(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-07
(54)【発明の名称】エピタキシチャンバ及びCVDチャンバのためのガスインジェクタ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240229BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240229BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023543348
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2023-09-08
(86)【国際出願番号】 US2022025321
(87)【国際公開番号】W WO2022240553
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】スリニバサン, スワミナサン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】バウアー, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】モラディアン, アラ
(72)【発明者】
【氏名】サバンナ, マンジュナート
(72)【発明者】
【氏名】シャー, カルティク ブペンドラ
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス, エロール アントニオ シー.
(72)【発明者】
【氏名】ゾカエイ, ソーラブ
(72)【発明者】
【氏名】ライス, マイケル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ライマー, ピーター
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA01
4K030EA04
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4K030KA45
4K030LA15
5F045AA03
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5F045EK12
5F045EK14
(57)【要約】
本開示は、概して、半導体基板を処理する処理チャンバのためのガス注入装置に関する。ガス注入装置が、処理チャンバに結合されるよう構成された1つ以上のガスインジェクタを含む。ガスインジェクタのそれぞれが、プロセスガスを受け取って、1つ以上のガス出口にプロセスガスを分配するよう構成されている。ガスインジェクタが、複数の通路、フィンアレイ、バッフルアレイを含む。ガスインジェクタは個別に加熱される。混合ガスアセンブリがまた、ガスインジェクタのそれぞれから処理空間に流入するロセスガスの濃度を制御するために利用される。混合ガスアセンブリにより、プロセスガスの濃度及び流量を制御することが可能となる。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理のための処理チャンバであって、
注入リングであって、前記注入リングの半分に当該注入リングの半分を貫通して配置された1つ以上のインジェクタ通路を含む注入リングと、
1つ以上のガスインジェクタであって、前記1つ以上のガスインジェクタのそれぞれが、前記インジェクタ通路のうちの1つの内部に配置されており、前記ガスインジェクタのそれぞれが、
インジェクタ挿入部、
ガス導入通路、
前記ガス導入通路に流体的に結合されたガス拡散通路、及び
前記ガス導入通路とは反対側の前記インジェクタ挿入部の注入面を貫通して配置されており、前記ガス拡散通路と流体連通した出口開口部
を含む1つ以上のガスインジェクタと、
を備える、基板処理のための処理チャンバ。
【請求項2】
前記1つ以上のガスインジェクタのそれぞれが、前記インジェクタ挿入部を通る1つ以上のヒータをさらに備える、請求項1に記載の処理チャンバ。
【請求項3】
3つ以上のインジェクタ通路及び3つ以上のガスインジェクタが存在し、前記ガスインジェクタのそれぞれが、前記注入リングの中央部分に向かって配向されている、請求項1に記載の処理チャンバ。
【請求項4】
前記ガス導入通路が、インジェクタ基体を貫通して配置された単一の通路である、請求項1に記載の処理チャンバ。
【請求項5】
前記ガス拡散通路が、複数の通路の分岐、及び複数の経路を含む、請求項1に記載の処理チャンバ。
【請求項6】
フィンアレイが、前記ガス拡散通路と前記出口開口部との間に配置されており、バッフルアレイが、前記フィンアレイと前記出口開口部との間に配置されている、請求項5に記載の処理チャンバ。
【請求項7】
リングインジェクタをさらに含み、前記リングインジェクタが、
内側リング表面を含む分配本体と、
前記内側リング表面を貫通して配置された複数の孔と、
を含む、請求項1に記載の処理チャンバ。
【請求項8】
処理チャンバ内で使用するためのガスインジェクタであって、
インジェクタ挿入部と、
前記ガスインジェクタを貫通して配置されたガス導入通路と、
前記ガス導入通路に接続されたガス拡散通路であって、ガス分配ツリーを形成するガス拡散通路と、
前記ガス導入通路とは反対側の前記インジェクタ挿入部の注入面を貫通して配置されており、前記ガス拡散通路と流体連通した出口開口部と、
を含む、ガスインジェクタ。
【請求項9】
前記ガス拡散通路が、複数の通路の分岐、及び複数の経路を含む、請求項8に記載のガスインジェクタ。
【請求項10】
フィンアレイが、前記ガス拡散通路と前記出口開口部との間に配置されている、請求項9に記載のガスインジェクタ。
【請求項11】
バッフルアレイが、前記フィンアレイと前記出口開口部との間に配置されている、請求項10に記載のガスインジェクタ。
【請求項12】
前記バッフルアレイが複数のバッフルを含み、各バッフルが、前記フィンアレイに面した第1の表面であって、前記出口開口部に面した第2の表面より広い第1の表面を有するよう成形されている、請求項11に記載のガスインジェクタ。
【請求項13】
前記インジェクタ挿入部内に配置された1つ以上のヒータをさらに含む、請求項8に記載のガスインジェクタ。
【請求項14】
前記1つ以上のヒータはそれぞれ、抵抗性加熱要素又は放射加熱要素である、請求項13に記載のガスインジェクタ。
【請求項15】
前記ガス導入通路が第1のガス導入通路であり、前記ガス拡散通路が第1の拡散通路であり、前記出口開口部が第1の出口開口部であり、前記インジェクタ挿入部が、
第2のガス導入通路と、
第2のガス拡散通路と、
第2の出口開口部と、
をさらに含む、請求項8に記載のガスインジェクタ。
【請求項16】
前記第1の出口開口部が、前記第2の出口開口部の下方に配置されている、請求項15に記載のガスインジェクタ。
【請求項17】
処理チャンバ内で使用するための混合ガスアセンブリであって、
プロセスガス供給源に接続されるよう構成された入口を有するガスリザーバと、
前記ガスリザーバに流体的に結合されており、前記処理チャンバを迂回する排気ポンプに結合されるよう構成された排気誘導バルブと、
並列に配置されており、前記ガスリザーバに流体的に結合された複数のスプリッタバルブと、
処理チャンバであって、前記処理チャンバの処理空間が前記スプリッタバルブのそれぞれと流体連通している、処理チャンバと、
前記排気誘導バルブと前記複数のスプリッタバルブのそれぞれを通る流量を制御するよう構成されたマスタ流量コントローラと、
を備える、混合ガスアセンブリ。
【請求項18】
複数のガス分割導管であって、前記ガス分割導管のそれぞれが、前記スプリッタバルブのうちの1つと、複数の混合点のうちの1つの混合点と、の間に流体的に結合している、複数のガス分割導管と、
キャリアガス供給源、及び前記複数の混合点のそれぞれに流体的に結合するよう構成されたキャリアガス導管と、
前記複数の混合点と前記処理空間との間に延びる複数の混合ガス導管と、
をさらに含む、請求項17に記載の混合ガスアセンブリ。
【請求項19】
前記スプリッタバルブのそれぞれに流体的に結合されており、前記処理空間に混合ガスを供給するよう構成されたガスインジェクタをさらに含む、請求項17に記載のガス混合アセンブリ。
【請求項20】
前記スプリッタバルブのそれぞれが、前記スプリッタバルブを開閉するよう構成されたバルブコントローラをさらに含む、請求項17に記載の混合ガスアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、半導体基板を作製するための装置及び方法に関する。より具体的には、本明細書に開示される装置は、半導体プロセスの範囲内のガス注入のための構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板は、集積デバイス及び微小デバイスの製造を含む様々な用途のために処理される。処理中、基板は処理チャンバ内のサセプタ上に配置される。サセプタは中心軸の周りに回転可能な支持体シャフトによって支持される。基板の上下に配設された複数の加熱ランプなどの熱源を正確に制御することによって、極めて厳密な許容誤差の範囲内で基板を加熱することができる。基板の温度は、基板の上に堆積する材料の均一性に影響を及ぼしうる。
【0003】
処理チャンバ内の基板温度を正確に制御する能力はスループット及び生産収率に大きな影響を与える。従来の処理チャンバでは、次世代デバイスの製造に必要な温度制御基準を満たしつつ、生産収率の向上及びスループットの高速化に対するますます高まる要求を満たすことが困難であった。
【0004】
従って、ハードウェア部品を低コストで交換でき、基板を横切るガス流の制御を強化できる、改良された処理チャンバ及びガス注入装置に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本開示の一実施形態において、処理チャンバ内で使用するためのガスインジェクタが記載される。ガスインジェクタは、インジェクタ基体と、インジェクタ基体に結合されておりインジェクタ基体から外方に延びるインジェクタ挿入部と、を含む。インジェクタ挿入部が、ガス導入通路、ガス拡散通路、及び出口開口部を含む。ガス導入通路が、インジェクタ基体を貫通して配置されており、インジェクタ挿入部に流体的に結合されている。ガス拡散通路が、ガス導入通路に結合されており、ガス分配ツリーを形成する。出口開口部が、ガス導入通路とは反対側のインジェクタ挿入部の注入面を貫通して配置されており、ガス拡散通路と流体連通している。
【0006】
他の実施形態において、基板処理のためのチャンバが記載される。処理チャンバが、ベースリング、注入リング、1つ以上のガスインジェクタを含む。ベースリングが、自身を通って配置された基板移送通路及び1つ以上の上部チャンバ排気通路を含む。注入リングが、ベースリングの上に配置されており、1つ以上のインジェクタ通路が注入リングを通って配置されている。1つ以上のガスインジェクタがそれぞれ、インジェクタ通路のうちの1つの中に配置されている。ガスインジェクタのそれぞれが、注入リングのインジェクタ支持面に結合するよう構成されたインジェクタ基体と、インジェクタ基体から外方に延びるインジェクタ挿入部と、を含む。インジェクタ挿入部が、ガス導入通路と、ガス拡散通路と、ガス導入通路とは反対側のインジェクタ挿入部の注入面を貫通して配置され、ガス拡散通路と流体連通した出口開口部と、を含む。
【0007】
他の実施形態において、熱処理チャンバで使用するための混合ガスアセンブリが記載される。混合ガスアセンブリが、プロセスガス供給源、ガスリザーバ、排気誘導バルブ、排気ポンプ、複数のスプリッタバルブ、処理チャンバ、及びマスタ流量コントローラを含む。ガスリザーバが、プロセスガス供給源に流体的に結合されている。排気誘導バルブが、ガスリザーバに流体的に結合されている。排気ポンプが、排気誘導バルブと流体的に結合されている。複数のスプリッタバルブが並列に配置されており、ガスリザーバに流体的に結合されている。処理チャンバが、スプリッタバルブのそれぞれと流体連通した処理空間を含む。マスタ流量コントローラが、排気誘導バルブ及び複数のスプリッタバルブのそれぞれを通る流量を制御するよう構成されている。
【0008】
本開示の先に記載した特徴が詳細に理解できるように、先に簡潔に要約した本開示のより具体的な説明が、実施形態を参照することによって得るができ、実施形態の一部が添付の図面に示されている。しかしながら、添付の図面は例示的な実施形態を示しているにすぎず、従って、本開示の範囲を限定すると見なすべきではなく、その他の等しく有効な実施形態も許容されうることに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る処理チャンバの概略図である。
【
図2A】本開示の実施形態に係る、チャンバ本体アセンブリの概略的な断面図である。
【
図2B】本開示の実施形態に係る、他の平面を通る
図2Aのチャンバ本体アセンブリの概略的な断面図である。
【
図3A】本開示の実施形態に係る、ベースリングの概略的な断面図である。
【
図3B】本開示の実施形態に係る、
図3Aのベースリングの概略的な平面図である。
【
図3C】本開示の実施形態に係る、
図3Aのベースリングを切断線3C-3Cで切った概略的な断面な平面図である。
【
図4A】本開示の実施形態に係る、注入リングの概略的な断面図である。
【
図4B】本開示の実施形態に係る、
図4Aの注入リングの概略的な平面図である。
【
図5A】本開示の実施形態に係る、ガスインジェクタの概略的な等角図である。
【
図5B】本開示の実施形態に係る、
図5Aのガスインジェクタを切断線5B-5Bで切った概略的な断面図である。
【
図5C】本開示の実施形態に係る、
図5Aのガスインジェクタを切断線5C-5Cで切った概略的な断面による平面図である。
【
図5D】本開示の実施形態に係る、
図5Aのガスインジェクタの第1の側からの概略的な側面図である。
【
図5E】本開示の実施形態に係る、
図5Aの注入リングの第2の側からの概略的な側面図である。
【
図6A】本開示の実施形態に係る、他の実施形態によるガスインジェクタの概略的な等角図である。
【
図6B】本開示の実施形態に係る、
図6Aのガスインジェクタを切断線6B-6Bで切った概略的な断面図である。
【
図6C】本開示の実施形態に係る、
図6Aのガスインジェクタの第1の側からの概略的な側面図である。
【
図6D】本開示の実施形態に係る、
図6Aのガスインジェクタの第2の側からの概略的な側面図である。
【
図7A】本開示の実施形態に係る、混合ガスアセンブリの概略的なガスフロー図である。
【
図7B】本開示の実施形態に係る、
図7Aの混合ガスアセンブリ及び第2の混合ガスアセンブリの概略的なガスフロー図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る、
図7Aの混合ガスアセンブリで使用するための方法のフロー図である。
【
図9A】本開示の実施形態に係る、リングインジェクタの概略的な平面図である。
【
図9B】本開示の実施形態に係る、他の実施形態によるリングインジェクタの概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にするため、可能な場合には、複数の図に共通する同一の要素を示すのに同一の参照番号を使用した。一実施形態の構成要素及び特徴は、さらなる記載がなくとも、他の実施形態に有益に組み込まれ得ると想定されている。
【0011】
本開示の実施形態は、概して、半導体処理のための装置に関する。より具体的には、本明細書に開示された装置は、処理チャンバ及びその構成要素に関する。処理チャンバは、エピタキシャル堆積チャンバといった熱堆積チャンバとして構成されている。本明細書で開示される処理チャンバによって、改善されたプロセスガス流及び基板の加熱が可能となる。処理チャンバは、従来のチャンバに比べて部品が安価であるため、チャンバ本体の一部が摩耗した後又はチャンバ本体の一部に改良された設計が施されたときの処理チャンバの一部の交換コストを削減する。開示される処理チャンバは、チャンバ空間を流過するプロセスガス流の改善、及びより均一な熱制御を含む従来の課題を克服し、これによりスループットがより良くなってプロセス歩留まりが向上する。
【0012】
本明細書には、処理チャンバの構成要素も開示されている。本明細書で開示される構成要素には、注入リング、ベースリング、上方ランプモジュール、下方ランプモジュール、サセプタ、回転アセンブリ、上方ライナ、下方ライナ、及び1つ以上の加熱要素が含まれる。処理チャンバの構成要素のそれぞれは、1つ以上のプロセスガスを基板の表面に亘って水平方向に流すために一緒に使用される。処理チャンバの構成要素は互いに結合されており、例えばエピタキシャル堆積によって基板が処理される処理空間を形成する。
【0013】
図1は、本開示の実施形態に係る処理チャンバ100の概略図である。処理チャンバ100は、エピタキシャル堆積チャンバであり、クラスタツール(図示せず)の一部として使用することができる。処理チャンバ100は、基板150といった基板上にエピタキシャル膜を成長させるために利用される。処理チャンバ100は、処理中に基板150の上面を横切る前駆体のクロスフローを生成する。
【0014】
処理チャンバ100は、上方ランプモジュール102、下方ランプモジュール104、チャンバ本体アセンブリ106、サセプタアセンブリ124、下方ウィンドウ120、上方ウィンドウ122を含む。サセプタアセンブリ124は、サセプタアセンブリ124と下方ランプモジュール104との間に配置されている。下方ウィンドウ120は、サセプタアセンブリ124と下方ランプモジュール104との間に配置されている。上方ウィンドウ122は、サセプタアセンブリ124と上方ランプモジュール102との間に配置されている。
【0015】
上方ランプモジュール102は、サセプタアセンブリ124の上に配置されており、サセプタアセンブリ124上に配置された基板150といった基板を加熱するよう構成されている。上方ランプモジュール102は、上方モジュール本体126と、上方モジュール本体126を貫通して配置された複数のランプ開口部128と、を含む。複数のランプ開口部128のそれぞれの中には、ランプ130が配置されている。各ランプ130は、ランプベース129に結合されている。ランプベース129のそれぞれは、ランプ130のうちの1つを支持し、各ランプ130を電源(図示せず)に電気的に接続する。各ランプ129は、開口部128内に概ね垂直な配向で伸長しており固定されている。本明細書では、ランプ130の概ね垂直な配向は、サセプタ124の基板支持面に対してほぼ垂直である。ランプ130の垂直な配向は、基板支持面に対して必ずしも垂直ではないが、基板支持面906(
図9)に対して約30度~約150度の角度、例えば、基板支持面906に対して約45度~約135度の角度、例えば、基板支持面906に対して約70度~約110度の角度でありうる。
【0016】
引き続き
図1を参照すると、上方ランプモジュール102は、加熱ガス通路136と、高温計通路138と、をさらに含む。加熱ガス供給源132が、加熱ガス通路136に流体的に結合している。加熱ガス通路136は、上方モジュール本体126の上面から底面まで延びている。加熱ガス通路136は、加熱された空気又は加熱された不活性ガスといった加熱されたガスが、加熱ガス供給源132から上方ウィンドウ122の上面まで流れて、上方ウィンドウ122を対流的に加熱することを可能とするよう構成されている。加熱されたガスは、上方ランプモジュール102と上方ウィンドウ122の間に画定された上方プレナム180に供給される。加熱ガス排気通路142も、上方モジュール本体126を貫通して配置されている。加熱ガス排気通路142は、加熱排気ポンプ140に結合されている。加熱排気ポンプ140は、上方プレナム180からガスを除去する。加熱排気ポンプ140はまた、処理空間の排気ポンプとしても機能する。加熱ガス排気通路142は、幾つかの実施形態において、上方モジュール本体126の縁部に沿って形成された溝であってよく、又は上方プレナム180と流体連通した別個の構成要素を通って形成されてよい。
【0017】
高温計通路138は、走査高温計といった高温計134が基板150の温度を測定することを可能とするよう、上方モジュール本体126を貫通して配置されている。高温計134は、上方モジュール本体126の上に高温計通路138に隣接して配置されている。高温計通路138は、上方モジュール本体126の上面から、上方ウィンドウ122の近傍の底面まで延びている。
【0018】
下方ランプモジュール104は、サセプタアセンブリ124の下方に配置されており、サセプタアセンブリ124上に配置された基板150の底面を加熱するよう構成されている。下方ランプモジュール104は、下方モジュール本体182と、下方モジュール本体182を貫通して配置された複数のランプ開口部186と、を含む。複数のランプ開口部186のそれぞれの中には、ランプ188が配置されている。各ランプ188は、概ね垂直な配向で配置されており、ランプベース184に結合されている。ランプベース184のそれぞれは、ランプ188のうちの1つを支持し、各ランプ188を電源(図示せず)に電気的に接続する。本明細書では、ランプ188の概ね垂直な配向は、サセプタ124の基板支持面に対して記載されている。概ね垂直な配向は、基板支持面に対して必ずしも概して垂直ではないが、基板支持面に対して約30度~約150度の角度、例えば、基板支持面に対して約45度~約135度の角度、例えば、基板支持面に対して約70度~約110度の角度でもありうる。
【0019】
下方ランプモジュール104は、サセプタシャフト通路195と、高温計通路192と、をさらに含む。サセプタ124の支持シャフト904(
図9)が、サセプタシャフト通路195を通って配置される。サセプタシャフト通路195は、下方モジュール本体182の中央を貫通して配置されている。サセプタシャフト通路195は、サセプタ124の支持シャフト904、及び下方ウィンドウ120の一部が下方モジュール本体182を通れるよう構成されている。
【0020】
走査高温計といった高温計190が基板150の底面又は基板支持体の底面の温度を測定することを可能とするよう、高温計通路192が下方モジュール本体182を貫通して配置されている。高温計190が、下方モジュール本体182の下に高温計通路192に隣接して配置されている。高温計通路192は、下方モジュール本体182の底面から、下方ウィンドウ120の近傍の下方モジュール本体182の上面まで配置されている。
【0021】
図1を引き続き参照すると、チャンバ本体アセンブリ106が、注入リング116及びベースリング114を含む。注入リング116は、ベースリング114の上に配置されている。注入リング116は、1つ以上のガスインジェクタ108が、自身を貫通して配置されている。ベースリング114は、自身を通って配置された基板移送通路162、1つ以上の上方チャンバ排気通路326(
図3C)、及び下方チャンバ排気通路164を含む。基板移送通路162が、1つ以上の上方チャンバ排気通路326及び下方チャンバ排気通路164に対向して配置されている。1つ以上の上方チャンバ排気通路326のそれぞれは、排気モジュール165に結合されている。
【0022】
上方チャンバ111は、処理空間110のうち、基板150が処理されプロセスガスが注入される部分である。下方チャンバ113は、処理空間110のうち、基板150がサセプタアセンブリ124上へとロードされる部分である。上方チャンバ111は、サセプタアセンブリ124が処理位置にある間サセプタアセンブリ124のサセプタの上方にある空間としても理解されうる。下方チャンバ113は、サセプタアセンブリ124が処理位置にある間サセプタアセンブリ124のサセプタの下にある空間であると理解される。処理位置(図示せず)とは、水平面125と同じ平面上に又は水平面125より上に基板150が配置される位置である。水平面125は、注入リング116とベースリング114が互いに接触する平面である。
【0023】
1つ以上の上方チャンバ排気通路326及び下方チャンバ排気通路164は、1つ以上の排気ポンプ(図示せず)に結合されている。1つ以上の排気ポンプは、1つ以上の上方チャンバ排気通路326及び下方チャンバ排気通路164を介して、処理空間110から排気ガスを除去するよう構成されている。幾つかの実施形態において、上方チャンバ排気通路326及び下方チャンバ排気通路164のそれぞれは、複数の導管を用いて単一の排気ポンプに結合されている。他の実施形態において、上方チャンバ排気通路326が、下方チャンバ排気通路164とは異なる排気ポンプに結合されている。
【0024】
基板移送通路162は、ベースリング114を貫通して形成されており、クラスタツール(図示せず)の移送チャンバから基板がそこを通って通過することを可能とするよう構成されている。処理チャンバ100をクラスタツール(図示せず)に取り付けることを可能とするために、フランジ168が、ベースリング114の一端に取り付けられている。基板移送通路162は、フランジ168を貫通している。
【0025】
上方冷却リング118及び下方冷却リング112が、チャンバ本体アセンブリ106の両側に配置されている。上方冷却リング118は、注入リング116の上に配置されており、注入リング116を冷却するよう構成されている。下方冷却リング112は、ベースリング114の下方に配置されており、ベースリング114を冷却するよう構成されている。上方冷却リング118は、冷却材通路146がその中に配置されている。冷却液通路146を通って循環する冷却材は、幾つかの実施形態において水又は油を含みうる。下方冷却リング112は、冷却材通路148がその中に配置されている。冷却材通路148を循環する冷却材は、上方冷却リング118の冷却材通路146を循環する冷却材と同様である。幾つかの実施形態において、上方冷却リング118及び下方冷却リング112は、注入リング116及びベースリング114を所定の位置に固定するのを支援する。上方冷却リング118は、上方ランプモジュール102を部分的に支持することができ、下方冷却リング112は、ベースリング114及び注入リング116を部分的に支持することができる。
【0026】
上方冷却リング118及び下方冷却リング112を使用することで、注入リング116及びベースリング114の温度が下がり、その際に、従来のリングに存在するような、注入リング116及びベースリング114を通って配置された追加の冷却チャネルが必要とならない。これにより、上方冷却リング118及び下方冷却リング112よりも交換頻度が高い注入リング116及びベースリング114の製造コストが削減される。幾つかの実施形態において、注入リング116が、その中に配置された追加の冷却材通路421(
図4A)を有しうる。
【0027】
注入リング116の1つ以上のガスインジェクタ108は、注入リング116の内部の1つ以上の開口部を通って配置されている。本明細書に記載の実施形態では、複数のガスインジェクタ108が注入リング116を貫通して配置されている。1つ以上のガスインジェクタ108は、1つ以上のガス出口178を介して処理空間110にプロセスガスを供給するよう構成されている。1つ以上のガスインジェクタ108のうちの1つが
図1に示されている。ガスインジェクタ108は、1つ以上のガス出口178がサセプタ124及び基板150に向かって下方を指すように配置されているものとして示されている。ガスインジェクタ108の下向きの角度は、水平から約5度より大きな角度、例えば水平から約10度より大きな角度でありうる。1つ以上のガス出口178のそれぞれは、第1のプロセスガス供給源174又は第2のプロセスガス供給源176といった、1つ以上のプロセスガス供給源に流体的に結合されている。幾つかの実施形態において、第1のプロセスガス供給源174のみが利用される。第1のプロセスガス供給源174と第2のプロセスガス供給源176の双方が利用される実施形態では、各ガスインジェクタ108内に2つのガス出口178が存在する。2つのガス出口178は、重ねられた形態で配置されており、ガスが処理空間110に進入した後にのみガスの混合が可能となる。一部の実施形態において、第1のプロセスガス供給源174がプロセスガスであり、第2のプロセスガス供給源176が洗浄ガスである。他の実施形態において、第1のプロセスガス供給源174と第2のプロセスガス供給源176の双方がプロセスガスである。
【0028】
上方ウィンドウ122は、注入リング116と上方ランプモジュール102との間に配置されている。上方ウィンドウ122は光学的に透明なウィンドウであり、これにより、上方ランプモジュール102により生成された放射エネルギーがそれを通過することができる。一部の実施形態において、上方ウィンドウ122が石英又はガラス材材料で形成される。上方ウィンドウ122はドーム形状をしており、一部の実施形態では上方ドームと描写される。上方ウィンドウ122の外縁が、周辺支持部172を形成する。周辺支持部172は、上方ウィンドウ122の中央部分よりも厚い。周辺支持部172は、注入リング116の上に配置されている。周辺支持部172は、上方ウィンドウ122の中央部分に接続しており、上方ウィンドウ122の中央部分の光学的に透明な材料で形成されている。
【0029】
下方ウィンドウ120は、ベースリング114と下方ランプモジュール104との間に配置されている。下方ウィンドウ120は光学的に透明なウィンドウであり、これにより、下方ランプモジュール104により生成された放射エネルギーがそれを通過することができる。一部の実施形態において、下方ウィンドウ120が石英又はガラス材材料で形成される。下方ウィンドウ120はドーム形状をしており、一部の実施形態では下方ドームと描写される。下方ウィンドウ120の外縁が、周辺支持部170を形成する。周辺支持部170は、下方ウィンドウ120の中央部分よりも厚い。周辺支持部170は下方ウィンドウ120の中央部分に接続しており、同じ光学的に透明な材料で形成されている。
【0030】
様々なライナ及びヒータが、処理空間110内で、チャンバ本体アセンブリ106の内側に配置されている。
図1に示すように、チャンバ本体アセンブリ106内には、上方ライナ156及び下方ライナ154が配置されている。上方ライナ156は、下方ライナ154の上方に、かつ注入リング116の内側に配置されている。下方ライナ154は、ベースリング114の内側に配置されている。上方ライナ156と下方ライナ154とは、処理空間内に存在する間、一緒に結合されるよう構成されている。上方ライナ156及び下方ライナ154は、注入リング116及びベースリング114の内面を、処理空間内のプロセスガスから遮蔽するよう構成されている。上方ライナ156及び下方ライナ154はさらに、処理空間から注入リング116及びベースリング114への熱損失を低減する役割を果たす。熱損失が減少すると、基板150の加熱均一性が改善され、処理中の基板150上のより均一な堆積が可能になる。
【0031】
上方ヒータ158及び下方ヒータ152も、チャンバ本体アセンブリ106内の処理空間110内に配置されている。
図1に示すように、上方ヒータ158は、上方ライナ156と注入リング116の間に配置されており、下方ヒータ152は、下方ライナ154とベースリング114の間に配置されている。上方ヒータ158と下方ヒータ152の双方は、チャンバ本体アセンブリ106の内側に配置されており、基板150が処理チャンバ100内にある間の基板150のより均一な加熱を可能にする。上方ヒータ158及び下方ヒータ152は、チャンバ本体アセンブリ106の壁への熱損失を低減し、処理空間110を形成する表面の周囲で、より均一な温度分布を形成する。上方ライナ156、下方ライナ154、上方ヒータ158、及び下方ヒータ152のそれぞれは、処理空間110内に配置されたフランジ160に結合されている。フランジ160は、上方ライナ156、下方ライナ154、上方ヒータ158、及び下方ヒータ152のそれぞれの固定を可能とするために、注入リング116の一部分とベースリング114との間に固定されるよう構成された水平方向の表面である。上方ヒータ158と下方ヒータ152の双方は、加熱される流体がそこを通るよう構成することができ、又は抵抗ヒータでありうる。上方ヒータ158及び下方ヒータ152はさらに、注入リング116及びベースリング114を貫通する開口部を受け入れるよう成形されている。
【0032】
サセプタアセンブリ124は処理空間110内に配置されており、処理中に基板150を支持するよう構成されている。サセプタアセンブリ124は、基板150を支持するための平面的な上面と、下方ウィンドウ120の一部分及び下方ランプモジュール104を通って延びるシャフトと、を含む。サセプタアセンブリ124は、移動アセンブリ194に結合されている。移動アセンブリ194は、回転アセンブリ196及びリフトアセンブリ198を含む。回転アセンブリ196は、中心軸A周りにサセプタアセンブリ124を回転させるよう構成されており、リフトアセンブリ198は、中心軸Aに沿って、処理空間110内を直線的にサセプタアセンブリ124を移動させるよう構成されている。
【0033】
図2Aは、本開示の実施形態に係る、チャンバ本体アセンブリ106の概略的な断面斜視図である。チャンバ本体106は、ベースリング114の上に配置されベースリング114に結合された注入リング116を含む。注入リング116は、1つ以上のガスインジェクタ108を含む。注入リング116は内面404を含み、ベースリング114は内面304を含む。ベースリング114の内面304と注入リング116の内面404とは、内面304、404がベースリング114及び注入リング116の外周の少なくとも一部分について同じ直径を有するように、互いに位置合わせされている。ベースリング114の内面304と注入リング116の内面404とが、中央開口部201を形成する。中央開口部201は、ベースリング114の開口部310と注入リング116の開口部410の双方を含む。ベースリングの上面312は、注入リング116の底面324と接触している。
【0034】
1つ以上のガスインジェクタ108が、チャンバ本体アセンブリ106の一方の側に配置されており、1つ以上の上方チャンバ排気通路開口部324が、チャンバ本体アセンブリ106の反対の側に配置されている。1つ以上の上方チャンバ排気通路開口部324のそれぞれは、注入リング116の内面に形成された凹所430と位置合わせされている。1つ以上の凹所430のそれぞれと上方チャンバ排気通路開口部324とを位置合わせすることで、1つ以上のガスインジェクタ108によって注入されたガスが、処理空間110(
図1)を横切って基板150の上を流れ、その後、上方チャンバ排気通路開口部324を介して処理空間110から除去されることが可能となる。凹所430は、排気ガスを集め、注入リング116と同じ高さの領域から上方チャンバ排気通路開口部324に向かって下方に、排気ガスを方向付ける際に支援する。排気ガスが上方チャンバ排気通路開口部324に進入すると、排気ガスは、1つ以上の上方チャンバ排気通路326を通って流れて、排気出口330から出る。
【0035】
凹所430と上方チャンバ排気通路開口部324との組み合わせによって、ベースリング114及び/又は注入リング116の製造の複雑さが軽減される。凹所430と上方チャンバ排気通路開口部324との組み合わせによって、プロセスガスが処理空間110にわたって水平方向に流れて、上方チャンバ111内に留まることがさらに可能となり、その際に、汚染源となりうる下方チャンバ113内へと下方に迂回することはない。
【0036】
図2Bは、本開示の実施形態に係る、他の平面を通る
図2Aのチャンバ本体アセンブリ106の概略的な断面図である。
図2Bに示す断面は、下方チャンバ排気通路164、及び、下方チャンバ排気通路164の向きと、上方チャンバ排気通路開口部324、凹所430、及び上方チャンバ排気通路326のうちの少なくとも1つと、の間の関係を示している。凹所430、上方チャンバ排気通路開口部324、及び上方チャンバ排気通路326は、
図4D、
図4E、及び
図5Bを参照して説明するように、下方チャンバ排気通路164に対して或る角度で配置されている。凹所430及び上方チャンバ排気通路開口部324は、下方チャンバ排気通路164の上方に追加的に配置されている。下方チャンバ排気通路164は、下方チャンバ113から排気ガスを除去するよう構成されており、上方チャンバ排気通路開口部324は、上方チャンバ111から排気ガスを除去するよう構成される。
【0037】
図3Aは、ベースリング114の概略的な断面図である。ベースリング114は、ベースリング本体302を含み、ベースリング本体302を通って開口部310が配置されている。開口部310は、処理チャンバ100全体の処理空間110の少なくとも一部を形成する。開口部310は、基板及びサセプタアセンブリ124をその中に配置できるよう寸法設定されている。開口部310は、ベースリング114の内壁304によって形成されている。開口部310は、ベースリング114の上面312からベースリング114の底面314まで延びている。
【0038】
ベースリング本体302は、ベースリング114の本体であり、スチール、アルミニウム、銅、ニッケル、又は金属合金といった金属材料で形成されている。幾つかの実施形態において、ベースリング本体302は、炭化ケイ素材料又はドープされた炭化ケイ素材料でありうる。
【0039】
上述したように、基板移送通路162が、1つ以上の上方チャンバ排気通路324及び下方チャンバ排気通路164に対向して配置されている。基板移送通路162は、ベースリング114の第1の側面306を貫通して配置されており、1つ以上の上方チャンバ排気通路開口部324及び下方チャンバ排気通路164は、ベースリング114の第2の側面308を通って形成されている。ベースリング114の第1の側面306は、ベースリング114を通って配置された平面C(
図3C)の1の側に配置されており、ベースリング114の第2の側面308は、第1の側面306からは平面Cの反対側に配置されている。平面Cは、中心軸Aを通っており、平面Bに対して垂直である。平面Cは、下方チャンバ排気通路164及び上方チャンバ排気通路開口部324から、基板移送通路162を分離する。本明細書に記載の実施形態では、2つの上方チャンバ排気通路開口部324が、ベースリング114の上面312を通って形成されている(
図3B)。2つの上方チャンバ排気通路開口部324は、基板移送通路162に対向しているが、基板移送通路162の真向かいからはずれている。2つの上方チャンバ排気通路開口部324は、ガスがガスインジェクタ108(
図1)から処理空間110を横切って流れるときにガスが内方に集まるのを防止するために、ずらされている。代わりに、ガス流は、処理空間に亘ってより均等に分散したままであり、基板150上のより均一な堆積が可能となる。2つの上方チャンバ排気通路開口部324は、シール溝316より内側に配置されている。
【0040】
基板移送通路162は、そこを通して基板150及び移送アーム(図示せず)を配置できるように、約7mm~約30mm、例えば約10mm~約20mmの高さH
1を有する。基板移送通路162は、約305mm~約350mm、例えば約305mm~約315mmの幅W
1(
図3C)をさらに有する。幅W
1によって、基板150がそこを通ってサセプタアセンブリ124上に配置されることが可能となる。
【0041】
さらに
図1を参照すると、下方チャンバ排気通路164は、当該下方チャンバ排気通路164を排気ポンプ(図示せず)と流体連通させるため、基板移送通路162の向かい側に配置されている。排気ポンプはまた、2つの上方チャンバ排気通路開口部324と結合され、2つの上方チャンバ排気通路開口部324と流体連通しうる本明細書では、下方チャンバ排気通路164は、円筒状の通路又は楕円形の通路である。下方チャンバ排気通路164は、約0mm~約75mm、例えば約25mm~約50mmの高さH
2を有する。下方チャンバ排気通路164の高さH
2は、適切な下方チャンバガス流が、
図10Aに示すように可能なリフトアームアセンブリと共にそこを通過できるよう構成されている。
【0042】
引き続き
図4Cを参照すると、ベースリング本体302の上面312には、シール溝316が配置されている。シール溝316は、内壁304を取り囲んでおり、Oリング又は他のシーリングガスケットといったシールリングを収容するよう構成されている。シール溝316内に配置されるシールリングは、硬度がショアA(Shore A)スケールで50デュロメータより高い、例えば60デュロメータより高い、例えば約65デュロメータより高いポリマー又はプラスチックでありうる。シール溝316は、
図1に示すように、ベースリング114と注入リング116との間のシールを形成するシールリングを収容するよう寸法設定されている。シール溝316は、上方チャンバ排気通路開口部324より径方向外側に配置されており、上方チャンバ排気通路開口部324を通って流れる排気ガスが処理チャンバ100から漏れるのを防止する。
【0043】
上面312は、任意選択的に、支持ステップ部340を含む。支持ステップ部340は、上面312と内壁304との間に形成された凹部である。支持ステップ部340は、フランジ160(
図1)を支持するよう構成されている。フランジ160は、当該フランジ160を所定の位置に保持するために、ベースリング114及び注入リング116の支持ステップ部340内に少なくとも部分的に配置されるよう構成されている。
【0044】
ベースリング本体302の底面314は、第1のシール溝318及び第2のシール溝320を含む。第1のシール溝318と第2のシール溝320とは同心円上にあり、底面314に沿って内壁304を取り囲んでいる。第1のシール溝318は、当該第1のシール溝318が第2のシール溝320を取り囲むように、第2のシール溝320よりも軸Aからさらに外側に配置されている。第1のシール溝318と第2のシール溝320のそれぞれは、Oリング又は他のシーリングガスケットといったシールリングを収容するよう構成されている。第1のシール溝318内及び第2のシール溝320内に配置されるシールリングは、硬度がショアAスケールで50デュロメータより高い、例えば60デュロメータより高い、例えば約65デュロメータより高いポリマー又はプラスチックでありうる。第1のシール溝318及び第2のシール溝320は、シールリングを収容するよう寸法設定されており、ベースリング114と、
図1に示すような下方ウィンドウ120の周辺支持部170と、の間のシールを形成することを可能にする。
【0045】
図3Bは、
図3Aのベースリング114の概略的な平面図である。
図3Bに示すように、上面312は、1つ以上の上方チャンバ排気通路開口部324が自身を通って配置されている。1つ以上の上方チャンバ排気通路開口部324は、内壁304とシール溝316との間に配置されている。1つ以上の上方チャンバ排気通路開口部324は、処理空間110の上方部分からプロセスガスを除去するために、上方ライナ156の一部及び注入リング116と流体連通している。1つ以上の上方チャンバ排気通路開口部324はそれぞれ、上方チャンバ排気通路326を介して、排気モジュール165と流体連通している。上方チャンバ排気通路326は、ベースリング本体302を通って配置された通路である(
図3C)。上方チャンバ排気通路326は、排気モジュール165のうちの1つを、上方チャンバ排気通路開口部324のうちの1つに流体的に結合する。
図3Bに示すように、ベースリング本体302の第2の側面308には2つの排気モジュール165が取り付けられている。2つの排気モジュール165のそれぞれは、下方チャンバ排気通路164の両側に配置されており、これにより、排気モジュール165のそれぞれは、平面Bの両側に配置され平面Bを挟んで鏡写しになっている。平面Bは、中心軸A、基板移送通路162の中心、及び下方チャンバ排気通路164を通っている(
図3C)。平面Bは、垂直方向に向いた平面であり、ベースリング114が平面Bを挟んで鏡写しとなるようにベースリング114を半分に分割する。同じ平面Bが、
図4Bに示すように、注入リングを参照しながら利用される。
【0046】
1つ以上の上方チャンバ排気通路開口部324はそれぞれ、幅W2が約10mm~約220mm、例えば約20mm~約150mmである。上方チャンバ排気通路開口部324のそれぞれの幅W2によって、処理空間110内のガス流の乱流を低減しながら、処理空間110内からの排気ガスを除去することが可能となる。
【0047】
上方チャンバ排気通路開口部324のそれぞれは、平面Bに対して、第1の排気角度αと第2の排気角度βとの間に配置されている。第1の排気角度αは、平面Bに対して約5度~約45度の角度、例えば平面Bに対して約10度~約30度の角度、例えば平面Bに対して約10度~約25度の角度である。第1の排気角度αは、上方チャンバ排気通路326が下方チャンバ排気通路164と交差するのを防止するのに十分な大きさである。第2の排気角度βは、約30度~約70度の角度、例えば約35度~約65度の角度、例えば約45度~約60度の角度である。第2の排気角度βは、1つ以上のガスインジェクタ108によって開口部310に亘って方向付けられたガスを捕捉するのに十分な大きさであり、その際に、ガス経路が平面Bに向かって内方に実質的に曲がることはない。第1の排気角度αと第2の排気角度βとの間の差は、約25度~約60度であり、例えば約30度~約50度である。第1の排気角度αと第2の排気角度βとの間の差によって、上方チャンバ排気通路開口部324を開口部310の所望の円周の周りに配置することが可能となり、上記差が、上方チャンバ排気通路開口部324がその周りに延在するベースリング114の量となる。
【0048】
図3Cは、
図3Aのベースリング114を切断線3C-3Cで切った概略的な断面による平面図である。
図3Cに示すように、上方チャンバ排気通路326のそれぞれは、排気モジュール165のそれぞれを通って配置された排気モジュール通路328に流体的に結合している。排気モジュール通路328は、上方チャンバ排気通路326を介して、上方チャンバ排気通路開口部324と流体連通している。排気モジュール通路328は、当該排気モジュール通路328がベースリング本体302からさらに延びるにつれて狭くなり、最終的に、排気モジュール通路328は排気出口330と繋がる。排気出口330は、排気モジュール通路328の壁を通って形成された開口部であり、処理チャンバ100から排気ガスを除去するための排気導管(図示せず)に結合されるよう構成されている。上方チャンバ排気通路開口部324と同様に、上方チャンバ排気通路326は、平面Bに対して、第1の排気角度αと第2の排気角度βとの間に配置されている。
【0049】
図4Aは、本開示の実施形態に係る、注入リング116の概略的な断面図である。注入リング116は、ベースリング114の上に着座し、処理空間110にプロセスガスを供給するよう構成されている。注入リング116は、ベースリング114とは別体の構成要素である。注入リング116は、処理空間110を通るガスの主流が水平方向になるように、基板の表面に亘ってガスを注入するよう構成されている。分離可能な注入リング116によって、チャンバ本体アセンブリ106全体を交換する又は取り外すことなく、注入リング116を容易に交換及びメンテナンスすることが可能となる。これにより、交換コストが削減され、他のチャンバ構成要素への影響を最小に抑えながら、新規なガス注入の改良を処理チャンバ100でより簡単に実現することが可能となる。
【0050】
注入リング116は、内面404及び外面406を含む。内面404は、注入リング116内に配置された開口部410の周りのリングを形成する。開口部410は、処理チャンバ100の処理空間110の少なくとも一部を形成する。注入リング116は、1つ以上のガスインジェクタ108が、自身を貫通して配置されている。1つ以上のガスインジェクタ108は、インジェクタ支持面414から注入リング本体402を貫通して内面404まで延びている。本明細書に記載の1つ以上のガスインジェクタ108は、1つ以上のインジェクタ通路408を通って配置されている。各インジェクタ通路408は、1つ以上のガスインジェクタ108のうちの1つ、例えばガスインジェクタ108のうちの1つを収容するよう寸法設定されている。インジェクタ通路408は、インジェクタ支持面414から内面404まで延びている。インジェクタ通路408がインジェクタ支持面414から内面404へと移動するにつれて、インジェクタ通路408は下方に延びている。下方に延びるとは、内面404に向かって径方向内方にインジェクタ通路408が移動するにつれて、インジェクタ通路408が注入リング116の上面418から離れて注入リング116の底面424により近づくよう配置されることとして定義される。
【0051】
内面404は、内面404の外周の大部分の周りに配置された溝436を含み、当該溝436は、例えば、内面404の外周の50%より大きく、例えば内面404の外周の60%より大きく、例えば内面404の外周の70%より大きい割合で配置されている。溝436は、上方加熱要素158といった加熱要素を収容するよう構成されている。溝436は、
図4Aでは、注入リング116の内面404及び底面424の一部として形成されたものとして示されている。内面404には、2つの凹所430も配置されている。2つの凹所430は、インジェクタ通路408に対向して配置されている。凹所430は、溝436の範囲内に配置され、溝436よりも注入リング本体402のより奥深くまで延びており、これにより、凹所430は、溝436よりも軸Aからさらに離れて延びている。
【0052】
インジェクタ支持面414は、外側の段差面416と共に、注入リング本体402の外面406の一部である。インジェクタ支持面414は、1つ以上のガスインジェクタ108の一部分を固定するための表面を提供することで、1つ以上のガスインジェクタ108を所定の位置に保持するよう構成されている。1つ以上のガス出口178が、内面404を貫通して配置されており、処理空間110(
図1)内に配置された基板150に向かって下方に角度が付けられている。
【0053】
注入リング116の底面424は、ベースリング114の上面312に接触するよう構成されている。底面424は、外面406と内面404の間に延在する平面的な表面である。外側の段差面416は、外面406の最も外側の部分からインジェクタ支持面414の下方遠位端まで延びている。インジェクタ支持面406は、底面424から離れた、外側の段差面416から延びている。インジェクタ支持面414は底面424に対して或る角度で配置されている。インジェクタ支持面414の角度は、インジェクタ通路408及び1つ以上のガスインジェクタ108の所望の下向きの角度に、少なくとも部分的に依存する。本明細書に記載の実施形態では、底面424に対するインジェクタ支持面414の角度は約45度より大きく、例えば約45度~約85度、例えば約60度~約80度、例えば約70度~約80度である。インジェクタ支持面414は、外側の段差面416から径方向内方に延びており、これにより、外側の段差面416から最も遠いインジェクタ支持面414の遠位端は、内面404により近い。
【0054】
注入リング116の上面418は、インジェクタ支持面414の上方遠位端から径方向内方に延在している。上面418は水平方向の表面であり、これにより、上面418は底面424に対して平行に延在している。インジェクタ支持面414とは反対側の上面418の遠位端は、ウィンドウ支持溝412に繋がっている。ウィンドウ支持溝412は、注入リング116の上面に沿って配置されたチャネルである。ウィンドウ支持溝412は、そこに上方ウィンドウ122の周辺支持部172を受け入れるよう構成されている。ウィンドウ支持溝412は、第1のウィンドウシール溝420及び第2のウィンドウシール溝422を含む。第1のシールウィンドウ溝420と第2のシールウィンドウ溝422のそれぞれは、Oリング又は他のシーリングガスケットといったシールリングを収容するよう構成されている。第1のウィンドウシール溝420内及び第2のウィンドウシール溝422内に配置されるシールリングは、硬度がショアAスケールで50デュロメータより高い、例えば60デュロメータより高い、例えば約65デュロメータより高いポリマー又はプラスチックでありうる。第1のウィンドウシール溝420及び第2のウィンドウシール溝422は、シールリングを収容するよう寸法設定されており、
図1に示すように、注入リング116と上方ウィンドウ122との間のシールを形成することを可能にする。
【0055】
ウィンドウ支持溝412の内側部分は、角度の付いた突出部411によって形成されている。角度の付いた突出部411は、第1のウィンドウシール溝420及び第2のウィンドウシール溝422より内方に配置されている。角度の付いた突出部411は、底面408から離れるようにウィンドウ支持溝412から上方へと延びている。角度の付いた突出部411は、当該角度の付いた突出部411の最内側に配置されたウィンドウ支持溝412の部分と、当該角度の付いた突出部411の最外側に配置された内面404の部分と、を形成する。角度の付いた突出部411は、ウィンドウ支持溝412から上方に延びつつ径方向内方へと延びている。角度の付いた突出部411は、周辺支持部172といった上方ウィンドウ122の一部を、処理空間110(
図1)から遮蔽する。周辺支持部172を処理空間110から遮蔽することで、周辺支持部172と、第1のウィンドウシール溝420内及び第2のウィンドウシール溝422内のシールと、に対する加熱負荷が低減される。加えて、角度の付いた突出部411は、支持溝412内に配置されたシールリングが放射エネルギー又はプロセスガスに直接的に曝露されないように保護し、従って、シールリングのリフト(持ち上げる力、lift)及び信頼性を向上させる。
【0056】
冷却材通路421が、任意選択的に、注入リング本体402を通って配置される。冷却材通路421は、水又は油といった冷却流体を受け入れるよう構成されている。冷却材通路421は、注入リング本体402を通って配置された部分的なリングであり、注入リング116とベースリング114の双方の温度制御を支援する。
【0057】
図4Bは、複数のガスインジェクタ108を有する
図4Aの注入リング116の概略的な平面図である。
図4Bでは、5つのガスインジェクタ108が示されている。ガスインジェクタ108の他の数量も想定され、例えば、3つ以上のガスインジェクタ108、4つ以上のガスインジェクタ108、5つ以上のガスインジェクタ108、又は6つ以上のガスインジェクタ108も想定される。ガスインジェクタ108の数によって、処理空間110(
図1)内へとプロセスガスを注入するゾーンの数が決定される。各ガスインジェクタ108は、中心軸Aといったインジェクトリング116の中心部分に向かって配向されたガス出口を有する。ガスインジェクタ108は、処理チャンバ100内の基板を横切るクロスフローを可能とするため、注入リング116の1の側に配置されている。ガスインジェクタ群108は、平面Bを中心として配置されている。平面Bは、ベースリング114を通る平面Bと同じ平面である。平面Bは、中心軸Aを通って配置されており、平面Dに対して直交している。各ガスインジェクタ108の内部には、複数の個々のプロセスガス通路(
図5A~
図6B)が配置されうる。5つのガスインジェクタ108が利用される実施形態では、中央のガスインジェクタ432aが内側ガス注入ゾーンを形成し、2つの最も外側のガスインジェクタ432cが外側ガス注入ゾーンを形成し、中央のガスインジェクタ432aと最も外側のガスインジェクタ432cとの間の2つの中間ガスインジェクタ432bが中間ガス注入ゾーンを形成する。平面Bは、中央のガスインジェクタ432aを通って配置されている。2つの中間ガスインジェクタ432bは、平面Bを挟んで鏡写しになっている。同様に、2つの最も外側のガスインジェクタ432cは、平面Bを挟んで鏡写しになっている。各インジェクタ通路408を通って、ガスインジェクタ108が配置されている。インジェクタ通路408の数はインジェクタ108の数に等しい。
【0058】
各インジェクタ通路408は、インジェクタ通路幅W3を有する。各インジェクタ通路408のインジェクタ通路幅W3は同じであるとして示されている。代替的な実施形態において、インジェクタ通路幅W3が、中央のガスインジェクタ432aから最も外側のガスインジェクタ432cへと、インジェクタ通路408が外側に延びるにつれて、変化する。幾つかの実施形態において、最も外側のガスインジェクタ432cが延びるインジェクタ通路408のインジェクタ通路幅W3は、中間のガスインジェクタ432bが延びるインジェクタ通路408のインジェクタ通路幅W3よりも大きい。中間ガスインジェクタ432bが延びるインジェクタ通路408は、中央のガスインジェクタ432aが延びるインジェクタ通路408のインジェクタ通路幅W3よりも大きなインジェクタ通路幅W3を有する。
【0059】
代替的に、インジェクタ通路幅W3は、中央のガスインジェクタ432aが配置されたインジェクタ通路408から、インジェクタ通路408が外側に延びるにつれて、縮小する。本実施形態では、最も外側のガスインジェクタ432cが延びるインジェクタ通路408のインジェクタ通路幅W3は、中間ガスインジェクタ432bが延びるインジェクタ通路408のインジェクタ通路幅W3よりも小さい。中間ガスインジェクタ432bが延びるインジェクタ通路408のインジェクタ通路幅W3は、中央のガスインジェクタ432aが延びるインジェクタ通路408のインジェクタ通路幅W3よりも小さい。
【0060】
インジェクタ通路408のそれぞれは、平面Bに対してインジェクタ角度γで配置されている。インジェクタ角度γは、平面Bに対して得られるが、平面Dの反対側では、第1の排気角度α及び第2の排気角度βに対して得られる。インジェクタ角度γは、平面Bからは約90度未満、例えば約70度未満であり、例えば平面Bから約65度未満であり、例えば平面Bから約60度未満である。インジェクタ角度γは、第2の排気角度βから10度の範囲内にあるよう構成されており、これにより、インジェクタ角度γと第2の排気角度βとの差は約-10度~約10度であり、例えば、約-5度~約5度、例えば約0度である。インジェクタ角度γと第2の排気角度βとは、ガスが排出される間、ガスインジェクタ108によって処理空間110内に注入されるガスの偏向を低減するという点で類似している。ガスの偏向によって、膜堆積時に不均一性が引き起こる虞がある。
【0061】
注入リング116は、インジェクタ通路408に対向する内面404内に凹所430を含む。凹所430は、1つ以上の上方チャンバ排気通路開口部324(
図3B)に対応している。凹所430は、1つ以上の上方チャンバ排気通路開口部324の上に配置されており、これにより、凹所430は、ベースリング114(
図4A)の1つ以上の上方チャンバ排気通路326の第1の部分として機能する。本明細書に記載の実施形態では、2つの上方チャンバ排気通路326に対応する2つの凹所430が存在する。2つの凹所430は、インジェクタ通路408からは開口410の反対側に配置されている。2つの凹所430は、注入リング116を通る平面Dの片側に配置されており、インジェクタ通路408は平面Dの反対側に配置されている。2つの凹所430は、中央のガスインジェクタ432aが配置されたインジェクタ通路408の向かい側で、注入リング116の中心からずらされている。どちらの凹所430も平面Bを通って配置されていない。凹所430は、平面Bを挟んで鏡写しになっている。上述のように、2つの凹所430をずらすことで、ガスがガスインジェクタ108(
図1)から処理空間110を横切って上方チャンバ排気通路326へと流れるときに、ガスが内方に集まることが防止される。
【0062】
本明細書では、凹所430は、1つ以上の上方チャンバ排気通路開口部324と同様の大きさ及び形状をしている。凹所430のそれぞれは、幅W
4が約0mm~約220mmであり、例えば約10mm~約150mmである。幅W
4は、上方チャンバ排気通路開口部324の幅W
2(
図3B)に対応している。幅W
4は、処理空間110内のガス流の乱れを低減して、主に層流のガス流と、基板150上への均一な堆積とを可能とするよう構成されている。上方チャンバ排気通路開口部324と同様に、凹所430は、平面Bに対して第1の排気角度αと第2の排気角度βとの間に配置されている。
【0063】
注入リング本体402が注入リング116を形成しており、スチール、アルミニウム、銅、ニッケル、又は金属合金といった金属材料で形成されている。幾つかの実施形態において、注入リング本体402が、炭化ケイ素材料又はドープされた炭化ケイ素材料から作製されうる。
【0064】
図5Aは、本開示の一実施形態に係る、ガスインジェクタ108の概略的な等角図である。ガスインジェクタ108は、インジェクタ基体502、及びインジェクタ挿入部500を含む。インジェクタ挿入部500は、インジェクタ基体502に接続されており、インジェクタ通路408(
図4A)のうちの1つに嵌め込まれるよう構成されている。インジェクタ基体502は、インジェクタ支持面414に載置されており、インジェクタ通路408のうちの1つのインジェクタ通路408の範囲内の定位置に、インジェクタ挿入部500を固定するよう構成されている。ガスインジェクタ108は、インジェクタ108内に複数のガス経路を形成し、インジェクタ基体502とは反対側のインジェクタ挿入部500の遠位端に配置されたガス出口178から出るガスの広がり(sheet)を提供するよう構成されている。
【0065】
インジェクタ挿入部500とインジェクタ基体502の双方は、プロセスガスに対する反応性が低く、耐久性が高く、熱伝導率が高い材料で形成されている。インジェクタ基体502及びインジェクタ挿入部500の形成に適した材料は、炭化ケイ素、ニッケル、ステンレス鋼、アルミニウム、及び石英を含む。
【0066】
インジェクタ挿入部500は、インジェクタ基体502の裏面506から延在する。裏面506は、ガスインジェクタ108をインジェクタ支持面414に固定するための取り付け面として機能する。裏面506は、インジェクタ挿入部500のベース501の周囲に配置された平面的な表面である。インジェクタ挿入部500は、外面504及び注入面510を有する。ガス出口178は、注入面510を貫通して配置されている。注入面510は、ベース501及びインジェクタベース502とは反対側のインジェクタ挿入部500の遠位端に配置されている。インジェクタ挿入部500の外面504は、インジェクタ通路408のうちの1つの内部に収まるよう構成されている。インジェクタ挿入部500の外面504及び注入面510の断面は、スタジアム(stadium)形状、又はオブラウンド(obround)形状をしている。一部の実施形態において、外面504及び注入面510の断面が、楕円形、又は、矩形、平行四辺形、台形といった四辺形である。他の形状による外面504及び注入面510の断面も想定され、有効でありうる。
【0067】
インジェクタ挿入部500のガス出口178は、出口開口部508から形成されている。出口開口部508は、インジェクタ挿入部500の外面504を貫通して配置されている。出口開口部508は、当該出口開口部508を通して駆動されるガスを分配して、基板150の上面を横切るよう方向付けられたガスの広がりを形成するよう成形されている。
【0068】
図5Bは、本開示の実施形態に係る、
図5Aのガスインジェクタ108を切断線5B-5Bで切った概略的な断面図である。インジェクタ基体502が前面512を含む。前面512は、インジェクタ基体502の、背面506とは反対側の側面である。前面512は、1つ以上のガス接続及び1つ以上の電気接続を受け入れるよう構成されている。1つ以上のガス接続は、第1のプロセスガス供給源174及び/又は第2のプロセスガス供給源176のいずれかでありうる。1つ以上の電気接続は図示されていないが、ガスインジェクタ108内に配置されたヒータに電力を供給するよう構成されうる。
【0069】
ガス導入通路514が、前面512を貫通して配置されている。ガス導入通路514は単一のガス通路であり、前面512に接続されたガスラインから、インジェクタ挿入部500の範囲内に配置された拡散通路516へとプロセスガスを移送するよう構成されている。拡散通路516は、ガス導入通路514からのガス流を複数のガス流に分ける。複数のガス流へのガスの拡散は、緩やかであっても突然であってもよく、一部の実施形態では、単一のガス導入通路514が同時に3つ以上の通路に分けられ、他の実施形態では、単一のガス導入通路514が2つのガス通路に分けられ、当該2つのガス通路が4つのガス通路に分けられ、当該4つのガス通路が8つのガス通路に分けられる(
図5C)。
【0070】
従って、拡散通路516は、ガス通路のガス分配ネットワーク又はガス分配ツリーである。
図5Cに示すように、拡散通路516内のガスが徐々に分けられることで、各ガス通路内のガスの圧力を、流れ方向にわたって均一にすることが可能となり、従って、複数の個別経路552a~h(
図5C)にわたる拡散通路516内のガス分散の均一性が改善される。拡散通路516の様々な構成が、各経路552a~hにわたるガス分散を変更するために利用される。
図5Cに示された例では、拡散通路516が第1の分岐540を含み、第1の分岐540は、ガス導入通路から拡散通路516の2つのアームへと延びている。拡散通路516が第1の分岐540で2つのアームに分かれた後で、2つのアームのそれぞれが、2つの第2の分岐542a、542bにおいて、さらに2つのアームに分かれる。2つの第2の分岐542a、542bで分かれた後には、出口開口部508に向かって延びる合計4つのアームが存在する。その後、4つのアームのそれぞれは、4つの第3の分岐550a、550b、550c、550dにおいて、さらに2つのアームに分かれる。4つの第3の分岐550a、550b、550c、550dで分かれた後には、出口開口部508に向かって延びる合計8つのアームが存在する。一部の実施形態において、第1の分岐540、第2の分岐542a、542b、又は第3の分岐550a、550b、550c、550dのそれぞれが、代替的に、2つの追加のアームの代わりに、3つ又は4つの追加アームに分かれてよい。さらに別の実施形態において、第2の分岐542a、542b、又は第3の分岐550a、550b、550c、550dの一方が利用できず、2セットの分岐又は1セットの分岐のみが存在する。
【0071】
個別経路552a~hが、幾つかの経路552a~hを通過するガス流を、他の経路552a~hに対してより大きくして提供するよう構成されうる。インジェクタ挿入部500の大きさ、及び個別ガス経路552a~hの数はまた、インジェクタ挿入部500の様々な構成及び異なるプロセスのために調整される。拡散通路516によって形成される4~16個の経路が存在し、例えば4~12個の経路、例えば6~10個の経路、例えば8個の経路が存在する。拡散通路516内の各経路552a~hの断面の大きさは、所望の流量、流速、流圧、及び/又は所与のプロセスのために望まれるガスの種類に従って選択される。
【0072】
ガスインジェクタ108の使用は、ダウンタイムが少なく生産コストを大幅に削減しつつ、新しい注入通路の設計を処理チャンバ内で迅速かつ安価にテストできるという点で有益である。新しい注入経路の設計は、1つ以上のガスインジェクタ108の交換によってテストすることができ、その際に、注入リング116又はベースリング114といった、処理チャンバ100内の他の構成要素を分解又は交換することがない。従って、ガスインジェクタ108によって、新しい拡散通路516及びインジェクタ挿入部500の設計の迅速な適合が可能となる。基板150の様々な部分にプロセスガスを分配するために、様々なガスインジェクタ108を利用することもできる。ガスインジェクタの全長は、約75mm~約150mm、例えば約80mm~約120mm、例えば約100mmとすることができる。基板の中央へのガス供給に対して基板の端部へのガス供給に偏らせられるように、ガスインジェクタ108の様々な長さが様々な理由のために利用される。
【0073】
拡散通路516の各経路552a~hは、第1のプレナム518に通じている。第1のプレナム518は、導入通路514からは反対側の、拡散通路516の遠位端に配置された空間である。第1のプレナム518は、拡散通路516の各経路552a~hの遠位端にある単一の空間である。第1のプレナム518によって、個別経路552a~hのうちの1つを移動する各ガス流の間の圧力及び流速を少なくとも部分的に均一にすることが可能となる。第1のプレナム518内の圧力を均一にすることで、各経路551a~h間の流量を少なくとも部分的に均一にすることが可能となり、第1のプレナム518内で背圧が生成されるため、ガス流中のガスが混合される。第1のプレナム518は、個別経路552a~hのそれぞれの間の圧力を部分的に均一にするよう構成されている。第1のプレナム518内のガス流の拡散量は、拡散通路516の遠位端と、拡散通路516に最も近いフィンアレイ520の遠位端と、の間の第1のプレナム518の長さL1によって制御される。第1のプレナム518は、長さL1が約3mm~約12mm、例えば約3mm~約10mmである。
【0074】
フィンアレイ520は、インジェクタ挿入部500の底面503と上面505との間に配置された複数のフィン521を含む。複数のフィン521は、複数の経路延長部534を形成するように分散されている。経路延長部534は、インジェクタ挿入部500の内壁と、フィン521のうちの1つとの間、又は、隣合う2つのフィン521の間に形成されている。本明細書に記載の実施形態では、3~14個のフィン521、例えば4~12個のフィン521、例えば6~8個のフィン521が存在する。フィンは、4~16個の経路延長部534、例えば6~12個の経路延長部534、例えば8個の経路延長部534が存在するように、経路延長部534を形成する。本明細書に記載の実施形態では、経路552a~hと同じ数の経路延長部534が存在し、これにより、ガス流が中断されず、第1のプレナム518を通過した後も続いている。フィンアレイ520内の各フィン521は、個々に異なる方向に向いている。
図5Cに示された例では、フィン521は扇形状に配置され、注入リング116の中心線Eから角度が増大するように配向されている。中心線Eからより遠く離れて配置された各フィン521は、中心線Eに対してより大きな角度において配向される(
図5C)。中心線E上のフィンは、中心線Eと直線的に揃えられている。
【0075】
フィンアレイ520は、インジェクタ挿入部500の長さL2にわたって配置されている。フィンアレイ520の長さL2は、各ガス流の流れベクトル及び分散を決定する際に役立つ。長さL2が長いほど、ガス流の速度が落ち、第1のプレナム518内の背圧が増大する。低減された長さL2では、適切な背圧の蓄積又はガスの混合が可能とならない。フィンアレイ520の長さL2は、約15mm~約50mm、例えば約20mm~約40mmである。一部の実施形態において、長さL2は、インジェクタ挿入部500の全幅W5の約25%~約50%である。
【0076】
フィンアレイ520のすぐ下流には、第2のプレナム522が存在する。第2のプレナム522は、第1のプレナム520とは反対側の、フィンアレイ520の遠位端に配置された空間である。第2のプレナム522は、フィンアレイ520の各経路延長部534の遠位端にある単一の空間である。第2のプレナム522によって、個別経路延長部534のうちの1つを移動する各ガス流の間の圧力及び流速を少なくとも部分的に均一にすることが可能となる。第2のプレナム522内の圧力を均一にすることで、各経路延長部534間の流量を少なくとも部分的に均一にすることが可能となる。背圧が第2プレナム522内で生成され、ガス流中のガスが混合される。第2のプレナム522は、経路延長部534のそれぞれの間の圧力を部分的に均一にするよう構成されている。第2のプレナム522内のガス流の拡散量、及び背圧の蓄積は、フィンアレイ520の遠位端と、第2のプレナム522に最も近いバッフルアレイ524の遠位端と、の間の第2のプレナム522の長さL3によって、部分的に制御される。第2のプレナム522は、長さL3が約3mm~約12mm、例えば約3mm~約10mmである。
【0077】
バッフルアレイ524は、複数のバッフル535から形成される(
図5C)。バッフルアレイ524のバッフル535は、複数の通路出口536を形成する。経路出口535は、各経路552a~h及び経路延長部534の追加の延長部である。経路出口535は、第2のプレナム522の近傍の狭い経路であり、経路出口535が第2のプレナム522から離れて、第3のプレナム526に向かうにつれて広くなる。複数のバッフル535は、第2のプレナム522の近傍の表面の幅が、第3のプレナム526の近傍の表面よりも、ガスの流れ方向にわたって広くなるように、成形されている。一部の実施形態において、各バッフル535は、等脚台形といった台形の形状をしている。バッフル535の他の形状も想定される。本明細書に記載の実施形態では、バッフルアレイ524内に3~14個のバッフル535、例えば4~12個のバッフル、例えば5~10個のバッフル、例えば6~8個のバッフルが存在する。
【0078】
各バッフル535の形状及び向きは、第2のプレナム522内で背圧を生成することで第2のプレナム522を流過するガス流のそれぞれの間の圧力を均一にする際に役立つ。第2のプレナム522内の背圧は、インジェクタ挿入部500を流過するガス流を遅くし、経路出口536を通る均一なガス流を生成するのを助ける。各経路出口536の幅の拡大によって、第3のプレナム536を満たす各ガス流の拡大が促される。従って、バッフルアレイ524は、第3のプレナム526の幅にわたり配置されるプロセスガスのカーテンを形成するのを助ける。プロセスガスのカーテンは、第3のプレナム526の幅全体にわたってプロセスガスの流量及び濃度が同じであるほぼ均一なカーテンとなるよう構成されている。
【0079】
バッフルアレイ524は、インジェクタ挿入部500の長さL4にわたって配置されている。バッフルアレイ524の長さL4は、ガス流の拡大レート、第2のプレナム522内の背圧、及びガス混合のレートを決定する際に役立つ。バッフルアレイ524の長さL4は、フィンアレイ520の長さL2の約25%~約50%、例えば長さL2の約30%~約40%、例えば長さL2の約30%~約35%である。
【0080】
第3のプレナム526は、バッフルアレイ524と出口開口部508との間に配置されている。第3のプレナム526は、インジェクタ挿入部500の壁の内部に形成された空いた領域である。第3のプレナム526は、バッフルアレイ524から流れ出たガスの流れが混ざってプロセスガスの連続的な広がりに合流することを可能とするよう構成されている。プロセスガスのシート状の広がり(sheet of process gas)は、その後、出口開口部508を通って処理空間110内へと放出される。
【0081】
図5Cは、本開示の実施形態に係る、
図5Aのガスインジェクタ108を切断線5C-5Cで切った概略的な断面による平面図である。
図5Cは、上述のインジェクタ挿入部500を介した分配システム515をより明確に示している。分配システム515は、ガス導入通路514、拡散通路、第1のプレナム518、フィンアレイ520、第2のプレナム522、バッフルアレイ524、第3のプレナム536、及びこれらから形成される通路を含む。
【0082】
インジェクタ挿入部500の両側には、1つ以上の加熱要素530が配置されている。加熱要素530は、インジェクタ挿入部500の少なくとも一部分を通って、拡散通路516の周囲に配置されている。本明細書に記載の加熱要素530は、インジェクタ基体502の前面512を貫通して配置された1つ以上の開口部528を通して、インジェクタ挿入部500に挿入されている。加熱要素530は、抵抗性加熱要素又は放射加熱要素のいずれかでありうる。
図5Cに示す加熱要素530はカートリッジヒータであり、ヒータキャビティ531内に配置されている。
図5A~
図5Cの実施形態では、2つのヒータキャビティ531が存在し、それぞれのヒータキャビティ531内に1つの加熱要素530が配置されている。
【0083】
各ガスインジェクタ108内に配置された加熱要素530によって、処理空間110(
図1)に流入する混合ガス又はプロセスガスの予熱が可能となる。注入リング116及びベース本体114といった処理チャンバ100の他の構成要素とは別に加熱されるガスインジェクタ108によって、当該ガスインジェクタ108を流過するガスのより制御された加熱が可能となる。ガスは、本明細書に記載の加熱要素530を使用して、処理空間に入る直前に所望のプロセス温度まで加熱することができる。ガスインジェクタ108を加熱することは概して、ジクロロシラン又はトリクロロシランといった、安定した又は非反応性の前駆体をガスインジェクタ108を介して流すときに利用される。加熱要素530は、ガスインジェクタ108、及びガスインジェクタ108を流過するガスを、約400℃未満の温度まで、例えば約100℃~約400℃、例えば約150℃~約300℃、例えば約200℃~約300℃の温度まで加熱するよう構成されている。各ガスインジェクタ108を個別に加熱することで、個々のガスインジェクタ108を流過するプロセスガスを制御することがさらに可能となり、これにより、1つ以上のガスインジェクタ108を流過するプロセスガスが、他のガスインジェクタ108を流過するプロセスガスとは異なる温度まで加熱される。加熱要素530によって、基板の上に流す前に未完成のまま消費することなく、ガスを予熱することが可能となる。
【0084】
図5Dは、本開示の実施形態に係る、
図5Aのガスインジェクタ108の第1の側からの概略的な側面図である。ガスインジェクタ108は、インジェクタ基体502の前面512に面して示されている。前面512を貫通して、ガス導入通路514、加熱要素530用の1つ以上の開口部528、及び1つ以上の取り付けファスナ507が配置されている。ガス導入通路514は、当該ガス導入通路514が開口部528間の中央に位置されるように、開口部528の間に配置されている。2つの開口部528が示されており、加熱要素530が各開口部528内に配置されている。各開口部528及びガス導入通路514は、インジェクタ挿入部500の外面504より内側に配置されている。
【0085】
1つ以上の取り付けファスナ507は、ガスインジェクタ108を注入リング116に取り付けて、ガスインジェクタ108を定位置に保持するために使用される。1つ以上の取り付けファスナ507は、フック、留め具、固定ピン、ラッチ、ねじ、又はボルトを含みうる。他の種類のファスナも想定される。1つ以上の取り付けファスナ507が、インジェクタ基体502を貫通して配置される。1つ以上の取り付けファスナ507が、少なくとも前面512を貫通して配置される。本明細書で示される1つ以上の取り付けファスナ507は、2つの取り付けファスナ507である。2つの取り付けファスナ507は、インジェクタ基体502の両側に、かつガス導入通路514の両側に配置されている。2つの取り付けファスナ507は、インジェクタ基体502を貫通して配置された開口部528より外側に配置されている。
【0086】
一部の実施形態において、加熱要素530又は取り付けファスナ507が追加的に利用される。前面512を貫通して配置された開口部528によって、加熱要素530を個別に電源(図示せず)に接続することが可能となる。ガス導入通路514によって、第1のプロセスガス供給源174又は第2のプロセスガス供給源176といったガス供給源を、拡散通路516に流体的に結合してプロセスガスを供給することが可能となる。
【0087】
図5Eは、本開示の実施形態に係る、
図5Aのガスインジェクタ108の第2の側からの概略的な側面図である。ガスインジェクタ108は、インジェクタ挿入部500の注入面510に面して示されている。示されるように、出口開口部508が注入面510内に配置されている。1つ以上の取り付けファスナ507が、インジェクタ基体502を貫通してさらに配置されている。
【0088】
注入面510の高さH3、従ってインジェクタ挿入部500の高さは、約5mm~約12mm、例えば約6mm~約11mm、例えば約7mm~約10mmである。高さH3は、インジェクタ通路408の高さと同様であり、インジェクタ挿入部500をインジェクタ通路408に挿入することを可能にする。注入面510の幅W5、従ってインジェクタ挿入部500の幅は、約50mm~約100mm、例えば約60mm~約90mm、例えば約70mm~約90mmである。幅W5は、インジェクタ通路408の幅と同様であり、インジェクタ挿入部500をインジェクタ通路408に挿入することを可能にする。幅W5によってさらに、処理チャンバ100内で利用されるガスインジェクタ108の数が決定される。注入面500の高さH3と幅W5との比率は、約1:15~約1:5であり、例えば約1:12~約1:8、例えば約1:10である。高さH3と幅W5との比率が、インジェクタ挿入部500から出るガスの均一な広がりの形成を助ける。
【0089】
ガスインジェクタ108の出口開口部508は、約50mm~約100mm、例えば約70mm~約90mmの幅W6を含む。出口開口部508の幅W6は、単一のガスインジェクタ108からのガスの分配を制御するよう構成されている。幅W6は、使用されるガスインジェクタ108がより少ないときには広くなり、使用されるガスインジェクタ108がより多いときには狭くなりうる。出口開口部508の高さH4は、約2mm~約8mm、例えば約3mm~約7mm、例えば約3mm~約6mmである。出口開口部508の高さH4は、分配システム515の残りの部分の高さと等しい。一部の実施形態において、高さH4が分配システム515を通して変化する。
【0090】
図6Aは、本開示の第2の実施形態に係る、他の実施形態によるガスインジェクタ108の概略的な等角図である。
図6A~
図6Bのガスインジェクタ108は、ガスインジェクタ108と類似しているが、インジェクタ挿入部500が、多層インジェクタ挿入部600に置き換えられている。多層インジェクタ挿入部600は、
図5A~
図5Cのインジェクタ挿入部500と同様であるが、二層のガス流を有しており、第1の広がりのガス流(first sheet of gas flow)が、第2の広がりのガス流(second sheet of gas flow)の下に配置されている。インジェクタ挿入部600は、2つの分配システム515を含み、これにより、第1の分配システム515が、本明細書に記載するように、第2の分配システム515の上に重ねられている。
【0091】
図6A~
図6Bのガスインジェクタ108は、インジェクタ基体502、及び多層インジェクタ挿入部600を含む。多層インジェクタ挿入部600は、インジェクタ基体502に接続されており、
図5A~
図5Cのインジェクタ挿入部500と同様のやり方で、インジェクタ通路408(
図4A)のうちの1つに嵌め込まれるよう構成されている。インジェクタ挿入部600を有する各ガスインジェクタ108は、ガス出口178内に、第1の出口開口部608a及び第2の出口開口部608bを含み、これにより、インジェクタ基体502とは反対側の多層インジェクタ挿入部600の遠位端に配置された、2つの別個のガス出口が存在する。第1の出口開口部608aと第2の出口開口部608bのそれぞれには、第1のプロセスガス供給源174及び第2のプロセスガス供給源176といった、別々のプロセスガス供給源から別々のプロセスガスが供給される。
【0092】
多層インジェクタ挿入部600とインジェクタ基体502の双方は、プロセスガスに対する反応性が低く、耐久性が高く、熱伝導率が高い材料で形成されている。インジェクタ基体502及び多層インジェクタ挿入部600の形成に適した材料は、炭化ケイ素、ニッケル、ステンレス鋼、アルミニウム、及び石英を含む。
【0093】
多層インジェクタ挿入部600は、インジェクタ基体502の裏面506から延在する。多層インジェクタ挿入部600は、外面604、及び注入面610を有する。ガス出口178は、注入面610を貫通して配置されている。注入面610は、多層インジェクタ挿入部600のベース601及びインジェクタベース502とは反対側の、多層インジェクタ挿入部600の遠位端に配置されている。多層インジェクタ挿入部600の外面604は、インジェクタ通路408のうちの1つの内部に収まるよう構成されている。多層インジェクタ挿入部600の外面604及び注入面610の断面は、スタジアム形状、又はオブラウンド形状をしている。一部の実施形態において、外面604及び注入面610の断面が、楕円形、又は、矩形、平行四辺形、台形といった四辺形である。他の形状による外面604及び注入面610の断面も想定され、有効でありうる。多層インジェクタ挿入部600は、外面604のうち上面605及び底面603を含む。上面605及び底面603は、上面505及び底面503と同様である。
【0094】
インジェクタ挿入部600のガス出口178は、第1の出口開口部608a及び第2の出口開口部608bを含む。第1の出口開口部608a及び第2の出口開口部608bは、多層インジェクタ挿入部600の外面604を貫通して配置されている。第1の出口開口部608aと第2の出口開口部608bのそれぞれは、当該第1の出口開口部608a及び第2の出口開口部608bを通って駆動されるガスを分配して、基板の表面にわたってガスの2つのシート状の広がり(two sheets of gas)を形成するように、成形されている。
図6A~
図6Bの実施形態では、第1の出口開口部608aが、第2の出口開口部608bの下に配置されている。第1の出口開口部608aは、第2の出口開口部608bに対して平行に配置されている。第1の出口開口部608aと第2の出口開口部608bのそれぞれは、別々のガスカーテン又はガスの広がりを提供するよう構成されている。
【0095】
各別々のガスシート(gas sheet)は、互いに対して平行に吐出され、処理空間110(
図1)に入った後にのみ混合する。各ガスシートの経路は、インジェクタ挿入部600内を流過する間、分離されている。幾つかの実施形態において、第1の出口開口部608a及び第2の出口開口部608bの一方又は両方が、当該第1の出口開口部608a又は第2の出口開口部608bを出るガスを、対向する出口開口部608a、608bを出るガス流に向かって方向付けるように、配置される。このことにより、出口開口部608a、608bを出るプロセスガスの2つのカーテンの間のガス混合を向上させることができる。
【0096】
図6Bは、本開示の実施形態に係る、他の平面を通る
図6Aのガスインジェクタ108の概略的な断面図である。本明細書に記載の実施形態では、第1のガス導入通路614a及び第2のガス導入通路614bが存在する。第1のガス導入通路614a及び第2のガス導入通路614bに結合された1つ以上のガス接続は、第1のプロセスガス供給源174又は第2のプロセスガス供給源176のいずれかでありうる。一部の実施形態において、第1のガス導入通路614aが第1のプロセスガス供給源174に結合されており、第2のガス導入通路614bが第2のプロセスガス供給源176に結合されている。第1のガス導入通路614aと第2のガス導入通路614bの双方は、
図5B及び
図5Cのガス導入通路514と同様である。
【0097】
第1のガス導入通路614aと第2のガス導入通路614bのそれぞれは、別体の別個のガス通路である。第1のガス導入通路614aは単一のガス通路であり、前面512に接続されたガスラインからのプロセスガスを移送する。第2のガス導入通路614bは、第1のガス導入通路614aと同様であり、前面512に接続された第2のラインからの第2のプロセスガスを移送する単一のガス通路である。第1のガス導入通路614aは、第1の拡散通路616aと流体連通するよう構成されている。第2のガス導入通路614bは、多層インジェクタ挿入部600内に配置された第2の拡散通路616bと流体連通している。第1の拡散通路616aと第2の拡散通路616bの双方は、
図5Cの拡散通路516と同様である。第1の拡散通路616aと第2の拡散通路616bとは、幾つかの実施形態において、異なるパターンを有することができ、これにより、第1の拡散通路616aのパターンは、第2の拡散通路616bのパターンとは異なっている。第1の拡散通路616aは、第2の拡散通路616bの下方に配置されている。
【0098】
第1の拡散通路616a及び第2の拡散通路616bのそれぞれによって形成される4~16個の経路が存在し、例えば4~12個の経路、例えば6~10個の経路、例えば8個の経路が存在する。
【0099】
第1の拡散通路616aの各経路は、第1の下方プレナム618aに通じている。第2の拡散通路616bの各経路は、第1の上方プレナム618bに通じている。第1の下方プレナム618aと第1の下方プレナム618bとは、2つの別個の空間であり、それぞれ、第1の拡散通路616a及び第2の拡散通路616bの遠位端に配置されている。第1の下方プレナム618a及び第1の上方プレナム618bは、
図5B及び
図5Cの第1のプレナム518と同様である。下方フィンアレイ620aが、第1の拡散通路616aからの第1の下方プレナム618aとは反対側の、第1の下方プレナム618aの遠位端に配置されている。上方フィンアレイ620bは、第1の上方プレナム618bの遠位端に配置されている。下方フィンアレイ620a及び上方フィンアレイ620bのそれぞれは、
図5B及び
図5Cのフィンアレイ520と同様であり、それぞれが複数のフィンを含む。
【0100】
下方フィンアレイ620aのすぐ下流には、第2の下方プレナム622aが存在する。上方フィンアレイ620bのすぐ下流には、第2の上方プレナム622bが存在する。第2の下方プレナム622aと第2の上方プレナム622bは、それぞれ、下方フィンアレイ620a及び上方フィンアレイ620bの遠位端に配置された空間である。第2の下方プレナム622a及び第2の上方プレナム622bは、
図5B及び
図5Cの第2のプレナム522と同様である。
【0101】
下方バッフルアレイ624a及び上方バッフルアレイ624bが、
図5Cのバッフル535と同様の複数のバッフルから形成されている。下方バッフルアレイ624aは、下方フィンアレイ620aから最も遠い、第2の下方プレナム622aの遠位端に配置されている。上方バッフルアレイ624bは、下方フィンアレイ620bから最も遠い、第2の上方プレナム622bの遠位端に配置されている。第3の下方プレナム626a及び第3の上方プレナム626bが、それぞれ、下方バッフルアレイ624a及び上方バッフルアレイ624bから延在する。第3の下方プレナム626aは、下方バッフルアレイ624aと第1の出口開口部608aとの間に延在する空間である。第3の上方プレナム626bは、上方バッフルアレイ624bと第2の出口開口部608bとの間に延在する空間である。第3の下方プレナム626aと第3の上方プレナム626bのそれぞれは、第3のプレナム526と同様である。
【0102】
図6A及び
図6Bには示されていないが、多層インジェクタ挿入部600は、
図5Cの加熱要素530と同様の1つ以上の加熱要素をさらに含む。多層インジェクタ挿入部600内の通路、プレナム、フィン、及びバッフルのパターンと分布は、
図5A~
図5Cの実施形態に関して先に記載したものと同様である。スペースが許す限り、多層インジェクタ挿入部600内には3つ以上の層が存在しうる。一部の実施形態において、処理空間110に3つの別個のガスシートを注入するための3つの層、又は処理空間110に4つの別個のガスシートを注入するための4つの層が存在する。
【0103】
図6Cは、本開示の実施形態に係る、
図6Aのガスインジェクタ108の第1の側からの概略的な側面図である。ガスインジェクタ108は、インジェクタ基体502の前面512に面して示されている。先に
図5Dを参照して述べたのと同様に、ガスインジェクタ108は、加熱要素530のための1つ以上の開口部528と、1つ以上の取り付けファスナ507と、を含む。ガス導入通路514が、第1のガス導入通路614a及び第2のガス導入通路614bと置き換えられている。第2のガス導入通路614bは、第1のガス導入通路614aの上方に配置されている。第1のガス導入通路614a及び第2のガス導入通路614bの双方は、開口部528間に、かつ加熱要素530間に配置されている。第1のガス導入通路614a及び第2のガス導入通路614bは、多層インジェクタ挿入部600の外面604より内部に存在する。多層インジェクタ挿入部600の高さは、ガス通路の追加の層を補うために調整することができ、又は、各ガス通路は狭くすることができる。
【0104】
図6Dは、本開示の実施形態に係る、
図6Aのガスインジェクタの第2の側からの概略的な側面図である。ガスインジェクタ108は、多層インジェクタ挿入部600の注入面610に面して示されている。示されるように、第1の出口開口部608a及び第2の出口開口部608bは、注入面610の範囲内に配置されている。
【0105】
注入面610の高さH5、従ってインジェクタ挿入部600の高さは、約5mm~約15mm、例えば約6mm~約12mm、例えば約8mm~約12mmである。高さH5は、インジェクタ通路408の高さと同様であり、インジェクタ挿入部600をインジェクタ通路408に挿入することを可能にする。注入面610の幅W5は、注入面510の幅W5と同様である。幅W5は、インジェクタ通路408の幅と同様であり、インジェクタ挿入部600をインジェクタ通路408に挿入することを可能にする。注入面600の高さH5と幅W5との比率は、約1:7~約1:20であり、例えば約1:8~約1:16、例えば約1:10~約1:15である。高さH5と幅W5との比率が、インジェクタ挿入部600から出るガスの均一な広がりの形成を助ける。
【0106】
第1の出口開口部608aと第2の出口開口部608bのそれぞれの幅W6は、出口開口部508の幅W6と同様である。第1の出口開口部608aと第2の出口開口部608bのそれぞれは、高さH6をさらに含む。高さH6は、約2mm~約8mm、例えば約3mm~約7mm、例えば約3mm~約6mmである。出口開口部608a、608bの高さH6は、各分配システム515の残りの部分の高さと等しい。一部の実施形態において、高さH6が分配システム515を通して変化する。
【0107】
図7Aは、本開示の実施形態に係る、ガス供給アセンブリ700の概略的なガスフロー図である。ガス供給アセンブリ700は、第1のプロセスガス供給源174及び第2のプロセスガス供給源176のうちの1つの代わりに又は当該1つと共に使用することができる。1つ以上のガス供給アセンブリ700は、1つ以上のガスインジェクタ108を介して、処理空間110にプロセスガスを供給するよう構成されている。ガス供給アセンブリ700は、プロセスガス供給源702から処理空間110への前駆体の分圧及び流量を制御する際に支援する。プロセスガス供給源702からのガスの分圧を制御することで、処理空間110の様々な領域に流入するプロセスガスの濃度を制御することが可能となる。ガス供給アセンブリ700は、ガス供給アセンブリ700の様々なアームを流過するプロセスガス及び前駆体の流量及び分圧(即ち濃度)を別々に制御することを可能とする。ユーザは、同じ流量の特定のプロセスガスを様々な分圧/濃度で供給するよう、ガス供給アセンブリ700の様々なアーム又は導管を構成することが可能である。
【0108】
ガス供給アセンブリ700は、圧力コントローラ704に流体的に結合されたプロセスガス供給源702と、圧力コントローラ704に流体的に結合されたガスリザーバ706と、ガスリザーバ706及び排気ポンプ734に流体的に結合され、かつガスリザーバ706と排気ポンプ734との間に配置された排気誘導バルブ708と、を含む。複数のスプリッタバルブ726a~726fが、ガスリザーバ706及び処理空間110に流体的に接続されている。複数のスプリッタバルブ726a~726fは、ガスリザーバ706に対して並列に結合されている。複数のスプリッタバルブ726a~726fの各スプリッタバルブ726a~726fは、バルブコントローラ724a~724fに接続されている。バルブコントローラ724a~724fは、ガスリザーバ706から各スプリッタバルブ726a~726fを通る体積流量を制御する。
【0109】
キャリアガス供給源728が、複数の混合点732に流体的に結合されている。複数の混合点732は、キャリアガス供給源728と処理空間110との間、及び複数のスプリッタバルブ726a~726fと処理空間110との間に配置されている。スプリッタバルブ726a~726fからのガスと、キャリアガス供給源728からのガスは、ガスインジェクタ108に供給される前に、混合点732で合わされる。
【0110】
プロセスガス供給源702は、ガスパネル、又は単一のプロセスガス供給源702でありうる。プロセスガス供給源702は、ケイ素含有ガス、ゲルマニウム含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガス、酸素含有ガスといったプロセスガスを供給するよう構成されている。他の種類のプロセスガスも考えられる。プロセスガス供給源702は、プロセスガスを所定の濃度及び流量で供給するよう構成されており、これにより、プロセスガス中の成分の質量流量は、プロセスガス供給源702によって制御される。プロセスガス供給源702は、プロセスガス導管714を介して圧力コントローラ704に流体的に結合されている。圧力コントローラ704は、ガスリザーバ706内に貯えられたガスの圧力を制御するよう構成される。圧力コントローラ704は、ガスリザーバ706内の圧力を制御する。圧力コントローラ704は、ガスリザーバ706を出て処理空間110に入るガスを考慮するために、圧力コントローラ704及び排気誘導バルブ708を通るプロセスガスの流れを制御する。
【0111】
圧力コントローラ704は、リザーバ供給導管716によってガスリザーバ706に流体的に結合されている。リザーバ供給導管716は、圧力コントローラ704とガスリザーバ706との間でガスを移送する。ガスリザーバ706は、加圧されたガスのリザーバである。ガスリザーバ706は、約10psi~約65psi、例えば約10psi~約60psi、例えば約14psi~約50psiの圧力で保持される。ガスリザーバ706は、一定の圧力を維持するよう構成されている。一定の圧力は、スプリッタバルブ726a~726fを通るプロセスガスの脈動を制御する際に役立つ。ガスリザーバ706は、チャンバ又はタンクであり、基板処理工程中に、約100cm3を超えるプロセスガスを保持するよう構成されている。ガスリザーバ706は、約100cm3~約750cm3、例えば約100cm3~約500cm3の空間を有する。ガスリザーバ706は、プロセスガス供給源702によって導入されるガスの均一な混合を可能とするのに十分な大きさである。ガスリザーバ706は、約100sccm~約500sccmの流量を連続的に通過させられるよう構成されうる。
【0112】
ガスリザーバ706内の圧力が、所定の限界値を超えた場合には、圧力コントローラ704は、排気バルブコントローラ712を介して排気誘導バルブ708と通信する。排気バルブコントローラ712は、排気誘導バルブ708に結合されており、排気誘導バルブ708を開閉して、ガスリザーバ706から排気ポンプ734へのプロセスガスの流出を増減させる。排気ポンプ734は、排気導管720を介して排気誘導バルブ708に結合されている。排気導管720はまた、排気モジュール165及び下方チャンバ排気通路164を、排気ポンプ734に流体的に結合する。
【0113】
排気誘導バルブ708は、各スプリッタバルブ726a~726fが閉じている間は、ガスリザーバ706からのプロセスガスを排気ポンプ734へと排気できるようにする。全てのスプリッタバルブ726a~726fが閉じている間に、排気誘導バルブ708を介して排気されるプロセスガスの流量は、各スプリッタバルブ726a~726fを流過するプロセスガスの所望の流量と等しい。スプリッタバルブ726a~726fが開位置にあり、プロセスガスが処理空間110内に入ることを許容するときには、排気誘導バルブ708は閉じられている。スプリッタバルブ726a~726f及び排気誘導バルブ708を開閉させることを組み合わせることで、速度及び圧力の上昇が少し発生し又は当該上昇が全く発生することなく、高速のガス供給時間が提供される。時間に対する、各スプリッタバルブ726a~726f及び排気誘導バルブ708を通る合計流量は、マスタ流量コントローラ722を使用して、ほぼ一定になるように制御される。
【0114】
各スプリッタバルブ726a~726fは、スプリッタ導管725を介してガスリザーバ706に結合されている。スプリッタ導管725は、複数のガスラインに分岐し、スプリッタバルブ726a~726fのそれぞれに接続するよう構成されている。各スプリッタバルブ726a~726fは並列に結合されており、いずれのスプリッタバルブ726a~726bも同じガス流路内には存在しない。複数のスプリッタバルブ726a~726fは、第1のスプリッタバルブ726a、第2のスプリッタバルブ726b、第3のスプリッタバルブ726c、第4のスプリッタバルブ726d、第5のスプリッタバルブ726e、及び第6のスプリッタバルブ726fを含む。各スプリッタバルブ726a~726fは、スプリッタ導管725から自身を通過するプロセスガスの流量を制御するよう構成されている。各スプリッタバルブ726a~726fは、バルブコントローラ724a~724fのうちの1つによって制御されている。バルブコントローラ724a~724fは、マスタ流量コントローラ722に接続されている。マスタ流量コントローラ722は、各バルブコントローラ724a~724fに指示を与えるよう構成されている。バルブコントローラ724a~724fのそれぞれは、当該バルブコントローラ724a~724fのそれぞれがスプリッタバルブ726a~726fのうちの1つを開閉するよう構成されているように、スプリッタバルブ726a~726fの構成を制御するよう構成されている。スプリッタバルブ726a~726fによって、スプリッタバルブアセンブリ731の各分岐を流過するプロセスガスの流量又は分圧(即ち、濃度)を、混合点732でキャリアガスと混合する前に制御することが可能となる。従って、各ガスインジェクタ108から出る流量は同じでありうるが、ガスインジェクタ108から流出するガス流中のプロセスガスの分圧を、各ガスインジェクタ108間で変えることができる。1つの基板が処理されるにつれて各ガスインジェクタ108を通るプロセスガスの濃度が変わるように、ガスインジェクタ108のそれぞれを通るプロセスガスの分圧がさらに、処理チャンバ内の同じプロセスの間に変えられうる。
【0115】
第1のバルブコントローラ724aは、第1のスプリッタバルブ726aを開閉するよう構成されている。第2のバルブコントローラ724bは、第2のスプリッタバルブ726bを開閉するよう構成されている。第3のバルブコントローラ724cは、第3のスプリッタバルブ726cを開閉するよう構成されている。第4のバルブコントローラ724dは、第4のスプリッタバルブ726dを開閉するよう構成されている。第5のバルブコントローラ724eは、第5のスプリッタバルブ726eを開閉するよう構成されている。第6のバルブコントローラ724fは、第6のスプリッタバルブ726fを開閉するよう構成されている。スプリッタバルブ726a~726fのそれぞれは、スプリッタバルブ726a~726fのうちの1つを通るプロセスガスの流れを部分的に制限又は許容するために、様々な程度に開閉することができる。スプリッタバルブ726a~726fを開くことで、流量が1つ以上のスプリッタバルブ726a~726fを介して増大する。1つ以上のスプリッタバルブ726a~726fを少なくとも部分的に閉じることで、流量が1つ以上のスプリッタバルブ726a~726fを介して減少する。
【0116】
6個のスプリッタバルブ726a~726f、及び6個のバルブコントローラ724a~724fを有するものとして示されているが、他の数のスプリッタバルブ726a~726f及びバルブコントローラ724a~724fも考えられる。一部の実施形態において、2~20個のスプリッタバルブ726a~726fが存在し、例えば3~15個のスプリッタバルブ726a~726f、例えば4~12個のスプリッタバルブ726a、726f、例えば4~10個のスプリッタバルブ726a~726f、例えば4~8個のスプリッタバルブ726a~726f、例えば4~6個のスプリッタバルブ726a~726fが存在する。
図1、
図2A、
図2B、
図4A、
図4Bに示す実施形態では、5個のスプリッタバルブ726a~726fが存在する。同様に、2~20個のバルブコントローラ724a~724fが存在してよく、例えば3~15個のバルブコントローラ724a~724f、例えば4~12個のバルブコントローラ724a~724f、例えば4~10個のバルブコントローラ724a~724f、例えば4~8個のバルブコントローラ724a~724f、例えば4~6個のバルブコントローラ724a~724fが存在してよい。
図1、
図2A、
図2B、
図4A、
図4Bに示す実施形態では、5個のバルブコントローラ724a~724fが存在する。
【0117】
一部のスプリッタバルブ726a~726fを通る流量は、他のスプリッタバルブ726a~726fを通る流量よりも少なくなるよう制御することができる。一部の実施形態において、スプリッタバルブ726a~726f、及び対応するバルブコントローラ724a~724fのそれぞれが、スプリッタバルブアセンブリ731と見做される。
【0118】
ガスは、スプリッタバルブ726a~726fのそれぞれを通って、複数のガス分割導管733に流入する。ガス分割導管733は、スプリッタバルブ726a~726fのそれぞれから、複数の混合点732のうちの混合点732まで延びている。各ガス分割導管733を通るガス流は、混合点732でキャリアガスと合わせられる。キャリアガスは、キャリアガス供給源728から供給される。キャリアガスは、キャリアガス供給源728から、キャリアガス導管730を介して各混合点732に供給される。キャリアガス導管730は、先に記載のスプリッタバルブアセンブリ731と同様のスプリッタバルブアセンブリを含みうる。代替的に、キャリアガス導管730が、複数のキャリアガスラインに分けられる。キャリアガスラインのうちの1つが、各混合点732に接続している。キャリアガス供給源728によって供給されるキャリアガスは、ヘリウム(He)、窒素(N2)、水素(H2)、アルゴン(Ar)、又は酸素(O2)のいずれか1つ又はこれらの組み合わせとすることができる。他のキャリアガスも想定される。一部の実施形態において、キャリアガス供給源728が、第2のプロセスガス供給源に置き換えられる。
【0119】
プロセスガスが、混合点732のうちの1つでキャリアガスと合わせられて一つになった後で、合わせられたガスは、ガスインジェクタ108を介して処理空間110に注入するために、1つ以上のガスインジェクタ108のそれぞれに供給される。個々の混合ガス導管735が、各混合点732と、対応する各ガスインジェクタ108と、の間に延びている。
【0120】
バルブコントローラ724a~724fのそれぞれは、マスタ流量コントローラ722に接続されている。バルブコントローラ724a~724fのそれぞれは、1つ以上の電気接続を使用してマスタ流量コントローラ722に接続され、又は電子信号又は高周波(RF)信号を使用してつながれる。マスタ流量コントローラ722はさらに、圧力コントローラ704、ガスリザーバ706、及び排気バルブコントローラ712のそれぞれに接続されている。マスタ流量コントローラ722は、バルブコントローラ724a~724f、圧力コントローラ704、ガスリザーバ706、及び排気バルブコントローラ712のそれぞれに指示を送受信して、処理空間110内へのプロセスガスの流量を制御するよう構成されている。
【0121】
スプリッタバルブ726a~726f、及び排気誘導バルブ708のそれぞれは、ガス供給アセンブリ700内に配置された導管を通るプロセスガスの流量を制御するよう構成されている。スプリッタバルブ726a~726f及び排気誘導バルブ708を構成しうるバルブの種類には、回転バルブ、リニアバルブ、及び自己作動バルブが含まれる。より具体的には、スプリッタバルブ726a~726f及び排気誘導バルブ708は、ボールバルブ、プラグバルブ、バタフライバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、ピンチバルブ、ダイヤフラムバルブ、又はニードルバルブの1つでありうる。バルブの種類は、少なくとも部分的には、ガス供給アセンブリ700全体にプロセスガスを分配する際に使用される精度の程度に応じて選択される。
【0122】
ガス供給アセンブリ700によって、処理空間110に進入する混合ガスの流量と、混合ガス中のプロセスガスの濃度/分圧と、の両方を制御することが可能となる。プロセスガスの濃度/分圧と、総流量の両方を制御することで、基板表面に亘るプロセスガスの分配を変えることが可能となる。プロセスガスの濃度を制御することで、基板の様々な領域での堆積速度をより良好に制御することが可能となる。
【0123】
図7Bは、本開示の実施形態に係る、
図7Aの混合ガスアセンブリ700、及び第2の混合ガスアセンブリ701の概略的なガスフロー図である。ガスインジェクタ108のそれぞれが、混合ガス導管735の1つに取り付けられている。混合ガス導管735のそれぞれは、供給アセンブリ700から延びている。供給アセンブリ700は、
図7Aにより詳しく示されている。第2の混合ガスアセンブリ701は、供給アセンブリ700と同様である。第2の混合ガスアセンブリ701は、複数の第2の混合ガス導管740を介して各ガスインジェクタ108に接続されている。第2の混合ガス導管740は、混合ガス導管735と類似しているが、第2の混合ガスアセンブリ701から延びている。第2の混合ガスアセンブリ701内の各構成要素は、供給アセンブリ700内の構成要素と同様である。
【0124】
第2の混合ガスアセンブリ701は、
図6A~
図6Dの多層インジェクタ挿入部600と共に利用することができる。本明細書に記載の実施形態では、供給アセンブリ700が、ガスインジェクタ108の第1のガス導入通路614a(
図6B及び
図6C)にガスを供給し、第2の混合ガスアセンブリ701が、ガスインジェクタ108の第2のガス導入通路614b(
図6B及び
図6C)にガスを供給する。従って、ガスインジェクタ108によって吐出されるガスの広がりが、流量及びプロセスガス濃度の両方において正確に制御されうる。
【0125】
排気モジュール165及び下部チャンバ排気通路164のそれぞれは、第1の混合ガスアセンブリ700と第2の混合ガスアセンブリ701の両方により供給されるガスを除去するための排気導管720と流体連通している。一部の実施形態において、混合ガスアセンブリ700、701の両方が、排気導管720及び排気ポンプ734といった共通の排気システムを共有する。
【0126】
第1の混合ガスアセンブリ700と第2の混合ガスアセンブリ701とは、同じガスを供給してよく、又は異なるガスを供給してよい。一部の実施形態において、第1の混合ガスアセンブリ700が、基板150上に層を堆積させるための第1のプロセスガスを供給する。第2の混合ガスアセンブリ701は、処理空間110に第2のプロセスガスを供給するために利用される。第2のプロセスガスは、第1のプロセスガスと同様であってよく、基板150上に第2の層を堆積させうる。代替的に、第2の混合ガスアセンブリ701は、パージガス、洗浄ガス、又はエッチャントガスを供給する。一部の実施形態において、同じガスが利用されるが、異なる流量又は濃度で供給される。ガスは、第1の混合ガスアセンブリ700及び第2の混合ガスアセンブリ701を介して、同時に、又は、流過するガス及び処理チャンバ100内で実行されている所望のプロセスに従って時間をずらして、供給することができる。
【0127】
図8は、本開示の実施形態に係る、
図7Aのガス供給アセンブリ700で使用するための方法800のフロー図である。方法800は、処理空間110といった処理空間へのプロセスガスの流量及び濃度を制御するために利用される。工程802の間、第1の混合ガスが、ガスリザーバ706といったガスリザーバに導入される。第1の混合ガスは、第1の濃度のプロセスガスを含む。
【0128】
ガスリザーバは、その中のガス量を所定の圧力で維持するよう構成された圧力貯蔵器である。ガスの量は、約100sccmより大きく、例えば、約100cm3より大きいプロセスガスであり、例えば約100cm3~約750cm3、例えば約100cm3~約500cm3のプロセスガスである。ガスリザーバ706内の第1の混合ガスの圧力は、動的な圧力振動を発生させうるガスリザーバ内の共振モードを回避するために、上述の所定の圧力範囲内に保たれる。排気誘導バルブ及び複数のスプリッタバルブが、ガスリザーバ内のほぼ一定の圧力を保つために利用される。排気誘導バルブは排気誘導バルブ708であり、複数のスプリッタバルブはスプリッタバルブ724a~724fである。
【0129】
第1の混合ガスが、プロセスガス供給源702といったプロセスガス供給源によって、ガスリザーバに導入される。プロセスガス供給源は、プロセスガスを含む第1の混合ガスを供給するよう構成されている。プロセスガスは、ケイ素含有ガス、ゲルマニウム含有ガス、窒素含有ガス、炭素含有ガス、酸素含有ガスの1つ又はこれらの組み合わせでありうる。列挙されていない他の種類のプロセスガスも考えられる。プロセスガス供給源は、所定の第1のプロセスガス濃度及び流量で第1の混合ガスを供給し、これにより、第1の混合ガス中の成分の質量流量は、プロセスガス供給源によって制御されている。プロセスガス供給源からの第1の混合ガスの流量は、第1の流量である。第1の流量は、約100sccm~約2500sccm、例えば約100sccm~約2000sccmである。
【0130】
工程802の後に、複数のスプリッタバルブに第1の混合ガスを供給する他の工程804が実行される。複数のスプリッタバルブは、スプリッタバルブ726a~726fでありうる。複数のスプリッタバルブは、スプリッタ導管725といったスプリッタ導管の異なる分岐にそれぞれ配置されている。複数のスプリッタバルブのそれぞれは、そこを通る第1の混合ガスの流量を制御するために利用される。従って、スプリッタバルブは、スプリッタ導管725の各分岐にわたって第1の混合ガスの流量を制御するために利用される。各スプリッタバルブを通る第1の混合ガスの流量は、プロセスガス供給源からの第1の混合ガスの総流量をスプリッタバルブの数で割ったものと等しい。5個のスプリッタバルブが存在する実施形態では、第1の混合ガスの流量は約20sccm~約500sccm、例えば約20sccm~約400sccmである。6個のスプリッタバルブが存在する実施形態では、第1の混合ガスの流量は約15sccm~約420sccm、例えば約15sccm~約335sccmである。各スプリッタバルブは、第1の混合ガスの流量を制御するために開閉させることができる。一部の実施形態において、スプリッタバルブは、そこを通る第1の混合ガスの部分流量を許容するよう制御される。各スプリッタバルブは、当該各スプリッタバルブを所望のガス流量のために調整できるよう、個別に制御される。スプリッタバルブを通過した後で、第1の混合ガスは、ガス分割導管733といった複数のガス分割導管に流入する。1つのガス分割導管が、スプリッタバルブのそれぞれに結合されうる。ガス分割導管733は、そこを通る第1の混合ガスを運んで、複数の混合点732といった複数の混合点に接続する。ガス分割導管733のそれぞれが、混合点732のうちの1つに結合されている。
【0131】
キャリアガス導管にキャリアガスを供給する他の工程806が、工程804の前、工程804と同時に、又は工程804の後に実行される。キャリアガスは、工程806の間、キャリアガス供給源によって供給される。キャリアガス供給源は、キャリアガス供給源728でありうる。キャリアガス供給源は、約30slmより小さい流量で、例えば約5slm~約30slm、例えば約10slm~約30slmの流量でキャリアガスを供給するよう構成されている。キャリアガスは、ヘリウム(He)、窒素(N2)、水素(H2)、アルゴン(Ar)、又は酸素(O2)のいずれか1つ又はこれらの組み合わせでありうる。他のキャリアガスも想定される。キャリアガス導管は、キャリアガス導管730でありうる。キャリアガス導管は、複数のキャリアガスラインに分岐する。1つのキャリアガスラインが、複数の混合点のそれぞれに接続されている。
【0132】
工程806でキャリアガスがキャリアガス導管を介して供給されるのと同時に、かつ工程804で第1の混合ガスがスプリッタバルブを流過してしまった後で、キャリアガスと第1の混合ガスとが、工程808の間に混ぜ合わされる。第1の混合ガスとキャリアガスとの混合は、複数の混合点において行われる。複数の混合点のうちの混合点のそれぞれは、キャリアガス導管のキャリアガスラインの1つと、ガス分割導管の1つと、の交差点でありうる。従って、各混合点は、キャリアガスラインの遠位端とガス分割導管の遠位端とを合流させてキャリアガスと第1の混合ガスとを混合するための、T字状継手又はY字状継手を含みうる。キャリアガスと第1の混合ガスとを混ぜ合わせることで第2の混合ガスが生成し、第2の混合ガスは、混合点から流れ出て、混合ガス導管735といった複数の混合ガス導管を通って流れる。最初に混合点で混合されるときには、キャリアガスと第1の混合ガスとが均一に混合されないことがある。第2の混合ガスが、複数の混合ガス導管及び1つ以上のガスインジェクタを流過する間、キャリアガスと第1の混合ガスとは混ざり続ける。
【0133】
第2の混合ガスは、第1のプロセスガス濃度よりも低い第2のプロセスガス濃度を有する。各混合ガス導管を通る第2の混合ガスの流量は、各混合ガス導管を通る第1の混合ガスとキャリアガスの双方の総流量に等しい。各混合ガス導管を通る第2の混合ガスの流量は、約2slm~約10slm、例えば約4~約8slm、例えば約6slmである。各混合ガス導管を通る第2の混合ガスの流量は、処理チャンバ内のガスインジェクタの数に少なくとも部分的に依存しうる。第2の混合ガス中の第1の混合ガスとキャリアガスとの比率は、本明細書に記載の装置を使用して制御し調整することができ、これにより、各インジェクタを通る第1の混合ガスの濃度及び流量が、様々なプロセスのために望まれるように、個々のインジェクタごとに調整される。各ガスインジェクタを通る総流量は一定に保つことができ、第2の混合ガス中の第1の混合ガスの濃度/分圧が、各ガスインジェクタ間で変えられる。
【0134】
第2の混合ガスは、混合ガス導管を介して複数のガスインジェクタへと流される。混合ガス導管のそれぞれは、ガスインジェクタに結合されており、ガスインジェクタに第2の混合ガスを供給する。第2の混合ガスがガスインジェクタに導入されると、第2の混合ガスは、工程810の間に処理チャンバの処理空間に導入される。処理空間への第2の混合ガスの導入は、所定の速度及びガス分配で行われる。第2の混合ガスを導入することで、処理空間内に配置された基板の上に1つ以上の層を形成することが可能となる。
【0135】
図9Aは、本開示の実施形態に係る、リングインジェクタ900の概略的な平面図である。リングインジェクタ900は、ガスインジェクタ108に加えて、処理空間の周囲に配置されるよう構成されている。リングインジェクタ900は、処理空間110の内部に配置され、注入リング116の内面404又はベースリング114の内面304に取り付けられている。
図1に示すように、リングインジェクタ900は、注入リング116の内面404に取り付けられている。リングインジェクタ900は、基板が処理位置にある間、基板の上面の上方に配置される。従って、リングインジェクタ900は、
図1の水平面125より上方に、かつ上部チャンバ111内に配置されている。リングインジェクタ900は、複数の孔906を通して前駆体を処理空間110内に供給するよう構成されている。リングインジェクタ900は、チャンバ内での前駆体供給にフレキシビリティをもたらす。リングインジェクタ900は、ガスインジェクタ108からのガス流を補い、基板150の端部付近で堆積速度を制御するのを支援することができる。
【0136】
リング供給ライン902が、分配本体908に接続されている。分配本体908は、リング形状の分配本体908であり、リング供給ライン902に接続されている。リング供給ライン902は、処理チャンバ100の壁内の供給ポート(図示せず)を通過するよう構成されている。リング供給ライン902は、分配本体908に前駆体ガスを供給するよう構成されている。リング供給ライン902及び分配本体908は、プロセスガスが流過できるよう構成された中空の通路又は導管である。分配本体908は、外側リング表面904及び内側リング表面910を有する。外側リング表面904は、注入リング116の内面404といった、処理空間110内の表面に取り付けられるよう構成されている。
【0137】
内側リング表面910には、複数の孔906が貫通して形成されている。複数の孔906は、分配本体908の内側中空部分と内側リング表面910との間に形成された開口部である。処理空間110の周囲の、円周上の様々な位置にガスを分配できるように、複数の孔906が、内側リング表面910の周りに間隔を置いて配置されている。分配本体908の直径及び孔906の大きさは、所望の流量及び前駆体分配の所望の位置に影響を受ける。
【0138】
内側リング表面910の直径は、約250mm~約450mm、例えば約300mm~約400mm、例えば約350mmである。孔906のそれぞれの大きさは、孔906の数及び孔906の位置に依存する。孔906は、直径が約1mm~約5mmであり、例えば直径約2mm~約4mm、例えば直径約2mm~約3mmでありうる。内側リング表面906を貫通して配置された約4~30個の孔906が存在し、例えば約6~25個の孔906、例えば約8~20個の孔906が存在する。孔906は、内側リング表面910の全周に均等に配置されている。一部の実施形態において、孔906が内側リング表面906の周りに非対称的に配置される。孔906を非対称的に分散させることで、ガスインジェクタ108又は上方チャンバ排気通路開口部324(
図3B)から遠い基板150の端部付近で、プロセスガスの濃度を上げることが可能となる。非対称的な分散はさらに、処理空間110を通るガス流の制御を支援する。
【0139】
図9Bは、本開示の実施形態に係る、他の実施形態によるリングインジェクタ901の概略的な平面図である。
図9Bの実施形態では、リングインジェクタ901は、処理空間110の一部分を取り囲むよう構成されているだけであり、これにより、分配本体906は完全なリングではない。
図9Bの実施形態では、分配本体906は、半円といった部分的なリングである。代替的に、分配本体906が、1/4リング又は他の円弧セグメントでありうる。代替的に、分配本体906は、当該分配本体906が円の約75%を形成するように、3/4リングでありうる。分配本体906の他の実施形態が、様々な部分リングを形成する。本明細書では、部分的なリングとは、全円よりも小さい円、例えば全円の約5%から約95%、例えば全円の約10%から約90%を形成するリングの部分として定義される。
【0140】
部分的なリングが分配本体906のために使用される
図9Bの実施形態は、基板の全周でのガスの分配が望まれない処理工程のために使用されうる。分配本体906の部分的なリング形成以外は、
図9Bのリングインジェクタ901は、
図9Aのリングインジェクタ900と同様である。
【0141】
本明細書で記載された構成要素によって、処理チャンバ100といった処理チャンバ内で、より良好な均一性及び堆積制御が可能となる。本明細書では、1つの処理チャンバ100内に一緒に示されているが、本明細書に記載の構成要素は、既存の又は代替的な堆積処理チャンバで別々に利用することができる。
【0142】
先の記載は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態及び更なる実施形態を考案することができ、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって規定される。
【国際調査報告】