(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-12
(54)【発明の名称】ノイズ補正ジッタ測定装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01R 29/02 20060101AFI20240305BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20240305BHJP
H04L 25/02 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G01R29/02 L
G01R31/28 R
H04L25/02 302A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557445
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-19
(86)【国際出願番号】 US2022020438
(87)【国際公開番号】W WO2022197739
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・マーク・エル
【テーマコード(参考)】
2G132
5K029
【Fターム(参考)】
2G132AB07
2G132AB08
2G132AD10
2G132AH02
2G132AH03
2G132AL15
5K029KK23
(57)【要約】
試験測定装置は、複数の入力レベル遷移を有する試験波形を被試験デバイス(DUT)から受信するための入力部と、試験波形の入力レベル遷移の2つ以上の所定パターンに一致する試験波形の部分のみをそれぞれ個別に抽出するように構成されたセレクタと、波形の抽出された部分のそれぞれについて、試験波形を受信する試験測定装置のランダム・ノイズに起因するジッタ測定値の成分を個別に決定及び除去するように構成されたノイズ補正部と、試験波形の抽出された部分からノイズ成分を除去したタイミング測定値の合成分布を生成するように構成された合算部と、合成分布からDUTの第1ノイズ補正ジッタ測定値を決定するように構成されたジッタ・プロセッサとを有する。ノイズ補正ジッタ測定値を決定する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験測定装置であって、
複数の入力レベル遷移を有する試験波形を被試験装置(DUT)から受信するための入力部と、
上記試験波形の入力信号レベルの遷移の2つ以上の所定パターンに一致する上記試験波形の部分のみをそれぞれ個別に抽出するように構成されたセレクタと、
上記波形の抽出された部分のそれぞれについて、上記試験波形を受信する上記試験測定装置のランダム・ノイズに起因するジッタ測定値の成分を個別に決定及び除去するように構成されたノイズ補正部と、
上記試験波形の抽出された部分からノイズ成分を除去したタイミング測定値の合成分布を生成するように構成された合算部と、
上記合成分布から上記DUTの第1ノイズ補正ジッタ測定値を決定するように構成されたジッタ・プロセッサと
を具える試験測定装置。
【請求項2】
上記合算部は、上記合成分布のテールを除外して中央合成分布を生成するよう構成され、上記ジッタ・プロセッサは、更に、上記中央合成分布から上記DUTの第2ノイズ補正ジッタ測定値を決定するように構成される請求項1の試験測定装置。
【請求項3】
上記第1ノイズ補正ジッタ測定はJrmsであり、上記第2ノイズ補正ジッタ測定はJNuである請求項2の試験測定装置。
【請求項4】
上記試験波形の第1所定パターンに一致する遷移のスルーレートが、上記試験波形の第2所定パターンに一致する遷移のスルーレートと異なる請求項1の試験測定装置。
【請求項5】
上記ノイズ補正部は、上記所定パターンの1つに一致する上記試験波形の抽出された部分のタイミング・データのセットのヒストグラムを、ある曲線に適合させるように構成される請求項1の試験測定装置。
【請求項6】
上記ノイズ補正部は、タイミング・データのセットのヒストグラムを、qスケールの特性に基づいて上記曲線に適合させるように構成される請求項5の試験測定装置。
【請求項7】
上記曲線が、デュアル・ディラック・モデルに対応する確率分布である請求項5の試験測定装置。
【請求項8】
入力信号を受信するように構成された測定装置に起因するノイズが補正された、上記入力信号のジッタ測定値を決定する方法であって、
被試験デバイス(DUT)からの上記入力信号を上記測定装置で受信する処理と、
上記受信した入力信号から試験波形を生成する処理と、
上記入力信号の2つ以上の所定パターンにそれぞれ一致する上記試験波形の2つ以上の部分を選択する処理と、
上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、測定装置ノイズに起因するジッタの成分を個別に決定し、測定装置ノイズを補正したタイミング測定値のヒストグラムを個別に合成する処理と、
上記選択された2つ以上の部分のタイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムを合算して、合成確率分布を生成する処理と、
上記合成確率分布から上記DUTのノイズが補正されたジッタ測定値を決定する処理と
を具えるジッタ測定値決定方法。
【請求項9】
測定装置ノイズに起因するジッタの成分を個別に決定する処理が、上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、
上記試験波形の上記選択された部分のタイミング・エラーの未処理のヒストグラムを生成する処理と、
上記未処理のヒストグラムから上記タイミング・エラーの平均値を除去し、ゼロ平均ヒストグラムを生成する処理と、
デュアル・ディラック分析を実行して、上記ゼロ平均ヒストグラムのガウス成分と非ガウス成分を求めるために上記ゼロ平均ヒストグラムを適合させる処理と
を有する請求項8のジッタ測定値決定方法。
【請求項10】
上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分の各々について、
上記ゼロ平均ヒストグラムからデュアル・ディラックの確定的ジッタを導出する処理と、
上記ゼロ平均ヒストグラムからランダム・ジッタを導出する処理と
を更に具える請求項9のジッタ測定値決定方法。
【請求項11】
上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、
上記測定装置のランダム・ノイズについて、上記試験波形の選択された部分の平均スルーレートの影響によって追加されるランダム・ジッタ成分を決定する処理と、
追加されたランダム・ジッタ成分を除去して、上記試験波形の上記選択された部分について補正されたランダム・ジッタ成分を生成する処理と
を更に具える請求項10のジッタ測定値決定方法。
【請求項12】
上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、上記補正されたランダム・ジッタ成分を上記ゼロ平均ヒストグラムからのデュアル・ディラックの確定的ジッタと畳み込み演算することによって、上記試験波形の上記選択された部分の補正されたデュアル・ディラック・モデルを合成する処理を更に具える請求項11のジッタ測定値決定方法。
【請求項13】
タイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムを合算する処理が、上記2つ以上の選択された部分の夫々における入力信号の遷移の相対的な数に少なくとも部分的に基づいて、上記2つ以上の選択された部分のタイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムの重み付けされた合算を行う処理を有する請求項8のジッタ測定値決定方法。
【請求項14】
合成確率分布のテールを除外して中央合算分布を生成する処理と、
上記中央合算分布からノイズ補正ジッタ値を決定する処理と
を更に具える請求項8のジッタ測定値決定方法。
【請求項15】
試験測定装置であって、
被試験デバイス(DUT)から入力信号を受信し、受信した入力信号から試験波形を作成するための入力部と、
1つ以上のプロセッサと
を具え、該1つ以上のプロセッサが、上記入力信号を受信する装置に起因するノイズが補正された上記入力信号中のジッタを求めるために、
上記受信する装置で上記入力信号を受信する処理と、
受信した上記入力信号から試験波形を生成する処理と、
上記入力信号の2つ以上の所定パターンにそれぞれ一致する上記試験波形の2つ以上の部分を選択する処理と、
上記2つ以上の選択された部分のそれぞれについて、測定装置ノイズに起因するジッタの成分を個別に決定し、上記測定装置ノイズを補正したタイミング測定値のヒストグラムを個別に合成する処理と、
上記選択された2つ以上の部分のタイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムを合算して合成確率分布を生成する処理と、
上記合成確率分布から上記DUTのノイズ補正ジッタ測定値を決定する処理と
を上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される試験測定装置。
【請求項16】
測定装置ノイズに起因するジッタの成分を個別に決定する処理が、上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、
上記試験波形の第1部分のタイミング・エラーの未処理のヒストグラムを生成する処理と、
上記未処理のヒストグラムから上記タイミング・エラーの平均値を除去し、ゼロ平均ヒストグラムを生成する処理と、
デュアル・ディラック分析を実行して、上記ゼロ平均ヒストグラムのガウス成分と非ガウス成分を求めるように上記ゼロ平均ヒストグラムに適合させる処理と
を有する請求項15の試験測定装置。
【請求項17】
上記1つ以上のプロセッサが、
上記ゼロ平均ヒストグラムからデュアル・ディラックの確定的ジッタを導出する処理と、
上記ゼロ平均ヒストグラムからランダム・ジッタを導出する処理と
行うように更に構成される請求項16の試験測定装置。
【請求項18】
上記1つ以上のプロセッサが、上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、
上記受信する装置のランダム・ノイズについて、上記試験波形の上記選択された部分の平均スルーレートの影響によって追加されるランダム・ジッタ成分を決定する処理と、
追加されたランダム・ジッタ成分を除去して、上記試験波形の選択した部分についての補正されたランダム・ジッタ成分を生成する処理と
を行うよう更に構成される請求項17の試験測定装置。
【請求項19】
上記1つ以上のプロセッサが、上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、補正されたランダム・ジッタ成分を上記ゼロ平均ヒストグラムからのデュアル・ディラックの確定的ジッタと畳み込み演算することによって、上記試験波形の選択された部分の補正されたデュアル・ディラック・モデルを合成する処理を行うよう更に構成される請求項15の試験測定装置。
【請求項20】
上記1つ以上のプロセッサが、上記2つ以上の選択された部分の夫々における入力信号の遷移の相対的な数に少なくとも部分的に基づいて、上記2つ以上の選択された部分のタイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムの重み付けされた合算処理を行うことによって、タイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムを合算する処理を行うよう更に構成される請求項19の試験測定装置。
【請求項21】
上記1つ以上のプロセッサが、
合成確率分布のテールを除外して中央合算分布を生成する処理と、
上記中央合算分布からノイズ補正ジッタ値を決定する処理と
を行うよう更に構成される請求項15の試験測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定システムに関連するシステム及び方法に関し、特に、入力信号のジッタ成分を正確に定量化できる試験測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの最新の電子デバイス及び通信システムは、デジタル・データ・ビットのシリアル化されたストリームを使用して、チャンネルを介してトランスミッタからレシーバにデジタル情報を転送する。エラー率を予測するため、ユーザにとって、送信又は受信信号の品質を測定することは、非常に興味深いことである。特に、ジッタ分析は、ビット・エラー・レートの予測や電子回路の開発やデバッグを目的として、理想的な位置からの立ち上がり波形エッジ又は立ち下がり波形エッジ夫々の時間的な変位であるジッタを測定し、次いで、このジッタを分析して個別のサブコンポーネントを特定するプロセスを指す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8594169号明細書
【特許文献2】米国特許第9294237号明細書
【特許文献3】米国特許第8891602号明細書
【特許文献4】米国特許第7516030号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
入力信号のジッタを分析する際の問題の1つは、測定装置が、入力信号自体のジッタ分析の前に、入力信号の処理の一部としてノイズを生成して導入することである。このノイズは、ジッタを決定する波形遷移の見かけの位置に影響する。従って、処理された入力信号のジッタを分析しても、被試験デバイス(DUT)からのジッタと測定装置からのノイズが組み合わされるため、被試験デバイスを分離できない。また、測定装置のノイズが各遷移で測定されたジッタにバイアスをかけるところ、バイアス自体が入力信号の特定のシンボル・シーケンスの特定のエッジのスルーレートと相関するため、測定装置のノイズを除去することは困難である。つまり、測定装置のノイズは各遷移に異なる影響を与えるため、合成ノイズから測定装置のノイズを単純に差し引いて、入力信号のジッタを分析することはできない。
【0005】
本開示技術の実施形態は、従来技術のこれら及び他の欠陥に取り組むものである。
【0006】
本開示技術の実施形態の態様、特徴及び効果は、添付の図面を参照する実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、被試験デバイス(DUT)と測定装置を備えた従来の試験測定システムにおけるジッタのブロック図モデルである。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による、ノイズ補正ジッタ測定を含む試験測定装置の一例のブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態によるノイズ補正ジッタ測定を行う際の動作を説明する一例のフロー図を示す。
【
図3B】
図3Bは、実施形態によるノイズ補正ジッタ測定を行う際の動作を説明する一例のフロー図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態によるノイズ補正ジッタ測定装置のジッタ・プロセッサに存在しても良い要素又は動作の例を示すブロック図例である。
【
図5A】
図5Aは、従来のガウス分布と一対のディラック関数の組み合わせを示す。
【
図5B】
図5Bは、従来のガウス分布と一対のディラック関数の組み合わせを示す。
【
図5C】
図5Cは、従来のガウス分布と一対のディラック関数の組み合わせを示す。
【
図6A】
図6Aは、本発明の実施形態で実施されるような、qスケール・プロットを使用して、測定データのセットの分布の挙動をモデル化するデュアル・ディラック・パラメータのセットを適合させた結果を示す。
【
図6B】
図6Bは、本発明の実施形態で実施されるような、qスケール・プロットを使用して、測定データのセットの分布の挙動をモデル化するデュアル・ディラック・パラメータのセットを適合させた結果を示す。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態によるノイズ補正ジッタ測定装置のジッタ・プロセッサに存在しても良い追加の例示的な要素又は動作を示す例示的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上述したように、従来のジッタ分析方法では、被試験デバイスの測定時に、測定装置のノイズを補正できない。ジッタ値を表現するには、同等の方法がいくつかある。1つの方法は、測定値JrmsとJNuを使用する。Jrmsは、波形内の全ての無相関ジッタの二乗平均平方根値として定義される。JNu(Nは整数)は、(1*10-N)/2の観測値の最も低いものを除外し、更に(1*10-N)/2の観測値の最も高いものを除外して、1-1*10-Nの観測値の中央のみを残した範囲の相関のないジッタ値として定義される。無相関ジッタは、データ・パターンと相関する確定的(deterministic:ディターミニスティック)ジッタを差し引いた後に残るジッタとして定義される。データ・パターンと関連するこの確定的ジッタは、データ依存ジッタ(DDJ:Data Dependent Jitter)と呼ばれることがある。JrmsとJNuは、イーサネット(登録商標)(IEEE 802.3)やその他の高速シリアル規格に登場し、PCI-SIG(Peripheral Component Interface Special Interest Group)が、ジッタの調査と特定を目的として内部的に使用していた。PCIe Gen6規格の開発では、開発グループは特にジッタ測定JNu(N=6、つまり、J6u)を使用し、装置のノイズを補正するいくつかの方法を模索していた。しかし、PCIe規格は、そのような測定をどのように行うかに関して明確ではない。本発明の実施形態は、そのような測定を行うことを可能にするノイズ補正ジッタ測定を提供し、そして、実際、ユーザは、データ規格やデバイスの一般的な試験に関するノイズ補正ジッタ測定の精度を非常に良く制御できる。
【0009】
PCIeで使用されるようなジッタ・コンプライアンス値は、上記で紹介したJrmsとJNuで表すことができる。
【0010】
[数1]
TTX-UTJ=J6u
【0011】
【0012】
【0013】
PCIe Gen6準拠(コンプライアンス)の目的で測定を行う場合、DUTは、48個の遷移がある、52個のPAM4(4値パルス振幅変調)シンボルの定義された周期パターンを送信する。例えば、開発中の物理デバイスがPCIe規格で指定された正確な52シンボル・パターンを生成するように、まだ構成できていないなど、様々な理由がある場合には、別のパターン又は繰り返しパターンのないシンボルの任意のシーケンスについて、これら又は同様の測定を行うのも有益である。本発明の実施形態によれば、ユーザは、本願に記載されるように、任意のパターン又は一連のパターンを定義し、これらについて測定を行うことができる。本発明の実施形態を使用すると、ユーザは、PCIe Gen6や、他の様々なデータ通信規格について、所望のジッタ測定を迅速に実行できる。
【0014】
以下の説明において、「ノイズ」とは、信号パラメータの意図しない又は予期しない変動を指す。パラメータが時間(絶対値又はデルタ値)の場合、より具体的な用語「ジッタ」が概して使用される。パラメータが電圧の場合、「電圧ノイズ」、「垂直ノイズ」又は単に「ノイズ」という用語が使用され、最後の事例は文脈から明らかとなろう。「電圧」は、オシロスコープなどの装置によって測定される従属パラメータを表すために使用されるが、実際のパラメータは、使用するプローブのタイプに応じて、電流、光の大きさ又はその他の値である可能性がある。
【0015】
RJ(ランダム・ジッタ)は、ガウス・ランダム・タイミング変動の標準偏差である。同様に、ランダム・ノイズを意味するRNは、ガウス・ランダム電圧変動の標準偏差である。標準偏差は、「シグマ」又はσで表すこともある。
【0016】
「遷移」と「エッジ」という用語は、同じ意味で使用され、シンボルのシーケンスにおける、ある公称レベルから別の異なるレベルへの信号の振幅遷移を指し、これはゼロではない時間インターバルで発生し、従って、無限大ではないスルーレートで行われる。
【0017】
図1は、被試験デバイス(DUT)10とオシロスコープなどの測定装置40とを有する従来の試験測定システムにおけるジッタとノイズのブロック図モデルである。
図1のこのモデルでは、RJiはDUT10の固有ジッタの標準偏差を表しており、DUTによって生成される試験信号の振幅の結果とは関係のないクロック信号源のランダム変調を意味する。PAM-N発生部12からの純粋なデータ・シンボルは、Dフリップ・フロップ16によって時間的に変調された後、H
u(t)18によって有限の立ち上がり時間を有する信号遷移に変換されるが、これは、DUT10のトランスミッタの単位ステップ応答である。最後に、信号は、DUT10の固有の電圧ノイズRNiが信号に線形に追加されてから、DUT10の出力端子であるTP1に現れる。データ生成部12は、任意の数のN(N=2、3、4等)のパルス振幅変調シンボルを生成するので、PAM-Nとラベル付けされている。
【0018】
試験信号は、測定装置40又は付属の試験プローブで受信されが、ここでRNsは、測定装置40の付加ノイズを表す。RNsは、他の変数と相関のない定常確率変数(stationary random variable)であると仮定される。信号源RJi及びRNiは両方とも、特性が評価されるJrms及びJ6uの値の正に一部であるが、RNsの値は測定装置40によって生成されるため、そうではない。RNsは、測定装置40が強いる測定の不完全さの単一で最大の要因である。従って、RNsの影響は、JrmsとJ6uを求めて、レポートする前に除去する必要がある。
【0019】
本発明の実施形態は、DUTのノイズ又はジッタを測定する際に、測定装置自体の固有のランダム・ノイズに基づく影響を排除するために、データ分析の新しい処理の使用が含まれる。
【0020】
2つの無相関のガウス変数XとYを重ね合わせると、以下の数式4のように標準偏差が計算された新しいガウス変数が得られる。
【0021】
【0022】
標準偏差RNを有するガウス・ランダム電圧ノイズが、スルーレートSRkの波形エッジkに対して作用すると、結果として生じるジッタ(選択した固定の電圧基準値とエッジが交差する時間の変動として定義される)の標準偏差は、数式5のようになる。
【0023】
[数5]
RJ(v),k=RN/SRk
【0024】
数式4と数式5を組み合わせると、エッジkで観測(observed)される全ジッタは、数式6のように特性が示される。
【0025】
【0026】
数式6を変形すると、エッジkのノイズ補正ジッタの式が、数式7のように得られる。
【0027】
【0028】
もし試験信号中の全て同じスルーレートを持つ複数のエッジの累積的な時間インターバル・エラー(TIE:Time Interval Error)のみを測定する必要がある場合に、RNのシグマ値が測定装置でわかっていれば、数式7を使用してDUTの補正ランダム・ジッタを計算できる。しかし、多くの試験信号には、スルーレートの異なるエッジが含まれている。従って、スルーレートの異なる試験信号を送信するDUT(Nが2より大きいPAM-N生成デバイスを含む)のランダム・ジッタは、数式7から直接計算することができない。
【0029】
PCIe Gen6 パターンの場合、0から3への(0-to-3)エッジのような主要なPAM4エッジ形式は、予め定義された(predetermined:所定の)52個のシンボルの繰り返し毎に4回現れる。技術的には、これら4つのエッジのそれぞれは、他の3つの0から3への遷移と比較して、前後のシンボル・シーケンスが異なるため、一意である。また、0から3への4個のエッジの夫々又は試験対象の他のエッジは、スルーレートが異なることがある。実際、入力試験信号中の0から1へのエッジなど、他のエッジ形式は、0から3へのエッジとは、スルーレートが大幅に異なる可能性が高い。
【0030】
本発明の実施形態は、異なる特性を有するエッジを分類又は定義する能力を提供する。例えば、M個の整数で構成されるテンプレートは、M個の連続して送信されるシンボルを表すことができる。PAM4シンボルがアルファベット{0,1,2,3}を使用して表されている場合、[0 3]の2シンボルのテンプレートは、全ての0から3への遷移を表す。[0 0 0 3]の4シンボルのテンプレートは、0から3への遷移のより狭いサブセット、つまり、少なくとも3つの隣接する0シンボルのセットに続く0から3への遷移を表しても良い。通常、テンプレートが長いほどパターンの特異性が高くなるため、サブセットで表されるスルーレートの範囲が狭くなる。
【0031】
テンプレート定義のこのような特異性と、測定されたジッタのスルーレート及び電圧ノイズの影響に対する補正と組み合わせることによって、本発明の実施形態は、既知の他の任意の方法よりも高い精度で電圧ノイズを補正できる。
【0032】
図2は、本願に開示される開示技術の実施形態を実施するための、オシロスコープなどの例示的な試験測定装置200のブロック図である。この装置200には、1つ以上の入力部220があり、これは、任意の電気信号伝達媒体であってもよく、試験インタフェースとして機能しても良い。信号入力部220は、被試験デバイス210からデータを受信する。上述したように、DUT210は、PAM-N信号を送信しても良い。クロック・リカバリ240及び時間インターバル・エラー(TIE)250は、入力信号に対して実行されても良い2つの処理である。クロック・リカバリ・プロセス240は、入力信号に対応するクロック周期及び正確なクロック・エッジ位置を決定し、一方、TIEプロセス250は、入力波形における各エッジについての時間インターバルのエラー(誤差)を計算する。試験信号は、クロック・リカバリ240及びTIEプロセス250が実行される前又は後のいずれかで、アクイジション・メモリ222に記憶されても良い。
【0033】
ノイズ補正ジッタ・アナライザ270は、以下の
図4及び
図7を参照して説明されるように、複数のサブコンポーネント又はサブ処理を有していても良い。ジッタ・アナライザ270は、プログラムされた専用又は汎用コンピュータ・プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などの任意の処理回路として又はこれらの要素の組み合わせなどとして実装されても良い。いくつかの実施形態では、ジッタ・アナライザ270は、メモリ262又は他のメモリからの命令を実行するように構成されてもよく、そのような命令によって示される任意の方法や関連するステップを実行しても良い。
【0034】
測定装置200には、1つ以上のプロセッサ260があるむ。図示を簡単にするために、
図2では1つのプロセッサ260のみが示されているが、当業者には理解されるように、単一のプロセッサ260ではなく、様々なタイプの複数のプロセッサを組み合わせて使用しても良い。1つ以上のプロセッサ260は、メモリ262と連動して動作し、メモリ262は、1つ以上のプロセッサを制御するための命令、測定装置200の測定若しくは又は測定装置200の一般的な動作に関連するデータ、又は、他のデータを記憶しても良い。メモリ262は、プロセッサ・キャッシュ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ソリッド・ステート・メモリ、ハード・ディスク・ドライブ、又は、他の任意のメモリ形式として実装されても良い。そして、別個のメモリ222及び262として示されているが、いずれか一方、両方又は他のメモリが測定装置200の様々な場所に存在しても良い。メモリ222、262又は他の場所のいずれかに記憶された任意のデータ又は命令も、測定装置200内の任意のコンポーネントによってアクセス可能である。
【0035】
ユーザ入力部及びインタフェース280は、測定装置200に結合されるか又は測定装置200に統合される。ユーザ入力部280は、ユーザが測定装置200をインタラクティブに操作するために利用できるキーボード、マウス、タッチスクリーンや他の任意の操作装置を有していても良い。ディスプレイ/出力部290は、ユーザ入力を受け入れ、装置の出力を提供するタッチスクリーン・ディスプレイであっても良い。又は、ディスプレイ/出力部290は、出力専用ディスプレイであっても良い。ディスプレイ/出力部290は、本願で説明するように、試験結果、タイム・スタンプ、ノイズ・レベル、ジッタ、ジッタ・データ又は他の結果をユーザに表示するためのデジタル・スクリーン、コンピュータ・モニタ又は他の任意のモニタであっても良い。ディスプレイ/出力部290は、視覚的な表示と相関しても良いし、相関しなくても良い1つ以上のデータ出力も有していても良い。ディスプレイ/出力部290からのデータ出力は、ローカル・エリア・ネットワークなどのデータ・ネットワークに送ることができ、ローカル・エリア・ネットワークは、データを見るためにホスト・コンピュータに結合されても良い。ディスプレイ/出力部290は、また、ホスト・コンピュータによってインターネットを介してアクセス可能なクラウド・ネットワークなどのリモート・ネットワークにデータを送信しても良い。試験測定装置200のコンポーネント(構成要素)は、試験測定装置200と一体化されているものとして描かれているが、これらのコンポーネントのいずれかが試験測定装置200の外部にあっても良く、有線や無線の通信媒体その他の機構などの任意の従来の様式で試験測定装置200に結合しても良いことが、当業者には理解できるであろう。
【0036】
測定装置200は、概して、図示されていない1つ以上の測定ユニットを有していても良い。このような測定ユニットは、入力部220を介して受信される信号の特性(例えば、電圧、アンペア数、振幅など)を測定できる任意のコンポーネント(構成要素)を含むことができる。測定装置200は、コンディショニング(調整)回路、アナログ・デジタル・コンバータや他の回路も有していても良い。
【0037】
図3A及び
図3Bは、合わせて、実施形態によるノイズ補正ジッタ測定を行うためのフロー300における工程を説明する例示的なフロー図を示す。
図3A及び3B又は本願の他の箇所に記載される処理は、
図2の装置200などの測定装置によって実行されても良い。
【0038】
プロセス300は、K個のテンプレートのセットを形成することによって工程302で開始し、この場合、K個のテンプレートのセットの個々のテンプレートkは、
図2のDUT210から送られる試験信号などの信号ストリーム内の複数の遷移中のターゲット・クラスを定義する。これらテンプレートは、通常、相互に排他的な遷移のセットを定義するように形成され、通常、PAM-N生成部からのほとんど又は全てのあり得る遷移は、これらテンプレートの中の1つで表される。これらテンプレートは、事前定義されても良いし、ユーザが定義しても良い。
図4は、ジッタ・プロセッサ400のいくつかのコンポーネント(構成要素)又は処理のブロック図であり、これは、
図2のノイズ補正ジッタ・アナライザ270の一実施形態であっても良い。言い換えると、ジッタ・プロセッサ400は、ノイズ補正ジッタ・アナライザ270中に存在しても良い構成要素、機能又は処理を示す。
【0039】
図4を参照すると、
図3Aの工程302で参照されるテンプレートは、ユーザから受信されても良いし、予め定義され、テンプレート408のライブラリに格納されても良い。2シンボル・テンプレートの例では、試験データの特定の遷移を特定できる。例えば、テンプレート[0→3]は、入力信号のサンプル・ストリームの例「1-0-2-
0-3-3-0-2」の下線付きの遷移と一致する。他のテンプレートでは、[0,0,3]、[1,0,3]、[2,0,3]、[3,0,3]のように、追加のシンボルを含んでも良い。一部のテンプレートでは、ワイルド・カードを使用しても良い。テンプレートは、任意の長さとすることができ、これによりユーザは、入力信号を分析する際に、大きな特異性(specificity:限定性、具体的指定性)を得ることができる。テンプレートは、スルーレートなど、受信したシンボル以外の様々な方法で特徴付けることもできる。
【0040】
次に、プロセス300は、工程302で定義されたK個の遷移のそれぞれに関して実行されるループに入る。第1に、プロセス304は、現在のテンプレートkに一致する入力信号中の遷移を特定し、分離する。
【0041】
次いで、入力信号のテンプレートに一致した遷移ごとに、平均スルーレートが工程306において求められる。工程308では、現在のテンプレートに一致した全ての遷移についてのTIEの観測値が蓄積され、次いで、工程310において、TIEオブザベーションからヒストグラムが作成される。
【0042】
図4を参照すると、上述の工程の夫々は、ジッタ・プロセッサ400の特定のコンポーネント(構成要素)又は処理によって実行されても良い。本願では、概してコンポーネント(構成要素)と呼ぶが、当業者であれば、ジッタ・プロセッサ400を参照して説明される個々の機能が、1つ以上のプロセッサ上で動作する複合システムにおいて実装されても良いことが理解できよう。
【0043】
工程304、306及び308は、ジッタ・プロセッサ400内の対応するコンポーネント(構成要素)によって実行されても良い。テンプレート又はパターン特定部420のコンポーネントは、試験対象の波形における分析のためにK個の定義されたテンプレートのグループから、現在のテンプレートkを選択することによって、工程304を実行しても良い。工程306のスルーレートの測定は、スルーレート測定コンポーネント430によって実行されてもよく、工程308に基づくTIE値は、TIEアキュムレータ440に蓄積されても良い。工程310で言及されるヒストグラムは、ヒストグラム生成部450において生成されても良い。
【0044】
ヒストグラム・アナライザ/プロセッサ460を使用して、生成されたヒストグラムに関する分析を実行しても良い。例えば、工程312(
図3A)において、ヒストグラム・アナライザ/プロセッサ460は、工程310において生成されたヒストグラムの平均値を計算しても良い。次いで、工程314は、この計算された平均値を除去し、新しいヒストグラム(これは、ゼロ平均ヒストグラム(zero-mean histogram)である)を生成する。
【0045】
次に、工程316において、ヒストグラム・アナライザ/プロセッサ460は、工程314で生成されたヒストグラムのガウス成分と、ヒストグラムの非ガウス成分とを決定する。ガウス・プロセッサと非ガウス・プロセッサは、プロセッサ462、464として
図4に示されている。ガウス成分は、標準偏差によって特徴付けられ、非ガウス成分は、ヒストグラムに対応するデュアル・ディラック(dual-dirac)モデルのピーク・トゥ・ピーク部分によって特徴付けられる。
【0046】
曲線分析のいくつかの例を
図5A、5B及び5Cに示す。これらの図は、ガウス分布502が、様々な「DJdd」の量だけ間隔を空けて配置された一対のディラック関数504、514、524と組み合わされる又は畳み込み演算されたときに何が起こるかの3つの例を示す。これら3つの例では、同じガウス・シグマ502を使用しているが、DJdd値が異なるため、最終的に3つの異なる分布506、516及び526が得られる。これらの畳み込み演算は、デュアル・ディラック・モデル(dual-dirac model)と呼ばれることがある。
【0047】
その分析を実行する際、ガウス・プロセッサ462及び非ガウス・プロセッサ464は、工程314で生成されたヒストグラムなどのデータのヒストグラムを、ある曲線に適合(fit:フィット)させても良い。
図6A及び
図6Bは、データ・ヒストグラムの例に基づくデータ602を曲線612に適合(フィット)させるプロセスの例を示す。これらの図は、曲線612を生成するために、異種(disparate)の離散データ・サンプル602の所与の分布について、どのようにヒストグラムを形成するか、測定データ602の挙動に最も一致する、つまり、測定データ602の挙動をモデル化する分布を与えるデュアル・ディラック・パラメータ{σRJ,DJdd}のセットをどのように求めることができるかを示す。
図6Aは、データ602及び曲線612の線形スケール表示を示す一方、
図6Bは、対数スケール表示を示す。
図6Bの対数スケール表示は、「テール(tails)」領域、即ち、中心から最も離れた曲線の両端における曲線612に対する測定データ602の一致に関して、より良い表示を提供する。当業者であれば、qスケール分析が、そのようなモデルを作成するための既知の1つのアプローチであるが、他のアプローチも使用されても良いことが理解できよう。
【0048】
図3Aを再度参照すると、工程318において、ガウス・プロセッサ462及び非ガウス・プロセッサ464は、デュアル・ディラック・プロセッサ470と連動して、工程314で生成されたヒストグラムに基づくRJddシグマ値及びDJdd値を生成する。測定装置200において観察されたこれらの値及び他の値に基づいて、工程320では、上記の数式5を用いて、測定装置自身によって導入されるノイズに起因する実効(effective)ランダム・ジッタを求める。なお、測定装置のイズに起因するこのランダム・ジッタは、個々のテンプレート・ベース、即ち、現在のテンプレートの記述kに一致する入力波形の部分のみについて決定される。後続のループでは、プロセス300は、同様に、他のテンプレートに一致する入力データに関するランダム・ジッタを決定する。測定装置のノイズに起因するジッタの成分は、
図4のジッタ・プロセッサ400の測定装置ノイズ・コンポーネント480によって、又は、測定装置ノイズ・コンポーネント480と連動して決定されても良い。
【0049】
工程322では、上記の数式7を使用して、工程320で求めたランダム・ジッタがRJddから除去され、補正されたRJddを生成する。この補正されたRJddは、RJddcompと呼ばれる。次に、ジッタ・プロセッサ400は、工程322で求めたRJddcompを使用して、デュアル・ディラック確率分布及び工程312で求めたDJdd値を高解像度に合成する。このデュアル・ディラック・モデルによって表されるジッタのテール(tails)は、必ずしも実際のジッタ観測値に存在する確率や母集団に限定されない。
【0050】
次いで、フロー300の工程304~324は、上述の工程302を参照して説明した一連のK個のテンプレート中の次のテンプレートkについて繰り返される。
図4を参照すると、フロー300の複数の工程を実行するジッタ・プロセッサ400のコンポーネントは、コンポーネントのグループ410として図示され、ジッタ・プロセッサ400の一部が、テンプレート又はクラス定義によって定義されるデータのサブセットに対して動作し、ジッタ・プロセッサ400のもう1つ別のコンポーネント414が、コンポーネント・グループ410によって生成されたデータの和(sum:全体)に対して動作することを示している。
【0051】
図3B及び
図7を参照して、次に、本発明の実施形態による、ノイズ補正ジッタを生成するために更に使用される工程及びコンポーネントについて説明する。
図3Aからのフロー300は、
図3Bに示される工程326へと続く。工程326は、K個のテンプレートのセット内のテンプレートkの夫々について、工程324で生成された合成確率分布関数を組み合わせる。言い換えると、工程326では、k=1に関して工程324で生成された確率関数が、k=2に関して工程324で生成された確率関数に追加され、このプロセスが、K個のテンプレートのセット内の全てのテンプレートkに関して繰り返される。この組み合わせは、
図4のジッタ・プロセッサ400の一部である合算(summation)コンポーネント710(
図7)によって実行されても良い。具体的には、
図4で触れている合成処理416は、K個の分布の全てからの出力又はコンポーネント・グループ410からのヒストグラムを受信する。合算コンポーネント710は、工程328において、もはやデュアル・ディラック形式ではない合成分布を作成するが、合成分布は、テール(tails:裾)、即ち、中心から最も遠い分布の領域を含む。合成分布のテールは、
図3Aのフロー300で分析されたデータの実際の母集団をはるかに超えて、合理的に外挿される。
【0052】
720として図示される、テールを有する合成分布に基づいて、分布アナライザ722は、工程330においてrms値を生成し、これは、Jrmsとして生成される。テールの無い合成分布は、720用に作成された分布のテール部分を除去することによって、工程332において作成され、730として示されている。分布関数のテール部分を除去する処理は、上述した。テールの無い分布730に基づいて、分布アナライザ732は、工程334において、最小及び最大ジッタ値の範囲を生成し、これは、J6uとして記録される。
【0053】
Jrms及びJNuパラメータが生成されたら、数式1~3を使用して、Jrms及びJ6uと同等の様々なジッタ・パラメータを生成できる。他の等価パラメータも、レポートする対象の特定のパラメータに応じて、他の数式を使用して生成されても良い。
【0054】
本願で説明するジッタ測定の精度を高めるために、
図3A及び3Bの工程をDUTからの他のサンプル集団を用いて繰り返して、K個のヒストグラムの夫々の集団を増加させても良い。
【0055】
本発明の実施形態によれば、テンプレートの生成が柔軟に行えるので、ユーザの測定装置は、DUT210からのどのデータ遷移を特定の分析において使用するかを正確に指定することに関して、制御できる範囲が広い。
【0056】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0057】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0058】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0059】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
実施例
【0060】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0061】
実施例1は、試験測定装置であって、複数の入力レベル遷移を有する試験波形を被試験装置(DUT)から受信するための入力部と、上記試験波形の入力信号レベルの遷移の2つ以上の所定(predetermined:予め定めた)パターンに一致する上記試験波形の部分のみをそれぞれ個別に抽出するように構成されたセレクタと、上記波形の抽出された部分のそれぞれについて、上記試験波形を受信する上記試験測定装置のランダム・ノイズに起因するジッタ測定値の成分を個別に決定及び除去するように構成されたノイズ補正部と、上記試験波形の抽出された部分からノイズ成分を除去したタイミング測定値の合成分布を生成するように構成された合算部と、上記合成分布から上記DUTの第1ノイズ補正ジッタ測定値を決定するように構成されたジッタ・プロセッサとを具える。
【0062】
実施例2は、実施例1による試験測定装置であって、上記合算部は、上記合成分布のテールを除外して中央合成分布を生成するよう構成され、上記ジッタ・プロセッサは、更に、上記中央合成分布から上記DUTの第2ノイズ補正ジッタ測定値を決定するように構成される。
【0063】
実施例3は、実施例2による試験測定装置であって、上記第1ノイズ補正ジッタ測定はJrmsであり、上記第2ノイズ補正ジッタ測定はJNuである。
【0064】
実施例4は、先行する実施例のいずれかによる試験測定装置であって、上記試験波形の第1所定(predetermined)パターンに一致する遷移のスルーレートが、上記試験波形の第2所定パターンに一致する遷移のスルーレートと異なる。
【0065】
実施例5は、先行する実施例のいずれかによる試験測定装置であって、上記ノイズ補正部は、所定パターンの1つに一致する試験波形の抽出された部分のタイミング・データのセットのヒストグラムを、ある曲線に適合(fit:フィット)させるように構成される。
【0066】
実施例6は、実施例5による試験測定装置であって、上記ノイズ補正部は、タイミング・データのセットのヒストグラムを、qスケールの特性に基づいて上記曲線に適合させるように構成される。
【0067】
実施例7は、実施例6による試験測定装置であって、上記曲線が、デュアル・ディラック・モデルに対応する確率分布である。
【0068】
実施例8は、入力信号を受信するように構成された測定装置に起因するノイズが補正された、上記入力信号のジッタ測定値を決定する方法であって、この実施例の方法は、被試験デバイス(DUT)からの上記入力信号を上記測定装置で受信する処理と、上記受信した入力信号から試験波形を生成する処理と、上記入力信号の2つ以上の所定(predetermined:予め定めた)パターンにそれぞれ一致する上記試験波形の2つ以上の部分を選択する処理と、上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、測定装置ノイズに起因するジッタの成分を個別に決定し、測定装置ノイズを補正したタイミング測定値のヒストグラムを個別に合成する処理と、上記選択された2つ以上の部分のタイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムを合算して、合成確率分布を生成する処理と、上記合成確率分布から上記DUTのノイズが補正されたジッタ測定値を決定する処理とを具える。
【0069】
実施例9は、実施例8による方法であって、測定装置ノイズに起因するジッタの成分を個別に決定する処理が、上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、上記試験波形の上記選択された部分のタイミング・エラーの未処理(raw:生)のヒストグラムを生成する処理と、上記未処理のヒストグラムから上記タイミング・エラーの平均値を除去し、ゼロ平均ヒストグラムを生成する処理と、デュアル・ディラック分析を実行して、上記ゼロ平均ヒストグラムのガウス成分と非ガウス成分を求めるために上記ゼロ平均ヒストグラムを適合させる処理とを有する。
【0070】
実施例10は、実施例9による方法であって、上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分の各々について、上記ゼロ平均ヒストグラムからデュアル・ディラックの確定的(ディターミニスティック)ジッタを導出する処理と、上記ゼロ平均ヒストグラムからランダム・ジッタを導出する処理とを更に具える。
【0071】
実施例11は、実施例10による方法であって、上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、上記測定装置のランダム・ノイズについて、上記試験波形の選択された部分の平均スルーレートの影響によって追加されるランダム・ジッタ成分を決定する処理と、追加されたランダム・ジッタ成分を除去して、上記試験波形の上記選択された部分について補正されたランダム・ジッタ成分を生成する処理とを更に具える。
【0072】
実施例12は、実施例11による方法であって、上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、上記補正されたランダム・ジッタ成分を上記ゼロ平均ヒストグラムからのデュアル・ディラックの確定的ジッタと畳み込み演算することによって、上記試験波形の上記選択された部分の補正されたデュアル・ディラック・モデルを合成する処理を更に具える。
【0073】
実施例13は、上記実施例の方法のいずれかによる方法であって、タイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムを合算する処理が、上記2つ以上の選択された部分の夫々における入力信号の遷移の相対的な数に少なくとも部分的に基づいて、上記2つ以上の選択された部分のタイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムの重み付けされた合算を行う処理を有する。
【0074】
実施例14は、上記実施例の方法のいずれかによる方法であって、合成確率分布のテールを除外して中央合算分布を生成する処理と、上記中央合算分布からノイズ補正ジッタ値を決定する処理とを更に具える。
【0075】
実施例15は、試験測定装置であって、被試験デバイス(DUT)から入力信号を受信し、受信した入力信号から試験波形を作成するための入力部と、1つ以上のプロセッサとを具え、該1つ以上のプロセッサが、上記入力信号を受信する装置に起因するノイズが補正された上記入力信号中のジッタを求めるために、上記受信する装置で上記入力信号を受信する処理と、受信した上記入力信号から試験波形を生成する処理と、上記入力信号の2つ以上の所定(predetermined:予め定めた)パターンにそれぞれ一致する上記試験波形の2つ以上の部分を選択する処理と、上記2つ以上の選択された部分のそれぞれについて、測定装置ノイズに起因するジッタの成分を個別に決定し、上記測定装置ノイズを補正したタイミング測定値のヒストグラムを個別に合成する処理と、上記選択された2つ以上の部分のタイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムを合算して合成確率分布を生成する処理と、上記合成確率分布から上記DUTのノイズ補正ジッタ測定値を決定する処理とを上記1つ以上のプロセッサに行わせるプログラムを実行するよう構成される。
【0076】
実施例16は、実施例15による試験測定装置であって、測定装置ノイズに起因するジッタの成分を個別に決定する処理が、上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、上記試験波形の第1部分のタイミング・エラーの未処理のヒストグラムを生成する処理と、上記未処理のヒストグラムから上記タイミング・エラーの平均値を除去し、ゼロ平均ヒストグラムを生成する処理と、デュアル・ディラック分析を実行して、上記ゼロ平均ヒストグラムのガウス成分と非ガウス成分を求めるように上記ゼロ平均ヒストグラムに適合させる処理とを有する。
【0077】
実施例17は、実施例16による試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサが、上記ゼロ平均ヒストグラムからデュアル・ディラックの確定的ジッタを導出する処理と、上記ゼロ平均ヒストグラムからランダム・ジッタを導出する処理と行うように更に構成される。
【0078】
実施例18は、実施例17による試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサが、上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、上記受信する装置のランダム・ノイズについて、上記試験波形の上記選択された部分の平均スルーレートの影響によって追加されるランダム・ジッタ成分を決定する処理と、追加されたランダム・ジッタ成分を除去して、上記試験波形の選択した部分についての補正されたランダム・ジッタ成分を生成する処理とを行うよう更に構成される。
【0079】
実施例19は、実施例15~18のいずれかによる試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサが、上記試験波形の上記選択された2つ以上の部分のそれぞれについて、補正されたランダム・ジッタ成分を上記ゼロ平均ヒストグラムからのデュアル・ディラックの確定的ジッタと畳み込み演算することによって、上記試験波形の選択された部分の補正されたデュアル・ディラック・モデルを合成する処理を行うよう更に構成される。
【0080】
実施例20は、実施例19による試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサが、上記2つ以上の選択された部分の夫々における入力信号の遷移の相対的な数に少なくとも部分的に基づいて、上記2つ以上の選択された部分のタイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムの重み付けされた合算処理を行うことによって、タイミング測定値のノイズが補正されたヒストグラムを合算する処理を行うよう更に構成される。
【0081】
実施例21は、実施例15~20のいずれかにより試験測定装置であって、上記1つ以上のプロセッサが、合成確率分布のテールを除外して中央合算分布を生成する処理と、上記中央合算分布からノイズ補正ジッタ値を決定する処理とを行うよう更に構成される。
【0082】
開示された本件の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0083】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0084】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0085】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【国際調査報告】