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特表2024-511242コア-シェル染料、これを含む近赤外線吸収性樹脂組成物、および近赤外線吸収フィルム
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  • 特表-コア-シェル染料、これを含む近赤外線吸収性樹脂組成物、および近赤外線吸収フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】コア-シェル染料、これを含む近赤外線吸収性樹脂組成物、および近赤外線吸収フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/08 20060101AFI20240306BHJP
   C09B 57/00 20060101ALI20240306BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C09B67/08 B
C09B67/08 C
C09B57/00 X
G02B5/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023517317
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 KR2022012437
(87)【国際公開番号】W WO2023163299
(87)【国際公開日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】10-2022-0024687
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514278061
【氏名又は名称】サムスン エスディアイ カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20, Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si,Gyeonggi-do 17084,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ユィソ
(72)【発明者】
【氏名】シン,インスプ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ギュソク
(72)【発明者】
【氏名】コ,チェヒュク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ベク ソン
【テーマコード(参考)】
2H148
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA12
2H148CA17
(57)【要約】
本記載はコア-シェル染料、これを含む近赤外線吸収性樹脂組成物、および近赤外線吸収フィルムに関するものである。具体的に、一実施形態は下記化学式1で表されるコア;および前記コアを囲み、下記化学式2で表されるシェルからなるコア-シェル染料を提供する:

(上記化学式1および2中、各置換基は明細書に定義された通りである。)
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるコア;および前記コアを囲み、下記化学式2で表されるシェルからなるコア-シェル染料:
【化1】

上記化学式1中、
は、同一であるか異なり、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基であり;
は、同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリールアルキル基であるか;隣接する2つのRが結合して置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル環を形成することができ;
は、同一であるか異なり、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基であり;
は、同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリールアルキル基であるか;隣接する2つのRが結合して置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル環を形成することができ;
【化2】

上記化学式2中、
およびLはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり;
およびZはそれぞれ独立して、*-CR-*または窒素原子であり、ここでRは水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり;
およびXはそれぞれ独立して、ハロゲン基または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり;
a1およびa2はそれぞれ独立して、0~4の整数であり;
nは2以上の整数である。
【請求項2】
前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~10のアリール基であり;
前記Rの置換基は一つ以上の(メタ)アクリレート基、*-O-*(エポキシ)基、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項3】
前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアリールアルキル基であるか;隣接する2つの前記Rが結合して炭素数1~5のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数1~10のシクロアルキル環を形成し;
前記Rの置換基は一つ以上の炭素数1~5のアルキル基である、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項4】
前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~10のアリール基であり;
前記Rの置換基は一つ以上の(メタ)アクリレート基、*-O-*(エポキシ)基、またはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項5】
前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアリールアルキル基であるか;隣接する2つの前記Rが結合して炭素数1~5のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数1~10のシクロアルキル環を形成し;
前記Rの置換基は一つ以上の炭素数1~5のアルキル基である、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項6】
下記化学式1で表されるコアは対称構造である、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項7】
下記化学式1で表されるコアは下記化学式1-1~1-4のうちのいずれか一つで表される、請求項1に記載のコア-シェル染料:
【化3】

【化4】

上記化学式1-1~1-4中、
11、R12、R13、R21、R31、R32、R33、R41およびR42はそれぞれ独立して、同一であるか異なって、炭素数1~10のアルキル基であり;
31、L32、L41およびL42はそれぞれ独立して、同一であるか異なって、炭素数1~10のアルキレン基であり;
、R、RおよびR10はそれぞれ独立して、同一であるか異なって、炭素数1~10のアルキル基であり;
およびRはそれぞれ独立して、同一であるか異なって、(メタ)アクリレート基または*-O-*(エポキシ)基であり;
c、d、e、fおよびgはそれぞれ独立して、0~5の整数である。
【請求項8】
下記化学式1で表されるコアは下記で構成される群のうちのいずれか一つで表される、請求項7に記載のコア-シェル染料:
【化5】

【化6】

上記化学式1-1-1中、
oおよびpはそれぞれ独立して、0~5の整数である。
【請求項9】
前記ZおよびZのうちのいずれか一つは*-CH-*または窒素原子であり、他の一つは*-CH-*である、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項10】
前記XおよびXはそれぞれ独立してハロゲン基であり、a1+a2は1~8の整数である、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項11】
前記nは2である、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項12】
前記LおよびLはそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基である、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項13】
前記シェルは下記化学式2-1~2-4のうちのいずれか一つで表される、請求項1に記載のコア-シェル染料:
【化7】

【化8】
【請求項14】
前記コア-シェル染料は前記コアおよび前記シェルを1:1のモル比で含む、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項15】
前記コア-シェル染料は下記で構成される群より選択されたいずれか一つで表される、請求項1に記載のコア-シェル染料:
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

上記化学式3-1-1、化学式4-1-1、化学式5-1-1および化学式6-1-1中、
oおよびpはそれぞれ独立して、0~5の整数である。
【請求項16】
前記コアは700nm~850nmの波長で最大吸収ピークを有する、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項17】
前記コア-シェル染料は700nm~1,000nmの波長で最大吸収ピークを有する、請求項16に記載のコア-シェル染料。
【請求項18】
前記コア-シェル染料は近赤外線吸収染料である、請求項1に記載のコア-シェル染料。
【請求項19】
請求項1および18のうちのいずれか一項のコア-シェル染料を含む近赤外線吸収性樹脂組成物。
【請求項20】
前記近赤外線吸収性樹脂組成物は、バインダー樹脂および溶媒をさらに含む、請求項19に記載の近赤外線吸収性樹脂組成物。
【請求項21】
前記近赤外線吸収性樹脂組成物はCMOSイメージセンサ用である、請求項19に記載の近赤外線吸収性樹脂組成物。
【請求項22】
請求項19の近赤外線吸収性樹脂組成物を用いて製造される近赤外線吸収フィルム。
【請求項23】
請求項22の近赤外線吸収フィルムを含む光学フィルタ。
【請求項24】
請求項23の光学フィルタを含むCMOSイメージセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、コア-シェル染料、これを含む近赤外線吸収性樹脂組成物、および近赤外線吸収フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサは光子を電子に転換してディスプレイで表示するか記憶装置に保存することができるようにする半導体に該当する。
【0003】
前記イメージセンサは、製作工程と応用方式によって、固体撮像素子(charge coupled device、CCD)イメージセンサと相補性金属酸化物半導体(complementary metal oxide semiconductor、CMOS)イメージセンサに分類される。
【0004】
また、前記CMOSイメージセンサは、赤色(red)、緑色(green)、青色(blue)の加法混合原色のフィルターセグメント(filter segment)を含むカラーフィルタ(color filter)を備える。一方、前記CMOSイメージセンサのシリコン基盤フォトダイオード(Si-Photodiode)は近赤外線波長領域(具体的に、750nm~1,000nm)で感度を有するので、近赤外線吸収フィルムを含む光学フィルタも備える必要がある。
【0005】
前記近赤外線吸収フィルムは、可視光線領域以外の光(例えば、近赤外線)によって光学的歪曲が発生することを減らすか防止する機能を果たし、特定化合物を含む組成物をコーティングおよび乾燥して製造することが一般的である。
【0006】
前記近赤外線吸収フィルム製造用化合物としては、無機染料が知られている。但し、前記無機染料は近赤外線吸収強度が低い物質に該当するので、近赤外線吸収フィルム製造時過量使用する必要がある。このように無機染料の使用量を増やすほど、組成物の粘度が増加して工程性が低下し、製造されるフィルムの厚さが厚くなる。
【0007】
よって、前記近赤外線吸収フィルム製造用化合物として無機染料を代替する有機染料が要求されているが、現在まで知られた有機染料は耐久性(例えば、耐化学性、耐光性など)が無機染料、有機顔料などに対比して劣等であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一実施形態は、高い近赤外線吸収強度を示しながらも耐久性が確保されるコア-シェル染料を提供するためのものである。
【0009】
また他の一実施形態は、前記コア-シェル染料を含む近赤外線吸収組成物を提供するためのものである。
【0010】
また他の一実施形態は、前記近赤外線吸収組成物を用いて製造された近赤外線吸収フィルムを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態は、下記化学式1で表されるコア;および前記コアを囲み、下記化学式2で表されるシェルからなるコア-シェル染料を提供する:
【0012】
【化1】
【0013】
上記化学式1中、Rは同一であるか異なり、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基であり;Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリールアルキル基であるか;隣接する2つのRが結合して置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル環を形成することができ;Rは同一であるか異なり、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基であり、Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリールアルキル基であるか;隣接する2つのRが結合して置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル環を形成することができ;
【0014】
【化2】
【0015】
上記化学式2中、LおよびLはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり;ZおよびZはそれぞれ独立して、*-CR-*または窒素原子であり、ここでRは水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり;XおよびXはそれぞれ独立して、ハロゲン基または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり;a1およびa2はそれぞれ独立して0~4の整数であり;nは2以上の整数である。
【0016】
前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~10のアリール基であり;前記Rの置換基は一つ以上の(メタ)アクリレート基、*-O-*(エポキシ)基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0017】
前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアリールアルキル基であるか;隣接する2つの前記Rが結合して炭素数1~5のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数1~10のシクロアルキル環を形成し;前記Rの置換基は一つ以上の炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0018】
前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~10のアリール基であり;前記Rの置換基は一つ以上の(メタ)アクリレート基、*-O-*(エポキシ)基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0019】
前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアリールアルキル基であるか;隣接する2つの前記Rが結合して炭素数1~5のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数1~10のシクロアルキル環を形成し;前記Rの置換基は一つ以上の炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0020】
前記化学式1で表されるコアは対称構造であってもよい。
【0021】
前記化学式1で表されるコアは下記化学式1-1~1-4のうちのいずれか一つで表すことができる:
【0022】
【化3】
【0023】
【化4】
【0024】
上記化学式1-1~1-4中、R11、R12、R13、R21、R31、R32、R33、R41およびR42はそれぞれ独立して、同一であるか異なって、炭素数1~10のアルキル基であり;L31、L32、L41およびL42はそれぞれ独立して、同一であるか異なって、炭素数1~10のアルキレン基であり;R、R、RおよびR10はそれぞれ独立して、同一であるか異なって、炭素数1~10のアルキル基であり;RおよびRはそれぞれ独立して、同一であるか異なって、(メタ)アクリレート基または*-O-*(エポキシ)基であり;c、d、e、fおよびgはそれぞれ独立して、0~5の整数である。
【0025】
前記化学式1で表されるコアは下記で構成される群のうちのいずれか一つで表すことができる:
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
上記化学式1-1-1中、oおよびpはそれぞれ独立して、0~5の整数である。
【0029】
前記ZおよびZのうちのいずれか一つは*-CH-*または窒素原子であり、他の一つは*-CH-*であってもよい。
【0030】
前記XおよびXはそれぞれ独立してハロゲン基であり、a1+a2は1~8の整数であってもよい。
【0031】
前記LおよびLはそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であってもよい。
【0032】
前記nは2であってもよい。
【0033】
前記シェルは下記化学式2-1~2-4のうちのいずれか一つで表すことができる:
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
前記コア-シェル染料は前記コアおよび前記シェルを1:1のモル比で含むことができる。
【0037】
前記コア-シェル染料は下記で構成される群より選択されたいずれか一つで表すことができる:
【0038】
【化9】
【0039】
【化10】
【0040】
【化11】
【0041】
【化12】
【0042】
【化13】
【0043】
【化14】
【0044】
【化15】
【0045】
【化16】
【0046】
上記化学式3-1-1、化学式4-1-1、化学式5-1-1および化学式6-1-1中、oおよびpはそれぞれ独立して、0~5の整数である。
【0047】
前記コアは700nm~850nmの波長で最大吸収ピークを有することができる。
【0048】
前記コア-シェル染料は700nm~1,000nmの波長で最大吸収ピークを有することができる。
【0049】
前記コア-シェル染料は近赤外線吸収染料であってもよい。
【0050】
他の一実施形態は、前記コア-シェル染料を含む近赤外線吸収性樹脂組成物を提供する。
【0051】
前記近赤外線吸収性樹脂組成物は、バインダー樹脂および溶媒をさらに含むことができる。
【0052】
前記近赤外線吸収性樹脂組成物はCMOSイメージセンサ用であってもよい。
【0053】
また他の一実施形態は、近赤外線吸収性樹脂組成物を用いて製造される近赤外線吸収フィルムを提供する。
【0054】
また他の一実施形態は、前記近赤外線吸収フィルムを含む光学フィルタを提供する。
【0055】
また他の一実施形態は、前記光学フィルタを含むCMOSイメージセンサを提供する。
【0056】
その他の本発明の実施形態の具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0057】
一実施形態によるコア-シェル染料は、近赤外線吸収波長帯域への整合性を優秀に発現しながらも耐光性、耐化学性、耐熱性などを同時に確保することができる。
【0058】
よって、前記コア-シェル染料を含む近赤外線吸収性樹脂組成物は染料含量を節減しながらも微細パターン形成が可能で、CMOSイメージセンサ用近赤外線吸収フィルムを経済的に提供することに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】前記化学式2で表されるシェルのケージ幅(cage width)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されず、本発明は後述の請求範囲の範疇によってのみ定義されるだけである。
【0061】
本明細書で特別な言及がない限り、“置換”とは化合物中の少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシ基、炭素数1~20のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミン基、イミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバモイル基、チオール基、エステル基、エーテル基、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸またはその塩、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数2~20のアルキニル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルキニル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルキル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルケニル基、炭素数2~20のヘテロシクロアルキニル基またはこれらの組み合わせの置換基で置換されたことを意味する。
【0062】
本明細書で特別な言及がない限り、“ヘテロシクロアルキル基”、“ヘテロシクロアルケニル基”、“ヘテロシクロアルキニル基”および“ヘテロシクロアルキレン基”とは、それぞれ、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニルおよびシクロアルキレンの環化合物内に少なくとも一つのN、O、SまたはPのヘテロ原子が存在することを意味する。
【0063】
本明細書で特別な言及がない限り、“(メタ)アクリレート”は“アクリレート”と“メタクリレート”の両方とも可能であるのを意味する。
【0064】
本明細書で特別な言及がない限り、“組み合わせ”とは、混合または共重合を意味する。
【0065】
本明細書内化学式で別途の定義がない限り、化学結合が描かれなければならない位置に化学結合が描かれていない場合は、前記位置に水素原子が結合されているのを意味する。
【0066】
本明細書で特別な言及がない限り、同一な番号を有する置換基が複数存在する時、これら置換基は同一であるか異なる。例えば、後述の化学式2中、“X”が4つ存在する時、4つの“X”は全て“F”で同一であるか;一つの“X”は“F”であり、二つの“X”は“Cl”であり、一つの“X”は“Br”であってもよい。但し、これは例示に過ぎない。
【0067】
また、本明細書で特別な言及がない限り、点線
【0068】
【数1】
【0069】
または“*”は同一であるか異なる原子または化学式と連結される部分を意味する。
【0070】
(コア-シェル染料)
本発明は近赤外線吸収フィルム製造用化合物に関するものであって、高い近赤外線吸収強度を示しながらも耐光性、耐化学性、耐熱性などが同時に確保される有機化合物系着色剤を目的とする。
【0071】
具体的に、一実施形態は、下記化学式1で表されるコア;および前記コアを囲み、下記化学式2で表されるシェルからなるコア-シェル染料を提供する:
【0072】
【化17】
【0073】
上記化学式1中、Rは同一であるか異なり、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基であり;Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリールアルキル基であるか;隣接する2つのRが結合して置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル環を形成することができ;Rは同一であるか異なり、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基であり、Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数1~30のアリールアルキル基であるか;隣接する2つのRが結合して置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル環を形成することができ;
【0074】
【化18】
【0075】
上記化学式2中、LおよびLはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキレン基であり;ZおよびZはそれぞれ独立して、*-CR-*または窒素原子であり、ここでRは水素原子または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり;XおよびXはそれぞれ独立して、ハロゲン基または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基であり;a1およびa2はそれぞれ独立して0~4の整数であり;nは2以上の整数である。
【0076】
前記化学式1で表されるコアは、スクアレン(Squarine、SQ)系化合物内アニリンモイエティ(aniline moiety)をジアミンナフタレンモイエティ(diamine naphthalene moiety)で代替した構造の化合物であって、スクアレン系化合物に対比して最大吸収ピークが長波長領域に移動できる。このように最大吸収ピークが長波長領域に移動することは、近赤外線吸収波長帯域への整合性がさらに改善されることを意味する。
【0077】
具体的に、前記化学式1で表されるコアは、700nm~850nmの波長で最大吸収ピークを有し、その最大吸収ピークでの強度が無機染料より高い。また、前記化学式1で表されるコアは粒子をなさない有機染料である点から、有機顔料より有利である。
【0078】
よって、前記化学式1で表されるコアを含むコア-シェル染料は、無機染料、有機顔料などに対比して、波長整合性が優れるだけでなく、近赤外線吸収フィルム製造時使用量の減量、工程性の増大、フィルムの薄膜化などに有利である。
【0079】
一方、前記化学式1で表されるコアは、無機染料、有機顔料などに対比して耐久性が劣等であるという問題がある。前記化学式2で表されるシェルは、前記化学式1で表されるコアを囲むことができる十分な大きさを有する巨大環状化合物の一種であって、前記化学式1で表されるコアの不足している耐久性を補完することができる。
【0080】
さらに、前記化学式2で表されるシェルにハロゲン基が導入されていない場合のコア-シェル染料は700nm~850nmで最大吸収ピークが現れるが、前記化学式2で表されるシェルにハロゲン基が導入された場合のコア-シェル染料は850nm~1,000nmで最大吸収ピークが現れる。前記化学式2で表されるシェルにハロゲン基を導入することによってコア-シェル染料の最大吸収ピークが長波長領域に移動することは、近赤外線吸収波長帯域への整合性がさらに改善されることを意味する。
【0081】
総合的に、一実施形態のコア-シェル染料は、前記化学式1で表されるコア単独による効果;または前記化学式1で表されるコアおよび前記化学式2で表されるシェルの上昇効果として、近赤外線吸収波長帯域への整合性が優れるように示される。また、一実施形態のコア-シェル染料は、前記化学式2で表されるシェルが前記化学式1で表されるコアを囲んだ結果、優れた耐久性を有する。
【0082】
以下、一実施形態のコア-シェル染料をさらに詳しく説明する。
【0083】
化学式1で表されるコア
前記化学式1で表されるコアで、前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~10のアリール基であり;前記Rが置換された場合、その置換基は一つ以上の(メタ)アクリレート基、*-O-*(エポキシ)基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0084】
具体的に、前記Rは同一に、メチル基またはフェニル基であってもよく;前記Rは非置換であるか置換されてもよいが;前記Rが置換された場合、その置換基は一つの(メタ)アクリレート基または*-O-*(エポキシ)基であってもよい。
【0085】
前記(メタ)アクリレート基は耐熱性向上に寄与する官能基であり、前記*-O-*(エポキシ)基は耐化学性向上に寄与する官能基である。よって、前記Rが非置換である場合に対比して、一つ以上の(メタ)アクリレート基、*-O-*(エポキシ)基、またはこれらの組み合わせによって置換される場合、前記コアの耐化学性、耐熱性などが適切に向上できる。
【0086】
前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアリールアルキル基であるか;隣接する2つの前記Rが結合して炭素数1~5のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数1~10のシクロアルキル環を形成し;前記Rの置換基は一つ以上の炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0087】
具体的に、前記Rは同一に、炭素数1~10のアルキル基またはベンジル基(*-CH-C)であってもよく;前記Rは非置換であってもよい。
【0088】
これとは異なり、隣接する2つの前記Rが結合して炭素数6のシクロアルキル環を形成することができ;この場合、前記炭素数6のシクロアルキル環は非置換であるか置換されてもよいが;前記炭素数6のシクロアルキル環が置換された場合、その置換基は二つのメチル基であってもよい。
【0089】
前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~10のアリール基であり;前記Rが置換された場合、その置換基は一つ以上の(メタ)アクリレート基、*-O-*(エポキシ)基、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0090】
具体的に、前記Rは同一に、メチル基またはフェニル基であってもよく;前記Rは非置換であるか置換されてもよいが;前記Rが置換された場合、その置換基は一つの(メタ)アクリレート基または*-O-*(エポキシ)基であってもよい。
【0091】
前記(メタ)アクリレート基は耐熱性向上に寄与する官能基であり、前記*-O-(エポキシ)基は耐化学性向上に寄与する官能基である。よって、前記Rが非置換である場合に対比して、一つ以上の(メタ)アクリレート基、*-O-*(エポキシ)基、またはこれらの組み合わせによって置換される場合、前記コアの耐化学性、耐熱性などが適切に向上できる。
【0092】
前記Rは同一であるか異なって、置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアリールアルキル基であるか;隣接する2つの前記Rが結合して炭素数1~5のアルキル基で置換もしくは非置換の炭素数1~10のシクロアルキル環を形成し;前記Rの置換基は一つ以上の炭素数1~5のアルキル基であってもよい。
【0093】
具体的に、前記Rは同一に、炭素数1~10のアルキル基またはベンジル基(*-CH-C)であってもよく;前記Rは非置換であってもよい。
【0094】
これとは異なり、隣接する2つの前記Rが結合して炭素数6のシクロアルキル環を形成することができ;この場合、前記炭素数6のシクロアルキル環は非置換であるか置換されてもよいが;前記炭素数6のシクロアルキル環が置換された場合、その置換基は二つのメチル基であってもよい。
【0095】
前記化学式1で表されるコアは対称構造であってもよい。
【0096】
具体的に、前記Rは前記Rと同一であり、前記Rは前記Rと同一であってもよい。この場合、 前記化学式1で表されるコアが非対称構造である場合に対比して合成メカニズムが容易であり、これにより収率増大、合成難易度低下、単価節減などの有利な面がある。
【0097】
前記化学式1で表されるコアは、下記化学式1-1~1-4のうちのいずれか一つで表すことができる:
【0098】
【化19】
【0099】
【化20】
【0100】
上記化学式1-1~1-4中、R11、R12、R13、R21、R31、R32、R33、R41およびR42はそれぞれ独立して、同一であるか異なって、炭素数1~10のアルキル基であり;L31、L32、L41およびL42はそれぞれ独立して、同一であるか異なって、炭素数1~10のアルキレン基であり;R、R、RおよびR10はそれぞれ独立して、同一であるか異なって、炭素数1~10のアルキル基であり;RおよびRはそれぞれ独立して、同一であるか異なって、(メタ)アクリレート基または*-O-*(エポキシ)基であり;c、d、e、fおよびgはそれぞれ独立して、0~5の整数である。
【0101】
特に、前記化学式1で表されるコアは下記で構成される群のうちのいずれか一つで表すことができる:
【0102】
【化21】
【0103】
【化22】
【0104】
上記化学式1-1-1中、oおよびpはそれぞれ独立して、0~5の整数である。
【0105】
前記化学式1で表されるコアの長さは1nm~3nm、例えば1.5nm~2nmであってもよい。前記化学式1で表されるコアが前記範囲内の長さを有する場合、コア-シェル染料を容易に形成することができる。
【0106】
言い換えれば、前記化学式1で表されるコアが前記範囲内の長さを有することによって、前記巨大環状化合物であるシェルが前記化学式1で表される化合物を囲む構造として得られる。前記範囲の長さに該当しない他の化合物を使用する場合、前記シェルが前記コアを囲む構造を形成しにくいことによって、耐久性の改善を期待しにくい。
【0107】
前記化学式1で表されるコアそれ自体は700nm~850nmの波長で最大吸収ピークを有することができる。前記分光特性を有するコアを含むコア-シェル染料は、CMOSイメージセンサの近赤外線吸収フィルム用組成物に適用することができる。前記近赤外線吸収フィルムを含む光学フィルタは、近赤外線吸収機能を効果的に実現しながらも、350nm~650nmの波長は円滑に透過させることができる。
【0108】
但し、前記化学式2で表されるシェルのハロゲン基導入有無によって前記コア-シェル染料の最大吸収ピークが変わることになり、これについては後述することにする。
【0109】
参考として、前記化学式1で表されるコアは下記図式のように、3つの共鳴構造を含むが、本明細書では便宜上1つの構造のみで前記化学式1で表される化合物を表しただけである:
【0110】
【化23】
【0111】
即ち、前記化学式1で表されるコアは、前記3つの共鳴構造のうちのいずれか一つで表すことができる。
【0112】
化学式2で表されるシェル
前記化学式2で表されるシェルはロタキサン(Rotaxane)系巨大環状化合物であって、アミド結合(-CONH-)を含む。よって、前記化学式2で表されるシェルのアミド結合に含まれている水素原子は、前記化学式1で表される化合物の酸素原子と非共有結合を成すことができる。具体的に、前記二つの原子は水素結合を成して、前記コア-シェル染料の耐久性を強化することができる。
【0113】
具体的に、前記ZおよびZのうちのいずれか一つは*-CH-*または窒素原子であり、他の一つは*-CH-*であってもよい。前記ZおよびZのうちのいずれか一つとして窒素原子を導入する時、これを全く導入しない場合に対比して、前記シェルと前記コアの非共有結合、または前記シェル内部の非共有結合が増加して、前記コア-シェル染料の耐久性をさらに強化することができる。
【0114】
前記XおよびXはそれぞれ独立してハロゲン基であり、d1+d2は1~8の整数であってもよい。前記XおよびXのうちの少なくとも一つとしてフッ素原子を導入する時、これを全く導入しない場合に対比して、前記コア-シェル染料の最大吸収ピークが長波長領域に移動して、近赤外線吸収波長帯域への整合性が優れるように実現することができる。例えば、前記XおよびXは全てフッ素原子(即ち、F)であり、a1+a2は8であってもよい。
【0115】
前記LおよびLはそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であってもよい。この場合、溶解度に優れ、前記シェルが前記コアを囲む構造を形成しやすい。例えば、前記LおよびLは全てメチレン基(即ち、*-CH-*)であってもよい。
【0116】
前記nは2であってもよい。
【0117】
前記シェルは下記化学式2-1~2-4のうちのいずれか一つで表すことができる:
【0118】
【化24】
【0119】
【化25】
【0120】
上記2-1~2-4中で母核の構造が同一である時、フッ素原子で置換されたシェルを使用したコア-シェル染料の最大吸収ピークをより長波長領域に移動させる効果がある。
【0121】
前記シェルのケージ幅(cage width)は6.5Å~7.5Åであってもよく、前記シェルの体積は10Å~16Åであってもよい。本願でケージ幅(cage width)とはシェル内部距離、例えば前記化学式2で表されるシェルで、両側にメチレン基が連結された、互いに異なる2つのフェニレン基の間の距離を意味する(図1参照)。前記シェルが前記範囲内のケージ幅を有する場合、前記化学式1で表されるコアを囲む構造のコア-シェル染料を得ることができ、これにより前記コア-シェル染料を近赤外線吸収性樹脂組成物に添加する場合、耐久性に優れ高輝度を有する近赤外線吸収フィルムを実現することができる。
【0122】
コア-シェル染料
一方、前記コア-シェル染料は、前記化学式1で表される化合物を含むコアおよび前記シェルを1:1のモル比で含むことができる。前記コアおよびシェルが前記モル比で存在する場合、前記化学式1で表される化合物を含むコアを囲むコーティング層(シェル)がよく形成される。
【0123】
前記コア-シェル染料の代表的な例は下記の通りである:
【0124】
【化26】
【0125】
【化27】
【0126】
【化28】
【0127】
【化29】
【0128】
【化30】
【0129】
【化31】
【0130】
【化32】
【0131】
【化33】
【0132】
上記化学式3-1-1、化学式4-1-1、化学式5-1-1および化学式6-1-1中、oおよびpはそれぞれ独立して、0~5の整数である。
【0133】
前記コア-シェル染料は、700nm~1,000nmの波長で最大吸収ピークを有することができる。
【0134】
具体的に、前記化学式2で表されるシェルにハロゲン基が導入されていない場合、これを含むコア-シェル染料は700nm~850nmの波長で最大吸収ピークを有することができる。これとは異なり、前記化学式2で表されるシェルにハロゲン基が導入された場合、850nm~1,000nmの波長で最大吸収ピークを有することができる。
【0135】
即ち、前記化学式2で表されるシェルにハロゲン基が導入された場合、ハロゲン基が導入されていない場合に対比して、前記コア-シェル化合物の最大吸収ピークが長波長領域に移動し、近赤外線吸収波長帯域への整合性が優れるように示される。
【0136】
前記コア-シェル染料は、近赤外線吸収染料として単独で使用することもでき、調色染料と混合して使用することもできる。
【0137】
前記調色染料としては、トリアリールメタン系染料、アントラキノン系染料、ベンジリデン系染料、シアニン系染料、フタロシアニン系染料、アザポルフィリン系染料、インディゴ系染料、キサンテン系染料、ピリドンアゾ系染料などが挙げられる。
【0138】
(近赤外線吸収性樹脂組成物)
また他の一実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物または前記コア-シェル染料を含む近赤外線吸収性樹脂組成物を提供する。
【0139】
前記近赤外線吸収性樹脂組成物は、(A)着色剤(前記コア-シェル染料)、(B)バインダー樹脂、および(C)溶媒を含むことができる。
【0140】
以下で各成分について具体的に説明する。
【0141】
(A)着色剤
前記着色剤は前記コア-シェル染料を含むことができ、前記コア-シェル染料については前述した。
【0142】
前記着色剤は、前記コア-シェル染料以外に追加的に顔料をさらに含むことができる。
【0143】
前記顔料としては、緑色顔料、青色顔料、赤色顔料、紫色顔料、黄色顔料、黒色顔料などを使用することができる。
【0144】
前記赤色顔料はカラーインデックス(Color Index)内でC.I.赤色顔料254、C.I.赤色顔料255、C.I.赤色顔料264、C.I.赤色顔料270、C.I.赤色顔料272、C.I.赤色顔料177、C.I.赤色顔料89などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、これに必ずしも限定されるのではない。
【0145】
前記紫色顔料はカラーインデックス(Color Index)内でC.I.バイオレット顔料23(V.23)、C.I.バイオレット顔料29、ジオキサジンバイオレット、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、インダントレンブリリアントバイオレットなどを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、これに必ずしも限定されるのではない。
【0146】
前記緑色顔料はカラーインデックス(Color Index)内でC.I.緑色顔料7、C.I.緑色顔料36、C.I.緑色顔料58、C.I.緑色顔料59などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、これに必ずしも限定されるのではない。
【0147】
前記青色顔料はカラーインデックス(Color Index)内でC.I.青色顔料15:6、C.I.青色顔料15、C.I.青色顔料15:1、C.I.青色顔料15:2、C.I.青色顔料15:3、C.I.青色顔料15:4、C.I.青色顔料15:5、C.I.青色顔料15:6、C.I.青色顔料16などのような銅フタロシアニン顔料を使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、これに必ずしも限定されるのではない。
【0148】
前記黄色顔料はカラーインデックス(Color Index)内でC.I.黄色顔料185、C.I.黄色顔料139などのようなイソインドリン系顔料、C.I.黄色顔料138などのようなキノフタロン系顔料、C.I.黄色顔料150などのようなニッケルコンプレックス顔料などを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、これに必ずしも限定されるのではない。
【0149】
前記黒色顔料はカラーインデックス(Color Index)内でアニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、カーボンブラックなどを使用することができ、これらを単独でまたは2種以上混合して使用することができるが、これに必ずしも限定されるのではない。
【0150】
前記顔料はこれらを単独でまたは二つ以上混合して使用することができる。例えば、前記顔料としては青色顔料、紫色顔料またはこれらの混合物を使用することができる。
【0151】
前記顔料は、分散液形態で近赤外線吸収性樹脂組成物に含まれてもよい。このような顔料分散液は、前記顔料と溶媒、分散剤、分散樹脂などからなり得る。
【0152】
前記溶媒としてはエチレングリコールアセテート、エチルセロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチルラクテート、ポリエチレングリコール、シクロヘキサノン、プロピレングリコールメチルエーテルなどを使用することができ、これらのうち、好ましくは、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを使用することができる。
【0153】
前記分散剤は前記顔料が分散液内に均一に分散するように助け、非イオン性、陰イオン性または陽イオン性の分散剤全て使用することができる。具体的には、ポリアルキレングリコールまたはそのエステル、ポリオキシアルキレン、多価アルコールエステルアルキレンオキシド付加物、アルコールアルキレンオキシド付加物、スルホン酸エステル、スルホン酸塩、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アルキルアミドアルキレンオキシド付加物、アルキルアミンなどを使用することができ、これらは単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0154】
前記分散樹脂はカルボキシ基を含むアクリル系樹脂を使用することができ、これは顔料分散液の安定性を向上させることができるだけでなく、ピクセルのパターン性も改善させることができる。
【0155】
前記コア-シェル染料および前記顔料を混合して使用する場合、1:9~9:1の重量比、具体的には3:7~7:3の重量比で混合して使用することができる。前記重量比範囲で混合する場合、耐化学性、耐久性、最大吸収波長を適切な範囲に制御し、所望の色座標で高い輝度および明暗比を発現することができる。
【0156】
前記コア-シェル染料は、前記近赤外線吸収性樹脂組成物総量に対して0.5重量%~10重量%で含まれてもよい。前記コア-シェル染料を前記範囲内に使用する場合、耐化学性、耐久性、最大吸収波長を適切な範囲に制御し、所望の色座標で高い輝度および明暗比を発現することができる。例えば、0.5重量%~5重量%で含まれてもよく、このように染料使用量を減らしても耐化学性、耐久性、最大吸収波長を適切な範囲に制御することができる。
【0157】
(B)バインダー樹脂
前記バインダー樹脂は有機バインダーであってもよく、具体的にはアクリルバインダーであってもよい。例えば、前記アクリルバインダーは硬化性バインダーであってもよく、例えば熱硬化性バインダー、光硬化性バインダー、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0158】
前記有機バインダーは例えば、メチルセルロース(methyl cellulose)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropyl methyl cellulose、HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(hydroxylpropyl cellulose、HPC)、キサンタンガム(xanthan gum)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone、PVP)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyl ethyl cellulose)またはこれらの組み合わせであってもよいが、これに限定されるのではない。
【0159】
後述の実施例のようなメタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体を使用することができ、これらの共重合比率はメタクリル酸:ベンジルメタクリレートの重量比として1:99~99:1、具体的に10:90~20:80であってもよい。
【0160】
(C)溶媒
前記溶媒は特別な制限はないが、具体的に例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジクロロエチルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類;メチルエチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;メチルラクテート、エチルラクテートなどの乳酸アルキルエステル類;メチルヒドロキシアセテート、エチルヒドロキシアセテート、ブチルヒドロキシアセテートなどのヒドロキシ酢酸アルキルエステル類;メトキシメチルアセテート、メトキシエチルアセテート、メトキシブチルアセテート、エトキシメチルアセテート、エトキシエチルアセテートなどの酢酸アルコキシアルキルエステル類;メチル3-ヒドロキシプロピオネート、エチル3-ヒドロキシプロピオネートなどの3-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-メトキシプロピオネート、エチル3-エトキシプロピオネート、メチル3-エトキシプロピオネートなどの3-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-ヒドロキシプロピオネート、エチル2-ヒドロキシプロピオネート、プロピル2-ヒドロキシプロピオネートなどの2-ヒドロキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-メトキシプロピオネート、エチル2-メトキシプロピオネート、エチル2-エトキシプロピオネート、メチル2-エトキシプロピオネートなどの2-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネート、エチル2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオネートなどの2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸アルキルエステル類;メチル2-メトキシ-2-メチルプロピオネート、エチル2-エトキシ-2-メチルプロピオネートなどの2-アルコキシ-2-メチルプロピオン酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチルプロピオネート、2-ヒドロキシ-2-メチルエチルプロピオネート、ヒドロキシエチルアセテート、メチル2-ヒドロキシ-3-メチルブタノエートなどのエステル類;またはピルビン酸エチルなどのケトン酸エステル類の化合物があり、またN-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセチルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フェニルセロソルブアセテートなどがあり、これら単独で使用されるか2種以上を混合して使用することができる。
【0161】
前記溶媒のうち、混和性(miscibility)および反応性などを考慮すれば、好ましくは、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;2-ヒドロキシエチルプロピオネートなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのジエチレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類を使用することができる。
【0162】
前記溶媒は前記近赤外線吸収性樹脂組成物総量に対して残部で含まれてもよく、具体的には20重量%~90重量%で含まれてもよい。溶媒が前記範囲内に含まれる場合、近赤外線吸収性樹脂組成物の塗布性に優れ、厚さ3μm以上の膜で優れた平坦性を維持することができる。
【0163】
(D)その他の添加剤
前記近赤外線吸収性樹脂組成物は、塗布時染みや斑点を防止し、レベリング性能を改善するために、また未現像による残渣の生成を防止するために、マロン酸;3-アミノ-1,2-プロパンジオール;ビニル基または(メタ)アクリルオキシ基を含むシラン系カップリング剤;レベリング剤;フッ素系界面活性剤;ラジカル重合開始剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0164】
また、前記近赤外線吸収性樹脂組成物は、基板との密着性などを改善するために、エポキシ化合物などの添加剤をさらに含むことができる。
【0165】
前記エポキシ化合物の例としては、フェノールノボラックエポキシ化合物、テトラメチルビフェニルエポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0166】
前記添加剤の含量は、所望の物性によって容易に調節することができる。
【0167】
また他の一実施形態は、前述の近赤外線吸収性樹脂組成物を用いて製造された近赤外線吸収フィルムを提供する。前記近赤外線吸収フィルムの製造方法は次の通りである。
【0168】
バーコーティング、スピン塗布、スリット塗布などの適当な方法を使用して、前述の近赤外線吸収性樹脂組成物を高分子フィルムの上に塗布することができる。その後、乾燥し、熱硬化または光硬化して近赤外線吸収フィルムを最終的に得ることができる。
【0169】
前記近赤外線吸収フィルムは入射方向に関係なく近赤外線領域の光を効果的に吸収することができるので、側面方向から入射する近赤外線領域の光を効果的に吸収して遮断することによって側面から入射する近赤外線領域の光によって可視光線領域の光による信号が歪曲されるのを減らすか防止することができる。
【0170】
また他の一実施形態は、前述の近赤外線吸収フィルムを含む光学フィルタを提供する。また、また他の一実施形態は、前述の光学フィルタを含むCMOSイメージセンサを提供する。
【0171】
前記近赤外線吸収フィルムを含む光学フィルタをCMOSイメージセンサに適用すれば、近赤外線によって光学的歪曲が発生するのを減らすか防止することができる。
【0172】
以下、本発明の好ましい実施例を記載する。但し、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例
【0173】
(合成例)
合成例1:化学式3-1-1で表されるコア-シェル染料の合成
(1)化合物A-1の合成
【0174】
【化34】
【0175】
1,8-diaminonaphthalene(6mmol)と2-octanone(6mmol)、p-toluenesulfonic acid(0.6mmol)、およびtolueneを丸底フラスコ(Round flask)に入れて還流(reflux)する。約15時間後、ethyl acetate(EA)および水で数回洗浄する。減圧蒸留後、カラムクロマトグラフィーで分離して前記化合物A-1を中間体として得た。
【0176】
(2)化合物A-2の合成
【0177】
【化35】
【0178】
前記化合物A-1(5mmol)、Sodium bicarbonate(25mmol)、Iodo metane(12.5mmol)、およびDMFを丸底フラスコ(Round flask)に入れて50℃で4時間攪拌後、ethyl acetate(EA)および水で数回洗浄する。減圧蒸留後、カラムクロマトグラフィーで分離して前記化合物A-2を中間体として得た。
【0179】
(3)化合物A-3の合成
【0180】
【化36】
【0181】
前記化合物A-2(10mmol)および3,4-Dihydroxy-cyclobut-3-ene-1,2-dione(5mmol)をトルエンおよびブタノールに入れ還流して生成される水をDean-stark蒸留装置で除去する。12時間攪拌後、反応物を減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで精製して前記化合物A-3を中間体として得た。
【0182】
(3)化学式3-1-1で表されるコア-シェル染料の合成
前記化合物A-3(5mmol)をクロロホルム溶媒に溶かした後、Isophthaloyl chloride(20mmol)およびp-xylylenediamine(20mmol)をクロロホルムに溶解して、常温で5時間同時滴下させる。12時間後、減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して下記化学式3-1-1で表されるコア-シェル染料を得た。
【0183】
【化37】
【0184】
合成例2:化学式4-1-1で表されるコア-シェル染料の合成
前記化合物A-3(5mmol)をクロロホルム溶媒に溶かした後、Isophthaloyl chloride(20mmol)、tetrafluoro-p-xylylenediamine(20mmol)をクロロホルムに溶解して、常温で5時間同時滴下させる。12時間後、減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して下記化学式4-1-1で表されるコア-シェル染料を得た。
【0185】
【化38】
【0186】
合成例3:化学式5-1-1で表されるコア-シェル染料の合成
前記化合物A-3(5mmol)をクロロホルム溶媒に溶かした後、Pyridine-2,6-dicarbonyl dichloride(20mmol)およびp-xylylenediamine(20mmol)をクロロホルムに溶解して、常温で5時間同時滴下させる。12時間後、減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して下記化学式5-1-1で表されるコア-シェル染料を得た。
【0187】
【化39】
【0188】
合成例4:化学式6-1-1で表されるコア-シェル染料の合成
前記化合物A-3(5mmol)をクロロホルム溶媒に溶かした後、Pyridine-2,6-dicarbonyl dichloride(20mmol)、tetrafluoro-p-xylylenediamine(20mmol)をクロロホルムに溶解して、常温で5時間同時滴下させる。12時間後、減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して下記化学式6-1-1で表されるコア-シェル染料を得た。
【0189】
【化40】
【0190】
合成例5:化学式6-2-1で表されるコア-シェル染料の合成
(1)化合物B-1の合成
【0191】
【化41】
【0192】
前記化合物A-1の合成法で2-octanoneを3,4-dimethylcyclohexanoneに変更し、この他には前記化合物A-1の合成法と同一に合成した。
【0193】
(2)化合物B-2の合成
【0194】
【化42】
【0195】
前記化合物A-2の合成法で化合物A-1を化合物B-1に変更し、この他には前記化合物A-2の合成法と同一に合成した。
【0196】
(3)化合物B-3の合成
【0197】
【化43】
【0198】
前記化合物A-3の合成法で化合物A-2を化合物B-2に変更し、この他には前記化合物A-3の合成法と同一に合成した。
【0199】
(4)化学式6-2-1で表されるコア-シェル染料の合成
前記化合物B-3(5mmol)をクロロホルム溶媒に溶かした後、Pyridine-2,6-dicarbonyl dichloride(20mmol)、tetrafluoro-p-xylylenediamine(20mmol)をクロロホルムに溶解して、常温で5時間同時滴下させる。12時間後、減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して下記化学式6-2-1で表されるコア-シェル染料を得た。
【0200】
【化44】
【0201】
合成例6:化学式6-3-1で表されるコア-シェル染料の合成
(1)化合物C-1の合成
【0202】
【化45】
【0203】
前記化合物A-2の合成法でiodo methaneをiodo benzeneに変更し、この他には前記化合物A-2の合成法と同一に合成した。
【0204】
(2)化合物C-2の合成
【0205】
【化46】
【0206】
前記化合物A-3の合成法で化合物A-2を化合物C-1に変更し、この他には前記化合物A-3の合成法と同一に合成した。
【0207】
(4)化学式6-3-1で表されるコア-シェル染料の合成
前記化合物C-2(5mmol)をクロロホルム溶媒に溶かした後、Pyridine-2,6-dicarbonyl dichloride(20mmol)、tetrafluoro-p-xylylenediamine(20mmol)をクロロホルムに溶解して、常温で5時間同時滴下させる。12時間後、減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して下記化学式6-3-1で表されるコア-シェル染料を得た。
【0208】
【化47】
【0209】
合成例7:化学式6-3-2で表されるコア-シェル染料の合成
(1)化合物D-1の合成
【0210】
【化48】
【0211】
前記化合物A-2の合成法でiodo methaneを4-iodophenolに変更し、この他には前記化合物A-2の合成法と同一に合成した。
【0212】
(2)化合物D-2の合成
【0213】
【化49】
【0214】
前記化合物D-1(20mmol)をdichloromethane溶媒に溶かした後、triethylamine(50mmol)を入れてN2 chargeおよびice bathで内部を冷却する。冷却後、methacryloyl chloride(45mmol)をdrop wiseして投入する。0℃から常温まで約2時間攪拌させる。2時間後、MCで抽出する。減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して前記化合物D-2を中間体として得た。
【0215】
(3)化合物D-3の合成
【0216】
【化50】
【0217】
前記化合物A-3の合成法で化合物A-2を化合物D-3に変更し、この他には前記化合物A-3の合成法と同一に合成した。
【0218】
(4)化学式6-3-2で表されるコア-シェル染料の合成
前記化合物D-3(5mmol)をクロロホルム溶媒に溶かした後、Pyridine-2,6-dicarbonyl dichloride(20mmol)、tetrafluoro-p-xylylenediamine(20mmol)をクロロホルムに溶解して、常温で5時間同時滴下させる。12時間後、減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して下記化学式6-3-2で表されるコア-シェル染料を得た。
【0219】
【化51】
【0220】
合成例8:化学式6-3-3で表されるコア-シェル染料の合成
(1)化合物E-1の合成
【0221】
【化52】
【0222】
前記化合物D-1(10mmol)をDMF溶媒に溶かした後、imidazole(30mmol)、入れて常温で30分間攪拌する。Tert-butyldimethylsilyl chloride(25mmol)を入れて3時間40℃で攪拌させる。Ethyl acetate/水で数回洗浄後、減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して前記化合物E-1を中間体として得た。
【0223】
(2)化合物E-2の合成
【0224】
【化53】
【0225】
前記化合物A-3の合成法で化合物A-2を化合物E-1に変更し、この他には前記化合物A-3の合成法と同一に合成した。
【0226】
(3)化合物B-3の合成
【0227】
【化54】
【0228】
前記化合物E-2(5mmol)をクロロホルム溶媒に溶かした後、Pyridine-2,6-dicarbonyl dichloride(20mmol)、tetrafluoro-p-xylylenediamine(20mmol)をクロロホルムに溶解して、常温で5時間同時滴下させる。12時間後、減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して前記化合物E-3を中間体として得た。
【0229】
(4)化合物E-4の合成
【0230】
【化55】
【0231】
前記化合物E-3(5mmol)をtetrahydrofuran溶媒に溶かした後、tetrabutylammonium fluoride(11mmol)を常温で投入する。30分後、カラムクロマトグラフィーで分離して前記化合物E-4を中間体として得た。
【0232】
(4)化学式6-3-3で表されるコア-シェル染料の合成
前記化合物E-4(5mmol)、KOH(25mmol)、epichlorohydrin(50mmol)を25mL Dimethyl sulfoxide溶媒で2時間反応させた後、10% NHCl水溶液とethyl acetateを用いて抽出する。カラムクロマトグラフィーで分離して下記化学式6-3-3で表されるコア-シェル染料を得る。
【0233】
【化56】
【0234】
合成例9:化学式6-4-1で表されるコア-シェル染料の合成
(1)化合物F-1の合成
【0235】
【化57】
【0236】
1,8-diaminonaphthalene(6mmol)と1-phenyl-2butanone(6mmol)、p-toluene sulfonic acid(0.6mmol)およびtolueneを丸底フラスコ(Round flask)に入れて還流(reflux)する。約15時間後、ethyl acetate(EA)および水で数回洗浄する。減圧蒸留後、カラムクロマトグラフィーで分離して前記化合物F-1を中間体として得た。
【0237】
(2)化合物F-2の合成
【0238】
【化58】
【0239】
前記化合物A-2の合成法で化合物A-1を化合物F-1に変更し、この他には前記化合物A-2の合成法と同一に合成した。
【0240】
(3)化合物F-3の合成
【0241】
【化59】
【0242】
前記化合物A-3の合成法で化合物A-2を化合物F-2に変更し、この他には前記化合物A-3の合成法と同一に合成した。
【0243】
(4)化学式6-4-1で表されるコア-シェル染料の合成
前記化合物F-2(5mmol)をクロロホルム溶媒に溶かした後、Pyridine-2,6-dicarbonyl dichloride(20mmol)、tetrafluoro-p-xylylenediamine(20mmol)をクロロホルムに溶解して、常温で5時間同時滴下させる。12時間後、減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して下記化学式6-4-1で表されるコア-シェル染料を得た。
【0244】
【化60】
【0245】
比較合成例1:化学式Gで表されるコア単独含有染料の合成
(1)化合物G-1の合成
【0246】
【化61】
【0247】
N-methylaniline(6mmol)と2-octanone(6mmol)、p-toluenesulfonic acid(0.6mmol)およびtolueneを丸底フラスコ(Round flask)に入れて還流(reflux)する。約15時間後、ethyl acetate(EA)および水で数回洗浄する。減圧蒸留後、カラムクロマトグラフィーで分離して前記化合物G-1を中間体として得た。
【0248】
(2)化学式Gで表されるコア単独含有染料の合成
中間体A-3合成法で中間体A-2を中間体G-1に変更したこと以外は同一に合成して下記化学式Gで表されるコア単独の染料を得た。
【0249】
【化62】
【0250】
比較合成例2:化学式Hで表されるコア-シェル染料の合成
前記化合物A(5mmol)をクロロホルム溶媒に溶かした後、Isophthaloyl chloride(20mmol)、p-xylylenediamine(20mmol)をクロロホルムに溶解して、常温で5時間同時滴下させる。12時間後、減圧蒸留しカラムクロマトグラフィーで分離して下記化学式Hで表される化合物を得た。
【0251】
【化63】
【0252】
(近赤外線吸収性樹脂組成物製造)
近赤外線吸収性樹脂組成物製造に使用される成分の仕様は次の通りである。
【0253】
(A)着色剤
(A-1)合成例1で製造されたコア-シェル染料(化学式3-1-1)
(A-2)合成例2で製造されたコア-シェル染料(化学式4-1-1)
(A-3)合成例3で製造されたコア-シェル染料(化学式5-1-1)
(A-4)合成例4で製造されたコア-シェル染料(化学式6-1-1)
(A-5)合成例5で製造されたコア-シェル染料(化学式6-2-1)
(A-6)合成例6で製造されたコア-シェル染料(化学式6-3-1)
(A-7)合成例7で製造されたコア-シェル染料(化学式6-3-2)
(A-8)合成例8で製造されたコア-シェル染料(化学式6-3-3)
(A-9)合成例9で製造されたコア-シェル染料(化学式6-4-1)
(A-10)比較合成例1で製造されたコア-シェル染料(化学式G)
(A-11)比較合成例2で製造されたコア-シェル染料(化学式H)
(A-12)下記顔料C.I、Pigment green 7
【0254】
【化64】
【0255】
(B)バインダー樹脂
重量平均分子量が22,000g/molであるメタクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体(混合重量比15wt%/85wt%)
(C)溶媒
(C-1)シクロヘキサノン
(C-2)プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
実施例1~実施例8および比較例1~比較例3
下記表1~表3の組成で各成分を混合して感光性樹脂組成物を製造した。具体的には、溶媒に着色剤を投入して30分間攪拌した後、バインダー樹脂を添加して2時間常温で攪拌した。前記溶液に対して3回にわたるろ過を行って不純物を除去し、近赤外線吸収性樹脂組成物を得た。
【0256】
【表1】
【0257】
【表2】
【0258】
【表3】
【0259】
(評価)
評価1:波長整合性評価
実施例1~実施例8および比較例1~比較例3で製造された近赤外線吸収性樹脂組成物を用いて光学フィルタ試片を製造した。
【0260】
具体的に、脱脂洗浄した厚さ1mmのガラス基板上に、前記各近赤外線吸収性樹脂組成物を1μm~3μmの厚さで塗布し、90℃のホットプレート上で2分間乾燥させて、近赤外線吸収性フィルムが形成された光学フィルタ試片を得た。
【0261】
前記各光学フィルタ試片の波長整合性は最大吸収波長(λmax)を通じて確認することにした。具体的に、Shimadzu UV-3600 Plus UV-Vis-NIR分光器(UV-Vis-NIR spectrometer)を使用して、前記各光学フィルタ試片の最大吸収波長(λmax)を確認すると同時にその波長での吸光強さを測定した。この時測定された最大吸収波長を下記表4に記載した。
【0262】
【表4】
【0263】
上記表4によれば、比較例1~比較例3の染料に対比して、実施例1~実施例8のコア-シェル染料は近赤外線吸収に適したことが分かる。具体的に、実施例1~実施例8のコア-シェル染料は、前記化学式1で表されるコアを含む。前記化学式1で表されるコアは、スクアレン(Squarine、SQ)系化合物内アニリンモイエティ(aniline moiety)をジアミンナフタレンモイエティ(diamine naphthalene moiety)で代替した構造の化合物であって、スクアレン系化合物に対比して最大吸収ピークが長波長領域に移動できる。
【0264】
よって、前記化学式1で表されるコアを含む実施例1~実施例8のコア-シェル染料は、一般に知られたグリーン顔料(比較例3)はもちろん、アニリンモイエティを含むスクアレン系化合物コア(比較例1)またはコア-シェル化合物(比較例2)に対比して近赤外線吸収に適したものである。
【0265】
一方、実施例1~実施例8では、コアの構造による影響は大同小異であるが、シェルへのハロゲン基(具体的に、F)の導入有無によって最大吸収波長が変わる。
【0266】
具体的に、前記コアの構造が同一な時、前記シェルにハロゲン基を導入すれば、約20nm程度長波長領域に移動して、近赤外線吸収波長帯域への整合性をさらに優れるように実現することができる。
【0267】
但し、前記シェルにハロゲン基を導入することは選択的である。
【0268】
要するに、一実施形態のコア-シェル染料は、前記化学式1で表されるコア単独による効果;または前記化学式1で表されるコアおよび前記化学式2で表されるシェルの上昇効果として、近赤外線吸収波長帯域への整合性が優れるように示される。
【0269】
評価2:耐光性および耐化学性評価
(1)耐光性評価:評価1と同じ条件で得られた光学フィルタ試片に対して、365nmの主波長を有する高圧水銀ランプを使用して露光した後、230℃のオーブンで60分間乾燥させた。
【0270】
前記のような露光処理後の基板に対して、前述の方法で最大吸収波長(λmax)で吸光強さを測定した。この測定値と評価1の測定値を下記数式1に代入して耐光性を数値化し、その結果を下記表5に示した。
【0271】
【数2】
【0272】
(2)耐化学性評価:評価1と同じ条件で得られた光学フィルタ試片に対して、常温でNMP(N-メチルピロリドン)溶液に10分間浸漬させた。
【0273】
前記のような化学的処理後の基板に対して、前述の方法で最大吸収波長(λmax)で吸光強さを測定した。この測定値と評価1の測定値を下記数式2に代入して耐化学性を数値化し、その結果を下記表5に示した。
【0274】
【数3】
【0275】
(3)耐熱性評価:評価1と同じ条件で得られた光学フィルタ試片に対して、コンベクションオーブンを用いて230℃で60分間処理した。
【0276】
前記のような高温処理後の基板に対して、前述の方法で最大吸収波長(λmax)で吸光強さを測定した。この測定値と評価1の測定値を下記数式3に代入して耐熱性を数値化し、その結果を下記表5に示した。
【0277】
【数4】
【0278】
【表5】
【0279】
上記表5によれば、実施例1~実施例8のコア-シェル染料は、比較例1に対比して耐久性(耐光性、耐化学性および耐熱性)が顕著に向上したことが確認される。具体的に、コアのみから構成された比較例1および比較例2の各染料に対比して、実施例1~実施例8のコア-シェル染料は前記化学式2で表されるシェルをさらに含むことによって、前記化学式1で表されるコアの不足した耐久性を補完することができる。
【0280】
一方、比較例2の染料はコア-シェル構造であって、コアのみから構成された比較例1の染料に対比して耐久性(耐光性、耐化学性、および耐熱性)が向上した。
【0281】
但し、実施例1~実施例8のコア-シェル染料は、スクアレン(Squarine、SQ)系化合物内アニリンモイエティ(aniline moiety)をジアミンナフタレンモイエティ(diamine naphthalene moiety)で代替した構造の化合物であって、比較例2よりも耐久性(耐光性、耐化学性 および耐熱性)が向上した。
【0282】
実施例1~実施例8では、シェルの構造による影響は大同小異であるが、コアへのエポキシ基および/または(メタ)アクリレート基導入有無によって耐久性が変わる。
【0283】
具体的に、前記(メタ)アクリレート基は耐熱性向上に寄与する官能基であり、前記*-O-*(エポキシ)基は耐化学性向上に寄与する官能基である。よって、前記Rが非置換である場合に対比して、一つ以上の(メタ)アクリレート基、*-O-*(エポキシ)基、またはこれらの組み合わせによって置換される場合、前記コアの耐化学性、耐熱性などが適切に向上できる。
【0284】
本発明は前記実施例に限定されるわけではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態に実施可能であるということが理解できるはずである。したがって、以上で述べた実施例は全ての面で例示的なものであり限定的ではないと理解しなければならない。
図1
【国際調査報告】