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特表2024-510346バイオ弾性体を含むゴム組成物およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-06
(54)【発明の名称】バイオ弾性体を含むゴム組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/34 20060101AFI20240228BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240228BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240228BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240228BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20240228BHJP
【FI】
C08C19/34
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/36
C08L15/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557796
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 KR2022017714
(87)【国際公開番号】W WO2023085838
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0155903
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ロ・ミ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ユク・ロル・ナ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・キム
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AC02X
4J002AC03X
4J002AC06X
4J002AC08X
4J002AC09X
4J002AC11W
4J002AC12W
4J002DA036
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002FD016
4J002GN01
4J100AB00Q
4J100AB02Q
4J100AB03Q
4J100AB04Q
4J100AB07Q
4J100AS01P
4J100AS02P
4J100AS03P
4J100AS06P
4J100AS07P
4J100BC04Q
4J100BC43P
4J100BC65Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100CA31
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA47
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100GA06
4J100GA18
4J100GC04
4J100GC25
4J100GC29
4J100HA35
4J100HA57
4J100HA61
4J100HC33
4J100HC34
4J100HC39
4J100HC83
4J100HE05
4J100HE14
4J100HE41
4J100JA29
(57)【要約】
本発明は、粘弾性特性、耐磨耗性に優れ、且つ時間経過に伴う老化を防止することで長期使用が可能なゴム組成物およびその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1共役ジエン系重合体由来の単位および植物油由来の単位を含み、且つ前記第1共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が100,000g/mol未満であるバイオ弾性体と、
(b)第2共役ジエン系重合体とを含む、ゴム組成物。
【請求項2】
前記第1共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が1,000g/mol~80,000g/molである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記植物油は、大豆油、菜種油、キャノーラ油、ひまわり油、亜麻仁油、米ぬか油、パーム油、オリーブ油、落花生油、ヤシ油、綿実油およびココナッツ油からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記植物油は、エポキシ化植物油であり、エポキシ化大豆油、エポキシ化菜種油、エポキシ化キャノーラ油、エポキシ化ひまわり油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化米ぬか油、エポキシ化パーム油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化落花生油、エポキシ化ヤシ油、エポキシ化綿実油およびエポキシ化ココナッツ油からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記第2共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位および芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位を含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記バイオ弾性体は、第2共役ジエン系重合体100重量部に対して5重量部~50重量部である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項7】
充填剤をさらに含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記充填剤は、シリカ系充填剤およびカーボンブラック系充填剤からなる群から選択される1種以上である、請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
(S1)第1共役ジエン系重合体由来の単位および植物油由来の単位を含み、且つ前記第1共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が100,000g/mol未満であるバイオ弾性体を準備するステップと、
(S2)炭化水素溶媒の中で、重合開始剤の存在下で、共役ジエン系単量体または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を重合して第2共役ジエン系重合体を製造するステップと、
(S3)前記バイオ弾性体と第2共役ジエン系重合体を混合するステップとを含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(S1)は、共役ジエン系単量体を重合して、重量平均分子量が100,000g/mol未満である活性重合体を製造するステップと、前記活性重合体と植物油を反応させるステップとを含んで行われる、請求項9に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項11】
前記植物油は、共役ジエン系単量体100重量部に対して0.1重量部~50重量部である、請求項10に記載のゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月12日付けの韓国特許出願第10-2021-0155903号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、粘弾性特性、耐磨耗性に優れ、且つ時間経過に伴う老化を防止することで長期使用が可能なゴム組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、自動車に対する低燃費化のニーズに応じて、タイヤ用ゴム材料として転がり抵抗が少なく、耐磨耗性、引張特性に優れ、ウェット路面抵抗性に代表される操縦安定性も兼ねた共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの転がり抵抗を減少させるためには、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法があり、このような加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられる。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損が小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴムまたはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェット路面抵抗性が小さいという問題がある。そのため、最近、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRとする)またはブタジエンゴム(以下、BRとする)といった共役ジエン系重合体または共重合体が、乳化重合や溶液重合により製造されてタイヤゴムとして用いられている。このうち、乳化重合に対して溶液重合が持っている最大の利点は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や、変性(modification)などによって分子量および物性などを調節できるという点である。したがって、最終製造されたSBRもしくはBRの構造変化が容易であり、鎖末端の結合や変性によって鎖末端の動きを低減し、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができ、溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として多く使用されている。
【0006】
このような溶液重合SBRがタイヤ用ゴム材料として使用される場合、前記SBR内のビニルの含量を増加させることで、ゴムのガラス転移温度を上昇させて走行抵抗および制動力などのタイヤ要求物性を調節するだけでなく、ガラス転移温度を適切に調節することで、燃料消費を低減することができる。前記溶液重合SBRは、アニオン重合開始剤を使用して製造し、形成された重合体の鎖末端を様々な変性剤を用いて結合または変性させて使用されている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下で、スチレン-ブタジエンを重合して得られた重合体の鎖末端の活性アニオンをスズ化合物などの結合剤を使用して結合した技術を提示している。
【0007】
また、溶液重合SBRの加工性の改善のための目的で、油展SBR(oil-extended SBR)が開発され使用されている。
【0008】
前記油展SBRは、一般的に、乳化重合または溶液重合によってSBRを製造し、溶媒を除去する前に石油系オイルを添加し、次に、溶媒を除去する方法により製造され、重合体内に前記石油系オイルが残存することで、前記SBRの加工性を改善する。このような油展SBRは、これを含むゴム組成物に適用する時に、他のゴムおよび添加剤と容易に配合され、加工中に分解され難く、最終製品により優れた特性を提供する特性があり、多数の有益な特性を取得するために、様々な分野において使用されている。
【0009】
しかし、石油系オイルの場合、様々な環境問題を引き起こすため、油展SBRが有する有効な特性を有し、且つ環境にやさしいことから様々な産業に適用することができる製品の開発が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US4397994 A
【特許文献2】KR10-2020-0031529 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、粘弾性特性、耐磨耗性に優れ、且つ時間経過に伴う老化を防止することで長期使用が可能なゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、ゴム組成物およびその製造方法を提供する。
【0013】
(1)本発明は、(a)第1共役ジエン系重合体由来の単位および植物油由来の単位を含み、且つ前記第1共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が100,000g/mol未満であるバイオ弾性体と、(b)第2共役ジエン系重合体とを含むゴム組成物を提供する。
【0014】
(2)本発明は、前記(1)において、前記第1共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が1,000g/mol~80,000g/molであるゴム組成物を提供する。
【0015】
(3)本発明は、前記(1)または(2)において、前記植物油は、大豆油、菜種油、キャノーラ油、ひまわり油、亜麻仁油、米ぬか油、パーム油、オリーブ油、落花生油、ヤシ油、綿実油およびココナッツ油からなる群から選択される1種以上であるゴム組成物を提供する。
【0016】
(4)本発明は、前記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記植物油は、エポキシ化植物油であり、エポキシ化大豆油、エポキシ化菜種油、エポキシ化キャノーラ油、エポキシ化ひまわり油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化米ぬか油、エポキシ化パーム油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化落花生油、エポキシ化ヤシ油、エポキシ化綿実油およびエポキシ化ココナッツ油からなる群から選択される1種以上であるゴム組成物を提供する。
【0017】
(5)本発明は、前記(1)~(4)のいずれか一つにおいて、前記第2共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位および芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位を含むゴム組成物を提供する。
【0018】
(6)本発明は、前記(1)~(5)のいずれか一つにおいて、前記バイオ弾性体は、第2共役ジエン系重合体100重量部に対して5重量部~50重量部であるゴム組成物を提供する。
【0019】
(7)本発明は、前記(1)~(6)のいずれか一つにおいて、充填剤をさらに含むゴム組成物を提供する。
【0020】
(8)本発明は、前記(7)において、前記充填剤は、シリカ系充填剤およびカーボンブラック系充填剤からなる群から選択される1種以上であるゴム組成物を提供する。
【0021】
(9)本発明は(S1)第1共役ジエン系重合体由来の単位および植物油由来の単位を含み、且つ前記第1共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が100,000g/mol未満であるバイオ弾性体を準備するステップと、(S2)炭化水素溶媒の中で、重合開始剤の存在下で、共役ジエン系単量体または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を重合して第2共役ジエン系重合体を製造するステップと、(S3)前記バイオ弾性体と第2共役ジエン系重合体を混合するステップとを含む、ゴム組成物の製造方法を提供する。
【0022】
(10)本発明は、前記(9)において、前記ステップ(S1)は、共役ジエン系単量体を重合して、重量平均分子量が100,000g/mol未満である活性重合体を製造するステップと、前記活性重合体と植物油を反応させるステップとを含んで行われるゴム組成物の製造方法を提供する。
【0023】
(11)本発明は、前記(10)において、前記植物油は、共役ジエン系単量体100重量部に対して0.1重量部~50重量部であるゴム組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によるゴム組成物は、粘弾性特性、耐磨耗性に優れ、且つ時間経過に伴う老化を防止することで長期使用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をさらに詳細に説明する。
【0026】
本発明の説明および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
一般的に、共役ジエン系重合体などの合成ゴムの柔軟性、弾性、配合性などを向上させるためには、合成ゴムに石油系オイルを混合して製品を製造する。しかし、石油系オイルは、環境にやさしくない素材であり、様々な環境問題を引き起こすため、環境にやさしい素材の開発の必要性が高まっている。
【0029】
これに関して、石油系オイルの代わりに、環境にやさしい素材である植物から由来した植物油を用いる方法が考案されている。しかし、耐磨耗性の向上のために、植物油など天然オイルや低分子量の液状ゴムをゴム組成物の配合時に投入するか、重合が完了したゴムに天然オイルを追加してストリッピング工程で製品を製造する場合、摩耗物性は向上するが、低い粘度によって投入設備のロスが多く発生し、燃費が低下する問題が生じる。
【0030】
また、天然オイルの場合、マイグレーション(migration)現象によって、タイヤなどの製品に適用した時に老化による物性の低下が明らかに現れる限界も指摘されている。
【0031】
上記問題を解決するために、本発明では、ゴム組成物の製造時に従来使用されていた石油系オイルや天然オイルなどの代わりに、アニオン性共役ジエン系重合体と植物油を反応させて製造したバイオ弾性体を使用している。結果、本発明によるゴム組成物は、一様に優れた粘弾性特性、耐磨耗性などを有し、且つ老化現象が抑制されて物性安定性が向上する効果がある。
【0032】
ゴム組成物
本発明のゴム組成物は、(a)第1共役ジエン系重合体由来の単位および植物油由来の単位を含み、且つ前記第1共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が100,000g/mol未満であるバイオ弾性体と、(b)第2共役ジエン系重合体とを含む。
【0033】
(a)バイオ弾性体
本発明において、前記バイオ弾性体は、第1共役ジエン系重合体由来の単位および植物油由来の単位を含む。
【0034】
本明細書において、用語「由来の単位」は、ある物質から起因した成分、構造またはその物質自体を意味することができる。前記第1共役ジエン系重合体由来の単位は、第1共役ジエン系重合体をなす共役ジエン系単量体が重合時になす繰り返し単位を意味することができ、植物油由来の単位は、植物油化合物から由来した構造を意味することができる。
【0035】
本発明のバイオ弾性体は、再生可能な有機資源であるバイオマス、すなわち、植物油と第1共役ジエン系重合体を反応させて取得した油展共役ジエン系重合体を意味することができる。例えば、植物から得られるトリグリセリド(triglyceride)などの植物油を、共役ジエン系単量体をリビング(living)アニオン重合して製造した活性重合体、すなわち、アニオン性共役ジエン系重合体と反応させて、取得する物質であることができる。
【0036】
前記反応によって製造されたバイオ弾性体は、第1共役ジエン系重合体から由来した第1共役ジエン系重合体由来の単位と植物油から由来した植物油由来の単位を含む。
【0037】
前記第1共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体を重合して製造され、共役ジエン系単量体由来の単位を含むことができ、ここで、共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエンおよび2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択される1種以上であることができ、具体的には、1,3-ブタジエンであることができるが、これに制限されない。
【0038】
また、前記第1共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含むことができ、この場合、前記第1共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位および芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位を含む共重合体であることができる。ここで、前記芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位は、芳香族ビニル系単量体が重合時になす繰り返し単位を意味することができる。
【0039】
前記芳香族ビニル単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン(3-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン(4-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)および3-(2-ピロリジノ-1-メチルエチル)-メチルスチレン(3-(2-pyrrolidino-1-methyl ethyl)methylstyrene)からなる群から選択される1種以上であることができるが、これらに制限されない。
【0040】
前記第1共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が100,000g/mol未満である。また、前記重量平均分子量は、好ましくは、1,000g/mol以上、5,000g/mol以上、10,000g/mol以上、80,000g/mol以下、50,000g/mol以下、30,000g/mol以下、例えば、1,000g/mol~80,000g/mol、または5,000g/mol~50,000g/molであることができる。
【0041】
前記のように、重量平均分子量が100,000g/mol未満と低い共役ジエン系重合体を使用してバイオ弾性体を得ることで、優れた加工性を示して様々な用途に使用することが可能である。
【0042】
前記バイオ弾性体は、前記範囲のように重量平均分子量が低い共役ジエン系重合体由来の単位に植物油由来の単位が結合(カップリング)している形態であり、液状高分子の使用に比べて、安定性および持続性の面で利点があり、タイヤで発生するオイルマイグレーション現象による物性の低下も著しく抑制することができる。
【0043】
例えば、前記共役ジエン系単量体が1,3-ブタジエンである場合、前記第1共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエンが、重量平均分子量が100,000g/mol未満である時までに重合されて製造されたポリブタジエンであることができる。
【0044】
前記バイオ弾性体は、第1共役ジエン系重合体由来の単位とともに、植物油由来の単位を含む。
【0045】
一般的に、植物油は、下記化学式1で表されるトリグリセリド(triglycerides)分子である。
【0046】
【化1】
【0047】
前記化学式1中、
~Rは、それぞれ、脂肪酸から由来したエステルの基であり、それぞれ、不飽和または飽和炭化水素基である。
【0048】
ここで、前記R~Rの相対的の比率は、植物油の種類に応じて異なることができ、例示的には、下記表1のとおりであることができる。
【0049】
【表1】
【0050】
さらに他の例示として、前記植物油は、エポキシ化植物油であることができる。エポキシ化植物油(epoxidized vegetable oil)は、植物油のエポキシ化反応から得られた有機化合物であり、前記植物油の種類に応じて、エポキシ化度(エポキシ率)が相違することができる。植物油のエポキシ化は、植物油分子内の不飽和結合に酸素原子が添加され、エポキシドが生成されながら行われ、エポキシ化度は、前記植物油内の不飽和結合の比率に影響を受けることができる。前記エポキシ化植物油は、エポキシ化大豆油、エポキシ化菜種油、エポキシ化キャノーラ油、エポキシ化ひまわり油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化米ぬか油、エポキシ化パーム油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化落花生油、エポキシ化ヤシ油、エポキシ化綿実油およびエポキシ化ココナッツ油からなる群から選択される1種以上であることができ、好ましくは、エポキシ化大豆油、エポキシ化綿実油またはこれらの組み合わせ、より好ましくは、エポキシ化大豆油であることができるが、これに制限されない。
【0051】
本発明において、前記植物油由来の単位は、バイオ弾性体の全重量に対して、1重量%~50重量%であることができ、好ましくは、1重量%~30重量%、または1重量%~20重量%であることができる。前記植物油由来の単位の含量は、バイオ弾性体の製造時に使用される植物油の投入量から決定されることができ、例えば、第1共役ジエン系重合体の製造に使用される共役ジエン系単量体100重量部に対して、植物油の重量部がバイオ弾性体内の植物油由来の単位の含量であることができる。
【0052】
前記範囲内で、第1共役ジエン系重合体との結合が容易であり、バイオ弾性体が効率的に形成される利点がある。
【0053】
本発明において、前記バイオ弾性体は、ゴム組成物内の第2共役ジエン系重合体100重量部に対して、5重量部~50重量部であることができ、具体的には、5重量部以上、7重量部以上、30重量部以下、20重量部以下、15重量部以下であることができる。
【0054】
また、前記バイオ弾性体は、ゴム組成物の全重量に対して、5重量%~50重量%であることができ、好ましくは、5重量%~40重量%、または5重量%~30重量%であることができる。
【0055】
前記範囲内で、バイオ弾性体が優れた加工性を示して様々な用途に使用し、ゴム組成物が優れた粘弾性特性および耐磨耗性を示すことができる。
【0056】
(b)第2共役ジエン系重合体
本発明において、前記ゴム組成物は、バイオ弾性体とともに第2共役ジエン系重合体を含む。
【0057】
前記第2共役ジエン系重合体は、バイオ弾性体に含まれた第1共役ジエン系重合体由来の単位の第1共役ジエン系重合体よりも高い重量平均分子量を有する点で区別され、前記第1共役ジエン系重合体由来の単位は、バイオ弾性体内で植物油由来の単位と結合をなしているのに対し、第2共役ジエン系重合体は、ゴム組成物内でバイオ弾性体とは別の物質として含まれている。
【0058】
前記第2共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位を含み、ここで、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、共役ジエン系単量体が重合時になす繰り返し単位を意味することができる。
【0059】
また、前記第2共役ジエン系重合体は、芳香族ビニル系単量体由来の繰り返し単位をさらに含むことができ、この場合、前記第2共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位および芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位を含む共重合体であることができる。ここで、前記芳香族ビニル単量体由来の繰り返し単位は、芳香族ビニル系単量体が重合時になす繰り返し単位を意味することができる。
【0060】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエンおよび2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択される1種以上であることができるが、これらに制限されない。
【0061】
前記芳香族ビニル単量体は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、1-ビニルナフタレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-(p-メチルフェニル)スチレン、1-ビニル-5-ヘキシルナフタレン、3-(2-ピロリジノエチル)スチレン(3-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)、4-(2-ピロリジノエチル)スチレン(4-(2-pyrrolidino ethyl)styrene)および3-(2-ピロリジノ-1-メチルエチル)-メチルスチレン(3-(2-pyrrolidino-1-methyl ethyl)methylstyrene)からなる群から選択される1種以上であることができるが、これらに制限されない。
【0062】
前記第2共役ジエン系重合体は、前記共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位とともに、炭素数1~10のジエン系単量体由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であることができる。前記ジエン系単量体由来の繰り返し単位は、前記共役ジエン系単量体とは相違するジエン系単量体から由来した繰り返し単位であることができ、前記共役ジエン系単量体とは相違するジエン系単量体は、一例として、1,2-ブタジエンであることができる。前記第2共役ジエン系重合体がジエン系単量体をさらに含む共重合体である場合、前記第2共役ジエン系重合体は、ジエン系単量体由来の繰り返し単位を0超重量%~1重量%、0超重量%~0.1重量%、0超重量%~0.01重量%、または0超重量%~0.001重量%含むことができ、この範囲内で、ゲルの生成を防止する効果がある。
【0063】
本発明の一実施形態によると、前記共重合体は、ランダム共重合体であることができ、この場合、各物性間のバランスに優れる効果がある。前記ランダム共重合体は、共重合体をなす繰り返し単位が無秩序に配列されたものを意味することができる。
【0064】
本発明において、前記第2共役ジエン系重合体は、数平均分子量が、1,000g/mol~2,000,000g/mol、10,000g/mol~1,000,000g/mol、または100,000g/mol~800,000g/molであることができ、この範囲内で、転がり抵抗およびウェット路面抵抗性に優れる効果を奏することができる。
【0065】
本発明において、前記第2共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が1,000g/mol~3,000,000g/mol、10,000g/mol~2,000,000g/molであることができ、当該範囲で、転がり抵抗およびウェット路面抵抗性、耐磨耗性に優れる効果を奏することができる。
【0066】
また、前記第2共役ジエン系重合体は、ビニル含量が、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、例えば、10重量%~60重量%、20~50重量%、20~40重量%、20~30重量%であることができる。ここで、前記ビニル含量は、ビニル基を有する単量体と芳香族ビニル系単量体からなる第2共役ジエン系重合体の全重量に対して、1,4-添加ではなく、1,2-添加の共役ジエン系単量体の含量を意味することができる。
【0067】
本発明において、前記第2共役ジエン系重合体は、ゴム組成物の全重量に対して、10重量%以上、10重量%~100重量%、または20重量%~90重量%の含量で含まれることができ、前記範囲内で、引張強度、耐磨耗性などの機械的物性に優れ、各物性間のバランスに優れる効果を奏することができる。
【0068】
本発明において、ゴム組成物は、前記第2共役ジエン系重合体の他に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含むことができる。
【0069】
前記他のゴム成分は、ゴム組成物の全重量に対して90重量%以下の含量で含まれることができる。具体的な例として、前記他のゴム成分は、第2共役ジエン系重合体100重量部に対して1重量部~900重量部含まれることができる。
【0070】
前記ゴム成分は、一例として、天然ゴムまたは合成ゴムであることができ、具体的な例として、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱タンパク質化天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどの合成ゴムであることができ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。
【0071】
本発明において、ゴム組成物は、充填剤をさらに含むことができ、充填剤は、第2共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部~200重量部、または10重量部~120重量部であることができる。
【0072】
前記充填剤は、一例として、シリカ系充填剤であることができ、具体的な例としては、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムまたはコロイドシリカなどであることができ、好ましくは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も優れた湿式シリカであることができる。また、前記ゴム組成物は、必要に応じて、カーボン系充填剤をさらに含むことができる。
【0073】
前記充填剤として、シリカが使用される場合、補強性および低発熱性の改善のためのシランカップリング剤がともに使用されることができ、具体的な例として、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィドまたはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどであることができ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。好ましくは、補強性の改善効果を考慮すると、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであることができる。
【0074】
前記シランカップリング剤は、シリカ100重量部に対して、1重量部~20重量部、または5重量部~15重量部使用されることができ、この範囲内で、カップリング剤としての効果が十分に発揮され、且つゴム成分のゲル化を防止する効果がある。
【0075】
本発明において、前記ゴム組成物は、硫黄架橋性であることができ、加硫剤をさらに含むことができる。前記加硫剤は、具体的には、硫黄粉末であることができ、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~10重量部含まれることができ、この範囲内で、加硫ゴム組成物に必要な弾性率および強度を確保し、且つ低燃費性に優れる効果がある。
【0076】
本発明において、前記ゴム組成物は、上述の成分の他に、通常、ゴム工業系で使用される各種の添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、酸化防止剤、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含むことができる。
【0077】
前記加硫促進剤は、一例として、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、あるいはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が使用されることができ、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部含まれることができる。
【0078】
前記プロセス油は、ゴム組成物内で軟化剤として作用し、一例として、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であることができ、引張強度および耐磨耗性を考慮すると、芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮したときにナフテン系またはパラフィン系プロセス油が使用されることができる。前記プロセス油は、一例として、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれることができ、この範囲内で、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止する効果がある。
【0079】
前記酸化防止剤は、一例として、2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾール、ジブチルヒドロキシトルエンイル、2,6-ビス((ドデシルチオ)メチル)-4-ノニルフェノール(2,6-bis((dodecylthio)methyl)-4-nonylphenol)または2-メチル-4,6-ビス((オクチルチオ)メチル)フェノール(2-methyl-4,6-bis((octylthio)methyl)phenol)であることができ、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部使用されることができる。
【0080】
前記老化防止剤は、一例として、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などであることができ、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部使用されることができる。
【0081】
本発明において、前記ゴム組成物は、前記配合処方に応じて、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を使用して混練することで取得されることができ、成形加工の後、加硫工程によって低発熱性であるとともに、耐磨耗性に優れたゴム組成物が取得されることができる。
【0082】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダートレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種の工業用ゴム製品の製造に有用であることができる。
【0083】
ゴム組成物の製造方法
本発明のゴム組成物の製造方法は、(S1)第1共役ジエン系重合体由来の単位および植物油由来の単位を含み、且つ前記第1共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が100,000g/mol未満であるバイオ弾性体を準備するステップと、(S2)炭化水素溶媒の中で、重合開始剤の存在下で、共役ジエン系単量体または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を重合して第2共役ジエン系重合体を製造するステップと、(S3)前記バイオ弾性体と第2共役ジエン系重合体を混合するステップとを含む。
【0084】
バイオ弾性体、第1共役ジエン系重合体、植物油、および第2共役ジエン系重合体は、上述のとおりである。
【0085】
ステップ(S1)
ステップ(S1)において、第1共役ジエン系重合体由来の単位および植物油由来の単位を含み、且つ前記第1共役ジエン系重合体は、重量平均分子量が100,000g/mol未満であるバイオ弾性体を準備する。
【0086】
例えば、前記ステップ(S1)は、共役ジエン系単量体を重合して、重量平均分子量が100,000g/mol未満である活性重合体を製造するステップと、前記活性重合体と植物油を反応させるステップとを含んで行われることができる。
【0087】
ここで、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、2-フェニル-1,3-ブタジエンおよび2-ハロ-1,3-ブタジエン(ハロは、ハロゲン原子を意味する)からなる群から選択される1種以上であることができ、具体的には、1,3-ブタジエンであることができるが、これに制限されない。
【0088】
本発明において、前記植物油は、共役ジエン系単量体100重量部に対して、0.1重量部~50重量部であることができ、0.1重量部以上、1重量部以上、3重量部以上、50重量部以下、30重量部以下、20重量部以下、15重量部以下であることができる。前記範囲で、活性重合体と植物油が優れた効率で反応し、第1共役ジエン系重合体由来の単位および植物油由来の単位を含むバイオ弾性体が容易に製造されることができる。
【0089】
ステップ(S2)
ステップ(S2)において、炭化水素溶媒の中で、重合開始剤の存在下で、共役ジエン系単量体または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を重合して第2共役ジエン系重合体を製造する。
【0090】
前記炭化水素溶媒は、特に制限されないが、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼンおよびキシレンからなる群から選択される1種以上であることができる。
【0091】
本発明において、前記重合開始剤は、単量体総100gに対して、0.01mmol~10mmol、0.05mmol~5mmol、0.1mmol~2mmol、0.1mmol~1mmol、または0.15~0.8mmolで使用することができる。
【0092】
前記重合開始剤は、特に制限されないが、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、s-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、n-デシルリチウム、t-オクチルリチウム、フェニルリチウム、1-ナフチルリチウム、n-エイコシルリチウム、4-ブチルフェニルリチウム、4-トリルリチウム、シクロヘキシルリチウム、3-5-ジ-n-ヘプチルシクロヘキシルリチウム、4-シクロペンチルリチウム、ナフチルナトリウム、ナフチルカリウム、リチウムアルコキシド、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、リチウムスルホネート、ナトリウムスルホネート、カリウムスルホネート、リチウムアミド、ナトリウムアミド、カリウムアミドおよびリチウムイソプロピルアミドからなる群から選択される1種以上であることができる。
【0093】
本発明において、前記ステップ(S2)の重合は、一例として、アニオン重合であることができ、具体的な例として、アニオンによる成長重合反応によって重合末端にアニオン活性部位を有するリビングアニオン重合であることができる。また、前記(S1)ステップの重合は、昇温重合、等温重合または定温重合(断熱重合)であることができ、前記定温重合は、重合開始剤を投入した後、任意に熱を加えず、自己反応熱で重合させるステップを含む重合方法を意味することができ、前記昇温重合は、前記重合開始剤を投入した後、任意に熱を加えて温度を増加させる重合方法を意味することができ、前記等温重合は、前記重合開始剤を投入した後、熱を加えて熱を増加させるか、熱を奪って重合物の温度を一定に維持する重合方法を意味することができる。
【0094】
前記ステップ(S2)の重合は、前記共役ジエン系単量体の他に、炭素数1~10のジエン系化合物をさらに含んで実施されることができ、この場合、長期間運転時に、反応器の壁面にゲルが形成されることを防止する効果がある。前記ジエン系化合物の一例として、1,2-ブタジエンであることができる。
【0095】
前記ステップ(S2)の重合は、一例として、80℃以下、-20~80℃、0~80℃、0~70℃、または10~70℃の温度範囲で実施されることができ、この範囲内で、重合体の分子量分布を狭く調節し、物性の改善に優れる効果がある。
【0096】
一方、前記ステップ(S2)の重合は、極性添加剤を含んで実施されることができ、前記極性添加剤は、単量体総100gに対して、0.001g~50g、0.001g~10g、または0.005g~0.1gの比率で添加することができる。さらに他の例として、前記極性添加剤は、有機リチウム化合物総1mmolに対して、0.001g~10g、0.005g~5g、0.005g~4gの比率で添加することができる。
【0097】
前記極性添加剤は、一例として、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジエチルエーテル、シクロペンチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、tert-ブトキシエトキシエタン、ビス(3-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ナトリウムメントレート(sodium mentholate)および2-エチルテトラヒドロフルフリルエーテル(2-ethyl tetrahydrofurfuryl ether)からなる群から選択される1種以上であることができ、好ましくは、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ナトリウムメントレート(sodium mentholate)または2-エチルテトラヒドロフルフリルエーテル(2-ethyl tetrahydrofurfuryl ether)であることができ、前記極性添加剤を含む場合、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体を共重合させる場合、これらの反応速度の差を補完することで、ランダム共重合体を容易に形成するように誘導する効果がある。
【0098】
前記ステップ(S2)は、共役ジエン系単量体の重合または共役ジエン系単量体および芳香族ビニル系単量体の共重合により活性重合体を製造した後、反応を終結させるステップを含むことができ、ここで、活性重合体は、重合体アニオンと有機金属カチオンが結合した重合体を意味することができる。
【0099】
または、前記ステップ(S2)は、活性重合体を製造した後、前記活性重合体と変性剤を反応またはカップリングさせるステップを含むことができる。前記変性剤は、単量体総100gに対して、0.01mmol~10mmolの量で使用することができる。さらに他の例として、前記変性剤は、前記ステップ(S2)の重合開始剤1モルに対して、1:0.1~10、1:0.1~5、または1:0.1~1:3のモル比で使用することができる。
【0100】
ステップ(S3)
前記ステップ(S3)は、ゴム組成物を製造するためのステップであり、ステップ(S1)で準備したバイオ弾性体とステップ(S2)で製造した第2共役ジエン系重合体を混合して行うことができる。
【0101】
なお、本発明は、前記ゴム組成物を用いて製造されたタイヤを提供する。
【0102】
前記タイヤは、タイヤまたはタイヤトレッドを含むことができる。
【0103】
実施例
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらにのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0104】
[バイオ弾性体の製造]
製造例1
2Lオートクレーブ反応器に、n-ヘキサン700g、1,3-ブタジエン100gおよび極性添加剤として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン0.4gを投入した後、n-ブチルリチウム16.4g(ヘキサン内6重量%)を投入し、反応器の内部温度を50℃に調整して断熱昇温反応を行った。60℃で約30分間さらに断熱昇温反応を行って第1共役ジエン系重合体を製造した。ここで、反応後、重合物を一部採取し、第1共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量を測定するための試料として使用した。ここで、前記試料は、重合物を140℃のオーブンで乾燥して残量の溶媒を除去した後、THFに溶解させて製造してから使用した。
【0105】
次に、大豆油5gを投入し、70℃で20分間混合した。エタノールを用いて反応を停止させ、酸化防止剤であるWingstay Kがヘキサンに30重量%溶解された溶液3gを添加した。取得した重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した後、ロール乾燥して残量の溶媒と水を除去し、バイオ弾性体を製造した。
【0106】
製造例2
大豆油5gの代わりにエポキシ化大豆油5gを使用した以外は、製造例1と同一の方法でバイオ弾性体を製造した。
【0107】
製造例3
2Lオートクレーブ反応器に、N-ヘキサン700g、1,3-ブタジエン100gおよび極性添加剤として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン0.03gを投入した後、n-ブチルリチウム16.4g(ヘキサン内6重量%)を投入し、反応器の内部温度を60℃に調整して断熱昇温反応を行った。70℃で約30分間さらに断熱昇温反応を行った。ここで、反応後、重合物を一部採取し、第1共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量を測定するための試料として使用した。
【0108】
次に、大豆油5gを投入し、70℃で20分間混合した。エタノールを用いて反応を停止させ、酸化防止剤であるWingstay Kがヘキサンに30重量%溶解された溶液3gを添加した。取得した重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した後、ロール乾燥して残量の溶媒と水を除去し、バイオ弾性体を製造した。
【0109】
製造例4
大豆油5gの代わりにエポキシ化大豆油5gを使用した以外は、製造例3と同一の方法でバイオ弾性体を製造した。
【0110】
製造例5
大豆油5gの代わりに大豆油10gを使用した以外は、製造例3と同一の方法でバイオ弾性体を製造した。
【0111】
比較製造例1
2Lオートクレーブ反応器に、N-ヘキサン700g、1,3-ブタジエン100gおよび極性添加剤として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン0.4gを投入した後、n-ブチルリチウム16.4g(ヘキサン内6重量%)を投入し、反応器の内部温度を50℃に調整して断熱昇温反応を行った。60℃で約30分間さらに断熱昇温反応を行った。エタノールを用いて反応を停止させ、酸化防止剤であるWingstay Kがヘキサンに30重量%溶解された溶液3gを添加した。取得した重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した後、ロール乾燥して残量の溶媒と水を除去し、液状高分子を製造した。
【0112】
比較製造例2
2Lオートクレーブ反応器に、N-ヘキサン700g、1,3-ブタジエン100gおよび極性添加剤として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン0.03gを投入した後、n-ブチルリチウム16.4g(ヘキサン内6重量%)を投入し、反応器の内部温度を60℃に調整して断熱昇温反応を行った。70℃で約30分間さらに断熱昇温反応を行った。エタノールを用いて反応を停止させ、酸化防止剤であるWingstay Kがヘキサンに30重量%溶解された溶液3gを添加した。取得した重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した後、ロール乾燥して残量の溶媒と水を除去し、液状高分子を製造した。
【0113】
[バイオ弾性体の分析]
実験例1
1)ビニル含量(重量%)
前記各重合体内のビニル(Vinyl)含量は、Varian VNMRS 500 MHz NMRを用いて、測定および分析した。
【0114】
NMR測定時に、溶媒は、1,1,2,2-テトラクロロエタンを使用し、solvent peakは、5.97ppmで計算し、75.8~5.1ppmは、1,4-ビニルおよび1,2-ビニル、5.1~4.5ppmは、1,2-ビニルのピークとしてビニル含量を計算した。
【0115】
2)重量平均分子量(Mw、X10 g/mol)、数平均分子量(Mn、X10 g/mol)および分子量分布(PDI、MWD)
GPC(Gel permeation chromatograph)(PL GPC220、Agilent Technologies)で下記の条件で、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布曲線を取得し、分子量分布(PDI、MWD、Mw/Mn)は、測定された前記各分子量から計算して取得した。
【0116】
-カラム:PLgel Olexis(Polymer Laboratories社製)カラム2本と、PLgel mixed-C(Polymer Laboratories 社製)カラム1本を組み合わせて使用
-溶媒:テトラヒドロフランに2重量%のアミン化合物混合使用
-流速:1ml/min
-試料濃度:1~2mg/ml(THFに希釈)
-注入量:100μl
-カラム温度:40℃
-検出器(Detector):屈折率(Refractive index)
-標準(Standard):ポリスチレン(Polystyrene)(三次関数で補正)
【0117】
【表2】
【0118】
前記結果のように、本発明で使用するバイオ弾性体は、重量平均分子量が100,000g/mol以下である第1共役ジエン系重合体の由来の単位が含まれていることを確認した。
【0119】
[ゴム組成物の製造]
実施例1
第2共役ジエン系重合体としてLG化学製のSSBR F3626Yを原料ゴムとし、下記表3の配合(イ)方法を用いて、ゴム試験片を製造した。下記表の原料含量は、原料ゴム100重量部基準の重量部を示している。
【0120】
【表3】
【0121】
具体的には、前記ゴム試験片は、第1段混練および第2段混練により混練される。第1段混練では、温度制御装置を付属したバンバリーミキサーを使用して、原料ゴム、シリカ(充填剤)、有機シランカップリング剤(X50S、Evonik)、製造例1によるバイオ弾性体、亜鉛化剤(ZnO)、ステアリン酸、酸化防止剤(TMQ(RD)(2,2,4-トリメチル-1、2-ジヒドロキノリンポリマー)、老化防止剤(6PPD((ジメチルブチル)-N-フェニル-フェニレンジアミン)およびワックス(Microcrystaline Wax)を混練した。ここで、混練機の初期温度を70℃に制御し、配合完了の後、145~155℃の排出温度で一次配合物を得た。第2段混練では、前記一次配合物を室温まで冷却した後、混練機に、一次配合物、硫黄、ゴム促進剤(DPD(ジフェニルグアニン))および加硫促進剤(CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド))を加え、100℃以下の温度で混合(mixing)して二次配合物を得た。次に、160℃で20分間硬化(curing)工程を経てゴム試験片を製造した。
【0122】
実施例2
製造例1のバイオ弾性体の代わりに製造例2のバイオ弾性体を使用した以外は、実施例1と同様にゴム試験片を製造した。
【0123】
実施例3
製造例1のバイオ弾性体の代わりに製造例3のバイオ弾性体を使用した以外は、実施例1と同様にゴム試験片を製造した。
【0124】
実施例4
製造例1のバイオ弾性体の代わりに製造例4のバイオ弾性体を使用した以外は、実施例1と同様にゴム試験片を製造した。
【0125】
実施例5
製造例1のバイオ弾性体の代わりに製造例5のバイオ弾性体を使用した以外は、実施例1と同様にゴム試験片を製造した。
【0126】
比較例1
表3の配合(ロ)方法を用いた以外は、実施例1と同様にゴム試験片を製造した。
【0127】
比較例2
製造例1のバイオ弾性体の代わりに比較製造例1の液状高分子を使用した以外は、実施例1と同様にゴム試験片を製造した。
【0128】
比較例3
製造例1のバイオ弾性体の代わりに比較製造例2の液状高分子を使用した以外は、実施例1と同様にゴム試験片を製造した。
【0129】
[ゴム組成物の分析]
実験例2
1)粘弾性特性
粘弾性特性は、動的機械分析装置(GABO社製)を用いて、Film Tensionモードで、周波数10Hz、測定温度(60℃)で動的変形に対する粘弾性挙動を測定し、tanδ値を確認した。測定値において60℃tanδ値が低いほどヒステリシス損が少なく、低走行抵抗性(燃費性)に優れることを示すが、粘弾性特性基準値(比較例1)を特定した後、指数化(%)して示し、数値が高いほど優れることを示すように記載した。
【0130】
2)耐磨耗性
各ゴム試験片に対して、ASTM D5963に準じて、DIN摩耗試験を行い、比較例1の測定値を基準として、DIN loss index(損失体積指数(loss volume index):ARIA(Abration resistance index、Method A)で示した。数値が高いほど優れていることを示す。
【0131】
【表4】
【0132】
前記結果のように、実施例1~5は、粘弾性特性および耐磨耗性がバランスよく優れた水準に現れることを確認した。一方、比較例1は、バイオ弾性体ではなく、プロセス油を使用しているが、この場合、粘弾性特性および耐磨耗性が実施例に比べて多少低く示されることが分かった。また、バイオ弾性体の代わりに、比較例2は、比較製造例1の混合物を使用し、比較例3は、比較製造例2の混合物を使用しているが、比較例2および3の両方において、粘弾性特性が著しく低くなることが示された。
【0133】
実験例3
老化物性は、各ゴム試験片の熱老化前後の引張物性の変化で確認し、老化前後の変化なしに維持されることから、老化物性に優れることを確認することができる。
【0134】
具体的には、各ゴム試験片を100℃で24時間放置して熱老化を行い、各ゴム試験片に対して、老化前後、それぞれ、ASTM 412の引張試験法に準じて、Universal Test Machin 4204(Instron社製)引張試験機を用いて、室温で引張応力を測定した。
【0135】
ここで、老化前の引張応力および老化後の引張応力値を記載し、老化前を基準に老化後の引張応力値の比率を計算し、ともに示した。
【0136】
【表5】
【0137】
前記結果のように、実施例1~5のゴム組成物は、比較例1~3のゴム組成物に比べて、老化物性が改善し、老化前後の引張物性の変化量が小さくなったことを確認した。このように、本発明のゴム組成物は、重量平均分子量が100,000g/mol未満である第1共役ジエン系重合体由来の単位および植物油由来の単位を含むバイオ弾性体と、第2共役ジエン系重合体を含むことで、一様に優れた粘弾性特性、耐磨耗性、および老化物性を示すことを確認した。
【国際調査報告】