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特表2024-509452正極活物質、これを含む正極及びリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-01
(54)【発明の名称】正極活物質、これを含む正極及びリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240222BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240222BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554895
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-07
(86)【国際出願番号】 KR2022003973
(87)【国際公開番号】W WO2022203347
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036941
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・シグ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ヨン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ピル・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨ・ジュン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】カン・ヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】テ・ヨン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジョ・ジュン
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050HA02
(57)【要約】
本発明は、正極活物質の外部領域に、結晶粒の長軸配向度及び結晶粒のc軸配向度が高い結晶粒Aを30%~80%比率で含み、優れた容量特性及び寿命特性を具現できる正極活物質に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質粒子の中心から表面までの距離をRとするとき、前記正極活物質粒子の中心からR/2までの領域である内部領域と、R/2から正極活物質粒子の表面までの領域である外部領域を含み、
前記外部領域の全体結晶粒のうち、下記[式1]で表される結晶粒の長軸配向度DoAが0.5~1であり、電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析を介して得られた結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRcと、前記結晶粒の位置単位ベクトルP’の外積値で表される結晶粒のc軸配向度が0.5~1である結晶粒Aの比率(A1)が30%~80%である、正極活物質:
[式1]
【数1】
前記[式1]で、
λは前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られたイメージデータから測定された当該結晶粒の長軸ベクトルEの大きさであり、
λは前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られたイメージデータから測定された当該結晶粒の短軸ベクトルEIIの大きさであり、
前記Cは当該結晶粒の位置単位ベクトルP’と長軸単位ベクトルE’の内積値である。
【請求項2】
前記外部領域の全体結晶粒中の結晶粒Aの比率(A1)が30%~60%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記外部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率(A1)が、前記内部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率(A2)より大きいものである、請求項1または2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記外部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率(A1)と、前記内部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率(A2)の差が5%以上である、請求項3に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記正極活物質は、
前記結晶粒の長軸配向度DoAが0.5未満で、前記結晶粒のc軸配向度が0.5~1である結晶粒B、
前記結晶粒の長軸配向度DoAが0.5~1で、前記結晶粒のc軸配向度が0.5未満である結晶粒C、及び
前記結晶粒の長軸配向度DoAが0.5未満で、前記結晶粒のc軸配向度が0.5未満である結晶粒Dをさらに含むものである、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記外部領域は、全体結晶粒中の結晶粒Aの比率(A1)が、結晶粒Bの比率(B1)、結晶粒Cの比率(C1)及び、結晶粒Dの比率(D1)より大きいものである、請求項5に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記正極活物質粒子の断面の全体結晶粒中の結晶粒Aの比率は20%~80%、前記結晶粒Bの比率は5%~40%、前記結晶粒Cの比率は5%~40%、前記結晶粒Dの比率は5%~40%である、請求項5または6に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記走査イオン顕微鏡分析は、前記正極活物質の断面に集束イオンビームを照射して走査イオン顕微鏡イメージを得た後、ディープラーニングを用いて前記走査イオン顕微鏡イメージから結晶粒単位でセグメンテーション(segmentation)されたデータを取得し、前記セグメンテーションされたデータから前記[式1]で表されるDoAを計算するものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析は、前記正極活物質の断面の電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)測定を介して各結晶粒の位置情報及びオイラー角(Euler angle)情報を含むEBSDオイラーマップ(Euler map)データを取得し、下記[式2]を介して前記結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRc(x,y,z)を求めるものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の正極活物質:
[式2]
【数2】
前記[式2]で、
[X,Y,Z]は(0,0,1)であり、前記Φ、θ、Ψはオイラーマップデータから取得されたオイラー角(Euler angle)である。
【請求項10】
前記正極活物質は、下記[化学式1]で表されるリチウム複合遷移金属酸化物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の正極活物質:
[化学式1]
Li[NiCo ]O2-y
前記[化学式1]で、
前記Mは、Mn及びAlからなる群より選択された1種以上の元素であり、
前記Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、Ta、Y、In、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、及びMoからなる群より選択される1種以上の元素であり、
前記Aは、F、Cl、Br、I、At及びSからなる群より選択された1種以上の元素であり、
0.98≦x≦1.20、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0≦d≦0.2、0≦y≦0.2である。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、正極。
【請求項12】
請求項11に記載の正極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月22日付にて出願された韓国特許出願第10-2021-0036941号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、正極活物質、これを含む正極及びリチウム二次電池に関する。より詳細には、寿命特性及び抵抗特性が優れたリチウム二次電池用正極活物質とこれを含む正極及びリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近モバイル機器及び電気自動車に関する技術開発と需要が増加するに伴い、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化されて広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質として、LiCoOのようなリチウムコバルト酸化物、LiNiO等のようなリチウムニッケル酸化物、LiMnOまたはLiMn等のようなリチウムマンガン酸化物、LiFePO等のようなリン酸鉄リチウム酸化物等のリチウム遷移金属酸化物が開発され、最近ではLi[NiCoMn]O、Li[NiCoAl]O、Li[NiCoMnAl]Oのように2種以上の遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物が開発されて広く使用されている。
【0005】
現在まで開発された2種以上の遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物は、通常数十個~数百個の1次粒子が凝集した球形の2次粒子の形態で製造されるが、1次粒子の配向形態や1次粒子の形状(縦横比)等によってリチウムイオンの移動性や電解液含浸性等の物性が変わるようになる。そのため、正極活物質粒子の粒子構造を制御して正極活物質の性能を向上させようとする研究が試みられている。
【0006】
韓国登録特許第10-1611784号(特許文献1)には、1次粒子のa軸方向の長さがc軸方向の長さより長く、1次粒子のa軸が放射状に配列された正極活物質が開示されている。前記特許文献1では、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)及び/または透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)を用いて正極活物質の1次粒子の形態や1次粒子の配向性を分析している。
【0007】
しかし、前記特許文献1で使用したTEM分析の場合、粒子全体ではなく一部領域についての情報を得ることができるだけで、正極活物質粒子全体の特性を代弁するのは難しいという問題点がある。また、正極活物質の物性は1次粒子の形態や配向性だけではなく、結晶粒(Crystalline)の形態や配向によっても変わるので、1次粒子の形態や配向性が類似する場合でも互いに異なった物性を示すことがある。
【0008】
したがって、より優れた特性を有する正極活物質の開発のためには、正極活物質の結晶粒構造に対する研究が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのものであり、正極活物質粒子の外部領域で結晶粒の長軸及びc軸の配向が特定の条件を満たす結晶粒を特定の比率で含むことにより、優れた容量特性及び寿命特性を具現できる正極活物質の提供を図る。
【0010】
また、本発明は、前記本発明による正極活物質を含む正極及びリチウム二次電池の提供を図る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一具現例によれば、本発明は、正極活物質粒子の中心から表面までの距離をRとするとき、前記正極活物質粒子の中心からR/2までの領域である内部領域と、R/2から正極活物質粒子の表面までの領域である外部領域を含み、前記外部領域の全体結晶粒のうち、下記[式1]で表される結晶粒の長軸配向度DoAが0.5~1であり、電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析を介して得られた結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRcと、前記結晶粒の位置単位ベクトルP’の外積値で表される結晶粒のc軸配向度が0.5~1である結晶粒Aの比率A1が30%~80%、好ましくは30%~60%、より好ましくは30%~50%、さらに好ましくは30%~40%である正極活物質を提供する。
【0012】
[式1]
【数1】
【0013】
前記[式1]で、λは前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られたイメージデータから測定された当該結晶粒の長軸ベクトルEの大きさであり、λは前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られたイメージデータから測定された当該結晶粒の短軸ベクトルEIIの大きさであり、前記Cは当該結晶粒の位置単位ベクトルP’と長軸単位ベクトルE’の内積値である。
【0014】
本発明による正極活物質は、前記外部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率A1が、前記内部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率A2より大きいことが好ましく、具体的には、前記外部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率A1と前記内部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率A2の差が1%以上、2%以上、好ましくは5%以上であり得、15%以下、好ましくは10%以下であり得る。
【0015】
一方、前記正極活物質は、前記結晶粒の長軸配向度DoAが0.5未満で、前記結晶粒のc軸配向度が0.5~1である結晶粒B、前記結晶粒の長軸配向度DoAが0.5~1で、前記結晶粒のc軸配向度が0.5未満である結晶粒C、及び前記結晶粒の長軸配向度DoAが0.5未満で、前記結晶粒のc軸配向度が0.5未満である結晶粒Dをさらに含むことができる。
【0016】
このとき、前記外部領域は、全体結晶粒中の結晶粒Aの比率A1が結晶粒Bの比率B1、結晶粒Cの比率C1及び、結晶粒Dの比率D1より大きいことが好ましい。
【0017】
また、前記正極活物質粒子の断面の全体結晶粒中の結晶粒Aの比率は20%~80%、前記結晶粒Bの比率は5%~40%、前記結晶粒Cの比率は5%~40%、前記結晶粒Dの比率は5%~40%であり得る。
【0018】
一方、前記走査イオン顕微鏡分析は、前記正極活物質の断面に集束イオンビームを照射して走査イオン顕微鏡イメージを得た後、ディープラーニングを用いて前記走査イオン顕微鏡イメージから結晶粒単位でセグメンテーション(segmentation)されたデータを取得し、前記セグメンテーションされたデータから前記[式1]で表されるDoAを計算することであり得る。
【0019】
また、前記電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析は、前記正極活物質の断面の電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)測定を介して各結晶粒の位置情報及びオイラー角(Euler angle)情報を含むEBSDオイラーマップ(Euler map)データを取得し、下記[式2]を介して前記結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRc(x,y,z)を求めるものであり得る。
【0020】
[式2]
【数2】
【0021】
前記[式2]で、
[X,Y,Z]は(0,0,1)であり、前記Φ、θ、Ψはオイラーマップデータから取得されたオイラー角(Euler angle)である。
【0022】
本発明による前記正極活物質は、下記[化学式1]で表されるリチウム複合遷移金属酸化物であり得る。
[化学式1]
Li[NiCo ]O2-y
前記[化学式1]で、
前記Mは、Mn及びAlからなる群より選択された1種以上の元素であり、前記Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、Ta、Y、In、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、及びMoからなる群より選択される1種以上の元素であり、前記Aは、F、Cl、Br、I、At及びSからなる群より選択された1種以上の元素であり、0.98≦x≦1.20、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0≦d≦0.2、0≦y≦0.2である。
【0023】
他の具現例によれば、本発明は、前記本発明による正極活物質を含む正極及び前記正極を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のように、正極活物質の外部領域に結晶粒の長軸配向性及びc軸配向性が高い結晶粒Aが30~80%の比率で含まれる場合、リチウムイオンの移動通路(Li path)であるa軸と結晶粒間境界面が正極活物質粒子の中心から表面方向に配列されてリチウムイオンの移動距離が最小化されて、容量特性が改善される効果を得ることができ、リチウムイオンが挿入、脱離される結晶面であるab面の外部露出面積が小さくて充放電過程で粒子の収縮膨張エネルギーが分散して粒子割れが抑制され、結晶構造の退化が最小化されて寿命特性が改善される効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】正極活物質の断面の走査イオン顕微鏡イメージを示す図である。
図2】正極活物質の断面の走査イオン顕微鏡イメージを分析してセグメンテーション(segmentation)イメージを得る過程を示す図である。
図3】結晶粒の長軸配向性とDoA値を示す図である。
図4】正極活物質の断面を電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析して得られたEBSDオイラーマップを示す図である。
図5】結晶粒のc軸配向性マップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、自身の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義できるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念として解釈されなければならない。
【0027】
本発明において、「結晶粒」は、規則的な原子配列を有する単結晶粒子単位を意味する。前記結晶粒の大きさは、正極活物質の断面のX線回折データをリートベルト解析(Rietveld refinement)法で分析して測定することができる。例えば、前記結晶粒の大きさは、Malyer Panalyticla社のEmpyreon XRD設備を用いて下記条件でX線回折分析を行ってXRDデータを得た後、前記XRDデータをMalyer panalytical社のHighscoreプログラムを用いて処理して得ることができる。このとき、半価幅はCaglioti式(equation)を用いて測定するように設定した。
【0028】
<X線回折分析の条件>
光源:Cu-ターゲット、45kV、40mA出力、波長=1.54Å
ディテクター:GaliPIX3D
試料準備:約5g程度の試料を2cm径のホルダーに満たして回転ステージ(ratiation stage)にローディングした。
測定時間:約30分
測定領域:2θ=15°~85°
【0029】
本発明において、「1次粒子」は、走査電子顕微鏡(SEM)を介して正極活物質の断面を観察したとき、1つの塊に区別される最小粒子単位を意味するもので、一つの結晶粒からなることもでき、複数個の結晶粒からなることもできる。本発明で、前記1次粒子の平均粒径は、正極活物質粒子の断面のSEMデータで区別されるそれぞれの粒径を測定した後、これらの算術平均値を求める方法で測定されることができる。
【0030】
本発明において、「2次粒子」は、複数個の1次粒子が凝集して形成される2次構造体を意味する。前記2次粒子の平均粒径は、粒度分析器を用いて測定されることができ、本発明では粒度分析器としてMicrotrac社のs3500を使用した。
【0031】
本発明において、正極活物質前駆体及び正極活物質の「粒径Dn」は、粒径による粒子個数の累積分布のn%地点における粒径を意味する。すなわち、D50は、粒径による粒子個数の累積分布の50%地点における粒径であり、D90は、粒径による粒子個数の累積分布の90%地点における粒径、D10は粒径による粒子個数の累積分布の10%地点における粒径である。前記Dnは、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入して、粒子がレーザービームを通過する時の粒径による回折パターン差を測定して粒度分布を算出する。測定装置における粒径による粒子個数の累積分布の10%、50%及び90%となる地点での粒子の直径を算出することにより、D10、D50及びD90を測定することができる。
【0032】
一方、本発明で各結晶粒の比率(%)は、(当該結晶粒の個数/当該領域に存在する全体結晶粒の個数)×100を意味する。
【0033】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0034】
本発明者等は、優れた寿命特性及び抵抗特性を具現できる正極活物質を開発するために研究を繰り返した結果、正極活物質の外部領域に結晶粒の長軸とc軸の配向性が高い結晶粒を特定の比率で含む場合、二次電池の容量特性及び寿命特性を向上させることができることをつきとめ、本発明を完成した。
【0035】
正極活物質
本発明による正極活物質は、図1に示されたように、正極活物質粒子の中心から表面までの距離をRとするとき、前記正極活物質粒子の中心からR/2までの領域である内部領域20と、R/2から正極活物質粒子の表面までの領域である外部領域10を含み、前記外部領域10の全体結晶粒のうち、下記[式1]で表される結晶粒の長軸配向度DoAが0.5~1であり、電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析を介して得られた結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRcと前記結晶粒の位置単位ベクトルP’の外積値で表される結晶粒のc軸配向度が0.5~1である結晶粒(以下、「結晶粒A」という)の比率A1が30%~80%、好ましくは30%~60%、より好ましくは30%~50%、さらに好ましくは30%~40%であることを特徴とする。
【0036】
[式1]
【数3】
【0037】
前記[式1]で、
λは前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られたイメージデータから測定された当該結晶粒の長軸ベクトルEの大きさであり、λは前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られたイメージデータから測定された当該結晶粒の短軸ベクトルEIIの大きさであり、前記Cは当該結晶粒の位置単位ベクトルP’と長軸単位ベクトルE’の内積値である。
【0038】
まず、前記[式1]で表されるDoAについて説明する。
【0039】
前記[式1]で表されるDoA値は、結晶粒の長軸の配向性を示すためのもので、走査イオン顕微鏡分析を介して得られたデータを用いて求めることができる。
【0040】
具体的には、前記正極活物質の断面に集束イオンビームを照射して走査イオン顕微鏡イメージを得た後、ディープラーニングを用いて前記走査イオン顕微鏡イメージから結晶粒単位でセグメンテーション(segmentation)されたデータを取得し、前記セグメンテーションされたデータから前記[式1]で表される結晶粒の長軸配向度DoAを計算することができる。
【0041】
以下では、走査イオン顕微鏡分析を介してDoA値を求める方法をより具体的に説明する。
【0042】
走査イオン顕微鏡は、試料の表面にイオンビームを照射しながら、このとき出る信号イオン像を介して試料の表面構造を測定する装置である。このとき、前記イオンビームは互いに異なった結晶面で反射率が変わるので、走査イオン顕微鏡を用いれば、同一の原子配列構造を有する単結晶の結晶粒単位で区別された正極活物質粒子の断面イメージを得ることができる。図1には正極活物質粒子の断面の走査イオン顕微鏡イメージが示されている。図1により、正極活物質粒子の断面イメージが結晶粒単位で区別されていることを確認することができる。
【0043】
次に、前記のようにして得られた走査イオン顕微鏡イメージを分析して、結晶粒単位でセグメンテーション(segmentation)されたデータを取得する。このとき、前記イメージ分析はディープラーニング(deep learning)を用いて行われることができる。
【0044】
図2には走査イオン顕微鏡イメージを分析してセグメンテーションされたデータ情報を得る過程が示されている。図2に示されたように、前記イメージ分析は、例えば、ディープラーニングを介して走査イオン顕微鏡イメージから境界線を検出した後、その境界線を用いて結晶粒単位でセグメンテーションされたイメージデータを得る方法で行われることができる。
【0045】
このとき、前記境界線検出は、オートエンコーダ(AutoEncoder)ニューラルネットワーク(U-NET)アルゴリズムを用いて行われることができ、前記セグメンテーションは、ウォーターシェッド・セグメンテーション(Watershed segmentation)アルゴリズム等を用いて行われることができる。
【0046】
走査イオン顕微鏡イメージ自体は数値化された情報を含んでいないので、本発明では、ディープラーニングを介して各結晶粒単位でセグメンテーションされたデータ情報を求め、これを介して結晶粒の形、位置等の情報を数値化できるようにした。
【0047】
前記のような走査イオン顕微鏡イメージ分析を介してセグメンテーションされたデータを得たなら、前記データから測定しようとする結晶粒の位置ベクトル、長軸ベクトル及び短軸ベクトルを求めることができ、これを用いて、式1のDoA値を計算することができる。
【0048】
[式1]
【数4】
【0049】
前記[式1]で、
λは前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られたイメージデータから測定された当該結晶粒の長軸ベクトルEの大きさであり、このとき、前記長軸ベクトルEは、当該結晶粒の重心を通るベクトルのうち前記ベクトルと結晶粒内の各ピクセルまでの距離の和が最も小さなベクトルを意味する。
【0050】
λは前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られたイメージデータから測定された当該結晶粒の短軸ベクトルEIIの大きさであり、このとき、前記短軸ベクトルEIIは、当該結晶粒の重心を通るベクトルのうち前記ベクトルと結晶粒内の各ピクセルまでの距離の和が最も大きいベクトルを意味する。
【0051】
一方、前記Cは、当該結晶粒の位置単位ベクトルP’と前記長軸単位ベクトルE’の内積値であり、前記結晶粒の位置単位ベクトルP’は正極活物質粒子の断面の中心から当該結晶粒の重心点をつなぐ位置ベクトルを大きさが1になるように換算したベクトルであり、前記長軸単位ベクトルE’は長軸ベクトルEを大きさが1になるように換算したベクトルである。
【0052】
前記[式1]を介して計算されたDoA値は、当該結晶粒の長軸が、当該結晶粒を通過しつつ正極活物質の中心と表面をつなぐ最短線分に対して、どのくらい傾いているかを示す値で、DoA値が1に近いほど、当該結晶粒の長軸と前記最短線分の間の角度が小さく、0に近いほど当該結晶粒の長軸と前記最短線分の間の角度が大きくなることを意味する。すなわち、DoAが1に近いほど結晶粒の長軸配向性が高いということができる。
【0053】
図3には前記方法を介して得られたDoA値と当該結晶粒の長軸を表した図面が示されている。図3に示されたように、正極活物質粒子の中心と表面をつなぐ最短線分と結晶粒の長軸の間の角度が小さな結晶粒1の場合、DoAが0.965と1に近く現れた反面、正極活物質粒子の中心と表面をつなぐ最短線分と結晶粒の長軸の間の角度が大きい結晶粒2はDoAが0.352と小さく現れることがわかる。
【0054】
一方、前記のようなそれぞれの結晶粒の長軸配向度情報をマッピングして、正極活物質粒子の断面で外部領域及び内部領域における特定の長軸配向度値を有する結晶粒の比率を測定することができる。
【0055】
次に、結晶粒のc軸配向度について説明する。
【0056】
前記結晶粒のc軸配向度は、結晶粒の結晶格子のc軸の配向性を示すためのもので、電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析を介して得られた結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRcと、前記結晶粒の位置単位ベクトルP’の外積値である。
【0057】
具体的には、前記結晶粒のc軸配向度は、正極活物質の断面の電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)測定を介して各結晶粒の位置情報及びオイラー角(Euler angle)情報を含むEBSDオイラーマップ(Euler map)データを取得し、前記EBSDオイラーマップデータを用いて結晶格子のc軸回転ベクトルRcを求め、前記結晶格子のc軸回転ベクトルRcと当該結晶粒の位置単位ベクトルP’を外積して得ることができる。
【0058】
以下、本発明による結晶粒のc軸配向度を求める方法を具体的に説明する。
【0059】
電子後方散乱回折分析は、試料の回折パターンを用いて結晶相(crystallographic phase)と結晶方位(crystallographic orientation)を測定し、これに基づいて試料の結晶学的情報を分析する方法である。走査電子顕微鏡で、試料(すなわち正極活物質の断面)を電子ビームの入射方向に対して大きい角度を有するように傾けると、入射された電子ビームが試料内で散乱して試料の表面方向に回折パターンが現れるようになるが、これを電子後方散乱回折パターン(Electron Back scattered Diffraction Pattern、EBSP)という。電子後方散乱回折パターンは、電子ビームが照射された領域の結晶方位に反応するので、これを利用すれば試料の結晶方位を正確に測定することができ、EBSDソフトウェアを介して試料全体の結晶方位と関わる多様な情報を含むオイラーマップ(Euler map)データを得ることができる。図4には、正極活物質粒子の断面を電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析して得られたオイラーマップが示されている。
【0060】
前記EBSDオイラーマップデータは、各結晶粒の位置ベクトル情報及びオイラー角(Euler angle)情報を含む。一方、前記オイラー角情報を利用すれば、各結晶粒における結晶格子のc軸回転ベクトルRcを求めることができる。
【0061】
前記結晶格子のc軸回転ベクトルRcは、当該結晶粒を通過しつつ正極活物質の中心と表面をつなぐ最短線分に対して、当該結晶粒のc軸がどの方向に回転しているかを示してくれる。
【0062】
具体的には、前記結晶格子のc軸回転ベクトルRcは、下記[式2]によって計算された(x,y,z)ということができる。
【0063】
[式2]
【数5】
【0064】
前記[式2]で、[X,Y,Z]は(0,0,1)であり、前記Φ、θ、Ψはオイラーマップデータから取得された各結晶粒のオイラー角(Euler angle)である。
【0065】
前記のようにして求められた結晶格子のc軸回転ベクトルRcとオイラーマップデータに含まれた各結晶粒の位置ベクトル情報を用いて、結晶粒の配向度を求めることができる。具体的には、前記結晶粒の配向度は、結晶格子のc軸回転ベクトルRcと結晶粒の位置単位ベクトルP’を外積した値で数値化されることができる。
【0066】
このとき、前記位置単位ベクトルP’は、当該結晶粒の位置ベクトルを大きさが1になるように換算したものを意味する。例えば、当該結晶粒の位置ベクトルが(a,b,o)ならば、前記位置単位ベクトルは
【0067】
【数6】
【0068】
となる。
【0069】
前記位置単位ベクトルP’と結晶格子のc軸回転ベクトルRcの外積値は、正極活物質粒子内で当該結晶粒のc軸配向度を示す数値である。具体的には、前記位置単位ベクトルP’と結晶格子のc軸回転ベクトルRcの外積値が1である場合には、当該結晶粒のc軸が、正極活物質粒子の中心と表面をつなぐ最短線分と垂直に配置されていることを意味し、前記外積値が0である場合には、当該結晶粒のc軸が前記最短線分と水平に配置されていることを意味する。
【0070】
正極活物質でリチウムイオンは、c軸と垂直な方向に沿って移動するときの移動度が、c軸方向に移動するときより10倍以上速い。したがって、c軸に垂直な方向に沿ってリチウム移動経路(Lithium path)が形成されるようになる。また、前記リチウム移動経路が、正極活物質粒子の中心と表面をつなぐ最短線分に平行に形成されるとき、リチウム移動距離が最小化されるのでリチウムの伝導度が向上する。したがって、前記位置単位ベクトルP’と結晶格子のc軸回転ベクトルRcの外積値が1に近いほど、当該結晶粒の配向性が優れていると判断することができる。
【0071】
一方、前記のようにして得られた各結晶粒のc軸配向度を総合すると、正極活物質粒子の断面における全体結晶粒のc軸配向度を得ることができる。図5には各結晶粒のc軸配向度を総合して得られた正極活物質の結晶粒のc軸配向性マップ(map)が示されている。図5で赤色に行くほどc軸配向性が優れ、青色に行くほどc軸配向性が落ちることを意味する。前記のようなc軸配向性マップを利用すれば、正極活物質粒子の断面で、外部領域及び内部領域でc軸配向性の条件を満たす結晶粒の比率を求めることができる。
【0072】
本発明者等の研究によれば、正極活物質粒子の外部領域で、全体結晶粒のうち[式1]で表される結晶粒の長軸配向度DoAが0.5~1で、結晶粒のc軸配向度が0.5~1である結晶粒(以下、結晶粒Aという)の比率(以下、A1という)が30%~80%、好ましくは30%~60%、より好ましくは30%~50%、さらに好ましくは30%~40%の範囲を満足するとき、優れた寿命特性及び容量特性を具現できることが明らかになった。外部領域における結晶粒Aの比率が30%未満か80%を超過する場合には、正極活物質内部でのリチウム移動通路の長さが長くなってリチウムイオン移動性が落ち、充放電時に構造退化が発生するab面と電解液の接触面積が増加して容量特性及び寿命特性が改善効果を得ることができず、ガス発生等の副作用が増加し得る。
【0073】
また、本発明の正極活物質は、外部領域における結晶粒Aの比率A1が、内部領域における結晶粒Aの比率A2より大きいことが好ましい。正極活物質の外部領域の結晶粒Aの比率が、内部領域の結晶粒Aの比率より大きい場合、出力特性や高温保存特性のような他の物性とのバランスを維持しながら寿命特性及び容量特性の改善効果を極大化することができる。
【0074】
具体的には、前記外部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率A1と、前記内部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率A2の差が2%以上、または5%以上であり得、15%以下、または10%以下であり得る。外部領域と内部領域における結晶粒Aの比率の差が前記範囲を満足するとき、寿命特性及び容量特性の改善効果が優れて現れ、前記結晶粒Aの比率差が高い場合にさらに改善された効果を得ることができる。
【0075】
一方、本発明による正極活物質は、前記外部領域及び内部領域に、前記結晶粒A以外に、結晶粒のc軸配向度が0.5~1で、結晶粒の長軸DoAが0.5未満である結晶粒(以下、結晶粒Bという)、結晶粒のc軸配向度が0.5未満で、結晶粒の長軸配向度DoAが0.5~1である結晶粒(以下、結晶粒Cという)及び、結晶粒のc軸配向度が0.5未満で、結晶粒の長軸配向度DoAが0.5未満である結晶粒(以下、結晶粒Dという)がさらに含まれ得る。
【0076】
一方、本発明の正極活物質において、前記外部領域の全体結晶粒中の結晶粒Aの比率A1が、他の結晶粒の比率、すなわち、結晶粒Bの比率B1、結晶粒Cの比率C1及び、結晶粒Dの比率D1より大きいことが好ましい。すなわち、A1>B1、A1>C1、A1>D1を満足することが好ましい。外部領域で結晶粒Aの比率が他の結晶粒より高い場合に、寿命特性及び容量特性が改善される効果を得ることができるためである。
【0077】
一方、本発明による正極活物質において、前記外部領域及び内部領域を含む正極活物質粒子の断面の全体結晶粒中の結晶粒Aの比率は20%~80%、25%~70%、25~60%、25~50%、または25%~40%であり得、前記結晶粒Bの比率は5%~40%、5%~30%、または10~30%であり得、前記結晶粒Cの比率は5%~40%、5%~30%、または10~30%であり得、前記結晶粒Dの比率は5%~40%、5%~30%、または10~30%であり得る。正極活物質全体における結晶粒の比率が前記範囲を満足するとき、出力特性や高温保存特性のような物性の低下を最小化して寿命特性及び容量特性の改善効果を得ることができる。
【0078】
一方、正極活物質内での結晶粒の比率は、正極活物質前駆体の製造時の共沈反応条件、ドーピング元素の種類、焼成条件等が複合的に作用して決定される。したがって、前駆体製造時の共沈条件、ドーピング元素、焼成温度、焼成時のリチウム原料の混合比率等を適切に調節することにより、本発明の結晶粒の比率を満足する正極活物質を製造することができる。
【0079】
一方、本発明による正極活物質は、2以上の遷移金属を含むリチウム複合遷移金属酸化物であり得、例えば、下記[化学式1]で表されるリチウム複合遷移金属酸化物であり得る。
【0080】
[化学式1]
Li[NiCo ]O2-y
【0081】
前記[化学式1]で、前記Mは、Mn及びAlからなる群より選択された1種以上の元素であり得る。
【0082】
前記Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、Ta、Y、In、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、及びMoからなる群より選択される1種以上の元素であり得る。
【0083】
また、前記Aは、F、Cl、Br、I、At及びSからなる群より選択された1種以上の元素であり得る。
【0084】
前記xは、遷移金属全体のモル数に対するLiのモル数比を示すもので、0.98≦x≦1.20、好ましくは0.99≦x≦1.10、より好ましくは1.0≦x≦1.10であり得る。
【0085】
前記aは、遷移金属全体のモル数に対するNiのモル数比を示すもので、0<a<1、好ましくは0.3≦a<1、より好ましくは0.6≦a<1、さらに好ましくは0.8≦a<1、さらにより好ましくは0.85≦a<1であり得る。
【0086】
前記bは、遷移金属全体のモル数に対するCoのモル数比を示すもので、0<b<1、好ましくは0<b<0.7、より好ましくは0<b<0.4、さらに好ましくは0<b<0.2、さらにより好ましくは0<b≦0.1であり得る。
【0087】
前記cは、遷移金属全体のモル数に対するMのモル数比を示すもので、0<c<1、好ましくは0<c<0.7、より好ましくは0<c<0.4、さらに好ましくは0<c<0.2、さらにより好ましくは0<c≦0.1であり得る。
【0088】
前記dは、遷移金属全体のモル数に対するMのモル数比を示すもので、0≦d≦0.2、好ましくは0≦d≦0.15、より好ましくは0≦d≦0.10であり得る。
【0089】
前記yは、酸素位置に置換されたA元素のモル数比を示したもので、0≦y≦0.2、好ましくは0≦y≦0.15、より好ましくは0≦y≦0.10であり得る。
【0090】
一方、前記正極活物質は、結晶粒の大きさが100nm~200nm、好ましくは100nm~180nm、より好ましくは100nm~150nmであり得る。結晶粒の大きさが大きくなり過ぎると岩塩(rock salt)相が形成されて抵抗特性及び寿命特性が低下し得て、結晶粒の大きさが小さくなり過ぎると電解液との接触面積が増加して退化が早く起き得る。
【0091】
また、前記正極活物質は、1次粒子の平均粒径が0.05μm~4μm、好ましくは0.1μm~2μmであり得る。1次粒子の平均粒径が大き過ぎると岩塩(rock salt)相が形成されて抵抗特性及び寿命特性が低下し得て、1次粒子の平均粒径が小さ過ぎると電解液との接触面積が増加して退化が早く起き得る。
【0092】
また、前記正極活物質は、2次粒子の平均粒径が2μm~25μm、好ましくは5μm~18μmであり得る。2次粒子の平均粒径が前記範囲を満足するとき、圧延工程で正極活物質粒子が割れたり、スラリー製造時に工程性が低下することを防ぐことができる。
【0093】
正極
次に、本発明による正極について説明する。
【0094】
前記正極は、本発明による正極活物質を含む。具体的には、前記正極は、正極集電体、前記正極集電体上に形成された正極活物質層を含み、前記正極活物質層は本発明による正極活物質を含む。
【0095】
このとき、前記正極活物質は、上述したものと同一であるため、具体的な説明を省略し、以下残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0096】
前記正極集電体は導電性が高い金属を含むことができ、正極活物質層が容易に接着し、電池の電圧範囲で反応性がないものであれば特に制限されるものではない。前記正極集電体は、例えばステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常3~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等、多様な形態で使用されることができる。
【0097】
前記正極活物質層は、前記正極活物質と共に、必要に応じて選択的に導電材及び/またはバインダをさらに含むことができる。
【0098】
このとき、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99重量%、より具体的には85~98.5重量%の含量で含まれることができる。前記の含量範囲で含まれるとき、優れた容量特性を示すことができる。
【0099】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子導電性を有するものであれば、特別な制限なしに使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維等の炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末または金属繊維;炭素ナノチューブ等の導電性チューブ;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体等の導電性高分子等を挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれることができる。
【0100】
前記バインダは、正極活物質の粒子間の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethymethaxrylate)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)、及びこれらの水素をLi、Na、またはCaに置換された高分子、またはこれらの多様な共重合体等を挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれることができる。
【0101】
前記正極は、前記した正極活物質を用いることを除いては、通常の正極の製造方法によって製造されることができる。具体的には、前記の正極活物質及び必要に応じて選択的にバインダ、及び導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造することができる。
【0102】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に使用される溶媒であり得、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(dimethyl formamide、DMF)、アセトン(acetone)、または水等を挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布の厚さ、製造収率を考慮して前記正極活物質、導電材、及びバインダを溶解または分散させ、その後の正極製造のための塗布時に優れた厚さの均一度を示し得る粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0103】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることにより製造されることもできる。
【0104】
二次電池
また、本発明は、前記正極を含む電気化学素子を製造することができる。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシタ等であり得、より具体的には、リチウム二次電池であり得る。
【0105】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する負極、及び前記正極と負極の間に介在する分離膜及び電解質を含むことができる。前記正極は、先に説明したものと同一であるため、具体的な説明を省略し、以下では、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0106】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、分離膜の電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0107】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0108】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金等が使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様に、前記集電体表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体等、多様な形態で使用されることができる。
【0109】
前記負極活物質層は、負極活物質と共に選択的にバインダ及び導電材を含む。
【0110】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインタカレーション及びデインタカレーションが可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素等の炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金等のリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;または、Si-C複合体またはSn-C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物等を挙げることができ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されることもできる。また、炭素材料は、低結晶性炭素及び高結晶性炭素等が全て使用されることができる。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗状、球形または繊維型の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び、石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)等の高温焼成炭素が代表的である。
【0111】
前記負極活物質は、負極活物質層の全体重量を基準として80重量%~99重量%で含まれることができる。
【0112】
前記バインダは、導電材、活物質及び集電体間の結合を助ける成分であって、通常、負極活物質層の全体重量を基準として0.1重量%~10重量%で添加される。このようなバインダの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体等を挙げることができる。
【0113】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分であって、負極活物質層の全体重量を基準として10重量%以下、好ましくは5重量%以下で添加されることができる。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維;アルミニウム、ニッケル粉末等の金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体等の導電性素材等が使用されることができる。
【0114】
前記負極活物質層は、一例として、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を溶媒中に溶解または分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布して乾燥するか、または前記負極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されることもできる。
【0115】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は負極と正極を分離しリチウムイオンの移動通路を提供するもので、通常、リチウム二次電池で分離膜として使用されるものであれば、特別な制限なしに使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力が優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また通常の多孔性不織布、例えば、高融点のグラス・ファイバー、ポリエチレンテレフタルレート繊維等からなった不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度確保のためにセラミックス成分または高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜が使用されることもでき、選択的に単層または多層構造で使用されることができる。
【0116】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質等を挙げることができ、これらに限定されるものではない。
【0117】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含むことができる。
【0118】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割ができるものであれば、特別な制限なしに使用されることができる。具体的に前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)等のエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)、またはテトラヒドロピラン(tetrahydrofuran)等のエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)等のケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)等の芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)等のカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;R-CN(Rは炭素数2~20の直鎖状、分枝状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)等のニトリル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;1,3-ジオキソラン等のジオキソラン類;または、スルホラン(sulfolane)類等が使用されることができる。この中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネート等)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネート等)の混合物がより好ましい。
【0119】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特別な制限なしに使用されることができる。具体的に前記リチウム塩の陰イオンとしては、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、CFCO 、CHCO 、SCN及び(CFCFSOからなる群より選択される少なくとも一つ以上であり得、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(C等が使用されることができる。前記リチウム塩の濃度は0.1~2.0Mの範囲内で使用するのがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0120】
前記のとおり本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた容量特性及び寿命特性を示し、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ等の携帯用機器や電気自動車等の多様な分野で有用に使用されることができる。
【0121】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明による実施例は様々な形態に変形されることができ、本発明の範囲が下記で詳述する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【実施例
【0122】
製造例1-正極活物質前駆体Aの製造
NiSO、CoSO、及びMnSOをニッケル:コバルト:マンガンのモル比が92:4:4となるようにする量で蒸留水中で混合して2.4M濃度の遷移金属水溶液を準備した。
【0123】
続いて、前記反応器に脱イオン水を入れた後、窒素ガスを反応器にパージングして水中の溶存酸素を除去し、反応器内を非酸化雰囲気に調整した。その後、7.96MのNaOHを投入して反応器内のpHが11.9を維持するようにした。
【0124】
その後、前記遷移金属水溶液を前記反応器内に850mL/hrの速度で投入し、NaOH水溶液を510mL/hr、NHOH水溶液を160mL/hrの速度でそれぞれ投入しながら、反応温度50℃、pH11.4、撹拌速度600rpmの条件で40時間の間共沈反応を進行させて平均粒径D50が15μmで、Ni0.92Co0.04Mn0.04(OH)で表される正極活物質前駆体Aを製造した。
【0125】
製造例2-正極活物質前駆体Bの製造
共沈反応を12時間進行した点を除いて、製造例1と同一の方法で平均粒径D50が4μmで、Ni0.92Co0.04Mn0.04(OH)で表される正極活物質前駆体Bを製造した。
【0126】
実施例1
前記製造例1によって製造された正極活物質前駆体AとLiOHを、Li:遷移金属(Ni+Co+Mn)のモル比が1.05:1となるように混合し、ここにTaを遷移金属(Ni+Co+Mn):Taのモル比が99.75:0.25となるように追加混合した後、770℃で13時間の間焼成してLi[Ni0.92Co0.04Mn0.040.9975Ta0.0025を製造した。
【0127】
次に、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.040.9975Ta0.0025を水で水洗し、乾燥させた後にホウ酸500ppmを混合して300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質を製造した。
【0128】
実施例2
焼成を790℃で行った点を除いて実施例1と同一の方法で正極活物質を製造した。
【0129】
実施例3
前記製造例1によって製造された正極活物質前駆体AとLiOHを、Li:遷移金属(Ni+Co+Mn)のモル比が1.05:1となるように混合し、ここにWOを遷移金属(Ni+Co+Mn):Wのモル比が99.75:0.25となるように追加混合した後、770℃で13時間の間焼成してLi[Ni0.92Co0.04Mn0.040.99750.0025を製造した。
【0130】
次に、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.040.99750.0025を水で水洗し、乾燥させた後にホウ酸500ppmを混合して300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質を製造した。
【0131】
実施例4
前記製造例1によって製造された正極活物質前駆体AとLiOHを、Li:遷移金属(Ni+Co+Mn)のモル比が1.05:1となるように混合し、ここにB(OH)を遷移金属(Ni+Co+Mn):Bのモル比が99.75:0.25となるように追加混合した後、770℃で13時間の間焼成してLi[Ni0.92Co0.04Mn0.040.99750.0025を製造した。
【0132】
次に、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.040.99750.0025を水で水洗し、乾燥させた後にホウ酸500ppmを混合して300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質を製造した。
【0133】
実施例5
前記製造例1によって製造された正極活物質前駆体AとLiOHを、Li:遷移金属(Ni+Co+Mn)のモル比が1.05:1となるように混合し、ここにMoを遷移金属(Ni+Co+Mn):Moのモル比が99.75:0.25となるように追加混合した後、770℃で13時間の間焼成してLi[Ni0.92Co0.04Mn0.040.9975Mo0.0025を製造した。
【0134】
次に、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.040.9975Mo0.0025を水で水洗し、乾燥させた後にホウ酸500ppmを混合して300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質を製造した。
【0135】
実施例6
前記製造例1によって製造された正極活物質前駆体AとLiOHを、Li:遷移金属(Ni+Co+Mn)のモル比が1.03:1となるように混合した後、740℃で13時間の間焼成してLi[Ni0.92Co0.04Mn0.04]Oを製造した。
【0136】
次に、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.04]Oを水で水洗し、乾燥させた後にホウ酸500ppmを混合して300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質を製造した。
【0137】
比較例1
前記製造例1によって製造された正極活物質前駆体AとLiOHを、Li:遷移金属(Ni+Co+Mn)のモル比が1.07:1となるように混合し、790℃で13時間の間焼成してLi[Ni0.92Co0.04Mn0.04]Oを製造した。
【0138】
次に、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.04]Oを水で水洗し、乾燥させた後にホウ酸500ppmを混合して300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質を製造した。
【0139】
比較例2
前記製造例2によって製造された正極活物質前駆体BとLiOHを、Li:遷移金属(Ni+Co+Mn)のモル比が1.05:1となるように混合し、780℃で13時間の間焼成してLi[Ni0.92Co0.04Mn0.04]Oを製造した。
【0140】
次に、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.04]Oを水で水洗し、乾燥させた後にホウ酸500ppmを混合して300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質を製造した。
【0141】
比較例3
前記製造例1によって製造された正極活物質前駆体AとLiOHを、Li:遷移金属(Ni+Co+Mn)のモル比が1.05:1となるように混合し、ここにNbを遷移金属(Ni+Co+Mn):Nbのモル比が99.75:0.25となるように追加混合した後、770℃で13時間の間焼成してLi[Ni0.92Co0.04Mn0.040.9975Nb0.0025を製造した。
【0142】
次に、前記Li[Ni0.92Co0.04Mn0.040.9975Nb0.0025を水で水洗し、乾燥させた後にホウ酸500ppmを混合して300℃で熱処理してBコーティングされた正極活物質を製造した。
【0143】
実験例1:正極活物質の分析
イオンミリングシステム(Hitachi社、IM4000)を用いて、実施例1~6及び比較例1~3によって製造された正極活物質それぞれを断面切断した後、上述した走査イオン顕微鏡分析及び電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析を実施して、外部領域及び内部領域における結晶粒A、B、C、Dの比率を測定した。
【0144】
測定結果は下記表1に示した。
【0145】
[表1]
【表1】
【0146】
実験例2:電池特性の評価
前記実施例1~6及び比較例1~3でそれぞれ製造した正極活物質と、導電材(デンカブラック)及びバインダ(PVDF)を、97.5:1:1.5の重量比でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布し、乾燥した後圧延して正極を製造した。
【0147】
負極としてはリチウムメタル電極を使用した。
【0148】
前記正極と負極の間に分離膜を介在して電極組立体を製造してから、電池ケース内部に位置させた後、電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。このとき、電解液としては、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジエチルカーボネートを3:3:4の体積比で混合した有機溶媒に1MのLiPFを溶解させた電解液を使用した。
【0149】
次に、前記二次電池をそれぞれ25℃で0.1C定電流で4.2Vまで充電を実施した。その後、0.1C定電流で3Vまで放電を実施して初期充電容量及び初期放電容量を測定した。
【0150】
また、前記二次電池をそれぞれ45℃で0.33C定電流で4.2Vまで充電した後、0.33C定電流で3Vまで放電させる充放電挙動を1サイクルとして、このようなサイクルを30回繰り返し実施した後、容量維持率及び抵抗増加率を測定した。
【0151】
容量維持率及び抵抗増加率は、下記[式3]及び[式4]によって計算した。
【0152】
[式3]
容量維持率(%)={30サイクル以後の放電容量/1サイクル以後の放電容量}×100
【0153】
[式4]
抵抗増加率(%)={(30サイクル以後の抵抗-1サイクル以後の抵抗)/1サイクル以後の抵抗}×100
【0154】
測定結果は下記表2に示した。
【0155】
[表2]
【表2】
【0156】
前記[表2]に示されたように、正極活物質粒子の外部領域における結晶粒Aの比率が本発明の範囲を満足する実施例1~6の正極活物質を使用した二次電池の容量特性及び寿命特性が、比較例1~3の正極活物質を使用した二次電池に比べて優れて示された。また、外部領域と内部領域における結晶粒Aの比率の差が5%以上と大きい実施例1及び実施例4の正極活物質を使用する場合、寿命特性の改善効果がさらに優れたことを確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質粒子の中心から表面までの距離をRとするとき、前記正極活物質粒子の中心からR/2までの領域である内部領域と、R/2から正極活物質粒子の表面までの領域である外部領域を含み、
前記外部領域の全体結晶粒のうち、下記[式1]で表される結晶粒の長軸配向度DoAが0.5~1であり、電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析を介して得られた結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRcと、前記結晶粒の位置単位ベクトルP’の外積値で表される結晶粒のc軸配向度が0.5~1である結晶粒Aの比率(A1)が30%~80%である、正極活物質:
[式1]
【数1】
前記[式1]で、
λは前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られたイメージデータから測定された当該結晶粒の長軸ベクトルEの大きさであり、
λは前記正極活物質の断面を走査イオン顕微鏡分析して得られたイメージデータから測定された当該結晶粒の短軸ベクトルEIIの大きさであり、
前記Cは当該結晶粒の位置単位ベクトルP’と長軸単位ベクトルE’の内積値である。
【請求項2】
前記外部領域の全体結晶粒中の結晶粒Aの比率(A1)が30%~60%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記外部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率(A1)が、前記内部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率(A2)より大きいものである、請求項1または2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記外部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率(A1)と、前記内部領域の全体結晶粒中の前記結晶粒Aの比率(A2)の差が5%以上である、請求項3に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記正極活物質は、
前記結晶粒の長軸配向度DoAが0.5未満で、前記結晶粒のc軸配向度が0.5~1である結晶粒B、
前記結晶粒の長軸配向度DoAが0.5~1で、前記結晶粒のc軸配向度が0.5未満である結晶粒C、及び
前記結晶粒の長軸配向度DoAが0.5未満で、前記結晶粒のc軸配向度が0.5未満である結晶粒Dをさらに含むものである、請求項1から4のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記外部領域は、全体結晶粒中の結晶粒Aの比率(A1)が、結晶粒Bの比率(B1)、結晶粒Cの比率(C1)及び、結晶粒Dの比率(D1)より大きいものである、請求項5に記載の正極活物質。
【請求項7】
前記正極活物質粒子の断面の全体結晶粒中の結晶粒Aの比率は20%~80%、前記結晶粒Bの比率は5%~40%、前記結晶粒Cの比率は5%~40%、前記結晶粒Dの比率は5%~40%である、請求項5または6に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記走査イオン顕微鏡分析は、前記正極活物質の断面に集束イオンビームを照射して走査イオン顕微鏡イメージを得た後、ディープラーニングを用いて前記走査イオン顕微鏡イメージから結晶粒単位でセグメンテーション(segmentation)されたデータを取得し、前記セグメンテーションされたデータから前記[式1]で表されるDoAを計算するものである、請求項1から7のいずれか一項に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)分析は、前記正極活物質の断面の電子後方散乱回折(Electron BackScatter Diffraction、EBSD)測定を介して各結晶粒の位置情報及びオイラー角(Euler angle)情報を含むEBSDオイラーマップ(Euler map)データを取得し、下記[式2]を介して前記結晶粒の結晶格子のc軸回転ベクトルRc(x,y,z)を求めるものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の正極活物質:
[式2]
【数2】
前記[式2]で、
[X,Y,Z]は(0,0,1)であり、前記Φ、θ、Ψはオイラーマップデータから取得されたオイラー角(Euler angle)である。
【請求項10】
前記正極活物質は、下記[化学式1]で表されるリチウム複合遷移金属酸化物である、請求項1から9のいずれか一項に記載の正極活物質:
[化学式1]
Li[NiCo ]O2-y
前記[化学式1]で、
前記Mは、Mn及びAlからなる群より選択された1種以上の元素であり、
前記Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、Ta、Y、In、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、及びMoからなる群より選択される1種以上の元素であり、
前記Aは、F、Cl、Br、I、At及びSからなる群より選択された1種以上の元素であり、
0.98≦x≦1.20、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0≦d≦0.2、0≦y≦0.2である。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、正極。
【請求項12】
請求項11に記載の正極を含む、リチウム二次電池。
【国際調査報告】