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特表2024-511037シリコンからなるドープ単結晶ロッドの製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】シリコンからなるドープ単結晶ロッドの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20240305BHJP
   C30B 15/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C30B29/06 502H
C30B15/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557203
(86)(22)【出願日】2022-03-07
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2022055672
(87)【国際公開番号】W WO2022194586
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】EP21162749
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クネーラー,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】エッシェンバッハー-ブラッド,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ガッテルマン,ウルフ
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB09
4G077BA04
4G077CF10
4G077EB01
4G077EB03
4G077FG11
4G077HA12
4G077PB02
4G077PB05
4G077PF55
(57)【要約】
本発明は、チョクラルスキー法に従ったドープ結晶の製造装置および製造方法に関し、この装置および方法は、圧力容器と、圧力容器内にあり、液体シリコンを収容することができる坩堝と、溶融物にドープするための装置とを含み、ドープするための装置は、ハウジングと、ドーパントを保持するための貯蔵容器と、ドーパントを搬送するためのコンベアベルトと、コンベアベルト上に充填層を形成するための装置と、管とを含み、この管の第1の端部にコンベアベルトからのドーパントが入ることができ、この管の第2の端部は液体シリコンの方向を向くとともに、多孔質分離要素によって液体シリコンに対して閉じられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープされたチョクラルスキー結晶を製造するための装置であって、
圧力容器(103)と、
前記圧力容器内にあり、液体シリコン(101)の溶融物を収容することができる坩堝(113)と、
前記溶融物にドープするための装置とを備え、前記ドープするための装置は、
ハウジング(107)と、
ドーパントを保持するためのリザーバ容器(108)と、
前記ドーパントを搬送するためのコンベアベルト(106)と、
前記コンベアベルト上にダンプ層を成形するための装置(109)と、
パイプ(110)とを含み、前記パイプの第1の端部は前記コンベアベルトからのドーパントがアクセス可能であり、第2の端部は前記液体シリコン(101)の方向を向くとともに、多孔質分離要素(104)によって前記液体シリコンから閉じられており、
前記コンベアベルト上に前記ダンプ層を成形するための前記装置(109)は、前記コンベアベルト(106,205)の幅よりも小さい直径を有するハーフパイプを含み、前記ハーフパイプは、一方側が閉じていて、他方側が開いており、前記装置(109)は、開いている側が前記ドーパント(208)の搬送方向(206)を向くように前記コンベアベルト(106,205)上に配置されていることを特徴とする、装置。
【請求項2】
ハーフパイプとコンベアベルト(106,205)との間の最小距離は、前記ドーパントの粒度分布の最小サイズよりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コンベアベルト(106,205)上に前記ダンプ層を成形するための前記装置(109)は、第2のパイプ(202)によって前記リザーバ容器(204)に接続され、遮断装置(203)によって閉じることができ、これによってドーパントのさらなる流れを止めることができることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項4】
前記コンベアベルト(106,205)は乾燥フッ素ゴムで構成されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記多孔質分離要素(104)は石英ガラスウールからなることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記ハウジング(107)は、水を運ぶ冷却システムを含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記ダンプ層を成形するための前記装置(109)は、ホウケイ酸ガラスから作られていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
シリコンのドープ単結晶インゴットを製造するためのプロセスであって、
チョクラルスキー引き上げ部において坩堝から第1の結晶を引き上げることと、
請求項1に記載の装置を用いて、前記第1の結晶に第1のドーパントをドープすることとを備え、
コンベアベルトの速度は、引き上げられる前記第1の結晶の目標速度および長さから形成される2タプルで構成される予め定められた支持点に従うように設定され、前記プロセスはさらに、
前記第1の結晶の軸方向抵抗プロファイルを求めることと、
前記第1の結晶の前記軸方向抵抗プロファイルに従って、前記予め定められた支持点の目標速度を修正することと、
修正された前記支持点を用いて第2の結晶を引き上げることとを備える、プロセス。
【請求項9】
前記第1の結晶および前記第2の結晶を引き上げる前に、その都度、予め定められた量の第2のドーパントと混合されるポリシリコンで坩堝を充填することを特徴とする、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記第1のドーパントは主にヒ素を含み、前記第2のドーパントは主にホウ素を含むことを特徴とする、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記第2の結晶はインゴット片に切り分けられ、切り分けられる位置は、前記予め定められた支持点の位置に対応することを特徴とする、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第2の結晶は、250mmを超える直径を有するように引き上げられることを特徴とする、請求項9に記載のプロセス。
【請求項13】
前記インゴット片はワイヤソーによって半導体ウェハに切り分けられ、研磨され、エピタキシャル成長したシリコン層が任意に設けられることを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシリコンの単結晶インゴットの製造プロセスに関し、このプロセスは、チョクラルスキー法に従って、坩堝内でポリシリコンを溶融させることと、シリコンにドープすることと、坩堝内で加熱された溶融物から種結晶上の単結晶を引き上げることとを含む。
【背景技術】
【0002】
電子半導体部品の製造方法の大半の出発原料である単結晶シリコンは、典型的にはチョクラルスキー法(「CZ」)によって製造される。この方法では、多結晶シリコン(「ポリシリコン」)を坩堝に入れて溶融させ、溶融したシリコンに種結晶を接触させ、ゆっくりと取り出すことによって単結晶を成長させる。
【0003】
坩堝は、典型的には、石英などの二酸化シリコンを含む材料からなる。坩堝は、一般的に、多結晶シリコンの塊および/または顆粒で充填され、多結晶シリコンは、坩堝の周りに配置された側方ヒータと、坩堝の下に配置された底部ヒータとによって溶融する。溶融物の熱安定化段階の後に、単結晶の種結晶が、溶融物に浸されて引き上げられる。この手順では、シリコンが、溶融物で濡れた種結晶の端部で結晶化する。結晶化速度は、種結晶を引き上げる速度(結晶引き上げ速度)と、溶融したシリコンが結晶化する界面の温度とに大きく影響される。これらのパラメータを適切に制御することで、転位を取り除くために「ネック」と呼ばれる部分が最初に引き上げられ、次に単結晶の円錐形部分が、最後に単結晶の円筒形部分が引き上げられ、後にここから半導体ウェハが得られる。
【0004】
たとえばUS5954873Aに記載されているように、結晶引き上げプロセスの対応する操作パラメータは、結果として得られる結晶中の欠陥分布が径方向に均一になるように調整される。
【0005】
特に、COP(Crystal Originated Particles:結晶由来粒子)とも呼ばれる空孔の凝集体が、仮に形成されるとしても検出限界未満しか形成されないように注意する。COPの検出限界は、1000欠陥/cmという密度未満であるとされる。
【0006】
同時に、LPITと呼ばれる格子間シリコン原子の凝集体が、仮に発生するとしても検出限界未満しか発生しないように注意する。検出限界は、1欠陥/cmというLPIT密度未満であるとされる。
【0007】
特定の用途では、シリコン結晶中の所望の比抵抗(抵抗率)を達成するために、ある量のドーパントが溶融物に添加される。ドーパントは、従来、シリコン溶融物の高さよりも数メートル高い位置にある充填ホッパーから溶融物に導入される。しかしながら、揮発性ドーパントの場合、この手順は好ましくない。なぜなら、このようなドーパントは、周囲環境に無制御に蒸発する傾向があり、これは酸化物粒子(すなわち、亜酸化物)の形成につながる可能性があり、酸化物粒子が溶融物の中に落ちて成長中の結晶に取り込まれる可能性があるからである。これらの粒子は不均一な核形成部位となり、たとえば転位を引き起こすことによって、最終的に結晶引き上げ操作の失敗につながる可能性がある。
【0008】
ある種の既知のドーパントシステムは、揮発性ドーパントを気体の形で成長チャンバに導入する。しかしながら、このようなシステムは、ドーピング手順が行われるたびに手作業で補充しなければならない。さらに、このようなシステムは操作中に補充することができない。この結果、このようなシステムでは、個々の成長操作のためのドーパント積載量が限られている。したがって、このようなシステムでは、成長可能なシリコンブロックのサイズが制限される。さらに、このようなシステムでは、成長操作中にドーパントが無制御に供給される傾向があり、それにより、成長したインゴットの長手方向軸に沿ってドーパント濃度の変化が無制御に増大する。
【0009】
WO2009/113441A1には、シリコンのドーピングプロセスおよびドーピング装置が記載されており、ドーパントは昇華して気体の形で溶融物に供給される。
【0010】
WO2014/141309A1には結晶引き上げ装置が記載されており、この装置は、固体ドーパントは溶融物の中に落ちることはないが気体ドーパントは溶融物にアクセスできるように、特定のチャンバシステムを備えたドーパント導管を含むドーパント供給システムを含む。
【0011】
WO2020/123074A1は上記の明細書の発展形を示しており、この発展形は、使用されるチャンバシステムの代わりに、ドーパント導管内に装着される多孔質分離要素を含む。多孔質分離要素は、昇華の過程で激しく動く固体ドーパント顆粒がチャンバシステムから漏れるのを防ぐ。当該顆粒は、チャンバシステムから漏れると、溶融物の中に落ち、第1にドーパント操作の一貫性を損ない得る、第2に結晶の転位を引き起こす粒子を形成し得る、という結果を伴う可能性がある。
【0012】
EP0170856A1の明細書には、コンベアベルトを使用して、結晶引き上げ中に坩堝にシリコンを再充填するための装置が記載されている。この構成の欠点は、さらに添加されるシリコンの量にばらつきがあり得ることであり、したがってドーパントの再充填部としての使用に適していない。
【0013】
このため、チョクラルスキー法によってシリコン溶融物にドープしてドープシリコンブロックを製造するためのドーパント供給システムの改良が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、ドーパントの軸方向変化が最小の、チョクラルスキー引き上げ法による単結晶インゴットの製造を可能にするプロセスおよび装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、請求項に記載のプロセスおよび装置によって達成される。
本発明のプロセスの上記実施形態に関連して示される特徴は、本発明の製品に相応に置き換えられ得る。逆に、本発明の製品の上記実施形態に関連して示される特徴は、本発明のプロセスに相応に置き換えられ得る。本発明に係る実施形態のこれらのおよびその他の特徴は、図面の説明および請求項において明らかにされる。個々の特徴は、本発明の実施形態として別々にまたは組み合わせて実現され得る。これらはまた、独立して保護することができる有利な構成を説明し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】シリコンの連続ドーピングのための本発明の構成を示す図である。
図2】ドーパントで満たされたリザーバ容器(204)を示す図である。
図3】コンベアベルトと溶融物との間の接続を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の例示的な実施形態の詳細な説明
ドープされたチョクラルスキー結晶を引き上げ、引き上げ中にドーパントの連続的な計量添加を可能にするための装置は、チョクラルスキー法によって結晶を引き上げるための装置を含む。
【0018】
図1に示すように、1つまたは複数の熱シールド(102)が放射熱を閉じ込めた状態で、結晶(105)が溶融物(101)から引き上げられる。溶融物(101)のドーピングは、ハウジング(107)内にあるリザーバ容器(108)からコンベアベルト(106)によってドーパントを収集ホッパー(110)内に搬送し、そこからドーパントがパイプを介して多孔質分離要素(104)の上に落ちることによって、達成される。チョクラルスキー結晶引き上げ部は、液体シリコン(101)で満たされた、圧力容器(103)内にある坩堝(113)を含む。1つまたは複数の熱シールド(102)が放射熱を閉じ込めた状態で、結晶(105)が溶融物(101)から引き上げられる。溶融物(101)のドーピングは、ハウジング(107)内にあるリザーバ容器(108)からコンベアベルト(106)によってドーパントを収集ホッパー(110)内に搬送し、そこからドーパントがパイプによって多孔質分離要素(104)の上に落ちることによって、達成される。多孔質分離要素(104)が配置される位置における一般的な条件は、ドーパントの昇華をもたらすようなものである。このようにして得られたガスは液体シリコンを、したがって結晶をドープする。コンベアベルトの上には、コンベアベルト上にダンプ層を成形するための装置(109)が装着されており、この装置は、コンベアベルト(106)上にダンプされたドーパントの明確な円錐を成形し、その際、さらなる汚染を引き起こすことはない。圧力容器とハウジングとの間のガスライン(112)にさらに装着された補償弁(111)によって、ハウジングと圧力容器との間の圧力均一化を行うことが任意に可能である。遮断装置(203)によって、ドーパントは、コンベアベルト上にダンプ層を成形するための装置(201)への接続パイプ(202)にアクセスでき、この装置は、ドーパントの明確なダンプ層(208)がコンベアベルト(205)上に形成されることを保証する。コンベアベルト上にダンプ層を成形するための装置のハーフパイプの開いている側(207)は、ここではコンベアベルトの走行方向(206)を向いている。ドーパントはコンベアベルトから収集ホッパー(304)の中に落ち、パイプ(302)を通って多孔質分離要素(301)にアクセスし、そこで昇華することができる。装置は保持装置(303)によって保持される。
【0019】
本発明の重要な特徴は、コンベアベルト(106)である。その機能はドーパントを搬送することである。ドーパントは、好ましくはヒ素であり、より好ましくは、適切な粒度分布を有する塊からなり得るか、あるいは、たとえばケイ化ヒ素、酸化ヒ素、またはヒ酸塩のようなヒ素の顆粒または適切な化合物からなり得る。さらに好ましいドーパントは、以下のもの、すなわちSe、Biを含む。
【0020】
コンベアベルトのベルト材料は、好ましくは、引き上げ部の環境で機能するように構成される。より詳細には、この機能は、真空下(下限10mbar)で、上限150℃の放射温度で、選択されたドーパント化合物に対して化学的耐性があり、粒子も揮発性物質も放出すべきではない。本発明者らは、この文脈において好ましいベルト材料は乾燥フッ素ゴムからなることを認識した。
【0021】
この機能は、モータによって行われる駆動によって可能となり、このモータはより好ましくは、引き上げ部の真空領域の外部に配置されている。
【0022】
駆動力は、真空の回転通路として設計されるシャフトによって伝達される。駆動モータ自体は、好ましくは電気モータとして、より好ましくはステッパモータと呼ばれるものとして構成される。トルクは、好ましくは伝動装置によって増大する。伝動装置は、好ましくは歯車によって構成され得る。チェーン駆動型またはベルト駆動型も同様に可能である。
【0023】
コンベアベルト上にダンプ層を成形するための装置(109)は、ドーパントの流れにとって、および結果として得られるダンプ層(208)の断面にとって、極めて重要である。特に好ましくは、継続するドーパントの流れを止めるために使用できる遮断装置(203)が組み立て目的で一体化されている。この構成は、オン/オフ制限を有する制御手段であり、好ましくはタップまたはスライドとして構成される。
【0024】
パイプ導管の内径は、ドーパントが止まらずに流れることできるように十分に大きくなければならない。たとえば顆粒の場合、この径は、指定された粒度分布の最大粒度の直径の少なくとも5倍である。
【0025】
コンベアベルト上の継続的な動きによってドーパントが運ばれ、ドーパントはパイプを介して流れ続ける。断面を決定する設備(109,201)において、その全長にわたって断面が最大の均一性を有し、それによって前進速度とドーピング質量との間の線形相関を保証する、ダンプ層(208)が形成されることが保証される。この相関がまだ線形でない、またはもはや線形でないダンプ層の始まりと終わりは、ダンプ層の長さの20%を超えるべきではない。
【0026】
本発明者らは、コンベアベルト上にダンプ層を成形するための装置が、コンベアベルトの幅よりも小さい直径を有するハーフパイプであると特に有利であることを認識した。ここで特に重要なのは、装置の一方側が閉じていて、他方側が開いており、開いている側がドーパントの搬送方向を向くように装置がコンベアベルト上に配置されていることである。これにより、さらなる重大な汚染なしにドーパントを運ぶことができること、および、形成されたドーパントのダンプ層の形状がその全長にわたって最大限可能な均一性を有することが保証される。
【0027】
ダンプ層を成形するための装置の位置は、好ましくは、コンベアベルトからの最小距離がドーパントの粒度分布の下限よりも小さいように、コンベアベルト上に設定される。これにより、一方では、顆粒が装置とコンベアベルトとの間に挟まって動かなくなることが防止され、他方では、ドーパントがコンベアベルトを越えて落ちることが防止される。
【0028】
ここで、ダンプ層を成形するための装置の下端は、好ましくは、搬送方向において、コンベアベルトとともに3°未満の、より好ましくは1°未満の最小開き角度を形成するように構成される。
【0029】
ダンプ層を成形するための装置は、より好ましくは、ホウケイ酸ガラス(実験用ガラス、たとえばDuran(登録商標))から作られる。
【0030】
リザーバ容器(108)は、ドーパントのリザーバを含む。リザーバの質量は、少なくとも引き上げ操作に必要な質量に相当する。
【0031】
リザーバ容器は、好ましくは、毒物学的に問題がない充填ステーションでの充填に適しているように設計される。理想的には、リザーバ容器は、純度(金属)およびクリーンルーム(粒子)の特定の要件をさらに考慮する。
【0032】
リザーバ容器の好ましい構成材料は、ホウケイ酸ガラス(実験用ガラス、たとえばDuran(登録商標))である。特に好ましくは、リザーバ容器(108)だけでなく遮断機構(203)も、ダンプ層を成形するための装置(109)との一体構成を有する。
【0033】
ハウジング(107)は、引き上げ部の真空領域の延長部分である。これにより、結晶引き上げの過程で、説明した機構を操作することができる。
【0034】
ハウジング(107)は、より好ましくは、たとえばジャケットの形態で、水を運ぶ冷却システムを用いて設計される。可動部品を見るための窓は、操作および監視を容易にする。すべての可動部品(コンベアベルト、真空回転通路、伝動装置、および駆動モータ)は、ハウジングに機械的に取り付けられている。
【0035】
好ましくは、小さなコンベアベルトの真下に収集機構(110)があり、この収集機構は収集ホッパーとして構成されてもよく、パイプ(302)に移行する。収集機構の上部直径は、好ましくは少なくともドーパントのダンプ層の幅に等しく、好ましくは少なくとも3倍大きい。
【0036】
パイプ(302)の直径は、好ましくは、操作中に閉塞が生じないように選択される。これは、パイプの内径を、使用されるドーパントの粒度分布の上限の少なくとも5倍にすることによって保証され得る。
【0037】
パイプ(302)は、最初はまだ固体の流れ落ちるドーパントを、溶融物の上の結晶引き上げ部の規定領域内に導き、この領域では周囲条件(圧力、温度、およびドーパントの蒸気の分圧)がドーパントの昇華を保証する。結晶引き上げ部の規定領域は、好ましくは、のぞき窓を通して昇華プロセスを視覚的に監視できるように選択される。
【0038】
拡径された領域とパイプとの間には、パイプの保持装置(303)が設置されているので、パイプはそこに固定されるだけでよい。パイプの保持装置(303)は、好ましくはポリマーのリングから作られ、ハウジングとの気密閉止を有する。
【0039】
パイプの溶融物に面する側では、パイプは多孔質分離要素(301)で封止され、これは、粒子が溶融物にアクセスすることを防止するが、ガス(昇華したドーパント)が通過して拡散することを可能にする。
【0040】
本発明者らは、この多孔質分離要素にどの材料を使用するかが非常に重要であることを認識した。たとえば、WO20123074A1に示唆されているように、固体材料のみを使用する場合は、それにもかかわらず、おそらく固体障壁との衝突時に形成される極小粒子が、多孔質分離要素を通って溶融物に入り、当該溶融物において結晶の転位(したがって、完全な破壊)を引き起こす可能性がある。
【0041】
したがって、多孔質分離要素(301)は、好ましくは、シリカガラス製のウールから作られる。非常に好ましくは、多孔質分離要素(301)は、シリコンに面する側は硬質の多孔質材料から、好ましくは石英ガラスから作られ、シリコンから遠い側はシリカガラスのウールから作られる。
【0042】
ドーパントが昇華すると、そのガスはすでに存在しているガスと混合し、当該ドーパントは多孔質分離要素(301)を通って液体シリコンの方向に拡散することができる。
【0043】
結晶引き上げ部内の一般的なガスは、原則としてアルゴンである。特定の状況下で、窒素の混合物も存在することがある。
【0044】
チョクラルスキー結晶引き上げ部では、液体シリコンから発生する酸素およびシリコン(Si)成分で構成されるガス流をできるだけ早く運び去ることが特に重要である。そうしなければ、引き上げ部内に堆積物が生じる可能性があり、これは結晶の引き上げ後に引き上げ部を開けた際に問題を引き起こす可能性があるからである。
【0045】
したがって、好ましくは、アルゴンは、リザーバ容器およびパイプに印加されるキャリアガスとしても機能する。特に好ましくは、液体シリコンの方向につながるパイプ内にガス流が確立される。これには2つの効果がある。第1に、結晶引き上げ中に形成されるガスがドーピング装置に運び込まれず(ここでも同様に、運び込まれると分解および再充填における問題につながる可能性がある)、第2に、昇華したドーパントがリザーバ容器またはパイプに逆流しないことが保証される(逆流は、かなりの毒物学的リスク(ヒ素)を含む結果を伴う可能性がある)。
【0046】
リザーバ容器と引き上げ部との間の圧力差が大きくなりすぎるという望ましくない事象に備えて、好ましくは、リザーバ容器と引き上げ部との間の追加ラインに、圧力均一化のための過圧弁または補償弁(111)が設置されている。
【0047】
管(302)の液体シリコンに面する側は、好ましくは熱シールド(102)の下方にある。これにより、ドーパントで強化された運搬ガスを溶融物に直接接触させることができる。このようにしてのみ、溶融物中の濃度の所望の増加がもたらされるからである。
【0048】
ヒ素蒸気による成長中の結晶(105)の表面上のエッチング効果を防止するために、案内パイプの端部位置は結晶に近すぎてはならない。
【0049】
本発明者らは、チョクラルスキー結晶引き上げ中に結晶にドープするために記載されている装置は特に有利であることを認識した。結晶の直径が250mmを超えると、この装置を使用する経済的メリットが最も大きくなる。
【0050】
好ましいやり方は、第1の結晶を引き上げ、引き上げ中に上記装置を利用して第1の結晶に第1のドーパントをドープすることであり、コンベアベルトの速度は成長する結晶の長さと相関している。これは、特に結晶が後でインゴット片に切り分けられる位置にある、予め定められた支持点において、コンベアベルトの目標速度がまず最初に規定されるように行われることが好ましい。支持点の外側のコンベアベルトの速度の目標値は補間される。
【0051】
したがって、支持点は、結晶の長さとコンベアベルトの速度とで構成される2タプルを形成する。
【0052】
第1の結晶が引き上げられると、インゴットが測定されてその比抵抗が求められる。そのために、端面が抵抗測定を受けるインゴット片に切り分けることが好ましい。
【0053】
それに応じて得られた測定値は、その軸に沿った所望の抵抗プロファイルと比較され、測定値と所望値との差が形成される。
【0054】
この差はその後、新たな変更された支持点を第2の結晶に用いるために使用される。
特に好ましくは、このプロセスをさらに繰り返して、結晶の軸に沿った所望の抵抗プロファイルにできるだけ近い結晶を製造することができる。
【0055】
坩堝内で第2のドーパントがポリシリコンと混合されるプロセスが特に好ましい。したがってこのプロセスは、たとえば、特に平坦な軸方向抵抗プロファイルを有する結晶を生成することができる。
【0056】
第1のドーパントは、好ましくはヒ素である。第2のドーパントは、より好ましくはホウ素を含む。
【0057】
このようにして得られた結晶は、好ましくは、ソーによってインゴット片に切り分けられた後、ワイヤソーによって半導体ウェハに切り分けられる。結果として生じる半導体ウェハは、好ましくは研磨され、エピタキシャル成長したシリコン層が任意に設けられる。
【符号の説明】
【0058】
略語
101 シリコン溶融物
102 熱シールド
103 圧力容器
104 多孔質分離要素
105 結晶
106 コンベアベルト
107 ハウジング
108 リザーバ容器
109 コンベアベルト上にダンプ層を成形するための装置
110 収集ホッパー、収集機構
111 圧力均一化のための補償弁
112 圧力容器とハウジングとの間のガスライン
113 坩堝
201 コンベアベルト上にダンプ層を成形するための装置
202 接続パイプ
203 遮断装置
204 リザーバ容器
205 コンベアベルト
206 コンベアベルトの走行方向
207 コンベアベルト上にダンプ層を成形するための装置のハーフパイプの開いている側
208 ドーパントのダンプ層
301 多孔質分離要素
302 ドーパントを運ぶパイプ
303 パイプの保持装置
304 収集ホッパー、収集機構
図1
図2
図3
【国際調査報告】