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特表2024-511398ファセットシステム及びリソグラフィ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ファセットシステム及びリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 502
G03F7/20 503
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557424
(86)(22)【出願日】2022-03-21
(85)【翻訳文提出日】2023-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2022057388
(87)【国際公開番号】W WO2022200294
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021202768.7
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ アメリン
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197BA10
2H197CA06
2H197CA10
2H197CB04
2H197CB16
2H197CB26
2H197DA04
2H197DA09
2H197DB05
2H197GA01
2H197GA11
2H197GA23
2H197HA03
(57)【要約】
リソグラフィ装置(100A、100B)用のファセットシステム(300A、300B、300C)であって、光学有効面(306)を有するファセット素子(304)と、第1空間方向(x)を軸としてファセット素子(304)を傾斜させる第1ピエゾアクチュエータ装置(364)と、第1空間方向(x)に対して直角の向きの第2空間方向(y)を軸としてファセット素子(304)を傾斜させる第2ピエゾアクチュエータ装置(366)とを備え、第1ピエゾアクチュエータ装置(364)及び第2ピエゾアクチュエータ装置(366)は、第1空間方向(x)及び第2空間方向(y)が張る共通の平面(E)に配置されるファセットシステム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置(100A、100B)用のファセットシステム(300A、300B、300C)であって、
光学有効面(306)を有するファセット素子(304)と、
第1空間方向(x)を軸として前記ファセット素子(304)を傾斜させる第1ピエゾアクチュエータ装置(364)と、
前記第1空間方向(x)に対して直角の向きの第2空間方向(y)を軸として前記ファセット素子(304)を傾斜させる第2ピエゾアクチュエータ装置(366)と
を備え、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)及び前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)は、前記第1空間方向(x)及び前記第2空間方向(y)が張る共通の平面(E)に配置されるファセットシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)及び/又は前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)は、前記光学有効面(306)に対して直角の向きの第3空間方向(z)の前記ファセット素子(304)のストローク運動(H1、H2)を行うよう構成されるファセットシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)は、2つの反対向きの傾斜運動(K1、K2)で前記第1空間方向(x)を軸として前記ファセット素子(304)を選択的に傾斜させるよう構成された少なくとも2つのピエゾアクチュエータ(308、312)を含むファセットシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のファセットシステムにおいて、前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)は、2つの反対向きの傾斜運動(K3、K4)で前記第2空間方向(y)を軸として前記ファセット素子(304)を選択的に傾斜させるよう構成された少なくとも2つのピエゾアクチュエータ(310、314)を含むファセットシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)の前記ピエゾアクチュエータ(308、312)及び前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)のピエゾアクチュエータ(310、314)は、並んで配置されるファセットシステム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)の前記ピエゾアクチュエータ(308、312)及び前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)のピエゾアクチュエータ(310、314)は、交互に配置されるファセットシステム。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)の前記ピエゾアクチュエータ(308、312)は、相互に平行に且つ相互に離れて配置され、前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)の前記ピエゾアクチュエータ(310、314)も同様に、相互に平行に且つ相互に離れて配置されるファセットシステム。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1項に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)の前記ピエゾアクチュエータ(308、312)及び前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)の前記ピエゾアクチュエータ(310、314)は、相互に対して直角に配置されるファセットシステム。
【請求項9】
請求項4~8のいずれか1項に記載のファセットシステムにおいて、第1ピエゾアクチュエータ(308)、第2ピエゾアクチュエータ(310)、第3ピエゾアクチュエータ(312)、及び第4ピエゾアクチュエータ(314)をさらに備え、前記第1ピエゾアクチュエータ(308)及び前記第3ピエゾアクチュエータ(312)は、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)に割り当てられ、前記第2ピエゾアクチュエータ(310)及び前記第4ピエゾアクチュエータ(314)は、前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)に割り当てられるファセットシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のファセットシステムにおいて、基板(302)をさらに備え、前記第1ピエゾアクチュエータ(308)のみが前記基板(302)に接続されるファセットシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ(308)は、前記基板(302)及び前記第2ピエゾアクチュエータ(310)のみに接続され、該第2ピエゾアクチュエータ(310)は、前記第1ピエゾアクチュエータ(308)及び前記第3ピエゾアクチュエータ(312)のみに接続され、該第3ピエゾアクチュエータ(312)は、前記第2ピエゾアクチュエータ(310)及び前記第4ピエゾアクチュエータ(314)のみに接続され、該第4ピエゾアクチュエータ(314)は、前記第3ピエゾアクチュエータ(312)及び前記ファセット素子(304)のみに接続されるファセットシステム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のファセットシステムにおいて、前記ファセット素子(304)は、平面視で正方形であるファセットシステム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のファセットシステムにおいて、センサ(356、358、360、362)が、該ファセットシステム(300A、300B、300C)に組み込まれるファセットシステム。
【請求項14】
リソグラフィ装置(100A、100B)であって、請求項1~13のいずれか1項に記載のファセットシステム(300A、300B、300C)を備えたリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィ装置のファセットシステム及び当該ファセットシステムを備えたリソグラフィ装置に関する。
【0002】
先願である独国特許出願第10 2021 202 768.7号の内容の全体を参照により援用する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィは、例えば集積回路等の微細構造コンポーネントの製造に用いられる。マイクロリソグラフィプロセスは、照明系及び投影系を有するリソグラフィ装置を用いて実行される。この場合、照明系により照明されたマスク(レチクル)の像を、投影系により、感光層(フォトレジスト)で被覆されて投影系の像平面に配置された基板、例えばシリコンウェーハに投影することで、マスク構造を基板の感光コーティングに転写するようにする。
【0004】
集積回路の製造における構造のさらなる小型化が望まれることにより、0.1nm~30nmの範囲、特に13.5nmの波長を有する光を用いるEUVリソグラフィ装置(極紫外線、EUV)が現在開発中である。このようなEUVリソグラフィ装置の場合、ほとんどの材料がこの波長の光に対して高い吸収を示すので、以前のような屈折光学ユニット、すなわちレンズ素子の代わりに、反射光学ユニット、すなわちミラーを用いなければならない。当該ミラーは、略垂直入射で又は斜入射で動作する。
【0005】
照明系は、特に、視野ファセットミラー及び瞳ファセットミラーを備える。視野ファセットミラー及び瞳ファセットミラーは、いわゆるファセットミラーの形態とすることができ、このようなファセットミラーは、それぞれ数百個ものファセットを有することが多い。視野ファセットミラーのファセットは、「視野ファセット」とも称し、瞳ファセットミラーのファセットは、「瞳ファセット」とも称する。複数の瞳ファセットを1つの視野ファセットに割り当てることができる。高開口数と共に良好な照明を得るために、上記1つの視野ファセットをそれに割り当てられた瞳ファセット間で切り替えることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
こうした背景から、本発明の目的は、改良された視野ファセットシステムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、リソグラフィ装置用の視野ファセットシステムが提案される。視野ファセットシステムは、光学有効面を有するファセット素子と、第1空間方向を軸としてファセット素子を傾斜させる第1ピエゾアクチュエータ装置と、第1空間方向に対して直角の向きの第2空間方向を軸としてファセット素子を傾斜させる第2ピエゾアクチュエータ装置とを備え、第1ピエゾアクチュエータ装置及び第2ピエゾアクチュエータ装置は、第1空間方向及び第2空間方向が張る共通の平面に配置される。
【0008】
第1ピエゾアクチュエータ装置及び第2ピエゾアクチュエータ装置が設けられる結果として、第1空間方向及び第2空間方向の両方を軸としてファセット素子を傾斜させることができる。第1ピエゾアクチュエータ装置及び第2ピエゾアクチュエータ装置を適切に作動させることにより、第1空間方向及び第2空間方向を軸とした複合傾斜を得ることができる。これにより、ファセット素子を任意の数の異なる傾斜位置に切り替えることができる。
【0009】
ファセットシステムは、視野ファセットシステム又は瞳ファセットシステムを含むことができる。ファセットシステムは、鏡面反射器の一部とすることもできる。ファセット素子は、視野ファセット素子又は瞳ファセット素子であり得る。ファセットシステムは、特にリソグラフィ装置のビーム整形・照明系の一部である。特に、ファセットシステムは、ファセットミラー、特に視野ファセットミラーの一部である。このようなファセットミラーは、碁盤目状又はパターンの形状に配置された複数の上記ファセットシステムを含むことが好ましい。すなわち、ファセットシステムは、行列状に相互に上下左右に配置されることが好ましい。このような視野ファセットミラーは、任意の数のファセットシステムを含み得る。例として、視野ファセットミラーは、数十万個のファセットシステムを含み得る。各ファセット素子は、単独で複数の異なる傾斜位置に傾斜することができる。
【0010】
第1空間方向又はx方向、第2空間方向又はy方向、及び第3空間方向又はz方向を有する座標系が、ファセットシステムに割り当てられる。空間方向は、相互に対して直角に位置決めされる。第3空間方向は、光学有効面に対して直角の向きとすることができる。第1空間方向及び第2空間方向は、光学有効面と平行な向きとすることができる。
【0011】
ファセット素子は、ミラー基板又は基板から製造される。基板は、特にシリコンを含み得る。光学有効面は、ファセット素子の前面、すなわちピエゾアクチュエータ装置とは反対側に設けられる。光学有効面は光を反射する。光学有効面はミラー面とすることができる。光学有効面は、ファセット素子に塗布されたコーティングを用いて作ることができる。特に、ファセット素子自体は光に対して不透明である。光学有効面は、使用光又は光、特にEUV放射線を反射するのに適している。しかしながら、これは、光の少なくとも一部がファセット素子に吸収される結果として熱がファセット素子に導入されることを妨げない。
【0012】
特に、第1ピエゾアクチュエータ装置は、光学有効面と平行な向きであることが好ましい第1空間方向を軸としてファセット素子を傾斜させる働きをする。したがって、第2ピエゾアクチュエータ装置は、特に、光学有効面と平行且つ第1空間方向に対して直角の向きであることが好ましい第2空間方向を軸としてファセット素子を傾斜させる働きをする。光学有効面は平面であることが好ましい。しかしながら、光学有効面は曲面とすることもできる。例として、光学有効面は円柱状又はトロイダル状とすることができる。
【0013】
ピエゾアクチュエータ装置は、ピエゾ素子装置又はピエゾ作動素子装置と称することもできる。この場合、「ピエゾアクチュエータ」又は「ピエゾ素子」は、電圧の印加の結果として機械的運動を実行するためにいわゆるピエゾ効果を利用するコンポーネントを意味すると理解されたい。用語「ピエゾアクチュエータ」及び「ピエゾ素子」は、所望に応じて交換可能である。各ピエゾアクチュエータ装置は、複数のピエゾアクチュエータを含み得る。好ましくは2つのピエゾアクチュエータが、各ピエゾアクチュエータ装置に割り当てられる。ピエゾアクチュエータは、いわゆる曲げトランスデューサであるか、又はそのように称することができる。
【0014】
平面視で、すなわち光学有効面に対して直角の視線方向で、ファセット素子は、第1ピエゾアクチュエータ装置及び第2ピエゾアクチュエータ装置の両方を完全に隠す。すなわち、ファセットシステムに入射した光は、光学有効面のみに入射して、例えばピエゾアクチュエータ装置等のファセットシステムのさらに他のコンポーネントには入射しないことが好ましい。その結果として、ファセット素子又は光学有効面の高い充填度を得ることができる。
【0015】
特に、第1ピエゾアクチュエータ装置は、第1空間方向を軸として又は第1空間方向と平行な向きの軸周りにのみファセット素子を枢動又は傾斜させるのに適している。したがって、第2ピエゾアクチュエータ装置は、第2空間方向を軸として又は第2空間方向と平行な向きの軸回りにのみファセット素子を傾斜させるのに適している。第1ピエゾアクチュエータ装置及び第2ピエゾアクチュエータ装置を用いて、ファセット素子の任意の数の傾斜状態又は傾斜位置を設定することができる。
【0016】
好ましくは、ファセットシステムは、ピエゾアクチュエータ装置又はピエゾアクチュエータ装置に割り当てられたピエゾアクチュエータを作動させるのに適した制御ユニットを備える。作動のために電圧が各ピエゾアクチュエータに印加される。電圧の印加により、各ピエゾアクチュエータは、ファセット素子を傾斜させるために変形する。この場合、各ピエゾアクチュエータを、非変形又は非撓み状態から変形又は撓み状態に変えることができる。非撓み状態と撓み状態との間に任意の数の中間状態を設けることができる。すなわち、ピエゾアクチュエータは、非撓み状態と撓み状態との間で連続的に変形させるか又は撓ませることができる。
【0017】
一実施形態によれば、第1ピエゾアクチュエータ装置及び/又は第2ピエゾアクチュエータ装置は、光学有効面に対して直角の向きの第3空間方向のファセット素子のストローク運動を行うよう構成される。
【0018】
これにより、さらなる自由度が得られる。ファセット素子は、結果として少なくとも3つの自由度、具体的には第1空間方向を軸とした回転自由度、第2空間方向を軸とした回転自由度、及び第3空間方向の並進自由度を有する。ファセット素子にストローク運動を実行させるために、各ピエゾアクチュエータ装置に割り当てられたピエゾアクチュエータは、同時に作動されると共に、第3空間方向のストローク運動が生じるように同程度に撓ませられる。ファセット素子の複合ストローク・傾斜運動を実行することもできる。光学有効面が湾曲している場合、第3空間方向は、例えば光学有効面の頂点に対して直角の向きであり得る。
【0019】
第1ピエゾアクチュエータ装置及び第2ピエゾアクチュエータ装置は、第1空間方向及び第2空間方向が張る共通の平面に配置される。
【0020】
共通の平面は、第1空間方向及び第2空間方向が張る平面と平行に配置されることもできる。例として、ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータの下面又は上面は、全てが共通の平面に配置される。ピエゾアクチュエータの1つが作動されるか又は電流を印加されるとすぐに、上記ピエゾアクチュエータは共通の平面外に変形し、結果としてファセット素子が傾斜する。
【0021】
さらに別の実施形態によれば、第1ピエゾアクチュエータ装置は、2つの反対向きの傾斜運動で第1空間方向を軸としてファセット素子を選択的に傾斜させるよう構成された少なくとも2つのピエゾアクチュエータを含む。
【0022】
傾斜運動は、傾斜方向とも称し得る。例として、傾斜運動は、第1空間方向を軸として時計回り及び反時計回りの向きであり得る。例として、第1傾斜運動が半時計回りの向きであり、第2傾斜運動が時計回りの向きである。例として、ファセット素子は、結果として例えば100mradの傾斜角で傾斜することができる。第1ピエゾアクチュエータ装置の両方のピエゾアクチュエータを同時に作動させると共に同程度に撓ませた場合、ファセット素子は上記ストローク運動を実行する。前述のように、傾斜運動及びストローク運動の組合せも実行され得る。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、第2ピエゾアクチュエータ装置は、2つの反対向きの傾斜運動で第2空間方向を軸としてファセット素子を選択的に傾斜させるよう構成された少なくとも2つのピエゾアクチュエータを含む。
【0024】
傾斜運動は、第2空間方向を軸として時計回り及び反時計回りの向きであり得る。例として、時計回りの向きの第3傾斜運動及び反時計回りの向きの第4傾斜運動が設けられる。第1傾斜運動及び第2傾斜運動は、第3傾斜運動及び第4傾斜運動に対して直角の向きである。前述のように、傾斜運動は傾斜方向とも称し得る。
【0025】
さらに別の実施形態によれば、第1ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータ及び第2ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータは、並んで配置される。
【0026】
特に、これは、全てのピエゾアクチュエータが前後に並べられることを意味する。好ましくは、第1ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータ及び第2ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータは、同一の構成である。特に、ピエゾアクチュエータは、圧電曲げトランスデューサとして知られるものであり、電流を印加されると長さは変わらないが曲率が変わる。
【0027】
さらに別の実施形態によれば、第1ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータ及び第2ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータは、交互に配置される。
【0028】
特に、これは、第1ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータが第2ピエゾアクチュエータ装置の2つのピエゾアクチュエータ間にそれぞれ配置され、逆もまた同様であることを意味する。好ましくは、第1ピエゾアクチュエータ、第2ピエゾアクチュエータ、第3ピエゾアクチュエータ、及び第4ピエゾアクチュエータが設けられ、第2ピエゾアクチュエータは、第1ピエゾアクチュエータと第3ピエゾアクチュエータとの間に配置される。特に、第3ピエゾアクチュエータは、第2ピエゾアクチュエータと第4ピエゾアクチュエータとの間に配置される。
【0029】
さらに別の実施形態によれば、第1ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータは、相互に平行に且つ相互に離れて配置され、第2ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータも同様に、相互に平行に且つ相互に離れて配置される。
【0030】
特に、第1ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータは、第2空間方向に見た場合に相互に離れて且つ相互に平行に配置される。したがって、第2ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータは、第1空間方向に見た場合に相互に平行に且つ相互に離れて配置される。特に、ピエゾアクチュエータは、細長い棒状又は帯状のコンポーネントの形態である。ピエゾアクチュエータは、主延在方向又は長手方向に沿って最大の幾何学的広がりを有する。第1ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータは、特に、それらの主延在方向が第1空間方向に延びるように配置される。したがって、第2ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータは、それらの主延在方向が第2空間方向に延びるように配置される。
【0031】
さらに別の実施形態によれば、第1ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータ及び第2ピエゾアクチュエータ装置のピエゾアクチュエータは、相互に対して直角に配置される。
【0032】
したがって、これにより、ピエゾアクチュエータの螺旋状又は渦巻状の配置が得られる。特に、前述のように、第1ピエゾアクチュエータ、第2ピエゾアクチュエータ、第3ピエゾアクチュエータ、及び第4ピエゾアクチュエータが設けられる。この場合、第2ピエゾアクチュエータは、第1ピエゾアクチュエータに対して直角に配置される。さらに、第3ピエゾアクチュエータは、第2ピエゾアクチュエータに対して直角に配置される。第4ピエゾアクチュエータは、第3ピエゾアクチュエータに対して直角に配置される。第1ピエゾアクチュエータ及び第3ピエゾアクチュエータは、第1ピエゾアクチュエータ装置に割り当てられる。したがって、第2ピエゾアクチュエータ及び第4ピエゾアクチュエータは、第2ピエゾアクチュエータ装置に割り当てられる。この場合、「直角に」は、ピエゾアクチュエータの上記主延在方向が相互に対して直角になることを意味すると理解されたい。この場合、「直角に」は、90°±10°、好ましくは90°±5°、より好ましくは90°±1°、より好ましくは正確に90°の角度を意味するとさらに理解されたい。
【0033】
さらに別の実施形態によれば、ファセットシステムは、第1ピエゾアクチュエータ、第2ピエゾアクチュエータ、第3ピエゾアクチュエータ、及び第4ピエゾアクチュエータをさらに備え、第1ピエゾアクチュエータ及び第3ピエゾアクチュエータは、第1ピエゾアクチュエータ装置に割り当てられ、第2ピエゾアクチュエータ及び第4ピエゾアクチュエータは、第2ピエゾアクチュエータ装置に割り当てられる。
【0034】
すなわち、第1ピエゾアクチュエータ装置は、第1ピエゾアクチュエータ及び第3ピエゾアクチュエータを含む。したがって、第2ピエゾアクチュエータ装置は、第2ピエゾアクチュエータ及び第4ピエゾアクチュエータを含む。ピエゾアクチュエータの数は任意であることが好ましい。しかしながら、特に、正確に4つのピエゾアクチュエータが設けられる。
【0035】
さらに別の実施形態によれば、ファセットシステムは、基板をさらに備え、第1ピエゾアクチュエータのみが基板に接続される。
【0036】
基板は、ファセットシステムの本体とも称され得る。基板は、シリコンからなることが好ましい。しかしながら、基板は、銅、特に銅合金、例えばインバー等の鉄-ニッケル合金、シリコン、又は他の何らかの適当な材料も含み得る。この場合、第1ピエゾアクチュエータ「のみ」が基板に接続されることは、第2~第4ピエゾアクチュエータが基板に接続固定されないことを意味する。特に、第2~第4ピエゾアクチュエータと基板との間にそれぞれギャップが設けられ得る。ピエゾアクチュエータ装置は、基板とファセット素子との間に配置される。
【0037】
さらに別の実施形態によれば、第1ピエゾアクチュエータは、基板及び第2ピエゾアクチュエータのみに接続され、第2ピエゾアクチュエータは、第1ピエゾアクチュエータ及び第3ピエゾアクチュエータのみに接続され、第3ピエゾアクチュエータは、第2ピエゾアクチュエータ及び第4ピエゾアクチュエータのみに接続され、第4ピエゾアクチュエータは、第3ピエゾアクチュエータ及びファセット素子のみに接続される。
【0038】
好ましくは、連結部位を有する棒状の接続部が第4ピエゾアクチュエータに設けられ、ファセット素子はそれに固定される。例として、ファセット素子は、連結部位に材料的に接続され得る。材料的な接続では、接続相手が原子間力又は分子力により繋ぎ合わせられる。材料的な接続は、接続手段及び/又は接続相手の破壊によってのみ分離できる解除不可能な接続である。材料的な接続は、例えば接着又ははんだ付けにより実施され得る。例として、ファセット素子は、任意の接合法を用いて連結部位に接続される。
【0039】
さらに別の実施形態によれば、ファセット素子は平面視で正方形である。
【0040】
この場合、「平面視」は、光学有効面に対して直角の視線方向を意味すると理解されたい。しかしながら、ファセット素子は、平面視で任意の他の所望の幾何学的形状も有し得る。例として、ファセット素子は、細長い矩形、円形、六角形、又は細長く円弧状に湾曲している。
【0041】
さらに別の実施形態によれば、ファセットシステムは一体的なコンポーネントである。
【0042】
この場合、「一体的」又は「一部品」は、ファセットシステムが複数の分離可能なコンポーネントから構成されるのではなく共通の又は一体的なコンポーネントを形成することを意味すると理解されたい。例として、ファセットシステムは、微小電気機械製造法(微小電気機械システム、MEMS)により実現することができる。この場合、複数のベース層から構成された3次元微細構造が、異なるコーティング法、微細構造化・エッチング技術、及び接合法を用いて実現される。例として、微細構造はシリコンからなり得る。例として、ピエゾアクチュエータは、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスに基づき得る。
【0043】
さらに別の実施形態によれば、センサがファセットシステムに組み込まれる。
【0044】
センサは、任意の数のセンサ、特に静電容量センサを含み得る。
【0045】
さらに、上記ファセットシステムを備えたリソグラフィ装置が提案される。
【0046】
リソグラフィ装置は、複数の上記ファセットシステムを備えることができる。リソグラフィ装置は、EUVリソグラフィ装置又はDUVリソグラフィ装置であり得る。EUVは「極紫外線」を意味し、0.1nm~30nmの使用光の波長を示す。DUVは「深紫外線」を意味し、30nm~250nmの使用光の波長を示す。
【0047】
この場合の「a(an)」は、厳密に1つの要素に制限するものと必ずしも理解すべきでない。正確には、複数の要素、例えば、2つ、3つ、又はそれ以上等を設けることもできる。ここで用いる他の数字はいずれも、記載の数の要素に厳密に制限されるという趣旨で理解すべきでもない。正確には、別途指示のない限り数の増減が可能である。
【0048】
ファセットシステムに関して記載した実施形態及び特徴は、提案されたリソグラフィ装置にも適宜当てはまり、またその逆でもある。
【0049】
本発明のさらに他の可能な実施態様は、例示的な実施形態に関して上述又は後述されている特徴又は実施形態の明記されていない組み合わせも含む。この場合、当業者であれば、個々の態様を改良又は補足として本発明の各基本形態に加えることもあろう。
【0050】
本発明のさらに他の有利な構成及び態様は、従属請求項の主題であり、後述する本発明の例示的な実施形態の主題でもある。好ましい実施形態に基づいて添付図面を参照して本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1A】EUVリソグラフィ装置の実施形態の概略図を示す。
図1B】DUVリソグラフィ装置の実施形態の概略図を示す。
図2図1A又は図1Bに示すリソグラフィ装置の光学装置の一実施形態の概略図を示す。
図3図1A又は図1Bに示すリソグラフィ装置の光学装置のさらに別の実施形態の概略図を示す。
図4図2に示す光学装置の視野ファセットミラーの一実施形態の概略平面図を示す。
図5図4の詳細図Vを示す。
図6図2に示す光学装置のさらに別の概略図を示す。
図7図2に示す光学装置及び図3に示す光学装置の光学系の実施形態の概略平面図を示す。
図8図7の断面線IIX-IIXに従った光学系の概略断面図を示す。
図9図7の断面線IX-IXに従った光学系の概略断面図を示す。
図10図7に示す光学系のピエゾアクチュエータの実施形態の概略断面図を示す。
図11図2に示す光学装置及び図3に示す光学装置の光学系のさらに別の実施形態の概略斜視図を示す。
図12図11に示す光学系のさらに別の概略斜視図を示す。
図13図2に示す光学装置及び図3に示す光学装置の光学系のさらに別の実施形態の概略斜視図を示す。
図14図13に示す光学系のさらに別の概略斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
別途指示のない限り、図中で同一の又は機能的に同一の要素には同じ参照符号を設けてある。図示は必ずしも一定の縮尺ではないことにも留意されたい。
【0053】
図1Aは、ビーム整形・照明系102及び投影系104を備えたEUVリソグラフィ装置100Aの概略図を示す。この場合、EUVは「極紫外線」を意味し、0.1nm~30nmの使用光の波長を示す。ビーム整形・照明系102及び投影系104は、それぞれが真空ハウジング(図示せず)内に設けられ、各真空ハウジングは排気デバイス(図示せず)を用いて真空引きされる。真空ハウジングは、光学素子を機械的に移動させる又は設定する駆動装置が設けられた機械室(図示せず)により囲まれる。さらに、電気コントローラ等を上記機械室内に設けることもできる。
【0054】
EUVリソグラフィ装置100Aは、EUV光源106Aを備える。EUV域(極紫外域)の、すなわち例えば5nm~20nmの波長域の放射線108Aを発するプラズマ源(又はシンクロトロン)を、例えばEUV光源106Aとして設けることができる。ビーム整形・照明系102において、EUV放射線108Aを集束させ、所望の作動波長をEUV放射線108Aからフィルタリングする。EUV光源106Aが発生したEUV放射線108Aは、空気中の透過率が比較的低く、こうした理由でビーム整形・照明系102及び投影系104の導光空間が真空引きされる。
【0055】
図1Aに示すビーム整形・照明系102は、5つのミラー110、112、114、116、118を有する。ビーム整形・照明系102の通過後に、EUV放射線108Aはフォトマスク(レチクルとも称する)120へ導かれる。フォトマスク120は、同様に反射光学素子として具現され、システム102、104の外部に配置され得る。さらに、EUV放射線108Aは、ミラー122によりフォトマスク120へ指向され得る。フォトマスク120は、投影系104により縮小されてウェーハ124等に結像される構造を有する。
【0056】
投影系104(投影レンズとも称する)は、フォトマスク120をウェーハ124に結像するために6個のミラーM1~M6を有する。この場合、投影系104の個々のミラーM1~M6は、投影系104の光軸126に関して対称に配置され得る。EUVリソグラフィ装置100AのミラーM1~M6の数は、図示の数に制限されないことに留意されたい。設けられるミラーM1~M6の数をより多くすることもより少なくすることもできる。さらに、ミラーM1~M6は、ビーム整形用に前面が概して湾曲している。
【0057】
図1Bは、ビーム整形・照明系102及び投影系104を備えたDUVリソグラフィ装置100Bの概略図を示す。この場合、DUVは「深紫外線」を意味し、30nm~250nmの使用光の波長を示す。図1Aを参照して既に記載したように、ビーム整形・照明系102及び投影系104は、対応する駆動デバイスを有する機械室により囲まれ得る。
【0058】
DUVリソグラフィ装置100Bは、DUV光源106Bを有する。例として、例えば193nmのDUV域の放射線108Bを発するArFエキシマレーザをDUV光源106Bとして設けることができる。
【0059】
図1Bに示すビーム整形・照明系102は、DUV放射線108Bをフォトマスク120へ導く。フォトマスク120は、透過光学素子として形成され、システム102、104の外部に配置され得る。フォトマスク120は、投影系104により縮小されてウェーハ124等に結像される構造を有する。
【0060】
投影系104は、フォトマスク120をウェーハ124に結像するために複数のレンズ素子128及び/又はミラー130を有する。この場合、投影系104の個々のレンズ素子128及び/又はミラー130は、投影系104の光軸126に関して対称に配置され得る。DUVリソグラフィ装置100Bのレンズ素子128及びミラー130の数は、図示の数に制限されないことに留意されたい。設けられるレンズ素子128及び/又はミラー130の数をより多くすることもより少なくすることもできる。さらに、ミラー130は、ビーム整形用に前面が概して湾曲している。
【0061】
最終レンズ素子128とウェーハ124との間の空隙は、屈折率が1を超える液体媒体132で置き換えることができる。液体媒体132は、例えば高純度水であり得る。このような構成は、液浸リソグラフィとも称し、高いフォトリソグラフィ解像度を有する。媒体132は、浸液と称することもできる。
【0062】
図2は、光学装置200の一実施形態の概略図を示す。光学装置200は、ビーム整形・照明系102、特にEUVリソグラフィ装置100Aのビーム整形・照明系102である。したがって、光学装置200をビーム整形・照明系とも呼ぶことができ、ビーム整形・照明系102を光学装置と呼ぶことができる。光学装置200は、先に説明したような投影系104の上流に配置され得る。
【0063】
しかしながら、光学装置200は、DUVリソグラフィ装置100Bの一部とすることもできる。しかしながら、以下では光学装置200がEUVリソグラフィ装置100Aの一部であるものとする。光学装置200のほかに、図2は、EUV放射線108Aを発する先に説明したようなEUV光源106A、及びフォトマスク120も示す。EUV光源106Aは、光学装置200の一部であり得る。
【0064】
光学装置200は、複数のミラー202、204、206、208を含む。さらに、任意選択の偏向ミラー210を設けることができる。偏向ミラー210は、斜入射で動作するので、斜入射ミラーと称することもできる。偏向ミラー210は、図1Aに示すミラー122に相当し得る。ミラー202、204、206、208は、図1Aに示すミラー110、112、114、116、118に相当し得る。特に、ミラー202はミラー110に相当し、ミラー204はミラー112に相当する。
【0065】
ミラー202は、光学装置200のいわゆるファセットミラー、特に視野ファセットミラーである。ミラー204も、光学装置200のファセットミラー、特に瞳ファセットミラーである。ミラー202は、EUV放射線108Aをミラー204へ反射する。ミラー206、208の少なくとも一方は、光学装置200のコンデンサミラーであり得る。ミラー202、204、206、208の数は任意である。例として、図1Aに示すように、5つのミラー202、204、206、208、すなわちミラー110、112、114、116、118、又は図2に示すように、4つのミラー202、204、206、208を設けることが可能である。しかしながら、好ましくは、少なくとも3つのミラー202、204、206、208、すなわち視野ファセットミラー、瞳ファセットミラー、及びコンデンサミラーが設けられる。
【0066】
ミラー202、204、206、208は、ハウジング212内に配置される。ハウジング212は、光学装置200の動作中、特に露光動作中には真空にすることができる。すなわち、ミラー202、204、206、208は真空中に配置される。
【0067】
光学装置200の動作中、EUV光源106AはEUV放射線108Aを発する。例として、スズプラズマをこの目的で生成することができる。スズプラズマを生成するために、スズ体、例えばスズビーズ又はスズ滴にレーザパルスを衝突させることができる。スズプラズマはEUV放射線108を発し、これが、EUV光源106Aのコレクタ、例えば楕円面ミラーを用いて集光され、光学装置200の方向に送られる。コレクタは、EUV放射線108Aを中間焦点214に集束させる。中間焦点214は、中間焦点面と呼ぶこともできるか、又は中間焦点面内にある。
【0068】
光学装置200を通過すると、EUV放射線108Aはミラー202、204、206、208のそれぞれ及び偏向ミラー210により反射される。この場合、全てのミラー202、204、206、208を必要とするわけではない。特に、偏向ミラー210は不要である。EUV放射線108Aのビーム経路を参照符号216で示す。フォトマスク120は、光学装置200の物体面218に配置される。物体視野220が物体面218に位置決めされている。
【0069】
図3は、光学装置400のさらに別の実施形態の概略図を示す。光学装置400は、光学装置200のように、ビーム整形・照明系102、特にEUVリソグラフィ装置100Aのビーム整形・照明系102である。したがって、光学装置400をビーム整形・照明系とも呼ぶことができ、ビーム整形・照明系102を光学装置と呼ぶことができる。
【0070】
しかしながら、光学装置400は、DUVリソグラフィ装置100Bの一部とすることもできる。しかしながら、以下では光学装置400がEUVリソグラフィ装置100Aの一部であるものとする。
【0071】
放射源402から出るEUV放射線108Aは、コレクタ404により集束される。コレクタ404の下流で、EUV放射線108Aは、中間焦点面406を伝播した後に、鏡面反射器410の目標通りの照明に役立つビーム整形ファセットミラー408に入射する。鏡面反射器401はミラーなので、ミラーと称することもできる。ビーム整形ファセットミラー408及び鏡面反射器410により、EUV放射線108Aは、物体面412の物体視野414を完全に照明するように整形され、所定の、例えば均一に照明された、円形境界の瞳照明分布、すなわち対応する照明設定が、レチクルの下流に配置された投影系104の瞳面416に現れる。
【0072】
鏡面反射器410の反射面は、個別ミラーに細分される。照明要件に応じて、鏡面反射器410のこれらの個別ミラーは、群別されて個別ミラー群を形成し、すなわち鏡面反射器410のファセットを形成する。各個別ミラー群は、それぞれ単独ではレチクル視野を完全に照明しない照明チャネルを形成する。全ての照明チャネルの総体のみが、レチクル視野の完全で均一な照明をもたらす。鏡面反射器410の個別ミラー及びビーム整形ファセットミラー408のファセットの両方を、アクチュエータシステムにより傾斜可能とすることができ、異なる視野及び瞳照明を設定可能である。
【0073】
図4は、ファセットミラー、特に視野ファセットミラーの形態である、先に説明したようなミラー202の一実施形態の概略平面図を示す。ミラー204、408及び鏡面反射器410も、ファセットミラーの形態であり得る。しかしながら、ミラー202のみについて以下で述べる。しかしながら、ミラー202に関する全ての説明は、ミラー204、408及び鏡面反射器410にも当てはまる。
【0074】
図5は、図4の詳細図IVを示す。以下では図4及び図5を同時に参照する。したがって、ファセットミラー又は視野ファセットミラーを、以下において参照符号202で示す。第1空間方向又はx方向x、第2空間方向又はy方向y、及び第3空間方向又はz方向zを有する座標系が、視野ファセットミラー202に割り当てられる。
【0075】
視野ファセットミラー202は、複数のファセット222を含むが、図5ではそのうち2つのみに参照符号を設けてある。ファセット222は、パターンの形態で、格子の形態で、又は碁盤目状に配置される。特に、これは、ファセット222が行列状に相互に上下左右に配置されることを意味する。ファセット222は、いわゆるれんが状に配置されることが好ましい。各れんがは、25×25の上記ファセット222を有し得る。れんがのファセット222間に、40μm~50μmの距離を設けることができる。個々のれんが間に100μmの距離を設けることができる。
【0076】
ファセット222は、特に視野ファセットであり、以下でそのようにも呼ばれる。例として、視野ファセットミラー202は、数十万個の視野ファセット222を含み得る。各視野ファセット222は、個別に傾斜可能であり得る。ファセット222は、ミラーに割り当てられる場合、瞳ファセットとも呼ばれ得る。
【0077】
図4及び図5に示す平面図において、視野ファセット222は、多角形、例えば四角形であり得る。特に、視野ファセット222は、図5に示すように正方形であり得る。視野ファセット222が正方形である場合、これらは例えば1mmの辺長を有し得る。しかしながら、視野ファセット222は、円形又は六角形とすることもできる。原理上、視野ファセット222の幾何学的形状は所望に応じる。例として、視野ファセット222は、細長い矩形の幾何学的形状を有することもできる。視野ファセット222は、平面視で湾曲、特に円弧状に湾曲させることもできる。
【0078】
図6は、図2に示す光学装置200からの大幅に拡大した抜粋部分を示す。光学装置200は、EUV放射線108Aを発するEUV光源106A(図示せず)と、中間焦点214と、視野ファセットミラー202と、瞳ファセットミラーの形態のミラー204とを含む。ミラー204は、以下では瞳ファセットミラーと呼ぶ。ミラー206、208、偏向ミラー210、及びハウジング212は図6には示さない。瞳ファセットミラー204は、投影系104の入射瞳面又はそれとの共役面に少なくとも略配置される。
【0079】
中間焦点214は、EUV光源106Aの開口絞りである。簡単のために、以下の説明では、中間焦点214を作るための開口絞りと実際の中間焦点、すなわち上記開口絞りの開口とを区別しない。
【0080】
視野ファセットミラー202は、上述のように複数の視野ファセット222A、222B、222C、222D、222E、222Fを担持する担持体又は本体224を含む。視野ファセット222A、222B、222C、222D、222E、222Fは、同一の形態を有することができるが、特にそれらの境界の形状及び/又は各光学有効面226の曲率が相互に異なることもできる。光学有効面226は、ミラー面である。光学有効面226は、平面である。しかしながら、光学有効面226は、曲面とすることもできる。
【0081】
光学有効面226は、EUV放射線108Aを瞳ファセットミラー204の方向に反射する働きをする。図6では、視野ファセット222Aの光学有効面226のみに参照符号を設けてある。しかしながら、視野ファセット222B、222C、222D、222E、222Fも同様にこのような光学有効面226を有する。光学有効面226は、視野ファセット面と呼ぶことができる。
【0082】
視野ファセット222Cのみについて以下で述べる。しかしながら、視野ファセット222Cに関する全ての説明は、視野ファセット222A、222B、222D、222E、222Fにも当てはまる。したがって、EUV放射線108Aのうち視野ファセット222Cに当たる部分のみを図示する。しかしながら、視野ファセットミラー202の全体がEUV光源106Aを用いて照明される。
【0083】
瞳ファセットミラー204は、複数の瞳ファセット230A、230B、230C、230D、230E、230Fを担持する担持体又は本体228を含む。瞳ファセット230A、230B、230C、230D、230E、230Fのそれぞれは、光学有効面232、特にミラー面を有する。図6では、瞳ファセット230Aの光学有効面232のみに参照符号を設けてある。光学有効面232は、EUV放射線108Aの反射に適している。光学有効面232は、瞳ファセット面と呼ぶことができる。
【0084】
異なる瞳間の切り替えのために、視野ファセット222Cを異なる瞳ファセット230A、230B、230C、230D、230E、230F間で切り替えることができる。特に、この目的で、瞳ファセット230C、230D、230Eは、視野ファセット222Cに割り当てられる。これには、視野ファセット222Cを傾斜させる必要がある。この傾斜は、例えば100mrad以下で機械的に行われる。
【0085】
視野ファセット222Cは、上述のように、1つのアクチュエータ(図示せず)又は複数のアクチュエータを用いて、複数の位置又は傾斜位置P1、P2、P3間で傾斜可能である。第1傾斜位置P1では、視野ファセット222Cは、中間焦点214を結像光ビーム234A(破線で示す)で瞳ファセット230Cに結像する。第2傾斜位置P2では、視野ファセット222Cは、中間焦点214を結像光ビーム234B(実線で示す)で瞳ファセット230Dに結像する。第3傾斜位置P3では、視野ファセット222Cは、中間焦点214を結像光ビーム234C(点線で示す)で瞳ファセット230Eに結像する。各瞳ファセット230C、230D、230Eは、視野ファセット222Cをフォトマスク120(ここには図示せず)に又はその付近に結像する。
【0086】
視野ファセット222Cを異なる傾斜位置P1、P2、P3にすることができるように、x方向x及びy方向yが張る平面内で2つの空間方向、具体的にはx方向x及びy方向yを軸として視野ファセット222Cを傾斜させることができる必要がある。瞳ファセット230C、230D、230Eへの視野ファセット222Cの上記割当ては、必須であると解釈すべきでない。割当ては照明設定に応じて異なり得る。瞳ファセット230C、230D、230Eも傾斜可能であり得る。同時に、EUV放射線108Aにより生じる高い熱負荷を放散することができる必要がある。さらなる要件は、視野ファセット222Cの位置精度が高いこと、及びそれに関連して例えば温度変化等の外乱に対する感度が低いことにある。
【0087】
可能な限り高い視野ファセット222Cのフィルファクタを得るために、アクチュエータシステム、センサシステム、及びさらなる機械素子の全体を光学有効面226の下に配置することが望ましい。微小電気機械システム(MEMS)を製造する従来技術を用いて視野ファセット222Cの駆動素子、センサ素子、及び機械素子を実現可能にするために、視野ファセット222Cの層状構造が選択され得る。
【0088】
EUVリソグラフィ装置100Aでの使用に対する通常の要求に関して、例えば静電容量アクチュエータシステムに基づく以前の解決手段は、この場合はプロセス技術に高い要求を課している。これは特に、製造される構造の高いアスペクト比に当てはまる。したがって、視野ファセット222Cの動作に必要なアクチュエータシステム、センサシステム、及びメカニクスを比較的容易で少ないプロセスステップを用いて製造することができる設計が望ましい。
【0089】
図7は、光学系300Aの一実施形態の概略図を示す。図8は、図7の断面線IIX-IIXに従った光学系300Aの概略断面図を示す。図9は、図7の断面線IX-IXに従った光学系300Aの概略断面図を示す。以下では図7図9を同時に参照する。
【0090】
光学系300Aは、先に説明したような光学装置200、400の一部である。特に、光学装置200、400は、複数の上記光学系300Aを含むことができる。光学系300Aは、特に、先に説明したような視野ファセットミラー202、瞳ファセットミラー204、ファセットミラー408、又は鏡面反射器410の一部でもある。しかしながら、視野ファセットミラー202のみについて以下で述べる。しかしながら、視野ファセットミラー202に関する全ての説明は、瞳ファセットミラー204、ファセットミラー408、又は鏡面反射器410にも適宜当てはまる。
【0091】
光学系300Aは、先に説明したような視野ファセット222A、222B、222C、222D、222E、222Fである。したがって、光学系300Aは、視野ファセット、ファセットシステム、視野ファセットシステム、又は視野ファセット装置と呼ぶこともできる。光学系300Aは、ファセットシステム、特に視野ファセットシステムであることが好ましい。しかしながら、光学系300は、瞳ファセットシステムとすることもできる。しかしながら、以下において、ファセットシステムを光学系300Aと呼ぶ。
【0092】
光学系300Aは、本体又は基板302を含む。基板302は、特にシリコンを含み得る。基板302は、視野ファセットミラー202の本体224の一部であるか又はそれと強固に接続される。その結果として、基板302は、光学系300の「固定世界」を形成する。
【0093】
さらに、光学系300Aは、光学有効面306を有するファセット素子304、特に視野ファセット素子を含む。光学有効面306はミラー面である。光学有効面306は、EUV放射線108Aを反射するのに適している。光学有効面306は、特に、図6に示す光学有効面226に相当する。
【0094】
並んで接続された複数のピエゾアクチュエータ308、310、312、314が、基板302とファセット素子304との間に設けられる。ピエゾアクチュエータ308、310、312、314は、ピエゾ素子又はピエゾ作動素子と呼ぶこともできる。全てのピエゾアクチュエータ308、310、312、314は、共通の平面Eに配置される。平面Eは、x方向x及びy方向yに張られるか、又はx方向x及びy方向yが張る平面と平行に配置される。
【0095】
主延在方向Hが、各ピエゾアクチュエータ308、310、312、314に割り当てられるが、図7には第1ピエゾアクチュエータ308についてのみ記される。第1ピエゾアクチュエータ308の主延在方向Hは、x方向xの向きである。この場合、主延在方向Hは、各ピエゾアクチュエータ308、310、312、314が最大の幾何学的広がりを有する方向であると理解されたい。
【0096】
第1ピエゾアクチュエータ308は、連結部位316においてその全長にわたって基板302に強固に接続される。連結部位316は、第1ピエゾアクチュエータ308の後面318に設けられる。他のピエゾアクチュエータ310、312、314は、基板302と接触しない。第1ピエゾアクチュエータ308の前面320が、第2ピエゾアクチュエータ320にその端面接続部位332で強固に接続される。第2ピエゾアクチュエータ310も同様に、後面324及び前面326を有する。前面326は、第2ピエゾアクチュエータ310が第1ピエゾアクチュエータ308と第3ピエゾアクチュエータ312との間に配置されるように第3ピエゾアクチュエータ312にその端面接続部位328で強固に接続される。第3ピエゾアクチュエータ312も、後面330及び前面332を含む。
【0097】
端面接続部位334を用いて、第4ピエゾアクチュエータ314が第3ピエゾアクチュエータ312の前面332に接続される。第4ピエゾアクチュエータ314も、後面336及び前面338を含む。ファセット素子304が強固に接続される連結部位342との接続部分340が、前面338から突出する。
【0098】
図10は、第1ピエゾアクチュエータ308の実施形態を示す。ピエゾアクチュエータ308、310、312、314は、同一の構造を有することが好ましいので、第1ピエゾアクチュエータ308のみについて以下で述べる。第1ピエゾアクチュエータ308に関する以下の説明は、ピエゾアクチュエータ310、312、314に適宜当てはまる。第1ピエゾアクチュエータ308は、キャリア層344を含む。キャリア層344は、シリコンから、特に多結晶又は単結晶シリコンから製造することができる。キャリア層344上に、ピエゾ層346が配置される。ピエゾ層346は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスに基づき得る。
【0099】
ピエゾ層346は、第1電極348と第2電極350との間に配置される。この場合、第1電極348は、キャリア層344とピエゾ層346との間に配置される。電極348、350は、電圧源352を用いて通電することができる。
【0100】
第1ピエゾアクチュエータ308の機能を以下で説明する。第1ピエゾアクチュエータ308は、図10の向きで左側に固定又はクランプされる。電極348、350を用いて電圧が上記ピエゾ層346に印加されると、ピエゾ層346内に電界が形成される。結果として、ピエゾ層346は、x方向x及びy方向yが張っている層平面と平行な方向に縮む又は収縮し、その結果としてピエゾ層346はキャリア層344と共に図10の向きで上方に曲がる。第1ピエゾアクチュエータ308は、ユニモルフアクチュエータ又はユニモルフピエゾアクチュエータとも呼ばれ得る。
【0101】
電圧が第1ピエゾアクチュエータ308に印加されると、又は第1ピエゾアクチュエータ308が作動されると、第1ピエゾアクチュエータ308は、非変形又は非撓み状態Z1(実線を用いて示す)から変形又は撓み状態Z2(破線を用いて示す)になる。任意の数の中間状態を非撓み状態Z1と撓み状態Z2との間に設けることができるので、第1ピエゾアクチュエータ308は、非撓み状態Z1と撓み状態Z2との間で連続的に撓み可能である。例として、第1ピエゾアクチュエータ308の撓みは、電圧依存的に、例えば電極348、350に印加される電圧が大きくなると第1ピエゾアクチュエータ308の撓みが大きくなるように実施され得る。
【0102】
図7図9に戻り、光学系300Aの機能を説明する。ピエゾアクチュエータ308、312を用いて、x方向xを軸として又はx方向xと平行に延びる軸周りにファセット素子304を逆の向きに傾斜させることができる。例として、第1ピエゾアクチュエータ308のみを作動させた場合、ファセット素子304は、図8に傾斜運動K1を用いて示すように、図8の向きでx方向xを軸として反時計回りの傾斜を実行する。
【0103】
これに対して、第3ピエゾアクチュエータ312のみを作動させた場合、ファセット素子304は、図8に傾斜運動K2を用いて示すように、図8の向きでx方向xを軸として時計回りの傾斜を実行する。両方のピエゾアクチュエータ308、312を同時に作動させると共に同程度に撓ませた場合、ファセット素子304は、x方向xを軸として傾斜せずにz方向zの純粋なストローク運動H1を実行する。2つのピエゾアクチュエータ308、312を同時に作動させつつ不均等に撓ませることにより、傾斜運動K1、K2及びストローク運動H1からのファセット素子304の複合運動を得ることができる。
【0104】
図9に示すように、ピエゾアクチュエータ310、314を用いて、y方向yを軸として又はy方向yと平行に延びる軸周りにファセット素子304を逆の向きに傾斜させることができる。例として、第2ピエゾアクチュエータ310のみを作動させた場合、ファセット素子304は、図9に傾斜運動K3を用いて示すように、図9の向きでy方向yを軸として時計回りの傾斜を実行する。
【0105】
これに対して、第4ピエゾアクチュエータ314のみを作動させた場合、ファセット素子304は、図9に傾斜運動K4を用いて示すように、図9の向きでy方向yを軸として反時計回りの傾斜を実行する。両方のピエゾアクチュエータ310、314を同時に作動させると共に同程度に撓ませた場合、ファセット素子304は、z方向zの純粋なストローク運動H2を実行する。2つのピエゾアクチュエータ310、314を同時に作動させつつ不均等に撓ませることにより、傾斜運動K3、K4及びストローク運動H2からのファセット素子304の複合運動を得ることができる。
【0106】
全てのピエゾアクチュエータ308、310、312、314を組み合わせて作動させることにより、x方向x、y方向y、及びz方向zを軸とした複合的な傾斜/ストローク運動を得ることができる。ピエゾアクチュエータ308、310、312、314を作動させるために制御ユニット354が設けられる。
【0107】
先に説明したようなピエゾアクチュエータ308、310、312、314のこの連続配置の結果として、傾斜運動K1、K2、K3、K4に基づいて説明したように、2つの軸、具体的にはx方向x及びy方向yを軸としてそれぞれ正及び負の方向にファセット素子304を傾斜させることができる。いくつか又は全てのピエゾアクチュエータ308、310、312、314を同時に動作させる結果として、x方向及びx及びy方向yを軸とした傾斜運動K1、K2、K3、K4の組合せを実現することができるので、全体的な2次元の傾斜場をファセット素子304に対して設定することができる。
【0108】
さらに、ピエゾアクチュエータ308、310、312、314を用いた駆動により、ストローク運動H1、H2を用いて、光学有効面306に直交する方向に、具体的にはz方向zに沿ってファセット素子304を移動させる選択肢が得られる。例として、方向x、yに割り当てられた2つのピエゾアクチュエータ308、312又は310、314が同じ電圧で同時に作動される場合、先に説明したようにファセット素子304の傾斜ではなく、z方向zに沿った並進、具体的には各ストローク運動H1、H2がある。
【0109】
4つのピエゾアクチュエータ308、310、312、314全ての並列動作についても同様である。その結果として、ファセット素子304は、3つの自由度、具体的にはx方向x及びy方向yを軸とした傾斜運動K1、K2、K3、K4並びにz方向zに沿ったストローク運動H1、H2を有する。この特性により、さらなる自由度、したがって照明状態の設定のさらなる柔軟性が得られる。
【0110】
例えばピエゾアクチュエータ308、310、312、314の撓みを記録するためのセンサシステムの組込みは、例えば電極の形態の容量素子、又は例えばピエゾアクチュエータ308、310、312、314と平行に配置されたピエゾ抵抗センサにより、例えば実施することができる。静電容量センサシステムを実現するために、電極がピエゾアクチュエータ308、310、312、314の上面に取り付けられ得る。その場合、対応する対向電極を、ファセット素子304の下面に適宜取り付けることができる。そうすると、ピエゾアクチュエータ308、310、312、314とファセット素子304の下面の電極との間の距離は、ファセット素子304が傾斜すると変わる。その結果として、静電容量がファセット素子304の傾斜角の関数として変わる。したがって、静電容量センサを実装することができる。
【0111】
センサシステムがピエゾ抵抗センサにより実現される場合、センサ356、358、360、362が各ピエゾアクチュエータ308、310、312、314に割り当てられる。例として、センサ356、358、360、362は、変形した場合に抵抗値が変化するピエゾ抵抗素子である。ピエゾ抵抗センサ356、358、360、362は、可動素子、例えばキャリア層344に組み込むことができるか、又は自由部位でこれに施すことができる。代替として、ピエゾ抵抗センサ356、358、360、362は、ピエゾ層346と平行な付加的な屈曲素子内/上に位置し得る。
【0112】
ピエゾアクチュエータ308、312は、共に光学系300Aの第1ピエゾアクチュエータ装置364を形成し、これがx方向xを軸とした傾斜運動K1、K2を容易にする。これに対して、ピエゾアクチュエータ310、314は、共に光学系300Aの第2ピエゾアクチュエータ装置366を形成し、これがy方向yを軸とした傾斜運動K3、K4を容易にする。
【0113】
図11及び図12はそれぞれ、光学系300Bのさらに別の実施形態の概略斜視図を示し、ファセット素子304は図11には示されていない。光学系300Bが光学系300Aと異なる点は、光学系300Bが、図7図9に非常に概略的にしか示さない光学系300Aの可能な構造的実施形態を表すことだけである。
【0114】
2つの帯状の結合要素368、370、特に第1結合要素368及び第2結合要素370が、各ピエゾアクチュエータ308、310、312、314に割り当てられ、各ピエゾアクチュエータ308、310、312、314は、その割り当てられた帯状の結合要素間に配置されてそれらに強固に接続される。図11では、第1ピエゾアクチュエータ308の結合要素368、370のみに参照符号を設けてある。
【0115】
結合要素368、370は、基板302と同じ材料から製造され得る。第1ピエゾアクチュエータ308の第1結合要素368のみが、その全長にわたって基板に強固に接続される。例として、第1ピエゾアクチュエータ308の第1結合要素368は、基板302に一体的に接続され、特に材料を一体的に接続される。
【0116】
この場合、「一体的」又は「一部品」は、基板302及び第1ピエゾアクチュエータ308の第1結合要素368が共通のコンポーネントを形成し、異なるコンポーネントから組み立てられていないことを意味する。この場合、「材料を一体的に」は、第1ピエゾアクチュエータ308の第1結合要素368及び基板が全体的に同じ材料から製造されることを意味する。他の全ての結合要素368、370は、基板302と接続されない。光学系300Bの機能は、光学系300Aの機能に対応する。
【0117】
図13及び図14はそれぞれ、光学系300Cのさらに別の実施形態の概略斜視図を示し、ファセット素子304は図13には示されていない。その構造に関して、光学系300Cは、光学系300Bのものに対応するが、光学系300Cの結合要素368、370が光学系300Bのものよりも大きな断面積を有する点が異なる。光学系300B、300Cの機能は同一である。
【0118】
高い熱負荷に対処するために、ピエゾアクチュエータ308、310、312、314及び接続部位322、328、334が全体として可能な限り低い熱抵抗を有するようにこれらを設計することが有利である。この目的で、接続部位322、328、334の断面積を可能な限り大きく選択すべきである。さらに、広いピエゾアクチュエータ308、310、312、314は、熱抵抗を低減すると同時に、ファセット素子304の達成可能な最大傾斜角を僅かにしか損なわないので有利である。
【0119】
記載の光学系300A、300B、300Cは、従来の微小電気機械製造法を用いて実現することができる。この場合、特にシリコン製の複数のベース層から構成された3次元微細構造が、異なるコーティング法、微細構造化・エッチング技術、及び接合法を用いて実現される。
【0120】
光学系300A、300B、300Cの利点を以下で説明する。ピエゾアクチュエータ308、310、312、314は、大きな傾斜角の実現を容易にする。これらの大きな傾斜角は、力密度が高いピエゾアクチュエータ308、310、312、314の使用と、ファセット素子304の各傾斜運動K1、K2、K3、I4へのピエゾアクチュエータ308、310、312、314の直接変換とにより得ることができる。
【0121】
ピエゾアクチュエータ308、310、312、314は、僅かな空間しか必要とせず、したがってセンサシステムを組み込む空間を大きく空ける。例として、ファセット素子304の位置を記録するためにセンサが設けられ得る。その結果として、調整されたシステムを構築することができる。各設計が単純な構造の少数のコンポーネントしか含まず、それら全てが共通の平面Eに配置されるので、光学系300A、300B、300Cの生産は簡便である。ファセット素子304のストローク運動H1、H2の選択により、さらなる柔軟性が得られる。
【0122】
本発明は、例示的な実施形態に基づいて説明したが、多様な方法で変更可能である。
【符号の説明】
【0123】
100A EUVリソグラフィ装置
100B DUVリソグラフィ装置
102 ビーム整形・照明系
104 投影系
106A EUV光源
106B DUV光源
108A EUV放射線
108B DUV放射線
100 ミラー
112 ミラー
114 ミラー
116 ミラー
118 ミラー
120 フォトマスク
122 ミラー
124 ウェーハ
126 光軸
128 レンズ素子
130 ミラー
132 媒体
200 光学装置
202 ミラー/視野ファセットミラー
204 ミラー/瞳ファセットミラー
206 ミラー
208 ミラー
210 偏向ミラー
212 ハウジング
214 中間焦点
216 ビーム経路
218 物体面
220 物体視野
222 ファセット/視野ファセット
222A 視野ファセット
222B 視野ファセット
222C 視野ファセット
222D 視野ファセット
222E 視野ファセット
222F 視野ファセット
224 本体
226 光学有効面
228 本体
230A 瞳ファセット
230B 瞳ファセット
230C 瞳ファセット
230D 瞳ファセット
230E 瞳ファセット
230F 瞳ファセット
232 光学有効面
234A 結像光ビーム
234B 結像光ビーム
234C 結像光ビーム
300A 光学系/ファセットシステム
300B 光学系/ファセットシステム
300C 光学系/ファセットシステム
302 基板
304 ファセット素子
306 光学有効面
308 ピエゾアクチュエータ
310 ピエゾアクチュエータ
312 ピエゾアクチュエータ
314 ピエゾアクチュエータ
316 連結部位
318 後面
320 前面
322 接続部位
324 後面
326 前面
328 接続部位
330 後面
332 前面
334 接続部位
336 後面
338 前面
340 接続部分
342 連結部位
344 キャリア層
346 ピエゾ層
348 電極
350 電極
352 電圧源
354 制御ユニット
356 センサ
358 センサ
360 センサ
362 センサ
364 ピエゾアクチュエータ装置
366 ピエゾアクチュエータ装置
368 結合要素
370 結合要素
400 光学装置
402 放射源
404 コレクタ
406 中間焦点面
408 ファセットミラー
410 鏡面反射器
412 物体面
414 物体視野
416 瞳面
E 平面
H 主延在方向
H1 ストローク運動
H2 ストローク運動
K1 傾斜運動
K2 傾斜運動
K3 傾斜運動
K4 傾斜運動
M1 ミラー
M2 ミラー
M3 ミラー
M4 ミラー
M5 ミラー
M6 ミラー
P1 傾斜位置
P2 傾斜位置
P3 傾斜位置
x x方向
y y方向
z z方向
Z1 状態
Z2 状態
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2023-11-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置(100A、100B)用のファセットシステム(300A、300B、300C)であって、
光学有効面(306)を有するファセット素子(304)と、
第1空間方向(x)を軸として前記ファセット素子(304)を傾斜させる第1ピエゾアクチュエータ装置(364)と、
前記第1空間方向(x)に対して直角の向きの第2空間方向(y)を軸として前記ファセット素子(304)を傾斜させる第2ピエゾアクチュエータ装置(366)と
を備え、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)及び前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)は、前記第1空間方向(x)及び前記第2空間方向(y)が張る共通の平面(E)に配置され
前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)及び/又は前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)は、前記光学有効面(306)に対して直角の向きの第3空間方向(z)の前記ファセット素子(304)のストローク運動(H1、H2)を行うよう構成されるファセットシステム。
【請求項2】
請求項に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)は、2つの反対向きの傾斜運動(K1、K2)で前記第1空間方向(x)を軸として前記ファセット素子(304)を選択的に傾斜させるよう構成された少なくとも2つのピエゾアクチュエータ(308、312)を含むファセットシステム。
【請求項3】
請求項に記載のファセットシステムにおいて、前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)は、2つの反対向きの傾斜運動(K3、K4)で前記第2空間方向(y)を軸として前記ファセット素子(304)を選択的に傾斜させるよう構成された少なくとも2つのピエゾアクチュエータ(310、314)を含むファセットシステム。
【請求項4】
請求項に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)の前記ピエゾアクチュエータ(308、312)及び前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)のピエゾアクチュエータ(310、314)は、並んで配置されるファセットシステム。
【請求項5】
請求項又はに記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)の前記ピエゾアクチュエータ(308、312)及び前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)のピエゾアクチュエータ(310、314)は、交互に配置されるファセットシステム。
【請求項6】
請求項のいずれか1項に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)の前記ピエゾアクチュエータ(308、312)は、相互に平行に且つ相互に離れて配置され、前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)の前記ピエゾアクチュエータ(310、314)も同様に、相互に平行に且つ相互に離れて配置されるファセットシステム。
【請求項7】
請求項のいずれか1項に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)の前記ピエゾアクチュエータ(308、312)及び前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)の前記ピエゾアクチュエータ(310、314)は、相互に対して直角に配置されるファセットシステム。
【請求項8】
請求項のいずれか1項に記載のファセットシステムにおいて、第1ピエゾアクチュエータ(308)、第2ピエゾアクチュエータ(310)、第3ピエゾアクチュエータ(312)、及び第4ピエゾアクチュエータ(314)が設けられ、前記第1ピエゾアクチュエータ(308)及び前記第3ピエゾアクチュエータ(312)は、前記第1ピエゾアクチュエータ装置(364)に割り当てられ、前記第2ピエゾアクチュエータ(310)及び前記第4ピエゾアクチュエータ(314)は、前記第2ピエゾアクチュエータ装置(366)に割り当てられるファセットシステム。
【請求項9】
請求項に記載のファセットシステムにおいて、基板(302)をさらに備え、前記第1ピエゾアクチュエータ(308)のみが前記基板(302)に接続されるファセットシステム。
【請求項10】
請求項に記載のファセットシステムにおいて、前記第1ピエゾアクチュエータ(308)は、前記基板(302)及び前記第2ピエゾアクチュエータ(310)のみに接続され、該第2ピエゾアクチュエータ(310)は、前記第1ピエゾアクチュエータ(308)及び前記第3ピエゾアクチュエータ(312)のみに接続され、該第3ピエゾアクチュエータ(312)は、前記第2ピエゾアクチュエータ(310)及び前記第4ピエゾアクチュエータ(314)のみに接続され、該第4ピエゾアクチュエータ(314)は、前記第3ピエゾアクチュエータ(312)及び前記ファセット素子(304)のみに接続されるファセットシステム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のファセットシステムにおいて、前記ファセット素子(304)は、平面視で正方形であるファセットシステム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のファセットシステムにおいて、センサ(356、358、360、362)が、該ファセットシステム(300A、300B、300C)に組み込まれるファセットシステム。
【請求項13】
リソグラフィ装置(100A、100B)であって、請求項1~12のいずれか1項に記載のファセットシステム(300A、300B、300C)を備えたリソグラフィ装置。
【国際調査報告】