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特表2024-511508リン系モノマー又はオリゴマー、これを含むポリエステル樹脂及び熱可塑性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(54)【発明の名称】リン系モノマー又はオリゴマー、これを含むポリエステル樹脂及び熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/692 20060101AFI20240306BHJP
   C07F 9/32 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08G63/692
C07F9/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559146
(86)(22)【出願日】2022-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-09-26
(86)【国際出願番号】 KR2022018120
(87)【国際公開番号】W WO2023113260
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0182135
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0106913
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イム、ソヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン、ヒョンミン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ハンビット
(72)【発明者】
【氏名】キム、テチョル
(72)【発明者】
【氏名】イ、ホヨン
【テーマコード(参考)】
4H050
4J029
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB46
4H050AB80
4J029AA03
4J029AB01
4J029AD01
4J029AD06
4J029BA01
4J029BA02
4J029BA03
4J029BA05
4J029BA07
4J029BA08
4J029BA09
4J029BA10
4J029BD03A
4J029BD06A
4J029BD07A
4J029BF25
4J029CA01
4J029CA02
4J029CA03
4J029CA04
4J029CA05
4J029CA06
4J029CB05A
4J029CB05B
4J029CB06A
4J029CB10A
4J029CC05A
4J029CC06A
4J029CD03
4J029CD07
4J029CH02
4J029CH03
4J029DB02
4J029DC06
4J029JB131
4J029JF022
4J029JF032
4J029JF042
4J029JF321
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
本発明は、新規なリン(P)系モノマー又はオリゴマー、及びこれらに由来する構成単位を含むことで、優れた難燃性と高い重合度を有する新規なポリエステル樹脂、上記ポリエステル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物、及びこれを用いる成形品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で示されるリン系モノマー又はオリゴマー。
【化39】
(式中、
Aは、C1~C40のアルキレン基、C2~C40のアルケニレン基、C2~C40のアルキニレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1及びX2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、O、S、及びNRからなる群から選択され、
Rが複数個である場合、複数のRは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択され、
1及びY2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、C1~C40のアルキレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1及びZ2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上であり、
nは、1~50の整数であり、
上記A、Y1及びY2の、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、及びヘテロアリーレン基と、上記R、Z1及びZ2の、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、それぞれ独立に、重水素(D)、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C40のアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換可能であり、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一又は異なっていてもよい。)
【請求項2】
上記化学式1で示されるリン系モノマー又はオリゴマーは、下記化学式1A~化学式1Cのうちのいずれか1つで示されるものである、請求項1に記載のリン系モノマー又はオリゴマー。
【化40】
【化41】
【化42】
(式中、
A、Y1、Y2、Z1、Z2、R、及びnは、それぞれ請求項1で定義した通りである。)
【請求項3】
上記化学式1で示されるリン系モノマー又はオリゴマーは、下記化学式1D~化学式1Eのうちのいずれか1つで示されるものである、請求項1に記載のリン系モノマー又はオリゴマー。
【化43】
【化44】
(式中、
丸Bは、単環もしくは多環の脂環族環、単環もしくは多環のヘテロ脂環族環、芳香族環、及び単環もしくは多環のヘテロ芳香族環からなる群から選択され、
mは、1~10の整数であり、
A、X1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2、及びnは、それぞれ請求項1で定義した通りである。)
【請求項4】
上記リン系モノマー又はオリゴマーは、下記化学式で示される化合物群から選択される1種以上を含むものである、請求項1に記載のリン系モノマー又はオリゴマー。
【化45】
(式中、
nは、請求項1で定義した通りである。)
【請求項5】
上記リン系モノマー又はオリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が、100~3,000g/モルである、請求項1に記載のリン系モノマー又はオリゴマー。
【請求項6】
ジカルボン酸に由来する構成単位(a1);
ジオールに由来する構成単位(a2);及び
請求項1~5のうちのいずれか1項に記載のリン系モノマー又はオリゴマーに由来する構成単位(a3);
を含む、ポリエステル樹脂。
【請求項7】
上記構成単位(a3)は、下記化学式2で示されるものである、請求項6に記載のポリエステル樹脂。
【化46】
(式中、
Aは、C1~C40のアルキレン基、C2~C40のアルケニレン基、C2~C40のアルキニレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1は、O、S、及びNRからなる群から選択され、
Rは、水素、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択され、
1は、C1~C40のアルキレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1は、水素、ヒドロキシ基、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上であり、
nは、1~50の整数であり、
上記A及びY1の、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、及びヘテロアリーレン基と、上記R及びZ1の、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、それぞれ独立に、重水素(D)、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C40のアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換可能であり、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一又は異なっていてもよい。)
【請求項8】
上記化学式2で示される構成単位(a3)は、下記化学式2A~化学式2Cのうちのいずれか1つで示されるものである、請求項7に記載のポリエステル樹脂。
【化47】
【化48】
【化49】
(式中、
A、Y1、Z1、及びnは、それぞれ請求項1で定義した通りである。)
【請求項9】
上記化学式2で示される構成単位(a3)は、下記化学式2D~化学式2Eのうちのいずれか1つで示されるものである、請求項7に記載のポリエステル樹脂。
【化50】
【化51】
(式中、
丸Bは、単環もしくは多環の脂環族環、単環もしくは多環のヘテロ脂環族環、単環もしくは多環の芳香族環、及び単環もしくは多環のヘテロ芳香族環からなる群から選択され、
mは、1~10の整数であり、
1、Y1、Z1、及びnは、それぞれ請求項7で定義した通りである。)
【請求項10】
上記構成単位(a3)は、上記ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)100重量部に対して、0.5~30重量部で含まれる、請求項6に記載のポリエステル樹脂。
【請求項11】
リン(P)原子の含有量が、10~10,000ppmである、請求項6に記載のポリエステル樹脂。
【請求項12】
メルトインデックス(MI)が、10~30g/10min(235℃基準)であり、
重量平均分子量(Mw)が、10,000~100,000g/モルであり、
示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が、150~350℃であり、
固有粘度(IV)が、0.7~1.5cP(25℃)である、請求項6に記載のポリエステル樹脂。
【請求項13】
上記ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)である、請求項6に記載のポリエステル樹脂。
【請求項14】
請求項6に記載のポリエステル樹脂を含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項6に記載のポリエステル樹脂を含む、成形品。
【請求項16】
フィルム又は繊維である、請求項15に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なリン(P)系モノマー又はオリゴマー、及びこれに由来する構成単位を含み、優れた難燃性と高い重合度とを同時に有する新規なポリエステル樹脂、上記ポリエステル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物、及びこれを用いる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステル樹脂は、耐化学性、機械的強度、耐熱性及び電気的性質に優れており、電子・電気及び自動車部品のハウジング、コネクタなどに広く使用されている。一般に、ポリエステル樹脂は、燃え易い性質を有しているので、難燃性が必要な分野に適用するためには、ハロゲン系難燃剤又はアンチモン系難燃補助剤などを添加して使用されている。しかし、ハロゲン系難燃剤又はアンチモン系難燃補助剤などは、火災時に多量のハロゲン有毒ガスを発生させるだけでなく、所望の難燃効果を得るためには、過剰な難燃剤を使用する必要があるという問題点があった。
【0003】
上述した問題点を解決するため、有機ホスフィン酸金属塩系難燃剤、オルガノホスフィン酸金属塩系難燃剤、メラミンポリホスフェートなどの非ハロゲン系難燃剤を使用してポリエステル樹脂に難燃性を付与する方法が提示されている。しかし、このような化合物を使用して難燃性を付与する場合は、低分子量難燃剤の過剰な使用によって、樹脂の物性が過度に低下し、難燃剤のブリードアウトが発生するなどの問題点があった。特に、重合反応に参加しない難燃剤を使用する場合は、重合度が低下し、最終的に得られるポリエステル樹脂の物性が低下するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国登録特許10-2285778号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するために案出されたものであって、リン(P)を含有する所定のモノマー又はオリゴマーを新規合成し、これを用いてポリエステル重合を行うことにより、難燃性と重合度とが改善された新規なポリエステル樹脂を提供することを技術的課題としている。
【0006】
また、本発明の他の技術的課題は、上述したポリエステル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物、及びこれを用いる成形品を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的及び利点については、後述の詳細な説明及び特許請求の範囲においてより明確に説明されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を達成するため、本発明は、下記化学式1で示されるポリエステル樹脂重合用リン系モノマー又はオリゴマーを提供する。
【0009】
【化1】
【0010】
式中、
Aは、C1~C40のアルキレン基、C2~C40のアルケニレン基、C2~C40のアルキニレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1及びX2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、O、S、及びNRからなる群から選択され、
Rが複数個である場合、複数のRは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択され、
1及びY2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、C1~C40のアルキレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1及びZ2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上であり、
nは、1~50の整数であり、
上記A、Y1及びY2の、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、及びヘテロアリーレン基と、上記R、Z1及びZ2の、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、それぞれ独立に、重水素(D)、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C40のアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換可能であり、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0011】
本発明の一実施例において、上記化学式1で示されるリン(P)系モノマー又はオリゴマーは、100~3,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有するものであり得る。
【0012】
また、本発明は、ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)、ジオールに由来する構成単位(a2)、及び上記リン系モノマー又はオリゴマーに由来する構成単位(a3)を含むポリエステル樹脂を提供する。
【0013】
本発明の一実施例において、上記構成単位(a3)は、上記ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)100重量部に対して、0.5~30重量部で含まれ得る。
【0014】
本発明の一実施例において、上記ポリエステル樹脂中のリン(P)原子の含有量は、10~10,000ppmであり得る。
【0015】
本発明の一実施例において、上記ポリエステル樹脂は、メルトインデックス(MI)が、10~30g/10min(235℃基準)であり、重量平均分子量(Mw)が、10,000~100,000g/モルであり、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が、150~350℃であり、固有粘度(IV)が、0.7~1.5cP(25℃)であり得る。
【0016】
本発明の一実施例において、上記ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)であり得る。
【0017】
また、本発明は、上記ポリエステル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、上記ポリエステル樹脂を含む成形品を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施例によれば、重合反応に参加しない単一化合物の形態である従来のリン系難燃剤に代えて、リン(P)を含有する所定のモノマー又はオリゴマーを新規に合成し、これを用いてポリエステル重合を行うことで、樹脂自体の難燃特性が改善され、また、重合度を調節することで、最終的に得られるポリエステル樹脂の物性の安定性が向上する。
【0020】
本発明の効果は、上述した内容に制限されず、より様々な効果が本明細書に含まれている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳述する。
【0022】
本明細書で使用される全ての用語(技術及び科学用語を含む)は、特に断りのない限り、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に共通して理解される意味で使用されている。また、一般的に使用される辞書に定義されている用語は、特段の定義がない限り、理想的又は過度に解釈されてはならない。
【0023】
本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する開放型用語(open-ended terms)であることを理解されたい。
【0024】
本明細書において「好ましい」及び「好適」という用語は、所定の環境下で所定の利点を提供できる、本発明に係る実施形態のことを指す。しかし、同一又は異なる環境下で好適な実施形態がさらにあり得る。なお、1つ以上の好適な実施形態の言及は、他の実施形態が有用でないことを意味するのではなく、本発明の範疇から他の実施形態を排除するのではない。
【0025】
<リン系モノマー又はオリゴマー>
本発明の一例は、ポリエステル樹脂の重合に適用される有機リン系(organophosphorous)モノマー又はオリゴマーであって、下記化学式1で示すことができる。
【0026】
【化2】
【0027】
式中、
Aは、C1~C40のアルキレン基、C2~C40のアルケニレン基、C2~C40のアルキニレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1及びX2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、O、S、及びNRからなる群から選択され、Rが複数個である場合、複数のRは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択され得る。
【0028】
1及びY2としては、当該分野で公知の2価の炭化水素基であれば、特に制限されない。一例として、Y1及びY2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、C1~C40のアルキレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され得る。
【0029】
1及びZ2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上であり得る。
【0030】
nは、化学式1で定義した通りである。
【0031】
上記A、Y1及びY2の、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、及びヘテロアリーレン基と、上記R、Z1及びZ2の、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基とは、それぞれ独立に、重水素(D)、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C40のアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換可能であり、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0032】
本発明に係る化学式1のリン(P)系モノマー又はオリゴマーは、従来のポリエステル樹脂の製造時に使用されるリン系難燃剤としての役割、即ち、エステル交換反応と重縮合反応に加えられる熱や重合反応の進行に伴って発生する反応熱などによるポリエステル樹脂の劣化を防止し、逆反応又は分解反応によって発生する黄変を抑制し、ポリエステル樹脂の色を透明かつ無色に近づける役割を果たすことができる。これと同時に、環境汚染を防止する観点から、従来のハロゲン系難燃剤の代替として使用可能である。さらに、リン系難燃モノマー又はオリゴマーの少量使用によって十分な難燃性を付与することができ、既存のポリエステルの粘度、ガラス転移温度、加工性などの物性の低下を防止することができる。
【0033】
また、上記化学式1示されるリン系モノマー又はオリゴマーは、分子内の少なくとも2つのリン系モイエティを含むと同時に、両側末端に反応性の高いカルボキシル基を含む対称構造(symmetric structure)を有する。このようなリン系モノマー又はオリゴマーをポリエステル樹脂の重合に使用する場合、両側末端にヒドロキシ基を有するか、又はヒドロキシ基とカルボキシル基とを同時に有する従来のリン系難燃剤に比べて、高い反応性によって重合度が有意に向上し、ポリエステル樹脂の物性の安定性と難燃性とを同時に確保することができる。また、両側末端にカルボキシル基を有する本発明のリン系モノマー又はオリゴマーは、ポリエステル樹脂だけでなく、ポリアミド系ポリマーの合成時にも使用可能であるため、両側末端にヒドロキシ基を有するか、又は一側と他側にそれぞれヒドロキシ基とカルボキシル基とを有する従来のリン系難燃剤に比べて、より幅広い用途で適用することができる。
【0034】
上記化学式1の一具体例では、Aは、C1~C10のアルキレン基、C3~C12のシクロアルキレン基、C6~C20のアリーレン基、及び核原子数5~20個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1及びX2は、それぞれ独立に、O、S、及びNRからなる群から選択され、
Rは、それぞれ独立に、水素、C1~C10のアルキル基、C3~C10のシクロアルキル基、C6~C20のアリール基からなる群から選択され、
1及びY2は、それぞれ独立に、C1~C10のアルキレン基、及びC6~C20のアリーレン基からなる群から選択され、
1及びZ2は、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基、C1~C10のアルキル基、C3~C10のシクロアルキル基、及びC6~C20のアリール基からなる群から選択される1種以上であり、
nは、1~50の整数である。
【0035】
好適な一具体例では、上記化学式1で示されるリン系モノマー又はオリゴマーは、X1及びX2に導入される置換基の種類によって、下記化学式1A~化学式1Cのうちのいずれか1つに具体化され得るが、これらに限定されない。
【0036】
【化3】
【0037】
【化4】
【0038】
【化5】
【0039】
式中、
A、Y1、Y2、Z1、Z2、R、及びnは、それぞれ化学式1で定義した通りである。
【0040】
好適な他の一具体例では、上記化学式1で示されるリン系モノマー又はオリゴマーは、Aに導入される置換基の種類によって、下記化学式1D~化学式1Eのうちのいずれか1つに具体化され得るが、これらに限定されない。
【0041】
【化6】
【0042】
【化7】
【0043】
式中、
丸Bは、当該分野で公知の通常の炭化水素系環であってもよく、これらが隣接する他の環と、縮合、融合、架橋又はスピロ結合された形態であってよい。一例として、丸Bは、単環もしくは多環の脂環族環、単環もしくは多環のヘテロ脂環族環、単環もしくは多環の芳香族環、及び単環もしくは多環のヘテロ芳香族環からなる群から選択され得る。具体的には、丸Bは、炭素数3~10の脂環族環、核原子数3~10個のヘテロ脂環族環、炭素数6~20の芳香族環、又は核原子数5~20個のヘテロ芳香族環であってもよい。
【0044】
mは、1~10の整数であり、
A、X1、X2、Y1、Y2、Z1、Z2、及びnは、それぞれ化学式1で定義した通りである。
【0045】
上記化学式1A~化学式1Eで示されるリン系モノマー又はオリゴマーは、X1、X2、及びAに導入される置換基の種類によって、下記に例示する化学式1a-1~化学式1f-1のうちのいずれか1つに具体化され得るが、下記に例示するものに限定されない。
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
【化12】
【0051】
【化13】
【0052】
式中、
1及びY2は、互いに同一であり、C1~C10のアルキレン基、及びC6~C20のアリーレン基からなる群から選択され、
1及びZ2は、互いに同一であり、水素、ヒドロキシ基、C1~C10のアルキル基、C3~C10のシクロアルキル基、及びC6~C20のアリール基からなる群から選択される1種以上であり、
丸Bは、炭素数3~10の脂環族環、核原子数3~10個のヘテロ脂環族環、炭素数6~20の芳香族環、及び核原子数5~20個のヘテロ芳香族環からなる群から選択され、
複数のRは、互いに同一であり、水素、C1~C10のアルキル基、C3~C10のシクロアルキル基、C6~C20のアリール基からなる群から選択され、
nは、1~50の整数である。
【0053】
上記化学式1のリン系モノマー及び/又はオリゴマーは、下記に例示する化合物に具体化され得るが、本発明のリン系モノマー及び/又はオリゴマーは、下記に例示するものに限定されない。
【0054】
【化14】
【0055】
式中、
nは、化学式1で定義した通りである。一例として、nは、1~45の整数であり、具体的には、1~30であり、より具体的には、1~25であり得る。
【0056】
一具体例では、上記化学式1で示されるリン系モノマー又はオリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が、100~3,000g/モルであり、好ましくは、200~2,000g/モルであり、より好ましくは、500~2,000g/モルであり得る。
【0057】
本発明において、「アルキル」とは、炭素数1~40の直鎖又は側鎖の飽和炭化水素に由来する1価の置換基を意味する。この例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、iso-アミル、ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本発明において、「アルケニル」とは、炭素-炭素二重結合を1つ以上有する炭素数2~40の直鎖又は側鎖の不飽和炭化水素に由来する1価の置換基を意味する。この例としては、ビニル、アリル、イソプロペニル、2-ブテニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本発明において、「アルキニル」とは、炭素-炭素三重結合を1つ以上有する炭素数2~40の直鎖又は側鎖の不飽和炭化水素に由来する1価の置換基を意味する。この例としては、エチニル、2-プロピニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明において、「アリール」とは、単環又は2以上の環の組み合わせからなる炭素数6~40の芳香族炭化水素に由来する1価の置換基を意味する。また、2以上の環が互いにペンダント(pendant)されるか、又は縮合される形態を含むことができる。このようなアリールとしては、例えば、フェニル、ナフチル、フェナントリル、アントリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本発明において、「ヘテロアリール」とは、核原子数5~40のモノヘテロサイクリック又はポリヘテロサイクリックの芳香族炭化水素に由来する1価の置換基を意味する。このとき、環中の1つ以上の炭素、好ましくは1~3個の炭素が、N、O、S又はSeのようなヘテロ原子で置換される。また、2以上の環が互いにペンダントされるか、又は縮合される形態を含むことができ、さらには、アリール基と縮合される形態であってもよい。このようなヘテロアリールとしては、例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニルのような6員のモノサイクリック環、フェノキサチエニル、インドリジニル、インドリル、プリニル、キノリル、ベンゾチアゾール、カルバゾリルのようなポリサイクリック環、及び2-フラニル、N-イミダゾリル、2-イソキサゾリル、2-ピリジニル、2-ピリミジニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
本発明において、「シクロアルキル」とは、炭素数3~40のモノサイクリック又はポリサイクリックの非芳香族炭化水素に由来する1価の置換基を意味する。このようなシクロアルキルとしては、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明において、「ヘテロシクロアルキル」とは、核原子数3~40の非芳香族炭化水素に由来する1価の置換基を意味し、環中の1つ以上の炭素、好ましくは、1~3個の炭素が、N、O、S又はSeのようなヘテロ原子で置換されてもよい。このようなヘテロシクロアルキルとしては、例えば、モルホリン、ピペラジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本発明において、「脂環族環」とは、飽和された炭化水素環を意味し、好ましくは、5~7員の脂環族環であってもよく、芳香族又は脂環族環が融合したものであってもよい。
【0065】
本発明において、「ヘテロ脂環族環」とは、ヘテロ原子として環中に酸素、硫黄、又は窒素を含む脂環族環を意味し、ヘテロ原子の個数は、1~4であり、好ましくは、1~2である。ヘテロ脂環族環中の脂環族環としては、好ましくは、モノシクロアルキル又はビシクロアルキルであってもよく、芳香族環であるアリール又はヘテロアリールと融合したものであってもよい。
【0066】
<ポリエステル樹脂>
本発明の他の一例は、基本骨格自体にリン(P)を含み、難燃性に優れたポリエステル樹脂である。特に、上記化学式1で示されるリン系モノマー又はそのオリゴマーに由来する構成単位(a3)を含む点から、従来のポリエステル樹脂とは差別化される。
【0067】
一具体例では、上記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸に由来する構成単位(a1);ジオールに由来する構成単位(a2);及び、下記化学式2で示される構成単位(a3);を含む。
【0068】
【化15】
【0069】
式中、
Aは、C1~C40のアルキレン基、C2~C40のアルケニレン基、C2~C40のアルキニレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1は、O、S、及びNRからなる群から選択され、
Rは、水素、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択され、
1は、C1~C40のアルキレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1は、水素、ヒドロキシ基、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上であり、
nは、1~50の整数であり、
上記A及びY1の、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、及びヘテロアリーレン基と、上記R及びZ1の、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、それぞれ独立に、重水素(D)、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C40のアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換可能であり、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一又は異なっていてもよい。
【0070】
上記化学式2で示される構成単位(a3)の一具体例では、Aは、C1~C10のアルキレン基、C3~C12のシクロアルキレン基、C6~C20のアリーレン基、及び核原子数5~20個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1は、O、S、及びNRからなる群から選択され、
Rは、水素、C1~C10のアルキル基、C3~C10のシクロアルキル基、C6~C20のアリール基からなる群から選択され、
1は、C1~C10のアルキレン基、及びC6~C20のアリーレン基からなる群から選択され、
1は、水素、ヒドロキシ基、C1~C10のアルキル基、C3~C10のシクロアルキル基、及びC6~C20のアリール基からなる群から選択される1種以上であり、
nは、1~50の整数である。
【0071】
好適な一具体例では、上記化学式2で示される構成単位(a3)は、X1に導入される置換基の種類によって、下記化学式2A~化学式2Cのうちのいずれか1つに具体化され得るが、これらに限定されない。
【0072】
【化16】
【0073】
【化17】
【0074】
【化18】
【0075】
式中、
A、Y1、Z1、及びnは、それぞれ化学式2で定義した通りである。
【0076】
好適な他の一具体例では、上記化学式2で示される構成単位(a3)は、Aに導入される置換基の種類によって、下記化学式2D~化学式2Eに具体化され得るが、これらに限定されない。
【0077】
【化19】
【0078】
【化20】
【0079】
式中、
丸Bは、炭素数3~10の脂環族環、核原子数3~10個のヘテロ脂環族環、炭素数6~20の芳香族環、又は核原子数5~20個のヘテロ芳香族環であり、
mは、1~10の整数であり、
1、Y1、Z1、及びnは、それぞれ化学式2で定義した通りである。
【0080】
上記化学式2A~化学式2Eで示される構成単位(a3)は、X1及びAに導入される置換基の種類によって、下記に例示する化学式2a-1~化学式2f-1のうちのいずれか1つに具体化され得るが、これらに限定されない。
【0081】
【化21】
【0082】
【化22】
【0083】
【化23】
【0084】
【化24】
【0085】
【化25】
【0086】
【化26】
【0087】
式中、
1は、C1~C10のアルキレン基、及びC6~C20のアリーレン基からなる群から選択され、
1は、水素、ヒドロキシ基、C1~C10のアルキル基、C3~C10のシクロアルキル基、及びC6~C20のアリール基から群から選択される1種以上であり、
丸Bは、炭素数3~10の脂環族環、及び炭素数6~20の芳香族環からなる群から選択され、
Rは、水素、C1~C10のアルキル基、C3~C10のシクロアルキル基、C6~C20のアリール基からなる群から選択され、
nは、1~50の整数である。
【0088】
本発明に係るポリエステル樹脂を構成する構成単位(a1)は、カルボン酸由来のものであり、当該分野で公知のジカルボン酸モノマー及びその誘導体から誘導され得る。
【0089】
使用可能なジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、シュウ酸、マロン酸、アゼライン酸、フマル酸、ピメリン酸、スベリン酸、イソフタル酸、ドデカンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,2-ノルボルナンジカルボン酸、1,3-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、5-カリウムスルホイソフタル酸、5-リチウムスルホイソフタル酸、2-ナトリウムスルホテレフタル酸、又はこれらの混合物などが挙げられるが、これらに制限されない。必要に応じて、カルボン酸エステル誘導体を使用することができ、具体例としては、ジカルボン酸化合物のエステル化物、即ち、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸-2-ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、ダイマー酸ジメチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
一具体例では、上記ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)は、当該構成単位(a1)の全モル%を基準にして、テレフタル酸、イソフタル酸、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、アジピン酸のうちの少なくとも1つを、10モル%以上、具体的には、20~70モル%の範囲で含むことができる。
【0091】
本発明に係るポリエステル樹脂を構成する構成単位(a2)は、ジオール由来のものであり、当該分野で公知の通常のジオール系モノマー及びその誘導体から誘導され得る。
【0092】
上記ジオール系モノマーとしては、炭素数2~10の脂肪族ジオールを使用することができ、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、テトラメチルシクロブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジエタノール、1,10-デカメチレングリコール、1,12-ドデカンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシメチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、グリセロール、又はこれらの混合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0093】
一具体例では、上記ジオールに由来する構成単位(a2)は、当該構成単位(a2)の全モル%を基準にして、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールのうちの少なくとも一つを、10モル%以上、具体的には20~70モル%の範囲で含むことができる。
【0094】
本発明に係るポリエステル樹脂は、上述したジカルボン酸に由来する構成単位(a1)、ジオールに由来する構成単位(a2)、及び化学式2で示される構成単位(a3)を含むものであれば、その構造、成分、及び/又は組成などに特に制限されない。
【0095】
一例として、上記ポリエステル樹脂は、熱可塑性ポリエステル及びコポリエステル樹脂であってもよく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、又はこれらの組み合わせ形態であってもよい。好ましくは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂であり得る。
【0096】
本発明のポリエステル樹脂は、化学式2で示される構成単位(a3)を備え、難燃の効果及び重合度の向上効果を発揮することができる。特に、ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)と、ジオールに由来する構成単位(a2)と、化学式2で示される構成単位(a3)との含有比率を所定の比率に調節することにより、最終的に得られるポリエステル樹脂の難燃性の改善と重合度の向上効果を最適化することができる。
【0097】
一具体例では、上記化学式2で示される構成単位(a3)は、上記ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)100重量部に対して、0.5~30重量部、具体的には0.5~20重量部で含まれ得る。なお、ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)とジオールに由来する構成単位(a2)との含有比率は、特に制限されず、当該分野で公知の範囲内で適宜調節することができる。 一例として、ジオールの含有量については、ジカルボン酸に比して1.1~1.7当量の範囲で種々投入して重合を行うことができる。
【0098】
本発明のポリエステル樹脂を構成する各構成単位間の含有比率が上述した範囲に収まる場合は、エステル化反応及び重縮合反応の未反応物の発生が極力抑制されることで、ポリエステル樹脂の収率が高くなると共に、製造されたポリエステル樹脂の難燃性及び物性の安定性が有意に向上する。
【0099】
上記ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)、ジオールに由来する構成単位(a2)、及び化学式2で示される構成単位(a3)を含み、これらの含有比率が最適化された本発明のポリエステル樹脂は、別の難燃剤を使用することなく、樹脂自体に含まれているリン(P)原子によって、優れた難燃効果を発揮し、重縮合反応に参加するリン系モノマー及び/又はオリゴマーによって、重合度が向上し、分子量が増大することで、最終的に得られる樹脂の物性の安定性が向上する効果が得られる。
【0100】
一具体例では、上記ポリエステル樹脂中に含まれるリン(P)原子の含有量は、10~10,000ppmであり得る。
【0101】
他の一具体例では、上記ポリエステル樹脂は、メルトインデックス(MI)が、10~30g/10min(235℃基準)であり、好ましくは、12~25g/10minであり得る。 また、重量平均分子量(Mw)は、10,000~100,000g/モルであり、好ましくは、30,000~100,000g/モルであり、より好ましくは、40,000~90,000g/モルであり得る。また、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)は、150~350℃であり、好ましくは、195~350℃であり得る。
【0102】
また他の一具体例では、上記ポリエステル樹脂は、固有粘度(IV)が、0.7~1.5cP(25℃)であり、好ましくは、0.8~1.3cP(25℃)であり得る。また、ガラス転移温度(Tg)は、50~150℃であり、好ましくは、80~130℃であり得る。また、分子量分布(PDI、Mw/Mn)は、1~7、好ましくは、1~4であり得る。
【0103】
<ポリエステル樹脂の製造方法>
本発明の一実施例に係るポリエステル樹脂は、当該分野で公知の常法により製造することができ、特に制限されない。
【0104】
一例では、構成単位a1、構成単位a2、構成単位a3を誘導し得る各モノマー及び/又はオリゴマーを、溶融重合、固相重合、溶液重合、及びスラリー重合などの公知の方法で重合することにより製造される。また、上述した重合法を併用することもでき、一例として、溶融重合によりプレポリマーを製造し、さらにこれを固相重合する、2段階の重合によって製造することもできる。
【0105】
上記製造方法の一実施例では、ジカルボン酸及びジオールをエステル化してポリエステルオリゴマーを製造するステップ、及び上記ポリエステルオリゴマーと上記化学式1で示されるリン(P)系モノマー又はオリゴマーとを混合して縮重合させるステップを経て製造することができる。
【0106】
他の一実施例では、ジカルボン酸、ジオール、及び上記化学式1で示されるリン系モノマー又はオリゴマーを混合してエステル化した後、縮重合するステップを経て製造することができる。
【0107】
上述したエステル化反応及び/又は重合反応のステップでは、当該分野で公知の通常の添加剤を使用することができる。使用可能な添加剤としては、例えば、重合用触媒、熱安定剤、鎖延長剤、光安定剤、無機粒子、及び水酸化カリウムのうちの少なくとも1種以上が挙げられる。
【0108】
上記重合用触媒としては、特に制限されず、ポリエステルの重合用触媒として使用される公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第一スズ、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属塩触媒、N-メチルイミダゾールなどの含窒素複素環化合物をはじめとする有機化合物触媒などが挙げられる。触媒の使用量は、特に限定されず、当該分野で公知の範囲内で適宜調節することができる。
【0109】
また、熱安定剤としては、当該分野で公知の通常の安定剤を使用することができ、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリアリールイソプロピル化ホスフェート、ヒドロキノンビス-(ジフェニルホスフェート)、又はこれらの混合物などが挙げられる。
【0110】
上述した成分の他に、本発明では、発明の効果を阻害しない範囲内で、ポリエステル樹脂の製造に通常適用されている任意の他の添加剤をさらに含むことができる。使用可能な添加剤としては、例えば、消泡剤、酸化防止剤、潤滑剤、加水分解安定剤、離型剤、顔料、帯電防止剤、架橋剤、加工助剤、滴下防止剤、耐摩耗剤、表面活性化剤、微粒子充填剤、光沢改善剤、粘度調節剤、及びカップリング剤のうち少なくとも1種以上を適切に導入することができる。
【0111】
なお、エステル反応ステップ及び/又は重縮合反応ステップの条件については、特に制限されず、公知の範囲内で適宜調節することができる。
【0112】
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の他の一例は、上述したポリエステル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物である。
【0113】
上記ポリエステル樹脂は、上記ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)、上記ジオールに由来する構成単位(a2)、及び上記化学式1で示される構成単位(a3)を含むものであれば、成分及び/又は組成などに特に制限されない。一例として、熱可塑性ポリエステル及びコポリエステル樹脂を使用することができ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、又はこれらの1種以上の混合物を使用することができる。
【0114】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、上述したポリエステル樹脂の他に、当該分野で公知の通常の樹脂をさらに含むことができる。一例として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリ塩化ビニールなどのビニール系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、及びポリメチルメタアクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド、及びポリエーテルイミドなどのイミド系樹脂、ポリスチレン、高衝撃性ポリスチレン、AS樹脂、及びABS樹脂などのポリスチレン系樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フッ素樹脂、及びポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0115】
また、本発明では、発明の効果を阻害しない範囲内で、目的とする用途や効果に適した添加剤をさらに含むこともできる。使用可能な添加剤としては、例えば、充填剤、着色剤、顔料、分散剤、可塑剤、酸化防止剤、硬化剤、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、滑剤、潤滑剤、及び鎖延長剤からなる群から選択される1種以上が挙げられるが、これらに制限されない。
【0116】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、当該分野で公知の常法により製造することができ、一例として、ポリエステル樹脂、その他の樹脂や添加剤などを適宜配合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、1軸又は2軸押出機などを用いて溶融混練することで得られる。
【0117】
<成形品>
本発明の他の一例は、上述したポリエステル樹脂からなる成形品である。
【0118】
上記成形品の形状は、用途に応じて適宜変更可能であり、例えば、フィルム状、板状、繊維状などであり得るが、これらに制限されない。また、成形品として、具体的には、フィルム、シート、ボトル、液晶ディスプレイ、ホログラム、フィルタ、誘電体フィルム、電線用絶縁材、絶縁テープ、繊維強化複合材、その他、射出成形品などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0119】
本発明に係る成形品は、発明の効果を阻害しない範囲内で、ポリエステル樹脂の他に、当該分野で公知の通常の樹脂をさらに含むことができる。一例として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリ塩化ビニールなどのビニール系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、及びポリメチルメタアクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド、及びポリエーテルイミドなどのイミド系樹脂、ポリスチレン、高衝撃性ポリスチレン、AS樹脂、及びABS樹脂などのポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、フッ素樹脂、及びポリカーボネート樹脂などが挙げられる。
【0120】
また、本発明では、発明の効果を阻害しない範囲内で、通常の添加剤、例えば、着色剤、分散剤、可塑剤、酸化防止剤、硬化剤、難燃剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤をさらに含むことができる。
【0121】
本発明による成形品は、当該分野で公知の常法により製造することができ、一例として、ポリエステル樹脂、及びその他の樹脂や添加剤などを含む混合物を、プレス成形、発泡成形、射出成形、押出成形、パンチング成形を行うことで得られる。このとき、混合物は、ポリエステル樹脂、その他の樹脂や添加剤などを適宜配合した後、バンバリーミキサー、ニーダー、1軸又は2軸押出機などを用いて溶融混練することで得られる。
【0122】
一具体例では、上記成形品は、フィルムであり得る。
【0123】
フィルムは、当該分野で公知の常法、例えば、インフレーション成形、溶融押出成形などの押出成形、及び溶液キャスト法により製造することができる。製造されたフィルムは、ポリエステル樹脂からなる単層フィルム、又は異種材料からなる単層もしくは多層フィルムであってもよい。
【0124】
他の一具体例では、上記成形品は、繊維であり得る。
【0125】
繊維は、当該分野で公知の常法、例えば、溶融放射法、溶液放射法などにより製造することができる。製造された繊維は、ポリエステル樹脂からなるか、又は異種樹脂と混溶された形態であってもよい。
【0126】
上記のような本発明に係るポリエステル樹脂、熱可塑性樹脂組成物、及び成形品は、樹脂自体に含まれているリン(P)成分によって、優れた難燃性を有すると共に、重合度の調節によって、ポリエステル樹脂の物性の安定性を確保することができるため、電子・電気及び自動車部品のハウジング、コネクタなどの成形品の製造にも有用である。このような用途に限らず、従来のポリエステル樹脂が適用されている様々な技術分野及び工程において適用可能である。
【実施例
【0127】
以下、本発明を実施例に基づいて詳述する。但し、後述の実施例は、本発明の例示に過ぎないものであり、本発明は、これらの実施例によって限定されない。
【0128】
[合成例1~10:リン系モノマー及びオリゴマーの製造]
[合成例1]
2-カルボキシエチルフェニルホスフィン酸100g、エチレングリコール14,49gを反応器に仕込み、トルエン500mlを投入し、還流させた。トラップを設置し、反応後に生成される水を除去した。12時間後、反応が終了すると、トラップを取り外した後、クロロホルム300mlを投入し、残存した2-カルボキシエチルフェニルホスフィン酸を除去した後、溶媒を真空で除去し、下記化学式で示されるモノマー1(収率:87%、LC mass:455.1)を製造した。
【0129】
【化27】
【0130】
[合成例2]
エチレングリコール14.49gを1,4-ブタンジオール21.04gに変更した以外は、上記合成例1と同様にして下記化学式で示されるモノマー2(収率:73%、LC mass:483.1)を製造した。
【0131】
【化28】
【0132】
[合成例3]
エチレングリコール14.49gを1,4-ベンゼンジオール25.71gに変更した以外は、上記合成例1と同様にして下記化学式で示されるモノマー3(収率:83%、LC mass:503.1)を製造した。
【0133】
【化29】
【0134】
[合成例4]
エチレングリコール14.49gを1,4-シクロヘキサンジメタノール33.67gに変更した以外は、上記合成例1と同様にして下記化学式で示されるモノマー4(収率:69%、LC mass:537.2)を製造した。
【0135】
【化30】
【0136】
[合成例5]
2-カルボキシエチルフェニルホスフィン酸100g、エチレングリコール14.49gを、ホスホノ酢酸100g、1,4-ブタンジオール32.18gに変更した以外は、上記合成例1と同様にして下記化学式で示されるモノマー5(収率:74%、LC mass:335.0)を製造した。
【0137】
【化31】
【0138】
[合成例6]
2-カルボキシエチルフェニルホスフィン酸100g、エチレングリコール14.49gを反応器に仕込み、150℃に昇温した後、テトラブチルチタネート0.2gを投入した。トラップを設置し、反応後に生成される水を除去した。12時間後、反応が終了すると、トラップを取り外した後、クロロホルム300mlを投入し、残存した2-カルボキシエチルフェニルホスフィン酸を除去した後、減圧して溶媒を除去し、下記化学式で示されるオリゴマー6(収率:76%、Mw:1,150g/モル)を製造した。
【0139】
【化32】
【0140】
[合成例7]
エチレングリコール14.49gを1,4-ブタンジオール21.04gに変更した以外は、上記合成例6と同様にして下記化学式で示されるオリゴマー7(収率:79%、Mw:1,450g/モル)を製造した。
【0141】
【化33】
【0142】
[合成例8]
2-カルボキシエチルフェニルホスフィン酸100g、エチレングリコール14.49gを、ホスホノ酢酸100g、1,4-ブタンジオール32.18gに変更した以外は、上記合成例6と同様にして下記化学式で示されるオリゴマー8(収率:69%、Mw:1,150g/モル)を製造した。
【0143】
【化34】
【0144】
[合成例9]
エチレングリコール14.49gを1,4-ブタンジオール21.04gに変更し、テトラブチルチタネート0.2gを0.5gに変更した以外は、上記合成例6と同様にして下記化学式で示されるオリゴマー9(収率:85%、Mw:2900g/モル)を製造した。
【0145】
【化35】
【0146】
[合成例10]
エチレングリコール14.49gを1,4-ブタンジオール21.04gに変更し、テトラブチルチタネート0.2gを0.5gに変更し、トラップを真空ポンプに連結し、300torrで減圧し、水を除去しながら反応を進行させた以外は、上記合成例6と同様にして下記化学式で示されるオリゴマー10(収率:85%、Mw:5600g/モル)を製造した。
【0147】
【化36】
【0148】
[実施例1~10:ポリエステル樹脂製品の製造]
[実施例1]
ジメチルテレフタレート1940g、1,4-ブタンジオール1350g、テトラブチルチタネート1.16gを反応器に仕込み、常圧で温度が140℃になると、メタノールを還流させながら200℃まで徐々に昇温しながらエステル交換反応を行った。理論量のメタノールが95%流出した時点で、上記合成例1で製造されたモノマー1をジメチルテレフタレートの全重量に対して5重量部で添加し、エステル交換反応を完了した後、生成物を重縮合反応器に移送し、テトラブチルチタネートを0.58g添加し、反応温度を250℃に維持させながら、徐々に減圧して真空度を0.3トル(torr)以下に維持させて重縮合反応を進行し、所望の重合度に到達すると、窒素を注入して真空を解除し、重合体を吐出、冷却して最終の生成物1を得た。 製造された最終製品の物性値を下記表1に示す。
【0149】
[実施例2]
モノマー1の代わりにモノマー2を使用した以外は、上記実施例1と同様にして最終の生成物2を得た。
【0150】
[実施例3]
モノマー1の代わりにモノマー3を使用した以外は、上記実施例1と同様にして最終の生成物3を得た。
【0151】
[実施例4]
モノマー1の代わりにモノマー4を使用した以外は、上記実施例1と同様にして最終の生成物4を得た。
【0152】
[実施例5]
モノマー1の代わりにモノマー5を使用した以外は、上記実施例1と同様にして最終の生成物5を得た。
【0153】
[実施例6]
モノマー1の代わりにオリゴマー6を使用した以外は、上記実施例1と同様にして最終の生成物6を得た。
【0154】
[実施例7]
モノマー1の代わりにオリゴマー7を使用した以外は、上記実施例1と同様にして最終の生成物7を得た。
【0155】
[実施例8]
モノマー1の代わりにオリゴマー8を使用した以外は、上記実施例1と同様にして最終の生成物8を得た。
【0156】
[実施例9]
モノマー1の代わりにオリゴマー9を使用した以外は、上記実施例1と同様にして最終の生成物9を得た。
【0157】
[実施例10]
モノマー1の代わりにオリゴマー10を使用した以外は、上記実施例1と同様にして最終の生成物10を得た。
【0158】
[比較例1]
1-1.リン系モノマーの製造
2-カルボキシエチルフェニルホスフィン酸100g、ブロモエタノール200g、炭酸カリウム130gを反応器に仕込み、昇温後、還流させた。24時間経過後、反応が終了すると、クロロホルム500mlと水500mlを用いて層を分離し、クロロホルム層を抽出した後、硫酸マグネシウムを投入し、残渣を除去し、溶媒を除去して、下記化学式Aで示される比較例1のモノマー(収率:47%、n=1)を製造した。
【0159】
【化37】
【0160】
[化学式A]
1-2.ポリエステル樹脂製品の製造
モノマー1をモノマーAに変更した以外は、上記実施例1と同様にして比較例1の最終の生成物を得た。
【0161】
[比較例2]
2-1.リン系オリゴマーの製造
2-カルボキシエチルフェニルホスフィン酸をメチルホスフィン酸100gに変更した以外は、上記合成例1と同様にして下記化学式Bで示されるオリゴマー(収率:71%、Mw:1,150モル)を製造した。
【0162】
【化38】
【0163】
[化学式B]
2-2.リン系オリゴマーの製造
モノマー1をオリゴマーBに変更した以外は、上記実施例1と同様にして比較例2の最終の生成物を得た。
【0164】
[実験例:物性評価]
実施例1~10及び比較例1~2で製造されたポリエステル樹脂の最終製品の物性を下記のように評価し、その結果を下記表1に示す。
【0165】
<物性評価方法>
(1)重量平均分子量:アジレント1200シリーズを用いて、PCスタンダードで検量して測定した。
【0166】
(2)メルトインデックス(MI):ASTM D1238(235℃、2.16kgの条件)の試験規格に準拠して測定した。
【0167】
(3)融点(Tm):示差走査熱量法(DSC、メトラー・トレド)を用いて、15℃から400℃まで昇温させて融点(Tm)を測定した。
【0168】
(4)難燃グレード:UL94 Vの試験方法に準拠して難燃性を測定した。なお、試験片としては、厚さ0.8mmの試験片を用いた。
【0169】
(5)固有粘度(IV):ASTM D2196の試験規格に準拠して測定した。
【0170】
【表1】
【0171】
上記表1に示されるように、実施例1~10のポリエステル系樹脂の製品は、比較例1~2に比べて、同量のリン(P)系モノマー又はオリゴマーを使用しても、優れた難燃性を示すと共に、最終的に得られるポリエステル樹脂の粘度、溶融温度、加工性、分子量などにおいてより優れた物性の安定性が確保されることがわかった。特に、分子構造の末端にカルボキシル基を有する本発明のリン系モノマー又はオリゴマーを使用する場合、末端にヒドロキシ基を有する比較例1~2のリン系オリゴマーに比べて、重合度が有意に向上し、高分子重合に一層効果的であることが確認された。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で示されるリン系モノマー又はオリゴマー。
【化39】
上記化学式1中、
Aは、C1~C40のアルキレン基、C2~C40のアルケニレン基、C2~C40のアルキニレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1及びX2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、O、S、及びNRからなる群から選択され、
Rが複数個である場合、複数のRは、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択され、
1及びY2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、C1~C40のアルキレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1及びZ2は、互いに同一又は異なり、それぞれ独立に、水素、ヒドロキシ基、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上であり、
nは、1~50の整数であり、
上記A、Y1及びY2の、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、及びヘテロアリーレン基と、上記R、Z1及びZ2の、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、それぞれ独立に、重水素(D)、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C40のアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換可能であり、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一又は異なっていてもよい。)
【請求項2】
上記化学式1で示されるリン系モノマー又はオリゴマーは、下記化学式1A~化学式1Cのうちのいずれか1つで示されるものである、請求項1に記載のリン系モノマー又はオリゴマー。
【化40】
【化41】
【化42】
上記化学式1A~化学式1C中、
A、Y1、Y2、Z1、Z2、R、及びnは、それぞれ請求項1で定義した通りである。)
【請求項3】
上記化学式1で示されるリン系モノマー又はオリゴマーは、下記化学式1D~化学式1Eのうちのいずれか1つで示されるものである、請求項1に記載のリン系モノマー又はオリゴマー。
【化43】
【化44】
上記化学式1D~化学式1E中、
丸Bは、単環もしくは多環の脂環族環、単環もしくは多環のヘテロ脂環族環、芳香族環、及び単環もしくは多環のヘテロ芳香族環からなる群から選択され、
mは、1~10の整数であり、
1 、X2、Y1、Y2、Z1、Z2、及びnは、それぞれ請求項1で定義した通りである。)
【請求項4】
上記リン系モノマー又はオリゴマーは、下記化学式で示される化合物群から選択される1種以上を含むものである、請求項1に記載のリン系モノマー又はオリゴマー。
【化45】
上記化学式中、
nは、請求項1で定義した通りである。)
【請求項5】
上記リン系モノマー又はオリゴマーは、重量平均分子量(Mw)が、100~3,000g/モルである、請求項1に記載のリン系モノマー又はオリゴマー。
【請求項6】
ジカルボン酸に由来する構成単位(a1);
ジオールに由来する構成単位(a2);及び
請求項1~5のうちのいずれか1項に記載のリン系モノマー又はオリゴマーに由来する構成単位(a3);
を含む、ポリエステル樹脂。
【請求項7】
上記構成単位(a3)は、下記化学式2で示されるものである、請求項6に記載のポリエステル樹脂。
【化46】
上記化学式2中、
Aは、C1~C40のアルキレン基、C2~C40のアルケニレン基、C2~C40のアルキニレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1は、O、S、及びNRからなる群から選択され、
Rは、水素、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択され、
1は、C1~C40のアルキレン基、C3~C40のシクロアルキレン基、核原子数1~40個のヘテロアルキレン基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキレン基、C6~C60のアリーレン基、及び核原子数5~60個のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
1は、水素、ヒドロキシ基、C1~C40のアルキル基、C3~C40のシクロアルキル基、核原子数1~40個のヘテロアルキル基、核原子数3~40個のヘテロシクロアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上であり、
nは、1~50の整数であり、
上記A及びY1の、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、シクロアルキレン基、ヘテロアルキレン基、ヘテロシクロアルキレン基、アリーレン基、及びヘテロアリーレン基と、上記R及びZ1の、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、それぞれ独立に、重水素(D)、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C40のアルキル基、C6~C60のアリール基、及び核原子数5~60個のヘテロアリール基からなる群から選択される1種以上の置換基で置換可能であり、上記置換基が複数である場合、これらは、互いに同一又は異なっていてもよい。)
【請求項8】
上記化学式2で示される構成単位(a3)は、下記化学式2A~化学式2Cのうちのいずれか1つで示されるものである、請求項7に記載のポリエステル樹脂。
【化47】
【化48】
【化49】
上記化学式2A~化学式2C中、
A、Y1、Z1、及びnは、それぞれ請求項1で定義した通りである。)
【請求項9】
上記化学式2で示される構成単位(a3)は、下記化学式2D~化学式2Eのうちのいずれか1つで示されるものである、請求項7に記載のポリエステル樹脂。
【化50】
【化51】
上記化学式2D~化学式2E中、
丸Bは、単環もしくは多環の脂環族環、単環もしくは多環のヘテロ脂環族環、単環もしくは多環の芳香族環、及び単環もしくは多環のヘテロ芳香族環からなる群から選択され、
mは、1~10の整数であり、
1、Y1、Z1、及びnは、それぞれ請求項7で定義した通りである。)
【請求項10】
上記構成単位(a3)は、上記ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)100重量部に対して、0.5~30重量部で含まれる、請求項6に記載のポリエステル樹脂。
【請求項11】
リン(P)原子の含有量が、10~10,000ppmである、請求項6に記載のポリエステル樹脂。
【請求項12】
メルトインデックス(MI)が、10~30g/10min(235℃基準)であり、
重量平均分子量(Mw)が、10,000~100,000g/モルであり、
示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が、150~350℃であり、
固有粘度(IV)が、0.7~1.5mPa・s(cP(25℃)である、請求項6に記載のポリエステル樹脂。
【請求項13】
上記ポリエステル樹脂は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)である、請求項6に記載のポリエステル樹脂。
【請求項14】
請求項6に記載のポリエステル樹脂を含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項6に記載のポリエステル樹脂を含む、成形品。
【請求項16】
フィルム又は繊維である、請求項15に記載の成形品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
式中、
丸Bは、単環もしくは多環の脂環族環、単環もしくは多環のヘテロ脂環族環、単環もしくは多環の芳香族環、及び単環もしくは多環のヘテロ芳香族環からなる群から選択され得る。具体的には、炭素数3~10の脂環族環、核原子数3~10個のヘテロ脂環族環、炭素数6~20の芳香族環、又は核原子数5~20個のヘテロ芳香族環であり、
mは、1~10の整数であり、
1、Y1、Z1、及びnは、それぞれ化学式2で定義した通りである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
上記ポリエステル樹脂は、上記ジカルボン酸に由来する構成単位(a1)、上記ジオールに由来する構成単位(a2)、及び上記化学式で示される構成単位(a3)を含むものであれば、成分及び/又は組成などに特に制限されない。一例として、熱可塑性ポリエステル及びコポリエステル樹脂を使用することができ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、又はこれらの1種以上の混合物を使用することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0170
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0170】
【表1】
【国際調査報告】