(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】切替可能なマッチ及び周波数チューニングを含むRF電力供給構造
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240220BHJP
【FI】
H05H1/46 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547526
(86)(22)【出願日】2022-02-03
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 US2022015099
(87)【国際公開番号】W WO2022169963
(87)【国際公開日】2022-08-11
(32)【優先日】2021-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド, エドワード ピー., ザ フォース
(72)【発明者】
【氏名】トラチュク, ユーリー
(72)【発明者】
【氏名】ジルノ, ドミートリイ エー.
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084CC09
2G084DD01
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD55
2G084DD57
2G084EE01
2G084EE06
2G084EE11
2G084EE12
2G084EE24
2G084EE25
2G084HH05
2G084HH08
2G084HH23
2G084HH24
2G084HH29
(57)【要約】
電力供給回路が、切替可能なマッチと、高電圧バス及び低電圧バスであって、負荷がこれらのバスの間に直列に存在するように負荷に接続可能な高電圧バス及び低電圧バスと、高電圧バスと低電圧バスとの間に接続可能な、固定容量を有する少なくとも2つのキャパシタと、高電圧バスと低電圧バスとの間に接続可能な、固定の容量を有するキャパシタの数と同数の複数のソリッドステートスイッチであって、各スイッチが、高電圧バスと低電圧バスとの間のキャパシタのうちの1つを、高電圧バスと低電圧バスとの間に電気的に接続又は電気的に切断するよう構成され配置される、複数のソリッドステートスイッチと、高電圧バスに接続された高電圧出力接続を含む可変周波数電力供給部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給回路であって、
切替可能なマッチであって、当該切替可能なマッチが接続される負荷の変化に応じて、自身の電気特性を変更するよう構成された切替可能なマッチを備え、前記マッチが、
前記負荷に接続可能な高電圧バス、
低電圧バスであって、前記負荷が前記高電圧バスと前記低電圧バスの間に直列に存在するように前記負荷に接続可能な低電圧バス、
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に選択的に接続可能な、固定値の容量を有する少なくとも2つのキャパシタ、及び、
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に接続可能な、固定値の容量を有するキャパシタの数と同数の、複数のソリッドステートスイッチであって、各スイッチが、前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に選択的に接続可能な固定値の容量を有する前記キャパシタのうちの1つを、前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間の選択的に電気的に接続又は電気的に切断するよう構成され配置される、複数のソリッドステートスイッチ
を含み、
前記電力供給回路がさらに、
前記高電圧バスに接続された高電圧出力接続を含む可変周波数電力供給部
を備える、電力供給回路。
【請求項2】
前記可変周波数電力供給回路が、DC(直流)電源と、可変周波数出力DC(直流)-AC(交流)コンバータと、を含む、請求項1記載の電力供給回路。
【請求項3】
前記可変周波数電力供給回路が増幅器をさらに含む、請求項2に記載の電力供給回路。
【請求項4】
前記可変周波数電力供給部がRF生成器である、請求項1に記載の電力供給回路。
【請求項5】
前記切替可能なマッチがLマッチとして構成される、請求項1に記載の電力供給回路。
【請求項6】
前記切替可能なマッチがπマッチとして構成される、請求項1に記載の電力供給回路。
【請求項7】
前記切替可能なマッチが、
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に電気的に接続された、前記固定容量キャパシタのうちの1つ以上の前記容量の合計を含む、第1の固定容量であって、前記切替可能なマッチが、前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第1の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された電力の大きな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送し、前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第2の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された前記電力のより小さな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送するよう構成される、第1の固定容量と、
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に電気的に接続された、前記固定容量キャパシタのうちの、前記第1の容量を提供するキャパシタとは異なる1つ以上の前記容量の合計を含む、第2の固定容量であって、前記切替可能なマッチが、前記第1の範囲とは異なる前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第3の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された前記電力の大きな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送し、前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第4の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された前記電力のより小さな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送するよう構成される、第2の固定容量と、
を含むよう構成可能である、請求項1の記載の電力供給回路。
【請求項8】
前記第2の範囲の前記負荷の抵抗及びリアクタンスの前記範囲と、前記第4の範囲の前記負荷の抵抗及びリアクタンスの前記範囲と、が重なる、請求項7に記載の電力供給回路。
【請求項9】
前記第1の範囲の前記負荷の抵抗値及びリアクタンスの前記範囲と、前記第4の範囲の前記負荷の抵抗値及びリアクタンスの前記範囲と、が重なる、又は、前記第2の範囲の前記負荷の抵抗及びリアクタンスの前記範囲と、前記第3の範囲の前記負荷の抵抗及びリアクタンスの前記範囲と、が重なる、請求項7に記載の電力供給回路。
【請求項10】
前記低電圧バスが接地バスである、請求項1の記載の電力供給回路。
【請求項11】
前記ソリッドステートスイッチが、前記固定容量キャパシタの対応するものと、前記高電圧バスと、の間に電気的に介在する、請求項1の記載の電力供給回路。
【請求項12】
可変周波数電力供給部と負荷との間に接続可能なマッチであって、前記負荷の電気特性が動的に変化可能であり、前記マッチが、
前記負荷に接続可能な高電圧バス、
低電圧バスであって、前記負荷が前記高電圧バスと前記低電圧バスの間に直列に存在するように前記負荷に接続可能な低電圧バス、
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に選択的に接続可能な、固定値の容量を有する少なくとも2つのキャパシタ、及び、
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に接続可能な、固定値の容量を有するキャパシタの数と同数の、複数のソリッドステートスイッチであって、各スイッチが、前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に選択的に接続可能な固定値の容量を有する前記キャパシタのうちの1つを、前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に選択的に電気的に接続又は電気的に切断するよう構成され配置される、複数のソリッドステートスイッチ
を含む、マッチ。
【請求項13】
切替可能な前記マッチが、Lマッチ及びπマッチの一方として構成される、請求項12に記載のマッチ。
【請求項14】
前記マッチが、
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に電気的に接続された、前記固定容量キャパシタのうちの1つ以上の前記容量の合計を含む、第1の固定容量であって、切替可能な前記マッチが、前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第1の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された電力の大きな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送し、前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第2の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された前記電力のより小さな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送するよう構成される、第1の固定容量と、
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に電気的に接続された、前記固定容量キャパシタのうちの、前記第1の容量を提供するキャパシタとは異なる1つ以上の前記容量の合計を含む、第2の固定容量であって、切替可能な前記マッチが、前記第1の範囲とは異なる前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第3の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された前記電力の大きな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送し、前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第4の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された前記電力のより小さな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送するよう構成される、第2の固定容量と、
を含むよう構成可能である、請求項12の記載のマッチ。
【請求項15】
前記第2の範囲の前記負荷の抵抗及びリアクタンスの前記範囲と、前記第4の範囲の前記負荷の抵抗及びリアクタンスの前記範囲と、が重なる、請求項14に記載のマッチ。
【請求項16】
前記第1の範囲の前記負荷の抵抗値及びリアクタンスの前記範囲と、前記第4の範囲の前記負荷の抵抗値及びリアクタンスの前記範囲と、が重なる、又は、前記第2の範囲の前記負荷の抵抗及びリアクタンスの前記範囲と、前記第3の範囲の前記負荷の抵抗及びリアクタンスの前記範囲と、が重なる、請求項14に記載のマッチ。
【請求項17】
前記ソリッドステートスイッチが、前記固定容量キャパシタの対応するものと、前記高電圧バスと、の間に電気的に介在する、請求項12の記載のマッチ。
【請求項18】
電力供給部を負荷に整合させる方法であって、
電力供給回路を提供することを含み、前記電力供給回路が、
切替可能なマッチであって、当該切替可能なマッチが接続される前記負荷の変化に応じて、自身の電気特性を変更するよう構成された切替可能なマッチを含み、前記マッチが、
前記負荷に接続可能な高電圧バス、
低電圧バスであって、前記負荷が前記高電圧バスと前記低電圧バスの間に直列に存在するように前記負荷に接続可能な低電圧バス、
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に選択的に接続可能な、固定値の容量を有する少なくとも2つのキャパシタ、及び、
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に接続可能な、固定値の容量を有するキャパシタの数と同数の、複数のソリッドステートスイッチであって、各スイッチが、前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に選択的に接続可能な固定値の容量を有する前記キャパシタのうちの1つを、前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に選択的に電気的に接続又は電気的に切断するよう構成され配置される、複数のソリッドステートスイッチ
を含み、
前記方法がさらに、
前記高電圧バスに接続された高電圧出力接続を含む、可変周波数電力供給部を提供すること
を含む、方法。
【請求項19】
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に電気的に接続された、前記固定容量キャパシタのうちの1つ以上の前記容量の合計を含む、第1の固定の容量であって、前記切替可能なマッチが、前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第1の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された電力の大きな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送し、前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第2の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された前記電力のより小さな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送するよう構成される、第1の固定の容量を提供することと、
前記高電圧バスと前記低電圧バスとの間に電気的に接続された、前記固定容量キャパシタのうちの、前記第1の容量を提供するキャパシタとは異なる1つ以上の前記容量の合計を含む、第2の固定容量であって、前記切替可能なマッチが、前記第1の範囲とは異なる前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第3の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された前記電力の大きな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送し、前記負荷の抵抗値及びリアクタンス値の第4の範囲にわたって、前記可変周波数電力供給部によって自身に伝送された前記電力のより小さな割合を、自身に接続された前記負荷に伝送するよう構成される、第2の固定容量を提供することと、
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、概して、交流電力源、例えばRF周波数電力源と、半導体又は他の処理チャンバといった負荷と、の間に位置するマッチ回路に関する。これには、処理チャンバであって、負荷が、AC(交流)電源方式の要素、又は当該チャンバ内のプラズマに結合されるAC電源方式の要素を含む処理チャンバが含まれる。より詳細には、本明細書の実施形態は、電力供給部と負荷との間のマッチを提供するための方法及び装置であって、負荷の特性が動的に変化し、マッチは、負荷に電力が供給される間、マッチ回路素子間で効率よく切り替えることが可能であり、交流電力信号の周波数が同様に動的に変化可能であり、電力が印加されている状態で負荷の特性が変化する間、負荷からの最小の電力反射が可能になる、上記方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マッチ技術分野では、可変的なキャパシタを利用するマッチが知られており、ここでは、キャパシタが或る特定の範囲の容量値を有しており、例えば、可変的なキャパシタに接続されたシャフトにモータトルクを印加することでキャパシタの特性を物理的に変更し、その容量値を変更することによって、様々な値の容量が選択される。これらのモータ駆動のキャパシタは、制限された寿命を有し、マッチ内の容量値の変更を必要とする負荷特性の変化に応答するのが比較的遅い。加えて、電力供給部と負荷の間に、固定値のマッチ構成要素が配置されている場合には、可変周波数電力供給部を使用することが知られており、ここでは、負荷に対する電力供給部の整合に影響を与える負荷特性のわずかな変化が、マッチに対して電源信号の周波数を変更することによって対処されうる。しかしながら、出力周波数の変更範囲は制限されており、負荷特性が変化して負荷が電力を反射し始めたとき、又は電極供給部から供給された順方向電力と比較して反射電力の量が著しく増大したときに生じる問題には、十分に対処することができない。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、マッチを含む電力供給回路が提供される。一態様において、電力供給回路が、切替可能なマッチであって、負荷に接続可能な高電圧バス、低電圧バスであって、負荷が高電圧バスと低電圧バスの間で直列に存在するように負荷に接続可能な低電圧バス、高電圧バスと低電圧バスとの間に選択的に接続可能な、固定値の容量を有する少なくとも2つのキャパシタ、及び、高電圧バスと低電圧バスとの間に接続可能な、固定値の容量を有するキャパシタの数と同数の複数のソリッドステートスイッチであって、各スイッチが、高電圧バスと低電圧バスとの間に選択的に接続可能な固定値の容量を有するキャパシタのうちの1つを、高電圧バスと低電圧バスとの間に選択的に電気的に接続又は電気的に切断するよう構成され配置される、複数のソリッドステートスイッチを含む切替可能なマッチと、高電圧バスに接続された高電圧出力接続を含む可変周波数電力供給部と、を備える。
【0004】
他の態様において、可変周波数電力供給部と負荷との間に接続可能なマッチであって、負荷の電気特性が動的に変化可能であり、マッチが、負荷に接続可能な高電圧バス、低電圧バスであって、負荷が高電圧バスと低電圧バスの間で直列に存在するように負荷に接続可能な低電圧バス、高電圧バスと低電圧バスとの間に選択的に接続可能な、固定値の容量を有する少なくとも2つのキャパシタ、及び、高電圧バスと低電圧バスとの間に接続可能な、固定値の容量を有するキャパシタの数と同数の複数のソリッドステートスイッチであって、各スイッチが、高電圧バスと低電圧バスとの間に選択的に接続可能な固定値の容量を有するキャパシタのうちの1つを、高電圧バスと低電圧バスとの間に選択的に電気的に接続又は電気的に切断するよう構成され配置される、複数のソリッドステートスイッチを含むマッチが提供される。
【0005】
さらに、電力供給部を負荷に整合させる方法であって、電力供給部が可変周波数電力供給部であり、本方法が、電力供給回路を提供することを含み、電力供給回路が、切替可能なマッチであって、切替可能なマッチが接続される負荷の変化に応じて、自身の電気特性を変更するよう構成された切替可能なマッチを備え、本方法がさらに、負荷に接続可能な高電圧バスと、低電圧バスであって、負荷が高電圧バスと低電圧バスの間で直列に存在するように負荷に接続可能な低電圧バスと、高電圧バスと低電圧バスとの間に選択的に接続可能な、固定値の容量を有する少なくとも2つのキャパシタと、高電圧バスと低電圧バスとの間に接続可能な、固定値の容量を有するキャパシタの数と同数の複数のソリッドステートスイッチであって、各スイッチが、高電圧バスと低電圧バスとの間に選択的に接続可能な固定値の容量を有するキャパシタのうちの1つを、高電圧バスと低電圧バスとの間に選択的に電気的に接続又は電気的に切断するよう構成され配置される、複数のソリッドステートスイッチと、を提供すること、及び高電圧バスに接続された高電圧出力接続を含む可変周波数電力供給部を提供することを含む。
【0006】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、上記で簡単に要約した本開示のより具体的な説明を、実施形態を参照することによって行うことができ、そのいくつかを添付の図面に示す。しかしながら、添付図面は例示的な実施形態のみを示すものであり、従って、本開示の範囲を限定すると見なすべきではなく、その他の等しく有効な実施形態も許容されうることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】処理チャンバの変化する電気特性に整合されたRF電力信号を供給するための、切替可能なマッチ、DC-ACコンバータ、及びRF増幅器を含むプラズマ電力供給回路であって、切替可能なマッチが、AC-DCコンバータ及びRF増幅器とは異なるボックスシェルに含まれる、プラズマ電力供給回路の平面図である。
【
図2】処理チャンバの変化する電気特性に整合されたRF電力信号を供給するための、切替可能なマッチ、DC-ACコンバータ、及びRF増幅器を含むプラズマ電力供給回路であって、切替可能なマッチが、DC電源及びDC-ACコンバータとは別のボックスシェルであるRF増幅器と共有されたボックスシェル内に配置される、プラズマ電力供給回路の平面図である。
【
図3】処理チャンバの変化する電気特性に整合されたRF電力信号を供給するための、切替可能なマッチ、DC-ACコンバータ、及びRF増幅器を含むプラズマ電力供給回路であって、切替可能なマッチが、DC電源、DC-ACコンバータ、及びRF増幅器とは異なるボックスシェル内に存在する、プラズマ電力供給回路の平面図である。
【
図4】処理チャンバの変化する電気特性に整合されたRF電力信号を供給するための、切替可能なマッチ、DC-ACコンバータ、及びRF増幅器を含むプラズマ電力供給回路であって、切替可能なマッチが、DC電源及びDC-ACコンバータとは別のボックスシェルであるRF増幅器と共有されたボックスシェル内に配置される、プラズマ電力供給回路の平面図である。
【
図5】処理チャンバの変化する電気特性に整合されたRF電力信号を供給するための、RF電源及びRFケーブルに直列に配置された切替可能なマッチを含むプラズマ電力供給回路の平面図である。
【
図6】処理チャンバの変化する電気特性に整合されたRF電力信号を供給するための、RF電源及びRFケーブルに直列に配置された切替可能なマッチを含むプラズマ電力供給回路の平面図である。
【
図7】DC-ACコンバータ、RF増幅器、及びマッチ回路の幾つかの個別セットに電力を供給するよう構成された単一のDC電源であって、DC-ACコンバータ、RF増幅器、及びマッチ回路の各セットが特定の負荷に結合される、単一のDC電源を示す概略的な回路である。
【
図8】DC-ACコンバータ、RF増幅器、及びマッチ回路の幾つかの個別セットに電力を供給するよう構成された単一のDC電源であって、DC-ACコンバータ、RF増幅器、及びマッチ回路の各セットが、特定の負荷に結合される、単一のDC電源を示す概略的な回路である。
【
図9】本明細書の切替可能なマッチの電気的応答を示すグラフ表示である。
【
図10】本明細書の切替可能なマッチの電気的応答の追加のグラフ表示である。
【
図11】本明細書の切替可能なマッチの電気的応答の追加のグラフ表示である。
【
図12】本明細書の電力供給回路のための制御回路の概略図である。
【
図13】DC電源とRF段を組み込んだ電力供給回路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
理解が容易になるよう、可能な場合には、各図に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号を使用した。一実施形態の構成要素及び特徴は、さらなる記述がなくとも、他の実施形態に有益に組み込まれ得ることが想定されている。
【0009】
本明細書では、交流、例えばAC又はRF電力供給構造であって、結合された負荷の電気特性の変化にもかかわらず一貫したレートでプラズマチャンバに電力を供給するための、切替可能なマッチと周波数チューニングの両方を含む交流、例えばAC又はRF電力供給構造が提供される。ここでは、例えば、切替可能なマッチの電気特性が変化して、電源が接続されているチャンバ構成要素の電気的リアクタンス及び抵抗の変化、又は、プラズマ及びそのリターン又は接地経路の変化、又は、上記構成要素、プラズマ、リターン又は接地経路の直列接続の電気特性の変化に対処する。切替可能なマッチの個々の構成要素をそのアクティブなマッチ回路に適切に接続することで、切替可能なマッチの電気特性は、その下流側の構成要素のリアクタンスに対して、即ち、接続されているチャンバ構成要素、チャンバ内のプラズマ、又はその両方で構成される負荷のリアクタンスに対して、その上流側の回路要素の電気特性により近く整合するように変更されうる。マッチ回路にマッチ構成要素を選択的に接続することで、下流の負荷のリアクタンスに一致し又は一致に近い状態になる。さらに、マッチに到達するRF信号の周波数を調整することで、整合しているリアクタンス、又はその下流のリアクタンスに非常に近いリアクタンスが実現可能である。
【0010】
ここで、マッチ回路に選択的に含まれる個々の構成要素は、マッチの電源と接地ライン又はバスとの間に位置する「シャント(shunt)」キャパシタとして設けられた個々のキャパシタであり、これらのキャパシタの1つ以上を、マッチの電源とリターンバス又は接地バスとの間に、各キャパシタと直列に位置する専用のソリッドステートスイッチを使用して、マッチ回路に選択的に組み込むことが可能である。本明細書では、切替可能なL構成のマッチ、及び切替可能なπ構成のマッチについて説明する。このような切替可能な各マッチは、RF生成器、及び適切な電源、及びリターン経路配線と、処理チャンバ又はその構成要素との間、又は、DC電源、DC-ACコンバータ、及びRF増幅器と、処理チャンバ又はその構成要素との間のいずれかに、直列に位置するよう構成可能である。加えて、
図1~
図4に関して、RF電力は、個別のパッケージ内又はシェルボックス内の個々の構成要素によって、ここではAC電源、即ち、例えば200~480VでDC電源110に電力を供給するのに十分なワット数のfab又はファクトリAC電源に接続されたDC電源110、DC-AC(RF)コンバータ112、及びRF増幅器114によって供給されるが、
図5及び
図6では、RF電力は、組み込まれたRF生成器によって供給される。
図1~
図4の構成では、単一のDC電源が、
図7及び
図8に概略的に示すように、各チャンバ専用の切替可能なマッチ102又は102’を介して複数の処理チャンバ122に接続されうる。さらに、DC電源、DC-ACコンバータ112(発振器)、及び、RF又はAC増幅器114が、
図12に概略的に示すように、単一の筐体内又はシェルボックス内で構成されうる。
図1に示す本開示の態様では、L型切替可能マッチ回路102を含む電力供給回路100が示されている。
図2では、電力供給回路100は
図1と同じものであるが、RF増幅器及び切替可能なマッチが、同じシェルボックス内に設けられている。
図3に示す本開示の態様では、π型切替可能マッチ102’を含む電力供給回路100が示されている。
図4では、電力供給回路100は
図3のものと同じであるが、RF増幅器114及び切替可能なマッチ102’が同じシェルボックス内に設けられている。
【0011】
最初に
図1を参照すると、RF電力供給構造のデバイスが描かれており、このRF電力供給構造のデバイスは、切替可能なマッチ102を含む電力供給回路100と、接続された負荷の電気特性の変化にもかかわらず一貫したレートでプラズマチャンバに電力を供給することができる周波数チューニングと、を含む。ここでは、負荷は、給電中にその電気特性が変化する処理チャンバ122の構成要素、若しくは処理チャンバ122の構成要素、及び、これらに電気的に結合し、若しくは、接地若しくはリターン経路に電気的に結合するプラズマであって、給電中に電気特性が変化するプラズマ、又は、これらの組み合わせである。電力供給回路100は、ここでは、1つ以上の切替可能なマッチ102が接続できるよう構成されている。例えば、電力供給回路100を使用して、処理チャンバ122、又はその構成要素若しくはプラズマに高RF電力を供給することができ、ここでは、切替可能なマッチ102に接続された処理チャンバ122若しくはその構成要素又はプラズマにおけるリアクタンスの変化にもかかわらず、給電されている間に、切替可能なマッチ102の構成要素をマッチ回路に入れる又はマッチ回路からの外す能動的なソリッドステートスイッチングを使用することによって、さらに、必要であればRF信号の周波数を調整することによって、反射電力が最小に抑えられる。
【0012】
図1に示すように、電力供給回路100は、直列のボックスシェル116a~eを含み、各シェルは、スチール又は他の金属のフレーム70を含み、それぞれが、ねじ締め具又は他の固定要素によってフレーム70に接続された外板(skin)72によって囲まれた矩形の角柱体として構成され、従って、電力供給回路の要素をその中で別個のモジュールとして保持する。各ボックスシェル116a~eは、外板72を通って延びる少なくとも2つのコネクタ117(
図1の幾つかのボックスシェル116のコネクタ117a~p)を含み、シェル116a内の電気部品を、その外部の部品に、又はプラズマチャンバ内若しくはプラズマチャンバ上の部品に接続することが可能となる。接続ケーブル120、例えばRFシールドケーブルが、各コネクタ117に接続しており、各シェル116内の電気部品を、コネクタ117を介して、他のシェル116内の他の部品に又は処理チャンバ122の構成要素に接続する。
【0013】
電力供給回路100が、ボックスシェル116内のモジュール要素で構成される
図1~
図4の実施形態では、ボックスシェル116aで囲まれたDC電源110が、電力供給回路100に直流電力を供給する。DC電源110は、2つの接続ケーブル120a、120bによって電力供給回路100に接続されている。接続ケーブル120aは、コネクタ117aで、DC電源110の直流+側又はDC高電圧側に接続されており、接続ケーブル120bは、コネクタ117dで、DC電源110の-側又は接地側に接続されている。
【0014】
接続ケーブル120a、bはそれぞれ、DC電源110をカバーするボックスシェル116a上のコネクタ117a、bから、DC-ACコンバータ112をカバーするボックスシェル116bの外板72から延びた2つの入力コネクタ117c、dまで延びている。DC-ACコンバータ112が、ソリッドステート発振回路を使用して、接続ケーブル120、bを介して受け取った直流の電気信号(電力)を交流に変換する。ここで、DC-ACコンバータ112のAC出力は、RF周波数、即ち、13.56若しくはその倍数、又は他のAC周波数とすることができる。DC-ACコンバータ112の出力は、接続ケーブル120c、120dを介して、RF(又はAC)増幅器114に接続される。接続ケーブル120cは、DC-ACコンバータ112の出力コネクタ117eと、DC-ACコンバータ112の高電圧RF出力側のRF増幅器の入力コネクタ117gと、の間に延びており、接続ケーブル120dは、AC-DCコンバータのリターン又は接地コネクタ117fと、RF増幅器114のリターン又は接地コネクタ117hと、の間に延びている。RF増幅器114は、220V又は44Vの外部電気接続(図示せず)といった電源に接続されたソリッドステート増幅器であり、例えば、プラズマ処理チャンバ内のプラズマ回路の一部としての当該チャンバ内又は当該チャンバの上の電極又はコイルを駆動するため、又は、プラズマ回路の直接的な部分ではないチャンバ内の他の構成要素を駆動するためなど、交流信号の最終用途のために役立つ値まで、DC-ACコンバータによって出力された交流信号のピーク間電圧を上げる。例えば、出力rms(実効)電圧は、1000Vのオーダであり、より一般的には100~200Vである。
【0015】
切替可能マッチ102の出力側では、高電圧バス132上のコネクタ117mが、プラズマチャンバ122の高電圧入力コネクタ117oに接続され、接続ケーブル1206を介して当該チャンバの構成要素に接続し、コネクタ117nが、リターン経路又は接地バス134に接続されており、接続ケーブル1208を介して、処理チャンバ122のリターン側又は接地側コネクタ117pにされる。
【0016】
図1では、マッチは「L」マッチとして構成され、ここでは、最大4つのキャパシタ150a~dで構成される第1の可変的な容量が、高電圧バス132と、リターン又は接地バス134と、の間に位置しており、固定容量キャパシタ118の形態による第2の容量、及びインダクタ119が、可変的な容量との接続とコネクタ117mとの間に、高電圧バス132に直列に位置している。
【0017】
ここで、シャント容量、即ち、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間の「L」回路内の容量は、本実施形態では、それぞれが固定の容量値を有する4つのキャパシタ150a~dであって、それぞれが、当該キャパシタ150と高電圧バス132との間に接続されたスイッチ152a~dのうちの1つを選択的に動作させるによって、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間、又はこれらを跨いて選択的に接続可能な、上記4つのキャパシタ150a~dによって構成可能な可変的な容量である。より少数であるが、少なくとも2つのシャントキャパシタ150、又は、より大きな数のシャントキャパシタを利用して、マッチ設計者が、当該シャントキャパシタをマッチ回路に入れ又はマッチ回路から外すスイッチングによって、電力が反射される負荷の電気的条件の範囲が最小に抑えられたマッチを作製できるようにすることができる。負荷の抵抗とリアクタンスの大きな範囲にわたる整合を可能とするために、キャパシタ150a~dのうちの1つ以上が、マッチ回路に入れ又はマッチ回路から外すようスイッチングされ、即ち、高電圧バス132と、リターンバス又は接地バス134との間、又はこれらを跨いで接続されうる。キャパシタ150a~dのそれぞれは、マッチ回路に接続されたときには、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間で又はこれらを跨いて、電気的に互いに並列になる。加えて、マッチ設計者は、キャパシタ150a~dのいずれも、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間に又はこれらを跨いで接続する必要がないようにすることができる。高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間の又はこれらを跨ぐキャパシタ150a~dのうちの任意のキャパシタの接続が、キャパシタ150a~dと高電圧バス132との間に存在するスイッチ150a~dのうちの対応するものを閉じることで、形成される。同様に、キャパシタ150a~dのうちの任意のキャパシタは、キャパシタ150a~dと高電圧バス132との間に存在するスイッチ150a~dの対応するものを開くことで、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間で、切り離すことができる。ここで、スイッチ152a~dは、例えばPINダイオードといったソリッドステートスイッチであり、給電中に切り替えることが可能であり、即ち、切替可能なマッチ102を介して電力が処理チャンバ122又はその構成要素に入る間に、自身に接続されたキャパシタをマッチ回路に接続し又はマッチ回路から外して切り離すことができる。
【0018】
図1の切替可能なマッチ102では、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間又はこれらに跨る容量は、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間又はこれらを跨いで接続されたキャパシタ150a~dの容量の合計である。高電圧バス132と接地バス又はリターンバス134との間又はこれらを跨いで電気的に接続される、マッチ回路に入るよう切り替えられたキャパシタ150a~dの個々の容量値の合計であるシャント容量の値は、負荷の相対的な抵抗及びリアクタンスが変化したときにさえも、処理チャンバ構成要素又はそれに結合されるプラズマへの、即ち負荷への電力伝達を最大にするよう調整される。
図9を参照すると、最大2つのシャントキャパシタのスイッチング、例えばキャパシタ150a、bをマッチ回路に入れ又はマッチ回路から外すスイッチングについて、本方法を使用した整合への影響が表されている。
【0019】
図9では、シャント容量値、負荷の抵抗及びリアクタンスと比べた、負荷への有効電力の結合又は電力伝達が、2つの容量Cの例を用いて示されている。ここでは、シャント容量は、シャントキャパシタとしてマッチ回路に切り替えられた固定容量キャパシタ、ここでは例えばキャパシタ150a、bの容量の合計に基づいている。ここで、固定とは、一定の条件における、例えば20℃でかつ大気圧での、キャパシタの容量の定格値又は実際の値を意味しており、このようなキャパシタの容量は、その動作条件及び経年変化に基づいてわずかにドリフトする可能性があると理解されたい。しかしながら、可変的なキャパシタでは行われるように、キャパシタを意図的に操作してその容量を変更できないという意味では、容量は固定されている。
図9において、Y軸は、負荷のリアクタンスを表し、X軸は、負荷の抵抗を表している。処理チャンバ内での処理中に、負荷のリアクタンスと抵抗の両方が変化する可能性があり、このことは、RF増幅器を出た電力のうち、実際に負荷(例えば、処理チャンバの構成要素、又は当該チャンバ内のプラズマに電気的に結合する処理チャンバの構成要素)に入って通過する割合又は量に影響を与える可能性がある。線154は、負荷の抵抗及びリアクタンスの範囲であって、単一のキャパシタC1のみ、例えばキャパシタ150aのみが、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間又はこれらに跨るマッチ回路に入るよう切り替えられた場合に、負荷によって電力が反射されない(又は、最小量の電力が反射される)上記範囲を囲んでいる。言い換えれば、点150a~dによって囲まれた負荷のリアクタンスX及び抵抗Rの値の範囲内において、キャパシタ150aが、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間の又はこれらに跨るマッチ回路に入るよう切り替えられた唯一のキャパシタである場合には、RF増幅器を出た電力の100%(又は当該電力の可能な最大値)が負荷に到達する。加えて、負荷のリアクタンス及び抵抗は、負荷、例えば電極としての負荷、及びプラズマ回路内のプラズマを使用している間に動的に変化する可能性があるため、抵抗R及びリアクタンスXの値が線154で囲まれた領域の外に存在すると、より大きな電力が負荷によって反射され始める。例えば、線156は、負荷の抵抗R及びリアクタンスXの一連の値を表しており、ここでは、キャパシタ150aのみがマッチ回路に切り替えられた場合に、10%の電力が負荷によって反射される。言い換えれば、RF増幅器114を出た電力の90%が負荷に渡される。同様に、線158は、抵抗R及びリアクタンスXの一連の値を表しており、ここでは、キャパシタ150aのみがマッチ回路に切り替えられた場合に、20%の電力が負荷によって反射される。言い換えれば、RF増幅器114を出た電力の80%が負荷に渡される。図示されていないが、キャパシタ150aのみがマッチ回路に切り替えられている状態で、負荷の抵抗R及びリアクタンスXの値が、線154で囲まれた領域から遠くに外れるほど、反射電力の割合がより大きくなり、RF増幅器から出た電力のうち負荷に到達する割合が小さくなる。
【0020】
処理チャンバの使用中には、負荷の抵抗及びリアクタンスのドリフトを直接制御することができないため、単一の固定容量キャパシタのみが、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間又はこれらに跨るマッチ回路に切り替えられた場合には、負荷に伝達される電力の割合が著しく悪くなる可能性がある。しかしながら、ここでは、第2の固定容量キャパシタ、例えばキャパシタ150bを、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間又はこれらに跨るマッチ回路に入るよう追加的に切り替えることが可能である。キャパシタ150aに加えて、キャパシタ150bをマッチ回路に入るよう切り替えることが可能であり、又は、キャパシタ150aがマッチ回路から外れるよう切り替える一方で、キャパシタ150bをマッチ回路に入るよう切り替えることが可能である。このケースでは、マッチ回路は、負荷の抵抗R及びリアクタンスXの値の異なる範囲を一致させることになる。しかしながら、一致させる抵抗R及びリアクタンスXの範囲であって、キャパシタ150aのみを使用して、負荷への100%の又は可能な限り最大の電力透過率を可能とする上記範囲と、一致させる抵抗R及びリアクタンスXの範囲であって、キャパシタ150aと150bの両方を使用して、負荷への100%の又は可能な限り最大の電力透過率を可能とする上記範囲と、が重なるように、キャパシタ150a、bの値を選択することも可能である。同様に、一致させる抵抗R及びリアクタンスXの範囲であって、キャパシタ150aのみを使用して、負荷への100%の又は可能な限り最大の電力透過率を可能とする上記範囲と、一致させる抵抗R及びリアクタンスXの範囲であって、キャパシタ150bのみを使用して、負荷への100%の又は可能な限り最大の電力透過率を可能とする上記範囲と、が重なるように、容量を選択することが可能である。例えば、
図9では、曲線162は、抵抗及びリアクタンスの値であって、両方のキャパシタ150及び150bが、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間又はこれらに跨るマッチ回路に入るよう切り替えられたときに、RF増幅器から出た100%(又は最大可能な量)の電力が負荷に伝達される抵抗及びリアクタンスの値を囲んでいる。線164は、抵抗r及びリアクタンスXの一連の値を表しており、ここでは、キャパシタ150a及びキャパシタ150bがマッチ回路に入るよう切り替えられた場合に、10%の電力が負荷によって反射される。言い換えれば、RF増幅器114を出た電力の90%は負荷に渡される。同様に、線166は、抵抗r及びリアクタンスXの一連の値を表しており、ここでは、キャパシタ150a及びキャパシタ150bがマッチ回路に入るよう切り替えられた場合に、20%の電力が負荷によって反射される。言い換えれば、RF増幅器114を出た電力の80%が負荷に渡される。ここで、キャパシタ150aのみ又はキャパシタ150aとキャパシタ150bの両方が、マッチ回路に入るよう切り替えられたときに、負荷に到達する電力の割合が、同じ割合の範囲内に存在する重複領域が存在することが分かる。
【0021】
キャパシタの値を適切に選択することで、反射電力が、処理チャンバ内で行われる用途にとって許容可能なPr(反射電力)の所望の最大値に達しうるマッチを作製することが可能である。例えば、キャパシタ150a及び150bの容量の値を、
図9に示す結果についての値よりもわずかに小さくすることによって、曲線162で囲まれる領域が、左にかつ下方にシフトし、即ち、より低いX値及びR値へとシフトし、これにより、抵抗R及びリアクタンスXの範囲であって、マッチが、キャパシタ150a又はbのみを使用して又はキャパシタ150a及び150bを一緒に使用して、100%(又は可能な限り最大量)の電力を負荷に渡す上記範囲が存在することになる。同様に、キャパシタ150a及び150bの容量の合計が、
図9に表す値よりも大きい場合には、線154及び162によって囲まれた100%(又は可能な限り最大量)の電力伝達の領域がさらに離れ、より小さい電力伝達の領域、即ちより大きな反射率の領域が、その間に存在することになる。加えて、100%の透過率の領域と、曲線162よりも高いX値及びR値を有する、上記100%の(又は最大可能な電力伝達の)領域を囲む対応する低透過率の領域であって、
図10の曲線170で示すように、キャパシタ150cといった第3の容量をマッチ回路に入れるよう切り替えることで形成される上記低透過率の領域と、が存在する。同様に、100%の(又は最大可能な電力伝達の)領域と、曲線162よりもさらに高いX値及びR値を有する、上記100%の領域を囲む対応する低透過率の領域であって、
図10の曲線172で示すように、キャパシタ150cといった第4の容量をマッチ回路に入れるよう切り替えることで形成される上記低透過率の領域と、
が存在する。
【0022】
キャパシタ150a~dを、マッチ回路に入れよう又はマッチ回路から外すよう選択的に切り替えることで提供されるシャント容量によって、マッチ回路内に最大16個の異なるシャント容量が存在することが可能となる。キャパシタ150a~dの静電容量の値が、それぞれA、B、C、Dであると仮定すると、以下のシャント静電容量の合計値、即ち、高電圧バス132と接地バス又はリターンバス134との間又はこれらに跨る容量が可能であり、即ち、0(キャパシタ150a~dのいずれも回路に入るよう切り替えられない)、A、B、C、D、A+B、A+B+C、A+B+C+D、A+C、A+C+D、A+B+D、A+D、B+C、B+C+D、B+D、C+Dである。高電圧バス132と接地バス又はリターンバス134との間に存在し得る様々な容量値の総数は2cであり、但し、Cは、利用可能なキャパシタであって、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間のマッチ回路に入るよう又は当該マッチ回路から外れるよう切り換えられる上記キャパシタの総数である。従って、2つのキャパシタ152a、bが存在するだけで、4つのこのような容量が実現可能である。3つのキャパシタ152a~cが存在すると、8つの容量が表されうる。キャパシタの数とその値は、マッチ設計者にとっては、高い透過率のために一致させるX値及びR値の所望の範囲と、100%、90%、80%等の形成可能な各容量の透過率領域の所望の重なり合いと、に依存する設計選択の問題である。キャパシタ152a~dの容量値は、例えば、AがBより小さく、BがCより小さく、CがDより小さい場合には、互いに異なりうる。各キャパシタ150a~dの容量値は同じであってよい。キャパシタ150a~dのうちの幾つかは同じ容量値を有してよいが、他のものは異なる容量値を有する。容量の値は、可能性が高い又は計算可能な負荷の特性に基づいて、切替可能なマッチが最大量の順方向電力を負荷に渡すことができる最も近い整合を提供できるよう、選択される。
【0023】
図10及び
図11を参照すると、4つの異なるシャント総容量による、整合させられた抵抗R及びリアクタンスXの負荷特性の領域が示されている。各領域は、マッチ回路に入るよう切り換えられたキャパシタ150a~dのうちの1つ、又はこれらの4つの異なる組み合わせのうちの1つについて、負荷への順方向電力の100%の透過率(又は可能な限り最大の透過率)が得られる、負荷の値又は抵抗R及びXを表しうる。
図10には、
図9に示したものと同じ値のキャパシタ150aのみがマッチ回路内に存在することを表す、線154で囲まれたリアクタンスXの値と抵抗Rの値の対の領域と、
図9と同じ値のキャパシタ150aと150bの両方がマッチ回路内に存在することを表す、線154で囲まれたリアクタンスXの値と抵抗Rの値の対の領域と、が示されている。追加の曲線が示されており、例えば、リアクタンスXの値と抵抗Rの値の対の領域を囲む第3の曲線170であって、キャパシタ150a~dのうちの3つ、又はこれらの異なる組み合わせを使用して、例えば、マッチ回路に入るよう切り替えられた第1のキャパシタ150a、第3のキャパシタ150cを使用して、負荷への100%の透過率が生じる、第3の曲線170と、リアクタンスXの値と抵抗Rの値の対の領域を囲む第4の曲線172であって、マッチ回路に入るよう切り替えられた4つのキャパシタ150a~dの異なる組み合わせを使用して、負荷に対する100%の透過率が生じる、第4の曲線172と、が示されている。
図10では、100%の(又は可能な限り最大の)透過率が生じるX値とR値の対の領域は、互いに間隔が空いており、これにより、マッチ回路内でのこれら4つのキャパシタ150a~dの組合せの切り替えによって、結果的に、電力(又は、可能な最小値より大きな量)が負荷によって反射されることになるマッチの動作が発生し、ここで、負荷のR値及びX値は、曲線154、162、170、及び172のいずれかよって囲まれた領域内に存在しない。このことは、負荷のリアクタンス値及び抵抗値が、線154、162、170、及び172で囲まれた領域の外に存在し、例えば上記領域間の領域174、176、及び178に存在する場合に生じることになる。従って、電気的に特徴的な負荷の値が変化するにつれて、処理チャンバ122又はその構成要素に供給される電力の一部、又は可能な最小量より大きな電力が反映されることになり、RF増幅器114からの順方向電力の割合としての電力の値は、曲線又は線154、162、170及び172によって囲まれた領域が互いにどれだけ近接しているかに依存する。領域間の間隔が大きいほど、これらの領域内で動作するときには負荷から反射される電力の割合が大きくなる。しかしながら、これは、特定の用途にとっては許容できる動作でありうる。
【0024】
代替的に、キャパシタ150a~dの値又は当該キャパシタの組み合わせを変更することが可能であり、これにより、その組み合わせによって、結果的に、リアクタンスXの値と抵抗Rの値の対の重複領域であって、負荷への100%の透過率が生じる重複領域を得ることが可能である。ここで、
図10のマッチに組み合わされたキャパシタ150b~dの容量値を、より低い値に下げることで得られる曲線162’、170’及び172’によって、結果的に、100%一致の領域が、より低い抵抗Rの値及びリアクタンスXの値に移動し、これにより、100%の透過率の領域の境界が、重ならないまでも、R値の方向において少なくとも共存するようになる。結果として、負荷への100%の透過率が生じるリアクタンスXの値と抵抗Rの値の対の大きな領域が存在し、当該領域は連続しており、反射の領域が存在しない。
【0025】
便宜上、
図10及び
図11は、
図1の高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間又はこれらに跨るマッチ回路に入るよう、キャパシタ150a~dのうちの1つ以上を切り替えることの組み合わせにより可能なシャント容量の4つの値について、負荷への100%の透過率が生じるリアクタンスXの値と抵抗Rの値の対の領域を示している。しかしながら、先に述べたように、シャント容量値の数、従って、負荷への100%の(又は、マッチにとって可能な限り最大の)透過率が生じるリアクタンスXの値と抵抗Rの値の対の領域の数は、2
cであり、但し、Cは、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間又はこれらに跨るマッチ回路に入るよう切り替えられる利用可能なキャパシタの数である。従って、マッチ設計者には、電力駆動回路を負荷に整合させるために、100%の複数の範囲を有する(又は可能な最小値の電力が反射される)マッチを設計するための高い自由度がある。
【0026】
キャパシタ150a~dのうちの対応する1つを、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間の又はこれらに跨るマッチ回路に組み込む又は切り替えるよう、それぞれが構成されたスイッチ152a~dは、ソリッドステートPINダイオードとして構成されている。これにより、スイッチ152a~dを、負荷の下で、即ち、少なくとも高電圧バス132を介して電力が駆動されている間に切り替えることが可能となり、ここで、キャパシタ152a~dの少なくとも1つが、切替可能なマッチ回路102の残りの部分を介して、マッチ回路に入るよう切り替えられ、さらに負荷に入る切り替えられ、負荷への、即ち、処理チャンバ122又はその構成要素への連続的で途切れることのない電力供給が可能となる。
【0027】
ここで、DC-ACコンバータは、可変的な周波数出力が可能であり、即ち、自身の出力周波数を制御可能に変更することができる。その結果、電力が負荷に供給されており、負荷によって反射される電力の値を最小にするよう切替可能マッチ102が動作している状態において、電力信号の周波数、即ち電力出力のAC周波数値を、電力反射の値を低減し又は変更するよう修正することが可能である。
図9及び
図10に示す高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134の間又はこれらに跨るシャント容量の例では、負荷からの電力の反射が生じることになる負荷の抵抗Rと負荷のリアクタンスXの対の値が存在する。ここで、供給される電力の周波数を調整することで、反射が最小となる又は反射が発生しない負荷の抵抗Rと負荷のリアクタンスXに変更し、これにより、反射電力の値をより低い値又はゼロにすることが可能である。
図10に示すように、負荷の特性が変化するにつれて、所与の瞬間に供給される電力の一時的な周波数における、負荷抵抗Rと負荷リアクタンスXの一時的な値は、切替可能な容量の値の間にある値であり、ここでは、マッチが、負荷に供給される100%の電力を伝達する。このことは、線154、162で囲まれた100%の透過率の領域の間に存在する点180によって表されている。しかしながら、DC-ACコンバータによって出力されるAC電力信号の周波数を、より大きい値又はより小さい値のいずれかに調整することで、結果として得られる負荷の抵抗Rの値とリアクタンスXの値の対の位置が、曲線154、162、170又は172で囲まれた領域に対して変更され、100%伝達の領域内にある点180’又は180”のいずれかとなる。いかなるマッチの性能も周波数に依存しているため、周波数を変更することは、負荷の抵抗Rの値及びリアクタンスXの値を移動させること、曲線154、162、170若しくは172で囲まれた領域を、X方向及びR方向にシフトさせること、又はその両方を行うとことと見做すことができる。従って、切替可能なマッチ102が、ここではDC電源110として構成された可変周波数電力供給部、DC-ACコンバータ112、及びRF増幅器114と組み合わされたときには、負荷に供給される電力の100%の(又は可能な限り最大の)透過率の発生が維持されるよう、マッチを動作させることが可能である。このことは、
図10に示すように、切替可能なマッチ102が、負荷の抵抗Rの値とインダクタンスXの値の対であって、電力が反射される所与の電力電力周波数において反射電力が生じる上記対を内包している場合でさえも、可能である。しかしながら、切替可能なマッチに到達する電力信号の周波数を変更することによって、負荷の抵抗値とリアクタンス値の対の領域のうちの1つを、R方向及びX方向において調整することが可能であり、又は、負荷への100%の(又は、可能最小値の)透過率が生じるように、負荷の抵抗Rの値及びリアクタンスXの値を調整することが可能である。
【0028】
図2を参照すると、電力供給部のモジュール性が、
図1と比較して若干変更されている。ここでは、RF増幅器114が、切替可能なマッチ102と同じボックスシェル116x内に含まれている。他の全ての点では、電源システムは、
図1に関して示され記載されたものと同じであり、同じように動作をする。
【0029】
ここで
図3を参照すると、変更された切替可能なマッチ102’を利用した電力供給回路100のさらなる態様が示されている。ここでは、変更された切替可能マッチ102’は、π型の切替可能なマッチ回路102’として構成されており、2セットのキャパシタ150a~d及び152e~hと、対応するスイッチ152a~d及び152e~hと、を備えて構成されており、スイッチ152a~d及び152e~hは、高電圧バス132と戻りバス又は接地バス134との間に又これらを跨いて自身に直列に電気的に接続されたキャパシタ150a~hを、選択的に接続するよう構成されている。ここでは、インダクタ119及びキャパシタ118が、高電圧バス132内に直列に挿入されており、即ち、スイッチ152a~dによって、キャパシタ150a~dが接続可能な高電圧バス132の領域と、スイッチ152e~hによってキャパシタ150e~hが高電圧バス132に接続可能な、インダクタ119及びキャパシタ118と処理チャンバ122と間の領域と、の間に直列に挿入されている。ここでは、πマッチ102’の各足、即ち、インダクタ119の片側への部分が、4つの固定容量キャパシタ150a~d又は150e~hを含み、各キャパシタは、切替可能なπマッチ102’の高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間に又はこれらを跨いで、選択的に接続可能であり又は接続可能ではない。切替可能なπマッチ102’の少なくとも一方の足には、より少数であるが少なくとも2つのこのようなキャパシタ150と、これらをマッチ回路に入れるよう又は外すよう切り替えるための対応するスイッチ152と、が存在する。
図3の電力供給回路100’のモジュール構成は、構造的には
図1の電力供給回路100に対応するが、
図1の電力供給回路のL型マッチ構成が、切替可能なπマッチ102’に置き換えられている。同様に、
図4の電力供給回路100’のモジュール性は、構造的には
図2の電力供給回路100に対応するが、
図2の電力供給回路100のL型マッチ構成が、切替可能なπマッチ102’に置き換えられている。
【0030】
図3及び
図4の電力供給回路100’のπ型の切替可能なマッチ回路102’は、整合の観点では、
図1の電力供給回路のL型整合構成と同様の動作特性を有している。ここで、キャパシタ150e~hのいずれも、シャントキャパシタとしてマッチ回路に切り替えられないときには、
図3の電力供給回路100は、構造的には
図1の電力供給回路100に対応する。πマッチ102’のキャパシタ150e~hのいずれも、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間の又はこれらに跨るシャント容量に切り替えられないときには、マッチ102’は、
図1及び
図2のL型の切替可能マッチ102と同じ性能特性を有し、ここで、固定キャパシタ125a~dの容量は、
図1及び
図2でのそれらの値と同じである。同様に、キャパシタ150e~hの1つ以上を、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間の又はこれらに跨るマッチ回路に入れるよう切り替えながら、キャパシタ150a~dを当該マッチ回路から切り離すと、
図1及び
図2の切替可能なマッチと同様の性能特性が得られ、ここで、固定キャパシタ125a~dの容量は、
図1及び
図2でのその値と同じである。高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間の又はこれらに跨る切り替え可能なπマッチ102’のマッチ回路への、インダクタ119の1の側の固定キャパシタ150a~dの群からのキャパシタのスイッチングに加えた、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間の又はこれらに跨る切替可能なπ型マッチ102’のマッチ回路への、インダクタ119の他の側の固定キャパシタ150e-fの群からのキャパシタのスイッチングによって、結果的に、
図9~
図11に関して示され記載されたものと同様の、2セットの並列シャントキャパシタの組み合わされた効果が得られる。このことは、DC-RFコンバータの出力周波数を変更することに加えて、マッチ設計者が、負荷の抵抗rとリアクタンスXとの最小対を有するマッチを設計することを可能にし、ここで、上記マッチによっては、電力供給回路100に供給された電力の、負荷への100%の透過率は得られない。例えば、負荷が、DC-ACコンバータ112の一時的な、即ちそのときの電流の出力周波数において、その周波数での電力の反射を防止するために完全には一致していない抵抗RとリアクタンスXの値を示す場合には、DC-ACコンバータは、自身の周波数を上方又は下方に変更してマッチ及び負荷の特性を調整して、負荷による電力の反射がなくなり又は当該反射が最小になるようにすることが可能である。加えて、ここでは、スイッチ152a~hのそれぞれが、
図1及び
図2のスイッチ152a~dと同じ又は同様の構成を有しており、好ましくは、ホットスイッチング(hot switching)、即ち、負荷の下又はフルパワー印加下でのスイッチングが可能な、ソリッドステートPINダイオードとして構成されている。結果として、
図1及び
図2の電力供給回路100のように、切替可能なπマッチ102’を組み込んだ電力供給回路100’では、キャパシタ152のそれぞれ及びいずれかが、フルパワー下で、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間又はこれらに跨るマッチ回路に入るよう又は当該マッチ回路から外れるよう切替可能であり、その際、切替可能なπマッチ102’をRF増幅器又は負荷から切断することを必要ではなく、従って、負荷の抵抗R及びリアクタンスXの特性が変化している間にさえも、負荷の連続的な整合が提供される。結果として、キャパシタ150a~hのうちの1つを、シャント容量(高電圧バス132とリターン又は接地バス134との間の容量)に入れるよう又は当該シャント容量から外すよう選択的に切り替えることによって、同時に、必要に応じて、負荷への、ここでは、処理チャンバであって、処理チャンバの構成要素、又はその中でプラズマと電気的に結合する処理チャンバの構成要素を含む処理チャンバへの、順方向電力の最大透過率を維持するよう、DC-ACコンバータの出力周波数を調整することによって、最大の順方向電力、即ち最小の反射電力が提供される。
【0031】
図7及び
図8を参照すると、本明細書の
図1から
図4の電力供給回路100、100’は、モジュール式に使用することが可能であり、換言すれば、単一のDC-AC生成器を、複数の切替可能なマッチ102、102’を介して、複数の処理チャンバ122に接続することが可能であり、各切替可能なマッチ102又は102’は、単一のこのような処理チャンバ又はその中の構成要素への整合のために構成されている。
【0032】
図7は、分散型電源システムを概略的に示しており、ここでは、単一のDC電源110の出力が、複数のDC-ACコンバータ112の入力に接続されており、このようなDC-ACコンバータ112が、単一のDC電源110を使用して給電される各処理チャンバのために1つずつ設けられている。ここでは、4つの処理チャンバ122a~dが、最終的に1つのDC電源110に接続されているが、より多数の又はより少数の処理チャンバ122が、1つのDC電源110によって給電されうる。各処理チャンバ122a~dは、切替可能なマッチ102又は102’に接続されており、各切替可能なマッチ102又は102’は、専用のRF増幅器114に接続されており、各RF増幅器は、専用のDC-ACコンバータ112に接続されている。ここでは、RF(AC)増幅器114とDC-ACコンバータ112とは、別個の構成要素として示されているが、
図12に示すように、これらを組み合わせて、DC源、即ちDC電源110に接続された単一のRF段としてもよい。ここでも、DC電源110を利用する各実施形態におけるように、DC電源110は、交流の電源によって、例えば、50~60Hzの周波数で例えば200~480Vの電力を供給するfab又はファクトリ主電源によって、給電される。代替的に、DC電源110のための電源が、処理システム、例えば、1つ以上の処理領域を利用する処理システムの複数の構成要素に、電力を供給するよう構成されたACラックであってよく、このACラックは、整合していないAC電力を必要とするシステムの全ての構成要素と、AC電力の入力をDC電力の出力に変換するDC電源と、に接続されるよう構成されており、DC電力の出力はその後、所望のAC周波数及び電力レベルに変換される。ここで、DC電源の出力は、4つの専用のDC-ACコンバータ112のそれぞれに接続され、RF増幅器114及び切替可能マッチ回路102又は102’を介して、最終的にチャンバ122a~dに電力が供給される。ここでは、DC電源110、DC-ACコンバータ112、RF増幅器114、及び切替可能マッチ102又は102’のそれぞれは、固有の専用ボックスシェル116(
図1~4)内に収容されており、これにより、構成要素が、電力供給回路100、100’内で外れるよう容易に切り替えられ又は交換されうる。ここでも、DC-AC生成器112は、切替可能なマッチ回路102、102’のシャント容量に入るよう又は当該シャント容量から外れるようキャパシタを切り替えることと共に、最小の電力が反射され又は電力が反射されない高い電力供給が行われる負荷の抵抗Rの値とリアクタンスXの値の組み合わせの広い範囲が可能となるよう、可変的な周波数出力を供給する。
図8を参照すると、電力供給構成要素は、本明細書の
図2及び
図4におけるように構成されており、RF増幅器114と切替可能なマッチ102又は102’とは、
図2及び
図4におけるように、単一のボックスシェル116内で組み合わされている。それ以外は、
図8の電力供給回路100又は100’は
図7の回路と同じである。
【0033】
ここで、
図5を参照すると、切替可能なマッチと、当該電力供給構造デバイスが接続される処理チャンバ構成要素又は環境における抵抗R及びリアクタンスXの変化にもかかわらず、処理チャンバ、例えばプラズマ処理チャンバに一貫した値で電力を供給する周波数チューニング能力と、を備えた追加のRF電力供給構造デバイスが示されている。電力供給回路100は、ここでは、1つ以上の切替可能なマッチ102又は102’を自身に接続できるよう構成されている。例えば、得られる電力供給回路100”は、切替可能なマッチ102が接続される負荷、例えば処理チャンバ122又は処理チャンバ構成要素の抵抗R及びリアクタンスXの変化の発生にもかかわらず、高レベルのRF電力を処理チャンバ105に供給するために使用することが可能である。
【0034】
ここで、電力供給回路100”は、RF電力を所望の振幅(RMS電圧)及び周波数で供給することができるRF生成器220を含み、このRF生成器220は、
図1に関して先に記載したように、ケーブル配線(ケーブル221、222)を介して、切替可能なマッチ102に接続されている。本実施形態では、RF生成器は、ボックスシェル116a内に含まれた標準的な50Ω生成器220であり、ボックスシェル116aの同じ側壁から延びる高電圧コネクタ117a、及びリターン又は接地コネクタ117bを有している。第1の50Ωケーブル221は、コネクタ117aから、切替可能なマッチ102の高電圧バス132まで延びており、第2の50Ωケーブル222は、コネクタ117bから、切替可能なマッチのリターン又は接地バス134まで延びている。ここで、切替可能なマッチ102は、
図1及び
図2の切替可能なマッチとして構成され、かつ当該切替可能なマッチと同様に動作する。切替可能マッチ102のリターン又は接地バス134は、マッチを介して延び、処理チャンバ122上のリターン又は接地接続に接続され、高電圧バス132は、4つのスイッチ接続位置を横切って、自身と直列になったインラインキャパシタ119及びインダクタ119まで延び、その後、処理チャンバ122の高電圧側に接続する。
【0035】
本実施形態では、単一のRF生成器220が、単一の処理チャンバ122のために特化されている。本明細書の
図1及び
図2の実施形態のように、切替可能マッチ102は、固定容量キャパシタ152a~dのうちの1つ以上を、高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間の又はこれらに跨るシャント容量に選択的に切り替えて、処理チャンバ122又は処理チャンバ構成要素又は構成要素と、プラズマの抵抗R及びリアクタンスXの値と、の対の複数の別個の範囲に対応するように、切替可能マッチ102の整合特性を変更するよう動作可能である。結果として、処理チャンバ122又は処理チャンバ構成要素の抵抗R及びリアクタンスXの値の広い範囲にわたって、切替可能なマッチ102は、処理チャンバで小さな反射電力をもたらし又は反射電力を全くもたらさず、即ち、RF生成器から出力された電力の100%又はほぼ100%を負荷(処理チャンバ又は処理チャンバ構成要素)に伝送するための、完全な又はほぼ完全な整合を提供する。加えて、処理チャンバ122又は処理チャンバ構成要素又は構成要素と、プラズマの抵抗R及びリアクタンスXの値と、の範囲であって、切替可能なマッチ102が、可能な限り最大の伝送(最小の反射)を提供しない範囲では、RF生成器220は、可変周波数RF生成器220として構成され、これにより、その電力信号の出力周波数は、切替可能なマッチ102を負荷により近づけ結果的に負荷への最大電力の伝送、例えば100%の電力伝達を得るように、調整可能である。
【0036】
図6を参照すると、切替可能なマッチと、負荷のリアクタンスと抵抗のリアクタンス変化にもかかわらず、プラズマチャンバに電力を一貫したレートで供給することができる周波数チューニングと、を含む他のRF電力供給構造のデバイスが示されている。
図6では、RF生成器220及びRFケーブル221、222が利用されているが、
図5のL型構造の切替可能なマッチが、π型構造の切替可能なマッチ回路102’と置き換えられている。他の全ての観点では、電力供給回路は同じである。
【0037】
ここでのシステムは、反射電力、及び電力信号周波数を考慮して、シャント容量に切り替えられる固定キャパシタ150a~d又は150a~hの適切な方を選択するためのコントローラを含む。ここでは、RF周波数といったAC周波数を供給する回路要素には、順方向電力分析器200としても知られる周波数生成回路素子によって出力された電力を測定するための回路、さらに、反射電力分析器202を使用して、周波数生成回路素子の出力端子に戻って到達する反射電力を測定するための回路と、が含まれており、それぞれが、AC-DCコンバータ112とRF増幅器114との間の高電圧接続に電気的に介在し若しくはこれらの構成要素の1つに組み込まれ、又は
図5及び
図6のRF生成器内に組み込まれている。ここで、周波数生成回路は、
図1から
図4のDC-ACコンバータ112、又は
図5及び
図6のRF生成器220のいずれかである。RF生成器220を例にとると、本生成器は、順方向電力の割合若しくは負荷に到達する電力の比率(順方向電力から反射電力を差し引いたもの)として、順方向電力に対して反射電力の量を比較するコンパレータ回路と、可能な限り最大の比率又は割合を得るためにRF生成器220の出力周波数を変更するよう構成された論理コントローラと、を含む。このことはまた、負荷への順方向電力の100%の透過率を実現することは可能ではないかもしれないが、順方向電力に対する、負荷に到達する電力の最大比率又は割合によって表される最大透過率が、RF生成器220の周波数チューニングの望まれるアウトカム(outcome)であることを考慮している。相対的な割合又は比率に基づいて、本生成器は論理コントローラの制御下で、最小の反射率、及び負荷への順方向電力の最大透過率を表す最適な一時的な(その瞬間の)割合又は比率を決定するために、自身の出力周波数を変更する。RF生成器は、自律的に、即ち、回路の他のどの制御要素からも独立して周波数チューニングを行うことができる。
【0038】
さらに、コントローラ250が設けられており、PINダイオードスイッチ152の動作設定を制御し、マッチ回路のシャント容量にキャパシタを選択的に含めるよう構成されている。コントローラ250は、切替可能マッチ102又は102’の動作範囲の特性がプログラムされ又は設定される論理デバイスを含み、例えば、フィールドプログラマブルアレイ、マイクロコンピュータ等を含む。例えば、コントローラは、レシピを選択するために使用されるレシピコントローラであってよく、レシピとは、即ち、チャンバのプラズマ電極又は他の構成要素に供給される一連のRF又はAC電力及び周波数、並びに、基板支持体の温度、電極と基板との間隔、チャンバ環境内の混合ガス、及び制御又は選択されうる他のプロセス変数である。具体的には、所与の処理チャンバについて、マッチ設計者は、マッチが接続される負荷、例えば、処理チャンバ又は処理チャンバ構成要素、及びこれらに電気的に結合するプラズマ、の抵抗及びリアクタンスの可能な範囲についての知識を持って、負荷への電力の最大透過率、従って負荷からの低い反射率が発生する所望の個別シャント容量値のセットを決定する。加えて、設計者は、スイッチ152a~d又は152a~hのうち、閉位置にある必要があるスイッチであって、当該スイッチに接続されたキャパシタを、切替可能なマッチ102又は102’のシャント容量の一部とするスイッチを選択するように、コントローラ250をプログラムする。全体を通して、シャント容量とは、切替可能なマッチ102又は102’の高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間又はこれらに跨る総容量の値である。この値は、切替可能なマッチ102又は102’の高電圧バス132とリターンバス又は接地バス134との間に又はこれらを跨いて接続される全てのキャパシタ150の固定容量の合計である。その後、設計者は負荷を動作させ、即ち、ここでは、チャンバ122をその通常の作動環境又は条件で動作させて、当該チャンバから実際に反射された電力と、高い透過率(低に反射率)及び比較的低い透過率(高い電力反射率)が発生する、負荷の抵抗Rの値とリアクタンスXの値の得られる対と、を決定することができる。この情報を用いて、設計者は、シャント容量に切り替えられる可能性のある固定容量キャパシタ150の容量値を変更することができる。その後、設計者又はユーザは、抵抗Rの値とリアクタンスXの値の対の領域であって、各電位又は実際のシャント容量について、電力供給回路と負荷との間の最大透過率(最小反射率)が存在する上記範囲をマッピングして、RF生成器220又はDC-ACコンバータ112の公称出力周波数、例えば、13.56KHzの非ゼロの整数倍、例えば27.12MHzについて、並びに、出力周波数に関する上記生成器又はコンバータの上記周波数の最大及び最小の変動について、
図9から
図11に示す結果を得ることができる。結果として、設計者は、負荷に結合されたときの電力供給回路100、100’又は100”の整合特性を決定することが可能であり、このことには、キャパシタ150a~d又は150a~h(
図6)のうちの1つ以上をシャント容量に入れるよう選択的に切り替えることで実現できるシャント容量値の範囲内で、マッチがその意図された目的のために適切に機能することになるRF生成器220又はDC-ACコンバータ112の可能な出力周波数値と組み合わせて、含まれる。このことには、伝送可能な最大可能電力より少ない電力が負荷に到達する動作点が含まれてよく、又はそのような動作点が含まれなくてよい。
【0039】
その後、負荷の抵抗Rの値及びリアクタンスXの値の範囲に対する、電力透過率の範囲が、コントローラ250にプログラムされ、コントローラ250は、マッチ回路に切り替えられた固定容量キャパシタ150a~d又は150a~hのID(identity)、従ってマッチの動作状態を監視する。一態様において、順方向電力に対する反射電力の比率が上がり始め、又は順方向電力に対する反射電力の比率が下がり始めた場合には、RF生成器220又はDC-ACコンバータ112は、負荷に到達する最大順方向電力、即ち、可能な限り高い電力透過率を再び得るために、電力信号の出力周波数を自動的に変更する。コントローラ250は、RF生成器又はDC-ACコンバータ112の出力周波数を監視する。上記の周波数の変更によってもなお、負荷への電力の透過率が、可能な又は所望の透過率より低くなる(過剰反射率)場合には、RF生成器220又はDC-ACコンバータ112の出力周波数、及び、スイッチ152の既知の設定、従って、シャント容量に現在含まれる固定容量キャパシタ150のIDに基づいて、コントローラ250は、RF生成器220又はDC-ACコンバータ112によって負荷に電力が供給されている間、スイッチ152のうちの1つ以上にその動作設定を変更するための信号を送信し、これにより、負荷の条件を含む現在の動作条件について、より高い電力透過率、好ましくは可能な限り高い透過率をもたらす値にシャント容量を変更する。コントローラは、順方向電力、反射電力、及びRF生成器220又はDC-ACコンバータ112の出力周波数を継続的に監視してスイッチ152を制御し、従って、可能な限りの高い電力透過率をもたらすシャント容量の値を確立する。
【0040】
他の態様において、コントローラは、チャンバ内又は処理環境内で実行されるプロセスレシピに基づいて、閉じられるスイッチ152a~d又は152a~hを選択して、固定容量キャパシタ150a~d又は150a~hの1つ以上をマッチ回路のシャント容量に含めるようにプログラムされうる。ここで、システム設計者は、予測データ又は実データに基づいて、各処理ステップの間の負荷のリアクタンス値及び抵抗値、シャント容量に選択的に切り替えられるキャパシタ150a~d又は150a~hを決定し、反射電力を測定し、又は、これらの両方のことを行い、各処理ステップで反射率を最小にするために、シャント容量に切り替えられる固定容量キャパシタ150a~d又は150a-hの適切な容量を決定する。ここでは、電源の周波数は電源自体によってのみ制御される。
【0041】
図13は、DC電源110とRF段254を組み込んだ電力供給回路の概略図であり、ここで、RF段は、
図1から
図4のDC-ACコンバータ112とAC又はRF増幅器114とを単一ユニットにまとめたものである。ここでは、200V~480Vの範囲内のAC電力がDC電源110に供給され、DC電源110はAC入力を、RF段254に供給されるDV出力に変換する。RF段は、DC-AC(RF)コンバータと、そのソリッドステート要素としての少なくとも1つのAC(RF)増幅器と、を含む。RF段からの所望の電力出力を得るために、1より多い増幅器を、RF段のDC-ACコンバータの出力に接続することができ、その出力が、コンバイナ(図示せず)内で結合される。RF段254のAC又はRF出力は、測定ユニット256を通り、ここで、負荷260、例えば処理チャンバ構成要素から反射された反射電力Pr及びPiの値が測定され、測定ユニット256から電力供給コントローラ258に送信される。電力供給コントローラ258は、DC電源110に制御信号を送信して、DC電源110から出力されるDV電力の値を変更することと、制御信号をRF段254に送信してその出力周波数を変更することと、を行うよう構成されている。電力供給コントローラ258は、ロジック部であって、RF段の出力周波数に対する反射電力の変化を測定し、負荷260の反射電力を最小化する値に周波数を設定させるロジック部を含む。結果として、例えば、シャント容量の値が、負荷が曝される処理環境又は負荷がその一部を形成する処理環境において実行されているプロセスレシピに基づく、負荷の予期されるリアクタンス値及び抵抗値に基づいているときには、電力の周波数は、切替可能なマッチ102内のシャント抵抗の値とは独立して変更されうる。
【0042】
本明細書では、負荷の下で動作可能な切替可能なマッチ、即ち、シャント容量に含まるよう又はシャント容量から外れるようにする固定容量キャパシタのホットスイッチング含む上記マッチを、AC又はRF電力の可変周波数源とともに説明してきたが、これらは、負荷による順方向電力の反射を最小にしつつ、広範囲の負荷の抵抗値及びリアクタンス値に対応することを可能にする。
【国際調査報告】