(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】イソプレノールを回収するプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 29/80 20060101AFI20240228BHJP
C07C 33/025 20060101ALI20240228BHJP
B01D 3/14 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C07C29/80
C07C33/025
B01D3/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023555162
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2022056385
(87)【国際公開番号】W WO2022189652
(87)【国際公開日】2022-09-15
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ハッセ,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】ワグナー,ルパート
(72)【発明者】
【氏名】ブルンナー,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】シュルト,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ホルマン,ヘイコ
(72)【発明者】
【氏名】ディガ,マクシミリアン
【テーマコード(参考)】
4D076
4H006
【Fターム(参考)】
4D076AA16
4D076AA22
4D076BB23
4D076EA08Z
4D076EA14Z
4D076EA16Z
4D076EA20Z
4D076FA31
4D076FA34
4D076HA03
4H006AA02
4H006AA04
4H006AD11
4H006BC52
4H006BD40
4H006BD53
4H006BD80
4H006FE11
(57)【要約】
イソプレノール、水及びホルムアルデヒドを含む粗イソプレノールの流れから、ホルムアルデヒドを本質的に含まないイソプレノールを回収するプロセスであって、粗イソプレノールの流れ又はそのイソプレノール含有留分を2.5bara以上の圧力で動作された低沸点物分離塔において蒸留に供して、水性ホルムアルデヒドを含む蒸留流及びイソプレノールを含む底部流を得る工程を含む、プロセス。本発明のプロセスにより、ホルムアルデヒドを本質的に含まないイソプレノールを得ることが可能になる。更に、イソプレノール、水及びホルムアルデヒドを含む粗イソプレノールの流れから、ホルムアルデヒドを本質的に含まないイソプレノールを回収するためのプラントが提供され、このプラントは、第1の低沸点物分離塔と、第2の低沸点物分離塔と、仕上げ塔とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレノール、水及びホルムアルデヒドを含む粗イソプレノールの流れから、ホルムアルデヒドを本質的に含まないイソプレノールを回収する方法であって、粗イソプレノールの前記流れ又はそのイソプレノール含有留分を2.5bara以上の圧力で動作された低沸点物分離塔において蒸留に供して、水性ホルムアルデヒドを含む蒸留流及びイソプレノールを含む底部流を得る工程を含む、方法。
【請求項2】
ホルムアルデヒドとイソブチレンを反応させて反応混合物を得る工程と、イソブチレン蒸留塔において前記反応混合物から未反応のイソブチレンを除去して粗イソプレノールの前記流れを得る工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の蒸留物は、ホルムアルデヒドとイソブチレンの前記反応に少なくとも部分的にリサイクルされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(i)粗イソプレノールの前記流れを、1.5bara以下の圧力で動作された第1の低沸点物分離塔に送り、イソプレノールとホルムアルデヒドを含む第1の底部流、及び水と低沸点物を含む第1の蒸留流を得る工程と、
(ii)前記第1の底部流を、2.5bara以上の圧力で動作された第2の低沸点物分離塔に送り、水性ホルムアルデヒドを含む第2の蒸留流、及びイソプレノールを含む第2の底部流を得る工程と、
(iii)前記第2の底部流を仕上げ塔に送り、蒸留流として純粋なイソプレノール、及び高沸点物を含む底部流を得る工程と
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
急冷部は、前記第2の低沸点分離塔の精留部の下流において蒸気流方向に設けられ、水性液体は、前記急冷部の下端で収集され、前記水性液体は、循環ラインを通して前記急冷部に部分的に循環され、前記第2の蒸留物として部分的に取り出される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水性液体は、前記急冷部に循環される前に冷却される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記水性液体は、前記急冷部に循環される前に、前記第1の低沸点物分離塔に流入する粗イソプレノールの前記流れと熱交換される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記水性液体は、還流流として前記精留部に部分的に戻される、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記還流流対前記第2の蒸留物の質量流量比は、2:1~10:1、好ましくは3:1~7:1の範囲である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
スクラブ部は、前記急冷部の下流において蒸気流方向に設けられ、前記スクラブ部の上部で水が導入される、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の蒸留物は、25~60重量%、好ましくは40~50重量%のホルムアルデヒドを含む、請求項4~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記得られた純粋なイソプレノールは、0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満のホルムアルデヒドを含む、請求項4~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の低沸点物分離塔は、1.2bara以下、好ましくは0.5bara以下の圧力で動作され、且つ/又は前記第2の低沸点物分離塔は、2.5bara以上、好ましくは2.8bara以上の圧力で動作される、請求項4~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の蒸留流の少なくとも一部を廃水除去管に送り、水から低沸点物を分離する工程を含む、請求項4~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
イソプレノール、水及びホルムアルデヒドを含む粗イソプレノールの流れから、ホルムアルデヒドを本質的に含まないイソプレノールを回収するためのプラントであって、
- 粗イソプレノールの前記流れを受け取り、粗イソプレノールの前記流れを、イソプレノールとホルムアルデヒドを含む第1の底部流と、水と低沸点物を含む第1の蒸留流とに蒸留分離するように適合された第1の低沸点物分離塔と、
- 前記第1の低沸点物分離塔から第1の底部流を受け取り、前記第1の底部流を、水性ホルムアルデヒドを含む第2の蒸留流と、イソプレノールを含む第2の底部流とに蒸留分離するように適合された第2の低沸点物分離塔と、
- 前記第2の低沸点物分離塔から第2の底部流を受け取り、前記第2の底部流を、蒸留流として純粋なイソプレノールと、高沸点物を含む底部流とに蒸留分離するように適合された仕上げ塔と、
を含むプラント。
【請求項16】
前記第2の低沸点物分離塔は、
- 前記第2の低沸点物分離塔の精留部の上の急冷部であって、前記第2の低沸点物分離塔は、前記急冷部の下端で第2の蒸留物を収集し、前記第2の蒸留物を、循環ラインを通り前記急冷部に部分的に循環させるように設計されている、急冷部と、
- 前記急冷部の上のスクラブ部及び前記スクラブ部の上部の水注入口と、
を含む、請求項15に記載のプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソプレノール、水及びホルムアルデヒドを含む粗イソプレノールの流れからホルムアルデヒドを本質的に含まないイソプレノールを回収するプロセス、並びにイソプレノールを回収するプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
イソプレノール、又は3-メチル-3-ブテン-1-オール(MBE)は、シトラールなどの芳香化合物、及びビタミンのための重要な中間体であり、世界中で年間数千トンが生産されている。イソプレノールは、ホルムアルデヒドとイソブチレン(2-メチルプロペン)を反応させることによって商業的に合成される。このプロセスは、例えば、独国特許出願公開第10064751A1号明細書に記載されている。この反応は、例えば、国際公開第2020/049111A1号パンフレットに記載されているように、典型的には、溶媒の非存在下、高圧及び高温で行われる。独国特許第1279014B号明細書には、塩基の存在下で行われる高圧及び高温でのアルク-3-エン-1-オールの生成プロセスが記載されている。国際公開第2019/030386A1号パンフレットは、一連の蒸留工程を介して、イソプレノールと、1つ以上の溶媒と、水と、イソブテンとを含む供給流からイソプレノールを回収するプロセスに関している。
【0003】
ホルムアルデヒドとイソブチレンの反応は、平衡反応であり、それ故不完全型である。未反応のホルムアルデヒドは、下流の蒸留工程中に主に単離され、蓄積された廃水を介して処分される。しかしながら、既知のプロセスは、ホルムアルデヒドの分離効率が限られているため、蒸留列(distillation train)中にホルムアルデヒドが遍在する傾向があり、単離されたイソプレノール中にかなりの量が見出される。ホルムアルデヒドによる汚染は、下流のプロセスに悪影響を及ぼし、消費率の上昇、品質の問題、及び生産プラントの操作性の困難さを引き起こす場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、粗イソプレノールの流れからホルムアルデヒドを含まないイソプレノールを回収するプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、イソプレノール、水及びホルムアルデヒドを含む粗イソプレノールの流れから、ホルムアルデヒドを本質的に含まないイソプレノールを回収するプロセスを提供し、このプロセスは、粗イソプレノールの流れ又はそのイソプレノール含有留分を2.5bara以上の圧力で動作された低沸点物分離塔において蒸留に供して、水性ホルムアルデヒドを含む蒸留流及びイソプレノールを含む底部流を得る工程を含む。
【0006】
一実施形態では、粗イソプレノールのイソプレノール含有留分は、第1の低沸点物分離塔で多量の水及び低沸点物が分離された粗イソプレノールである。そうすることで、第2の低沸点物分離塔で蒸留することにより、イソプレノール合成へのリサイクルに適した濃縮ホルムアルデヒド水溶液を得ることができる。従って、第2の態様では、プロセスは、
(i)粗イソプレノールの流れを、1.5bara以下の圧力で動作された第1の低沸点物分離塔に送り、イソプレノールとホルムアルデヒドを含む第1の底部流、及び水と低沸点物を含む第1の蒸留流を得る工程と、
(ii)第1の底部流を、2bara以上の圧力で動作された第2の低沸点物分離塔に送り、水性ホルムアルデヒドを含む第2の蒸留流、及びイソプレノールを含む第2の底部流を得る工程と、
(iii)第2の底部流を仕上げ塔に送り、蒸留流として純粋なイソプレノール、及び高沸点物を含む底部流を得る工程と、を含む。
【0007】
更に、イソプレノール、水及びホルムアルデヒドを含む粗イソプレノールの流れから、ホルムアルデヒドを本質的に含まないイソプレノールを回収するためのプラントが提供され、このプラントは、
- 粗イソプレノールの流れを受け取り、粗イソプレノールの流れを、イソプレノールとホルムアルデヒドを含む第1の底部流と、水と低沸点物を含む第1の蒸留流とに蒸留分離するように適合された第1の低沸点物分離塔と、
- 第1の低沸点物分離塔から第1の底部流を受け取り、第1の底部流を、水性ホルムアルデヒドを含む第2の蒸留流と、イソプレノールを含む第2の底部流とに蒸留分離するように適合された第2の低沸点物分離塔と、
- 第2の低沸点物分離塔から第2の底部流を受け取り、第2の底部流を、蒸留流として純粋なイソプレノールと、高沸点物を含む底部流とに蒸留分離するように適合された仕上げ塔と、を含む。
【0008】
アルコール水溶液からホルムアルデヒドを選択的に回収することは、非常に困難である。この困難さは、単量体ホルムアルデヒド(及び重合体ホルムアルデヒド)が、水との水和物、及びイソプレノールなどのアルコールとのヘミホルマールの両方を形成するということから生じる。ホルムアルデヒドの重合度が異なる水和物とヘミホルマールは、混在する沸点を有する。水和物とヘミホルマールの安定性とそれらの間の平衡は、温度に依存する。蒸留塔の上部領域で形成されたホルマールは、塔の高温の底部で分解する場合があり、これにより分離作業が更に複雑になる。
【0009】
しかしながら、ヘミホルマールがホルムアルデヒドとイソプレノールに開裂する温度で蒸留することにより、ホルムアルデヒドをイソプレノールから実質上完全に分離でき、その結果、ホルムアルデヒドをイソプレノールから容易に分離できることが判明した。
【0010】
特に、ホルムアルデヒドは、イソプレノールから実質上完全に分離されることができ、イソプレノール合成へのリサイクルに適した濃縮ホルムアルデヒド水溶液は、平衡がホルムアルデヒドとイソプレノールのヘミホルマール側にシフトし、その結果、本質的に全てのホルムアルデヒドが、蒸留塔の底部に残る温度での第1の蒸留と、ヘミホルマールがホルムアルデヒドとイソプレノールに開裂され、その結果、ホルムアルデヒドが、イソプレノールから容易に分離されることができる温度での第2の蒸留とを伴う蒸留列で得られることができることが判明した。
【0011】
これらの観察結果は、添付の三元プロット(ternary plot)で示されている。
【0012】
以下の説明は、本発明の第2の態様に焦点を当てる。第2の態様による「第2の低沸点物分離塔」、「水性ホルムアルデヒドを含む第2の蒸留流」、及び「イソプレノールを含む第2の底部流」に関する動作パラメータ並びに実施形態及び好ましい実施形態の説明は、本発明の第1の態様による「低沸点物分離塔」、「水性ホルムアルデヒドを含む蒸留流」、及び「イソプレノールを含む底部流」にも適用されることができることが理解される。
【0013】
イソプレノール-ホルムアルデヒドの解離温度よりも低い温度での第1の蒸留と、イソプレノール-ホルムアルデヒドの解離温度よりも高い温度での第2の蒸留を可能にするために、本発明は、第2の態様において異なる圧力で動作された2つの低沸点物分離塔を想定している。従って、第1の低沸点物分離塔に広がる比較的低い圧力で、水と、ホルムアルデヒドを本質的に含まない低沸点物とを含む第1の蒸留物が得られる。第2の低沸点物分離塔に広がる比較的高い圧力で、実質上全てのホルムアルデヒドが、イソプレノールから分離される。従って、本発明のプロセスにより、ホルムアルデヒドを本質的に含まないイソプレノールを得ることが可能になる。
【0014】
「ホルムアルデヒドを本質的に含まない」という用語は、得られた純粋なイソプレノールに有意な量のホルムアルデヒドが存在しないことを示すものと理解される。従って、得られた純粋なイソプレノールは、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満のホルムアルデヒドを含む。
【0015】
粗イソプレノール流は、イソプレノールと、水と、ホルムアルデヒドとを含む。好ましくは、粗イソプレノール流は、50~75重量%、より好ましくは60~65重量%のイソプレノールを含む。好ましくは、粗イソプレノール流は、15~40重量%、より好ましくは22~35重量%の水を含む。好ましくは、粗イソプレノール流は、1~5重量%、より好ましくは2~3重量%のホルムアルデヒドを含む。
【0016】
好ましくは、粗イソプレノール流は、液体流である。液体流は、単相液体流又は二相液体流であり得る。
【0017】
粗イソプレノール流は、一般に、未反応イソブチレンが除去されたイソプレノール生成プロセスの生成物流である。一実施形態では、このプロセスは、ホルムアルデヒドをイソブチレンと反応させて反応混合物を得る工程と、イソブチレン蒸留塔において反応混合物から未反応イソブチレンを除去して粗イソプレノールの流れを得る工程とを含む。
【0018】
ホルムアルデヒドは、超臨界条件下でイソブチレンと反応させることが好ましい。このような条件は、物質又は物質の混合物が、その物質又は混合物の熱力学的臨界点を超える温度及び圧力に曝された場合に存在する。超臨界条件下では、ホルムアルデヒドに対するイソブチレンの反応性が十分に高く、高選択性で高い変換が可能であることが判明した。
【0019】
超臨界条件を達成するために、ホルムアルデヒドとイソブチレンは、少なくとも220℃、例えば220~290℃の範囲の温度、及び少なくとも200バールの絶対圧力で反応させることが好ましい。特に明記しない限り、本明細書で引用される全ての圧力は、絶対圧力である。超臨界条件下でのホルムアルデヒドとイソブチレンとの反応に関する更なる詳細は、国際公開第2020/049111A1号パンフレットで見ることができる。
【0020】
更なる実施形態では、溶媒及び不均一系触媒の存在下で、ホルムアルデヒドをイソブチレンと反応させる。
【0021】
本発明によるプロセスは、第2の蒸留物がホルムアルデヒドの反応へのリサイクルに適しているという利点を有する。
【0022】
未反応のイソブチレンは、イソブチレン蒸留塔内で反応混合物から除去され、粗イソプレノールの流れが得られる。
【0023】
イソブチレンは、イソブチレン蒸留流として得られる。イソブチレン蒸留流は、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも85重量%のイソブチレンを含む。イソブチレン蒸留流は、好ましくはホルムアルデヒドとイソブチレンとの反応にリサイクルされる。
【0024】
粗イソプレノールは、イソブチレン蒸留管からの底部流として得られる。
【0025】
リサイクルされたイソブチレンに対する圧縮負荷を最小限にするために、イソブチレン蒸留塔は、4~15bara、好ましくは7~13baraの圧力で適切に動作される。本明細書に記載される塔及び管の全ての圧力は、別段の記載がない限り、塔又は管の上部における絶対圧力に関連すると理解される。イソブチレン蒸留塔は、5~40の理論段数、より好ましくは15~25の理論段数を有し得る。
【0026】
イソブチレン蒸留塔の底部温度は、一般に140~200℃、より好ましくは160~180℃の範囲である。イソブチレン蒸留塔の上部温度は、50~90℃の範囲が好ましく、60~80℃の範囲がより好ましい。
【0027】
特に好ましい実施形態では、イソブチレン蒸留塔は、7~13baraの範囲の圧力、160~180℃の範囲の底部温度、及び60~80℃の範囲の上部温度で動作される。
【0028】
上述の条件下では、イソブチレン蒸留塔で得られた粗イソプレノール流は、過熱状態にある。粗イソプレノール流は、第1の低沸点物分離容器に送られる前に減圧容器に送られることが好ましい。減圧容器では、粗イソプレノール流は、好ましくは第1の低沸点物分離塔の圧力まで減圧される。減圧容器内では、蒸気相と液相が得られ、これらは好ましくは別個のラインを介して第1の低沸点物分離塔に送られる。
【0029】
本発明の第2の態様によれば、粗イソプレノールは、1.5bara以下の圧力で動作された第1の低沸点物分離塔に送られる。任意の高圧の粗イソプレノール流は、第1の低沸点物分離塔に送られる前に解放されることが好ましい。粗イソプレノール流は、好ましくは、側流として第1の低沸点物分離塔に供給され、供給の位置の上に精留部を、供給の位置の下に除去部を画定する。
【0030】
第1の低沸点物分離塔では、イソプレノールとホルムアルデヒドを含む第1の底部流、及び水と低沸点物を含む第1の蒸留流が得られる。「低沸点物」という用語は、大気圧で、イソプレノールの沸点より低い沸点、従って約130℃未満の沸点を有する有機化合物(ホルムアルデヒド以外)を指すと理解される。最も一般的な低沸点物は、プロセス中に副生成物として形成されるメタノール及び/又はギ酸イソプレニルである。
【0031】
好ましい実施形態では、第1の低沸点物分離塔は、1.2bara以下、好ましくは0.5bara以下の圧力で動作される。第1の低沸点物分離塔の底部温度は、好ましくは80~135℃、より好ましくは90~115℃、最も好ましくは95~105℃の範囲である。第1の低沸点物分離塔の上部温度は、45~105℃の範囲が好ましく、55~80℃の範囲がより好ましい。
【0032】
特に好ましい実施形態では、第1の低沸点物分離塔は、0.2~0.5baraの範囲の圧力、90~115℃の範囲の底部温度、及び55~80℃の範囲の上部温度で動作される。
【0033】
第1の低沸点物分離塔は、好ましくは15~65の理論段数、より好ましくは25~40の理論段数を有する。特に、第1の低沸点物分離塔の除去部は、好ましくは10~25の理論段数を有する。第1の低沸点物分離塔の精留部は、好ましくは5~40の理論段数を有する。
【0034】
第1の底部流は、好ましくは75~95重量%、より好ましくは80~90重量%のイソプレノールを含む。
【0035】
第1の蒸留物は、典型的には、第1の低沸点物分離塔の上部でガス形態にて取り出され、凝縮されて液体二相流が得られる。液体二相流は、好ましくは分離容器中で相分離されて、水相と有機相を得る。水相は、好ましくは、後述の廃水除去管に通される。有機相は、還流流として第1の低沸点物分離塔の上部に部分的に戻されることが好ましい。有機相の別の一部は、第1の低沸点物分離塔における水不溶性の低沸点物の蓄積を避けるためにプロセスから廃棄されることが好ましい。
【0036】
好ましい実施形態では、第1の蒸留流の少なくとも一部は、廃水除去管に送られて、低沸点物及び一緒に運ばれたイソプレノールを水から分離する。好ましくは、廃水除去管に送られる第1の蒸留流の一部は、上で論じたように、第1の蒸留流の凝縮及び相分離によって得られた水相である。
【0037】
廃水除去管では、低沸点物が低沸点物蒸留流として得られ、廃水が底部流として得られる。低沸点物蒸留流と廃水底部流の両方がプロセスから除去され、各流れは更なる処理に送られることができる。
【0038】
更に、イソプレノールは、廃水除去管における側流として得られることが好ましい。イソプレノール側流は、典型的には二相流であり、好ましくは15~40重量%、より好ましくは25~35重量%のイソプレノールを含む。イソプレノール側流は、好ましくは第1の低沸点物分離塔にリサイクルされる。
【0039】
低沸点物蒸留流は、好ましくは75~95重量%、より好ましくは80~85重量%の低沸点物を含む。
【0040】
廃水底部流は、好ましくは1.2重量%未満、より好ましくは0.6重量%未満の有機物を含む。廃水底部流は、典型的には、0.05~1.5重量%、例えば0.3~0.9重量%のホルムアルデヒドの濃度でホルムアルデヒドを含む。
【0041】
廃水除去管は、好ましくは1.5bara以下、好ましくは1.1bara以下の圧力で動作される。廃水除去管の底部温度は、95~110℃の範囲が好ましく、97~103℃の範囲がより好ましい。廃水除去管の上部温度は、65~100℃の範囲が好ましく、75~85℃の範囲がより好ましい。
【0042】
特に好ましい実施形態では、廃水除去管は、0.95~1.1baraの範囲の圧力、97~103℃の範囲の底部温度、及び75~85℃の範囲の上部温度で動作される。
【0043】
廃水除去管は、好ましくは6~30の理論段数、より好ましくは10~20の理論段数を有する。
【0044】
第2の態様によれば、第1の低沸点物分離塔で得られた第1の底部流は、2バール以上、好ましくは2.5バール以上の圧力で動作された第2の低沸点物分離塔に送られる。第1の底部流は、好ましくは、側流として第2の低沸点物分離塔に供給され、供給の位置の上に精留部を、供給の位置の下に除去部を画定する。
【0045】
第2の低沸点物分離塔では、水性ホルムアルデヒドを含む、又はこれから本質的になる第2の蒸留流、及びイソプレノールを含む第2の底部流が得られる。第2の底部流は、高沸点物を更に含む。「高沸点物」という用語は、大気圧で、イソプレノールの沸点より高い、即ち、約130℃より高い沸点を有する有機化合物を指すと理解される。最も一般的な高沸点物は、プロセス中に副生成物として形成されるジオール及び/又はオリゴマーである。
【0046】
好ましい実施形態では、第2の低沸点物分離塔は、2.5bara以上、好ましくは2.8bara以上、最も好ましくは2.9bara以上の圧力で動作される。第2の低沸点物分離塔の底部温度は、好ましくは160~200℃、より好ましくは170~185℃、最も好ましくは175~180℃の範囲である。第2の低沸点物分離塔の上部温度は、115~160℃の範囲が好ましく、125~145℃の範囲がより好ましい。
【0047】
特に好ましい実施形態では、第2の低沸点物分離塔は、2.9~3.5baraの範囲の圧力、175~180℃の範囲の底部温度、及び130~140℃の範囲の上部温度で動作される。
【0048】
第2の低沸点物分離塔は、好ましくは20~60、より好ましくは35~60の理論段数を有する。特に、第1の低沸点物分離塔の除去部は、好ましくは25~45の理論段数を有する。第1の低沸点物分離塔の精留部は、好ましくは7~20の理論段数を有する。
【0049】
第2の低沸点物分離塔の上部では、典型的には、オフガスが得られる。オフガスは、窒素を主に含み、微量のイソプレノール、ギ酸、水、ホルムアルデヒド、及び/又は分解ガスを含む場合がある。
【0050】
第2の底部流は、好ましくは82~96重量%、より好ましくは87~91重量%のイソプレノールを含む。第2の低沸点物分離塔の比較的高い圧力により、ホルムアルデヒドとイソプレノールを高度に分離できる。従って、第2の底部流は、好ましくは多くとも0.5重量%、より好ましくは多くとも0.1重量%のホルムアルデヒドを含む。
【0051】
第2の蒸留流は、水性流であり、好ましくは25~60重量%、より好ましくは40~50重量%、特に45~50重量%のホルムアルデヒドを含む。第2の蒸留流は、好ましくは多くとも15重量%、より好ましくは多くとも5重量%のイソプレノールを含む。
【0052】
第2の低沸点物分離塔の上部で現れる蒸気の凝縮曲線が広いため、液体をリサイクルする凝縮器を使用することが有利である。液体循環を伴う急冷での直接凝縮は、特に有利である。従って、このプロセスの好ましい実施形態では、第2の低沸点物分離塔の精留部の下流において蒸気流方向に急冷部が設けられる。「蒸気流方向」という用語は、分離塔内のガス成分の流れの方向、即ち、塔の上部に向かう上向きに関する。急冷部は、精留部の上の第2の低沸点物分離塔内に設けられることが好ましい。
【0053】
又、急冷での直接凝縮により、局所的なホルムアルデヒド濃度が高い箇所で発生する可能性のあるホルムアルデヒドの様々な凝縮及び重合メカニズムによって引き起こされる汚れも軽減される。第2の低沸点物分離塔及び下流プロセス、特に第2の低沸点物分離塔のオフガスにおける汚れの危険性を回避するために、第2の蒸留物中のホルムアルデヒドの濃度は、好ましくは60重量%以下、より好ましくは55重量%以下、特に50重量%以下である。
【0054】
急冷部の下端では、水性液体が収集される。急冷部が第2の低沸点物分離塔内に設けられている場合、水性液体は、例えば、精留部の上の及び急冷部の下の収集トレイで収集されることができる。
【0055】
水性液体は、循環ラインを通って急冷部に部分的に循環され、第2の蒸留物として部分的に取り出される。適切には、急冷部に循環された水性液体の一部は、急冷部の上部に循環される。水性液体の循環は、典型的にはポンプの使用によって達成される。上で述べたように、第2の蒸留物は、任意でホルムアルデヒドとイソブチレンの反応に少なくとも部分的にリサイクルされることができる。
【0056】
水性液体の一部を急冷部に循環させることにより、急冷部を通って上昇する蒸気の冷却、及び蒸気から水性液体へのホルムアルデヒドの吸収が可能になる。従って、ホルムアルデヒドは、急冷部を通って上昇する蒸気から急冷される。
【0057】
更に、水性液体は、還流流として第2の低沸点物分離塔の精留部に部分的に戻される。これは、還流ラインによって達成されることができる、又は水性液体は、急冷部の下の収集トレイからのオーバーフローとして精留部に部分的に戻されることができる。
【0058】
還流流対第2の蒸留物の質量流量比は、好ましくは2:1~10:1の範囲、より好ましくは3:1~7:1の範囲である。
【0059】
好ましい実施形態では、水性液体は、急冷部に循環される前に冷却される。好ましくは、第2の蒸留物として取り出される水性液体の一部は、冷却された水性液体の部分流である。
【0060】
急冷部の下端で収集される水性液体の温度は、好ましくは80~140℃、より好ましくは125~135℃の範囲である。急冷部に循環された冷却された水性液体の温度は、急冷部の下端で収集された水性液体の温度よりも10~80℃低いことが好ましい。これにより、エネルギー的に有利なプロセスが可能になる。
【0061】
急冷部の下端で取り出された熱い水性液体は、熱統合に役立つ。適切な実施形態では、それは、急冷部に循環される前に、第1の低沸点物分離塔に流入する粗イソプレノールの流れと熱交換される。
【0062】
一実施形態では、スクラブ部(scrubbing section)が、急冷部の下流において蒸気流方向に設けられ、水が、スクラブ部の上部に導入される。好ましくは、スクラブ部は、急冷部の上の第2の低沸点物分離塔内に設けられる。スクラブ部により、第2の蒸留物中のホルムアルデヒド濃度を上述の臨界濃度未満に維持することができ、従って例えば、オフガスラインなどで、パラホルムアルデヒドの堆積を回避する。
【0063】
スクラブ部の上部で導入された水と、第1の低沸点物分離塔で得られた第1の底部流との質量流量比は、典型的には0.01:1~0.06:1の範囲であり、より好ましくは0.015:1~0.03:1の範囲である。
【0064】
第2の態様によれば、第2の底部流は、仕上げ塔に送られ、そこで、純粋なイソプレノールが、蒸留流として得られる。高沸点物は、底部流を介して取り出される。第2の底部流はホルムアルデヒドを本質的に含まないので、仕上げ塔の分離作業は、低沸点物分離部でのホルムアルデヒド分離の効率が低い場合に比べて大幅に複雑ではない。
【0065】
純粋なイソプレノール蒸留流は、好ましくは少なくとも97.0重量%、より好ましくは98.0重量%、例えば98.1~99.5重量%のイソプレノールを含む。好ましくは、純粋なイソプレノール蒸留流は、0.5重量%未満、例えば0.1重量%未満又は0.01重量%未満のホルムアルデヒドを含む。
【0066】
高沸点物底部流は、好ましくは90~99.9重量%、より好ましくは99~99.8重量%の高沸点物を含む。好ましくは、高沸点物底部流は、0.2重量%未満のホルムアルデヒド、例えば0.05重量%未満のホルムアルデヒドを含む。
【0067】
好ましい実施形態では、仕上げ塔は、0.5bara以下、好ましくは0.25bara以下の圧力で動作される。第1の低沸点物分離塔の底部温度は、130~190℃の範囲が好ましく、150~170℃の範囲がより好ましい。仕上げ塔の上部温度は、60~90℃の範囲が好ましく、65~85℃の範囲がより好ましい。
【0068】
特に好ましい実施形態では、仕上げ塔は、0.05~0.2baraの範囲の圧力、150~170℃の範囲の底部温度、及び65~85℃の範囲の上部温度で動作される。
【0069】
仕上げ塔は、好ましくは6~40の理論段数、より好ましくは10~20の理論段数を有する。
【0070】
本発明のプロセス及びプラントで使用された塔及び管は、従来の蒸留管であり得る。蒸留管の適切な種類には、充填された管、例えば、ランダム充填又は構造化充填での管など、プレート管(plate column)(即ち、トレイ管(tray column))、及び充填材とトレイの両方を含む混合管が含まれる。
【0071】
適切なプレート管は、それに渡り液相が流れる内部構造を含み得る。適切な内部構造には、シーブトレイ、バブルキャップトレイ、バルブトレイ、トンネルトレイ及びThormann(登録商標)トレイ、特にバブルキャップトレイ、バルブトレイ、トンネルトレイ及びThormann(登録商標)トレイが含まれる。
【0072】
ランダム充填された管は、様々な成形体で充填されることができる。熱と物質の伝達は、通常25~80mmの範囲のサイズを有する成形体によって表面積を拡大することによって改善される。適切な成形体には、ラシヒリング(中空シリンダー)、レッシング(Lessing)リング、ポールリング、ハイフロー(Hiflow)リング、及びインタロックス(Intalox)サドルが含まれる。充填材料は、規則的又は不規則な方式で(バルク材料として、即ち、緩く充填されて)管内に提供され得る。適切な材料には、ガラス、セラミック、金属及びプラスチックが含まれる。
【0073】
構造化充填材は、規則的充填材を発展させたもので、規則的成形構造体を有する。これにより、ガス流の圧力損失を低減できる。適切な種類の構造化充填材には、布地充填材及び金属シート充填材が含まれる。
【0074】
管の「上部」又は「ヘッド」という用語は、最上部のトレイの上に又は充填材の最上部の層の上に位置する内部物質を含まない領域を指す。これは一般に、蒸留管の終端要素を形成するドーム型の基部(ヘッド、例えば、Kloepperヘッド又はKorbbogenヘッド)によって形成される。
【0075】
管の「底部」又は「水だめ(sump)」という用語は、最下部のトレイの下に又は最下部の充填材の層の下に位置する内部物質を含まない領域を指す。
【0076】
本発明のプロセスは、連続的に又はバッチ式で実施することができる。好ましくは、本発明のプロセスは、連続的に実施される。
【0077】
本発明は更に、イソプレノール、水及びホルムアルデヒドを含む粗イソプレノールの流れから、ホルムアルデヒドを本質的に含まないイソプレノールを回収するためのプラントに関し、このプラントは、
- 粗イソプレノールの流れを受け取り、粗イソプレノールの流れを、イソプレノールとホルムアルデヒドを含む第1の底部流と、水と低沸点物を含む第1の蒸留流とに蒸留分離するように適合された第1の低沸点物分離塔と、
- 第1の低沸点物分離塔から第1の底部流を受け取り、第1の底部流を、水性ホルムアルデヒドを含む第2の蒸留流と、イソプレノールを含む第2の底部流とに蒸留分離するように適合された第2の低沸点物分離塔と、
- 第2の低沸点物分離塔から第2の底部流を受け取り、第2の底部流を、蒸留流として純粋なイソプレノールと、高沸点物を含む底部流とに蒸留分離するように適合された仕上げ塔と、を含む。
【0078】
本発明のプロセスについて上記で説明された実施形態は、適用可能な場合に、本発明のプラントにも関することが理解される。
【0079】
好ましい実施形態では、プラントの第2の低沸点物分離塔は、
- 第2の低沸点物分離塔の精留部の上の急冷部であって、第2の低沸点物分離塔は、急冷部の下端で第2の蒸留物を収集し、第2の蒸留物を、循環ラインを通り急冷部に部分的に循環させるように設計されている急冷部と、
- 急冷部の上のスクラブ部及びスクラブ部の上部の水注入口と、を含む。
【0080】
好ましい実施形態では、プラントの第2の低沸点物分離塔は、水性液体が急冷部に循環される前に、水性液体を冷却剤流と熱交換するように設計された間接熱交換器を含む。プロセスに固有の適切な冷却剤流は、例えば、第1の低沸点物分離塔に送られた粗イソプレノールの流れである。
【0081】
或いは、第1の低沸点物分離塔の底部液体を、間接熱交換器を通して循環させることができる。 これにより、第1の低沸点物分離塔の蒸発器の加熱負荷が低減される。
【0082】
好ましい実施形態では、プラントは、流体反応混合物を受け取るように適合され、粗イソプレノールの液体流を第1の低沸点物分離塔に導くように適合されたイソブチレン蒸留塔を含む。
【0083】
好ましい実施形態では、プラントは、流体反応混合物を得るためにホルムアルデヒドとイソブチレンとの高圧反応に適合され、流体反応混合物をイソブチレン蒸留塔に導くように適合された反応器を含む。
【0084】
好ましい実施形態では、プラントは、第1の低沸点物分離管から第1の蒸留流を受け取るように適合された廃水除去塔を含む。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】本発明によるプラントにおいて本発明による粗イソプレノールの流れからイソプレノールを回収するプロセスを概略的に示す。
【
図2】本発明によるプロセスで使用され、本発明によるプラントに存在する第2の低沸点物分離塔の好ましい実施形態を概略的に示す。
【
図3】粗イソプレノールの流れからイソプレノールを回収する既知のプロセスを概略的に示す。
【
図4a】異なる圧力におけるイソプレノール、ホルムアルデヒド、及び水の混合物の三元プロットを示す。
【
図4b】異なる圧力におけるイソプレノール、ホルムアルデヒド、及び水の混合物の三元プロットを示す。
【
図4c】異なる圧力におけるイソプレノール、ホルムアルデヒド、及び水の混合物の三元プロットを示す。
【
図5】異なる温度におけるイソプレノールとホルムアルデヒドの混合物の相対揮発性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
図1によれば、イソプレノール、水及びホルムアルデヒドを含む粗イソプレノールの流れ(101)は、1.5bara以下の圧力で動作された第1の低沸点物分離塔(102)に送られる。イソプレノールとホルムアルデヒドを含む第1の底部流(103)、及び水と低沸点物を含む第1の蒸留流(104)が得られる。
【0087】
第1の底部流(103)は、2bara以上の圧力で動作された第2の低沸点物分離塔(105)に送られる。水性ホルムアルデヒドを含む第2の蒸留流(106)、及びイソプレノールを含む第2の底部流(107)が得られる。
【0088】
第2の底部流(107)は、仕上げ塔(108)に送られる。純粋なイソプレノールが蒸留流(109)として得られる。更に、高沸点物を含む底部流(110)が得られる。
【0089】
図2によれば、第1の底部流は、ライン(201)を介して、2bara以上の圧力で動作された第2の低沸点物分離塔(202)に送られる。流れ(201)の供給の位置は、破線で示される、供給の位置の上に精留部(203)を、供給の位置の下に除去部(204)を画定する。
【0090】
急冷部(205)は、第2の低沸点物分離塔(202)の精留部の下流において、具体的には精留部の上の第2の低沸点物分離塔内にて蒸気流方向に設けられる。取り付け物(206)、例えば、プレートが、精留部(203)と急冷部(205)の間に配置される。
【0091】
水性液体は、ライン(207)を介して急冷部(205)の下端で収集される。水性液体は、循環ライン(208)を通して急冷部(205)の上部に部分的に循環され、ライン(209)を介して第2の蒸留物として部分的に取り出される。水性液体の別の一部は、還流ライン(210)を介して還流流として精留部に戻される。
【0092】
急冷部(205)の上部に循環された水性液体の一部は、熱交換器(211)を通過し、この熱交換器は、水性液体が第1の低沸点物分離塔(
図2には示されていない)に流入する粗イソプレノールの流れと熱交換されるように好ましくは適合される。
【0093】
更に、スクラブ部(212)が、急冷部(205)の下流において蒸気流方向に設けられ、スクラブ部の上部には水注入口(213)を通して水が導入される。
【0094】
第2の低沸点物分離塔(202)の上部では、オフガスがガスライン(214)を介して除去される。第2の低沸点物分離塔(202)の底部では、第2の底部流が、ライン(215)を介して取り出される。
【0095】
図3によれば、イソプレノール、水及びホルムアルデヒドを含む粗イソプレノールの流れ(301)は、1.5bara以下の圧力で動作された低沸点物分離塔(302)に送られる。水と低沸点物を含む蒸留流(304)、及びイソプレノールとホルムアルデヒドを含む底部流(303)が得られる。
【0096】
底部流(304)は、仕上げ塔(305)に送られる。イソプレノールは、蒸留流(306)として得られる。更に、高沸点物を含む底部流(307)が得られる。
【0097】
図4a~4cでは、0.1バール(
図4a)、1バール(
図4b)及び3バール(
図4c)におけるイソプレノール、ホルムアルデヒド及び水の混合物の三元プロット。3つの側に沿って、三元プロットは、イソプレノール、ホルムアルデヒド及び水のモル比を示す。例えば、右手側に沿って、ホルムアルデヒドとイソプレノールのモル比(x
FA)が示される。
【0098】
曲線は、残留物曲線である。各残留物曲線は、イソプレノール、ホルムアルデヒド及び水の量が変動する異なる供給組成を表す。残留物曲線のプロットは、蒸留管における液体残留物の組成、即ち、蒸留管の底部(高温)から上部(低温)に続く。示されている三元プロットでは、即ち、より高い温度まで残留物曲線をたどると、蒸留管の底部の組成が示される。より低い温度まで残留物曲線をたどると、蒸留管の上部の組成が示される。
【0099】
図4aの三元プロット(圧力0.1バール)では、沸点43.7℃の水-イソプレノールヘテロ共沸混合物(HA)が発生する。イソプレノールと全てのホルムアルデヒドとを含む沸点77.1℃の高沸点共沸混合物(SSA)が発生する。
【0100】
図4bの三元プロット(圧力1バール)では、水-イソプレノールヘテロ共沸混合物(HA)は、96.0℃の沸点を有する。更に、水-ホルムアルデヒドの低沸点共沸混合物(LSA)が発生する(98.3℃)。
図4aの三元プロット(0.1バール)で観察されるようなイソプレノールとホルムアルデヒドの高沸点共沸混合物(SSA)は発生しない。むしろ、イソプレノール(130.3℃)は、高沸点留分を表す。
【0101】
図4cの三元プロット(圧力3バール)では、水-イソプレノールヘテロ共沸混合物(HA)は、129.2℃の沸点を有する。水-ホルムアルデヒドの低沸点共沸混合物(LSA)の沸点は、128.0℃にシフトし、ホルムアルデヒド濃度が高くなる。蒸留管の底部では、イソプレノールは、ホルムアルデヒドを本質的に含まないことがわかる(169.1℃)。
【0102】
図5は、実験データから当てはめられたイソプレノールとホルムアルデヒドの混合物中のホルムアルデヒドの相対揮発性を示している。
という用語は、気相中のホルムアルデヒドのモル分率を示す。x
FAという用語は、液相中のホルムアルデヒド(ヘミホルマールとして結合されたホルムアルデヒドを含む)のモル分率を示す。x
FAに対する
の比で示されるように、ホルムアルデヒドの相対揮発性は、温度が高くなるほど増加することは明らかである。
【0103】
特に、120℃(393K)では、相対揮発性が、0.95~1.2をわずかに超える範囲にあることがわかる。温度を下げると、相対揮発性が低下する、293K、313K、及び333Kでの曲線を参照されたい。ホルムアルデヒドの相対揮発性が高いほど、イソプレノールからの低沸点留分としてのホルムアルデヒドの分離度が高くなる。
【実施例】
【0104】
実施例1
この実施例は、除去部での理論段数27、及び精留部での理論段数13を有する低沸点物分離塔における、98重量%のイソプレノールと2重量%のホルムアルデヒド(FA)とを含む液体からの蒸留ホルムアルデヒドの除去のシミュレーションに関する。液体が100kg/時で低沸点物分離塔に供給された。低沸点物分離塔の上部で、ホルムアルデヒド水溶液を含む蒸留物が得られ、その35kg/時を還流流として低沸点物分離塔の上部に戻した。蒸留物中のホルムアルデヒド対水の重量比が1:1(ホルムアルデヒド47.5重量%及び水47.5重量%)となるように水を低沸点物分離管の上部に添加した。蒸留物中のイソプレノール濃度は、5重量%であった。
【0105】
このプロセスは、CHEMASIMを介してシミュレートされた(そのオープンソースバージョン(open source version)は、OPEN CHEMASIM(商標)として入手可能である;H.Hasse,B.Bessling,R.Boettcher,OPEN CHEMASIM(商標)を参照:Breaking Paradigms in Process Simulation;Editor(s):W.Marquardt,C.Pantelides,Computer Aided Chemical Engineering,Elsevier,Volume 21,2006,Pages 255-260,https://doi.org/10.1016/S1570-7946(06)80055-6)。
【0106】
塔の動作は、圧力を変えてシミュレートされ、それに応じて底部温度を変えた。結果を次の表に示す。
【0107】
【0108】
2baraを超える圧力での蒸留により、実質上完全なFAの除去及び高純度でのイソプレノールの回収が可能になることは明らかである。
【0109】
実施例2(比較)
図3に示すプロセスでは、イソプレノール(66重量%)、水(22重量%)及びホルムアルデヒド(1.7重量%)を含む粗イソプレノールの流れ(0.98kg/時)が、低沸点物分離塔に送られた。更に、イソプレノール、水及びホルムアルデヒドを含む、廃水除去管(
図3には示されていない)からのイソプレノールリサイクル流(0.02kg/時)が、低沸点物分離塔に送られた。
【0110】
低沸点物分離塔は、圧力1bara、底部温度130℃、及び上部温度97℃で動作された。水(83重量%)、イソプレノール(7重量%)及び低沸点物(10重量%)を含む蒸留流(0.28kg/時)、並びにイソプレノール(87重量%)、ホルムアルデヒド(2.4重量%)及び高沸点物(11重量%)を含む底部流(0.72kg/時)が得られた。蒸留流は、更なる処理のために廃水除去管に送られた。
【0111】
底部流は、0.1bara、底部温度154℃、及び上部温度72℃で動作された仕上げ塔に送られた。99.5重量%を超える高沸点物(ジオール及びオリゴマー)を含む底部流(0.07kg/時)が得られた。
【0112】
仕上げ塔の上部から取り出されたガス流を凝縮器で凝縮して、凝縮液流(1.60kg/時)を得た。凝縮液の一部(1.0kg/時)を還流として仕上げ塔に戻した。凝縮液の残り(0.65kg/時)を蒸留物として取り出した。蒸留物は、イソプレノール及び2.7重量%のホルムアルデヒドを含んだ。
【0113】
廃水除去管では、側流としてイソプレノールリサイクル流が得られ、低沸点物分離塔にリサイクルされた。
【0114】
実施例3
図1に示すプロセスでは、イソプレノール(67重量%)、水(19重量%)及びホルムアルデヒド(1.9重量%)を含む粗イソプレノールの流れ(1.07kg/時)は、第1の低沸点物分離塔に送られた。更に、廃水除去塔(
図1には示されていない)からのイソプレノールリサイクル流は、低沸点物分離管に送られた。実施例1に関して説明したように、プロセスは、CHEMASIMを介してシミュレートされた。
【0115】
第1の低沸点物分離塔は、圧力0.3bara、底部温度103℃、及び上部温度67℃で動作された。水(86重量%)、イソプレノール(12重量%)及び低沸点物(2重量%)を含む蒸留流(0.24kg/時)、並びにイソプレノール(83重量%)、ホルムアルデヒド(2.3重量%)及び高沸点物(14.4重量%)を含む底部流(0.85kg/時)が得られた。
【0116】
第1の底部流は、
図2に示される第2の低沸点物分離塔に送られ、圧力3bara、底部温度173℃、及び上部温度130℃で動作された。精留部の上に急冷部を設けた。回収トレイを精留部と急冷部の間に配置した。更に、急冷部の上にスクラブ部を設け、水注入口を通してスクラブ部の上部に水(0.02kg/時)を導入した。
【0117】
水性液体(15kg/時)を収集トレイを介して急冷部の下端で収集した。水性液体は、ホルムアルデヒド(48重量%)と、水(約45重量%)と、イソプレノール(約7重量%)とを含んだ。水性液体を循環ラインを通して急冷部の上部に部分的に循環させ(14.7kg/時)、第2の蒸留物として部分的に取り出した(0.04kg/時)。水性液体の別の一部を、還流ラインを介して還流流(0.23kg/時)として精留部に戻した。
【0118】
急冷部の上部に循環された水性液体は、熱交換器を通過した。熱交換器において、水性液体は、第1の低沸点物蒸留塔の蒸発器への供給流と熱交換された。水性液体を125℃から111℃まで冷却した。
【0119】
第2の低沸点物分離塔の上部では、オフガス(<0.01kg/時)がガスラインを介して除去された。第2の低沸点物分離塔の底部では、イソプレノール(85.2重量%)、水(0.1重量%未満)、高沸点物(14.7重量%)及びホルムアルデヒド(0.1重量%未満)を含む第2の底部流(0.83kg/時)が取り出された。
【0120】
第2の底部流は、0.1bara、底部温度154℃、及び上部温度72℃で動作された仕上げ塔に送られた。高沸点物(0.4重量%未満のイソプレノールを含む)を含む底部流(0.07kg/時)が得られた。
【0121】
仕上げ塔の上部では、流体流(約1.1kg/時)が、凝縮器内で凝縮された。凝縮液は、イソプレノールと0.1重量%未満のホルムアルデヒドを含んだ。凝縮液の一部(約0.4kg/時)を還流として仕上げ塔に戻した。凝縮液の残り(0.72kg/時)を第2の蒸留物として取り出した。非凝縮性成分を除けば、ホルムアルデヒドをパージするための更なるオフガス流は必要なかった。
【0122】
比較例2と実施例3の比較から、本発明のプロセスにより、イソプレノールと、水と、ホルムアルデヒドとを含む流れからイソプレノールを回収できることが明らかである。
【国際調査報告】