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特表2024-509859複合正極活物質、それを採用した正極及びリチウム電池、並びにその製造方法
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  • 特表-複合正極活物質、それを採用した正極及びリチウム電池、並びにその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】複合正極活物質、それを採用した正極及びリチウム電池、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240227BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240227BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20240227BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240227BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
C01G51/00 A
H01M4/36 E
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023553690
(86)(22)【出願日】2022-03-10
(85)【翻訳文提出日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 KR2022003366
(87)【国際公開番号】W WO2022191639
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0031461
(32)【優先日】2021-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スン・ニム・チョ
(72)【発明者】
【氏名】サン・クク・マ
(72)【発明者】
【氏名】イン・ヒョク・ソン
(72)【発明者】
【氏名】グ・スン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ソク・ムン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ・カピロウ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA08
4G048AB01
4G048AB04
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA05
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050FA05
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA05
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA12
(57)【要約】
リチウム遷移金属酸化物を含むコアと、前記コアの表面の外側上に配置される第1シェル及び第2シェルと、を含み、前記第1シェルは、化学式X(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)または化学式X(OH)(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)で表される1種以上の第1金属化合物を含み、前記第2シェルは、化学式Y(0<c≦3、0<d<4、cが1、2または3であれば、dは整数ではない)で表される1種以上の第2金属化合物;及びグラフェンを含み、前記第2金属酸化物がグラフェンマトリックス内に配置され、前記X及び前記Yは、互いに独立して、元素周期律表2族ないし13族、15族及び16族のうち選択された1以上の金属である、複合正極活物質、それを含む正極及びリチウム電池、並びに複合正極活物質の製造方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム遷移金属酸化物を含むコアと、
前記コアの表面の外側上に配置される第1シェル及び第2シェルと、を含み、
前記第1シェルは、化学式X(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)または化学式X(OH)(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)で表される1種以上の第1金属化合物を含み、
前記第2シェルは、化学式Y(0<c≦3、0<d<4、cが1、2または3であれば、dは整数ではない)で表される1種以上の第2金属化合物;及びグラフェンを含み、
前記第2金属酸化物がグラフェンマトリックス内に配置され、前記X及び前記Yは、互いに独立して、元素周期律表2族ないし13族、15族及び16族のうち選択された1以上の金属である、複合正極活物質。
【請求項2】
前記コアの表面の外側上に、前記第1シェル及び前記第2シェルが順次に配置される、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項3】
前記第1シェルは、前記コアの表面の外側上に直接配置され、前記第2シェルは、前記第1シェルの表面の外側上に直接配置される、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項4】
前記第1シェルの厚みは、1nmないし2μmである、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項5】
前記第2シェルの厚みは、1nmないし2μmである、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項6】
前記第1金属化合物が含む金属は、Al、Nb、Mg、Sc、Ti、Zr、V、W、Mn、Fe、Co、Pd、Cu、Ag、Zn、Sb及びSeのうち選択された1以上の金属である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項7】
前記第1金属化合物が含む金属は、Alである、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項8】
前記第1金属化合物は、Al及びAl(OH)からなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項9】
前記第1金属化合物の平均粒径は、10nmないし2μmである、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項10】
前記第2金属化合物が含む金属は、Al、Nb、Mg、Sc、Ti、Zr、V、W、Mn、Fe、Co、Pd、Cu、Ag、Zn、Sb及びSeのうち選択された1以上の金属である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項11】
前記第2金属化合物は、Al(0<z<3)、NbO(0<x<2.5)、MgO(0<x<1)、Sc(0<z<3)、TiO(0<y<2)、ZrO(0<y<2)、V(0<z<3)、WO(0<y<2)、MnO(0<y<2)、Fe(0<z<3)、Co(0<w<4)、PdO(0<x<1)、CuO(0<x<1)、AgO(0<x<1)、ZnO(0<x<1)、Sb(0<z<3)及びSeO(0<y<2)のうち選択される1以上である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項12】
前記第2シェルは、前記第2金属化合物とグラフェンとを含む複合体、及び前記複合体のミーリング結果物のうち選択された1以上を含む、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項13】
前記グラフェンは、分枝された構造を有し、前記第2金属化合物が前記分枝された構造内に分布され、
前記分枝された構造は、互いに接触する複数のグラフェン粒子を含む、請求項12に記載の複合正極活物質。
【請求項14】
前記グラフェンは、球状構造、前記球状構造が連結された螺旋形構造、及び前記球状構造が凝集されたクラスタ構造のうち選択された1以上の構造を有し、
前記第2金属化合物が前記球状構造内に分布され、前記球状構造のサイズが50nmないし300nmであり、前記螺旋形構造のサイズが500nmないし100μmであり、前記クラスタ構造のサイズが0.5mmないし10cmであり、
前記複合体は、しわくちゃの多面体ボール構造体または平面構造体であり、前記構造体の内部または表面に前記第2金属化合物が分布され、
前記グラフェンは、第2金属化合物から10nm以下の距離ほど延び、少なくとも1ないし20個のグラフェン層を含み、前記グラフェンの総厚みが0.6ないし12nmである、請求項12に記載の複合正極活物質。
【請求項15】
前記第1金属化合物の重量、前記第2金属化合物の重量、及び前記グラフェンの重量の総和は、前記コアの重量に対して0.001ないし1重量%である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項16】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1または化学式2で表される、請求項1に記載の複合正極活物質:
[化学式1]
Lia1Cox1y12-b1b1
前記化学式1において、
1.0≦a1≦1.2、0≦b1≦0.2、0.9≦x1≦1、0≦y1≦0.1、及びx1+y1=1であり、
Mは、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)及びホウ素(B)からなる群から選択された1以上であり、Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組み合わせであり、
[化学式2]
LiCoO
【請求項17】
請求項1ないし16のうちいずれか1項に記載の複合正極活物質を含む、正極。
【請求項18】
請求項17に記載の正極を含む、リチウム電池。
【請求項19】
リチウム遷移金属酸化物を提供する段階と、
化学式X(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)または化学式X(OH)(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)で表される1種以上の第1金属化合物を提供する段階と、
化学式Y(0<c≦3、0<d<4、cが1、2または3であれば、dは整数ではない)で表される1種以上の第2金属化合物;及びグラフェンを含み、前記第2金属化合物がグラフェンマトリックス内に配置される複合体を提供する段階と、
前記リチウム遷移金属酸化物、前記第1金属化合物及び前記複合体を機械的にミーリングする段階と、を含み、
前記Xまたは前記Yは、互いに独立して、元素周期律表2族ないし13族、15族及び16族のうち選択された1以上の金属である、複合正極活物質の製造方法。
【請求項20】
前記第1金属化合物の平均粒径は、1nmないし2μmであり、
前記第1金属化合物は、Al及びAl(OH)からなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項19に記載の複合正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合正極活物質、それを採用した正極及びリチウム電池、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の小型化及び高性能化に符合するために、リチウム電池の小型化及び軽量化以外に高エネルギー密度化が重要になっている。すなわち、高容量のリチウム電池が重要になっている。
【0003】
前記用途に符合するリチウム電池を具現するために、高容量を有する正極活物質が検討されている。
【0004】
従来のニッケル系正極活物質は、副反応により、寿命特性が低下し、熱安定性も低かった。
【0005】
したがって、ニッケル系正極活物質を含みながら、電池性能の劣化を防止することができる方法が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一側面は、複合正極活物質の副反応を抑制し、電池性能の劣化を防止することができる新規の複合正極活物質を提供することである。
【0007】
他の側面は、前記複合正極活物質を含む正極を提供することである。
【0008】
さらに他の側面は、前記正極を採用したリチウム電池を提供することである。
【0009】
さらに他の側面は、前記複合正極活物質の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一側面によって、
リチウム遷移金属酸化物を含むコア(core)と、
前記コアの表面の外側上に配置される第1シェル(shell)及び第2シェルと、を含み、
前記第1シェルは、化学式X(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)または化学式X(OH)(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)で表される1種以上の第1金属化合物を含み、
前記第2シェルは、化学式Y(0<c≦3、0<d<4、cが1、2または3であれば、dは整数ではない)で表される1種以上の第2金属化合物;及びグラフェンを含み、
前記第2金属酸化物がグラフェンマトリックス内に配置され、前記X及び前記Yは、互いに独立して、元素周期律表2族ないし13族、15族及び16族のうち選択された1以上の金属である、複合正極活物質が提供される。
【0011】
他の側面によって、
前記複合正極活物質を含む正極が提供される。
【0012】
さらに他の側面によって、
前記正極を含むリチウム電池が提供される。
【0013】
さらに他の側面によって、
リチウム遷移金属酸化物を提供する段階と、
化学式X(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)または化学式X(OH)(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)で表される1種以上の第1金属化合物を提供する段階と、
化学式Y(0<c≦3、0<d<4、cが1、2または3であれば、dは整数ではない)で表される1種以上の第2金属化合物;及びグラフェンを含み、前記第2金属化合物がグラフェンマトリックス内に配置される複合体を提供する段階と、
前記リチウム遷移金属酸化物、前記第1金属化合物及び前記複合体を機械的にミーリングする段階と、を含み、
前記Xまたは前記Yは、互いに独立して、元素周期律表2族ないし13族、15族及び16族のうち選択された1以上の金属である、複合正極活物質の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
一側面によれば、複合正極活物質が、第1金属化合物を含む第1シェルと、第2金属化合物及びグラフェンを含む第2シェルとを含むことにより、リチウム電池の低温及び高温サイクル特性、高速充電特性が向上し、複合正極活物質と電解液の副反応を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】例示的な実施形態によるリチウム電池の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、色々な実施形態を有することができるところ、特定の実施形態を図面に例示し、詳細な説明において詳細に説明する。しかし、それらは、本創意的思想を特定の実施形態について限定しようとするものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれるあらゆる変換、均等物または代替物を含むものと理解されなければならない。
【0017】
以下で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであり、本創意的思想を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。以下、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせが存在するということを示すものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を予め排除するものではないと理解されなければならない。以下で使用される「/」は、状況によって、「及び」とも解釈され、「または」とも解釈される。
【0018】
図面において、複数の層及び領域を明確に表現するために、厚みを拡大したり縮小したりして示した。明細書全体を通じて類似の部分については、同じ図面符号を付した。明細書全体において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分「上に」または「上方に」あるというとき、それは、他の部分の真上にある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。
【0019】
本明細書において、粒子の「粒径」は、粒子が球状である場合、平均直径を示し、粒子が非球状である場合には、平均長軸長を示す。粒子の粒径は、粒度分析器(particle size analyzer: PSA)を用いて測定することができる。粒子の「粒径」は、例えば、平均粒径である。平均粒径は、例えば、メジアン径(D50)である。メジアン径D50は、例えば、レーザ回折法によって測定される粒度分布において小さい粒子サイズを有する粒子側から計算し、50%累積体積に該当する粒子サイズである。例えば、D10は、レーザ回折法によって測定される粒度分布において小さい粒子サイズを有する粒子側から計算し、10%累積体積に該当する粒子サイズである。例えば、D90は、レーザ回折法によって測定される粒度分布において小さい粒子サイズを有する粒子側から計算し、90%累積体積に該当する粒子サイズである。
【0020】
以下、例示的な実施形態による複合正極活物質、それを含む正極及びリチウム電池、並びにその製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0021】
前記コアの表面の外側上に配置される第1シェル及び第2シェルを含み、前記第1シェルは、化学式X(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)または化学式X(OH)(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)で表される1種以上の第1金属化合物を含み、前記第2シェルは、化学式Y(0<c≦3、0<d<4、cが1、2または3であれば、dは整数ではない)で表される1種以上の第2金属化合物;及びグラフェンを含み、前記第2金属酸化物がグラフェンマトリックス内に配置され、前記X及び前記Yは、互いに独立して、元素周期律表2族ないし13族、15族及び16族のうち選択された1以上の金属である。
【0022】
以下、一実施形態による複合正極活物質が優秀な効果を提供するという理論的な根拠について説明するが、これは、本創意的思想に係わる理解の一助とするためのものであって、いかなる方式によっても本創意的思想を限定しようとする意図ではない。
【0023】
複合正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物を含むコアの表面の外側上に配置される第1シェル及び第2シェルを含み、前記第1シェルは、第1金属化合物を含み、前記第2シェルは、第2金属化合物及びグラフェンを含む。従来の複合正極活物質は、高電圧で充放電するとき、従来の複合正極活物質と電解液との副反応により、複合正極活物質の表面にCEI(cathode electrolyte interphase)が急激に形成されることにより、複合正極活物質と電解液との間に界面抵抗が急激に増加する。したがって、従来の複合正極活物質を含むリチウム電池の内部抵抗が増加し、リチウム電池の電気化学的充放電性能が急激に低下する。これに対し、第1金属化合物を含む第1シェルと、第2金属化合物及びグラフェンを含む第2シェルとが前記コアの表面の外側上に配置される前述の複合正極活物質は、コアと電解液との接触を効果的に遮断することにより、コアと電解質との接触による副反応を防止する。また、複合正極活物質の遷移金属陽イオンと電解液との副反応による陽イオンミキシング(cation mixing)が抑制されることにより、複合正極活物質の表面上で抵抗層の生成が抑制される。さらに、複合正極活物質の表面から電解液への遷移金属イオンの溶出も抑制される。結果として、複合正極活物質を含むリチウム電池の性能低下が抑制される。
【0024】
より具体的には、前記第1シェルに含まれた第1金属化合物は、コアに含まれた遷移金属を安定化させ、遷移金属の溶出を抑制する。また、前記第2シェルに含まれたグラフェンは、コアに含まれた酸素の放出を防止する。したがって、前記第1シェル及び前記第2シェルを含む二重シェル構造により、コアから遷移金属及び酸素が溶出されることを抑制する。また、前記第2シェルに含まれたグラフェンは、高い電子伝導性を有するので、複合正極活物質と電解液との界面抵抗が減少する。したがって、前記複合正極活物質を含むリチウム電池の高速充電特性が向上する。また、第1金属化合物及び第2金属化合物が耐電圧性を有するので、高電圧で充放電するとき、コアが含むリチウム遷移金属酸化物の劣化を防止することができる。結果として、複合正極活物質を含むリチウム電池の高温及び/または高電圧サイクル特性が向上する。
【0025】
コアの表面の外側上に配置される前記第1シェル及び前記第2シェルは、例えば、前記コアの表面の外側上に、前記第1シェル及び前記第2シェルが順次に配置されうる。前記第1シェルに含まれた第1金属化合物は、コアに隣接するほど、前記コアに含まれた遷移金属をさらに安定化させ、前記第2シェルに含まれたグラフェンは、電解液に隣接するほど、複合正極活物質と電解液との界面抵抗を効果的に減少させることができる。結果として、前記コアの表面の外側上に、前記第1シェル及び前記第2シェルが順次に配置されることにより、複合正極活物質を含むリチウム電池のサイクル特性及び高速充電特性がさらに向上しうる。
【0026】
コアの表面の外側上に配置される前記第1シェル及び第2シェルは、例えば、前記コアの表面の外側上に前記第1シェルが直接配置され、前記第1シェルの表面の外側上に前記第2シェルが直接配置されうる。前記第1シェルが前記コアとさらに隣接するので、前記第1シェルに含まれた第1金属化合物による遷移金属の安定化効果がさらに向上しうる。また、前記第1シェルの表面の外側上に第2シェルが直接配置されるので、前記第1シェル及び前記第2シェルの二重層構造が形成されうる。前記二重層構造により、コアからの遷移金属及び酸素の溶出防止効果がさらに向上しうる。さらに、第1シェルの表面の外側上に第2シェルが配置されることにより、複合正極活物質と電解液との界面抵抗をさらに減少させることができる。結果として、コアの表面の外側上に第1シェルが直接配置され、第1シェルの表面の外側上に第2シェルが直接配置されることにより、リチウム電池のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0027】
複合正極活物質に含まれた第1シェルの厚みは、例えば、約1nmないし2μm、約10nmないし20μm、約50nmないし20μm、約100nmないし20μm、約200nmないし20μm、約500nmないし20μm、約1μmないし20μm、約2μmないし20μm、約5μmないし20μm、約1nmないし10μm、約1nmないし5μm、約1nmないし1μm、約1nmないし500nm、約1nmないし200nm、約1nmないし100nm、または約1nmないし50nmでもある。第1シェルが当該範囲の厚みを有することにより、コアの遷移金属溶出防止効果がさらに向上しうる。結果として、複合正極活物質が含むリチウム電池のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0028】
複合正極活物質に含まれた第2シェルの厚みは、例えば、約1nmないし2μm、約10nmないし20μm、約50nmないし20μm、約100nmないし20μm、約200nmないし20μm、約500nmないし20μm、約1μmないし20μm、約2μmないし20μm、約5μmないし20μm、約1nmないし10μm、約1nmないし5μm、約1nmないし1μm、約1nmないし500nm、約1nmないし200nm、約1nmないし100nm、または約1nmないし50nmでもある。第2シェルが当該範囲の厚みを有することにより、コアの遷移金属溶出防止効果がさらに向上し、複合正極活物質が含むリチウム電池のサイクル特性がさらに向上しうる。また、複合正極活物質と電解液との副反応が抑制され、リチウム電池の内部抵抗増加率をさらに減少させることができる。
【0029】
第1金属化合物が含む金属は、例えば、Al、Nb、Mg、Sc、Ti、Zr、V、W、Mn、Fe、Co、Pd、Cu、Ag、Zn、Sb及びSeのうち選択された1以上でもある。第1金属化合物が前記金属を含むことにより、前記コアの表面の外側上に前記第1シェルを均一に配置することができる。また、コアに含まれた遷移金属の安定性がさらに向上しうる。結果として、複合正極活物質からの遷移金属の溶出をさらに効果的に防止することができる。第1金属化合物は、前述の金属の酸化物、水酸化物などでもある。
【0030】
第1金属化合物が含む金属は、例えば、Alでもある。第1金属化合物は、例えば、Al及びAl(OH)からなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよい。第1金属化合物は、例えば、Al及びAl(OH)の両方を含むこともできる。第1シェルが当該第1金属化合物を含むことにより、前記コアに含まれた遷移金属(例えば、コバルト(Co))の安定性がさらに向上しうる。結果として、複合正極活物質からの遷移金属の溶出をさらに効果的に防止することができる。
【0031】
複合正極活物質において、例えば、第1シェルが含む第1金属化合物と、コアが含むリチウム遷移金属酸化物の遷移金属とが化学結合を通じて化学的に結合されうる。第1シェルが含む第1金属化合物と、コアが含むリチウム遷移金属酸化物とが化学結合を通じて化学的に結合されることにより、コアとシェルが複合化される。したがって、第1金属化合物とリチウム遷移金属酸化物との単純な物理的混合物と区別される。また、コアに含まれた遷移金属の安定性が向上し、前記遷移金属の溶出を効果的に抑制することができる。
【0032】
第1シェルに含まれた第1金属化合物の平均粒径は、例えば、約10nmないし20μm、約50nmないし20μm、約100nmないし20μm、約150nmないし20μm、約1nmないし10μm、約1nmないし1μm、約1nmないし500nm、約1nmないし400nm、約1nmないし300nm、または約1nmないし200nmでもある。第1金属化合物が当該範囲の平均粒径を有することにより、第1金属化合物が前記コアの表面の外側上に均一に配置され、第1シェルを形成することができる。したがって、コアの表面の外側上に均一に配置された第1シェルにより、遷移金属の溶出をより効果的に抑制することができる。結果として、前記複合正極活物質を含むリチウム電池のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0033】
第1金属化合物の平均粒径は、例えば、レーザ回折方式や動的光散乱方式の測定装置を使用して測定する。平均粒径は、例えば、レーザ散乱粒度分布計(例えば、堀場社製LA-920)を利用して測定し、体積換算における素粒子側から50%累積したときのメジアン径(D50)の値である。
【0034】
第2金属化合物が含む金属は、例えば、Al、Nb、Mg、Sc、Ti、Zr、V、W、Mn、Fe、Co、Pd、Cu、Ag、Zn、Sb及びSeのうち選択された1以上でもある。第2金属化合物は、例えば、Al(0<z<3)、NbO(0<x<2.5)、MgO(0<x<1)、Sc(0<z<3)、TiO(0<y<2)、ZrO(0<y<2)、V(0<z<3)、WO(0<y<2)、MnO(0<y<2)、Fe(0<z<3)、Co(0<w<4)、PdO(0<x<1)、CuO(0<x<1)、AgO(0<x<1)、ZnO(0<x<1)、Sb(0<z<3)及びSeO(0<y<2)のうち選択された1以上でもある。グラフェンマトリックス内に当該第2金属化合物が配置されることにより、コア及び第1シェル上に配置された第2シェルの均一性が向上し、複合正極活物質の耐電圧性がさらに向上する。例えば、第2シェルは、第2金属化合物としてAl(0<x<3)を含む。
【0035】
第2シェルは、化学式Y(0<c≦3、0<e≦4、cが1、2または3であれば、eは整数である)で表される1種以上の第3金属化合物をさらに含んでもよい。前記Yは、元素周期律表2族ないし13族、15族及び16族のうち選択された1以上の金属である。例えば、第3金属化合物は、前記第2金属化合物と同一金属を含み、第3金属化合物のcと第3金属化合物のeとの割合であるe/cが、前記第2金属酸化物のcとdとの割合であるd/cに比べてさらに大きい値を有する。例えば、e/c>d/cである。第3金属化合物は、例えば、Al、NbO、NbO、Nb、MgO、Sc、TiO、ZrO、V、WO、MnO、Fe、Co、PdO、CuO、AgO、ZnO、Sb及びSeOのうち選択される。第2金属化合物は、第3金属化合物の還元生成物である。第3金属化合物の一部または全部が還元されることにより、第2金属化合物が得られる。したがって、第2金属化合物は、第3金属化合物に比べて酸素含量が低く、金属の酸化数がさらに高い。例えば、第2シェルは、第2金属化合物であるAl(0<x<3)及び第3金属化合物であるAlを含む。
【0036】
複合正極活物質において、例えば、第2シェルが含むグラフェンと、第1シェルが含む第1金属化合物の金属とが化学結合を通じて化学的に結合されうる(bound)。第2シェルが含むグラフェンの炭素原子(C)と、第1シェルが含む第1金属化合物の金属(Me)とは、例えば、酸素原子を媒介としてC-O-Me結合(例えば、C-O-Co結合)を通じて化学的に結合される。第2シェルが含むグラフェンと、第1シェルが含む第1金属化合物とが化学結合を通じて化学的に結合されることにより、第1シェル及び第2シェルが複合化される。また、前述のように、第1シェルが含む第1金属化合物と、コアが含む遷移金属とが化学結合を通じて化学的に結合されることにより、コア及び第1シェルが複合化される。結果として、コア、第1シェル及び第2シェルが複合化される。したがって、第1金属化合物、第2金属化合物、グラフェン及びリチウム遷移金属酸化物の単純な物理的混合物と区別される。
【0037】
また、第2シェルが含む第2金属化合物と、グラフェンとも化学結合を通じて化学的に結合される。ここで、化学結合は、例えば、共有結合またはイオン結合である。共有結合は、例えば、エステル基、エーテル基、カルボニル基、アミド基、カーボネート無水物基及び酸無水物基のうち少なくとも1つを含む結合である。イオン結合は、例えば、カルボン酸イオン、アンモニウムイオン、アシル陽イオン基などを含む結合である。
【0038】
複合正極活物質において、例えば、コア上にドーピングされる第4金属をさらに含んでもよい。例えば、コアが含むリチウム遷移金属酸化物の表面に第4金属がドーピングされた後、前記コアの表面の外側上に第1シェル及び第2シェルが配置されうる。第4金属は、例えば、Al、Zr、W及びCoのうち選択される1以上の金属などでもある。
【0039】
複合正極活物質が含む第2シェルは、例えば、第2金属化合物及びグラフェンを含む複合体、並びに前記複合体のミーリング(milling)結果物のうち選択された1以上を含み、第2金属化合物がグラフェンマトリックス内に配置されうる。第2シェルは、例えば、第2金属化合物及びグラフェンを含む複合体から製造される。複合体は、第2金属化合物以外に第3金属化合物をさらに含んでもよい。複合体は、例えば、2種以上の第2金属化合物を含むこともできる。複合体は、例えば、2種以上の第2金属化合物、及び2種以上の第3金属化合物を含むこともできる。
【0040】
複合体が含む第2金属化合物及び第3金属化合物のうち選択された1以上の平均粒径は、約1nmないし1μm、約1nmないし500nm、約1nmないし200nm、約1nmないし100nm、約1nmないし70nm、約1nmないし50nm、約1nmないし30nm、約3nmないし1μm、約5nmないし1μm、約10nmないし1μm、約15nmないし1μm、約20nmないし1μm、約25nmないし1μm、または約30nmないし1μmでもある。第2金属化合物及び/または第3金属化合物が当該ナノ範囲の粒径を有することにより、複合体のグラフェンマトリックス内により均一に分布されうる。したがって、そのような複合体が凝集なしにコア及び第1シェルの表面の外側上に均一にコーティングされ、第2シェルを形成することができる。また、第2金属化合物及び/または第3金属化合物が当該範囲の粒径を有することにより、コア及び第1シェルの表面の外側上により均一に配置されうる。したがって、コア及び第1シェルの表面の外側上に、第2金属化合物及び/または第3金属化合物が均一に配置されることにより、耐電圧特性をより効果的に発揮することができる。
【0041】
第2金属化合物及び第3金属化合物の平均粒径は、前述の第1金属化合物の平均粒径と同様な方法によっても測定される。
【0042】
複合体が含む第2金属化合物及び第3金属化合物のうち選択された1以上の均一度偏差は、3%以下、2%以下、または1%以下でもある。均一度は、例えば、XPSによっても求められる。したがって、複合体内で、第2金属化合物及び第3金属化合物のうち選択された1以上が3%以下、2%以下、または1%以下の偏差を有して均一に分布されうる。
【0043】
複合体が含むグラフェンは、例えば、分枝された構造(branched structure)を有し、第2金属化合物がグラフェンの分枝された構造内に分布されうる。複合体が含むグラフェンは、例えば、分枝された構造を有し、第2金属化合物及び第3金属化合物がグラフェンの分枝された構造内に分布されうる。グラフェンの分枝された構造は、例えば、互いに接触する複数のグラフェン粒子を含む。グラフェンが分枝された構造を有することにより、多様な伝導性経路を提供することができる。
【0044】
複合体が含むグラフェンは、例えば、球状構造(spherical structure)を有し、第2金属化合物が前記球状構造内に分布されうる。複合体が含むグラフェンは、例えば、球状構造を有し、第2金属化合物及び第3金属化合物が前記球状構造内に分布されうる。グラフェンの球状構造のサイズは、50nmないし300nmでもある。球状構造を有するグラフェンが複数個でもある。グラフェンが球状構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0045】
複合体が含むグラフェンは、例えば、複数の球状構造が連結された螺旋形構造(spiral structure)を有し、第2金属化合物が前記螺旋形構造の球状構造内に分布されうる。複合体が含むグラフェンは、例えば、複数の球状構造が連結された螺旋形構造を有し、第2金属化合物及び第3金属化合物のうち選択された1以上の金属化合物が前記螺旋形構造の球状構造内に分布されうる。グラフェンの螺旋形構造のサイズは、500nmないし100μmでもある。グラフェンが螺旋形構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0046】
複合体が含むグラフェンは、例えば、複数の球状構造が凝集されたクラスタ構造(cluster structure)を有し、第2金属化合物が前記クラスタ構造の球状構造内に分布されうる。複合体が含むグラフェンは、例えば、複数の球状構造が凝集されたクラスタ構造を有し、第2金属化合物及び第3金属化合物が前記クラスタ構造の球状構造内に分布されうる。グラフェンのクラスタ構造のサイズは、0.5mmないし10cmでもある。グラフェンがクラスタ構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0047】
複合体は、例えば、しわくちゃの多面体ボール構造体(faceted-ball structure)であり、構造体の内部または表面に第2金属化合物が分布されうる。複合体は、例えば、しわくちゃの多面体ボール構造体であり、構造体の内部または表面に第2金属化合物及び第3金属化合物が分布されうる。複合体が当該多面体ボール構造体であることにより、複合体は、コアの不規則的な表面凹凸上に容易に被覆されうる。
【0048】
複合体は、例えば、平面構造体(planar structure)であり、構造体の内部または表面に第2金属化合物が分布されうる。複合体は、例えば、平面構造体であり、構造体の内部または表面に第2金属化合物及び第3金属化合物のうち選択された1以上が分布されうる。複合体が当該二次元平面構造体であることにより、複合体は、コアの不規則的な表面凹凸上に容易に被覆されうる。
【0049】
複合体が含むグラフェンは、第2金属化合物から約10nm以下の距離ほど延び、少なくとも1ないし20個のグラフェン層を含むものでもある。例えば、複数のグラフェン層が積層されることにより、第2金属化合物上に、約12nm以下の総厚みを有するグラフェンが配置されうる。例えば、グラフェンの総厚みは、約0.6ないし12nmでもある。
【0050】
第1金属化合物の重量、第2金属化合物の重量、及びグラフェンの重量の総和は、前記コアの重量に対し、約0.001重量%ないし1重量%、約0.005重量%ないし1重量%、約0.001重量%ないし1重量%、約0.01重量%ないし1重量%、約0.02重量%ないし1重量%、約0.05重量%ないし1重量%、約0.1重量%ないし1重量%、約0.001重量%ないし0.5重量%、約0.001重量%ないし0.2重量%、約0.001重量%ないし0.15重量%、または約0.001重量%ないし0.1重量%でもある。複合正極活物質が当該範囲の複合体を含むことにより、複合正極活物質を含むリチウム電池のサイクル特性がさらに向上する。
【0051】
複合正極活物質が含むコアは、例えば、下記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物を含む:
[化学式1]
Lia1Cox1y12-b1b1
前記化学式1において、
1.0≦a1≦1.2、0≦b1≦0.2、0.9≦x1≦1、0≦y1≦0.1、及びx1+y1=1であり、
Mは、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)及びホウ素(B)からなる群から選択された1以上であり、Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組み合わせである。
【0052】
複合正極活物質が含むコアは、例えば、下記化学式2で表されるリチウム遷移金属酸化物を含む:
[化学式2]
LiCoO
他の実施形態による正極は、前述の複合正極活物質を含む。正極が前述の複合正極活物質を含むことにより、向上したサイクル特性と熱安定性を提供する。
【0053】
正極は、例えば、下記の例示的な方法によって製造されるが、必ずしもそのような方法に限定されず、要求される条件によって調節される。
【0054】
まず、前述の複合正極活物質、導電材、結合剤及び溶媒を混合し、正極活物質組成物を準備する。準備された正極活物質組成物をアルミニウム集電体上に直接コーティング及び乾燥し、正極活物質層が形成された正極極板を製造する。あるいは、前記正極活物質組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得られたフィルムを前記アルミニウム集電体上にラミネーションし、正極活物質層が形成された正極極板を製造する。
【0055】
導電材としては、カーボンブラック、黒鉛微粒子、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維;カーボンナノチューブ;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維または金属チューブ;ポリフェニレン誘導体のような伝導性高分子などが使用されるが、それらに限定されず、当該技術分野において導電材として使用するものであれば、いずれも使用可能である。
【0056】
結合剤としては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、前述の高分子の混合物、スチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使用され、溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などが使用されるが、それらに限定されず、当該技術分野において使用するものであれば、いずれも使用可能である。
【0057】
正極活物質組成物に可塑剤または気孔形成剤をさらに付加し、電極板の内部に気孔を形成することも可能である。
【0058】
正極に使用される複合正極活物質、導電材、結合剤及び溶媒の含量は、リチウム電池において通常使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって、前記導電材、結合剤及び溶媒のうち1以上が省略可能である。
【0059】
また、正極は、前述の複合正極活物質以外に他の一般の正極活物質をさらに含むことが可能である。
【0060】
一般の正極活物質は、リチウム含有金属酸化物として、当該技術分野において通常使用するものであれば、制限なしにいずれも使用可能である。例えば、コバルト、マンガン、ニッケル及びそれらの組み合わせから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを使用することができ、その具体的な例としては、Lia11-b1b1(前記式において、0.90≦a1≦1及び0≦b1≦0.5である);Lia11-b1b12-c1c1(前記式において、0.90≦a1≦1、0≦b1≦0.5及び0≦c1≦0.05である);LiE2-b1b14-c1c1(前記式において、0≦b1≦0.5及び0≦c1≦0.05である);Lia1Ni1-b1-c1Cob1c1α(前記式において、0.90≦a1≦1、0≦b1≦0.5、0≦c1≦0.05及び0<α≦2である);Lia1Ni1-b1-c1Cob1c12-αα(前記式において、0.90≦a1≦1、0≦b1≦0.5、0≦c1≦0.05及び0<α<2である);Lia1Ni1-b1-c1Cob1c12-α(前記式において、0.90≦a1≦1、0≦b1≦0.5、0≦c1≦0.05及び0<α<2である);Lia1Ni1-b1-c1Mnb1c1α(前記式において、0.90≦a1≦1、0≦b1≦0.5、0≦c1≦0.05及び0<α≦2である);Lia1Ni1-b1-c1Mnb1c12-αα(前記式において、0.90≦a1≦1、0≦b1≦0.5、0≦c1≦0.05及び0<α<2である);Lia1Ni1-b1-c1Mnb1c12-α(前記式において、0.90≦a1≦1、0≦b1≦0.5、0≦c1≦0.05及び0<α<2である);Lia1Nib1c1d1(前記式において、0.90≦a1≦1、0≦b1≦0.9、0≦c1≦0.5及び0.001≦d1≦0.1である);Lia1Nib1Coc1Mnd1e1(前記式において、0.90≦a1≦1、0≦b1≦0.9、0≦c1≦0.5、0≦d1≦0.5及び0.001≦e1≦0.1である);Lia1NiGb1(前記式において、0.90≦a1≦1及び0.001≦b1≦0.1である);Lia1CoGb1(前記式において、0.90≦a1≦1及び0.001≦b1≦0.1である);Lia1MnGb1(前記式において、0.90≦a1≦1及び0.001≦b1≦0.1である);Lia1Mnb1(前記式において、0.90≦a1≦1及び0.001≦b1≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiIO;LiNiVO;Li(3-f1)(PO(0≦f1≦2);Li(3-f1)Fe(PO(0≦f1≦2);LiFePOの化学式のうちいずれか1つで表される化合物を使用することができる。
【0061】
前述の化合物を表現する化学式において、Aは、Ni、Co、Mnまたはそれらの組み合わせであり;Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはそれらの組み合わせであり;Dは、O、F、S、Pまたはそれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mnまたはそれらの組み合わせであり;Fは、F、S、Pまたはそれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはそれらの組み合わせであり;Qは、Ti、Mo、Mnまたはそれらの組み合わせであり;Iは、Cr、V、Fe、Sc、Yまたはそれらの組み合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはそれらの組み合わせである。
【0062】
前述の化合物の表面にコーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、前述の化合物とコーティング層とが付加された化合物の混合物の使用も可能である。前述の化合物の表面に付加されるコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはそれらの混合物である。コーティング層の形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内で選択される。コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング法、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当業者にとって理解される内容であるので、詳細な説明は省略する。
【0063】
さらに他の実施形態によるリチウム電池は、前述の複合正極活物質を含む正極を採用する。
【0064】
リチウム電池が前述の複合正極活物質を含む正極を採用することにより、向上したサイクル特性、高速充電特性及び熱安定性を提供する。また、充放電中、前記正極と電解液との間にCEI(Cathode Electrolyte Interphase)層が形成されることにより、リチウム電池の内部抵抗が増加する現状を抑制する。
【0065】
リチウム電池は、例えば、下記の例示的な方法によって製造されるが、必ずしもそのような方法に限定されず、要求される条件によって調節される。
【0066】
まず、前述の正極の製造方法によって正極が製造される。
【0067】
次いで、負極が次のように製造される。負極は、例えば、複合正極活物質の代わりに負極活物質を使用することを除いては、正極と実質的に同様な方法で製造される。また、負極活物質組成物において、導電材、結合剤及び溶媒は、正極と実質的に同じものを使用することができる。
【0068】
例えば、負極活物質、導電材、結合剤及び溶媒を混合して負極活物質組成物を製造し、それを銅集電体に直接コーティングし、負極極板を製造する。あるいは、製造された負極活物質組成物を別途の支持体上にキャスティングし、該支持体から剥離させた負極活物質フィルムを銅集電体にラミネーションし、負極極板を製造する。
【0069】
負極活物質は、当該技術分野においてリチウム電池の負極活物質として使用するものであれば、いずれも使用可能である。例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物及び炭素系材料からなる群から選択された1以上を含む。
【0070】
リチウムと合金可能な金属は、例えば、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などである。元素Yは、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poまたはそれらの組み合わせである。
【0071】
前記遷移金属酸化物は、例えば、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などである。
【0072】
非遷移金属酸化物は、例えば、SnO、SiO(0<x<2)などである。
【0073】
炭素系材料は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはそれらの混合物である。結晶質炭素は、例えば、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛である。非晶質炭素は、例えば、ソフトカーボン(soft carbon: 低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メゾ相ピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどである。
【0074】
負極活物質、導電材、結合剤及び溶媒の含量は、リチウム電池において通常使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって、前記導電材、結合剤及び溶媒のうち1以上が省略可能である。
【0075】
次いで、前記正極と負極との間に挿入されるセパレータが準備される。
【0076】
セパレータは、リチウム電池において通常使用するものであれば、いずれも使用可能である。セパレータは、例えば、電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ電解液含湿能にすぐれるものが使用される。セパレータは、例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの組み合わせのうち選択されたものであり、不織布または織布の形態である。リチウムイオン電池には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻き取り可能なセパレータが使用され、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能にすぐれるセパレータが使用される。
【0077】
セパレータは、下記の例示的な方法によって製造されるが、必ずしもそのような方法に限定されず、要求される条件によって調節される。
【0078】
まず、高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合し、セパレータ組成物が準備される。セパレータ組成物が電極の上部に直接コーティング及び乾燥され、セパレータが形成される。あるいは、セパレータ組成物が支持体上にキャスティング及び乾燥された後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムが電極の上部にラミネーションされ、セパレータが形成される。
【0079】
セパレータ製造に使用される高分子は、特に限定されず、電極板の結合剤に使用される高分子であれば、いずれも使用可能である。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートまたはそれらの混合物などが使用される。
【0080】
次いで、電解質が準備される。
【0081】
電解質は、例えば、有機電解液である。有機電解液は、例えば、有機溶媒にリチウム塩が溶解されて製造される。
【0082】
有機溶媒は、当該技術分野において有機溶媒として使用するものであれば、いずれも使用可能である。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物などである。
【0083】
リチウム塩も、当該技術分野においてリチウム塩として使用するものであれば、いずれも使用可能である。リチウム塩は、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(但し、x及びyは自然数)、LiCl、LiIまたはそれらの混合物などである。
【0084】
あるいは、電解質は、固体電解質である。固体電解質は、例えば、ホウ素酸化物、リチウムオキシナイトライドなどであるが、それらに限定されず、当該技術分野において固体電解質として使用するものであれば、いずれも使用可能である。固体電解質は、例えば、スパッタリングなどの方法で前記負極上に形成されるか、または別途の固体電解質シートが負極上に積層される。
【0085】
図1に示すように、リチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。正極3、負極2及びセパレータ4がワインディングされるか、折り畳まれ、電池ケース5に収容される。電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリ6で密封され、リチウム電池1が完成される。電池ケース5は、円筒状であるが、必ずしもそのような形態に限定されず、例えば、角状、薄膜状などである。
【0086】
パウチ型リチウム電池は、1以上の電池構造体を含む。正極及び負極の間にセパレータが配置され、電池構造体が形成される。電池構造体がバイセル構造として積層された後、有機電解液に含浸され、パウチに収容及び密封され、パウチ型リチウム電池が完成される。電池構造体が複数個積層され、電池パックを形成し、そのような電池パックが、高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用される。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両などに使用される。
【0087】
リチウム電池は、寿命特性及び高率特性に優れているので、例えば、電気車両(electric vehicle, EV)に使用される。例えば、プラグインハイブリッド車両(plug-in hybrid electric vehicle, PHEV)などのハイブリッド車両に使用される。また、多量の電力保存が要求される分野に使用される。例えば、電気自転車、電動工具などに使用される。
【0088】
さらに他の実施形態による複合正極活物質の製造方法は、リチウム遷移金属酸化物を提供する段階と、化学式X(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)または化学式X(OH)(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)で表される1種以上の第1金属化合物を提供する段階と、化学式Y(0<c≦3、0<d<4、cが1、2または3であれば、dは整数ではない)で表される1種以上の第2金属化合物;及びグラフェンを含み、前記第2金属化合物がグラフェンマトリックス内に配置される複合体を提供する段階と、前記リチウム遷移金属酸化物、前記第1金属化合物及び前記複合体を機械的にミーリングする段階と、を含み、前記Xまたは前記Yは、互いに独立して、元素周期律表2族ないし13族、15族及び16族のうち選択された1以上の金属である。
【0089】
リチウム遷移金属酸化物が提供される。リチウム遷移金属酸化物は、例えば、前述の化学式1及び2で表される化合物である。
【0090】
化学式X(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)または化学式X(OH)(0<a≦3、0<b≦4、aが1、2または3であれば、bは整数である)で表される1種以上の第1金属化合物を提供する段階は、前記第1金属化合物を前記リチウム遷移金属酸化物と混合する。
【0091】
第1金属化合物は、例えば、前述のように、Al、Nb、Mg、Sc、Ti、Zr、V、W、Mn、Fe、Co、Pd、Cu、Ag、Zn、Sb及びSeのうち選択された1以上の金属を含むものでもある。第1金属化合物は、例えば、Alを含んでもよい。第1金属化合物は、例えば、Al及びAl(OH)からなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよい。第1金属化合物は、例えば、Al及びAl(OH)の両方を含むこともできる。
【0092】
化学式Y(0<c≦3、0<d<4、cが1、2または3であれば、dは整数ではない)で表される1種以上の第2金属化合物;及びグラフェンを含み、前記第2金属化合物がグラフェンマトリックス内に配置される複合体を提供する段階は、例えば、第3金属化合物を含む構造体に、炭素供給源気体からなる反応ガスを供給して熱処理する段階を含む。
【0093】
前記複合体を提供する段階は、例えば、Y(0<c≦3、0<e≦4、cが1、2または3であれば、eは整数である)で表される1種以上の第3金属化合物に、炭素供給源気体からなる反応ガスを供給して熱処理する段階を含み、前記Yは、元素周期律表2族ないし13族、15族及び16族のうち選択された1以上の金属である。
【0094】
炭素供給源ガスは、下記化学式3で表される化合物、下記化学式4で表される化合物、及び下記化学式5で表される酸素含有気体からなる群から選択された1以上の混合ガスである:
[化学式3]
(2n+2-a2)[OH]a2
前記化学式3において、nは、1ないし20であり、a2は、0または1であり;
[化学式4]
2n
前記化学式4において、nは、2ないし6であり;
[化学式5]
x2y2z2
前記化学式5において、x2は、0または1ないし20の整数であり、y2は、0または1ないし20の整数であり、z2は、1または2である。
【0095】
化学式3で表される化合物及び化学式4で表される化合物は、メタン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール及びプロパノールからなる群から選択された1以上である。化学式5で表される酸素含有気体は、例えば、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、水蒸気(HO)またはその混合物を含む。
【0096】
(0<c≦3、0<e≦4、cが1、2または3であれば、eは整数である)で表される第3金属化合物に、炭素供給源気体からなる反応ガスを供給して熱処理する段階以後に、窒素、ヘリウム及びアルゴンからなる群から選択された1以上の不活性気体を利用した冷却段階をさらに遂行することもできる。冷却段階は、常温(20ないし25℃)に調節する段階をいう。炭素供給源気体は、窒素、ヘリウム及びアルゴンからなる群から選択された1以上の不活性気体を含んでもよい。
【0097】
複合体の製造方法において、気相反応によって、グラフェンが成長する過程は、多様な条件で遂行される。
【0098】
第1条件によれば、例えば、Y(0<c≦3、0<e≦4、cが1、2または3であれば、eは整数である)で表される第3金属化合物が配置された反応器に先にメタンを供給し、熱処理温度Tまで昇温処理する。熱処理温度Tまでの昇温時間は、10分ないし4時間であり、熱処理温度Tは、700℃ないし1100℃範囲である。熱処理温度Tで反応時間の間、熱処理を実施する。反応時間は、例えば、4時間ないし8時間である。 熱処理された結果物を常温に冷却させ、複合体を製造する。熱処理温度Tから常温まで冷却する過程にわたる時間は、例えば、1時間ないし5時間である。
【0099】
第2条件によれば、例えば、Y(0<c≦3、0<e≦4、cが1、2または3であれば、eは整数である)で表される第3金属化合物が配置された反応器に先に水素を供給し、熱処理温度Tまで昇温処理する。熱処理温度Tまでの昇温時間は、10分ないし4時間であり、熱処理温度Tは、700℃ないし1100℃範囲である。熱処理温度Tで一定反応時間の間、熱処理した後、メタンガスを供給し、残余反応時間の間、熱処理を実施する。反応時間は、例えば、4時間ないし8時間である。熱処理された結果物を常温に冷却させ、複合体を製造する。冷却過程において、窒素を供給する。熱処理温度Tから常温まで冷却する過程にわたる時間は、例えば、1時間ないし5時間である。
【0100】
複合体を製造する過程において、炭素供給源気体が水蒸気を含む場合、非常に優れた伝導度を有する複合体が得られる。気体混合物内の水蒸気の含量は、制限されず、例えば、炭素供給源気体の全体100体積%を基準として0.01体積%ないし10体積%である。炭素供給源気体は、例えば、メタン;メタンと不活性気体とを含む混合気体;またはメタンと酸素含有気体とを含む混合気体である。
【0101】
炭素供給源気体は、例えば、メタン;メタンと二酸化炭素との混合気体;またはメタンと二酸化炭素と水蒸気との混合気体でもある。メタンと二酸化炭素との混合気体において、メタンと二酸化炭素とのモル比は、約1:0.20ないし1:0.50、約1:0.25ないし1:0.45、または約1:0.30ないし1:0.40である。メタンと二酸化炭素と水蒸気との混合気体において、メタンと二酸化炭素と水蒸気とのモル比は、約1:0.20ないし0.50:0.01ないし1.45、約1:0.25ないし0.45:0.10ないし1.35、または約1:0.30ないし0.40:0.50ないし1.0である。
【0102】
炭素供給源気体は、例えば、一酸化炭素または二酸化炭素である。炭素供給源気体は、例えば、メタンと窒素との混合気体である。メタンと窒素との混合気体において、メタンと窒素とのモル比は、約1:0.20ないし1:0.50、約1:0.25ないし1:0.45、または約1:0.30ないし1:0.40である。炭素供給源気体は、窒素のような不活性気体を含まないのである。
【0103】
熱処理圧力は、熱処理温度、気体混合物の組成、及び所望の炭素コーティングの量などを考慮して選択することができる。熱処理圧力は、流入される気体混合物の量と、流出される気体混合物の量とを調整して制御することができる。熱処理圧力は、例えば、0.5atm以上、1atm以上、2atm以上、3atm以上、4atm以上、または5atm以上である。
【0104】
熱処理時間は、特に制限されず、熱処理温度、熱処理時の圧力、気体混合物の組成、及び所望の炭素コーティングの量によって適切に調節することができる。例えば、熱処理温度における反応時間は、例えば、10分ないし100時間、30分ないし90時間、または50分ないし40時間である。例えば、熱処理時間が増加するほど、沈積されるグラフェン(炭素)量が多くなり、これにより、複合体の電気的物性が向上しうる。但し、そのような傾向が時間に必ずしも正比例するものではない。例えば、所定時間経過後には、それ以上のグラフェン沈積が起こらないか、沈積率が低くなる。
【0105】
前述の炭素供給源気体の気相反応を通じて、比較的低い温度でも、Y(0<c≦3、0<e≦4、cが1、2または3であれば、eは整数である)で表される第3金属化合物、及びその還元生成物であるY(0<c≦3、0<d<4、cが1、2または3であれば、dは整数ではない)で表される第2金属化合物のうち選択された1以上に、均一なグラフェンコーティングを提供することにより、複合体が得られる。
【0106】
複合体は、例えば、球状構造、複数の球状構造が連結された螺旋形構造、複数の球状構造が凝集されたクラスタ構造、及びスポンジ構造(spone structure)のうち選択された1以上の構造を有するグラフェンマトリックスと、前記グラフェンマトリックス内に配置される、Y(0<c≦3、0<d<4、cが1、2または3であれば、dは整数ではない)で表される第2金属化合物、及びY(0<c≦3、0<e≦4、cが1、2または3であれば、eは整数である)で表される第3金属化合物のうち選択された1以上とを含む。
【0107】
次いで、リチウム遷移金属酸化物、第1金属化合物及び複合体を混合し、機械的にミーリングする。ミーリング時に、ノビルタミキサーなどを使用することができる。ミーリング時のミキサーの回転数は、例えば、1,000rpmないし2,500rpmである。ミーリング速度が1,000rpm未満であれば、リチウム遷移金属酸化物、第1金属化合物及び複合体に加えられるせん断力が弱いので、リチウム遷移金属酸化物、第1金属化合物及び複合体が化学結合を形成し難い。ミーリング速度が過度に高ければ、複合化が過度に短時間に進められることにより、リチウム遷移金属酸化物上に第1金属化合物が均一にコーティングされ、均一かつ連続した第1シェルを形成し難く、第1金属化合物上に複合体が均一にコーティングされ、均一かつ連続した第2シェルを形成し難い。ミーリング時間は、例えば、5分ないし100分、5分ないし60分、または5分ないし30分である。ミーリング時間が過度に短ければ、リチウム遷移金属酸化物上に第1金属化合物が均一にコーティングされ、均一かつ連続した第1シェルを形成し難く、第1金属化合物上に複合体が均一にコーティングされ、均一かつ連続した第2シェルを形成し難い。ミーリング時間が過度に長くなれば、生産効率が低下してしまう。
【0108】
第1金属化合物の重量、第2金属化合物の重量、及びグラフェンの重量の総和は、前述のように、前記コアの重量に対して約0.001ないし1重量%でもある。
【0109】
第1金属化合物の平均粒径は、前述のように、1nmないし200μmでもある。リチウム遷移金属酸化物と複合体との機械的ミーリングに使用される複合体の平均粒径(D50)は、例えば、1μmないし20μm、3μmないし15μm、または5μmないし10μmである。
【0110】
以下の実施例及び比較例を通じて、例示的な実施形態がさらに詳細に説明される。但し、実施例は、技術的思想を例示するためのものであって、これらだけで本技術的思想の範囲が限定されるものではない。
【0111】
(複合体の製造)
Al @Gr複合体
Al粒子(平均粒径:約20nm)を反応器内に位置させた後、反応器内にCHを約300sccm、1atmで約30分間供給した条件で、反応器内部温度を1000℃に上昇させた。
【0112】
次いで、前記温度で7時間保持し、熱処理を遂行した。次いで、反応器内部温度を常温(20ないし25℃)に調節し、Al粒子及びその還元生成物であるAl(0<z<3)粒子がグラフェンに埋め込まれた複合体を得た。
【0113】
複合体が含むグラフェンの含量は、30.9wt%であった。
【0114】
Gr(グラフェン)
製造例1においてAl粒子を前記反応器内に位置させない点を除いては、製造例1と同様な方法で製造し、グラフェンを得た。
【0115】
(複合正極活物質の製造)
製造例1:LCO 100g(コア)/Al(OH) 0.05g(第1シェル)/Al @Gr複合体0.05g(第2シェル)
比表面積が0.21m/gであるLiCoO(以下、LCOという)、平均粒径が200nmであるAl(OH)、及び前記Al@Gr複合体を、ハンドミキサーを利用して5分間混合し、LCO表面に第1シェル及び第2シェルの複合コーティング層が形成された複合正極活物質を得た。
【0116】
LCO、Al(OH)及びAl@Gr複合体の重量比は、100:0.05:0.05であった。
【0117】
製造例2:LCO 100g(コア)/Al(OH) 0.05g、Al 0.03g(第1シェル)/Al @Gr複合体0.02g(第2シェル)
製造例1においてLCO(比表面積:0.21m/g)、Al(OH)(平均粒径:200nm)、Al(平均粒径:20nm)及び前記Al@Gr複合体の重量比を100:0.05:0.03:0.02に変更したことを除いては、製造例1と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0118】
製造例3:LCO 100g(コア)/Al(OH) 0.05g、Al 0.07g(第1シェル)/Al @Gr複合体0.03g(第2シェル)
製造例1においてLCO(比表面積:2.21m/g)、Al(OH)(平均粒径:200nm)、Al(平均粒径:20nm)及び前記Al@Gr複合体の重量比を100:0.05:0.07:0.03に変更したことを除いては、製造例1と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0119】
製造例4:LCO 100g(コア)/Al(OH) 0.07g、Al 0.07g(第1シェル)/Al @Gr複合体0.06g(第2シェル)
製造例1においてLCO(比表面積:2.21m/g)、Al(OH)(平均粒径:200nm)、Al(平均粒径:20nm)及び前記Al@Gr複合体の重量比を100:0.07:0.07:0.06に変更したことを除いては、製造例1と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0120】
比較製造例1:bare LCO
LCOをそのまま正極活物質として使用した。
【0121】
比較製造例2:LCO 100g(コア)/Al(OH) 0.05g(第1シェル)/Gr 0.05g(第2シェル)
Al@Gr複合体の代わりにGr(グラフェン)を使用したことを除いては、製造例1と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0122】
比較製造例3:LCO 100g(コア)/Al(OH) 0.05g、Al 0.03g(第1シェル)/Gr 0.02g(第2シェル)
Al@Gr複合体の代わりにGr(グラフェン)を使用したことを除いては、製造例2と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0123】
比較製造例4:LCO 100g(コア)/Al(OH) 0.1g(シェル)
LCO及びAl(OH)を使用し、それらの重量比が100:0.1であり、前記Al@Gr複合体を使用しないことを除いては、製造例1と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0124】
比較製造例5:LCO 100g(コア)/Al(OH) 0.05g(シェル)
LCO及びAl(OH)を使用し、それらの重量比が100:0.05であり、前記Al@Gr複合体を使用しないことを除いては、製造例1と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0125】
比較製造例6:LCO 100g(コア)/Al @Gr複合体0.1g(シェル)
LCO及びAl@Gr複合体を使用し、それらの重量比が100:0.1であり、Al(OH)を使用しないことを除いては、製造例1と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0126】
比較製造例7:LCO 100g(コア)/Al @Gr複合体0.05g(シェル)
LCO及びAl@Gr複合体を使用し、それらの重量比が100:0.05であり、Al(OH)を使用しないことを除いては、製造例1と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0127】
(リチウム電池(half cell)の製造)
実施例1
(正極の製造)
製造例1で製造された複合正極活物質、炭素導電材(Denka Black)、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を96:2:2の重量比で混合した混合物を、N-メチルピロリドン(NMP)と共にメノウ乳鉢で混合し、スラリーを製造した。
【0128】
15μm厚のアルミニウム集電体上に前記スラリーを8.5mg/cmでローディングし、バーコーティング(bar coating)し、常温で乾燥した後、真空、120℃の条件で再度乾燥し、圧延及びパンチングし、21μm厚及び4.1g/cc電極密度の正極板を製造した。
【0129】
(コインセルの製造)
前記で製造された正極板を使用し、リチウム金属を相対電極とし、PTFE隔離膜(separator)と1.3M LiPFがEC(エチレンカーボネート)+EP(エチルプロピオネート)+PP(プロピルプロピオネート)(25:30:45体積比)に溶けている溶液を電解質として使用し、コインセルをそれぞれ製造した。
【0130】
実施例2ないし4及び比較例1ないし7
実施例1において製造例1の複合正極活物質の代わりに、製造例2ないし4及び比較製造例1ないし7で準備された複合正極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例1と同様な方法でコインセルを製造した。
【0131】
評価例1:常温充放電特性評価
実施例1ないし4及び比較例1ないし7で製造されたリチウム電池を、25℃で0.1C rateの電流で電圧が4.55V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.55Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次いで、放電時に電圧が3.0V(vs.Li)に至るまで0.1C rateの定電流で放電した(化成(formation)サイクル)。
【0132】
化成サイクルを経たリチウム電池を、25℃で0.2C rateの電流で電圧が4.55V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.55Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。次いで、放電時に電圧が3.0V(vs.Li)に至るまで0.2C rateの定電流で放電した(1stサイクル)。このとき、SOC 10(電池の全体充電容量を100%にしたとき、10%の充電容量になるように充電した状態であり、それは、放電中の状態において90%放電させた状態を意味する)において1Cで1秒間電流を流しつつ発生する電圧下降(voltage drop)Vを測定し、直流内部抵抗(DC-IR)を計算した。
【0133】
stサイクルを経たリチウム電池を、25℃で1C rateの電流で電圧が4.55V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.55Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。次いで、放電時に電圧が3.0V(vs.Li)に至るまで1C rateの定電流で放電し(2ndサイクル)、そのようなサイクルを60thサイクルまで同一条件で反復(60回反復)した。
【0134】
このとき、60thサイクルを経たリチウム電池を、SOC 10(電池の全体充電容量を100%にしたとき、10%の充電容量になるように充電した状態であり、それは、放電中の状態において90%放電させた状態を意味する)において1Cで1秒間電流を流しつつ発生する電圧下降(voltage drop)Vを測定し、直流内部抵抗(DC-IR)を計算した。
【0135】
全ての充放電サイクルにおいて、1つの充電/放電サイクル後、10分間の停止時間を置いた。
【0136】
常温充放電実験結果のうち、放電容量(0.2C、mAh/g)、初期効率(0.2C、%)、DC-IR(Ω、SOC 10)及びDC-IR増加率(%、60サイクル後)を下記表1に示した。60thサイクルでのDC-IR増加率は、下記数式1によって定義される。
【0137】
[数式1]
DC-IR増加率[%]=[((50thサイクルでのDC-IR)-(1stサイクルでのDC-IR))/1stサイクルでのDC-IR]×100
【0138】
評価例2:高温及び高電圧充放電特性評価
実施例1ないし4及び比較例1ないし7で製造されたリチウム電池を、45℃で0.1C rateの電流で電圧が4.58V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.58Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。次いで、放電時に電圧が3.0V(vs.Li)に至るまで0.1C rateの定電流で放電した(化成サイクル)。
【0139】
化成サイクルを経たリチウム電池を、45℃で0.2C rateの電流で電圧が4.58V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.58Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。次いで、放電時に電圧が3.0V(vs.Li)に至るまで0.2C rateの定電流で放電した(1stサイクル)。
【0140】
stサイクルを経たリチウム電池を、45℃で1C rateの電流で電圧が4.58V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.58Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。次いで、放電時に電圧が3.0V(vs.Li)に至るまで1C rateの定電流で放電し(2ndサイクル)、そのようなサイクルを60thサイクルまで同一条件で反復(60回反復)した。
【0141】
全ての充放電サイクルにおいて、1つの充電/放電サイクル後、10分間の停止時間を置いた。
【0142】
高温充放電実験結果の一部を下記表1に示した。60thサイクルでの容量保持率は、下記数式2によって定義される。
【0143】
[数式2]
容量保持率[%]=[50thサイクルでの放電容量/1stサイクルでの放電容量]×100
【0144】
【表1】
【0145】
表1に示されるように、実施例1ないし4のリチウム電池は、比較例1ないし7のリチウム電池に比べ、DC-IRが低く、高温寿命特性が向上し、DC-IR増加率は減少した。
【符号の説明】
【0146】
1 リチウム電池
2 負極
3 正極
4 セパレータ
5 電池ケース
6 キャップ(cap)アセンブリ
図1
【国際調査報告】