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▶ バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】シリコン誘電体膜の選択的堆積
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20240220BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553283
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 US2022018341
(87)【国際公開番号】W WO2022187247
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/155,669
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ハリピン チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド エム.パールスタイン
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030BA40
4K030BA44
4K030CA04
4K030CA05
4K030DA03
4K030JA05
4K030JA10
4K030JA11
5F058BA20
5F058BB05
5F058BB06
5F058BC08
5F058BC10
5F058BD10
5F058BD13
5F058BE10
5F058BF04
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF30
(57)【要約】
ケイ素及び酸素含有誘電体膜を基板上に選択的に堆積するための方法が開示される。方法は、誘電体表面と金属又は金属水素化物表面とを含む基板を反応器に提供する工程を含む。ハロゲン化ケイ素含有化合物を反応器に導入して、金属又は金属水素化物表面上よりも誘電体表面上に、より大量のケイ素含有層を形成することができる。窒素源を反応器内に導入してケイ素含有層と反応させ、窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜を形成することができる。酸素含有源を反応器に導入して、窒化ケイ素又は炭素ドープ窒化ケイ素膜と反応させて、ケイ素及び酸素含有誘電体膜を形成することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にケイ素及び酸素含有誘電体膜を選択的に堆積するための方法であって、
a)少なくとも1つの第1表面と、少なくとも1つの第2表面とを含む少なくとも1つの基板を、反応器内に提供することであって、前記少なくとも1つの第1表面が誘電体表面であり、前記少なくとも1つの第2表面がケイ素表面、金属表面、金属化合物表面、又はこれらの水素化物表面である、ことと、
b)前記反応器を、約25℃~約600℃の範囲の少なくとも1つの温度に加熱し、任意選択で、前記反応器を約100torr以下の圧力に維持することと、
c)前記少なくとも1つの第2表面上よりも前記少なくとも1つの表面上に、より大量にケイ素含有層を形成する、ハロゲン化ケイ素含有化合物を含む少なくとも1つの前駆体を、前記反応器に導入することと、
d)不活性ガスを使用して、前記反応器から任意の未反応前駆体をパージすることと、
e)窒素源を導入して前記ケイ素含有層と反応させて、窒化ケイ素又は炭素ドープ窒化ケイ素膜を形成することと、
f)不活性ガスを使用して、前記反応器をパージすることと、
g)酸素含有源を前記反応器に導入して、前記窒化ケイ素又は炭素ドープ窒化ケイ素膜と反応させて、ケイ素及び酸素含有誘電体膜を形成することと、
h)不活性ガスを使用して、前記反応器から任意の未反応酸素含有源をパージすることと、
i)任意選択で、還元剤を使用して前記基板を処理して、清浄な金属水素化物層と、清浄な誘電体層とを形成することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第2表面が、Si、Co、Cu、Al、Ta、Mo、W、TiN、TiSi、MoN、WN、及びこれらの水素化物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1表面が、酸化Cu、酸化Ta、酸化Al、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、炭素ドープ酸化Mo、炭素ドープ酸化Ti、窒化Al、窒化ケイ素、炭素ドープ酸窒化ケイ素、及び酸窒化ケイ素からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ケイ素及び酸素含有誘電体膜が、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、及び炭素ドープ酸窒化ケイ素からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化ケイ素含有化合物が、i)ハロゲン化シラン、ii)ハロゲン化シロキサン、iii)ハロゲン化シラザン、及びiv)ハロゲン化カルボシランからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
窒素源が、アンモニア、エチレンジアミン、メチレンジアミン及びピペラジンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸素含有源が、工程c~fを繰り返すことによって、窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜が所定の厚さに堆積された後に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程c~hの一部又は全部を繰り返すとき、前記酸素含有源は常に、前記窒素源が導入されて、前記ケイ素含有層と反応した後に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記酸素含有源が、空気、分子酸素、亜酸化窒素、水蒸気及び過酸化水素からなる群から選択される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記酸素含有源が、オゾン、酸素プラズマ、亜酸化窒素プラズマ、二酸化炭素プラズマ及びこれらの組み合わせから選択される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項11】
水素又は水素プラズマを、前記還元剤として前記反応器に導入して、いくらかの残留膜を除去し、前記少なくとも1つの第2表面を清浄化することを含む工程iを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
基板上にケイ素及び酸素含有誘電体膜を選択的に堆積するための方法であって、
a)少なくとも1つの第1表面と、少なくとも1つの第2表面とを含む少なくとも1つの基板を、反応器内に提供することであって、前記少なくとも1つの第1表面が誘電体表面であり、前記少なくとも1つの第2表面がケイ素表面、金属表面、金属化合物表面、又はこれらの水素化物表面である、ことと、
b)前記反応器を約25℃~約600℃の範囲の少なくとも1つの温度に加熱し、任意選択で前記反応器を約100torr以下の圧力に維持することと、
c)前記少なくとも1つの第2表面上よりも前記少なくとも1つの第1表面上に、より大量にケイ素含有層を形成する、ハロゲン化ケイ素含有化合物を含む少なくとも1つの前駆体を、前記反応器に導入することと、
d)不活性ガスを使用して、前記反応器から任意の未反応前駆体をパージすることと、
e)窒素源を導入して前記ケイ素含有層と反応させて、窒化ケイ素又は炭素ドープ窒化ケイ素膜を形成することと、
f)不活性ガスを使用して、前記反応器をパージすることと、
g)前記窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜を酸素含有源に曝露して、前記窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜と反応させて、ケイ素及び酸素含有誘電体膜を形成することと、
h)前記酸素含有源が前記反応器に導入される場合のみ、不活性ガスを使用して、前記反応器から任意の未反応酸素含有源をパージすることと、
i)任意選択で、還元剤を使用して前記基板を処理して、清浄な金属又は金属水素化物層と、清浄な誘電体層とを形成することと;前記ケイ素及び酸素含有誘電体膜が所望の厚さに達するまで、工程c~hの一部又は全部を繰り返すことと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの第2表面が、Si、Co、Cu、Al、Ta、Mo、W、TiN、TiSi、MoN、WN、及びこれらの水素化物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第1表面が、酸化Cu、酸化Ta、酸化Al、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、炭素ドープ酸化Mo、炭素ドープ酸化Ti、窒化Al、窒化ケイ素、炭素ドープ酸窒化ケイ素、及び酸窒化ケイ素からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ケイ素及び酸素含有誘電体膜が、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、及び炭素ドープ酸窒化ケイ素からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記ハロゲン化ケイ素含有化合物が、i)ハロゲン化シラン、ii)ハロゲン化シロキサン、iii)ハロゲン化シラザン、及びiv)ハロゲン化カルボシランからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
窒素源が、アンモニア、エチレンジアミン、メチレンジアミン及びピペラジンからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜が、工程c~fを繰り返すことによって、前記窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜が所定の厚さに堆積された後、前記酸素含有源に曝露される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
工程c~hの一部又は全部を繰り返すとき、前記窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜が、前記窒素源が導入されて前記ケイ素含有層と反応した後にのみ、前記酸素含有源に曝露される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜が、前記反応器内にある間に前記酸素含有源に曝露され、前記酸素含有源が、空気、分子酸素、亜酸化窒素、水蒸気及び過酸化水素からなる群から選択される、請求項12、18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜が、前記反応器内にある間に前記酸素含有源に曝露され、前記酸素含有源が、オゾン、酸素プラズマ、亜酸化窒素プラズマ、二酸化炭素プラズマ及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12、18又は19に記載の方法。
【請求項22】
前記窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜が、前記反応器の外側にある間に前記酸素含有源に曝露され、前記酸素含有源が空気である、請求項12、18、又は19に記載の方法。
【請求項23】
水素又は水素プラズマを前記還元剤として前記反応器に導入して、いくらかの残留膜を除去し、前記少なくとも1つの第2表面を清浄化することを含む工程iを含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月2日に出願された米国仮特許出願第63/155,669号の優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書に記載されているのは、電子デバイスの製造のための組成物及び方法である。より具体的には、本発明に記載されているのは、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、又は炭素ドープ酸窒化ケイ素を、誘電体材料上に選択的に堆積して、金属又は金属水素化物材料上への堆積とは対照的に、金属又は金属水素化物層の酸化を回避/最小化するための化合物、並びに当該化合物を含む組成物及び方法である。
【背景技術】
【0003】
米国特許第9816180(B)号は、堆積が生じない第2の異なる表面と比較して、基板の1つの表面上に、選択的に堆積する方法を開示している。例示的な堆積方法は、ニッケル、窒化ニッケル、コバルト、鉄、及び/又は酸化チタンを含む材料などの材料を、同じ基板のH末端表面などの第2の異なる表面と比較して、酸化ケイ素表面などの第1の基板表面上に、選択的に堆積することを含む。方法は、堆積前に基板の表面を処理してH末端を提供することを含む。
【0004】
米国特許出願公開第20180342388(A)号は、有機層及びハイブリッド有機/無機層を選択的に堆積する方法を開示している。より具体的には、当該開示の実施形態は、分子層有機膜及びハイブリッド有機/無機膜の選択的堆積のためにヒドロキシル末端表面を改質する方法を対象とする。当該開示の更なる実施形態は、分子層堆積プロセスにおいて使用するための環状化合物に関する。
【0005】
米国特許出願公開第20170037513(A)号は、基板の第2の誘電体表面と比較して、基板の第1の金属又は金属性表面に、材料を選択的に堆積するための方法、又は第2の酸化ケイ素表面と比較して、基板の第1の金属酸化物表面上に、金属酸化物を選択的に堆積するための方法を開示している。選択的に堆積される材料は、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属ケイ化物、金属炭化物、及び/又は誘電材料であり得る。いくつかの実施形態では、第1の金属又は金属性表面と第2の誘電体表面とを含む基板を、第1の気相金属ハロゲン化物反応物及び第2の反応物と交互にかつ連続的に接触させる。いくつかの実施形態では、第1の金属酸化物表面及び第2の酸化ケイ素表面を含む基板を、第1の気相金属フッ化物又は塩化物の反応物及び水と交互にかつ連続的に接触させる。
【0006】
米国特許第10460930(B)号は、銅などの金属含有表面と比較して、誘電体表面上に、酸化ケイ素を選択的に堆積するための方法及び装置を開示している。方法は、誘電体表面と銅表面とを有する基板をアルキルチオールなどの銅ブロッキング試薬に曝露して、銅表面に選択的に吸着させることと、ケイ素含有前駆体に基板を暴露して、酸化ケイ素を堆積することと、基板を弱酸化ガスに曝露し、プラズマを点火して、吸着されたケイ素含有前駆体を変換して、酸化ケイ素を形成することと、基板を還元剤に曝露して、弱酸化ガスへの酸化銅の曝露を低減することと、を伴う。
【0007】
米国特許出願公開第20180211833(A)号は、ロボット及び約0.1重量%以上の水蒸気を含む環境を有する中央移送ステーションと、移送ステーションの側面に接続された前洗浄チャンバと、移送ステーションの側面に接続されたバッチ処理チャンバと、を有する処理プラットフォームを開示している。処理プラットフォームは、第1の表面から自然酸化物を除去するために基板を前洗浄し、アルキルシランを使用してブロッキング層を形成し、膜を選択的に堆積するように構成される。処理プラットフォームを使用し、複数のウェハを処理する方法も記載されている。
【0008】
米国特許出願公開第20190023001(A)号は、水素末端表面と比較して、水酸化物末端表面上に、膜を選択的に堆積する方法を開示している。水素末端表面を窒化剤に曝露してアミン末端表面を形成し、これをブロッキング分子に曝露して、表面上にブロッキング層を形成する。その後、水酸化物末端表面上に膜を選択的に堆積することができる。
【0009】
米国特許出願公開第20180233349(A)号は、窒化ケイ素表面と比較して、酸化ケイ素表面上に、酸化ケイ素を選択的に堆積するための方法及び装置を開示している。方法は、アンモニア及び/又は窒素プラズマを使用して基板表面を前処理することと、熱原子層堆積反応においてアミノシランケイ素前駆体と酸化剤との交互パルスを使用して、露出した窒化ケイ素表面上に酸化ケイ素を堆積することなく、酸化ケイ素表面上に酸化ケイ素を選択的に堆積することと、を伴う。
【0010】
米国特許第10043656(B)号は、酸化ケイ素又は窒化ケイ素材料に対して選択的に、ケイ素又は金属表面上に、ケイ素含有誘電体又は金属含有誘電体材料を選択的に堆積するための方法及び装置を開示している。方法は、堆積が望まれない酸化ケイ素又は窒化ケイ素材料と反応性である塩化アシルに基板を曝露して、酸化ケイ素又は窒化ケイ素材料上への堆積を阻止するケトン構造を形成することを伴う。塩化アシルへの曝露は、所望のケイ素含有誘電体材料又は金属含有誘電体材料の堆積の前に行われる。
【0011】
米国特許出願公開第20180323055(A)号は、周期的堆積プロセスによって、第1の金属性表面と、第2の誘電体表面とを含む基板上に窒化ケイ素膜を選択的に形成するための方法を開示している。当該方法は、ハロゲン化ケイ素源を含む第1反応物に基板を接触することと、窒素源を含む第2反応物に基板を接触することと、を含んでもよく、第1の金属性表面のインキュベーション期間は、第2の誘電体表面のインキュベーション期間より短い。選択的窒化ケイ素膜を含む半導体デバイス構造も開示されている。
【0012】
当技術分野では、熱原子層堆積プロセスを使用する半導体処理中に、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、炭素ドープ酸窒化ケイ素などのシリコン誘電体を、選択的に誘電体表面の上に堆積する一方で、そのようなシリコン誘電体材料が隣接する又は存在する水素化金属表面上に堆積することを避ける組成物及び方法を提供することが必要とされている。オゾン又は酸素含有プラズマなどの強酸化剤を使用することなく、そのような選択的堆積を提供することが、当技術分野において更に必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、一実施形態によれば、基板上にケイ素及び酸素含有誘電体膜を選択的に堆積するための方法であって、
a)少なくとも1つの誘電体表面と、少なくとも1つの金属又は金属水素化物表面とを含む少なくとも1つの基板を、反応器内に提供することと、
b)反応器を、約25℃~約600℃の範囲の少なくとも1つの温度に加熱し、任意選択で、反応器を約100torr以下の圧力に維持することと、
c)ケイ素含有層を金属又は金属水素化物表面上よりも誘電体表面上に、より大量に形成する、ハロゲン化ケイ素含有化合物を含む少なくとも1つの前駆体を、反応器に導入することと、
d)不活性ガスを使用して、反応器から任意の未反応前駆体をパージすることと、
e)窒素源を導入してケイ素含有層と反応させて、窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜を形成することと、
f)不活性ガスを使用して、反応器をパージすることと、
g)酸素含有源を反応器に導入して、窒化ケイ素又は炭素ドープ窒化ケイ素膜と反応させて、ケイ素及び酸素含有誘電体膜を形成することと、
h)不活性ガスを使用して、反応器から任意の未反応酸素含有源をパージすることと、
i)任意選択で、還元剤を使用して基板を処理して、清浄な金属又は金属水素化物層と清浄な誘電体層とを形成する工程と;ケイ素及び酸素含有誘電体膜が所望の厚さに達するまで、工程c~h又はjの一部又は全部を繰り返すことと、
を含む、方法を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載されるのは、原子層堆積(ALD)又はALD様プロセス(限定するものではないが、周期的化学気相堆積プロセス(CCVD)など)において、ケイ素及び酸素含有誘電体膜を、隣接する又はその他の方法で存在する金属又は金属水素化物表面上に堆積することなく、ケイ素含有又は金属含有誘電体表面上に熱的に選択的に堆積するための方法である。
【0015】
従来の堆積システムは、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、又は炭素ドープ酸窒化ケイ素などの酸素含有誘電体膜を形成するために酸化剤を使用しており、これは金属表面上への堆積には好ましくない。オゾン及び/又は酸素プラズマなどの酸化剤は、金属/金属水素化物表面を酸化して金属酸化物表面を形成することができ、それによって、金属/金属水素化物表面に対する誘電体上への誘電体膜の選択的堆積を妨げる。本発明は、ケイ素及び酸素含有誘電体膜の熱堆積プロセスを対象とする。プロセス工程は、窒化ケイ素又は炭素ドープケイ素の熱堆積と、その後の酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、又は炭素ドープ酸窒化ケイ素への変換と、を含み、それにより、堆積中の金属又は金属水素化物層の酸化を回避又は最小化する。金属/金属水素化物上に形成される比較的最小の酸化層は、誘電体層上に所望の酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、及び/又は炭素ドープ酸窒化ケイ素を形成した後に、水素、水素含有プラズマ又はフォーミングガス(水素と窒素との混合物)又はシラン若しくはポリシラン又はアルコールなどの還元剤又は他の還元手段を使用した還元によって除去することができる。
【0016】
例示的な実施形態に従って説明される方法は、
a)少なくとも1つの第1表面と、少なくとも1つの第2表面とを含む少なくとも1つの基板を、反応器内に提供することであって、少なくとも1つの第1表面が誘電体表面であり、少なくとも1つの第2表面がケイ素表面、金属表面、金属化合物表面、又はこれらの水素化物表面である、ことと、
b)反応器を、約25℃~約600℃の範囲の少なくとも1つの温度に加熱し、任意選択で、反応器を約100torr以下の圧力に維持することと、
c)ケイ素含有層を少なくとも1つの第2表面上よりも少なくとも1つの第1表面上に、より大量に形成する、ハロゲン化ケイ素含有化合物を含む少なくとも1つの前駆体を、反応器に導入することと、
d)不活性ガスを使用して、反応器から任意の未反応前駆体をパージすることと、
e)窒素源を導入してケイ素含有層と反応させて、窒化ケイ素又は炭素ドープ窒化ケイ素膜を形成することと、
f)不活性ガスを使用して、反応器をパージすることと、
g)酸素含有源を反応器に導入して、窒化ケイ素又は炭素ドープ窒化ケイ素膜と反応させて、ケイ素及び酸素含有誘電体膜を形成することと、
h)不活性ガスを使用して、反応器から任意の未反応酸素含有源をパージすることと、
i)任意選択で、還元剤を使用して基板を処理して、清浄な金属水素化物層と、清浄な誘電体層とを形成することと、
を含む。
【0017】
この実施形態における工程c~fは、安定な形態のケイ素及び酸素含有誘電体膜を形成するために、工程g~iが導入される前に、所望の厚さの窒化ケイ素又は炭素ドープ窒化ケイ素を提供するように繰り返されてもよい。本発明のいくつかの特定の実施形態において、工程c~fは、工程gにおいて酸素含有源を導入する前に、窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素の所望の厚さを達成するために繰り返される。窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素の厚さは、1Å~1000Å、又は1Å~500Å、又は1Å~300Å、又は1Å~200Å、又は1Å~100Å、又は1Å~50Åの範囲である。窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素の厚さの範囲はまた、5Å~500Å、又は5Å~400Å、又は5Å~300Å、又は5Å~200Å、又は5Å~100Å、又は5Å~50Åの範囲であってもよい。
【0018】
工程c~h、又はc~iは、本明細書に開示される方法のこの特定の実施形態において、所望の厚さの酸化ケイ素形態のケイ素及び酸素含有誘電体膜が第1表面、すなわち誘電体表面上に選択的に堆積されるまで繰り返されてもよい。
【0019】
追加の実施形態では、堆積プロセスは、
a)少なくとも1つの第1表面と、少なくとも1つの第2表面とを含む少なくとも1つの基板を反応器内に提供する工程であって、少なくとも1つの第1表面が誘電体表面であり、少なくとも1つの第2表面がケイ素表面、金属表面、金属化合物表面、又はこれらの水素化物表面である、工程と、
b)反応器を約25℃~約600℃の範囲の少なくとも1つの温度に加熱し、任意選択で反応器を約100torr以下の圧力に維持する工程と、
c)ケイ素含有層を少なくとも1つの第2表面上よりも少なくとも1つの表面上に、より大量に形成する、ハロゲン化ケイ素含有化合物を含む少なくとも1つの前駆体を、反応器に導入する工程と、
d)不活性ガスを使用して、反応器から任意の未反応前駆体をパージする工程と、
e)窒素源を導入してケイ素含有層と反応させて、窒化ケイ素膜又は炭素ドープ窒化ケイ素膜を形成する工程と、
f)不活性ガスを使用して、反応器をパージする工程と、
g)任意選択で、還元剤を使用して基板を処理して、清浄な金属水素化物層と、清浄な誘電体層とを形成する工程と、
h)酸素含有源を反応器に導入して、窒化ケイ素又は炭素ドープ窒化ケイ素膜と反応させて、ケイ素及び酸素含有誘電体膜を形成する工程と、
i)不活性ガスを使用して、反応器から任意の未反応酸素含有源をパージする工程と、
を含んでもよく、
この特定の実施形態における工程c~fは、安定な形態のケイ素及び酸素含有誘電体膜を形成するために、工程g~h又は工程g~iが導入される前に、所望の厚さの窒化ケイ素又は炭素ドープ窒化ケイ素を提供するように繰り返されてもよい。本発明のいくつかの実施形態において、工程c~fは、工程g又はhが導入される前に、窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素の所望の厚さを達成するために繰り返される。窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素の厚さは、1Å~1000Å、又は1Å~500Å、又は1Å~300Å、又は1Å~200Å、又は1Å~100Å、又は1Å~50Åの範囲である。窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素の厚さの範囲はまた、5Å~500Å、又は5Å~400Å、又は5Å~300Å、又は5Å~200Å、又は5Å~100Å、又は5Å~50Åの範囲であってもよい。
【0020】
工程c~iは、本明細書に開示される方法のこの実施形態において、所望の厚さの酸化ケイ素形態のケイ素及び酸素含有誘電体膜が誘電体表面上に選択的に堆積されるまで繰り返されてもよい。
【0021】
窒素源の例は、アンモニア、エチレンジアミン、メチレンジアミン及びピペラジンから選択することができる。
【0022】
酸素含有源は、空気、分子酸素、亜酸化窒素、水蒸気又は過酸化水素から選択できる穏やかな酸化剤を使用することが好ましい。
【0023】
酸素含有源は、オゾン、酸素プラズマ、亜酸化窒素プラズマ、二酸化炭素プラズマ、及びこれらの組み合わせから選択することもできる。
【0024】
少なくとも1つの第2表面は、Si、Co、Cu、Al、Ta、Mo、W、TiN、TiSi、MoN、WN、及びこれらの水素化物から選択することができる。誘電体表面は、酸化Cu、酸化Ta、酸化Al、酸化ケイ素、炭素ドープ酸化ケイ素、酸化Mo、酸化Tiなどの金属酸化物層;窒化Al、窒化ケイ素;又は炭素ドープ酸窒化ケイ素若しくは酸窒化ケイ素を含み得るこれらの組み合わせから選択することができる。
【0025】
還元剤は、水素、及び水素含有プラズマから選択することができる。
【0026】
酸化ケイ素又は酸窒化ケイ素を選択的に堆積するための例示的なハロゲン化ケイ素含有化合物は、
i)ハロゲン化シラン、ii)ハロゲン化シロキサン、iii)ハロゲン化シラザン、及びiv)ハロゲン化カルボシランからなる群から選択される。
【0027】
i群のハロゲン化シランとしては、トリクロロシラン、テトラクロロシラン、ヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシラン、テトラクロロジシラン、オクタクロロトリシラン、ジクロロシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
ii群のハロゲン化シロキサンとしては、ヘキサクロロジシロキサン、ペンタクロロジシロキサン、テトラクロロジシロキサン、オクタクロロトリシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
iii群のハロゲン化シラザンは、以下の式Iによって表される群から選択され:
【化1】
式中、Rは、水素、直鎖又は分枝状C~C10アルキル基、直鎖又は分枝状C~C10アルケニル基、直鎖又は分枝状C~C10アルキニル基、C~C10環状アルキル基、C~Cジアルキルアミノ基、電子求引基、及びC~C10アリール基からなる群から選択され;Rは、水素、直鎖又は分枝状C~C10アルキル基、直鎖又は分枝状C~Cアルケニル基、直鎖又は分枝状C~Cアルキニル基、C~C10環状アルキル基、C~Cジアルキルアミノ基、C~C10アリール基、直鎖又は分枝状C~Cフッ素化アルキル基、電子求引基、C~C10アリール基、並びにCl、Br、及びIからなる群から選択されるハライドからなる群から選択され;Xは、Cl、Br、及びIからなる群から選択されるハライドである。
【0030】
ハロゲン化シラザンのiii群の例は、以下の構造で表すことができる。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0031】
iv群のハロゲン化カルボシランは、1又は2個のSi-C-Si連結を有するケイ素化合物からなる群から選択される。iv群の例示的なカルボシランとしては、式II及びIIIによって表されるものが挙げられ:
【化7】
式中、X、X、X、X、X、及びXは、各々独立して、H原子;F、Cl、Br及びIから選択されるハライド原子;イソシアネート;式NR[式中、R及びRは、水素、C1~10直鎖状アルキル基からなる群から独立して選択される]を有するアミノ基;C3~10分枝状アルキル基;C3~10環状アルキル基;C3~10アルケニル基;C4~10アリール基;及びC4~10複素環基から選択され;式II、III、又はII及びIIIの両方のいくつかの実施形態において、置換基X、X、X、X、X、及びXのうちの1つ以上は、連結して、置換又は非置換の飽和又は不飽和環状基を形成する。式II、III、又はII及びIIIの両方の1つの実施形態において、置換基X、X、X、X、X、及びXのいずれか1つ以上は、上記のハライド基又はアミノ基のいずれかである。式II及びIIIについて、X、X、X、X、X、及びXは、全てがアミノ基であるということはできない。式II又はIIIの特定の実施形態において、式NRを有するアミノ基のR及びRは、互いに連結して環を形成する。特定の一実施形態では、R及びRは、直鎖又は分枝状C~Cアルキル基から選択され、連結して環式環を形成する。式II又はIIIの代替実施形態では、R及びRは、互いに連結して環を形成するものではない。他の実施形態では、RとRとは異なっている。
【0032】
iv群のハロゲン化カルボシランの例は、以下の構造によって表すことができる。
【化8】
【化9】
【0033】
実施例1 1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタンを用いた、水素化ケイ素上ではなくシリコン誘電体(酸化ケイ素又は窒化ケイ素)上での炭素ドープ酸化ケイ素膜の堆積
シリコン誘電体膜の選択的堆積を、シリコン誘電体及び水素化ケイ素などの異なるタイプの表面上で実施した。シリコン誘電体表面は、シリコンウェハ上に熱成長させた酸化ケイ素(1000Å)、LPCVD成長させた窒化ケイ素(1000Å)などの市販の膜から選択し、水素化ケイ素表面は、シリコンウェハから自然酸化物を除去することによって調製した。各々のタイプについて3つのクーポンを使用した。
【0034】
堆積前に、全てのクーポンを、70℃で10分間、標準的な半導体洗浄(SC-1)プロセスによって洗浄した。SC-1溶液は、1:1:5の比の30%H:27%NHOH:DI水からなっていた。SC-1洗浄及びDI水によるすすぎの後、全てのクーポンを室温で90秒間、0.5%HF溶液で処理し、クーポン表面上の夾雑物質及び自然酸化ケイ素を更に除去した。SCI Filmtek 3000、透過-反射分光光度計、を使用して、堆積前後の膜厚を測定した。
【0035】
1,1,3,3-テトラクロロ-1,3-ジシラシクロブタン及びアンモニアを反応物ガスとして使用した熱的ALDプロセスの堆積によって、水素化ケイ素上ではなく、シリコン誘電体上でのケイ素含有膜の選択的成長が実証された。
【0036】
堆積プロセスは、内側チャンバと外側チャンバとの両方を有する300mmのPEALDツール上で実施した。膜成長ALD工程を以下の表1に列挙する。
【表1】
【0037】
工程3~6を複数回繰り返して、所望の膜厚を得た。膜を周囲温度で空気に曝露して、堆積したまま(as-deposited)の炭素ドープ窒化ケイ素を炭素ドープ酸化ケイ素に変換した。
【0038】
表2は、様々な表面上の炭素ドープ酸化ケイ素膜成長の厚さを示す。報告したデータは、最終膜厚から初期膜厚を差し引いた厚さの成長のみを示す。標準偏差(std.dev.)は、3回の測定(各クーポンについて1回の測定)から計算された1σである。
【0039】
【表2】
水素化ケイ素上の膜成長は、他の表面(酸化ケイ素及び窒化ケイ素)と比較して明らかに妨げられた。25サイクル後、水素化ケイ素表面上では、非常に低い膜成長(<1Å)が観察されているが、酸化ケイ素及び窒化ケイ素表面上での膜成長は、それぞれ10Å及び12Åである。
【国際調査報告】