IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニーの特許一覧

特表2024-510263高品質シリコン酸化薄膜の原子層堆積用組成物
<>
  • 特表-高品質シリコン酸化薄膜の原子層堆積用組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】高品質シリコン酸化薄膜の原子層堆積用組成物
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/42 20060101AFI20240228BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20240228BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240228BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C23C16/42
C07F7/10 F
H01L21/31 B
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556968
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-10-17
(86)【国際出願番号】 US2022017475
(87)【国際公開番号】W WO2022197410
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/200,629
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517114182
【氏名又は名称】バーサム マテリアルズ ユーエス,リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】ハリピン チャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ジー.マヨルガ
(72)【発明者】
【氏名】シンチエン レイ
【テーマコード(参考)】
4H049
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ39
4H049VR13
4H049VR51
4H049VU36
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA11
4K030AA14
4K030AA18
4K030BA44
4K030DA08
4K030DA09
4K030EA01
4K030EA03
4K030JA09
4K030JA10
4K030LA02
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB32
5F045AC07
5F045AC11
5F045AD04
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045AE25
5F045EE19
5F058BC02
5F058BC04
5F058BF04
5F058BF22
5F058BF29
5F058BF37
(57)【要約】
温度600℃未満の酸化シリコンの原子層堆積(ALD)プロセスが開示されている。使用されるケイ素前駆体は、式:式I:HSiNRを有し、式中、R及びRは、それぞれ独立して、C1~10直鎖アルキル基、C3~10分枝アルキル基、C3~10環状アルキル基、C2~10アルケニル基、C4~10芳香族基、C4~10複素環基から選択され、但し、R及びRが、両方ともC1~2直鎖アルキル基又はC分枝アルキル基であることはできず、少なくとも1つのシリコン前駆体は、ハロゲン化合物、金属イオン、金属、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の不純物を実質的に含まない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高品質のシリコン酸化膜を成膜する方法であって、
a.反応器に基材を供給する工程と、
b.前記反応器に少なくとも1つのシリコン前駆体を導入する工程であって、前記少なくとも1つのシリコン前駆体が、HSiNRによって表される構造を有し、式中、R及びRが、それぞれ独立して、C1~10直鎖アルキル基、C3~10分枝アルキル基、C3~10環状アルキル基、C2~10アルケニル基、C4~10芳香族基、C4~10複素環基から選択され、但し、R及びRが、両方ともC1~2直鎖アルキル基又はC分枝アルキル基であることはできず、前記少なくとも1つのシリコン前駆体が、ハロゲン化合物、金属イオン、金属、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の不純物を実質的に含まない、工程と、
c.前記反応器をパージガスでパージする工程と、
d.酸素源を前記反応器に導入する工程と、
e.前記反応器をパージガスでパージする工程と、
を含み、
工程bからeが、所望の厚さが成膜されるまで繰り返され、プロセス温度が20℃以上600℃以下の範囲であり、前記反応器内の圧力が、50ミリTorr(mT)以上760Torr以下の範囲である、
方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのシリコン前駆体が、ジ-sec-ブチルアミノシラン、ジ-tert-ブチルアミノシラン、フェニルメチルアミノシラン、フェニルエチルアミノシラン、シクロヘキサメチルアミノシラン、シクロヘキサエチルアミノシラン、2,6-ジメチルピペリジノシラン、2,5-ジメチルピロリルシラン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリコン前駆体中の前記ハロゲン化合物が、塩化化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記塩化化合物が、存在する場合、ICによって測定して10ppm以下の塩化物濃度で存在する、請求項3に記載のシリコン前駆体。
【請求項5】
前記塩化化合物が、存在する場合、ICによって測定して5ppm以下の塩化物濃度で存在する、請求項3に記載のシリコン前駆体。
【請求項6】
前記塩化化合物が、存在する場合、ICによって測定して1ppm以下の塩化物濃度で存在する、請求項3に記載のシリコン前駆体。
【請求項7】
前記パージガスが、窒素、ヘリウム、及びアルゴンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記酸素源が、酸素、過酸化物、酸素プラズマ、水蒸気、水蒸気プラズマ、過酸化水素、及びオゾン源からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法により製造された、シリコン酸化膜。
【請求項10】
前記膜が、2.5MW/cmで約2.0e-8A/cm以下、又は2.5MV/cmで約2.0e-9A/cm以下、又は2.5MV/cmで約1.0e-9A/cm以下のリーク電流を有する、請求項9に記載のシリコン酸化膜。
【請求項11】
少なくとも1つのシリコン前駆体を含む高品質シリコン酸化膜を成膜するための組成物であって、前記少なくとも1つのシリコン前駆体が、HSiNRによって表される構造を有し、式中、R及びRが、それぞれ独立して、C1~10直鎖アルキル基、C3~10分枝アルキル基、C3~10環状アルキル基、C2~10アルケニル基、C4~10芳香族基、C4~10複素環基から選択され、但し、R及びRが、両方ともC1~2直鎖アルキル基又はC分枝アルキル基であることはできず、前記少なくとも1つのシリコン前駆体が、ハロゲン化合物、金属イオン、金属、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の不純物を実質的に含まない、組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1つのシリコン前駆体が、ジ-sec-ブチルアミノシラン、ジ-tert-ブチルアミノシラン、フェニルメチルアミノシラン、フェニルエチルアミノシラン、シクロヘキサメチルアミノシラン、シクロヘキサエチルアミノシラン、2,6-ジメチルピペリジノシラン、2,5-ジメチルピロリルシラン及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記シリコン前駆体中の前記ハロゲン化合物が、塩化化合物を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記塩化化合物が、存在する場合、ICによって測定して10ppm以下の塩化物濃度で存在する、請求項13に記載のシリコン前駆体。
【請求項15】
前記塩化化合物が、存在する場合、ICによって測定して5ppm以下の塩化物濃度で存在する、請求項13に記載のシリコン前駆体。
【請求項16】
前記塩化化合物が、存在する場合、ICによって測定して1ppm以下の塩化物濃度で存在する、請求項13に記載のシリコン前駆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載されるものは、高品質のシリコン酸化膜を形成するための組成物である。より具体的には、本明細書に記載されるものは、原子層堆積(ALD)プロセスを使用して、約600℃以下の1つ以上の成膜温度でシリコン酸化膜を形成するための組成物及び方法である。
【背景技術】
【0002】
-SiH部分を含む有機アミノシランは、限定されないが、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜又はそれらのドープされたバージョンなどの、シリコン含有膜の成膜のための望ましい前駆体である。例えば、限定されないが、有機アミノシラン、有機アミノジシラン、及び/又は有機アミノカルボシランなどの揮発性化合物は、半導体デバイスの製造において、シリコン含有膜の成膜に使用される重要な前駆体である。有機アミノシラン化合物の特定の実施形態には、ジイソプロピルアミノシラン(DIPAS)及びジ-sec-ブチルアミノシラン(DSBAS)が含まれ、これらの化合物は、このような膜の制御された成膜に望ましい物理的特性を示すことが以前に示されている。
【0003】
先行技術には、有機アミノシラン化合物を製造するための幾つかの方法が記載されている。日本特許JP49-1106732には、ロジウム(Rh)錯体の存在下、イミンとヒドリドシランを反応させて、シリルアミンを調製する方法が記載されている。調製された例示的なシリルアミンとしては、PhCHN(Me)SiEt、PhCHN(Me)SiHPh、PhCHN(Ph)SiEt、及びPhMeCHN(Ph)SiHEtが挙げられ、式中、「Ph」はフェニルを意味し、「Me」はメチルを意味し、「Et」はエチルを意味する。
【0004】
米国特許第6,072,085号は、イミン、求核活性剤、シラン及び金属触媒を含む反応混合物から第二級アミンを調製する方法を記載している。触媒は、ヒドロシリル化反応によるイミンの還元を触媒する。
【0005】
本出願の譲受人が所有する米国特許第6,963,003号は、式RNHを有する第二級アミン、式RNHを有する第一級アミン又はこれらの組み合わせからなる群から選択される化学量論的に過剰の少なくとも1種のアミンを、式R SiCl4-nを有する少なくとも1種のクロロシランと、アミノシラン生成物とアミン塩酸塩とを含む液体がされるような十分な無水条件下で反応させることを含む有機アミノシラン化合物の調製方法を提供し、式中、R及びRは、それぞれ独立して、1個以上20個以下の炭素原子を有する直鎖状、環状又は分枝状のアルキル基であってもよく、Rは、水素原子、アミン基、又は1個以上20個以下の炭素原子を有する直鎖状、環状又は分枝状のアルキル基であってもよく、nは1以上3以下の数字である。
【0006】
本出願の譲受人が所有する米国特許第7,875,556号には、溶媒の存在下でアリールシランと酸を反応させ、第二級アミン及び第三級アミンを添加し、相分離で反応副生成物を除去し、蒸留で溶媒を除去することによる、有機アミノシランの製造方法が記載されている。
【0007】
本出願の譲受人が所有する米国特許出願公開第2012/0277457号には、以下の式、
SiNR
を有する有機アミノシラン化合物の製造方法が記載されており、式中、
及びRは、それぞれ独立して、C~C10の直鎖状、分枝状又は環状の、飽和又は不飽和の、芳香族基、複素環式基、置換又は非置換のアルキル基から選択され、R及びRは、連結して環状基を形成するか、R及びRは、連結せず環状基を形成しておらず、前記方法は、nが0、1、又は2であり、XがCl、Br、又はClとBrの混合である式HSiX4-nを有するハロシランを、アミンと反応させて、nが1、2、及び3から選択される数であり、XがCl、Br、又はClとBrの混合から選択されるハロゲンであるハロアミノシラン化合物X4-nn-1SiNRを含むスラリーを提供する工程と、スラリーに還元剤を導入する工程であって、還元剤の少なくとも一部がハロアミノシラン化合物と反応し、アミノシラン化合物を含む最終生成物混合物を提供する、工程と、を含む。
【0008】
韓国特許第10-1040325号は、アルキルアミノシランの調製方法を提供しており、この方法は、第二級アミンとトリクロロアルキルシランを無水雰囲気下、溶媒の存在下で反応させて、アルキルアミノクロロシラン中間体を形成させ、アルキルアミノクロロシラン中間体に還元剤として金属水素化物LiAlHを添加して、アルキルアミノシランを形成させることを含む。その後、アルキルアミノシランを蒸留工程にかけ、アルキルアミノシランを分離精製する。
【0009】
「Homogeneous Catalytic Hydrosilylation of Pyridines」と題する参考文献、L.Haoら、Angew.Chem.,Int.Ed、第37巻、1998年、3126-29頁には、[CpTiMe]などのチタノセン錯体触媒の存在下、PhSiHMe、PhSiH及びPhSiHによる、ピリジン、例えばRCN(R=H、3-Me、4-Me、3-COEt)のヒドロシリル化が記載されており、これにより、1-シリル化テトラヒドロピリジン誘導体及び中間体シリルチタノセン付加体であるCpTi(SiHMePh)(CN)(I)が高収率で得られた。
【0010】
「Stoichiometric Hydrosilylation of Nitriles and Catalytic Hydrosilylation of Imines and Ketones Using a μ-Silane Diruthenium Complex」と題する参考文献、H.Hashimotoら、Organometallics、第22巻、2003年、2199-2201頁には、Ru-H-Si相互作用を有するジルテニウム錯体{Ru(CO)(SiTolH)}(μ-dppm)(μ-η:η-HSiTol)とニトリルRCNとの化学量論的反応において、μ-イミノシリル錯体Ru(CO)(μ-dppm)(μ-SiTol)(μ-RCH:NSiTol)(R=Me、Ph、t-Bu、CH:CH)を高収率で合成する方法を記載している。
【0011】
「Titanocene-Catalyzed Hydrosilylation of Imines:Experimental and Computational Investigations of the Catalytically Active Species」と題する参考文献、H.Gruber-Woelflerら、Organometallics、第28巻、2009年、2546-2553頁には、触媒前駆体として(R,R)-エチレン-1,2-ビス(η-4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)チタン(R)-1,1’-ビナフト-2-レート(1)及び(S,S)-エチレン-1,2-ビス(η-4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)チタニウムジクロリド(2)を使用したイミンの不斉触媒的ヒドロシリル化反応について記載した。RLi(R=アルキル、アリール)とシランで活性化した後、これらの錯体は、ヒドロシリル化反応の触媒として知られている。
【0012】
参考文献「Iridium-Catalyzed Reduction of Secondary Amides to Secondary Amines and Imines by Diethylsilane」、C.Chengら、J.Am.Chem.Soc.、第134巻、2012年、110304-7頁には、ジエチルシランを還元剤として、[Ir(COE)Cl]などのイリジウム触媒を使用することによる、第二級アミドからイミン及び第二級アミンへの触媒的還元が記載されている。
【0013】
熱ベースの堆積プロセスに代わる、原子層堆積(ALD)プロセス又はALD様プロセス、例えば限定されないが、循環化学気相堆積プロセスを使用して、高品質、低不純物、高共形シリコン酸化膜を形成するプロセスを開発する必要性がある。さらに、ALD又はALD様プロセスにおいて、純度及び/又は密度などの1つ以上の膜特性を改善するために、高温成膜(例えば、600℃の1つ以上の温度での成膜)を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0014】
本明細書では、原子層堆積(ALD)又はALD様プロセスにおいて、高温、例えば600℃以下の1つ以上の温度で酸化シリコン材料又は膜を成膜するためのプロセスについて説明されている。
【0015】
一実施形態では、a.反応器に基材を供給する工程と、b.反応器に、HSiNRの式を有するシリコン前駆体を導入する工程であって、式中、R及びRは、それぞれ独立して、メチル、エチル、イソプロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、tert-ペンチルフェニル、トリル、シクロヘキシル、シクロペンチルから選択され、シリコン前駆体は、ハロゲン化合物、金属イオン、金属、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の不純物を実質的に含まない、工程と、c.反応器をパージガスでパージする工程と、d.酸素源を反応器に導入する工程と、e.反応器をパージガスでパージする工程と、を含む、基材上にシリコン酸化膜を成膜させるためのプロセスが開示されており、工程bからeは、所望の厚さが成膜されるまで繰り返され、プロセス温度は、20℃以上600℃以下の範囲であり、反応器内の圧力は、50ミリTorr(mT)以上760Torr以下の範囲である。
【0016】
本発明によるこのようなプロセスは、プラズマ支援原子層堆積(ALD)プロセス、又はより安価で、反応性が高く、より安定な有機アミノシランを使用するプラズマ支援ALD様プロセスにおいて、約2.1g/cc以上の密度、低化学的不純物、及び/又は高い適合性の少なくとも1つ以上の属性を有する高品質のシリコン酸化膜を形成する。最も重要なことは、本明細書で開示するシリコン酸化膜は、2.5MW/cmで約2.0e-8A/cm以下、又は2.5MV/cmで約2.0e-9A/cm以下、又は2.5MV/cmで約1.0e-9A/cm以下のリーク電流を有することである。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、本発明の原理を例示的に示す添付の図面と併せて、好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。本発明の実施形態及び特徴は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、塩化物濃度に対するジ-sec-ブチルアミノシランの分解を提供するプロットグラフであり、より高い塩化物濃度は、より低い塩化物濃度を有するDSBASよりもDSBASを分解させ、10ppm以下の塩化物を有するシリコン前駆体を有することが望ましいことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書には、原子層堆積(ALD)又はALD様プロセス、例えば限定されないが循環化学気相成長(CCVD)において、600℃以下、好ましくは500℃以下、最も好ましくは400℃以下の1つ以上の温度での、酸化シリコン含有膜、例えば、酸窒化シリコン膜、化学量論的又は非化学量論的シリコン酸化膜、シリコン酸化膜又はこれらの組み合わせの形成に関連する組成物及びプロセスが記載されている。本明細書に記載の成膜(例えば、約20℃以上約600℃以下の範囲の温度での1つ以上の成膜)方法は、熱原子層堆積、プラズマ支援原子層堆積(ALD)プロセス、又はプラズマ支援ALD様プロセスにおいて、約2.1g/cm以上の密度、低化学的不純物、高い適合性の少なくとも1つ以上の利点を示す膜又は材料を提供する。重要なことは、成膜された酸化シリコンは、2.5MW/cmで約2.0e-8A/cm以下、又は2.5MV/cmで約2.0e-9A/cm以下、又は2.5MV/cmで約1.0e-9A/cm以下のリーク電流を有することである。
先行技術における典型的なALDプロセスは、酸素源、又は酸素、酸素プラズマ、水蒸気、水蒸気プラズマ、過酸化水素、オゾンなどの酸化剤を使用して、25℃以上600℃以下の範囲にあるプロセス温度でSiOを形成する。成膜工程は、
a.反応器に基材を供給する工程と、
b.シリコン前駆体を反応器に導入する工程と、
c.反応器をパージガスでパージする工程と、
d.酸素源を反応器に導入する工程と、
e.反応器をパージガスでパージする工程と、
を含む。
【0020】
このような先行技術プロセスでは、所望の膜厚が成膜されるまで、工程bからeを繰り返す。
【0021】
一実施形態では、本明細書に記載のシリコン前駆体は、以下の式I:HSiNRを有する化合物であって、式中、R及びRはそれぞれ独立して、C1~10直鎖アルキル基、C3~10分枝アルキル基、C3~10環状アルキル基、C2~10アルケニル基、C4~10芳香族基、C4~10複素環基から選択され、但し、R及びRは、両方ともC1~2直鎖アルキル基(Me又はEt)又はC分枝アルキル基(イソプロピル)であることはできない。R及びRの好ましい例は、それぞれ独立して、sec-ブチル、tert-ブチル、tert-ペンチルフェニル、トリル、シクロヘキシル、シクロペンチルからなる群から選択される。シリコン前駆体は、ハロゲン化物、金属イオン、金属、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の不純物を実質的に含まない。特定の実施形態では、式Iの置換基R及びRは、一緒に連結して環構造を形成することができる。これらの実施形態では、環構造は、例えば、環状アルキル環などの飽和、又は例えば、アリール環などの不飽和であってもよい。
【0022】
式Iを有する前駆体の例としては、ジイソプロピルアミノシラン、ジ-sec-ブチルアミノシラン、ジ-tert-ブチルアミノシラン、フェニルメチルアミノシラン、フェニルエチルアミノシラン、シクロヘキサメチルアミノシラン、シクロヘキサエチルアミノシラン、2,6-ジメチルピペリジノシラン、2,5-ジメチルピロリルシラン及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
式Iの前駆体は、以下の反応式(1)によって製造することができる。
【化1】
【0024】
式(1)の反応は、有機溶媒を用いて(例えば、存在下で)又は有機溶媒を用いずに(例えば、非存在下で)実施することができる。有機溶媒が使用される実施形態では、適切な有機溶媒の例としては、ヘキサン、オクタン、トルエンなどの炭化水素、並びにジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン(THF)などのエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。これらの実施形態又は他の実施形態では、反応温度は、溶媒が使用される場合、約-70℃から採用される溶媒の沸点の範囲内である。得られたシリコン前駆体化合物は、副生成物及び溶媒が存在する場合には、それを除去した後、例えば減圧蒸留により精製することができる。
【0025】
実質的にハロゲン化物を含まない本発明による組成物は、(1)化学合成中にハロゲン化物を低減又は除去すること、及び/又は(2)最終精製生成物が実質的にハロゲン化物を含まないように、粗生成物からハロゲン化物を除去する効果的な精製プロセスを実施すること、によって達成することができる。ハロゲン化物源は、クロロシラン、ブロモシラン、ヨードシランなどのハロゲン化物を含まない試薬を使用することにより、合成中に低減することができ、それによってハロゲン化物イオンを含む副生成物の生成を回避することができる。さらに、前述の試薬は、得られる粗生成物が実質的に塩化物不純物を含まないように、実質的に塩化物不純物を含まないことが望ましい。同様に、合成には、ハロゲン化物系溶媒、触媒、又は許容できないほど高レベルのハロゲン化物汚染を含む溶媒を使用すべきではない。粗生成物は、最終生成物を塩化物などのハロゲン化物を実質的に含まないものにするために、様々な精製方法で処理することもできる。このような方法は、従来技術によく記載されており、蒸留、吸着などの精製工程が挙げられるが、これらに限定されない。蒸留は一般に、沸点の差を利用して、所望の生成物から不純物を分離するために使用される。吸着はまた、最終生成物が実質的にハロゲン化物を含まないように分離するために、成分の吸着特性の差を利用するために使用することもできる。例えば、市販のMgO-Al混合物などの吸着剤を使用して、塩化物などのハロゲン化物を除去することができる。
【0026】
式(1)は、文献に記載されているように、ハライドトリアルキルシランと第一級又は第二級アミンとの反応を含む、式Iを有するシリコン前駆体化合物を製造するための例示的な合成経路である。式(2)又は(3)などの他の合成経路はまた、先行技術に開示されているように、式Iを有するこれらのシリコン前駆体化合物を製造するために採用することができ、
【化2】
【化3】
式中、イミン試薬は、直鎖状又は分枝状の有機R、R’及びR’’官能基を含む、第二級アルジミン、R-N=CHR’、又は第二級ケチミン、R1-N=CR’R’’を含むことができ、R、R’及びR’’は、それぞれ独立して、水素、C1~10直鎖アルキル基、C3~10分枝アルキル基、C3~10環状アルキル基、C2~10アルケニル基、C4~10芳香族基、C4~10複素環基から選択されるが、アルキル官能基は、最終の有機アミノシラン生成物の精製工程及び貯蔵中の安定性を確保するために十分に大きいことが好ましい。例示的なイミンとしては、N-イソプロピル-イソプロピリデンイミン、N-イソプロピル-sec-ブチリデンイミン、N-sec-ブチル-sec-ブチリデンイミン、及びN-tert-ブチル-イソプロピリデンイミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
本発明の方法において採用される触媒は、ケイ素-窒素結合の形成を促進するもの、すなわちデヒドロカップリング触媒である。本明細書に記載の方法で使用できる例示的な触媒としては、アルカリ土類金属触媒;ハロゲン化物を含まない主族、遷移金属、ランタニド及びアクチニド触媒;並びにハロゲン化物を含有する主族、遷移金属、ランタニド及びアクチニド触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
例示的なアルカリ土類金属触媒としては、Mg[N(SiMe、ToMgMe[To=トリス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリニル)フェニルボレート]、ToMg-H、ToMg-NR(R=H、アルキル、アリール)Ca[N(SiMe、[(dipp-nacnac)CaX(THF)](dipp-nacnac=CH[(CMe)(2,6-Pr-CN)];X=H、アルキル、カルボシリル、有機アミノ)、Ca(CHPh)、Ca(C、Ca(α-MeSi-2-(MeN)-ベンジル)(THF)、Ca(9-(MeSi)-フルオレニル)(α-MeSi-2-(MeN)-ベンジル)(THF)、[(MeTACD)Ca(μ-H)(MeTACD=Me[12]aneN)、Ca(η-PhCNPh)(hmpa)(hmpa=ヘキサメチルホスホルアミド)、Sr[N(SiMe、及びその他のM2+アルカリ土類金属-アミド、-イミン、-アルキル、-ヒドリド、-カルボシリル錯体(M=Ca、Mg、Sr、Ba)、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
例示的なハロゲン化物を含まない、主族、遷移金属、ランタニド、及びアクチニド触媒としては、1,3-ジイソプロピル-4,5-ジメチルイミダゾール-2-イリデン、2,2’-ビピリジル、フェナントロリン、B(C、BR(R=直鎖状、分岐状、又は環状のC~C10アルキル基、C~C10アリール基、又はC~C10アルコキシ基)、AlR(R=直鎖状、分岐状、又は環状のC~C10アルキル基、C~C10アリール基、又はC~C10アルコキシ基)、(CTiR(R=アルキル、H、アルコキシ、有機アミノ、カルボシリル)、(CTi(OAr)[Ar=(2,6-(Pr))]、(CTi(SiHRR’)PMe(式中、R、R’は、それぞれ独立して、H、Me、Phから選択される)、TiMe(dmpe)(dmpe=1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン)、ビス(ベンゼン)クロム(0)、Cr(CO)、Mn(CO)12、Fe(CO)、Fe(CO)12、(C)Fe(CO)Me、Co(CO)、Ni(II)アセテート、Ni(II)アセチルアセトナート、Ni(シクロオクタジエン)、[(dippe)Ni(μ-H)](dippe=1,2-ビス(ジイソプロピルホスフィノ)エタン)、(R-インデニル)Ni(PR’)Me(R=1-Pr,1-SiMe,1,3-(SiMe;R’=Me,Ph)、[{Ni(η-CH:CHSiMeO}{μ-(η-CH:CHSiMeO}]、Cu(I)アセテート、CuH、[トリス(4,4-ジメチル-2-オキサゾリニル)フェニルボレート]ZnH、(CZrR(R=アルキル、H、アルコキシ、有機アミノ、カルボシリル)、Ru(CO)12、[(EtP)Ru(2,6-ジメシチルチオフェノラート)][B[3,5-(CF]、[(CMe)Ru(RP)(NCMe)3-x(式中、Rは、直鎖状、分岐状、又は環状のC~C10アルキル基及びC~C10アリール基から選択される;x=0、1、2、3)、Rh(CO)16、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)カルボニルヒドリド、Rh(CO)(dppm)(dppm=ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、Rh(μ-SiRH)(CO)(dppm)(R=Ph、Et、C13)、Pd/C、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)、(CSmH、(CMeSmH、(THF)Yb[N(SiMe、(NHC)Yb[N(SiMe[NHC=1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾール-2-イリデン)]、Yb(η-PhCNPh)(hmpa)(hmpa=ヘキサメチルホスホルアミド)、W(CO)、Re(CO)10、Os(CO)12、Ir(CO)12、(アセチルアセトナト)ジカルボニルイリジウム(I)、Ir(Me)(CMe)L(L=PMe、PPh)、[Ir(シクロオクタジエン)OMe]、PtO(アダムス触媒)、白金炭素(Pt/C)、ルテニウム炭素(Ru/C)、パラジウム炭素、ニッケル炭素、オスミウム炭素、白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(Karstedt触媒)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)白金(0)、Pt(シクロオクタジエン)、[(MeSi)N]U][BPh]、[(EtN)U][BPh]、及び他のハロゲン化物を含まないMn錯体(M=Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、U;n=0、1、2、3、4、5、6)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
例示的なハロゲン化物含有、主族、遷移金属、ランタニド、及びアクチニド触媒としては、BX(X=F、Cl、Br、I)、BF・OEt、AlX(X=F、Cl、Br、I)、(CTiX(X=F、CI)、[Mn(CO)Br]、NiCl、(CZrX(X=F、CI)、PdCl、PdI、CuCl、CuI、CuF、CuCl、CuBr、Cu(PPhCl、ZnCl、[(C)RuX(X=Cl、Br、I)、(PhP)RhCl(ウィルキンソン触媒)、[RhCl(シクロオクタジエン)]、ジ-μ-クロロ-テトラカルボニルジロジウム(I)、ビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)カルボニルクロリド、NdI、SmI、DyI、(POCOP)IrHCl(POCOP=2,6-(RPO);R=Pr、Bu、Me)、HPtCl・nHO(Speier触媒)、PtCl、Pt(PPhCl、及び他のハロゲン化物含有Mn錯体(M=Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、U;n=0、1、2、3、4、5、6)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
式Iを有するシリコン前駆体化合物中の有意なレベルの塩化物及び金属イオン又は金属不純物は、原子層堆積のための前駆体として使用される場合、得られるシリコン酸化膜に導入される可能性があり、したがって、より高いリーク電流などのデバイス性能に有害であり得ると考えられる。本発明による式Iを有するシリコン前駆体化合物、及び本発明による式Iを有するシリコン前駆体化合物を含む組成物は、好ましくは、ハロゲン化物を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、ハロゲン化物、例えば、塩化物(すなわち、HClなどの塩化物含有種、又はHSiClなどの少なくとも1つのSi-Cl結合を有するシリコン化合物)、及びフッ化物、臭化物、及びヨウ化物に関する「実質的に含まない」という用語は、イオンクロマトグラフィー(IC)によって測定される10ppm以下(重量で)の塩化物、好ましくはイオンクロマトグラフィー(IC)によって測定される5ppm以下の塩化物、より好ましくはイオンクロマトグラフィー(IC)によって測定される2ppm以下の塩化物、最も好ましくはイオンクロマトグラフィー(IC)によって測定される1ppm以下の塩化物を意味する。幾つかの実施形態では、式Iを有するシリコン前駆体化合物は、Li、Ca2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Ni2+、Cr3+などの金属イオンを含まない。本明細書で使用される場合、Li、Ca、Al、Fe、Ni、Cr、Ru又はPt(合成に使用される触媒からのルテニウム(Ru)又は白金(Pt))などの貴金属に関する「含まない」という用語は、ICP-MSで測定して1ppm(重量)未満、好ましくはICP-MSで測定して0.1ppm未満、より好ましくはICP-MSで測定して0.01ppm未満、最も好ましくはICP-MSで測定して1ppb未満を意味する。さらに、式Iを有するシリコン前駆体化合物はまた、例えばヘキサメチルジシロキサンのような、成長に影響を及ぼす可能性のあるアルキルシロキサンなどのシリコン含有不純物を実質的に含まないことが好ましい。
【0032】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して成膜されたシリコン膜は、酸素源、試薬又は酸素を含む前駆体を使用して、酸素の存在下で形成される。酸素源は、少なくとも1つの酸素源の形態で反応器に導入されてもよく、及び/又は成膜プロセスで使用される他の前駆体中に付随的に存在してもよい。適切な酸素源ガスとしては、例えば、水(HO)(例えば、脱イオン水、精製水、及び/又は蒸留水)、酸素(O)、酸素と水素との混合物、酸素プラズマ、オゾン(O)、NO、NO、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)プラズマ、一酸化炭素(CO)プラズマ、NOプラズマ、NOプラズマ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、酸素源は、約1標準立方センチメートル(sccm)以上約2000sccm以下又は約1sccm以上約1000sccm以下の範囲の流量で反応器に導入される酸素源ガスを含む。酸素源は、約0.1秒以上約100秒以下の範囲の時間を導入することができる。1つの特定の実施形態では、酸素源は、10℃以上の温度を有する水を含む。膜がALD又は循環CVDプロセスによって成膜される実施形態では、前駆体パルスは、0.01秒超のパルス持続時間を有することができ、酸素源は、0.01秒未満のパルス持続時間を有することができ、一方、水のパルス持続時間は、0.01秒未満のパルス持続時間を有することができる。
【0033】
本明細書で開示される成膜方法は、1つ以上のパージガスを含んでもよい。未消費の反応物質及び/又は反応副生成物を排除するために使用される、パージガスは、シリコン前駆体と反応しない不活性ガスである。代表的なパージガスとしては、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、水素(H)、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、Arなどのパージガスが、約0.1秒以上約1000秒以下の間に約10sccm以上約2000sccm以下の流量で反応器に供給され、それによって反応器内に残留する可能性のある未反応物質及び任意の副生成物をパージする。
【0034】
前駆体、酸素源、窒素含有源、及び/又は他の前駆体、原料ガス、及び/又は試薬を供給するそれぞれの工程は、それらを供給する時間を変化させて、得られる誘電体膜の化学量論組成を変化させることによって、実施することができる。
【0035】
反応を誘導し、基材上に誘電体膜又はコーティングを形成するために、シリコン前駆体、酸素含有源、又はこれらの組み合わせの少なくとも1つにエネルギーを印加する。このようなエネルギーは、熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、eビーム、光子、遠隔プラズマ方法、及びこれらの組み合わせによって提供され得るが、これらに限定されない。特定の実施形態では、二次RF周波数源を使用して、基材表面におけるプラズマ特性を修正することができる。成膜がプラズマを含む実施形態では、プラズマ生成プロセスは、プラズマが反応器内で直接生成される直接プラズマ生成プロセス、又は代わりに、プラズマが反応器の外部で生成され、反応器内に供給される遠隔プラズマ生成プロセスを含むことができる。
【0036】
少なくとも1つのシリコン前駆体は、様々な方法で、環状CVD又はALD反応器などの反応チャンバーに送達されてもよい。一実施形態では、液体送達システムを利用することができる。代替の実施形態では、例えば、MNのShoreviewのMSP Corporationによって製造されたターボ気化器などの、結合された液体送達及びフラッシュ気化プロセスユニットを使用して、低揮発性材料を体積で送達することを可能にし、前駆体の熱分解なしに、再現性のある輸送及び成膜をもたらすことができる。液体送達配合物では、本明細書に記載される前駆体は、そのままの液体形態で送達されてもよく、あるいは、それを含む溶媒配合物又は組成物において使用されてもよい。したがって、特定の実施形態では、前駆体配合物は、基材上に膜を形成するために、所与の最終用途で望ましく、有利であり得るような、適切な特性の溶媒成分を含み得る。
【0037】
式Iを有する少なくとも1つのシリコン前駆体が、本明細書に記載される式Iを有する溶媒及び少なくとも1つのシリコン前駆体を含む組成物中で使用される実施形態については、選択される溶媒又はこれらの混合物は、シリコン前駆体と反応しない。組成物中の溶媒の重量%の量は、0.5重量%以上99.5重量%以下又は10重量%以上75重量%以下の範囲である。この実施形態又は他の実施形態では、溶媒は、式Iの少なくとも1つのシリコン前駆体の沸点(b.p.)と同様、又は溶媒の沸点と式Iの少なくとも1つのシリコン前駆体の沸点との差が40℃以下、30℃以下、又は20℃以下、又は10℃以下である。あるいは、沸点間の差分は、以下の終点:0℃、10℃、20℃、30℃、又は40℃のいずれか1つ以上からの範囲である。沸点差の適切な範囲の例としては、限定されないが、0℃以上40℃以下、20℃以上30℃以下、又は10℃以上30℃以下が挙げられる。組成物中の適切な溶媒の例としては、エーテル(1、4-ジオキサン、ジブチルエーテルなど)、第三級アミン(ピリジン、1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N,N’,N’-テトラメチレンジアミンなど)、ニトリル(ベンゾニトリルなど)、アルカン(オクタン、ノナン、ノナン、ドデカン、エチルシクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素(トルエン、メシチレンなど)、第三級アミノエーテル(ビス(2-ジメチルアミノエチルなど)エーテルなど)、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
前述のように、式Iの少なくとも1つのシリコン前駆体の純度レベルは、信頼性のある半導体製造に許容できるほど十分に高い。特定の実施形態では、本明細書に記載される式Iの少なくとも1つのシリコン前駆体は、2重量%未満、又は1重量%未満、又は0.5重量%未満の以下の不純物:遊離アミン、遊離ハロゲン化物又はハロゲンイオン、及びより高分子量の種の1つ以上を含む。本明細書に記載されるシリコン前駆体のより高い純度レベルは、以下のプロセス:精製、吸着、及び/又は蒸留の1つ以上を通して得ることができる。
【0039】
本明細書に記載の方法の一実施形態では、ALD様、ALD、又はPEALDなどの循環成膜プロセスを使用することができ、成膜は、式Iの少なくとも1つのシリコン前駆体及び酸素源を使用して行われる。ALD様プロセスは、循環CVDプロセスとして定義されるが、依然として、高共形シリコン酸化膜を提供する。
【0040】
特定の実施形態では、前駆体キャニスターから反応チャンバーに接続するガスラインは、プロセス要件に応じて1つ以上の温度に加熱され、式Iの少なくとも1つのシリコン前駆体の容器は、バブリングのために1つ以上の温度に保たれる。他の実施形態では、式Iの少なくとも1つのシリコン前駆体を含む溶液は、直接液体注入のために1つ以上の温度に保たれた気化器に注入される。
【0041】
アルゴン及び/又は他のガスの流れをキャリアガスとして採用して、式Iの少なくとも1つのシリコン前駆体の蒸気を前駆体パルス化中に反応チャンバーに送達するのを助けることができる。特定の実施形態では、反応チャンバープロセス圧力は、約1Torrである。
【0042】
CCVDプロセスなどの典型的なALD又はALD様プロセスでは、シリコン酸化物基材などの基材は、複合体が基板の表面上に化学的に吸着することを可能にするために、最初にシリコン前駆体に曝露される反応チャンバー内のヒーターステージ上で加熱される。
【0043】
アルゴンなどのパージガスは、未吸着の過剰な錯体をプロセスチャンバーからパージする。十分なパージの後、酸素源を反応チャンバーに導入して、吸着された表面と反応させ、続いて別のガスパージを行い、チャンバーから反応副生成物を除去することができる。プロセスサイクルは、所望の膜厚を達成するために繰り返すことができる。場合によっては、ポンピングは、パージを不活性ガスで置換することができ、又はその両方を使用して、未反応シリコン前駆体を除去することができる。
【0044】
この又は他の実施形態では、本明細書に記載される方法の工程は、様々な順序で実行されてもよく、連続的に実行されてもよく、同時に(例えば、別の工程の少なくとも一部の間に)実行されてもよく、これらのいずれかの組み合わせであってもよいことが理解される。前駆体及び酸素源ガスを供給するそれぞれの工程は、それらを供給するための時間の持続時間を変化させて、シリコン酸化物などの、得られる誘電体膜の化学量論組成を変化させることによって実施されてもよい。
【0045】
基材上にALD又はALD様を介してシリコン酸化膜を成膜するための、本明細書に記載の方法の1つの特定の実施形態は、
a.反応器内で基材を提供する工程と、
b.ハロゲン化物、金属イオン、金属、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の不純物を実質的に含まない、式Iを有する本明細書に記載の少なくとも1つのシリコン前駆体を反応器に導入する工程と、
c.パージガスで反応器をパージする工程と、
d.反応器へ酸素源を導入する工程と、
e.パージガスで反応器をパージする工程と、
を含み、
工程b~eは、所望の厚さのシリコン酸化膜が成膜されるまで繰り返される。シリコン酸化膜は、2.5MW/cmで約2.0e-8A/cm以下、又は2.5MV/cmで約2.0e-9A/cm以下、又は2.5MV/cmで約1.0e-9A/cm以下のリーク電流を有する高品質のシリコン酸化物である。
【0046】
特定の実施形態では、得られたシリコン酸化膜は、膜の1つ以上の特性に影響を及ぼすために、プラズマ処理、熱処理、化学処理、紫外線露光、電子ビーム露光、及びこれらの組み合わせなどの1つ以上の成膜後処理に露光されるが、これらに限定されない。これらの成膜後処理は、不活性、酸化性、及び/又は還元性から選択される雰囲気下で行うことができる。
【0047】
より詳細には、成膜後処理は、プラズマ処理(その場、遠隔又はこれらの組み合わせ);超高純度不活性ガス(すなわち、N、He、Ne、Ar)の存在下での熱アニール(100℃以上1050℃以下の範囲の温度での加熱);プラズマ生成種、アンモニア、水素、アリルアミン、プロパルギルアミン、ビニルアミン、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、酸素、オゾン、水及び/又は過酸化水素などの反応種の存在下での加熱を含む反応性熱アニール;周囲圧力または真空圧力下での不活性ガス下での放射線処理;反応性熱アニールについて述べたのと同じ種のいずれかの存在下での反応性放射線処理、例えば、紫外線硬化(波長が400nm以下、好ましくは300nm未満、より好ましくは250nm未満)及び反応性紫外線硬化を含む反応性放射線処理、を含むことができる。
【実施例
【0048】
実施例1:塩化物濃度の関数としてのDSBASの熱安定性の評価
【0049】
DSBAS(ジ-sec-ブチルアミノシラン)の2つの試料は、GC-TCDによって99.65%及び99.57%の純度を有すると分析され、ICPによって、それぞれ1.4ppm及び179.7ppmの塩化物濃度(塩化物含有量)を有すると分析された。これらの2つの試料を適切な割合で混合して、窒素含有グローブボックス中で、それぞれ6.5ppm及び40.1ppmの中間塩化物濃度を有するDSBASの2つの新しい試料を作製した。塩化物濃度が増加する順に並べられた、得られたDSBASの4つの試料を、DSBAS#1、DSBAS#2、DSBAS#3及びDSBAS#4と命名した。約2.0mLのDSBAS#1の試料を、窒素含有グローブボックス中で2つのステンレス鋼チューブの各々に添加した。これをDSBAS#2、DSBAS#3、DSBAS#4について繰り返し、合計8本のステンレス鋼管をDSBAS試料で構成した。試験管に蓋をし、実験室オーブンに入れ、80℃で7日間加熱した。試料を80℃で7日間加熱する目的は、DSBASを、周囲温度(22℃)で1年後に生じる通常の老化をシミュレートする促進老化条件に供することである。8つの加熱試料をGCによって分析して、非加熱対照試料に対する分解の程度を決定した。DSBAS#1、DSBAS#2、DSBAS#3及びDSBAS#4の加熱試料は、非加熱対照試料と比較して、それぞれ0.021%、0.073%、0.138%及び0.216%のGCによる純度の平均減少を示した。塩化物データ及びGC純度前後のデータを表1に要約する。図1は、塩化物含有量の関数としての熱処理の結果としてのDSBASの純度の変化のプロットを示す。GC前後のデータは、DSBAS安定性が塩化物含有量の減少と共に改善することを示す。
【表1】
【0050】
実施例2:様々な塩化物不純物を含むジ-sec-ブチルアミノシランによるシリコン酸化膜の原子層堆積
シリコン酸化膜の原子層堆積を、以下の前駆体:1.4ppm、11.0ppm、及び179.7ppmの塩化物レベルを有するジ-sec-ブチルアミノシラン(DSBAS)を使用して行った。
【0051】
成膜は、実験室規模のALD処理ツールで行った。シリコン前駆体は、蒸気吸引によってチャンバーに送達された。異なる塩化物レベルを含有する各容器を、300℃で2回の成膜に使用し、続いて500℃で2回の成膜を行った。全てのガス(例えば、パージ及び反応ガス又は前駆体及び酸素源)は、成膜ゾーンに入る前に100℃に予熱された。ガス及び前駆体流量は、高速作動のALDダイアフラムバルブで制御した。成膜に使用した基材は、長さ12インチのシリコンストリップであった。試料ホルダーに熱電対を取り付け、基材温度を確認する。酸素源ガスとしてオゾンを使用して、成膜を行った。成膜パラメータを表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
所望の厚さに達するまで、工程3から工程10を繰り返す。膜からの反射データを予め設定した物理モデル(例えば、Lorentz Oscillatorモデル)にあてはめることにより、膜の厚さと屈折率をFilmTek 2000SEエリプソメータを使用して測定した。不均一性%は、以下の式:%不均一性=((最大-最小)/(2平均))を使用して、6点測定から計算した。
【0054】
金属-絶縁体キャパシタ(MISCAP)デバイスを構築することにより、電気特性を特性化した。各成膜は、MISCAPデバイスからの12箇所のリーク電流測定を有する。2.5MV/cmでのリーク電流を比較し、異なる塩化物レベルを有するDSBASで成膜した膜間の電気特性差を解明した。
【0055】
表3及び表4に、それぞれ300℃及び500℃で成膜した膜の2.5MV/cmにおけるリーク電流を示す。300℃及び500℃の両方の成膜において、DSBASにおけるより高い塩化物濃度は、少なくとも1桁のリーク電流に換算される。これは、より高いRC遅延をもたらし、デバイス性能に有害である、すなわち、リーク電流が低いほど、デバイスの故障が少なくなる。重要なことに、表4は、500℃などのより高い成膜温度が、300℃などのより下側成膜温度よりも優れた高品質のシリコン酸化膜を提供し、すなわち、500℃でのリーク電流は、300℃で成膜されたものよりも10倍優れている。
【表3】
【表4】
【0056】
一定の実施形態及び実施例を参照して上に図示及び説明したが、本発明は、それにも拘らず、示された詳細に限定されることを意図しない。むしろ、本発明の精神から逸脱することなく、特許請求の範囲の当量の範囲内で、細部において様々な改変を行うことができる。例えば、本明細書に広く列挙された全ての範囲が、それらの範囲内に、より広い範囲内に入る全てのより狭い範囲を含むことが明確に意図される。
図1
【国際調査報告】