(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】JAK媒介性障害の治療に使用するためのLORPUCITINIB
(51)【国際特許分類】
A61K 31/437 20060101AFI20240226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240226BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240226BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240226BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240226BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
A61K31/437
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P1/00
A61K45/00
A61K39/395 P
G01N33/50 P
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555261
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2022056018
(87)【国際公開番号】W WO2022189496
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397060175
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌ.ベー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】アティエ,エドワード エフ
(72)【発明者】
【氏名】バックマン,カーチス イー
(72)【発明者】
【氏名】チャウ,ジェラルド シー
(72)【発明者】
【氏名】コウドリアコバ,タチアナ
(72)【発明者】
【氏名】ポリドリ,デイヴィッド シー.
(72)【発明者】
【氏名】ボルツィロ,ゲイリー ブイ.
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC201
4C084ZC202
4C085AA14
4C085BB22
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA66
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
全身毒性の低いJAK阻害剤が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本開示は、大腸がん及び家族性腺腫性ポリポーシスを含む胃腸系がんなどのJAKによって媒介される疾患状態、障害、及び状態を治療するための方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家族性腺腫性ポリポーシスに罹患している対象を治療又は予防する方法であって、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
胃腸系がんに罹患している対象を治療又は予防する方法であって、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項3】
大腸がんに罹患している対象を治療又は予防する方法であって、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項4】
高リスク群にある対象における家族性腺腫性ポリポーシス又は大腸がんを予防する方法であって、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項5】
対象における大腸がん又は家族性腺腫性ポリポーシスを治療する方法であって、
(a)KRAS、TP53、EGFR、STK11(LKB1)、PTEN、BMPR1A、SMAD4(MADH/DPC4)、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、EPCAM、MUTYH(MYH)、POLD1、POLE、及びAPCから選択される1つ以上の遺伝子における変異を決定することと、
(b)治療有効用量の式Iの化合物を投与することと、
を含む、方法。
【請求項6】
対象において、該対象が大腸がん又は家族性腺腫性ポリポーシスを発症するリスクが高いかどうかを診断する方法であって、(a)KRAS、EGFR、STK11(LKB1)、PTEN、BMPR1A、SMAD4(MADH/DPC4)、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、EPCAM、MUTYH(MYH)、POLD1、POLE、TP53、及びAPCから選択される1つ以上の遺伝子における変異を決定することと、
(b)治療有効用量の式Iの化合物を投与することと、
を含む、方法。
【請求項7】
治療を必要とする対象におけるJAKの阻害によって影響を受ける障害又は状態を予防する方法であって、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形を投与することを含む、方法。
【請求項8】
前記治療有効量の式Iの化合物が、約10mg~約1000mgである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法、
【請求項9】
前記治療有効量の式Iの化合物が、約1mg~約100mgである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法、
【請求項10】
前記式Iの化合物が、1日1回投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記式Iの化合物が、1日2回投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、以前に療法を受けているか、又は現在療法を受けている、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記療法が、手術、放射線療法、化学療法。NSAID、Cox-2阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、及びチェックポイント阻害剤であり得る、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記式Iの化合物と組み合わせて第2の活性薬剤を投与することを更に含み、前記第2の活性薬剤が、NSAID、Cox-2阻害剤、セツキシマブ(cetuximab)、パニツムマブ(panitumumab)、ベバシズマブ(bevacizumab)、Ziv-アフリベルセプト(Ziv-aflibercept)、レゴラフェニブ(regorafenib)、ラムシルマブ(ramucirumab)、イピリムマブ(ipilimumab)、ニボルマブ(nivolumab)、及びペムブロリズマブ(pembrolizumab)から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
式Iの化合物に対する応答の予測を、それを必要とする対象において行う方法であって、
(a)式Iの化合物に曝露されていない対象の対照サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(b)式の化合物に曝露されている対象の試験サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(c)(a)における前記pSTAT-3のレベルを(b)と比較することと、
を含み、
(b)における前記pSTAT-3のレベルの減少が、前記対象における前記式Iの化合物に対する応答を予測する、
方法。
【請求項16】
進行中のJAK阻害剤療法の有効性のモニタリングを、それを必要とする対象において行う方法であって、
(a)式Iの化合物に曝露されていない対象の対照サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(b)式の化合物に曝露されている対象の試験サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(c)(a)における前記pSTAT-3のレベルを(b)と比較することと、
を含み、
(b)における前記pSTAT-3のレベルの減少が、前記対象における式Iの化合物の有効性を示す、
方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法において使用するための、式Iの化合物。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法のための医薬品を製造するための、式Iの化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月11日に出願された米国特許仮出願第63/159,726号、2021年3月29日に出願された米国特許仮出願第63/167,287号、及び2021年8月12日に出願された米国特許仮出願第63/232,356号に対する優先権を主張するものであり、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、JAK阻害剤の使用方法及びかかる阻害剤を含む薬学的組成物に関する。この化合物及び薬学的組成物は、JAKによって媒介される疾患状態、障害、及び状態を予防又は治療するために有用であると想定される。
【背景技術】
【0003】
報告によれば、女性の約3人に1人、男性の約2人に1人が、がんと診断され、約4人に1人が、がんで死亡する。A.Albini,et al.,Clin.Cancer Res.22(17),4322-27(2016)「Cancer prevention and interception:A new era for chemopreventive approaches」を参照されたい。胃腸管の以下の臓器において、かなりの数のがんが発生する:胃、小腸、結腸、直腸、及び肛門。胃がん(stomach cancer)又は胃がん(gastric cancer)は、最も一般的ながんのランキングにおいて4番目であり、世界的ながん死亡率のランキングにおいて2番目であると報告されている。G.Bjelakovic,et al.,The Cochrane Database of Systematic Reviews(3):CD004183(2008)「Antioxidant supplements for preventing gastrointestinal cancers」。報告によれば、小腸がんは、米国において年間9,000人が罹患している。報告によると、米国では、年間22,000件を超える胃がんが診断されている。報告によると、米国では、年間約145,000例の結腸がん症例が診断されている。報告によると、米国では、年間40,000件を超える直腸がんが診断されている。これらのがんのうち、大腸がん(colorectal cancer、「CRC」)として知られる結腸又は直腸に影響を及ぼすがんは、米国において年間180,000件を超える症例を占める。米国がん協会(American Cancer Society)によれば、2018年に米国で140,250件の大腸がんによる新たな症例が診断されると予想され、2018年に米国で50,600件の大腸がんによる死亡が起こると予想される。胃、小腸、及び大腸(後者は、大腸、直腸、及び肛門を含む)は、本明細書では胃腸系(stomacho-intestinal system、「SIS」)と総称され、そのような器官のいずれかにおけるがんは、胃腸系がん(stomacho-intestinal system cancer、「SISC」)と称される。SISCの発症(特に、CRCの発症)を予防することは、その初発時に関してであれ、再発段階であれ、医学ニーズが満たされていない。この予防措置は、本明細書において、大腸がんの阻止に言及する場合、SISC阻止又はCRC阻止と称される。
【0004】
FAPは、最も一般的な腺腫性ポリポーシス症候群である。これは、結腸全体にわたる数百から数千の腺腫性ポリープの早期発症を特徴とする常染色体優性遺伝性障害である。治療せずに放置すると、この症候群を有するほぼ全ての患者が35~40歳までに結腸がんを発症する。予防的結腸切除が標準治療であるが、患者は依然として十二指腸及び直腸ポリープの悪性形質転換のリスクがある。非選択的及び選択的シクロオキシゲナーゼ阻害剤(例えば、スリンダク又はセレコキシブ)の両方を用いた複数の研究により、抗炎症剤が大腸腺腫性ポリープの形成を阻害できることが示されている。(R.K.S.Phillips,et al.Gut50,857-860(2002)「A randomized,double blind,placebo controlled study of celecoxib,a selective cyclooxygenase2 inhibitor,on duodenal polyposis in familial adenomatous polyposis」、P.Rice,et al.Cancer Res.63,616-620(2003)「Sulindac sulfide inhibits epidermal growth factor-induced phosphorylation of extracellular-regulated kinase 1/2 and Bad in human colon cancer cells」)。これらの薬剤に関連する毒性は、それらの更なる開発を妨げてきた。FAPを有する個体において、ポリープ負荷を低減し、結腸切除の必要性を遅延又は排除し、腺がんの発症を阻止するための新たな治療選択肢に対する高いニーズが満たされていない。FAPを有する患者由来のポリープ並びに散発性CRCをもたらすポリープは、インターロイキン(interleukin、IL)-23/IL-17/ヤヌスキナーゼ(Janus kinase、JAK)/転写STAT3経路のシグナル伝達因子及び活性化因子に関連する炎症を示す。正常に見える隣接する非腺腫性上皮及びその周囲の免疫と比較して、腺腫の上皮は、著しく増加した免疫浸潤を伴う。この浸潤は、IL-17及びp-STAT3発現によって示されるSTAT3経路の活性化を特徴とする。加えて、腺腫性上皮自体が局所的に活性化され得る。高度の異形成を伴う腺腫は、より多くの活性化されたIL-17及びp-STAT3免疫浸潤、並びにより広く分布した上皮p-STAT3の発現を示す場合がある。これらの知見は、この炎症経路が更なる変異誘発及び腫瘍発生をもたらすことを示唆する。免疫及び上皮STAT3の活性化の両方が、マウスモデルにおいて腫瘍形成に寄与することも報告されている。E.C.Wick,et al.,Inflamm.Bowel Dis.20(5),821-34(2014)「Stat3 activation in murine colitis induced by enterotoxigenic Bacteroides fragilis」。具体的には、IL-23は、CRCにおける腫瘍の増殖及び進行に関連しており、高度の異形成を伴う腺腫は、IL-17A及びリン酸化STAT3のレベルの上昇を示した。(J.L.Langowski,et al.Nature442(7101),461-465(2006)「IL-23 promotes tumour incidence and growth」)。胃腸管における過剰な炎症応答は、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor、TNF)、インターフェロン-ガンマ(interferon-gamma、IFNγ)、IL-1、IL-6、IL-12、IL-21、及びIL-23などの炎症性サイトカインによって媒介され、これらは、Tリンパ球及びBリンパ球、上皮細胞、マクロファージ、及び樹状細胞(dendritic cell、DC)を含む自然免疫系及び適応免疫系の細胞に対してそれらの効果を発揮する(上で引用したM.Coskun,et al.,Pharmacological Research76,1-8(2013)、S.Danese,et al.Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol.310,G155-162(2016)「JAK inhibition using tofacitinib for inflammatory bowel disease treatment:a hub for multiple inflammatory cytokines」、Neurath M.Nat.Rev.Immunol.14,329-342(2014)「Cytokines in inflammatory bowel disease」、S.Vermeire,et al..Gastroenterology150,S1267(2016)「Filgotinib(GLPG0634),an Oral JAK1 Selective Inhibitor,Induces Clinical Remission in Patients With Moderate-to-Severe Crohn’s Disease:Results From the Phase2 FITZROY Study Interim Analysis[DDW abstract812c]」)。JAKファミリーであるJAK1、JAK2、JAK3、及びTyk2は、多くのそのようなサイトカインに対する応答において中心的な役割を果たす非受容体チロシンキナーゼである(J.O’Shea,N.Engl.J.Med.368,161-170(2013)「JAKs and STATs in immunity,immunodeficiency,and cancer」)。受容体ライゲーションに続いて、会合したJAKホモ又はヘテロ二量体は、リン酸化及び活性化され、その後のSTATファミリーの転写因子の動員、リン酸化、及び活性化を可能にする。リン酸化されたSTATは、核に移行し、FAPの病因に関与するいくつかのケモカイン、サイトカイン、及びプロテアーゼの遺伝子転写を誘導する(上で引用したM.Coskun,et al.,Pharmacological Research76,1-8(2013))。このJAK-STAT経路は、GIがんの病因において役割を果たす多くのサイトカインのシグナル伝達機構である。(M.Li,et al.PLoS One10(5),e0127356(2015)「Prognostic role of phospho-STAT3 in patients with cancers of the digestive system:a systematic review and meta-analysis」)。JAK-STAT経路は、複数の炎症性サイトカイン応答に共通であり、したがって、それは、FAPに関連する過剰な炎症応答及び散発性CRCに関連する腺腫を予防するための、並びにGI管における腺がんの発症を阻止しようと試みるために粘膜恒常性を回復させるための魅力的な治療標的を提供する。研究用及び市販の経口投与された全身的に生体利用可能な汎JAK阻害剤は、上昇した脂質(低密度及び高密度リポタンパク質)及び血球減少(好中球減少、リンパ球減少、及び貧血症を含む)、並びに上昇した肝酵素などの、高い(より高い)用量を明らかに制限する様々なオフターゲット効果を有する。したがって、腸管に限定された曝露を伴うJAKの治療的阻害は、FAP、SISC、及びCRCを含む腸管のJAK駆動性疾患において有効性を達成する機会を提供する。
【0005】
図1を参照すると、経口投与された薬剤は、原則として、口から食道(1)へ、胃(2)へ、十二指腸(3)を通って空腸(4)へ、次に回腸(5)へ、そして次に結腸(6)へ、胃腸管を追うことができる。このような様々な部分の相対的な吸収面積は、空腸(4)で約60%、回腸(5)で約26%、及び結腸(6)で約13%である。これら様々な胃腸管領域を通す吸収は、全身性分布の開始をもたらし得、それにより望ましくない副作用をもたらし得る。胃腸管は、非常に大きな表面積を有する。例えば、H.F.Helander,et al.,Surface area of the digestive tract-revisited,Scandinavian Journal of Gastroenterology49(6),681-89(2014)、及びK.J.Filipski,et al.,Intestinal Targeting of Drugs:Rational Design Approaches and Challenges Current Topics in Medicinal Chemistry13,776-802(2013)。そのような広範な吸収表面積は、腸管の様々な部分の壁を通って血流内に入ることができる物質の全身性分布に有利であり、ひいては全身に分布した物質の望ましくない副作用をもたらす可能性がある。全身性分布は、簡略化した図解目的用の結腸壁を貫通するものとして、
図1の破線矢印により示されるが、このような分布は結腸壁に限定されず、
図1に示す胃腸管の他の部分の壁、例えば小腸の壁を通じて生じることもまた、可能である。このような全身性分布は、胃腸路生理学を参照して発生することが知られており、また、このような破線矢印は単に、このような全身性分布を概略的に図示するように参照することが知られているため、
図1の破線矢印は、胃腸路を超えての全身性分布を表すこともまた、理解される。例えば、腸組織の記述、腸組織における輸送、及び代謝についての記載に関しては、上で引用したCurrent Topics in Medicinal Chemistry13,777-80(2013)を参照されたい。
【発明の概要】
【0006】
既知のJAK阻害剤の中には、全身的な効果に関連する副作用を有するものも存在するため、FAP、SISC、及びCRCを含む腸管の疾患の治療及び予防のための活性物質としての新しいJAK阻害剤を発見することが望ましい。
【0007】
全身毒性の低いJAK阻害剤が、本明細書に開示される。いくつかの態様では、本発明は、式Iの化合物によって表されるJAK阻害剤:
2-(1-((1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル)-1,6-ジヒドロイミダゾ[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アセトアミド、
【0008】
【化1】
又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形、並びにJAKによって媒介される疾患状態、障害、及び状態の治療において式Iの化合物を使用する方法を含む。「式Iの化合物」という用語は、式Iの化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は式Iの化合物の溶媒和物若しくはその薬学的に許容される塩、又は溶媒を含まない形態、又は本明細書で説明される水和形態及び/若しくは溶媒和形態のうちのいずれか1つである前述のいずれかの多形若しくは共結晶(以降、「式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形」)を包含することが意図される。式Iの化合物は、「活性薬剤(複数可)」とも称される。
【0009】
本発明の態様は、式Iの化合物、それを含有する薬学的組成物、それらをJAK阻害剤として使用する方法、及びJAKによって媒介される疾患状態、障害、状態の治療にそれらを使用する方法に関する。
【0010】
いくつかの態様では、胃腸系がん(SISC)の発症(特に、大腸がん(CRC)の発症)を治療又は予防する方法は、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0011】
いくつかの態様では、家族性腺腫性ポリポーシス(familial adenomatous polyposis、「FAP」)に罹患している対象を治療又は予防する方法は、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0012】
本発明の態様は、局所GI効果、及び低い又は無視可能な全身的な効果を有する、汎JAK阻害効果を示す。更に、このような特徴を有する本発明の態様を、経口投与することができる。
【0013】
以下の「発明を実施するための形態」から、及び本発明の実施を通して、本発明の追加の態様、特徴、及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ヒトの胃腸管の一部の概略図を示す(縮尺どおりではない引き伸ばされたレンダリングとして示されている)。十二指腸(3)、空腸(4)、及び回腸(5)(全て概略的に表示)は、胃(2)及び食道(1)の後の小腸を形成する。大腸は結腸(6)を含み、それにより、盲腸(7)及び虫垂(図示せず)、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸(環状、同様に図示せず)、並びに直腸(11)を含む。横行結腸は、右結腸曲(8)及び左結腸曲(9)の間に含まれる部分であり、上行結腸は盲腸(7)から右結腸曲(8)に延び、下行結腸は左結腸曲(9)から直腸(11)に延びる。便宜上、様々な分布パターンが結腸を参照にして図示されるが、これらはまた、胃腸管の他の部分も参照することができる。全身性分布は、簡略化した図解目的用の結腸壁を貫通するものとして、
図1の破線矢印により示されるが、このような分布は結腸壁に限定されず、
図1に示す胃腸管の他の部分の壁、例えば小腸の壁を通じて生じることもまた、可能である。他のいくつかの浸透による分布は、簡略化した図解目的のための結腸組織に透過するものとして、
図1に実線矢印により示されるが、
図1に示す胃腸管の他の部分の組織、例えば小腸組織でもまた生じることができるため、このような浸透は結腸組織に限定されない。本発明に従ったJAK阻害剤の実施形態の効果は、別様においては、炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease、「IBD」)又は大腸がんに関連する炎症などのJAKによって媒介される傷害をもたらすであろうJAK/STATシグナル伝達経路を破壊するものとして例示的に示される。
【
図2】式Iの化合物の実施形態の調製/相互変換を示す概略図である。
【
図3】式Iの化合物の以下の実施形態に関するハイスループットX線粉末回折(high throughput X-ray powder diffraction、HT-XRPD)パターンのオーバーレイ:下から上に、1s、2(1,4-ジオキサン中、室温で平衡により入手)、3b(シクロヘキサノン中、熱サイクリングにより入手)、1b+4(メタノール/水(50/50、v/v)中、μLスケールで冷却結晶化により入手)、5(クロロホルム中、熱サイクリングにより入手)、6(アセトニトリル中、mLスケールで冷却結晶化により入手)、7(1s+7を入手、それにより、ヘプタン中、溶媒平衡により入手)、7(1s+7の脱溶媒和により入手、それにより、ヘプタン中、溶媒平衡により入手)、8(サイクリング示差走査熱量測定により、実施形態5の脱溶媒和により入手)、及び9(サイクリング示差走査熱量測定により、実施形態2の脱溶媒和により入手)。
【
図4】式Iの化合物の以下の実施形態に関するハイスループットX線粉末回折(HT-XRPD)パターンのオーバーレイ:1s(出発物質)、1a(実施形態1sのサンプルのいくつかの形態を、加速エージング条件(accelerated aging condition、AAC)(40℃及び70%相対湿度)に曝露した後で入手)、1b(トルエン中、室温での溶媒平衡により入手)、1c(酢酸エチル/1,4-ジオキサン(50/50、v/v)中、μLスケールで冷却結晶化により入手)、1d(アセトニトリル/クロロホルム(50/50、v/v)中、μLスケールで冷却結晶化により入手)、1e(酢酸エチル/1,4-ジオキサン(50/50、v/v)中、μLスケールで冷却結晶化により入手)、1f(p-キシレン中、室温での溶媒平衡により入手)、1g(アニソール中、50℃での溶媒平衡により入手)、1h(p-キシレン中、μLスケールで冷却結晶化により入手)。
【
図5】式Iの化合物の以下の実施形態に関するハイスループットX線粉末回折(HT-XRPD)パターンのオーバーレイ:下から上に、1s、3b(シクロヘキサノン中、熱サイクリングにより入手)、3c(1,4-ジオキサン中、μLスケールで冷却結晶化により入手)、3d(テトラヒドロフラン中、μLのスクリーンで冷却結晶化により入手)、及び3e(イソブタノール中、熱サイクリングにより入手)。
【
図6】初期形態(「1s」)、40℃及び70%相対湿度に4日間曝露した後(「1s 70RH」)、並びに25℃及び100%相対湿度に4日間曝露した後(「10」)における、実施形態1sのHR-XRPDのディフラクトグラム。
【
図7A】実施形態11(A)、実施形態12(B)、実施形態13(C)、実施形態14(D)、及び実施形態11b(E)のX線粉末回折(XRPD)パターン。
【
図7B】実施形態11(A)、実施形態12(B)、実施形態13(C)、実施形態14(D)、及び実施形態11b(E)のX線粉末回折(XRPD)パターン。
【
図7C】実施形態11(A)、実施形態12(B)、実施形態13(C)、実施形態14(D)、及び実施形態11b(E)のX線粉末回折(XRPD)パターン。
【
図7D】実施形態11(A)、実施形態12(B)、実施形態13(C)、実施形態14(D)、及び実施形態11b(E)のX線粉末回折(XRPD)パターン。
【
図7E】実施形態11(A)、実施形態12(B)、実施形態13(C)、実施形態14(D)、及び実施形態11b(E)のX線粉末回折(XRPD)パターン。
【
図8】式Iの化合物の以下の実施形態に関するX線粉末回折(XRPD)パターンのオーバーレイ:下から上に、実施形態17、実施形態18、実施形態15、及び実施形態16。
【
図9】115度でガラス転移点(Tg)を示す、実施形態19に関する変調DSC(modulated DSC、「mDSC」)プロファイル。3℃(縦軸のラベルで「Rev」は「可逆(reversible)」を指す)。
【
図10A】(A)30℃~170℃で6.5%w/wの損失を示す、実施形態18のTGA(thermogravimeteric analysis:熱重量分析)。(B)45℃~90℃で52.8J/gの吸熱、140.6℃で31.0J/gの吸熱、168.8℃で24.3J/gの発熱、及び200.0℃で31.3J/gの吸熱を示す、実施形態18のDSC(differential scanning calorimetry:示差走査熱量測定)。
【
図10B】(A)30℃~170℃で6.5%w/wの損失を示す、実施形態18のTGA(thermogravimeteric analysis:熱重量分析)。(B)45℃~90℃で52.8J/gの吸熱、140.6℃で31.0J/gの吸熱、168.8℃で24.3J/gの発熱、及び200.0℃で31.3J/gの吸熱を示す、実施形態18のDSC(differential scanning calorimetry:示差走査熱量測定)。
【
図11】式Iの化合物の以下の実施形態に関するX線粉末回折(XRPD)パターンのオーバーレイ:下から上に、実施形態20及び実施形態21。
【
図12A】(A)30℃~100℃で4.2%w/wの喪失を示す、実施形態17のTGA。(B)45℃~100℃で90.3J/gの吸熱、143.8℃で35.5J/gの吸熱、168.3℃で1.6J/gの吸熱、178℃で3.8J/gの発熱、及び200.0℃で9.2J/gの吸熱を示す、実施形態17のDSC。
【
図12B】(A)30℃~100℃で4.2%w/wの喪失を示す、実施形態17のTGA。(B)45℃~100℃で90.3J/gの吸熱、143.8℃で35.5J/gの吸熱、168.3℃で1.6J/gの吸熱、178℃で3.8J/gの発熱、及び200.0℃で9.2J/gの吸熱を示す、実施形態17のDSC。
【
図13】式Iの化合物の以下の実施形態に関するX線粉末回折(XRPD)パターンのオーバーレイ:下から上に、実施形態31、実施形態30、実施形態17、実施形態29、実施形態16、実施形態26、実施形態25、実施形態18、実施形態24、実施形態23、実施形態27、及び実施形態22。
【
図14】式Iの化合物の以下の実施形態に関するX線粉末回折(XRPD)パターンのオーバーレイ:下から上に、実施形態32、実施形態33、実施形態23、実施形態34、実施形態35、実施形態36、実施形態25、実施形態38、実施形態17、実施形態39、及び実施形態28。
【
図15】式Iの化合物の以下の実施形態に関するX線粉末回折(XRPD)パターンのオーバーレイ:下から上に、実施形態46、実施形態45、実施形態44、実施形態43、実施形態42、実施形態41、実施形態40、及び実施形態37。
【
図16】式Iの化合物の実施形態に関するX線粉末回折(XRPD)パターンのオーバーレイ:下から上に、実施形態53、実施形態52、実施形態51、実施形態50、実施形態49、実施形態48、及び実施形態47。
【
図17A】(A)155℃~185℃で4.7%w/wの喪失を示す、実施形態11のTGA。(B)溶媒喪失により167.8℃で57.8J/gの第1の吸熱を示し、サンプル溶融により194.5℃で90.8J/gの第2の吸熱を示す、実施形態11のDSC。
【
図17B】(A)155℃~185℃で4.7%w/wの喪失を示す、実施形態11のTGA。(B)溶媒喪失により167.8℃で57.8J/gの第1の吸熱を示し、サンプル溶融により194.5℃で90.8J/gの第2の吸熱を示す、実施形態11のDSC。
【
図18】0~90%RHで0.66%の質量変化を示す、実施形態11の重量測定による蒸気収着(Gravimetric Vapor Sorption、GVS)等温線プロット。縦軸の質量変化は、出発サンプルの質量を基準にする。
【
図19A】(A)260℃を超える温度での重量喪失を示す、実施形態6のTGA。この重量喪失は、サンプル分解に関連するものと解釈される。(B)サンプル溶融により194.4℃で95.8J/gの吸熱を示す、実施形態6のDSC。
【
図19B】(A)260℃を超える温度での重量喪失を示す、実施形態6のTGA。この重量喪失は、サンプル分解に関連するものと解釈される。(B)サンプル溶融により194.4℃で95.8J/gの吸熱を示す、実施形態6のDSC。
【
図20A】(A)40℃~240℃で1.4%w/wの喪失(0.07モルの1,4-ジオキサンの喪失に相当する)を示す、実施形態8のTGA。(B)サンプル溶融により199.7℃で58.6J/gの吸熱を示す、実施形態8のDSC。
【
図20B】(A)40℃~240℃で1.4%w/wの喪失(0.07モルの1,4-ジオキサンの喪失に相当する)を示す、実施形態8のTGA。(B)サンプル溶融により199.7℃で58.6J/gの吸熱を示す、実施形態8のDSC。
【
図21A】(A)75℃~110℃で7.4%w/wの喪失、110℃~130℃で11.9%w/w損失、130℃~165℃で2.0%w/wの喪失、及び165℃~210℃で2.5%w/wの喪失を示す、実施形態2のTGA。(B)92.8℃で86.2J/gの吸熱、111.5℃で11.1J/gの吸熱、149.0℃で45.5J/gの吸熱、165.2℃で20.6J/gの発熱、177.1℃で3.7J/gの吸熱、200.2℃で43.0J/gの吸熱、220.6℃で29.3J/gの吸熱を示す、実施形態2のDSC。
【
図21B】(A)75℃~110℃で7.4%w/wの喪失、110℃~130℃で11.9%w/w損失、130℃~165℃で2.0%w/wの喪失、及び165℃~210℃で2.5%w/wの喪失を示す、実施形態2のTGA。(B)92.8℃で86.2J/gの吸熱、111.5℃で11.1J/gの吸熱、149.0℃で45.5J/gの吸熱、165.2℃で20.6J/gの発熱、177.1℃で3.7J/gの吸熱、200.2℃で43.0J/gの吸熱、220.6℃で29.3J/gの吸熱を示す、実施形態2のDSC。
【
図22A】(A)実施形態9のTGA。(B)221.8℃で104.4J/gの吸熱を示す、実施形態9のDSC。
【
図22B】(A)実施形態9のTGA。(B)221.8℃で104.4J/gの吸熱を示す、実施形態9のDSC。
【
図23A】(A)30℃~105℃で5.2%w/wの喪失を示す、実施形態16のTGA。(B)35℃~90℃で48.4J/gの吸熱、147.0℃で41.8J/gの吸熱、166.6℃で1.0J/gの吸熱、180.7℃で4.4J/gの発熱、及び201.1℃で7.7J/gの吸熱を示す、実施形態16のDSC。
【
図23B】(A)30℃~105℃で5.2%w/wの喪失を示す、実施形態16のTGA。(B)35℃~90℃で48.4J/gの吸熱、147.0℃で41.8J/gの吸熱、166.6℃で1.0J/gの吸熱、180.7℃で4.4J/gの発熱、及び201.1℃で7.7J/gの吸熱を示す、実施形態16のDSC。
【
図24】実施形態11のX線粉末回折(XRPD)(「11」と表示)、及び可変温度(variable temperature、VT)-XRPD実験後の実施形態11のX線粉末回折(XRPD)(「11VT後」と表示)、及び実施形態6のX線粉末回折(XRPD)。
【
図25】形態1sの式Iの化合物のX線粉末回折(XRPD)パターン。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で使用される場合、「包含する」、「含有する」、及び「含む」という用語は、幅広い非限定的な意味で用いられる。
【0016】
本明細書で与えられるいかなる式も、その構造式によって描写される構造を有する化合物に加えて、特定の変種又は形態も表すことを意図する。特定の構造は、互変異性体として存在し得る。加えて、本発明のこのような化合物の非晶質形態、水和物、溶媒和物、多形、及び擬多形、並びにこれらの混合物もまた、本発明の一部として想定される。本発明の態様は、無溶媒形態、又は本明細書に例示されるような水和及び/若しくは溶媒和形態のうちのいずれか1つである。
【0017】
本明細書で使用される「約」という用語は、数値の直前にある場合、本開示の文脈が別段指示しない限り、又はそのような解釈と矛盾しない限り、その値のプラス又はマイナス10%の範囲を意味する(例えば、「約50」は45~55を意味し、「約25,000」は22,500~27,500を意味するなど)。
【0018】
「投与する」又は「投与される」又は「投与すること」という用語は、本開示を考慮して、当業者に周知の任意の方法(例えば、筋肉内、皮下、経口、静脈内、皮膚、粘膜内(例えば、腸内)、鼻腔内、又は腹腔内の投与経路)によって、式Iの化合物又はその医薬組成物を対象に投与することを指す。特定の態様では、本発明の医薬組成物は、対象に経口投与される。
【0019】
「対象」という用語は、本発明の実施形態による方法によって治療されるか、又は治療されている任意の動物、具体的には哺乳動物、最も具体的にはヒトを意味する。本明細書で使用される場合、「哺乳動物」という用語は、あらゆる哺乳動物を包含する。哺乳動物の例としては、これらに限定されるものではないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル又は類人猿などの非ヒト霊長類(non-human primate、NHP)、より具体的にはヒトが挙げられる。
【0020】
「阻害剤」(複数可)という用語は、JAKの発現又は活性を低減、防止、不活性化、脱感作、又は下方制御する化合物を指す。
【0021】
「治療有効量」という用語は、酵素若しくはタンパク質の減少若しくは阻害、若しくは症状の改善、疾患の緩和、疾患進行の遅延若しくは遅れ、又は疾患の予防を含む、研究者、獣医、医師、又は他の臨床専門家が得ようとする生物学的又は薬学的応答を組織系、動物又はヒトにおいて誘発する、本発明の結晶形態を含む活性化合物又は医薬品の量を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、任意の疾患、状態、症候群、又は障害を「治療する」、「治療すること」、又は「治療」という用語は、一実施形態では、疾患、状態、症候群、又は障害を改善すること(すなわち、疾患又はその臨床症状のうちの少なくとも1つの発症を遅らせるか又は抑えるか又は低減すること)を指す。別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、患者によって認識可能でない場合がある身体的パラメータを含む、少なくとも1つの身体的パラメータを緩和又は改善することを指す。更なる実施形態では、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、身体的(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的(例えば、身体的パラメータの安定化)、又はこれらの両方において、疾患、状態、症候群、又は障害を調節することを指す。更に別の実施形態では、「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、疾患、状態、症候群、又は障害の発現又は発症又は進行を予防する又は遅延させることを指す。
【0023】
「薬学的に許容される塩」は、無毒性であり、生物学的に耐容性であり、かつ別の方法で対象への投与に生物学的に適している、化合物の塩である。全般的には、S.M.Berge,et al.,「Pharmaceutical Salts」,J.Pharm.Sci.66,1-19(1977)、及びHandbook of Pharmaceutical Salts,Properties,Selection,and Use,Stahl and Wermuth,Eds.,Wiley-VCH and VHCA,Zurich,2002を参照されたい。式(I)の化合物は、十分に酸性の基、十分に塩基性の基、又は両方の種類の官能基を有し得ることから、多くの無機又は有機塩基、並びに無機及び有機酸と反応して薬学的に許容される塩を生成し得る。薬学的に許容される塩の例としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタン-スルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、及びマンデル酸塩が挙げられる。
【0024】
本明細書において、式Iの化合物の組成物、並びにJAKファミリーのチロシンキナーゼのうちの1つ以上によって媒介される疾患状態、障害、及び状態の治療においてそれらを使用する方法が開示される。いくつかの態様では、本方法は、有効量の式Iの構造を有する化合物:2-(1-((1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル)-1,6-ジヒドロイミダゾ[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)-N-(2-ヒドロキシ2-メチルプロピル)アセトアミド、
【0025】
【化2】
又はその薬学的に許容される塩、又は溶媒和物、及び多形を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0026】
本明細書において、胃腸系がん又は大腸がんに罹患している対象を治療又は予防する方法も開示される。本方法は、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形を含む組成物を対象に投与することを含む。胃、小腸、及び大腸(後者は、大腸、直腸、及び肛門を含む)は、本明細書では胃腸系(「SIS」)と総称され、そのような器官のいずれかにおけるがんは、胃腸系がん(「SISC」)と称される。大腸のいずれかにおけるがんは、大腸がん(「CRC」)と称される。
【0027】
本明細書において、対象における前悪性状態を治療又は予防する方法も開示され、本方法は、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形を含む組成物を対象に投与することを含む。SISCに先行する前悪性状態は、胃腸管(特に、結腸及び/又は直腸)の複数の領域のうちのいずれか1つに存在し得る。時折、このような状態は、ポリープの形態で現れる。これは、その散発性の発症におけるように少数で存在し得るか、家族性腺腫性ポリポーシス(「FAP」)におけるように多数で存在し得るか、又はリンチ症候群としても知られる遺伝性非ポリポーシス大腸がんの特定の形態におけるように全く存在し得ない。
【0028】
本明細書において、家族性腺腫性ポリポーシス(「FAP」)などの任意のSISC関連がん素因症候群に罹患している対象における疾患の任意の徴候を治療、遅延、又は予防する方法も開示される。本方法は、将来の大腸がんの発症のリスクを低減するために、結腸を予防的に除去する結腸切除などの外科的処置の必要性を遅らせることを含む。本方法は、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形を含む組成物を対象に投与することを含む。FAPという用語は、本明細書において、軽症型家族性腺腫性ポリポーシス(attenuated familial adenomatous polyposis、「AFAP」)などの、FAPのサブタイプと称されることもあるものを包含するために使用される。別段の指示がない限り、又は任意の特定のサブタイプとして明示的に言及されない限り、FAPという用語は、AFAPなどのサブタイプを含む。
【0029】
いくつかの態様では、対象におけるポリープの数又はポリープ負荷(後者は、ポリープの数及び個々のサイズの両方を考慮することによって定義される)を減少させる方法は、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形を含む組成物を対象に投与することを含む。いくつかの態様ではポリープの数を減少させることは、式Iの化合物の投与後の結腸、直腸、術後J型嚢、及び/又は十二指腸におけるポリープの数を減少させることを含む。いくつかの態様では、結腸、直腸、術後J型嚢、及び十二指腸における直径が≧2mmであるポリープの数が減少する。いくつかの態様では、結腸、直腸、術後J型嚢、及び/又は十二指腸における直径が≧5mmであるポリープの数が減少する。ある特定の実施形態では、投与後のポリープの数の減少は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、若しくはそれ以上、又はそれらの間の任意の範囲である。
【0030】
また、本明細書において、疾患進行の任意のステージでのSISCの発症(特に、CRCの発症)を治療又は予防する方法が開示され、本方法は、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0031】
本開示において、対象の胃腸系における任意の慢性又は急性炎症性障害を治療又は予防する方法も開示され、本方法は、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0032】
本発明の更なる態様は、散発性胃腸ポリープ形成、FAP(又は他の遺伝性ポリポーシス症候群)、及びリンチ症候群(又は他の遺伝性非ポリポーシス症候群)のうちの少なくとも1つを有するか又は有していた対象に投与するための式Iの化合物の使用に関する。
【0033】
本発明の更なる態様は、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形を含む組成物を投与することによって、胃がん、小腸がん、大腸がん、及び肛門がんのうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの形態の限局性又は転移性SISCに罹患しているか又はそれと診断された対象を治療する方法である。
【0034】
本発明の更なる態様は、対象におけるSISC阻止の方法を含み、本方法は、治療有効量の式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形を含む組成物を投与することを含む。更なる態様は、SISC阻止がFAP SISC阻止である、前述のいずれか1つによって与えられる。更なる態様は、SISC阻止がリンチ症候群SISC阻止である、前述の態様のいずれか1つによって与えられる。更なる態様は、SISC阻止が散発性ポリープ阻止である、前述の態様のいずれか1つによって与えられる。更なる態様は、SISC阻止が胃がん阻止である、前述の態様のいずれか1つによって与えられる。更なる態様は、SISC阻止が小腸がん阻止である、前述の態様のいずれか1つによって与えられる。更なる態様は、SISC阻止が肛門がん阻止である、前述の態様のいずれか1つによって与えられる。
【0035】
いくつかのSISC阻止のシナリオでは、腸管の全体又は大部分に沿った薬物送達が望ましい場合がある。他のシナリオでは、胃腸管の任意の所与の部分で局所濃度を増加させることが望ましい場合がある。更に他のシナリオでは、腸管における異なる部位でのこれらの2つの送達形態の組み合わせが望ましい場合がある。
【0036】
式Iの化合物の治療有効用量は、約1mg~約1000mg、10mg~約1000mg、又はその中の任意の特定の量若しくは範囲、特に、約1mg~約100mg、10mg~約100mg、又はその中の任意の特定の量若しくは範囲の用量範囲を含む。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約1mg~約5mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約5mg~約10mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約10mg~約15mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約15mg~約20mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約20mg~約25mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約25mg~約30mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約35mg~約40mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約45mg~約50mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約55mg~約60mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約65mg~約70mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約75mg~約80mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約85mg~約90mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約95mg~約100mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約30mg~約1620mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約50mg~約90mgである。本発明のいくつかの態様では、用量範囲は、約50mg~約80mgである。本発明のいくつかの態様では、用量は、約50mgである。本発明のいくつかの態様では、用量は、約55mgである。本発明のいくつかの態様では、用量は、約60mgである。本発明のいくつかの態様では、用量は、約65mgである。本発明のいくつかの態様では、用量は、約70mgである。本発明のいくつかの態様では、用量は、約75mgである。本発明のいくつかの態様では、用量は、約80mgである。本発明のいくつかの態様では、用量は、約85mgである。本発明のいくつかの態様では、用量は、約90mgである。本発明のいくつかの態様では、用量は、約95mgである。本発明のいくつかの態様では、用量は、約100mgである。本発明のいくつかの態様では、投薬量の各々は、1日用量である。本発明のいくつかの態様では、投薬量は、1日2回又は1日3回のような1日当たり複数回の投与を必要とする。例えば、100mgの投与は、1日2回50mgの投薬量を投与することによって達成される。130mgの投与は、1日2回65mgの投薬量を投与することによって達成される。150mgの投与は、1日2回75mgの投薬量を投与することによって達成される。200mgの投与は、1日2回100mgの投薬量を投与することによって達成される。300mgの投与は、1日2回150mgの投薬量を投与することによって達成される。400mgの投与は、1日2回200mgの投薬量を投与することによって達成される。また、600mgの投与は、1日2回300mgの投薬量を投与することによって達成される。
【0037】
いくつかの態様では、式Iの化合物は、形態1s、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、2、3b、3c、3d、3e、5、6、7、8、9、10、11、11b、12、15、16、17、18、19、20、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、及び53から選択される結晶形態である。
【0038】
いくつかの態様では、家族性腺腫性ポリポーシス(「FAP」)に罹患することから対象を治療又は予防する方法は、約1mg~約100mgの有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、投与は、1日1回又は1日2回である。いくつかの態様では、FAPを治療することは、当該対象におけるポリープ負荷を低減することを含む。いくつかの態様では、ポリープ負荷を低減することは、ポリープの数の減少及び/又はポリープのサイズの減少を含む。
【0039】
いくつかの態様では、以前にFAPの療法を受けている対象又は現在FAPの療法を受けている対象におけるFAPを治療又は予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、療法は、手術、放射線療法、Cox-2阻害剤、非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drug、NSAID)、又は化学療法であり得る。
【0040】
いくつかの態様では、SISCに罹患することから対象を治療又は予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、投与は、1日1回又は1日2回である。いくつかの態様では、SISCを治療又は予防することは、当該対象におけるポリープ負荷を低減することを含む。いくつかの態様では、ポリープ負荷を低減することは、ポリープの数の減少及び/又はポリープのサイズの減少を含む。
【0041】
いくつかの態様では、以前に療法を受けている対象又は現在療法を受けている対象におけるSISCを治療又は予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、療法は、手術、放射線療法、又は化学療法。EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、及びチェックポイント阻害剤であり得る。
【0042】
いくつかの態様では、以前に療法を受けている対象又は現在療法を受けている対象におけるCRCを治療又は予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、療法は、手術、放射線療法、化学療法。EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、及びチェックポイント阻害剤であり得る。
【0043】
いくつかの態様では、CRCに罹患することから対象を治療又は予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、投与は、1日1回又は1日2回である。いくつかの態様では、CRCを治療又は予防することは、当該対象におけるCRC悪性腫瘍及び/又は関連するポリープ負荷を低減することを含む。いくつかの態様では、ポリープ負荷を低減することは、ポリープの数の減少及びポリープのサイズの減少を含む。いくつかの態様では、ポリープパラメータの低減は、ポリープの数の減少又はポリープのサイズの減少を含む。
【0044】
いくつかの態様では、対象におけるCRCの再発を予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。
【0045】
[67]いくつかの態様では、対象におけるFAP関連ポリポーシスの再発を予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。
【0046】
いくつかの態様では、対象におけるFAPの症状の進行を予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。
【0047】
いくつかの態様では、対象におけるFAPの症状の進行を遅延させる方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。
【0048】
いくつかの態様では、過敏性腸疾患(IBD)と診断されている対象におけるSISCを予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、IBDは、潰瘍性大腸炎又はクローン病であり得る。
【0049】
いくつかの態様では、以前にがんと診断されている対象におけるSISCを予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、がんは、乳がん、卵巣がん、子宮がん、又は腹部がんであり得る。
【0050】
いくつかの態様では、式Iの化合物は、CRC、SISC、又はFAPを発症するリスクが高い対象を治療するために、予防措置として又は阻止として投与される。高リスクは、過敏性腸症候群、特定の腸内マイクロバイオーム成分の存在、大腸がんの家族歴、大腸がんの既往歴、結腸鏡検査中のポリープ若しくは前悪性病変の所見などの要因、又はKRAS、TP53、EGFR、STK11(LKB1)、PTEN、BMPR1A、SMAD4(MADH/DPC4)、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、EPCAM、MUTYH(MYH)、POLD1、POLE、及び/若しくはAPC遺伝子における変異などの他の遺伝的要因に起因し得る。
【0051】
いくつかの態様では、高リスク群にある対象におけるFAP又はCRCを予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。
【0052】
いくつかの態様では、前悪性状態が悪性状態になることを予防する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。状態は、腺腫性ポリープの存在であり得る。いくつかの態様では、前悪性状態はリンチ症候群であり得る。いくつかの態様では、前悪性状態は、初期CRC及び腺腫であり得る。
【0053】
いくつかの態様では、腸管における過剰な炎症応答を治療する方法は、約1mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物を対象に投与することを含む。
【0054】
いくつかの態様では、大腸がんに罹患することから対象を治療又は予防する方法は、約50mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物(結晶形態1s)を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、投与は、1日1回又は1日2回である。
【0055】
いくつかの態様では、大腸がんに罹患することから対象を治療又は予防する方法は、約10mg~約50mgの治療有効用量の式Iの化合物(結晶形態1s)を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、投与は、1日1回又は1日2回である。
【0056】
いくつかの態様では、大腸がんに罹患することから対象を治療又は予防する方法は、約30mg~約50mgの治療有効用量の式Iの化合物(結晶形態1s)を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、投与は、1日1回又は1日2回である。
【0057】
いくつかの態様では、大腸がんに罹患することから対象を治療又は予防する方法は、約50mg~約100mgの治療有効用量の式Iの化合物(結晶形態11)を対象に投与することを含む。いくつかの態様では、投与は、1日1回又は1日2回である。
【0058】
いくつかの態様では、治療を必要とする対象におけるJAKチロシンキナーゼ活性の阻害によって影響を受ける障害又は状態を治療する方法は、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、又は多形を、結腸組織において約20ng/g~約20,000ng/gの濃度を達成するのに十分な量で投与することを含む。いくつかの態様では、投与は、約20ng/g~約15,000ng/g、約20ng/g~約10,000ng/g、約20ng/g~約8,000ng/g、約20ng/g~約6,000ng/g、約20ng/g~約4,000ng/g、又は約20ng/g~約1,000ng/gの組織濃度を達成する。いくつかの態様では、障害又は状態は、大腸がん又はFAPである。
【0059】
いくつかの態様では、治療を必要とする対象におけるJAKの阻害によって影響を受ける障害又は状態を治療する方法は、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、又は多形を、直腸組織において約20ng/g~約20,000ng/gの濃度を達成するのに十分な量で投与することを含む。いくつかの態様では、投与は、約20ng/g~約15,000ng/g、約20ng/g~約10,000ng/g、約20ng/g~約8,000ng/g、約20ng/g~約6,000ng/g、約20ng/g~約4,000ng/g、又は約20ng/g~約1,000ng/gの組織濃度を達成する。いくつかの態様では、障害又は状態は、大腸がん又はFAPである。
【0060】
また、本明細書において、治療を必要とする対象におけるJAK阻害剤に対する応答を決定又は予測する方法も開示される。一態様では、式Iの化合物に対する応答の予測を、それを必要とする対象において行う方法は、
(a)式Iの化合物に曝露されていない対象の対照サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(b)式の化合物に曝露されている対象の試験サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(c)(a)におけるpSTAT-3のレベルを(b)と比較することと、を含み、(b)におけるpSTAT-3のレベルの減少が、対象における式Iの化合物に対する応答を予測する。
【0061】
別の態様では、進行中のJAK阻害剤療法の有効性のモニタリングを、それを必要とする対象において行う方法は、
(a)式Iの化合物に曝露されていない対象の対照サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(b)式の化合物に曝露されている対象の試験サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(c)(a)におけるpSTAT-3のレベルを(b)と比較することと、を含み、(b)におけるpSTAT-3のレベルの減少が、対象における式Iの化合物の有効性を示す。
【0062】
別の態様では、家族性腺腫性ポリポーシス、がん、又はJAK媒介性疾患を治療するための薬剤レジメンの設計を、それを必要とする対象において行う方法は、
(a)式Iの化合物に曝露されていない対象の対照サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(b)式の化合物に曝露されている対象の試験サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(c)(a)におけるpSTAT-3のレベルを(b)と比較することと、
(d)対照サンプルと比較したとき、試験サンプル中のpSTAT-3のレベルが高い場合、より高い用量の式Iの化合物を投与することと、を含む。
【0063】
FAP、がん、又はJAK媒介性疾患に罹患している対象におけるJAK阻害剤の用量及び/又は投薬頻度を変更する方法は、
(a)式Iの化合物に曝露されていない対象の対照サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(b)式の化合物に曝露されている対象の試験サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(c)(a)におけるpSTAT-3のレベルを(b)と比較することと、
(d)対照サンプルと比較したとき、試験サンプル中のpSTAT-3のレベルがより高い、等しい、又はわずかに減少している場合、式Iの化合物の用量を増加させること、及び対照サンプルと比較したとき、試験サンプル中のpSTAT-3のレベルがより低い場合、式Iの化合物の用量を減少させることと、を含む。
【0064】
いくつかの態様では、試験サンプル及び対照サンプルは、同じ対象に由来する。いくつかの態様では、対照サンプルは、式Iの化合物の投与前の対象からのものであり得る。いくつかの態様では、対照サンプルは、式Iの化合物の対象への投与前の対象サンプルのプールからのものであり得る。
【0065】
いくつかの態様では、対象のサンプル(対照又は試験サンプル)は、血液を含む任意の細胞又は組織であり得る。いくつかの態様では、対象のサンプルは、正常細胞、正常組織、腫瘍細胞、腫瘍組織、又は任意の悪性細胞であり得る。いくつかの態様では、対象のサンプルは、結腸、直腸、術後J型嚢、及び十二指腸などの腸管の異なる部位からの組織であり得る。
【0066】
対象の対照サンプル又は試験サンプルが得られたら、フローサイトメトリー、好ましくはイメージングフローサイトメトリー(imaging flow cytometry、IFC)、発光分析、化学発光分析、免疫組織化学、蛍光顕微鏡などのアッセイを使用して、対象のサンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することができる。
【0067】
いくつかの態様では、対照サンプル及び試験サンプル中のpSTAT-3のレベルを比較することにより、対象におけるJAK阻害剤の有効性に関する情報が提供され得る。例えば、対照サンプルと比較した場合の試験サンプルのpSTAT-3レベルの減少は、式Iの化合物が対象において有効であることを示し得る。ある特定の態様では、対照サンプルと比較した場合の試験サンプル中のpSTAT-3レベルの減少は、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、若しくはそれ以上、又はそれらの間の任意の範囲である。
【0068】
いくつかの態様では、対象におけるCRC又はFAPを治療する方法は、(a)KRAS、TP53、EGFR、STK11(LKB1)、PTEN、BMPR1A、SMAD4(MADH/DPC4)、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、EPCAM、MUTYH(MYH)、POLD1、POLE、及びAPCから選択される1つ以上の遺伝子における変異を決定することと、(b)治療有効用量の式Iの化合物を投与することと、を含む。
【0069】
いくつかの態様では、対象において、当該対象がCRC又はFAPを発症するリスクが高いかどうかを診断する方法は、(a)KRAS、TP53、EGFR、STK11(LKB1)、PTEN、BMPR1A、SMAD4(MADH/DPC4)、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、EPCAM、MUTYH(MYH)、POLD1、POLE、及びAPCから選択される1つ以上の遺伝子における変異を決定することと、(b)治療有効用量の式Iの化合物を投与することと、を含む。
【0070】
いくつかの態様では、式Iの化合物の投与は、循環中のpSTAT-3レベルの変化によって定義される、局所GI効果及び低い又は無視できる全身効果を伴う汎JAKキナーゼ阻害効果を示す。更に、このような特徴を有する本発明の態様を、経口投与することができる。いくつかの態様では、式Iの化合物は、過剰な炎症応答の予防及び/又は制御のために使用されてもよく、その全身効果は、排除又は低減される。いくつかの態様では、式Iの化合物は、全身効果を引き起こすことなく、又はかかる全身効果を許容範囲内に低減しながら、状態(例えば、限定されないがIBD)の治療のために胃腸組織に対して局所効果を示す。
【0071】
患者の疾患、障害、又は状態の改善が生じたら、予防的治療又は維持的治療のために、用量を調節してもよい。例えば、投薬量若しくは投与頻度、又はこれらの両方を、症状の関数として、所望の治療又は予防効果が維持されるレベルまで低減してもよい。当然のことながら、症状が適切なレベルまで緩和されている場合は、治療を停止してもよい。しかしながら、症状が再発した場合、患者は、長期的な断続的治療を必要とすることがある。
【0072】
加えて、式Iの化合物は、本明細書で論じられる状態の治療において、単独で、1つ以上の他の活性薬剤と組み合わせて、又は追加の活性成分と組み合わせて使用することが想定される。式Iの化合物と組み合わせることができる活性薬剤の非限定的な例としては、NSAID、Cox-2阻害剤、抗EGFR剤(例えば、セツキシマブ(cetuximab)及びパニツムマブ(panitumumab))、抗VEGF/VEGFR剤(例えば、ベバシズマブ(bevacizumab))、Ziv-アフリベルセプト(Ziv-aflibercept)、レゴラフェニブ(regorafenib)、ラムシルマブ(ramucirumab)、及び免疫チェックポイント阻害剤(例えば、イピリムマブ(ipilimumab)、ニボルマブ(nivolumab)、及びペムブロリズマブ(pembrolizumab))が挙げられる。追加の活性成分は、式Iの1つの化合物とともに別々に同時投与することができ、又は本発明による単一の医薬組成物に含めてもよい。例示的実施形態では、追加の活性成分は、JAK活性により媒介される状態、障害、又は疾患の治療に有効であることが知られている、又は発見されているもの、例えば、特定の状態、障害、又は疾患に関連する別の標的に対して活性な、別のJAK阻害剤又は化合物である。組み合わせは、有効性を増大させる(例えば、活性薬剤の効力又は有効性を高める化合物を組み合わせて含めることにより)、1つ以上の副作用を減少させる、又は活性薬剤の必要用量を低減するのに役立つ場合がある。
【0073】
いくつかの態様では、式Iの化合物の組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。医薬組成物で一般に使用される薬学的に許容される賦形剤は、薬理学的組成物に添加されるか、又はそうでなければビヒクル、担体、若しくは希釈剤として使用されて、薬剤の投与を容易にし、かつ薬剤と適合性のある、無毒性で生物学的に忍容性であり、及び別の理由で対象への投与に生物学的に好適である物質、例えば、不活性物質である。そのような賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖類及び様々な種類のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、並びにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0074】
1つ以上の投薬量単位の式Iの化合物を含有する医薬組成物の送達形態は、薬学的に許容される賦形剤及び当業者に既知であるか又は利用可能になっている配合技術を使用して調製することができる。この組成物は、本発明の方法において、好適な送達経路、例えば、経口、非経口、直腸内、局所、若しくは眼経路によって、又は吸入によって投与され得る。
【0075】
調製物は、錠剤、カプセル剤、サッシェ剤、糖衣錠、粉剤、顆粒剤、トローチ剤、再構成用粉剤、液体調製物、又は座薬の形態であり得る。組成物は、複数の投与経路のうちの任意の1つ、例えば静脈内注射、皮下注射、局所投与、又は経口投与用に製剤化され得る。好ましくは、組成物は、経口投与用に製剤化され得る。
【0076】
経口投与の場合、活性薬剤を錠剤、カプセル、若しくはビーズの形態で、又は溶液、エマルション、若しくは懸濁液として、提供することができる。経口用組成物を調製するために、活性薬剤は、例示的な範囲として単回投薬量単位又は複数回投薬量単位で、例えば、70kgのヒトに対して約1~1000mg/日の投薬量をもたらすように製剤化され得る。
【0077】
経口錠剤は、適合性の薬学的に許容される賦形剤、例えば希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、着色剤及び防腐剤と混合された活性成分を含み得る。好適な不活性充填剤としては、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム及びリン酸カルシウム、ラクトース、デンプン、糖、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。例示的な経口用液体賦形剤としては、エタノール、グリセロール、水などが挙げられる。デンプン、ポリビニルピロリドン(polyvinyl-pyrrolidone、PVP)、デンプングリコール酸ナトリウム、微結晶性セルロース及びアルギン酸が例示的な崩壊剤である。結合剤としては、デンプン及びゼラチンを挙げることができる。潤滑剤は、存在する場合、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。必要に応じて、錠剤をモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルなどの物質でコーティングして、消化管内での吸収を遅延させてもよく、又は腸溶コーティングでコーティングしてもよい。使用可能な追加のコーティングとしては、時間、pH、又は細菌含量の関数として、化合物又は活性薬剤を放出するように設計されたコーティングを挙げてよい。
【0078】
経口投与用カプセルとしては、硬質及び軟質ゼラチン、又は(ヒドロキシプロピル)メチルセルロースカプセルが挙げられる。硬質ゼラチン製カプセルを調製するために、活性成分を固体状、半固体状又は液状の希釈剤と混合してもよい。ソフトゼラチンカプセルは、活性成分を、落花生油又はオリーブ油などの油、液状パラフィン、短鎖脂肪酸のモノ及びジ-グリセリドの混合物、ポリエチレングリコール400、又はプロピレングリコールと混合することで調製することができる。経口投与用の液体は、懸濁液、溶液、乳剤、又はシロップ剤の形態であってもよく、あるいは使用前に水若しくは他の好適なビヒクルで再構成するために、凍結乾燥させてもよく、又は乾燥製品として提示してもよい。そのような液体組成物は、任意選択的に、薬学的に許容される賦形剤、例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトール、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルなど);非水性ビヒクル、例えば、油(例えば、アーモンド油又は分留ヤシ油)、プロピレングリコール、エチルアルコール又は水;保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはp-ヒドロキシ安息香酸プロピル、又はソルビン酸);レシチンなどの湿潤剤;及び必要に応じて、着香剤又は着色剤を含有し得る。
【0079】
式Iの化合物の組成物はまた、非経口経路によって投与され得る。例えば、組成物は、直腸内投与用に座剤として製剤化され得る。静脈内、筋肉内、腹腔内又は皮下経路を含む非経口用途の場合、本開示の化合物は、適切なpH及び等張性に緩衝された滅菌水溶液若しくは懸濁液、又は非経口的に許容される油中で提供されてもよい。好適な水性ビヒクルとしては、リンガー液及び等張性塩化ナトリウムが挙げられる。そのような形態は、アンプル若しくは使い捨て注射デバイスなどの単位用量形態、適切な用量を引き抜き得るバイアルなどの多用量形態、又は注射可能な製剤を調製するために使用することができる固体形態若しくは予備濃縮物で提示されることになる。具体的な注入用量は、数分間から数日間の範囲の期間にわたる、薬学的担体と混合した化合物の約1~1000μg/kg/分の範囲であり得る。
【0080】
治療するための方法に関する本明細書に記載される全ての態様は、治療における使用にも適用可能である。
【0081】
障害又は状態を治療するための方法に関する本明細書に記載される全ての態様は、当該障害又は状態の治療における使用にも適用可能である。
【0082】
障害又は状態の治療における使用に関する本明細書に記載される全ての態様は、当該障害又は状態を治療するための方法にも適用可能である。
【0083】
障害又は状態を治療するための方法に関する本明細書に記載される全ての態様は、当該障害又は状態を治療するための方法における使用にも適用可能である。
【0084】
障害又は状態を治療するための方法における使用に関する本明細書に記載される全ての態様は、当該障害又は状態を治療するための方法にも適用可能である。
【0085】
本発明及び様々な態様を更に説明するために、以下の具体的な実施例を提供する。
【0086】
以下の実施例に記述する化合物及び対応する分析データを得る際、特に指示しない限り、以下の実験及び分析プロトコルに従った。
【0087】
特に明記しない限り、反応混合物は、室温(room temperature、rt)で磁気的に撹拌された。溶液が「乾燥」される場合、それらは一般に、Na2SO4又はMgSO4などの乾燥剤上で乾燥される。混合物、溶液、及び抽出物が「濃縮」された場合、それらは典型的には、減圧下で、ロータリーエバポレーターで濃縮された。
【0088】
薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Merckシリカゲル60F254(2.5cm×7.5cm、250μm又は5.0cm×10.0cm、250μmのシリカゲルでプレコーティングされたプレート)を用いて実施した。
【0089】
順相フラッシュカラムクロマトグラフィー(flash column chromatography、FCC)は、特に明記しない限り、シリカゲル(SiO2)上でMeOH/DCM中の2M NH3で溶出させることで実施した。
【0090】
質量スペクトル(Mass spectra、MS)は、特に指示しない限り、ポジティブモードのエレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)を使用してAgilentシリーズ1100 MSDで得た。質量の計算値(calcd.)は、正確な質量に相当する。
【0091】
核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)スペクトルは、Bruker製のDRX型スペクトル計で得た。以下に示す1H NMRデータのフォーマットは、テトラメチルシランを基準物質とした低磁場のケミカルシフト(ppm)(多重度、結合定数J(Hz)、積分値)である。
【0092】
化学名は、ChemDraw(CambridgeSoft、Cambridge,MA)又はACD/Name Version9(Advanced Chemistry Development、Toronto,Ontario,Canada)のいずれかによって生成された。例として、表記(1r,4r)は、Chemdraw Ultra Pro14.0の命名機能を使用して生成される、シクロヘキシル環の周囲のトランス配置を意味する。
【0093】
収率を百分率として示される場合にはいつでも、そのような収率は、特定の化学量論的条件下で得ることが可能な同一の実体の最大量に対する収率が示される実体の質量を指す。パーセントとして示す試薬濃度は、別途指定のない限り、質量比を指す。
【0094】
本明細書で使用される略称及び頭字語としては、以下に示すものが挙げられる:定義された略称及び頭字語
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
実施例1
2-(1-((1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル)-1,6-ジヒドロイミダゾ[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アセトアミド
【0099】
【0100】
工程A:2-(1-((1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル)-6-(フェニルスルホニル)-1,6-ジヒドロイミダゾ[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アセトアミド。乾燥出発物質を確保するために、エチル2-(1-((1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル)-6-(フェニルスルホニル)-1,6-ジヒドロイミダゾ[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)アセテート(中間体3)を、反応前に50℃で18時間、真空下で加熱した。1Lフラスコで、エチル2-(1-((1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル)-6-(フェニルスルホニル)-1,6-ジヒドロイミダゾ[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)アセテート(中間体3、52.585g、104.01mmol)をDMA(50mL)に懸濁した。1-アミノ-2-メチルプロパン-2-オール(50mL)を添加し、反応物を110℃まで45分間加熱し、次いで、125℃まで5時間加熱した。反応物を室温まで冷却し、EtOAc(800mL)で希釈した。有機層を水/食塩水の溶液で3回抽出した(溶液は1Lの水と50mLの食塩水で構成された)。水層をEtOAcで逆抽出した(2×600mL)。合わせた有機層を、無水MgSO4上で乾燥させ、濃縮乾固し、次いで、真空下で3日間乾燥させて、標題化合物を黄色の泡として得た(65.9g、収率98%)。生成物を、更に精製することなく次段階に用いた。MS(ESI):質量計算値C28H32N6O4S,548.22;M/z実測値,549.2[M+H]+.1H NMR(400MHz,CDCl3):δ8.76(s,1H),8.26-8.19(m,2H),7.84(d,J=4.1Hz,1H),7.60-7.53(m,1H),7.50-7.44(m,2H),6.84(d,J=4.2Hz,1H),4.76-4.61(m,1H),3.97(s,2H),3.45(s,1H),3.27(d,J=5.9Hz,2H),2.41(d,J=6.5Hz,2H),2.38-2.25(m,2H),2.23-2.12(m,2H),2.09-1.94(m,4H),1.48(qd,J=13.6,4.0Hz,2H),1.21(s,6H)。
【0101】
工程B:2-(1-((1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル)-1,6-ジヒドロイミダゾ[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アセトアミド。2-(1-((1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル)-6-(フェニルスルホニル)-1,6-ジヒドロイミダゾ[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アセトアミド(65.90g、102.1mmol)を、撹拌棒を含有する1Lフラスコに添加した。1,4-ジオキサン(300mL)を添加し、続いてKOH水溶液(3M、150mL)を添加した。反応物を80℃で2時間加熱した。反応物を室温まで冷却し、ロータリーエバポレーター上で、溶媒体積を約200mLまで減少させた。残留物を水/ブライン(100mL/100mL)の溶液で処理し、次いで、CH2Cl2(2×1L)中の10%MeOHで抽出した。有機層を合わせ、無水MgSO4上で乾燥させ、濃縮乾固して黄色の固形物を得た。固形物を、CH2Cl2(200mL)中に懸濁し、30分間激しく撹拌し、濾過により収集した。固形物を、CH2Cl2(100mL)で洗い流し、フィルターを通して空気を吸引することによって乾燥させ、次いで、真空下、室温で16時間更に乾燥させて、標題化合物を白色の固形物として得た(41.59g、収率89%)。MS(ESI):質量計算値C22H28N6O2,408.23;m/z実測値、409.2[M+H]+.1H NMR(600MHz,DMSO-d6):δ11.85(s,1H),8.50(s,1H),8.21-8.10(m,1H),7.49-7.43(m,1H),6.74-6.65(m,1H),4.53-4.42(m,2H),4.07(s,2H),3.08(d,J=6.0Hz,2H),2.58(d,J=6.1Hz,2H),2.41-2.28(m,2H),2.09-1.92(m,5H),1.42-1.31(m,2H),1.09(s,6H).本発明の態様の各々の、合成及び活性化合物の特徴付け(特定)は、実施例の形態で本明細書において提供される。本発明のいくつかの態様の結晶構造により、任意のかかる化合物の特定の形態を更に特徴付けるために、多形スクリーニングを行うことができる。これは、多形スクリーニングの見出しの下の例によって、式Iの化合物について非限定的な様式で示される。
【0102】
以下の化合物を、前述の合成を参照して調製した。
【0103】
中間体1
2-((1r,4r)-4-((5-ニトロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)アミノ)シクロヘキシル)アセトニトリル
【0104】
【0105】
工程A:tert-ブチルN-[(1r,4r)-4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]カルバメート。窒素の不活性雰囲気でパージ及び維持された20Lの4つ口丸底フラスコに、(1r,4r)-4-[[(tert-ブトキシ)カルボニル]アミノ]シクロヘキサン-1-カルボン酸(1066g、4.38mol、1.00当量)及びTHF(10L)を入れた。これに続いて、BH3-Me2S(10M、660mL)を、-10℃で1時間かけて滴加した。得られた溶液を、15℃で3時間撹拌した。この反応を並行して3回実施し、反応混合物を合わせた。次いで、メタノール(2L)の添加によって反応を停止させた。得られた混合物を、真空下で濃縮した。これにより、tert-ブチルN-[(1r,4r)-4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]カルバメート(3000g、99.6%)を白色の固形物として得た。MS(ESI):質量計算値C12H23NO3,229.32;m/z実測値,215.2[M-tBu+MeCN+H]+;1H NMR:(300MHz,CDCl3):δ4.40(s,1H),3.45(d,J=6.3Hz,2H),3.38(s,1H),2.05-2.02(m,2H),1.84-1.81(m,2H),1.44(s,11H),1.17-1.01(m,4H)。
【0106】
工程B:tert-ブチルN-[(1r,4r)-4-[(メタンスルホニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]カルバメート。窒素の不活性雰囲気でパージ及び維持された20Lの4つ口丸底フラスコに、tert-ブチルN-[(1r,4r)-4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]カルバメート(1000g、4.36mol、1.00当量)、ジクロロメタン(10L)、ピリジン(1380g、17.5mol、4.00当量)を入れた。これに続いて、MsCl(1000g、8.73mol、2.00当量)を、-15℃で滴加した。得られた溶液を、25℃で一晩撹拌した。この反応を並行して3回実施し、反応混合物を組み合わせた。次に2Lの水を加えて反応を停止した。水相を酢酸エチルで抽出した(1×9L)。有機層を分離し、1MのHCl(3×10L)、NaHCO3(飽和水溶液)(2×10L)、水(1×10L)、及びブライン(1×10L)で洗浄した。混合物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空下で濾過及び濃縮した。これにより、tert-ブチルN-[(1r,4r)-4-[(メタンスルホニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]カルバメート(3300g、82%)を白色の固形物として得た。LC-MS:MS(ESI):質量計算値C13H25NO5S,307.15;m/z実測値292.1,[M-tBu+MeCN+H]+;1H NMR:(300MHz,CDCl3):δ4.03(d,J=6.6Hz,2H),3.38(s,1H),3.00(s,3H),2.07-2.05(m,2H),1.87-1.84(m,2H),1.72-1.69(m,1H),1.44(s,9H),1.19-1.04(m,4H)。
【0107】
工程C:tert-ブチルN-[(1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル]カルバメート。10Lの4つ口丸底フラスコに、tert-ブチルN-[(1r,4r)-4-[(メタンスルホニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]カルバメート(1100g、3.58mol、1.00当量)、DMSO(5500mL)、及びNaCN(406g、8.29mol、2.30当量)を入れた。得られた混合物を、90℃で5時間撹拌した。この反応を並行して3回実施し、反応混合物を組み合わせた。次いで、15Lの水/氷を添加することによって反応を停止した。固体を濾過により回収した。固体を水(3×10L)で洗浄した。これにより、tert-ブチルN-[(1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル]カルバメート(2480g、97%)を白色の固形物として得た。MS(ESI):質量計算値C13H22N2O2,238.17;m/z実測値224[M-tBu+MeCN+H]+;1H NMR:(300MHz,CDCl3):δ4.39(s,1H),3.38(s,1H),2.26(d,J=6.9Hz,2H),2.08-2.04(m,2H),1.92-1.88(m,2H),1.67-1.61(m,1H),1.44(s,9H),1.26-1.06(m,4H)。
【0108】
工程D:2-[(1r,4r)-4-アミノシクロヘキシル]アセトニトリル塩酸塩。10Lの丸底フラスコに、tert-ブチルN-[(1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル]カルバメート(620g、2.60モル、1.00当量)及び1,4-ジオキサン(2L)を入れた。この後、10℃で撹拌しながら、1,4-ジオキサン中のHCl溶液(5L、4M)を滴加した。得られた溶液を、25℃で一晩撹拌した。この反応を4回実施し、反応混合物を組み合わせた。固体を濾過により回収した。固体を1,4-ジオキサン(3×3L)、酢酸エチル(3×3L)、及びヘキサン(3×3L)で洗浄した。これにより、2-[(1r,4r)-4-アミノシクロヘキシル]アセトニトリル塩酸塩(1753g、96%)を白色の固形物として得た。MS(ESI):質量計算値C8H14N2,138.12;m/z実測値139.25,[M+H]+;1H NMR:(300MHz,DMSO-d6:δ8.14(s,3H),2.96-2.84(m,1H),2.46(d,J=6.3Hz,2H),1.98(d,J=11.1Hz,2H),1.79(d,J=12.0Hz,2H),1.64-1.49(m,1H),1.42-1.29(m,2H),1.18-1.04(m,2H)。
【0109】
工程E:2-((1r,4r)-4-((5-ニトロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)アミノ)シクロヘキシル)アセトニトリル。2-[(1r,4r)-4-アミノシクロヘキシル]アセトニトリル塩酸塩(29.10g、166.6mmol)を含有する1000mLの丸底フラスコに、DMAを添加した(400mL)。得られた懸濁液を、4-クロロ-5-ニトロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン(51.53g、152.6mmol)、続いて、DIPEA(63.0mL、366mmol)で処理した。反応混合物を、N2下に置き、80℃で4時間加熱した。粗反応混合物を、室温まで冷却し、1.6Lの水を含有する2Lフラスコ内にゆっくり注ぎ、激しく撹拌した。得られた懸濁液を、15分間室温で撹拌し、次いで濾過し、真空オーブン中で70℃で加熱しながら16時間乾燥させて、標題化合物(63.37g、95%)を黄色の固形物として得た。MS(ESI):質量計算値C21H21N5O4S,439.1;m/z実測値,440.1[M+H]+.1H NMR(500MHz,CDCl3):δ9.10(s,1H),8.99(d,J=7.8Hz,1H),8.23-8.15(m,2H),7.66-7.59(m,2H),7.56-7.49(m,2H),6.67(d,J=4.2Hz,1H),3.95-3.79(m,1H),2.38(d,J=6.2Hz,2H),2.32-2.21(m,2H),2.08-1.98(m,2H),1.88-1.76(m,1H),1.60-1.32(m,4H)。
【0110】
中間体2
2-((1r,4r)-4-((5-アミノ-1-(フェニルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)アミノ)シクロヘキシル)アセトニトリル
【0111】
【0112】
2-((1r,4r)-4-((5-ニトロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)アミノ)シクロヘキシル)アセトニトリル(中間体1、58.60g、133.3mmol)を、THF/MeOH(1:1、4800mL)に溶解した。混合物を、Thales Nano H-Cube(登録商標)などの連続流水素添加反応器(10% Pd/C)に、10mL/分で100%水素(大気圧、80℃)に通し、その後溶液を濃縮して、生成物を紫色の固形物として得た。固体をEtOAc(400mL)で粉砕し、次いでMeOH(200mL)で再び粉砕し、その後真空で濾過及び乾燥させ、標題化合物を得た(50.2g、収率91.9%)。
【0113】
MS(ESI):質量計算値C21H23N5O2S,409.2;m/z実測値,410.2[M+H]+.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ8.10-8.03(m,2H),7.76(s,1H),7.51-7.43(m,1H),7.43-7.34(m,3H),6.44(d,J=4.2Hz,1H),4.61(d,J=8.5Hz,1H),3.65-3.51(m,1H),2.74(s,2H),2.26(d,J=6.4Hz,2H),2.19-2.05(m,2H),1.97-1.86(m,2H),1.76-1.59(m,1H),1.33-1.12(m,4H)。
【0114】
中間体3
エチル2-(1-((1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル)-6-(フェニルスルホニル)-1,6-ジヒドロイミダゾ[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)アセテート
【0115】
【0116】
撹拌棒及び2-((1r,4r)-4-((5-アミノ-1-(フェニルスルホニル)-1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)アミノ)シクロヘキシル)アセトニトリル(中間体2、58.31g、142.4mmol)を含有する1Lの丸底フラスコに、エチル3-エトキシ-3-イミノプロパノエート(60.51g、309.3mmol)を添加し、続いて、EtOH(600mL、3Åのモレキュラーシーブで48時間乾燥)を添加した。還流冷却器を反応フラスコに取り付け、反応物をN2でパージし、90℃で9時間加熱した。反応混合物を、室温まで冷却し、30時間静置すると、生成物が茶色の針状に結晶化した。固体をスパチュラで粉砕し、反応混合物を2Lフラスコに移した。激しく撹拌しながら、水(1.4L)を分液漏斗を介してゆっくりと添加した。水の添加が完了した後、懸濁液を30分間撹拌した。茶色の針状のものを濾過によって分離し、フィルターを通して空気を1時間引き込むことにより乾燥させた。生成物を500mLフラスコに移し、EtOAc(200mL)で処理した。少量の種結晶を添加し、白色固体沈殿物の形成を誘導した。懸濁液を30分間室温で撹拌し、濾過し、EtOAc(25mL)で洗い流し、真空下にて乾燥させて、白色固体として生成物を得た(48.65g、収率68%)。MS(ESI):質量計算値C26H27N5O4S,505.2;m/z実測値,506.2[M+H]+.1H NMR(400MHz,CDCl3)δ8.85(s,1H),8.28-8.19(m,2H),7.84(d,J=4.0Hz,1H),7.61-7.53(m,1H),7.52-7.43(m,2H),6.84(d,J=4.1Hz,1H),4.32(s,1H),4.20(q,J=7.1Hz,2H),4.09(s,2H),2.44(d,J=6.2Hz,2H),2.40-2.27(m,2H),2.16(d,J=13.3Hz,2H),2.12-1.96(m,3H),1.54-1.38(m,2H),1.27(t,J=7.1Hz,3H)。
【0117】
多形スクリーニング実施例
遊離塩基としての、式Iの化合物のいくつかの実施形態は、複雑な固体状態の挙動を有する複数の結晶構造を示し、これらのうちのいくつかは次に、異なる量の組み込まれた溶媒のために、これらの間で著しい特徴を示すことができる。式Iの化合物のいくつかの実施形態は、擬多形の形態であり、同じ化合物の実施形態である。これらは、結晶格子自体の中にある異なる量の溶媒のために、結晶格子の組成の違いを示す。加えて、チャネル溶媒和は、式Iの化合物のいくつかの結晶実施形態において存在することができる。これらにおいて、溶媒は、結晶格子に存在するチャネル又はボイド内に組み込まれる。例えば、式Iの化合物について、表2に与えられる様々な結晶配置が見出された。これらの特徴のため、表2に示されるように、非化学量論的溶媒和物がしばしば観察された。更に、本発明に従ったいくつかの実施形態の結晶構造に、このようなチャネル又はボイドが存在することにより、様々な程度の結合強度を有して結晶構造内に保持される水及び/又は溶媒分子が存在することができる。したがって、具体的な周囲条件の変化により、本発明に従ったいくつかの実施形態では、水分子及び/又は溶媒分子のある程度の喪失又は増加を速やかにもたらすことができる。表2に記載する実施形態のそれぞれにおいて、「溶媒和」(表2の3番目の縦列)は公式化可能な溶媒和であり、化学量論数(表2の4番目の縦列)としての、その実際の測定は、実験により測定される場合、実際の周囲条件に応じて、公式化可能な溶媒和とはわずかに異なる場合があると理解されている。例えば、一実施形態では、水分子の約半分が、結晶格子内で活性化合物に結合した水素として存在し得る一方で、水分子の約もう半分が結晶格子のチャネル又はボイドに存在し得る場合、周囲条件の変化により、ボイド又はチャネル内にそのように緩やかに含有される水分子の量が変化し得、それにより、例えば単結晶回折に従って割り当てられ、公式化可能な溶媒和と、例えば、質量分析と一体となった熱重量分析により決定される化学量論とに、わずかな差が生じる。
【0118】
【0119】
実施例1に記載のとおりに入手した化合物を、40℃で4時間撹拌し、更に14時間25℃で撹拌したDCM(1:3、例えば30mL DCM中に10gの化合物)中のスラリーを調製することによって更に結晶化させ、次いで、ヘプタンを25℃でゆっくり添加し(1:2、例えば、化合物/DCMスラリー/溶液中にヘプタンを20mL)、40℃で4時間撹拌し、25℃まで冷却し、更に14時間25℃で撹拌した。その後濾過することにより、オフホワイト固形物の形態の式Iの化合物が得られ、これは一水和物と同定された(1s実施形態)。
【0120】
表2及び
図2の実施形態1~10は結晶性である。実施形態1s及び1a~1hは、同形構造である。実施形態1sは、点対称な三斜晶空間群P-1で結晶化する。用語「実施形態1」はまとめて、1hを通した同形構造の実施形態1s及び1aを意味する。1hの実施形態を通した、このような1s及び1aのいずれか1つは場合により、実施形態1の同形構造要素であると、又は単に、実施形態1の要素であると称される。実施形態3b、3c、3d、及び3eは同形構造であり、一斜晶形の空間群C 2/cで結晶化する。用語「実施形態3」はまとめて、同形構造の実施形態3b、3c、3d、及び3eを意味する。このような3b、3c、3d、及び3eの実施形態のいずれか1つは場合により、実施形態3の同形構造要素であると、又は単に、実施形態3の要素であると称される。同形構造の実施形態とは、異なる化学的組成(すなわち、結晶格子に組み込まれた異なる溶媒及び/又は水分子)を有しながらも、類似の結晶構造特性(同じ対称性、並びに類似の単位格子パラメータ及び結晶充填)を有するというものである。異なる組成(結晶構造に組み込まれた溶媒又は水)故に、同形構造の実施形態における単位格子パラメータは、わずかに異なる場合がある。表2を参照する実施形態を、
図2に概略的に示すように、そして以下のスクリーニング技術でより詳細に記載するとおりに、調製及び/又は相互転換した。
【0121】
スクリーニングとしては、純溶媒での溶媒平衡、蒸発結晶化、熱時濾過による冷却結晶化、貧溶媒による破砕結晶化、及び熱サイクリングによる結晶化などの結晶化手順が挙げられた。固体をHT-XRPDにより分析した。適用可能な場合、母液を完全に蒸発させ、残りの固形物もまた、HT-XRPDにより分析した。同定された主な固体形態は、一水和物としての出発物質実施形態1sであった。
【0122】
25℃及び50℃での溶媒平衡
20種類の純溶媒に化合物実施形態1sを懸濁することにより、長期スラリー実験を実施し、室温で2週間、及び50℃で1週間撹拌した。平衡時間の終了時に、残留固体を母液から分離した。周囲条件下にて固体を乾燥させ、真空下(5mBar)にて乾燥させた後、HT-XRPDにより分析した。その後、固体を加速エージング条件(40℃/70%の相対湿度)に2日間曝露し、再びHT-XRPDにより分析した。
【0123】
結晶化溶媒の大部分から、実施形態1sとしての出発物質が得られた。いくつかの結晶化溶媒から、HT-XRPDパターンは、最初の実施形態1sのパターンに類似していることが判明した。これらの回折パターンの大部分において、ピークシフト、及び/又は更なるピークが同定された。これらのパターンのそれぞれは、1hを経由した1aの1つとして標識された実施形態と対応し、このような実施形態のHT-XRPD回折パターンの類似性に基づくと、これらは、実施形態1の同形構造要素である実施形態として提示される。40℃及び75%RHに2日間曝露した後、実施形態1の全ての同形構造要素は実施形態1aに転換した。
【0124】
25℃で100%RHに曝露したときに、実施形態1sは水和した実施形態10に転換した。それにもかかわらず、実施形態10は、周囲条件で物理的に安定ではなかった。実施形態1sは、三斜晶系である空間群P-1に結晶化したものの、実施形態10は、単斜晶系である空間群C 2/cに結晶化したことが判明した。実施形態10は、周囲条件下にて限定的な物理的安定性を有し、1s又は1aなどの、別の実施形態に転換した。この挙動は、全ての水和/溶媒和分子の不均一に強力な結合に起因する。この場合、実施形態10は、周囲条件下にて失われる、さほど強力には結合していない、第2の水分子を有する。より正確には、そのような実施形態の20mgのサンプルを、40℃及び70%相対湿度に4日間曝露することにより、実施形態1sの物理的安定性が気候チャンバ内で調査し、同一実施形態の別の20mgのサンプルもまた、4日間25℃及び100%相対湿度に曝露した。4日後、様々な固体サンプルをHR-XRPDにより分析し、結晶格子パラメータを測定し、回折図をインデックスした。回折図を
図6に示す。下から上に、
図6の最初の回折図は、出発物質としての実施形態1sに対応し、2番目は、40℃及び70%相対湿度に4日間曝露した後の同一形態に対応し、同じ図で「1s 70RH」と記載される。この分析により、恐らく、高い含水量を有する別の水和した実施形態であった、第2の結晶形態を少量有したものの、初期の実施形態1sが回収されていたことが明らかとなった。このような形態をインデックスすることは、存在したものが少量であったために不可能であった。3番目の回折図は、25℃及び100%相対湿度に4日間曝露した後の実施形態1sに対応し、同じ図で「10」と記載した。これらの条件により、初期実施形態1sの少量のコンタミネーションがあり、表2に特徴付けられた溶媒和を有する、実施形態1sの実施形態10への転換がもたらされた。脱水時に、実施形態1s及び10はともに、148℃の融点を有する無水形態に再結晶した。
【0125】
室温での溶媒平衡により、結晶化溶媒としてのトルエンが含まれない実施形態1b、及び、結晶化溶媒としてのp-キシレンが含まれない実施形態1fが得られた。
【0126】
3つの更なる固体実施形態を同定し、実施形態2、3、及び7として示した。そのTGA及びDSCをそれぞれ
図21A及び
図21Bに示す実施形態2は、1,4-ジオキサン中室温で実施した溶媒平衡実験から同定したが、実施形態7は、ヘプタンからの50℃における単一溶媒平衡実験で、実施形態1sを含む混合物として見出された。実施形態3の同形構造要素である、実施形態3b、3c、3d、及び3eとしてグルーピングされた、複数の同一ではないが類似の回折図が、同定された。実施形態3の同形構造要素は、実施形態1の要素と混ざっていることが発見された。実施形態3の要素を含有する混合物は、場合によっては実施形態1aに、又は実施形態1aと3eの混合物に転換した。実施形態7は物理的に安定であるようだったが、実施形態2は、AACに2日間曝露した後、実施形態3eに転換した。
【0127】
蒸発結晶化
室温にて実施した溶媒平衡実験で保存した母液を、低速の蒸発結晶化実験に使用した。母液を濾過してあらゆる粒子状物質を除去し、周囲条件下にてゆっくりと蒸発させた。得られた固体をHT-XRPDにより分析し、AACに2日間曝露した後に再び分析した。
【0128】
溶媒のうちのいくつかにおいて式Iの化合物の溶解度が不十分であったことから、このような溶媒を使用した際に固形物は回収されなかった。固体が沈殿した実験においては、実施形態1又は3の非晶質残留物又は同形構造要素が回収された。安定性試験の間、実施形態1の異なる要素が実施形態1aに転換したが、実施形態3のサンプルは物理的に安定であるようであった。場合によっては、非晶質固体は安定性試験の後で非晶質のままであり、溶解性となった、又はいくつかの結晶性の兆候を示した。
【0129】
冷却結晶化
50℃で実施した溶媒平衡実験の母液を50℃で濾過し、あらゆる粒子状物質を除去した。0.2μmのPTFEフィルターを使用して、50℃で懸濁液を濾過し、溶液を5℃で配置し、72時間エージングした。エージングの間に固体が沈殿したとき、これらの固体を液体から分離し、周囲条件下及び真空下にて乾燥させ、HT-XRPDにより分析した。残りの母液をゆっくりと蒸発させ、残りの固体をHT-XRPDにより分析した。沈殿が生じなかったサンプルを真空下に配置し、乾燥した固体をHT-XRPDにより分析した。次に、固体を全てAAC(40℃/70%RHにて2日)に曝露し、HT-XRPDにより再び分析した。
【0130】
溶液のいくつかを冷却する際に固体は沈殿せず、これらの場合においては、溶液は周囲条件下にて蒸発した。いくつかの溶媒においては式Iの化合物の溶解度が低かったことから、いくつかの溶液からは固形物が得られなかった。
【0131】
4種類の溶媒(2-プロパノール、2-ブタノン、アセトニトリル、及びメタノール)から、沈殿が生じた。mLスケールで、800μLのアセトニトリル、25mg/mLの濃度にて一度の冷却結晶化実験の蒸発後、実施形態6を同定した。実施形態6は2日のAAC後、安定した固体状態のようであり、非溶媒和実施形態として現れた。
【0132】
μLスケールでの冷却/蒸発結晶化
12種類の純溶媒、及び12種類の溶媒混合液を使用し、4つの温度プロファイルを適用して、96ウェルプレートにて、μLスケールで冷却/蒸発結晶化実験を実施した。各ウェルにおいて、4mgの実施形態1sを固体で投薬した。その後、結晶化溶媒(80μL)及び溶媒混合液を添加して50mg/mLの濃度に到達させ、各ウェルを個別に密閉したプレートをその後、4つの温度プロファイルの1つに通した。温度プロファイルの完了時に、溶媒を低周囲気圧にて蒸発させ(24時間)、AAC(40℃/70%RH)に2日間曝露する前後で、残りの固形物をHT-XRPDにより分析した。
【0133】
実施形態1及び3の要素が、大部分の溶媒系及び温度プロファイルから発見された。しかしながら、固体状態と温度プロファイルの特定の傾向が観察された。実施形態1bは主に、短い温度プロファイル(3時間のエージング)から同定された。それにもかかわらず、長いエージング時間の同一溶媒系は、実施形態1f、実施形態3の要素、又は実施形態1及び3の要素の混合物の同定につながった。実施形態3cは、結晶化溶媒としての1,4-ジオキサン、及び初期温度として50℃の温度特性から、60分保持し、1℃/h(最終温度20℃)の速度で冷却して48時間保持することで得られた。実施形態3dは、結晶化溶媒としてテトラヒドロフラン、及び実施形態3cと同じ温度プロファイルにより得られた。
【0134】
実施形態4は、短いエージング条件を適用した際に、メタノール/水(50/50、v/v)、THF、及びDCM/IPA(50/50、v/v)で実施した実験にて同定された。実施形態1sを水及びメタノールの混合物(50/50)、及び初期温度として50℃の温度プロファイルで処理し、60分保持し、20℃/h(最終温度5℃)の速度で冷却して3時間保持することにより、実施形態4を得た(実施形態1bとともに実施形態4を得た)。1sを水及びメタノールの混合物(50/50)、及び初期温度として50℃の温度プロファイルで処理し、60分保持し、20℃/h(最終温度20℃)の速度で冷却して3時間保持することによってもまた、実施形態1bとともに実施形態4が得られた。実施形態4は、周囲条件下にて物理的に安定ではないようであった。結晶化溶媒として酢酸エチル/1,4-ジオキサン(50/50、v/v)及び初期温度として50℃の温度プロファイルから、60分保持し、1℃/h(最終温度5℃)の速度で冷却して48時間保持することにより、冷却結晶化実験により実施形態1cが得られた。結晶化溶媒としてアセトニトリル/クロロホルム(50/50、v/v)、及び初期温度として50℃の温度プロファイルから、60分保持し、1℃/h(最終温度5℃)の速度で冷却して48時間保持することにより、実施形態1dが得られた。また、結晶化溶媒として酢酸エチル/1,4-ジオキサン(50/50、v/v)、初期温度として50℃の温度プロファイルから、60分保持し、1℃/h(最終温度20℃)の速度で冷却して48時間保持することにより、実施形態1eが得られた。
【0135】
結晶化溶媒としてクロロホルム、及び初期温度として50℃の温度プロファイルにて実施し、60分保持し、1℃/h(最終温度20℃)の速度で冷却し、48時間保持した実験で、実施形態5が同定された。
【0136】
他の結晶化方法で以前に観察された安定性試験の間に、同様の転換が見られた。ほとんどの場合、全ての固体形態が実施形態1a、又は実施形態1aを含有する混合物に転換した。
【0137】
固体混合物からの蒸発結晶化
溶媒/貧溶媒混合液を用いる蒸発結晶化において、化合物の透明溶液を、最初に溶媒が蒸発するもの(高い蒸気圧)から調製し、化合物をある程度結晶形態で沈殿させた。次いで、これらの結晶は、貧溶媒(低い蒸気圧)が蒸発する際に種として作用する。
【0138】
式Iの化合物は、溶媒系の各々に完全には溶解しなかった。この理由のため、全ての実験には、蒸発前に濾過を含んだ。
【0139】
HT-XRPD分析の結果は、溶媒混合物の蒸発の際に、式Iの化合物が主に実施形態1sとして結晶化されることを示した。これは、以下の溶媒/貧溶媒系で観察された:テトラヒドロフラン/水、アセトニトリル/水、クロロホルム/エタノール、メタノール/酢酸エチル、2-ブタノン/イソプロパノール、及びヘプタン/アセトン。2つの系(アセトン/クメン、及び1,4-ジオキサン/ギ酸エチル)から、同形構造の実施形態3b及び3eが同定され、これらはAAC後、それぞれ実施形態1aと3d、及び1sと3eの、異なる混合物に転換した。
【0140】
貧溶媒結晶化
式Iの化合物の飽和溶液を未希釈溶媒中で調製した。貧溶媒の添加を、順添加及び逆添加で行った。順添加では、貧溶媒を3つのアリコートで化合物溶液に添加した。ある体積の化合物溶液を、非常に過剰な貧溶媒(20mL)に添加することにより、逆添加を実施した。
【0141】
沈殿後、固体を液体から分離し、周囲条件下にて乾燥させ、真空下(5mbar)にて乾燥させてから、HT-XRPDにより分析した。貧溶媒添加時に沈殿が生じなかった実験を5℃で48時間保管し、沈殿を誘発した。沈殿した固体をその後分離して、HT-XRPDにより分析した。固体が得られなかった場合、穏やかな条件下で固体を蒸発させ、残留固体をHT-XRPDにより分析した。全ての固体をAAC(40℃/70%RHにて2日)に曝露し、HT-XRPDにより再び分析した。
【0142】
順貧溶媒結晶化は、全ての場合において沈殿を示した。全ての固体を、実施形態1の同形構造要素(1s、1b、1j、1f)、又は実施形態3の同形構造要素(3b、3d、3f)として分類することが可能であった。AACへの曝露後、実施形態1a及び3eの混合物に転換したものを除いて、全ての固体サンプルが実施形態1aに転換した。
【0143】
溶媒としてのDMSOで実施した、逆貧溶媒結晶化実験では、使用した貧溶媒に応じて異なる固体形態が得られた。ジクロロメタン又はp-キシレンを用いると、実施形態1の同形構造要素(1s及び1b)が同定されたが、MTBEを用いると、非晶質残留物が得られた。貧溶媒としてヘプタン及び水を用い、貧溶媒の添加時に沈殿がなかった2つの溶液を蒸発させると、油が得られた。AAC後に実施形態1aの転換が観察され、非晶質残留物は結晶性となった。
【0144】
高温濾過実験
異なる溶媒混合液中において50℃で調製した式Iの化合物の過飽和溶液から、高温濾過を伴う冷却結晶化実験を行った。熱時濾過溶液を、48時間の冷却プロファイルに通した。温度プロファイル後に沈殿した固体があるバイアル瓶を遠心分離にかけ、液体から固体を分離し、(真空下にて乾燥後)HT-XRPDにより分析した。固体が沈殿しなかった場合、溶液を真空下にて蒸発させ、固体をHT-XRPDにより分析した。固体を全てAAC(40℃/70%RHにて2日)に曝露し、HT-XRPDにより再び分析した。高温濾過実験の半分では沈殿が生じず、これらの溶媒系への式Iの化合物の溶解度が不十分であることから、溶媒の蒸発時に十分な固形物が回収されなかった。3つの実験において、非晶質残留物を転換し、AAC後に結晶化して、実施形態1(1s又は1a)及び3(3e)の要素の混合物となった、あるいは溶解性となった。実施形態5は、アセトン/クロロホルム(50/50、v/v)の実験から同定した。実施形態1aへの転換がAAC後に観察されたため、本実施形態は物理的に不安定であるようであった。
【0145】
熱サイクル実験
10種類の溶媒で、室温にて約6mgの実施形態1sの懸濁液を調製した。懸濁液を5℃~50℃でサイクルした。熱サイクルの完了時に、固体を遠心分離により分離し、周囲条件下及び真空下(5mbar)にて乾燥させた後、HT-XRPDにより分析した。続いて、全ての固体をAACに2日間曝露し、HT-XRPDにより再び分析した。熱サイクル実験は通常、より安定な多型形態の形成を容易にする。シクロヘキサノンで実施した実験を除いて、全てのバイアル瓶は、熱プロファイル後に固体を含有した。シクロヘキサノン溶液を、中真空下にてゆっくりと蒸発させた。実施形態1、3、又はこれらの混合物の要素は、主に湿った固体で同定された。これらの固体の乾燥時に、実施形態1sへの転換が観察された。実施形態3b及び3eを、51mg/mLの濃度の、300μLのシクロヘキサノンの熱サイクル(3b)、及び37.3mg/mLの濃度の、400μLのイソブタノール(3e)の熱サイクルから得た。18.6mg/mLの濃度の、800μLのクロロホルムの熱サイクルにより、実施形態5を得た。
【0146】
図3、
図4、及び
図5は、表2に記載し、上述のスクリーニングでも参照した実施形態の、HT-XRPDパターンのオーバーレイを示す。
【0147】
実施形態1sは、結晶化実験の大部分から転換された。これは、周囲条件に応じて、多数の水分子及び/又は他の溶媒が組み込まれた、チャネル水和物である。実施形態1aへの転換が観察された。この形態は、わずかに多い水(1.3分子の水)を含有した。40℃及び75%RHに2日間曝露した後、実施形態1の全ての同形構造要素は実施形態1aに転換した。実施形態1の要素に対するXRPDパターンのいくつかの回折ピークのシフトは、結晶格子に組み込まれた異なる溶媒又は水分子が原因である可能性がある。
図4は、実施形態1の要素のHT-XRPDパターンのオーバーレイを示す。ディフラクトグラム1sは、実施形態1sの形態の出発物質としての式Iの化合物に対応する。回折
図1aは、いくつかの実施形態1sのサンプルをAACに曝露した後に得られた実施形態1aに対応する。回折
図1bは、トルエンでの室温における溶媒平衡実験から得られた実施形態1bに対応する。ディフラクトグラム1cは、μLスケールでの、酢酸エチル/1,4-ジオキサン(50/50、v/v)での冷却結晶化実験から得られた実施形態1cに対応する。回折
図1cは、μLスケールでの、アセトニトリル/クロロホルム(50/50、v/v)での冷却結晶化実験から得られた実施形態1dに対応する。ディフラクトグラム1eは、μLスケールでの、酢酸エチル/1,4-ジオキサン(50/50、v/v)での冷却結晶化実験から得られた実施形態1eに対応する。回折
図1fは、p-キシレンでの室温における溶媒平衡実験から得られた実施形態1fに対応する。回折
図1gは、アニソールでの50℃における溶媒平衡実験から得られた実施形態1gに対応する。回折
図1hは、μLスケールでの、p-キシレンでの冷却結晶化実験から得られた実施形態1hに対応する。
【0148】
実施形態3の要素についての回折図を、
図5に示す。異なるHT-XRPDパターンで観察されたシフトは大部分が、結晶格子に組み込まれた異なる溶媒分子が原因である可能性がある。実施形態2を40℃に、70%RHで4日間加熱することにより、実施形態3を得た。実施形態3b~3eは、結晶構造に組み込まれた溶媒に応じて変化する、非理論量の溶媒(0.3~0.7分子)を含有する溶媒和形態である。実施形態3の要素を含有する混合物は、AACへの曝露時に不安定であり、これらは場合によっては、実施形態1a、又は実施形態1aと3eの混合物に転換した。実施形態1aへの転換は、高い相対湿度への曝露時における、水分子による溶媒分子の交換、及び、水和した実施形態1aへの再結晶が原因である。
【0149】
実施形態2を約200℃の温度まで加熱し、続いて25℃まで冷却すること、及びまた、DSC25-200-25-300℃のサイクルにより、実施形態9を得た。
【0150】
実施形態9は、更なる手順によっても得られた。このような手順の1つは、2段階手順であった:実施形態1s(1.5g)を、RTにおいて1,4-ジオキサン(10体積)で処理した。実施形態2のシード(5mg)を添加し、サンプルをRTで24時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、サンプルを1.5時間風乾した。XRPDによって、このサンプルは実施形態2であると決定された。この2段階手順の第2の段階では、実施形態2を10℃/分で210℃に加熱し、210℃で30分間保持した。次いで、サンプルをRTまで放冷した。XRPD分析によって、得られた固形物は実施形態9であると決定された。別のこのような手順も、実施形態9を得るための2段階手順であった。この手順では、実施形態1s(1.5g)を1,4-ジオキサン(10体積)で処理した。実施形態2のシード(5mg)を添加し、サンプルをRTで24時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、サンプルを1.5時間風乾した。XRPDによって、このサンプルは実施形態2であると決定された。この手順の第2の段階では、実施形態2を10℃/分で150℃に加熱した後、2℃/分で170℃に更に加熱した。次いで、サンプルをRTまで放冷した。XRPD分析によって、得られた固形物は実施形態9であると決定された。実施形態9のTGA及びDSCを、それぞれ
図22A及び
図22Bに示す。
【0151】
実施形態1sは、実施形態9を50℃で6日間以下の溶媒中でスラリーにすることによって得られた:2-ブタノン、アセトン/水(90/10、v/v)及びアセトニトリル/水(90/10、v/v)。実施形態1sは、同じ実験を室温で実施した場合にも得られた。
【0152】
実施形態5を約175℃の温度に加熱することにより、実施形態8が得られた。実施形態8は、更なる手順によっても得られた。このような手順の1つは、2段階手順であった:実施形態1s(1.5g)を1,4-ジオキサン(10体積)で処理し、RTで72時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、得られた固形物を真空オーブン内においてRTで16時間乾燥させた。この第1の段階から得られた固形物は、XRPDによって実施形態3cであると決定された。第2の段階では、実施形態3c(100mg)を10℃/分で150℃に加熱した後、2℃/分のより遅い速度で180℃まで加熱した。次いで、サンプルを放冷しRTまで戻した。得られた固形物は、XRPDによって実施形態8であると決定された。別のこのような手順も、実施形態8を得るための2段階手順であった。この手順では、実施形態19(300mg)を、1,4-ジオキサン(3体積)で処理し、60℃で24時間振盪した。得られた懸濁液を濾過し、この第1の段階から得られた固形物は、XRPDによって実施形態3cであると決定された。第2の段階では、実施形態3c(300mg)を10℃/分で180℃に加熱した。次いで、サンプルを放冷しRTまで戻した。得られた固形物は、XRPDによって実施形態8であると決定された。実施形態8のTGA及びDSCを、それぞれ
図20A及び
図20Bに示す。
【0153】
上記の実施形態6の調製に加えて、この実施形態は、周囲温度から185℃まで10℃/分で熱重量分析することにより、実施形態11(80~100mg)(その調製については以下に記載する)を加熱することによって得られ、これを3分間等温保持した。次いで、サンプルをRTまで放冷した。実施形態6は、スラリー実験に供することによって実施形態11からも得られた。スラリー実験は以下のように実施した:溶媒を実施形態11(50mg)に添加し、混合物を指定温度で0.5時間撹拌した。形態9のシード結晶(5mg)を添加し、混合物を指定温度で一晩撹拌した。固形物を遠心分離により単離し、30℃及び50℃の両方で酢酸イソプロピル(0.5mL)を使用してXRPDにより分析した。実施形態6の生成をXRPDにより確認した。実施形態6のTGA及びDSCを、それぞれ
図19A及び
図19Bに示す。
【0154】
式Iの化合物の更なる実施形態は、下記のように得られた。
【0155】
実施例5をスラリー実験に供することによって実施例9に変換した。スラリー実験は、特定された温度で様々な溶媒を使用して、以下のように実施した:実施形態5(50mg)に溶媒を添加し、混合物を指定温度で0.5時間撹拌した。形態9のシード結晶(5mg)を添加し、混合物を指定温度で一晩撹拌した。固形物を遠心分離により単離し、XRPDにより分析した。以下の溶媒を使用して、50℃でのスラリー実験を実施した:TBME(0.75mL)及び酢酸イソプロピル:ヘプタンの33:67混合物(0.5mL)。以下の溶媒を使用して、75℃でのスラリー実験を実施した:酢酸イソプロピル(0.5mL)及びメチルエチルケトン(0.5mL)。
【0156】
実施形態11は、以下のように得られた:50℃のエタノール(絶対、含水量<0.1%、300mL)中実施形態1s(45g)の懸濁液を、16.5時間撹拌した。次いで、懸濁液を0.25℃/分で5℃に冷却した。その後、溶液を5℃で3時間撹拌した。次いで、固形物を濾別し、冷(5℃)エタノール(絶対、含水量<0.1%、90mL)で洗浄し、40℃で、17時間真空下で乾燥させて、約39gの実施形態11を得た。実施形態11のTGA及びDSCを、それぞれ
図17A及び
図17Bに示す。
【0157】
実施形態11はまた、以下のとおり得られた:絶対エタノール(170mL)を実施形態1s(19g)に添加し、溶媒の沸点付近まで加熱した。少量の固形物(5%)は溶解せず、熱濾過により除去した。濾別された固形物は実施形態1sであると決定された。そのため、固形物を濾液に戻し入れ、全ての固形物が溶解するまでこの混合物を加熱した。この高温溶液に、分液漏斗を介してヘプタン(535mL)を滴加した。ヘプタンの滴加中、高温溶液を激しく撹拌した。ヘプタンの添加が完了した後、高温溶液/ヘプタン混合物を入れたフラスコを氷水浴に浸し、1時間激しく撹拌した。次いで、濾過によって固形物を回収し、15分間にわたって空気を引くことによって白色固形物の濾過ケーキを乾燥させた。これを高真空下において70℃で16時間加熱することによって更に乾燥させた後、80℃で18時間加熱して、16.3gの実施形態11を得た。実施形態11のディフラクトグラムを
図7に示す。
【0158】
実施形態11の吸湿性試験では、ほんのわずかに吸湿性であることが見出され、
図18に示すGVS分析において0~90%RHの間の質量変化は0.66%であった。GVS分析後のXRPD分析は、物質が物理的に安定であることを示した。加熱時の実施形態11の安定性を評価するために、可変温度(VT)-XRPDを実施した。約175℃の温度に曝露されたとき、XRPD分析によって示されるように物質は変化しないままであったが、180℃を超えると、サンプルは実施形態6に変換された。実施形態6のディフラクトグラムとともに、VT-XRPD実験の前後の実施形態11のディフラクトグラムを
図24に示す。実施形態11をまた、40℃/75%RHで最大48日間静的保存分析に供した。2日、5日、及び48日後に、XRPD及びカールフィッシャー(Karl Fisher、KF)によってサンプルを分析した。XRPD分析によって示されるように実施形態11は変化しないままであり、48日後の合計水取り込み率は1.2%であった。48日間の静的保存後、物質の
1H-NMRは、物質が0.36モル当量のエタノールを保持していることを示した。実験期間にわたって周囲条件下で保存した実施形態11は、
1H-NMRにより0.46モル当量のエタノールを含有することが示された。
【0159】
実施形態11bは、以下のとおり実施形態1sから得られた:10mLの乾燥メタノールを、3.3gの実施形態1sに添加した。この混合物を以下の温度サイクリングに供した:混合物を40℃で1時間加熱した後、2時間かけて温度を60℃に上昇させた。次いで、混合物を60℃で1時間撹拌した。次いで、2時間にわたって温度を40℃に低下させた。この温度サイクリングレジームを合計約20時間にわたって繰り返した。この時点で、混合物を2時間かけて5℃に冷却した。固形物を真空濾過によって5℃で単離し、次いで、周囲温度において真空下で約66時間乾燥させた。あるいは、実施形態11bは、実施形態1sから以下の手順を用いて得られた:1mLの乾燥メタノールを、330mgの実施形態1sに添加した。この混合物を以下の温度サイクリングに供した:混合物を40℃で1時間加熱した後、2時間かけて温度を60℃に上昇させた。次いで、混合物を60℃で1時間撹拌した。次いで、2時間にわたって温度を40℃に低下させた。この温度サイクリングレジームを、合計約18時間にわたって繰り返した。この時点で、固形物を遠心分離により単離し、次いで、周囲温度において真空下で約33時間乾燥させた。モレキュラーシーブ(3Å、100℃、真空下で少なくとも24時間活性化)を使用して、上記実験のためのメタノールを乾燥させた。実施形態11bのディフラクトグラムを
図7Eに示す。
【0160】
実施形態12は、実施形態1sから得られ、これを25℃で10%RH未満の湿度条件に曝露して、実施形態12を提供した。実施形態12のディフラクトグラムを
図7Bに示す。
【0161】
実施形態13は、以下のように得られた:25±5℃の250mLの4つ口フラスコに、実施形態1sのサンプルを添加した。次いで、フラスコにMeOH(4.0V、40mL)及び精製水(10mL、1.0V)を仕込み、全ての固形物が溶解するまで撹拌した。N
2を混合物中に1時間通気し、次いで、混合物を0~5℃に冷却した。0℃でN
2下、100mLの4つ口フラスコに充填した精製水(40mL)を用いて、0.225mLの体積のNaBH
4/水(0.006当量、2.5%w/w)の冷却溶液(0~5℃)を調製し、続いて、NaBH
4(1.0g)を添加した。全てのNaBH
4が溶解するまで、混合物を0℃で撹拌した。かかるNaBH
4溶液を、250mLのフラスコに添加し、冷却し(0~5℃)し、0~5℃で撹拌した。反応混合物の色が黄色に変化した。精製水(40mL、4.0V、使用前にN
2で脱気)を0~5℃で1時間かけて滴加した。反応物を、N
2下、0~5℃で4時間撹拌した。追加の精製水(30mL、3.0V、脱気)を0~5℃で1時間かけて滴加し、反応混合物を、N
2下、0~5℃で更に16時間撹拌した。次いで、反応物を濾過し、得られた固形物を、N
2下、グローブボックス環境(O
2含有量は200ppmである)において、精製水(20mL、2V、使用前にN
2で脱気)で洗浄した。固形物を、35±5℃で加湿窒素を用いて真空下で乾燥させて、実施形態13をオフホワイト固形物として得た。実施形態13のディフラクトグラムを
図7Cに示す。
【0162】
実施例14は、以下のように調製した:2-(1-((1r,4r)-4-(シアノメチル)シクロヘキシル)-6-(フェニルスルホニル)-1,6-ジヒドロイミダゾ[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジン-2-イル)-N-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)アセトアミド(48.15kg、実施例2で調整、工程B)、EtOH(テクニカルグレード、481L)、及びKOH(6.613kg)を、10~20℃で9時間撹拌した。次いで、温度を10~20℃に維持しながら、反応物を酢酸(6.74L)でクエンチした。アセトニトリル(240L)を添加し、溶媒を約240Lの体積になるまで減圧下で蒸発させた。このアセトニトリルの添加及び蒸発を更に2回繰り返した。得られた混合物を5時間にわたって60~70℃に加熱した後、それを10~15℃に冷却し、2時間撹拌した。この混合物中の固形物を濾別し、アセトニトリル(48L)で2回洗浄した。次いで、固形物を水(240L)に添加し、反応混合物を3~5時間にわたって45~50℃に加熱した後、4時間にわたって15~20℃に冷却した。残った固形物を濾別し、濾過ケーキを水(96L、2回)で洗浄した。この濾過ケーキを45℃で乾燥させて、実施形態14(26.28kg)を得た。実施形態14のディフラクトグラムを
図7Dに示す。
【0163】
式Iの化合物の更なる実施形態は、下記のように得られた。
【0164】
溶解性の評価
物質が完全に溶解するまで、又は最大100mLの溶媒が添加されるまで、実施形態1s(15mg)を漸増体積の溶媒で処理した。溶媒を、5mL、10mL、20mL、30mL、40mL、50mL、70mL及び100mLの増分で添加した。溶媒の各添加後、系を穏やかに撹拌しながら50℃で5分間保持し、固形物の存在について目視評価した。合計100mLの溶媒が添加されるまで、このプロセスを継続した。固形物が残っていなかった場合、追加の溶媒は添加しなかった。評価が完了した後、溶液を50℃で1時間保持し、次いで、撹拌しながら50℃から5℃まで0.1℃/分で冷却した。固形物が存在していた場合、混合物を真空下で96ウェルプレートを用いて濾過し、XRPDにより分析した。透明な溶液が得られた場合、溶液を放置してRTで蒸発させた。5℃及び50℃の温度の以下の溶媒(溶媒の直後の括弧内に添加した総量を記載)をこの手順に従って使用(各温度の後の括弧内に溶解の程度を記載)して、記載する実施形態を得た:5℃(懸濁液)及び50℃(懸濁液)の水(100mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(溶液)のメタノール(10mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(溶液)のエタノール(30mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(溶液)の2-プロパノール(30mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(溶液)の1-プロパノール(30mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(溶液)のアセトン(100mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(濁り)の酢酸エチル(100mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(溶液)のアセトニトリル(100mL)では、ディフラクトグラムを
図3に示す実施形態6が得られ;5℃(部分的に溶解)及び50℃(濁り)のトルエン(100mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(濁り)の酢酸イソプロピル(100mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(懸濁液)のメチルt-ブチルエーテル(100mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(溶液)の2-ブタノン(100mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(部分的に溶解)及び50℃(溶液)のTHF(70mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(溶液、サンプルを冷凍し、放置してRTで蒸発させた)及び50℃(溶液)のDMSO(5mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(溶液、放置してRTで蒸発させた)及び50℃(溶液)のN-メチルピロリジノン(5mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(懸濁液)のジエチルエーテル(100mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(懸濁液)のメチルイソブチルケトン(100mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(懸濁液)のDCM(100mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(懸濁液)のヘプタン(100mL)では、ディフラクトグラムを
図8に示す実施形態18が得られ;5℃(部分的に溶解、サンプルを冷凍し、放置してRTで蒸発させた)及び50℃(懸濁液)の1,4-ジオキサン(100mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す乾燥形態の実施形態3cが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(懸濁液)のニトロメタン(100mL)では、結晶性の低い実施形態(ディフラクトグラムは示さず)が得られ;5℃(溶液)及び50℃(溶液)の1-メトキシ-2-プロパノール(20mL)では、ディフラクトグラムを
図11に示す乾燥形態の実施形態20が得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(懸濁液)の2-メチル-THF(100mL)では、ディフラクトグラムを
図8に示し、TGA及びDSCをそれぞれ
図10A及び
図10Bに示す実施形態18が得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(濁り)のテトラリン(100mL)では、ディフラクトグラムを
図3に示す実施形態4及び実施形態1bの混合物が得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(溶液)の3-メチル-1-ブタノール(100mL)では、ディフラクトグラムを
図8に示し、TGA及びDSCをそれぞれ
図12A及び
図12Bに示す実施形態17が得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(濁り)のアニソール(100mL)では、ディフラクトグラムを
図3に示す実施形態4及び実施形態1bの混合物が得られ;5℃(溶液)及び50℃(溶液)でのt-ブタノール/水(1:1、10mL)では、変調DSCを
図9に示す乾燥形態の実施形態19が得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(濁り)の1,2-ジメトキシエタン(100mL)では、ディフラクトグラムを
図3に示す実施形態4及び実施形態1bの混合物が得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(濁り)のクメン(100mL)では、ディフラクトグラムを
図3に示す実施形態4及び実施形態1bの混合物が得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(懸濁液)のジイソプロピルエーテル(100mL)では、ディフラクトグラムを
図8に示す実施形態18が得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(溶液)のモルホリン(5mL)では、ディフラクトグラムを
図11に示す乾燥形態の実施形態21が得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(溶液)のエタノール:水(95:5、10mL)では、結晶性の低い実施形態が得られ(ディフラクトグラムは示さず);5℃(溶液)及び50℃(溶液)のエタノール:水(9:1、5mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す乾燥形態の実施形態1sが得られ;5℃(懸濁液)及び50℃(溶液)のアセトニトリル:水(95:5、30mL)では、結晶性の低い実施形態が得られ(ディフラクトグラムは示さず)。
【0165】
5℃でのインキュベーション
実施形態1s(30mg)を各溶媒で処理することによって、5℃でのインキュベーションのいくつかの実験を実施し、混合物を5℃で48時間スラリーにした。アリコートを採取し、XRPDにより直ちに分析した。各アリコートを16時間乾燥させ、XRPDにより再分析した。次いで、風乾させたサンプルを真空オーブン(RT)に24時間入れた後、XRPDにより更に分析した。以下の溶媒(溶媒の直後の括弧内に添加した総溶媒量、続いて溶解の程度を記載)をこの手順に従って使用して、記載する実施形態を得た:水(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;メタノール(5mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;エタノール(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;2-プロパノール(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;1-プロパノール(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;アセトン(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;酢酸エチル(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;アセトニトリル(30mL、懸濁液)では、結晶性の低い実施形態(ディフラクトグラムは示さず)が得られ;トルエン(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図8に示す実施形態15が得られ;酢酸イソプロピル(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図8に示す実施形態17が得られ;メチルt-ブチルエーテル(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図8に示す実施形態18が得られ;2-ブタノン(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;THF(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図8に示す実施形態17が得られ;ジエチルエーテル(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;メチルイソブチルケトン(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図8に示す実施形態17が得られ;DCM(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;ヘプタン(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;1,4-ジオキサン(30mL、懸濁液)では、この実験からのディフラクトグラムを
図5に示す実施形態3cが得られ;ニトロメタン(30mL、懸濁液)では、結晶性の低い形態の実施形態1sが得られ(ディフラクトグラムは示さず);プロピレングリコール(30mL、懸濁液)では、結晶性の低い実施形態(ディフラクトグラムは示さず)が得られ;2-メチル-テトラヒドロフラン(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図8に示す実施形態18が得られ;テトラリン(30mL、懸濁液)では、結晶性の低い実施形態1sが得られ(ディフラクトグラムは示さず);3-メチル-1-ブタノール(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図8に示す実施形態18が得られ;アニソール(30mL、懸濁液)では、実施形態1sが得られ、そのディフラクトグラムは、いくつかの追加のピークを示すことを除いて、(
図5に示す)実施形態1sと類似しており;1,2-ジメトキシエタン(30mL、懸濁液)では、実施形態1sが得られ、そのディフラクトグラムは、いくつかの追加のピークを示すことを除いて、(
図5に示す)実施形態1sと類似しており;クメン(30mL、懸濁液)では、実施形態1sが得られ、そのディフラクトグラムは、いくつかの追加のピークを示すことを除いて、(
図5に示す)実施形態1sと類似しており;ジイソプロピルエーテル(30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図8に示す実施形態17が得られ;エタノール:水(95:5、30mL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;アセトニトリル:水(95:5、30mL、懸濁液)では、結晶性の低い実施形態が得られ(ディフラクトグラムは示さず);ポリエチレングリコール(30mL、懸濁液)では、結晶性の低い実施形態(ディフラクトグラムは示さず)が得られた。
【0166】
熱/冷却成熟
各溶媒中の実施形態1s(30mg)の懸濁液を、プラットフォームシェーカーインキュベーターに入れ、24時間にわたって周囲温度から約50℃まで一連の熱冷却サイクルに供した。これは、4時間毎に加熱のスイッチを切り替えることによって達成した。全体にわたって振盪を維持した。各サンプルからアリコートを採取し、2時間風乾させた。風乾した固形物をXRPDにより分析した後、真空オーブン(RT、24時間)を使用して真空乾燥させ、XRPDにより再分析した。この実験で得られた各サンプルを真空乾燥し、真空乾燥後、各サンプルを高温でXRPDインキュベーションにより分析した。以下の溶媒(溶媒の直後の括弧内に添加した総溶媒量を記載)をこの手順に従って使用して、記載する実施形態を得た:水(20mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;メタノール(5mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態22が得られ;エタノール(5mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;2-プロパノール(10mL)では、この実験についてのディフラクトグラムを
図13に示す実施形態27が得られ;1-プロパノール(10mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態23が得られ;アセトン(20mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;酢酸エチル(20mL)では、実施形態1sの低結晶性形態が得られ(ディフラクトグラムは示さず);アセトニトリル(20mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す結晶性の低い実施形態24が得られ;トルエン(20mL)では、結晶性の低い実施形態1sが得られ(ディフラクトグラムは示さず);酢酸イソプロピル(20mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態18が得られ;メチルt-ブチルエーテル(20mL)では、結晶性の低い実施形態1sが得られ(ディフラクトグラムは示さず);2-ブタノン(20mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態26が得られ;THF(20mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態18が得られ;ジエチルエーテル(20mL)では、結晶性の低い実施形態1sが得られ(ディフラクトグラムは示さず);メチルイソブチルケトン(20mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態25が得られ;DCM(20mL)では、結晶性の低い形態の実施形態1sが得られ(ディフラクトグラムは示さず);ヘプタン(20mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;1,4-ジオキサン(20mL)では、この実験についてのディフラクトグラムを
図13に示す実施形態27が得られ;キシレン(20mL)では、低結晶性の実施形態1sが得られ(ディフラクトグラムは示さず);プロピレングリコール(5mL)では、低結晶性の実施形態が得られ(ディフラクトグラムは示さず);2-メチル-テトラヒドロフラン(20mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態18が得られ;テトラリン(20mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;3-メチル-ブタノール(20mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態18が得られ;アニソール(20mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示し、TGA及びDSCをそれぞれ
図23A及び
図23Bに示す実施形態16が得られ;1,2-ジメトキシエタン(20mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態29が得られ;クメン(20mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;ジイソプロピルエーテル(20mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態17が得られ;エタノール:水(95:5、20mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態30が得られ;アセトニトリル:水(95:5、20mL)では、実施形態1sの結晶性の低い形態が得られ(ディフラクトグラムは示さず);ポリエチレングリコール(5mL)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態31が得られた。
【0167】
60℃における実施形態1sのインキュベーション
実施形態1s(30mg)を溶媒で処理し、60℃で24時間振盪した。アリコートを取り出し、16時間風乾させた。次いで、乾燥したサンプルをXRPDにより分析した。以下の溶媒(溶媒の直後の括弧内に添加した総溶媒量を記載)をこの手順に従って使用して、記載する実施形態を得た:水(10mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;エタノール(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態32が得られ;2-プロパノール(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;1-プロパノール(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態23が得られ;アセトン(10mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;酢酸エチル(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態34が得られ;アセトニトリル(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態35が得られ;トルエン(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態36が得られ;酢酸イソプロピル(10mL)では、この実験についてのディフラクトグラムを
図14に示す実施形態25が得られ;メチルt-ブチルエーテル(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態35が得られ;2-ブタノン(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態38が得られ;THF(10mL)では、この実験についてのディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;ジエチルエーテル(10mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;メチルイソブチルケトン(10mL)では、この実験についてのディフラクトグラムを
図14に示す実施形態25が得られ;DCM(10mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;ヘプタン(10mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;1-4-ジオキサン(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;ニトロメタン(10mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;プロピレングリコール(10mL)では、この実験についてのディフラクトグラムを
図14に示す実施形態28が得られ;2-メチル-テトラヒドロフラン(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;テトラリン(10mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1s及び変調DSCプロファイルを
図9に示す実施形態19の混合物(混合物のディフラクトグラムは図示しない)が得られ;3-メチル-1-ブタノール(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;アニソール(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態36が得られ;1,2-ジメトキシエタン(10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態34が得られ;クメン(10mL)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;ジイソプロピルエーテル(10mL)では、ディフラクトグラムを
図8に示す実施形態17が得られ;水(95:5、10mL)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態28が得られ、ポリエチレングリコール(5mL)では、この実験のディフラクトグラムを
図14に示す実施形態39が得られた。
【0168】
高温成熟
複数の実施形態19(25mg)のサンプルのそれぞれを、以下に指定する量の溶媒で処理し、順に複数のサンプルが得られ、それぞれ60℃で24時間撹拌した。各サンプルから固形物を単離し、16時間風乾し、XRPDにより分析した。以下の溶媒(溶媒の直後の括弧内に添加した総溶媒量、続いて溶解の程度を記載)をこの手順に従って使用して、記載する実施形態を得た:水(125μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;メタノール(125μL、懸濁液)では、実施形態1sが得られ、そのディフラクトグラムは、いくつかの追加のピークを示すことを除いて、
図5に示す実施形態1sのディフラクトグラムと類似しており;エタノール(125μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;2-プロパノール(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図15に示す実施形態37が得られ;1-プロパノール(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図15に示す実施形態40が得られ;アセトン(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;酢酸エチル(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;アセトニトリル(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;トルエン(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;酢酸イソプロピル(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図15に示す実施形態37が得られ;メチルt-ブチルエーテル(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;2-ブタノン(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;THF(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図15に示す実施形態37が得られ;ジエチルエーテル(150μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;メチルイソブチルケトン(150μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;DCM(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;ヘプタン(150μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図15に示す実施形態41が得られ;1.4-ブタノン(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態3cが得られ;ニトロメタン(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図15に示す実施形態42が得られ;プロピレングリコール(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図15に示す実施形態43が得られ;2-メチル-テトラヒドロフラン(150μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;テトラリン(150μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;3-メチル-1-ブタノール(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;アニソール(150μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;1,2-ジメトキシエタン(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;クメン(150μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図15に示す実施形態44が得られ;ジイソプロピルエーテル(150μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;エタノール:水(95:5、75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図15に示す実施形態45が得られ;アセトニトリル:水(95:5、75μL、懸濁液)では、
図5に示すディフラクトグラムと比較して、ディフラクトグラムが細胞増殖を示す実施形態1sが得られ;ポリエチレングリコール(75μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図15に示す実施形態46が得られた。
【0169】
熱サイクリング
複数の実施形態19(25mg)のサンプルのそれぞれを、以下に指定する量の溶媒で処理し、順に複数のサンプルが得られ、各サンプルを24時間熱サイクリング(40~60℃、4時間サイクル)によって成熟させた。固形物を単離し、16時間風乾し、XRPDにより分析した。以下の溶媒(溶媒の直後の括弧内に添加した総溶媒量、続いて、24時間目に観察された外観)をこの手順に従って使用して、記載する実施形態を得た:水(125μL、帯緑色の固形物)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;メタノール(75μL、透明な固形物)では、ディフラクトグラムが、
図7のディフラクトグラムと比較して、高角度でシフトしたピークを示した実施形態11が得られ;エタノール(100μL、帯緑色の固形物)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;2-プロパノール(75μL、帯黄色の固形物)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;1-プロパノール(75μL、白色の懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;アセトン(75μL、帯緑色の固形物)では、ディフラクトグラムを
図16に示す実施形態47が得られ;酢酸エチル(75μL、白色の懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;アセトニトリル(75μL、白色の懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図3に示す結晶性の低い実施形態6が得られ;トルエン(75μL、透明な固形物)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態36が得られ;酢酸イソプロピル(75μL、白色の固形物)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;メチルt-ブチルエーテル(75μL、白色の懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図3に示す実施形態6が得られ;2-ブタノン(75μL、オフホワイトの固形物)では、ディフラクトグラムを
図14に示す実施形態33が得られ;THF(75μL、オフホワイトの固形物)では、ディフラクトグラムを
図16に示す実施形態48が得られ;ジエチルエーテル(150μL、オフホワイトの固形物)では、ディフラクトグラムを
図16に示す実施形態49が得られ;メチルイソブチルケトン(150μL、オフホワイトの固形物)では、ディフラクトグラムが
図13に示す実施形態25のディフラクトグラムと非常に類似している実施形態25が得られ;DCM(125μL、懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態1sが得られ;ヘプタン(150μL、白色の固形物)では、変調DSCプロファイルを
図9に示す実施形態19が得られ;1,4-ジオキサン(75μL、白色の固形物)では、ディフラクトグラムを
図5に示す実施形態3cが得られ;ニトロメタン(75μL、白色の懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図16に示す実施形態50が得られ;プロピレングリコール(75μL、クリーム色の懸濁液)では、ディフラクトグラムが非晶質ハロを示すことを除いて、(
図16に示す)実施形態10のディフラクトグラムと非常に類似している実施形態10が得られ;2-メチル-テトラヒドロフラン(150μL、白色の固形物)では、ディフラクトグラムを
図16に示す実施形態48が得られ;テトラリン(150μL、白色の固形物)では、結晶性の低い実施形態が得られ(ディフラクトグラムは示さず);3-メチル-1-ブタノール(75μL、白色の懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図13に示す実施形態25が得られ;アニソール(150μL、白色の懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図16に示す実施形態51が得られ;1,2-ジメトキシエタン(75μL、白色の懸濁液)では、ディフラクトグラムを
図16に示す実施形態52が得られ;クメン(150μL、白色の固形物)では、結晶性の低い実施形態が得られ(ディフラクトグラムは示さず);ジイソプロピルエーテル(150μL、白色の固形物)では、ディフラクトグラムを
図3に示す実施形態6が得られ;エタノール:水(95:5、75μL、透明な固形物)では、ディフラクトグラムを
図7に示す実施形態11が得られ;アセトニトリル:水(95:5、75μL、透明な固形物)では、ディフラクトグラムが
図16に示す実施形態53が得られ;ポリエチレングリコール(75μL、淡いピンク色の懸濁液)では、ディフラクトグラムが非晶質ハロを示すことを除いて、(
図13に示す)実施形態31のディフラクトグラムと非常に類似している実施形態31が得られる。
【0170】
式Iの化合物の実施形態11、11b、12、13、14、15、16、17、18、19、20、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、及び53のうちのいずれか1つ並びにそれらの任意の組み合わせは、本発明による化合物の実施形態である。本発明による化合物の更なる他の実施形態は、非吸湿性溶媒和物としての式Iの化合物(例えば、式Iの化合物の実施形態11)を含む。本発明による化合物の更なる他の実施形態は、非晶質形態の式Iの化合物(例えば、式Iの化合物の実施形態19)を含む。式Iの化合物の実施形態11、16、17、及び18のうちのいずれか1つ並びにそれらの任意の組み合わせは、本発明による化合物の実施形態である。本発明の更なる実施形態は、薬学的に許容される共結晶の形態の本発明による化合物を含む。本発明の追加の実施形態は、薬学的に許容される塩の形態の本発明による化合物を含む。
【0171】
本発明の実施形態は、形態1s、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、2、3b、3c、3d、3e、5、6、7、8、9、及び10のうちの少なくとも1つの式Iの化合物を含む。本発明の実施形態は、薬学的に許容される共結晶の形態の式Iの化合物を含む。
【0172】
本発明の実施形態は、形態1s、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、2、3b、3c、3d、3e、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、及び53のうちの少なくとも1つの式Iの化合物を含む。本発明の実施形態は、薬学的に許容される共結晶の形態の式Iの化合物を含む。
【0173】
形態1sの式Iの化合物のXRPDを、
図25に示す。主要なピークのリストは、6.13±0.2、9.88±0.2、10.26±0.2、13.39±0.2、14.52±0.2、16.64±0.2、18.24±0.2、19.98±0.2、20.58±0.2、及び22.01±0.2の2θ値のピークを含む。
【0174】
式Iの化合物を、酵素アッセイ及び細胞アッセイで試験した。酵素アッセイの結果及びその説明は、「酵素阻害アッセイの結果」と題する表4、及び2019年5月21日に発行された米国特許第10,294,226号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の第51~54欄に示されている。この化合物をまた、3つの細胞アッセイ:IL-2 pSTAT5(JAK1/JAK3)、IFNα pSTAT-4(JAK1/TYK2)、及びGM-CSF pSTAT5(JAK2/JAK2)において試験し、結果及びアッセイの説明は、「細胞ベースのアッセイデータ」と題する表5、及び米国特許第10,294,226号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の第53~55欄に示されている。
【0175】
式Iの化合物を溶解度及び透過性アッセイで試験した。溶解度アッセイの結果は、「溶解度アッセイのデータ」と題する表6に示され、透過性アッセイの結果は、「MDCK-MDR1透過性データ」と題する表7、及び米国特許第10,294,226号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の第55~58欄に示されている。
【0176】
式Iの化合物を、米国特許第10,294,226号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の第21~22欄及び第58~59欄並びに表1aに記載のプロトコルに従って試験した。
【0177】
式Iの化合物は、表8、米国特許第10,294,226号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の第59欄に記載及び与えられ、物理化学的特性によって更に特徴付けられた。
【0178】
式Iの化合物は、2020年5月28日に公開された米国特許出願第2020/0165250号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の
図7A、
図7B、
図7C、
図7D、
図7E、及び
図8~
図23、並びに段落[0328]~[0348]に記載され、与えられているように、実施形態11、11b、12、15、16、17、18、19、20、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、及び53の記載によって更に特徴付けられた。
【0179】
以下の実施例におけるmg単位の量は、式Iの化合物の形態の活性薬剤の量を指す。投与されるものが薬学的に許容される塩などの別の形態の活性薬剤である場合、適切な補正が行われるべきである。
【0180】
実施例2:インビボ試験
式Iの化合物は、マウスにおいて高い結腸曝露及び組織標的結合を示し、結腸組織におけるIL-12/IL-18誘導STAT3リン酸化アッセイにおいて、及びエクスビボサイトカイン刺激結腸外植片研究において、経口投与後に低い全身曝露を示した。マウスにおける式Iの化合物の経口投与は、インターフェロン-アルファ(IFNα)又はIL-21のいずれかによるエクスビボ全血刺激によって決定されるように、最小の全身曝露及び血液における一貫した用量依存的薬力学的応答の欠如をもたらした。
【0181】
式Iの化合物は、経口投与後、低レベルの全身曝露を示す。ヒト研究における全身曝露と標的結合との間の関係を理解するために、ヒト全血におけるサイトカイン誘導性pSTAT-3の阻害を、かかる化合物を用いて測定した。ヒト全血において、式Iの化合物は、濃度依存的な様式で、JAK1、JAK2、JAK3、並びにIFNα(JAK1/Tyk2)、トロンボポエチン(TPO)(JAK2/JAK2)、及びIL-21(JAK1/JAK3)シグナル伝達の下流のTyk2ホモ及びヘテロ二量体を阻害した。式Iの化合物によるIFNα、TPO、及びIL-21媒介性STAT3リン酸化の平均IC50値は、表3に示すように、それぞれ105.3nM、490.4nM、及び579.2nMであった。表3において、式Iの化合物についての結果が報告されている。
【0182】
【表5】
(a)CI、信頼区間;
(b)IFNα、インターフェロンアルファ;
(c)n、試行回数;
(d)ND、未決定、収束しない;
(e)TPO、トロンボポエチン。
【0183】
マウス全血IC50値もまた、マウスモデルにおける全身曝露と標的結合との間の関係を理解するために生成した。マウス全血において、マウス全血におけるIFNα-(JAK1/Tyk2)、IL-21-(JAK1/3)、及びIL-12-(JAK2/Tyk2)誘導性pSTAT応答の阻害における式Iの化合物のインビトロ活性を測定した。表3に示す結果は、式Iの化合物が、IFNα及びIL-21応答を、それぞれ298.6nM及び415.1nMのIC50値で阻害することを実証した。マウス全血におけるIL-12誘導性pSTAT-4の阻害については、信頼できるIC50を報告することができなかった。
【0184】
局所腸選択的JAK阻害剤が結腸組織におけるSTATシグナル伝達を阻害する可能性を理解するために、2つの薬物動態学的/薬力学的(pharmacokinetic/pharmacodynamic、PK/PD)研究を開発した。第1は、マウスにおけるIL-12及びIL-18の併用腹腔内投与を伴い、結腸組織においてJAK/STAT経路の活性化をもたらす全身性炎症応答を誘導する。これは、チャレンジの3時間後のSTAT3の強固なリン酸化によってモニタリングすることができる。第2のPK/PDモデルは、サイトカイン(IL-22、IL-6、及びIFNα)のカクテルによるマウス結腸組織のエクスビボ刺激を伴い、式Iの化合物の経口投与後のSTAT3リン酸化の阻害を測定する。
【0185】
IL-12及びIL-18の併用腹腔内投与は、マウスにおいて結腸の炎症を誘導する(Chikano S,et al.Gut47(6),779-786(2000)「IL-18 and IL-12 induce intestinal inflammation and fatty liver in mice in an IFN-gamma dependent manner」、Nold-Petry C,et al.Front Immunol.8,1531(2017)「Gp96 Antagonist Protects in Murine-Intestinal-Inflammation」)。結腸組織における炎症応答は、IL-12/IL-18によるチャレンジの3時間後のSTAT3の強いリン酸化によってモニタリングすることができる。この非GLP試験において、経口投与された式Iの化合物の効果を、IL-12及びIL-18の両方の全身投与によって誘導されたマウス結腸組織におけるSTAT3応答に対して評価した。
【0186】
C57BL/6マウス(6~8週齢)を体重によって無作為化し、2つの研究の各々ついて様々な処置群に割り当てた。マウスを、IL-12(250ng)及びIL-18(1μg)の組み合わせで腹腔内チャレンジした。IL-12/IL-18誘導性pSTAT-3応答に対する式Iの化合物の効果を調べるために、マウスの群に、IL-12/IL-18チャレンジの1時間前に式Iの化合物を経口投与した。IL-12/IL-18チャレンジの3時間後、マウスをCO2窒息で安楽死させ、PK分析のために血液を心臓穿刺によって採取し、pSTAT-3応答及び薬物レベルを測定するために大腸組織を採取した。20%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)を経口投与したマウスを、ビヒクル対照として使用した。マウスにおけるIL-12/IL-18誘導性結腸pSTAT-3応答に対する式Iの化合物の効果を調べるために、2つの独立した研究(S-1及びS-2)を行った。両方の研究において、IL-12/IL-18チャレンジ後、結腸pSTAT-3の有意な増加が見られた。両方の実験において、式Iの化合物は、pSTAT-3応答の用量関連阻害について明確な傾向を示した:10mg/kgで3.9%及び33.1%阻害;25mg/kgで25.8%及び61.2%阻害;並びに50mg/kgで49.7%及び66.1%阻害(表4)。統計分析により、S-1では阻害の有意性の欠如が示されたが、S-2では、25mg/kg及び50mg/kg用量で有意な阻害が達成された。投薬後30分及び4時間(終末)で、血清レベルを測定した。以下の表5及び6に示すように、式Iの化合物は、30分で、全ての試験用量で低い全身曝露を示した(nM、平均±SEM;10mg/kgで7.4±1.4及び7.0±0.7;25mg/kgで21.8±5.5mg/kg及び70.5±60.4;50mg/kg用量で121.7±87.2mg/kg及び38.8±7.4)。式Iの化合物の観察された血清曝露は、表3に示すように、IL-21誘導性pSTAT-3、IFNα誘導性pSTAT-3、及びpSTAT-4についてのマウス全血IC50よりも有意に低かった。結腸の薬物レベルを、投与の4時間後に測定した。血清と比較して、高い薬物レベルが、式Iの化合物で処置されたマウスの結腸サンプルにおいて観察された(表5及び6)。式1の化合物の結腸曝露は、用量依存的に増加した。25mg/kg用量では、式Iの化合物の結腸曝露は、30814.5±5552.5ng/g組織及び18256.5±4118.8ng/g組織であった。まとめると、血清及び結腸曝露データは、式Iの化合物の薬理学的応答が、主に薬物の組織曝露によって駆動されるようであることを示唆する。式Iの化合物は、高い結腸曝露及び低い全身曝露を伴う、結腸におけるIL-12/IL-18誘導性pSTAT-3の阻害を介してインビボでの標的結合を実証する。マウスにおける式Iの化合物の経口投与は、他の研究において示されるように、最小の全身曝露及び血液における一貫した用量依存的な薬力学的応答の欠如をもたらした。
【0187】
【表6】
結腸pSTAT-3の阻害の割合(%)を、外れ値を除去した後、対数変換データを使用して決定した。
【0188】
【表7】
データは、平均±SEMとして提示されている;N=3~7/群。BLOQ、定量限界未満;min、分;h、時間。
【0189】
【表8】
データは、平均±SEMとして提示されている;N=3~7/群。BLOQ、定量限界未満;min、分;h、時間。
【0190】
上記のIL-12/IL-18モデルに加えて、式Iの化合物の局所有効性を、マウスサイトカイン混合物(IL-22/IL-6/IFNα)結腸外植片モデルにおいて更に確立した。IL-22、IL-6、及びIFNαの組み合わせは、チャレンジの1時間後、エクスビボでマウス結腸外植片において迅速かつ強固なpSTAT-3応答を誘導した。この研究は、エクスビボでマウス結腸外植片モデルにおけるIL22/IL6/IFNα誘導性pSTAT-3応答に対する式Iの化合物の用量応答及び作用の持続時間を調べることを目的とした。
【0191】
C57BL/6マウス(6~8週齢)を体重によって無作為化し、各研究について様々な処置群に割り当てた。マウスに、示された用量の式Iの化合物を経口投与した。試験終了時、心臓穿刺を介して採血し、PK分析のために血清及び洗浄した近位結腸を調製した。
【0192】
遠位結腸外植片(約3mm2)は、未処理、又はサイトカイン(各々100ng/mLのIL-6、IL-22、IFNα)で処理した。1時間刺激した後、組織をホモジナイズ用に急速凍結し、pSTAT-3についてアッセイした。2つの独立した実験において、SS-1及びSS-2、式Iの化合物は、結腸pSTAT-3を用量依存的に阻害した。SS-1において、式Iの化合物は、基底pSTAT-3応答を、0.5、2.5、5、及び25mg/kgで、それぞれ54.3、74.4、78.6、及び89.5%阻害した。IL-22/IL-6/IFNα刺激pSTAT-3応答は、同様に、0.5、2.5、5、及び25mg/kgの式Iの化合物で、それぞれ42.7、74.9、83.8、及び93.8%阻害された。SS-2では、基底pSTAT-3は、0.5、2.5、5、及び25mg/kg用量の式Iの化合物で、それぞれ36.7、66.2、71.3、及び83.8%阻害された。IL-22/IL-6/IFNαで刺激されたpSTAT-3は、式Iの化合物により、0.5、2.5、5、及び25mg/kgで、それぞれ5.5、62.0、68.1、及び89.8%阻害された。したがって、式Iの化合物は、IL-22/IL-6/IFNα誘導性pSTAT-3応答の阻害を介して、エクスビボで結腸組織における強固な標的結合を実証した。
【0193】
表7及び8に示されるように、式Iの化合物の効果は、式Iの化合物の低い全身(血清)曝露(≦10.3±6.9nM)及び高い結腸曝露を伴った(25mg/kgで、SS-1及びSS-2において、それぞれ27488.1±6128.6ng/g及び22929.6±4146.6ng/g)。式Iの化合物について観察された高い結腸曝露及び低い全身曝露は、観察された薬理学の重要な駆動因子としての結腸薬物レベルの役割を意味する。式Iの化合物は、経口投与の4時間後、結腸組織の標的結合を示した。
【0194】
【表9】
データは、平均±SEMとして提示されている;N=5/群。BLOQ、定量限界未満。
【0195】
【表10】
データは、平均±SEMとして提示されている;N=5/群。BLOQ、定量限界未満。
【0196】
20%のHP-β-CD中の溶液として製剤化された10mg/kgの用量での式1の化合物の経口投与の0.5、1、2、3、5、7、及び24時間後、雌C57Bl/6マウス(N=3/時点)において、限定された組織(肝臓、腸)分布研究を行った。血漿及び以下の組織を、化合物濃度分析のために採取した:肝臓、全回腸、及び全結腸。ホモジナイズの前に、回腸及び結腸を生理食塩水で洗い流した。糞便を24時間にわたって採取した。全ての組織(血漿を除く)を滅菌水中でホモジナイズし、式Iの化合物の濃度をLC-MS/MSを使用して決定した。この研究の結果は、最も高い組織濃度が回腸(>結腸>肝臓>血漿)で見られることを実証した。(表9参照)。糞便中の式Iの化合物の濃度は、投与24時間後で125.6μgであった。
【0197】
【表11】
a 値は平均±SDである(N=3動物)。
b BLOQ(1ng/mL)
c N=2(SDは計算せず)
BLOQ=定量限界未満;N=動物の数;PO=経口投与;SD=標準偏差。
【0198】
予備的な組織分布研究を、雄Sprague-Dawleyラット(N=3/時点)において、25mg/kgの用量での式Iの化合物の経口投与の0.5、1、2、3、5、7、及び24時間後に行った。以下の組織を化合物濃度分析のために採取した:肝臓、腎臓、脳、筋肉、精巣上体脂肪、十二指腸、空腸、回腸、結腸(管腔内容物及び組織の両方)、及び血漿。様々な組織における化合物濃度を表10及び11に示す。この研究の結果は、低い全身曝露及び高い局所濃度(腸管)を示した。
【0199】
【表12】
aBLOQは、定量限界(0.5ng/mLの組織ホモジネート)未満である。
bNC=3サンプルのうち2つがBLOQであった場合、平均を計算しなかった。濃度<BLOQを、平均の計算のために0に設定する。
cNA=適用不可/利用不可
【0200】
【表13】
(a)NC、3サンプルのうち2つがBLOQ(0.5ng/mLの組織ホモジネート)であった場合、平均を計算しなかった。
BLOQ=定量限界未満;Duod=十二指腸;N=動物の数;NC=計算せず;PO=経口投与;SD=標準偏差。
【0201】
実施例3:家族性腺腫性ポリポーシスの参加者におけるヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤である式Iの化合物の有効性及び安全性を評価するための第1b相試験。
式Iの化合物は、透過性及び溶解性に基づく好ましい腸選択的特性を有する経口小分子の強力な汎ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤である。細胞質チロシンキナーゼのこの群の阻害は、シグナル伝達及び転写活性化因子(Signal Transducer and Activator of Transcription、STAT)タンパク質のリン酸化を妨げる。リン酸化STAT(pSTAT)は核に移行し、リウマチ性関節炎、炎症性大腸炎、家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)、及び他の炎症性疾患の病因に関与するいくつかのケモカイン、サイトカイン、及びプロテアーゼの遺伝子転写を誘導する。
【0202】
目的及び評価項目
この試験の主な目的は、FAPを有する参加者における大腸ポリープ負荷(ポリープ負荷の合計)に対する式Iの化合物の効果を決定することである。主要な第2の目的は、安全性、有効性の他の尺度、局所及び全身薬物動態(PK)、並びにポリープにおける薬力学(PD)を評価することである。
【0203】
全体的な計画
これは、FAPを有する成人参加者における式Iの化合物の有効性及び安全性を評価するための第1b相多施設試験である。この試験は、式Iの化合物が、24週間にわたるポリープの数の減少及びポリープにおけるJAKシグナル伝達の減少によって評価されるように、大腸及び十二指腸において臨床活性を有するかどうかを決定するように設計されている。参加者は、結腸切除前又は結腸切除後のいずれかであり得るが、全ての参加者が結腸ポリープ又は直腸ポリープを有している必要がある。全ての参加者は、大腸の疾患を有する、古典的なFAP(すなわち、大腸腺腫(adenomatous polyposis coli、APC))生殖系列変異又は絶対保因者(obligate carrier)の遺伝子診断を受けることが要求される。軽症型FAPを有する参加者は、適格ではない。
【0204】
参加者数
この研究では、約40人の参加者(結腸切除後及び結腸切除前の各々約20人)が登録することになる。
【0205】
処置群及び継続期間
全ての参加者は、式Iの化合物75mgを1日2回投与される。各参加者についての試験参加の総期間は、スクリーニング(30日間)、処置(24週間)、及びフォローアップ来院(試験薬物の最後の投与後約30日間)からなる約32週間である。
式Iの化合物は、75mgの錠剤としてスポンサーの責任の下で製造され、提供される。
【0206】
有効性評価
全ての参加者は、24週目に有効性評価を受ける。評価は、下部GIポリープ負荷、十二指腸ポリープ負荷、及び疾患応答を含み、これらは、治験責任医師によって実施される。
【0207】
薬物動態評価
静脈血液サンプル及び下部GI管からの組織サンプル(腸粘膜及びポリープ切除)を、活動スケジュールに示された時点で式Iの化合物の血漿中濃度及び組織中濃度の測定のために採取する。
【0208】
薬力学的及びバイオマーカー評価
バイオマーカーは、FAP患者から採取された血液、組織生検、及び糞便サンプル中のJAK/STAT経路の分子及び細胞エフェクターに対する式Iの化合物の効果を評価するために使用される。次いで、用量レジメン、PK、バイオマーカー変化、及び有効性の間の関係が評価され、更なる用量が評価される場合、用量最適化を導く。
【0209】
安全性の評価
評価は、有害事象(adverse event、AE)、重篤な有害事象(serious adverse event、SAE)、結核(tuberculosis、TB)を含む感染の事象、臨床検査室での血液検査(全血球数及び血清化学)、バイタルサイン、内視鏡検査、及び併用薬レビューの評価を含む。局所検査に加えて、中枢コレステロール検査を行う。
【0210】
統計的方法
この試験において公式な統計的仮説検定は実施しない。統計解析計画には、統計的方法の具体的な詳細が提供される。
結腸切除後の参加者のコホートについての約20のサンプルサイズは、ポリープ負荷が、ベースラインから24週目までに平均で少なくとも25%減少すると仮定することによって計算された。ドロップアウト率は20%と仮定した。30パーセンテージポイントの標準偏差を、ベースラインからの24週目までのポリープ負荷のパーセント変化について仮定した。これらの仮定を用いると、ベースラインからの24週目までのポリープ量の変化率についての95%信頼区間は、その上限が0%未満である確率が約90%以上であり、それによって、式Iの化合物による処置が平均してポリープ負荷を減少させるという証拠を提供する。約20のサンプルサイズを、結腸切除前患者のコホートについて同様に決定した。
【0211】
【0212】
態様:
態様1:治療有効量の式Iの化合物を対象に投与することを含む、対象における家族性腺腫性ポリポーシスの治療又は予防に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、多形。
【0213】
態様2:治療有効量の式Iの化合物を対象に投与することを含む、対象における胃腸系がんの治療又は予防に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形。
【0214】
態様3:治療有効量の式Iの化合物を対象に投与することを含む、対象における大腸がんの治療又は予防に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形。
【0215】
態様4:治療有効量の式Iの化合物を対象に投与することを含む、高リスク群にある対象における家族性腺腫性ポリポーシス又は大腸がんの治療又は予防に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形。
【0216】
態様5:(a)KRAS、TP53、EGFR、STK11(LKB1)、PTEN、BMPR1A、SMAD4(MADH/DPC4)、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、EPCAM、MUTYH(MYH)、POLD1、POLE、及びAPCから選択される1つ以上の遺伝子における変異を決定することと、(b)治療有効用量の式Iの化合物を投与することと、を含む、対象における家族性腺腫性ポリポーシス又は大腸がんの対象の治療又は予防に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形。
【0217】
態様6:(a)KRAS、TP53、EGFR、STK11(LKB1)、PTEN、BMPR1A、SMAD4(MADH/DPC4)、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、EPCAM、MUTYH(MYH)、POLD1、POLE、及びAPCから選択される1つ以上の遺伝子における変異を決定することと、(b)治療有効用量の式Iの化合物を投与することと、を含む、対象が大腸がん又は家族性腺腫性ポリポーシスを発症するリスクが高いかどうかの診断に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形。
【0218】
態様7:治療有効量の式Iの化合物を対象に投与することを含む、対象におけるJAKの阻害によって影響を受ける障害又は状態の治療又は予防に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形。
【0219】
態様8:治療有効量の式Iの化合物を対象に投与することを含む、対象におけるCRCの再発の治療又は予防に使用するための式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形。
【0220】
態様9:治療有効量の式Iの化合物を対象に投与することを含む、対象におけるFAPの再発の治療又は予防に使用するための式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形。
【0221】
態様10:治療有効量の式Iの化合物を対象に投与することを含む、過敏性腸疾患(irritable bowel disease、IBD)と診断されている対象におけるSISCの治療又は予防に使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形。
【0222】
態様11:治療有効量の式Iの化合物を対象に投与することを含む、対象における前悪性状態が悪性状態になるのを予防するのに使用するための、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び多形。
【0223】
態様12:治療有効量の式Iの化合物が、約10mg~約1000mgである、態様1~11のいずれか一項に記載の使用、
【0224】
態様13:治療有効量の式Iの化合物が、約1mg~約100mgである、態様1~12のいずれか一項に記載の使用、
【0225】
態様14:式Iの化合物が、1日1回投与される、態様1~13のいずれか一項に記載の使用。
【0226】
態様15:式Iの化合物が、1日2回投与される、態様1~14のいずれか一項に記載の使用。
【0227】
態様16:対象が、以前に療法を受けているか、又は現在療法を受けている、態様1~15のいずれか一項に記載の使用。
【0228】
態様17:療法が、手術、放射線療法、化学療法。NSAID、Cox-2阻害剤、EGFR阻害剤、VEGF阻害剤、及びチェックポイント阻害剤であり得る、態様1~16のいずれか一項に記載の使用。
【0229】
態様18:FAPを治療することが、対象におけるポリ負荷を低減することを含む、態様1~17のいずれか一項に記載の使用。
【0230】
態様19:ポリープ負荷を低減することが、ポリープの数の減少及びポリープのサイズの減少を含む、態様1~18のいずれか一項に記載の使用。
【0231】
態様20:高リスク群の対象が、過敏性腸症候群、腸内マイクロバイオームの存在、大腸がんの家族歴、大腸がんの既往歴、結腸鏡検査中のポリープ若しくは前がん病変の所見、又はKRAS、TP53、EGFR、STK11(LKB1)、PTEN、BMPR1A、SMAD4(MADH/DPC4)、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2、EPCAM、MUTYH(MYH)、POLD1、POLE、及びAPC遺伝子における変異などの他の遺伝的要因を有する対象を含む、態様1~19のいずれか一項に記載の使用。
【0232】
態様21:式Iの化合物と組み合わせて第2の活性薬剤を投与することを更に含み、第2の活性薬剤が、NSAID、Cox-2阻害剤、セツキシマブ(cetuximab)、パニツムマブ(panitumumab)、ベバシズマブ(bevacizumab)、Ziv-アフリベルセプト(Ziv-aflibercept)、レゴラフェニブ(regorafenib)、ラムシルマブ(ramucirumab)、イピリムマブ(ipilimumab)、ニボルマブ(nivolumab)、及びペムブロリズマブ(pembrolizumab)から選択される、態様1~20のいずれか一項に記載の使用。
【0233】
態様22:式Iの化合物に対する応答の予測を、それを必要とする対象において行う方法であって、
(a)式Iの化合物に曝露されていない対象の対照サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(b)式の化合物に曝露されている対象の試験サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(c)(a)におけるpSTAT-3のレベルを(b)と比較することと、を含み、(b)におけるpSTAT-3のレベルの減少が、対象における式Iの化合物に対する応答を予測する、方法。
【0234】
態様23.進行中のJAK阻害剤療法の有効性のモニタリングを、それを必要とする対象において行う方法であって、
(a)式Iの化合物に曝露されていない対象の対照サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(b)式の化合物に曝露されている対象の試験サンプル中のpSTAT-3のレベルを測定することと、
(c)(a)におけるpSTAT-3のレベルを(b)と比較することと、を含み、(b)におけるpSTAT-3のレベルの減少が、対象における式Iの化合物の有効性を示す、方法。
【国際調査報告】