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特表2024-511748フロログルシノールアセトアルデヒド樹脂、作製方法、およびゴム組成物における使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-15
(54)【発明の名称】フロログルシノールアセトアルデヒド樹脂、作製方法、およびゴム組成物における使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/04 20060101AFI20240308BHJP
   D06M 15/39 20060101ALI20240308BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20240308BHJP
   C08L 61/12 20060101ALI20240308BHJP
   C08L 9/10 20060101ALI20240308BHJP
   C09J 161/06 20060101ALI20240308BHJP
   C09J 115/00 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C08G8/04
D06M15/39
D06M15/693
C08L61/12
C08L9/10
C09J161/06
C09J115/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556492
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 US2022020299
(87)【国際公開番号】W WO2022197649
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】63/160,996
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519312463
【氏名又は名称】スミトモ ケミカル アドバンスト テクノロジーズ エルエルシー ディー・ビー・エー スミカ エレクトロニック マテリアルズ
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板橋 太門
(72)【発明者】
【氏名】信岡 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】ウォークアップ,シー マイケル
【テーマコード(参考)】
4J002
4J033
4J040
4L033
【Fターム(参考)】
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002CC062
4J002GJ01
4J002HA07
4J033CA01
4J033CA09
4J033CA13
4J033CB03
4J033HA02
4J033HB09
4J040CA012
4J040CA042
4J040EB031
4J040JA03
4J040JB02
4J040LA01
4J040MA10
4J040MB02
4J040NA16
4L033AA07
4L033AA08
4L033AB01
4L033AB02
4L033AB04
4L033AC11
4L033CA33
4L033CA68
(57)【要約】
フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、式(I)(式中、フロログルシノール性単位の数は、2~20の整数であり、R1、R2、およびR3のうちの少なくとも1つは、第2のフロログルシノール性単位と結び付いて、メチル置換メチレン架橋を形成し、R1、R2およびR3のうちの第2および第3のものは、水素原子であるか、または別のフロログルシノール性単位と結び付いて、別のメチル置換メチレン架橋を形成し、ただし、式(I)の任意の末端単位について、R1、R2およびR3のうちの任意の2つは水素原子である)により定義される複数のフロログルシノール性単位を含む。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、フロログルシノール性単位の数は、2~20の整数であり、R1、R2、およびR3のうちの少なくとも1つは、第2のフロログルシノール性単位と結び付いて、メチル置換メチレン架橋を形成し、R1、R2およびR3のうちの第2および第3のものは、水素原子であるか、または別のフロログルシノール性単位と結び付いて、別のメチル置換メチレン架橋を形成し、ただし、式(I)の任意の末端単位について、R1、R2およびR3のうちの2つは水素原子である)により定義される複数のフロログルシノール性単位を含む、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂。
【請求項2】
20wt.%未満の未反応フロログルシノールを含む、請求項1に記載のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂。
【請求項3】
650g/モル超であって1600g/モル未満のMwを有する、請求項1または2に記載のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂。
【請求項4】
ポリスチレン標準を使用するGPCによれば、ペンタマー以上のオリゴマー含有率が85%未満である、請求項1から3のいずれかに記載のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂。
【請求項5】
フロログルシノールに対するアセトアルデヒドのモル比が0.6~1以上である、請求項1から4のいずれかに記載のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を含むディッピング用接着剤組成物。
【請求項7】
不飽和ゴムラテックスを含む、請求項6に記載のディッピング用接着剤組成物。
【請求項8】
塩基性溶媒を含む、請求項6または7に記載のディッピング用接着剤組成物。
【請求項9】
pHが6超であって13未満である、請求項6から8に記載のディッピング用接着剤組成物。
【請求項10】
不飽和ゴムラテックスが、ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、イソプレンコポリマー、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンコポリマー、スチレン-ブタジエン-ビニルピリジンターポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーである、請求項6から9に記載のディッピング用接着剤組成物。
【請求項11】
フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂の含有率が、固体重量で0.1%超であって10%未満であり、ここで重量%での量が、ディッピング用接着剤組成物の総重量に対する、請求項6から10に記載のディッピング用接着剤組成物。
【請求項12】
請求項6から11に記載のディッピング用接着剤組成物を含むコーティングテキスタイル。
【請求項13】
ディップ済み材料を100~240℃の温度で熱処理する、請求項12に記載のディッピング用接着剤組成物を含むコーティングテキスタイルのための方法。
【請求項14】
フィルム、ファイバー、フィラメント、ファブリックおよびコードならびにそれらの混合物から選択される材料である、請求項12または13に記載のテキスタイル材料。
【請求項15】
ポリアミドおよびポリエステルである、請求項12から14に記載のテキスタイル材料。
【請求項16】
a.加硫可能なゴム;
b.硬化剤;および
c.請求項12から15に記載のディッピング用接着剤組成物を含むテキスタイル材料
を含む加硫可能なゴム組成物。
【請求項17】
請求項16に記載の加硫可能な組成物から調製された加硫ゴム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂およびその作製方法に関する。そのようなフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、液体であり、かつファイバー、フィラメント、ファブリックまたはコードを処理して、ゴムコンパウンドへの接着を増強するためのファブリックディッピング用配合物において有用である。溶液中のそのようなフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を含むディッピング用接着剤組成物の製造、および結果として生じるディッピング用接着剤組成物でコーティングされたテキスタイル材料を含む加硫可能なゴム組成物の製造も想定される。
【背景技術】
【0002】
レゾルシノールとホルムアルデヒドの反応生成物として形成されるレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂(RF樹脂またはレゾルシノール性樹脂とも呼ばれる)は、ファブリックディッピング技術を含む様々な用途において広く使用されてきた。これらのディッピング技術は、天然および合成ゴムへのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)など)ならびにポリアミド(ナイロンおよびアラミドなど)のファイバー、フィラメント、ファブリックまたはコードなどのゴム補強材料の接着を増強するためにゴムおよびタイヤ産業全体を通じて広く使用されてきた。ファブリックは、RF樹脂を含む水性ラテックス懸濁液(その組成物は、RFLディップとも呼ばれる)を用いてファブリックをディップするか、またはさもなければコートすることにより典型的に処理される。RF樹脂は、固体であり、したがって、水性ラテックス懸濁液において使用されなければならないことが理解されるであろう。
【0003】
レゾルシノール性樹脂は、10~20%の未反応または遊離レゾルシノールを一般に有する。しかし、遊離レゾルシノールの存在は、ヒトの健康および環境保健にとってのリスクとして問題となる可能性がある。ホルムアルデヒドも、長年にわたりレゾルシノール-ホルムアルデヒド樹脂を生成するために使用されてきた。その広範な使用、毒性、および揮発性に鑑みて、ホルムアルデヒドは、潜在的な健康および環境問題を呈する。2011年、US National Toxicology Programは、ホルムアルデヒドをヒト発癌物質であることが既知であると記載した。
【0004】
したがって、レゾルシノールおよびホルムアルデヒドを使用しない環境に優しい接着剤を作り出す必要が存在する。残念ながら、レゾルシノールおよびホルムアルデヒドを含まない現在までのすべての既知の先行技術は、改善された接着性能、より実用的なディップ調製、およびより長い貯蔵安定性を一般に必要とする。
【0005】
RFフリーディッピング用樹脂は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許出願公開第US2015/0315410号において、水性接着剤組成物が、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ブロック化ポリイソシアネートおよびスチレン-ブタジエン・ビニルピリジンラテックスを含むことが述べられている。いくつかの異なる成分を有することに加えて、それらの成分のいずれもフロログルシノールを含まないことに留意されたい。
【0006】
米国特許出願公開第US2018/0118983号において、水性接着剤組成物は、少なくとも2個のアルデヒド官能基を持ち、かつ少なくとも1個の芳香核を含む芳香族ポリアルデヒドと、少なくとも1個の芳香核を含むポリフェノールとを含む。一般に、フロログルシノールがこの参考文献に開示されている(ポリフェノールとして)が、組成物はアセトアルデヒドを含まず、むしろ、芳香族ポリアルデヒドを必要とし、それは、ポリフェノールと芳香族ポリアルデヒドとの反応を完了させるのに必要とされるより長い時間のために、従来のRFL技術と比較して、ディッピング溶液の調製を非効率にする。さらに、ポリアルデヒドは、高価な材料であり、かつディッピング用組成物中での低溶解度のために、特に激しい撹拌を必要とする
【0007】
したがって、少なくとも従来のRFL技術と同様に効率的であり、高価な材料を必要とせず、かつ激しく撹拌せずにディッピング用組成物中で可溶化することができるディッピング用接着剤組成物との使用に適したRF樹脂フリーディッピング用樹脂が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の少なくとも1つの態様は、フロログルシノールなどのフロログルシノール性化合物とアセトアルデヒドとの反応生成物を含むフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を提供する。フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を生成するために、フロログルシノール性化合物を有機溶媒の存在下でアセトアルデヒドと反応させる。
【0009】
一般に、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、式(I)
【化1】
(式中、フロログルシノール性単位の数は、2~20の整数であり、R1、R2、およびR3のうちの少なくとも1つは、第2のフロログルシノール性単位と結び付いて、メチル置換メチレン架橋を形成し、R1、R2およびR3のうちの第2および第3のものは、水素原子であるか、または別のフロログルシノール性単位と結び付いて、別のメチル置換メチレン架橋を形成し、ただし、式(I)の任意の末端単位について、R1、R2およびR3のうちの任意の2つは水素原子である)により定義される複数のフロログルシノール性単位を含む。
【0010】
本発明の別の態様は、テキスタイルをゴムコンパウンドに接着させるためのディッピング用接着剤組成物であって、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂および水を含み、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、可溶化されるか、または水内で実質的に均一に分散されるディッピング用接着剤組成物を提供する。1つまたは複数の実施形態において、ディッピング用接着剤組成物は、不飽和ゴムラテックスをさらに含む。1つまたは複数の実施形態において、ディッピング用接着剤組成物は、ゴムコンパウンドへのテキスタイルの接着をさらに増強または促進する任意の添加剤を任意選択で含んでもよい。そのような接着促進剤添加剤は、ブロック化ジイソシアネート、水溶性または分散性脂肪族エポキシ化合物、またはそれらの組合せからなる群から選択してもよい。水溶性または分散性脂肪族エポキシ化合物は、最終溶液中で良好な安定性を有するべきである。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、上記のディッピング用接着剤組成物を含むコーティングテキスタイルを提供する。すなわち、コーティングテキスタイルは、フロログルシノール性化合物とアセトアルデヒドの反応生成物を含むフロログルシノール性アセトアルデヒルド(acetaldehylde)樹脂でコーティングされる。一般に、コーティングテキスタイルは、テキスタイル材料をディッピング用接着剤組成物中にディップすることにより生成し得る。テキスタイル材料は、フィルム、ファイバー、フィラメント、ファブリック、コードおよびそれらの混合物から選択してもよい。1つまたは複数の実施形態において、テキスタイル材料は、ポリアミドまたはポリエステルで作製される。同じか、または他の実施形態において、テキスタイル材料は、ファイバーまたはコードである。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、加硫可能なゴム;硬化剤;およびフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を含むディッピング用接着剤組成物でコーティングされたテキスタイル材料を含む加硫可能なゴム組成物を提供する。有利には、本発明の加硫ゴム組成物は、RF樹脂などの従来の生成物と比較して、接着特性などの有利なゴム特性を示すことが理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ファイバーまたはファブリックディッピング技術を含む様々な用途におけるディップ済み接着剤組成物としての使用のために、レゾルシノール-ホルムアルデヒド(RF)樹脂を置き換えることができるフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂の発見に少なくとも部分的に基づく。上で述べたように、ディッピング技術、典型的にはディッピング用接着剤組成物の形態のディッピング技術は、天然および合成ゴムへのポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)など)ならびにポリアミド(ナイロンおよびアラミドなど)のファイバー、フィルム、フィラメント、ファブリックまたはコードなどのゴム補強材料の接着を増強するために、ゴムおよびタイヤ産業全体を通じて広く使用されてきた。RF樹脂と同じく、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、水性または塩基性溶媒、ラテックスベースの懸濁液または混合物に記載されている。次いで、テキスタイル材料のファブリック、ファイバーまたはコードは、本質的にディッピング用接着剤組成物である、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を含む水性ラテックス懸濁液を用いてテキスタイル材料をディップするか、またはさもなければコートすることにより処理される。次いで、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を含むディッピング用接着剤組成物でコーティングされたテキスタイル材料を加硫可能なゴム組成物および硬化剤に加えて、加硫ゴム組成物を提供することができる。フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、固体であり、したがって、水性または塩基性溶媒ラテックス懸濁液において使用されなければならないことが理解されるであろう。しかし、重要なことに、組成物は、レゾルシノールまたはホルムアルデヒドを含まない。代わりに、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂が使用される。
【0014】
本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、式(I)
【化2】
(式中、フロログルシノール性単位の数は、2~30の整数であり、R1、R2、およびR3のうちの少なくとも1つは、第2のフロログルシノール性単位と結び付いて、メチル置換メチレン架橋を形成し、R1、R2およびR3のうちの第2および第3のものは、水素原子であるか、または別のフロログルシノール性単位と結び付いて、別のメチル置換メチレン架橋を形成する)に示されるように描き得る。すなわち、式(I)のR1、R2、またはR3がメチル置換メチレン架橋を形成する場合、フロログルシノール単位が各架橋の他の側に結合することになることが理解されるであろう。したがって、R1のメチル置換メチレン架橋の他の側に結合した第2のフロログルシノール性単位、R2のメチル置換メチレン架橋の他の側に結合した第3のフロログルシノール性単位、およびR3のメチル置換メチレン架橋の他の側に結合した第4のフロログルシノール性単位が存在することになる。これは、アセトアルデヒドが反応混合物中で消費されるまで重合の間続くことになる。R1、R2、またはR3がメチル置換メチレン架橋として形成されない場合は、水素原子が、式(I)中のそれらの部位に設けられる。さらに、式(1)の任意の末端単位において、R1、R2およびR3のうちの任意の2つが共に水素原子になることが理解されるであろう。したがって、「末端単位」により、式(I)に示されるように、R1、R2またはR3にただ1つのメチル置換メチレン架橋が存在し、他のそのような架橋が存在しないことになることを意味する。
【0015】
いくつかの実施形態において、フロログルシノール性単位の数は、2~30の整数であり、他の実施形態において、フロログルシノール性単位の数は、2~20の整数である。さらなる実施形態において、フロログルシノール性単位の数は、2~15の整数であり、なおさらなる実施形態において、フロログルシノール性単位の数は、2~10の整数である。
【0016】
フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂のいくつかの実施形態は、別の方法でも示しおよび記載することができ、したがって、本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、式(II)
【化3】
(式中、nは、1~15の整数であり、R1、両方のR2、およびR3は、メチル置換メチレン架橋または水素原子のいずれかであり、ただし、式(II)の任意の末端単位について、R1、R2およびR3は水素原子である)に示されるように描き得ることが理解されるであろう。メチル置換メチレン架橋は、式(II)中、その中に描かれた2つのフロログルシノール単位の間に既に示されている。式(II)のR1、いずれかのR2、またはR3がそのようなメチル置換メチレン架橋を形成する場合、さらなるフロログルシノール単位が架橋の他の側に結合することになることが理解されるであろう。しかし、最大30フロログルシノール単位のみが、終端される前にR1、いずれかのR2またはR3から伸長してよい。他の実施形態において、最大20フロログルシノール単位のみが、終端される前にR1、いずれかのR2またはR3から伸長してよい。さらに他の実施形態において、最大10フロログルシノール単位のみが、終端される前にR1、いずれかのR2、またはR3から伸長してよい。したがって、R1、いずれかのR2またはR3から伸長するフロログルシノール単位の鎖は無限ではない。しかし、アセトアルデヒドとの反応は、アセトアルデヒドが反応混合物中で消費されるまで重合の間続くことになる。R1、いずれかのR2、またはR3がメチル置換メチレン架橋として形成されない場合は、水素原子が、式(II)中のそれらの部位に設けられる。さらに、式(II)の任意の末端単位において、左側の単位のR2およびR3、または右側の単位のR1およびR2が共に水素原子になることが理解されるであろう。したがって、「末端単位」により、この式について、式(II)に示されるように、ただ1つのメチル置換メチレン架橋がフロログルシノールの最後の終端単位上に存在することになり、一端のR1およびR2ならびに他端のR3およびR2が水素原子になることを意味する。
【0017】
いくつかの実施形態において、nは、1~15の整数であり、他の実施形態において、nは、1~10の整数である。さらなる実施形態において、nは、1~8の整数であり、なおさらなる実施形態において、nは、1~5の整数である。式(II)中のnは、式(I)中のフロログルシノール性単位の数とは無関係であり、かつ別々の式とみなすべきであることが理解されるであろう。したがって、式(II)中のフロログルシノール性単位の数は、式(I)中のフロログルシノール性単位の数よりも大きくても、小さくてもよいことが理解されるであろう。
【0018】
本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、分子量によって特徴付けることができる。フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂の分子量は、いくつかの方法論を使用して決定することができ、分子量は、重量平均分子量(Mw)または数平均分子量(Mn)によって典型的に報告されることが理解されるであろう。固体フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂の分子量を決定するのに有用な技法は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)または蒸気相浸透圧法を含む。
【0019】
1つまたは複数の実施形態において、樹脂のMwは、260g/モル超、他の実施形態において310g/モル超、他の実施形態において360g/モル超、他の実施形態において450g/モル超、他の実施形態において550g/モル超、および他の実施形態において650g/モル超である。これらまたは他の実施形態において、樹脂のMwは、1900g/モル未満、他の実施形態において1800g/モル未満、他の実施形態において1700g/モル未満、および他の実施形態において1600g/モル未満である。これらまたは他の実施形態において、本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、約260g/モル~約1900g/モル、他の実施形態において約310g/モル~約1800g/モル、他の実施形態において約450g/モル~約1700g/モル、および他の実施形態において約650g/モル~約1600g/モルであるMwによって特徴付けることができる。
【0020】
より具体的に、かつ1つまたは複数の実施形態において、本発明のフロログルシノール性アセトルアデヒド(acetladehyde)樹脂は、フロログルシノール性化合物を有機溶媒の存在下でアセトアルデヒドと反応させることにより一般に調製される。そして上で述べたように、フロログルシノール性化合物には、三価フェノールもしくは1,3,5-ジヒドロキシベンゼン、または遊離フロログルシノールとも呼ばれるフロログルシノールが含まれるがこれらに限定されないことが理解されるであろう。フロログルシノールの化学式は、以下の式(III)に描かれている。
【化4】
【0021】
フロログルシノールに対するアセトアルデヒドのモル比は、0.1:1から5:1まで変化してよい。いくつかの他の実施形態において、モル比は、0.2:1超から5:1未満まで変化してよい。他の実施形態において、モル割当は、0.6:1から4:1まで変化してもよく、他の実施形態において、モル比は、0.6:1超から3:1未満まで変化してもよい。いくつかの実施形態において、モル比は、望ましくは、2:1未満またはさらに1:1未満でもよく、一方、他の実施形態においてモル比は、望ましくは、0.6:1超、0.7:1超、0.8:1超、またはさらに1:1超でもよい。
【0022】
フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂の生成において有用な、適した有機溶媒の例には、極性溶媒および非極性溶媒が含まれる。使用中、溶媒は、フロログルシノール性化合物およびアセトアルデヒドが反応し、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を形成することを可能にする。1つまたは複数の実施形態において、溶媒は、アセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルtert-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフラン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ペンタン、ヘキサン、トルエンおよびキシレンから選択してもよい。1つまたは複数の実施形態において、メタノールまたはエタノールが好ましく使用される。
【0023】
1つまたは複数の実施形態において、反応(すなわち、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂の形成)は、10~150℃の間、および他の実施形態において、約25~約130℃の温度範囲内で行い得る。1つの実施形態において、反応温度は30℃超であり、一方、別の実施形態において、反応温度は45℃超である。さらに別の実施形態において、反応温度は60℃超であり、さらに別の実施形態において、反応温度は70℃超である。
【0024】
1つまたは複数の実施形態において、アセトアルデヒドとのフロログルシノール性化合物の反応は、閾値量の有機溶媒の存在下で起こる。具体的には、反応中に存在する有機溶媒の量は、反応に投入されるフロログルシノール(または他のフロログルシノール性化合物)の量(すなわち、初期混合物中のフロログルシノールの量)を参照して記載することができる。一般に、反応が起こる初期混合物は、フロログルシノール100重量部あたり有機溶媒20重量部超を含む。いくつかの実施形態において、フロログルシノール100重量部あたり有機溶媒35重量部超が使用され、一方、他の実施形態において、フロログルシノール100重量部あたり有機溶媒50重量部超を使用することができる。一般に、反応が起こる有機溶媒混合物中のフロログルシノール(アルデヒド添加前)は、フロログルシノール100部あたり有機溶媒500重量部未満を含む。いくつかの実施形態において、フロログルシノール100重量部あたり有機溶媒400重量部未満が使用され、これらおよび他の実施形態においてフロログルシノール100重量部あたり有機溶媒300重量部未満が使用される。1つまたは複数の実施形態において、反応が起こる混合物は、フロログルシノール100重量部あたり有機溶媒約20~約500重量部を含む。他の実施形態においてフロログルシノール100部あたり有機溶媒約35~約400重量部、および他の実施形態においてフロログルシノール100重量部あたり重量で有機溶媒約50~約300を使用してもよい。
【0025】
反応が完了したら、生成したフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、当技術分野において公知の任意の様式により有機溶媒から分離されることが理解されるであろう。1つまたは複数の実施形態において、有機溶媒は、樹脂を残留物として残す真空蒸留によるなど、蒸発させても、さもなければ除去してもよい。次いで、樹脂は、所望の通り使用するために、その容器から排出してもよい。1つまたは複数の実施形態において、ガスクロモグラフィー(chromography)を使用して混合物を分離することができる。1つまたは複数の実施形態において、混合物を濾過またはデカントして、固体樹脂を有機溶媒から分離することができる。
【0026】
次いで、本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を水と混合して、水性ディップ用接着剤組成物を形成することができる。フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を含むそのような水性ディップ用接着剤組成物は、様々な用途においてテキスタイルを処理するための単回ディップまたは2段階ディップ法として調製される。典型的には、そのようなディップ配合物は、テキスタイルをゴムコンパウンドに接着させるための水性ディップ用接着剤組成物として使用することができる。ディッピング用接着剤組成物は、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂および水を含み、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、可溶化されるか、または水内で実質的に均一に分散される。
【0027】
単回ディップ法において、水性ディップ配合物は、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を水と混合することにより作製される。必要な場合、pH調整をアルカリ性物質の添加により行ってもよい。1つまたは複数の実施形態において、アルカリ性物質は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアおよび水酸化アンモニウムからなる群から選択してもよい。特定の実施形態において、アルカリ性物質は、水酸化ナトリウムおよび水酸化アンモニウムである。不飽和ゴムラテックスは、次いでディップ配合物に加えられる。生成したディップ用接着剤組成物は、即座に使用する準備が整っているか、または使用前に室温で約24時間~数週間保管することができる。
【0028】
1つまたは複数の実施形態において、不飽和ゴムラテックスは、ブタジエンコポリマー、ポリブタジエン、イソプレンコポリマー、ポリ-イソプレン、スチレン-ブタジエンコポリマー、およびスチレン-ブタジエン-ビニルピリジンターポリマーからなる群から選択してもよい。特定の実施形態において、不飽和ゴムラテックスはスチレン-ブタジエン-ビニルピリジンターポリマーである。
【0029】
2段階ディップ法において、第1のディップ溶液として、テキスタイルは、ポリエポキシド化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物またはエチレン尿素化合物から選択される少なくとも1種の接着剤化合物を含むサブコート溶液で処理またはコートされる。使用に適したポリエポキシド化合物は、1個または複数のエポキシ基を含有する分子を含み、かつグリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびレゾルシノールから作製されたエポキシ化合物を含む。少なくとも1つの実施形態において、ポリエポキシド化合物には全くレゾルシノールがない。これらの接着剤化合物のうち、多価アルコールのポリエポキシドは特に適している。ブロック化ポリイソシアネートは、ラクタム、フェノール類ならびにトルエンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートを含むオキシムブロック化イソシアネートから選択される。このサブコート溶液処理は、水の存在下、繊維表面を実際に活性化して、主としてフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂である主成分としての第2のディップ溶液との相互作用を増強する。したがって、2段階法の操作において、テキスタイル材料は、接着剤化合物を含むサブコート溶液中にまずディップして、第2のディップ溶液との相互作用のために繊維表面を活性化および増強する。次いで、テキスタイルは、第2のディップ溶液中にディップされて、ゴム補強テキスタイル材料を与える。
【0030】
様々な産業用途のために接着性能を改善するために使用することができるゴム補強テキスタイル材料は、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維およびポリビニルアルコール繊維などの合成繊維を含むフィラメントヤーン、コードおよび織布の形態でよく、かつそれらの表面がテキスタイル材料、フォログルシノール性(phologlucinolic)アセトアルデヒド樹脂およびゴムとの相互作用を増強するために接着剤組成物でコーティングされていることを特徴とする。
【0031】
一般に、テキスタイル材料をゴムに接着させるためのプロセスは、当技術分野において周知である。したがって、例えば、ポリエステルコードなどのテキスタイル材料をゴムコンパウンドに接着させるためのプロセスにおいて、従来のディッピング装置が使用され、それによって、1段階法により生成され、かつ本発明の実施形態にしたがって作製されたフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を使用して調製されたディッピング用接着剤組成物を含むディップ浴内にコードが連続的に通される。過剰なディップは、コードをエアジェットでブローすることにより除去され、コードは、温度170℃に設定されたオーブン内で約120秒間乾燥される。次いで、コードは、約230℃の温度でポリエステルコード中へのディップの浸透に必要な十分な時間硬化される。約60秒の硬化時間は、ほとんどの場合において適しており、かつ許容されることが見出された。
【0032】
加硫可能なゴムへのポリエステルコードの結合の成功を試験する目的で、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂ベースの接着剤で処理したコードは、配合された未硬化ゴムコンパウンドに埋め込まれ、次いで、加硫される。ゴムコンパウンドは、良好な接着を促進するのに十分な時間および温度で、典型的には160℃で約15~18分間加硫される。特定の試験について、ASTM D-4776にしたがう標準的なH接着試験法が、ゴムへのテキスタイルタイヤコードの静的接着を決定するために使用された。
【0033】
この試験を考慮して、生成したフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂ベースの接着剤で処理したテキスタイルは、加硫可能なゴム組成物において有用であることが見出された。本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂の使用のほかは、加硫可能な組成物は、事実上従来のものでもよい。したがって、ゴム組成物は、加硫可能なゴム、硬化剤、充填剤、および本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を含むディッピング用接着剤組成物でコーティングされたテキスタイル材料を含んでもよい。有利に、本発明の加硫ゴム組成物は、RF樹脂などの従来の生成物と比較して、接着特性などの有利なゴム特性を示すことが理解されるであろう。
【0034】
本発明のゴム組成物に関して、ゴム組成物は、任意の天然ゴム、合成ゴムまたはそれらの組合せを含み得るゴム成分を含んでもよい。合成ゴムの例には、スチレンブタジエンコポリマー、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、エチレン-プロピレンコポリマーおよびエチレン-プロピレン-ジエンゴムが含まれるがこれらに限定されない。
【0035】
ゴム組成物は、そのような組成物において使用される通常の添加剤のうちの1種または複数を含んでもよい。そのような添加剤の例には、カーボンブラック、コバルト塩、ステアリン酸、シリカ、ケイ酸、硫黄、過酸化物、酸化亜鉛、充填剤、酸化防止剤および軟化油が含まれる。
【0036】
ゴム組成物は、そのような組成物を調製および使用する従来の様式で調製および使用される。例えば、組成物は、固体状態混合により調製することができる。
【0037】
前述を考慮して、本発明にしたがって生成されたゴム組成物は、様々なゴム用途またはゴム物品のために使用してよいことが理解されるであろう。本発明の接着剤配合物でコーティングされたポリエステル繊維、ヤーン、フィラメント、コードまたはファブリックは、タイヤ用途において使用されても、ラジアル、バイアス、またはベルテッドバイアスパッセンジャータイヤ、トラックタイヤ、モーターサイクルまたは自転車タイヤ、オフロードタイヤ、航空機タイヤ、伝動ベルト、Vベルト、コンベヤベルト、ホース、およびガスケットの部分を調製するために使用されてもよい。他の用途には、エンジンマウントおよびブッシングに有用であるゴム製品が含まれる。本発明の未硬化および硬化ゴム組成物が使用されてもよい、あるいは、調製するために使用されてもよい他の適用例は、ホース、空気圧ベルト、およびコンベヤベルトなどの技術的または機械的ゴム物品を含む。
【0038】
本発明の実施を示すために、以下の例が調製および試験された。しかし、例は、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。特許請求の範囲は、本発明を定義するのに役立つ。以下の略語PGは「フロログルシノール性アセトアルデヒド」を意味する。一段階ディップ法を使用してPG樹脂例1~9を調製し、例7および9に対しては、pHを調整するためにアルカリ添加剤をさらに用意した。
PG樹脂例1.
【0039】
50.0gのフロログルシノール、アセトアルデヒド50wt%のエチルアルコール溶液22.1g、および150.0gのエチルアルコールをフラスコに入れ、78℃まで加熱した。反応混合物を約78℃で2時間維持した。次いで、溶媒を真空蒸留により除去し、樹脂をフラスコから排出した。
PG樹脂例2.
【0040】
50.0gのフロログルシノール、アセトアルデヒド50wt%のエチルアルコール溶液24.5g、および150.0gのエチルアルコールをフラスコに入れ、78℃まで加熱した。反応混合物を約78℃で2時間維持した。次いで、溶媒を真空蒸留により除去し、樹脂をフラスコから排出した。
PG樹脂例3.
【0041】
50.0gのフロログルシノール、アセトアルデヒド50wt%のエチルアルコール溶液26.9g、および150.0gのエチルアルコールをフラスコに入れ、78℃まで加熱した。反応混合物を約78℃で2時間維持した。次いで、溶媒を真空蒸留により除去し、樹脂をフラスコから排出した。
PG樹脂例4.
【0042】
50.0gのフロログルシノール、アセトアルデヒド50wt%のエチルアルコール溶液30.1g、および150.0gのエチルアルコールをフラスコに入れ、78℃まで加熱した。反応混合物を約78℃で2時間維持した。次いで、溶媒を真空蒸留により除去し、樹脂をフラスコから排出した。
PG樹脂例5.
【0043】
50.0gのフロログルシノール、アセトアルデヒド50wt%のエチルアルコール溶液34.1g、および150.0gのエチルアルコールをフラスコに入れ、78℃まで加熱した。反応混合物を約78℃で2時間維持した。次いで、溶媒を真空蒸留により除去し、樹脂をフラスコから排出した。
PG樹脂例6.
【0044】
50.0gのフロログルシノール、アセトアルデヒド50wt%のエチルアルコール溶液39.4g、および150.0gのエチルアルコールをフラスコに入れ、78℃まで加熱した。反応混合物を約78℃で2時間維持した。次いで、溶媒を真空蒸留により除去し、樹脂をフラスコから排出した。
PG樹脂例7.
【0045】
50.0gのフロログルシノール、アセトアルデヒド50wt%のエチルアルコール溶液26.9g、および150.0gのエチルアルコールをフラスコに入れ、78℃まで加熱した。反応混合物を約78℃で2時間維持した。次いで、溶媒を真空蒸留により除去した。次いで、200.0gの蒸留水および14.0gの水酸化ナトリウムを入れ、次いで、溶媒を蒸留により除去して、水性溶液130.0gを得た。固体含有率は49.2%である。
PG樹脂例8.
【0046】
50.0gのフロログルシノール、アセトアルデヒド50wt%のエチルアルコール溶液19.2g、および150.0gのエチルアルコールをフラスコに入れ、78℃まで加熱した。反応混合物を約78℃で2時間維持した。次いで、溶媒を真空蒸留により除去し、樹脂をフラスコから排出した。
PG樹脂例9.
【0047】
250.0gのフロログルシノール、アセトアルデヒド50wt%のエチルアルコール溶液157.3g、および750.0gのエチルアルコールをフラスコに入れ、78℃まで加熱した。反応混合物を約78℃で2時間維持した。次いで、溶媒を真空蒸留により除去した。次いで、800.0gの蒸留水および70.0gの水酸化ナトリウムを入れ、次いで、溶媒を蒸留により除去して、水性溶液815.0gを得た。固体含有率は39.8%である。
【0048】
フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂の様々な物理的特性および化学分析を以下の表1に記載する。樹脂特性の評価において、分子量およびオリゴマー分布をGPC分析により決定したことが理解されるであろう。フロログルシノールとアセトアルデヒドとの反応生成物をプロトンNMR分光法により分析した。モル比は、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を合成するためのフロログルシノール(Phg)に対するアセトアルデヒド(A)であった。
【0049】
【表1】
【0050】
本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂の間の比較において、0.6~1以上のフロログルシノールに対するアセトアルデヒド(A:Phg)のモル比を有するこれらのフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂(例1~7および9)は、0.6~1未満のA:Phgのモル比を有するフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂(例8)が与えたよりもテトラマーおよびペンタマーの高い百分率を与え、さらに、より少ない芳香族水素を有しながら、より多くのエチリデン架橋を有したことが理解されるであろう。表4に記載の通り、これは、0.6~1未満のモル比を有する樹脂のディッピング溶液安定性に影響した可能性がある。
【0051】
上記の独自に調製された固体フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂によりもたらされる改善を十分に分析するために、住友化学からPENACOLITE(登録商標)RESIN R-2170という商品名で入手可能なレゾルシノールホルムアルデヒド樹脂を比較RF樹脂として用意したことが理解されるであろう。次いで、比較RF樹脂を含む上記の例のすべてをディッピング用接着組成物の調製において使用した。
【0052】
2段階ディップ法を使用して調製したディッピング用接着組成物中にタイヤコードをディップした。完全な接着剤配合物溶液を表2に示す。第1のステップは、第1の浴中のサブコーティング(表2中のサブコート溶液として識別される)であり、EMS-GriltechからGRILLBOND IL-6という商品名で入手可能なカプロラクタムブロック化メチレン-ビス-(4-フェニルイソシアネート)エマルション、およびNagase Chemtech CorporationからDENACOL EX313という商品名で入手可能なグリセロールポリグリシジルエーテルに基づく。第2のステップは、表2に示された第2の浴中のトップコーティング(表2中の樹脂溶液として識別される)である。調製において、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂、蒸留水、および50%水酸化ナトリウムをまず混合し、次に、41% 2-ビニルピリジン・スチレン-ブタジエンゴム(SBR)ラテックスを、よく混合しながら加えた。水酸化アンモニウムを入れて、最終ミックス溶液を得た。例1~7の最終溶液は、室温で1週間安定であることが見出された。しかし、例8の最終溶液は、室温で安定でないことが見出され、24時間後に溶液中に浮遊物が存在した。最終溶液安定性の結果を表4に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
例の調製において使用されるタイヤコードを2本の1500デニールのポリエチレンテレフタレート(PET)ヤーンから作製した。各タイヤコード(1500/2コードとも呼ばれる)を、以下で実施されるように接着性能評価において使用した。このコードは非接着活性化(NAA)PETであった。これらのコードを、上記のように調製されたサブコートディップ溶液(すなわち、表2中のサブコート溶液)中にディップした。ディップしたら、次いで、ディップ済みコードを、210℃に設定された第1のオーブン内で張力下120秒間乾燥した。次いで、それらを、上記のように調製された溶液(すなわち、表2中の樹脂溶液)中にディップし、次いで、135℃に設定された第2のオーブン内で張力下120秒間乾燥した。次いで、生成したディップ済みコードを、240℃に設定された第3のオーブン内で120秒間硬化した。最後に、PG樹脂ベースの接着剤ディップ溶液で処理したポリエチレンテレフタレートコードを、配合された未硬化ゴムに埋め込み、160℃で16分間硬化し、生成したサンプルを、ASTM法D-4776にしたがって実施されるH引張接着試験において試験した)。
【0055】
したがって、例1~8および表1の例1~8に記載されたフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂、ならびに比較RF樹脂を含むディップ済みコード試験片を、表3に示されたゴム組成にしたがって調製した。
【0056】
【表3】
【0057】
次いで、表1に記載された8種のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂のそれぞれを含むディップ済みコード試験片を、比較RF樹脂(比較例1)を含むディップ済みコード試験片に対して試験した。
【0058】
ディッピング溶液の安定性およびH引張接着試験を以下の表4に記載する。湿度老化接着および熱老化接着も試験した。
【0059】
【表4】
【0060】
本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂および従来のレゾルシノールホルムアルデヒド(RF)樹脂の間の比較において、本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、従来のレゾルシノールホルムアルデヒド樹脂と比較して、より良い未老化接着特性をもたらし、一方、湿度未老化接着特性および熱老化接着特性は、比較的一貫したままであったことが理解されるであろう。
【0061】
以下は、第2のディッピング例を提供する。2段階ディップ法を使用して調製したディッピング用接着組成物中にコードをディップした。完全な接着剤配合物溶液を表5に示す。第1のステップは、第1の浴中のサブコーティング(表5中のサブコート溶液として識別される)であり、Fisher scientificからAerosol(登録商標)OTという商品名で入手可能なビス(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩、およびNagase Chemtech CorporationからDENACOL EX313という商品名で入手可能なグリセロールポリグリシジルエーテルに基づく。第2のステップは、表5に示された第2の浴中のトップコーティング(表5中の樹脂溶液として識別される)である。調製において、フロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂、蒸留水、および29.5%水酸化アンモニウムをまず混合し、次に、41% 2-ビニルピリジン・スチレン-ブタジエンゴム(SBR)ラテックスを、よく混合しながら加えた。例9の最終溶液は、室温で1週間安定であることが見出された。
【0062】
【表5】
【0063】
第2の例の調製において使用されるコードのタイプを2本の1680デニールのアラミドヤーンから作製した。各タイヤコード(1680/2コードとも呼ばれる)を、以下で実施されるように接着性能評価において使用した。このコードは非接着活性化(NAA)アラミドであった。これらのコードを、上記のように調製されたサブコートディップ溶液(すなわち、表5中のサブコート溶液)中にディップした。ディップしたら、次いで、ディップ済みコードを、240℃に設定された第1のオーブン内で張力下120秒間乾燥した。次いで、それらを、上記のように調製されたトップコートディップ溶液(すなわち、表5中の樹脂溶液)中にディップし、次いで、145℃に設定された第2のオーブン内で張力下120秒間乾燥した。次いで、生成したディップ済みコードを、240℃に設定された第3のオーブン内で120秒間硬化した。最後に、PG樹脂ベースの接着剤ディップ溶液で処理したアラミドコードを、配合された未硬化ゴムに埋め込み、160℃で16分間硬化し、生成したサンプルを、ASTM法D-4776にしたがって実施されるH引張接着試験において試験した)。
【0064】
したがって、例9に記載されたフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂、および比較RF樹脂を含むディップ済みコード試験片を、表5に示されたゴム組成にしたがって調製した。
【0065】
次いで、例9に記載されたフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂を含むディップ済みコード試験片を、比較RF樹脂(比較例2)を含むディップ済みコード試験片と対比して試験した。
【0066】
ディッピング溶液の安定性およびH引張接着試験を以下の表6に記載する。湿度老化接着および熱老化接着も試験した。
【0067】
【表6】
【0068】
本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂および従来のレゾルシノールホルムアルデヒド(RF)樹脂の間の比較において、本発明のフロログルシノール性アセトアルデヒド樹脂は、従来のレゾルシノールホルムアルデヒド樹脂と比較して、良い未老化接着特性をもたらし、一方、湿度未老化接着特性および熱老化接着特性は、比較的一貫したままであったことが理解されるであろう。
【0069】
本発明の範囲および趣旨から逸脱しない様々な修正および改変は当業者に明らかになるであろう。本発明は、本明細書に記載された例示的な実施形態に正当に限定されるべきではない。

【国際調査報告】