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特表2024-507895放射線を反射する光学素子及び光学アセンブリ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-21
(54)【発明の名称】放射線を反射する光学素子及び光学アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240214BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G02B5/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023551130
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2021084386
(87)【国際公開番号】W WO2022179735
(87)【国際公開日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】102021201715.0
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ザルター
(72)【発明者】
【氏名】ソーレン クノール
【テーマコード(参考)】
2H042
2H197
【Fターム(参考)】
2H042DA12
2H042DA20
2H042DB13
2H042DC04
2H042DD05
2H042DE00
2H197CA06
2H197CA10
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA06
2H197GA10
2H197GA11
2H197GA12
2H197GA21
(57)【要約】
本発明は、放射線を反射する、特にEUV放射線を反射する光学素子(M4)であって、界面(27)で合体された第1部分体(26a)及び第2部分体(26b)を有する基板(25)と、第1部分体(26a)の表面(28)に塗布された反射コーティング(29)と、反射コーティング(29)を塗布された表面(28)の下の界面(27)の領域で基板(25)内に延びる複数の冷却チャネル(31)と、冷却剤入口(34)を複数の冷却チャネル(31)に接続するために基板(25)に形成された分配部(32)と、複数の冷却チャネル(31)を冷却剤出口(35)に接続するために基板(25)に形成された回収部とを備えた光学素子(M4)に関する。分配部(32)及び/又は回収部は、界面(27)から始まって、基板(25)の第1部分体(26a)よりも基板(25)の第2部分体(26b)に大きく延在する。本発明は、少なくとも1つの上記光学素子(M4)と、複数の冷却チャネル(31)に冷却剤を流すように設計された冷却装置とを備えた光学装置、特にEUVリソグラフィシステムにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を反射する、特にEUV放射線(16)を反射する光学素子(M4)であって、
界面(27)で合体された第1部分体(26a)及び第2部分体(26b)を有する基板(25)と、
前記第1部分体(26a)の表面(28)に塗布された反射コーティング(29)と、
該反射コーティング(29)を塗布された前記表面(28)の下の前記界面(27)の領域で前記基板(25)内に延びる複数の冷却チャネル(31)と、
冷却剤入口(34)を前記複数の冷却チャネル(31)に接続するために前記基板(25)に形成された分配部(32)と、
前記複数の冷却チャネル(31)を冷却剤出口(35)に接続するために前記基板(25)に形成された回収部(33)と
を備えた光学素子(M4)において、
前記分配部(32)及び/又は前記回収部(33)は、前記界面(27)から始まって、前記基板(25)の前記第1部分体(26a)よりも前記基板(25)の前記第2部分体(26b)に大きく延在することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光学素子において、前記分配部(32)及び/又は前記回収部(33)は、前記第2部分体(26b)において、少なくとも前記界面(27)から始まる部分(39)で、前記基板(25)の厚さ方向(Z)に対して30°以下の角度(α)に位置合わせされる光学素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学素子において、前記分配部(32)及び/又は前記回収部(33)は、前記第2部分体(26b)において、少なくとも前記界面(27)から始まる部分(39)で、前記反射コーティング(29)で覆われない前記表面(28)の部分領域(37)の下に延びる光学素子。
【請求項4】
請求項1の前文に記載の、特に請求項1~3のいずれか1項に記載の光学素子において、前記分配部(32)は、前記冷却剤入口(34)から広がる分配チャンバ(32a)を有し、且つ/又は前記回収部(33)は、前記冷却剤出口(35)に向かって窄まる回収チャンバ(33a)を有する光学素子。
【請求項5】
請求項4に記載の光学素子において、前記分配チャンバ(32a)は、前記冷却剤入口(33)から前記界面(27)まで延在し、且つ/又は前記回収チャンバ(33a)は、前記界面(27)から前記冷却剤出口(35)まで延在する光学素子。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光学素子において、前記分配部(32)及び/又は前記回収部(33)は、前記界面(27)から始まって少なくとも1つの冷却チャネル(31)それぞれを前記冷却剤入口(34)又は前記冷却剤出口(35)に接続する接続チャネル(40)を有する部分(39)を有する光学素子。
【請求項7】
請求項6に記載の光学素子において、各接続チャネル(40)が、少なくとも2つの、特に正確に2つの冷却チャネル(31)に接続される光学素子。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の光学素子において、各接続チャネル(40)の断面(A1、A2)が、前記界面(27)から特に段階的に縮小する光学素子。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の光学素子において、前記分配チャンバ(32a)は、前記分配部(32)の前記接続チャネル(40)を有する前記分配部(32)の部分に接続され、且つ/又は前記回収チャンバ(33a)は、前記回収部(33)の前記接続チャネル(40)を有する前記回収部(33)の部分に接続される光学素子。
【請求項10】
請求項9に記載の光学素子において、前記分配チャンバ(32a)及び/又は前記回収チャンバ(33a)は、前記第2部分体(26b)と前記基板(25)の第3部分体(26c)との間の別の界面(38)に沿って延在し、前記第3部分体(26c)は、前記別の界面(38)で前記第2部分体(26b)と合体される光学素子。
【請求項11】
請求項6~8のいずれか1項に記載の光学素子において、前記分配部(32)の前記接続チャネル(40)は、前記冷却剤入口(34)に接続された共通の入口チャネル(41)に通じており、且つ/又は前記回収部(33)の前記接続チャネル(40)は、前記冷却剤出口(35)に接続された共通の出口チャネル(42)に通じている光学素子。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の光学素子において、前記冷却剤入口(34)及び/又は前記冷却剤出口(35)は、前記基板(25)の前記第2部分体(26b)及び/又は前記第3部分体(26c)に形成される光学素子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の光学素子において、各冷却チャネル(31)の前記断面は、前記第1部分体(26a)と前記第2部分体(26b)との間で分割される光学素子。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の光学素子において、前記反射コーティング(29)を塗布された前記表面(28)は湾曲しており、且つ/又は前記冷却チャネル(31)は湾曲しており、該湾曲した冷却チャネル(31)は、前記湾曲した表面(28)から一定の距離(D)にあることが好ましい光学素子。
【請求項15】
光学装置、特にEUVリソグラフィシステム(1)であって、
請求項1~14のいずれか1項に記載の少なくとも1つの光学素子(M1~M6)と、
複数の冷却チャネル(31)に冷却剤を流すように設計された冷却装置(36)と
を備えた光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
本願は、2021年2月24日の独国特許出願第10 2021 201 715.0号の優先権を主張し、その全開示を参照により本願に援用する。
【0002】
本発明は、放射線を反射する、特にEUV放射線を反射する光学素子であって、界面で合体される第1部分体及び第2部分体を有する基板と、第1部分体の表面に塗布された反射コーティングと、反射コーティングを塗布された表面の下の界面の領域で基板内に延びる複数の冷却チャネルと、基板に形成されて冷却剤入口を複数の冷却チャネルに接続する分配部と、基板に形成されて複数の冷却チャネルを冷却剤出口に接続する回収部とを備えた光学素子に関する。本発明は、少なくとも1つの上記光学素子と、複数の冷却チャネルに冷却剤を流すように設計された冷却装置とを備えた光学装置、特にEUVリソグラフィシステムにも関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ用の、特にEUVリソグラフィ用の反射光学素子が受ける熱負荷は、これらの素子の動作で用いられる放射源の高出力化により大きさを増している。これは特に、EUVリソグラフィ用の投影系のミラーに当てはまる。原理上、簡単のために以下でミラーとも称するこのタイプの反射光学素子の基板に対して、できる限り「ゼロ」に近い熱膨張係数を有する材料の利用が試みられる。実際には、ゼロクロス温度とも称する特定の温度でこの要件を満たすのが最善である。
【0004】
このような投影系のミラーは、設定又は照明状態に応じて加熱の程度が異なる結果として、ゼロクロス温度付近でしか動作することができない。これにより、ミラー、より正確には反射コーティングを有する表面が、照射中に熱負荷により変形する。熱負荷の増加に伴い、この「ミラー加熱」問題は、ミラーが配置される光学装置の性能に制限的な効果を及ぼす。
【0005】
この問題の解決にはメカトロニクス的手法がある。別の比較的単純な概念は、各ミラーを直接冷却すること、すなわちミラーの基板に、より正確には基板に形成された冷却チャネルに冷却流体を流すことにある。この概念の利点は、冷却流体の温度によりミラーの温度を比較的正確に設定可能であること、すなわちミラーが熱基準を有することにある。
【0006】
光学装置の、特にEUVリソグラフィ装置のミラーの直接冷却には、最適なバランスを見出さなければならない複数の境界条件が適用される。反射コーティングを塗布された表面の下に延びる複数の略平行な冷却チャネルが基板に形成されれば好都合であることが分かった。幾何学的設計に十分な遊びを有するために、これらの冷却チャネルのチャネル形状は基板の2つ以上の部分体に形成され、これらが適当な結合方法又は場合によってはオプティカルコンタクト接合により1つ又は複数の界面で相互に接続される。基板の界面ができる限り少なければ有利である。
【0007】
さらにミラーの基板での直接接続をできる限り少なくするために、基板の冷却剤入口を複数の冷却チャネルに接続する分配部と基板の複数の冷却チャネルを冷却剤出口に接続する回収部とが必要である。
【0008】
特許文献1は、界面に沿って合体された第1材料からなる第1層及び第2材料からなる第2層を有するミラーの形態の光学素子を開示している。この光学素子は、界面の領域に延びて光学素子を冷却するよう構成された冷却装置も有する。冷却装置は、冷却剤、例えば冷却水を流すことができる複数の冷却チャネルを有し得る。冷却チャネルは、相互に平行に延在すると共に、冷却剤入口又は冷却剤出口に接続されたサイドチャネルに側方で通じることができる。
【0009】
冷却流体、特に冷却液が冷却チャネルを流れると、冷却チャネル内で、特に分配部又は回収部内で内圧が生じ、当該内圧は、反射コーティングを塗布された表面の望ましくない変形につながる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2019 217 530号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、反射コーティングが施された光学素子の表面の変形を冷却流体での直接冷却により低減することを可能にする、光学素子及び光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様によれば、この目的は、前述のタイプの光学素子であって、分配部及び/又は回収部が界面から始まって基板の第1部分体よりも基板の第2部分体に大きく延在する光学素子により達成される。
【0013】
第1部分体及び第2部分体への分配部/回収部の延在範囲は、基板の厚さ方向に関係する。第1部分体への分配部/回収部の延在範囲は概して非常に小さい。界面から第1部分体への分配部/回収部の最大距離は、特に第1部分体への各冷却チャネルの最大延在範囲以下であり得る。これに対して、第2部分体への分配部/回収部の(最大)延在範囲は、概して第2部分体への各冷却チャネルの最大延在範囲よりも(大幅に)大きい。第2部分体への分配部/回収部の延在範囲は、特に第1部分体への分配部/回収部の延在範囲の5倍以上に相当し得る。分配部及び/又は回収部は、場合によっては、界面から始まって第1部分体ではなく第2部分体にのみ延び得る。
【0014】
2つの部分体間の界面に沿って延びる特許文献1に記載のサイドチャネルの場合とは異なり、本発明のこの態様の場合、分配部及び/又は回収部は主に、場合によっては完全に、第2部分体に配置され、すなわち、分配部及び/又は回収部は、界面から始まって第1部分体内よりも第2部分体内に大きく延びる。この場合、分配部及び/又は回収部は、界面に沿って延在する冷却チャネルに接続される。このようにして、分配部/回収部の領域の冷却流体の内圧により生じる可能性がある、反射コーティングを有する領域の第1部分体の表面の形状に対する基板の変形の影響を低減することが可能である。
【0015】
各冷却チャネルの断面は、2つの部分体間で分割され得る。この場合、例えば特許文献1に記載のように、第1部分体に各溝状凹部を形成することができ、第2部分体に別の溝状凹部を形成することができ、2つの部分体が界面に沿って接続されると2つの溝状凹部が接合されて単一の冷却チャネルを形成する。この場合、各溝状凹部は、第1部分体及び第2部分体の両方にフライス加工される。しかしながら、溝状凹部が第1部分体のみ又は第2部分体のみにフライス加工されて、他方の部分体が冷却チャネルの断面を形成するために蓋のように凹部を覆う可能性もある。いずれの場合も、界面が各冷却チャネルの断面内又は断面の縁上に延びる結果として、分配部/回収部が基板の第2部分体内に界面の領域まで延びていれば、各冷却チャネルを冷却剤入口又は冷却剤出口に接続するのに原理上は十分である。しかしながら、分配部/回収部は、例えば第1部分体に延在する断面部分で冷却チャネルを相互に接続するために、第1部分体にも延在することができる。
【0016】
分配部及び回収部は、原理上は同じ構成を有し得る。この場合、光学素子において分配部を回収部と区別できるのは、冷却媒体が光学素子及び/又は冷却チャネルを流れるときだけである。しかしながら、冷却媒体の流れを最適化するために、分配部及び回収部が異なる設計を有する、すなわち異なる幾何学的形状を有することも可能である。
【0017】
さらに別の実施形態において、分配部及び/又は回収部は、第2部分体において、場合によっては第1部分体においても、少なくとも界面から始まる部分で基板の厚さ方向に対して30°以下の角度に位置合わせされる。反射コーティングを有する表面に対する分配部/回収部の内圧の効果を低減するために、少なくとも界面から始まる部分で第1部分体の表面及び/又は界面に対して分配部/回収部を傾斜させることが有利である。このように、冷却流体の内圧に起因して膨らみ得る分配部/回収部の表面域も表面に対して傾斜し、その結果として表面の幾何学的形状に対する膨らみの効果が低減される。分配部/回収部は、界面に接続された部分では、特に基板の厚さ方向に且つ/又は基板の厚さ方向と平行に、すなわち第2部分体の略平面状の底面に対して垂直に延在し得るが、これは必須ではない。
【0018】
さらに別の実施形態において、分配部及び/又は回収部は、第2部分体において、場合によっては第1部分体においても、少なくとも界面から始まる部分で、反射コーティングで覆われない表面の部分領域の下に延びる。反射コーティングを塗布された表面の領域の、又は反射コーティングの光学的利用部分領域の大きな変形を回避するために、光学的利用表面域からできる限り遠くに分配部/回収部を位置決めすることが好都合である。この実施形態では、通常は、冷却チャネルが反射コーティングで覆われない表面の部分領域にも延在する必要がある。流体圧の効果を低減するために、分配部/回収部が、反射コーティングで覆われない表面の部分領域には延在するが、反射コーティングの光学的利用部分領域には延在しないことも可能であり得る。光学装置での、例えばEUVリソグラフィ装置での光学素子の照射時に、使用放射線が光学的利用部分領域に照射される。
【0019】
特に上述の態様と組み合わせることができる本発明のさらに別の態様において、分配部は、冷却剤入口から界面へ向かって広がる分配チャンバを有し、且つ/又は回収部は、界面から冷却剤出口へ向かって窄まる回収チャンバを有する。
【0020】
本発明のこの態様では、分配部/回収部、より正確には分配チャンバ/回収チャンバは、分配部/回収部が第1部分体よりも第2部分体に大きく延在することなく第1部分体と第2部分体との間の界面に沿って延びることもできる。この場合、分配チャンバ/回収チャンバが界面に沿ってできる限り平坦な形態を有することが好都合である。各チャンバの流通断面が広がる又は窄まることで、流れに関して最適化された分配部/回収部の実質的に三角形の又は漏斗状の幾何学的形状が実現される。しかしながら、この幾何学的形状は、分配部/回収部の表面積を比較的大きくもする。このこと、及び界面ひいては分配部/回収部が反射コーティングを塗布された表面から概して小さな距離で延びることにより、分配チャンバ/回収チャンバの内圧で表面が膨らむ可能性もある。
【0021】
したがって、分配チャンバ/回収チャンバが2つの部分体間の界面に沿って延在する場合、反射コーティングで覆われない表面の部分領域の下にのみこれらが延びれば好都合であることが分かった(上記参照)。
【0022】
この実施形態の改良点では、分配チャンバは、冷却剤入口から界面まで延在し、且つ/又は回収チャンバは、界面から冷却剤出口まで延在する。特に、この場合、分配チャンバ/回収チャンバが、上述したように界面から始まって基板の厚さ方向に対して実質的に垂直に位置合わせされれば好都合である。
【0023】
しかしながら、この場合、分配チャンバ/回収チャンバは、冷却流体の内圧が作用し、ひいては表面の変形につながり得る大きな表面積を依然として有する。したがって、分配チャンバ/回収チャンバは、界面で横方向の大きさが最大なので、界面まで延在しないか又は界面に直接接続されなければ好都合である。
【0024】
代替的な実施形態において、分配部及び/又は回収部は、それぞれの少なくとも1つの冷却チャネルを冷却剤入口又は冷却剤出口に接続する接続チャネルを有する、界面から始まる部分を有する。この実施形態では、冷却チャネルは、界面の領域で冷却チャネルの1つ又は複数に接続された接続チャネルに続く。
【0025】
接続チャネルは、界面から始まる部分で、特に基板の厚さ方向に対して30°以下の角度に位置合わせされ得る。このようにして、表面の光学的利用部分領域の縁付近及び/又は反射コーティングで覆われた表面の部分領域付近の冷却チャネルは、実質的に鉛直方向に変向される。このようにして、冷却チャネル及び/又は接続チャネルは、基板の表面から且つ/又は界面から厚さ方向に離間した分配部/回収部のさらに別の部分で分配するか又は合流させることができる。
【0026】
原理上、冷却チャネルを正確に1つの接続チャネルに割り当てることが可能である。この場合、接続チャネルは、冷却チャネルが基板の第2部分体に続く部分となる。接続チャネルは、通常は基板の第2部分体に穿設され、すなわち接続チャネルは穿孔である。
【0027】
概して、比較的小さな断面積をそれぞれが有する複数の、例えば10個以上の冷却チャネルが基板に形成される。したがってさらに、概して比較的大きな長さ又は深さを有する接続チャネルの穿設時に、基板の第2部分体が穿設作業中に損傷を受けるという製造関連リスクがある。
【0028】
上記実施形態の改良点では、各接続チャネルが少なくとも2つの、特に正確に2つの冷却チャネルに接続される。このようにして、冷却チャネルに直接隣接する接続チャネルの断面積は、その断面積の少なくとも2倍に拡大され、その結果として、接続チャネルの穿設時の製造リスクを下げることができる。
【0029】
さらに別の改良点では、各接続チャネルの断面が界面から特に段階的に縮小する。隣接する接続チャネル間の距離が比較的小さく、接続チャネルの断面が比較的大きいことにより流体圧が加わる接続チャネルの表面積が比較的大きい場合、接続チャネルの孔径を変える、特に界面から縮小させることが好都合であり得る。各接続チャネルの断面は、特に段階的に縮小させることができ、すなわち接続チャネルは、接続チャネルの断面が徐々に縮小する1つ又は場合によっては複数の段階を有する。原理上、各接続チャネルの断面を連続的に変更又は縮小させることも可能である。
【0030】
さらに別の実施形態において、分配チャンバは、分配部の接続チャネルを有する分配部の部分に接続され、且つ/又は回収チャンバは、回収部の接続チャネルを有する回収部の部分に接続される。この場合、接続チャネルにより、分配チャンバ/回収チャンバは、反射コーティングを有する表面から且つ/又は2つの部分体間の界面から基板の厚さ方向に離間する。表面からの距離が大きいことで、冷却流体の圧力に起因した各チャンバの膨らみにより生じる基板の変形が表面の幾何学的形状に及ぼす効果が、分配チャンバ/回収チャンバが界面に直接接続される上述の場合よりも小さくなる。
【0031】
この実施形態の改良点では、分配チャンバ及び/又は回収チャンバは、第2部分体と基板の第3部分体との間の別の界面に沿って延在し、第3部分体はこの別の界面において第2部分体と合体される。上記別の界面は、特に第1部分体が第2部分体と合体される界面と実質的に平行に延在することができる。このようにして、分配チャンバ及び/又は回収チャンバは、界面から別の界面まで基板の厚さ方向にオフセットされる。分配チャンバ及び/又は回収チャンバを界面から厚さ方向にオフセットさせようとする場合、チャンバは漏斗状の幾何学的形状により第2部分体のみに容易に実現できないので、上記別の界面が概して必要である。
【0032】
さらに別の実施形態において、分配部の接続チャネルは、冷却剤入口に接続された共通の入口チャネルに通じており、且つ/又は回収部の接続チャネルは、冷却剤出口に接続された共通の出口チャネルに通じている。入口チャネル及び/又は出口チャネルは、通常は第2部分体の穿孔の形態である。入口チャネル及び/又は出口チャネルは、特に第2部分体及び/又は基板の底面と実質的に平行に延び得るが、これは必須ではない。入口チャネル及び/又は出口チャネルは、接続チャネルに通じる第2部分体の横孔を形成し得る。冷却剤入口及び/又は冷却剤出口は、入口チャネル及び出口チャネルそれぞれの自由端の開口の形態であり得る。
【0033】
さらに別の実施形態において、冷却剤入口及び/又は冷却剤出口は、基板の第2部分体及び/又は第3部分体に形成される。冷却剤入口及び/又は冷却剤出口は、例えば第2部分体及び/又は第3部分体の側面に開口を形成し得るが、冷却剤入口及び/又は冷却剤出口を基板の下側に、すなわち基板のうち界面及び/又は別の界面とは反対側の表面に形成することも可能である。冷却剤入口及び/又は冷却剤出口の領域では、基板は、通常は冷却剤ラインを冷却剤入口及び/又は冷却剤出口に容易に接続できるような形状である。
【0034】
さらに別の実施形態において、複数の冷却チャネルの各冷却チャネルの断面は、第1部分体と第2部分体との間で分割される。上述したように、冷却チャネルの又は冷却チャネルの1つ又は複数の断面積を2つの部分体間で分割することが可能である。この場合、冷却チャネルは、略平面状の界面内に又はこれと平行に延びない。
【0035】
さらに別の実施形態において、反射コーティングを塗布された基板の表面が湾曲しており、且つ/又は冷却チャネル自体が(基板の厚さ方向に)湾曲しており、湾曲した冷却チャネルは、湾曲した表面から一定の距離を有することが好ましい。このタイプの基板の場合、2つの部分体間の冷却チャネルの断面の上記分割は、特に界面自体が表面の曲率に従わずに例えば平面形態を有する場合に好都合である。この場合、2つの部分体間の断面の分割により、平面状の界面にもかかわらず、湾曲した冷却チャネルが湾曲した表面に従う結果として冷却チャネルが湾曲した表面から一定の距離で延びることが確実になる。この場合、表面の曲率に従う曲率を有する溝状凹部が、概して第1部分体だけでなく第2部分体にも導入される。この場合、冷却チャネルは、第1部分体の対応する湾曲した溝状凹部と第2部分体の溝状凹部とを界面に沿って合体させることにより形成される。これにより、湾曲した冷却チャネルがその長さにわたって一定のチャネル断面を有するようにすることができる。
【0036】
本発明のさらに別の態様は、上述のように形成された少なくとも1つの光学素子と、複数の冷却チャネルに冷却剤を流すように設計された冷却装置とを備えた、光学装置、例えばEUVリソグラフィシステムに関する。EUVリソグラフィシステムは、ウェハの露光用のEUVリソグラフィ装置であってもよく、又はEUV放射線を用いる他の何らかの光学装置、例えばEUVリソグラフィで用いられるマスク、ウェハ等の検査用のEUV検査システムであってもよい。反射光学素子は、特にEUVリソグラフィ装置の投影系のミラーであり得る。例として、冷却装置は、冷却流体の形態の冷却剤、例えば、例えば冷却水等の形態の冷却液を冷却チャネルに流すように設計され得る。この目的で、冷却装置は、ポンプと、適当な供給及び排出ラインとを任意に有し得る。光学装置は、別の波長域用、例えばDUV波長域用のリソグラフィシステム、例えばDUVリソグラフィシステム、又はマスク、ウェハ等の検査用の検査システムであってもよい。
【0037】
本発明のさらに他の特徴及び利点は、本発明に必須の詳細を示す図面の図を参照した本発明の以下の例示的な実施例の説明から、また特許請求の範囲から明らかになる。個々の特徴のそれぞれを、単独で又は本発明の一変形形態において複数の任意の組み合わせで実施することができる。
【0038】
例示的な実施形態を概略図に示し、以下の説明で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】EUV投影リソグラフィ用の投影露光装置の概略子午線断面を示す。
図2】基板の2つの部分体間の界面に沿って延びる複数の冷却チャネル並びに分配チャンバ及び回収チャンバを有するミラーの概略図を示す。
図3図3a、図3bは、分配チャンバ及び回収チャンバが第2部分体のみに形成されて基板の厚さ方向に延在する、ミラーの概略図を示す。
図4図4a、図4bは、基板の第2部分体と第3部分体との間の別の界面に沿って延びる分配チャンバ及び回収チャンバを有するミラーの概略図を示す。
図5図5a、図5b、図5cは、冷却チャネルを分配部の入口チャネルに接続するために厚さ方向に延びる接続チャネルを有するミラーの概略図を示す。
図6図6a、図6bは、冷却チャネルが第1部分体及び第2部分体の両方に延びる断面を有する、湾曲した表面を有する図5a~図5cと同様のミラーの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の図面の説明において、同じ又は同じ機能を有するコンポーネントには同一の参照符号を用いる。
【0041】
マイクロリソグラフィ投影露光装置1の形態のEUVリソグラフィ用の光学装置の必須構成要素について、図1を参照して例として以下で説明する。投影露光装置1及びその構成要素の基本構成の説明は、この場合は制限的な効果を有すると理解すべきでない。
【0042】
投影露光装置1の照明系2の一実施形態は、光源又は放射源3に加えて、物体面6の物体視野5の照明用の照明光学ユニット4を有する。代替的な実施形態において、光源3は、残りの照明系とは別個のモジュールとして設けることもできる。この場合、照明系は放射源3を含まない。
【0043】
物体視野5に配置されたレチクル7が照明される。レチクル7は、レチクルホルダ8により保持される。レチクルホルダ8は、レチクル変位ドライブ9により特に走査方向に変位可能である。
【0044】
投影露光装置1の照明系2の一実施形態は、光源又は放射源3に加えて、物体面6の物体視野5の照明用の照明光学ユニット4を有する。代替的な実施形態において、放射源3は、残りの照明系とは別個のモジュールとして設けることもできる。この場合、照明系は放射源3を含まない。
【0045】
説明のために、直交xyz座標系を図1に示す。x方向は図の平面に対して垂直に延びる。y方向は水平に延び、z方向は鉛直に延びる。走査方向は図1ではy方向に延びる。z方向は物体面6に対して垂直に延びる。
【0046】
投影露光装置1は、投影系10を備える。投影系10は、物体視野5を像面12の像視野11に結像する働きをする。レチクル7上の構造が、像面12の像視野11の領域に配置されたウェハ13の感光層に結像される。ウェハ13は、ウェハホルダ14により保持される。ウェハホルダ14は、ウェハ変位ドライブ15により特にy方向に沿って変位可能である。一方ではレチクル変位ドライブ9によるレチクル7の変位と、他方ではウェハ変位ドライブ15によるウェハ13の変位とは、相互に同期され得る。
【0047】
放射源3は、EUV放射源である。放射源3は、特に以下で使用放射線、照明放射線、又は照明光とも称するEUV放射線16を出射する。特に、使用放射線は、5nm~30nmの範囲の波長を有する。放射源3は、プラズマ源、例えばLPP(レーザ生成プラズマ)源又はGDPP(ガス放電プラズマ)源であり得る。これは、シンクロトロンベースの放射源でもあり得る。同様に、放射源3は自由電子レーザ(FEL)であり得る。
【0048】
放射源3から出る照明放射線16は、コレクタミラー17により集束される。コレクタミラー17は、1つ又は複数の楕円反射面及び/又は双曲反射面を有するコレクタミラーであり得る。照明放射線16は、コレクタミラー17の少なくとも1つの反射面に斜入射(GI)で、すなわち45°よりも大きな入射角で、又は垂直入射(NI)で、すなわち45°よりも小さな入射角で入射し得る。コレクタミラー17は、第1に使用放射線に対する反射率を最適化するために、第2に外来光を抑制するために構造化且つ/又はコーティングされ得る。
【0049】
照明放射線16は、コレクタミラー17の下流で中間焦点面18の中間焦点を伝播する。中間焦点面18は、放射源3及びコレクタミラー17を有する放射源モジュールと照明光学ユニット4とを分離し得る。
【0050】
照明光学ユニット4は、偏向ミラー19と、ビーム経路でその下流に配置された第1ファセットミラー20とを備える。偏向ミラー19は、平面偏向ミラーであり得るか、あるいは純粋な偏向効果を超えたビーム影響効果を有するミラーであり得る。代替として又は追加として、偏向ミラー19は、照明放射線16の使用光波長をそこから逸脱する波長の迷光から分離する分光フィルタの形態であり得る。第1ファセットミラー20は、以下で視野ファセットとも称する複数の個別の第1ファセット21を含む。図1は、当該ファセット21のいくつかのみを例として示す。照明光学ユニット4のビーム経路で、第1ファセットミラー20の下流に第2ファセットミラー22が配置される。第2ファセットミラー22は、複数の第2ファセット23を含む。
【0051】
照明光学ユニット4は、結果として二重ファセットシステムを形成する。この基本原理は、フライアイコンデンサ(フライアイインテグレータ)とも称する。個々の第1ファセット21は、第2ファセットミラー22を用いて物体視野5に結像される。第2ファセットミラー22は、物体視野5の上流のビーム経路で最後のビーム整形ミラー又は実際に照明放射線16に対する最終ミラーである。
【0052】
投影系10は、複数のミラーMiを含み、これらには投影露光装置1のビーム経路におけるそれらの配置に従って連続して番号を付す。
【0053】
図1に示す例において、投影系10は、6個のミラーM1~M6を含む。4個、8個、10個、12個、又は任意の他の数のミラーMiでの代替も同様に可能である。最後から2番目のミラーM5及び最終ミラーM6はそれぞれ、照明放射線16の通過開口を有する。投影系10は、二重遮蔽光学ユニットである。投影系10は、0.4又は0.5よりも大きく、0.6よりも大きくてもよく、例えば0.7又は0.75であり得る像側開口数を有する。
【0054】
照明光学ユニット4のミラーと同様に、ミラーMiは、照明放射線16に対して高反射コーティングを有することができる。
【0055】
図2は、第1部分体26a及び第2部分体26bから形成された基板25を含む、投影系10のミラーM4を例として示す。図示の例では板状である第1部分体26aと、基板25の本体を形成する第2部分体26bとは、図示の例では平面である共通の界面27で合体又は相互に接続されるが、これは必須ではない。2つの部分体26a、26b間の接続は、従来の接合又は結合プロセスにより、例えば高温若しくは低温接合により、又はオプティカルコンタクト接合により設けられる。第1部分体26a及び第2部分体26bの材料は同一であり得るが、異なる材料を含んでもよい。図示の例では、第1部分体26aの材料及び第2部分体26bの材料の両方が、超低膨張ガラス(ULE(登録商標))である。基板25又は2つの部分体26a、26bは、熱膨張係数ができる限り小さい別の材料、例えばガラスセラミック、例えばZerodur(登録商標)からできていてもよい。
【0056】
反射コーティング29が、界面27とは反対側の第1部分体26aの露出表面28に塗布される。反射コーティング29内に位置付けられた表面28の部分領域30に、投影系10のEUV放射線16が当たり、部分領域30は、反射コーティング29の光学的利用部分領域を形成する。反射コーティング29は、例えば、屈折率の実部が異なる材料からなる複数の層対を含むことができ、層は、EUV放射線16の波長が13.5nmの場合は例えばSi及びMoから形成され得る。第1部分体26aの表面28は、図2では平面として表されるが、曲率を有することもできる。
【0057】
図2に示す例では、反射コーティング29が塗布された表面28の下に延びる複数の冷却チャネル31が、界面27の領域で基板25に形成される。図2に示す例では、約20個の冷却チャネル31があり、これらは、反射コーティング29の光学的利用部分領域30の両側にある分配部32と回収部33との間で表面28の下に延在する。図2に示す例では、冷却チャネル31は、相互に平行に位置合わせされる。図2の例では、分配部32は、複数の冷却チャネル31を共通の冷却剤入口34に接続する分配チャンバ32aを有し、冷却剤入口34は、第2部分体29bの開口を形成する。これに対応して、回収部33は、複数の冷却チャネル31を共通の冷却剤出口35に接続する回収チャンバを形成し、冷却剤出口35も同様に、第2部分体29bの開口の形態である。
【0058】
図2に見られるように、分配チャンバ32aは、冷却剤入口34から分配チャンバ32aに通じる冷却チャネル31の端まで漏斗状に広がっている。これに対応して、回収チャンバ33aは、冷却チャネル33の端から冷却剤入口35まで漏斗状に窄まっている。分配チャンバ32a及び回収チャンバ33aは、界面27に沿って延在し、基板25の厚さ方向にできる限り平坦に形成される。図2に示す例では、分配チャンバ32a及び回収チャンバ33aは、第1部分体26a及び第2部分体26bの両方に延在する。分配チャンバ32a及び回収チャンバ33aは、全ての冷却剤チャネル31間での分配をできる限り均等にすると共に冷却水の流れによる動的励振をできる限り小さくするために、流れに関して最適化された実質的に三角形の幾何学的形状を有する。
【0059】
冷却剤を冷却剤入口34に供給し、冷却剤を冷却剤出口35から排出するために、投影露光装置1は、図1に概略的に表す冷却装置36を備える。図示の例では、冷却装置36は、冷却水の形態の冷却剤を冷却チャネル31又はミラーM4に供給する働きをし、この目的で、冷却剤入口34に液密に接続される不図示の供給ラインを含む。冷却装置36は、冷却水を冷却剤出口35から排出するために、不図示の排出ラインも含む。冷却目的で、投影系10の他のミラーM1~M3、M5、M6も、冷却装置36に、又は場合によってはこの目的で設けられたさらに他の冷却装置に接続することができる。
【0060】
分配チャンバ32a又は回収チャンバ33aを流れる冷却水の圧力により、基板25が膨らむ結果として、表面28の幾何学的形状が変わる可能性がある。分配チャンバ32a及び/又は回収チャンバ33aが、表面28の光学的利用部分領域30に相対的に近接していることにより、光学的利用部分領域30の望ましくない変形がこのように起こり得る。
【0061】
反射コーティング29の光学的利用部分領域30に対する分配チャンバ32a及び/又は回収チャンバ33aの膨らみの効果を低減するために、図3a、図3bに示すミラーM4の場合、分配部32又は分配チャンバ32a及び回収部33又は回収チャンバ33aは、界面27から基板の第2部分体26aのみに延在する。原理上、第1部分体26aでも冷却チャネル31の端同士をさらに接続するために、分配チャンバ32a及び/又は回収チャンバ32bが界面27から第1部分体26aに延在することが可能である。図3aに見られるように、分配チャンバ32aは、基板25の下側に形成された冷却材入口34から界面27まで延在する。これに対応して、図3a、図3bには図示しない回収チャンバ33aも、界面27から同様に基板25の下側に形成された冷却剤出口35まで延在する。
【0062】
分配チャンバ32a、より正確には分配チャンバ32aの中心面Mは、この点で、基板25の厚さ方向Zと平行に位置合わせされる。図3aの部分断面に見られるように、中心面Mは、Z方向及びX方向に延びる。分配チャンバ32aは、中心面Mに対して実質的に鏡面対称である。中心面Mは、第2部分体26bの下側の開口を形成する冷却剤入口34も通って延びる。この場合、第2部分体26bの下側は、厚さ方向に対して垂直にXYZ座標系のXY平面に延在する。これにより、ミラーM4の表面28又は表面28の光学的利用部分領域30と平行な流体圧により膨らみ得る分配チャンバ32aの表面積が大幅に小さくなる。したがって、分配部32及び/又は回収部33を第2部分体26bにかけて傾斜させることで、ミラーM4の表面28の光学的利用部分領域30の変形を低減することが可能となる。
【0063】
分配チャンバ32aが基板25の厚さ方向Zに延びることは必須ではなく、分配チャンバ32a、より正確にはその中心面Mは、厚さ方向Zに対して概して約30°以下であるべき角度αに位置合わせすることもできる。図3aの部分断面で見ることができる回収部33又は回収チャンバ33aは、図示の例では、基板25の表面28の光学的活性部分領域30のうちY方向で反対側に位置する側で、分配部32又は分配チャンバ32aと同一の構造を有する。しかしながら、構造的に同一の設計は必須ではない。例えば流れに関する理由から、分配部32及び/又は分配チャンバ32a及び回収部33及び/又は回収チャンバ33aが異なる幾何学的形状を有すれば有利であり得る。
【0064】
特に図3bに見られるように、分配チャンバ32a及び回収チャンバ33aの両方が、反射コーティング29で覆われない表面28の部分領域37の下で、特に表面28の光学的利用部分領域30の下ではない部分でも、Z方向に延びる。これにより、図3aで見える、圧力を受け、分配チャンバ32a内に形成され、且つ膨らみ得る三角形表面域の、表面28の光学有効部分領域30からの距離が大きくなる。分配チャンバ32a及び回収チャンバ33aが2つの部分体26a、26b間で界面27に沿って延在する図2に示すミラーM4の場合の横方向の構造空間は、これに十分なので、このような配置は、図2に示すミラーM4の場合にも基本的に可能である。
【0065】
図4a、図4bに示すミラーM4の場合、基板25は、第1及び第2部分体26a、26bに加えて第3部分体26cを有する。第3部分体26cは、別の界面38で第2部分体26bと接続又は合体され、同様にULE(登録商標)からなる。接続は、第1及び第2部分体26a、26b間の界面27における上述の接続のように形成することができる。図4a、図4bに示す回収部32は、第1及び第2部分体26a、26b間の界面27に接続されて界面27から基板25の第2部分体26bに延在する部分39を有する。基板25の厚さ方向Zに延在する接続チャネル40は、界面27に接続された分配部32の部分39に形成される。
【0066】
図3a、図3bに示す例の場合のように、図4a、図4bでも、接続チャネル40を基板25の厚さ方向に位置合わせすることは必須ではなく、図3a、図3bのように、厚さ方向Zに対して通常は30°以下の角度αに接続チャネル40を位置合わせすることが可能である。原理上、接続チャネル40を基板25の厚さ方向Zに対して位置合わせする角度αが、基板25において変わっても有利であり得る。
【0067】
図4a、図4bに示す例では、各接続チャネル40が正確に1つの冷却チャネル31に接続され、下向きに第2部分体26bに続く。換言すれば、各冷却チャネル31は、それに割り当てられた接続チャネル40により、界面27と平行な配列から第2部分体26bへ変向される。図4a、図4bに示す例では、接続チャネル40は、光学的活性部分領域30で覆われない表面28の部分領域の下に延びる。
【0068】
図4a、図4bに示す例では、冷却剤は、冷却チャネル40に接続された分配チャンバ32aを介して個々の冷却チャネル31間に分配される。接続チャネル40は分配チャンバ32aに通じ、分配チャンバ32aは接続チャネル40を冷却剤入口34に接続する。図4a、図4bに示す例では、分配チャンバ32aは、基板25の第2及び第3部分体26b、26c間の別の界面38に沿って延在する。図示の例では、別の界面38は、第3部分体26cの底面と平行な平面に延在するが、そのような配列は必須ではない。冷却剤入口34は、第3部分体26cを通って延びて基板25の下側で終わる開口を形成する。代替として、冷却剤入口34は、第2部分体26cに形成され得る。図4a、図4bに示すミラーM4の場合、漏斗状の分配チャンバ32aの表面域は、図3a、図3bに示すミラーM4の場合よりも基板25の表面28から大きく離間し得る。回収部33は、分配部32と同様の形態を有する。
【0069】
図4a、図4bに示すミラーM4の場合、Z方向に延びる接続チャネル40を冷却剤入口34に接続するために別の界面38が必要である。
【0070】
図5a~図5cに示すミラーM4の場合、分配部32の接続チャネル40は、共通の入口チャネル41に接続される。図5a~図5cに示すミラーM4の場合、入口チャネル41は、第2部分体26bにおける横孔又は盲孔の形態である。接続チャネル40は、共通の入口チャネル41から上方(Z方向)に第1部分体26aの表面28向かって分岐する。図5a~図5cに示す例の場合、冷却剤入口41は、基板25の第2部分体26bの側面に形成された入口チャネル41の開口を形成する。回収部33は、分配部32と構造的に同一であり、共通の出口チャネル42に通じる接続チャネル40を同様に有するが、共通の出口チャネル42は図5a~図5cでは基板25で隠れており、冷却剤出口35に接続される。
【0071】
図4a、図4bに示すミラーM4及び図5a~図5cに示すミラーM4の両方の場合に、接続チャネル40は、基板25の第2部分体26bの穿孔の形態である。図4a、図4b及び図5a~図5cのように、第2部分体26b内に比較的深く延在する多くの接続チャネル40がある場合、穿設作業中に、接続チャネル40の作製時に第2部分体26bが損傷を受けるか又は最悪の場合は破壊される可能性があるという製造リスクが少なからずある。
【0072】
このリスクを低減するために、図5bに示す例では、各接続チャネル40が1つではなく2つの隣接する冷却チャネル31それぞれに接続される。このようにして、接続チャネル40を、図5aに示す例の場合よりも大きな断面で製造することができる。場合によっては、製造リスクをさらに低減するために、3つ以上の概ね隣接する冷却チャネル31を同一の接続チャネル40に接続することも可能である。
【0073】
圧力を受ける接続チャネル40の断面積が大きすぎ、且つ/又は基板25の接続チャネル40間のリブ小さすぎる場合、図5cに示すように接続チャネル40を段付き孔の形態にすることが好都合である。この場合、接続チャネル40は、界面27に直接隣接して、各接続チャネル40を2つの冷却チャネル31それぞれに接続するのに十分な第1断面積A1を有する。一段階で、第1断面積A1はより小さな第2断面積A2に縮小され、その結果として2つの隣接する接続チャネル40それぞれの間の距離が大きくなる。各接続チャネル40は、界面27から入口チャネル41までの断面積A1、A2等を縮小するために、場合によっては2つ以上の段を有することもできる。界面27から分配チャンバ32aまでの各接続チャネル40の断面積A1、A2等の縮小は、図4a、図4bに示すミラーM4の場合にも可能である。
【0074】
図6a、図6bは、分配部32及び回収部33が図5aのように設計されるミラーM4の基板25の断面を示す。図6a、図6bのミラーM4の場合、分配部の各接続チャネル40が共通の入口チャネル41に接続され、そこから第1部分体26aの表面28に向かって分岐する。入口チャネル41は、図6a、図6bに示さない冷却剤入口に接続される。回収部は、構造的に同一であり、冷却チャネル31に対する接続チャネル40を有し、接続チャネル40は、図6a、図6bに示さない冷却剤出口に接続された共通の出口チャネル42に通じる。
【0075】
図5aに示すミラーM4とは異なり、図6a、図6bに示す例の場合の冷却チャネル31は、2つの部分体26a、26b間で分割される断面を有し、すなわち、2つの部分体26a、26b間の平面状の界面27は、冷却チャネル31の断面又は断面積Aを通って延びる。したがって、冷却チャネル31は、第1部分体26aに形成された第1溝状凹部43aと、第2部分体26bに形成された第2溝状凹部43bとからなる。2つの部分体26a、26b間での冷却チャネル31の断面のこのような分割は、図6a、図6bの場合のように基板25の表面28が湾曲している場合に特に好都合である。
【0076】
この場合も、湾曲した表面28からの冷却チャネル31の距離Dは、冷却チャネル31の長さにわたって実質的に一定とすべきである。これには、冷却チャネル31の曲率を表面28の曲率に従わせて又は対応させて冷却チャネル31を湾曲させる必要がある。2つの部分体26a、26b間の界面27は平面なので、冷却チャネル31の長さにわたって一定の断面積Aを有する冷却チャネル31は、この場合、図6a、図6bに示すように、湾曲した第1溝状凹部43aが第1部分体26aに形成されるだけでなく湾曲した第2溝状凹部43bも第2部分体26bに形成される場合にのみ実現できる。言うまでもなく、図2図3a、図3b、図4a、図4b、及び図5bに関連して上述したミラーM4の冷却チャネル31も、対応する設計を有することができ、すなわちそれらの断面を2つの部分体26a、26b間で分割することができる。
【0077】
単一の分配部32及び/又は単一の回収部33の代わりに、反射コーティング29を有する表面28の下に延びる複数の冷却チャネル31それぞれを冷却剤入口34及び冷却剤出口35それぞれに接続するために、複数の分配部32及び/又は回収部33を基板25に形成することも任意に可能である。しかしながら、原理上は、単一の冷却剤入口34及び単一の冷却剤出口35のみが基板25に形成されれば好都合である。
【0078】
EUV放射線16用の反射コーティング29の代わりに、異なる波長域の放射線用の、例えばEUV波長域用の反射コーティングを上述の光学素子に塗布してもよい。一般に、このような反射光学素子に対する基板25の熱膨張に関する要件はあまり厳しくないので、上述のものとは異なる基板材料、例えば従来の石英ガラスを利用することができる。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
【国際調査報告】