(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-05
(54)【発明の名称】パーキンソン病の治療
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240227BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240227BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240227BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240227BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240227BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20240227BHJP
C12N 9/99 20060101ALN20240227BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61K39/395 N ZNA
A61K45/00
A61P25/16
A61P43/00 121
A61B5/11 230
C12N9/99
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023554794
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022019233
(87)【国際公開番号】W WO2022192173
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】318003021
【氏名又は名称】プロシーナ バイオサイエンシーズ リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パガーノ, ジェンナーロ
【テーマコード(参考)】
4C038
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VA16
4C038VB11
4C038VB14
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZC751
4C084ZC752
4C085AA14
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
(57)【要約】
本発明は、プラシネズマブを用いてパーキンソン病を治療、予防、または改善する方法であって、患者の受動的および/もしくは能動的な動作を測定するために取得されたデータを受信および送信するようにプログラムされたモバイルデバイスを提供する、(b)モバイルデバイスから送信されたデータを収集する、(c)対象における動作障害の存在もしくは程度を評価するために患者から取得されたデータを対照データと比較する、かつ/または、患者の能動的もしくは受動的運動機能における変化を同定するのに十分な期間、患者から取得されたデータをモニタリングする、方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラシネズマブを投与されたパーキンソン病(PD)を有する患者、またはPDのリスクがある患者の運動機能をモニタリングするための方法であって、
(a)患者の受動的および/もしくは能動的な動作を測定するモバイルデバイスの内部および/もしくは外部のセンサーから取得されたデータを、受信および送信するようにプログラムされた前記モバイルデバイス、または、患者の受動的および/もしくは能動的な動作を測定するモバイルデバイスの内部および/もしくは外部のセンサーから取得されたデータを、受信および送信するようにプログラムされたモバイルデバイスアプリケーションを、患者に提供すること;
(b)前記モバイルデバイスから送信されたデータを収集すること;ならびに
(c)対象における動作障害の存在もしくは程度を評価するために患者から取得されたデータを対照データと比較すること、および/または、患者の能動的もしくは受動的運動機能における変化を同定するのに十分な期間、患者から取得されたデータをモニタリングすること
を含む方法。
【請求項2】
前記センサーが、患者の能動的な動作から取得されたデータを送信する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モバイルデバイスが、患者の上肢および下肢に取り付けられた外部センサーからデータを受信および送信するようにプログラムされている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記モバイルデバイスが、対象の上肢および下肢のセンサーからデータを取得する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記モバイルデバイスが、対象によって携帯され、内部センサーからデータを取得する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記動作が、デバイスをタッピングすること、座ること、および立つことを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記センサーが、患者の動作の以下の特徴:
(a)受動的にモニタリングされる身振りのジェスチャパワーの中央値、
(b)Uターンテストおよび受動的にモニタリングされた歩行における回転速度の中央値、
(c)バランステストにおけるジャーク、
(d)発話テストにおけるメル周波数ケプストラム2、
(e)持続発声における音声のジッター、
(f)記号数字モダリティテストにおける正解数、
(g)高速タッピング変動性、
(h)ハンドターンの最高速度、
(i)図形描画タスクにおけるスパイラルセレリティ、ならびに
(j)安静時および姿勢振戦タスクにおけるエネルギーの二乗中央値
のうちの1つ以上を測定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
患者の最も影響を受けていない側と最も影響を受けている側からの動作を独立して測定する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記デバイスから収集されたデータが、患者のMDS-UPDRSスコアと比較される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
MDS-UPDRSスコアが、MDS-UPDRSパートI、MDS-UPDRSパートII、またはUPDRSパートIIIのうちの1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
MDS-UPDRSスコアが、UPDRSパートIIIを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プラシネズマブのレジメンを患者に施すことをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
プラシネズマブの前記レジメンが、3から5週間の間隔での1000~5000mgのプラシネズマブを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
プラシネズマブが静脈内投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
患者にMAO-B阻害剤を投与することをさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
患者が、未治療であるか、過去2年間にPDと診断されたか、または以前にMAO-B阻害剤で治療された、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
患者が、65kgを超える体重を有しており、4週間に1回、4500mgの用量のプラシネズマブを投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
患者が、65kg未満の体重を有しており、4週間に1回、3500mgの用量のプラシネズマブを投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
患者が、4週間ごとに1500mgの用量の抗体を投与される、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
患者が、プラシネズマブを4週間に1回、少なくとも52週間投与される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
患者の能動的または受動的運動機能の変化を同定するのに十分な前記期間が、4~52週間を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記期間が、4週間、8週間、16週間、20週間、24週間、28週間、32週間、36週間、42週間、46週間または52週間である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2021年3月8日に出願された米国仮出願第63/158,239号の優先権を主張するものであり、その開示は参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
配列表
配列表のコンピュータ可読形式は、電子的な提出により本出願と共に提出され、その全体が参照により本出願に組み込まれる。配列表は、2022年3月3日に作成されたASCIIテキストファイルに含まれており、「20-1293-WO2_Sequence-Listing_ST25.txt」のファイル名と15kbのサイズを有している。
【背景技術】
【0003】
パーキンソン病(PD)は、ゆっくりと慢性的に進行する神経変性疾患であり、世界中で700万~1,000万人が罹患していると推定される。米国では推定で72万5,000人が罹患しており、毎年50,000例以上の新たな症例が報告されている。患者の5から10パーセントは50歳未満で診断されるが、PDは一般により高齢の成人を対象とした疾患であると考えられており、60歳以上の100人に1人が罹患しており、男性におけるほうが女性よりも一般的である。
【0004】
α-シヌクレインは、通常はシナプスに関連するタンパク質であり、神経の可塑性、学習、記憶に役割を果たしていると考えられている。α-シヌクレインは、病的状態においては凝集して不溶性のフィブリルを形成することがあり、パーキンソン病を含むいくつかの神経変性疾患を特徴付ける病態の主要な成分となっている。α-シヌクレインの可溶性オリゴマーは、神経毒性を示しうる。ヒト、マウス、ハエなどの多様な種や動物モデルにおいて同様な形態学的および神経学的変化を伴うα-シヌクレインの蓄積は、この分子がパーキンソン病の発症に寄与していることを示唆している。α-シヌクレインに対する抗体は、α-シヌクレインの沈着とパーキンソン病の症状を軽減できる可能性がある。
【0005】
PDの現在の治療法は、主にドーパミン補充療法とドーパミン受容体アゴニストの使用を通じて、疾患の初期の運動症状を管理するものである。レボドパおよび他のドーパミン作動薬による治療は、運動症状に一時的に対処する。しかしながら、これは、疾患に関連する病理学的プロセスを逆転、遅延、または停止するものではない。疾患が進行するにつれて、これらの薬剤は症状をコントロールする効果が弱くなる。
【0006】
これらの薬剤を服用する患者はしばしば、運動合併症(例えば、応答振動、ウェアリングオフ現象、および薬物誘発性ジスキネジー)、ならびに吐き気、日中の傾眠、睡眠発作、起立性低血圧、または衝動制御障害などの副作用を発症する。PDの非運動症状(例えば、睡眠障害、不安、および抑うつ)の対症療法も利用可能である。しかしながら、現在までのところ、ニューロンの保護または疾患経過の修正を実証した承認済みの治療法はない。パーキンソン病の根本的な原因を標的とし、対症療法とは異なり、パーキンソン病の容赦ない進行を遅らせる新しい治療法が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
1つの態様において、本開示は、プラシネズマブを投与されたパーキンソン病(PD)を有する患者、またはPDのリスクがある患者の運動機能をモニタリングする方法に向けられている。本方法は、以下を含みうる:
(a)患者の受動的および/もしくは能動的な動作を測定するモバイルデバイスの内部および/もしくは外部のセンサーから取得されたデータを、受信および送信するようにプログラムされたモバイルデバイス、または、患者の受動的および/もしくは能動的な動作を測定するモバイルデバイスの内部および/もしくは外部のセンサーから取得されたデータを、受信および送信するようにプログラムされたモバイルデバイスアプリケーションを、患者に提供すること;
(b)モバイルデバイスから送信されたデータを収集すること;ならびに
(c)対象における動作障害の存在もしくは程度を評価するために患者から取得されたデータを対照データと比較すること、および/または、患者の能動的もしくは受動的運動機能における変化を同定するのに十分な期間、患者から取得されたデータをモニタリングすること。
【0008】
本開示の様々な態様において、センサーは、患者の動作の以下の特徴のうちの1つ以上を測定する:
(a)受動的にモニタリングされる身振りのジェスチャパワーの中央値:
(b)Uターンテストおよび受動的にモニタリングされた歩行における回転速度の中央値、
(c)バランステストにおけるジャーク、
(d)発話テストにおけるメル周波数ケプストラム2、
(e)持続発声における音声のジッター、
(f)記号数字モダリティテストにおける正解数。
(g)高速タッピング変動性、
(h)ハンドターンの最高速度、
(i)図形描画タスクにおけるスパイラルセレリティ、ならびに
(j)安静時および姿勢振戦タスクにおけるエネルギーの二乗中央値。
センサーは、患者の最も影響を受けていない側と最も影響を受けている側からの動作を独立して測定しうる。
【0009】
本開示の別の態様では、デバイスから収集されたデータは、患者のMDS-UPDRSスコア、例えば、UPDRSパートIIIと比較される。
【0010】
本開示の方法は、プラシネズマブのレジメンを患者に施すことを含みうる。本開示によるプラシネズマブレジメンは、3から5週間の間隔で1000~5000mgのプラシネズマブで患者を治療することを含んでもよく、治療は、患者にMAO-B阻害剤を投与することをさらに含みうる。
【0011】
本開示のさらなる態様において、患者の能動的または受動的運動機能の変化を同定するのに十分な期間は、4~52週間を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、ベースラインから52週目までの総MDS-UPDRSスコア(パートI、II、およびIII)における変化を示している。症候性PDの治療を開始した患者の貢献は、症候性PDの治療が開始される前の最後の来院までである。結果は、プラセボ群と比較した各治療群の52週目の時点での総MDS-UPDRSスコア(パートI、II、およびIII)のベースラインからの変化が満たされなかったことを示している(プール用量レベル:-14.0%、-1.30、80%CI=(-3.18、0.58);低用量レベル:-21.5%、-2.02、80%CI=(-4.21、0.18);および高用量レベル:-6.6%、-0.62、80%CI=(-2.82、1.58))。バーは80%CIを表している。MDS-UPDRS、運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度。
【
図2A】
図2Aは、運動機能の低下の低減を確認する施設評価について、ベースラインから52週目までの総MDS-UPDRSパートIIIの合計における変化を示している(プール用量レベル:-25.0%、-1.44、80%CI=(-2.83、-0.06);低用量レベル:-33.8%、-1.88、80%CI=(-3.49、-0.27);および高用量レベル:-18.2%、-1.02、80%CI=(-2.64、0.61))。
*症候性PDの治療を開始した患者の貢献は、症候性PDの治療が開始される前の最後の来院までである。バーは80%CIを表している。
【
図2B】
図2Bは、運動機能の低下の低減を確認する中央評価について、ベースラインから52週目までの総MDS-UPDRSパートIIIの合計における変化を示している(プール用量レベル:-35.0%、-1.88、80%CI=(-3.31、-0.45);低用量レベル:-45.4%、-2.44、80%CI=(-4.09、-0.78);および高用量レベル:-24.7%、-1.33、80%CI=(-2.99、0.34))。MDS-UPDRSパートIIIの中央評価アセスメントにおいて、プラシネズマブは1年間の治療後、運動機能の低下をプラセボと比較して35%低減した。
*症候性PDの治療を開始した患者の貢献は、症候性PDの治療が開始される前の最後の来院までである。バーは80%CIを表している。
【
図3】
図3は、臨床的に意味のある低下への進行の遅延を伴って、運動機能の悪化までの時間が短縮されていることを示している。プラシネズマブ投与群ではプラセボ投与群に対して52週間にわたり、MDS-UPDRSパートIIIにおける少なくとも5ポイントの進行までの時間の施設評価によって実証されたように、臨床的に意味のある運動進行の悪化までの時間を遅延させた(プール用量レベル:HR=0.82、80%CI=0.64から0.99;低用量レベル:HR=0.77、80%CI=0.63から0.96、高用量レベル:HR=0.87、CI=0.70から1.07)。
*ヴァルトCI/検定。プール用量分析は、事後分析である。CI、信頼区間;MDS-UPDRS、運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度。
【
図4】
図4は、ベースラインから52週目までの運動緩慢の進行の低減を示しており、これは、運動緩慢の進行に臨床的な低下がみられることを確認している。有効性のシグナルは、施設評価によって、52週目におけるプラシネズマブ治療を受けた患者とプラセボの運動緩慢のベースラインからの変化について観察された(プール用量レベル:-27.0%、-0.75、80%CI=(-1.62、0.11);低用量レベル:-38.3%、-1.07、80%CI=(-2.07、-0.07);および高用量レベル:-15.7%、-0.44、80%CI=(-1.45、0.56))。プール用量分析は、事後分析である。CI、信頼区間;MDS-UPDRS、運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度。
【
図5】
図5は、スマートフォンアプリを使用して52週間にわたり、2週間の期間で収集された2以下のFDRを有する特徴に関する患者の動作データを示している。図は、影響が最も少ない側でのタッピング速度の変動性に関するモニタリング結果を示している。
【
図6】
図6は、スマートフォンアプリを使用して52週間にわたり、2週間の期間で収集された2以下のFDRを有する特徴に関する患者の動作データを示している。図は、ハンドジェスチャパワーを受動的にモニタリングした結果を示している。
【
図7A】
図7Aは、プラシネズマブによる臨床的な低下の遅延が、デジタル運動測定により評価されたところ、進行のより速い個体においてより明らかであったことを示している。
【
図7B】
図7Bは、プラシネズマブによる臨床的な低下の遅延が、デジタル運動測定により評価されたところ、進行のより速い個体においてより明らかであったことを示している。
【
図7C】
図7Cは、プラシネズマブによる臨床的な低下の遅延が、デジタル運動測定により評価されたところ、進行のより速い個体においてより明らかであったことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
パーキンソン病の症状の変動する性質は、頻度の少ない来院データから潜在的な治療効果を測定することを困難にする。したがって、本開示のデジタルヘルステクノロジーツール(DHTT)は、患者の疾患、疾患の進行、および治療反応の遠隔的、したがって頻繁な評価を可能にする。
【0014】
本開示は、運動徴候に対して非常に敏感なデバイス上のセンサーを使用することによって、患者の運動機能を測定できるウェアラブルデバイスまたはハンドヘルドデバイスを使用して、パーキンソン病の進行および治療反応を測定するための方法およびデバイスに向けられている。デバイスは、加速度モーター、ジャイロスコープ、または同様な動作検出ハードウェアおよび付随するソフトウェアを使用して患者の動作のモニタリングおよび追跡を可能にするアプリケーションを含むスマートフォンおよびスマートウォッチを含むが、これらに限定はされない。本開示のデバイスおよび方法は、患者の通常の日常生活中におけるデータの継続的な収集および評価を提供するために、患者が生活し、働き、社交する環境における患者の動作をデバイスが測定できるため、生態学的に妥当な評価を可能にする。
【0015】
本開示の方法およびデバイスは、早期のパーキンソン病を含むパーキンソン病の治療、予防、および/または改善(例えば、疾患進行の抑制)において、プラシネズマブおよび他の同様な抗α-シヌクレインヒト化抗体と共に使用され得る。プラシネズマブは、パーキンソン病患者における運動機能を改善、維持、またはその低下を低減するために使用され、これは、本開示の方法およびデバイスによりモニタリングされ得る。本開示の1つの態様において、運動機能の1つの尺度は、運動障害学会統一パーキンソン病評価尺度(MDS-UPDRS)パートIII、運動機能の臨床検査である。本開示の別の態様では、MDS-UPDRSパートIIIは施設評価での評価である。本開示の別の態様では、MDS-UPDRSパートIIIは中央評価での評価である。パーキンソン病に関連する運動症状は、動作の遅さ(運動緩慢)、振戦、発話、顔の表情、硬直、および歩行における変化を含み、本開示の方法およびデバイスを用いて測定およびモニタリングされ得る。本開示の1つの態様では、測定およびモニタリングは、プラシネズマブによる治療によるMDS-UPDRSパートIIIの運動進行の臨床的に意味のある悪化までの時間の遅延を示すために使用され得る。
【0016】
本開示のさらなる態様を説明する前に、いくつかの用語が以下に定義される。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでない場合を除き、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの化合物(a compound)」または「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」という用語は、それらの混合物を含む複数の化合物を含み得る。
【0017】
α-シヌクレインは、ニューロン、特にシナプス前終末に豊富に存在する高度に保存されたタンパク質であり、誤った折り畳みを生じて凝集し、パーキンソン病の病理学に深く関与するタンパク質構造を形成すると考えられている。凝集したα-シヌクレインタンパク質が脳病変を形成することは、神経変性シヌクレイノパチーの特徴である。さらに、一部の神経変性疾患では、誤った折り畳みと凝集がβ-アミロイドの沈着を伴うことが多く、パーキンソン病を含むいくつかの神経変性疾患ではα-シヌクレインとタウの凝集体が共存している。
【0018】
天然のヒト野生型α-シヌクレインは、以下のアミノ酸配列を有する140アミノ酸のペプチドである(GenBankアクセッション番号:P37840):
(配列番号8)。
【0019】
このタンパク質は、3つの認識されたドメインを有している:アミノ酸1~61をカバーするN末端反復ドメイン;ほぼアミノ酸60~95に及ぶNAC(非アミロイド成分)ドメイン;および、ほぼアミノ酸98から140までに及ぶC末端酸性ドメイン。文脈から特に明らかでない限り、α-シヌクレインまたはその断片への言及は、上に指し示した天然のヒト野生型アミノ酸配列、およびそのヒト対立遺伝子バリアント、特にパーキンソン病に関連するものを含む。
【0020】
文脈から明らかでない限り、「約」という用語は、記載された値の測定の標準誤差(例えば、SEM)範囲内の値など、実質的でない変動を包含する。値の範囲の指定は、範囲内または範囲を定義する全ての整数、および範囲内の整数によって定義される全ての部分範囲を含む。本明細書で使用される場合、統計学的有意性は、p≦0.05を意味する。文脈から特に明らかでない限り、「約」という用語は、記載された値の平均の標準偏差内の値、または記載された値の±5%の値のうち、いずれか大きい方の値を包含する。
【0021】
1つ以上の列挙された要素を「含む(comprising)」または「含有する(including)」組成物または方法は、具体的に列挙されていない他の要素を含んでいてもよい。例えば、ポリペプチド配列を「含む(comprising)」または「含有する(including)」組成物は、その配列を単独で、または他の配列もしくは成分との組み合わせで含みうる。
【0022】
対象が少なくとも1つの既知のリスク因子(例えば、年齢、遺伝的履歴、生化学的履歴、家族歴、および状況的曝露)を有している場合、個体は疾患のリスクが高く、そのリスク因子を有する個体は、リスク因子を持たない個体よりも、疾患を発症するリスクが統計的に有意に高くなる。
【0023】
「対象」または「患者」という用語は、未治療の対象を含む、予防的処置または治療的処置を受けるヒトおよび他の哺乳動物の対象を含む。本明細書で使用される「対象」または「患者」という用語は、ヒト、ウシ、イヌ、モルモット、ウサギなどの他の哺乳動物の対象を含む治療が望まれる任意の単一の対象を指す。また、疾患の臨床徴候を示していない臨床研究試験に関与する対象、疫学研究に関与する対象、または対照として使用される対象も、対象として含まれることが意図されている。本開示のいくつかの態様では、患者は男性の患者であり、本開示のいくつかの態様では、患者は女性の患者である。
【0024】
「疾患」という用語は、生理学的機能を損なう異常な状態を指す。この用語は、病因の性質に関係なく、生理学的機能が損なわれる任意の障害、病気、異常、病理、不健康、症状、または症候群を包含するために広く使用される。
【0025】
「症状」という用語は、対象によって認識される歩行の変化などの疾患の主観的な証拠を指す。「徴候」または「シグナル」とは、臨床医または医師によって観察される疾患の客観的な証拠を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「治療する」および「治療」という用語は、本明細書に記載されているように、疾患に関連する1つ以上の症状、徴候、シグナル、または影響の緩和または改善、疾患の1つ以上の症状または影響の発症の予防、阻害または遅延、疾患の1つ以上の症状または影響の重症度または頻度の軽減、および/または所望の転帰に向けた増加または傾向を指す。治療レジメンは、用量、投与頻度、投与経路、および総投与期間のいずれか、または全てを含む本開示の抗体の投与を特徴付けるパラメータの組み合わせを指す。
【0027】
本明細書で使用される「予防」、「予防する」、または「予防すること」という用語は、α-シヌクレインの病状が既に存在するか否かを問わず(一次および二次予防)、疾患の発症前に本開示の組成物を対象に接触させ(例えば、投与)、それによって、対象がペプチドまたは免疫療法組成物に接触していない場合と比較して、臨床症状の発症を遅らせる、および/または疾患の発症後の疾患の症状を軽減することを指し、疾患の発症を完全に抑えることを指すものではない。場合によっては、予防は、本開示のペプチドまたは免疫療法組成物の投与後、限られた時間内で起こりうる。他の場合には、予防は、本開示のペプチドまたは免疫療法組成物を投与することを含む治療レジメンの期間中に起こりうる。
【0028】
本明細書で使用される用語「低減」、「低減する」、または「低減すること」は、パーキンソン病に関連する症状、徴候、シグナル、または影響の測定または評価における増加を減少または抑制することを指す。他の実施形態では、本明細書で使用される「低減」、「低減する」、または「低減すること」という用語は、対象または対象の組織に存在するα-シヌクレインの量の増加を減少または抑制することを指し、これは、対象または対象の組織中に存在、蓄積、凝集または沈着したα-シヌクレインの量の増加を減少させるか、または抑制する(例えば、増加速度を減少させる)ことを包含する。特定の実施形態において、対象内に存在、蓄積、凝集、または沈着したα-シヌクレインの量の減少または増加の抑制(例えば、増加速度の減少)は、対象の中枢神経系(CNS)中に存在、蓄積、凝集、または沈着したα-シヌクレインの量を指す。特定の実施形態において、対象内に存在、蓄積、凝集、または沈着したα-シヌクレインの量の減少または増加の抑制(例えば、増加速度の減少)は、対象の末梢(例えば、末梢循環系)に存在、蓄積、凝集、または沈着したα-シヌクレインの量を指す。特定の実施形態において、対象内に存在、蓄積、凝集、または沈着したα-シヌクレインの量の減少または増加の抑制(例えば、増加速度の減少)は、対象の脳中に存在、蓄積、凝集、または沈着したα-シヌクレインの量を指す。いくつかの実施形態では、還元されたα-シヌクレインは、病理学的形態のα-シヌクレイン(例えば、腓骨α-シヌクレイン封入体、オリゴマーまたはフィブリル状α-シヌクレイン集合体、およびα-シヌクレインオリゴマーのプロトフィブリル状中間体)である。さらに他の実施形態では、神経変性疾患および/またはシヌクレイノパチーの病理学的指標が減少される。
【0029】
プラシネズマブ(PRX002/RG7935)は、マウス親抗体9E4に由来する免疫グロブリンG1(IgG1)クラスのヒト化モノクローナル抗体(mAb)であり、ヒトαシヌクレインのC末端のエピトープ(アミノ酸118~126)に対して向けられている。プラシネズマブは、生化学的および生物物理学的実験において、可溶性および不溶性形態のヒトα-シヌクレインの両方に結合し、単量体形態のα-シヌクレインよりも凝集体に対してより高い相対的親和性/結合力を有する。細胞培養物において、プラシネズマブはαシヌクレインの細胞間伝達を効果的にブロックする。プラシネズマブは、配列番号1の重鎖可変領域および配列番号4の軽鎖可変領域を含む。マウス9E4抗体の他の例示的なヒト化形態は、3つの例示的なヒト化軽鎖成熟可変領域(配列番号2、3)および4つの例示的なヒト化重鎖成熟可変領域(配列番号5、6、7)を含む。例示的な軽鎖および重鎖の成熟可変領域は、任意の組み合わせで一対にされ得る。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2019/064053を参照のこと。本明細書で実証されているように、プラシネズマブは、早期パーキンソン病患者において複数の臨床エンドポイントに対する有効性のシグナルを実証した疾患修飾の可能性のある最初の抗αシヌクレイン抗体である。
【0030】
MDS-UPDRSパートIIIは、パーキンソン病に関連する運動症状を評価する運動機能の臨床検査である。1つの態様では、プラシネズマブは、パーキンソン病を有する対象またはそのリスクのある対象における運動機能の低下を低減するために使用することができ、これは、本開示のデバイスおよび方法を用いて測定およびモニタリングされ得る。
【0031】
測定およびモニタリングは、プラシネズマブによる治療前または治療中に開始でき、MDS-UPDRSパートIIIによって測定される運動機能の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%; 101%、102%、103%、104%、105%、106%、107%、108%、109%、110%、111%、112%、113%、114%、115%、116%、117%、118%、119%、120%、121%、122%、123%、124%、125%、126%、127%、128%、129%、130%、131%、132%、133%、134%、135%、136%、137%、138%、139%、もしくは140%、または少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも100%、少なくとも101%、少なくとも102%、少なくとも103%、少なくとも104%、少なくとも105%、少なくとも106%、少なくとも107%、少なくとも108%、少なくとも109%、少なくとも110%、少なくとも111%、少なくとも112%、少なくとも113%、少なくとも114%、少なくとも115%、少なくとも116%、少なくとも117%、少なくとも118%、少なくとも119%、少なくとも120%、少なくとも121%、少なくとも122%、少なくとも123%、少なくとも124%、少なくとも125%、少なくとも126%、少なくとも127%、少なくとも128%、少なくとも129%、少なくとも130%、少なくとも131%、少なくとも132%、少なくとも133%、少なくとも134%、少なくとも135%、少なくとも136%、少なくとも137%、少なくとも138%、少なくとも139%、もしくは少なくとも140%の低下を示すために使用され得る。
【0032】
別の態様において、本開示の方法およびデバイスは、プラシネズマブが、MDS-UPDRSパートIIIの中央評価アセスメントにおいて治療1年後にプラセボに対して35%、MDS-UPDRSパートIIIの施設評価アセスメントにおいて治療1年後にプラセボに対して25%、運動機能の低下を低減するかどうかを測定およびモニタリングするために使用され得る。さらに、このデバイスおよび方法は、プラシネズマブが、MDS-UPDRSパートIIIの臨床運動検査の成分として評価されるパーキンソン病の主症状の1つである運動緩慢を改善できることを示すために使用され得る。
【0033】
1つの態様において、本開示の方法およびデバイスは、パーキンソン病を有するか、またはパーキンソン病のリスクを有する対象において、プラシネズマブまたは他の療法が運動機能を維持するか、または運動進行の臨床的に意味のある悪化までの時間を遅延させるかどうかを決定するために使用され得る。このデバイスおよび方法は、パーキンソン病の進行の低減、例えば、臨床的に意味のある運動進行の悪化までの遅延時間を測定するか、または測定を支援することができる。疾患の進行の低減は、例えば、MDS-UPDRSパートIIIで少なくとも5ポイントの進行までの時間を延長することによって実証され得る。
【0034】
本開示の様々な態様において、プラシネズマブのレジメンは、3~5週間の間隔での1000~5000mgのプラシネズマブを含む。
【0035】
本開示の別の態様において、デバイスおよび方法は、患者のMDS-UPDRSパートIII運動検査スコアの改善、および/または発話、表情、硬直、指のタッピング、手の動作、手の回内-回外動作、足指のタッピング、足の敏捷性、椅子からの立ち上がり、歩行、歩行のすくみ、姿勢の安定性、姿勢、身体の運動緩慢、手の振戦、安静時振戦の振幅、安静時振戦の不変性、またはホーン・ヤール重症度のうちの1つ以上の改善を示し得る。さらに、本開示のデバイスおよび方法は、治療1年後にプラセボに対して、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、または少なくとも40%の運動緩慢における改善を示すことができる。運動機能の測定値は、例えば、80%の運動緩慢特徴および20%の安静時振戦特徴、またはそれらの同様の組み合わせから構築された複合スコアを含むデジタル運動スコアによって決定されるような、運動機能に関する陽性シグナルによっても決定され得る。
【0036】
パーキンソン病患者における運動機能の遠隔モニタリング
プラシネズマブ療法による治療は、治療を受けている対象の動作の変化をモニタリングすることを伴い得る。モニタリングは、治療開始前後の運動機能の少なくとも1つの特徴の評価が含んでいてもよい。モニタリングは、治療に反応した動作障害の低減を指し示すことができ、これは、治療開始前との比較であってもよいし、または少なくとも、対象の以前の低下率または免疫療法を受けていない対照患者における低下率との比較で低下率の低減を指し示す。これとは別に、対象は、自律神経機能不全、胃腸機能不全、幻覚、または他の徴候もしくは症状のうち1つ以上の精神症状の変化についても、モニタリングされ得る。
【0037】
対象の症状、例えば振戦、硬直、動作緩慢などの運動症状が、モニタリングされてもよい。対象の運動症状を評価および定量化するために、ウェアラブルシステムまたは身体装着センサーが使用されてもよい。「身体装着センサー」は、実験室環境または自由生活条件で使用されうる。Del Dinら、J.of NeuroEngineering and Rehabilitation、2016年13:46を参照。
【0038】
対象は、モバイルデバイスベースのモニタリングを使用してモニタリングされうる。モバイルデバイスは、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブルセンサー、ポータブルマルチメディアデバイス、またはタブレットコンピュータであってもよい。モバイルデバイスに内蔵されたセンサーを使用して、対象の日常活動が記録されうる。対象は、日々の活動を記録するためにモバイルデバイスを携帯しうる。モバイルデバイスベースの評価およびセンサーは、例えば、パーキンソン病の治療を受けている対象の歩行および可動性の遠隔的、受動的なモニタリングのために使用されうる。(例えば、Lipsmeier,F.ら、Mov Disord.2017年;32(suppl 2);W.Y.Chengら、2017年IEEE/ACM International Conference on Connected Health:Applications, Systems and Engineering Technologies(CHASE)、フィラデルフィア、ペンシルベニア、2017年、pp.249~250を参照)。センサーデータは、機械学習ベースの活動プロファイリングによって分析されうる。歩行および可動性は、パーキンソン病の重症度を評価するためにクリニックで使用されるMDS-UPDRSと比較または相関付けられうる。
【0039】
モバイルデバイスベースのモニタリングは、(a)パーキンソン病を有するか、または有する疑いのある対象の動作障害に関連する、デバイスの内部および/または外部のセンサーから取得されたデータを受信および送信するようにプログラムされたモバイルデバイスを患者に提供することを含みうる。対象が一連の動作を経験して、動作障害がある場合にそれを明らかにすると、デバイスの内部または外部のセンサーが動作に関連するデータを取得できる。
【0040】
内部または外部センサーの例は、例えば、ジャイロスコープ、加速度計、重力計、カメラ、受動的赤外線センサー、ならびに/または他のハードウェアおよび付随のソフトウェアを含みうる。いくつかの例では、特定のセンサーについて関連するハードウェアは、付随するソフトウェアと共にモバイルデバイス上またはモバイルデバイス内に配置され得る。他の例では、関連するハードウェアは、モバイルデバイスから遠隔に配置され得るが、モバイルデバイスと有線または無線で通信して、センサーとモバイルデバイスとの間のデータ交換を容易にすることができる。
【0041】
取得されたデータは、モバイルデバイスから収集および送信されてもよく、これは、対象から取得されたデータを対照データと比較して、対象における動作障害の存在または程度を評価することを可能とする。一部のモバイルデバイスベースのモニタリングでは、モバイルデバイスは、対象の上肢および下肢に取り付けられた少なくとも2つの外部センサーからデータを受信および送信するようにプログラムされている。一部のモバイルデバイスベースのモニタリングでは、モバイルデバイスが、対象の上肢および下肢のセンサーからデータを取得する。一部のモバイルデバイスベースのモニタリングでは、モバイルデバイスは対象によって携帯され、内部センサーからデータを取得する。一部のモバイルデバイスベースのモニタリングでは、一連の動作は、デバイスをタッピングすること、座ること、および立つことを含む。
【0042】
モバイルデバイスは、患者からの能動的または受動的な動作を送信しうる。したがって、本開示の様々な態様は、プラシネズマブ療法に応答したパーキンソン病(PD)患者の運動機能をモニタリングするための方法を含む。本方法は、(a)プラシネズマブ療法で患者を治療すること;(b)患者の受動的および/もしくは能動的な動作を測定する、デバイスの内部および/もしくは外部のセンサーから取得されたデータを受信および送信するようにプログラムされたモバイルデバイスを患者に提供すること;(c)モバイルデバイスから送信されたデータを収集すること;ならびに(d)対象における動作障害の存在もしくは程度を評価するために患者から取得されたデータを対照データと比較すること、および/または、患者の能動的もしくは受動的運動機能における変化を同定するのに十分な期間、患者から取得されたデータをモニタリングすることを含む。
【0043】
患者からの受動的または能動的な動作データは、患者の動作の以下の特徴の1つ以上を含んでいてもよく、これは、患者の最も影響を受けていない側と最も影響を受けている側、またはその両方から独立して収集されうる:
(a)受動的にモニタリングされる身振りのジェスチャパワーの中央値:
(b)Uターンテストおよび受動的にモニタリングされた歩行における回転速度の中央値、
(c)バランステストにおけるジャーク、
(d)発話テストにおけるメル周波数ケプストラム2、
(e)持続発声における音声のジッター、
(f)記号数字モダリティテストにおける正解数。
(g)高速タッピング変動性、
(h)ハンドターンの最高速度、
(i)図形描画タスクにおけるスパイラルセレリティ、ならびに
(j)安静時および姿勢振戦タスクにおけるエネルギーの二乗中央値。
【0044】
デバイスから収集された動作データは、患者のMDS-UPDRSスコア、特にMDS-UPDRSパートI、MDS-UPDRSパートII、またはUPDRSパートIIIのうちの1つ以上と比較または相関付けされうる。
【0045】
本デバイスを使用して、患者の運動機能に対するプラシネズマブ療法の影響を決定するために、数日、数週間、数カ月、または数年にわたって、患者の能動的または受動的な動作がモニタリングされうる。例えば、患者の能動的または受動的な運動機能の変化を同定するのに十分な期間は、4週間、8週間、16週間、20週間、24週間、28週間、32週間、36週間、42週間、46週間、または52週間などの4~52週間、またはそれ以上の期間を含みうる。
【0046】
パーキンソン病の診断基準
本方法は、一般に、資格のある医療従事者によってパーキンソン病と診断された対象、または遺伝的または生化学的マーカー、家族歴または疾患の前駆症状によって証明されるような、一般集団と比較してそのリスクが高い対象に対して行われる。そのような個体は、パーキンソン病の治療または予防のために事前に処方箋を受けた者を含む。パーキンソン病シヌクレイノパチーの診断は、DSM-VまたはDSM IV-TR、レビー小体型認知症協会、パーキンソン病学会などのような、パーキンソン病の可能性または蓋然性のための当技術分野で認識されている基準に基づくことができる。しかしながら、診断は、対象者がおそらくパーキンソン病であると担当医師が結論付けることを導く任意のパーキンソン病の徴候または症状の存在に基づくこともあり得る。PDの可能性または蓋然性を診断するための例示的な基準を以下に示す。
グループA:安静時振戦、運動緩慢、硬直、および非対称発症
グループBの特徴:代替診断を示唆
発症後の最初の3年間における顕著な姿勢の不安定性
最初の3年間におけるすくみ現象
最初の3年間における薬とは無関係の幻覚
運動症状に先立つ、または最初の1年以内の認知症
核上性注視麻痺(上方注視の制限以外)または垂直サッケードの遅延
薬とは無関係の重度の症候性自律神経失調症
【0047】
パーキンソニズムを生じることが知られており、対象の症状と妥当に結びつけられる状態の考証(適切な位置にある局所性脳病変または過去6カ月以内の神経遮断薬の使用など)。
パーキンソン病の診断の可能性に関する基準は、以下を含む:グループAの4つの特徴のうち少なくとも2つが存在する;これらのうち少なくとも1つが振戦もしくは運動緩慢であり、グループBの特徴が存在しないか、または症状が出てから3年未満であり、グループBの特徴が現在まで存在しないかのいずれか;ならびにレボドパもしくはドーパミンアゴニストに対する実質的かつ持続的な反応が記録されているか、対象がレボドパもしくはドーパミンアゴニストの適切な治験を受けていないかのいずれか。
【0048】
パーキンソン病の蓋然性の診断の基準は、以下を含む:グループAの少なくとも3つもしくは4つの特徴が存在し、グループBの特徴がいずれも存在せず、レボドパもしくはドーパミンアゴニストに対する実質的かつ持続的な反応が記録されている。
【0049】
治療レジメン
治療的用途では、抗体は、疾患の少なくとも1つの徴候または症状の改善またはさらなる悪化を少なくとも阻害するために効果的であることが知られているか、または疑われるレジメン(投与の用量、頻度および経路)で、PDと診断された対象に投与される。予防的用途では、シヌクレイノパチーのリスクが高いが、疾患と診断されるのに十分な症状をまだ有していない対象に対して、疾患の少なくとも1つの徴候または症状の開始を阻害または遅延させるのに有効であることが知られているか、または疑われるレジメンで抗体が投与される。
【0050】
抗体の例示的な用量範囲は、4週間ごとといった3~5週間の間隔で静脈内投与される3000~5000mgのα-シヌクレインに対する抗体である。一部の対象では、用量は3~5週間ごと、例えば、4週間ごとに3500~4500mgである。対象は互いに同じ用量または(例えば、対象の体重に応じて)異なる用量を投与され得る。いくつかの方法では、対象は2つの固定用量のうちの1つを受ける。例えば、体重が65kg未満の対象は3500mgを投与され、体重が65kg以上の対象は4500mgを投与され得る。いくつかの方法において、少なくとも一部の対象に対する用量範囲は、45~75mg/kgの範囲内、例えば、50~70mg/kg、45mg/kg、60mg/kgまたは65mg/kgである。投与量は通常、28日もしくは4週間ごと、または暦月ごとなど、3~5週間の間隔で複数回投与される。対象は、そのような間隔で少なくとも6、9、12、または18回の投与を受けるか、または状態の症状が持続している間、または対象の残りの人生にわたって投与され得る。いくつかのレジメンでは、2000mgの初回負荷用量が投与され、その後、意図された標的用量に達するまで、2000mg以上であるが、意図された標的用量未満の範囲内で投与される。例えば、対象は、2000mgの初回負荷用量を受け、その後、3500mgの用量または4500mgの用量まで漸増され得る。漸増は、その後の単回の用量で行うことも、標的用量または標的範囲内の用量に到達するまで数回の用量にわたって徐々に増加させることもできる。例えば、対象は2000mgの初回用量を受け、その後、3500mgの後続の用量を投与され得る。あるいは、対象は2000mgの初回用量を受け、その後、2000mg以上であるが3500mg未満の1回以上の後続の用量、およびその後の3500mgの用量を投与され得る。同様に、対象は2000mgの初回用量を受け、その後、4500mgの後続の用量を投与され得る。あるいは、対象は、2000mgの初回用量を受け、その後、2000mg以上であるが4500mg未満の後続の用量および後続の4500mgの用量を投与され得る。いくつかのレジメンでは、対象は少なくとも52週間にわたって4週間ごとに3000~5000mgの抗体を静脈内に投与される。3500~5000mgなどの特定の範囲内の用量での複数回のレジメンを受ける対象では、対象は各投薬において特定の範囲内の同一または異なる用量を投与され得る。いくつかのレジメンでは、対象は各投与時に特定の範囲内の同じ用量を投与される。
【0051】
別の例示的なレジメンでは、1300~1700mgの用量の抗体が、3~5週間の間隔で対象に静脈内投与される。例示的な用量は1500mgである。対象は、例えば、対象の体重に基づいて、この範囲内の単一の固定用量または2つ以上の異なる用量を投与され得る。この範囲内で投与される一部の対象は、18~25mg/kg、例えば20mg/kgの抗体を投与される。他の方法と同様に、間隔は4週間ごとまたは暦月ごとなど、3~5週間であり得る。対象は、少なくとも6回、少なくとも9回、少なくとも12回、または少なくとも18回の投与を受けることができ、あるいは症状が残っている間、または対象の残りの人生にわたって、そのような間隔で投与され得る。
【0052】
いずれの治療レジメンも、治療を受けている対象の動作および/または認知障害の変化をモニタリングすることを伴い得る。好ましくは、そのようなモニタリングは、治療開始の前後に少なくとも1回の評価を含む。好ましくは、モニタリングは、治療に反応した動作および/または認知障害の低減を指し示し、これは、治療開始前との比較であるか、または少なくとも、対象の以前の低下率またはいかなる免疫療法も受けていない対照患者における低下率との比較で低下率の低減を指し示す。対象は、自律神経機能不全、胃腸機能不全、幻覚、または他の徴候もしくは症状のうち1つ以上の精神症状の変化についても、モニタリングされ得る。
【0053】
本レジメンは、治療される疾患の治療または予防に有効な別の薬剤と同時に施され得る。他の薬剤は、本明細書に記載の別の免疫療法剤、またはレボドパ、ベンザセリド、カルビドパ、ドーパミンアゴニスト、非麦角系ドーパミンアゴニスト、例えば、エンタコポンまたはトルコポンなどのカテコール-O-メチル(「COMT」)阻害剤、例えば、ラサガリン、アマンタジンなどのモノアミンオキシダーゼ(「MAO」)阻害剤を含むパーキンソン病を治療するための他の薬剤であり得るが、あるいは抗コリン剤が本レジメンと組み合わせて使用され得る。一部のそのような他の薬剤は、原因因子に影響を与えることなく、疾患の1つ以上の症状を低減させる。
【実施例】
【0054】
実施例1.プラシネズマブの第II相臨床試験
α-シヌクレイン抗体のプラシネズマブについて、パーキンソン病患者を対象とした第II相試験が実施された(PASADENA、NCT03100149)。この試験には2つの治療群と1つの対照群がある。対象は1:1:1で各群にランダムに割り当てられ、N=316である。試験の最初の段階は、52週間の二重盲検治療であった。試験の最初の段階では、対象はパーキンソン病の他の治療(対症療法を含む)を受けていなかった。1つの治療群の対象には、4週間ごとに1500mgの固定用量の抗体(低用量)が静脈内投与された。もう一方の治療群の対象には、体重に応じて4週間ごとに3500mgまたは4500mgの抗体(高用量)が静脈内投与され、65kg未満の対象には低用量、65kg以上の対象には高用量が用いられた。第2の群の対象には、2000mgの負荷用量が投与され、場合により、3500mgまたは4500mgの標的用量に達するまで、2000mg以上の用量での追加漸増投与が行われた。投与は1年間(52週間)続けられた。その後、この試験には延長期間があり、当初プラセボ群に割り当てられた対象は最初の段階の2つの治療レジメンのうちの1つを受け、最初の段階で治療群に割り当てられた対象は以前と同じ治療を継続して受けた。試験の延長段階では、対象は、試験の抗体対象と同様にレボドパによる体系的な治療を受けてもよいとされたが、パーキンソン病の他の治療は受けていない。
【0055】
プラシネズマブは、一般に安全で良好な耐容性を示すことが見出され、報告された有害事象の大部分は軽度または中等度であり、プラセボと両治療群で同様であった。報告された有害事象(AE)の大部分(92%)は軽度(グレード1~2)であった。グレード4のAEが1件報告されたが、試験薬とは無関係であると判断された。グレード5のAEは無かった(表2を参照)。
【0056】
目的:
主要目的は、ベースラインから未治療であるか、またはMAO-B阻害剤による治療を受けている早期PD(H&YステージI、II)の参加者において、MDS UPDRS総スコア(パートI、IIおよびIIIの合計)のベースラインからの変化により測定される、プラセボに対するプラシネズマブの52週目の有効性を評価することであった。
【0057】
二次的な目的は、ベースラインから未治療であるか、またはMAO-B阻害剤による治療を受けている早期PD(H&YステージI、II)の参加者において、以下について、プラセボに対するプラシネズマブの52週目の有効性を評価することである:
・MDS-UPDRS;
・同側(臨床的に支配的な側)の被殻における単一光子放出コンピュータ断層撮影法(DaT-SPECT)によるドーパミントランスポーターのイメージング;
・モントリオール認知評価(MoCA)の総スコア;
・改善の臨床的全般印象(CGI-I);
・変化の患者全般の印象(PGI-C);
・シュワブとイングランドの日常生活活動(SE-ADL)スコア;
・運動症状または非運動症状が悪化するまでの時間;および/または
・ドーパミン作動性PD治療(レボドパまたはドーパミンアゴニスト)の開始までの時間。
【0058】
実施例2 プラシネズマブで治療されたパーキンソン病患者は運動機能の改善を示す
実施例1の試験は、MDS-UPDRS総スコアにおける変化の主要評価項目を満たさなかった(
図1;-21.5%低用量:-2.02 80%CI-4.21、-0.18;-6.6%高用量:-0.62 80%CI-2.82、-1.58)。しかしながら、52週目のプラセボに対するプラシネズマブ治療患者におけるMDS-UPDRSパートIIIのベースラインからの変化において、驚くべき有効性のシグナルが観察された。プラシネズマブ治療を受けた患者では、1年後にプラセボと比較して運動機能の低下が減少しており、早期のパーキンソン病の患者において臨床的に意味のある運動進行の悪化までの時間を遅らせることが実証された。
【0059】
MDS-UPDRSパートIII施設評価を使用して、患者は運動機能の低下の低減を実証した(
図2A;プール用量レベル:-25.0%、-1.44、80%CI=(-2.83、-0.06);低用量レベル:-33.8%、-1.88、80%CI=(-3.49、-0.27);および高用量レベル:-18.2%、-1.02、80%CI=(-2.64、0.61))。
【0060】
プラシネズマブはまた、運動機能の臨床的検査であるMDS-UPDRSパートIIIの中央評価アセスメントにおいて、1年間の治療後にプラセボと比較して運動機能の低下を35%低減させた(
図2B;プール用量レベル:-35.0%、-1.88、80%CI=(-3.31、-0.45)、低用量レベル:-45.4%、-2.44、80%CI=(-4.09、-0.78);および高用量レベル:-24.7%、-1.33、80%CI=(-2.99、0.34))。
【0061】
さらに、プラシネズマブ治療は、1年間にMDS-UPDRSパートIIIで少なくとも5段階進行するまでの時間の施設評価アセスメントにおいて、臨床的に意味のある運動進行の悪化までの時間のプラセボに対する遅延によって実証されたように、プラシネズマブ治療患者の疾患進行の低減をもたらし、ハザード比は0.82であった(
図3)。
【0062】
有効性のシグナルは、施設評価によって、52週目におけるプラシネズマブ治療を受けた患者とプラセボの運動緩慢のベースラインからの変化について観察された(プール用量レベル:-27.0%、-0.75、80%CI=(-1.62、0.11);低用量レベル:-38.3%、-1.07、80%CI=(-2.07、-0.07);および高用量レベル:-15.7%、-0.44、80%CI=(-1.45、0.56))(
図4)。運動緩慢は、パーキンソン病の主症状の1つであり、MDS-UPDRSパートIII臨床運動検査の成分として評価される。
【0063】
実施例3.スマートフォンのセンサーを使用した第I相α-シヌクレイン抗体臨床試験における早期パーキンソン病患者の可動性の受動的モニタリング
早期のパーキンソン病(PD)患者の歩行と可動性が、スマートフォンベースの受動的モニタリングを使用して測定された。配列番号10で指定される重鎖可変領域と配列番号9で指定される軽鎖可変領域を有するα-シヌクレイン抗体の複数漸増用量臨床試験では、44人のPD患者と35人の年齢と性別をマッチさせた健常者が、それぞれ最長24週間および最長6週間、スマートフォンベースの評価を行った。(Lipsmeier,F.ら、Mov Disord.2017年;32(suppl 2);W.Y.Chengら、2017年IEEE/ACM International Conference on Connected Health:Applications,Systems and Engineering Technologies(CHASE)、フィラデルフィア、ペンシルベニア、2017年、pp.249~250)。
【0064】
「受動的モニタリング」では、対象は日常生活の一部としてスマートフォンを携帯し、スマートフォン内のセンサーが継続的に動作データを記録した。合計で30,000時間以上の受動的モニタリングデータが収集された。センサーシグナルを活動プロファイルに分類するために、以前に公開されたデータに基づいてトレーニングされたディープニューラルネットワーク(DNN)を使用して、人間活動認識(HAR)モデルが構築された。HARモデルによって決定された参加者の活動プロファイルは、PD患者と健常対照者との間で、歩行時間の割合と対象が姿勢(座位と立位)を変える頻度において有意差を示した。
【0065】
この分析は、HCコホートとPDコホート間の差異を調査することのみに焦点を当てており、抗体関連の影響には注目していない。合計で、PDコホートでは24,104時間、HCコホートでは8,614時間の受動的モニタリングデータが記録された。Rai,A.ら(MobiCom’12、August 22~26、2012年)のアプローチに従い、30分以上ユークリッドノルムの標準偏差が0.03m/s2未満である場合は、その期間は対象がスマートフォンを携帯していない可能性が高いため、加速度センサーのデータがフィルタリングで除外された。この工程は、受動的モニタリングデータの14%を取り除いた。
【0066】
9層のニューラルネットワークモデル構造が使用された。同様の構造が以前にHARに使用されており、従来的な機械学習方法よりも優れた性能を発揮することが示されている(F.J.OrdonezとD.Roggen、Sensors 2016年、16、115)。HARモデルは、2つの公開データセット(G.M.WeissとJ.W.Lockhart、Proceedings of AAAI-12 Workshop on Activity Context Representation:Techniques and Languages、トロント、カナダ、2012年;A.Stisenら、13th ACM Conference on Embedded Networked Sensor Systems、ソウル、韓国、2015年)を用いて、歩行、階段、ジョギング、座位、立位、および横臥の6つの活動を分類するように訓練された。連続的な加速度計データは、20Hzにダウンサンプリングされ、隣接する時間枠と75%が重複する4秒の時間枠へと分割された。
【0067】
A.人間活動認識性能の検証:
HARモデルがセンサーデータを活動プロファイルに正確に変換できることを確認するために、まず、ホールドアウト法の検証セットにおいて、モデルの性能が分析された。HARモデルは、98%以上の精度で歩行活動(歩行、階段、ジョギング)と静止活動(座位、立位、横臥)を正確に区別することができた。試験データからのラベル付き歩行およびバランスデータに対する追加の検証でも、HARモデルが歩行セグメントを96.9%の精度で、バランスセグメントを99.5%の精度でプロファイリングできることが示された。
【0068】
B.活動プロファイルの比較
各対象の可動性が、対象が歩行活動(歩行、階段、ジョギング)に従事した時間の割合を、患者の総受動的モニタリングカバー時間に対して計算することによって定量化された。PDコホートおよびHCコホートの総カバー範囲に対する異なる歩行活動の全体的な割合が計算された。PDコホートでは、全カバー範囲にわたって9.7%の歩行幅の中央値が検出されたのに対し、HCコホートでは15.1%であった。HCコホートはPDコホートよりも対象ごとの歩行活動レベルが有意に高く、マン・ホイットニー検定のP値は2.43E-8であった。
【0069】
座位から立位、立位から座位の回数の比較
PDの機能的影響の1つの現れは、座位から立位および立位から座位(STS)のイベントにあることが観察されている(A.Zijlstraら、J.NeuroEngineering and Rehabilitation 2012年、9:75)。活動プロファイルから、各対象のカバー範囲で正規化されたSTSイベントが計算された。PD患者の1時間当たりのSTS数の中央値は1.44であり、HC対象の1.74よりも有意に低かった。2群間のマン・ホイットニー検定のP値は1.60E-8であった。
【0070】
この試験の結果は、スマートフォンベースの受動的モニタリングを使用して、早期のPD患者の歩行および可動性を測定することが実現可能であることを反映している。受動的モニタリング中に収集されたセンサーデータは、これまでアクセスできなかった、患者の日常の行動および機能に関する生態学的に有効な洞察を提供する。PD患者と健康な対照(HC)との間に有意な差が観察された。
【0071】
実施例4:PD患者における運動徴候進行の勾配の出現をモニタリングする52週間の試験
実施例1の試験は、PD患者における受動的および能動的な運動徴候進行勾配の出現のモニタリングを含んでいた。
【0072】
表1に同定されている患者集団において、スマートフォンを使用して、事前に特定された計17個のセンサー機能が52週間にわたって隔週ベースで測定された。52週間の試験全体にわたり、各2週間の時間枠内の全てのデータポイントにわたってセンサーの特徴が集計された(中央値)。2週間の期間に収集された特徴のデータが3未満の場合、患者データは欠損として同定された。
【0073】
特徴は、能動的および受動的なモニタリングから、タスク/側面ごとに1つずつモニタリングされた。センサーの特徴は以下を含む:(a)受動的にモニタリングされる身振りのジェスチャパワーの中央値:(b)Uターンテストおよび受動的にモニタリングされた歩行における回転速度の中央値、(c)バランステストにおけるジャーク、(d)発話テストにおけるメル周波数ケプストラム2、(e)持続発声における音声のジッター、(f)記号数字モダリティテストにおける正解数。最も影響を受けていない側と最も影響を受けている側について、以下の特徴が個別にモニタリングされた:(g)高速タッピング変動性、(h)ハンドターンの最高速度、(i)図形描画タスクにおけるスパイラルセレリティ、および(j)安静時および姿勢振戦タスクにおけるエネルギーの二乗中央値。
【0074】
データは、症候性PD治療の開始時に検閲され、プラシネズマブ治療群が組み合わせられた(「プール」)。ベースラインからの変化のランダムな勾配(2週間ごと)により、線形混合効果(LME)モデルが決定された。共変量は、ベースラインのMAO-Bi療法の有無;年齢;性別;同側被殻におけるベースラインDaT-SPECT特異的結合比を含む。α=0.2、β=0.8;多重比較正解率=15%偽発見率(FDR)。正規分布しない残差は、反復測定による混合モデル(MMRM)を通知する。
【0075】
表3は、プラシネズマブ治療が上肢運動緩慢の進行の減少と関連していることを反映している。
【0076】
これらの結果は、早期のPDにおけるモバイルアプリケーションを介した毎日の定量化が、運動緩慢の進行における勾配の相違を実証できることを示している。
図5および6は、プラシネズマブで治療された患者が、プラセボで治療された患者よりも運動緩慢の進行が少なかったことを示している。
図5は、影響が最も少ない側でのタッピング速度の変動性に関するモニタリング結果を示している(2以下のFDR)。
図6は、ハンドジェスチャパワーを受動的にモニタリングした結果を示している(2以下のFDR)。これらの結果は、プラシネズマブ治療を受けた患者ではPDの進行が緩徐であった(例えば、運動機能が維持されたか、または低下が緩徐であった)ことを示した、運動機能を評価する他の測定値(例えば、MDS-UPDRSパートIII)とも一致している。結果として、運動機能をモニタリングするこれらの方法は、プラシネズマブで治療されている患者をモニタリングするために使用され得る。
【0077】
これらの結果は、PDの中核的徴候のDHTT測定を遠隔的、継続的かつ客観的に行うことで、運動徴候進行の勾配のモデル化が可能になることを示している。
【0078】
実施例5:PASADENAデジタル運動スコアの生成および分析
実施例1の試験から、運動緩慢の測定値(振戦/運動緩慢、振戦のみ、硬直および姿勢の不安定性、ならびに認知)を評価するために、入力面(例えば、画面)と内部センサーを利用して、スマートフォン上で毎日の運動テストを完了した患者の結果を組み合わせて、「デジタルPASADENA運動スコア」が生成された。頻繁なテストは、主に運動緩慢の測定値を反映した運動進行の勾配のモデル化を可能にした。この混合モデルは、低用量群と高用量群の両方で、デジタルPASADENA運動スコアによって測定される運動進行の低減を示した(プラセボと比較)。
【0079】
プールされた総集団において、1年間の治療期間の間に、プラセボと比較して、パサデナPASADENA運動スコアの低下における25.0%の低減が観察された。低用量の影響は、低下が30.3%低減し、より強固であるように見えた;一方、より高用量では、1年後における低下が21.5%低減したことが実証された(
図8Aを参照;プール用量レベル:-25.0%、-0.030、80%CI=(-0.050、-0.010);低用量レベル:-30.3%、-0.040、80%CI=(-0.063、-0.017);高用量レベル:-21.5%、-0.029、80%CI=(-0.052、-0.006))。
【0080】
MAO-B阻害剤で治療されたサブグループでは、1年間の治療期間の間に、プラセボと比較してPASADENAデジタル運動スコアの低下が26.0%低減したことが観察された。低用量の影響は、低下が31.0%低減し、より強固であるように見えた;一方、より高用量では1年後における低下が20.9%低減したことが実証された(
図8Bを参照、プール用量レベル:-26.0%、-0.032、80%CI=(-0.062、-0.003);低用量レベル:-31.0%、-0.039、80%CI=(-0.072、-0.049);高用量レベル:-20.9%、-0.026、80%CI=(-.0.060、0.008))。
【0081】
びまん性悪性サブグループでは、1年間の治療期間の間に、プラセボと比較してPASADENA運動スコアの低下が35.7%低減したことが観察された。低用量の影響は、低下が25.2%低減し、強固でないように見えた;一方、高用量では1年後における低下が46.2%低減したことが実証された(
図8Cを参照、プール用量レベル:-35.7%、-0.055、80%CI=(-0.105、-0.005);低用量レベル:-25.2%、-0.039、80%CI=(-0.094、0.017);高用量レベル:-46.2%、-0.071、80%CI=(-0.126、-0.017))。
【0082】
図7A~7Cに示されているように、症候性PDの治療を開始した患者の貢献は、症候性PDの治療が開始される前の最後の来院までである。バーは80%CIを表している。推定値は、以下の共変量を含むMMRMに基づいている:ベースライン時のMAO-B阻害剤(有り/無し)、治療、週、年齢60歳未満対60歳以上、性別、DaT-SPECT被殻結合比(最も臨床的に影響を受けている側の対側)、ベースラインMDS-UPDRS対応エンドポイント。プール用量分析は、事前に特定された探索的分析である。65kg以上は4500mg;65kg未満は3500mg。
【0083】
配列
配列番号1は、Hu9E4VLv3可変領域である。
【0084】
【0085】
配列番号3は、Hu9E4VLv2(復帰変異無し)可変領域である。
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
配列番号7は、Hu9E4VHv4(復帰変異無し)可変領域である。
【0090】
配列番号8は、天然ヒト野生型α-シヌクレインのアミノ酸配列である。
【0091】
配列番号9は、プラシネズマブの軽鎖のアミノ酸配列である。
【0092】
配列番号10は、プラシネズマブの重鎖のアミノ酸配列である。
【配列表】
【国際調査報告】