駆体組成物をチャンバー内に注入してローディング(loading)された基板の表面に吸着させる段階を含むことを特徴とする、薄膜形成方法。
【請求項8】
i) 前記薄膜前駆体組成物を気化して、チャンバーの内部にローディング(loading)された基板表面に吸着させる段階;
ii) 前記チャンバーの内部をパージガスで1次パージする段階;
iii) 前記チャンバーの内部に反応ガスを供給する段階;及び
iv) 前記チャンバーの内部をパージガスで2次パージする段階;を含むことを特徴とする、請求項7に記載の薄膜形成方法。
【請求項9】
前記薄膜前駆体組成物は、VFC方式、DLI方式またはLDS方式でALDチャンバー、CVDチャンバー、PEALDチャンバー、またはPECVDチャンバーの内部へと移送されることを特徴とする、請求項7に記載の薄膜形成方法。
【請求項10】
前記薄膜前駆体組成物を構成する補助前駆体と薄膜前駆体化合物とのチャンバー内への投入量(mg/cycle)の比は、1:0.1~1:20であることを特徴とする、請求項7に記載の薄膜形成方法。
【請求項11】
前記反応ガスは、還元剤、窒化剤または酸化剤であることを特徴とする、請求項7に記載の薄膜形成方法。
【請求項12】
前記薄膜形成方法は、蒸着温度が200~700℃であることを特徴とする、請求項7に記載の薄膜形成方法。
【請求項13】
前記薄膜は、酸化膜、窒化膜または金属膜であることを特徴とする、請求項7に記載の薄膜形成方法。
【請求項14】
前記薄膜は、2層または3層の多層構造を含むことを特徴とする、請求項13に記載の薄膜形成方法。
【請求項15】
請求項7の薄膜形成方法で製造されることを特徴とする、半導体基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助前駆体、これを含む薄膜前駆体組成物、これを用いた薄膜形成方法、及びこれから製造された半導体基板に関するものであり、より詳細には、副反応を抑制して薄膜内の不純物濃度を減少させるに伴い、薄膜の腐食や劣化を防ぎ、薄膜の電気的特性を向上させるのであって、薄膜の成長速度が適切に制御されることから、複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成する場合でも、段差被覆性(step coverage)、薄膜の厚さ均一性、及び比抵抗を向上させるだけでなく、薄膜前駆体と混合使用しても分解しない補助前駆体、これを含む薄膜前駆体組成物、これを用いた薄膜形成方法、及びこれから製造された半導体基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メモリ及び非メモリの半導体素子の集積度は日増しに増加しており、その構造がますます複雑になるにつれて様々な薄膜を基板に蒸着させる場合に薄膜の膜質と段差被覆性(step coverage)の重要性がますます増大している。
【0003】
前記半導体用薄膜は、窒化金属、窒化ケイ素、酸化金属、ケイ化金属などからなる。前記窒化金属の薄膜としては、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、AlN、TiSiN、TiAlN、TiBN、TiON、TiCNなどがあり、前記薄膜は、一般にドーピングされた半導体のシリコン層と層間配線材料として使用されるアルミニウム(Al)、銅(Cu)などとの拡散防止膜(diffusion barier)として使用される。ただし、タングステン(W)、モリブデン(Mo)金属薄膜などを基板に蒸着する際には、接着層(adhesion layer)として用いられる。
【0004】
基板に蒸着された薄膜が、優れた均一な物性を得るためには、形成された薄膜の高い段差被覆性が必須である。したがって、気相反応を主として活用するCVD(chemical vapor deposition)工程よりも、表面反応を活用するALD(atomic layer deposition)工程が活用されているのであるが、100%の段差カバレッジの具現のためには、依然として問題が存在する。
【0005】
さらに、段差被覆性を向上させるための一つの方法として薄膜の成長速度を下げる方法が提案されているが、薄膜の成長速度を下げるために蒸着温度を低下させる場合、薄膜内の炭素や塩素のような不純物の残留量が増加して膜質が大きく落ちる問題がある。
【0006】
また、前記窒化金属の中で代表的な窒化チタン(TiN)を蒸着させるために用いられる四塩化チタン(TiCl4)の場合、製造された薄膜内の塩化物のような工程副産物が残留するようになり、アルミニウム等のような金属の腐食を誘発して不揮発性副産物が生成される問題で膜質の劣化を招く。
【0007】
したがって、複雑な構造の薄膜形成が可能であり、不純物の残留量が低く、層間配線材料を腐食させない薄膜の形成方法、及び、これから製造された半導体基板についての開発が必要であり、128段、256段、512段等へと増加するVNANDの積層数による高アスペクト比(Aspect ratio)にも、均一な厚さと段差被覆性を提供できるのであって、薄膜前駆体と混合使用しても分解が難しく効果の発現が卓越した補助前駆体に対する開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第2006-0037241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、低いバンドギャップを提供し、これを含む薄膜の膜質が飛躍的に向上され、副反応を抑制して薄膜成長率を適切に調節し、薄膜内の工程副産物を除去することにより腐食や劣化を防止するのであって、複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成する場合でも、段差被覆性(step coverage)、薄膜の厚さ均一性、及び比抵抗特性を大きく向上させるだけでなく、薄膜前駆体と混合使用しても分解されない補助前駆体、これを用いた薄膜形成方法、及び、これから製造された半導体基板を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、薄膜の結晶性を向上させることにより、薄膜の密度、比抵抗などの電気的特性を改善することを目的とする。
【0011】
本発明における前記目的及び他の目的は、下記に説明された本発明によってすべて達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明は、下記化学式1で表される直鎖状、分岐状、環状または芳香族化合物であり、薄膜前駆体化合物と混合して使用されることを特徴とする補助前駆体を提供する。
【0013】
[化学式1]
AnBmXoYiZj
【0014】
(前記化学式1において、前記Aは炭素またはケイ素であり、前記Bは水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数3~10のシクロアルキル、または炭素数1~10のアルコキシであり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びアイオジン(I)のうちの1種以上であり、前記YとZは独立して酸素、窒素、硫黄及びフルオリンからなる群から選択された1種以上であり、互いに等しくなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記i及びjは0~3の整数である。)
【0015】
前記補助前駆体は、前記補助前駆体に対する1H-NMRスペクトラムの対比で、前記補助前駆体と薄膜前駆体化合物とを1:1モル比で混合して加圧した後に測定した1H-NMRスペクトラムにて、新たに生成されたピークについてのピークの積分値が0.1%未満を示す化合物であり得る。
【0016】
また、本発明は、下記化学式1で表される直鎖状、分岐状、環状または芳香族の化合物である補助前駆体;及び、下記化学式2で表される薄膜前駆体化合物を含むことを特徴とする薄膜前駆体組成物を提供する。
【0017】
[化学式1]
AnBmXoYiZj
【0018】
(前記化学式1において、前記Aは炭素またはケイ素であり、前記Bは、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数3~10のシクロアルキル、または炭素数1~10のアルコキシであり、前記Xは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(iodine)(I)のうちの1種以上であり、前記YとZは、独立して酸素、窒素、硫黄及びフッ素(fluorine)からなる群から選択される1種以上であり、互いに等しくなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記i及びjは0~3の整数である。)
【0019】
[化学式2]
MxLy
【0020】
(前記化学式2において、前記xは1~3の整数であり、MはLi、Be、C、P、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Te、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Th、Pa、U、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Pt、At及びTnからなる群から選択さうるのであって、yは0~6の整数であり、Lは、それぞれ独立してH、C、N、O、F、P、S、Cl、BrまたはIであるか、またはH、C、N、O、F、P、S、Cl及びBrからなる群から選択された2種以上の組み合わせからなるリガンドである。)
【0021】
前記補助前駆体と前記薄膜前駆体化合物とは、1:99~99:1の重量比を有するのであり得る。
【0022】
前記補助前駆体は、下記化学式3~化学式14で表される化合物の中から選択された1種以上であり得る。
【0023】
【0024】
(前記化学式3~化学式14において、線は結合であり、別途の元素を記載しない、結合と結合とが交わる地点は、炭素であり、前記炭素の原子価を満たす数の水素は省略された。)
【0025】
前記薄膜前駆体組成物は、原子層蒸着(ALD)工程、プラズマ原子層蒸着(PEALD)工程、化学蒸着(CVD)工程、またはプラズマ化学蒸着(PECVD)工程に使用することができる。
【0026】
また、本発明は、前述した薄膜前駆体組成物をチャンバー内に注入して、ローディング(loading)された基板の表面に吸着させる段階を含むことを特徴とする薄膜形成方法を提供する。
【0027】
また、本発明は、
i) 前記薄膜前駆体組成物を気化して、チャンバー内にローディングされた基板の表面に吸着させる段階;
ii) 前記チャンバー内部をパージガスで1次パージする段階;
iii) 前記チャンバー内部に反応ガスを供給する段階;及び
iv) 前記チャンバー内部をパージガスで2次パージする段階;を含みうる。
【0028】
前記薄膜前駆体組成物は、VFC方式、DLI方式またはLDS方式でALDチャンバー、CVDチャンバー、PEALDチャンバー、またはPECVDチャンバーの内側へと移送され得る。
【0029】
前記薄膜前駆体組成物を構成する、補助前駆体と薄膜前駆体化合物とのチャンバー内の投入量(mg/cycle)比は、1:0.1~1:20であり得る。
【0030】
前記反応ガスは、還元剤、窒化剤または酸化剤であり得る。
【0031】
前記薄膜形成方法は、蒸着温度が200~700℃であり得る。
【0032】
前記薄膜は、酸化膜、窒化膜または金属膜であり得る。
【0033】
前記薄膜は、2層または3層の多層構造を含みうる。
【0034】
また、本発明は、前述した薄膜形成方法により製造されることを特徴とする半導体基板を提供する。
【0035】
前記の半導体基板は、低抵抗金属ゲートインターコネクト(low resistive metal gate interconnects)、高アスペクト比3D金属-絶縁体-金属(MIM)キャパシタ(high aspect ratio 3D metal-insulator-metal capacitor)、DRAMトレンチキャパシタ(DRAM trench capacitor)、3Dゲート-オールアラウンド(GAA; Gate-All-Around)または3D NANDであり得る。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、蒸着速度を調節して薄膜成長率を適切に調節し、複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成する場合でも、段差被覆性と膜質を向上させる補助前駆体を提供する効果がある。
【0037】
また、薄膜前駆体化合物に対して反応安定性を表すため、薄膜形成時の薄膜前駆体化合物の吸着を妨げずに工程副産物が減少し、腐食や劣化を防ぎ、薄膜の結晶性を改善させることにより、薄膜の比抵抗特性及び電気特性を改善させる、薄膜形成用補助前駆体を提供することができるのであって、さらには、これを用いた薄膜形成方法、及び、これから製造された半導体基板を提供するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明の補助前駆体と薄膜前駆体化合物とを混合する場合の、補助前駆体の分解の如何を確認する実験結果を示した図であって、実施例1で使用する補助前駆体の単独についての
1H-NMRスペクトラムを上部図面に示し、補助前駆体と薄膜前駆体化合物との混合物についての
1H-NMRスペクトラムを下部図面に示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本記載の補助前駆体、薄膜前駆体組成物、これを用いた薄膜形成方法、及びこれから製造された半導体基板を詳細に説明する。
【0040】
本発明者らは、チャンバーの内部にローディングされた基板の表面に、薄膜前駆体化合物を吸着させる場合に、前記薄膜前駆体化合物に、分解しない特定の構造を有する補助前駆体を一緒に吸着させる場合、薄膜前駆体化合物の吸着を妨げることなく、工程副産物を減少させることから、腐食や劣化を防ぎ、薄膜の結晶性を改善させることにより、薄膜の比抵抗特性及び電気的特性が大きく改善されるという結果を確認した。また、チャンバーの内部にローディングされた基板の表面に、薄膜前駆体化合物と、特定の補助前駆体とを含む組成物を吸着させた場合には、予想とは異なり、チャンバーの内部にローディングされた基板の表面に、薄膜前駆体化合物を先に吸着させた後で、前記補助前駆体を吸着させた場合、または、チャンバー内部にローディングされた基板の表面に、補助前駆体を先に吸着させた後で、薄膜前駆体化合物を吸着させた場合よりも、比抵抗特性が大きく改善されるという結果を確認したのであって、これに基づいて研究に邁進することで本発明を完成するに至った。
【0041】
前記薄膜形成方法は、好ましい一実施例として、i) 前記補助前駆体と薄膜前駆体混合物とを含む薄膜前駆体組成物を、気化して、チャンバー内のローディング基板の表面に吸着させる。ii) 前記チャンバーの内部をパージガスで1次パージする段階;iii) 前記チャンバー内部に反応ガスを供給する段階;及びiv) 前記チャンバーの内部をパージガスで2次パージする段階;を含みうるのであって、このような場合、薄膜成長率が制御され、薄膜形成時の蒸着温度が高くなっても、生成される工程副産物が効果的に除去されて、薄膜の比抵抗が改善され、段差被覆性(step coverage)が大きく向上するという利点がある。
【0042】
好ましいまた他の実施例として、前記薄膜形成方法は、i) 前記補助前駆体と薄膜前駆体化合物をそれぞれ気化させて、チャンバーの内部にローディングされた基板表面に吸着させる段階;ii) 前記チャンバーの内部をパージガスで1次パージする段階;iii) 前記チャンバーの内部に反応ガスを供給する段階;及びiv) 前記チャンバーの内部をパージガスで2次パージする段階;を含みうるのであって、このような場合、薄膜成長率が制御されるのであって、薄膜形成時の蒸着温度が高くなっても、生成される工程副産物が効果的に除去されることから薄膜の比抵抗が改善され、段差被覆性(step coverage)が大きく向上するという利点がある。
【0043】
前記補助前駆体及び薄膜前駆体化合物を含む薄膜前駆体組成物は、独立して、好ましくはVFC方式、DLI方式またはLDS方式でチャンバー内に移送されうるのであって、より好ましくは、LDS方式でチャンバー内に移送されるのである。
【0044】
前記補助前駆体及び薄膜前駆体化合物を含む薄膜前駆体組成物は、好ましくは原子層蒸着(ALD)工程、プラズマ原子層蒸着(PEALD)工程、化学蒸着(CVD)工程、またはプラズマ化学蒸着(PECVD)工程に用いられうるのであって、より好ましくは、原子層蒸着(ALD)工程、またはプラズマ化学蒸着(PECVD)工程に用いられるのである。
【0045】
前記薄膜前駆体化合物は、下記化学式2で表される薄膜前駆体化合物でありうるのであって、この場合、本発明が目的とする効果が良好に発現されるのであり、薄膜の比抵抗が改善されるという利点がある。
【0046】
[化学式2]
MxLy
【0047】
(前記化学式2において、前記xは1~3の整数であり、前記Mは、Li、Be、C、P、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Te、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Th、Pa、U、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Pt、At及びTnからなる群から選択されうるのであって、yは0~6の整数であり、前記Lは、それぞれ独立して、H、C、N、O、F、P、S、Cl、BrまたはIであるか、または、H、C、N、O、F、P、S、Cl及びBrからなる群から選択された2種以上の組み合わせからなるリガンドである。)
【0048】
また、本発明の薄膜前駆体組成物は、下記化学式1で表される、直鎖状、分岐状、環状または芳香族化合物である補助前駆体;及び、下記化学式2で表される薄膜前駆体化合物を含むことを特徴とするが、この場合、本発明が目的とする効果が良好に発現され、薄膜の比抵抗が改善されるという利点がある。
【0049】
[化学式1]
AnBmXoYiZj
【0050】
(前記化学式1において、前記Aは炭素またはケイ素であり、前記Bは、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数3~10のシクロアルキル、または炭素数1~10のアルコキシであり、前記Xは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びヨウ素(iodine)(I)のうちの1種以上であり、前記のYとZは、独立して酸素、窒素、硫黄及びフッ素(fluorine)からなる群から選択される1種以上であり、互いに同一でなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記iとjは0~3の整数である。)
【0051】
[化学式2]
MxLy
【0052】
(前記化学式2において、前記xは1~3の整数であり、前記Mは、Li、Be、C、P、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Te、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Th、Pa、U、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Pt、At及びTnからなる群から選択されうるのであって、yは0~6の整数であり、前記Lは、それぞれ独立して、H、C、N、O、F、P、S、Cl、BrまたはIであるか、または、H、C、N、O、F、P、S、Cl及びBrからなる群から選択された2種以上の組み合わせからなるリガンドである。)
【0053】
前記補助前駆体と前記薄膜前駆体化合物とは、1:99~99:1の重量比、1:90~90:1の重量比、1:85~85:1の重量比、または1:80~80:1の重量比を有するのであり得る。
【0054】
前記補助前駆体は、一実施例として、前記化学式1において、前記Aは炭素またはケイ素であり、前記Bは水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数3~10のシクロアルキル、または炭素数1~10のアルコキシであり、前記Xは、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(iodine)(I)であり、前記のYとZは、独立して、酸素、窒素、硫黄及びフッ素(fluorine)からなる群から選択された1種以上であり、互いに同じでなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記iとjは0である。)で表される直鎖状、分岐状または環状化合物でありうるのであり、この場合、本発明が目的とする効果が良好に発現され、改善された比抵抗を示すという利点がある。
【0055】
前記Xは、ハロゲン元素であり、好ましくはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素(iodine)でありうるのであり、より好ましくは塩素または臭素でありえ、この範囲内で工程副産物の減少及び基板への吸着力がより優れた利点がある。また、前記Xは一例として塩素でありえ、薄膜結晶性が改善され副反応を抑制し、工程副産物の減少効果に優れた利点がある。
【0056】
前記化学式1において、Xは他の好ましい一例として、ヨウ素(iodine)または臭素でありえ、この場合、低温蒸着が要求される工程により適した利点がある。
【0057】
前記補助前駆体は、好ましい一実施例として、前記化学式1において、前記Aは炭素であり、前記Bは水素または炭素数1~10のアルキルであり、前記Xは臭素(Br)またはヨウ素(iodine)(I)であり、前記のY及びZは、独立して、酸素、窒素、硫黄及びフッ素(fluorine)からなる群から選択された1種以上であり、互いに同じでなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記iとjは0である。)で表される直鎖状、分岐状または環状の化合物でありうるのであり、この場合に、本発明が目的とする効果が良好に発現され、改善された比抵抗を示すという利点がある。
【0058】
前記補助前駆体は、好ましい一実施例として、前記化学式1において、前記Aは炭素であり、前記Bは水素または炭素数1~10のアルキルであり、前記Xは臭素(Br)またはヨウ素(iodine)(I)であり、前記Y及びZは独立して酸素、窒素、硫黄及びフルオリンからなる群から選択された1種以上であり、互いに等しくなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記iとjは0である。)で表される直鎖状、分岐状又は環状の化合物でありうるのであり、この場合に、本発明が目的とする効果が良好に発現され、改善された比抵抗を示すのであり、薄膜結晶性が改善されて副反応を抑制することか、工程副産物の減少効果が、より優れるという利点がある。
【0059】
前記補助前駆体は、好ましい他の実施例として、電子受容末端基を含む炭化水素化合物を含み、前記炭化水素化合物は、前記薄膜前駆体化合物との反応性のない物質でありうるのであって、前記補助前駆体を用いたときに、薄膜前駆体化合物の吸着を妨げずに工程副産物が減少されるに伴い、蒸着速度を調節して薄膜成長率を適切に下げることから、複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成する場合でも段差被覆性と膜質を向上させることができ、腐食や劣化を防ぎ、薄膜の結晶性を改善させることにより、薄膜の比抵抗特性及び電気的特性を改善させることができる。
【0060】
前記炭化水素化合物は、好ましくは、アルカン及びシクロアルカンからなる群から選択された1種以上を電子受容末端基で置換した構造を有する化合物でありうるのであって、このような場合、反応性及び溶解度が低く水分管理が容易でありながらも、薄膜形成時、高アスペクト比(aspect ratio)のトレンチ構造にて段差被覆性(step coverage)が向上されるという利点がある。
【0061】
より好ましい例として、前記炭化水素化合物は、C1~C10のアルカン(alkane)、またはC3~C10のシクロアルカン(cycloalkane)を含みうるのであり、好ましくは、C3~C10のシクロアルカン(cycloalkane)であり、この場合、反応性及び溶解度が低く、水分管理が容易であるという利点がある。
【0062】
本記載において、C1、C3などは炭素数を意味する。
【0063】
前記シクロアルカンは、好ましくはC3~C10のモノシクロアルカンでありうるのであり、前記モノシクロアルカンのうち、シクロペンタン(cyclopentane)が常温で液体であり、最も蒸気圧が高く、気相蒸着工程にて好ましいが、これに限定されるものではない。
【0064】
本発明で使用する「電子受容末端基」は、他に特定しない限り、薄膜前駆体化合物と結合する場合に膜質の改善を提供することができる作用基(官能基;functional group)を指称する。
【0065】
前記電子受容末端基は、一例として、オルソ-指向性及びパラ-指向性の不活性化基(deactivation group)であり得る。
【0066】
前記用語「オルソ-指向性及びパラ-指向性の不活性化基」は、他に特定しない限り、ベンゼン環を有する前駆体化合物を使用する場合、そのオルソ位置、パラ位置に指向性を示す不活性化基を指称する。
【0067】
電子受容末端基は、他の例として、電気陰性度(electronegativity)が2.0~4.0、好ましくは電気陰性度が2.0~3.0である電子受容体(electron accepter)であり得る。
【0068】
前記電気陰性度は、異なるように特定しない限り、ベンゼン環を有さない前駆体化合物を用いる場合、当該電気陰性度の範囲を満たす作用基を有するのであり得る。
【0069】
前記電子受容末端基は、具体的な例でハロゲン元素として、好ましくはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素(iodine)でありうるのであって、より好ましくは臭素またはヨウ素(iodine)でありうるのであり、この範囲内で、工程副産物の減少及び段差被覆性の改善の効果が、より優れるという利点がある。また、前記Xは、一例として、ヨウ素(iodine)でありうるのであって、この場合、低温蒸着が要求される工程に、より適合した利点がある。特に、前記Xは、ヨウ素を1種使用しうるのであって、この場合、不純物の含量を過度に増やさず、薄膜の膜質を改善するのに、より有効的である。
【0070】
前記炭化水素化合物と前記薄膜前駆体化合物の反応性は、前記炭化水素化合物と薄膜前駆体化合物とを混合する前に測定したH-NMRスペクトラムと、1:1モル比の混合物を1時間加圧して測定したH-NMRスペクトラム(spectrum)とを対比して生成されたNMRのピークの積分値を不純物含量とするとき、前記不純物含有量(%)が0.1%未満で表わされることから、補助前駆体を使用したときに、薄膜前駆体化合物の吸着を妨げずに工程副産物が減少されるとともに、蒸着速度を調節して薄膜成長率を適切に下げ、複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成する場合でも段差被覆性と膜質を向上させることができるのであって、腐食や劣化を防ぎ、薄膜の結晶性を改善させることにより、薄膜の比抵抗特性及び電気的特性を改善させることができる。
【0071】
前述した反応性により、前記補助前駆体は、薄膜前駆体化合物の粘度や蒸気圧を容易に調節するとともに、薄膜前駆体化合物の挙動を妨げないという利点がある。
【0072】
前述の反応性を示すとともに、前記電子受容末端基を含む炭化水素化合物は、一例として、ハロゲン置換された直鎖もしくは分岐鎖のアルカン(alkane)化合物またはシクロアルカン(cycloalkane)化合物であり得る。
【0073】
具体例としては、1-ヨードブタン(1-iodo-butane)、2-ヨードブタン(2-iodo-butane)、2-ヨード3-メチルブタン(2-iodo-3-methyl butane)、3-ヨード2,4-ジメチルペンタン、シクロヘキシルアイオダイド(cyclohexyl iodide)、シクロペンチルアイオダイド(cyclopentyl iodide)、1-ブロモブタン(1-bromo-butane)、2-ブロモブタン(2-bromo-butane)、2-ブロモ-3-メチルブタン(2-bromo-3-methyl butane)、3-ブロモ-2,4-ジメチルペンタン(3-bromo-2,4-dimethyl pentane)、シクロヘキシルブロマイド(cyclohexyl bromide)、及びシクロペンチルブロマイド(cyclopentyl bromide)からなる群から選択された1種以上であり、好ましくは1-ヨードブタン(1-iodo-butane)及び2-ヨードブタン(2-iodo-butane)からなる群から選択された1種以上であり、この場合、薄膜前駆体化合物の吸着を妨げずに補助前駆体として基板の表面を効果的に保護(protection)し、工程副産物を効果的に除去するという利点がある。
【0074】
先に検討したように、前記炭化水素化合物は、ハロゲン置換された炭化水素でありえ、具体的な例としては、下記化学式3~化学式14で表される化合物が挙げられる。ここで、化学式3~化学式14で表される化合物は、互いに独立して選択されるか、またはそれらを混合して使用することができる。
【0075】
【0076】
(前記化学式3~化学式14において、線は結合であり、別途の元素を記載しない、結合と結合とが交わる地点は炭素であり、前記炭素の原子価を満たす数の水素は省略された。)
【0077】
前記補助前駆体は、好ましくは、原子層蒸着(ALD)工程、プラズマ原子層蒸着(PEALD)工程、化学蒸着(CVD)工程またはプラズマ化学蒸着(PECVD)工程に用いられるものであり、この場合、薄膜前駆体化合物の吸着を阻害することなく、補助前駆体として基板の表面を効果的に保護(protection)し、工程副産物を効果的に除去する利点がある。
【0078】
前記補助前駆体は、好ましくは常温(22℃)で液体であり、密度が0.8~2.5g/cm3または0.8~1.7g/cm3であり、蒸気圧(20℃)が0.1~300mmHgまたは1~300mmHgであり、水における溶解度(25℃)が200mg/L以下でありえ、この範囲内で段差被覆性、薄膜の厚さ均一性及び膜質改善に優れた効果がある。
【0079】
より好ましくは、前記補助前駆体は密度が0.75~2.0g/cm3または0.8~1.7g/cm3であり、蒸気圧(20℃)が1~260mmHgであり、水における溶解度(25℃)が160mg/L以下でありうるのであり、この範囲内で、段差被覆性、薄膜の厚さ均一性及び膜質改善に優れた効果がある。
【0080】
また、本発明の薄膜形成方法は、更に別の好ましい例として、前記薄膜前駆体組成物をALDチャンバー内に注入して、ローディング(loading)された基板の表面に吸着させる段階を含むことを特徴とし、この場合、薄膜成長率が適切に上昇し、薄膜形成時に生成する工程副産物が効果的に除去され、薄膜内の不純物が減少し、結晶性が大きく向上するという利点がある。
【0081】
前記薄膜形成方法は、反応ガスとして還元剤、窒化剤または酸化剤を用いる。
【0082】
前記薄膜形成方法は、一例として、蒸着温度が200~700℃であり、好ましくは250~500℃であり、具体的な例としては、250~450℃、250~320℃、380~420℃、または400~450℃であり、この範囲内で薄膜比抵抗、ステップカバレッジなどが大きく改善される利点がある。
【0083】
また、本発明の薄膜前駆体組成物は、下記化学式1で表される直鎖状、分岐状、環状または芳香族化合物である補助前駆体;及び下記化学式2で表される薄膜前駆体化合物でありえ、この場合、本発明が目的する効果がうまく発現され、高い比抵抗特性を表す利点がある。
【0084】
[化学式1]
AnBmXoYiZj
【0085】
(前記Aは炭素またはケイ素であり、前記Bは水素または炭素数1~10のアルキルであり、前記Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)及びアイオジン(I)のうちの1種以上であり、前記YとZは独立して酸素、窒素、硫黄及びフルオリンからなる群から選択された1種以上であり、互いに等しくなく、前記nは1~15の整数であり、前記oは1以上の整数であり、mは0~2n+1であり、前記iとjは0~3の整数である。)
【0086】
[化学式2]
MxLy
【0087】
(前記化学式2において、前記xは1~3の整数であり、前記MはLi、Be、C、P、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、As、Se、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Te、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Ce、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Th、Pa、U、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi、Pt、At及びTnからなる群から選択されることがありえ、yは0~6の整数であり、前記Lはそれぞれ独立してH、C、N、O、F、P、S、Cl、BrまたはIであるか、またはH、C、N、O、F、P、S、Cl及びBrからなる群から選択された2種以上の組み合わせからなるリガンドである。)
【0088】
前記化学式2において、前記Mは、チタン、タングステン、モリブデン、ケイ素、ハフニウム、ジルコニウム、インジウムまたはゲルマニウムであり、好ましくはチタン、タングステン、モリブデンまたはケイ素である。
【0089】
前記化学式2において、Lは、ハロゲン元素であり、好ましくはフッ素、塩素、臭素またはアイオジンでありえ、より好ましくは塩素または臭素でありうるのであり、この範囲内で、工程副産物減少及び基板への吸着力がさらに優れるという利点がある。また、前記Lは一例として塩素でありうるのであって、この場合、薄膜結晶性が改善され、副反応を抑制して工程副産物の低減効果がさらに優れるという利点がある。
【0090】
前記化学式2で表される化合物は、ハロゲン置換されたターシャリーアルキル化合物であり、具体的な例としてテトラクロロチタン、2-クロロ3メチルチタン、2-クロロ-2メチルチタン、テトラブロモチタン、3-ブロモ-3メチルチタン、3-ブロモ-3メチルチタン、テトラクロロチタン、2-クロロ3メチルタングステン、2-クロロ-2メチルタングステン、テトラブロモタングステン、3-ブロモ-3メチルタングステン、3-ブロモ-3メチルタングステン、テトラクロロモリブデナム(モリブデン)、2-クロロ3メチルモリブデナム、2-クロロ-2メチルモリブデナム、テトラブロモモリブデナム、3-ブロモ-3メチルモリブデナム、3-ブロモ-3メチルモリブデナム、テトラクロロハフニウム、2-クロロ3メチルハフニウム、2-クロロ-2メチルハフニウム、テトラブロモハフニウム、3-ブロモ-3メチルハフニウム、3-ブロモ-3メチルハフニウム、テトラクロロハフニウム、2-クロロ3メチルジルコニウム、2-クロロ-2メチルジルコニウム、テトラブロモジルコニウム、3-ブロモ-3メチルジルコニウム、3-ブロモ-3メチルジルコニウム、テトラクロロインジウム、2-クロロ3メチルインジウム、2-クロロ-2メチルインジウム、テトラブロモインジウム、3-ブロモ-3メチルインジウム、または3-ブロモ-3メチルインジウムからなる群から選択された1種以上であり、この場合、工程副産物の除去効果が大きく、段差被覆性の改善及び基板への吸着効果に優れる。
【0091】
本発明で使用される用語「導電性化合物」は、他に特定しない限り、電子ドナーまたはアクセプターを有する物質は導電性を有し、これらの構造及び電荷移動の酸化状態によって影響を及ぼし得る物質を指称する。
【0092】
前記化学式2で表される化合物または導電性化合物は具体的な例を挙げて記載したが、これに限定するものではなく、通常ALD(原子層の蒸着方法)に使用される薄膜前駆体化合物である場合、特別に制限されない。
【0093】
具体例としては、金属膜薄膜前駆体化合物、金属酸化膜薄膜前駆体化合物、金属窒化膜薄膜前駆体化合物及びシリコン窒化膜薄膜前駆体化合物からなる群から選択された1種以上を含むことがありえ、前記金属は、好ましくはタングステン、コバルト、クロム、アルミニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、ゲルマニウム、ランタン族元素、アクチニウム族元素、ガリウム、タンタル、ジルコニウム、ルテニウム、銅、チタン、ニッケル、イリジウム、モリブデン、白金、ルテニウム及びイリジウムからなる群から選択された1種以上を含むことがあり得る。
【0094】
前記金属膜前駆体、金属酸化膜前駆体及び金属窒化膜前駆体は、それぞれ一例として、金属ハロゲン化物、金属アルコキシド、アルキル金属化合物、金属アミノ化合物、金属カルボニル化合物、及び置換または無置換シクロペンタジエニル金属化合物などからなる群から選択された1種以上であり得るが、これに制限されるものではない。
【0095】
前記金属酸化物膜前駆体は、一例として、PtO、PtO2、RuO2、IrO2、SrRuO3、BaRuO3及びCaRuO3からなる群から独立して選択されうる。
【0096】
具体的な例として、前記金属膜前駆体、金属酸化膜前駆体及び金属窒化膜前駆体はそれぞれテトラクロロチタン(tetrachlorotitanium)、テトラクロロゲルマニウム(tetrachlorogermanium)、テトラクロロチン(tetrchlorotin)、トリス(イソプロピル)エチルメチルアミノゲルマニウム(tris(isopropyl)ethylmethylaminogermanium)、テトラエトキシゲルマニウム(tetraethoxylgermanium)、テトラメチルチン(tetramethyltin)、テトラエチルチン(tetraethyl tin)、ビスアセチルアセトネートチン(bisacetylacetonatetin)、トリメチルアルミニウム(trimethylaluminum)テトラキス(ジメチルアミノ)ゲルマニウム(tetrakis(dimethylamino)germanium)、ビス(n-ブチルアミノ)ゲルマニウム(bis(n-butylamino)germanium)、テトラキス(エチルメチルアミノ)チン(tetrakis(ethylmethylamino)tin)、テトラキス(ジメチルアミノ)チン(tetrakis(dimethylamino)tin)、Co2(CO)8(dicobalt octacarbonyl)、Cp2Co(biscyclopentadienyl cobalt)、Co(CO)3(NO)(cobalt tricarbonyl nitrosyl)、及びCpCo(CO)2(cobalt dicarbonyl cyclopentadienyl)などからなる群から選択された1種以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0097】
前記シリコン窒化膜前駆体は、一例として、SiH4, SiCl4, SiF4, SiCl2H2, Si2Cl6, TEOS, DIPAS, BTBAS, (NH2)Si(NHMe)3, (NH2)Si(NHEt)3, (NH2)Si(NHnPr)3, (NH2)Si(NHiPr)3, (NH2)Si(NHnBu)3, (NH2)Si(NHiBu)3, (NH2)Si(NHtBu)3, (NMe2)Si(NHMe)3, (NMe2)Si(NHEt)3, (NMe2)Si(NHnPr)3, (NMe2)Si(NHiPr)3, (NMe2)Si(NHnBu)3, (NMe2)Si(NHiBu)3, (NMe2)Si(NHtBu)3, (NEt2)Si(NHMe)3, (NEt2)Si(NHEt)3, (NEt2)Si(NHnPr)3, (NEt2)Si(NHiPr)3, (NEt2)Si(NHnBu)3, (NEt2)Si(NHiBu)3, (NEt2)Si(NHtBu)3, (NnPr2)Si(NHMe)3, (NnPr2)Si(NHEt)3, (NnPr2)Si(NHnPr)3, (NnPr2)Si(NHiPr)3, (NnPr2)Si(NHnBu)3, (NnPr2)Si(NHiBu)3, (NnPr2)Si(NHtBu)3, (NiPr2)Si(NHMe)3, (NiPr2)Si(NHEt)3, (NiPr2)Si(NHnPr)3, (NiPr2)Si(NHiPr)3, (NiPr2)Si(NHnBu)3, (NiPr2)Si(NHiBu)3, (NiPr2)Si(NHtBu)3, (NnBu2)Si(NHMe)3, (NnBu2)Si(NHEt)3, (NnBu2)Si(NHnPr)3, (NnBu2)Si(NHiPr)3, (NnBu2)Si(NHnBu)3, (NnBu2)Si(NHiBu)3, (NnBu2)Si(NHtBu)3, (NiBu2)Si(NHMe)3, (NiBu2)Si(NHEt)3, (NiBu2)Si(NHnPr)3, (NiBu2)Si(NHiPr)3, (NiBu2)Si(NHnBu)3, (NiBu2)Si(NHiBu)3, (NiBu2)Si(NHtBu)3, (NtBu2)Si(NHMe)3, (NtBu2)Si(NHEt)3, (NtBu2)Si(NHnPr)3, (NtBu2)Si(NHiPr)3, NtBu2)Si(NHnBu)3, (NtBu2)Si(NHiBu)3, (NtBu2)Si(NHtBu)3, NH2)2Si(NHMe)2, (NH2)2Si(NHEt)2, (NH2)2Si(NHnPr)2, (NH2)2Si(NHiPr)2, (NH2)2Si(NHnBu)2, (NH2)2Si(NHiBu)2, (NH2)2Si(NHtBu)2, (NMe2)2Si(NHMe)2, (NMe2)2Si(NHEt)2, (NMe2)2Si(NHnPr)2, (NMe2)2Si(NHiPr)2, (NMe2)2Si(NHnBu)2, (NMe2)2Si(NHiBu)2, NMe2)2Si(NHtBu)2, (NEt2)2Si(NHMe)2, (Et2)2Si(NHEt)2, (NEt2)2Si(NHnPr)2, (NEt2)2Si(NHiPr)2, (NEt2)2Si(NHnBu)2, (NEt2)2Si(NHiBu)2, (NEt2)2Si(NHtBu)2, (NnPr2)2Si(NHMe)2, (NnPr2)2Si(NHEt)2, (NnPr2)2Si(NHnPr)2, (NnPr2)2Si(NHiPr)2, (NnPr2)2Si(NHnBu)2, (NnPr2)2Si(NHiBu)2, (NnPr2)2Si(NHtBu)2, (NiPr2)2Si(NHMe)2, NiPr2)2Si(NHEt)2, (NiPr2)2Si(NHnPr)2, (NiPr2)2Si(NHiPr)2, (NiPr2)2Si(NHnBu)2, (NiPr2)2Si(NHiBu)2, (NiPr2)2Si(NHtBu)2, (NnBu2)2Si(NHMe)2, (NnBu2)2Si(NHEt)2, (NnBu2)2Si(NHnPr)2, (NnBu2)2Si(NHiPr)2, (NnBu2)2Si(NHnBu)2, (NnBu2)2Si(NHiBu)2, (NnBu2)2Si(NHtBu)2, (NiBu2)2Si(NHMe)2, (NiBu2)2Si(NHEt)2, (NiBu2)2Si(NHnPr)2, (NiBu2)2Si(NHiPr)2, (NiBu2)2Si(NHnBu)2, (NiBu2)2Si(NHiBu)2, (NiBu2)2Si(NHtBu)2, (NtBu2)2Si(NHMe)2, (NtBu2)2Si(NHEt)2, (NtBu2)2Si(NHnPr)2, (NtBu2)2Si(NHiPr)2, (NtBu2)2Si(NHnBu)2, (NtBu2)2Si(NHiBu)2, (NtBu2)2Si(NHtBu)2, Si(HNCH2CH2NH)2, Si(MeNCH2CH2NMe)2, Si(EtNCH2CH2NEt)2, Si(nPrNCH2CH2NnPr)2, Si(iPrNCH2CH2NiPr)2, Si(nBuNCH2CH2NnBu)2, Si(iBuNCH2CH2NiBu)2, Si(tBuNCH2CH2NtBu)2, Si(HNCHCHNH)2, Si(MeNCHCHNMe)2, Si(EtNCHCHNEt)2, Si(nPrNCHCHNnPr)2, Si(iPrNCHCHNiPr)2, Si(nBuNCHCHNnBu)2, Si(iBuNCHCHNiBu)2, Si(tBuNCHCHNtBu)2, (HNCHCHNH)Si(HNCH2CH2NH), (MeNCHCHNMe)Si(MeNCH2CH2NMe), (EtNCHCHNEt)Si(EtNCH2CH2NEt),(nPrNCHCHNnPr)Si(nPrNCH2CH2NnPr), (iPrNCHCHNiPr)Si(iPrNCH2CH2NiPr), (nBuNCHCHNnBu)Si(nBuNCH2CH2NnBu), (iBuNCHCHNiBu)Si(iBuNCH2CH2NiBu),(tBuNCHCHNtBu)Si(tBuNCH2CH2NtBu), (NHtBu)2Si(HNCH2CH2NH), (NHtBu)2Si(MeNCH2CH2NMe), (NHtBu)2Si(EtNCH2CH2NEt), (NHtBu)2Si(nPrNCH2CH2NnPr), (NHtBu)2Si(iPrNCH2CH2NiPr),
(NHtBu)2Si(nBuNCH2CH2NnBu), (NHtBu)2Si(iBuNCH2CH2NiBu), (NHtBu)2Si(tBuNCH2CH2NtBu), (NHtBu)2Si(HNCHCHNH), (NHtBu)2Si(MeNCHCHNMe), (NHtBu)2Si(EtNCHCHNEt), (NHtBu)2Si(nPrNCHCHNnPr), (NHtBu)2Si(iPrNCHCHNiPr), (NHtBu)2Si(nBuNCHCHNnBu), (NHtBu)2Si(iBuNCHCHNiBu), (NHtBu)2Si(tBuNCHCHNtBu), (iPrNCH2CH2NiPr)Si(NHMe)2, (iPrNCH2CH2NiPr)Si(NHEt)2, (iPrNCH2CH2NiPr)Si(NHnPr)2,(iPrNCH2CH2NiPr)Si(NHiPr)2, (iPrNCH2CH2NiPr)Si(NHnBu)2, (iPrNCH2CH2NiPr)Si(NHiBu)2, (iPrNCH2CH2NiPr)Si(NHtBu)2, (iPrNCHCHNiPr)Si(NHMe)2, (iPrNCHCHNiPr)Si(NHEt)2, (iPrNCHCHNiPr)Si(NHnPr)2, (iPrNCHCHNiPr)Si(NHiPr)2, (iPrNCHCHNiPr)Si(NHnBu)2, (iPrNCHCHNiPr)Si(NHiBu)2及び(iPrNCHCHNiPr)Si(NHtBu)2からなる群から選択された1種以上でありえ、これに限定されるものではない。
【0098】
前記nPrはn-プロピルを意味し、iPrはiso-プロピルを意味し、nBuはn-ブチルを、iBuはiso-ブチルを、tBuはtert-ブチルを意味する。
【0099】
前記薄膜前駆体化合物は、好ましい一実施例として、TiCl4, (Ti(CpMe5)(OMe)3), Ti(CpMe3)(OMe)3, Ti(OMe)4, Ti(OEt)4, Ti(OtBu)4, Ti(CpMe)(OiPr)3, TTIP(Ti(OiPr)4), TDMAT(Ti(NMe2)4), Ti(CpMe){N(Me2)3}, Pt, Ru, Ir, PtO, PtO2, RuO2, IrO2, SrRuO3, BaRuO3及びCaRuO3からなる群から選択された1種以上を含むことができ、この場合、本発明で達成しようとする効果を十分に得ることができる。
【0100】
前記テトラハロゲン化チタンは、薄膜形成用組成物の金属前駆体として使用することがあり得る。前記テトラハロゲン化チタンは、一例として、TiF4、TiCl4、TiBr4及びTiI4からなる群から選択される少なくともいずれかであるのであって、例えばTiCl4であることが経済的観点から好ましいが、これに限定されるのではない。
【0101】
一例として、前記テトラハロゲン化チタンは、熱安定性に優れ、常温で分解されずに液体状態で存在するため、ALD(原子層蒸着方法)の前駆体として用いて、薄膜を蒸着させるのに有用に使用することができる。
【0102】
前記薄膜前駆体化合物は、一例として非極性溶媒(前記炭化水素化合物と重なる種類は除く)と混合してチャンバー内に投入されることがありうるのであって、この場合、薄膜前駆体化合物の粘度や蒸気圧を容易に調節可能な利点がある。
【0103】
前記非極性溶媒は、好ましくはアルカン及びシクロアルカンからなる群から選択される1種以上でありえ、このような場合、反応性及び溶解度が低く、水分管理が容易な有機溶媒を含有しながらも薄膜形成時の蒸着温度が上昇しても段差被覆性(step coverage)が向上する利点がある。
【0104】
より好ましい例として、前記非極性溶媒は、C1~C10のアルカン(alkane)、またはC3~C10のシクロアルカン(cycloalkane)を含むことができ、好ましくはC3~C10のシクロアルカン(cycloalkane)であり、この場合、反応性及び溶解度が低く、水分管理が容易であるという利点がある。
【0105】
本記載において、C1、C3などは炭素数を意味する。
【0106】
前記シクロアルカンは、好ましくはC3~C10のモノシクロアルカンでありうるのであり、前記モノシクロアルカンのうちのシクロペンタン(cyclopentane)が常温で液体であり、最も蒸気圧が高く気相蒸着工程において好ましいが、これに限定されるものではない。
【0107】
前記非極性溶媒は、一例として、水における溶解度(25℃)が200mg/L以下、好ましくは50~200mg/L、より好ましくは135~175mg/Lであり、この範囲内で、薄膜前駆体化合物に対する反応性が低く、水分管理が容易であるという利点がある。
【0108】
本記載において、溶解度は、本発明が属する技術分野で通常的に用いられる測定方法や基準による場合、特別に制限されず、一例として飽和溶液をHPLC法で測定することができる。
【0109】
前記非極性溶媒は、好ましくは薄膜前駆体化合物及び非極性溶媒を合わせた総重量に対して5~95重量%を含むことができ、より好ましくは10~90重量%を含むことができ、さらに好ましくは40~90重量%を含むことができ、さらに、より好ましくは70~90重量%を含むことができる。
【0110】
もし、前記非極性溶媒の含量が前記上限値を超過して投入されると、不純物を誘発して抵抗と薄膜内の不純物数値が増加し、前記有機溶媒の含量が前記下限値未満に投入される場合、溶媒添加による段差被覆性の向上効果及び塩素(Cl)イオンといった不純物の低減効果が少ないという欠点がある。
【0111】
好ましくは、前記化学式2で表される化合物または導電性化合物は、好ましくは常温(22℃)で液体であり、密度が0.8~2.5g/cm3または0.8~1.5g/cm3であり、蒸気圧(20℃)が0.1~300mmHgまたは1~300mmHgでありうるのであり、この範囲内で段差被覆性、薄膜の厚み均一性及び膜質改善に優れた効果がある。
【0112】
より好ましくは、前記化学式2で表される化合物または導電性化合物は、密度が0.75~2.0g/cm3または0.8~1.8g/cm3であり、蒸気圧(20℃)が1~260mmHgでありうるのであり、この範囲内で段差被覆性、薄膜の厚さ均一性及び膜質改善に優れるという効果がある。
【0113】
前記補助前駆体と前記薄膜前駆体化合物のチャンバー内の投入量(mg/cycle)比は、好ましくは1:0.1~1:20でありうるのであり、より好ましくは1:0.2~1:15であり、さらに好ましくは1:0.5~1:12であり、さらにより好ましくは1:0.7~1:10であり、この範囲内で、段差被覆性向上効果及び工程副産物の低減の効果が大きい。
【0114】
前記補助前駆体と薄膜前駆体化合物からなる前駆体組成物は、好ましくは原子層蒸着(ALD)工程、プラズマ原子層蒸着(PEALD)工程、化学蒸着(CVD)工程またはプラズマ化学蒸着(PECVD)工程に用いられるものであり、この場合、工程副産物の低減効果が大きく段差被覆性に優れ、薄膜密度の向上効果及び薄膜の電気的特性に優れるという利点がある。
【0115】
本発明の薄膜形成方法は、前記前駆体組成物をチャンバー内に注入して、ローディング(loading)された基板の表面に吸着させる段階を含むことを特徴とし、このような場合、薄膜形成時の副反応を抑制し、薄膜成長率を調節することができ、薄膜内の工程副産物が低減され、腐食や劣化が低減され、薄膜の結晶性が向上し、複雑な構造を有する基板上に薄膜を形成する場合でも、段差被覆性(step coverage)及び薄膜の電気的特性を大きく向上させるという効果がある。
【0116】
前記前駆体組成物を基板表面に吸着させる段階は、基板の表面への前駆体組成物の供給時間(Feeding Time)がサイクル当たり好ましくは0.01~10秒、より好ましくは0.02~5秒、さらに好ましくは0.04~3秒、さらにより好ましくは0.05~2秒であり、この範囲内で薄膜成長率が低く、段差被覆性及び経済性に優れるという利点がある。
【0117】
本記載において、前駆体組成物の供給時間(Feeding Time)は、チャンバーの体積15~20L及び流量0.5~100mg/sを基準とし、より具体的にはチャンバーの体積18L及び流量1~25mg/sを基準とする。
【0118】
前記薄膜形成方法は、好ましい一実施例として、i) 前記前駆体組成物を気化して、チャンバー内にローディングされた基板の表面に吸着させる段階;ii) 前記チャンバー内をパージガスで1次パージする段階;iii) 前記チャンバーの内部に反応ガスを供給する段階;及びiv) 前記チャンバーの内部をパージガスで2次パージする段階を含むことができる。ここで、前記i)段階~iv)段階を単位サイクル(cycle)として、目的する厚さの薄膜が得られるまで、前記サイクルを繰り返し行うことができ、このように1サイクル内で、本発明の補助前駆体を薄膜前駆体化合物と共に投入して基板に吸着させる場合に、低温で蒸着しても、生成される工程副産物が効果的に除去され、薄膜の比抵抗が改善され、段差被覆性が大きく向上するという利点がある。
【0119】
本発明の薄膜形成方法は、好ましい一例として、1サイクルにて本発明の補助前駆体を薄膜前駆体化合物と共に投入して、基板に吸着させることができ、この場合、低温で薄膜を蒸着させても、薄膜成長率を適切に減少させることにより、工程副産物が大きく減少され、段差被覆性が大きく向上されうるのであって、薄膜の結晶性が増加し、薄膜の比抵抗が改善されるのでありうるのであり、アスペクト比が大きい半導体素子に適用しても、薄膜の厚さ均一性が大きく向上され、半導体素子の信頼性を確保するという利点がある。
【0120】
前記薄膜形成方法は、一例として、前記補助前駆体を薄膜前駆体化合物の蒸着と同時に吸着させる場合、必要によって単位サイクルを1~99,999回繰り返し行うことができ、好ましくは単位サイクルを10~10,000回、より好ましくは50~5,000回、さらに好ましくは100~2,000回繰り返し行うことができ、この範囲内で目的とする薄膜の厚さを得るとともに、本発明にて達成しようとする比抵抗を含む物性改善の効果を十分に得るができる。
【0121】
また、後述する比較例に示すように、前記補助前駆体を薄膜前駆体化合物の蒸着の前に吸着させるか、薄膜前駆体化合物の蒸着の後に吸着させた場合には、補助前駆体と薄膜前駆体化合物とを同時に投入して蒸着させた場合に得られる、比抵抗を含む物性の改善効果は得られなかった。
【0122】
基板上に、前記補助前駆体と薄膜前駆体化合物とを一緒に吸着させる場合、前記未吸着の前駆体組成物をパージする段階にて前記チャンバーの内部に投入されるパージガスの量は、前記未吸着の前駆体組成物を除去するのに十分な量であれば特別に制限されないのであるが、一例として10~100,000倍でありうるのであって、好ましくは50~50,000倍、より好ましくは100~10,000倍でありうるのであり、この範囲内で、未吸着の前駆体組成物を十分に除去することから薄膜が均一に形成され、膜質の劣化を防ぐことができる。ここで、前記パージガス及び前駆体組成物の投入量は、それぞれ1サイクルを基準とし、前記前駆体組成物の体積は、気化した薄膜前駆体組成物蒸気の体積を意味する。
【0123】
具体的な一例として、前記前駆体組成物を流速1.66mL/s及び注入時間0.5secで注入(1サイクル当たり)し、未吸着の前駆体組成物をパージする段階にてパージガスを流量166.6mL/s及び注入時間3secで注入(1サイクル当たり)する場合、パージガスの注入量は、薄膜前駆体組成物の注入量の602倍である。
【0124】
また、前記反応ガス供給段階の直後に行うパージ段階にて前記チャンバー内部に投入されるパージガスの量は、一例として、前記チャンバーの内部に投入された反応ガスの体積を基準にして10~10,000倍でありうるのであって、好ましくは50~50,000倍、より好ましくは100~10,000倍でありうるのであり、この範囲内にて所望の効果を十分に得ることができる。ここで、前記パージガス及び反応ガスの投入量は、それぞれ1サイクルを基準とする。
【0125】
前記薄膜前駆体組成物及び薄膜前駆体化合物は、好ましくは、VFC方式、DLI方式またはLDS方式で、ALDチャンバー、CVDチャンバー、PEALDチャンバー、またはPECVDチャンバーの内部へと移送するのである。
【0126】
前記前駆体組成物を構成する、補助前駆体と薄膜前駆体化合物とのチャンバー内への投入量(mg/cycle)の比は、好ましくは1:0.1~1:20でありうるのであって、より好ましくは1:0.2~1:15、さらに好ましく 1:0.5~1:12であり、さらにより好ましくは1:0.7~1:10であり、この範囲内で、段差被覆性向上の効果、及び工程副産物の低減効果が大きい。
【0127】
前記薄膜形成方法は、一例として、前記前駆体組成物を用いる場合、下記数式1で算出される比抵抗(μΩ・cm)の改善度が-51%以下であり、好ましくは-51%~-10%であり、この範囲内では、段差被覆性、比抵抗率特性及び薄膜厚さの均一性に優れる。
【0128】
[数式1]
比抵抗改善度(%)=[(補助前駆体を使用したときの比抵抗-補助前駆体を使用しなかったときの比抵抗)/補助前駆体を使用しなかったときの比抵抗]X100
【0129】
前記数式1において、補助前駆体を使用したとき及び使用しなかったときの比抵抗改善度は、それぞれの導電性特性、すなわち比抵抗(μΩ・cm)を意味し、前記比抵抗は一例として四端子法(four-point probe)の方式で測定して面抵抗を求めた後、前記薄膜の厚さ値から求めることができる。
【0130】
前記数式1において、「補助前駆体を使用したとき」は、薄膜蒸着工程で、基板上に補助前駆体と薄膜前駆体化合物を一緒に吸着させて薄膜を製造する場合を意味し、「補助前駆体を使用しなかったとき」は、薄膜蒸着工程において、基板上に補助前駆体を未使用とし、薄膜前駆体化合物を吸着させて薄膜を製造する場合を指す。
【0131】
前記薄膜形成方法は、XPSに基づいて測定された、薄膜厚さ100Åの基準薄膜内の残留ハロゲン強さ(c/s)が、好ましくは100,000以下、より好ましくは70,000以下、さらに好ましくは50,000以下、さらにより好ましくは10,000以下でありえ、好ましい一実施例として5,000以下、より好ましくは1,000~4,000、さらにより好ましくは1,000~3,800でありうるのであり、このような範囲内で、腐食及び劣化が防止される効果に優れる。
【0132】
本記載において、パージは好ましくは1,000~50,000sccm(StandardCubic Centimeter per Minute)、より好ましくは2,000~30,000sccm、さらに好ましくは2,500~15,000sccmであり、この範囲内で、サイクル当たりの薄膜成長率が適当に制御され、単一原子層(atomic mono-layer)として、もしくはこれに近い蒸着が行われ、膜質の側面で有利であるという利点がある。
【0133】
前記ALD(原子層の蒸着工程)は、高いアスペクト比が要求される集積回路(IC:Integrated Circuit)の製作において非常に有利であり、特に自己制限的な薄膜成長メカニズムにより、優れた段差塗布性(conformality)、均一な被覆性(uniformity)及び精密な厚さ制御などといった利点がある。
【0134】
前記薄膜形成方法は、一例として50~800℃の範囲の蒸着温度で行うことができ、好ましくは200~700℃の範囲の蒸着温度で、より好ましくは250~500℃の範囲の蒸着温度で行うものであり、より好ましくは250~600℃の範囲の蒸着温度で行うものであり、この範囲内でALD工程特性を具現しつつ優れた膜質の薄膜に成長させるという効果がある。
【0135】
前記薄膜形成方法は、一例として0.01~20Torrの範囲の蒸着圧力で行うことができ、好ましくは0.1~20Torrの範囲の蒸着圧力で、より好ましくは0.1~10Torrの範囲の蒸着圧力で、さらに好ましくこれは0.1~7Torrの範囲の蒸着圧力で行うものであるが、この範囲内で均一な厚さの薄膜を得るという効果がある。
【0136】
本記載において、蒸着温度及び蒸着圧力は蒸着チャンバー内に形成される温度及び圧力で測定されるか、蒸着チャンバー内の基板に加えられる温度及び圧力で測定されることがあり得る。
【0137】
前記薄膜形成方法は、好ましくは、前記期前駆体組成物をチャンバー内に投入する前に、チャンバー内の温度を蒸着温度に昇温する段階;及び/または前記前駆体組成物をチャンバー内に投入する前に、チャンバー内に不活性気体を注入してパージする段階を含むのでありうる。
【0138】
また、本発明は、前記薄膜製造方法を具現することができる薄膜製造装置で、ALDチャンバー、補助前駆体を気化する第1気化器、気化された補助前駆体をALDチャンバー内へと移送する第1移送手段、薄膜前駆体化合物を気化する第2気化器、及び気化された薄膜前駆体化合物をALDチャンバー内へと移送する第2移送手段を含む薄膜製造装置を含むのでありうる。
【0139】
また、本発明は、前記薄膜製造装置に、前記気化された補助前駆体と、前記気化された薄膜前駆体化合物とをミキシングするミキシング手段を含み、前駆体組成物を予めミキシングした後、チャンバー内へと移送させることができる。
【0140】
ここで、気化器、移送手段、またはミキシング手段は、本発明が属する技術分野で通常使用される気化器、移送手段またはミキシング手段である場合、特別に限定されない。
【0141】
具体的な例として、前記ALD工程を用いた薄膜形成方法について説明すると、
まず、上部に薄膜が形成される基板を原子層蒸着が可能な蒸着チャンバー内に配置させる。
【0142】
前記基板は、シリコン基板、シリコンオキシドなどの半導体基板を含むことができる。
【0143】
前記基板は、その上部に、導電層または絶縁層がさらに形成されているのであり得る。
【0144】
前記蒸着チャンバー内に配置させた基板上に、薄膜を蒸着するために、上述した補助前駆体と、薄膜前駆体化合物、またはこれと非極性溶媒との混合物とをそれぞれ準備する。
【0145】
この後、準備された補助前駆体、薄膜前駆体化合物、またはこの非極性溶媒の混合物(薄膜形成用の組成物)を、それぞれ気化器内に注入した後、蒸気状に変化させて蒸着チャンバーに伝達して基板上に吸着させるか、薄膜形成用組成物を予め製造した後、1つの気化器を用いて蒸気状に変化させて、蒸着チャンバーに伝達して基板上に吸着させることができるのであり、続いてパージ(purging)することで未吸着の前駆体組成物(薄膜形成用の組成物)を除去する。
【0146】
本発明の一実施例によると、薄膜前駆体化合物と反応しない補助前駆体を使用するので、パージの際の補助前駆体は大部分除去され得る。
【0147】
本記載において、補助前駆体及び薄膜前駆体化合物など(薄膜形成用の組成物)を蒸着チャンバーに伝達する方式は、一例として、気体上の流量制御(Mass Flow Controller;MFC)法を活用して、揮発された気体を移送する方式(Vapor Flow Control;VFC)、または、液体上の流量制御(Liquid Mass Flow Controller;LMFC)法を活用して液体を移送する方法(Liquid Delivery System;LDS)を使用することができ、好ましくはLDS方式を使用するものである。
【0148】
この際、補助前駆体及び薄膜前駆体化合物などを基板上に移動させるための輸送ガスまたは希釈ガスとしては、アルゴン(Ar)、窒素(N2)、ヘリウム(He)からなる群から選択される一つまたは二つ以上の混合気体を使用することができるが、制限されるものではない。
【0149】
本記載において、パージガスとしては、一例として不活性ガスを使用することがありうるのであって、好ましくは前記輸送ガスまたは希釈ガスを使用することができる。
【0150】
次に、反応ガスを供給する。前記反応ガスとしては、本発明が属する技術分野で通常的に使用される反応ガスである場合、特別に限定されず、好ましくは還元剤、窒化剤または酸化剤を含むことができる。前記還元剤と基板に吸着された薄膜前駆体化合物が反応して金属薄膜が形成されるのであって、前記窒化剤によるならば金属窒化物薄膜が形成され、前記酸化剤によるならば金属酸化物薄膜が形成される。
【0151】
好ましくは、前記還元剤は、アンモニアガス(NH3)または水素ガス(H2)でありうるのであって、前記窒化剤は窒素ガス(N2)、ヒドラジンガス(N2H4)、または、窒素ガス及び水素ガスの混合物でありうるのであり、前記酸化剤は、H2O、H2O2、O2、O3及びN2Oからなる群から選択された1種以上であり得る。
【0152】
次に、不活性ガスを用いて、反応しない残留反応ガスをパージさせる。これによって、過量の反応ガスだけでなく生成された副産物も一緒に除去することができる。
【0153】
前記のように、前記薄膜形成方法は、一例として、前駆体組成物を基板上に吸着させる段階、未吸着の前駆体組成物をパージする段階、反応ガスを供給する段階、残留反応ガスをパージする段階を、単位サイクルとし、所望する厚さの薄膜を形成するために、前記単位サイクルを繰り返すことができる。
【0154】
前記単位サイクルは、一例として1~99,999回、好ましくは10~1,000回、より好ましくは50~5,000回、さらにより好ましくは100~2,000回繰り返すことができ、この範囲内で、目的とする薄膜特性が良好に発現されるという効果がある。
【0155】
本発明は、また半導体基板を提供し、前記半導体基板は本記載の薄膜形成方法で製造されることを特徴とし、このような場合、薄膜の段差被覆性(step coverage)薄膜の厚さ均一性、及び比抵抗特性が大いに優れ、薄膜の密度及び電気的特性に優れるという効果がある。
【0156】
前記製造された薄膜は、好ましくは厚さが30nm以下であり、薄膜厚さ10nmを基準として比抵抗値が5~400μΩ・cmであり、ハロゲン含量が10,000ppm以下であり、段差被覆率が80%以上であり、この範囲内で拡散防止膜として性能に優れ、金属配線材料の腐食が低減される効果があるが、これに限定するものではない。
【0157】
前記薄膜は、厚さが一例として1~30nm、好ましくは2~27nm、より好ましくは3~25nm、さらに好ましくは5~23nmでありうるのであって、この範囲内で薄膜特性に優れるという効果がある。
【0158】
前記薄膜は、一例として薄膜厚さ10nmを基準として、比抵抗値が5~400μΩ・cm、好ましくは5~360μΩ・cmでありうるのであって、この範囲内で薄膜特性に優れるという効果がある。
【0159】
前記薄膜は、ハロゲン含量が、好ましくは10,000ppm以下または1~8,000ppm、さらに好ましくは1~5,000ppm、さらにより好ましくは1~1000ppmでありうるのであって、この範囲内で薄膜特性に優れながらも金属配線材料の腐食が低減される効果がある。ここで、前記薄膜に残留するハロゲンは、一例としてCl2、Cl、またはCl-でありえ、薄膜内のハロゲン残留量が少ないほど膜質に優れ、好ましい。
【0160】
前記薄膜は、一例として段差被覆率が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であり、この範囲内で複雑な構造の薄膜でも容易に基板に蒸着させることができ、次世代半導体装置に適用可能であるという利点がある。
【0161】
前記製造された薄膜は、一例としてチタン窒化膜(TixNy、ここで0<x≦1.2、0<y≦1.2、好ましくは0.8≦x≦1、0.8≦y≦1、より好ましくはそれぞれ1でありうる)、及び、チタン酸化膜(TiO2)からなる群からの1種または2種を含むことができ、好ましくはチタン窒化膜を含むことができるのであり、この場合、半導体素子の拡散防止膜、エッチング停止膜または配線(electrode)として有用であるという利点がある。
【0162】
前記薄膜は、一例として必要によって2層または3層の多層構造であり得る。前記2層構造の多層膜は、具体的な一例として下層膜-中層膜の構造でありうるのであって、前記3層構造の多層膜は具体的な一例として下層膜-中層膜-上層膜の構造であり得る。
【0163】
前記下層膜は、誘電膜でありうるのであり、一例として、SiO2、MgO、Al2O3、CaO、ZrSiO4、ZrO2、HfSiO4、Y2O3、HfO2、LaLuO2、LaAlO3、BaZrO3、SrZrO3、SrTiO3、BaTiO3、Si3N4、SrO、La2O3,Ta2O5、BaO、TiO2からなる群から選択された1種以上を含んでなり得る。
【0164】
前記中層膜は、一例としてTixNy、好ましくはTiNを含んでなり得る。
【0165】
前記上層膜は、一例としてW、Moからなる群から選択された1種以上を含んでなり得る。
【0166】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例及び図面を提示するが、下記実施例及び図面は本発明を例示するだけであって、本発明の範疇及び技術思想の範囲内にて様々な変更及び修正が可能であることは、当業者において明白なものであり、このような変形及び修正が、添付された特許請求範囲に属するのも当然である。
【0167】
[実施例]
<実施例1~6、比較例1~5>
<補助前駆体と薄膜前駆体化合物の反応性試験>
下記の実施例1~6、比較例1~5で使用する補助前駆体と薄膜前駆体化合物の反応性を試験した。
【0168】
反応性試験の対象として、下記表1に示された組み合わせを選定した。
【0169】
具体的な例として、下記表1に示された、薄膜前駆体化合物と補助前駆体とを混合する前に、H-NMRを測定した後、1:1のモル比で混合し、圧力容器にて1時間の間に保管した後のH-NMRも測定した。
【0170】
混合の前後のH-NMRスペクトラムを比較して、追加で生成されたNMRピークを不純物と判断し、生成されたNMRピークの積分値を、不純物含量と定義した。
【0171】
前記不純物含量の百分率値が0.1%未満である場合に反応なし、0.1%超過時の反応ありと評価し、その結果を下記表1に示した。
【0172】
具体的な例として、下記表1で反応なしとして評価した、1-ヨードブタン(1- iodobutane)に対する評価の方式を、具体的に見てみると次の通りである。
【0173】
まず、下記
図1に示されたように、1-ヨードブタン(1-iodobutane)の単独について測定したH-NMR(
図1の上部図面に該当)と対比するようにして、1-ヨードブタン(1-iodobutane)をTiCl
4と1:1のモル比で混合した後に加圧容器にて1時間置いた後で測定したH-NMR(
図1の下部図面に該当)から、新たに生成されたピークを不純物とし、その含量から計算した結果、0.03%であって基準値0.1%に満たないので、反応なしと評価した。
【0174】
残りの物質についても同様の評価過程を繰り返して、反応のありなしについて記載した。
【0175】
【0176】
前記表1に示したように、提示された16種類の組み合わせのうち電子受容末端基を有する補助前駆体を薄膜前駆体化合物と混合した7種で反応性が0.1%未満の反応安定性を示すことを確認した。
【0177】
<実施例1~6>
補助前駆体として、前記表1に記載の化合物と、薄膜前駆体化合物としてのTiCl4を、それぞれ準備した。準備された補助前駆体と薄膜前駆体化合物を、それぞれキャニスターに入れ、常温でLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて0.05g/minの流速で、150℃に加熱された気化器に供給した。気化器で蒸気状に気化した補助前駆体と薄膜前駆体化合物とをそれぞれ1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバーに、1:1の投入量比で投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間、供給してアルゴンパージを行った。この際、反応チャンバー内の圧力は2.5Torrに制御した。
【0178】
次に、反応性ガスとしてアンモニア1000sccmを3秒間、前記反応チャンバーに投入した後、3秒間アルゴンパージを行った。この際、金属薄膜が形成される基板を、下記表2に示した温度に加熱した。このような工程を200~400回繰り返して、10nmの厚さの自己‐制限の原子層であるTiN薄膜を形成した。
【0179】
<比較例1~2>
補助前駆体として、前記表1に記載の化合物と、薄膜前駆体化合物としてTiCl4をそれぞれ準備した。準備された補助前駆体をキャニスターに入れ、常温でLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて0.05g/minの流速で150℃に加熱された気化器に供給した。気化器で蒸気状に気化した補助前駆体を、1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバーに投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間、供給してアルゴンパージを行った。この際、反応チャンバー内の圧力は2.5Torrに制御した。
【0180】
次に準備されたTiCl4を別途のキャニスターに入れ、常温でLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて、0.05g/minの流速で150℃に加熱された別途の気化器に供給した。気化器で蒸気状に気化したTiCl4を、1秒間、蒸着チャンバーに投入した後、アルゴンガスを、5000sccmで2秒間供給してアルゴンパージを行った。この際、反応チャンバー内の圧力は2.5Torrに制御した。
【0181】
次に、反応性ガスとしてアンモニア1000sccmを3秒間、前記反応チャンバーに投入した後、3秒間アルゴンパージを行った。この際、金属薄膜が形成される基板を、下記表2に示した温度に加熱した。このような工程を200~400回繰り返して、10nmの厚さの自己‐制限の原子層であるTiN薄膜を形成した。
【0182】
<比較例3>
補助前駆体として、前記表1に記載の化合物と、薄膜前駆体化合物でTiCl4をそれぞれ準備した。
【0183】
準備されたTiCl4を別途のキャニスターに入れ、常温でLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて、0.05g/minの流速で150℃に加熱された別途の気化器に供給した。気化器で蒸気状に気化したTiCl4を1秒間、蒸着チャンバーに投入した後、アルゴンガスを5000sccmで2秒間、供給してアルゴンパージを行った。この際、反応チャンバー内の圧力は2.5Torrに制御した。
【0184】
次に準備された補助前駆体をキャニスターに入れ、常温にてLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて0.05g/minの流速で150℃に加熱された気化器に供給した。気化器で蒸気状に気化した補助前駆体を、1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバーに投入した後、アルゴンガスを、5000sccmで2秒間供給してアルゴンパージを行った。この際、反応チャンバー内の圧力は2.5Torrに制御した。
【0185】
次に、反応性ガスとしてアンモニア1000sccmを3秒間、前記反応チャンバーに投入した後、3秒間アルゴンパージを行った。この際、金属薄膜が形成される基板を下記表2に示した温度に加熱した。このような工程を200~400回繰り返して、10nm厚さの自己‐制限の原子層であるTiN薄膜を形成した。
【0186】
<比較例4>
補助前駆体として、前記表1に記載の化合物と、薄膜前駆体化合物としてのTiCl4とをそれぞれ準備した。準備された補助前駆体をキャニスターに入れ、常温にて、LMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて0.05g/minの流速で、150℃に加熱された気化器に供給した。
【0187】
気化器で蒸気状に気化した補助前駆体を、1秒間、基板がローディングされた蒸着チャンバーに投入した後、アルゴンガスを、5000sccmで2秒間供給してアルゴンパージを行った。このと、反応チャンバー内の圧力は2.5Torrに制御した。
【0188】
次に準備されたTiCl4を、別途のキャニスターに入れ、常温にてLMFC(Liquid Mass Flow Controller)を用いて、0.05g/minの流速で、150℃に加熱された別途の気化器に供給した。気化器で蒸気状に気化したTiCl4を、1秒間、蒸着チャンバーに投入した後、アルゴンガスを、5000sccmで2秒間供給してアルゴンパージを行った。この際、反応チャンバー内の圧力は2.5Torrに制御した。
【0189】
次に、反応性ガスとしてアンモニア1000sccmを3秒間、前記反応チャンバーに投入した後、3秒間アルゴンパージを行った。この際、金属薄膜が形成される基板を下記表2に示した温度に加熱した。このような工程を200~400回繰り返して、10nmの厚さの自己‐制限の原子層であるTiN薄膜を形成した。
【0190】
<比較例5>
前記実施例1において、使用した補助前駆体を前記表1に記載の化合物に代替したことを除いては、前記実施例1と同様の工程を繰り返してTiN薄膜を形成した。
[実験例]
【0191】
1)蒸着評価(サイクル当たりの蒸着速度)
製造された薄膜に対して、光の偏光特性を用いて、薄膜の厚さや屈折率のような光学特性を測定できる装置である、エリプソメータ(Ellipsometer)で測定した薄膜の厚さを、サイクル回数で割って、1サイクル当たり蒸着する薄膜の厚さを計算して蒸着速度を評価し、その結果を下記表2に示した。
【0192】
2)薄膜抵抗評価(比抵抗)
製造された薄膜の表面抵抗を四端子法(four-point probe)方式で測定して、面抵抗を求めた後、前記薄膜の厚さ値から比抵抗値を算出した。
【0193】
前記比抵抗(μΩ・cm)の改善度は、下記数式1によって計算した。
【0194】
[数式1]
比抵抗の改善度(%)=[(前駆体組成物を使用したときの比抵抗-補助前駆体を使用しなかったときの比抵抗)/補助前駆体を使用しなかったときの比抵抗]X 100
【0195】
【0196】
*対照群:補助前駆体を使用せずに作製したTiN薄膜での測定値
【0197】
前記表2に示したように、本発明の1-ヨードブタン(1-IodoButane)、2-ヨードブタン(2-IodoButane)、2-ヨード-2-メチルプロパン(2-iodo-2-methyl propane)、2-ヨードブタン(2-iodobutane)、ヨウ化シクロヘキシル(Cyclohexyl iodide)、または1-ヨードブタン(3-iodo pentane)を補助前駆体として、薄膜前駆体化合物と併用した場合 (実施例1~6)は、補助前駆体を薄膜前駆体化合物に先立って成長抑制物質として使用した場合(比較例1、2、4)、補助前駆体を薄膜前駆体化合物の投入の後の成長活性物質として使用した場合(比較例3)、または、補助前駆体を薄膜前駆体化合物との反応性を有する種類に代替した場合(比較例5)、同等または類似する蒸着速度を提供しつつ、比抵抗は160~358μΩ・cmに減少したことが示されたのであり、特に、補助前駆体を未使用の対照群との対比で-51%~-10%まで、比抵抗特性が著しく減少したことが示されたので、薄膜成長速度が適切に制御され、電気的特性が向上したことを確認することができた。
【0198】
具体的には、補助前駆体として1-ヨードブタン(1-IodoButane)を使用したが、成長抑制物質として使用した比較例1の場合、比抵抗が1224μΩ・cmであって、補助前駆体を未使用の対照群518μΩ・cmと対比して、抵抗値が爆発的に増加したことを確認することができた。
【0199】
また、補助前駆体として2-ヨードブタン(2-IodoButane)を成長抑制物質として使用した比較例2の場合、比抵抗が320μΩ・cmであって、補助前駆体を未使用の対照群329μΩ・cmとの大きな差を示さず、2-ヨードブタン(2-IodoButan)eを成長活性物質として使用した比較例3の場合、比抵抗が364μΩ・cmであって、補助前駆体を未使用の対照群329μΩ・cmと、やはり大きな差を示さないことが示され、薄膜の電気的特性改善効果を示さないことが確認された。
【0200】
また、薄膜前駆体化合物と常温で反応しないことが確認されたが、本発明特有の電子受容末端基を含まない補助前駆体を、成長抑制物質として使用した比較例4の場合でも、薄膜の電気的特性改善効果を示さないことと確認された。
【0201】
さらに、薄膜前駆体化合物と反応する補助前駆体を薄膜前駆体化合物と併用した比較例5の場合でも、薄膜の電気的特性の改善効果を示さないことが確認された。
【0202】
3) 不純物低減特性
製造された厚さ10nm薄膜の不純物、すなわち工程副生成物の低減特性を比較するためにチタン(Ti)、窒素(N)、Cl(塩素)、カーボン(C)及び酸素(O)の元素についてXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析を行い、その結果は以下の表3に示した。
【0203】
【0204】
前記表3に示したように、本発明に係る補助前駆体を、薄膜前駆体化合物と同時に使用した場合(実施例6)は、薄膜前駆体化合物との反応性の側面から、不適切な補助前駆体を薄膜前駆体化合物と同時に注入した場合(比較例5)に比べて、Cl及びC強度が共に0.01%水準まで減少し、不純物低減特性に優れていることを確認することができた。特に、比較例5の場合、薄膜蒸着工程にて、薄膜前駆体化合物と反応する補助前駆体を投入したので、理論上、炭素が検出されないべきであるが、薄膜前駆体化合物、パージガス及び反応ガスに含まれる微量のCO及び/またはCO2から起因すると思われる炭素が検出されることを確認することができるのであるが、本発明の実施例5では、薄膜蒸着時に炭化水素化合物である補助前駆体を投入したにもかかわらず、比較例5に比べて炭素強度が減少したことを確認することができ、これは、本発明の補助前駆体が、不純物低減特性に優れていうということを意味する。
【0205】
特に、比較例5は、本発明の補助前駆体と類似する構造の化合物を、本発明と同じように前駆体組成物と同時に投入したが、実施例6、しいては対照群(Ref.)よりも不純物の強度が過度に高く現れ、膜質改善効果がないことが確認できた。
【国際調査報告】