(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-04
(54)【発明の名称】ヘテロ構造から層を転写するための方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20240226BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240226BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240226BHJP
【FI】
H01L21/02 C
H01L21/304 601Z
H01L21/304 611Z
H01L21/304 622W
H01L21/304 631
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555790
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 FR2022050478
(87)【国際公開番号】W WO2022195225
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
【住所又は居所原語表記】Parc Technologique des fontaines chemin Des Franques 38190 Bernin, France
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】バルジュ, ティエリー
【テーマコード(参考)】
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
5F057AA05
5F057AA11
5F057BA11
5F057BA19
5F057BB06
5F057BB07
5F057BB08
5F057BB11
5F057CA14
5F057CA16
5F057DA03
5F057DA08
5F057DA11
5F057DA19
5F057DA33
5F057DA35
5F057EC01
5F057EC03
5F057EC10
5F057EC11
5F057EC13
5F057EC20
5F057FA28
5F057FA37
5F131AA02
5F131AA21
5F131AA22
5F131BA31
5F131BA32
5F131BA33
5F131BA37
5F131BA42
5F131BA53
5F131CA09
5F131EC42
5F131EC53
5F131EC54
5F131EC64
5F131EC72
(57)【要約】
本発明は、ヘテロ構造(H)からレシーバ基板(3)に層を転写するための方法であって、第1の材料のドナー基板(1)及び第2の材料のキャリア基板(2)を用意するステップと、ドナー基板(1)をキャリア基板(2)に接合するステップと、キャリア基板(2)上に薄肉化ドナー基板(10)を備える前記ヘテロ構造(H)を形成するように、ドナー基板(1)を薄肉化するステップであり、ドナー基板(1、10)から外周部分を除去するステップをさらに含む、ステップと、転写すべき第1の材料の層(11)の境界を定める弱化領域(12)を形成するステップと、ヘテロ構造(H)をレシーバ基板(3)に接合するステップと、第1の材料の層(11)をレシーバ基板(3)に転写するために、弱化領域(12)に沿ってドナー基板(10)を取り外すステップとを連続して含む、方法に関する。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ構造(H)からレシーバ基板(3)に層を転写するための方法であって、
第1の材料のドナー基板(1)及び第2の材料のキャリア基板(2)を用意するステップと、
前記ドナー基板(1)を前記キャリア基板(2)に接合するステップと、
前記キャリア基板(2)上に薄肉化ドナー基板(10)を備える前記ヘテロ構造(H)を形成するように、前記ドナー基板(1)を薄肉化するステップであり、
前記ヘテロ構造(H)の形成が、前記ドナー基板(1、10)から外周部分を除去するステップをさらに含む、ステップと、
転写すべき前記第1の材料の層(11)の境界を定めるために前記薄肉化ドナー基板(10)に弱化領域(12)を形成するステップと、
前記ヘテロ構造(H)をレシーバ基板(3)に接合するステップであり、転写すべき前記第1の材料の前記層(11)が、接合界面に位置する、ステップと、
前記第1の材料の前記層(11)を前記レシーバ基板(3)に転写するために、前記弱化領域(12)に沿って前記ドナー基板(10)を取り外すステップと、
を連続して含む、方法。
【請求項2】
前記ドナー基板(1)の前記キャリア基板(2)への前記接合の前に、前記ドナー基板(1)から前記外周部分を除去する前記ステップが実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ドナー基板の前記キャリア基板への前記接合の後に、前記ドナー基板(1)から前記外周部分を除去する前記ステップが実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ドナー基板からの前記外周部分の前記除去が、前記ドナー基板(1)に面する前記キャリア基板(2)から外周部分を除去することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ドナー基板が少なくとも部分的に薄肉化された後に、前記ドナー基板(1)から前記外周部分を除去する前記ステップが実行される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記ドナー基板(1、10)が、重合体接合層(4)を介して前記キャリア基板(2)に接合される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ドナー基板(1、10)から除去される前記外周部分の幅が、前記ドナー基板のエッジから300~1000μm、好ましくは300~500μmである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ドナー基板(1、10)が、分子接着によって前記キャリア基板(2)に接合される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ドナー基板から除去される前記外周部分の幅が、前記ドナー基板のエッジから1~3mm、好ましくは2~3mmである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記外周部分の前記除去が、
第1の軸(X1)の周りを回転可能に移動できるキャリアに前記ドナー基板(1、10)を載置することと、
前記第1の軸(X1)に平行な第2の軸(X2)の周りを回転する研削ホイールを使用して前記ドナー基板を切削することと、
を含み、前記研削ホイールが、前記第2の軸(X2)に沿って並進状態でさらに駆動される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記外周部分の前記除去が、
第1の軸(X1)の周りを回転可能に移動できるキャリアに前記ドナー基板(1、10)を載置することと、
前記第1の軸(X1)に対して垂直な第2の軸(Y1)の周りを回転する研削ホイールを使用して前記ドナー基板を切削することと、
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記外周部分の前記除去の後に前記ドナー基板(1、10)を研磨するステップをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ドナー基板(1、10)が、圧電材料又は半導体材料を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記薄肉化ドナー基板(10)の厚さが、10~100μm、好ましくは10~50μmである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記キャリア基板(2)が、ケイ素、ガラス、石英、サファイア、セラミック、及び/又は多結晶窒化アルミニウムを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ヘテロ構造(H)の前記レシーバ基板(3)への前記接合の前に、中間層が前記ドナー基板(10)及び/又は前記レシーバ基板(3)に形成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記中間層が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化アルミニウム(AlN)及び/若しくは酸化タンタル(Ta
2O
5)又は前記材料のうちの少なくとも2つで形成された層のスタックを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記レシーバ基板が、ケイ素、ガラス、石英、サファイア、セラミック、及び/又は多結晶窒化アルミニウムを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記レシーバ基板が、多結晶ケイ素、炭化ケイ素、非晶質ケイ素、及び/又は多孔質ケイ素を含む電荷トラップ層を含むケイ素基板である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記キャリア基板(2)及び前記レシーバ基板(3)が、絶対値で表して5%以下の熱膨張係数における差を呈する材料を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記キャリア基板(2)及び前記レシーバ基板(3)が、1つの同じ材料で形成されている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記転写された層(11)が30nm~1.5μmの厚さを有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘテロ構造からレシーバ基板に層を転写するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクスの分野において、ドナー基板と呼ばれる第1の基板からレシーバ基板と呼ばれる第2の基板に層を転写するために層転写方法が使用される。
【0003】
したがって、スマートカット(Smart Cut)(商標)法は、半導体オンインシュレータ基板、また他の複合基板、例えば圧電オンインシュレータ基板の製造用としてよく知られている。この方法は、転写すべき対象層の境界を定めるために、原子種をドナー基板に注入することによって弱化領域を形成することと、ドナー基板をレシーバ基板に接合することと、次いで、対象層をレシーバ基板に転写するために、弱化領域に沿ってドナー基板を取り外すこととを含む。
【0004】
いくつかの状況では、例えば転写方法に関係する制約のために、層をドナー基板からレシーバ基板に直接的に転写することができない。より具体的には、ドナー基板のレシーバ基板への接合は、2つの基板のそれぞれの表面に前もって形成された酸化ケイ素層によって達成されてもよい。しかしながら、転写すべき対象層をどうにか取り外すために、100℃~600℃の温度範囲においてアニールを実施する必要がある。ドナー基板及びレシーバ基板が、異なる熱膨張係数を有するとき-例えば圧電材料で作られているドナー基板とケイ素で作られているレシーバ基板との間の場合-、前記アニールは結果として2つの基板のアセンブリの著しい変形(又は「そり」)をもたらし、著しい変形は基板破壊につながるおそれがあるので、転写プロセスにとって有害である。
【0005】
そのような変形を最小化するために、ドナー基板が一時的キャリア基板に連結された状態のドナー仮想基板と呼ばれる中間基板を形成することができる。
【0006】
以て、転写方法は、ドナー基板をキャリア基板に接合することによってドナー仮想基板を形成する前ステップと、ドナー基板を薄肉化するステップと、転写すべき対象層の境界を定めるために、原子種をドナー仮想基板に注入するステップと、ドナー仮想基板を最終レシーバ基板に接合するステップと、対象層をレシーバ基板に転写するために、弱化領域に沿ってドナー仮想基板を取り外すステップとを含む。
【0007】
本出願人によって出願された出願WO2019/186032は、圧電オンインシュレータ基板の形成のために構成されたそのような方法を記述している。
【0008】
そのようなドナー仮想基板を製造するときに生じる1つの問題は、その脆弱さである。特に、マイクロエレクトロニクスにおいて使用される基板には、基板のエッジに特に脆弱な鋭角を有することを避けることができるようになる外周面取部が設けられる。薄肉化ドナー基板の厚さを考慮すると、前記基板は傾斜エッジを有するので非常に薄く壊れやすいストリップを生ずる。
【0009】
しかしながら、このストリップ破壊によって作り出される破片は、製造ライン、及びこのラインで製造される基板を汚染しがちである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、薄肉化ドナー基板を備えるヘテロ構造(ドナー仮想基板)の製造をしつつ前記ドナー基板の破壊のリスクを最小化し、前記ヘテロ構造からレシーバ基板への層の転写を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明は、ヘテロ構造からレシーバ基板に層を転写するための方法であって、
第1の材料のドナー基板及び第2の材料のキャリア基板を用意するステップと、
ドナー基板をキャリア基板に接合するステップと、
キャリア基板上に薄肉化ドナー基板を備える前記ヘテロ構造(H)を形成するように、ドナー基板を薄肉化するステップであり、
ヘテロ構造の形成が、ドナー基板から外周部分を除去するステップをさらに含む、ステップと、
転写すべき第1の材料の層の境界を定めるために薄肉化ドナー基板に弱化領域を形成するステップと、
前記ヘテロ構造をレシーバ基板に接合するステップであり、転写すべき第1の材料の層が、接合界面に位置する、ステップと、
第1の材料の層をレシーバ基板に転写するために、弱化領域に沿ってドナー基板を取り外すステップと
を連続して含む、方法を提案するものである。
【0012】
ドナー基板のキャリア基板への接合の前、又は後に実施されてもよい前記基板からの外周環状部分の除去(トリミングとも呼ばれる)により、壊れやすいストリップが形成されるのを防ぐことが可能になる。
【0013】
前記方法の任意選択的であるが他の有利な特徴によると、これが技術的に実行可能なとき、
ドナー基板のキャリア基板への接合の前に、ドナー基板から外周部分を除去するステップが実行されることと、
ドナー基板のキャリア基板への接合の後に、ドナー基板から外周部分を除去するステップが実行されることと、
ドナー基板からの外周部分の除去が、前記ドナー基板に面するキャリア基板から外周部分を除去することをさらに含むことと、
ドナー基板が少なくとも部分的に薄肉化された後に、ドナー基板から外周部分を除去するステップが実行されることと、
ドナー基板が、重合体接合層を介してキャリア基板に接合されることと、
ドナー基板から除去される外周部分の幅が、ドナー基板のエッジから300~1000μm、好ましくは300~500μmであることと、
ドナー基板が、分子接着によってキャリア基板に接合されることと、
ドナー基板から除去される外周部分の幅が、ドナー基板のエッジから1~3mm、好ましくは2~3mmであることと、
外周部分の除去が、
第1の軸の周りを回転可能に移動できるキャリアにドナー基板を載置すること、及び
第1の軸に平行な第2の軸の周りを回転する研削ホイールを使用してドナー基板を切削すること
を含み、研削ホイールが、第2の軸に沿って並進状態でさらに駆動されることと、
外周部分の除去が、
第1の軸の周りを回転可能に移動できるキャリアにドナー基板を載置すること、及び
第1の軸に対して垂直な第2の軸の周りを回転する研削ホイールを使用してドナー基板を切削すること
を含むことと、
方法が、外周部分の除去の後にドナー基板を研磨するステップをさらに含むことと、
ドナー基板が、圧電材料又は半導体材料を含むことと、
薄肉化ドナー基板の厚さが、10~100μm、好ましくは10~50μmであることと、
キャリア基板が、ケイ素、ガラス、石英、サファイア、セラミック、及び/又は多結晶窒化アルミニウムを含むことと
がおそらくは組み合わされる。
【0014】
前記方法の任意選択的であるが他の有利な特徴によると、これが技術的に実行可能なとき、
ヘテロ構造のレシーバ基板への接合の前に、中間層がドナー基板及び/又はレシーバ基板に形成されることと、
中間層が、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化アルミニウム(AlN)及び/若しくは酸化タンタル(Ta2O5)又は前記材料のうちの少なくとも2つで形成された層のスタックを含むことと、
レシーバ基板が、ケイ素、ガラス、石英、サファイア、セラミック、及び/又は多結晶窒化アルミニウムを含むことと、
レシーバ基板が、多結晶ケイ素、炭化ケイ素、非晶質ケイ素、及び/又は多孔質ケイ素を含む電荷トラップ層を含むケイ素基板であることと、
キャリア基板及びレシーバ基板が、絶対値で表して5%以下の熱膨張係数における差を呈する材料を含むことと、
キャリア基板及びレシーバ基板が、1つの同じ材料で形成されていることと、
転写された層が30nm~1.5μmの厚さを有することと
がおそらくは組み合わされる。
【0015】
この方法のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して、下記の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】ドナー基板とキャリア基板のアセンブリの図である。
【
図1B】ドナー基板を薄肉化した後のドナー基板とキャリア基板のアセンブリの図である。
【
図2A】キャリア基板に接合する前のドナー基板のトリミング操作を概略的に示す図である。
【
図2B】
図2Aのトリミングされたドナー基板のキャリア基板への接合の後のヘテロ構造の外周の断面図である。
【
図2C】ドナー基板を薄肉化した後のヘテロ構造の外周の断面図である。
【
図3A】キャリア基板にドナー基板を接合しドナー基板を薄肉化した後のドナー基板のトリミング操作を概略的に示す図である。
【
図3B】
図3Aのトリミングの後のヘテロ構造の外周の断面図である。
【
図4A】ドナー基板のキャリア基板への接合の後のドナー基板のトリミング操作を概略的に示す図である。
【
図4B】
図4Aのトリミングの後の、薄肉化する前のドナー基板とキャリア基板の外周の断面図である。
【
図4C】
図4Bのトリミングされたドナー基板の薄肉化後のヘテロ構造の外周の断面図である。
【
図5A】トリミングの第1の実施形態を概略的に示す図である。
【
図5B】トリミングの第2の実施形態を概略的に示す図である。
【
図6A】本発明の一実施形態による方法によって形成されたヘテロ構造の断面図である。
【
図6B】転写すべき層の境界を定めるための
図6Aのヘテロ構造における弱化領域の形成の断面図である。
【
図6C】
図6Bのヘテロ構造のレシーバ基板への接合の断面図である。
【
図6D】
図6Cのヘテロ構造の弱化領域に沿った取り外し後の、レシーバ基板へ転写される層の断面図である。
【
図7A】本発明の一実施形態による方法によって形成されたヘテロ構造の断面図である。
【
図7B】転写すべき層の境界を定めるための
図7Aのヘテロ構造における弱化領域の形成の断面図である。
【
図7C】
図7Bのヘテロ構造のレシーバ基板への接合の断面図である。
【
図7D】
図7Cのヘテロ構造の弱化領域に沿った取り外し後の、レシーバ基板へ転写される層の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図をよりわかりやすくするために、さまざまな要素の寸法は必ずしも原寸に比例して示されていない。
【0018】
1つの図から次の図への同一の参照符号は、必ずしも再度詳細に説明せずとも、同一の又は同じ機能を実施する要素を意味する。
【0019】
図1A及び1Bは、ドナー仮想基板の一部分のレシーバ基板への後の転写のために、特に前記ドナー仮想基板の機能を実施することを意図したヘテロ構造の製造中に、本発明が回避しようとする問題を示している。
【0020】
ヘテロ構造の形成は、第1の材料のドナー基板1と第2の材料のキャリア基板2を接合することを含む。
【0021】
第1の材料は、ドナー基板への後の転写を意図した、しかし、導入部で説明したように直接的な転写を防止する熱膨張係数における、レシーバ基板の材料との差を呈する材料であってもよい。限定はしないが、例えば、第1の材料は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)などの圧電材料、又は窒化ガリウム(GaN)、リン化インジウム(InP)、ガリウムヒ素(GaAs)などの半導体材料などであってもよい。
【0022】
第2の材料は、一般に第1の材料と異なる。キャリア基板の機能は、ドナー基板の一部分がレシーバ基板に転写されるまで、ドナー基板を一時的に支持することである。第2の材料は、レシーバ基板の材料との、熱膨張係数において小さな差を、すなわち、典型的には絶対値で表してゼロ又は5%未満の熱膨張係数における差を呈するように選択されるのが有利であり得る。限定はしないが、例えば、第2の材料は、ケイ素、ガラス、石英、サファイア、セラミック、又は多結晶窒化アルミニウム(AlN)であってもよい。第2の材料の選択は、レシーバ基板の材料に応じて、前記材料の熱膨張係数が合致することを保証するようになされてもよい。1つの好ましい実施形態では、第2の材料はレシーバ基板の材料と同一である。
【0023】
図1Aに示されるように、基板1及び2は、それぞれ主面のそれぞれに外周面取部Cを有する。一般に、面取部は、各基板の主表面に対して22~40°の角度を有し、基板の厚さの方向に200~300μm程度の高さ、及び基板の半径方向に200~300μm程度の幅にわたって延びる。
【0024】
ヘテロ構造を形成するために、ドナー基板1は、キャリア基板2に厚さeの層10を転写するように、薄肉化されなければならない。前記薄肉化は、キャリア基板2との接合界面Iと反対の面からドナー基板をエッチングすることによって達成されてもよい。特に、エッチングは、厚さの増加に応じていくつかのステップで実行されてもよいことが有利である。したがって、ドナー基板の第1の部分は、粗い研削によって除去されてもよく、粗い研削はドナー基板の厚さを急速に減少させることができる。次により精密な研削を実施して、ドナー基板の表面の粗さを軽減しながら前記ドナー基板の厚さを減少させ続けてもよい。最後に、所望の粗さを達成するために化学的機械研磨(CMP:chemical-mechanical polishing)を実行して薄肉化ドナー基板の表面を平滑化してもよい。さらに下記で述べるように、精密な研削は粗い研削の直後に実施する必要はなく、方法の別のステップの後に実施してもよい。
【0025】
例えば、ドナー基板1は、数百マイクロメータ程度の厚さを有してもよく、薄肉化ドナー基板10は、例えば10~100μm、好ましくは10~50μmの、数十マイクロメータの厚さeを有してもよい。
【0026】
この場合、
図1Aにおいて理解することができるように、厚さeは、ドナー基板の面取部Cの厚さよりも小さい。
【0027】
結果として、ドナー基板を薄肉化した後のドナー基板1とキャリア基板2のアセンブリを示す
図1Bに示されるように、薄肉化ドナー基板10は、接合界面Iの反対の主面のレベルにおいて鋭角を備える外周エッジ100を有する。そのような鋭角は、ヘテロ構造が処理されるときに壊れがちである。この、「フレーキング」と呼ばれる壊れる作用は、薄肉化ドナー基板からの破片が、ヘテロ構造を使用する全製造ラインを汚染するおそれがあるため、特に有害である。
【0028】
そのような作用を回避するために、本発明は、ドナー基板のキャリア基板への接合の前又は後に、前記ドナー基板から外周部分を除去することを提案するものである。そのような除去は、本書では、さらに「トリミング」(「エッジトリミング」又は「エッジ研削」)とも呼ばれることになる。
【0029】
前記トリミングは、薄肉化されていようとなかろうと、ドナー基板から面取部を除去することと、キャリア基板の主面とドナー基板のエッジとの間の角にいかなる粒子が引っ掛かることも防止するために、好ましくはキャリア基板の主面に対して90°以上の角度α(
図2Cに示す)で傾斜する直線エッジを形成することとを目的とする。しかしながら、その後ドナー基板からレシーバ基板に転写される層が、壊れやすいストリップを形成するのを防止するために、鈍角(α>90°)の場合には、比較的90°に近い、例えば90~135°の角度が選択されることになる。
【0030】
そのために、いくつかの実施形態では、外周の除去部分の幅(
図2A、3A及び4AにおいてLによって表され、さらに下記で説明されることになる)は、ドナー基板の面取部の幅以上である。
【0031】
さらに、下記でさらに詳細に説明するように、除去された外周部分の幅は、ドナー基板のキャリア基板への接合のモードに依存してもよい。
【0032】
接合の第1のモードは、おそらくは酸化物層によって覆われたドナー基板とキャリア基板が直接的に接触し、接合界面における分子間力、特にファンデルワールス力によって接着力がもたらされる、分子接着による接合である。それ自体知られている様式で、そのような接合は、接合される表面を前処理、特に、研磨、洗浄、及び/又はプラズマ活性化する必要がある場合がある。
【0033】
接合の第2のモードは、特に文書WO2019/186032に記述されているように、重合体層を介した接合である。前記重合体層は、基板のうちの少なくとも1つの表面に光重合性層を堆積させて、前記光重合性層を介して基板を接合し、次いでアセンブリに、基板のうちの1つに対して低い吸収係数を有するように選択された波長を有する光束を照射することによって形成されてもよい。したがって、光束は、吸収されずに前記基板を通り抜けて、接着層に到達し、以て接着層を重合させることができる。例えば、ドナー基板が圧電材料で作られているとき、光束は320~365nmの波長を有してもよく、ドナー基板を通じて印加されてもよい。
【0034】
実際、重合体層は以下のように形成されてもよい。
【0035】
光重合性接着層は、基板のうちの少なくとも1つの表面に堆積される。光重合性接着層は、スピンコーティングによって堆積されるのが有利であり得る。この技術は、光重合性層が堆積されることになる基板を、前記光重合性層を遠心力によって基板の全表面にわたって均一に拡散させるために実質的に一定の比較的高い速度で回転させることにある。この目的のため、基板は典型的には、ターンテーブルに載置され、真空チャックによって保持される。当業者は、基板の表面に堆積させる接着剤の体積、基板の回転速度、及び接着層のための所望の厚さに応じた最小堆積時間などの運転条件を決定することができる。堆積された光重合性接着層の厚さは、典型的には2μm~8μmである。
【0036】
1つの非限定的な例によると、NORLAND PRODUCTSによって参照符「NOA 61」の下で販売される光重合性接着層が本発明において使用されてもよい。
【0037】
次いで、ドナー基板とキャリア基板が前記光重合性層を介して接合されてヘテロ構造を形成する。接合は、周囲温度で、すなわち約20℃で実行されるのが好ましい。しかしながら、接合を20℃~50℃の温度、及びより好ましくは20℃~30℃の温度での熱さで実行することができる。加えて、接合ステップは、真空下で実行されるのが有利であり、真空下で実行することにより、表面、すなわち接合層の表面、及び処理基板の又は圧電基板の表面から水を脱離させて、接合界面を形成することができるようになる。
【0038】
次いで、接着層を重合させるために、ヘテロ構造は光束での照射を受ける。光源はレーザであることが好ましい。光放射又は光束は、紫外線(UV)放射であることが好ましい。接着層の組成に応じて、320nm~365nmの波長を有するUV放射が選択されることが好ましくなる。照射はドナー基板の自由面を入射光放射に対して露出させることによって実行される。したがって、光放射は、ドナー基板の自由面からヘテロ構造へと貫通し、接着層に到達するまでドナー基板を通り、したがって前記接着層の重合を生じさせる。接着層の重合により、ポリマー層を形成することが可能になり、以てヘテロ構造の機械的密着が確保され、ドナー基板とキャリア基板とが互いに接合されたまま保たれる。
【0039】
ヘテロ構造の照射は、熱プロセスを生じさせ、放射が通るドナー基板は、熱プロセスによって放射のエネルギーを部分的に吸収し熱くなることができる。ドナー基板が圧電性物質である場合、加熱し過ぎるとドナー基板の構造は不安定になりがちであり、以て圧電体層の物理的及び化学的特性の劣化につながるおそれがある。加えて、加熱し過ぎると、ドナー基板及びキャリア基板は、熱膨張係数の互いの差により変形が引き起こされるおそれがある。ドナー基板の過度の加熱を避けるために、照射は、パルス化されるのが、すなわち、ヘテロ構造が複数のパルス光線に露出されるのが有利である。各パルスは設定された照射時間継続し、照射時間は1つのパルスから次のパルスまで等しい場合もあり、又は異なる場合もある。パルスは、ヘテロ構造が光線に露出されない決められた休止時間によって時間の面で間隔をあけられる。当業者であれば、接着層を完全に重合させるために、パルスごとの照射時間、パルスとパルスの間の休止時間、及び印加すべきパルスの数を決定することができるであろう。したがって、例えば、休止時間によって分離された、10個のパルスがそれぞれ10秒間継続し、さらに10秒間継続することが実施されることができる。
【0040】
したがって、重合接着層は、ドナー基板とキャリア基板を、変形させがちである熱予算に対して露出させずに接合することを可能にし、ヘテロ構造に、圧電体層の後続の転写のために十分な機械的強度を与えることを可能にする。重合接着層の厚さは、2~8μmであることが好ましい。この厚さは特に、接合前に堆積させた光重合性接着層の構成材料、前記光重合性接着層の厚さ、及び照射の実験条件に依存する。
【0041】
1つの代替的な実施形態において、特に、ドナー基板とキャリア基板とのどちらも、光重合性層を重合させるために必要とされる光束に対して十分に透過でないとき、低温アニール(すなわち、典型的には100℃未満)の作用の下で重合させることができる重合体接着剤を使用することができる。
【0042】
重合体層(照射による重合か、それとも低温アニールによる重合かにかかわらず)を実施する接合のこの第2のモードは、ドナー基板の外周部分の幅を低減し、以てトリミング操作の持続時間を短くすることができるので、本発明の文脈では特に有利である。
【0043】
特にポリマー層を介した接合の場合、ドナー基板から除去されるべき外周部分の幅は、前記基板のエッジから300~1000μm、好ましくは300~500μmであってもよい。本書において基板のエッジが意味するのは、基板の最も外側のエッジ、面取された部分の外側であり、言い換えれば、基板のエッジは基板の最大直径を規定する。
【0044】
分子接着による接合の場合、ドナー基板から除去されるべき外周部分の幅は、ドナー基板のエッジから1~3mm、好ましくは2~3mmであってもよい。
【0045】
接合の2つのモード間のトリミングされた幅におけるこの差は、分子接着による接合の場合には、2つの基板間の連続した接合を確保するのが難しい、面取部を越えた1又は2mm程度の幅を有する外周リングがあることによって説明される。これは、基板の全表面にわたって連続した接合を確保するために、ドナー基板をこのリングの幅以上にわたってトリミングすることを意味する。
【0046】
ポリマー層を介した接合の場合には、接合はポリマー層によって連続的に面取部まで行われ、以てドナー基板は、分子接着による接合の場合よりも小さな幅にわたってトリミングされることが可能になり、この幅はおそらくは面取部の幅よりもほんのわずかに大きい。これは、第1の材料の実質的な損失がより少ないことを意味する。
【0047】
ドナー基板のキャリア基板への接合のモードが何であろうと、ドナー基板のトリミングは、ヘテロ構造の製造におけるさまざまなステージにおいて実行されてもよく、除去される外周部分の幅は、接合のモードに応じて選択される。
【0048】
図2A~2Cに示される第1の実施形態において、トリミングは、ドナー基板のキャリア基板への接合の前に実施される。
【0049】
図2Aは、キャリア基板に接合する前のドナー基板のトリミング操作を概略的に示し、太い破線は、トリミング中に除去される外周部分の境界を定めるものである。この操作において、ドナー基板の全厚みを通じてトリミングする必要はない。特にドナー基板は、ドナー基板をキャリア基板に接合した後に薄肉化されることが意図されるので、キャリア基板に接合されることが意図されるドナー基板の面から薄肉化後のドナー基板の目標厚さeより大きい深さPにわたってトリミングするだけで十分である。さらに、上で説明されたように、除去された外周部分の幅Lは、面取部Cの幅よりも大きい。
【0050】
図2Bは、
図2Aのトリミングされたドナー基板1のキャリア基板2への接合の後のヘテロ構造の外周の断面図である。この図には接合層が示されていないが、分子接着による接合の代替として、上述のように重合体層が使用されて2つの基板間の接合が達成されてもよい。
【0051】
薄肉化の結果として生じるドナー基板の部分10は、破線によって概略的に境界が定められており、前記線は、薄肉化後のドナー基板の表面を表す。
【0052】
図2Cは、ドナー基板を薄肉化した後のヘテロ構造の外周の断面図である。したがって、
図1Bの場合と異なり、薄肉化ドナー基板10のエッジ100は、キャリア基板の表面に対して直角又は鈍角を形成するため壊れにくいことが認められる。
【0053】
図3A~3Bに示される第2の実施形態において、トリミングは、キャリア基板上のドナー基板の接合及び薄肉化の後に実施される。
【0054】
図3Aは、(前もってドナー基板はキャリア基板に接合されており、次いで所望の厚さに薄肉化される)キャリア基板2上の薄肉化ドナー基板10のトリミングを概略的に示す。この図には接合層は見られないが、分子接着による接合の代替として、上述の重合体層が使用されて2つの基板間の接合が達成されてもよい。
【0055】
太い破線は、トリミング中に除去される外周部分の境界を定めるものである。この操作において、トリミングは、薄肉化ドナー基板10の厚さに少なくとも等しい深さPにわたって実行される。トリミングは、最終的に部分的にキャリア基板2の厚さへと延びることが好ましい。特に、キャリア基板の表面がトリミング操作の結果として凸凹を呈するとしても、この表面が、ドナー仮想基板としてヘテロ構造の後の使用においてレシーバ基板と接合されることが意図されない限りにおいて有害ではない。さらに、上で説明したように、除去される外周部分の幅Lは、面取部Cの幅よりも大きい。
【0056】
おそらくは、トリミングは、ドナー基板が部分的にのみ薄肉化されているときに実行されてもよい。したがって、例えば、ドナー基板は、粗い研削によって薄肉化される第1のステップを経てもよく、その後にトリミングステップ、及び精密な研削又は化学的機械研磨による薄肉化の第2のステップが続き、薄肉化ドナー基板の表面の粗さを低減することができる。ステップのこの特定の順番により、ドナー基板が破壊のリスク、特にトリミング中の前記ドナー基板の密着力の損失のリスクがないようにまだ十分に厚いまま、トリミングを実行することができるようになる。例えば、圧電ドナー基板の場合には、トリミングを実行するために粗い研削の後に60μmの厚さを維持し、次いで10~20μm程度の厚さに到達するように精密な研削を実行することが有利である。
【0057】
図3Bは、ドナー基板の薄肉化の後のヘテロ構造の外周の断面図である。したがって、
図1Bの場合と異なり、薄肉化ドナー基板10のエッジ100は、キャリア基板の表面と直角(又は鈍角)を形成するため壊れにくいことが認められる。
【0058】
図4A~4Cに示される第3の実施形態において、トリミングが、キャリア基板上のドナー基板の接合と薄肉化の間に実施される。
【0059】
図4Aは、ドナー基板のキャリア基板への接合後であるが前記ドナー基板の薄肉化前に(前もってドナー基板はキャリア基板に接合されており、次いで所望の厚さに薄肉化される)ドナー基板をトリミングする操作を概略的に示す。この図には接合層は見られないが、分子接着による接合の代替として、上述の重合体層が使用されて2つの基板間の接合が達成されてもよい。
【0060】
太い破線は、トリミング中に除去される外周部分の境界を定めるものである。
図2A~2Bの実施形態とは異なり、トリミングはドナー基板1の全厚みを通じて実施される。トリミングはさらに、最終的に部分的にキャリア基板2の厚さへと延びることが好ましい。特に、キャリア基板の表面がトリミング操作の結果として凸凹を呈するとしても、この表面が、ドナー仮想基板としてヘテロ構造の後の使用においてレシーバ基板と接合されることが意図されない限りにおいて有害ではない。さらに、上で説明したように、除去された外周部分の幅Lは、面取部Cの幅よりも大きい。
【0061】
図4Bは、
図4Aのトリミングの後の、薄肉化する前のドナー基板とキャリア基板の外周の断面図である。
【0062】
図4Cは、ドナー基板の薄肉化後のヘテロ構造の外周の断面図である。したがって、
図1Bの場合と異なり、薄肉化ドナー基板10のエッジ100は、キャリア基板の表面と直角(又は)鈍角を形成するため壊れにくいことが認められる。
【0063】
トリミングを実行するためのさまざまな技術が存在する。
【0064】
図5Aに示される第1の実施形態によると、トリミングされるように意図された基板又は基板のアセンブリが、基板の又は基板のアセンブリの回転の軸X1の周りを回転する支持Sの上に配置される。研削ホイールなどの刃具T、例えばダイヤモンドホイールが、軸X1に平行な軸X2の周りを回転し、除去すべき外周部分に面するように構成される。前記刃具は、直面する基板の又は基板のアセンブリの材料を徐々に研いで取り除くために、軸X1に平行な方向に(矢印によって表される)基板又は基板のアセンブリに向けて徐々に移動させる。
【0065】
図5Bに示される第2の実施形態によると、トリミングされるように意図された基板又は基板のアセンブリは、基板の又は基板のアセンブリの回転の軸X1の周りを回転する支持Sの上に配置される。研削ホイールなどの刃具Tが、軸X1に垂直な軸Y1の周りを回転し、除去すべき外周部分に向かうようにさせる。前記刃具は、直面する基板の又は基板のアセンブリの材料を徐々に研いで取り除くために、軸X1に平行な方向に基板又は基板のアセンブリに向けて徐々に移動させる。おそらくは、除去されるべき外周部分の幅に応じて、刃具Tは、さらに、半径方向に直面する基板の又は基板のアセンブリの材料を徐々に研いで取り除くために、軸Y1に平行な方向に移動させてもよい。
【0066】
どちらの実施形態が使用されようと、トリミングの作用は、トリミング後の露出表面がある特定の粗さ又は欠陥を呈してもよいように刃具によって研削される材料を局部的に硬化することである。次いで、後続のレシーバ基板への転写中の接合欠陥を防止するために、研磨、例えば化学的機械研磨(CMP)を実行して硬化領域を除去し、ドナー基板の表面状態を改善することが有利であることがある。
【0067】
このように形成されたヘテロ構造は、ドナー仮想基板として使用されて、ドナー基板の一部分をレシーバ基板に転写する。キャリア基板の表面に対して直角又は鈍角を形成するドナー基板のエッジのおかげで、薄肉化ドナー基板は、非常に壊れにくく、転写方法を実施するために心地よく取り扱うことができる。
【0068】
ここで、
図6A~6E及び7A~7Eを参照して説明するのは、前記ヘテロ構造からレシーバ基板に層を転写するための方法の2つの実施形態である。
【0069】
レシーバ基板は、転写された層及びレシーバ基板を備える最終構造の電気特性及び/又は熱特性に応じて選択されてもよい。例えば、レシーバ基板は、ケイ素、ガラス、石英、サファイア、セラミック、及び/又は多結晶窒化アルミニウムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、特に無線周波数の用途のための基板については、レシーバ基板は、電荷トラップ層、例えば多結晶ケイ素の層、又はおそらくは、炭化ケイ素の層、非晶質ケイ素の層、及び/若しくは多孔質ケイ素の層を含むケイ素基板であってもよい。
【0070】
特に、キャリア基板及びレシーバ基板は、転写プロセス中に薄肉化ドナー基板のどちらの側へのストレスも平衡を保てるようにするために、絶対値で表して5%以下である熱膨張係数における差を呈する材料で作られていてもよいことが有利であり、以て前記薄肉化ドナー基板の変形が防止される。キャリア基板及びレシーバ基板は、1つの同じ材料で形成されていてもよいことが好ましい。
【0071】
図6Aを参照すると、上述の実施形態のうちのいずれか1つによってトリミングされた薄肉化ドナー基板10と、キャリア基板2とを備えるヘテロ構造Hが用意され、前記基板同士は分子接着によって接合されている。図を簡略化するために、ドナー基板と、適用可能な場合、キャリア基板とのトリミングされた部分は示されていない。前記トリミングされた部分の幅はドナー基板のエッジから、典型的には1~3mm、好ましくは2~3mmである。
【0072】
図6Bを参照すると、水素及び/又はヘリウムなどの原子種が、第1の材料の層11の境界を定める弱化領域12を形成するために薄肉化ドナー基板10に注入される。
【0073】
図6Cを参照すると、(転写すべき層11の側の)ヘテロ構造は、レシーバ基板3に接合されている。いくつかの実施形態では、中間層13が、ヘテロ構造及び/又はレシーバ基板に形成される。前記中間層は、接合強度を改善する、並びに/又は最終構造の電気特性及び/若しくは熱特性に寄与する機能を有してもよい。例えば、中間層は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化アルミニウム(AlN)、若しくは酸化タンタル(Ta
2O
5)又はこれらの材料のうちの少なくとも2つのスタックを含んでもよい。他の実施形態では、中間層は省略されて、ヘテロ構造とレシーバ基板の直接的な接合がある。
【0074】
おそらくは、接合エネルギーの増強の目的で熱処理が実施される。
【0075】
図6Dを参照すると、薄肉化ドナー基板10は、第1の材料の層11をレシーバ基板に転写するために弱化領域12に沿って取り外される。
【0076】
図7Aを参照すると、上述の実施形態のうちのいずれか1つによってトリミングされた薄肉化ドナー基板10と、キャリア基板2とを備えるヘテロ構造Hが用意され、前記基板同士は重合体層4によって接合されている。図を簡略化するために、ドナー基板と、適用可能な場合、キャリア基板とのトリミングされた部分は示されていない。前記トリミングされた部分の幅はドナー基板のエッジから、典型的には300~1000μm、好ましくは300~500μmである。
【0077】
図7Bを参照すると、水素及び/又はヘリウムなどの原子種が、第1の材料の層11の境界を定める弱化領域12を形成するために薄肉化ドナー基板10に注入される。
【0078】
図7Cを参照すると、(転写すべき層11の側の)ヘテロ構造は、レシーバ基板3に接合されている。ヘテロ構造とレシーバ基板との間には中間層が示されていないが、
図6Cを参照して説明した中間層が、界面に形成されてもよい。
【0079】
おそらくは、接合エネルギーの増強の目的で熱処理が実施される。前記熱処理は、ポリマー層の損傷を避けるために300℃未満の温度で実行されるのが有利である。
【0080】
図7Dを参照すると、薄肉化ドナー基板10は、第1の材料の層11をレシーバ基板3に転写するために弱化領域12に沿って取り外される。
【0081】
これらの転写方法のうちの1つを使用して、特に、数マイクロメータ程度の厚さを有する圧電性薄層、酸化ケイ素層、電荷トラップ層、及びケイ素基板を連続して備える圧電オンインシュレータ構造を形成することができる。
【0082】
(参照)
WO 2019/186032
【国際調査報告】