IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニーの特許一覧 ▶ サムスン エレクトロニクス カンパニー,リミティドの特許一覧

特表2024-508907シリコン及びホウ素を含む膜用の組成物及びそれを用いる方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-28
(54)【発明の名称】シリコン及びホウ素を含む膜用の組成物及びそれを用いる方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20240220BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20240220BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20240220BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/316 X
C23C16/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553500
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 US2022018330
(87)【国際公開番号】W WO2022187238
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】63/155,567
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】523333928
【氏名又は名称】サムスン エレクトロニクス カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ハリピン チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ミン リー
(72)【発明者】
【氏名】マンチャオ シアオ
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンウ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ピョン クン
(72)【発明者】
【氏名】ファン スンヘ
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヨンチュン
【テーマコード(参考)】
4K030
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030BA26
4K030BA29
4K030BA38
4K030BA42
4K030CA04
4K030JA01
4K030JA10
4K030JA11
5F058BA08
5F058BA09
5F058BB01
5F058BB05
5F058BB06
5F058BC02
5F058BC04
5F058BC08
5F058BC10
5F058BF02
5F058BF04
5F058BF07
5F058BF22
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF36
5F058BF37
5F058BH02
5F058BH03
5F058BH16
5F058BH17
5F058BJ05
5F058BJ06
(57)【要約】
電子デバイスの製造における、特に、低誘電率(6.0未満)及び高酸素アッシング耐性を有する、シリコン及びホウ素を含む膜を成膜するための、組成物及び組成物を使用する方法に関する。膜は、シリコン及びホウ素を含み、限定されないが、シリコンボロカルボキシド、シリコンボロカルボニトリド、シリコンボロキシド、又はシリコンボロカルボキシニトリドであってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン及びホウ素を含む膜のALD成膜用の組成物であって、
(a)トリクロロシリル(ジクロロボリル)メタン、1-(トリクロロシリル)-1-(ジクロロボリル)エタン、2-(トリクロロシリル)-2-(ジクロロボリル)プロパン、及び(ジクロロメチルシリル)(ジクロロボリル)メタンからなる群から選択される、1つのSi-C-B結合を有する、少なくとも1種の前駆体化合物と、
(b)少なくとも1種の溶媒と、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記溶媒が、エーテル、第三級アミン、シロキサン、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、及び第三級アミノエーテルからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の前駆体の沸点と、前記少なくとも1種の溶媒の沸点との差が、約40℃以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ICP-MSで測定される、Alイオン、Liイオン、Caイオン、Feイオン、Niイオン及びCrイオンからなる群から選択される、5ppm未満の少なくとも1種の金属イオンを更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の溶媒が、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、トルエン、及びメシチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ALDプロセスにより、XPSで測定したホウ素含有率が10at%以上40at%以下の範囲の、シリコン及びホウ素を含む膜を形成する方法であって、前記方法が、
a)表面特徴部を含む1つ以上の基材を、ALD反応器に入れることと、
b)前記反応器を、周囲温度から約700℃までの範囲の1つ以上の温度に加熱し、任意に、前記反応器を100torr以下の圧力に維持することと、
c)Si-C-B結合を有する少なくとも1種の前駆体を、前記反応器に導入することと、
d)不活性ガスを使用して、前記反応器をパージすることと、
e)窒素源又は酸素源を前記反応器に供給して、少なくとも前記少なくとも1種の前駆体と反応させ、それによってシリコン及びホウ素を含む膜を形成することと、
f)前記反応器を不活性ガスでパージすることと、
g)工程cからfを繰り返して、前記シリコン及びホウ素を含む膜を所望の厚さにすることと、
h)任意に、前記シリコン及びホウ素を含む膜を、酸素源で、概ね周囲温度から約1000℃までの範囲、又は約100℃以上約400℃以下の範囲の1つ以上の温度で処理して、前記シリコン及びホウ素を含む膜を、シリコンボロカルボニトリド膜又はシリコンボロカルボキシニトリド膜に変換することと、
i)任意に、前記シリコン及びホウ素を含む膜を、水素を含むプラズマに曝すことと、
を含む、方法。
【請求項7】
約6以下のkを有し、少なくとも約10at%以上約45at%以下のホウ素含有量を有する、請求項6に記載の方法に従って形成された、シリコン及びホウ素を含む膜。
【請求項8】
請求項6に記載の方法に従って形成され、熱酸化シリコンのエッチング速度よりも少なくとも30%低いエッチング速度を有する、シリコン及びホウ素を含む膜。
【請求項9】
請求項6に記載の方法に従って形成され、熱酸化シリコンのエッチング速度よりも少なくとも50%低いエッチング速度を有する、シリコン及びホウ素を含む膜。
【請求項10】
請求項6に記載の方法に従って形成され、熱酸化シリコンのエッチング速度よりも少なくとも70%低いエッチング速度を有する、シリコン及びホウ素を含む膜。
【請求項11】
請求項6に記載の方法に従って形成され、熱酸化シリコンのエッチング速度よりも少なくとも90%低いエッチング速度を有する、シリコン及びホウ素を含む膜。
【請求項12】
前記少なくとも1つの前駆体が、(トリクロロシリル)(ジクロロボリル)メタン、1-(トリクロロシリル)-1-(ジクロロボリル)エタン、2-(トリクロロシリル)-2-(ジクロロボリル)プロパン、及び(ジクロロメチルシリル)(ジクロロボリル)メタンからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物を収容する、ステンレス鋼容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、電子デバイスの製造用の組成物及び方法が記載されている。より具体的には、本明細書には、限定されないが、原子層堆積を介した、シリコンボロカルボキシド、シリコンボロカルボニトリド、シリコンボロキシド、及びシリコンボロカルボキシニトリドのなどのシリコン及びホウ素を含む低誘電率(6.0未満)及び高酸素アッシング耐性膜の成膜のための化合物、並びにそれを含む組成物及び方法が記載されている。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野において、電子産業内の特定の用途のために、高いホウ素含有量(例えば、X線光電子分光法(XPS)によって測定される約10原子%以上のホウ素含有量)を有するシリコン及びホウ素を含む膜を成膜するための、組成物及びそれを使用する方法を提供する必要性が存在する。
【0003】
US6093840は、一般式I、RSiC(R)C(RH)BR(式中、R1~3=C1~6アルキル、ビニル、Ph、H、又はハロゲン;R4~6=C1~6アルキル、ビニル、Ph、及び/又はH;R、R=塩化物及び/又は臭化物)を有するシリルアルキルボランを開示しており、各Si原子及び各B原子は、それぞれ3個及び2個のR部位で配位され、Si及びBは、C(CRH)(R)ブリッジを介して結合されている。シリコボロカルボニトリドセラミックスは、≧1のオリゴ及びポリボロカルボシラザンをNH又は不活性ガス中、-200℃以上2000℃以下で熱分解し、800℃以上2000℃以下で焼成することにより製造される。
【0004】
US6815350及びUS6962876は、(a)半導体基材上に所定の相互接続パターンを形成することと、(b)第1の反応性物質及び第2の反応性物質を、その中に基材を有するチャンバーに供給し、それによって、第1の反応性物質及び第2の反応性物質を基材の表面に吸着させることと、(c)チャンバーに第1のガスを供給して、未反応のまま残る第1の反応性物質及び第2の反応性物質をパージすることと、(d)第3の反応性物質をチャンバーに供給し、それによって、第1の反応性物質及び第2の反応性物質と、第3の反応性物質との間の反応を引き起こして、単分子膜を形成することと、(e)チャンバー内に第2のガスを供給して、チャンバー内に未反応のまま残る第3の反応性物質及び副生成物をパージすることと、(f)(b)から(e)を所定の回数繰り返して、基材上に所定の厚さを有するSiBN三元層を形成することと、を含むALDプロセスを使用して、半導体デバイス用の低誘電体層を形成する方法を開示している。
【0005】
US9293557B及びUS9590054Bは、プレーナFET又はFinFETのゲートスタックなどの、ゲートスタック上に窒化ホウ素(BN)スペーサーを含む半導体構造及びその製造方法を開示している。窒化ホウ素スペーサーは、シリコン(Si)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、ゲルマニウム(Ge)、及び/又はIII-V族化合物などの物質から作られたデバイスに適した比較的低い温度で窒化ホウ素スペーサーを製造するために、原子層堆積(ALD)技術及び/又はプラズマ支援原子層堆積(PEALD)技術を使用して製造される。さらに、窒化ホウ素スペーサーは、六角形のテクスチャー構造を含む、様々な望ましい特性を持つように製造することができる。
【0006】
US9520282は、半導体装置の製造方法であって、基材上に形成された絶縁膜の表面を、所定の元素とハロゲン基とを含む第1の前駆体を基材に供給することによって処理することと、所定の回数のサイクルを実行することによって、絶縁膜の処理された表面に所定の元素を含む薄膜を形成することと、を含む方法を開示しており、サイクルは、所定の元素とハロゲン基とを含む第2の前駆体を基材に供給することと、第3の前駆体を基材に供給することと、を含む。
【0007】
US20140170858Aは、所定の元素、酸素、及び窒素、炭素及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1個の元素を含む膜を、所定の回数のサイクルを実行することによって、基材上に形成することを含む方法を開示しており、サイクルは、基材に原料ガスを供給することであって、原料ガスが所定の元素と塩素と酸素を含み、所定の元素と酸素は化学結合している、供給することと、基材に反応性ガスを供給することであって、反応性ガスが窒素、炭素及びホウ素からなる群から選択される少なくとも1個の元素を含む、供給することと、を含む。
【0008】
US2013052836Aは、半導体装置の製造方法であって、以下の工程:クロロシラン系原料とアミノシラン系原料の一方の原料を、処理チャンバー内の基材に供給し、その後、他方の原料を供給して、基材上にシリコン、窒素、及び炭素を含む第1の層を形成する工程と、各原料とは異なる反応性ガスを処理チャンバー内の基材に供給して、第1の層を改質し、第2の層を形成する工程と、を所定の回数交互に実行することによって、所定の組成及び所定の膜厚を有する絶縁膜を基材上に形成することを含む、半導体装置の製造方法を開示している。
【0009】
US20140273507Aは、半導体デバイスの製造方法を開示している。本方法は、ボラジン環骨格を有し、所定の元素、ホウ素、炭素及び窒素を含む薄膜を、所定の回数のサイクルを実行することによって、基材上に形成することを含む。サイクルは、所定の元素及びハロゲン元素を含む前駆体ガスを基材に供給することと、有機ボラジン化合物を含む反応性ガスを基材に供給することと、炭素含有ガスを基材に供給することと、を含む。サイクルは、有機ボラジン化合物中のボラジン環骨格が維持される条件下で実行された。
【0010】
R.Southwickら(2015)、A Novel ALD SiBCN Low-k Spacer for Parasitic Capacitance Reduction in FinFETs、2015年、VLSI技術のシンポジウム、京都、日本は、新しい低温ALD系SiBCN材料が特定されたことを、Low-k値を維持し、下流プロセスとの互換性を提供するために開発された、最適化されたスペーサーRIEプロセスと共に開示している。本材料は、製造可能な14nmのリプレースメントメタルゲート(RMG)FinFETベースラインに統合され、技術要件を満たす信頼性でRO遅延が約8%改善されることが実証された。また、包括的な材料特性と信頼性評価に基づき、10nmノード以降のスペーサー設計検討の指針も示している。
【0011】
US9472391Bは、シリコン、酸素、炭素、及び特定のIII族元素又はV族元素を含む薄膜を、所定の回数のサイクルを実行することによって、基材上に形成することを含む、半導体デバイス製造方法を開示している。サイクルは、シリコン、炭素及びハロゲン元素を含み、Si-C結合を有する前駆体ガスと、第1の触媒ガスとを基材に供給することと、酸化性ガス及び第2の触媒ガスを基材に供給することと、特定のIII族元素又はV族元素を含む改質ガスを基材に供給することと、を含む。
【0012】
Yang,S.R.ら、(2006)Low k SiBN(Silicon Boron Nitride)Film Synthesized by a Plasma-Assisted Atomic Layer Deposition。ECS Transactions,1,79によると、ジクロロシラン、三塩化ホウ素、アンモニアを原料ガスとして使用するプラズマ支援原子層堆積(PAALD)により、SiBN膜を作製した。この材料系では、窒素がシリコンよりもホウ素と反応しやすいため、ホウ素、シリコン、及び窒素の反応制御が重要な問題となる。一方、PAALD中にリモートプラズマによって生成されるアンモニアラジカルは、シリコンと窒素との間の反応を促進する。したがって、PAALDは、シリコン及びホウ素の含有量の制御性を高めることができる。誘電率4.45以上5.47以下のSiBN膜を、70nm DRAMデバイスのSiN膜の代わりにBuried Contact(BC)スペーサーに適用したところ、ビット線負荷容量(CBL)が12%以上24%以下減少した。PAALDを使用して成膜したLow-k SiBN膜は、将来のサブ70nm DRAMデバイスのSi3N4スペーサーなどの絶縁中間膜の材料として有望である。
【0013】
以前に特定された特許、特許出願及び刊行物の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0014】
本明細書に記載の組成物及び方法は、以下の特性:i)希フッ化水素酸中で測定したエッチング速度が、熱酸化シリコンのエッチング速度(例えば、1:99希フッ化水素酸中で0.45Å/s)の0.5倍以下であり、X線光分光分析(XPS)で測定したホウ素含有量が、約5原子重量パーセント以上約45原子重量パーセント(at%)以下であること、ii)誘電率が6以下であり、希薄HF(dHF)中でのウェットエッチング速度が、酸素アッシングプロセス中又は酸素プラズマへの曝露中の損傷に対して敏感でなく、酸素アッシング耐性は、dHFディップによって測定された50Å未満のOアッシング後の損傷厚さ、及び4.0より低いOアッシング後の膜誘電率として定量化可能であること、iii)誘電率が6.0未満、好ましくは5未満、最も好ましくは4未満であること、及びiv)得られる膜中の塩素不純物が2.0at%未満、好ましくは1.0at%未満、最も好ましくは0.5at%未満であること、の1つ以上を有するシリコン及びホウ素を含む共形膜を成膜するための組成物又は配合物を提供することによって、従来技術の問題を克服する。即時の本発明によって達成できる望ましい特性は、以下の実施例においてより詳細に例示される。
【0015】
特定の一実施形態では、本明細書に記載の組成物は、表1に示す1つのSi-C-B結合を有する前駆体を採用する原子層堆積(ALD)を使用して、シリコン及びホウ素を含む膜を成膜させる方法に使用することができる。
【0016】
表1 1つのSi-C-B結合を有する前駆体
【化1】
一態様では、シリコン及びホウ素を含む膜を成膜させるための組成物は、(a)表1に記載され、本発明の少なくとも1つの態様において、1つのSi-C-B結合を有する少なくとも1種の前駆体化合物と、(b)少なくとも1種の溶媒と、を含む。本明細書に記載される組成物の特定の実施形態では、例示的な溶媒としては、限定されないが、エーテル、第三級アミン、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、シロキサン、第三級アミノエーテル、及びこれらの組み合わせを含むことができる。特定の実施形態では、シリコン化合物の沸点と、溶媒の沸点との間の差は、40℃以下、約30℃未満、場合によっては約20℃未満、好ましくは10℃未満である。
【0017】
別の態様では、シリコン及びホウ素を含む膜を基材の少なくとも表面に成膜させる方法が提供され、本方法は、
基材を、ALD反応器に入れることと、
反応器を、約25℃以上約700℃以下の範囲の1つ以上の温度に加熱することと、
表1に示す前駆体を含む組成物及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1個の化合物を含む前駆体を、反応器に導入することと、
窒素源又は酸素源を反応器に導入して、前駆体の少なくとも一部と反応させて、シリコン及びホウ素を含む膜を形成することと、
任意に、得られたシリコン及びホウ素を含む膜を、シリコンボロカルボニトリド膜又はシリコンボロカルボキシニトリド膜に変換するのに十分な条件下で、約25℃以上約1000℃以下、又は約100℃以上約400℃以下の範囲の1つ以上の温度で、酸素源で処理することと、
を含む。
【0018】
特定の実施形態では、シリコン及びホウ素を含む膜は、XPSで測定したホウ素含有量が約10原子重量パーセント(at%)以上であり、XPSで測定した炭素含有量が約5原子重量パーセント(at%)以上であり、希フッ酸中で測定したエッチング速度が熱酸化シリコンよりも少なくとも0.5倍以下である。幾つかの実施形態では、シリコン及びホウ素を含む膜は、シリコンカルボニトリドである。他の実施形態では、シリコン及びホウ素を含む膜は、シリコンボロカルボニトリド、又はシリコンボロカルボキシニトリドである。
【0019】
必要に応じて、本発明は、シリコン及びホウ素を含む膜を25℃以上700℃以下の水素プラズマ又は水素/不活性プラズマで処理して、得られる膜を緻密化し、誘電率を低下させることを更に含む。
【0020】
本発明の別の態様は、
(a)1つのSi-C-B結合を有し、(トリクロロシリル)(ジクロロボリル)メタン、1-(トリクロロシリル)-1-(ジクロロボリル)エタン、2-(トリクロロシリル)-2-(ジクロロボリル)プロパン、及び(ジクロロメチルシリル)(ジクロロボリル)メタンからなる群から選択される少なくとも1種の前駆体化合物と、
(b)少なくとも1種の溶媒と、
を含む組成物に関する。
【0021】
本発明の更なる態様は、kが約6以下、好ましくは約5以下、最も好ましくは約4以下のシリコン及びホウ素を含む膜、少なくとも約10at%のホウ素含有量に関する。本発明の更なる態様は、膜に関する。本発明の更なる態様は、シリコン及びホウ素を含み、kが約6以下、好ましくは約5以下、最も好ましくは約4以下であり、XPS測定に基づき、ホウ素含有量が少なくとも約10at%、好ましくは少なくとも約15at%、最も好ましくは少なくとも約20at%である膜に関する。別の態様では、本発明の膜は、本発明の方法のいずれかに従って形成することができる。炭素含有量は、ウェットエッチング速度を低下させ、耐アッシング性を向上させるための重要な因子であるため、本発明に係る炭素含有量は、XPSで測定して5at%以上30at%以下、好ましくは10at%以上30at%以下、最も好ましくは20at%以上30at%以下の範囲である。
【0022】
本発明の別の態様は、本発明の組成物を収容するステンレス鋼容器に関する。
【0023】
本発明の実施形態は、単独で、又は互いに様々な組み合わせで使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に記載するのは、限定されないが、熱原子層堆積プロセスなどの堆積プロセスを介して、シリコン及びホウ素を含む炭素ドープ膜(例えば、XPSで測定して、約10at%以上のホウ素含有量を有する)を成膜させるための、前駆体化合物、並びにそれを含む組成物及び方法である。本明細書に記載の組成物及び方法を使用して成膜された膜は、希フッ酸中で測定した熱酸化シリコンのエッチング速度の0.5倍以下、又は熱酸化シリコンのエッチング速度の0.1倍以下、熱酸化シリコンのエッチング速度の0.05倍以下、熱酸化シリコンのエッチング速度の0.01倍以下などの、極めて低いエッチング速度(例えば、希HF(0.5重量%)中では、約0.20Å/秒以下又は約0.15Å/秒以下)を示す一方で、限定されないが、密度、誘電率、屈折率、及び元素組成などの、他の調整可能な特性の変動性を示す。
【0025】
特定の実施形態では、本明細書に記載の前駆体、及びそれを使用する方法は、以下の方法で以下の特徴の1つ以上を付与する。第一に、Si-C-B結合を含む前駆体、及び窒素源を使用して、成膜状態の(as-deposited)反応性炭素ドープ窒化シリコン膜を形成する。いかなる理論や説明にも拘束されることを望むものではないが、前駆体からのSi-C-B結合は、得られる成膜状態の膜に残り、XPSで測定して少なくとも10at%以上の高いホウ素含有量(例えば、約20at%以上約45at%以下、約20at%以上約40at%以下、場合によっては約15at%以上約40at%以下のホウ素)を提供すると考えられる。第二に、成膜状態の膜を、成膜プロセス中に断続的に、又は成膜後処理として、あるいはそれらの組み合わせで、水などの酸素源に曝すと、膜中の窒素含有量の少なくとも一部又は全部が、酸素に変換され、シリコンボロカルボキシド膜、又はシリコンボロカルボキシニトリド膜から選択される膜が提供される。成膜状態の膜中の窒素は、アンモニアやアミン基などの1つ以上の窒素含有副生成物として放出される。
【0026】
一態様では、シリコン及びホウ素を含む膜を成膜させるための組成物は、(a)(トリクロロシリル)(ジクロロボリル)メタン、1-(トリクロロシリル)-1-(ジクロロボリル)エタン、2-(トリクロロシリル)-2-(ジクロロボリル)プロパン、及び(ジクロロメチルシリル)(ジクロロボリル)メタンからなる群から選択される、1つのSi-C-B結合を有する少なくとも1種の前駆体化合物と、(b)少なくとも1種の溶媒と、を含む。本明細書に記載される組成物の特定の実施形態では、例示的な溶媒としては、限定されないが、エーテル、第三級アミン、アルキル炭化水素、芳香族炭化水素、第三級アミノエーテル、シロキサン、及びこれらの組み合わせを含むことができる。特定の実施形態では、1つのSi-C-B結合を有する化合物の沸点と、溶媒の沸点との間の差は、40℃以下である。溶媒中の前駆体化合物の重量%は、1重量%以上99重量%以下、又は10重量%以上90重量%以下、又は20重量%以上80重量%以下、又は30重量%以上70重量%以下、又は40重量%以上60重量%以下、又は50重量%の範囲で変化し得る。幾つかの実施形態では、組成物は、従来の直接液体注入装置及び方法を使用して、シリコン及びホウ素を含む膜のための反応器チャンバーに直接液体注入を介して送達することができる。
【0027】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、10at%以上45at%以下の範囲のホウ素含有量を有するシリコン及びホウ素を含む膜は、ALD又はALD様プロセス及び水素を含むプラズマを使用して成膜され、膜特性を改善する。この実施形態では、本方法は、
a.表面特徴部を含む1つ以上の基材を、ALD反応器に入れることと、
b.反応器を、周囲温度から約700℃までの範囲の1つ以上の温度に加熱し、任意に、反応器を100torr以下の圧力に維持することと、
c.(トリクロロシリル)(ジクロロボリル)メタン、1-(トリクロロシリル)-1-(ジクロロボリル)エタン、2-(トリクロロシリル)-2-(ジクロロボリル)プロパン、及び(ジクロロメチルシリル)(ジクロロボリル)メタンからなる群から選択される、1つのSi-C-B結合を有する少なくとも1種の前駆体を、反応器に導入することと、
d.不活性ガスでパージし、それによって未反応の前駆体を除去することと、
e.反応器に窒素源を供給して前駆体と反応させ、シリコンボロカルボニトリド膜又はシリコンボロカルボキシニトリド膜を形成することと、
f.不活性ガスでパージして、反応副生成物を除去することと、
g.工程cからfを繰り返して、シリコンボロカルボニトリド膜又はシリコンボロカルボキシニトリド膜を、所望の厚さにすることと、
h.任意に、シリコンボロカルボニトリド膜又はシリコンボロカルボキシニトリド膜を、酸素源で、周囲温度から1000℃までの範囲、又は約100℃以上約400℃以下の範囲の1つ以上の温度で処理して、その場で又は別のチャンバーのいずれかで、シリコンボロカルボニトリド又はシリコンボロカルボキシニトリドに変換することと、
i.任意に、シリコン及びホウ素を含む膜を、水素を含むプラズマに曝して、膜特性を改善し、膜特性の少なくとも1つを改善する、成膜後処理を提供することと、
j.任意に、シリコン及びホウ素を含む膜を、400℃以上1000℃以下の温度でのスパイクアニール又は紫外光源で成膜後処理することと、
を含む。この実施形態又は他の実施形態では、紫外曝露工程は、膜の成膜中、又は成膜が完了した後のいずれかで実施することができる。
一実施形態では、基材は、少なくとも1つの特徴部を含み、その特徴部は、アスペクト比1:9、開口部180nmのパターントレンチを含む。一実施形態では、シリコン及びホウ素を含む膜は、シリコンボロカルボニトリドである。他の実施形態では、シリコン及びホウ素を含む膜は、シリコンボロカルボニトリド及び/又はシリコンボロカルボキシニトリドである。
【0028】
本明細書に記載される方法の更に別の実施形態では、シリコン及びホウ素を含む膜は、アンモニア又は有機アミンを含む触媒を用いた熱ALDプロセスを使用して成膜される。この実施形態では、本方法は、
a.表面特徴部を含む1つ以上の基材を、ALD反応器に入れることと、
b.反応器を、周囲温度から約150℃以下の範囲の1つ以上の温度に加熱し、任意に、反応器を100torr以下の圧力に維持することと、
c.(トリクロロシリル)(ジクロロボリル)メタン、1-(トリクロロシリル)-1-(ジクロロボリル)エタン、2-(トリクロロシリル)-2-(ジクロロボリル)プロパン、及び(ジクロロメチルシリル)(ジクロロボリル)メタンからなる群から選択される1つのSi-C-B結合を有する少なくとも1種の前駆体、及び任意に触媒を、反応器に導入することと、
d.反応器を不活性ガスでパージすることと、
e.反応器に酸素源を供給して前駆体及び触媒と反応させ、シリコン及びホウ素を含む膜を形成することと、
f.反応器を不活性ガスでパージして、反応副生成物を除去することと、
g.工程cからfを繰り返して、シリコン及びホウ素を含む膜を、所望の厚さにすることと、
h.任意に、シリコン及びホウ素を含む処理された膜を、水素を含むプラズマに曝して、膜特性の少なくとも1つを改善する、成膜後処理を提供することと、
i.任意に、シリコン及びホウ素を含む膜を、400℃以上1000℃以下の温度でのスパイクアニール又は紫外光源で成膜後処理することと、
を含む。この実施形態又は他の実施形態では、紫外曝露工程は、膜の成膜中、又は成膜が完了した後のいずれかで実施することができる。
【0029】
この実施形態又は他の実施形態では、触媒は、ピリジン、ピペラジン、アンモニア、トリエチルアミン又は他の有機アミンなどのルイス塩基から選択される。ルイス塩基蒸気の量は、工程cの間の前駆体蒸気の量と少なくとも1当量である。酸素源は、水を含む蒸気である。幾つかの実施形態では、シリコン及びホウ素を含む膜は、シリコンボロカルボキシドである。他の実施形態では、酸素源は、成膜後処理中にシリコン及びホウ素を含む成膜状態の膜から全ての炭素を除去する可能性があるため、シリコン及びホウ素を含む膜は、シリコンボロキシドである。
【0030】
特定の実施形態では、シリコン及びホウ素を含む得られた膜は、水素プラズマ処理に曝す前に、Si-Me又はSi-H若しくはその両方を有するオルガノアミノシラン又はクロロシランに曝されて、疎水性薄層を形成する。適切な有機アミノシランとしては、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、エチルメチルアミノトリメチルシラン、t-ブチルアミノトリメチルシラン、イソプロピルアミノトリメチルシラン、ジイソプロピルアミノトリメチルシラン、ピロリジノトリメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、エチルメチルアミノジメチルシラン、t-ブチルアミノジメチルシラン、イソプロピルアミノジメチルシラン、ジイソプロピルアミノジメチルシラン、ピロリジノジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジイソプロピルアミノ)ジメチルシラン、ビス(イソプロピルアミノ)ジメチルシラン、ビス(tert-ブチルアミノ)ジメチルシラン、ジピロリジノジメチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジエチルシラン、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(ジイソプロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(イソプロピルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(tert-ブチルアミノ)メチルビニルシラン、ジピロリジノメチルビニルシラン、2,6-ジメチルピペリジノメチルシラン、2,6-ジメチルピペリジノジメチルシラン、2,6-ジメチルピペリジノトリメチルシラン、トリス(ジメチルアミノ)フェニルシラン、トリス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ジイソプロピルアミノシラン、ジ-sec-ブチルアミノシラン、クロロジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ジクロロメチルシラン、及びジクロロジメチルシランが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
別の実施形態では、シリコン及びホウ素を含む得られた膜は、水素プラズマ処理に曝す前に、Si-Me又はSi-H若しくはその両方を有するアルコキシシラン又は環状アルコキシシランに曝されて、疎水性薄層を形成する。適切なアルコキシシラン又は環状アルコキシシランとしては、ジエトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、又はオクタメチルシクロテトラシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。いかなる理論や説明にも拘束されることを望むものではないが、有機アミノシラン又はアルコキシシラン又は環状アルコキシシランによって形成される薄層は、プラズマアッシングプロセス中に緻密な炭素ドープ酸化シリコンに変化し、アッシング耐性を更に高めると考えられる。
【0032】
別の実施形態では、シリコン及びホウ素を含む膜を成膜させるための容器は、本明細書に記載の1種以上の前駆体化合物を含む。1つの特定の実施形態では、容器は、少なくとも1つの加圧可能な容器を含み(好ましくは、米国特許US7334595;US6077356;US5069244;及びUS5465766に開示されているような設計を有するステンレス鋼)、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。容器は、ガラス(ホウケイ酸ガラス又は石英ガラス)、又は型316、316L、304若しくは304Lステンレス鋼合金(UNS呼称S31600、S31603、S30400、S30403)のいずれかを含むことができ、CVD又はALDプロセス用の反応器に1種以上の前駆体を送達できるように、適切なバルブ及び付属品が取り付けられている。この実施形態又は他の実施形態では、前駆体は、ステンレス鋼で構成される加圧可能な容器に供給され、前駆体の純度は、半導体用途に適した98.0重量%以上、又は99.0重量%以上、又は99.5重量%以上である。前駆体化合物は、好ましくはAl3+、Li、Ca2+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+などの金属イオンを実質的に含まない。本明細書で使用する場合、Al、Li、Ca、Fe、Ni、Crに関連する「実質的に含まない」という用語は、ICP-MSで測定して約5ppm(重量)未満、好ましくは約3ppm未満、より好ましくは約1ppm未満、最も好ましくは約0.1ppm未満を意味する。特定の実施形態では、このような容器は、必要に応じて、前駆体を1種以上の追加の前駆体と混合する手段も有することができる。これらの実施形態又は他の実施形態では、容器の内容物は、追加の前駆体と予め混合され得る。あるいは、前駆体及び/又は他の前駆体は、別個の容器中、又は貯蔵中に前駆体及び他の前駆体を分離した状態に維持するための分離手段を有する、単一の容器中に維持することができる。
【0033】
シリコン及びホウ素を含む膜は、半導体基材などの基材の少なくとも表面上に成膜される。本明細書に記載の方法では、基材は、シリコン、例えば、結晶シリコン又はアモルファスシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、アモルファスカーボン、シリコンオキシカーバイド、シリコンオキシニトリド、シリコンカーバイド、ゲルマニウム、ゲルマニウムドープシリコン、ホウ素ドープシリコン、金属、例えば、銅、タングステン、アルミニウム、コバルト、ニッケル、タンタル、金属窒化物、例えば、窒化チタン、窒化タンタル、金属酸化物、III/V族金属、又はGaAs、InP、GaP、GaNなどのメタロイド、及びこれらの組み合わせの膜を含む、当該技術分野で公知の様々な材料で構成及び/又はコーティングすることができる。これらのコーティングは、半導体基材を完全にコーティングする場合もあれば、様々な材料の多層である場合もあり、部分的にエッチングして、下層の材料を露出させる場合もある。表面はまた、パターンで露光され、基材を部分的にコーティングするために現像されたフォトレジスト材料を有することもできる。特定の実施形態では、半導体基材は、細孔、ビア、トレンチ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの表面特徴部を含む。シリコン及びホウ素含有膜の潜在的な用途としては、FinFET又はナノシート用の低kスペーサー、自己整合パターニングプロセス(SADP、SAQP、又はSAOPなど)用の犠牲ハードマスクが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
シリコン及びホウ素を含む膜又はコーティングを形成するために使用される成膜方法は、成膜プロセスである。本明細書で開示する方法に適した成膜プロセスの例としては、化学気相成長又は原子層堆積プロセスが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、「化学気相成長プロセス」という用語は、基材が1種以上の揮発性前駆体に曝され、基材表面で反応及び/又は分解して所望の成膜を生成する、任意のプロセスを指す。本明細書で使用される場合、「原子層堆積プロセス」という用語は、様々な組成の基材上に材料の膜を成膜させる、自己制限的(例えば、各反応サイクルで成膜される膜材料の量は、一定である)で、逐次的な表面化学を指す。本明細書で使用する場合、「熱原子層堆積プロセス」という用語は、in situ又は遠隔プラズマを使用しない、室温以上700℃以下、又は100℃以上650℃以下、又は200℃以上650℃以下、又は300℃以上600℃以下の範囲の基材温度での原子層堆積プロセスを指す。他の実施形態では、本明細書に記載の前駆体は、例えば、触媒が約20℃以上約150℃以下、又は約50℃以上約150℃以下の範囲の温度で採用される場合の低温成膜において使用することができる。本明細書で使用される前駆体、試薬及び供給源は、「ガス状の」と記載されることがあるが、前駆体は液体又は固体のいずれかであってよく、不活性ガスと共に、あるいは不活性ガスなしで、直接気化、バブリング、昇華によって反応器に輸送されることが理解される。場合によっては、気化した前駆体は、プラズマ発生器を通過する。
【0035】
一実施形態では、シリコン及びホウ素を含む膜は、ALDプロセスを使用して成膜される。別の実施形態では、シリコン及びホウ素を含む膜は、CCVDプロセスを使用して成膜される。更なる実施形態では、シリコン及びホウ素を含む膜は、熱ALDプロセスを使用して成膜される。本明細書で使用される「反応器」という用語は、限定されないが、反応チャンバー又は成膜チャンバーを含む。
【0036】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、反応器への導入前及び/又は導入中に前駆体を分離するALD又はCCVD法を使用することによって、前駆体の予備反応を回避する。これに関連して、ALD又はCCVDプロセスなどの成膜技術を使用して、シリコン及びホウ素含有膜を成膜する。一実施形態では、膜は、典型的なシングルウェーハALD反応器、セミバッチALD反応器、又はバッチ炉ALD反応器において、基材表面を、1種以上のシリコン含有前駆体及びホウ素含有前駆体、酸素源、窒素含有源、又は他の前駆体若しくは試薬に交互に曝すことにより、ALDプロセスを介して成膜される。膜成長は、表面反応、各前駆体又は試薬のパルス長、及び成膜温度を自己制限的に制御することで進行する。しかしながら、基材の表面が飽和すると、膜成長は停止する。別の実施形態では、前駆体及び反応性ガスを含む各反応剤は、基材を反応器の異なるセクションに移動又は回転させることによって基材に暴露され、各セクションは、不活性ガスカーテン、すなわち空間ALD反応器又はロールtoロールALD反応器によって分離される。
【0037】
成膜方法に応じて、特定の実施形態では、本明細書に記載のシリコン前駆体、及び任意に他のシリコン含有前駆体及びホウ素含有前駆体を、所定のモル体積、又は約0.1マイクロモルから約1000マイクロモルまで、反応器に導入することができる。この実施形態又は他の実施形態では、前駆体は、所定の時間、反応器に導入されてもよい。特定の実施形態では、時間は約0.001秒以上約500秒以下の範囲である。
【0038】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して成膜されたシリコン及びホウ素を含む膜は、酸素源、試薬又は酸素を含む前駆体、すなわち水蒸気と組み合わせた触媒の存在下で形成される。酸素源は、少なくとも1つの酸素源の形態で反応器に導入することができ、及び/又は成膜プロセスで使用される他の前駆体中に付随的に存在することができる。適切な酸素源ガスとしては、例えば、水(HO)(例えば、脱イオン水、精製水、蒸留水、水蒸気、水蒸気プラズマ、酸素含有水、空気、水及び他の有機液体を含む組成物)、酸素(O)、酸素プラズマ、オゾン(O)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、水を含むプラズマ、水及びアルゴンを含むプラズマ、過酸化水素、水素を含む組成物、水素及び酸素を含む組成物、二酸化炭素(CO)、空気、及びこれらの組み合わせを含むことができる。特定の実施形態では、酸素源は、約1平方立方センチメートル(sccm)以上約10000sccm以下又は約1sccm以上約1000sccm以下の範囲の流量で反応器に導入される、酸素源ガスを含む。酸素源を、約0.1秒以上約100秒以下の範囲の時間で導入することができる。触媒は、ピリジン、ピペラジン、トリメチルアミン、tert-ブチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、エチレンジアミン、アンモニア、又は他の有機アミンなどのルイス塩基から選択される。
【0039】
シリコン及びホウ素を含む膜が、ALD又は循環CVDプロセスによって成膜される実施形態では、前駆体パルスは、0.01秒より大きいパルス持続時間を有することができ、窒素源又は酸素源は、0.01秒より小さいパルス持続時間を有することができ、水パルス持続時間は、0.01秒より小さいパルス持続時間を有することができる。
【0040】
特定の実施形態では、窒素源又は酸素源は、前駆体パルス及びプラズマが順次導入される間、反応器内に連続的に流入される。前駆体パルスは、0.01秒より大きいパルス持続時間を有することができ、プラズマ持続時間は、0.01秒以上100秒以下の範囲とすることができる。
【0041】
特定の実施形態では、膜は、シリコン、窒素、及びホウ素を含む。これらの実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して成膜された膜は、窒素含有源の存在下で形成される。窒素含有源は、少なくとも1つの窒素源の形態で反応器に導入されてもよく、及び/又は成膜プロセスで使用される他の前駆体中に付随的に存在してもよい。
【0042】
適切な窒素含有又は窒素源ガスとしては、例えば、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、対称又は非対称ジアルキルヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ピペラジン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、イミダゾリジン、シクロトリメチレントリアミンなどの有機アミン、及びこれらの組み合わせを含むことができる。
【0043】
特定の実施形態では、窒素源は、約1平方立方センチメートル(sccm)以上約10000sccm以下又は約1sccm以上約1000sccm以下の範囲の流量で反応器に導入される。窒素源を、約0.1秒以上約100秒以下の範囲の時間で導入することができる。膜が、窒素源及び酸素源の両方を使用するALD又は循環CVDプロセスによって成膜される実施形態では、前駆体パルスは、0.01秒より大きいパルス持続時間を有することができ、窒素源は、0.01秒より小さいパルス持続時間を有することができ、水パルス持続時間は、0.01秒より小さいパルス持続時間を有することができる。更に別の実施形態では、パルス間のパージ持続時間は、0秒と低いか、又は間にパージなしで連続的にパルス化される。
【0044】
本明細書に開示される成膜方法は、1つ以上のパージガスを含むことができる。未消費の反応物及び/又は反応副生成物をパージするために使用されるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示的なパージガスとしては、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン、水素(H)、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、Arなどのパージガスは、約10sccm以上約10000sccm以下の範囲の流量で約0.1秒以上約1000秒以下の間、反応器内に供給され、それによって、未反応物質及び反応器内に残存し得る副生成物をパージする。
【0045】
前駆体、酸素源、窒素含有源、及び/又は他の前駆体、原料ガス、及び/又は試薬を供給するそれぞれの工程は、得られる膜の化学量論的組成を変化させるために、それらを供給する時間を変化させることによって、実行することができる。
【0046】
前駆体、窒素源又は窒素含有源、酸素源、還元剤、他の前駆体又はこれらの組み合わせの少なくとも1つにエネルギーを印加して反応を誘導し、基材上に膜又はコーティングを形成する。このようなエネルギーは、熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子ビーム、光子、遠隔プラズマ法、及びこれらの組み合わせによって供給することができるが、これらに限定されない。
【0047】
特定の実施形態では、二次RF周波数源を使用して、基材表面におけるプラズマ特性を修正することができる。成膜がプラズマを含む実施形態では、プラズマ生成プロセスは、プラズマが反応器内で直接生成される直接プラズマ生成プロセス、又は代替的に、プラズマが反応器の外部で生成され、反応器内に供給される遠隔プラズマ生成プロセスを含むことができる。
【0048】
シリコン前駆体及び/又は他のシリコン含有前駆体及びホウ素含有前駆体は、様々な方法で、CVD又はALD反応器などの反応チャンバーに送達することができる。一実施形態では、液体送達システムを利用することができる。代替的な実施形態では、例えば、ミネソタ州ショアビューのMSP社製のターボヴェポライザーなどの、液体送達とフラッシュ気化を組み合わせたプロセスユニットを採用して、低揮発性材料を体積的に供給することができ、これにより、前駆体の熱分解なしに再現性のある輸送及び成膜がもたらされる。液体送達配合物において、本明細書に記載される前駆体は、ニート液体形態で送達され得るか、又は代替的に、溶媒配合物若しくはそれを含む組成物中で採用され得る。したがって、特定の実施形態では、前駆体配合物は、基材上に膜を形成するための所定の最終使用用途において望ましく有利であり得る、適切な特性の溶媒成分を含むことができる。
【0049】
本実施形態又は他の実施形態では、本明細書に記載される方法の工程は、様々な順序で実行されてもよく、順次又は同時(例えば、別の工程の少なくとも一部の間に)に実行されてもよく、及びそれらのいずれかの組み合わせで実行されてもよいことが理解される。前駆体及び窒素含有原料ガスを供給するそれぞれの工程は、得られるシリコン及びホウ素含有膜の化学量論的組成を変化させるために、それらを供給する時間の持続時間を変化させることによって実施することができる。
【0050】
本明細書に記載される方法の更なる実施形態では、膜又は成膜状態の膜は、処理工程に供される。処理工程は、成膜工程の少なくとも一部の間に、成膜工程の後に、及びこれらの組み合わせで実施することができる。例示的な処理工程には、限定されないが、高温熱アニールによる処理、プラズマ処理、紫外線(UV)光処理、レーザー、電子ビーム処理、及びこれらの組み合わせによる処理が含まれ、膜の1つ以上の特性に影響を与える。本明細書に記載される1つ又は2つのSi-C-B結合を有するシリコン前駆体を用いて成膜された膜は、同じ条件下で以前に開示されたシリコン前駆体を用いて成膜された膜と比較すると、限定されないが、処理工程前の膜のウェットエッチング速度よりも低いウェットエッチング速度、又は処理工程前の密度よりも高い密度などの、改善された特性を有する。特定の一実施形態では、成膜プロセス中に、成膜状態の膜が断続的に処理される。これらの断続的な又は成膜途中の処理は、例えば、各ALDサイクルの後、限定されないが、1(1)ALDサイクル、2(2)ALDサイクル、5(5)ALDサイクル、又は10(10)サイクル若しくはそれ以上のALDサイクルごとなど、ある数のALDの後に実行することができる。
【0051】
膜が高温アニール工程で処理される実施形態では、アニール温度は、成膜温度よりも少なくとも100℃以上高い。この実施形態又は他の実施形態では、アニール温度は、約400℃以上約1000℃以下の範囲である。この実施形態又は他の実施形態では、アニール処理は、真空(760Torr未満)、不活性環境、又は酸素含有環境(HO、NO、NO又はOなど)で実施することができる。
【0052】
膜が紫外線処理される実施形態では、膜は、広帯域紫外線、又は代替的に、約150ナノメートル(nm)以上約400nm以下の範囲の波長を有する紫外線源に曝される。1つの特定の実施形態では、所望の膜厚に達した後、成膜状態の膜は、成膜チャンバーとは異なるチャンバーで紫外線に曝される。
【0053】
膜がプラズマで処理される実施形態では、SiO又は炭素ドープSiOなどのパッシベーション層が成膜され、その後のプラズマ処理で塩素及び窒素汚染が膜に浸透するのを防止する。パッシベーション層は、原子層堆積法又は循環化学気相成長を使用して成膜させることができる。
【0054】
膜がプラズマで処理される実施形態では、プラズマ源は、水素プラズマ、水素及びヘリウムを含むプラズマ、水素及びアルゴンを含むプラズマからなる群から選択される。水素プラズマは、膜の誘電率を低下させ、バルク中のホウ素含有量を殆ど変化させないまま、プラズマアッシングプロセスに続く耐損傷性を高める。
【0055】
本明細書を通じて、用語「ALD又はALD様」は、以下のプロセス:a)前駆体及び反応性ガスを含む各反応剤を、シングルウェーハALD反応器、セミバッチALD反応器、又はバッチ炉ALD反応器などの反応器に順次導入すること;b)前駆体及び反応性ガスを含む各反応剤が、基材を反応器の異なるセクションに移動又は回転させることによって基材に暴露され、各セクションが、不活性ガスカーテン、すなわち空間ALD反応器又はロールtoロールALD反応器によって分離されること、を含むが、これらに限定されないプロセスを指す。
【0056】
本明細書を通じて、用語「アッシング」は、O/不活性ガスプラズマ、Oプラズマ、COプラズマ、COプラズマ、H/Oプラズマ又はこれらの組み合わせなどの酸素源を含むプラズマを使用して、半導体製造プロセスにおいてフォトレジスト又はカーボンハードマスクを除去するプロセスを指す。
【0057】
本明細書を通じて、用語「耐損傷性」は、酸素アッシングプロセス後の膜特性を指す。良好な又は高い耐損傷性は、酸素アッシング後の以下の膜特性:膜の誘電率が4.5未満であること;バルク(膜の深さ50Å超)のホウ素含有量がアッシング前と同じ5at%以内であること;膜の50Å未満が損傷しており、表面近傍(深さ50Å未満)とバルク(深さ50Å超)との間の希薄HFエッチング速度の差によって観察されること、として定義される。
【0058】
本明細書を通じて、用語「アルキル炭化水素」は、直鎖状又は分枝状のC~C20炭化水素、環状C~C20炭化水素を指す。例示的な炭化水素としては、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書を通じて、用語「芳香族炭化水素」は、C~C20芳香族炭化水素を指す。例示的な芳香族炭化水素としては、トルエン、メシチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書を通じて、用語「触媒」は、熱ALDプロセス中のヒドロキシル基とSi-Cl結合との間の表面反応を触媒することができる気相中のルイス塩基を指す。例示的な触媒としては、環状アミン系ガス、例えば、アミノピリジン、ピコリン、ルチジン、ピペラジン、ピペリジン、ピリジン、又は有機アミン系ガス、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、tert-ブチルアミンの少なくとも1つが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本明細書を通じて、用語「有機アミン」は、C~C20炭化水素、環状C~C20炭化水素を有する第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンを指す。例示的な有機アミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、tert-ブチルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書を通じて、用語「シロキサン」は、少なくとも1つのSi-O-Si結合及びC~C20炭素原子を有する直鎖状、分岐状、又は環状の液体化合物を指す。例示的なシロキサンとしては、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、1,1,1,3,3,5,5,5-オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書を通じて、本明細書で使用される「段差被覆性」という用語は、ビア又はトレンチのいずれか又は両方を有する構造化した基材又は特徴部の基材における、成膜した膜の2つの厚さの割合として定義され、下部の段差被覆性は、比率(%)、すなわち、特徴部の下部の厚さを特徴部の上部の厚さで割ったものであり、中段の段差被覆率は、比率(%)、すなわち、特徴部の側壁の厚さを特徴部の上部の厚さで割ったものである。本明細書に記載の方法を使用して成膜された膜は、約80%以上、又は約90%以上の段差被覆性を示し、これは膜が共形であることを示す。
【0064】
本明細書を通じて、用語「不活性ガス」は、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される非反応性ガスを指す。不活性ガスを採用して、シリコン前駆体を供給し、反応器をパージし、又は反応器のチャンバー圧を維持することができる。
【0065】
本明細書を通じて、用語「シリコン及びホウ素を含む膜」は、シリコンボロカルボキシド、シリコンボロカルボニトリド、シリコンボロシキド、及びシリコンボロカルボキシニトリドからなる群から選択される膜を指す。シリコンボロシキドは、1at%超のケイ素、1at%超のホウ素、及び1at%超の酸素を有し、他の元素は1at%未満である膜を指す。シリコンボロカルボキシドは、1at%超のケイ素、1at%超のホウ素、1at%超の炭素、及び1at%超の酸素を有し、他の元素は1at%未満である膜を指す。シリコンボロカルボニトリドは、1at%超のケイ素、1at%超のホウ素、1at%超の炭素、及び1at%超の窒素を有し、他の元素は1at%未満である膜である。シリコンボロカルボキシニトリドは、1at%超のケイ素、1at%超のホウ素、1at%超の炭素、1at%超の酸素、及び1at%超の窒素を有し、他の元素は1at%未満である膜を指す。
【0066】
以下の実施例は、即時の発明の特定の態様を例示するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0067】
一般的な成膜
窒素源アンモニアとして前駆体及びアンモニアを使用して、スクリーニング原子層堆積(ALD)反応器において成膜を行った。ALDサイクルの工程及びプロセス条件を以下の表2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
成膜の間、工程3から14を、炭素含有膜の所望の厚さを得るために、最大2000回のサイクル数で繰り返す。屈折率及び膜厚は、エリプソメーターを使用して成膜後に直接632.8nmで測定した。バルク膜の組成は、外来の炭素(adventitious carbon)の影響を排除するため、表面から数ナノメートル(約5nm)下においてX線光電子分光法(XPS)を用いて特性を明らかにした。
【0070】
酸素アッシングは、市販のアッシャー(PVA Tepla Metroline 4L)で行った。プロセスパラメータは以下のとおりであった:100sccmヘリウム、300sccm酸素、600torr圧力、プラズマ出力は200Wに設定した。損傷の深さは、希HFエッチングで測定した。
【0071】
ウェットエッチング速度プロセスは、2つの異なる濃度の希フッ化水素酸(dHF)の下で、49%HFとDI水の比が1:99の濃度で行われた。プロセス中、エッチング溶液の一貫性を確保するために、熱シリコン酸化膜が同時にエッチングされた。
【0072】
金属-絶縁体-半導体キャパシタ(MISCAP)構造を形成するために、膜上に金属電極を堆積させて、誘電率(k)及びリーク電流を測定した。リーク電流密度は、1MV/cmのバイアス電圧で報告された。
【0073】
実施例1:1-(トリクロロシリル)-1-(ジクロロボリル)エタン及びアンモニアを使用して成膜したシリコン及びホウ素を含む膜
【0074】
1-(トリクロロシリル)-1-(ジクロロボリル)エタン及びアンモニアを使用し、ALDスクリーニング反応器を用いて、300℃以上600℃以下でシリコン及びホウ素を含む膜を成膜した。プロセスパラメータ及びALDサイクルを表2に示す。前駆体の総曝露量は2Torr.s以上3Torr.s以下であり、NHの総曝露量は125Torr.sであった。膜は成膜後、計測の前に少なくとも24時間、周囲の微量湿気に曝された。
【0075】
【表2】
【0076】
膜中に存在した酸素は、成膜後の空気暴露によるものと考えられた。これは、シリコンボロニトリドをシリコンボロノキシニトリドに変換するために膜を酸化剤に曝すことによる、膜組成の調整可能性の概念を実証した。
【0077】
600℃で成膜した膜は、k値が4.1であり、リーク電流密度が9E-8A/cmである。膜の希薄HFエッチング速度は、熱酸化シリコンの希薄HFエッチング速度よりも60%低い。
【0078】
実施例1で実証したように、600℃で成膜した膜を、アスペクト比1.9のパターン構造上に成膜した。構造開口部は、130nmであった。断面TEMを使用して、トレンチの異なる位置における膜厚を分析した。表4に示されるように、膜は97%超の適合性を示している。
【0079】
【表3】
【0080】
実施例2:1-(トリクロロシリル)-1-(ジクロロボリル)エタン、アンモニア及び水蒸気を用いて成膜させたシリコン及びホウ素を含む膜
【0081】
-(トリクロロシリル)-1-(ジクロロボリル)エタン、アンモニア及び水蒸気を使用して、表5に記載した手順で、ホウ素含有膜上のシリコンを成膜させた。
【0082】
【表4】
【0083】
工程3から16を複数回繰り返し、所望の膜厚を得た。
【0084】
【表5】
【0085】
表6は、成膜した膜のGPC及び膜組成を纏めたものである。膜組成は、成膜温度及び共反応剤を変えることによって調整可能である。
【0086】
実施例3:(トリクロロシリル)(ジクロロボリル)メタン及びアンモニアを使用して成膜したシリコン及びホウ素を含む膜
【0087】
(トリクロロシリル)(ジクロロボリル)メタン及びアンモニアを使用して、表7に概略を示す手順に従って、シリコン及びホウ素含有膜を成膜した。
【0088】
【表6】
【0089】
工程3から13を複数回繰り返し、所望の膜厚を得た。
【0090】
【表7】
【0091】
表8は、GPC及び膜組成を纏めたものである。膜組成は、成膜温度を変えることによって調整可能である。
【0092】
600℃で成膜した膜は、k値が4.2であり、1MV/cmバイアス電圧でのリーク電流密度が1.0E-8A/cmである。600℃膜の希薄HFウェットエッチング速度は、熱シリコン酸化膜の希薄HFウェットエッチング速度よりも60%低く、シリコン及びホウ素含有膜が熱シリコン酸化膜よりも優れていることが実証された。
【0093】
実施例4:(トリクロロシリル)(ジクロロボリル)メタン、アンモニア及び水蒸気を使用して成膜したシリコン及びホウ素を含む膜
【0094】
(トリクロロシリル)(ジクロロボリル)メタン、アンモニア及び水蒸気を使用して、表9に記載した工程を使用して、シリコン及びホウ素含有膜を成膜した。
【0095】
【表8】
【0096】
工程3から16を複数回繰り返し、所望の膜厚を得た。
【0097】
【表9】
【0098】
表10は、GPC及び膜組成を纏めたものである。膜組成は、プロセス成膜温度を変えることによって調整可能である。
【0099】
600℃で成膜した膜は、k値が4.5であり、1MV/cmバイアス電圧でのリーク電流密度が1.0E-8A/cmである。600℃で成膜した膜の希薄HFエッチング速度は、熱酸化シリコンの希薄HFエッチング速度よりも30%低い。
【国際調査報告】