IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリー インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-511552信頼性及び導通が向上したトレンチ型パワー・デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】信頼性及び導通が向上したトレンチ型パワー・デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240307BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240307BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H01L29/78 652A
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652H
H01L29/78 658A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527003
(86)(22)【出願日】2021-11-05
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 US2021058238
(87)【国際公開番号】W WO2022098996
(87)【国際公開日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】17/092,923
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】ウルフスピード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WOLFSPEED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウンスン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、セイ - ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】リヒテンヴァルナ―、ダニエル ジェンナー
(72)【発明者】
【氏名】イスラム、ネーム
(57)【要約】
パワー半導体デバイスは、第1の導電型のドリフト領域220と第2の導電型のウェル領域270とを備える半導体層構造と、ドリフト領域内へと延びてそれぞれのゲート絶縁層282及びゲート電極284を内部に含む複数のゲート・トレンチ280と、ゲート・トレンチに隣接するドリフト領域のそれぞれの部分における第2の導電型のそれぞれのシールド・パターン240と、ドリフト領域のそれぞれの部分における第1の導電型のそれぞれの導通促進領域250とを含む。ドリフト領域が第1の導電型の第1の濃度のドーパントを含み、それぞれの導通促進領域は、第1の濃度よりも高い第1の導電型の第2の濃度のドーパントを含む。関連するデバイス及び製造方法も論じられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型のドリフト領域と第2の導電型のウェル領域とを備える半導体層構造と、
前記ドリフト領域内へと延びる複数のゲート・トレンチと、
前記ゲート・トレンチに隣接する前記ドリフト領域のそれぞれの部分における前記第2の導電型のそれぞれのシールド・パターンと、
前記ドリフト領域のそれぞれの部分における前記第1の導電型のそれぞれの導通促進領域であって、前記それぞれのシールド・パターンに隣接する前記ウェル領域へと延びる、それぞれの導通促進領域と
を備え、
前記ドリフト領域が前記第1の導電型の第1の濃度のドーパントを含み、前記それぞれの導通促進領域は、前記第1の濃度よりも高い前記第1の導電型の第2の濃度のドーパントを含む、パワー半導体デバイス。
【請求項2】
前記ゲート・トレンチが第1の方向に沿って互いに離間され、前記それぞれの導通促進領域は、前記第1の方向に沿って前記ゲート・トレンチのそれぞれの角から離間される、請求項1に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項3】
前記ゲート・トレンチ間の前記ドリフト領域の前記それぞれの部分は、前記第1の方向に沿って前記第1の濃度と前記第2の濃度との間で変化する濃度勾配の前記第1の導電型の前記ドーパントを含む、請求項2に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項4】
前記ドリフト領域は、前記ゲート・トレンチの前記それぞれの角に近接して前記第1の濃度の前記ドーパントを含み、前記第2の濃度が前記第1の濃度よりも約2倍以上高い、請求項2又は3に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項5】
前記パワー半導体デバイスに印加される電圧に応じて、前記ゲート・トレンチ間の前記ドリフト領域の前記それぞれの部分は、前記第1の方向で前記ゲート・トレンチの前記それぞれの角から遠位にあるピークを有する電界分布を含む、請求項2又は3に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項6】
前記電界分布の前記ピークは、前記ゲート・トレンチの前記それぞれの角に近接する前記電界分布の強度よりも約10倍以上大きい、請求項5に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項7】
前記それぞれの導通促進領域は、前記ゲート・トレンチ間にあり、前記それぞれのシールド・パターンの下側境界を越えて前記ドリフト領域へと延在する、請求項1から3までのいずれか一項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項8】
前記それぞれの導通促進領域は、前記それぞれのシールド・パターンから前記ゲート・トレンチに向かってオフセットされる、請求項7に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項9】
前記それぞれの導通促進領域は、前記それぞれのシールド・パターンの両側及び下側境界に沿って延在する、請求項7に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項10】
前記それぞれの導通促進領域は、前記ドリフト領域の表面に対して直交しない軸に沿って延在する、請求項7に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項11】
前記半導体層構造は、
前記第1及び/又は前記第2の濃度よりも高い前記第1の導電型の第3の濃度の前記ドーパントを含む電流拡散層を更に備え、
前記それぞれの導通促進領域を備える前記ドリフト領域の前記それぞれの部分は、前記ウェル領域と前記電流拡散層との間にある、
請求項1から10までのいずれか一項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項12】
前記半導体層構造がワイド・バンドギャップ半導体を備え、前記ドリフト領域が前記第1の導電型のエピタキシャル層を備え、前記それぞれの導通促進領域が前記第1の導電型の注入領域を備える、請求項1から11までのいずれか一項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項13】
第1の導電型のドリフト領域と第2の導電型のウェル領域とを備える半導体層構造と、
前記ドリフト領域へと延びる複数のゲート・トレンチであって、第1の方向で互いに離間される、複数のゲート・トレンチと
を備え、
前記ゲート・トレンチに隣接する前記ドリフト領域のそれぞれの部分が、前記第1の方向に沿って変化する濃度の前記第1の導電型のドーパントを含む、パワー半導体デバイス。
【請求項14】
前記ドリフト領域は、前記第1の方向に沿って前記ゲート・トレンチのそれぞれの角から離間される前記第1の導電型のそれぞれの導通促進領域を備え、
前記第1の導電型の前記ドーパントの前記濃度は、前記ゲート・トレンチの前記それぞれの角に近接する第1の濃度と、前記それぞれの導通促進領域の第2の濃度とを含み、前記第2の濃度が前記第1の濃度よりも高い、請求項13に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項15】
前記第1の導電型の前記ドーパントの前記濃度は、前記第1の方向に沿う前記第1の濃度と前記第2の濃度との間の前記第1の導電型の前記ドーパントの濃度勾配を更に含む、請求項14に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項16】
前記第2の濃度が前記第1の濃度よりも約2倍以上高い、請求項14又は15に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項17】
前記ゲート・トレンチ間及び/又は前記ゲート・トレンチの下方の前記ドリフト領域の前記それぞれの部分における前記第2の導電型のそれぞれのシールド・パターンを更に備え、
前記それぞれの導通促進領域は、前記ゲート・トレンチ間にあるとともに、前記それぞれのシールド・パターンの下側境界を越えて前記ドリフト領域へと延在し、
前記それぞれの導通促進領域が前記それぞれのシールド・パターンから前記ゲート・トレンチに向かってオフセットされ、及び/又は前記それぞれの導通促進領域が前記それぞれのシールド・パターンの一方の側又は下側境界のうちの少なくとも一方に沿って延在する、請求項14又は15に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項18】
前記パワー半導体デバイスに印加される電圧に応じて、前記ゲート・トレンチ間の前記ドリフト領域の前記それぞれの部分は、前記第1の方向で前記ゲート・トレンチの前記それぞれの角から遠位にあるピークを有する電界分布を含む、請求項14又は15に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項19】
前記電界分布の前記ピークは、前記ゲート・トレンチの前記それぞれの角に近接する前記電界分布の強度よりも約10倍以上大きい、請求項18に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項20】
第1の導電型のドリフト領域と第2の導電型のウェル領域とを備える半導体層構造と、
前記ドリフト領域へと延びる複数のゲート・トレンチと
を備え、
前記パワー半導体デバイスに印加される電圧に応じて、前記ゲート・トレンチ間の前記ドリフト領域のそれぞれの部分が、前記ゲート・トレンチのそれぞれの角から遠位にあるピークを有する電界分布を含む、パワー半導体デバイス。
【請求項21】
前記ゲート・トレンチが第1の方向で互いに離間され、前記ゲート・トレンチ間の前記ドリフト領域の前記それぞれの部分における前記電界分布が前記第1の方向に沿って非対称である、請求項20に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項22】
前記電界分布の前記ピークは、前記ゲート・トレンチの前記それぞれの角に近接する前記電界分布の強度よりも約10倍以上大きい、請求項21に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項23】
前記ゲート・トレンチ間の前記ドリフト領域の前記それぞれの部分は、前記第1の方向に沿って変化する濃度の前記第1の導電型のドーパントを含む、請求項21に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項24】
前記第1の方向に沿って前記ゲート・トレンチの前記それぞれの角から離間される前記第1の導電型のそれぞれの導通促進領域を更に備え、
前記第1の導電型の前記ドーパントの前記濃度は、前記ゲート・トレンチの前記それぞれの角に近接する第1の濃度と、前記それぞれの導通促進領域の第2の濃度とを含み、前記第2の濃度が前記第1の濃度よりも高い、請求項20から23までのいずれか一項に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項25】
前記第1の導電型の前記ドーパントの前記濃度は、前記第1の方向に沿う前記第1の濃度と前記第2の濃度との間の前記第1の導電型の前記ドーパントの濃度勾配を更に含む、請求項24に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項26】
前記第2の濃度が前記第1の濃度よりも約10倍以上高い、請求項24に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項27】
前記それぞれの導通促進領域は、前記電界分布の前記ピークを含む、請求項24に記載のパワー半導体デバイス。
【請求項28】
パワー半導体デバイスを製造する方法であって、
第1の導電型のドリフト領域と第2の導電型のウェル領域とを備える半導体層構造を形成するステップと、
前記ドリフト領域のそれぞれの部分に前記第1の導電型のそれぞれの導通促進領域を形成するステップと、
前記ドリフト領域の前記それぞれの部分に前記第2の導電型のそれぞれのシールド・パターンを形成するステップと、
前記ドリフト領域の前記それぞれの部分に前記ドリフト領域へと延在する複数のゲート・トレンチを形成するステップと
を含み、
前記それぞれの導通促進領域が前記それぞれのシールド・パターンに隣接する前記ウェル領域内へと延在し、前記ドリフト領域が前記第1の導電型の第1の濃度のドーパントを含み、前記それぞれの導通促進領域が、前記第1の濃度よりも高い前記第1の導電型の第2の濃度の前記ドーパントを含む、方法。
【請求項29】
前記ゲート・トレンチが第1の方向に沿って互いに離間され、前記それぞれの導通促進領域は、前記第1の方向に沿って前記ゲート・トレンチのそれぞれの角から離間される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ゲート・トレンチ間の前記ドリフト領域の前記それぞれの部分は、前記第1の方向に沿って前記第1の濃度と前記第2の濃度との間で変化する濃度勾配の前記第1の導電型の前記ドーパントを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記半導体層構造がワイド・バンドギャップ半導体を備え、前記ドリフト領域が前記第1の導電型のエピタキシャル層を備え、前記それぞれの導通促進領域が前記第1の導電型の注入領域を備える、請求項28から30までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ドリフト領域は、前記ゲート・トレンチの前記それぞれの角に近接して前記第1の濃度の前記ドーパントを含み、前記第2の濃度が前記第1の濃度よりも約10倍以上高い、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記それぞれの導通促進領域は、前記ゲート・トレンチ間にあるとともに、前記それぞれのシールド・パターンの下側境界を越えて前記ドリフト領域へと延在する、請求項28から32までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記それぞれの導通促進領域が前記それぞれのシールド・パターンから前記ゲート・トレンチに向かってオフセットされ、及び/又は前記それぞれの導通促進領域が前記それぞれのシールド・パターンの一方の側又は下側境界のうちの少なくとも一方に沿って延在する、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月9日に出願された米国特許出願第17/092,923号からの優先権を主張し、その開示内容は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、半導体デバイスに関し、より詳細には、パワー半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
パワー半導体デバイスは、大電流を流して高電圧をサポートするために使用される。例えば、パワー金属絶縁体半導体電界効果トランジスタ(「MISFET:Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistors」、金属酸化膜半導体FET(「MOSFET:Metal Oxide Semiconductor FET」)を含む)、バイポーラ接合トランジスタ(「BJT:Bipolar Junction Transistors」)、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(「IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistors」)、ジャンクション・バリア・ショットキー・ダイオード、ゲート・ターンオフ・トランジスタ(「GTO:Gate Turn-Off Transistors」)、MOS制御サイリスタ、及びその他の様々なデバイスを含む、多種多様なパワー半導体デバイスが当技術分野で知られている。これらのパワー半導体デバイスは、一般に、例えば、炭化ケイ素(「SiC」)又は窒化ガリウム(「GaN」)ベースの半導体材料などのワイド・バンドギャップ半導体材料から製造される。本明細書では、ワイド・バンドギャップ半導体材料は、約1.40eVよりも大きい、例えば、約2eVよりも大きいバンドギャップを有する半導体材料を指す。
【0004】
従来のパワー半導体デバイスは、一般に、第1の導電型を有する半導体基板(例えば、n型基板)を有し、該基板上に第1の導電型(例えば、n型)を有するエピタキシャル層構造が形成される。このエピタキシャル層構造の一部(1つ又は複数の別個の層を備えてもよい)は、パワー半導体デバイスのドリフト層又はドリフト領域として機能する。デバイスは、一般に、例えば、p-n接合などの接合部を有する1つ又は複数の「ユニット・セル」構造を含む「活性領域」を含む。活性領域は、ドリフト領域上及び/又はドリフト領域内に形成される場合がある。活性領域は、逆バイアス方向の電圧を遮断して、順バイアス方向に電流を流すための主接合部として作用する。パワー半導体デバイスはまた、活性領域に隣接する終端領域にエッジ終端を有する場合もある。1つ又は複数のパワー半導体デバイスを基板上に形成することができ、各パワー半導体デバイスは、一般に、それ自体のエッジ終端を有する。基板が完全に処理された後、結果として得られる構造をダイシングして、個々のエッジ終端パワー半導体デバイスを分離することができる。
【0005】
パワー半導体デバイスは、各パワー半導体デバイスの活性領域が電気的に並列に接続されて単一のパワー半導体デバイスとして機能する多数の個別の「ユニット・セル」構造を含む、ユニット・セル構成を有する場合がある。高電力用途では、そのようなパワー半導体デバイスは、単一のチップ又は「ダイ」に実装された数千又は数万のユニット・セルを含む場合がある。ダイ又はチップは、電子回路素子が製造される半導体材料又は他の基板の小さなブロックを含む場合がある。
【0006】
パワー半導体デバイスは、横型構造又は縦型構造を有することができる。横型構造を有するデバイスでは、デバイスの端子(例えば、パワーMOSFETデバイスのためのドレイン端子、ゲート端子、及びソース端子)は、半導体層構造の同じ主面(例えば、上面又は底面)上にある。これに対し、縦型構造を有するデバイスでは、少なくとも1つの端子が半導体層構造の各主面に設けられる(例えば、縦型MOSFETデバイスでは、ソースが半導体層構造の上面にあってもよく、ドレインが半導体層構造の底面にあってもよい)。半導体層構造は、下にある基板を含んでも含まなくてもよい。本明細書では、「半導体層構造」という用語は、1つ又は複数の半導体層、例えば、半導体基板及び/又は半導体エピタキシャル層を含む構造を指す。
【0007】
MOSFETトランジスタを含む縦型パワー半導体デバイスは、トランジスタのゲート電極が半導体層構造の上に形成される標準的なゲート電極設計を有することができ、又は、代替として、半導体層構造内のトレンチに埋め込まれたゲート電極を有する場合がある。埋め込みゲート電極を有するMOSFETは、一般に、ゲート・トレンチMOSFETと称される。標準的なゲート電極設計では、各ユニット・セル・トランジスタのチャネル領域がゲート電極の下に水平に配置される。これに対し、ゲート・トレンチMOSFET設計では、チャネルが垂直に配置される。ゲート・トレンチMOSFETは、性能の向上をもたらすことができるが、一般に、より複雑な製造プロセスを必要とする。
【0008】
パワー半導体デバイスは、大きな電圧及び/又は電流を(順方向又は逆方向遮断状態で)遮断又は(順方向動作状態で)通過させるように設計される。例えば、遮断状態において、パワー半導体デバイスは、数百ボルト又は数千ボルトの電位を維持するように設計され得る。デバイスが遮断するように設計される電圧レベルに印加電圧が近づく又は超えると、無視できないレベルの電流(漏れ電流と呼ばれる)がパワー半導体デバイスを通じて流れ始める場合がある。デバイスの遮断能力は、とりわけ、ドーピングとドリフト領域の厚さとの関数となり得る。漏れ電流はまた、デバイスのエッジ終端及び/又は一次接合部の不具合など、他の理由でも発生する場合がある。デバイスに印加される電圧が降伏電圧を超えて臨界レベルまで増大される場合には、電界の増大により、半導体デバイス内で制御不能且つ望ましくない上昇の一途をたどる電荷キャリアの生成が起こり、それにより、アバランシェ降伏として知られる状態が引き起こされる場合がある。
【0009】
また、ゲート電極を半導体層構造から分離する比較的薄いゲート絶縁層(例えば、ゲート酸化物層)は、オン状態(導通(conduction))動作中又はオフ状態(遮断)動作中のいずれかでゲート絶縁層が高電界レベルに晒されるときに劣化する可能性がある。ゲート絶縁層のこの劣化は、最終的にゲート絶縁層の絶縁破壊につながる可能性があり、その時点でゲート電極が半導体層構造に短絡する場合があり、デバイスが破壊される可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
幾つかの実施例によれば、パワー半導体デバイスは、第1の導電型のドリフト領域と第2の導電型のウェル領域とを備える半導体層構造と、ドリフト領域内へと延びる複数のゲート・トレンチと、ゲート・トレンチに隣接するドリフト領域のそれぞれの部分における第2の導電型のそれぞれのシールド・パターンと、ドリフト領域のそれぞれの部分における第1の導電型のそれぞれの導通促進領域とを含む。それぞれの導通促進領域はそれぞれのシールド・パターンに隣接するウェル領域へと延びる。ドリフト領域は第1の導電型の第1の濃度のドーパントを含み、それぞれの導通促進領域は、第1の濃度よりも高い第1の導電型の第2の濃度のドーパントを含む。
【0011】
幾つかの実施例では、ゲート・トレンチが第1の方向に沿って互いに離間されてもよく、それぞれの導通促進領域は、第1の方向に沿ってゲート・トレンチのそれぞれの角から離間されてもよい。
【0012】
幾つかの実施例では、ゲート・トレンチ間のドリフト領域のそれぞれの部分は、第1の方向に沿って第1の濃度と第2の濃度との間で変化する濃度勾配の第1の導電型のドーパントを含んでもよい。
【0013】
幾つかの実施例では、ドリフト領域は、ゲート・トレンチのそれぞれの角に近接して第1の濃度のドーパントを含んでもよく、第2の濃度は第1の濃度よりも約2倍以上高くてもよい。
【0014】
幾つかの実施例では、パワー半導体デバイスに印加される電圧に応じて、ゲート・トレンチ間のドリフト領域のそれぞれの部分は、第1の方向でゲート・トレンチのそれぞれの角から遠位にあるピークを有する電界分布を含んでもよい。
【0015】
幾つかの実施例では、電界分布のピークは、ゲート・トレンチのそれぞれの角に近接する電界分布の強度よりも約10倍以上大きくてもよい。
【0016】
幾つかの実施例では、それぞれの導通促進領域は、ゲート・トレンチ間にあってもよく、それぞれのシールド・パターンの下側境界を越えてドリフト領域へと延在してもよい。
【0017】
幾つかの実施例では、それぞれの導通促進領域は、それぞれのシールド・パターンからゲート・トレンチに向かってオフセットされてもよい。
【0018】
幾つかの実施例では、それぞれの導通促進領域は、それぞれのシールド・パターンの両側及び下側境界に沿って延在してもよい。
【0019】
幾つかの実施例では、それぞれの導通促進領域は、ドリフト領域の表面に対して直交しない軸に沿って延在してもよい。
【0020】
幾つかの実施例では、半導体層構造は、第1及び/又は第2の濃度よりも高い第1の導電型の第3の濃度のドーパントを含む電流拡散層を更に含んでもよく、それぞれの導通促進領域を備えるドリフト領域のそれぞれの部分は、ウェル領域と電流拡散層との間にあってもよい。
【0021】
幾つかの実施例では、半導体層構造がワイド・バンドギャップ半導体を含んでもよく、ドリフト領域が第1の導電型のエピタキシャル層であってもよく、それぞれの導通促進領域が第1の導電型の注入領域であってもよい。
【0022】
幾つかの実施例によれば、パワー半導体デバイスは、第1の導電型のドリフト領域と第2の導電型のウェル領域とを備える半導体層構造と、ドリフト領域へと延びる複数のゲート・トレンチとを含む。ゲート・トレンチは第1の方向で互いに離間され、ゲート・トレンチに隣接するドリフト領域のそれぞれの部分は、第1の方向に沿って変化する濃度の第1の導電型のドーパントを含む。
【0023】
幾つかの実施例では、ドリフト領域は、第1の方向に沿ってゲート・トレンチのそれぞれの角から離間される第1の導電型のそれぞれの導通促進領域を含んでもよい。第1の導電型のドーパントの濃度は、ゲート・トレンチのそれぞれの角に近接する第1の濃度と、それぞれの導通促進領域の第2の濃度とを含んでもよく、第2の濃度は第1の濃度よりも高い。
【0024】
幾つかの実施例では、第1の導電型のドーパントの濃度は、第1の方向に沿う第1の濃度と第2の濃度との間の第1の導電型のドーパントの濃度勾配を更に含む。
【0025】
幾つかの実施例では、第2の濃度が第1の濃度よりも約2倍以上高くてもよい。
【0026】
幾つかの実施例では、ゲート・トレンチ間及び/又はゲート・トレンチの下方のドリフト領域のそれぞれの部分に、第2の導電型のそれぞれのシールド・パターンが設けられてもよく、それぞれの導通促進領域は、ゲート・トレンチ間にあってもよく、それぞれのシールド・パターンの下側境界を越えてドリフト領域へと延在してもよい。それぞれの導通促進領域は、それぞれのシールド・パターンからゲート・トレンチに向かってオフセットされてもよく、及び/又はそれぞれの導通促進領域がそれぞれのシールド・パターンの一方の側又は下側境界のうちの少なくとも一方に沿って延在してもよい。
【0027】
幾つかの実施例では、パワー半導体デバイスに印加される電圧に応じて、ゲート・トレンチ間のドリフト領域のそれぞれの部分は、第1の方向でゲート・トレンチのそれぞれの角から遠位にあるピークを有する電界分布を含んでもよい。
【0028】
幾つかの実施例では、電界分布のピークは、ゲート・トレンチのそれぞれの角に近接する電界分布の強度よりも約2倍以上大きくてもよい。
【0029】
幾つかの実施例によれば、パワー半導体デバイスは、第1の導電型のドリフト領域と第2の導電型のウェル領域とを備える半導体層構造と、ドリフト領域へと延びる複数のゲート・トレンチとを含む。パワー半導体デバイスに印加される電圧に応じて、ゲート・トレンチ間のドリフト領域のそれぞれの部分は、ゲート・トレンチのそれぞれの角から遠位にあるピークを有する電界分布を含む。
【0030】
幾つかの実施例では、ゲート・トレンチが第1の方向で互いに離間されてもよく、ゲート・トレンチ間のドリフト領域のそれぞれの部分における電界分布が第1の方向に沿って非対称であってもよい。
【0031】
幾つかの実施例では、電界分布のピークは、ゲート・トレンチのそれぞれの角に近接する電界分布の強度よりも約10倍以上大きくてもよい。
【0032】
幾つかの実施例では、ゲート・トレンチ間のドリフト領域のそれぞれの部分は、第1の方向に沿って変化する濃度の第1の導電型のドーパントを含む。
【0033】
幾つかの実施例では、第1の導電型のそれぞれの導通促進領域が、第1の方向に沿ってゲート・トレンチのそれぞれの角から離間されてもよく、第1の導電型のドーパントの濃度は、ゲート・トレンチのそれぞれの角に近接する第1の濃度と、それぞれの導通促進領域の第2の濃度とを含んでもよく、第2の濃度が第1の濃度よりも高くてもよい。
【0034】
幾つかの実施例では、第1の導電型のドーパントの濃度は、第1の方向に沿う第1の濃度と第2の濃度との間の第1の導電型のドーパントの濃度勾配を更に含んでもよい。
【0035】
幾つかの実施例では、第2の濃度が第1の濃度よりも約10倍以上高くてもよい。
【0036】
幾つかの実施例では、それぞれの導通促進領域は、電界分布のピークを含んでもよい。
【0037】
幾つかの実施例によれば、パワー半導体デバイスを製造する方法は、第1の導電型のドリフト領域と第2の導電型のウェル領域とを備える半導体層構造を形成するステップと、ドリフト領域のそれぞれの部分に第1の導電型のそれぞれの導通促進領域を形成するステップと、ドリフト領域のそれぞれの部分に第2の導電型のそれぞれのシールド・パターンを形成するステップと、ドリフト領域のそれぞれの部分にドリフト領域へと延在する複数のゲート・トレンチを形成するステップとを含む。それぞれの導通促進領域がそれぞれのシールド・パターンに隣接するウェル領域内へと延在し、ドリフト領域が第1の導電型の第1の濃度のドーパントを含み、それぞれの導通促進領域が第1の濃度よりも高い第1の導電型の第2の濃度のドーパントを含む。
【0038】
幾つかの実施例では、ゲート・トレンチが第1の方向に沿って互いに離間されてもよく、それぞれの導通促進領域は、第1の方向に沿ってゲート・トレンチのそれぞれの角から離間されてもよい。
【0039】
幾つかの実施例では、ゲート・トレンチ間のドリフト領域のそれぞれの部分は、第1の方向に沿って第1の濃度と第2の濃度との間で変化する濃度勾配の第1の導電型のドーパントを含んでもよい。
【0040】
幾つかの実施例では、半導体層構造がワイド・バンドギャップ半導体を含んでもよく、ドリフト領域が第1の導電型のエピタキシャル層を含んでもよく、それぞれの導通促進領域が第1の導電型の注入領域を含んでもよい。
【0041】
幾つかの実施例では、ドリフト領域は、ゲート・トレンチのそれぞれの角に近接して第1の濃度のドーパントを含んでもよく、第2の濃度が第1の濃度よりも約10倍以上高くてもよい。
【0042】
幾つかの実施例では、それぞれの導通促進領域は、ゲート・トレンチ間にあってもよく、それぞれのシールド・パターンの下側境界を越えてドリフト領域へと延在してもよい。
【0043】
幾つかの実施例では、それぞれの導通促進領域がそれぞれのシールド・パターンからゲート・トレンチに向かってオフセットされてもよく、及び/又はそれぞれの導通促進領域がそれぞれのシールド・パターンの一方の側又は下側境界のうちの少なくとも一方に沿って延在してもよい。
【0044】
幾つかの実施例に係る他のデバイス、装置、及び/又は方法は、以下の図面及び詳細な説明を検討すれば、当業者に明らかとなる。そのような更なる実施例の全ては、上記の実施例の任意及び全ての組合せに加えて、本明細書に含まれ、本発明の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1A】ゲート・トレンチの一方の側を遮断するシールド領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスの実例を示す概略断面図である。
図1B】交互のシールド領域とゲート・トレンチ領域とを含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスの実例を示す概略断面図である。
図2】本発明の幾つかの実施例に係るゲート・トレンチ間にシールド領域及び整列した導通促進領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスの実例を示す概略断面図である。
図3A図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図3B図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図3C図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図3D図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図3E図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図3F図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図4A図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスのJFET領域における様々なp型及びn型ドーパント濃度のグラフ例図である。
図4B図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスのJFET領域における様々なp型及びn型ドーパント濃度のグラフ例図である。
図4C図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスのJFET領域における様々なp型及びn型ドーパント濃度のグラフ例図である。
図4D図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスのJFET領域における様々なp型及びn型ドーパント濃度のグラフ例図である。
図5】本発明の幾つかの実施例に係るゲート・トレンチ間にシールド領域及びオフセット導通促進領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスの実例を示す概略断面図である。
図6A図5のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図6B図5のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図6C図5のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図6D図5のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図6E図5のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図6F図5のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図7A図5のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスのJFET領域における様々なn型ドーパント濃度のグラフ例図である。
図7B図5のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスのJFET領域における様々なn型ドーパント濃度のグラフ例図である。
図8】本発明の幾つかの実施例に係るゲート・トレンチ間にシールド領域及び傾斜した導通促進領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスの実例を示す概略断面図である。
図9A図8のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図9B図8のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図9C図8のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図9D図8のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図9E図8のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図9F図8のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図10A図8のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスのJFET領域におけるドーパント濃度の変化のグラフ例図である。
図10B図8のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスのJFET領域におけるドーパント濃度の変化のグラフ例図である。
図11A】本発明の幾つかの実施例に係るドーパント濃度が低減されたドリフト層を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイス内の電界分布のグラフ例図である。
図11B】本発明の幾つかの実施例に係るドーパント濃度が低減されたドリフト層を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイス内の電界分布のグラフ例図である。
図12】本発明の幾つかの実施例に係るゲート・トレンチ間に底部シールド領域及びオフセット導通促進領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスの実例を示す概略断面図である。
図13A】底部シールド領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図13B】底部シールド領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図13C】底部シールド領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図13D】底部シールド領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図13E】底部シールド領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図13F】底部シールド領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。
図14】本発明の幾つかの実施例に係るゲート・トレンチ間に交互のシールド領域と整列した導通促進領域とを含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスの実例を示す概略断面図である。
図15】本発明の幾つかの実施例に係る高濃度にドープされた電流拡散層又は領域を伴うゲート・トレンチ間にシールド領域及びオフセット導通促進領域を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスの実例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の幾つかの実施例は、パワー半導体デバイス(例えば、MOSFET及び他のゲート制御パワー・デバイス)の改良を対象とする。多くのパワー半導体デバイスは、デバイスのウェル領域及び/又はゲート電極の下方の半導体材料の層とは異なる導電型の、シールド・パターンとも呼ばれる、いわゆる深い又は「埋め込まれた」シールド半導体領域を含む。例えば、半導体層構造におけるトレンチ内に形成されたゲート電極とゲート絶縁層とを有するデバイスでは、高電界によって経時的にゲート絶縁層が劣化し、最終的にはデバイスの故障につながり得る。深いシールド・パターンは、特に電界レベルがより集中する可能性があるゲート・トレンチの角において、ゲート絶縁層内の電界レベルを低減するために、ゲート・トレンチの下方に設けられ得る。深いシールド・パターンは、チャネル領域と同じ導電型を有する高濃度にドープされた半導体層を含む。
【0047】
トレンチ型縦型パワー半導体デバイスを形成するために、様々な手法が使用され得る。図1A及び図1Bは、そのような異なる手法の2つの実例を概略的に示す。本明細書では、実例として特定の導電型(すなわち、n型及びp型)の領域に関連して説明されて図示されるが、本発明の実施例によれば、図示された実例のいずれかにおける領域の導電型が逆であってもよい(すなわち、p型及びn型)ことが理解される。
【0048】
図1A及び図1Bは、深く埋め込まれたP型シールド領域140a、140bを含むトレンチ型縦型パワー・デバイス(パワーMOSFET100a、100bとして図示される)の実例を示す概略断面図である。図1A及び図1Bに示されるように、パワーMOSFET100a、100bはそれぞれ、高濃度にドープされた(N)n型基板110、例えば炭化ケイ素基板を含む。低濃度にドープされた(N)n型ドリフト層又は領域120が、例えばエピタキシャル成長によって基板110上に設けられる。幾つかの実施例では、n型ドリフト領域120の一部は、ドリフト領域120の上部よりも高いドーパント濃度を有するn型電流拡散層(「CSL:current spreading layer」)を含み得る(図15の実例では層1530として示される)。適度にドープされたp型層がドリフト領域120上に(例えばエピタキシャル成長又は注入によって)形成され、デバイス100a、100bのためのp型ウェル領域(又は「Pウェル」)170として作用する。基板110、ドリフト領域120(電流拡散層を含む)、及びPウェル170を画定する適度にドープされたp型層は、その中に形成される様々な領域/パターンと共に、MOSFET100a、100bの半導体層構造106に含まれる。
【0049】
更に図1A及び図1Bを参照すると、トレンチ180が「ストライプ状」ゲート・トレンチ・レイアウトを伴って半導体層構造106に形成され、この場合、トレンチ180は長手方向に互いに平行に連続的に延在し、長手方向に(例えば、長手方向に対して垂直に)横断する方向で離間される。トレンチ180(ゲート電極184がその内部に形成される)は、適度にドープされたp型層170を通じて延びて、それぞれのPウェルを画定する。例えば、トレンチ180によって露出された部分へのイオン注入によって、高濃度にドープされた(P)p型シールド・パターン140a、140bがドリフト領域120に形成される。深いシールド・パターン140a、140bはPウェル170と電気的に接続され得る。ゲート絶縁層182が、各トレンチ180の底面上及び側壁上に形成され(図1A)、又はトレンチ180の1つおきに形成される(図1Bでは、介在するトレンチ180にソース接点190bが形成される)。
【0050】
ゲート電極184(又は「ゲート」)が各ゲート絶縁層182上に形成され、それぞれのゲート・トレンチ180を充填する。縦型トランジスタチャネル領域(破線の矢印によって示される導通を伴う)がゲート絶縁層182に隣接してPウェル170内に画定される。高濃度にドープされたnソース領域160が、例えばイオン注入によってPウェル170の上部に形成される。高濃度にドープされたn型ソース領域160上及び深いシールド・パターン140a、140b上にはソース接点190a、190bが形成される。幾つかの実施例では、ソース接点190a、190bがオーム金属であってもよい。ドレイン接点192が基板110の下面上に形成される。ゲート接点(図示せず)が各ゲート電極184上に形成され得る。
【0051】
図1A及び図1Bの実例では、深く埋め込まれたp型半導体領域又はシールド・パターン140a、140bは、高電界におけるトレンチMOSFET100a、100bの劣化を防ぐように構成されるが、デバイス100a、100bの活性導電面積を制限することもできる。特に、実例のデバイス100a及び100bにおいて、ゲート・トレンチ180の底部及び一方の側178(図1A)又は両側178(図1B)におけるシールド・パターン140a、140bは、グランドに接続されるそれぞれのソース接点190a、190bへの接続によって電圧及び/又は電流の遮断をもたらすように構成される。深いシールド・パターン140を電気的に接地できるようにするべく、シールド接続パターン(図示せず)をデバイス100a、100bの上のソース接点190に接続することができる。
【0052】
図1Aでは、シールド・パターン140aは、トレンチ180の一方の側でソース接点190に向かってオフセットされ、ゲート・トレンチ180の下側角領域まで延びる。ゲート絶縁層182は、角領域で特に絶縁破壊を受けやすい可能性があるため、シールド・パターン140aは、逆遮断動作中にゲート・トレンチ180の下側角領域におけるゲート絶縁層182を高電界から保護するのに役立ち得る。
【0053】
本発明の実施例は、ピーク電界分布を、ゲート・トレンチの角におけるゲート絶縁層の部分などの、絶縁破壊をより受けやすいデバイスの1つ又は複数の領域から遠ざけることによって、信頼性を更に向上させるレイアウト及び設計構成を含むパワー半導体デバイスを対象とする。幾つかの実施例では、これは、隣接するゲート電極が互いに分離される方向に沿って変化するドーピング特性を伴うゲート電極の下方にある及び/又はゲート電極に隣接するドリフト領域の上部(本明細書では「JFET領域」とも呼ばれる)を形成することによって達成され得る。例えば、トレンチ型縦型パワー半導体デバイスにおいて、JFET領域は、隣接するゲート・トレンチ間及びウェル領域の下方にあるドリフト領域の上部を含むことができる。
【0054】
トレンチ型縦型パワー・デバイスが炭化ケイ素又は他のワイド・バンドギャップ半導体材料で製造される場合、ドーピング特性が変化する領域を形成することは課題を引き起こす場合がある。半導体材料にn型及び/又はp型ドーパントをドープするための方法は、(1)半導体材料をその成長中にドープする、(2)ドーパントを半導体材料中に拡散する、及び(3)イオン注入を使用して選択的に半導体材料にドーパントを注入することを含む。エピタキシャル成長中に炭化ケイ素がドープされると、ドーパントが不均一に蓄積する傾向があるため、ドーパント濃度が(例えば±15%だけ)変動する場合があり、デバイスの動作及び/又は信頼性に悪影響を与える可能性がある。更に、炭化ケイ素、窒化ガリウム、及び様々なワイド・バンドギャップ半導体デバイスでは、拡散によるドーピングは望ましくない場合がある。これは、n型及びp型のドーパントが、高温でもこれらの材料中で十分に(又は全く)拡散しない傾向があるからである。
【0055】
幾つかの実施例では、高エネルギーのイオン注入及び/又は他の方法を使用して、ゲート・トレンチが離間される横方向(本明細書ではx方向に関連して言及される)に沿ってゲート・トレンチ間のドリフト領域の上部のそれぞれのドーパント濃度を(例えば、不均一又は非対称の分布で)変化させることができる。本明細書に記載されるドーパント濃度又は濃度勾配は、横方向に又は横方向に沿って段階的又は連続的(例えば直線的又は指数関数的)な方式で変化し得る。印加電圧に応じて、x方向のドーパント濃度の変化は、隣接するゲート・トレンチ間に非対称的な電界分布をもたらし得る。例えば、逆遮断動作中に、ピーク電界分布がゲート・トレンチの下側角から離れるようにシフトされ得る。したがって、本発明の実施例に係るパワーMOSFET及び他のゲート制御デバイスは、信頼性の向上を示すことができる。
【0056】
幾つかの実施例では、ドリフト層の上部(JFET領域を含む)は、ドーピング濃度を下げるために、エピタキシャル成長中に比較的低濃度にドープされてもよい。例えば、nチャネル・デバイスでは、JFET領域がn型にドープされる。ゲート・トレンチに隣接するJFET領域の部分は、例えばエピタキシャル成長中に半導体層構造の上部をより低濃度にn型ドープすることによって、低減されたn型ドーピング濃度を有することができる。JFET領域の低減されたn型ドーパント濃度により、ゲート・トレンチの下側角におけるゲート絶縁層を絶縁破壊から保護することができる。しかしながら、ドーパント濃度を下げることにより、より低濃度にドープされたJFET領域は、オン状態動作中に抵抗の増大を示す可能性がある。抵抗の増大を補償するために、JFETの一部は、ドリフト層と同じ導電型のドーパント濃度を増大して形成され得る(本明細書では導通促進領域と呼ばれる)。幾つかの実施例では、より高いドーパント濃度を有する導通促進領域は、例えば高エネルギーのイオン注入を使用して、ゲート・トレンチの角から横方向に離間されるゲート・トレンチ間のドリフト領域の部分に選択的に形成され得る。したがって、(i)ゲート・トレンチ角に隣接する電界強度を低減でき、(ii)ピーク電界強度は、実質的に維持又は改善され得るが、ゲート・トレンチ角から離れるようにシフトされ得る。それにより、本発明の実施例に係るパワーMOSFET及び他のゲート制御デバイスの信頼性の向上が、デバイス性能を維持又は改善しつつ達成され得る。
【0057】
図2は、本発明の幾つかの実施例に係るゲート・トレンチ280間にシールド領域240と整列された導通促進領域250とを含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイス(パワーMOSFET200として実例として示される)の実例を示す概略断面図である。図2に示されるように、パワーMOSFET200は、活性領域と、活性領域を取り囲む終端領域(図示せず)とを含む。パワーMOSFET200の活性領域は、電気的に並列に接続される複数のユニット・セル208を含む。ユニット・セル208の実例が破線の長方形で示される。パワーMOSFET200は、図2に示される約2個のユニット・セル208よりも多くのユニット・セル208を含むことができる。また、複数のパワーMOSFET200を単一のウェーハ上で成長させ得ることも理解され得る。
【0058】
パワーMOSFET200は、高濃度にドープされた(N)n型ワイド・バンドギャップ半導体基板210を含む。基板210は、例えば、単結晶炭化ケイ素半導体基板を含み得る。基板210は、n型不純物でドープされてもよい(例えば、N炭化ケイ素基板)。不純物としては、例えば、窒素又はリンを挙げることができる。基板210のドーパント濃度は、例えば、約1×1018原子/cm~1×1021原子/cmとすることができるが、他のドーピング濃度を使用することもできる。基板210は、任意の適切な厚さ(例えば、幾つかの実施例では、100ミクロン~500ミクロンの厚さ)であってよい。
【0059】
低濃度にドープされた(N)n型ドリフト層又は領域220(例えば、炭化ケイ素ドリフト領域)が基板210上に設けられる。ドリフト領域220のドーパント濃度は、例えば、約1×1014原子/cm~約1×1016原子/cm、例えば、約5×1014原子/cm~約5×1015原子/cm、又は約7×1014原子/cm~約1×1015原子/cmであってもよいが、他のドーピング濃度を使用することもできる。ドリフト領域220は、基板210上にエピタキシャル成長によって形成することができる。ドリフト領域220は、基板210上方の垂直高さが、例えば約3ミクロン~約100ミクロンである比較的厚い領域とすることができる。幾つかの実施例では、ドリフト領域220は、ドリフト領域220の上部と基板210との間に、より高濃度にドープされた電流拡散層(例えば、(N)n型電流拡散層)を含んでもよい。適度にドープされたp型層が、ドリフト領域220上に(例えば、エピタキシャル成長又は注入によって)形成され、デバイス200のためのp型ウェル領域又はPウェル270として作用する。幾つかの実施例では、p型ウェル領域270は、(ドリフト層220の上面に対して)約1マイクロメートル(μm)未満、例えば約0.8μm以下の深さを有し得る。高濃度にドープされたN層が、例えばイオン注入によって適度にドープされたp型層の上部に形成され、デバイス200のためのソース領域260として作用する。幾つかの実施例では、ソース領域260は、(ドリフト層220の上面に対して)約0.5μm未満、例えば約0.3μm以下の深さを有し得る。チャネル領域の長さは、ソース領域260の下側境界とPウェル270の下側境界との間で画定され得る。幾つかの実施例では、チャネル長が、約1μm以下、例えば、約0.5μmであり得る。
【0060】
基板210、ドリフト領域220(電流拡散層を含む)及び適度にドープされたp型層又はPウェル270は、その中に形成された様々な領域/パターンと共に、パワーMOSFETの半導体層構造206を画定する。半導体層構造206は、1つ又は複数のワイド・バンドギャップ半導体材料を含むことができる。複数のゲート・トレンチ280が、半導体層構造206内で長手方向に互いに平行に延在する。ゲート・トレンチ280は、ドリフト層又はJFET領域220の一部を間に挟んで、長手方向を横断する(例えば、長手方向に対して垂直な)方向(例えば、横方向又はx方向)に沿って互いに離間される。ゲート絶縁層282が各ゲート・トレンチ280の底面上及び側壁上に設けられ、ゲート電極又はゲート284がゲート絶縁層282上に設けられ、それぞれのゲート・トレンチ280を充填する。ソース接点290が、ソース領域260上に形成されるとともに、幾つかの実施例ではオーム金属であってもよい。ドレイン接点292が基板210の下面上に形成される。ゲート接点(図示せず)が各ゲート電極284上に形成され得る。
【0061】
更に図2を参照すると、シールド・パターン240が、ゲート・トレンチ280を越えて(及び図2の実例では、ゲート・トレンチ280の底面及び角の下方で)ドリフト層220へと延在する。幾つかの実施例では、シールド・パターン240は、約1μmを超えて、例えば約1.5μm以上だけドリフト層220へと延在してもよい。シールド・パターン240は、ドリフト領域220とは逆の導電型である。特に、デバイス200では、高濃度にドープされた(P)p型シールド・パターン240が、例えばイオン注入によってドリフト領域220に形成される。例えば、シールド・パターン240は、約1×1015原子/cm~1×1019原子/cmの濃度、例えば、1×1017原子/cm以上の濃度でp型ドーパント(アルミニウム(Al)など)を注入することによって形成されてもよい。それぞれのゲート・トレンチ280の下方のシールド・パターン240の部分は、例えば、シールド接続パターン(図示せず)によって電気的に接続され得る。
【0062】
シールド・パターン240は、高電界におけるトレンチMOSFET200の劣化を防止するように構成される。例えば、ゲート絶縁層282の角領域は絶縁破壊されやすいため、シールド・パターン240は、逆遮断動作中などの高電界からゲート絶縁層282の角領域を保護するのに役立ち得る。図2の実例では、シールド・パターン240は、各ゲート・トレンチ280の1つの側壁に沿って且つ1つの角の下方で延在する。すなわち、シールド・パターン240は、ゲート・トレンチ280に対してソース接点290に向けてオフセットされ、ゲート・トレンチ280の下側角領域まで延在する。しかしながら、より一般的には、本明細書で説明されるシールド・パターンは、ゲート・トレンチ間で及び/又はゲート・トレンチの下方で、例えばそれぞれのゲート・トレンチの少なくとも一方の側壁に沿って及び/又は底部に沿って延在してもよい。ゲート・トレンチ280の側壁278上にシールド・パターン240がないことにより、一方の側壁278に沿った(ここではn型)チャネル領域及び導通(図2に破線の矢印で示される)が可能になる。
【0063】
上述したように、本発明の実施例では、ドリフト領域220のドーパント濃度は、例えば約1×1014原子/cm~約1×1016原子/cm、例えば約5×1014原子/cm~約5×1015原子/cm、又は約7×1014原子/cm~約1×1015原子/cmまで減少させることができ、これにより、ゲート・トレンチ280の角における電界強度を減少させ、したがって、ゲート絶縁層282の絶縁破壊の可能性を低減できるが、その代償として抵抗が増大する。これを補償するために、導通促進領域250が、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分(すなわち、JFET領域)に形成される。導通促進領域250は、ドリフト領域220と同じ導電型であり、ゲート・トレンチ280及び/又はその角から横方向で分離される又は離間される。特に、図2の実例のデバイス200では、n型導通促進領域250は、例えばイオン注入によって、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分に形成される。例えば、導通促進領域250は、約1×1015原子/cm~1×1017原子/cm以上、例えば約2×1016原子/cm~8×1016原子/cm、例えば、約5×1016原子/cmの濃度でn型ドーパント(窒素(N)など)を注入することによって形成され得る。導通促進領域250は、シールド・パターン240の少なくとも一方の側に沿って及び/又は底部/下側境界に沿って延在することができる。導通促進領域250は、ウェル270を通じて及び/又はシールド・パターン240の底部/下側境界を越えてドリフト領域220へと延在することができる。
【0064】
したがって、導通促進領域250のドーパント濃度は、ドリフト領域220のドーパント濃度と同じ導電型であるが、ドリフト領域220のドーパント濃度よりも大きいか又は高くてもよい(特に、ゲート・トレンチ280又はゲート絶縁層282の角に沿うドリフト領域の部分のドーパント濃度よりも高い)。幾つかの実施例では、導通促進領域250のドーパント濃度は、ドリフト領域220のドーパント濃度よりも約2倍以上、例えば約3倍以上、約5倍以上、約10倍以上、又は約20倍以上大きくてもよい。したがって、ゲート・トレンチ280間のドリフト層220の部分の(この実例では、n型の)ドーパント濃度は、ゲート・トレンチ280が互いに離間される方向(例えば、図2のx方向)に沿って変化する場合があり(例えば、ゲート・トレンチ280の角に近接する第1の濃度と領域250の第2の、より高い濃度との間に不均一なドーパント分布又は濃度勾配を伴う)、それにより、例えば逆遮断動作中に印加電圧下でゲート・トレンチ280の角から離れるようにピーク電界分布をシフトする可能性がある。すなわち、ドリフト領域220のJFET部分のドーパント濃度は、ドリフト層220内でx方向に沿って段階的又は連続的(例えば、直線的又は指数関数的)な方式で変化し得る。例えば、ドーパント濃度は、一定であってもよく、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分において実質的に均一であるか又は対称的に変化してもよく、例えば図4D図7B、及び図10Bの様々な不均一なドーパント分布によって示されるように、ドリフト領域220と導通促進領域250との間の界面又は境界において勾配又は段階的増大を含んでもよい。
【0065】
すなわち、逆遮断動作中のピーク電界は、pシールド・パターン240の外周に沿う、より高濃度にドープされたn型導通促進領域250の存在に起因して、JFET領域の中央又は中心部分から離れて、シールド・パターン240に向かってシフトされ得る。したがって、ゲート・トレンチ280の下側角(シールド・パターン240によって露出される)は、逆遮断動作中に、より低い電界値となる。JFET領域の、より高濃度にドープされたn型部分250は、オン状態動作中に、より低い抵抗の電流経路(図2の太線及び破線の矢印で示す)をもたらし、それにより、より低濃度にドープされたエピタキシャル層220に起因してJFET領域の残りの部分での増大した抵抗を補償するのに役立つ。導通促進領域250のドーパント濃度は、ドリフト領域220の上部と基板210との間における基板210及び/又は任意の電流拡散層(例えば、図15の層1530)のドーパント濃度よりも低くてもよい。幾つかの実施例では、ドリフト層220と導通促進領域250との相対的なドーパント濃度は、約300V、最大約15kVまでの遮断電圧をもたらすように選択又は設定され得る。
【0066】
図3A図3Fは、本発明の幾つかの実施例に係る整列されたシールド・パターン240及び導通促進領域250を伴う図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイス200を製造するための工程の実例を示す概略断面図である。図3Aに示されるように、イオン注入を用いて、ドリフト領域220の部分250をより高濃度にドープし、(後の工程で形成されるべき)ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分に導通促進領域250を画定する。例えば、(例えば、基板210上のエピタキシャル成長によって)低濃度にドープされた(N)n型ドリフト層又は領域220及び(例えば、エピタキシャル成長又は注入によって)適度にドープされたp型ウェル領域270を形成した後、第1のマスク301(例えば、酸化物マスク)を形成して、ドリフト領域220の表面を露出させることができる。第1のイオン注入プロセスを実行して、第1のマスク301によって露出された表面にドリフト領域220と同じ導電型のドーパントを注入し、Pウェル270を通じてドリフト領域220へと延在する導通促進領域250を画定することができる。上述したように、幾つかの実施例では、約1×1015原子/cm~1×1017原子/cm、例えば5×1016原子/cmの濃度でn型ドーパント(窒素など)を注入することによって導通促進領域250を形成して、Nドリフト層220よりも高いドーパント濃度を有する低濃度にドープされたN導通促進領域250を画定することができる。第1の注入プロセスのエネルギーは、(ドリフト領域220の表面に対して)所望の深さに導通促進領域250の下側境界をもたらすように制御され得る。
【0067】
図3Bでは、第2のイオン注入プロセスを実行して、Pウェル270を通じてドリフト層220へと延在するシールド・パターン240を画定することができる。例えば、導通促進領域250を形成し、同じマスク301を使用した後、第2のイオン注入プロセスを実行し、ドリフト領域220とは逆の導電型のドーパントをマスク301によって露出された表面に注入して、Pウェル270を通じてドリフト領域220へと延在するシールド・パターン240を画定することができる。上述したように、シールド・パターン240は、約1×1015原子/cm~1×1019原子/cm、例えば1×1017原子/cm以上、cm、の濃度でp型ドーパント(アルミニウムなど)を注入して、Pシールド・パターン240を画定することによって形成され得る。したがって、シールド・パターン240は、図3A図3Fの実例ではシールド・パターンの両側に沿って及びシールド・パターンの両方の角の下方で延びる導通促進領域250と位置合わせされる。
【0068】
実例として、図3A及び図3Bでは導通促進領域250の後に形成されるように示されるが、これらの工程の順序が逆であってもよいことが理解される。すなわち、幾つかの実施例では、シールド・パターン240が導通促進領域250の前に形成されてもよい。同様に、幾つかの実施例では、ドリフト領域220にPウェル270を形成する前に、導通促進領域250及び/又はシールド・パターン240を形成することができる。より一般的には、要素/層/領域は、本明細書で説明する製造工程において実例として示される順序とは異なる順序で形成されてもよい。
【0069】
図3Cに示されるように、第1のマスク301を除去し、第2のマスク302を形成して、シールド・パターン240及び導通促進領域250を覆い又は保護して、それに隣接するPウェル270の表面を露出させることができ、第3のイオン注入プロセスを実行して、Pウェル270の上部に高濃度にドープされたNソース領域260を画定する。幾つかの実施例では、例えば、更なるマスキング工程(図示せず)を使用するイオン注入によって、更なる高濃度にドープされたP領域(図示せず)を、Nソース領域260に隣接するPウェル270の上部に形成して、Nソース領域260及びシールド・パターン240及び導通促進領域250を保護することができる。幾つかの実施例では、注入活性化及び/又は他の更なるプロセスを実行して、注入プロセスによって生じた損傷を回復又は修復することができる。
【0070】
ここで図3Dを参照すると、更なるマスキング工程を実行して、半導体層構造206にゲート・トレンチ280を画定することができる。ゲート・トレンチ280は、Pウェル270を通じてドリフト層220へと延在する。ゲート・トレンチ280を「ストライプ状」ゲート・トレンチ・レイアウトで形成することができ、このゲート・トレンチ・レイアウトでは、トレンチ280が、長手方向で互いに平行に(連続的又は部分的に)延在し、長手方向と交差する(例えば、長手方向に対して垂直な)方向で離間される。例えば、エッチング・プロセスを実行して、ゲート・マスク(図示せず)のそれぞれのトレンチ形状の開口部によって露出された半導体層構造206の表面をエッチングし、ゲート・トレンチ280を画定することができる。エッチング・プロセスは、p型ウェル層270及び/又はドリフト領域220の一部を除去してゲート・トレンチ280を形成する異方性エッチングであってもよい。エッチング・プロセスは、トレンチ280の深さ又は底面が上方に限定されてシールド・パターン240及び/又は導通促進領域250を越えて延在しないように制御されてもよい。
【0071】
更に図3Dを参照すると、各ゲート・トレンチ280の底面及び側壁にゲート絶縁層282が形成されてもよく、それぞれのゲート・トレンチ280を充填するようにゲート絶縁層282上にゲート電極284が形成される。図3Eに示されるように、ゲート284上に金属間誘電体(IMD:intermetal dielectric)層286を形成することができ、ソース領域260上にソース接点290(図示せず)を形成することができる。幾つかの実施例では、ソース接点290がオーム金属であってもよい。図3Fでは、オーバーレイ・プロセスを実行して、半導体層構造206の表面上に層303を形成することができる。ドレイン接点292(図示せず)を基板210の下面上に形成することができる。
【0072】
図4A及び図4Bは、深さ(y)方向及び横(x)方向の両方に沿う、図2のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスのJFET領域におけるp型ドーパント(実例としてAlドーパントに関連して示される)及びn型ドーパント(実例としてNドーパントに関連して示される)のそれぞれの濃度のグラフ例図である。図4C及び図4Dは、線a-a’(すなわち、深さ又はy方向)及び線b-b’(すなわち、横方向又はx方向)にそれぞれ沿ったドーパント濃度を示す。図4A及び図4Cに示されるように、Alドーパント分布はドリフト領域220へと約2μmの深さまで延在し、約1.2μmの深さにピークがあり、これはシールド・パターン240のピーク・ドーパント濃度に対応し得る。図4B及び図4Cに示されるように、Nドーパント分布はドリフト層220へと約2μmを超える深さまで延在し、約1.7μmの深さにピークがあり、これは導通促進領域250のピーク・ドーパント濃度に対応し得る。
【0073】
図4A及び図4Dに示されるように、Alドーパントの分布は、ドリフト領域220内でゲート284間の約2μmの幅にわたって横方向で変化し、約0.85μmの距離にピークがある。図4B及び図4Dは、Nドーパント分布がAlドーパント分布と同様の幅にわたって同様のピークを伴ってドリフト領域220内で同様に横方向で変化することを示している。すなわち、この例では、導通促進領域250のNドーパント分布は、一般的に、ゲート284間において横方向でシールド・パターン240のAlドーパント分布とほぼ一致している。導通促進領域250のピークNドーパント濃度は、ゲート絶縁層282の角に隣接するドリフト領域220のNドーパント濃度よりも約2倍以上、例えば約3倍以上、約5倍以上、約10倍以上、又は約20倍以上高くてもよく、これにより、印加電圧下の電界分布のピークをゲート絶縁層282の角から離れるようにシフトすることができる。本明細書では、N及びAlをそれぞれn型ドーパント及びp型ドーパントとして説明するが、実施例はこれらの特定のドーパントに限定されず、他のn型ドーパント(例えば、リン(P))及びp型ドーパント(例えば、ホウ素(B))を使用できることが理解される。
【0074】
図5は、本発明の幾つかの実施例に係るゲート・トレンチ280間のシールド領域240及びオフセット導通促進領域550を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイス(実例としてパワーMOSFET500として示される)の実例を示す概略断面図である。パワーMOSFET500の幾つかの要素は、図2のパワーMOSFET200の要素と同様であってもよく、したがって、簡単にするため、そのような同様の要素の詳細な説明を省くことができる。
【0075】
図5に示されるように、パワーMOSFET500は、電気的に並列に接続される複数のユニット・セル508を含む。実例のユニット・セル508が破線の長方形で示されているが、パワーMOSFET500は、図5に示される約2つのユニット・セルよりも多くのユニット・セル508を含み得ることが理解される。
【0076】
図2のパワーMOSFET200と同様に、パワーMOSFET500は、高濃度にドープされた(N)n型ワイド・バンドギャップ半導体基板210、低濃度にドープされた(N)n型ドリフト層又は領域220、適度にドープされたp型ウェル領域又はPウェル270、及び高濃度にドープされたNソース領域260を含む。複数のゲート・トレンチ280(それぞれがその底面及び側壁上にゲート絶縁層282を含み、その中にゲート電極284を含む)が、半導体層構造206内で長手方向で互いに平行に延在し、長手方向と交差する(例えば、長手方向に対して垂直な)方向(例えば、x方向)に沿って互いに離間され、その間にドリフト層又はJFET領域の一部220を伴う。ドリフト領域220とは反対の導電型のシールド・パターン240が、各ゲート・トレンチ280の一方の側壁に沿って及び各ゲート・トレンチ280の一方の角の下方で半導体層構造206へと延在し、逆遮断動作中などの高電界からゲート・トレンチ280の角におけるゲート絶縁層282を保護するのに役立ち得る。ゲート・トレンチ280の他方の側壁278にシールド・パターン240がないことにより、一方の側壁278に沿った(ここではn型)チャネル領域及び導通(図5に破線の矢印で示される)が可能になる。
【0077】
上述したように、ドリフト領域220は、ゲート・トレンチ280の角におけるゲート絶縁層282を保護する又はゲート絶縁層282の絶縁破壊の可能性を低減するために、比較的低濃度にドープされる。ドリフト領域220の減少したドーパント濃度(したがって増大した抵抗)を補償するために、ドリフト領域220と同じ導電型であるがドリフト領域220よりも高いドーパント濃度を有する導通促進領域550が、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分(すなわち、JFET領域内)に形成される。図5の実例のデバイス500では、n型導通促進領域550が、例えばイオン注入によって、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分に形成されるが、横方向又はx方向で(例えば、ゲート・トレンチ280に向かって)p型シールド・パターン240からオフセットされる。JFET領域の、より高濃度にドープされたn型部分550は、より低い抵抗の電流経路(図5の太線及び破線の矢印で示す)をもたらす。したがって、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分の(この実例ではn型)ドーパント濃度は、ゲート・トレンチ280が互いに離間される方向(例えば、図5のx方向)に沿って(例えば、不均一なドーパント分布又は濃度勾配で)変化する可能性があり、これにより、例えば逆遮断動作中に、印加電圧下でピーク電界分布をゲート・トレンチ280の角から離れるようにシフトさせる可能性がある。
【0078】
したがって、ドリフト領域220のJFET領域のドーパント濃度は、ドリフト層220内のx方向に沿って段階的又は連続的な(例えば直線的又は指数関数的な)方式で変化し得る。例えば、この場合、ドリフト領域220の濃度は、一定であり、実質的に均一であり、又は対称的に変化し、例えば図7Bに示すように、ドリフト領域220と導通促進領域550との間の界面又は境界において勾配又は段階的増大を伴う。導通促進領域550は、シールド・パターン240の少なくとも一方の側及び/又は底部/下側境界に沿って延在してもよく、ゲート・トレンチ280から横方向で離間される。導通促進領域550は、ウェル270を通じて、及び/又はシールド・パターン240の底部/下側境界を越えてドリフト領域220へと延びることができる。それ以外の点では、導通促進領域550は、図2の導通促進領域250と同様であってもよい。
【0079】
図6A図6Fは、本発明の幾つかの実施例に係るオフセット・シールド・パターン240及び導通促進領域550を伴う図5のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。図6Aに示されるように、イオン注入を用いてドリフト領域220の部分550をより高濃度にドープし、(後続の工程で形成されるべき)ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分に導通促進領域550を画定する。例えば、低濃度にドープされた(N)n型ドリフト層又は領域220を(例えば、基板210上のエピタキシャル成長によって)形成するとともに、適度にドープされたp型ウェル領域270を(例えば、エピタキシャル成長又は注入によって)形成した後、第1のマスク601(例えば、酸化物マスク)を形成して、ドリフト領域220の表面を露出させることができる。第1のイオン注入プロセスを実行して、ドリフト領域220と同じ導電型のドーパントを第1のマスク601によって露出された表面に注入し、Pウェル270を通じてドリフト領域220へと延在する導通促進領域550を画定することができる。第1の注入プロセスのエネルギーは、(ドリフト領域220の表面に対する)所望の深さで導通促進領域550の下側境界をもたらすように制御され得る。
【0080】
図6Bでは、第2のイオン注入プロセスを実行し、Pウェル270を通じてドリフト領域220へと延在するシールド・パターン240を画定することができる。例えば、導通促進領域550を形成した後、第1のマスク601を除去できるとともに、第2のマスク602を、第1のマスク601の開口からオフセットされた開口を伴って形成することができ、第2のイオン注入プロセスを実行して、第2のマスク602によって露出された表面にドリフト領域220とは逆の導電型のドーパントを注入し、シールド・パターン240を画定することができる。したがって、シールド・パターン240は、図6A図6Fの実例ではシールド・パターン240の一方の側に沿って及びシールド・パターン240の一方の角の下方で延在する導通促進領域550からオフセットされる。幾つかの実施例では、図6A及び図6Bにおけるマスキング工程及び注入工程の順序を逆にして、シールド・パターン240を導通促進領域550の前に形成できるようにしてもよい。
【0081】
図6Cに示されるように、第2のマスク602を除去することができ、第3のマスク603を形成して、シールド・パターン240及び導通促進領域550を覆う又は保護し、それに隣接するPウェル270の表面を露出させるように形成されてもよく、且つ、第3のイオン注入プロセスを実行して、Pウェル270の上部に高濃度にドープされたNソース領域260を画定する。幾つかの実施例では、更なる高濃度にドープされたP領域(図示せず)を、例えば更なるマスキング工程(図示せず)を使用したイオン注入によって、Nソース領域260に隣接するPウェル270の上部に形成することができる。注入活性化プロセス及び/又は他の追加のプロセスを実行して、注入プロセスによって生じた損傷を回復又は修復することができる。
【0082】
ここで図6Dを参照すると、更なる工程を実行して、Pウェル270を通じてドリフト領域220へと延在する半導体層構造206内にゲート・トレンチ280を画定し、各ゲート・トレンチ280の底面上及び側壁上にゲート絶縁層282を形成して、
【0083】
図3Dに関連して上述した工程と同様の態様で、ゲート絶縁層282上にゲート電極284を形成して、それぞれのゲート・トレンチ280を充填することができる。図6Eに示されるように、ゲート284上に金属間誘電体(IMD)層286を形成することができ、ソース領域260上にソース接点290(図示せず)を形成することができる。幾つかの実施例では、ソース接点290がオーム金属であってもよい。図6Fでは、オーバーレイ・プロセスを実行して、半導体層構造206の表面上に層606を形成することができ、ドレイン接点292(図示せず)を基板210の下面上に形成することができる。
【0084】
図7A及び図7Bは、横方向(x方向)に沿う図5のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスのJFET領域におけるドーパント濃度の変化のグラフ例図である。図7A及び図7Bに示されるように、ゲート・トレンチ間のドリフト領域の部分(すなわち、JFET領域)におけるn型ドーパント分布は、隣接するゲート・トレンチの分離方向に沿った横方向位置に応じて変化する。導通促進領域550のn型ドーパント濃度(例えば、2×1016原子/cm)は、ゲート絶縁層282の角に隣接するドリフト領域220の部分のn型ドーパント濃度(例えば、6×1015原子/cm)より(幾つかの実施例では、約2倍以上、例えば、約3倍以上、約5倍以上、約10倍以上、又は約20倍以上)高くてもよく、それにより、電圧印加下での電界分布のピークをゲート絶縁層282の角から離れるようにシフトさせることができる。図7A及び図7Bの実例では、導通促進領域550のドーパント分布は、ゲート/ゲート・トレンチ間で横方向においてシールド・パターン240(図示せず)のドーパント分布からオフセットされる。
【0085】
図8は、本発明の幾つかの実施例に係る、シールド領域240と、ゲート・トレンチ280間の傾斜した又は傾けられた導通促進領域850とを含む、ゲート・トレンチ・パワー半導体デバイス(実例としてパワーMOSFET800として示される)の実例を示す概略断面図である。パワーMOSFET800の幾つかの要素は、図2のパワーMOSFET200の要素と同様であり得ることから、そのような同様の要素の詳細な説明は、簡潔にするために省かれる場合がある。
【0086】
図8に示されるように、パワーMOSFET800は、電気的に並列に接続される複数のユニット・セル808を含む。実例のユニット・セル808が破線の長方形で示されるが、パワーMOSFET800は、図8に示される約2つのユニット・セルよりも多くのユニット・セル808を含み得ることが理解される。
【0087】
図2のパワーMOSFET200と同様に、パワーMOSFET800は、高濃度にドープされた(N)n型ワイド・バンドギャップ半導体基板210、低濃度にドープされた(N)n型ドリフト層又は領域220、適度にドープされたp型ウェル領域又はPウェル270、及び高濃度にドープされたNソース領域260を含む。複数のゲート・トレンチ280(それぞれがその底面及び側壁にゲート絶縁層282を含み、その中にゲート電極284を含む)が、半導体層構造206内で長手方向で互いに平行に延在し、長手方向と交差する(例えば、長手方向に対して垂直な)方向(例えば、x方向)に沿って互いに離間され、その間にドリフト層又はJFET領域220の一部を伴う。ドリフト領域220とは反対の導電型のシールド・パターン240が、各ゲート・トレンチ280の一方の側壁に沿って及び各ゲート・トレンチ280の一方の角の下方で半導体層構造206へと延在し、逆遮断動作中などの高電界からゲート・トレンチ280の角におけるゲート絶縁層282を保護するのに役立ち得る。ゲート・トレンチ280の他方の側壁278にシールド・パターン240がないことにより、一方の側壁278に沿った(ここではn型)チャネル領域及び導通(図8に破線の矢印で示される)が可能になる。
【0088】
上述したように、ドリフト領域220は、ゲート・トレンチ280の角におけるゲート絶縁層282の絶縁破壊を防止する又は絶縁破壊の可能性を低減するために、比較的低濃度にドープされる。ドリフト領域220の減少したドーパント濃度(したがって増大した抵抗)を補償するために、ドリフト領域220と同じ導電型であるがドリフト領域220よりも高いドーパント濃度を有する導通促進領域850が、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分(すなわち、JFET領域内)に形成される。図5の実例のデバイス800では、n型導通促進領域850がゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分に形成されるが、p型シールド・パターン240に対して傾斜される又は傾けられる方向を伴う。すなわち、導通促進領域850のドーパントの分布がそれに沿って延びる軸890は、ドリフト領域220の表面に対して直交しない。図8の実例では、導通促進領域850のドーパントの分布は、シールド・パターン240の少なくとも一方の側及び下側境界に沿って不均一に延在する。
【0089】
導通促進領域250及び500と同様に、JFET領域の、より高濃度にドープされたn型部分850は、より低い抵抗の電流経路(図8に太線及び破線の矢印で示す)をもたらす。したがって、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分の(この実例ではn型)ドーパント濃度は、ゲート・トレンチ280が互いに離間される方向(例えば、図8のx方向)に沿って(例えば、不均一なドーパント分布又は濃度勾配で)変化する可能性があり、これにより、例えば逆遮断動作中に、印加電圧下でピーク電界分布をゲート・トレンチ280の角から離れるようにシフトさせる可能性がある。
【0090】
したがって、ドリフト領域220のJFET領域のドーパント濃度は、ドリフト層220内のx方向に沿って段階的又は連続的な(例えば直線的又は指数関数的な)方式で変化し得る。例えば、ドリフト領域220の濃度は、実質的に均一であり、又は対称的に変化し、例えば図10Bに示すように、ドリフト領域220と導通促進領域850との間の界面又は境界において勾配又は段階的増大を伴う。導通促進領域850は、シールド・パターン240の少なくとも一方の側及び/又は底部/下側境界に沿って延在してもよく、ゲート・トレンチ280から横方向で離間され、ゲート・トレンチ280の方向に対して傾けられ又は傾斜されてもよい。導通促進領域850は、ウェル270を通じて、及び/又はシールド・パターン240の底部/下側境界を越えてドリフト領域220へと延びることができる。それ以外の点では、導通促進領域850は、図2の導通促進領域250と同様であってもよい。
【0091】
図9A図9Fは、本発明の幾つかの実施例に係る傾斜した導通促進領域850を伴う図8のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。図8Aに示されるように、傾斜イオン注入プロセスを用いて半導体層構造206のドリフト領域220の一部分850をより高濃度にドープし、(後続の工程で形成されるべき)ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分に導通促進領域850を画定する。例えば、第1のマスク901(例えば、酸化物マスク)を形成して、ドリフト領域220の表面を露出することができ、第1のイオン注入プロセスを実行して、ドリフト領域220と同じ導電型のドーパントを第1のマスク901によって露出された表面に注入して、Pウェル270を通じてドリフト領域220へと延在する導通促進領域850を画定することができる。第1のイオン注入プロセスをドリフト領域220の表面に対して直交しない角度で実行することができる。幾つかの実施例では、第1のイオン注入プロセスの角度は、ドリフト領域220の表面に垂直な方向に対して約3°~約30°、例えば約5°、約10°、又は約15°であってもよい。第1の注入プロセスのエネルギーは、直交しない角度に沿って(ドリフト領域220の表面に対して)所望の深さに導通促進領域850の下側境界をもたらすように制御され得る。
【0092】
図9Bでは、第2のイオン注入プロセスを実行し、Pウェル270を通じてドリフト領域220へと延在するシールド・パターン240を画定することができる。例えば、同じマスク901を使用して、第2のイオン注入プロセスを実行して、マスク901によって露出された表面にドリフト領域220とは逆の導電型のドーパントを注入し、シールド・パターン240を画定することができる。導通促進領域850は、図9A図9Fの実例ではシールド・パターン240の一方の側に沿って及びシールド・パターン240の一方の角の下方で延在するが、シールド・パターン240の方向に対して傾斜され又は傾けられる。すなわち、導通促進領域850のドーパント分布は、シールド・パターン240の両側及び下側境界に沿って非対称又は不均一である。幾つかの実施例では、図9A及び図9Bにおける注入工程の順序を逆にして、シールド・パターン240を導通促進領域850の前に形成できるようにしてもよい。
【0093】
図9Cに示されるように、第1のマスク901を除去することができ、第2のマスク902を形成して、シールド・パターン240及び導通促進領域850を覆う又は保護し、それに隣接するPウェル270の表面を露出させることができ、第3のイオン注入プロセスを実行して、Pウェル270の上部に高濃度にドープされたNソース領域260を画定する。幾つかの実施例では、更なる高濃度にドープされたP領域(図示せず)を、例えば更なるマスキング工程(図示せず)を使用したイオン注入によって、Nソース領域260に隣接するPウェル270の上部に形成することができる。注入活性化プロセス及び/又は他の追加のプロセスを実行して、注入プロセスによって生じた損傷を回復又は修復することができる。
【0094】
ここで図9Dを参照すると、更なる工程を実行して、Pウェル270を通じてドリフト層220へと延在する半導体層構造206内にゲート・トレンチ280を画定し、各ゲート・トレンチ280の底面上及び側壁上にゲート絶縁層282を形成して、図3Dに関連して上述した工程と同様の態様で、ゲート絶縁層282上にゲート電極284を形成して、それぞれのゲート・トレンチ280を充填することができる。図9Eに示されるように、ゲート284上に金属間誘電体(IMD)層286を形成することができ、ソース領域260上にソース接点290(図示せず)を形成することができる。幾つかの実施例では、ソース接点290がオーム金属であってもよい。図9Fでは、オーバーレイ・プロセスを実行して、半導体層構造206の表面上に層903を形成することができ、ドレイン接点292(図示せず)を基板210の下面上に形成することができる。
【0095】
図10A及び図10Bは、図8のゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスのJFET領域における横方向(x方向)に沿って変化するドーパント濃度のグラフ例図である。図10A及び図10Bに示されるように、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域の部分(すなわち、JFET領域)におけるn型ドーパント分布(Nドーパントとして図示)は、隣接するゲート・トレンチ280/ゲート284の分離方向に沿った横方向位置に応じて変化する。特に、Nドーパント分布は、ゲート284間のドリフト領域220で横方向に変化し、約0.75μmの横方向距離でドーパント濃度が最低となる(これは、ドリフト領域220のドーパント濃度に対応し得る)とともに、約1.7μmの横方向距離でピーク・ドーパント濃度を伴う(これは、導通促進領域850のピーク・ドーパント濃度に対応し得る)。図10Bに示されるように、導通促進領域850のドーパント濃度(この実例では、n型)は、ゲート絶縁層282の角に隣接するドリフト領域220の部分のドーパント濃度よりも約2倍以上、例えば、約5倍以上、又は約10倍以上、又は約20倍以上高くてもよく、それにより、印加電圧下の電界分布のピークをゲート絶縁層282の角から離れるようにシフトできる。
【0096】
図11A及び図11Bは、本発明の幾つかの実施例に係る、ドーパント濃度が低減されたドリフト層を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイス内の電界分布のグラフ例図である。図11A及び図11Bに示されるように、ゲート・トレンチ280の底部に沿う(すなわち、ゲート・トレンチ280が互いに分離される横方向又はx方向における)電界分布は、一般に、シールド・パターン240によって露出されるゲート・トレンチ280の角に集中する。しかしながら、図11Bは、ドリフト層又は領域220のドーパント濃度が減少されるにつれて電界強度が減少することを示しており、ドリフト層220のドーパント濃度は、電界強度を(ゲート・トレンチ280の角及び全体の両方において)約10倍以上減少させるように選択又は構成される。本発明の実施例に従ってドリフト層220のドーパント濃度を低減することにより、ゲート絶縁層が絶縁破壊されやすくなり得るゲート・トレンチ280の角におけるピーク電界強度が低減され得る。本明細書に記載されるような導通促進領域と組み合わせて、電界分布のピークをゲート・トレンチ282の角から離れるように(すなわち、横方向又はx方向に)シフトさせることもでき、この場合、一般に、電界強度はゲート・トレンチ282の角で直面する電界強度に匹敵する。幾つかの実施例では、導通促進領域内の電界分布の強度は、ゲート・トレンチ282のそれぞれの角における電界分布の強度よりも約10倍以上大きくなり得る。幾つかの実施例では、導通促進領域における電界分布の強度は、約5MV/cm未満、例えば、約3MV/cm未満、又は約2MV/cm未満であり得る。
【0097】
図12は、本発明の幾つかの実施例に係る底部シールド領域1240及びゲート・トレンチ280間のオフセット導通促進領域550を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイス(実例としてパワーMOSFET1200として示される)の実例を示す概略断面図である。パワーMOSFET1200の幾つかの要素は、図5のパワーMOSFET500の要素と同様であり得るため、そのような同様の要素の詳細な説明は、簡潔にするために省かれる場合がある。
【0098】
図12に示されるように、パワーMOSFET1200は、電気的に並列に接続される複数のユニット・セル1208を含む。実例のユニット・セル1208が破線の長方形で示されるが、パワーMOSFET1200は、図12に示される約2つのユニット・セルよりも多くのユニット・セル1208を含み得ることが理解される。
【0099】
図5のパワーMOSFET500と同様に、パワーMOSFET1200は、高濃度にドープされた(N)n型ワイド・バンドギャップ半導体基板210、低濃度にドープされた(N)n型ドリフト層又は領域220、適度にドープされたp型ウェル領域又はPウェル270、及び高濃度にドープされたNソース領域260を含む。複数のゲート・トレンチ280(それぞれがその底面及び側壁にゲート絶縁層282を含み、その中にゲート電極284を含む)が、半導体層構造206内で長手方向で互いに平行に延在し、長手方向と交差する(例えば、長手方向に対して垂直な)方向(例えば、x方向)に沿って互いに離間され、その間にドリフト層又はJFET領域220の一部を伴う。ドリフト領域220とは反対の導電型のシールド・パターン240が、各ゲート・トレンチ280の一方の側壁に沿って及び各ゲート・トレンチ280の一方の角の下方で半導体層構造206へと延在し、逆遮断動作中などの高電界からゲート・トレンチ280の角におけるゲート絶縁層282を保護するのに役立ち得る。ゲート・トレンチ280の他方の側壁278にシールド・パターン240がないことにより、一方の側壁278に沿った(ここではn型)チャネル領域及び導通(図12に破線の矢印で示される)が可能になる。
【0100】
上述したように、ドリフト領域220は、ゲート・トレンチ280の角におけるゲート絶縁層282の絶縁破壊を防止する又は絶縁破壊の可能性を低減するために、比較的低濃度にドープされる。ドリフト領域220の減少したドーパント濃度(したがって増大した抵抗)を補償するために、ドリフト領域220と同じ導電型であるがドリフト領域220よりも高いドーパント濃度を有する導通促進領域550が、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分(すなわち、JFET領域内)に形成される。図12の実例のデバイス1200では、n型導通促進領域550が、例えばイオン注入によって、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分に形成されるが、p型シールド・パターン1240からオフセットされる。導通促進領域550は、ウェル270を通じて、及び/又はシールド・パターン1240の底部/下側境界を越えてドリフト領域220へと延在することができる。JFET領域の、より高濃度にドープされたn型部分550は、より低い抵抗の電流経路(図8に太線及び破線の矢印で示される)をもたらす。したがって、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分の(この実例ではn型)ドーパント濃度は、ゲート・トレンチ280が互いに(例えば、図12のx方向で)離間される方向に沿って(例えば、不均一なドーパント分布又は濃度勾配で)変化することができ、それにより、印加電圧下でピーク電界分布をゲート・トレンチ280の角から離れるようにシフトさせることができる。
【0101】
図12のデバイス1200では、パワーMOSFET1200のシールド・パターン1240は、ゲート・トレンチ280の底面の下方に形成されるが、ゲート・トレンチ280の両側の側壁にはシールド・パターン1240が存在しない。シールド・パターン1240は、それ以外の点において、本明細書に記載されるシールド・パターン240と同様であってもよい。より一般的には、本明細書に記載のパワー半導体デバイスは、隣接するゲート・トレンチ280間のドリフト層220の様々な部分において、ゲート・トレンチ280間に及び/又はゲート・トレンチ280の下方に(例えば、ゲート・トレンチの少なくとも一方の側壁に沿って及び/又は底面に沿って)シールド・パターン240、1240を含むことができる。
【0102】
図13A図13Fは、本発明の幾つかの実施例に係る整列した導通促進領域250を伴う底部シールド領域1240を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイスを製造するための工程の実例を示す概略断面図である。図13に示されるように、イオン注入プロセスを使用して、半導体層構造206のドリフト領域220の部分250をより高濃度にドープし、(後続の工程で形成されるべき)ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分に導通促進領域250を画定する。例えば、第1のマスク1301(例えば、酸化物マスク)を形成して、ドリフト領域220又はPウェル270の表面を露出することができ、第1のイオン注入プロセスを実行して、ドリフト領域220と同じ導電型のドーパントを第1のマスク1301によって露出された表面に注入し、Pウェル270を通じてドリフト領域220へと延在する導通促進領域250を画定することができる。第1の注入プロセスのエネルギーは、(ドリフト領域220の表面に対して)所望の深さに導通促進領域250の下側境界をもたらすように制御され得る。
【0103】
図13Bでは、第2のイオン注入プロセスを実行して、Pウェル270を通じてドリフト領域220へと延在するシールド・パターン1240を画定することができる。例えば、同じマスク1301を使用して、第2のイオン注入プロセスを実行して、マスク1301によって露出された表面にドリフト領域220とは逆の導電型のドーパントを注入し、シールド・パターン1240を画定することができる。したがって、シールド・パターン1240は、図13A図13Fの実例ではシールド・パターン1240の両側に沿って及びシールド・パターン1240の両方の角の下方で延びる導通促進領域250と位置合わせされる。幾つかの実施例では、図13A及び図13Bにおける注入工程の順序を逆にして、シールド・パターン1240を導通促進領域250の前に形成できるようにしてもよい。
【0104】
図13Cに示すように、第1のマスク1301を除去することができ、第2のマスク1302を形成して、シールド・パターン1240及び導通促進領域250を覆い又は保護し、それに隣接するPウェル270の表面を露出させることができる。第3のイオン注入プロセスを実行して、Pウェル270の上部に高濃度にドープされたNソース領域260を画定する。幾つかの実施例では、更なる高濃度にドープされたP領域(図示せず)を、例えば更なるマスキング工程(図示せず)を使用したイオン注入によって、Nソース領域260に隣接するPウェル270の上部に形成することができる。注入活性化プロセス及び/又は他の追加のプロセスを実行して、注入プロセスによって生じた損傷を回復又は修復することができる。
【0105】
ここで図13Dを参照すると、更なる工程を実行して、Pウェル270を通じてドリフト層220へと延在する半導体層構造206内にゲート・トレンチ280を画定し、各ゲート・トレンチ280の底面上及び側壁上にゲート絶縁層282を形成し、ゲート絶縁層282上にゲート電極284を形成して、それぞれのゲート・トレンチ280を充填することができる。ゲート・トレンチ280は、図3Dに関連して上述した工程と同様の態様で製造できるが、シールド・パターン1240を露出させるゲート・マスク(図示せず)を使用して製造することもできる。ゲート・マスクは、幾つかの実施例では、導通促進領域250の少なくとも一部を露出させることができる。エッチング・プロセスは、トレンチ280の深さ又は底面がシールド・パターン1240及び/又は導通促進領域250の上方に限定されて、シールド・パターン1240及び/又は導通促進領域250を越えて延在しないように制御されてもよい。したがって、導通促進領域250は、ゲート・レンチ280の側壁に沿って(及びシールド・パターン1240の側方境界及び下側境界に沿って)延在することができ、一方、シールド・パターン1240は、ゲート・トレンチ280の底面及び角に沿って延在する。すなわち、導通促進領域250は、導通を増大させて、ドリフト領域220のドーパント濃度の減少を補償することができ、一方、シールド・パターン1240は、ゲート・トレンチ280の角のゲート絶縁層282を絶縁破壊から保護することができる。
【0106】
図13Eに示されるように、ゲート284上に金属間誘電体(IMD)層286を形成することができ、ソース領域260上にソース接点(図示せず)を形成することができる。幾つかの実施例では、ソース接点がオーム金属であってもよい。図13Fでは、オーバーレイ・プロセスを実行して、半導体層構造206の表面上に層1303を形成することができ、ドレイン接点(図示せず)を基板210の下面上に形成することができる。
【0107】
図14は、本発明の幾つかの実施例に係るゲート・トレンチ280間に交互のシールド領域1440と整列した導通促進領域1450とを含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイス(パワーMOSFET1400として実例として示される)の実例を示す概略断面図である。パワーMOSFET1400の幾つかの要素は、図2のパワーMOSFET200の要素と同様であり得るため、そのような同様の要素の詳細な説明は、簡潔にするために省かれる場合がある。パワーMOSFET1400は、電気的に並列に接続される複数のユニット・セル1408を含む。実例のユニット・セル1408が破線の長方形で示されるが、パワーMOSFET1400は、図14に示されるよりも多くのユニット・セル1408を含み得ることが理解される。
【0108】
図2のパワーMOSFET200と同様に、パワーMOSFET1400は、高濃度にドープされた(N)n型ワイド・バンドギャップ半導体基板210、低濃度にドープされた(N)n型ドリフト層又は領域220、適度にドープされたp型ウェル領域又はPウェル270、及び高濃度にドープされたNソース領域260を含む。複数のゲート・トレンチ280(それぞれがその底面及び側壁にゲート絶縁層282を含み、その中にゲート電極284を含む)が、半導体層構造206内で長手方向で互いに平行に延在し、長手方向と交差する(例えば、長手方向に対して垂直な)方向(例えば、x方向)に沿って互いに離間され、その間にドリフト層又はJFET領域220の一部を伴う。ドリフト領域220とは反対の導電型のシールド・パターン1440が、隣接するゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分の半導体層構造206へと延在する。図14のデバイス1400では、ゲート・トレンチ280の両側の側壁にシールド・パターン1440がなく、ゲート・トレンチの両側壁278に沿った(ここではn型)チャネル領域及び導通(図14に破線の矢印で示される)が可能になる。シールド・パターン1440は、それぞれのソース接点1490への接続によって電圧及び/又は電流の遮断をもたらすように構成され、ソース接点1490は、デバイス1400の上でシールド接続パターン1491によって接続され、深いシールド・パターン1440を電気的に接地できるようにする。
【0109】
上述したように、ドリフト領域220は、ゲート・トレンチ280の角におけるゲート絶縁層282の絶縁破壊を防止する又は絶縁破壊の可能性を低減するために、比較的低濃度にドープされる。ドリフト領域220の減少したドーパント濃度(したがって増大した抵抗)を補償するために、ドリフト領域220と同じ導電型であるが、ドリフト領域220よりも高いドーパント濃度の導通促進領域1450が、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分(すなわち、JFET領域内)に形成される。図14の実例のデバイス1400では、n型導通促進領域1450が、例えばイオン注入によって、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分に形成され、p型シールド・パターン1440と位置合わせされる。例えば、図3A及び図3Bの工程に示されるように、同じ注入マスクを使用するそれぞれのイオン注入プロセスを使用して、導通促進領域1450と位置合わせされるシールド・パターン1440を形成することができる。JFET領域の、より高濃度にドープされたn型部分1450は、より低い抵抗の電流経路をもたらす(図14では太線の破線の矢印で示される)。
【0110】
したがって、ゲート・トレンチ280間のドリフト領域220の部分の(この実例では、n型の)ドーパント濃度は、ゲート・トレンチ280が互いに(例えば、図14のx方向で)離間される方向に沿って(例えば、不均一なドーパント分布又は濃度勾配で)変化することができ、それにより、印加電圧下でピーク電界分布がゲート・トレンチ280の角から離れるようにシフトし得る。導通促進領域1450は、シールド・パターン1440の少なくとも一方の側及び/又は底部/下側境界に沿って延在することができる。導通促進領域1450は、ウェル270を通じて及び/又はシールド・パターン1440の底部/下側境界を越えてドリフト領域220へと延在することができる。
【0111】
図15は、本開示の実施例に係る(ドリフト領域220と比べて)高濃度にドープされた電流拡散層1530を含むゲート・トレンチ・パワー半導体デバイス(実例としてパワーMOSFET1500として示される)の実例を示す概略断面図である。図15に示されるように、デバイス1500は、図5のデバイス500と同様であるが、ドリフト領域220は、ドリフト領域220の上部と基板210との間に高濃度にドープされた電流拡散層1530(例えば、(N)n型電流拡散層)を更に含む。電流拡散層1530及び導通促進領域550はそれぞれ、ドリフト領域220よりも高い濃度のドーパント、例えば約1×1015原子/cm~1×1017原子/cm以上、例えば約2×1016原子/cm~8×1016原子/cm、又は約5×1015~5×1016原子/cmのドーパント濃度を有してもよい。幾つかの実施例では、電流拡散層1530は、導通促進領域550よりも高い濃度の(この実例では、n型の)ドーパントを有してもよい。例えば、導通促進領域550は、ドリフト領域220よりも約2倍以上、例えば、約5倍以上、又は約10倍以上、又は約20倍以上高い濃度のドーパントを有してもよく、電流拡散層1530は、導通促進領域550よりも高い濃度のドーパントを有してもよい。シールド領域240及びオフセット導通促進領域550を含むデバイス1500の要素及び層は、その他の点では図5のデバイス200と同一であってもよく、したがって、簡潔にするためにそれ以上の説明は省略する。図15に示される電流拡散層1530を同様に任意のデバイス(例えば、200、500、800、1200、1400)又は本明細書に記載の様々な実施例のドリフト領域220の上部と基板210との間に組み込むことができることも理解される。
【0112】
より一般的には、本明細書に開示される異なる実施例の特徴を任意の方法で組み合わせて、多くの追加の実施例を提供できることが理解される。また、本発明は主にパワーMOSFETの実装に関して上記で説明されているが、本明細書で説明される技術は、高電圧遮断を必要とする及び/又は逆遮断において絶縁破壊されやすい面積又は領域を含む他の同様のパワー半導体デバイスにも同様に適用できることが理解され得る。したがって、本発明の実施例はMOSFETに限定されず、本明細書に開示される技術はIGBT又は他の任意の適切なゲート・トレンチ・デバイスに使用することができる。例えば、本明細書で説明される任意のMOSFET実施例の特徴は、SiC又は他の半導体材料、例えばSi上に製造されるIGBT実施例に組み込むことができる。したがって、本明細書では、本発明の概念の様々な特徴が特定の実例に関して説明されているが、これらの特徴は、他の実施例に追加することができ、及び/又は他の実施例の実例の特徴の代わりに使用して、多くの追加の実施例を提供することができることが理解される。したがって、本発明はこれらの異なる組合せを包含するものと理解されるべきである。
【0113】
したがって、本発明の幾つかの実施例は、トレンチの角の酸化物層を保護するために、ドーパント濃度が低減されたドリフト層又は領域を含んでもよく、それによって、ゲート酸化物の絶縁破壊の可能性が低減され、信頼性が向上する。これに加えて又は代えて、本発明の幾つかの実施例は、ゲート・トレンチ間のドリフト層の部分にドーパント濃度が増大した導通促進領域を含んでもよく、それによって、例えばドーパント濃度が減少したドリフト層の抵抗の増大をオフセットするために、導通を改善することができる。
【0114】
上記の説明では、各実例の実施例が、特定の導電型の領域に関連して説明されている。上記の実施例の各々におけるn型層とp型層の導電率を単純に逆転させることによって、逆の導電型のデバイスを形成できることが理解される。したがって、本発明は、異なるデバイス構造(例えば、MOSFET、IGBTなど)ごとにnチャネル・デバイスとpチャネル・デバイスの両方をカバーすることが理解される。
【0115】
本発明は、主に炭化ケイ素ベースのパワー半導体デバイスに関して上で議論された。しかしながら、本明細書では炭化ケイ素が実例として使用されており、本明細書で議論されるデバイスは任意の適切なワイド・バンドギャップ半導体材料系で形成され得ることが理解される。実例として、窒化ガリウムベースの半導体材料(例えば、窒化ガリウム、窒化アルミニウム・ガリウムなど)を、上述の実施例のいずれかでは炭化ケイ素の代わりに使用することができる。より一般的には、炭化ケイ素デバイスに関連して説明したが、本発明の実施例は、それに限定されず、他のワイド・バンドギャップ半導体材料、例えば窒化ガリウム、セレン化亜鉛、又は他の任意のII-VI又はIII-Vワイド・バンドギャップ化合物半導体材料を使用して形成されたデバイスに対して適用可能性を有し得る。
【0116】
以上、本発明の実施例を示す添付の図面を参照して、本発明の実施例を説明した。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化することができ、上記の実施例に限定されると解釈されるべきではないことが理解される。むしろ、これらの実施例は、この開示が徹底的且つ完全になり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。
【0117】
第1の、第2の、などの用語は、様々な要素を説明するために本明細書全体で使用されるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に、第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数の任意及び全ての組合せを含む。
【0118】
本明細書で使用される用語は、特定の実施例を説明することだけを目的としており、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書で使用される場合、用語「備える」「備えている」「含む」及び/又は「含んでいる」は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ又は複数の他の機能、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しないことが更に理解される。
【0119】
層、領域、又は基板などの要素が、別の要素の「上に」ある又は「上へと」延在していると言及される場合、それは、他の要素の直接上にある又はその上に直接延在することができ、或いは、介在要素も存在し得ることが理解される。これに対し、ある要素が別の要素の「直接上に」ある又は「上に直接」延在していると言及される場合、介在要素は存在しない。要素が別の要素に「接続されている」又は「結合されている」と言及される場合、それは他の要素に直接接続又は結合され得るか、又は介在要素が存在し得ることも理解される。これに対し、要素が別の要素に「直接接続されている」又は「直接結合されている」と言及される場合、介在要素は存在しない。
【0120】
「下方」又は「上方」又は「上側」又は「下側」又は「上端」又は「下端」などの相対的な用語は、本明細書では、図に示されるような、ある要素、層、又は領域と別の要素、層、又は領域との関係を説明するために使用され得る。これらの用語は、図に示されている方向に加えて、デバイスの異なる方向を包含することを意図していることが理解される。
【0121】
本明細書では、本発明の理想化された実施例(及び中間構造)の概略図である断面図を参照して、本発明の実施例を説明する。図面における層及び領域の厚さは、明確にするために誇張されている場合がある。更に、例えば、製造技術及び/又は公差の結果としての図の形状からの変動が予想される。本発明の実施例はまた、製造工程に関連して説明される。製造工程に示されているステップは、示されている順序で実行される必要はないことが理解される。
【0122】
本発明の幾つかの実施例は、半導体層及び/又は領域の多数キャリア濃度を指すn型又はp型などの導電型を有することを特徴とする半導体層及び/又は領域に関連して説明される。したがって、n型材料は負に帯電した電子の過半数平衡濃度を有し、p型材料は正に帯電した正孔の過半数平衡濃度を有する。一部の材料は、別の層又は領域と比較した多数キャリアの比較的大きい濃度(「+」)又は小さい濃度(「-」)を示すために「+」又は「-」で表記される場合がある(n、n、p、p、n++、n--、p++、p--などのように)。しかしながら、そのような表記は、層又は領域における多数キャリア又は少数キャリアの特定の濃度の存在を意味するものではない。
【0123】
図面及び明細書では、本発明の典型的な実施例が開示されており、特定の用語が使用されているが、それらは一般的及び説明的な意味でのみ使用されており、限定の目的では使用されておらず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載されている。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図14
図15
【国際調査報告】