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特表2024-509550N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/58 20060101AFI20240226BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20240226BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20240226BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20240226BHJP
   C08G 73/06 20060101ALI20240226BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240226BHJP
【FI】
C07D211/58
B01J23/42 Z
B01J23/44 Z
B01J23/755 Z
C08G73/06
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553562
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2022053192
(87)【国際公開番号】W WO2022184399
(87)【国際公開日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】21161133.0
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイドル,アレクサンダー ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】カピート,エレナ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H039
4J043
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA01B
4G169BA08B
4G169BC29A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC70A
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CB02
4G169DA06
4H039CA71
4H039CB30
4J043PA04
4J043QB16
4J043QB52
4J043RA02
4J043SA06
4J043SA08
4J043SA32
4J043SA44
4J043SB01
4J043TA43
4J043TA51
4J043TA66
4J043TB01
4J043UA392
4J043UA791
4J043ZB60
(57)【要約】
本発明は、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製する方法に関する。本発明は、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンの使用であって、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]、1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン-イル)、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、N-ブチル-1-ブチルアミン、及びN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンの反応材料、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、及び1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-、2,4-ジクロロ-6-(4-モルホリニル)-1,3,5-トリアジンとのポリマーを調製するための使用に更に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製する方法であって、前記方法が:
i. 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンを1,6-ヘキサメチレンジアミンでイミン化して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む第1の混合物を得るステップ;
ii. 第1の混合物のN,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を水素化して、50~99.5重量%のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを含む水素化した第2の混合物を得るステップ;及び
iii. 第2の混合物を固定床反応器で連続的水素化して、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを得るステップ
を備える方法。
【請求項2】
前記ステップ(i)で調製される第1の混合物が、3~7重量%の範囲の含水量を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2重量%未満の含水量を有するように第1の混合物から水を除去するステップを更に備える請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
2重量%未満の含水量を有するように第2の混合物から水を除去するステップを更に備える請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(ii)において、第2の混合物が、65~95重量%のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを含む請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(ii)における前記水素化が、少なくとも1つの第1の遷移金属を用いて触媒される請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
第1の遷移金属が、銅、ニッケル、コバルト、ルテニウム、プラチナ、及びパラジウムから選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第1の遷移金属が、プラチナである請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(iii)の前記連続的水素化が、少なくとも1つの第2の遷移金属を用いて触媒される請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
第2の遷移金属が、銅、ニッケル、コバルト、ルテニウム、プラチナ、及びパラジウムから選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記遷移金属が、パラジウムである請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記水素化ステップ(ii)及びステップ(iii)における水素の圧力が、1~200バールの範囲である請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ(i)~前記ステップ(iii)の温度が、60~200℃の範囲である請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(iii)において得られるN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンが、90~400の範囲のAPHA値を有する請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
1,6-ヘキサメチレンジアミンの2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンに対するモル比が、0.1:5~5:0.1の範囲である請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(iii)における水素のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンに対するモル比が、0.5:0.1~40:5の範囲である請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の方法により得られるN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンの使用であって、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]、1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン-イル)、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、N-ブチル-1-ブチルアミン、及びN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンの反応材料、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、及び1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-、2,4-ジクロロ-6-(4-モルホリニル)-1,3,5-トリアジンとのポリマーを調製するための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製する方法に関する。本発明は、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンの使用であって、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]、1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン-イル)、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、N-ブチル-1-ブチルアミン、及びN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンの反応材料、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、及び1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-、2,4-ジクロロ-6-(4-モルホリニル)-1,3,5-トリアジンとのポリマーを調製するための使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
イミン化反応とそれに続く水素化を含む工業規模でのアミンの合成はよく知られており、バッチプロセスによるか又はその後の連続プロセスによるかのどちらかで4-アミノピペリジンの合成に関して過去に記載されている。両方の技術は、水又はルイス酸及び/又はブレンステッド酸により触媒されるイミンの形成で始まり、その後、加圧水素を用いる遷移金属触媒による還元的アミノ化によって、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを粗化合物(94~97%)として得た後、それを減圧下で蒸留により精製するか、又は更に精製せずに使用する。
【0003】
欧州特許第0508940号明細書は、高圧(50バール)水素でPt/Cを用いて、単一のバッチサイクルとして、90Cで、4時間で実施されるバッチの触媒反応を開示する。これは、収率の低下をもたらす蒸留の精製プロセスを回避するために行われる。この記載のプロセスにおける主な欠点は、かなり高い水素圧(50バール)が必要なこと、特定の装置とその後の特別な安全対策の必要性、廃気流に排出される過剰な水素の使用、サイクル数の制限による触媒の寿命低下(通常、バッチの触媒当たり最大10~20サイクルのみ)、主に得られるN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン1,6ジアミンの色の不安定(熱ストレス下、例えば60℃で高いAPHA値をもたらす観点から)、及び色自体の欠点(蒸留がないため)であり、それは、バリューチェーンの下流にある製品の透過率(T%)値を妨げ、製品の品質低下をもたらす。
【0004】
連続的に行われるN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンプロセスは、欧州特許第0857719号明細書及び米国特許第5945536号明細書において、管状反応器における固定床触媒(遷移金属触媒、固体担体、例えばAl又はSiO上の[Pd]、[Pt]又は[Co])により非常に高い水素圧(285バール)、昇温(90~190℃)で進行するワンポットのイミン化/水素化処理としても以前に報告されている。このプロセスを用いて、94%までの非常に高い選択率のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンが獲得されるが、(ライトボイラー(light-boilers)を取り除いた後)残渣をバリューチェーンの下流で製品の調製に直接使用することができる、バッチ反応で得られるN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンと比較すると、報告されている連続セットアップで得られる未精製の材料は、その材料の色が欠けている(APHA値703)ため、厳しい蒸留条件(蒸留後にAPHA値90~190を有するHMBTADが得られる6ミリバールで沸点225℃)での追加の精製ステップが必要である。
【0005】
蒸留した4-アミノピペリジンの品質、特に長期安定性を確保するためにその色品質を向上させるために、蒸留した4-アミノピペリジンを添加剤(例えば欧州特許第0906281号明細書及び独国特許第19622269号明細書ではNaBHで)で処理する手順が知られている。しかしながら、この処理には、この精製コンセプトのために予め蒸留した材料が必要であることに加えて、別の反応器のセットアップに依存する追加のステップが必要であるという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、高い選択率でN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製するプロセスを提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製する簡潔で実利的なプロセスを提供することである。
【0008】
本発明の更に別の目的は、安定なN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製するプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、バッチ式水素化処理を連続的ポスト水素化処理と組み合わせることにより、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンをより高い選択率で得ることが判明した。更に、バッチ式水素化を連続的ポスト水素化と組み合わせることで、精製ステップを省いて、その下流製品の透過率(T%)の値を改善した安定なN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン4-イル)ヘキサン1,6ジアミンを生成することにより、技術的且つ経済的に実現可能なプロセス条件を提供する。
【0010】
透過率(T%)は、T=e^(-T)=10^(-A)のように光学深度と吸光度に相関しており、ここで、Tは光学深度であり、Aは吸光度である。
【0011】
したがって、一態様においては、現在請求されている発明は、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製するプロセスに関し、そのプロセスは:
i. 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンを1,6-ヘキサメチレンジアミンでイミン化して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む第1の混合物を得るステップ;
ii. 第1の混合物のN,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を水素化して、50~99.5重量%のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを含む水素化した第2の混合物を得るステップ;及び
iii. 第2の混合物を固定床反応器で連続的水素化して、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを得るステップ
を備える。
【0012】
別の態様においては、現在請求されている発明は、既述のプロセスにより得られるN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンの使用であって、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]、1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン-イル)、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、N-ブチル-1-ブチルアミン、及びN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンの反応材料、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、及び1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-、2,4-ジクロロ-6-(4-モルホリニル)-1,3,5-トリアジンとのポリマーを調製するための使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の組成物及び製剤を説明する前に、このような組成物及び製剤は勿論変化することがあるので、本発明は記載した特定の組成物及び製剤に限定されないことを理解するべきである。同様に、現在請求されている発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されることとなるので、本明細書で使用される専門用語は、限定されないものとすることを理解すべきである。
【0014】
以下において、ある群が少なくともある決まった数の実施形態を含むと定義される場合、これは、これらの実施形態のみからなる好ましい群も包含することを意味する。更に、本明細書及び特許請求の範囲における「第1の」、「第2の」、「第3の」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」などの用語は、類似の構成要素を区別するために使用されるものであり、必ずしも連続した順番又は時系列順を説明するものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下において交換可能であることと、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示する順序以外の順序で実施することが可能であることとが理解されるべきである。「第1の」、「第2の」、「第3の」又は「(A)」、「(B)」及び「(C)」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「i」、「ii」などの用語が、方法若しくは使用又はアッセイのステップに関する場合、本出願で別段の指定がない限り、本明細書において前述又は後述するように、このステップ間に時間を置かないか、又は時間間隔の一貫性がなく、すなわち、このステップは、同時に実施され得るか、又はこのようなステップ間に数秒間、数分間、数時間、数日間、数週間、数ヶ月間若しくは更に数年間の時間間隔があり得る。
【0015】
以下の文章においては、本発明の様々な態様が、更に詳細に定義される。そのように定義された各態様は、反対のことが明記されていない限り、任意の他の1つ又は複数の態様と組み合わせてもよい。特に、好ましい又は有利であると示唆される任意の特徴は、好ましい又は有利であると示唆される任意の他の1つ又は複数の特徴と組み合わせてもよい。
【0016】
「一実施形態」又は「好ましい一実施形態」に対する本明細書全体にわたる関連は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が、現在請求されている発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場合における句「一実施形態においては」又は「好ましい一実施形態においては」又は「別の実施形態においては」の出現は、必ずしも全て同じ実施形態について言及しているわけではないが、全て同じ実施形態について言及していることもある。更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態においては、本開示から当業者に明らかになるであろう任意の好適な手法に組み合わせてもよい。更に、本明細書に記載されるいくつかの実施形態が、他の実施形態に含まれる他の特徴でないものを含む一方、異なる実施形態の特徴の組み合わせが本発明の範囲内であることを意味し、当業者には理解されるであろう異なる実施形態を形成する。例えば、添付の特許請求の範囲において、特許請求の範囲に記載の任意の実施形態は、任意の組み合わせで使用することができる。
【0017】
更に、本明細書を通じて定義される範囲には、最終値も含まれ、つまり、1~10の範囲は、1と10の両方が範囲に含まれることを含意する。疑義を避けるため、出願人は、適用される法律に従って、あらゆる等価物を得る権利を有するものとする。
【0018】
本開示をより容易に理解できるように、特定の用語を最初に定義する。他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術及び科学用語は、本発明の実施形態が関係する当業者が一般に理解する意味と同義である。
【0019】
一態様においては、現在請求されている発明は、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製するプロセスに関し、そのプロセスは、:
i. 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンを1,6-ヘキサメチレンジアミンでイミン化して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む第1の混合物を得るステップ;
ii. 第1の混合物のN,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を水素化して、50~99.5重量%のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを含む水素化した第2の混合物を得るステップ;及び
iii. 第2の混合物を固定床反応器で連続的水素化して、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを得るステップ
を備える。
【0020】
一実施形態においては、現在請求されている発明は、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製するプロセスに関し、そのプロセスは:
i. 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンを1,6-ヘキサメチレンジアミンでイミン化して、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む第1の混合物を得るステップ;
ia.第1の混合物を脱水して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む水を無含有の第1の混合物を得るステップ:
ii. 第1の混合物のN,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を水素化して、50~99.5重量%のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを含む水素化した第2の混合物を得るステップ;及び
iii. 第2の混合物を固定床反応器で連続的水素化して、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを得るステップ
を備える。
【0021】
一実施形態においては、現在請求されている発明は、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製するプロセスに関し、そのプロセスは:
i. 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンを1,6-ヘキサメチレンジアミンでイミン化して、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む第1の混合物を得るステップ;
ii. 第1の混合物のN,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を水素化して、50~99.5重量%のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを含む水素化した第2の混合物を得るステップ;
iia. 第2の混合物を脱水して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む水を無含有の第2の混合物を得るステップ;及び
iii. 第2の混合物を固定床反応器で連続的水素化して、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを得るステップ
を備える。
【0022】
一実施形態においては、現在請求されている発明は、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製するプロセスに関し、そのプロセスは:
i. 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンを1,6-ヘキサメチレンジアミンでイミン化して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む第1の混合物を得るステップ;
ia.第1の混合物を脱水して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む水無含有の第1の混合物を得るステップ:
ii. 第1の混合物のN,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を水素化して、50~99.5重量%のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを含む水素化した第2の混合物を得るステップ;
iia. 第2の混合物を脱水して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む水を無含有の第2の混合物を得るステップ;及び
iii. 第2の混合物を固定床反応器で連続的水素化して、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを得るステップ
を備える。
【0023】
N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製するプロセスが、以下の本明細書において詳細に検討される。
【0024】
ステップ(i):2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンを1,6-ヘキサメチレンジアミンでイミン化して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む第1の混合物を得る
一実施形態においては、1,6-ヘキサメチレンジアミンの2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンに対するモル比が、0.1:5~5:0.1、好ましくは1:5~5:1、より好ましくは1:2~2:1、及び最も好ましくは1:1.9の範囲である。
【0025】
一実施形態においては、ステップ(i)の温度は、60℃~200℃、好ましくは80℃~180℃の範囲である。
【0026】
一実施形態においては、ステップ(i)で調製した第1の混合物は、3~7重量%の範囲の含水量を含む。
【0027】
ステップ(ia):第1の混合物を脱水して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む水を無含有の第1の混合物を得る
用語「水を無含有」は、水の量が第1の混合物の総重量を基準として2重量%未満であることを意味する。
【0028】
一実施形態においては、水は、30ミリバール~60ミリバール、好ましくは40ミリバール~50ミリバールの範囲の圧力で第1の混合物から除去される。
【0029】
一実施形態においては、水は、2重量%未満、好ましく1重量%未満の含水量を有するように第1の混合物から除去される。
【0030】
ステップ(ii):第1の混合物のN,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を水素化して、50~99.5重量%のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを含む水素化した第2の混合物を得る
一実施形態においては、ステップ(ii)での水素化は、バッチ技術を用いて実施される。
【0031】
バッチ技術では、等温加熱式及び撹拌加圧オートクレーブ反応器などのバッチ式反応器が使用される。
【0032】
一実施形態においては、ステップ(ii)で、第2の混合物は、65~95重量%のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを含む。
【0033】
一実施形態においては、ステップ(ii)での水素化は、少なくとも1つの第1の遷移金属を用いて触媒される。
【0034】
一実施形態においては、第1の遷移金属は、銅、ニッケル、コバルト、ルテニウム、プラチナ、及びパラジウムから選択され、好ましくはプラチナである。
【0035】
少なくとも1つの第1の遷移金属触媒は、酸化アルミニウム(Al)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、二酸化ケイ素(SiO)、及び炭素の固体担体上に置かれる。
【0036】
固体担体上の第1の遷移金属触媒は、固体担体の総重量の0.1~1.0重量%の範囲の量、好ましくは固体担体の総重量の0.7重量%の量で存在する。
【0037】
更に、ステップ(ii)での水素化は、固体担体なしで、少なくとも1つの第1の遷移金属を用いて触媒することができる。
【0038】
一実施形態においては、水素化ステップ(ii)における水素の圧力は、1~200バール、好ましくは5~100バール、及びより好ましくは5~35バールの範囲である。
【0039】
一実施形態においては、ステップ(ii)での水素化は、60℃~200℃の範囲、好ましくは80℃~180℃の範囲の温度で実施される。
【0040】
一実施形態においては、水素化のステップ(ii)は、1時間~6時間の時間帯で実施される。
【0041】
ステップ(iia):第2の混合物を脱水して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む水を無含有の第2の混合物を得る
本明細書における用語「水を無含有」は、第2の混合物の総重量を基準として2重量%未満の含水量を含意する。
【0042】
水は、60℃~80℃、好ましくは60℃~70℃の範囲の温度で、及び100ミリバール~12ミリバールの範囲の圧力で蒸留及びライトボイラーのプロセスにより、第2の混合物から除去される。
【0043】
水、アセトン、及び微量の2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンを含有する出発材料の3~20重量%の質量は、除去される。
【0044】
第1の混合物及び第2の混合物から水を除去するステップ(ia)及びステップ(iia)は、それぞれ任意である。
【0045】
ステップ(iii):第2の混合物を固定床反応器で連続的水素化して、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを得る
連続的水素化のステップは、予熱器を備えた断熱式管状反応器又は内部サーモウェルを備えた等温管状反応器を用い、両方とも固体担体上に固定床触媒を充填して実施される。
【0046】
一実施形態においては、ステップ(ia)又はステップ(iia)が回避される場合に第2の混合物は水を含む。
【0047】
別の実施形態においては、ステップ(ia)又はステップ(iia)を用いて水を除去するならば、第2の混合物は、水を含まない。用語「水を無含有」は、水が2重量%未満、好ましくは水が0.5重量%であることを含意する。
【0048】
一実施形態においては、ステップ(iii)の連続的水素化は、少なくとも1つの第2の遷移金属を用いて触媒される。
【0049】
一実施形態においては、少なくとも1つの第2の遷移金属が、銅、ニッケル、コバルト、ルテニウム、プラチナ、及びパラジウムから選択され、好ましくはパラジウムである。
【0050】
少なくとも1つの第2の遷移金属触媒は、酸化アルミニウム(Al)、二酸化チタン(TiO)、二酸化ジルコニウム(ZrO)、二酸化ケイ素(SiO)、及び炭素の固体担体上に置かれる。
【0051】
固体担体上の第2の遷移金属触媒は、固体担体の総重量の0.1~1.0重量%の範囲の量、好ましくは固体担体の総重量の0.7重量%の量で存在する。
【0052】
更に、ステップ(ii)での水素化は、固体担体なしで、少なくとも1つの第2の遷移金属を用いて触媒することができる。
【0053】
一実施形態においては、水素化ステップ(iii)における水素の圧力は、1~200バール、好ましくは5~100バール、及びより好ましくは5~35バールの範囲である。
【0054】
一実施形態においては、ステップ(iii)の温度は、60℃~200℃、好ましくは80℃~180℃、及びより好ましくは100℃~150℃の範囲である。
【0055】
一実施形態においては、ステップ(iii)における水素のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンに対するモル比は、0.5:0.1~40:5、好ましくは1:1~40:1、及びより好ましくは1.5:1~35:1の範囲である。
【0056】
一実施形態においては、第2の混合物は、0.5~2.0kgFeed/Lcat*h、好ましくは0.5~1.6kgFeed/Lcat*hの範囲の液空間速度(LHSV)で反応器に供給される。
【0057】
LHSVは液空間速度であり、1時間当たりの液体体積流量の触媒体積に対する比である。
【0058】
一実施形態においては、ステップ(iii)で得られるN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンは、90~400の範囲のAPHA値を有する。
【0059】
このAPHA値は、光又は熱への露出、不純物の存在、及び加工の悪影響による製品の劣化の視覚的指標である、微量の黄色みの出現を定量化する役割を果たす。
【0060】
APHA値は、直径1.2cm、及び高さ8.2cmの丸形キュベットを用いて比色計(Hach Lange社製のLICO620型)で国際標準法DIN-ISO6271を使用して求められる。溶融材料(5mL)をキュベットに充填し、そのAPHA値を測定した。
【0061】
ポスト水素化処理は、中断したバッチ式水素化で生じる供給水溶液と水を無含有の供給液の両方に使用できる。
【0062】
中断されるバッチ式水素化は、水素化時間がHMBTADへの完全な変換に必要である時間の50%削減される不完全な水素化反応である。通常は、水素化反応は、水素化処理が遅くなり最終の水素圧力に達する前の時点で中断される。
【0063】
別の態様においては、現在請求されている発明は、既述のプロセスにより得られるN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンの使用であって、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]、1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン-イル)、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、N-ブチル-1-ブチルアミン、及びN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンの反応材料、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、及び1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-、2,4-ジクロロ-6-(4-モルホリニル)-1,3,5-トリアジンとのポリマーを調製するための使用に関する。
【0064】
現在請求されている発明は、以下の利点のうち1つ又は複数を提供する:
1.連続的ポスト水素化を伴うバッチ式水素化は、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを94%までの高い選択率で生じる。
2.ポスト水素化は、変換が65~99.5%である、中断されたバッチ式水素化から生じる供給水溶液と水を無含有の供給液の両方に使用できる。
3.更に、バッチ式水素化と連続的ポスト水素化との組み合わせは、精製ステップ(例えば、蒸留)を省いて、技術的且つ経済的に実現可能なプロセス条件を可能にし、その下流製品の透過率(T%)の値を改善した安定なN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン4-イル)ヘキサン1,6ジアミンを生成する。
4.更に、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンの製造プロセスは、供給材料の融点が部分的にかなり低い(即ち、中断された水性のN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミン供給材料では室温以下)ため、チュープ反応器の目詰まりが回避され、簡単で安全な水素化処理を実施することができるので、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンの従来の合成と比較するとかなり実現可能である。
【0065】
以下において、現在請求されている発明の具体的な実施形態を説明する:
1.N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを調製するプロセスであって、そのプロセスは:
i. 2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンを1,6-ヘキサメチレンジアミンでイミン化して、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を含む第1の混合物を得るステップ;
ii. 第1の混合物のN,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を水素化して、50~99.5重量%のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを含む水素化した第2の混合物を得るステップ;及び
iii. 第2の混合物を固定床反応器で連続的水素化して、N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを得るステップ
を備える。
2.ステップ(i)で調製した第1の混合物が、3~7重量%の範囲の含水量を含む実施形態1に記載のプロセス。
3.2重量%未満の含水量を有するように、第1の混合物から水を除去するステップを更に備える実施形態1又は2に記載のプロセス。
4.1重量%未満の含水量を有するように、第1の混合物から水を除去するステップを更に備える実施形態1~3のいずれか1つに記載のプロセス。
5.2重量%未満の含水量を有するように、第2の混合物から水を除去するステップを更に備える実施形態1~4のいずれか1つに記載のプロセス。
6.1重量%未満の含水量を有するように、第2の混合物から水を除去するステップを更に備える実施形態1~5のいずれか1つに記載のプロセス。
7.ステップ(ii)での水素化が、バッチ技術を用いて実施される実施形態1~6のいずれか1つに記載のプロセス。
8.ステップ(ii)において、第2の混合物が、65~95重量%のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを含む実施形態1~7のいずれか1つに記載のプロセス。
9.ステップ(ii)での水素化が、少なくとも1つの第1の遷移金属を用いて触媒される実施形態1~8のいずれか1つに記載のプロセス。
10.第1の遷移金属が、銅、ニッケル、コバルト、ルテニウム、プラチナ、及びパラジウムから選択される実施形態9に記載のプロセス。
11.第1の遷移金属がプラチナである実施形態8又は10に記載のプロセス。
12.ステップ(iii)の連続的水素化が、少なくとも1つの第2の遷移金属を用いて触媒される実施形態1~6のいずれか1つに記載のプロセス。
13.第2の遷移金属が、銅、ニッケル、コバルト、ルテニウム、プラチナ、及びパラジウムから選択される実施形態12に記載のプロセス。
14.遷移金属が、パラジウムである実施形態12又は13に記載のプロセス。
15.水素化ステップ(ii)及びステップ(iii)における水素の圧力が、1~200バールの範囲である実施形態1~14のいずれか1つに記載のプロセス。
16.水素化ステップ(ii)及びステップ(iii)における水素の圧力が、5~100バールの範囲である実施形態1~15のいずれか1つに記載のプロセス。
17.水素化ステップ(ii)及びステップ(iii)における水素の圧力が、5~35バールの範囲である実施形態1~16のいずれか1つに記載のプロセス。
18.ステップ(i)~ステップ(iii)の温度が、60~200℃の範囲である実施形態1~17のいずれか1つに記載のプロセス。
19.ステップ(i)~ステップ(iii)の温度が、80~180℃の範囲である実施形態1~18のいずれか1つに記載のプロセス。
20.ステップ(iii)で得られるN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンが、90~400の範囲のAPHA値を有する実施形態1~19のいずれか1つに記載のプロセス。
21.1,6-ヘキサメチレンジアミンの2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンに対するモル比が、0.1:5~5:0.1の範囲である実施形態1~20のいずれか1つに記載のプロセス。
22.1,6-ヘキサメチレンジアミンの2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンに対するモル比が、1:5~5:1の範囲である実施形態1~21のいずれか1つに記載のプロセス。
23.1,6-ヘキサメチレンジアミンの2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンに対するモル比が、1:2~2:1の範囲である実施形態1~22のいずれか1つに記載のプロセス。
24.1,6-ヘキサメチレンジアミンの2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンに対するモル比が、1:1.98の範囲である実施形態1~23のいずれか1つに記載のプロセス。
25.ステップ(iii)において水素のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンに対するモル比が、0.5:0.1~40:5の範囲である実施形態1~24のいずれか1つに記載のプロセス。
26.ステップ(iii)において水素のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンに対するモル比が、1:1~40:1の範囲である実施形態1~25のいずれか1つに記載のプロセス。
27.ステップ(iii)において水素のN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンに対するモル比が、1.5:1~35:1の範囲である実施形態1~26のいずれか1つに記載のプロセス。
28.実施形態1~27のいずれか1つに記載のプロセスにより得られたN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンの使用であって、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]、1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン-イル)、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、N-ブチル-1-ブチルアミン、及びN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンの反応材料、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミン、及び1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-、2,4-ジクロロ-6-(4-モルホリニル)-1,3,5-トリアジンとのポリマーを調製するための使用。
【0066】
以下の実施例は、本発明をより詳細に例証する。全ての百分率及び部は、特に明記しない限り、重量によるものである。
【実施例
【0067】
略語
2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オンを「TAA」と略記する;
N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イミン)を「HMBTADジイミン」と略記する;
N,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを「HMBTADアミン又はHMBTAD」と略記する;
N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを「HMTAD」と略記する;
N-イソプロピル-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンを「IPHMTAD」と略記する;
1,6-ヘキサメチレンジアミンを「HMDA」と略記する;及び
LHSVは、液空間速度を略記したものであり、kgFeed/Lcat*hで示される。
【0068】
分析方法
選択率をGC面積%として求め、MSにより確認し、更にH-又は13C-NMR解析からも取得した。
【0069】
実施例1:本発明のプロセスを用いるN,N-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミン(HMBTAD)の調製
ステップ(i)及び(ii):ケチミン生成及び中断されるバッチ式水素化
【化1】
1,6-ヘキサンジアミン(157g、1.35モル、1.0当量)を、60℃で撹拌した2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン(423g、2.68モル、1.98当量)に10分以内に添加した。次に溶液を80℃まで加熱し、その温度で反応の水(55~75重量%)を減圧(50ミリバール)で除去した。次に、ケチミン溶液をオートクレーブバッチ反応器に移し、Pt/C触媒(1.1g)を加えた。水素化は、80℃で実施し、5~30バールの最大圧力の水素ランプで、最大105℃まで上昇させた。GC又はH-NMR又は水素の消費によりモニターしながら、65~99.5%の変換に到達するまで反応時間を1~6時間維持した。次に、熱時濾過により触媒を生成物から単離した。
【0070】
解析的分析:
H-NMR(500MHz,CDCl):δ=3.31(t,J=6Hz,2H),2.77-2.74(m,1H),2.63-2.57(m,4H),2.28-2.18(m,6H),1.83-1.80(m,2H),1.75-1.01(m,28H),0.87(m,3H)ppm.
13C-NMR(125MHz,CDCl):δ=169.9,54.0,53.9,51.8,50.9,50.7,49.9,46.7,46.2,41.7,35.1,31.7,31.5,31.0,30.5,28.6,27.6,27.4 ppm
GC-分析(30m×0.32mm×1.5μmのRTX5アミンカラム;注入温度120℃で、その後10℃/分で280℃まで加熱して、この温度で44分保持した):Rt=7.20(HMDA)、7.75(TAA)、16.65(HMTAD)、18.27(IPHMTAD)及び35.06(HMBTAD)ミン(min)、MSにより確認
【0071】
ポスト水素化のための無水のHMBTAD供給材料の調製
HMBTADアミンを60%の量で含有する上述の中断されたバッチ式水素化(ステップ(i)及び(ii))からの暗黄色材料を、蒸留(30理論段階の100×3cmのSulzer DXカラム)を介して、60~70℃で、圧力を100ミリバールから12ミリバールに上昇させながら、水及びライトボイラーから除去した。水、アセトン及び微量のTAAを含有する出発材料の質量の3~20重量%を除去し、更なる反応に使用する淡黄色の残留物を残した。
【0072】
ステップ(iii):水性及び無水HMBTAD供給材料による中断したバッチのポスト水素化
異なるHMBTADアミン供給材料及び異なる遷移金属触媒(固体担体上の固定床)を用いて、異なる圧力及び特定の温度範囲内で、ポスト水素化を実施した。
【0073】
ステップ(iiia):水性HMBTAD供給材料及び[Pd]触媒でのポスト水素化
内部サーモウェルを備えたモノライナー反応器において、水性HMBTADアミン供給材料(12重量%HMBTADアミン及び5重量%HOを含む)を水素ガスと共に、活性金属としてPd(通常は0.1~1.0、本明細書においては0.7%)からなる固体担体(例えば:Alなど)上の固定床触媒(114g)上に連続的に導いた。圧力は、30バールで、温度は、100℃~180℃の間で変わり、好ましくは150℃であった。HMBTADアミン供給材料を0.5~1.0kgFeed/Lcat*hのLHSVで反応器に供給した。反応器の後で粗生成物を回収し、純液体として得た。続いて、混合物中の残留揮発性物質を180℃及び10ミリバールで除去して淡黄色の液体を得て、室温で静置すると結晶化してオフホワイトの固体生成物となり、APHA値は262(DIN-ISO6271)であった。生成物混合物中のHMBTAD及び副成分の選択性は、GCで分析され、面積%で示され、更に条件に依存する。生成物混合物中のHMBTAD及び副成分の量を表1、2、3及び4に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
ステップ(iiib):無水HMBTAD供給材料及び[Pd]触媒でのポスト水素化
内部サーモウェルを備えたモノライナー反応器において、無水のHMBTADアミン供給材料(68重量%のHMBTADアミン及び0.5重量%のHOを含む)を水素ガスと共に、活性金属としてPd(通常は0.1~1.0、本明細書においては0.7%)からなる固体担体(例えば、Alなど)上の固定床触媒(115g)上に連続的に導いた。圧力は、10~80バールの範囲、好ましくは30バールで、温度は、100℃~180℃の間で変わり、好ましくは130℃であった。HMBTADアミン供給材料を1.0~1.6kgFeed/Lcat*hのLHSVで反応器に供給した。反応器の後で粗生成物を回収し、純液体として得た。続いて、混合物中の残留揮発性物質を180℃及び10ミリバールで除去して淡黄色の液体を得て、室温で静置すると結晶化してAPHA値126(DIN-ISO6271)を有するオフホワイトの固体生成物となった。生成物混合物中のHMBTAD及び副成分の選択性は、GCで分析され、面積%で示され、更に条件に依存する。生成物混合物中のHMBTAD及び副成分の量を表5、6、7及び8に示す。
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
【表7】
【0082】
【表8】
【0083】
ステップ(iiic):無水HMBTAD供給材料及び他の遷移金属触媒でのポスト水素化
内部サーモウェルを備えた管型反応器において、無水HMBTADアミン供給材料(68重量%のHMBTADアミン及び0.5重量%のHOを含む)を水素ガスと共に、活性金属としてCo、Ni及びCuからなる固体担体(Al)上の固定床触媒(500mL)上に連続的に導いた。圧力は、30バールで、温度は、130℃~150℃の間で変わる。HMBTADアミン供給材料を0.55~0.8kgFeed/Lcat*hのLHSVで反応器に供給した。反応器の後で粗生成物を回収し、純液体として得た。続いて、混合物中の残留揮発性物質を180℃及び10ミリバールで除去して淡黄色の液体を得て、APHA値(DIN-ISO6271)181及び379を有するオフホワイトの固体生成物を得た。生成物混合物中のHMBTAD及び副成分の選択性は、GCで分析され、面積%で示され、更に条件に依存する。HMBTADアミン供給材料が活性金属種としてAl担体上に[Ni]及び[Co]を含有する固定床触媒上を通過した場合の生成物混合物中のHMBTAD及び副成分の量を表9に示す。
【0084】
【表9】
【0085】
【表10】
【0086】
HMBTADアミン供給材料が活性金属種としてAl担体上に[Cu]を含有する固定床触媒上を通過した場合の生成物混合物中のHMBTAD及び副成分の量を表11に示す。
【0087】
【表11】
【0088】
【表12】
【0089】
ステップ(iiid):[Pd]触媒を用い、欧州特許第0508940号明細書により調製した蒸留HMBTADのポスト水素化
内部サーモウェルを備えた管型反応器において、欧州特許第0508940号明細書により調製した、事前蒸留したHMBTADアミン(91重量%のHMBTADアミン及び0.1重量%未満のHOを含む)を150NL/時(HのHMBTADに対するモル比17:1)の水素ガスと共に、活性金属としてPd(0.3%)及びAg(0.1%)からなる固体担体(Al)上の固定床触媒(500mL)上に連続的に導いた。圧力は30バールで、温度は、115℃の間であった。HMBTADアミン供給材料を0.3-0.4kgFeed/Lcat*hのLHSVで反応器に供給した。反応器の後で粗生成物を回収して無色の純液体として取得し、これを室温で静置して、GC面積%93超のHMBTAD、GC面積%1のHMTAD、及びGC面積%4のIPHMTADを含むAPHA値153(DIN-ISO6271)を有するオフホワイトの固体生成物に結晶化した。
【0090】
比較例1:TAA及びHMDAから出発する完全な連続的水素化処理(欧州特許第0857719号明細書及び米国特許5945536号明細書による)並びに続いての蒸留によるHMBTADの調製
欧州特許第0857719号明細書及び米国特許5945536号明細書に記載されるように、TAA及びHMDA(50重量%のTHF溶液として)を、内部サーモウェルを備えた管型反応器における100NL/時の水素ガスと共に、2:1のモル比で、活性金属としてPd(0.7%)からなる固体担体(Al)上の固定床触媒(500mL)上に連続的に導いた。圧力は180バールで、温度は、115℃であった。HMBTADアミン供給材料を0.3~0.4kgFeed/Lcat*hのLHSVで反応器に供給した。反応器の後で粗生成物を回収して濃橙色の液体として取得し、これを室温で静置して、GC面積%87.8のHMBTAD、GC面積%3.2のHMTAD、及びGC面積%0.4のIPHMTADを含むAPHA値703(DIN-ISO6271)を有する橙色固体生成物に結晶化した。粗生成物を、水の除去のために90℃で開始し圧力を100ミリバールから6ミリバールに傾斜させながら、温度を240℃まで上昇させた分別蒸留(25~30理論段階を有する100×4.2cmのSulzer DXカラム)により粗生成物を精製した。APHA値190(DIN-ISO6271)を有する標的分子HMBTADアミン(6ミリバールでの沸点225℃)を84%の収量において99%超の純度で得た。
【0091】
比較例2:蒸留しないで、バッチ式水素化(欧州特許第0508940号明細書)によるHMBTADの調製
欧州特許第0508940号明細書によると、1,6-ヘキサンジアミン(157g、1.35モル、1.0当量)を、撹拌した2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン(423g、2.68モル、1.98当量)に60℃で10分以内に添加した。次に溶液を80℃まで加熱して、その温度で反応水(55~75重量%)を減圧(50ミリバール)で除去した。次に、ケチミン溶液をオートクレーブバッチ反応器に移し、Pt/C触媒(1.1g)を加えた。水素化は、80℃で実施し、5~30バールの最大圧力の水素ランプで、最大105℃まで上昇させた。GC又はH-NMR又は水素の消費によりモニターして、99.5%の変換に達するまで反応時間を12時間維持した。次に、熱時濾過により触媒を生成物から単離した。続いて、混合物中の残留揮発性物質を180℃及び10ミリバールで除去して淡黄色の液体を得て、室温で静置すると結晶化してAPHA値220(DIN-ISO6271)を有するオフホワイトの固体生成物となった。
【0092】
温度上昇でのHMBTADを保管する前後の品質と色のアッセイ
DIN-ISO6271に従って、生成物の色指数をキュベット内のHach Lico620装置によりそのままで溶解せずに測定した。生成物を60℃、窒素下で数日保管し、特定の期間内に色指数を検出した。結果を以下の表13にそれらのAPHA値で示す:
【0093】
【表13】
【0094】
表13から、欧州特許第0508940号明細書のバッチプロセスに従って調製したHMBTADが長期間安定ではなく、僅か20日以内に非常に急速に暗くなる傾向があることは明らかであるが、本発明のプロセスに従って調製したHMBTADは、同等の色指数又はかなり良好な色指数で得られ、時間の経過と共に僅かに劣化しただけである。昇温で長期間にもかかわらず、本出願のHMBTADは、水性供給材料で開始した場合、及び非水性供給材料で開始した場合、その品質が非常に安定している。
【0095】
実施例2:ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル]-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]-ヘキサメチレン-[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]の調製及びその透過率(T%)のアッセイ
1リットルのガラス反応器において、HMBTADアミン(186g、0.47モル、1.1当量)を80℃で溶融した。NaOH(HO中で30%、67g、0.50モル、1.15当量)を30gの水と共に加えた。CN108623566号明細書又は米国特許第6407254号明細書により調製しキシレンに溶解した2,4-ジクロロ-6-(1,1,3,3-テトラメチルブチルアミノ)-1,3,5-トリアジン(282g、0.43モル、1.0当量)を90℃で温度を維持し1時間以内に、滴下ロートを介して投入した。反応混合物を95℃で30分間撹拌した。反応が完了した後、水性相を分離して反応をクエンチした。次に、キシレン溶液を1リットルのオートクレーブに移し、NaOH(HO中で30%、69g、0.49モル、1.13当量)で処理し、9バールの圧力で180℃まで加熱して、この温度で4時間保った。その後、1時間以内にスラリーを85℃まで冷却した。次に、反応混合物をグラスライニング反応器に移し、キシレン(134g)で希釈し、NaHCO水溶液(HO中で10%、70g)で洗浄した。混合物を95℃で0.5時間撹拌して、水性相を分離し、有機相を90℃で濾過した。溶媒を減圧下、200℃で除去して、白色又は淡黄色の固体生成物を得た。透過率の値を10重量%のトルエン溶液として425nmで検出し、以下の表14で示す:
【0096】
【表14】
【0097】
実施例3:N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミンの調製及びその色指数(APHA)のアッセイ
米国特許第20100160637号明細書(実施例6)に従って、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-N,N’-ジホルミルヘキサメチレンジアミンを調製した。40mlのホルムアミドと170gのN,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ヘキサン-1,6-ジアミンとを60mlのキシレンに加えた。20mlの酢酸を加え、混合物を不活性雰囲気下で還流温度まで加熱した。10時間の反応時間後、反応混合物をおよそ90℃~95℃まで冷却し、40mlの水を撹拌しながら流入させた。その後、更なる撹拌をしながら、過剰なホルムアルデヒドをクエンチするのに十分な水酸化ナトリウム水溶液を添加した。反応混合物を再び還流して、キシレンを共沸留去した。その後、混合物をおよそ60℃まで冷却し、水を加え、得られた固体生成物の残渣を分離した。生成物の残渣を水で十分に洗浄した後、乾燥させた。乾燥することにより、表15に示すように、出発材料HMBTADの品質に応じて、特定の収率、化学純度及び色指数における生成物を得る。色指数の仕様は、最大で200APHAであった。
【0098】
【表15】
【0099】
実施例4:1,6-ヘキサンジアミン、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジン-イル)、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、N-ブチル-1-ブチルアミン、及びN-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミンの反応材料の調製及び透過率(T%)のアッセイ
欧州特許第0782994号明細書(実施例10)に記載される手順に従って、N-ブチル-4,6-ジクロロ-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-アミンのキシレン溶液(387g、0.32モル、それは、前述の特許文献又は米国特許第4086204号明細書又はCN107033127号明細書に従って調製される、純度99%を超える市販の塩化シアヌル)を50℃で1リットルのガラス反応器内で撹拌した。溶融したN,N’-ビス[2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル]ヘキサメチレンジアミン(HMBTAD)(66.8g、0.17モル)と水(45g)との混合物を滴下ロートを用いてゆっくり添加した。20%の混合物を添加したら、別の滴下ロートを用いて30%のNaOH(45.6g、0.34モル)溶液を投入した。2つの滴下は同時に終了した。全体の手順は2時間で行われ、その際、温度は80℃まで上昇した。この後、反応混合物を85℃で更に30分間攪拌した。その後、攪拌機を停止し、水相を分離した。およそ50%(344g、0,17モル)の濃度に達するように、キシレン溶液をロータリーエバポレーター(80℃、80ミリバール)で濃縮した。その後、混合物をHMBTAD(126g、0,32モル)、NaOHの30%溶液(46g、0.34モル)及び水(18g)と共にオートクレーブに移した。反応生成物を175℃及び9バールの圧力まで加熱して、この温度を4時間保持した後、1時間で85℃まで冷却した。反応混合物をガラス反応器に移し、キシレン(152g)で希釈して、洗浄用に10%のNaHCO溶液(63g)を添加した。95℃で撹拌の15分後、混合物を85℃まで冷却し、水性相を分離した。反応は、以下のステップにおいて標準の手順に従って進行する。透過率の値は、10%のトルエン溶液において425nmで検出され、以下の表16に示す:
【0100】
【表16】
【国際調査報告】