(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-14
(54)【発明の名称】低溶解性医薬の連続加熱溶融造粒のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
A61K 47/32 20060101AFI20240307BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240307BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240307BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240307BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K9/16
A61K9/20
A61K31/496
A61P31/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560469
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022058528
(87)【国際公開番号】W WO2022207775
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キピング,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バウワー,フィン
(72)【発明者】
【氏名】ディ ギャロ,ニコール
(72)【発明者】
【氏名】クヌッテル,アニャーナディーン
(72)【発明者】
【氏名】エリア,アレッサンドロ ジュゼッペ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076CC31
4C076EE06A
4C076FF31
4C076FF33
4C076GG03
4C076GG12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC50
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA12
4C086ZB32
(57)【要約】
本発明は、溶融造粒プロセスにおいて、ポリマーを活性医薬成分とともに充填するプロセス、およびその調製された生成物に、関する。より具体的に言うと、本発明は、少なくとも1つの活性医薬成分およびポリビニルアルコールを含有する顆粒を、調製するプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のステップを含む溶融造粒プロセスにおけるポリマーを活性医薬成分とともに装填するプロセス:
a)押出機の加熱スクリューバレル中の少なくとも1つの活性医薬成分およびポリビニルアルコールを含む混合物をこねること、ここで、スクリューバレルの長さに沿った少なくとも1つのゾーンにおける温度は、こねられた混合物を形成するために、少なくとも1つの活性医薬成分の融解温度の上であり、および、ポリビニルアルコールの分解温度の下であり、および
b)こねられた混合物を、アウトレットを通して移動すること。
【請求項2】
アウトレットが、混合物の上への圧力を発揮しない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
顆粒中の活性医薬成分が、ポリビニルアルコール中で、アモルファス形態において分散する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
スクリューバレルに沿って少なくとも1つのゾーンにおける温度が、少なくとも1つの活性医薬成分の融解温度の上であり、およびポリビニルアルコールの融解温度の下であり、およびここで、こねられた混合物が、アウトレットを通して移動されて顆粒を得る、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
造粒プロセスが、ツイン-スクリュー溶融造粒プロセスである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
ポリビニルアルコールが、72%~90%の加水分解度、および2mPas~40mPasの、20℃粘度での4%溶液を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
ポリビニルアルコールが、PVA 3-80、PVA 3-81、PVA 3-82、PVA 3-83、PVA 3-85、PVA 3-88、PVA 3-98、PVA 4-88、PVA 4-98、PVA 5-74、PVA 5-82、PVA 6-88、PVA 6-98、PVA 8-88、PVA 10-98、PVAPVA 13-88、PVA 15-99、PVA 18-88、PVA 20-98、PVA 23-88、PVA 26-80、PVA 26-88、PVA 28-99、PVA 30-98、PVA 30-92、PVA 32-88、およびPVA 40-88から成るリストから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
ポリビニルアルコールが、PVA 4-88である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
ポリビニルアルコールが、凍結粉砕される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
活性医薬成分が、1:99~90:10の範囲におけるポリビニルアルコールに対する活性医薬成分の重量比において混合物中に存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
活性医薬成分が、水中で低い溶解度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
顆粒が、さらに平均粒径50μm~300μmの間に粉砕される、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
顆粒が、さらにタブレット中へと処理される、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセスによって入手できる顆粒。
【請求項15】
請求項13に記載のプロセスによって入手できるタブレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融造粒プロセスにおいて、ポリマーを活性医薬成分とともに充填するプロセス、およびその調製された生成物に、関する。より具体的に言うと、本発明は、少なくとも1つの活性医薬成分およびポリビニルアルコールを含有する顆粒を、調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
活性医薬成分が、担体中に、均一な分散体または溶液として存在する場合に、医薬製剤の活性医薬成分のより一貫した投与速度を達成するために、それは、有用である。特に低溶解性薬物物質の溶解性増強は、アモルファス固体分散体に関する重要な適用である。
【0003】
固体分散体は不活性の固体マトリックス中の1以上の活性医薬成分の分散体であるとして定義され、および、結晶状態、またはアモルファス状態において、薬物物質を含有するものとして、広く分類されることができる[Chiou W. L., Riegelman S. Pharmaceutical applications of Solid dispersion systems; J. Pharm Sci. 1971, 60 (9), 1281 - 1301]。結晶状態の医薬活性成分を含有する固体分散体は、単に表面張力を減少させ、塊状化を減少させ、および活性物質の湿潤性を改善することによって、溶解増強を提供する[Sinswat P., et al.; Stabilizer choice for rapid dissolving high potency itraconazole particles formed by evaporative precipitation into aqueous solution; Int. J. of Pharmaceutics, (2005) 302; 113 - 124]。結晶系が、アモルファス対応物より熱力学的に安定である一方で、その結晶構造は、エネルギーを要求し、溶解プロセスの間、中断されなければならない。活性医薬成分を含有している固体分散体、これは、アモルファス固溶体として公知である、分子レベルで溶解される薬物を意味するが、 結果として溶解速度および過飽和の程度の著しい増大になることができる[DiNunzio J. C. et al. III Amorphous compositions using concentration enhancing polymers for improved bioavailability of itraconazole; Molecular Pharmaceutics (2008);5(6):968-980]。これらの系がいくつかの利点を有する一方で、物理的不安定性は、分子移動度および薬物の再結晶する傾向によって、問題があり得る。高ガラス転移温度を伴なうポリマー担体は、分子移動度を限定することによって、これらの系を安定させることに、都合よく適していると思われる。
そのため、固体分散体は、噴霧乾燥、溶融押出、または熱力学調合を含む、多数の方法によって作成されることができるが、これらに限定されない。
【0004】
加熱溶融押出(HME)は、押出によって処理される活性医薬成分を含む製剤の調製のための医薬品工業において、最近受け入れられた。HMEは、医薬生産技術として導入され、連続したおよび有効なプロセッシング、プロセスステップの限定された数、溶剤を含まないプロセス等々などの利益を伴う周知のプロセスになった。加熱溶融押出の間、活性医薬成分の混合物、熱可塑性賦形剤、および他の機能性プロセッシング助剤は、押出機の内部で加熱されおよび軟化され、または溶融されて、ノズルを通して種々の形態に押出された。
【0005】
固体分散体は、造粒技法によって作成されることもできる。造粒は、一次薬物および添加剤粒子を、より大きい二次粒子または顆粒へとかたまりにするための、確立した医薬プロセッシング技法である。豊富な種類の湿式-および乾式-造粒法技法の両方は、すでに医薬品工業で確立される。連続造粒の分野において、ツイン-スクリュー押出造粒方法は、最も有望な技術である。連続ツイン-スクリュー湿式造粒(TSWG)は、フローおよび圧縮問題を回避するために、すでに頻繁に使用される。ここでの欠点は、湿式プロセッシングおよび関連する乾燥ステップの適切な制御による安定性および分解の問題である。
【0006】
ツイン-スクリュー溶融造粒(TSMG)は、興味深い選択肢を湿式造粒に提供することができる。通常、塊状化は、造粒液体の代わりに、この技術を、感湿薬物にとって極めて好適とする、軟化されたまたは溶解された結合剤によって開始される。溶融造粒は、比較的低温で(通常約60℃で)、溶解または軟化する結合剤の付加が、固体粒子の塊状化を達成するために使用される、サイズ拡大プロセスとして考えられる。スプレー-凝固およびタンブリング溶融造粒を含む種々の技術が、すでに確立している。
【0007】
(熱)溶融押出の技法から、ポリマーが、熱可塑性、好適なガラス転移温度または融点、要求されるプロセッシング温度での熱安定性、活性医薬成分による予想外の化学相互作用がないこと等々などの、好適な特性を有するべきことは、公知である。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的
一般的な溶融造粒技法は、溶融可能な結合剤の使用を要求する。それらの溶融可能な結合剤は、低溶融ワックスまたは低溶融ポリマーなどの、比較的低温(50℃~90℃)で溶解また軟化した、通常低溶融物質である。溶融可能な結合剤は、造粒プロセスの間、固体粒子の塊状化を達成するために、使用される。典型的には、プロセッシング温度は、ポリマー結合剤のTmまたはTgより上であるが、薬物物質のTmより下に設定される。これは、いかなる物理化学的変化も最小化するために、結晶状態において薬物を維持する(Kittikunakorn N, Liu T, Zhang F. Twin-screw melt granulation: Current progress and challenges. International Journal of Pharmaceutics. 2020; 588:119670)。親水性および疎水性結合剤の種々のタイプは、すでに記載されている。通常、固体粒子の表面上の溶解結合剤の分布は、溶融造粒の間、混合およびコンパクションによって引き起こされる。
【0009】
また、脂質は、頻繁に使用される。しかしながら、低溶融結合剤は、集塊の取扱および保管の間、結合剤の溶融または軟化も、生じる危険を持つ。別の問題は、好適なポリマーの限定された数である。
【0010】
ポリマーの中の、または上の、APIのアモルファス固体分散体を得るための溶融造粒プロセスを提供することは、それゆえ本発明の目的である。溶融造粒プロセスにおいて、結合剤を必要とせずに使用されることができる組成物を提供することは、さらなる本発明の目的である。溶融造粒プロセスが、結合剤を必要としない、ポリマー中又は上のAPIのアモルファス固体溶液または分散体に結果としてなる組成物を提供することは、さらなる目的である。造粒プロセスパラメーターを、前述のアーカイブに提供することは、さらなる目的である。
さらにその上、押出法を提供することは、本発明の目的であり、ここで、生成物は、有益な特性、例としてアモルファス化または溶解の程度を有する。
【0011】
発明の簡単な概要
一般的な溶融造粒プロセスにおいて、結合剤は、結晶薬物物質の集塊を形成するために使用される。通常、低溶融ポリマーは、目的が、ほとんどの場合、粒子サイズを増加させるための塊状化のみなので、好ましい。
【0012】
驚くべきことに、溶融造粒プロセスが、そのアモルファス形態における活性医薬成分(API)とともにポリマーを装填するため使用することができることが、判明した。ポリビニルアルコール(PVA)を、溶融造粒プロセスの間のポリマーとして利用することによって、該ポリマーは、そのアモルファス形態におけるAPIを安定させるための基礎として役立つことができる。さらにその上、驚くべきことに、APIがその融点より上に加熱される場合に、アモルファス形態の安定化およびAPIの溶解に関する特定の好ましい結果が得られることが、見いだされた。冷却ステップの間、液体薬物物質は、ポリマーの中で、または、ポリマーの表面上で固体化し、そのアモルファス状態を維持して、アモルファス固溶体または分散体を形成する。
さらにその上、結果として生じる粒子が、HMEによって調製される粒子と比較して、有益な特性を有することが、見出された。
ツイン-スクリュー溶融造粒(TSMG)が、とりわけ造粒プロセスとして好適であることが、さらに見いだされた。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、次のステップを含む溶融造粒プロセスにおけるポリマーを活性医薬成分とともに装填するプロセスを指す:
a)押出機の加熱スクリューバレル中の少なくとも1つの活性医薬成分およびポリビニルアルコールを含む混合物をこねること、ここで、スクリューバレルの長さに沿った少なくとも1つのゾーンにおける温度は、こねられた混合物を形成するために、少なくとも1つの活性医薬成分の融解温度の上であり、および、ポリビニルアルコールの分解温度の下であり、および
b)こねられた混合物を、アウトレットを通して移動すること。
【0014】
「活性医薬成分」すなわち「API」は、その1以上の薬学的に許容し得る塩、エステル、誘導体、類似体、プロドラッグ、および溶媒和物の形で見いだされてもよい。本明細書に使用されるとき、「薬学的に許容し得る塩」は、酸の水素原子が塩基の陽イオンと置き換えられる、酸と塩基の相互作用によって形成された化合物を意味することと、理解される。
【0015】
用語「ポリビニルアルコール」または「PVA」は、理想とされる式[CH2CH(OH)]nを有する合成水溶性高分子を、指す。それは、良好な膜形成、接着、および乳化特性を所有する。PVAは、ポリ酢酸ビニルから調製され、そこで、機能性アセタート基は、部分的に、または完全にアルコール官能基に加水分解される。完全に加水分解されない場合、PVAは、ビニルアルコール反復単位-[CH2CH(OH)]-および酢酸ビニル反復単位-[CH2CH(OOCCH3)]-から成る、ランダムコポリマーである。PVAの極性は、その分子構造に密接に連結される。加水分解度および分子量は、PVAの分子特性を決定する。アセタート基の加水分解度が増加するにつれて、水性媒体中のポリマーの溶解性、およびまたポリマーの結晶化度および融解温度は、増加する。しかしながら、88%以上の高い加水分解度で、PVAの溶解性は、再び減少する。PVAは、一般に水に可溶性であるが、いくつかのケースにおいて、エタノールを除外するほとんどすべての有機溶媒に、ほとんど不溶性である。
【0016】
典型的なPVA命名法は、20℃での4%溶液の粘度およびポリマーの加水分解度を指し示す。たとえば、PVA 3-83は、83%が加水分解された、すなわち83%のビニルアルコール反復単位および17%の酢酸ビニル反復単位を有する、3mPasの粘度を伴なう、PVAグレードである。当業者は、83%の加水分解グレードおよび3mPasの粘度が、一般的なまるめ方法に従い、82.50%~83.49%の算出加水分解グレードおよび2.50のmPas~3.49mPas%の算出粘度を包含することを、認識している。
【0017】
本発明に従う粘度は、方法Viscosity-Rotational Method<912>を伴うモノグラフ「ポリビニルアルコール」においてUSP 39中に述べられているとおり、測定される。本発明に従う加水分解度は、モノグラフ「加水分解度」における「ポリビニルアルコール」におけるUSP 39に述べられているように、測定される。
【0018】
加水分解度が増加するにつれて、水性媒体中のポリマーの溶解性は増加するが、しかしまた、ポリマーの結晶化度は、増加する。これに加えて、ガラス転移温度および融解温度は、その加水分解度、分子量、および水分含有量に応じて変化する。たとえば、≦5.0%の乾燥の喪失を伴なうPVA4-88は、およそ170℃の融解温度、およそ40~45℃のガラス転移温度、および>250℃の分解温度を有する(Technical Information, Parteck(登録商標) MXP)。特定のPVAまたはPVAグレードの耐熱性は、種々の方法を用いて測定されることができる。本発明に従い、ガラス転移温度、融解温度、および分解温度は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定される。
【0019】
ポリビニルアルコールは、水に可溶性であるが、いくつかのケースにおいて、エタノールを除外するほとんどすべての有機溶媒に、ほとんど不溶性である。ポリマーのこの側面は、薬物が、水性媒体中で限定された溶解性を有する場合に、スプレー乾燥を通してアモルファスおよび固体分散体を形成することを、きわめて困難にする。
本発明に従うポリビニルアルコールは、いかなるPVAグレードも、含むことができる。
一態様において、ポリビニルアルコールは、異なる分子量のPVAの1以上のグレードで、そして、加水分解の異なるグレードで構成される。
【0020】
一態様において、ポリビニルアルコールは、72%~90%の加水分解度、とりわけ74%~88%、とりわけ80%~90%、および2mPas~40のmPasの、とりわけ3mPas~18mPasの、20℃での4%溶液の粘度を有する。
【0021】
一態様において、ポリビニルアルコールは、PVA 3-80、PVA 3-81、PVA 3-82、PVA 3-83、PVA 3-85、PVA 3-88、PVA 3-98、PVA 4-88、PVA 4-98、PVA 5-74、PVA 5-82、PVA 6-88、PVA 6-98、PVA 8-88、PVA 10-98、PVAPVA 13-88、PVA 15-99、PVA 18-88、PVA 20-98、PVA 23-88、PVA 26-80、PVA 26-88、PVA 28-99、PVA 30-98、PVA 30-92、PVA 32-88、およびPVA 40-88から成るリストから、選択される。
【0022】
さらなる態様において、ポリビニルアルコールは、PVA 3-80、PVA 3-81、PVA 3-82、PVA 3-83、PVA 3-88、PVA 4-88、PVA 5-74、PVA 5-88、PVA 8-88、およびPVA 18-88から成るリストから、選択される。
【0023】
さらなる態様において、ポリビニルアルコールは、PVA 3-80、PVA 3-81、PVA 3-82、PVA 3-83、PVA 4-88、およびPVA 18-88から成るリストから、選択される。
さらなる態様において、ポリビニルアルコールは、PVA 4-88である。さらなる態様において、ポリビニルアルコールは、PVA 3-82である。
【0024】
さらなる態様において、ポリビニルアルコールは、凍結粉砕される。好ましくは、PVAは、溶融造粒プロセスのために好適である粒子サイズに凍結粉砕される。例示的な商業的に入手可能なPVAは、Parteck(登録商標)MXPである。
【0025】
用語「融解温度」は、そこで、状態を固体から液体に変える、物質の温度を指す。融解温度で、固体および液体相は、平衡において存在する。物質の融解温度は、圧力に依存し、本発明に従い、融点が、1気圧の圧力で、特定される。PVAグレードの融解温度は、それぞれのPVAグレードの加水分解程度および粘度に依存する。一般のPVAの融解温度は、180~220℃の範囲である。
【0026】
用語「ガラス転移温度」は、温度が上昇するにつれて、固いおよび比較的もろい「ガラス質の」状態から、粘着性またはゴム状態への、アモルファス材料における、または、半結晶材料の中のアモルファス領域における、段階的および可逆的な移行を指す。物質のガラス転移温度は、圧力に依存し、本発明に従い、ガラス転移温度が、1気圧の圧力で、特定される。PVAグレードのガラス転移温度は、それぞれのPVAグレードの加水分解程度および粘度に依存する。一般にPVAのガラス転移温度は、40~80℃の範囲である。
【0027】
用語「分解温度」は、熱が化学結合を切る、化学分解を引き起こす温度を、指す。物質の分解温度は、圧力に依存し、本発明に従い、分解温度が、1気圧の圧力で、特定される。PVAグレードの分解温度は、それぞれのPVAグレードの加水分解程度および粘度に依存する。一般に、PVAの分解温度は、250℃の温度で開始する。
【0028】
低溶融結合剤が、固体粒子の塊状化のために使用される従来の加熱溶融造粒技法とは対照的に、本明細書に記載されたプロセスは、活性医薬成分の融点より上の、およびPVAのガラス転移温度の上の温度で、実行される。実験は、PVAがその半結晶性のため、きわめて有望な担体であることを、示した。
PVAは、固体分散体中の活性医薬成分のアモルファス相を、安定させることができる。
【0029】
文献において、低溶融結合剤の使用が、高融解点結合剤が、高融解温度を要求し、および特に、熱不安定APIなどの、熱不安定材料のための、不安定性問題に寄与することができるので、好ましい(Melt granulation: An alternative to traditional granulation techniques; March 2013; Indian Drugs 50(3):5-13)。本発明に従い、造粒プロセスの間に、APIに溶融を引き起こす温度が、選択される。驚くべきことに、溶解APIそのものが、結合剤として使用されることができ、動員されたPVAに対して、緊密に接触することが、見出された。造粒系の中での緊密な噛み合いは、強い相互作用をPVAとAPIの間に保証し、ポリマーのAPIの均一な分布につながる。
【0030】
本発明に従い、溶融造粒プロセスにおけるAPIのアモルファス固体分散体を得るための最小加工温度は、スクリューバレルに沿った、少なくとも1つのゾーンにおける、APIの融解温度より上の温度である。最大加工温度は、PVAの分解温度である。PVAのガラス転移温度は、40℃と80℃との間を、重合および加水分解の程度に応じて変化する。ほとんどのPVAグレードの分解は、およそ250℃で開始する。それゆえ、本発明に従う方法は、40℃と250℃との間に融点を有するAPIのために、使用されることができる。PVAポリマーにおけるAPIのアモルファス固体分散体を得るための、典型的な加工温度は、140℃~230℃、好ましくは170℃~210℃、より好ましくは180℃~200℃である。
【0031】
本発明に従うツイン-スクリュー溶融造粒は、可塑化された溶融が、押出機バレルの末端に結合している鋳型に強制的に通過させられる熱溶融押出(HME)のような、他のプロセッシング技術と比較して、主な利益を提供する。本発明に従うプロセスにおいて、混合物は、鋳型を通してではなく、 HMEが、PVAペレットにつながるPVA顆粒につながる開口部であるアウトレットを通して、通過する。顆粒中の活性医薬成分は、よりよく安定して、および/または改善された溶解プロファイルを示して、および最終的な投与形態(タブレット)に、より容易に加工されることができる。
【0032】
一態様において、スクリューバレルに沿った、少なくとも1つのゾーンの温度は、少なくとも1つの活性医薬成分の融解温度の上、およびポリビニルアルコールのガラス転移温度および分解温度の下である。
【0033】
温度がPVAの融解温度を越える場合、アウトレットを通して運搬される、練られて混合物は溶解状態である。それゆえ、ステップb)において、練られた混合物は、アウトレットを通して運搬され、溶融/溶解混合物を得る。
【0034】
一態様において、スクリューバレルに沿った少なくとも1つのゾーンの温度は、少なくとも1つの活性医薬成分の融解温度の上、およびポリビニルアルコールの融解温度の下、好ましくは少なくとも1つの活性医薬成分の融解温度の上、およびポリビニルアルコールのガラス転移温度と融解温度との間の温度である。その態様において、アウトレットを通して運搬される、 練られた混合物は、顆粒の形態である。それゆえ、ステップb)において、練られた混合物は、アウトレットを通して運搬され、顆粒を得る。
【0035】
さらなる態様において、スクリューバレルに沿った少なくとも1つのゾーンの温度は、40℃~250℃、好ましくは140℃~230℃、より好ましくは170℃~210℃、もっとも好ましくは180℃~200℃の間である。
さらなる態様において、温度は、上記したとおり、スクリューバレルに沿った、すべてのゾーンにおいて同一である。
【0036】
用語「溶融造粒プロセス」または「HMG」は、一般に、溶融させるかまたは軟化させる結合剤の添加が、製剤ちゅうの固体粒子の塊状化を達成するために使用されることにおける、サイズ拡大プロセスを指す。該プロセスは、それらが軟化または溶解状態である場合に、顆粒化剤として有効である材料を、利用する。医薬品工業において、このプロセスは、速放または徐放投与形態の調製のために使用されることができる。結合剤または溶融可能な結合剤は、低溶融ワックスまたは低溶融ポリマーなどの、比較的低温(50℃~90℃)で溶解また軟化した、通常低溶融物質である。溶融可能な結合剤は、造粒プロセスの間、固体粒子の塊状化を達成するために、使用される。HMEと対照的に、溶融造粒プロセスの混合物は、開口部であるが、ノズルまたは鋳型ではないアウトレットを通して、運搬される。これは、アウトレットが、それが、練られた混合物の上に圧力を発揮しないような方法で、必要な大きさにされることを、意味する。これは、圧力エネルギーを代償にした流体速度の増加につながる鋳型と、対照的である。
【0037】
HMGからの結果としての生成物は、HMEによって調製されるものとは、異なる。HME顆粒は、SEM測定から分かるように、角ばった形状および比較的平坦な表面を有し、ここでHMG顆粒は、より平坦でない表面を伴なう、より環状の形状を有する。HMG顆粒は、より小さい具体的な表面積を有する。予想外に、相当する粒子サイズ分布(例としてHME3-750μmおよびHMG4-350 rpm)で、HMGによって調製された顆粒は、それらが、より小さい具体的な表面積を有する場合であっても、より速いAPIの溶解を示す。驚くべきことに、HMGによって調製された顆粒の溶解は、
図13で分かるように、粒子サイズの増加に伴い、より速い。これは、HME(
図12)によって調製された顆粒による場合ではない。
【0038】
本発明に従い、追加の結合剤は、必要ではない。塊状化の程度は、スクリューバレルの温度に依存する。上記の記載のプロセスの温度範囲(「少なくとも1つの活性医薬成分の融点の上の、およびガラス転移温度とポリビニルアルコールの分解温度の間の」)において、造粒プロセスの間の塊状化の程度は、特定の温度の選択によって制御されることができる。PVAの融解温度の下の温度で、低度の塊状化は、検出されることができる。温度の増加と共に、塊状化の程度は、増加する。驚くべきことに、加えて、塊状化を増加させるために、溶解および液化APIが、結合剤として作用することができることが、見出された。
【0039】
粒子サイズおよび塊状化の程度から独立して、驚くべきことに、上記の条件の下で、APIが、アモルファス形態におけるPVA粒子に装填されて、そしてその形態において安定することが、見いだされた。
アモルファス固体分散体は、任意にさらなる薬学的に許容し得る成分を含有することができる。
【0040】
本明細書に使用されるとき、句「薬学的に許容し得る」は、一般に、ヒトに投与される場合に、アレルギーまたは同様の厄介な反応を生成しない、溶媒、分散体媒体、賦形剤、担体、コーティング、活性剤、等張および吸収を遅延させる剤、その他同種のものなどのすべての化合物を指す。医薬組成物における、かかる媒体および剤の使用は、当該技術分野において周知である。
一態様において、顆粒の活性医薬成分は、ポリビニルアルコールの中のアモルファス形態におよび/またはポリビニルアルコールの表面上に分散する。
【0041】
用語「アモルファス形態において分散される」は、ポリマーの中の、またはポリマーの表面上のアモルファスAPIの分散体を指す。好ましくは、アモルファスAPIは、ポリマー表面上に、分子的に分散した状態において分布される。溶解において、アモルファス固体分散体を含む製剤は、水性媒体中で、結晶APIより高い溶解性に到達することができる。
【0042】
一態様において、本発明の医薬組成物に含まれるAPIは、治療的に有効な十分量を有する。所与のAPIのために、治療有効量は、一般に当業者によって公知であるか、容易にアクセス可能である。典型的には、APIは、PVAに対するAPIの重量比で、1:99~90:10、好ましくは5:95~60:40、最も好ましくは10:90~30:70の範囲において、医薬組成物中に存在してもよい。
【0043】
用語「押出機」は、材料をバレルの下へ運搬する1または複数の回転スクリューを含有するバレルを指す。それらの押出機は、以下を含む(i)材料がバレルに入る開口部、それは、制御された方法で1以上の外部フィーダ(単数または複数)によって押出されるべき、または連続的に供給されるべき材料(単数または複数)で満たされたホッパーを有してもよい;(ii)運搬(プロセス)セクション、それは、材料を運搬して、該当する場合、混合するバレルおよびスクリュー(単数または複数)を含むおよび(iii)任意に、冷却、切断、分類、および/または最終製品の収集のための、下流の補助装置。本発明に従い、好適な押出機は、シングル-スクリュー押出機、ツイン-スクリュー押出機またはプラネタリローラ押出機である。ツイン-スクリュー押出機が、好ましい。
一態様において、溶融造粒プロセスは、ツイン-スクリュー溶融造粒プロセスである。
【0044】
用語「ツイン-スクリュー溶融造粒」(TSMG)は、溶融造粒プロセスの特定の形態を指す。ツイン-スクリュー溶融造粒において、密閉したバレルのスプライン付シャフトに搭載される2つの噛み合っている、共回転スクリューからなるツインスクリューが、使用される。広範なスクリューおよびバレルのデザインにより、様々なスクリュープロファイルおよびプロセス機能が、プロセス要件に従い、設定されることができる。ツインスクリューは、運搬、圧縮、混合、クッキング、剪断、加熱、冷却、ポンピング、ハイレベルの柔軟性を伴なう形成を確保することが、可能である。
【0045】
本明細書に使用されるとき、用語「熱溶融押出」または「HME」は、活性医薬成分、熱可塑性賦形剤、および他の機能性プロセッシング助剤が、押出機の内部で加熱、および軟化または溶融して、少なくとも1つのノズルまたは鋳型を通して、種々の形態へと押出されるプロセスを指す。
【0046】
本発明に従う、少なくとも1つの活性医薬成分(API)は、それらの1以上の薬学的に許容し得る塩、エステル、誘導体、類似体、プロドラッグ、および溶媒和物の形でもよい、生物活性物質である。医薬組成物は、1以上のAPIを含んでもよい。
【0047】
本明細書に使用されるとき、用語「難溶性のAPI」、「難水溶性API」、および「親油性API」は、Biopharmaceutics Classification System (BCS)クラス2および4に従う難溶性の定義に沿って、個体に投与されるべき特定のAPIの最も高い治療用量が、pH1から8までの範囲における250mlの水性媒体中に溶解できないような溶解性を有するAPIを指す。BCSクラス2または4に該当するAPIは、それぞれ、当業者に周知である。BCSクラス2の難溶性のAPIのための典型的な例は、イトラコナゾール(ITZ)である。
【0048】
一態様において、活性医薬成分は、難溶性のAPIである。
プロセス終了後、生成物は、好ましくは顆粒の形態で放出される。これらの顆粒は、追加の賦形剤の付加を伴うまたは伴なわない、粉砕、カプセル充填または、直接圧縮の様に、さらなるプロセッシングステップのために、容易に使用されることができる。顆粒の粒子サイズは、プロセスパラメーターの変化によって、適合させられることができる。
【0049】
本明細書に使用されるとき、用語「顆粒」は、巨大分子サイズの、好ましくは20~2500μmの間の、より好ましくは50~2000μmの間の、もっとも好ましくは100~1500μmの間の平均粒径を有する、大部分が球面であるか、角ばっているか、ほとんど球面であるか、またはほとんど角ばった構造を指す。「平均粒径」は、サンプリングされた粉末または顆粒の塊(粒子の)の50%がより小さい直径を有するところと同等の直径として、定義される。粒度分布の測定のために、種々の方法が、利用可能である。本発明に従い、粒子サイズ分布は、Dynamic Image Analysis (ISO 13322-2)で測定される。
【0050】
具体的な態様において、粒子サイズ分布は、好ましくはcamera systems CCD-BとCCD-Zの両方が、測定の間に活性化され、分散のための空気圧が、50kPaに設定され、およびスリット幅が、4mmに設定されるとともに、Retsch GmbHからのCamsizer X2を使用して、測定される。
【0051】
ここでの溶融造粒によって実行される造粒プロセスの概念は、ツインスクリュー溶融造粒のみに限定されるわけではない。APIならびにポリマー(単数または複数)が、適切な温度条件の下で、処理できる場合、バッチ式で実行される、他の熱プロセッシング技術も、可能である。
【0052】
記載されたやり方において、イトラコナゾール(ITZ)は、低溶解性のモデル活性物質として処理され、そして本発明を例示する、開示された溶融造粒プロセスを用いて、ポリビニルアルコールによって処理される。本発明は、ITZまたは低溶解性のAPIに限定されないことが強調される。プロセスは、上述のとおり、40℃と250℃との間の融解温度を有するすべてのAPIによって、実行されることができる。
【0053】
本発明は、上記のとおりのプロセスによる、PVA中の少なくとも1つの活性医薬成分のアモルファス固体分散体を生成するための方法を、さらに指す。本発明は、上記のとおりのプロセスによる、PVAの中のアモルファス活性成分を分散させるための方法を、さらに指す。
【0054】
本発明は、上で記載されたプロセスによって入手できる顆粒を、さらに指す。前に言及されたプロセスによって得られた顆粒は、直接小袋またはカプセルに満たされることができるか、またはさらにタブレット、カプセル、またはマルチ微粒子系へと処理されることができる。
典型的には、顆粒は、少なくともAPIおよびPVAを含む。
それらは、任意に、さらなる薬学的に許容し得る成分を、含有することができる。
【0055】
すくなくとも1つのAPIおよびPVAは、PVAに対するAPIの重量比で、1:99~90:10、好ましくは5:95~60:40、最も好ましくは10:90~30:70の範囲において、顆粒中に存在してもよい。
【0056】
顆粒は、好ましくはAPIの少なくとも50%(w/w)、より好ましくはアモルファス形態におけるAPIの少なくとも80%、もっとも好ましくは少なくとも90%を、含む。任意に、顆粒は、定義された粒子サイズに、さらに粉砕されることができる。好ましくは、顆粒は、50μm~300μmの間の平均粒径に粉砕される。
本発明は、上で記載されたプロセスによって入手できるタブレットを、さらに指す。
【0057】
本発明の様々な態様を作成および使用することは、以下に詳細に議論される一方で、本発明が、ここで詳細に記載されるより、より多く適用できる発明の概念を提供することが、理解されるべきである。本明細書において議論される特定の態様は、単に本発明を作成し使用する特定の方法を図示するものであり、本発明の範囲を区切るわけではない。
【0058】
本明細書に定義されない用語は、本発明に関連のある当業者によって一般に理解されるとおりの意味を有する。「a」、「an」、および「the」などの用語は、単一の実体のみを指すことは意図されず、具体例が、説明のために使用されてもよい、一般的なクラスを含む。本明細書中の専門用語は、本発明の特定の態様を記載するために使用されるが、しかしそれらの使用は、請求項で概説されるときを除いて、本発明を区切らない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】
図1は、種々の温度で得られた種々の加熱溶融顆粒のX線回折図を、示す。
【
図2】
図2は、例1のツインスクリュー溶融造粒プロセスのために使用されるとおりに、結晶イトラコナゾールのX線回折図を示す。
【
図3】
図3は、イトラコナゾールの結晶形と比較した、例1で得られた顆粒からのイトラコナゾールの溶解プロファイルを、示す。
【
図4】
図4は、500×倍率でのHMG1-200rpmのSEM画像
【
図5】
図5は、500×倍率でのHMG2-25rpmのSEM画像
【
図6】
図6は、500×の倍率でのHMG3-300rpmのSEM画像
【
図7】
図7は、500×倍率でのHMG4-350rpmのSEM画像
【
図8】
図8は、500×倍率でのHMG5-400rpmのSEM画像
【
図9】
図9は、500×倍率でのHME1-350μmのSEM画像
【
図10】
図10は、500×倍率でのHME2-500μmのSEM画像
【
図11】
図11は、500×倍率でのHME3-750μmのSEM画像
【
図12】
図12は、900mlSGF、75rpm、50mg APIを伴うパドルにおける種々のバッチのPVA4-88粒子の溶解を、示す。
【
図13】
図13は、900mlSGF、75rpm、50mg APIを伴うパドルにおける、バッチHME3-750μmおよびHMG4-350rpmの溶解の比較を、示す。
【
図14】
図14は、熱溶融押出(ノズルによる)のためのプロセスプロファイルを、示す。
【
図15】
図15は、加熱溶融造粒に関するプロセスプロファイルを、示す。
【0060】
例:
I.溶融造粒プロセス
1.ツインスクリュー溶融造粒プロセス
結晶イトラコナゾールおよびPVA 4-88(Parteck(登録商標)MXP)の10%の混合物の700gを、造粒キットを備えるツイン-スクリュー押出機のバレルにフィードした。回転速度および投与速度を、標的パラメーターに達するまで適合させた。すべての加熱ゾーンが、それらの標的温度に到達したあと、造粒プロセスを開始した。
【0061】
スクリューの回転速度を、300rpmに設定した。注入速度を、150グラム/時で一定に保った。個々の加熱ゾーンの温度プロフィールを、表1中で提示する。
【0062】
【0063】
2.
粉末回折(PXRD)
例1で得られた結晶イトラコナゾールおよび顆粒を、粉末回折計によって測定した。例1の顆粒を、25000 rpmで20秒間、40mlの容器を備えるIKA Tubemill 100中で粉砕し、および250μl篩を通して篩にかけた。
PXRDを、次の設定によってRigaku Miniflex 600によって測定した:
40kV、15mAでX線ビーム発生。A D/teX Ultra2検出器を、使用した。
スキャン速度/継続時間を、0.02度のステップ幅とともに5度/分に設定した。スキャン範囲を、3.0~50.0度に設定した。
図1は、表1に示されるとおり、種々の温度で得られた種々の加熱溶融顆粒のX線回折図を、示す。
図2は、例1のツインスクリュー溶融造粒プロセスのために使用されるとおりに、結晶イトラコナゾールのX線回折図を示す。
【0064】
図1で分かるように、結晶イトラコナゾールおよびPVAの物理的な混合物は、依然として結晶パターン、例としておよそ14および21の回折角のピークを含有し、それは、明確に結晶イトラコナゾールに関連付けることができる(
図2を参照)。同じパターンは、約170℃の処理温度まで、試料で観察されることもできる。170℃より高い温度で、すべての薬物物質は、そのアモルファス形態に転換されると思われる。イトラコナゾールは、166.2℃の融解温度を有する。それゆえ、該実験は、融点より上の温度が、アモルファスイトラコナゾールが装填されるPVA粒子を得るために必要であることを、示している。
【0065】
3.溶解測定
溶解を測定するために、例1で得られた顆粒を、さらなる処理をせずに、直接使用した。温度セットアップ当たり3つの試料を、使用した。10%ITZ顆粒500mgを、秤量し(Mettler Toledo Delta Range XP105)、それは、50mg ITZ APIに等しい。
【0066】
溶解は、Analytik Jenaからのオンライン光電光度計Specord 200+によって、Sotax AT7 smartを用いて、実行した。媒体として、37℃±0.5で、900mlのSGF.sp(20g NaCl、800ml 0.1MHCl添加10.0L VE-水)を、使用した。次の設定を、使用した:回転速度75 rpm;パドル法;前置フィルター:Glass Mircofiber Filters GE Whatmann GF/D Diameter 25mm、5mm HELMA flow-through cuvette、サンプリングポイント:5、20、35、50、60、120分。
図3は、イトラコナゾールの結晶形と比較した、例1で得られた顆粒からのイトラコナゾールの溶解プロファイルを、示す。
【0067】
図3は、結晶イトラコナゾール(ライン1)が、離型剤中で、きわめて小さい溶解性を示すことを、立証する。140℃~170℃の間の温度でのポリビニルアルコールによる造粒は、化合物の溶解性を増加させる(ライン2~6)。
【0068】
175℃で、溶解性は、急に増加する。より高い温度に伴ない、溶解性は、さらに増強される。即時の放出は、180℃~190℃の温度に関して、観察されることができる(ライン8~10)。PCAの融解温度より上のさらなる温度増加に伴ない、薬物放出速度は、遅延する(ライン11;200℃)。
【0069】
4.粒子サイズ測定
粒子サイズ分布を測定するために、例1において得られた顆粒の1~3gを、直接さらなる処理をせずに使用した。粒子サイズは、RetschGmbHからのCamsizer X2を用いて、測定した。カメラシステムCCD-BおよびCCD-Zの両方を、測定の間、活性化した。分散体のための空気圧を、50kPaに設定した。スリット幅は、4mmに設定した。容量パーセントの累積分布は、表2中に与えられる。
【0070】
【0071】
II.比較 加熱溶融押出対加熱溶融造粒
1. 加熱溶融押出(HME)
540.15gのParteck MXPおよび60.0gのイトラコナゾールを、混合容器中で秤量し、管状ミキサー中で5分間混合した。
ポリマー/API混合物(比率:90/10)を、次いで比重計のツインスクリューフィーダー(Thermo Fisher scientific, Karlsruhe, Germany)中に満たし、そして最大注入速度を測定した。最大注入速度:0.885kg/h
【0072】
押出は、250 rpmのスクリュー速度、および0.15kg/hのフィード速度を伴い、Pharma 11ツインスクリュー押出機(Thermo Fisher scientific, Karlsruhe, Germany)によって遂行した。トルクは、最高可能トルクの12%であった(最高トルク=12 Nm)。2.0mmの直径を伴なう円形ホールノズルを設置し、また、ベント口も、設置した。
【0073】
得られた白い、不透明なフィラメントを、コンベヤーベルト(Brabender GmbH & Co.KG., Duisburg, Germany)を介して運搬した。コンベヤーベルト速度を、1.49に設定した。フィラメントの収集(colling)を、室温で、行った。フィラメントを、次いでペレタイザー(Brabender GmbH & Co.KG., Duisburg, Germany)によって切断し、白い顆粒を収集した。
熱溶融押出(ノズルによる)のためのプロセスプロファイルを、
図14において示す。
【0074】
粉砕:
各60gによる実験からの顆粒の3つのバッチを、液体窒素によって凍結した。凍結顆粒を、次いで次の条件で、ZM200超遠心ミル(RETSCH GmbH, Haan, Germany)によって粉砕した:
・18000 rpm
・12歯ローター
・350μm間隔篩を伴なう第1バッチ(バッチHME1-350μm)
・500μm間隔篩を伴なう第2バッチ(バッチHME1-500μm)
・750μm間隔篩を伴なう第3バッチ(バッチHME1-750μm)
・サイクロンを伴なうカセット
【0075】
2.熱溶融造粒(HMG)
450.0gのParteck MXPおよび50.1gのイトラコナゾールを、混合容器中で秤量し、管状ミキサー中で5分間混合した。
ポリマー/API混合物(比率:90/10)を、次いで比重計のツインスクリューフィーダー(Thermo Fisher scientific, Karlsruhe, Germany)中に満たし、そして最大注入速度を測定した。最大注入速度:0.705kg/h
【0076】
加熱溶融造粒を、ツインスクリュー造粒キットを備えたPharma11ツインスクリュー押出機(Thermo Fisher scientific, Karlsruhe, Germany)によって遂行した。
【0077】
造粒は、190℃で200rpm、250rpm、300rpm、350rpm、および400rpmのスクリュー回転数で執行した。所与のrpmで顆粒を、15分間収集した。新しいバッチを収集する前に、各新しいセットポイントの後、顆粒を、さらに10分間で廃棄した。
加熱溶融造粒に関するプロセスプロファイルを、
図15に示す。
【0078】
3.SEM測定
試料調製:
少量の粉末を、導電性両面接着テープでおおわれているアルミニウム試料ホルダー上で、調製する。遊離粒子が、SEMの高真空チャンバーを汚染するのを防御するために、非付着粒子を、圧縮空気または送風装置によって取り除く。静電荷電を回避するために、試料を、測定の前に、~10nmプラチナで被覆する(粒子が、わずかに湿っている場合、スパッタリングより前に、スパッタリングシステムにおいて、の10~2バールでの乾燥が、勧められる)。調製された試料を、次いでSEMに移動し、高真空の下で測定する。
【0079】
SEM計測:
ZEISS Supra 35/LEO 1530、電解放出陰極、最大2nm分解能、高真空、倍率20x~500,000x、0.1kV~30kV電圧、インレンズ検出器、Everhart-Thornley検出器、4-Quadrant BSE検出器。
図4~
図11は、上記のとおりのバッチからの粒子のSEM画像を示す。
図4:500×倍率でのHMG1-200rpmのSEM画像
図5:500×倍率でのHMG2-250rpmのSEM画像
図6:500×の倍率でのHMG3-300rpmのSEM画像
図7:500×倍率でのHMG4-350rpmのSEM画像
図8:500×倍率でのHMG5-400rpmのSEM画像
図9:500×倍率でのHME1-350μmのSEM画像
図10:500×倍率でのHME2-500μmのSEM画像
図11:500×倍率でのHME3-750μmのSEM画像
【0080】
4.溶解測定
試料調製:未粉砕試料を使用:n=3(顆粒当たり)
10%ITZ顆粒500mgの秤量は、50mg ITZ APIに等しい(天秤:Mettler Toledo Delta Range XP105を使用した)
溶解は、Analytik Jenaからのオンライン光電光度計Specord 200+を伴うSotax AT7 smartを使用して、実行した:
媒体:37℃±0.5で、900mlのSGF.sp(20g NaCl、800ml 0.1MHCl添加10.0L VE-水)。
回転速度75 rpm;パドル法;前置フィルター:Glass Mircofiber Filters GE Whatmann GF/D直径25mm
5mmHELMAフロースルーキュベット
サンプリングポイント:5、20、35、50、60、120分
【0081】
図12は、900mlSGF、75rpm、50mg APIを伴うパドルにおける種々のバッチのPVA4-88粒子の溶解を、示す。
図13は、900mlSGF、75rpm、50mg APIを伴うパドルにおける、バッチHME3-750μmおよびHMG4-350rpmの溶解の比較を、示す。
【0082】
HMG4-350rpmが、HME3-750μmと比較して、より速い溶解を有することが、分かる。両方のバッチは、匹敵する粒子サイズ分布を有する(例II 8を参照。)。一般に、より高い粒子サイズを伴なうHMG顆粒は、より速い溶解を示し、ここで、これは、HME顆粒と逆である。
【0083】
5.PXRD測定
顆粒を、25000rpmで20秒間、40ml容器を備えるIKA Tubemill 100で、粉砕した。
250μl篩を通して、篩にかけた
SI-低バックグラウンド試料ホルダー
PXRD法:
・Rigaku Miniflex 600
・X線 40kV、15mA
・Goniometer MiniFlex 600
・アタッチメントASC-8
・フィルターK-beta(x1.5)
・ 検出器 D/teX Ultra2
・スキャンモードCONTINUOUS
・スキャン速度/継続時間5.0000度/分
・ステップ 幅 0.0200度
・Scan 軸 シータ/2-シータ
・スキャン範囲3.0000 - 50.0000度
・インシデントスリット0.625度
・長さ限定スリット10.0mm
・受光スリット#1 13.0mm(開放)
・受光スリット#213.0mm(開放)
【0084】
6.Description Camsizer:
試料(1-3g)を、溝に入れた
試料に対応する方法を作成または指定する
測定開始する
Camsizer法:
・漏斗位置[mm]:5
・溝幅[mm]:60
・スリット幅[mm]:4
・分散圧[kPa]:50
・速度調整
・サイズ定義:xc_min
・篩サイズ:Pharm.Eur
・パラメーター:累積分布、真球度、幅/長さ、対称性
・カメラ:CCD-Basic/CCD-Zoom
・フレームレート:100%(1:1)
・測定を5000画像の後で完了する
【0085】
7.具体的な表面積測定
具体的な表面積を、気体吸着-BET法で測定した。測定を、DIN ISO9277:2014-01およびISO9277:2010(E)に対応して、実行した。
【0086】
検体の脱気および測定を、Micromeritics Instrument Cooperationからの「ASAP2420」機器によって実行し、それは、静的ボリューム測定原理を使用する。
【0087】
1.6g~4.5gの試料の量を、使用した。検体を、減圧下40℃で20時間乾燥して、脱気した。Krypton(分子断面積:0.2100nm2)を、吸着質として使用した。良好な相関を達成するために、具体的な表面積を、多点決定(7つまたは8つの点)を用いて、圧力範囲p/p0 0.05から0.20まで/0.23において吸着等温式に基づいて、算出した。相関係数は、全ての測定に関して、0.9999、および13から18までの範囲におけるBETパラメーターCより大きかった。
【0088】
点検装置のモニターのために、2つの参照材料を、使用した:アルミナ(具体的な表面積:0.22m2/g、バッチ152624、商品004-16816-00)およびシリカ-アルミナ(具体的な表面積:199m2/g、バッチA-501-71、商品004/16821/00)両者ともMicromeritics Instrument Cooperationにより配布された。
【0089】
【0090】
8.PSD(レーザー)法:
粒子サイズ分布は、ISO13320:2020(E)に対応するレーザー回折分光法で測定した。
Malvern Panalytical Ltd.からの、乾燥分散体単位「Scirocco 2000」を伴なうレーザー回折分光計「Mastersizer 2000」を、使用した。
【0091】
約1.5gの試料量を、分析した。試料を、75%のフィード速度、6mmのギャップサイズ、および3バールの空気圧を用いて、空気(1の屈折率)中に、分散させた。遮蔽速度の範囲は、0.1%~10%に設定する。10のボールを伴なう篩(直径2mm)を、使用した。
【0092】
光回折パターンは、多目的分析モデルによるFraunhoferモデルによって、評価した。表6は、記載のバッチの粒子サイズ分布を示す。HME3-750μmおよびHMG4-350rpmは、相当する粒子サイズ分布を有する。
【0093】
【国際調査報告】