(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】エチレン/α-オレフィン共重合体およびそれを含む封止材フィルム用組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 210/16 20060101AFI20240228BHJP
C08F 4/6592 20060101ALN20240228BHJP
【FI】
C08F210/16
C08F4/6592
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557794
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 KR2022016694
(87)【国際公開番号】W WO2023075501
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0148244
(32)【優先日】2021-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジン・サム・ゴン
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヨン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ウ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・キュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】シ・ジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒェ・ジ・イ
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AA04Q
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4J128GA05
4J128GA07
4J128GA08
4J128GA18
4J128GA19
(57)【要約】
本発明は、架橋剤の含浸時間が短縮され、高い架橋度を示す優れた物性のエチレン/α-オレフィン共重合体、およびそれを含む封止材フィルム用組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)~(d)条件を満たすエチレン/α-オレフィン共重合体。
(a)SAXS(X線小角散乱法;Small-Angle X-Ray Scattering)により測定された面間隔(d-spacing)が12nm以上であり、
(b)WAXS(X線広角散乱法;Wide-Angle X-ray Scattering)により測定された結晶化度が14%以下であり、
(c)40℃の条件で測定された硬度(shore A)が65以下であり、および
(d)DSC(示差走査熱量計;Differential Scanning calorimetry)により測定された溶融温度が70℃以下である。
【請求項2】
前記結晶化度が13%以下である、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項3】
前記硬度(shore A)が63以下である、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項4】
前記溶融温度が50~65℃である、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項5】
密度が0.85~0.89g/ccである、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項6】
溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kgの荷重条件)が1~100dg/分である、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項7】
溶融指数(MI
2.16、190℃、2.16kgの荷重条件)に対する溶融指数(MI
10、190℃、10kgの荷重条件)値である溶融流動指数(MFRR、Melt Flow Rate Ratio、MI
10/MI
2.16)が8.0以下である、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項8】
前記α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、および1-エイコセンからなる群から選択された1種以上を含む、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項9】
前記α-オレフィンは、エチレン/α-オレフィン共重合体を基準として0超過99以下のモル%で含まれる、請求項1に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体を含む、封止材フィルム用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月1日付けの韓国特許出願第2021-0148244号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、架橋剤の含浸時間が短縮され、高い架橋度を示す優れた物性のエチレン/α-オレフィン共重合体、およびそれを含む封止材フィルム用組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
地球環境問題、エネルギー問題などが益々深刻化するにつれ、環境汚染や枯渇の恐れがないエネルギー生成手段として太陽電池が注目されている。太陽電池を建物の屋根などの屋外で用いる場合、太陽電池のモジュール形態で用いるのが一般的である。太陽電池モジュールの製造時、結晶型太陽電池モジュールを得るためには、前面ガラス/太陽電池封止材/結晶型太陽電池素子/太陽電池封止材/背面ガラス(または、背面保護シート)の順に積層する。前記太陽電池封止材として、一般的に透明性、柔軟性、接着性などに優れたエチレン/酢酸ビニル共重合体やエチレン/α-オレフィン共重合体などが用いられる。
【0004】
太陽電池封止材は、通常求められる機能を改善するために着実に研究されてきたが、エチレン/α-オレフィン共重合体の種々の物性のうち、特に架橋度は、機械的強度および耐熱性評価を示す指標として用いることができ、架橋度が高いほど、封止材などに用いられた場合に機械的強度および耐熱性に優れ、モジュールの長期安定性が高くなる。
【0005】
一方、一般的に、太陽電池セルは過酷な環境、特に高温多湿な地域に位置するのが一般的であるため、このような環境で太陽電池モジュールを効果的に保護し、出力低下などの問題の発生を防止できる方法については持続的な研究が必要である。特に機械的強度および耐熱性を向上させるためには架橋度を改善することが必要であるが、架橋のために用いられる架橋剤、架橋助剤、過酸化物などの極性物質は、非極性のエチレン/α-オレフィン共重合体との親和度が低いため、架橋剤成分を含浸させる時間が長くなり、架橋度を向上させるのに限界がある状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、架橋剤の含浸時間が短縮され、高い架橋度を示すなど、優れた物性を有するエチレン/α-オレフィン共重合体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、エチレン/α-オレフィン共重合体およびそれを含む封止材フィルム用組成物を提供する。
(1)本発明は、下記(a)~(d)条件を満たすエチレン/α-オレフィン共重合体を提供する。
(a)SAXS(X線小角散乱法;Small-Angle X-Ray Scattering)により測定された面間隔(d-spacing)が12nm以上であり、
(b)WAXS(X線広角散乱法;Wide-Angle X-ray Scattering)により測定された結晶化度が14%以下であり、
(c)40℃の条件で測定された硬度(shore A)が65以下であり、および
(d)DSC(示差走査熱量計;Differential Scanning calorimetry)により測定された溶融温度が70℃以下である。
【0009】
(2)本発明は、結晶化度が13%以下である、前記(1)に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体を提供する。
(3)本発明は、硬度(shore A)が63以下である、前記(1)または(2)に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体を提供する。
【0010】
(4)本発明は、溶融温度が50~65℃である、前記(1)~(3)のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体を提供する。
(5)本発明は、密度が0.85~0.89g/ccである、前記(1)~(4)のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体を提供する。
【0011】
(6)本発明は、溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kgの荷重条件)が1~100dg/分である、前記(1)~(5)のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体を提供する。
【0012】
(7)本発明は、溶融指数(MI2.16、190℃、2.16kgの荷重条件)に対する溶融指数(MI10、190℃、10kgの荷重条件)値である溶融流動指数(MFRR、Melt Flow Rate Ratio、MI10/MI2.16)が8.0以下である、前記(1)~(6)のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体を提供する。
【0013】
(8)本発明は、前記α-オレフィンが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、および1-エイコセンからなる群から選択された1種以上を含む、前記(1)~(7)のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体を提供する。
【0014】
(9)本発明は、前記α-オレフィンが、エチレン/α-オレフィン共重合体を基準として0超過99以下のモル%で含まれる、前記(1)~(8)のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体を提供する。
【0015】
(10)本発明は、前記(1)~(9)のいずれか一項に記載のエチレン/α-オレフィン共重合体を含む、封止材フィルム用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、非結晶領域の割合が高く、低い結晶化度を示す。これにより、前記エチレン/α-オレフィン共重合体は、高い吸収性を示すため、架橋剤に短時間内に含浸されることができ、優れた架橋度を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例1におけるピークのデコンボリューション(deconvolution)結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
以下、本発明について詳しく説明する。
【0019】
<エチレン/α-オレフィン共重合体>
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、下記(a)~(d)条件を満たすことを特徴とする。
(a)SAXS(Small-Angle X-Ray Scattering)により測定されたd-spacingが12nm以上であり、
(b)WAXS(Wide-Angle X-ray Scattering)により測定された結晶化度が14%以下であり、
(c)40℃の条件で測定された硬度(shore A)が65以下であり、
(d)DSC(Differential Scanning calorimetry)により測定された溶融温度が70℃以下である。
【0020】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、低い結晶化度を有し、非結晶領域の割合が高いため、架橋剤、架橋助剤などの極性物質の吸収性に優れる。
具体的に、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、重合反応器内に遷移金属化合物、助触媒、エチレンおよびα-オレフィン系単量体を投入して重合させることで製造され、特にエチレン投入量に対するα-オレフィン系単量体の投入量が高いため、エチレン/α-オレフィン共重合体中の非結晶領域の割合が高く、結晶領域間の間隔が広いことを特徴とする。
【0021】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、SAXS(Small-Angle X-Ray Scattering)により測定されたd-spacingが12nm以上である。
【0022】
前記d-spacingは、結晶構造におけるドメイン間の距離(d-spacing)を示すものであり、d-spacing値が低いほど、結晶構造間の距離が近く、結晶性が高いことを意味する。
【0023】
前記d-spacingは、SAXS(Small-Angle X-Ray Scattering)により測定することができる。具体的に、Xenocs社製のモデル名Xeuss2.0のX線散乱装置を用いて、試料にX線を透過させ、散乱ベクトル(q)による散乱強度(I(q))を測定した。より具体的に、前記小角X線散乱測定(SAXS)は、検出器(Detector)から2.5m離れた位置に試料を置き、X線を入射して測定した。検出器としては、Pilatus3 300K(2D検出器)を用いた。そして、散乱して出る2D回折パターンをイメージとして得、それを標準試料により得られたサンプル-対-検出器(sample-to-detector)距離を用いてキャリブレーションし、その後、試験片の分析により得られた2D回折パターンを用いて円形平均(circular average)し、散乱ベクトル(q)による散乱強度(I(q))を換算した。
【0024】
[数式1]
q=4πsinθ/λ
【0025】
前記数式1中、
qは、散乱ベクトルであり、θは、散乱角度の1/2値であり、λは、照射されたX線の波長である。
【0026】
結晶ドメインの距離は、SAXSにより得られた散乱ベクトル(q)による散乱強度(I(q))を測定して分析した。測定された散乱強度(I(q))に散乱ベクトル(q)の二乗を乗じ、散乱ベクトル(q)によるI(q)×q2のグラフにおいてピークが観察される。この際、観察されたピークの散乱ベクトル値(q*)を用いて、結晶ドメイン間の距離(d-spacing)を得た。
【0027】
[数式2]
d-spacing=2π/q*
【0028】
前記数式2中、
前記q*は、散乱ベクトル(q)によるI(q)×q2のグラフのピークにおける散乱ベクトル値を示す。
【0029】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、非結晶領域の割合が高く、結晶性が低いため、12nm以上のd-spacingを示す。d-spacingの範囲が12nm以上である場合、架橋剤成分に対するエチレン/α-オレフィン共重合体の吸収性が増加し、短時間内に多量の架橋剤を含浸できるという利点がある。
【0030】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、WAXS(Wide-Angle X-ray Scattering)により測定された結晶化度が14%以下であり、具体的には13%以下、12%以下であってもよい。
【0031】
本発明のα-オレフィン共重合体は、上記範囲のように低い範囲の結晶化度を示す。
前記結晶化度は、WAXS(Wide-Angle X-ray Scattering)により測定することができる。Xenocs社製のモデル名Xeuss2.0のX線散乱装置を用いて、試料にX線を透過させ、散乱ベクトル(q)による散乱強度(I(q))を測定した。より具体的に、前記広角X線散乱測定(WAXS)は、検出器(Detector)から約0.7m離れた位置に試料を置き、X線を入射して測定した。検出器としては、Pilatus3 300K(2D検出器)を用いた。WAXSは、平行ビーム法(parallel beam method)であって、透過時に試料と衝突して発生するX線の干渉を測定することを原理として、結晶構造に起因したピークをassignし、全領域に対して結晶性ピークの領域がどれほど占めるかを計算して結晶化度を求める。
【0032】
具体的に、WAXSにより得られた散乱ベクトル(q)による散乱または回折強度(I(q))を測定して分析した。得られた散乱または回折強度においてアモルファス(Amorphous) halo(Ia(q))、中間相(Mesophase)(Im(q))、および結晶(Crystal)(Ic(q))による回折ピークをデコンボリューション(deconvolution)し、それにより、下記[数式3]に従って結晶化度を計算した。
【0033】
【0034】
前記数式3中、
Imは、Mesophase Peakであり、
Icは、Crystal Peakであり、
Iaは、Amorphous halo Peakである。
【0035】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体の結晶化度が上記範囲である場合、共重合体中の相対的な非結晶性の含量が増加し、架橋剤成分の吸収性が高くなる。したがって、短時間内に架橋剤成分の含浸が可能となる。
【0036】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、40℃の条件で測定された硬度(shore A)が65以下であり、具体的には63以下、62以下、61以下であってもよい。
【0037】
前記硬度は、ASTM D2240規格に準じたShore A硬度を示し、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、非結晶領域を多く含有し、架橋剤などの極性物質の含浸速度が速いため、40℃の含浸温度で測定された硬度が上記のように低い値を示す。
【0038】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体の40℃の条件で測定された硬度(shore A)が上記範囲である場合、架橋剤成分がエチレン/α-オレフィン共重合体中に浸透しやすく、架橋剤成分の含浸時間が短縮されるという利点がある。
【0039】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、DSC(Differential Scanning calorimetry)により測定された溶融温度(Melting Temperature、Tm)が70℃以下であり、具体的には65℃以下、60℃以下、58℃以下、45℃以上、50℃以上であってもよい。
【0040】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体の溶融温度が上記範囲である場合、優れた熱安定性を示し、高い溶融温度を有する高結晶性領域による光透過度の低下を示さないため、光透過率に優れたレベルで実現されるという利点がある。
【0041】
前記溶融温度は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。具体的に、共重合体を150℃まで加熱してから5分間維持し、再び20℃まで下げた後、再び温度を上昇させる。この際、温度の上昇速度および下降速度はそれぞれ10℃/分に調節し、2回目の温度が上昇する区間で測定された結果を溶融温度として測定することができる。
【0042】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、密度が0.85~0.89g/ccの範囲の低密度の重合体であり、この際、前記密度とは、ASTM D-792に準じて測定された密度を意味し得る。具体的に、前記密度は0.850g/cc以上、0.860g/cc以上、0.870g/cc以上、または0.874g/cc以上であってもよく、0.890g/cc以下、0.880g/cc以下、または0.878g/cc以下であってもよい。
【0043】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体が上記範囲の密度を有する場合、優れた架橋性を示すとともに、体積抵抗および光透過率などの物性が低下しないため、絶縁性材料として有用に用いることができる。
【0044】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、溶融指数(Melt Index、MI、190℃、2.16kgの荷重条件)が1~30dg/分である。具体的に、前記溶融指数は1dg/分以上、2dg/分以上、3dg/分以上、または4dg/分以上であってもよく、30dg/分以下、20dg/分以下、または15dg/分以下であってもよい。
【0045】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体が上記範囲の溶融指数を有する場合、適切な生産速度を示すとともに、体積抵抗および光透過率に優れるため、絶縁性材料として有用に用いることができる。
【0046】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、溶融指数(MI2.16、190℃、2.16kgの荷重条件)に対する溶融指数(MI10、190℃、10kgの荷重条件)値である溶融流動指数(MFRR、Melt Flow Rate Ratio、MI10/MI2.16)が8.0以下であってもよく、具体的には4.0以上、4.2以上、4.5以上、8.0以下、7.5以下であってもよい。
【0047】
前記溶融流動指数は、共重合体の長鎖分岐程度の指標となり、本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、上記の物性とともに前記溶融流動指数を満たすことで、優れた物性を有して太陽電池用封止材組成物などに好適に適用することができる。
【0048】
特に、上記のように本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体が1~100dg/分の低い溶融指数を有する場合、上記のように8.0以下の低い溶融流動指数を有することができる。本発明の共重合体は、このように溶融指数および溶融流動指数が低いため、共重合体の分子量が高く、長鎖分岐の含量が少なく、架橋度に優れるという特徴がある。
【0049】
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、エチレンとα-オレフィン系単量体を共重合することで製造されたものであり、この際、共重合体中のα-オレフィン系単量体由来の部分を意味する前記α-オレフィンは、C4~C20のα-オレフィン、具体的に、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物であってもよい。
【0050】
中でも、前記α-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテンであってもよく、好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセン、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0051】
また、前記エチレン/α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの含量は、上記の物性的要件を満たす範囲内で適宜選択されてもよく、具体的には0超過99以下のモル%、10モル%以上、50モル%以下であってもよいが、これに限定されない。
【0052】
<エチレン/α-オレフィン共重合体の製造方法>
本発明のエチレン/α-オレフィン共重合体は、重合反応器内に遷移金属化合物、助触媒、エチレンおよびα-オレフィン系単量体を投入して重合させるステップを含む製造方法により製造される。
前記エチレンおよびα-オレフィン系単量体を重合する方法は、特に限定されず、当該技術分野で広く用いられる通常の方法を適切に用いることができる。
【0053】
本発明において、前記α-オレフィン系単量体は、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、および1-エイコセンからなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに限定されない。
【0054】
中でも、本発明により製造されるエチレン/α-オレフィン共重合体の用途および改善効果を考慮すると、前記α-オレフィン系単量体は、1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテンであってもよい。
【0055】
特に、本発明の製造方法は、エチレンおよびα-オレフィン系単量体のモル比が1:1.14~1:3.00であり、具体的には1:1.14~1:2.00、1:1.14~1:1.50、1:1.14~1:1.30、または1:1.14~1:1.25であってもよい。
【0056】
エチレンおよびα-オレフィン系単量体のモル比が上記範囲である場合、多くのα-オレフィン系単量体により非結晶領域の割合が高いエチレン/α-オレフィン共重合体が製造され、同時に、α-オレフィン系単量体が過度に多く用いられると、結晶領域が過度に低くなり、フィルム製造時にフィルムのたるみ現象により加工が難しく、製造後にフィルムの剛性が低下し、表面に粘着性(Sticky)があって保管が難しいという問題がある。
【0057】
また、本発明で定義したエチレン/α-オレフィン共重合体の(a)~(d)条件の場合、上記のようにエチレンおよびα-オレフィン系単量体のモル比が適正レベルに調節されることで達成できる物性である。具体的に、エチレン対α-オレフィン系単量体が少ない場合には、共重合体中の結晶性領域が増加し、溶融温度が上昇し、結晶化度が増加し、d-spacingが減少し、本発明で定義する(b)~(d)条件を満たすことができない。その逆に、エチレン対α-オレフィン系単量体が過剰である場合には、結晶性領域が減少し、剛性が低下するため、正常なフィルム加工が不可能であり、封止材フィルム用組成物として活用し難い問題が生じ得る。
【0058】
また、重合に用いられる遷移金属化合物は、下記化学式1で表される化合物、下記化学式2で表される化合物、またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されない。
【0059】
【0060】
前記化学式1中、
R1は、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアリールアルコキシ;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであり、
R2およびR3は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;または炭素数6~20のアリールアミドであり、
R4およびR5は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、
R6~R9は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、
前記R6~R9のうち互いに隣接する2つ以上が互いに連結されて環を形成してもよく、
Q1は、Si、C、N、P、またはSであり、
M1は、Ti、Hf、またはZrであり、
X1およびX2は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミノ;または炭素数6~20のアリールアミノであり、
【0061】
【0062】
前記化学式2中、
R10は、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアリールアルコキシ;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであり、
R11a~R11eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;または炭素数6~20のアリールであり、
R12は、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;または炭素数6~20のアリールアミドであり、
R13およびR14は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、
R15~R18は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、
前記R15~R18のうち互いに隣接する2つ以上が互いに連結されて環を形成してもよく、
Q2は、Si、C、N、P、またはSであり、
M2は、Ti、Hf、またはZrであり、
X3およびX4は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミノ;または炭素数6~20のアリールアミノである。
【0063】
本発明において、前記化学式1で表される遷移金属化合物および化学式2で表される遷移金属化合物は、環状の結合によりベンゾチオフェンが縮合したシクロペンタジエン、およびアミド基(N-R1、N-R10)がQ1またはQ2により安定に架橋され、4族遷移金属が配位結合した構造を形成する。
【0064】
化学式1で表される遷移金属化合物を触媒とし、エチレンおよびα-オレフィン系単量体の重合反応に用いる場合、高い重合温度においても高活性、高分子量、および高共重合性の特徴を有する共重合体を製造することが可能である。特に、触媒の構造的特徴上、α-オレフィン系単量体の導入が難しく、高密度領域の共重合体が製造される傾向を示す。これに対し、前記化学式2の遷移金属化合物は、多量のα-オレフィンの導入が可能であるため、超低密度領域の重合体(エラストマー)も製造することができる。
【0065】
このように、本発明で用いられる化学式1または2で表される遷移金属化合物を混合して触媒組成物に用いるが、上述のように化学式1または2の遷移金属化合物は、それぞれ単独で用いる際にα-オレフィン系単量体を混入させる共重合性が異なるため、これらを混合して共重合体を製造する場合、α-オレフィン系単量体が多量混入された低密度領域、およびα-オレフィン系単量体が少量混入された高密度領域の両方が存在する共重合体を製造することができる。これは、共重合体の結晶性分布が高く、自由体積(free volume)が低いことを意味するので、低い電荷移動度(mobility)を示すため、電気絶縁性が高い優れた物性を示す。
【0066】
本発明において、前記化学式1および化学式2で表される遷移金属化合物のモル比は1:1.2~1:10、1:1.5~1:9、1:1.5~1:7、1:2~1:7、1:2~1:5、または1:2~1:3であることを特徴とする。
【0067】
化学式1で表される遷移金属化合物を単独で用いたり、前記モル比を外れて化学式1で表される遷移金属化合物が過剰である場合、または化学式2で表される遷移金属化合物を単独で用いたり、前記モル比を外れて化学式2で表される遷移金属化合物が過剰である場合、結晶性分布が低く、電気絶縁性に優れない共重合体が製造されることがある。
【0068】
本発明において、前記重合反応は、前記触媒組成物の存在下で、水素を連続的に投入してエチレンおよびα-オレフィン系単量体を連続重合させることで行われてもよく、具体的に、水素を10~100cc/分で投入しつつ行われてもよい。
【0069】
前記水素ガスは、重合初期の遷移金属化合物の急激な反応を抑制し、重合反応を終結させる役割をする。これにより、このような水素ガスの使用および使用量の調節により、狭い分子量分布を有するエチレン/α-オレフィン共重合体を効果的に製造することができる。
【0070】
例えば、前記水素は10cc/分以上、15cc/分以上、19cc/分以上、または22cc/分以上で投入されてもよく、同時に、100cc/分以下、50cc/分以下、45cc/分以下、35cc/分以下、または29cc/分以下で投入されてもよい。前記条件で投入される場合、製造されるエチレン/α-オレフィン重合体が本発明における物性的特徴を実現することができる。
【0071】
仮に水素ガスの含量が10cc/分未満で投入される場合には、重合反応の終結が均一に行われず、所望の物性を有するエチレン/α-オレフィン共重合体の製造が難しくなり得、また、100cc/分超過で投入される場合には、終結反応が過度に早く行われ、分子量が非常に低いエチレン/α-オレフィン共重合体が製造される恐れがある。
【0072】
また、前記重合反応は100~200℃で行われてもよく、前記水素投入量とともに重合温度を制御することで、エチレン/α-オレフィン共重合体中の不飽和官能基数および分子量分布をさらに容易に調節することができる。具体的に、前記重合反応は100~200℃、120~180℃、130~170℃、135~150℃で行われてもよい。
【0073】
具体的に、前記化学式1中、R1は、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアリールアルコキシ;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであり、より具体的に、R1は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、イソプロピル、シクロヘキシル、ベンジル、フェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、フルオロフェニル、ブロモフェニル、クロロフェニル、ジメチルフェニル、またはジエチルフェニルであってもよい。
【0074】
具体的に、前記化学式1中、前記R2およびR3は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;または炭素数6~20のアリールアミドであり、より具体的に、前記R2およびR3は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数6~20のアリール;炭素数6~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであってもよい。
【0075】
具体的に、前記化学式1中、前記R4およびR5は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、より具体的に、炭素数1~6のアルキルであってもよい。さらに具体的に、前記R4およびR5は、メチル、エチル、またはプロピルであってもよい。
【0076】
具体的に、前記化学式1中、前記R6~R9は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルである。より具体的に、前記R6~R9は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素またはメチルであってもよい。
【0077】
前記R6~R9のうち互いに隣接する2つ以上が互いに連結されて炭素数5~20の脂肪族環または炭素数6~20の芳香族環を形成してもよく、前記脂肪族環または芳香族環は、ハロゲン、炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、または炭素数6~20のアリールで置換されていてもよい。
【0078】
具体的に、前記化学式1中、Q1は、Si、C、N、P、またはSであり、より具体的に、Q1は、Siであってもよい。
具体的に、前記化学式1中、M1は、Ti、Hf、またはZrであってもよい。
【0079】
具体的に、前記化学式1中、X1およびX2は、互いに同一または異なり、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミノ;または炭素数6~20のアリールアミノであってもよい。
【0080】
また、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式のいずれか1つで表される化合物であってもよい。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
この他に、前記化学式1に定義された範囲で様々な構造を有する化合物であってもよい。
また、前記化学式2中、前記R10は、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアリールアルコキシ;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであり、より具体的に、前記R10は、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数1~20のアルコキシ;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアリールアルコキシ;炭素数7~20のアルキルアリール;または炭素数7~20のアリールアルキルであってもよい。
【0088】
具体的に、前記化学式2中、R11a~R11eは、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数1~20のアルコキシ;または炭素数6~20のアリールであり、より具体的に、水素;ハロゲン;炭素数1~12のアルキル;炭素数3~12のシクロアルキル;炭素数2~12のアルケニル;炭素数1~12のアルコキシ;またはフェニルであってもよい。
【0089】
具体的に、前記化学式2中、R12は、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミド;または炭素数6~20のアリールアミドであり、より具体的に、水素;ハロゲン;炭素数1~12のアルキル;炭素数3~12のシクロアルキル;炭素数2~12のアルケニル;またはフェニルであってもよい。
【0090】
具体的に、前記化学式2中、R13およびR14は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、より具体的に、水素;または炭素数1~12のアルキルであってもよい。
【0091】
具体的に、前記化学式2中、R15~R18は、それぞれ独立して、水素;炭素数1~20のアルキル;炭素数3~20のシクロアルキル;炭素数6~20のアリール;または炭素数2~20のアルケニルであり、より具体的に、水素;炭素数1~12のアルキル;または炭素数3~12のシクロアルキル、または水素;またはメチルであってもよい。
【0092】
具体的に、前記化学式2中、前記R15~R18のうち互いに隣接する2つ以上が互いに連結されて環を形成してもよい。
具体的に、前記化学式2中、Q2は、Si、C、N、P、またはSであり、より具体的に、Q2は、Siであってもよい。
【0093】
具体的に、前記化学式2中、X3およびX4は、それぞれ独立して、水素;ハロゲン;炭素数1~20のアルキル;炭素数2~20のアルケニル;炭素数6~20のアリール;炭素数7~20のアルキルアリール;炭素数7~20のアリールアルキル;炭素数1~20のアルキルアミノ;または炭素数6~20のアリールアミノであり、より具体的に、水素;ハロゲン;炭素数1~12のアルキル;炭素数3~12のシクロアルキル;または炭素数2~12のアルケニルであってもよく、さらに具体的に、水素;または炭素数1~12のアルキルであってもよい。
【0094】
また、前記化学式2で表される化合物は、具体的に、下記化学式2-1~2-10で表される化合物のいずれか1つであってもよい。
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
本発明において、共単量体であるα-オレフィン系単量体は、炭素数4~20のオレフィン系単量体であってもよい。具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、または1-エイコセンなどが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。
中でも、前記α-オレフィン単量体は、1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテンであってもよく、最も好ましくは1-ブテンであってもよい。
【0106】
本発明において、前記α-オレフィン系単量体の含量は、上記の物性的要件を満たす範囲内で適宜選択されてもよく、具体的には0超過99モル%以下、または10~50モル%であってもよい。
【0107】
<封止材フィルム用組成物>
また、本発明は、前記エチレン/α-オレフィン共重合体を含む、封止材フィルム用組成物を提供する。前記封止材フィルム用組成物を用いて、変性樹脂組成物、例えば、シラン変性樹脂組成物またはアミノシラン変性樹脂組成物を製造することができる。
【0108】
具体的に、前記封止材フィルム用組成物は、上述のエチレン/α-オレフィン共重合体の他に、公知の架橋剤、架橋助剤、シランカップリング剤などを含んでもよい。
【0109】
前記架橋剤は、シラン変性樹脂組成物の製造ステップでは、ラジカル開始剤として、樹脂組成物に不飽和シラン化合物がグラフトされる反応を開始する役割をすることができる。また、光電子装置の製造時にラミネートするステップにおいて、前記シラン変性樹脂組成物の間、またはシラン変性樹脂組成物と非変性樹脂組成物との間に架橋結合を形成することで、最終製品、例えば、封止材シートの耐熱耐久性を向上させることができる。
【0110】
前記架橋剤は、ビニル基のラジカル重合を開始できるかまたは架橋結合を形成できる架橋性化合物であれば、技術分野で公知の様々な架橋剤を多様に用いることができ、例えば、有機過酸化物、ヒドロ過酸化物、およびアゾ化合物からなる群から選択される1種または2種以上を用いてもよい。
【0111】
具体的には、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-クミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3-ヘキシンなどのジアルキルパーオキサイド類;クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルヒドロパーオキサイドなどのヒドロパーオキサイド類;ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)-3-ヘキシンなどのパーオキシエステル類;およびメチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、ラウリルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、およびアゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物からなる群から選択される1種以上が挙げられるが、これに限定されない。
【0112】
前記有機過酸化物は120~135℃、例えば120~130℃、120~125℃、好ましくは121℃の1時間半減期温度を有する有機過酸化物であってもよい。前記「1時間半減期温度」とは、前記架橋剤の半減期が1時間になる温度を意味する。前記1時間半減期温度に応じて、ラジカル開始反応が効率的に起こる温度が異なる。したがって、上述の範囲の1時間半減期温度を有する有機過酸化物を架橋剤として用いる場合、光電子装置を製造するためのラミネート工程温度でラジカル開始反応、すなわち、架橋反応が効果的に行われることができる。
【0113】
前記架橋剤は、前記封止材フィルム用組成物100重量部に対して0.01~1重量部、例えば0.05~0.55、0.1~0.5、または0.15~0.45重量部の含量で含まれる。前記架橋剤が0.01重量部未満で含まれる場合には、耐熱特性の向上効果が微々たるものであり、1重量部を超えて含まれる場合には、封止材シートの成形性が低下し、工程上の制約が発生する問題が生じ得、封止材の物性に影響を与え得る。
【0114】
また、前記樹脂組成物は、前記架橋剤の他に、架橋助剤を含んでもよい。前記架橋助剤が樹脂組成物に含まれることで、上述の架橋剤による樹脂組成物間の架橋度を高めることができ、これにより、最終製品、例えば、封止材シートの耐熱耐久性をさらに向上させることができる。
【0115】
前記架橋助剤としては、技術分野で公知の様々な架橋助剤を用いてもよく、例えば、前記架橋助剤として、アリル基または(メタ)アクリルオキシ基などの不飽和基を少なくとも1つ以上含有する化合物を用いてもよい。
【0116】
前記アリル基を含有する化合物としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルフマレート、またはジアリルマレエートのようなポリアリル化合物が挙げられ、前記(メタ)アクリルオキシ基を含有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなポリ(メタ)アクリルオキシ化合物などが挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0117】
前記架橋助剤は、前記封止材フィルム用組成物100重量部に対して0.01~0.5重量部、例えば0.01~0.3、0.015~0.2、または0.016~0.16重量部の含量で含まれる。前記架橋助剤が0.01重量部未満で含まれる場合には、耐熱特性の向上効果が微々たるものであり、0.5重量部を超えて含まれる場合には、最終製品、例えば、封止材シートの物性に影響を及ぼす問題が生じ、生産単価が増加し得る。
【0118】
また、前記封止材フィルム用組成物は、前記エチレン/α-オレフィン共重合体、架橋剤、および架橋助剤の他に、シランカップリング剤をさらに含んでもよい。
【0119】
前記シランカップリング剤としては、例えば、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)からなる群から選択される1種以上を用いてもよい。
【0120】
前記シランカップリング剤は、封止材フィルム用組成物100重量部に対して0.1~0.4重量部で含まれてもよい。0.1重量部未満で用いられる場合には、太陽光モジュールの作製時にガラスとの接着力が不良であって水分が浸透しやすく、モジュールの長期性能を保障することができず、1重量部以上で用いられる場合には、Y.Iの増加要因として作用するため好ましくない。
【0121】
また、前記封止材フィルム用組成物は、不飽和シラン化合物、アミノシラン化合物をさらに含んでもよい。
前記不飽和シラン化合物は、ラジカル開始剤などの存在下で、本発明の共重合体の単量体の重合単位を含む主鎖にグラフト(grafting)され、シラン変性樹脂組成物またはアミノシラン変性樹脂組成物に重合された形態で含まれてもよい。
【0122】
前記不飽和シラン化合物は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペントキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、またはビニルトリアセトキシシランなどであってもよく、一例として、中でもビニルトリメトキシシランまたはビニルトリエトキシシランを用いてもよいが、これに限定されない。
【0123】
また、前記アミノシラン化合物は、エチレン/α-オレフィン共重合体のグラフト変性ステップにおいて、共重合体の主鎖にグラフトされた不飽和シラン化合物、例えば、ビニルトリエトキシシランのアルコキシ基のような反応性官能基をヒドロキシ基に転換する加水分解反応を促進させる触媒として作用することで、上下部のガラス基板またはフッ素樹脂などで構成される裏面シートとの接着強度をさらに向上させることができる。また、同時に、前記アミノシラン化合物は、共重合反応に反応物としても直接関与することで、アミノシラン変性樹脂組成物にアミン官能基を有する成分を提供することができる。
【0124】
前記アミノシラン化合物としては、アミン基を含むシラン化合物として、第1級アミン、第2級アミンであれば特に限定されない。例えば、アミノシラン化合物としては、アミノトリアルコキシシラン、アミノジアルコキシシランなどを用いてもよく、その例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(3-aminopropyltrimethoxysilane;APTMS)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxysilane;APTES)、ビス[(3-トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]アミン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine;DAS)、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノエチルアミノメチルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノメチルメチルジエトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリエトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ジエチレンアミノメチルメチルジエトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルトリメトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルトリエトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルメチルジメトキシシラン、(N-フェニルアミノ)メチルメチルジエトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(N-フェニルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、およびN-(N-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上が挙げられる。前記アミノシラン化合物は、単独でまたは混合して用いてもよい。
前記不飽和シラン化合物および/またはアミノシラン化合物の含量は特に限定されない。
【0125】
また、前記封止材フィルム用組成物は、必要に応じて、光安定剤、UV吸収剤、および熱安定剤などから選択される1種以上の添加剤をさらに含んでもよい。
【0126】
前記光安定剤は、前記組成物が適用される用途に応じて、樹脂の光劣化開始の活性種を捕捉し、光酸化を防止する役割をすることができる。使用可能な光安定剤の種類は、特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系化合物またはヒンダードピペリジン系化合物などの公知の化合物を用いてもよい。
【0127】
前記UV吸収剤は、組成物の用途に応じて、太陽光などからの紫外線を吸収し、分子内で無害な熱エネルギーに変換させ、樹脂組成物中の光劣化開始の活性種が励起されるのを防止する役割をすることができる。使用可能なUV吸収剤の具体的な種類は、特に限定されず、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、アクリルニトリル系、金属錯塩系、ヒンダードアミン系、超微粒子酸化チタンまたは超微粒子酸化亜鉛などの無機系UV吸収剤などの1種または2種以上の混合物を用いてもよい。
【0128】
また、前記熱安定剤の例としては、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルエステル亜リン酸、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルビスホスホネート、およびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系熱安定剤;8-ヒドロキシ-5,7-ジ-tert-ブチル-フラン-2-オンとo-キシレンとの反応生成物などのラクトン系熱安定剤が挙げられ、上記のうち1種または2種以上を用いてもよい。
【0129】
前記光安定剤、UV吸収剤、および/または熱安定剤の含量は特に限定されない。すなわち、前記添加剤の含量は、樹脂組成物の用途、添加剤の形状や密度などを考慮して適宜選択されてもよく、通常、封止材フィルム用組成物の全固形分100重量部に対して0.01~5重量部の範囲内で適宜調節されてもよい。
【0130】
また、本発明の封止材フィルム用組成物は、上記の成分の他に、樹脂成分が適用される用途に応じて、当該分野で公知の様々な添加剤を適切にさらに含んでもよい。
【0131】
また、前記封止材フィルム用組成物は、射出、押出などの方法で成形し、様々な成形品として活用することができ、具体的に、様々な光電子装置(optoelectronic device)、例えば、太陽電池などにおいて素子をカプセル化する封止材(Encapsulant)として用いることができ、例えば、昇温ラミネート工程などに適用される産業用材料として用いることができるが、これらの用途に限定されるものではない。
【0132】
実施例
以下、実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらのみに限定されるものではない。
【0133】
製造例1
(1)リガンド化合物の製造
<N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-ジメチルシランアミンの合成>
【0134】
100mlのシュレンクフラスコに、化学式3の化合物4.65g(15.88mmol)を定量して添加した後、これにTHF 80mlを投入した。常温でtBuNH2(4eq、6.68ml)を投入した後、常温で3日間反応させた。反応後、THFを除去した後、ヘキサンで濾過した。溶媒乾燥後、黄色液体を4.50g(86%)の収率で得た。
【0135】
1H-NMR(in CDCl3,500MHz):7.99(d,1H),7.83(d,1H),7.35(dd,1H),7.24(dd,1H),3.49(s,1H),2.37(s,3H),2.17(s,3H),1.27(s,9H),0.19(s,3H),-0.17(s,3H)。
【0136】
【0137】
50mlのシュレンクフラスコに、前記リガンド化合物(1.06g、3.22mmol/1.0eq)およびMTBE 16.0mL(0.2M)を入れて先に撹拌した。-40℃でn-BuLi(2.64ml、6.60mmol/2.05eq、2.5M in THF)を入れ、常温で一晩反応させた。その後、-40℃でMeMgBr(2.68ml、8.05mmol/2.5eq、3.0M in ジエチルエーテル)を徐々に滴下した後、TiCl4(2.68ml、3.22mmol/1.0eq、1.0M in トルエン)を順に入れ、常温で一晩反応させた。その後、反応混合物をヘキサンを用いてセライト(Celite)を通して濾過した。溶媒乾燥後、褐色固体を1.07g(82%)の収率で得た。
【0138】
1H-NMR(in CDCl3,500MHz):7.99(d,1H),7.68(d,1H),7.40(dd,1H),7.30(dd,1H),3.22(s,1H),2.67(s,3H),2.05(s,3H),1.54(s,9H),0.58(s,3H),0.57(s,3H),0.40(s,3H),-0.45(s,3H)。
【0139】
製造例2
(1)リガンド化合物の製造
<N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランアミンの合成>
【0140】
(i)クロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランの製造
【0141】
250mLのシュレンクフラスコに、1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン10g(1.0eq、49.925mmol)とTHF 100mLを入れ、n-BuLi 22mL(1.1eq、54.918mmol、2.5M in ヘキサン)を-30℃で滴下した後、常温で3時間撹拌した。撹拌したLi-complex THF溶液を、ジクロロ(メチル)(フェニル)シラン8.1mL(1.0eq、49.925mmol)とTHF 70mLが入ったシュレンクフラスコに-78℃でカニュレーションした後、常温で一晩撹拌した。撹拌後、真空乾燥した後、ヘキサン100mLで抽出した。
【0142】
(ii)N-tert-ブチル-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランアミンの製造
【0143】
抽出したクロロ-1-(1,2-ジメチル-3H-ベンゾ[b]シクロペンタ[d]チオフェン-3-イル)-1,1-(メチル)(フェニル)シランヘキサン溶液100mLにt-BuNH2 42mL(8eq、399.4mmol)を常温で投入した後、常温で一晩撹拌した。撹拌後、真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出した。溶媒乾燥後、黄色固体13.36g(68%、dr=1:1)を得た。
【0144】
1H-NMR(CDCl3,500MHz):δ7.93(t,2H),7.79(d,1H),7.71(d,1H),7.60(d,2H),7.48(d,2H),7.40~7.10(m,10H,aromatic),3.62(s,1H),3.60(s,1H),2.28(s,6H),2.09(s,3H),1.76(s,3H),1.12(s,18H),0.23(s,3H),0.13(s,3H)
【0145】
【0146】
100mLのシュレンクフラスコに、前記化学式2-4のリガンド化合物4.93g(12.575mmol、1.0eq)とトルエン50mL(0.2M)を入れ、n-BuLi 10.3mL(25.779mmol、2.05eq、2.5M in ヘキサン)を-30℃で滴下した後、常温で一晩撹拌した。撹拌後、MeMgBr 12.6mL(37.725mmol、3.0eq、3.0M in ジエチルエーテル)を滴下した後、TiCl4 13.2mL(13.204mmol、1.05eq、1.0M in トルエン)を順に入れ、常温で一晩撹拌した。撹拌後、真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出し、50mLまで溶媒を除去してからDME 4mL(37.725mmol、3.0eq)を滴下した後、常温で一晩撹拌した。再び真空乾燥した後、ヘキサン150mLで抽出した。溶媒乾燥後、褐色固体2.23g(38%、dr=1:0.5)を得た。
【0147】
1H-NMR(CDCl3,500MHz):δ7.98(d,1H),7.94(d,1H),7.71(t,6H),7.50~7.30(10H),2.66(s,3H),2.61(s,3H),2.15(s,3H),1.62(s,9H),1.56(s,9H),1.53(s,3H),0.93(s,3H),0.31(s,3H),0.58(s,3H),0.51(s,3H),-0.26(s,3H),-0.39(s,3H)
【0148】
実施例1
1.5Lの連続工程反応器に、ヘキサン溶媒を7.0kg/h、1-ブテンを1.09kg/hで投入しつつ135℃で予熱した。トリイソブチルアルミニウム化合物(0.045mmol/分)、前記製造例1および製造例2で得られた遷移金属化合物を3:7のモル比で混合した混合物(0.150μmol/分)、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート助触媒(0.30μmol/分)を同時に反応器に投入した。次いで、前記反応器内にエチレン(0.87kg/h)および水素ガス(20cc/分)を投入し、89barの圧力で、連続工程で135℃に60分以上維持させて共重合反応を行うことで共重合体を得た。その後、真空オーブンで12時間以上乾燥した後に物性を測定した。
【0149】
実施例2~4、比較例1~5
重合条件を下記表1のように変更したことを除いては、実施例1と同様にエチレン/α-オレフィン共重合体を製造した。
【0150】
【0151】
実験例1
前記実施例および比較例で製造されたエチレン/α-オレフィン共重合体に対し、下記の方法で物性を測定した。
【0152】
(1)密度(Density、g/cm3)
ASTM D-792に準じて測定した。
【0153】
(2)溶融指数(Melt Index、MI2.16、dg/分)
ASTM D-1238(条件E、190℃、2.16kgの荷重)に準じて測定した。
【0154】
(3)溶融流動指数(Melt flow rate ratio、MFRR、MI10/MI2)
ASTM D-1238に準じてMI10(190℃、10kgの荷重条件)およびMI2.16(190℃、2.16kgの荷重条件)を測定し、MI10/MI2.16により計算した。
【0155】
(4)溶融温度(Melting Temperature、Tm)
PerkinElmer社製の示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimeter、DSC 6000)を用いて得ることができる。具体的に、DSCを用いて、窒素雰囲気下で、共重合体に対して温度を150℃まで上昇させて1分間維持した後、-100℃まで冷却し、再び温度を150℃まで上昇させ、DSC曲線を観察した。この際、昇温速度および冷却速度はそれぞれ10℃/分とした。
【0156】
(5)d-spacing
前記エチレン/α-オレフィン共重合体を1Tの正方形の型に入れ、正面および背面を3Tの鋼板で覆った後、それを高温プレス機に投入した。190℃、25N/cm2で240秒間、6回の減圧/加圧脱気(degassing)、190℃、151N/cm2で240秒間連続して処理した後、分当り15℃下げつつ30℃に冷却し、この際、圧力を151N/cm2に維持した。30℃、151N/cm2で300秒間維持させ、試験片の製造を完了した。
【0157】
上記で製造された厚さ1mmの1cm×1cm(横×縦)の試験片に対し、Xenocs社製のモデル名Xeuss2.0のX線散乱装置を用いて、検出器(Detector)から約2.5m離れた位置に試料を置き、X線を入射して測定した。検出器としては、Pilatus3 300K(2D検出器)を用いた。そして、散乱して出る2D回折パターンをイメージとして得、それを標準試料により得られたsample-to-detector距離を用いてキャリブレーションし、circular averageにより散乱ベクトル(q)による散乱強度(I(q))を換算した。
【0158】
[数式1]
q=4πsinθ/λ
【0159】
前記数式1中、
qは、散乱ベクトルであり、θは、散乱角度の1/2値であり、λは、照射されたX線の波長である。
【0160】
結晶ドメインの距離は、SAXSにより得られた散乱ベクトル(q)による散乱強度(I(q))を測定して分析した。測定された散乱強度(I(q))に散乱ベクトル(q)の二乗を乗じ、散乱ベクトル(q)によるI(q)×q2のグラフにおいてピークが観察される。この際、観察されたピークの散乱ベクトル値(q*)を用いて、結晶ドメイン間の距離(d-spacing)を得た。
【0161】
[数式2]
d-spacing=2π/q*
【0162】
前記数式2中、
前記q*は、散乱ベクトル(q)によるI(q)×q2のグラフのピークにおける散乱ベクトル値を示す。
【0163】
(6)結晶化度
上記で製造された厚さ1mmの1cm×1cm(横×縦)の試験片に対し、Xenocs社製のモデル名Xeuss2.0のX線散乱装置を用いて、試料にX線を透過させ、散乱ベクトル(q)による散乱強度(I(q))を測定した。検出器(Detector)から約0.7m離れた位置に試料を置き、X線を入射して測定した。検出器としては、Pilatus3 300K(2D検出器)を用いた。WAXSは、平行ビーム法(parallel beam method)であって、透過時に試料と衝突して発生するX線の干渉を測定することを原理として、結晶構造に起因したピークを指定(assign)し、全領域に対して結晶性ピークの領域がどれほど占めるかを計算して結晶化度を求める。
【0164】
具体的に、WAXSにより得られた散乱ベクトル(q)による散乱または回折強度(I(q))を測定して分析した。得られた散乱または回折強度においてAmorphous halo(Ia(q))、Mesophase(Im(q))、およびCrystal(Ic(q))による回折ピークをデコンボリューション(deconvolution)した。具体的に、回折ピークのデコンボリューション(deconvolution)は、ガウス(Gaussian)とローレンツ(Lorentzian)関数を組み合わせ、下記方法に従って定義した。
【0165】
1)Amorphous halo(
図1の1)は、3個のガウス(Gaussian)関数(
図1の2)の和で定義される。3個のガウス(Gaussian)関数は、それぞれ散乱ベクトル0.943Å
-1、1.369Å
-1、1.812Å
-1にピーク中心を有する。
【0166】
2)Mesophaseによる1つの回折ピーク(lm(q))は、ローレンツ(Lorentzian)関数で定義される。散乱ベクトル1.373Å
-1にピーク中心を有する(
図1の3)。
【0167】
3)Crystalによる2つの回折ピークの和としてガウス(Gaussian)(G)とローレンツ(Lorentzian)(L)関数の割合をそれぞれ1:1で組み合わせて定義する(0.5×G+0.5×L)。散乱ベクトル1.486Å
-1、1.647Å
-1にピーク中心を有する(
図1の4)。
上記の結果から、下記[数式3]を用いて結晶化度を計算した。
【0168】
【0169】
前記数式3中、
Imは、Mesophase Peakであり、
Icは、Crystal Peakであり、
Iaは、Amorphous halo Peakである。
【0170】
(7)硬度(shore A)
前記エチレン/α-オレフィン共重合体を3Tの正方形の型に入れ、正面および背面を3Tの鋼板で覆った後、それを高温プレス機に投入した。190℃、25N/cm2で240秒間、6回の減圧/加圧脱気(degassing)、190℃、151N/cm2で240秒間連続して処理した後、分当り15℃下げつつ30℃に冷却し、この際、圧力を151N/cm2に維持した。30℃、151N/cm2で300秒間維持させ、試験片の製造を完了した。
【0171】
製造された試験片を40℃の恒温恒湿チャンバーで24時間以上エージングした後、Portable硬度測定器を用いて、ASTM D2240に準じてShore A硬度を測定した。この際、試験片をオーブンから取り出すとサンプル温度が変化するため、正確な測定のための40℃のチャンバー内で測定した。
【0172】
【0173】
前記表2のように、本発明に係るエチレン/α-オレフィン共重合体は、d-spacingが12nm以上であり、結晶化度が14%であり、shore A硬度が65以下であり、溶融温度が70℃以下であることを確認した。
【0174】
実験例2
(1)含浸完了時間
架橋剤の含浸は、Thermo Electron(Karlsruhe)GmbH社製のプラネタリーミキサを用いた。エチレン/α-オレフィン共重合体500gにt-ブチル1-(2-エチルヘキシル)モノパーオキシカーボネート(TBEC)1phr(parts per hundred rubber)、テトラキス(ビニルジメチルシロキシ)シラン(TVSS)0.5phr、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)0.2phrを投入した後、40rpmで撹拌しつつ、時間に応じたトルク値の変化を観察し、トルク値が急激に増加する時点で含浸を終了した。架橋剤がエチレン/α-オレフィン共重合体の内部に吸収される前には、潤滑剤の役割をして低いトルク値を維持し、架橋剤が全て吸収されると、トルク値が増加するため、トルク値が急激に増加する時点を含浸完了時間と定義した。
【0175】
(2)架橋度
架橋剤の含浸後、マイクロ押出機を用いて、高温架橋しない程度の低温(押出機のバレル温度が100℃以下の条件)で平均厚さ550μmの封止材フィルムを製造した。
【0176】
架橋度の評価は、CPIA(China Photovoltaic Industry Association)規格およびASTM D2765に準じて行った。上記で製造された封止材フィルムを10cm×10cmに切断した後、150℃で真空ラミネートを20分間(5分真空/1分加圧/14分圧力持続)行い、架橋された試験片を得た。
【0177】
架橋された試験片を適当な大きさに裁断した後、200メッシュの金網ケージに0.5gずつ定量し、キシレン還流(xylene reflux)下で5時間溶解処理した。その後、試験片を真空オーブンで乾燥した後、還流前後の重量を比較し、各試験片の架橋度を測定した。
【0178】
【0179】
前記表のように、本発明に係る実施例のエチレン/α-オレフィン共重合体を用いる場合、架橋剤の含浸完了時間が短縮され、短時間内に架橋を完了できるとともに、比較例に比べて同等以上の架橋度を示すことが分かった。
【国際調査報告】