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2024-510059非晶性ポリマー(P)を含む、耐薬品性を向上させた新規の膜(M)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】非晶性ポリマー(P)を含む、耐薬品性を向上させた新規の膜(M)
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/70 20060101AFI20240228BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20240228BHJP
   B01D 71/80 20060101ALI20240228BHJP
   B01D 39/16 20060101ALI20240228BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20240228BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
B01D71/70
B01D69/00
B01D71/80
B01D39/16 C
C08J9/28 101
C08J9/28 CEZ
C08G65/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023513259
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2020073600
(87)【国際公開番号】W WO2022042816
(87)【国際公開日】2022-03-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】マレッツコ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンネンベルガー,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルムス,アクセル
【テーマコード(参考)】
4D006
4D019
4F074
4J005
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006MA01
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA21
4D006MA25
4D006MA31
4D006MA33
4D006MB02
4D006MB11
4D006MC22
4D006MC24
4D006MC27
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC35
4D006MC39
4D006MC44X
4D006MC46X
4D006MC48
4D006MC54
4D006MC62
4D006MC63X
4D006NA46
4D006PA01
4D006PB02
4D019AA03
4D019BA13
4D019BB08
4D019BC12
4F074AA87
4F074CB34
4F074CB45
4F074DA14
4F074DA19
4F074DA43
4J005AA24
(57)【要約】
本発明は、式(RU1)、(RU2)及び(RU3)の繰り返し単位を含む非晶質ポリマー(P)を含む膜(M)に関する。更に、本発明は、その膜(M)の製造方法、及び、その膜(M)を液体が透過する濾過工程に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(RU1)、(RU2)及び(RU3)
【化1】
の繰り返し単位を含む非晶性ポリマー(P)を含む、膜(M)。
【請求項2】
前記非晶性ポリマー(P)が、その非晶性ポリマーに含まれる繰り返し単位(RU1)及び繰り返し単位(RU2)の合計モル数を基準にして、
80~90モル%の繰り返し単位(RU1)、及び
10~20モル%の繰り返し単位(RU2)
を含む、請求項1に記載の膜(M)。
【請求項3】
前記膜(M)が、膜の総質量を基準にして、少なくとも70質量%の非晶性ポリマー(P)、好ましくは少なくとも80%の非晶性ポリマー(P)、より好ましくは少なくとも90%の非晶性ポリマー(P)、最も好ましくは少なくとも95%の非晶性ポリマー(P)を含む、請求項1又は2に記載の膜(M)。
【請求項4】
前記非晶性ポリマー(P)の総質量に対する、前記非晶性ポリマー(P)に含まれる繰り返し単位(RU1)、(RU2)及び(RU3)の総質量比が0.7越えである、請求項1~3のいずれか一項に記載の膜(M)。
【請求項5】
前記膜(M)が、細孔を含む上面と細孔を含む下面とを含み、上面から下面に向かって細孔径が大きくなっている、請求項1~4のいずれか一項に記載の膜(M)。
【請求項6】
前記非晶性ポリマー(P)の多分散性(Q)が2.0~≦5.0の範囲である、請求項1~5のいずれか一項に記載の膜(M)。
【請求項7】
前記非晶性ポリマー(P)の平均分子量(M)が14000~120000g/molの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の膜(M)。
【請求項8】
前記非晶性ポリマー(P)が、4,4’-ジハロゲンジフェニルスルホン、4,4’-ジハロベンゾフェノン、及び4,4’-ジヒドロキシビフェノールの反応により得られる、請求項1~7のいずれか一項に記載の膜(M)。
【請求項9】
前記非晶性ポリマー(P)が、下記の構造(S1)及び(S2)
【化2】
(式中、構造(S1)及び(S2)は、統計法則に従う。)
を有する統計コポリマーである、請求項1~8のいずれか一項に記載の膜(M)。
【請求項10】
前記非晶性ポリマー(P)が、下記構造(S3)
【化3】
を有するブロックコポリマーである、請求項1~8のいずれか一項に記載の膜(M)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の膜(M)を製造する方法であって、
i)前記非晶性ポリマー(P)と少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒とを含む溶液(S)を提供する工程、及び
ii)前記溶液(S)から少なくとも1種の溶媒を分離し、膜(M)を得る工程
を含む、製造方法。
【請求項12】
少なくとも1種の溶媒が、N-メチルピロリドン、ジメチルラクタミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド及びスルホランからなる群から選択される、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
工程i)における溶液(S)が、溶液(S)の合計を基準にして、0.1~30質量%の非晶性ポリマー(P)を含む、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
工程ii)における少なくとも1種の溶媒(S)の分離が、相転換方法を介して行われる、請求項11~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の膜(M)、又は請求項11~14のいずれか一項に記載の方法により得られた膜(M)を液体が透過する濾過方法、特に水を濾過するための濾過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(RU1)、(RU2)及び(RU3)の繰り返し単位を含む非晶性ポリマー(P)を含む膜(M)に関する。更に、本発明は、前記膜(M)の製造方法、及び、前記膜(M)を液体が透過する濾過工程に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水濾過用の最も一般的な高分子膜は、酢酸セルロース、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリフェニルスルホン(PPSU)をベースにしている。ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)及びポリフェニルスルホン(PPSU)は、ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーである。
【0003】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、高い耐熱性、良好な機械的特性、固有の難燃性を特徴とする高性能熱可塑性プラスチックである(E.M.Koch, H.-M. Walter.Walter,Kunststoffe 80(1990)1146; E.Doering,Kunststoffe 80,(1990)1149,N.Inchaurondo-Nehm,Kunststoffe 98,(2008)190)。ポリアリーレンエーテルは生体適合性が高いため、透析膜の形成材料としても使用されている(N.A.Hoenich,K.P.Katapodis,Biomaterials 23(2002)3853)。
【0004】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、特に、ジヒドロキシ成分及び水酸化物から塩を最初に形成する水酸化物法、又は炭酸塩法を経由して形成することができる。
【0005】
水酸化物法によるポリアリーレンエーテルスルホンポリマーの形成に関する一般的な情報は、特に、R.N.Johnsonら、J.Polym.Sci.A1-5(1967)2375に記載されており、一方、炭酸塩法は、J.E.McGrathら、Polymer 25(1984)1827に記載されている。
【0006】
芳香族ビスハロゲン化合物及び芳香族ビスフェノール類又はその塩から、1種以上のアルカリ金属又はアンモニウム炭酸塩又は重炭酸塩の存在下、非プロトン溶媒中でポリアリーレンエーテルスルホンポリマーを形成する方法は当業者に知られており、例えばEP-A297363に記載されている。
【0007】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーのような高性能熱可塑性樹脂は、重縮合反応によって形成され、その重縮合反応は、通常、双極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、スルホラン、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP))の中で高い反応温度で実行される。
【0008】
ポリアリーレンエーテルスルホン系ポリマーの高分子膜への応用は、ますます重要性を増している。
【0009】
WO2015/056145は、式(3):
【化1】
のPPSU繰り返し単位を含むポリエーテル(A)を含む膜を開示している。
【0010】
WO2015/056145によるポリマー膜は、濾過方法、特に水の濾過に使用される。更に、WO2015/056145は、膜、好ましくは緻密層と支持層とを含む非対称ポリマー膜の製造方法を開示している。
【0011】
ポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは非晶質である。非晶質のポリアリーレンエーテルスルホンポリマーは、ポリフェニレンスルフィドのような半結晶性ポリマーと比較して、FAM B(トルエン含有試験液)又はSkydrol(リン酸塩混合液)のような有機流体に対する耐性が劣る。
【0012】
有機溶媒に対する耐性を改善するために、EP2225328には、スルホニル基、ケトン基及びポリアリーレン基を含む半結晶性ポリマーが記載されている。EP2225328によれば、好ましくは、半結晶性ポリマーを得るために、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン及び4,4’-ジヒドロキシビフェニルがジフェニルサルホン中で反応させられる。EP2225328による半結晶性ポリマーの融解温度は、300℃以上である。しかしながら、EP2225328に記載のポリマーは、N-メチルピロリドン(NMP)又はジメチルアセトアミド(DMAc)のような一般的な溶媒への溶解性が悪く、従って、これらのポリマーを使用して相転換を介して膜を製造する場合に問題が生じる。
【0013】
更に、EP2225328に記載されたポリマーは、透明ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP-A297363
【特許文献2】WO2015/056145
【特許文献3】EP2225328
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明は、先行技術の欠点を保持しないか、又は減少した形でのみ保持する膜(M)を提供することをその目的とする。膜(M)は、アルコール又はケトンのような有機溶媒に対して良好な耐薬品性を示すべきである。更に、水性NaOCl-溶液のような洗浄化学物質に対する改善された安定性が達成されるべきである。更に、膜(M)は、水に対して良好な透過性を示すことが好ましい。本発明の別の目的は、前記膜(M)の製造方法を提供することである。この方法は、短い準備時間で容易に行えることが好ましい。更に、この方法は、膜(M)の細孔径を良好に制御できることが好ましい。本発明の他の目的は、膜(M)が使用される、濾過方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的は、式(RU1)、(RU2)及び(RU3)の繰り返し単位を含む非晶性ポリマー(P)を含む膜(M)により達成される:
【化2】
【発明の効果】
【0017】
驚くべきことに、非晶性ポリマー(P)を含む膜(M)は、有機溶剤(エタノール又はアセトン)に対して良好な耐薬品性を示し、更に、膜(M)は、特に水に対して良好な透過性を示すことが見出された。また、NaOCl溶液に対しても改善された耐性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をより詳細に説明する。
膜(M)
膜(M)は、非晶性ポリマー(P)を含んでいる。非晶性ポリマー(P)は、上記で定義された式(RU1)、(RU2)及び(RU3)の繰り返し単位を含んでいる。
【0019】
本発明による膜(M)は、対称的であっても非対称的であってもよい。好ましい実施形態では、膜(M)は非対称性であり、好ましくは、非晶性ポリマー(P)を含む溶液(S)から相転換方法で得られる。
【0020】
本発明による膜(M)の透水係数は、好ましくは少なくとも100kg/m×h×barである。より好ましくは、透水係数は、少なくとも150kg/m×h×barである。好ましくは、透水係数は、多くても1500kg/m×h×barである。
【0021】
本発明による膜(M)が非対称である場合、膜(M)は、典型的には、濾過層と、濾過層と接する支持層とを含む。
【0022】
濾過層は、膜(M)の上面に位置する。膜(M)の上面は、一般に、0.001~1.0μm、好ましくは0.005~0.5μm、より好ましくは0.01~0.3μm、最も好ましくは0.01~0.1μmの孔径の細孔を含む。濾過層は、上記の細孔をメッシュ状のポリマーネットワーク構造の形態を含む。
【0023】
濾過層が薄すぎると、ピンホールが発生する原因となるため好ましくない。また、厚すぎる濾過層は、水の透過が制限されるため、良好な透水性が得られない。
【0024】
支持層は、膜(M)の下面に配置される。膜(M)の下面は、一般に、好ましくは>1~100μmの細孔径を有する細孔を含む。支持層はまた、細孔を含むメッシュ状のポリマーネットワーク構造を示す。支持層は、濾過層と接している。好ましくは、孔径は、膜(M)の上面から膜(M)の下面に向かって増加する。
【0025】
従って、本発明の他の目的は、細孔を含む上面と、細孔を含む下面とを備え、細孔径が上面から下面に向かって大きくなっている膜(M)である。
【0026】
膜の上側(M)の孔径及び下側の孔径は、原子間力顕微鏡(AFM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)で測定することができる。
【0027】
膜(M)の細孔は、通常1nm~10000nmの範囲、好ましくは2~500nmの範囲、特に好ましくは5~250nmの範囲の直径を有し、分子量300~1000000g/molの異なるPEGを含む溶液を用いて濾過実験により決定されたものである。フィード及び濾液のGPCトレースを比較することにより、各分子量に対する膜の保持力を決定することができる。膜の保持率が90%になる分子量を、この条件下での膜の分子量カットオフ(MWCO:Molecular weight cut-off)とする。PEGのストーク径と分子量との相関を利用し、膜の平均孔径を求めることができる。この方法の詳細は、文献Chung,J.Membr.Sci.531(2017)27-37に記載されている。
【0028】
濾過層と支持層とを含む膜(M)は、十分に高い機械的強度を発揮する。膜(M)の厚さは、好ましくは30~2000μmであり、より好ましくは30~1000μmである。
【0029】
本発明による膜(M)は、フィルム(平板状膜)であっても、円筒状チャネル(中空繊維膜)であってもよい。好ましくは、膜(M)は、円筒状チャネルである。より好ましい実施形態では、膜(M)は、円筒状マルチチャネル膜である。チャネルの直径、好ましくは本発明によるマルチチャネル膜の直径は、一般に0.1~8mm、好ましくは0.1~6mmの間である。マルチチャネル膜に含まれるチャネル膜の壁の厚さは、一般に0.05~1.5mmの間、好ましくは0.1~0.5mmの間である。円筒状マルチチャネル膜は、一般に少なくとも3つのチャネル、好ましくは7~19のチャネルを含む。円筒状マルチチャネル膜の全体の直径は、一般に4~10mmである。
【0030】
膜(M)には、非晶質ポリマー(P)とは異なる、更なる構成要素を含むことができる。任意の更なる構成要素は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセテート、セルロースアセテート、セルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリ炭酸塩、ポリエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリアリルエーテル、ポリアミドスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、これらのコポリマー、及びこれらの混合物;好ましくは、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、セルロースアセテート、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0031】
好ましい実施形態において、膜(M)は、更なる構成要素を含まない。
【0032】
膜(M)は、膜(M)の総質量に基づいて、好ましくは少なくとも70質量%の非晶性ポリマー(P)、より好ましくは少なくとも80質量%、最も好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも95質量%の非晶性ポリマー(P)を含む。
【0033】
更なる好ましい実施形態において、膜(M)は、非晶性ポリマー(P)を実質的に含む。
【0034】
「実質的に含む」とは、膜(M)が膜(M)の総質量に基づいて非晶性ポリマー(P)の99質量%以上、好ましくは99.5質量%以上、最も好ましくは99.9質量%以上を含むことである。
【0035】
膜(M)の形成中、非晶性ポリマー(P)は、少なくとも1種の溶媒から分離される。好ましい実施形態では、得られた膜(M)は、少なくとも1種の溶媒を実質的に含まない。
【0036】
本発明の文脈における「実質的に含まない」とは、膜(M)が、膜(M)の総質量に基づいて、少なくとも1質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%、特に好ましくは少なくとも0.1質量%の少なくとも1種の溶媒を含んでなることを意味する。膜(M)は、膜(M)の総質量に基づいて、少なくとも0.0001質量%、好ましくは少なくとも0.001質量%、特に好ましくは少なくとも0.01質量%の少なくとも1種の溶媒を含む。
【0037】
膜(M)の製造中、溶媒交換は、通常、非対称膜構造をもたらす。このことは、当業者に知られている。従って、膜(M)は、好ましくは非対称である。非対称膜では、分離に用いられる膜(M)の上面から、膜(M)を支持するために用いられる膜の下面に向かって、孔径が大きくなる。
【0038】
従って、本発明の別の目的は、膜(M)が非対称である膜(M)である。
【0039】
膜(M)の製造
膜(M)は、本発明による非晶性ポリマー(P)から、当業者に公知の任意の方法で製造することができる。
【0040】
好ましくは、非晶性ポリマー(P)を含む膜(M)は、以下の工程を含む方法によって製造される:
i) 非晶性ポリマー(P)及び少なくとも1種の溶媒を含む溶液(S)を提供する工程、
ii) 溶液(S)から少なくとも1種の溶媒を分離し、膜(M)を得る工程。
【0041】
従って、本発明の別の目的は、本発明の膜(M)の製造方法であって、この方法は、以下の工程を含む:
i) 非晶性ポリマー(P)及び少なくとも1種の溶媒を含む溶液(S)を提供する工程、
ii) 溶液(S)から少なくとも1種の溶媒を分離し、膜(M)を得る工程。
【0042】
工程i)
工程i)では、非晶性ポリマー(P)及び少なくとも1種の溶媒を含む溶液(S)が提供される。
【0043】
本発明の文脈における「少なくとも1種の溶媒」は、正確には1種の溶媒、又は2種以上の溶媒の混合物も意味する。
【0044】
溶液(S)は、当業者に公知の任意の方法によって工程i)において提供することができる。例えば、溶液(S)は、攪拌装置及び好ましくは温度制御装置を含んでいてもよい慣用的な容器(vessel)中で工程i)において提供することができる。好ましくは、溶液(S)は、非晶性ポリマー(P)を少なくとも1種の溶媒に溶解させることによって提供される。
【0045】
溶液(S)を提供するための少なくとも1種の溶媒への非晶性ポリマー(P)の溶解は、好ましくは、攪拌下で影響を受ける。
【0046】
工程i)は、好ましくは、高温で、特に20~120℃の範囲で、より好ましくは40~100℃の範囲で実施される。当業者であれば、少なくとも1種の溶媒に応じた温度を選択する。
【0047】
溶液(S)は、好ましくは、少なくとも1種の溶媒に完全に溶解した非晶性ポリマー(P)を含む。これは、溶液(S)が、好ましくは、非晶性ポリマー(P)の固体粒子を含まないことを意味する。従って、非晶性ポリマー(P)は、好ましくは、濾過によって少なくとも1種の溶媒から分離することができない。
【0048】
好ましくは、溶液(S)は、溶液(S)の総質量に基づいて、0.001~50質量%の非晶性ポリマー(P)を含む。より好ましくは、工程i)の溶液(S)は、溶液(S)の総質量を基準にして0.1~30質量%の非晶性ポリマー(P)を含み、最も好ましくは溶液(S)は0.5~25質量%の非晶性ポリマー(P)を含む。
【0049】
従って、本発明の別の目的はまた、工程i)における溶液(S)が、溶液(S)の総質量を基準にして、0.1~30質量%の非晶性ポリマー(P)を含む、膜(M)の製造方法である。
【0050】
少なくとも1種の溶媒として、非晶性ポリマー(P)に対して当業者に知られている任意の溶媒が適している。好ましくは、少なくとも1種の溶媒は、水に可溶である。従って、少なくとも1種の溶媒は、好ましくは、N-メチルピロリドン、ジメチルラクタミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド及びスルホランからなる群から選択される。特に、N-メチルピロリドン及びN,N’-ジメチルラクタミドが好ましい。少なくとも1種の溶媒としては、N-メチルピロリドンが最も好ましい。
【0051】
従って、本発明の別の目的はまた、少なくとも1種の溶媒が、N-メチルピロリドン、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド及びスルホランからなる群から選択される、膜(M)の製造方法である。
【0052】
溶液(S)は、好ましくは、溶液(S)の総質量に基づいて、50~99.999質量%の範囲で、より好ましくは70~99.9質量%の範囲で、最も好ましくは75~99.5質量%の範囲の少なくとも1種の溶媒を含む。
【0053】
工程i)で提供される溶液(S)は、更に、膜製造用の添加剤を含むことができる。
【0054】
膜製造に適した添加剤は当業者に知られており、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマー(PEO-PPO)及びポリ(テトラヒドロフラン)(poly-THF)である。膜製造用の添加剤としては、ポリビニルピロリドン(PVP)及びポリエチレンオキシド(PEO)が特に好ましい。
【0055】
膜製造用の添加剤は、例えば、溶液(S)中に、溶液(S)の全質量を基準として、0.01~20質量%、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは1~10質量%の範囲の量で含有させることができる。
【0056】
当業者にとって、溶液(S)中に含まれる非晶性ポリマー(P)、少なくとも1種の溶媒、及び任意に含まれる膜製造用の添加剤の質量%は、通常、合計100質量%であることは明らかである。
【0057】
工程i)の継続時間は、広い限界の間で変動してもよい。工程i)の継続時間は、好ましくは10分~48時間(時間)の範囲、特に10分~24時間の範囲、より好ましくは15分~12時間の範囲であり、当業者は、少なくとも1種の溶媒中の非晶性ポリマー(P)の均質な溶液を得るように工程i)の継続時間を選択することになるであろう。
【0058】
溶液(S)に含まれる非晶性ポリマー(P)については、本発明方法で得られる非晶性ポリマー(P)について示した実施形態及び好適例がそれぞれ当てはまる。
【0059】
工程ii)を実施する前に、好ましい実施形態では、溶液(S)は、膜(M)の品質を向上させるために脱気される。脱気は、真空脱気、超音波脱気、又は低速攪拌による脱気によって行うことができる。
【0060】
工程ii)において、少なくとも1種の溶媒が溶液(S)から分離され、膜(M)が得られる。工程ii)において溶液(S)から少なくとも1種の溶媒を分離する前に、工程i)において提供された溶液(S)を濾過して、濾過溶液(fS:filtered solution)を得ることができる。溶液(S)から少なくとも1種の溶媒を分離するための以下の実施形態及び好適例は、本発明のこの実施形態で使用される濾過溶液(fS)から少なくとも1種の溶媒を分離する場合にも同様に適用される。
【0061】
溶液(S)からの少なくとも1種の溶媒の分離は、ポリマーから溶媒を分離するのに適した、当業者に知られている任意の方法によって行うことができる。
【0062】
好ましくは、溶液(S)からの少なくとも1種の溶媒の分離は、相転換の方法を介して実施される。この方法は、当業者には既知である。好ましくは、相転換は、非溶媒誘導型相転換方法(NIPS法)として実施される。
【0063】
従って、本発明の別の目的はまた、工程ii)における少なくとも1種の溶媒の分離が相転換方法を介して実施される、膜(M)の製造方法である。
【0064】
少なくとも1種の溶媒の分離が相転換方法を介して行われる場合、得られる膜(M)は、典型的には、多孔質膜である。
【0065】
本発明の文脈での相転換工程とは、溶解した非晶性ポリマー(P)を固相に変化させる工程を意味する。従って、相転換工程は、沈殿工程と表記することもできる。工程ii)によれば、非晶性ポリマー(P)から少なくとも1種の溶媒を分離することにより、相転換が行われる。当業者は、適切な相転換方法を知っている。
【0066】
相転換処理は、例えば、溶液(S)を冷却することにより行うことができる。この冷却の際に、この溶液(S)中に含まれる非晶性ポリマー(P)が析出する。相転換工程を行う別の可能性としては、溶液(S)と非晶性ポリマー(P)の非溶媒である気体状の液体とを接触させることが挙げられる。これによって、非晶性ポリマー(P)は、同様に析出する。非晶性ポリマー(P)の非溶媒である好適なガス状流体は、例えば、後述する気体状態でのプロトン性極性溶媒である。
【0067】
本発明の文脈内での好ましい別の相転換工程は、溶液(S)を少なくとも1種のプロトン性極性溶媒に浸漬することによる相転換である。
【0068】
従って、本発明の一実施形態では、工程ii)において、溶液(S)を少なくとも1種のプロトン性極性溶媒に浸漬することによって、溶液(S)に含まれる少なくとも1種の溶媒を溶液(S)に含まれる非晶性ポリマー(P)から分離する。
【0069】
これは、溶液(S)を少なくとも1種のプロトン性極性溶媒に浸漬することにより、膜(M)が形成されることを意味する。
【0070】
適切な少なくとも1種のプロトン性極性溶媒は、当業者に知られている。少なくとも1種のプロトン性極性溶媒は、好ましくは、非晶性ポリマー(P)用の非溶媒である。
【0071】
好ましい少なくとも1種のプロトン性極性溶媒は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、グリセロール、エチレングリコール、及びそれらの混合物である。
【0072】
工程ii)は、通常、工程ii)で得られる膜(M)の形態に相当する溶液(S)の形態を提供することを含む。
【0073】
従って、本発明の一実施形態では、工程ii)は、溶液(S)のフィルムを得るために溶液(S)をキャストすること、又は溶液(S)の少なくとも1種の円筒状チャネル(中空繊維)を得るために溶液(S)を少なくとも1種の紡糸口に通過させることを含む。
【0074】
従って、本発明の好ましい一実施形態では、工程ii)は、以下の工程を含む:
ii-1)工程i)で提供された溶液(S)をキャストして、溶液(S)のフィルムを得る工程、
ii-2)工程ii-1)で得られた溶液(S)のフィルムからの少なくとも1種の溶媒を少なくとも1種のプロトン性溶媒に浸漬して、フィルムの形態である膜(M)を得る工程。
【0075】
これは、膜(M)は、溶液(S)のフィルムからの少なくとも1種の溶媒を少なくとも1種のプロトン性溶媒に浸漬することによって形成されることを意味する。
【0076】
本発明の別の好ましい実施形態では、工程ii)は、以下の工程を含む:
iia-1)溶液(S)を少なくとも1種の紡糸口を介して通過させ、溶液(S)の少なくとも1種の円筒状チャネルを得る工程、
iia-2)工程iia-1)で得られた溶液(S)の少なくとも1種の円筒状チャネルからの少なくとも1種の溶媒を少なくとも1種のプロトン性溶媒に浸漬して、円筒状チャネルの形態である膜(M)を得る工程。
【0077】
これは、溶液(S)の円筒状チャネルからの少なくとも1種の溶媒を少なくとも1種のプロトン性溶媒に浸漬することにより膜(M)が形成されることを意味する。
【0078】
工程ii-1)及びiia)において、溶液(S)は、当業者に公知の任意の方法によってキャスト/紡糸することができる。通常、溶液(S)は、20~150℃の範囲、好ましくは40~100℃の範囲の温度に加熱されたキャスティングナイフ/スピナレットを用いてキャスト/紡糸される。
【0079】
溶液(S)は、通常、非晶性ポリマー(P)又は溶液(S)中に含まれる少なくとも1種の溶媒と反応しない基板上にキャストされる。
【0080】
適切な基板は当業者に知られており、例えば、ガラス板や高分子布(例えば、不織布)から選択される。
【0081】
緻密な膜を得るために、工程ii)の分離は、典型的には、溶液(S)中に含まれる少なくとも1種の溶媒を蒸発させることによって実施される。
【0082】
非晶性ポリマー(P)
本発明による非晶性ポリマー(P)は、一般に、上記定義された繰り返し単位(RU1)、(RU2)及び(RU3)を含む。繰り返し単位(RU1)、(RU2)及び(RU3)は、本発明による非晶性ポリマー(P)において、その骨格に、その鎖末端に及び/又はその繰り返し単位に存在することができる。好ましくは、繰り返し単位(RU1)、(RU2)及び(RU3)は、非晶性ポリマー(P)の骨格に含まれる。
【0083】
好ましい実施形態において、非晶性ポリマー(P)は、80~90mol%、より好ましくは80.1~89mol%、更に好ましくは80.2~88mol%、特に好ましくは80.3~87mol%、最も好ましくは80.4~86.5%の繰り返し単位(RU1)と10~20mol%、より好ましくは11~19.9mol%、更に好ましくは12~19.8mol%、特に好ましくは13~19.7mol%、最も好ましくは13.5~19.6%の繰り返し単位(RU2)を、それぞれの場合、非晶性ポリマー(P)に含まれる繰り返し単位(RU1)及び繰り返し単位(RU2)の合計モル数に基づいて算出する。
【0084】
従って、本発明の他の目的は、非晶性ポリマー(P)が以下:
80~90モル%の繰り返し単位(RU1)、及び
10~20モル%の繰り返し単位(RU2)
(なお、それぞれの割合は、非晶性ポリマーに含まれる繰り返し単位(RU1)及び繰り返し単位(RU2)の合計モル数に基づく)
を含む、膜(M)である。
【0085】
別の好ましい実施形態では、非晶性ポリマー(P)に含まれる繰り返し単位のモル数(RU2)に対する繰り返し単位のモル数(RU1)の比率は、4~9、より好ましくは4.02~8.09、更に好ましくは4.05~7.33、特に好ましいのは4.08~6.69、最も好ましくは4.10~6.41である。
【0086】
好ましい実施形態における本発明による非晶性ポリマー(P)の観点からの用語「非晶質」は、以下のように定義される。好ましい実施形態において、用語「非晶質」とは、非晶性ポリマー(P)が0~5W/gの範囲、好ましくは0~4W/gの範囲、更に好ましくは0~3W/gの範囲、特に好ましくは0~2.5W/gの範囲、最も好ましい0~2W/gの範囲の融解エンタルピーΔHを有することを意味する。別の最も好ましい実施形態では、非晶性ポリマー(P)は、融点を示さない。この場合、融解エンタルピーΔHは0である。略号W/gは、1グラム当たりのワットを意味する。
【0087】
好ましい実施形態における本発明による非晶性ポリマー(P)の観点からの用語「非晶質」は、更に、以下のように定義される。好ましい実施形態において、用語「非晶質」は、更に、非晶性ポリマー(P)が、0~5W/gの範囲、好ましくは0~4W/gの範囲、更に好ましくは0~3W/gの範囲、特に好ましくは0~2.5W/g、最も好ましくは0~2W/gの範囲の結晶化エンタルピーΔHを有することを意味する。別の最も好ましい実施形態では、非晶性ポリマー(P)は、結晶点を示さない。この場合、結晶化エンタルピーΔHは0である。略号W/gは、1グラム当たりのワットを意味する。
【0088】
(もしあれば)融解エンタルピーΔH及び(もしあれば)結晶化エンタルピーΔHは、DSC(示差走査熱量測定)を介して、20℃で開始し、非晶性ポリマー(P)のサンプルを20K/分の速度で360℃の温度まで加熱し、続いて>100K/分の速度で20℃まで冷却し、20K/minの速度で360℃まで2度目の加熱を行い、>100K/分の速度で20℃まで2度目の冷却を行い、2度目の加熱と2度目の冷却との間で溶融エンタルピーΔH及び結晶化エンタルピーΔHを決定する。
【0089】
もし非晶性ポリマー(P)が250℃で0.5時間アニールされる場合には、場合によっては、DSCを介して、0.1~<4W/gの範囲の溶融エンタルピーΔHを示す小さな相転移(融点)を検出することが可能である場合がある。もし非晶性ポリマー(P)を250℃で0.5時間アニールした場合には、更に、場合によっては、DSCを介して、0.1~<4W/gの範囲の結晶化エンタルピーΔHを示す小さな相転移(結晶化点)を検出することが可能である場合がある。
【0090】
(上述した方法を用いて)DSCを介する好ましい実施形態において非晶性ポリマー(P)をアニールすることなく、融点を検出することはできない。更に、(上述した方法を用いて)DSCを介する好ましい実施形態において非晶性ポリマー(P)をアニールすることなく、結晶点を検出することはできない。
【0091】
非晶性ポリマー(P)の多分散性(Q)は、概ね≦5であり、好ましくは≦4である。
【0092】
多分散性(Q)は、M :M (M /M )の比として定義される。好ましい一実施形態では、非晶性ポリマー(P)の多分散性(Q)は、2.0~≦5、好ましくは2.1~≦4,5の範囲である。
【0093】
従って、本発明の他の目的は、非晶性ポリマー(P)の多分散性(Q)が2.0~≦5.0の範囲にある膜(M)である。
【0094】
重量平均分子量(M)及び数平均分子量(M)は、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定した値である。
【0095】
ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて、多分散性(Q)及び非晶性ポリマー(P)の平均分子量を測定した。溶媒にはジメチルアセトアミド(DMAc)を用い、測定には狭分散性ポリメチルメタクリレートを標準物質として使用した。
【0096】
非晶性ポリマー(P)は、好ましくは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定した平均分子量Mn(数平均)が7500~60000g/mol、特に8000~45000g/molの範囲であることができる。非晶性ポリマー(P)の質量平均モル質量Mwは、好ましくは14000~120000g/molであってもよく、特に好ましくは18000~100000g/molであってもよく、特に好ましくは25000~80000g/molであってもよい(GPCによって決定される)。これによって、Mw及びMnは、溶媒としてのジメチルアセトアミド中において、標準としての狭分散性ポリメチルメタクリレート(800~1820000g/モルの間の校正)に対して、80℃で作動する4本のカラム(プレカラム、ポリエステルコポリマーに基づく3本の分離カラム)及び1ml/分に設定した流速、注入容量100μlを用いて、GPCによって測定することができる。検出にはRI検出器を使用することができる。
【0097】
非晶性ポリマー(P)の末端基は、一般に、ハロゲン基(特に塩素基)、又はエーテル化された基(特にアルキルエーテル基)のいずれかである。エーテル化された末端基は、末端OH/フェノキシド基を適切なエーテル化剤と反応させることによって得ることができる。
【0098】
好適なエーテル化剤の例は、一官能性アルキル又はハロゲン化アリール、例えば塩化、臭化、ヨウ化C-Cアルキル、好ましくは塩化メチル、又は塩化、臭化、ヨウ化ベンジル、又はこれらの混合物である。本発明によるポリアリーレンエーテルスルホン重合体の末端基は、好ましくはハロゲン基(特に塩素)、またアルコキシ基(特にメトキシ)、アリールオキシ基(特にフェノキシ、又はベンジルオキシ)である。
【0099】
非晶性ポリマー(P)の全質量に対する、非晶性ポリマー(P)に含まれる繰り返し単位(RU1)、(RU2)及び(RU3)の全質量の比率は、有利に0.7以上である。この比は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、更に好ましくは0.95以上である。最も好ましくは、本発明によるポリマーは、繰り返し単位(RU1)、(RU2)及び(RU3)以外の他の繰り返し単位を含まない。
【0100】
好ましい実施形態において、非晶性ポリマー(P)は、4,4’-ジハロジフェニルスルホン、4,4’-ジハロベンゾフェノン及び4,4’-ジヒドロキシビフェノールの反応により得ることができる。4,4’-ジハロジフェニルスルホンは、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン及び4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンからなる群から選択されることが好ましく、4,4’ジクロロジフェニルスルホンが好ましい。また、4,4’-ジハロベンゾフェノンは、4,4’-ジクロロベンゾフェノン及び4,4’-ジフルオロベンゾフェノンからなる群から選択されることが好ましく、4,4’-ジクロロベンゾフェノンが好ましい。
【0101】
従って、本願発明の他の目的は、非晶性ポリマー(P)が、4,4’-ジハロゲンジフェニルスルホン、4,4’-ジハロベンゾフェノン及び4,4’-ジヒドロキシビフェノールの反応によって得られる膜(M)である。
【0102】
非晶性ポリマー(P)は、統計コポリマーであっても、ブロックコポリマーであってもよい。統計コポリマーでは、繰り返し単位(RU1)、(RU2)及び(RU3)は、統計法則に従う。非晶性ポリマー(P)がブロックコポリマーである場合、共有結合で連結された2つのホモポリマーサブユニットを含む。
【0103】
非晶性ポリマー(P)が統計コポリマーである場合、一般に、以下の構造(S1)及び(S2)を含む。
【0104】
【化3】
【0105】
従って、本願の他の目的は、非晶性ポリマー(P)が、以下の構造(S1)及び(S2)を有する統計コポリマーである膜(M)である。
【0106】
【化4】
(式中、構造(S1)及び(S2)は、統計法則に従う。)
【0107】
構造(S1)は、4,4’-ジハロジフェニルスルホンモノマーと4,4’-ビフェノールから誘導された構造である。構造(S2)は、4,4’-ジハロベンゾフェノンと4,4’-ビフェノールから誘導された構造である。
【0108】
非晶性ポリマー(P)がブロックコポリマーである場合、典型的には、以下の構造(S3)を有する。
【0109】
【化5】
【0110】
従って、本願発明の他の目的は、非晶性ポリマー(P)が、以下の構造(S3)を有するブロックコポリマーである膜(M)である。
【化6】
【0111】
構造(S3)において、x及びyは、互いに独立して、好ましくは4.5~9の範囲、より好ましくは4.5~8の範囲、更に好ましくは4.5~7の範囲、特に好ましくは4~5の範囲である。x及びyは、モノマーである4,4’-ジハロジフェニルスルホン及び4,4’-ビフェノールに由来するポリマーブロック(ポリフェニレンスルホンブロック(PPSUブロック)とも-呼ばれる)の平均長さを示す。非晶性ポリマー(P)がブロックコポリマーの場合、PPSUブロックはベンゾフェノンユニットを介して連結されている。ブロックコポリマーは、4,4’-ジハロジフェニルスルホンと4,4’-ビフェノールを第1工程で反応させる(モル過剰の4,4’-ビフェノールの使用によって末端水酸基を有するPPSUブロックが得られ、このPPSUブロックは、ブロックコポリマーを得るために、第2工程における末端水酸基を有する前記PPSUブロックと4,4’-ジハロベンゾフェノンとを反応させる)。
【0112】
ポリマーブロックxとyの平均長は、4,4’-ジクロロベンゾフェノン添加前に反応器から採取した沈殿・乾燥サンプルのOH基の電位差滴定と有機Cl-含有量の元素分析により求めることができる。計算値は、オリゴマーの数平均分子量に相当する。
【0113】
本発明は、これに限定されることなく、以下の実施例によって更に説明される。
【0114】
以下、非晶質重合体(P)の好ましい製造方法について説明する。
【0115】
統計非晶性ポリマー(P)は、好ましくは、成分として含む反応混合物(R):
(A1)少なくとも1種の4,4’-ジハロジフェニルスルホン、
(A2)少なくとも1種の4,4’-ジハロベンゾフェノン、
(B1)4,4’-ビフェノール、
(C)反応混合物中の成分(C)の全質量を基準にして、少なくとも80質量%の炭酸カリウムを含む少なくとも一種の炭酸塩成分(R)、
(D)少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒
を変換することによって製造することができる。
【0116】
また、非晶質重合体(P)に鑑みて前述した記載や好適態様は、非晶質重合体(P)の製造方法について適宜適用される。更に、以下、非晶質重合体(P)の製造方法に鑑みてなされた記載及び好適態様は、非晶質重合体(P)にも適宜適用される。
【0117】
成分(A1)、(A2)及び(B1)は重縮合反応に入る。
【0118】
成分(D)は溶媒として作用し、成分(C)は縮合反応前又は縮合反応中に成分(B1)を脱プロトン化する塩基として作用する。
【0119】
反応混合物(R)は、非晶性ポリマー(P)を製造するための本発明による方法で使用される混合物を意味すると理解される。この場合、従って、反応混合物(R)に関して与えられたすべての詳細は、重縮合の前に存在する混合物に関するものである。重縮合は、反応混合物(R)が成分(A1)、(A2)及び(B1)の重縮合によって反応し、目的生成物である非晶性ポリマー(P)を与えるために、本発明に従う方法中に行われる。重縮合後に得られる、非晶性ポリマー(P)の目的生成物を構成する混合物を、生成物混合物(P)ともいう。生成混合物(P)は、通常、更に少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒(成分(D))及びハロゲン化合物を含有する。ハロゲン化合物は、反応混合物(R)の変換中に生成される。最初の変換の間、成分(C)は成分(B1)と反応して成分(B1)を脱プロトン化する。脱プロトン化された成分(B1)は、次に成分(A1)と反応し、そこでハロゲン化合物が形成される。この工程は、当業者には公知である。
【0120】
工程I)において本発明の一実施形態では、第1の非晶性ポリマー(P1)が得られる。この実施形態は、以下でより詳細に説明される。この実施形態では、生成混合物(P)は、第1の非晶性ポリマー(P1)を含む。次に、生成物混合物(P)は、通常、更に少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒(成分(D))及びハロゲン化合物を含む。ハロゲン化合物については、上述した詳細が当てはまる。
【0121】
反応混合物(R)の成分は、一般に同時に反応させる。個々の成分は上流での工程で混合され、その後反応させることができる。また、個々の成分を反応器に供給し、そこでこれらを混合した後、反応させることも可能である。
【0122】
本発明による方法では、反応混合物の個々の成分(R)は、一般に工程I)で同時に反応される。この反応は、好ましくは1段階で行われる。これは、成分(B1)の脱プロトン化、及び成分(A1)、(A2)及び(B1)間の縮合反応が、中間生成物(例えば、成分(B1)の脱プロトン化種)を分離することなく、単一の反応段階において行われることを意味する。
【0123】
本発明の工程I)による方法は、いわゆる「炭酸塩法」に従って実施される。本発明による方法は、いわゆる「水酸化物法」に従って実施されない。これは、本発明による方法が、フェノールアニオンの単離を伴う2段階で実施されないことを意味する。
【0124】
更に、反応混合物(R)は、トルエン又はクロロベンゼンを含まないことが好ましい。反応混合物(R)が水と共沸を形成するいかなる物質も含まないことが特に好ましい。
【0125】
従って、本発明の別の目的は、反応混合物(R)が、水と共沸を形成するいかなる物質も含まない方法でもある。
【0126】
成分(A1)、(A2)及び成分(B1)の和のモル比(比(A1+A2)/(B1))は、原則として、塩化水素の理論的な除去を伴って進行する重縮合反応の化学量論から導かれ、当業者によって公知の方法で設定されるものである。
【0127】
好ましくは、成分(A1)及び成分(A2)の合計に対する成分(B1)のモル比が0.95~1.08、特に0.96~1.06、最も好ましくは0.97~1.05である。
【0128】
従って、本発明の別の目的はまた、反応混合物中の成分(A1)及び(A2)の合計に対する成分(B1)のモル比(R)が0.97~1.08の範囲にある方法である。
【0129】
好ましい実施形態において、反応混合物(R)は、成分(A1)、(A2)、(B1)、(C)及び(D)に加えて、反応混合物(R)の総質量に基づいて、成分(A1)、(A2)、(B1)、(C)及び(D)とは異なる更なる成分の最高15質量%、より好ましくは最高7.5質量%、特に好ましくは最高2.5質量%、最も好ましくは最高1質量%を含む。
【0130】
別の最も好ましい実施形態では、反応混合物(R)は、成分(A1)、(A2)、(B1)、(C)及び(D)を含む。
【0131】
好ましくは、重縮合反応における転化率は、少なくとも0.9である。
【0132】
非晶性ポリマー(P)の製造のための工程工程I)は、典型的には、いわゆる「炭酸塩法」の条件下で実施される。すなわち、反応混合物(R)を、いわゆる「炭酸塩法」の条件下で反応させる。反応(重縮合反応)は、一般に80~250℃の範囲の温度で、好ましくは100~220℃の範囲の温度で行われる。温度の上限は、少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒(成分(D))の標準圧力(1013.25mbar)での沸点により決定される。本反応は、一般に標準圧力で行われる。反応は、好ましくは2~12時間、特に3~10時間の範囲の時間で実施される。
【0133】
生成混合物(P)中の本発明による方法で得られた非晶性ポリマー(P)の単離は、例えば、水又は水と他の溶媒との混合物中で生成混合物(P)を沈殿させることによって実施され得る。沈殿した非晶性ポリマー(P)は、その後、水で抽出され、次いで乾燥させることができる。本発明の一実施形態では、沈殿物を酸性媒体に取り込むこともできる。好適な酸は、例えば、有機酸又は無機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸又はクエン酸などのカルボン酸、及び塩酸、硫酸又はリン酸などの鉱酸)である。
【0134】
本発明の一実施態様では、工程I)において、第1の非晶性ポリマー(P1)が得られる。次に、本発明方法は、好ましくは、更に、以下の工程を含む:
II) 工程I)で得られた第1の非晶性ポリマー(P1)をハロゲン化アルキルと反応させる。
【0135】
従って、本発明の別の目的はまた、工程I)において第1の非晶性ポリマー(P1)が得られ、そしてこの方法が更に下記の工程含む方法である:
II) 工程I)で得られた第1の非晶性ポリマー(P1)をハロゲン化アルキルと反応させる。
【0136】
当業者には、工程II)が実施されない場合、第1の非晶性ポリマー(P1)が非晶性ポリマー(P)に相当することは明らかである。
【0137】
第1の非晶性ポリマー(P1)は、通常、反応混合物(R)中に含まれる成分(A1)、(A2)及び成分(B1)の重縮合反応による生成物である。第1の非晶性ポリマー(P1)は、反応混合物(R)を転化する際に得られる上記生成混合物(P)中に含むことができる。上述したように、この生成物混合物(P)は、第1の非晶性ポリマー(P1)、成分(D)及びハロゲン化合物を含む。第1の非晶性ポリマー(P1)は、ハロゲン化アルキルと反応させる際に、この生成物混合物(P)中に含むことができる。
【0138】
第1の生成物混合物(P1)からのハロゲン化合物の分離は、当業者に公知の任意の方法、例えば濾過又は遠心分離を介して実施することができる。
【0139】
第1の非晶性ポリマー(P1)は、通常、末端ヒドロキシ基を含む。工程II)において、これらの末端ヒドロキシ基は、ポリアリーレンエーテルスルホン重合体(P)を得るためにハロゲン化アルキルと更に反応させられる。好ましいハロゲン化アルキルは、特に、1~10個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアルキルクロリド、特に一級アルキルクロリド、特に好ましくはハロゲン化メチル、特に塩化メチルである。
【0140】
工程II)による反応は、好ましくは90℃~160℃の範囲、特に100℃~150℃の範囲の温度で行われる。所要時間は、広い範囲で変化させることができ、通常少なくとも5分、特に少なくとも15分である。工程II)による反応に要する時間は、15分~8時間、特に30分~4時間であることが好ましい。
【0141】
ハロゲン化アルキルの添加には、様々な方法を用いることができる。更に、化学量論的量又は過剰のハロゲン化アルキルを添加することが可能であり、過剰は、例えば、最大5倍までであることが可能である。好ましい一実施形態では、ハロゲン化アルキルは連続的に(特に、ガス流の形態での連続的な導入を介して)添加される。
【0142】
工程II)では、通常、非晶性ポリマー(P)及び成分(D)を含むポリマー溶液(PL)が得られる。工程II)において、工程I)からの生成物混合物(P)が使用された場合、ポリマー溶液(PL)は通常、更にハライド化合物を含んでいる。工程II)の後、ポリマー溶液(PL)を濾過することが可能である。それにより、ハロゲン化合物を除去することができる。
【0143】
従って、本発明はまた、工程II)において、ポリマー溶液(PL)が得られる方法を提供し、この方法は下記の工程を更に含む:
III)工程II)で得られたポリマー溶液(PL)を濾過する工程。
【0144】
ポリマー溶液(PL)における本発明による工程II)で得られた非晶性ポリマー(P)の単離は、生成物混合物(P)で得られた非晶性ポリマー(P)の単離として実施することができる。例えば、単離は、ポリマー溶液(PL)を水中で又は水と他の溶媒との混合物中で沈殿させることによって実施することができる。沈殿した非晶性ポリマー(P)は、その後、水で抽出され、次いで乾燥させることができる。本発明の一実施形態では、沈殿物は、酸性媒体中に取り込まれることもできる。好適な酸は、例えば酢酸、プロピオン酸、コハク酸又はクエン酸などのカルボン酸、及び塩酸、硫酸又はリン酸などの鉱酸などの有機酸又は無機酸である。
【0145】
成分 (C)
反応混合物(R)は、成分(C)として少なくとも1種の炭酸塩成分を含んでいる。この場合、用語「少なくとも1種の炭酸塩成分」は、1つだけの炭酸塩成分、及び2以上の炭酸塩成分の混合物を意味すると理解される。少なくとも1種の炭酸塩成分は、好ましくは少なくとも1種の金属炭酸塩である。金属炭酸塩は、好ましくは無水である。
【0146】
金属炭酸塩としては、アルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ土類金属炭酸塩が好ましい。金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属炭酸塩が特に好ましい。炭酸カリウムが最も好ましい。
【0147】
例えば、成分(C)は、反応混合物(R)中の少なくとも1種の炭酸塩成分の総質量に基づいて、少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも70質量%、最も好ましくは少なくとも90質量%の炭酸カリウムを含む。
【0148】
従って、本発明の別の目的はまた、成分(C)が、成分(C)の総質量を基準にして、少なくとも50質量%の炭酸カリウムを含む方法である。
【0149】
好ましい実施形態では、成分(C)は、実質的に炭酸カリウムを含む。
【0150】
本場合における「実質的に・・・からなる」とは、成分(C)が、反応混合物(R)中の成分(C)の総質量に基づいて、それぞれの場合において、99質量%以上、好ましくは99.5質量%以上、特に好ましくは99.9質量%以上の炭酸カリウムを含むことを意味していると理解される。
【0151】
特に好ましい実施形態では、成分(C)は、炭酸カリウムからなる。
【0152】
炭酸カリウムとしては、200μm未満の容積重量の平均粒子径(volume weIghted average particle size)を有する炭酸カリウムが特に好ましい。炭酸カリウムの容積重量の平均粒子径は、クロロベンゼン/スルホラン(60/40)中の炭酸カリウムの懸濁液において、Malvern Mastersizer 2000 Instrument particle size analyserを用いて測定される。
【0153】
好ましい実施形態では、反応混合物(R)は、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物のいずれも含まない。
【0154】
成分(D)
反応混合物(R)は、成分(D)として少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒を含む。本発明によれば、「少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒」は、1種だけの非プロトン性極性溶媒、又は2以上の非プロトン性極性溶媒の混合物を意味すると理解される。
【0155】
適切な非プロトン性極性溶媒は、例えば、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、スルホラン及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群から選択される。
【0156】
好ましくは、成分(D)は、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドからなる群から選択される。成分(D)としては、N-メチルピロリドンが特に好ましい。
【0157】
従って、本発明の別の目的は、成分(D)が、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドからなる群から選択される方法でもある。
【0158】
成分(D)がスルホランを含んでいないことが好ましい。更に、反応混合物(R)がジフェニルスルホンを含んでいないことが好ましい。
【0159】
成分(D)は、反応混合物(R)中の成分(D)の総質量を基準にして、N-メチルピロリドン、N,Nジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を少なくとも50質量%含むことが好ましい。成分(D)としては、N-メチルピロリドンであることが特に好ましい。
【0160】
更なる好ましい実施形態において、成分(D)は、本質的にN-メチルピロリドンを含む。
【0161】
本場合における「実質的に・・・からなる」は、成分(D)が、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドからなる群から選択される少なくとも1種の非プロトン性極性溶剤(N-メチルピロリドンが好ましい)を98質量%以上、特に好ましくは99質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上含むことを意味すると理解できる。
【0162】
好ましい実施形態において、成分(D)は、N-メチルピロリドンからなる。N-メチルピロリドンは、NMP又はN-メチル-2-ピロリドンとも称される。
【0163】
非晶質ブロックコポリマー(P)の製造のために、上記のように、第1工程において、成分(A1)及び(B1)を、成分(C)及び(D)の存在下で反応させて、末端OH基を有する上記定義のPPSUブロックが得られる。第2工程では、非晶質ブロックコポリマー(P)を得るために、成分(C)及び(D)の存在下で前記PPSUブロックを成分(A2)と反応させる。非晶質ブロックコポリマー(P)、成分(A1)、(A2)、(B1)、(C)及び(D)については、統計非晶性ポリマー(P)の製造の観点から、上述の記載及び好ましい態様が適宜適用される。
【0164】
濾過工程
本発明の他の目的は、液体(好ましくは水)を膜(M)に透過させる濾過方法である。
【0165】
好ましい実施形態において、濾過工程は、例えば、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過及び/又は逆浸透のための、水の濾過工程である。
【実施例
【0166】
使用成分
DCDPS: 4,4’-ジクロロジフェニルスルホン
DCBPO: 4,4’-ジクロロベンゾフェノン
BP: 4,4’-ビフェノール
炭酸カリウム: KCO;無水;体積平均粒径34.5μm
NMP: N-メチルピロリドン。
PPSU ポリフェニレンスルホン(ULTRASON(登録商標) P 3010)
PESU ポリエーテルスルホン(ULTRASON(登録商標)E 3010)
【0167】
細孔形成剤としては、ポリビニルピロリドンK90(BASF SE)を使用した。
【0168】
一般的な手順
ポリマーの粘度数は、DIN EN ISO 1628-1に従って、25℃のNMP中の1%溶液で測定される。
【0169】
ポリマーの単離は、室温(25℃)で脱塩水中のポリマーのNMP溶液を滴下することによって行われる。滴下高さは0.5m、処理量は約2.5l/hである。次いで、得られたビーズを85℃で20時間、水(水処理量160l/h)で抽出し、150℃で24時間(時間)、減圧(<100mbar)で乾燥させて、残留水分を0.1質量%未満とする。
【0170】
得られた生成物のガラス転移温度(T)及び融点は、上述したように、第2加熱サイクルにおいて20K/minの加熱ランプで示差走査熱量測定DSCを介して測定される。
【0171】
ベンゾフェノン基の含有量は、CDClを溶媒として用いたH-NMRによって測定される。
【0172】
ポリマーV1
温度計、ガス導入管、Dean-Stark-trapを取り付けた4リットルのガラス製反応器に、522.63g(1.82mol)のDCDPS、372.41g(2.00mol)の4,4’-ジヒドロキシビフェニル、50.22g(0.20mol)の4,4’-ジクロロベンゾフェノン、及び304.05g(2.20mol)の体積平均粒径34.5μmを有する炭酸カリウムを、窒素雰囲気下で1152mlのNMP中に懸濁させた。
【0173】
この混合物を1時間以内に190℃に加熱した。以下では、反応時間は、反応混合物が190℃に維持された時間であると理解されるものとする。反応中に生成した水は、蒸留によって連続的に除去され、失ったNMPが交換された。
【0174】
190℃で更に5時間反応を続けた後、1500mlのNMPを反応器に加え、懸濁液の温度は135℃で(10分間)調整した。その後、メチルクロライドを60分間反応器に添加した。その後、Nを更なる30分間、懸濁液を通してパージした。その後、溶液を80℃に冷却した後、圧力フィルターに移し、反応で生成した塩化カリウムを濾過により分離した。次に、得られたポリマー溶液を水中で沈殿させ、得られたポリマービーズを分離し、次に熱湯(85℃)で20時間抽出した。ビーズを減圧(<100mbar)で120℃、24時間乾燥させた。
【0175】
非晶性ポリマー2
温度計、ガス導入管、Dean-Stark-trapを取り付けた4リットルガラス製反応器に、508.28g(1.77mol)のDCDPS、372.41g(2.00mol)の4,4’-ジヒドロキシビフェニル、62.78g(0.25mol)の4,4’-ジクロロベンゾフェノン、304.05g(2.20mol)の体積平均粒径34.5μmを有する炭酸カリウムを、窒素雰囲気下で1152mlのNMPに懸濁させた。
【0176】
この混合物を1時間の範囲で190℃に加熱した。以下では、反応時間は、反応混合物が190℃に維持された時間であると理解されるものとする。反応中に生成した水は、蒸留によって連続的に除去され、失ったNMPが交換された。
【0177】
190℃で更に4.2時間反応を続けた後、1500mlのNMPを反応器に加え、懸濁液の温度を135℃で(10分間)調整した。その後、メチルクロライドを反応器に60分かけて加えた。その後、Nで更に30分間、懸濁液を通してパージした。その後、溶液を80℃に冷却した後、圧力フィルターに移し、反応で生成した塩化カリウムを濾過により分離した。次に、得られたポリマー溶液を水中で沈殿させ、得られたポリマービーズを分離し、次に熱湯(85℃)で20時間抽出し、ビーズを減圧(<100mbar)で120℃、24時間乾燥させた。
【0178】
非晶性ポリマー3
温度計、ガス導入管、Dean-Stark-trapを取り付けた4リットルガラス製反応器に、493.91g(1.72mol)のDCDPS、372.41g(2.00mol)の4,4’-ジヒドロキシビフェニル、75.33g(0.30mol)の4,4’-ジクロロベンゾフェノン、304.05g(2.20mol)の体積平均粒径34.5μmを有する炭酸カリウムを窒素雰囲気下で1152mlのNMP中に懸濁させた。
【0179】
この混合物を1時間以内に190℃に加熱した。以下では、反応時間は、反応混合物が190℃に維持された時間であると理解されるものとする。反応中に生成した水は、蒸留によって連続的に除去され、失ったNMPが交換された。
【0180】
190℃で更に5時間反応を続けた後、1500mlのNMPを反応器に加え、懸濁液の温度を135℃で(10分間)調整した。その後、メチルクロライドを反応器に60分間加えた。その後、Nで更に30分間、懸濁液を通してパージした。その後、溶液を80℃に冷却した後、圧力フィルターに移し、反応で生成した塩化カリウムを濾過により分離した。次に、得られたポリマー溶液を水中で沈殿させ、得られたポリマービーズを分離し、次に熱水(85℃)で20時間抽出し、ビーズを減圧(<100mbar)で120℃、24時間乾燥させた。
【0181】
ポリマーV2
温度計、ガス導入管、Dean-Stark-trapを取り付けた4リットルガラス製反応器に、450.86g(1.57mol)のDCDPS、372.41g(2.00mol)の4,4’-ジヒドロキシビフェニル、113.00g(0.45mol)の4,4’-ジクロロベンゾフェノン、304.05g(2.20mol)の体積平均粒径34.5μmを有する炭酸カリウムを窒素雰囲気下で1152mlのNMPに懸濁させた。
【0182】
この混合物を1時間以内に190℃に加熱した。以下では、反応時間は、反応混合物が190℃に維持された時間であると理解されるものとする。反応中に生成した水は、蒸留によって連続的に除去され、失われたNMPは交換された。
【0183】
190℃で更に6時間反応を続けた後、1500mlのNMPを反応器に加え、懸濁液の温度を135℃で(10分間)調整した。その後、メチルクロライドを60分間反応器に加えた。その後、Nで更に30分間、懸濁液を通してパージした。その後、溶液を80℃に冷却した後、圧力フィルターに移し、反応で生成した塩化カリウムを濾過により分離した。次に、得られたポリマー溶液を水中で沈殿させ、得られたポリマービーズを分離し、次に熱水(85℃)で20時間抽出し、ビーズを減圧(<100mbar)で120℃、24時間乾燥させた。
【0184】
【表1】
【0185】
平板状膜の調製
マグネチックスターラーを備えた三口フラスコに、76.9mlのN-メチルピロリドン(NMP)、6gのポリビニルピロリドン(PVP,K90)及び17.1gのポリマーを加える。この混合物を60℃で穏やかに攪拌しながら、均質で透明な粘性溶液が得られるまで加熱する。この溶液は、室温で一晩脱気される。
【0186】
その後、膜溶液を60℃で2時間再加熱し、5mm/分の速度で作動するErichsen Coating machineを用いて60℃でキャスティングナイフ(300ミクロン)を用いてガラスプレート上にキャストした。膜フィルムを30秒間休ませた後、25℃の水浴に10分間浸漬する。
【0187】
その後、2500ppmのNaOClを含む50℃の浴槽に4.5時間かけて移し、PVPを除去する。その工程の後、膜を60℃の水で5回洗浄し、0.5質量%のNaの溶液で1回洗浄し、活性塩素を除去する。水で数回洗浄した後、膜は特性評価を開始するまで湿った状態で保管された。
【0188】
ほとんどの場合、少なくとも10×15cmの大きさを有するUF膜の微細構造特性を有する平板状連続フィルムが得られる。この膜は、上部の薄いスキン層(1~10ミクロン)及びその下部の多孔質層(厚さ:130~180ミクロン)を有する。
【0189】
膜の特性評価
直径60mmの圧力セルを用いて、超純水(ミリポア社のUFシステムで濾過した無塩水)を用いて、膜の純水透過性をテストした。その後の試験では、異なるPEG規格の溶液を0.15barの圧力で濾過した。フィードと透過液のGPC測定により、分子量のカットオフが決定された。
【0190】
濾過液中の有機化合物に対する安定性は、膜の一部をアセトン及び水とエタノールの50/50混合液に浸し、膜の膨潤を定性的に評価した(1:膨潤なし、5:大量の膨潤)。
【0191】
また、NaOCl水溶液で23℃、7日間エージングを行った。溶液は、pH8で2000ppmの遊離塩素を含むもので、1日、2日、5日後に交換した。
【0192】
更に、経時変化した膜シートからストライプ(長さ:70mm、幅:10mm、厚さ:0.17~0.19mm)を切り出した。その後、水(5回、100ml)で、Na溶液(100ml)で1回、水(100ml)で1回洗浄し、試験まで水中で保管した。各材料の5つのサンプルの引張試験を実行し、引張伸度の平均が報告される。
【0193】
得られたデータを表2にまとめた。
【0194】
【表2】
【0195】
BPO含有率10-20mol%であるPPSU-co-BPOコポリマーをベースにした膜は、溶媒及びNaOCl溶液に対して優れた安定性を示す。驚くべきことに、同等のMWCO(Molecular weight cut-off)では、これらの膜は改善された透過性(PWP)も示す。
【国際調査報告】