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特表2024-512382PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体の併用療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体の併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240312BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 16/46 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 107
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61P35/04
A61P35/02
A61K47/68
A61K38/20
C07K16/46 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555147
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2022055796
(87)【国際公開番号】W WO2022189380
(87)【国際公開日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】21161465.6
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コダッリ ディーク, ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ニコリーニ, バレリア
(72)【発明者】
【氏名】ウマーニャ, パブロ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C084AA01
4C084AA02
4C084CA53
4C084DA14
4C084NA05
4C084NA07
4C084NA13
4C084ZB221
4C084ZB222
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA25
4C085BB11
4C085BB36
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE03
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045DA04
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、特異的PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと、ヒトTYRP1及びCD3に結合する特異的抗体との併用療法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療における併用療法としての使用のための、転移の予防若しくは治療における併用療法としての使用のための、腫瘍免疫等の免疫関連疾患の治療若しくはその進行の遅延における併用療法としての使用のための、又はT細胞活性等の免疫応答若しくは機能の刺激における併用療法としての使用のための、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートであって、
前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、並びに配列番号3のポリペプチド配列を含み、
前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLを含む第2の抗原結合部分とを含む、
抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【請求項2】
乳がん、肺がん、結腸がん、卵巣がん、黒色腫のがん、膀胱がん、腎がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、黒色腫、膵臓がん、胃癌腫のがん、食道がん、中皮腫、前立腺がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫の治療における使用のための、請求項1に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【請求項3】
前記免疫コンジュゲートの抗体成分及び前記抗体が、ヒトIgG又はヒトIgGサブクラスのものであることを特徴とする、請求項1に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【請求項4】
前記抗体が、低下した又は最小のエフェクター機能を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【請求項5】
前記最小のエフェクター機能が、エフェクターレスFc変異に起因する、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【請求項6】
前記エフェクターレスFc変異が、L234A/L235A又はL234A/L235A/P329G又はN297A又はD265A/N297Aである、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【請求項7】
前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、
i)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、
ii)配列番号8、及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又は
iii)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列
を含み、
前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLを含む第2の抗原結合部分とを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【請求項8】
前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、
i)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、
ii)配列番号8、及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又は
iii)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列
を含み、
前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、
i)配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16若しくは配列番号17のポリペプチド配列、
ii)配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列、又は
iii)配列番号18及び配列番号19及び配列番号20及び配列番号21のポリペプチド配列
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【請求項9】
i)腫瘍における腫瘍成長の阻害、並びに/又は
ii)腫瘍を有する対象の生存期間中央値及び/若しくは全生存率の向上
における使用のための、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートであって、
PD-1は、免疫細胞、特にT細胞上に、又は腫瘍細胞環境内で提示され、
前記併用療法において使用される前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、
i)配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、並びに配列番号3のポリペプチド配列、
ii)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、
iii)配列番号8、及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又は
iv)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列
を含むことを特徴とし、
前記併用療法において使用される前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、
i)配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLとを含む第2の抗原結合部分、
ii)配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16若しくは配列番号17のポリペプチド配列、
iii)配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列、又は
iv)配列番号18及び配列番号19及び配列番号20及び配列番号21のポリペプチド配列
を含むことを特徴とする、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【請求項10】
前記併用療法において使用される前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、配列番号1、配列番号2及び配列番号3のポリペプチド配列を含むことを特徴とし、前記併用療法において使用される前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【請求項11】
前記患者が免疫療法で治療されているか、又は免疫療法で前治療されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと、ヒトTYRP1及びCD3に結合する二重特異性抗体との併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
がんは、経済的に発展した国における主要な死因であり、発展途上国における2番目に主要な死因である。化学療法の最近の進歩及びがん細胞における成長シグナルの伝達及び調節を妨害する分子レベルで標的化される薬剤の開発にもかかわらず、進行がんを有する患者の予後は一般に不良のままである。その結果、許容できない毒性を引き起こすことなく生存率を高めるために既存の治療に追加することができる新しい治療法を開発することに持続的且つ緊急の医学的必要性がある。
【0003】
インターロイキン2(IL-2)は、リンパ球及びナチュラルキラー(NK)細胞を活性化するサイトカインである。IL-2は抗腫瘍活性を有することが示されているが、高レベルのIL-2は肺毒性をもたらし、IL-2の抗腫瘍活性はいくつかの阻害性フィードバックループによって制限される。
【0004】
その抗腫瘍有効性に基づいて、高用量IL-2(Proleukin(登録商標)として市販されているアルデスロイキン)治療は、米国では転移性腎細胞癌腫(RCC)及び悪性黒色腫の患者に、欧州連合では転移性RCCの患者に使用することが承認されている。しかしながら、IL-2の作用様式の結果として、IL-2の全身及び非標的適用は、Treg細胞及びAICDの誘導を介して抗腫瘍免疫をかなり損なう可能性がある。全身IL-2治療の更なる懸念は、静脈内投与時の重篤な副作用に関連しており、これには、重篤な心血管、肺水腫、肝臓、胃腸(GI)、神経学的及び血液学的事象(プロロイキン(アルデスロイキン)製品特性の概要[SmPC]http://www.medicines.org.uk/emc/medicine/19322/SPC/(2013年5月27日にアクセス))が含まれる。低用量IL-2レジメンが患者において試験されているが、最適とはいえない治療結果であった。まとめると、IL-2を利用する治療アプローチは、その適用に関連する責任を克服することができる場合、がん治療に有用であり得る。PD-1標的化抗原結合部分及びIL-2ベースのエフェクター部分を含む免疫コンジュゲートは、例えば国際公開第2018/184964号A1に記載されている。
【0005】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1又はCD279)は、受容体のCD28ファミリーの阻害性メンバーであり、CD28、CTLA-4、ICOS及びBTLAも含まれる。PD-1は、細胞表面受容体であり、活性化されたB細胞、T細胞及び骨髄細胞で発現している(Okazaki et al(2002)Curr.Opin.Immunol.14:391779-82;Bennett et al.(2003)J Immunol 170:711-8)。PD-1の構造は、1つの免疫グロブリン可変様の細胞外ドメインと、免疫受容体阻害性モチーフ(ITIM)及び免疫受容体チロシンに基づくスイッチモチーフ(ITSM)を含む細胞質ドメインとからなるモノマー型1膜貫通タンパク質である。PD-1に結合するとT細胞活性化を下方制御することが示されているPD-1の2種類のリガンドPD-L1及びPD-L2が特定されている(Freeman et al(2000)J Exp Med 192:1027-34;Latchman et al(2001)Nat Immunol 2:261-8;Carter etal(2002)Eur J Immunol 32:634-43)。PD-L1及びPD-L2は、両方ともPD-1に結合するB7ホモログであるが、他のCD28ファミリーメンバーには結合しない。PD-1の1つのリガンドであるPD-L1は、種々のヒトがんで豊富である(Dong et al(2002)Nat.Med 8:787-9)。PD-1とPD-L1との間の相互作用によって、腫瘍浸潤性リンパ球が減少し、T細胞受容体が介在する増殖が減少し、がん性細胞による免疫回避が減少する(Dong et al.(2003)J.MoI.Med.81:281-7;Blank et al.(2005)Cancer Immunol.Immunother.54:307-314;Konishi et al.(2004)Clin.Cancer Res.10:5094-100)。免疫抑制は、PD-1とPD-Llとの局所的相互作用を阻害することによって逆転させ得、その効果は、PD-1とPD-L2との相互作用も遮断される場合に相加的である(Iwai et al.(2002)Proc.Nat 7.Acad.ScL USA 99:12293-7;Brown et al.(2003)J.Immunol.170:1257-66)。PD-1に結合する抗体は、例えば国際公開第2017/055443号A1に記載されている。
【0006】
CD3(分化抗原群3)は、4つのサブユニット、CD3γ鎖、CD3δ鎖、及び2つのCD3ε鎖からなるタンパク質複合体である。CD3は、T細胞受容体及びζ鎖と会合し、Tリンパ球において活性化シグナルを生成する。
【0007】
CD3は、創薬標的として広く研究されている。CD3を標的とするモノクローナル抗体は、I型糖尿病などの自己免疫疾患又は移植片拒絶反応の治療における免疫抑制療法として使用されてきた。CD3抗体muromonab-CD3(OKT3)は、1985年にヒトでの臨床使用が承認された最初のモノクローナル抗体であった。
【0008】
CD3抗体の最近の応用は、一方でCD3に結合し、他方で腫瘍細胞抗原に結合する二重特異性抗体の形をとっている(Clynes and Desjarlais(2019)Annu.Rev.Med.70:437-50)。そのような抗体が両方の標的に同時に結合すると、標的細胞とT細胞の間に一時的な相互作用が生じ、細胞傷害性T細胞が活性化され、その後標的細胞が溶解する。この目的のため、CD3及び腫瘍細胞抗原TYRP1に結合する二重特異性抗体が開発されており、例えば国際公開第2020/127619号A1に記載されている。標的としてのTYRP1は、黒色腫細胞及びメラニン合成に関与するメラノサイトに存在し、ヒトにおけるメラノサイトの増殖及び生存にも影響を及ぼす。TYRP 1抗体は以前に記載されており(Boross et al.(2014)Immunol Lett.160(2):151-7)、臨床試験で試験されている(Khalil et al.(2016)Clin Cancer Res.22(21):5204-5210)。マウスモデルにおける使用のため、TYRP1及びT細胞二重特異性サロゲート抗体が抗腫瘍有効性を媒介したが、長期応答/治癒を誘導することができなかったことが記載されている(Benonisson et al.(2019)Mol Cancer Ther.(2):312-322;Labrijn et al.(2017)Sci Rep.7(1):2476)。
【0009】
患者の治療に有意に寄与する可能性を有する新しい化合物及び組み合わせが依然として必要とされている。したがって、本発明者らは、本明細書において、TYRP1及びCD3に結合するPD1-IL2v及び二重特異性抗体の新規併用療法を記載する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、がんの治療における併用療法としての使用のための、転移の予防若しくは治療における併用療法としての使用のための、腫瘍免疫などの免疫関連疾患の治療若しくは進行の遅延における併用療法としての使用のための、又はT細胞活性などの免疫応答若しくは機能の刺激における併用療法としての使用のための、PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体との併用療法を含み、PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、並びに配列番号3のポリペプチド配列を含み、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLを含む第2の抗原結合部分とを含む。
【0011】
一態様では、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、乳がん、肺がん、結腸がん、卵巣がん、黒色腫のがん、膀胱がん、腎がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、黒色腫、膵臓がん、胃癌腫のがん、食道がん、中皮腫、前立腺がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫の治療における使用のためのものであり得る。
【0012】
好ましい態様では、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、黒色腫又はメラニン細胞起源のがんの治療における使用のためのものであり得る。好ましい態様では、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、TYRP1発現がんの治療における使用のためのものであり得る。
【0013】
一態様では、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、免疫コンジュゲートの抗体成分及び抗体がヒトIgG又はヒトIgGサブクラスのものであることを特徴とする。
【0014】
更なる態様では、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、免疫コンジュゲート及び二重特異性抗体の抗体成分が、低下した又は最小のエフェクター機能を有することを特徴とする。
【0015】
一態様では、最小のエフェクター機能は、エフェクターレスFc突然変異に起因する。
【0016】
一態様では、エフェクターレスFc突然変異は、L234A/L235A、又はL234A/L235A/P329G、又はN297A、又はD265A/N297Aである。
【0017】
特定の態様では、本発明は、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを提供し、PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、i)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、ii)配列番号8及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又はiii)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列を含み、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLを含む第2の抗原結合部分とを含む。
【0018】
より特定の態様では、本発明は、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを提供し、PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、i)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、ii)配列番号8及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又はiii)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列を含み、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、i)配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16若しくは配列番号17のポリペプチド配列、ii)配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列、又はiii)配列番号18及び配列番号19及び配列番号20及び配列番号21のポリペプチド配列を含む。
【0019】
一態様では、本発明は、i)腫瘍における腫瘍成長の阻害、並びに/又はii)腫瘍を有する対象の生存期間中央値及び/若しくは全生存期間の向上における使用のための、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを提供し、PD-1は、免疫細胞、特にT細胞上に、又は腫瘍細胞環境内に提示され、併用療法において使用されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、i)配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、並びに配列番号3のポリペプチド配列、ii)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、iii)配列番号8のポリペプチド配列及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又はiv)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列を含むことを特徴とし、併用療法において使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、i)配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLを含む第2の抗原結合部分、ii)配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16若しくは配列番号17のポリペプチド配列、iii)配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列、又はiv)配列番号18及び配列番号19及び配列番号20及び配列番号21のポリペプチド配列を含むことを特徴とする。
【0020】
一態様では、本発明は、併用療法において使用されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、配列番号1、配列番号2及び配列番号3のポリペプチド配列を含むことを特徴とし、併用療法において使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列を含むことを特徴とする、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを提供する。
【0021】
一態様では、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが患者に投与され、該患者は、免疫療法で治療されているか、又は免疫療法で前治療されている。当該免疫療法は、養子細胞移入、モノクローナル抗体の投与、サイトカインの投与、がんワクチンの投与、T細胞係合療法、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。養子細胞移入は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)、T細胞受容体(TCR)改変T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、キメラ抗原受容体(CAR)改変ナチュラルキラー細胞、T細胞受容体(TCR)形質導入細胞、若しくは樹状細胞、又はそれらの任意の組み合わせを投与することを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】単剤及び組み合わせとしてのmuPD1-IL2v、muFAP-IL2v、muPD-1及びmuTYRP1-TCBの生存グラフとして表される治療応答率を提示する。B16-muFAP-Flucダブルトランスフェクタント黒色腫細胞株をBlack6アルビノマウスに静脈内注射して、肺転移性同系モデルにおける生存を研究した。マウス1匹あたりに注射される抗体の量(mg/kg)は以下の通りである:1mg/kg muPD1-IL2v、10mg/kg muPD1、1.5mg/kg muFAP-IL2v、及び10mg/kg muTYRP1-TCB。抗体を3週間にわたって週に1回静脈内注射した。試験した全ての他の単剤、組合せ及びビヒクル群と比較して、1mg/kgのmuPD1-IL2vと10mg/kgのmuTYRP1-TCBとの組合せ群で有意に優れた生存期間中央値及び全生存期間が観察された。
図2】単一薬剤として及び組み合わせて、muPD1-IL2v、muFAP-IL2v、muPD-1及びmuTYRP1-TCBを比較する有効性実験の結果を提示する。B16-muFAP-Flucダブルトランスフェクタント黒色腫細胞株をBlack6アルビノマウスにi.v.注射して、肺転移性同系モデルにおける生存を生物発光によって研究した。24日目の最初の治療投与後と同じくらい早く、B16-muFAP-Fluc生物発光シグナルの減少が、いくつかのTYRP1-TCB治療群においてIVIS(登録商標)Spectrumによって検出された。muPD1-IL2vとmuTYRP1-TCBとの組み合わせのみが、実験の全期間にわたって持続する全てのマウスにおいてBLIシグナルの完全な消失を示し、この組み合わせ群については6匹中6匹のマウスにおいて完全な応答が示された。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
IL-2経路
IL-2がin vitro及びin vivoの両方でリンパ球及びNK細胞集団を拡大及び活性化する能力は、IL-2の抗腫瘍効果を説明する。しかしながら、過剰な免疫応答及び潜在的な自己免疫を防止するための調節機構として、IL-2は、活性化誘導細胞死(AICD)をもたらし、活性化されたT細胞をFas媒介性アポトーシスに感受性にする。
【0024】
更に、IL-2は、末梢CD4CD25reg細胞の維持及び拡大に関与している(Fontenot JD,Rasmussen JP,Gavin MA,et al.A function for interleukin 2 in Foxp3 expressing regulatory T cells.Nat Immunol.2005;6:1142-1151;D’Cruz LM,Klein L.Development and function of agonist-induced CD25Foxp3regulatory T cells in the absence of interleukin 2 signaling.Nat Immunol.2005;6:1152 1159;Maloy KJ,Powrie F.Fueling regulation:IL-2 keeps CD4reg cells fit.Nat Immunol.2005;6:1071-1072)。これらの細胞は、エフェクターT細胞が、細胞-細胞の接触によって、又は免疫抑制性サイトカイン、例えばIL-10若しくはトランスフォーミング成長因子(TGF)-βの放出によって、自己又は標的を破壊するのを抑制する。Treg細胞の枯渇は、IL-2-誘導抗腫瘍免疫を増強することが示された(Imai H,Saio M,Nonaka K,et al.Depletion of CD4+CD25+regulatory T cells enhances interleukin-2-induced antitumor immunity in a mouse model of colon adenocarcinoma.Cancer Sci.2007;98:416-423)。
【0025】
IL-2はまた、CD8+T細胞の一次及び二次拡大中のメモリーCD8+T細胞分化において重要な役割を果たす。IL-2は、一次抗原チャレンジ後のエフェクター機能の最適な拡大及び生成に関与しているようである。ほとんどの抗原特異的CD8+T細胞がアポトーシスによって消失する免疫応答の収縮期の間、IL-2シグナルは、CD8+T細胞を細胞死から救済し、メモリーCD8+T細胞の永続的増加を提供することができる。記憶段階において、CD8+T細胞頻度は、外因性IL-2の投与によって増強され得る。更に、初期プライミング中にIL-2シグナルを受け取ったCD8+T細胞のみが、新たな抗原チャレンジ後に効率的な二次拡大を媒介することができる。したがって、免疫応答の異なる段階におけるIL-2シグナルは、CD8+T細胞機能の最適化において重要であり、それにより、これらのT細胞の一次応答及び二次応答の両方に影響を及ぼす(Adv Exp Med Biol.2010;684:28-41.The role of interleukin-2 in memory CD8 cell differentiation.Boyman O1,Cho JH,Sprent J)。
【0026】
その抗腫瘍有効性に基づいて、高用量IL-2(Proleukin(登録商標)として市販されているアルデスロイキン)治療は、米国では転移性腎細胞癌腫(RCC)及び悪性黒色腫の患者に、欧州連合では転移性RCCの患者に使用することが承認されている。しかしながら、IL-2の作用様式の結果として、IL-2の全身及び非標的適用は、Treg細胞及びAICDの誘導を介して抗腫瘍免疫をかなり損なう可能性がある。全身IL-2治療の更なる懸念は、静脈内投与時の重篤な副作用に関連しており、これには、重篤な心血管、肺水腫、肝臓、胃腸(GI)、神経学的及び血液学的事象(プロロイキン(アルデスロイキン)製品特性の概要[SmPC]http://www.medicines.org.uk/emc/medicine/19322/SPC/(2013年5月27日にアクセス))が含まれる。低用量IL-2レジメンが患者において試験されているが、最適とはいえない治療結果であった。まとめると、IL-2を利用する治療アプローチは、その適用に関連する責任を克服することができる場合、がん治療に有用であり得る。
【0027】
PD-1標的化抗原結合部分及びIL-2ベースのエフェクター部分を含む、例えば突然変異体IL-2を含む免疫コンジュゲートは、例えば国際公開第2018/184964号に記載されている。
【0028】
特に、突然変異体IL-2(例えば、IL-2qmとして公知の四重バリアント)は、IL-2Rαサブユニット(CD25)への結合を排除することによって、野生型IL-2(例えば、アルデスロイキン)又は第一世代IL-2ベースの免疫コンジュゲートの限界を克服するように設計されている。この突然変異体IL-2qmは、国際公開第2012/146628号及び国際公開第2012/107417号に記載されている、CEAに対するヒト化抗体及びFAPに対する抗体などの様々な腫瘍標的化抗体にカップリングされている。更に、抗体のFc領域は、Fcγ受容体及びC1q複合体への結合を防止するように改変されている。得られた腫瘍標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート(例えば、CEA標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及びFAP標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート)は、非臨床in vitro及びin vivo実験において、腫瘍細胞を排除することができることが示されている。
したがって、得られた免疫コンジュゲートは、IL-2Rαサブユニット(CD25)への結合を排除することによってIL-2の欠点に対処する標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートのクラスを表す:
【0029】
「IL-2」又は「ヒトIL-2」という用語は、例えばジスルフィド架橋IL-2二量体の形成を回避するためのC125A置換を有する配列番号3に示される、野生型及び野生型IL-2のアミノ酸配列に1つ以上の突然変異を含むバリアントを含むヒトIL-2タンパク質を指す。IL-2はまた、N-及び/又はO-グリコシル化部位を除去するように変異され得る。
【0030】
PD-1経路
T細胞活性化を調節する重要な負の共刺激シグナルは、プログラム死-1受容体(PD-1)(CD279)並びにそのリガンド結合パートナーPD-L1(B7-H1、CD274)及びPD-L2(B7-DC、CD273)によって提供される。PD-1の負の調節的役割は、自己免疫を起こしやすいPD-1ノックアウト(Pdcd1-/-)によって明らかにされた。Nishimura et al.,Immunity 11:141-51(1999);Nishimura et al.,Science 291:319-22(2001).PD-1はCD28及びCTLA-4に関連するが、ホモ二量体化を可能にする膜近位システインを欠く。PD-1の細胞質ドメインは、免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM、V/IxYxxL/V)を含有する。PD-1は、PD-L1及びPD-L2にのみ結合する。Freeman et al.,J.Exp.Med.192:1-9(2000);Dong et al.,Nature Med.5:1365-1369(1999);Latchman et al.,Nature Immunol.2:261-268(2001);Tseng et al.,J.Exp.Med.193:839-846(2001).
【0031】
PD-1は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラーT細胞、活性化単球及び樹状細胞(DC)上で発現され得る。PD-1は、活性化されたヒトCD4及びCD8T細胞、B細胞及び骨髄系細胞によって発現されるが、刺激されていないヒトCD4+及びCD8+T細胞、B細胞及び骨髄系細胞によって発現されない。これは、CD28及びCTLA-4のより制限された発現とは対照的である(Nishimura et al.,Int.Immunol.8:773-80(1996);Boettler et al.,J.Virol.80:3532-40(2006))。(i)エクソン2、(ii)エクソン3、(iii)エクソン2及び3又は(iv)エクソン2~4を欠く転写物を含む、活性化ヒトT細胞からクローニングされたPD-1の少なくとも4つのバリアントが存在する(Nielsen et al.,Cell.Immunol.235:109-16(2005))。PD-1Δex3を除いて、全てのバリアントは、休止末梢血単核細胞(PBMC)中の全長PD-1と同様のレベルで発現される。全てのバリアントの発現は、抗CD3及び抗CD28によるヒトT細胞の活性化時に有意に誘導される。PD-1Δex3バリアントは、膜貫通ドメインを欠き、自己免疫において重要な役割を果たす可溶性CTLA-4に似ている(Ueda et al.,Nature 423:506-11(2003))。このバリアントは、関節リウマチ患者の滑液及び血清が豊富である。Wan et al.,J.Immunol.177:8844-50(2006).
【0032】
2つのPD-1リガンドは、それらの発現パターンが異なる。PD-L1は、マウスT細胞及びマウスB細胞、CD、マクロファージ、間葉系幹細胞及び骨髄由来肥満細胞上に構成的に発現される(Yamazaki et al.,J.Immunol.169:5538-45(2002))。PD-L1は、広範囲の非造血細胞(例えば、角膜、肺、血管上皮、肝臓非実質細胞、間葉系幹細胞、膵島、胎盤合胞体栄養膜細胞、ケラチノサイトなど)上に発現し(Keir et al.,Annu.Rev.Immunol.26:677-704(2008))、活性化後に多くの細胞型上で上方制御される。I型インターフェロンIFN及びII型インターフェロンIFNの両方がPD-L1を上方制御する(Eppihimer et al.,Microcirculation 9:133-45(2002);Schreiner et al.,J.Neuroimmunol.155:172-82(2004))。細胞株におけるPD-L1発現は、MyD88、TRAF6及びMEKが阻害されると低下する(Liu et al.,Blood 110:296-304(2007))。JAK2はまた、PD-L1誘導に関与している(Lee et al.,FEBS Lett.580:755-62(2006);Liu et al.,Blood 110:296-304(2007))。ホスファターゼ及びテンシンホモログ(PTEN)、すなわち、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)及びAktシグナル伝達を改変した細胞ホスファターゼの喪失又は阻害は、がんにおける転写後PD-L1発現を増加させた(Parsa et al.,Nat.Med.13:84-88(2007))。
【0033】
PD-L2発現はPD-L1よりも制限されている。PD-L2は、DC、マクロファージ、及び骨髄由来の肥満細胞上に誘導可能に発現される。PD-L2はまた、休止腹膜B1細胞の約半分~2/3で発現されるが、従来のB2B細胞では発現されない(Zhong et al.,Eur.J.Immunol.37:2405-10(2007))。PD-L2+B1細胞はホスファチジルコリンに結合し、細菌抗原に対する自然免疫応答に重要であり得る。IFN-γによるPD-L2の誘導は、NF-κBに部分的に依存する(Liang et al.,Eur.J.Immunol.33:2706-16(2003))。PD-L2は、GM-CF、IL-4及びIFN-γによって単球及びマクロファージ上に誘導することもできる(Yamazaki et al.,J.Immunol.169:5538-45(2002);Loke et al.,PNAS100:5336-41(2003))。
【0034】
PD-1シグナル伝達は、典型的には、細胞増殖よりもサイトカイン産生に対してより大きな効果を有し、IFN-γ、TNF-アルファ及びIL-2産生に対して有意な効果を有する。PD-1媒介性阻害性シグナル伝達はまた、TCRシグナル伝達の強度に依存し、低レベルのTCR刺激でより大きな阻害が送達される。この減少は、CD28による共刺激によって克服することができる(Freeman et al.,J.Exp.Med.192:1027-34(2000))or the presence of IL-2(Carter et al.,Eur.J.Immunol.32:634-43(2002))。
【0035】
PD-L1及びPD-L2を介したシグナリングは双方向であり得ることが証明されている。すなわち、TCR又はBCRシグナル伝達の改変に加えて、PD-L1及びPD-L2を発現する細胞にシグナル伝達を戻し得る。ワルデンシュトレームマクログロブリン血症の患者から単離された天然ヒト抗PD-L2抗体による樹状細胞の治療は、MHC II又はB7共刺激分子を上方制御することは見出されなかったが、そのような細胞は、より多くの炎症促進性サイトカイン、特にTNF-アルファ及びIL-6を産生し、T細胞増殖を刺激した(Nguyen et al.,J.Exp.Med.196:1393-98(2002)。この抗体によるマウスの治療もまた、(1)移植されたb16黒色腫に対する抵抗性を高め、腫瘍特異的CTLを迅速に誘導し(Radhakrishnan et al.,J.Immunol.170:1830-38(2003);Radhakrishnan et al.,Cancer Res.64:4965-72(2004);Heckman et al.,Eur.J.Immunol.37:1827-35(2007))、(2)アレルギー性喘息のマウスモデルにおける気道炎症性疾患の発症を阻止した(Radhakrishnan et al.,J.Immunol.173:1360-65(2004);Radhakrishnan et al.,J.Allergy Clin.Immunol.116:668-74(2005))。
【0036】
樹状細胞(「DC」)への逆シグナル伝達の更なる証拠は、可溶性PD-1(Ig定常領域に融合したPD-1 ECドメイン-「s-PD-1」)と共に培養された骨髄由来DCの研究から得られる(Kuipers et al.,Eur.J.Immunol.36:2472-82(2006))。このsPD-1は、抗PD-1の投与によって可逆的に、DC活性化を阻害し、IL-10産生を増加させた。
【0037】
更に、いくつかの研究は、PD-1とは独立したPD-L1又はPD-L2の受容体を示す。B7.1は、PD-L1の結合パートナーとして既に同定されている(Butte et al.,Immunity 27:111-22(2007))。化学的架橋研究は、PD-L1及びB7.1がそれらのIgV様ドメインを介して相互作用し得ることを示唆している。B7.1:PD-L1相互作用は、阻害シグナルをT細胞に誘導することができる。B7.1によるCD4T細胞上のPD-L1のライゲーション又はPD-L1によるCD4T細胞上のB7.1のライゲーションは、阻害性シグナルを送達する。CD28及びCTLA-4を欠くT細胞は、抗CD3+B7.1被覆ビーズによって刺激された場合、増殖及びサイトカイン産生の減少を示す。B7.1の全ての受容体を欠くT細胞(すなわち、CD28、CTLA-4及びPD-L1)では、T細胞増殖及びサイトカイン産生はもはや抗CD3+B7.1被覆ビーズによって阻害されなかった。これは、B7.1がCD28及びCTLA-4の非存在下でT細胞上のPD-L1を介して特異的に作用することを示している。同様に、PD-1を欠くT細胞は、抗CD3+PD-L1被覆ビーズの存在下で刺激した場合に増殖及びサイトカイン産生の減少を示し、T細胞上のB7.1に対するPD-L1ライゲーションの阻害効果を実証した。PD-L1の全ての既知の受容体を欠くT細胞(すなわち、PD-1及びB7.1は存在しない)の場合、T細胞増殖はもはや抗CD3+PD-L1被覆ビーズによって損なわれなかった。したがって、PD-L1は、B7.1又はPD-1のいずれかを介してT細胞に対して阻害効果を発揮し得る。
【0038】
B7.1とPD-L1との間の直接相互作用は、共刺激の現在の理解が不完全であることを示唆し、T細胞上のこれらの分子の発現に対する重要性を強調する。PD-L1-/-T細胞の研究は、T細胞上のPD-L1がT細胞サイトカイン産生を下方制御できることを示している(Latchman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA101:10691-96(2004))。PD-L1及びB7.1の両方がT細胞、B細胞、DC及びマクロファージ上で発現されるので、これらの細胞型上のB7.1とPD-L1との間の方向性相互作用の可能性がある。更に、非造血細胞上のPD-L1は、T細胞上のB7.1並びにPD-1と相互作用する可能性があり、PD-L1がそれらの調節に関与しているかどうかの疑問が提起されている。B7.1:PD-L1相互作用の阻害効果についての1つの可能な説明は、T細胞PD-L1がAPC B7.1をCD28との相互作用から捕捉又は分離し得ることである。
【0039】
結果として、PD-L1がPD-1、B7.1又は両方のいずれかと相互作用するのを遮断し、それによってPD-L1がT細胞及び他の抗原提示細胞に負の共刺激シグナルを送るのを妨げることを含む、PD-L1を介したシグナル伝達の拮抗作用は、感染(例えば、急性及び慢性)及び腫瘍免疫に応答して免疫を増強する可能性がある。更に、本発明の抗PD-L1抗体は、PD-1:PD-L1シグナル伝達の他の成分のアンタゴニスト、例えばアンタゴニスト抗PD-1及び抗PD-L2抗体と組み合わせてもよい。
【0040】
IL-2がリンパ球及びナチュラルキラー(NK)細胞を拡大及び活性化する能力は、IL-2の抗腫瘍活性の根底にある。IL-2のIL-2αサブユニット(CD25)への結合を排除するように設計されたIL-2突然変異体は、IL-2の制限を克服し、CEA標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート又はFAP標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートなどの腫瘍標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートの一部として、腫瘍細胞を排除することができることが示されている。
【0041】
免疫コンジュゲート及び抗体
本明細書に記載の併用療法で使用されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、PD-1発現免疫細胞、特にT細胞上、又は腫瘍細胞環境内、又はその抗原結合断片上のPD-1に結合する抗体と、IL-2受容体のα-サブユニットに対する結合親和性が(野生型IL-2、例えば配列番号22として示されるヒトIL-2と比較して)低下したIL-2突然変異体、特にヒトIL-2の突然変異体、例えばi)配列番号22として示されるヒトIL-2の残基42、45及び72に対応する位置から選択される1、2又は3つの位置(複数可)の1、2又は3つのアミノ酸置換(複数可)、例えば3つの位置の3つの置換、例えば特異的アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G、又はii)i)で示される特徴に加えて、配列番号22として示されるヒトIL-2の残基3に対応する位置におけるアミノ酸置換、例えば、特異的アミノ酸置換T3A、又はiii)配列番号22として示されるヒトIL-2の残基3、42、45及び72に対応する位置における4つのアミノ酸置換、例えば特異的アミノ酸置換T3A、F42A、Y45A及びL72Gを含むIL-2とを含む。
【0042】
本明細書に記載の併用療法で使用されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、免疫細胞、特にT細胞上、又は腫瘍細胞環境内に提示されるPD-1に結合する抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインと、2つのサブユニットからなり、2つの非同一のポリペプチド鎖のヘテロ二量体化を促進する修飾を含むFcドメインと、IL-2受容体のα-サブユニットに対する結合親和性が(野生型IL-2、例えば配列番号22として示されるヒトIL-2と比較して)低下したIL-2突然変異体、特にヒトIL-2の突然変異体、例えばi)配列番号22として示されるヒトIL-2の残基42、45及び72に対応する位置から選択される1、2又は3つの位置(複数可)の1、2又は3つのアミノ酸置換(複数可)、例えば3つの位置の3つの置換、例えば特異的アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G、又はii)i)で示される特徴に加えて、配列番号22として示されるヒトIL-2の残基3に対応する位置におけるアミノ酸置換、例えば、特異的アミノ酸置換T3A、又はiii)配列番号22として示されるヒトIL-2の残基3、42、45及び72に対応する位置における4つのアミノ酸置換、例えば特異的アミノ酸置換T3A、F42A、Y45A及びL72Gを含むIL-2とを含む。
【0043】
併用療法において使用されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、a)配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、並びに配列番号3のポリペプチド配列、又はb)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、又はc)配列番号8及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又はd)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列を含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、併用療法で使用されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、配列番号8、配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列を含む。
【0045】
これらのPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、抗原結合部分、Fcドメイン及びエフェクター部分のそれらの構成部分と共に、国際公開第2018/184964号に記載されている免疫コンジュゲートの例として記載されている。例えば、抗CEA抗体CH1A1A 98/99 2F1及びIL-2四重突然変異体(qm)に基づく特定の免疫サイトカイン「PD-1標的化IgG-IL-2qm融合タンパク質」は、例えば国際公開第2018/184964号の実施例1及び2に記載されている。
国際公開第2018/184964号に記載されている特定のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、本明細書に記載の以下のポリペプチド配列を含むことを特徴とする:
【0046】
国際公開第2012/146628号に記載されているように、IL-2突然変異体は、IL-2受容体のα-サブユニットに対する結合親和性が低下している。βサブユニット及びγサブユニット(それぞれCD122及びCD132としても知られる)と共に、αサブユニット(CD25としても知られる)はヘテロ三量体高親和性IL-2受容体を形成し、βサブユニット及びγサブユニットのみからなる二量体受容体は中間親和性IL-2受容体と呼ばれる。国際公開第2012/146628号に記載されているように、IL-2受容体のα-サブユニットへの結合が低下したIL-2突然変異体ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して、制御性T細胞におけるIL-2シグナル伝達誘導能が低下しており、T細胞における活性化誘導性細胞死(AICD)の誘導が少なく、in vivoでの毒性プロファイルが低下している。毒性が低下したそのようなIL-2突然変異体の使用は、Fcドメインの存在に起因して長い血清半減期を有するPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートにおいて特に有利である。IL-2突然変異体は、野生型IL-2と比較して、IL-2受容体(CD25)のα-サブユニットに対するIL-2突然変異体の親和性を低下させるか又は消失させるが、中間親和性IL-2受容体(IL-2受容体のβサブユニット及びγサブユニットからなる)に対するIL-2突然変異体の親和性を維持する少なくとも1つのアミノ酸変異を含み得る。1つ以上のアミノ酸変異は、アミノ酸置換であり得る。IL-2突然変異体は、ヒトIL-2(配列番号22として示されている)の残基42、45及び72に対応する位置から選択される1つ、2つ又は3つの位置に1つ、2つ又は3つのアミノ酸置換を含み得る。IL-2突然変異体は、ヒトIL-2の残基42、45及び72に対応する位置に3つのアミノ酸置換を含み得る。IL-2突然変異体は、ヒトIL-2の突然変異体であり得る。IL-2突然変異体は、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72Gを含むヒトIL-2であり得る。IL-2突然変異体は、IL-2のO-グリコシル化部位を排除するヒトIL-2の3位に対応する位置にアミノ酸変異を更に含み得る。特に、当該追加のアミノ酸変異は、トレオニン残基をアラニン残基で置き換えるアミノ酸置換である。本発明において有用な特定のIL-2突然変異体は、ヒトIL-2(配列番号22として示されている)の残基3、42、45及び72に対応する位置に4つのアミノ酸置換を含む。具体的なアミノ酸置換は、T3A、F42A、Y45A及びL72Gである。国際公開第2012/146628号の実施例で実証されているように、当該四重突然変異体IL-2ポリペプチド(IL-2qm)は、CD25への検出可能な結合を示さず、T細胞においてアポトーシスを誘導する能力の低下、Treg細胞においてIL-2シグナル伝達を誘導する能力の低下、及びin vivoでの毒性プロファイルの低下を示す。しかしながら、それは、エフェクター細胞においてIL-2シグナル伝達を活性化する能力、エフェクター細胞の増殖を誘導する能力、及びNK細胞により二次サイトカインとしてIFN-γを生成する能力を保持している。上記の説明のいずれかによるIL-2突然変異体は、発現又は安定性の増加などの更なる利点を提供する更なる変異を含み得る。例えば、ジスルフィド架橋IL-2二量体の形成を回避するために、位置125のシステインをアラニンなどの中性アミノ酸で置き換えてもよい。したがって、IL-2突然変異体は、ヒトIL-2の残基125に対応する位置に追加のアミノ酸変異を含み得る。当該追加のアミノ酸変異は、アミノ酸置換C125Aであり得る。IL-2突然変異体は、配列番号3のポリペプチド配列を含み得る。
【0047】
好ましい実施形態では、PD-1標的化IL-2突然バリアント免疫コンジュゲートのPD-1標的化は、国際公開第2018/1184964号に記載されているように、PD-1を標的化することによって達成され得る。PD-1標的化は、抗PD-1抗体又はその抗原結合断片を用いて達成され得る。抗PD-1抗体は、配列番号1の配列又は機能性を保持するそのバリアントと少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である重鎖可変領域配列を含み得る。抗PD-1抗体は、配列番号2の配列又は機能性を保持するそのバリアントと少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である軽鎖可変領域配列を含み得る。抗PD-1抗体は、配列番号1の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一である重鎖可変領域配列、又は機能性を保持するそのバリアント、及び配列番号2の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一である軽鎖可変領域配列、又は機能性を保持するそのバリアントを含み得る。抗PD-1抗体は、配列番号1の重鎖可変領域配列及び配列番号2の軽鎖可変領域配列を含み得る。
【0048】
PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、配列番号8、配列番号9及び配列番号10からなる群から選択されるポリペプチド配列、又は機能性を保持するそのバリアントを含み得る。PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、PD-1に特異的なFab重鎖がカルボキシ末端ペプチド結合をホール修飾を含むFcドメインサブユニットと共有するポリペプチド配列を含み得る。PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、配列番号8若しくは配列番号9のポリペプチド配列、又は機能性を保持するそのバリアントを含み得る。PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、PD-1に特異的なFab軽鎖を含み得る。PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、配列番号10のポリペプチド配列、又は機能性を保持するそのバリアントを含み得る。ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合によって共有結合していてもよい。Fcドメインポリペプチド鎖は、アミノ酸置換L234A、L235A、及びP329G(LALA P329Gと呼ばれ得る)を含み得る。
【0049】
国際公開第2018/184964号に記載されているように、PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、配列番号8、9及び10として示されている配列(例えば国際公開第2018/184964号の実施例1に記載される)を有するPD-1標的化IgG-IL-2qm融合タンパク質であり得る。配列番号8、9及び10として示される配列を有するPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを、本明細書では「PD1-IL2v」と呼ぶ。配列番号11、12及び13として示される配列を有するPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、本明細書では「muPD1-IL2v」と呼ばれ、これはマウスサロゲートである。
【0050】
本明細書に記載の併用療法で使用されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、免疫細胞、特にT細胞上、又は腫瘍細胞環境内に提示される抗原に結合する抗体、及びIL-2受容体のサブユニットに対する結合親和性が低下したIL-2突然変異体を含み得る。PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、免疫細胞、特にT細胞上、又は腫瘍細胞環境内に提示されたPD-1に結合する抗体と、IL-2受容体のサブユニットに対する結合親和性が低下したIL-2突然変異体とから本質的になり得る。抗体はIgG抗体、特にIgG1抗体であってもよい。PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、IL-2受容体のサブユニットに対する結合親和性が低下した単一のIL-2突然変異体を含み得る(すなわち、1つ以下のIL-2突然変異部分が存在する)。
【0051】
抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、国際公開第2020/127619号A1に記載されている。
【0052】
本明細書に記載の併用療法において使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、TYRP1に結合することができる第1の抗原結合部分と、CD3に結合することができる第2の抗原結合部分とを含む。本明細書に記載の併用療法において使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号4の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一である重鎖可変領域配列又は機能性を保持するそのバリアントと、配列番号5の配列と少なくとも約80% 85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一である軽鎖可変領域配列又は機能性を保持するそのバリアントとを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一である重鎖可変領域配列又は機能性を保持するそのバリアントと、配列番号7と少なくとも少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一である軽鎖可変領域配列又は機能性を保持するそのバリアントとを含む第2の抗原結合部分とを含み得る。本明細書に記載の併用療法において使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLを含む第2の抗原結合部分とを含み得る。
【0053】
本明細書に記載の併用療法で使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、第1の抗原結合部分と同一の第3の抗原結合部分を含み得る。一実施形態では、TYRP1に結合する第1の抗原結合部分及び第3の抗原部分は従来のFab分子である。そのような実施形態では、CD3に結合する第2の抗原結合部分は、クロスオーバーFab分子、すなわちFab重鎖及びFab軽鎖の可変ドメインVH及びVLが互いに交換/置き換えられたFab分子である。
【0054】
併用療法で使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、そこに含まれるFab分子にアミノ酸置換を含んでもよく、軽鎖と一致しない重鎖とのミスペアリング(ベンス・ジョーンズ型副産物)を減少させるのに特に有効であり、これは、結合アームの1つ(2つ以上の抗原結合Fab分子を含む分子の場合は2つ以上)でVH/VL交換を伴うFabベースの多重特異性抗体の産生で発生する可能性がある(PCT公開番号の国際公開第2015/150447号も参照されたい。特にその中の例は、その全体が本明細書に特にその中の例は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。望ましくない副生成物、特に、結合アームの1つにVH/VLドメイン交換を有する多重特異性抗体に生じるベンス・ジョーンズ型副生成物と比較した、所望の(多重特異性)抗体の比を、CH1及びCLドメインの特定のアミノ酸位置と反対の電荷を有する荷電アミノ酸を導入することによって改善することができる(本明細書で「電荷修飾」と呼ぶことがある)。
【0055】
したがって、(多重特異性)抗体の第1の抗原結合部分及び第2(及び、存在する場合、第3)の抗原結合部分がFab分子であり、一方の抗原結合部分(特に第2の抗原結合部分)において、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置き換えられており、第1(及び、存在する場合、第3)の抗原結合部分の定常ドメインCLにおいて、位置124のアミノ酸及び位置213のアミノ酸が正に荷電したアミノ酸で置換されていてもよく(ナンバリングはKabatに従う)、第1(及び、存在する場合、第3)の抗原結合部分の定常ドメインCH1において、位置147のアミノ酸及び位置213のアミノ酸が負に荷電したアミノ酸で置換されていてもよい(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、併用療法において使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体。VH/VL交換を有する抗原結合部分の定常ドメインCL及びCH1は、互いに置き換えられていない(すなわち、交換されないままである)。定常ドメインCLの位置124のアミノ酸及び位置213のアミノ酸は、リジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)(ナンバリングはKabatに従う)によって独立して置換されてもよく、定常ドメインCH1の位置147のアミノ酸及び位置213のアミノ酸は、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)によって独立して置換されてもよい。併用療法において使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、第1(及び、存在する場合、第3)の抗原結合部分の第124アミノ酸の定常ドメインCLにおいてリジン(K)に置換され(ナンバリングはKabatに従う)、第123アミノ酸がアルギニン(R)に置換され(ナンバリングはKabatに従う)、第1(及び、存在する場合、第3)の抗原結合ドメインの定常ドメインCH1において第147アミノ酸がグルタミン酸(E)に置換され(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)、第213アミノ酸がグルタミン酸(E)に置換されてもよい(ナンバリングはKabat EUインデックスに従う)。
【0056】
本明細書に記載の併用療法で使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号14、15、16及び17として示される配列、又は機能性を保持するそのバリアントを有し得る。
【0057】
配列番号14、15、16及び17として示される配列を有する抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体を、本明細書では「TYRP1 TCB」又は「TYRP1-TCB」と呼ぶ。配列番号18、19、20及び21として示される配列を有する抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、本明細書では「muTYRP1 TCB」と呼ばれ、これはマウスサロゲートである。
【0058】
本明細書に記載されるように、本明細書に記載される併用療法で使用されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、免疫細胞、特にT細胞に、又は腫瘍細胞環境において結合する抗体の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインと、2つのサブユニットからなり、2つの非同一ポリペプチド鎖のヘテロ二量体化を促進する修飾を含むFcドメインとを含み得る。本明細書に記載される併用療法において使用されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、免疫細胞、特にT細胞に、又は腫瘍細胞環境において結合する抗体の重鎖可変ドメイン及びノブ突然変異を含むFcドメインサブユニットと、免疫細胞、特にT細胞に、又は腫瘍細胞環境において結合する抗体の重鎖可変ドメイン及びホール突然変異を含むFcドメインサブユニットと、免疫細胞、特にT細胞に、又は腫瘍細胞環境において結合する抗体の軽鎖可変ドメインと、IL-2受容体のサブユニットに対する結合親和性が低下したIL-2突然変異体とを含み得る。したがって、免疫コンジュゲートは、2つの非同一ポリペプチド鎖のヘテロ二量体化を促進する修飾を含むFcドメインを含み得る。「修飾促進ヘテロ二量体化」は、ポリペプチドが同一のポリペプチドと会合してホモ二量体を形成することを低減又は防止する、ペプチド骨格の操作又はポリペプチドの翻訳後修飾である。本明細書で使用される場合、修飾促進ヘテロ二量体化は、特に、二量体を形成することが望ましい2つのポリペプチドの各々に対して行われる別個の修飾を含み,この修飾は、2つのポリペプチドの会合を促進するように、互いに対して相補性である。例えば、修飾促進ヘテロ二量体化は、ポリペプチドの会合をそれぞれ立体的に又は静電的に好ましいものにするように、二量体を形成することが望ましいポリペプチドの一方又は両方の構造又は電荷を変化させ得る。ヘテロ二量体化は、2つの非同一ポリペプチド間、例えばFcドメインの2つのサブユニット間で起こり、各サブユニットに融合した更なる免疫コンジュゲート成分(例えば、抗原結合部分、エフェクター部分)は同じではない。本発明による免疫コンジュゲートにおいて、ヘテロ二量体化を促進する修飾は、Fcドメイン中に存在する。いくつかの実施形態では、修飾促進ヘテロ二量体化は、アミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、ヘテロ二量体化を促進する修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの各々における別々のアミノ酸変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのポリペプチド鎖間のタンパク質間相互作用が最も広範囲に及ぶ部位は、FcドメインのCH3ドメイン内にある。したがって、一実施形態では、当該修飾は、FcドメインのCH3ドメイン内にある。具体的な実施形態では、当該修飾は、「ノブ・イントゥ・ホール」修飾であり、Fcドメインの2つのサブユニットの一方に「ノブ」修飾を、Fcドメインの2つのサブユニットのもう一方に「ホール」修飾を含む。
【0059】
ノブ・イントゥ・ホール技術は、例えば、米国特許第5,731,168号、米国特許第7,695,936号、Ridgway et al.,Prot Eng 9,617-621(1996)及びCarter,J Immunol Meth 248,7-15(2001)に記載される。一般的に、この方法は、第1のポリペプチドの界面にある隆起(「ノブ」)と、第2のポリペプチドの界面にある対応する空洞(「ホール」)とを導入することを含み、その結果、隆起が、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨害するように空洞内に位置することができる。隆起は、第1のポリペプチドの接触面からの小さなアミノ酸側鎖をそれより大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置き換えることにより構築される。隆起と同じ又は同様のサイズの相補的空洞は、大きなアミノ酸側鎖をそれよりも小さなもの(例えばアラニン又はスレオニン)で置き換えることにより、第2のポリペプチドの接触面に作り出される。隆起と空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を、例えば部位特異的変異誘発により、又はペプチド合成により変化させることによって作り出すことができる。具体的な実施形態では、ノブ改変は、Fcドメインの2つのサブユニットの一方にアミノ酸置換T366Wを含み、ホール改変は、Fcドメインの2つのサブユニットのもう一方にアミノ酸置換T366S、L368A及びY407Vを含む。更なる具体的な実施形態では、ノブ修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換S354Cを更に含み、ホール修飾を含むFcドメインのサブユニットは、アミノ酸置換Y349Cを更に含む。これら2つのシステイン残基の導入によって、Fc領域の2つのサブユニットの間にジスルフィド架橋の形成を生じ、二量体を更に安定化する(Carter,J Immunol Methods 248,7-15(2001))。Fc領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991.に記載されるような、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。本明細書で使用される場合、Fcドメインの「サブユニット」は、二量体Fcドメインを形成する2つのポリペプチドのうちの1つ、すなわち、安定した自己会合が可能な免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドを指す。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2及びIgG CH3定常ドメインを含む。
【0060】
代替的な実施形態では、2つの非同一ポリペプチド鎖の修飾促進ヘテロ二量体化は、例えば国際公開第2009/089004号に記載さているように、静電的操縦効果を媒介する修飾を含む。一般に、この方法は、ホモ二量体形成が静電的に不利になるが、ヘテロ二量体化が静電的に有利になるように、2つのポリペプチド鎖の接触面にある1つ以上のアミノ酸残基を、帯電したアミノ酸残基で置き換えることを含む。
【0061】
IL-2受容体のサブユニットに対する結合親和性が低下したIL-2突然変異体は、ノブ修飾を含むFcドメインのサブユニットのカルボキシ末端アミノ酸に融合され得る。理論に拘束されることを望むものではないが、Fcドメインのノブ含有サブユニットへのIL-2突然変異体の融合は、2つのIL-2突然変異体ポリペプチドを含むホモ二量体免疫コンジュゲートの生成を更に最小限に抑える(2つのノブ含有ポリペプチドの立体衝突)。
【0062】
免疫コンジュゲート及び二重特異性抗体のFcドメインは、国際公開第2012/146628号に記載されているように、操作されていないFcドメインと比較して、Fc受容体に対する結合親和性が変化するように、具体的にはFcγ受容体に対する結合親和性が変化するように操作され得る。補体成分、特にC1qに対するFcドメインの結合は、国際公開第2012/146628号に記載されているように変化され得る。Fcドメインは、免疫コンジュゲート及び二重特異性抗体に、標的組織における良好な蓄積に寄与する長い血清半減期を含む好ましい薬物動態特性及び好ましい組織血液分布比を付与する。しかしながら、同時に、該Fcドメインは、好ましい抗原保有細胞ではなく、Fc受容体を発現する細胞への望ましくない標的化をもたらす可能性がある。更に、Fc受容体シグナル伝達経路の共活性化はサイトカイン放出に繋がることがあり、これはエフェクター部分と、長い半減期の免疫コンジュゲートと組み合わさり、全身投与すると、サイトカイン受容体の過剰な活性化、及び重篤な副作用をもたらす。これと一致して、従来のIgG-IL-2免疫コンジュゲートは、注入反応と関係があることが記載されている(例えば、King et al.、J Clin Oncol 22、4463-4473(2004)を参照)。
【0063】
したがって、免疫コンジュゲート及び二重特異性抗体のFcドメインは、Fc受容体に対する結合親和性が低下するように操作され得る。そのような一実施形態では、Fcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットのそれぞれに同じ1つ以上のアミノ酸変異が存在する。一実施形態では、当該アミノ酸変異は、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を、少なくとも2分の1、少なくとも5分の1又は少なくとも10分の1低下させる。Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を低下させる、2以上のアミノ酸変異が存在する実施形態では、これらのアミノ酸変異の組み合わせは、Fc受容体へのFcドメインの結合親和性を少なくとも10分の1、少なくとも20分の1又は更には少なくとも50分の1低下させ得る。一実施形態では、操作されたFcドメインを含む免疫コンジュゲート及び二重特異性抗体は、操作されていないFcドメインを含む免疫コンジュゲート及び二重特異性抗体と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の20%未満、特に10%未満、より詳細には5%未満を示す。一実施形態では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。具体的な実施形態では、Fc受容体は、Fcγ受容体、具体的にはFcγ RIIIa、Fcγ RI又はFcγ RIIa受容体である。好ましくは、これらの各受容体への結合が低下する。いくつかの実施形態では、相補性成分に対する結合親和性、具体的にはC1qに対する結合親和性も低下する。一実施形態では、新生児型Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性は低下しない。FcRnへの実質的に同様の結合、すなわち、当該受容体へのFcドメインの結合親和性の保存は、Fcドメイン(又はFcドメインを含む免疫コンジュゲート)が、Fcドメインの非操作形態(又はFcドメインの非操作形態を含む免疫コンジュゲート)の約70%超の結合親和性をFcRnに示す場合に達成される。Fcドメイン、又はFcドメインを含む本発明の免疫コンジュゲート及び二重特異性抗体は、約80%超、更には約90%超のそのような親和性を呈し得る。一実施形態では、アミノ酸変異はアミノ酸置換である。一実施形態では、Fcドメインは、P329位にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、アミノ酸置換は、P329A又はP329G、特にP329Gである。一実施形態では、Fcドメインは、S228、E233、L234、L235、N297及びP331から選択される位置に更なるアミノ酸置換を含む。具体的な実施形態では、更なるアミノ酸置換は、S228P、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。特定の実施形態では、Fcドメインは、位置P329、L234、及びL235にアミノ酸置換を含む。より特定の実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸変異L234A、L235A及びP329G(LALA P329G)を含む。アミノ酸置換のこの組み合わせは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2012/130831号に記載されているように、ヒトIgG FcドメインのFcγ受容体結合をほぼ完全に消失させる。国際公開第2012/130831号には、そのような突然変異体Fcドメインを調製する方法及びその特性(Fc受容体結合又はエフェクター機能など)を決定する方法も記載されている。Fc領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991.に記載されるような、EUナンバリングシステム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。
【0064】
突然変異体Fcドメインは、当技術分野で周知であり、国際公開第2012/146628号に記載されているような遺伝的又は化学的方法を使用して、アミノ酸の欠失、置換、挿入又は改変によって調製することができる。遺伝的方法には、コード化DNA配列の部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成等が含まれ得る。正確なヌクレオチド変化は、例えば配列決定によって確認することができる。
【0065】
一実施形態では、Fcドメインは、国際公開第2012/146628号に記載されているように、非操作Fcドメインと比較して、低下したエフェクター機能を有するように操作されている。エフェクター機能の低下は、限定されないが、補体依存性細胞傷害(CDC)の低下、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低下、抗体依存性細胞貪食(ADCP)の低下、サイトカイン分泌の低下、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの減少、NK細胞への結合の低下、マクロファージへの結合の低下、単球への結合の低下、多形核細胞への結合の低下、アポトーシスを誘導する直接的シグナル伝達の減少、標的結合抗体の架橋の減少、樹状細胞成熟の低下、又はT細胞プライミングの低下のうちの1つ以上を含み得る。
【0066】
IgG抗体は、IgG抗体と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低下及びエフェクター機能の低下を呈する。したがって、いくつかの実施形態では、本発明のT細胞活性化二重特異性抗原結合分子のFcドメインはIgG Fcドメイン、特にヒトIgG Fcドメインである。一実施形態では、IgG Fcドメインは、S228位にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228Pを含む。Fc受容体へのその結合親和性及び/又はエフェクター機能を更に低下させるために、一実施形態では、IgG Fcドメインは、L235位にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換L235Eを含む。別の実施形態では、IgG Fcドメインは、P329位にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換P329Gを含む。特定の実施形態では、IgG Fcドメインは、位置S228、L235、及びP329にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228P、L235E、及びP329Gを含む。そのようなIgG Fcドメイン突然変異体及びそれらのFcγ受容体結合特性は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、欧州特許出願の国際公開第2012/130831号に記載されている。
【0067】
本発明の実施形態では、本明細書に記載の併用療法で使用されるPD1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、a)配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、並びに配列番号3のポリペプチド配列、又はb)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、又はc)配列番号8及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又はd)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列を含むことを特徴とし、併用療法において使用されるヒトTYRP1及びCD3に結合する二重特異性抗体は、a)配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列、又はb)配列番号18及び配列番号19及び配列番号20及び配列番号21のポリペプチド配列を含むことを特徴とする。
【0068】
定義
以下で別段の定義がない限り、本明細書では当技術分野で一般的に使用される用語を使用する。
【0069】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を含むがこれらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’);ダイアボディ;鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv及びscFab);単一ドメイン抗体(dAb);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるがこれらに限定されない。特定の抗体断片の総説については、Holliger and Hudson,Nature Biotechnology 23:1126-1136(2005)を参照されたい。
【0070】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部分」、「抗原結合ドメイン」、又は「抗体の抗原結合部分」という用語は、抗原の一部又は全部に特異的に結合し、抗原の一部又は全部に相補的な領域を含む抗体の一部を指す。したがって、この用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。抗原結合ドメインは、例えば、1つ以上の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)によって提供され得る。特に、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体重鎖可変ドメイン(VH)とを含む。抗体の抗原結合部分は、「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」又は「FR」領域は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン領域である。したがって、抗体の軽鎖及び重鎖の可変ドメインは、N末端からC末端まで、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。特に、重鎖のCDR3は、抗原結合に最も寄与し、抗体の特性を規定する領域である。CDR及びFR領域は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)の標準的な定義及び/又は「超可変ループ」由来の残基に従って決定される。「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗原に対する抗体の結合に関与する抗体重鎖又は抗体軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、一般に、類似の構造を有しており、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの超可変領域(HVR)とを含む。例えば、Kindt et al.,Kuby Immunology,6th,W.H.Freeman and Co.,page 91(2007)を参照されたい。抗原結合特異性を付与するためには、単一のVH又はVLドメインで十分であり得る。
【0071】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができるCEA又はヒトPD-L1などの抗原のタンパク質決定基を表す。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、エピトープは、特異的な三次元構造特性及び特異的な電荷特性を有する。立体構造エピトープ及び非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下で、立体構造エピトープに対する結合が失われるが、非立体構造エピトープに対する結合は失われないことから区別される。
【0072】
「Fcドメイン」又は「Fc領域」という用語は、本明細書において、定常領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語には、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域が含まれる。IgG重鎖のFc領域の境界は、わずかに変動してもよいが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシ末端まで延びるよう規定されている。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在してもしてなくてもよい。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれる、EUナンバリングシステムに従う。抗体のFcドメインは、抗原への抗体の結合には直接関与しないが、様々なエフェクター機能を発揮する。「抗体のFcドメイン」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて定義される。抗体又は免疫グロブリンは、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM。これらのいくつかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、及びIgG、IgA及びIgAに分けられ得る。重鎖定常領域によれば、異なるクラスの免疫グロブリンは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。抗体のFcドメインは、補体活性化、C1q結合及びFc受容体結合に基づいて、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)及びCDC(補体依存性細胞傷害)に直接関与する。補体活性化(CDC)は、ほとんどのIgG抗体サブクラスのFcドメインへの補体因子C1qの結合によって開始される。補体系に対する抗体の影響は、特定の条件に依存するが、C1qへの結合は、Fcドメインにおける画定された結合部位によって引き起こされる。そのような結合部位は、技術水準において公知であり、例えば、Boackle,R.J.,et al.,Nature 282(1979)742-743;Lukas,T.J.,et al.,J.Immunol.127(1981)2555-2560;Brunhouse,R.,and Cebra,J.J.,Mol.Immunol.16(1979)907-917;Burton,D.R.,et al.,Nature 288(1980)338-344;Thommesen,J.E.,et al.,Mol.Immunol.37(2000)995-1004;Idusogie,E.E.,et al.,J.Immunol.164(2000)4178-4184;Hezareh,M.,et al.,J.Virology 75(2001)12161-12168;Morgan,A.,et al.,Immunology 86(1995)319-324、及び欧州特許第0307434号において記載されている。そのような結合部位は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331及びP329である(Kabat,E.A.のEUインデックスによるナンバリング、上記を参照)。サブクラスIgG、IgG及びIgGの抗体は、通常、補体活性化並びにC1q及びC3結合を示すが、IgGは補体系を活性化せず、C1q及びC3に結合しない。
【0073】
本明細書で使用される場合、「免疫コンジュゲート」という用語は、少なくとも1つのIL-2分子と少なくとも1つの抗体とを含むポリペプチド分子を指す。IL-2分子は、種々の相互作用によって、本明細書に記載の種々の構成で、抗体に接続することができる。特定の実施形態では、IL-2分子は、ペプチドリンカーを介して抗体に融合される。本発明による特定の免疫コンジュゲートは、1つ以上のリンカー配列によって接続する、1つのIL-2分子と、抗体から本質的になる。
【0074】
「融合」とは、成分(例えば、抗体及びIL-2分子)が、直接、又は1つ以上のペプチドリンカーを介したペプチド結合によって連結されることを意味する。
【0075】
本明細書で使用される場合、Fcドメインサブユニット等に関する「第1」及び「第2」の用語は、それぞれの種類の部分が1つより多く存在する場合に、区別するのが簡便なように使用される。これらの用語の使用は、そのように明示的に示されていない限り、免疫コンジュゲートの特定の順序又は向きを与えることを意図していない。
【0076】
一実施形態では、本明細書に記載の免疫コンジュゲート又は抗体の抗体成分は、ヒト起源に由来するFcドメイン、好ましくはヒト定常領域の全ての他の部分を含む。本明細書で使用される場合、「ヒト起源由来のFcドメイン」という用語は、IgG、IgG、IgG又はIgGのサブクラスのヒト抗体のFcドメイン、好ましくはヒトIgGサブクラス由来のFcドメイン、ヒトIgG1サブクラス由来の変異型Fcドメイン(一実施形態ではL234A+L235Aに突然変異を有する)、ヒトIgGサブクラス由来のFcドメイン又はヒトIgGサブクラス由来の変異型Fcドメイン(一実施形態ではS228Pに突然変異を有する)のいずれかであるFcドメインを表す。一実施形態では、当該抗体は、低下した又は最小のエフェクター機能を有する。一実施形態では、最小のエフェクター機能は、エフェクターレスFc突然変異に起因する。一実施形態では、エフェクターレスFc突然変異は、L234A/L235A又はL234A/L235A/P329G又はN297A又はD265A/N297Aである。一実施形態では、エフェクターレスFc突然変異は、L234A/L235A、L234A/L235A/P329G、N297A及びD265A/N297A(EUナンバリング)を含む(からなる)群から、それぞれの抗体について互いに独立して選択される。
【0077】
一実施形態では、本明細書に記載の免疫コンジュゲート又は抗体の抗体成分は、ヒトIgGクラス(すなわち、IgG、IgG、IgG又はIgGサブクラス)のものである。
【0078】
好ましい実施形態では、本明細書に記載の免疫コンジュゲート又は抗体の抗体成分は、ヒトIgGサブクラス又はヒトIgGサブクラスのものである。一実施形態では、本明細書に記載の免疫コンジュゲート又は抗体の抗体成分は、ヒトIgGサブクラスのものである。一実施形態では、本明細書に記載の免疫コンジュゲート又は抗体の抗体成分は、ヒトIgGサブクラスのものである。
【0079】
一実施形態では、本明細書に記載の免疫コンジュゲート又は抗体の抗体成分は、定常鎖がヒト由来であることを特徴とする。そのような定常鎖は、最新技術で周知であり、例えばKabat,E.A.,(例えば、Johnson,G.and Wu,T.T.,Nucleic Acids Res.28(2000)214-218)を参照)に記載されている。
【0080】
本明細書で使用される場合、「核酸」又は「核酸分子」という用語は、DNA分子及びRNA分子を含むことを意図している。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0081】
本出願において使用される場合、「アミノ酸」という用語は、アラニン(3文字コード:ala、1文字コード:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リジン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、スレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)及びバリン(val、V)を含む、天然に存在するカルボキシアルファ-アミノ酸の群を示す。
【0082】
参照ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした場合の、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のための整列は、当技術分野における技術の範囲内にある種々の方法において、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される配列の完全長に対して最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書での目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech,Inc.が作成したものであり、ソースコードは、使用者用書類と共に、米国著作権局、Washington D.C.、20559に提出され、ここに米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.(South San Francisco,California)から公的に入手可能であるか、又はそのソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含む、UNIXオペレーティングシステムにおける使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定されており、変わらない。ALIGN-2がアミノ酸配列比較に用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Bに対する、アミノ酸配列Bとの、又はアミノ酸配列Bとの対照での、所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(或いは、所与のアミノ酸配列Bに対し、アミノ酸配列Bと、又はアミノ酸配列Bとの対照で、特定のアミノ酸配列同一性%を有するか若しくは含む、所与のアミノ酸配列Aとして記述することができる)は、以下のように計算される:
100×分数X/Y
式中、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2によって、そのプログラムのAとBのアラインメントにおいて同一のマッチとしてスコア付けされたアミノ酸残基の数であり、Yは、B中のアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、A対Bのアミノ酸配列同一性%は、B対Aのアミノ酸配列同一性%に等しくないことが理解されよう。特に明記しない限り、本明細書で使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用して、直前の段落で説明したように得られる。本発明の参照ヌクレオチド配列と、例えば、少なくとも95%「同一」であるヌクレオチド配列を有する核酸又はポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり5つまでの点突然変異を含み得ること以外は、参照配列と同一であることを意味する。言い換えれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中最大5%のヌクレオチドが欠失しているか又は別のヌクレオチドで置換されていてもよく、或いは参照配列中の全ヌクレオチドの最大5%の数のヌクレオチドが参照配列に挿入されていてもよい。参照配列のこれらの変更は、参照ヌクレオチド配列の5’若しくは3’末端位置で、又はこれら末端位置の間のどの位置で起こってもよく、参照配列中の残基間に個々に散在してもよいし、又は参照配列内に1つ以上の連続した群として散在してもよい。実際の様式として、任意の特定のポリヌクレオチド配列が、本発明のヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一であるかどうかは、既知のコンピュータプログラム、例えば、ポリペプチドについて上に記載したもの(例えば、ALIGN-2)を用いて、従来通りに決定することができる。
【0083】
本明細書に記載の免疫コンジュゲート又は二重特異性抗体を生産する方法であって、本明細書に記載の免疫コンジュゲート又は二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、該免疫コンジュゲート又は二重特異性抗体の発現に適した条件下で培養すること、及び該免疫コンジュゲート又は二重特異性抗体を該宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から回収することを含む方法を提供する。
【0084】
免疫コンジュゲート又は二重特異性抗体の成分は、遺伝的に互いに融合している。免疫コンジュゲート又は二重特異性抗体は、その成分が互いに直接又はリンカー配列を介して間接的に融合されるように設計することができる。リンカーの組成及び長さは、当技術分野で周知の方法に従って決定してもよく、有効性について試験してもよい。融合の個々の成分を分離するための切断部位を組み込むために、追加の配列、例えばエンドペプチダーゼ認識配列を必要に応じて含めてもよい。
【0085】
免疫コンジュゲート及び二重特異性抗体は、抗原決定基に結合することができる抗体可変領域を少なくとも含む。可変領域は、天然に存在するか又は天然に存在しない抗体及びその断片の一部を形成することができ、且つそれらに由来し得る。ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を産生する方法は、当技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane,“Antibodies,a laboratory manual”,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照)。天然に存在しない抗体は、固相ペプチド合成を用いて構築することができ、組換えによって産生することができ(例えば、米国特許第4,186,567号に記載されるように)、又は例えば、可変重鎖及び可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって得ることができる(例えば、McCaffertyに対する米国特許第5,969,108号を参照)。抗原結合部分及びそれらを生成するための方法はまた、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2011/020783号に詳細に記載されている。
【0086】
抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変領域の任意の動物種を、本明細書に記載の免疫コンジュゲート及び二重特異性抗体において使用することができる。本発明において有用な非限定的抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変領域は、マウス、霊長類又はヒト起源のものとすることができる。免疫コンジュゲートがヒトへの使用を意図したものである場合、抗体の定常領域がヒト由来であるキメラ形態の抗体を使用してもよい。抗体のヒト化形態又は完全なヒト形態は、当技術分野で周知の方法に従って調製することもできる(例えば、米国特許第5,565,332号を参照)。ヒト化は、限定されないが、(a)重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性又は抗体機能を維持するために重要なもの)を保持しつつ、又は保持せずに、非ヒト(例えば、ドナー抗体)のCDRをヒト(例えば、レシピエント抗体)のフレームワーク領域及び定常領域上に移植すること、(b)非ヒト特異性決定領域(SDR又はa-CDR;抗体-抗原相互作用にとって重要な残基)のみをヒトフレームワーク及び定常領域上に移植すること、又は(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置き換えによってヒト様切片でそれらを「クローキング」することを含め、種々の方法によって達成されてもよい。ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front Biosci 13,1619-1633(2008)に概説されており、例えば、Riechmann et al.,Nature 332,323-329(1988);Queen et al.,Proc Natl Acad Sci USA 86,10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号及び同第7,087,409号;Jones et al.,Nature 321,522-525(1986);Morrison et al.,Proc Natl Acad Sci 81,6851-6855(1984);Morrison and Oi,Adv Immunol 44,65-92(1988);Verhoeyen et al.,Science 239,1534-1536(1988);Padlan,Molec Immun 31(3),169-217(1994);Kashmiri et al.,Methods 36,25-34(2005)(SDR(a-CDR)グラフト化を記載);Padlan,Mol Immunol 28,489-498(1991)(「リサーフェシング(resurfacing)」を記載);Dall’Acqua et al.,Methods 36,43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記載);並びにOsbourn et al.,Methods 36,61-68(2005)及びKlimka et al.,Br J Cancer 83,252-260(2000)(FRシャッフリングに対する「ガイド選択」アプローチを記載)に更に記載されている。ヒト抗体及びヒト可変領域は、当技術分野において既知の種々の技術を使用して生成することができる。ヒト抗体は、一般的に、van Dijk and van de Winkel、Curr Opin Pharmacol 5、368-74(2001)及びLonberg、Curr Opin Immunol 20、450-459(2008)に記載される。ヒト可変領域は、ハイブリドーマ法によって作製されたヒトモノクローナル抗体の一部を形成し得て、そのヒトモノクローナル抗体に由来し得る(例えば、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987)を参照)。ヒト抗体及びヒト可変領域はまた、抗原チャレンジに応答して、インタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製され得る(例えば、Lonberg,Nat Biotech 23,1117-1125(2005)を参照されたい。ヒト抗体及びヒト可変領域はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリ(例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178,1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001);及びMcCafferty et al.,Nature 348,552-554;Clackson et al.,Nature 352,624-628(1991)を参照)から選択されるFvクローン可変領域配列を単離することによって作製され得る。ファージは、一般的には、単鎖Fv(scFv)断片として、又はFab断片として、抗体断片を提示する。ファージディスプレイによる免疫コンジュゲートのための抗原結合部分の調製の詳細な記載は、国際公開第2011/020783号の実施例に見出すことができる。
【0087】
特定の実施形態では、抗体は、例えば、PCT公開の国際公開第2011/020783号(親和性成熟に関する実施例を参照)又は米国特許出願公開第2004/0132066号に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。免疫コンジュゲート及び二重特異性抗体が特定の抗原決定基に結合する能力は、酵素結合免疫吸着法(ELISA)又は当業者によく知られている他の手法、例えば表面プラズモン共鳴法(BIACORE T 100システムで分析)(Liljeblad,et al.,Glyco J 17,323-329(2000))、又は従来の結合アッセイ(Heeley,Endocr Res 28,217-229(2002))によって測定することができる。競合アッセイを使用して、特定の抗原への結合について参照抗体と競合する抗体、抗体断片、抗原結合ドメイン又は可変ドメインを同定してもよい。特定の実施形態では、そのような競合抗体は、参照抗体により結合されるのと同じエピトープ(例えば、線状又は立体構造エピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための詳細な例示的方法が、Methods in Molecular Biology vol.66(Humana Press,Totowa,NJ)のMorris(1996)“Epitope Mapping Protocols”に提供されている。例示的な競合アッセイでは、固定された抗原は、抗原に結合する第1の標識抗体と、抗原への結合について第1の抗体と競合する能力について試験されている第2の非標識抗体とを含む溶液中でインキュベートされる。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在し得る。対照として、固定化された抗原を、第1の標識抗体を含むが第2の非標識抗体を含まない溶液中でインキュベートする。第1の抗体の抗原への結合を許容する条件下でインキュベートした後、過剰な未結合抗体が除去され、固定化された抗原に会合した標識の量が測定される。固定化抗原に関連付けられる標識の量がコントロール試料と比較して試験試料中で実質的に減少している場合、それは、第2の抗体が、抗原への結合について第1の抗体と競合していることを示している。Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。
【0088】
本明細書に記載されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、国際公開第2018/184964号の実施例に記載されるように調製され得る。本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、国際公開第2020/127619号の実施例に記載されているように調製され得る。
【0089】
本明細書に記載の抗体は、好ましくは組換え手段によって産生される。そのような方法は、当技術分野で広く知られており、原核生物及び真核生物細胞におけるタンパク質発現と、それに続く抗体ポリぺプチドの単離、及び通常は薬学的に許容され得る純度への精製を含む。タンパク質発現のため、軽鎖及び重鎖又はそれらの断片をコードする核酸を、標準的な方法によって発現ベクターに挿入する。発現は、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK 293細胞、COS細胞、酵母又は大腸菌(E.coli)細胞などの適切な原核又は真核宿主細胞で行われ、抗体は細胞から(上清又は細胞溶解後に)回収される。
【0090】
抗体の組換え産生は、技術水準において周知であり、例えば、Makrides,S.C.,Protein Expr.Purif.17(1999)183-202;Geisse,S.等のProtein Expr.Purif.8(1996)271-282;Kaufman,R.J.,Mol.Biotechnol.16(2000)151-161;Werner,R.G.,Drug Res.48(1998)870-880の総説に記載されている。
【0091】
抗体は、全細胞、細胞溶解物、又は部分的に精製された形態若しくは実質的に純粋な形態で存在し得る。精製は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、及び当技術分野で周知の他のものを含む標準的な技術によって、他の細胞成分又は他の汚染物質、例えば他の細胞核酸又はタンパク質を除去するために行われる。Ausubel,F.,et al.,ed.Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley Interscience,New York(1987)を参照されたい。
【0092】
NS0細胞における発現は、例えば、Barnes,L.M.,et al.,Cytotechnology 32(2000)109-123;Barnes,L.M.,et al.,Biotech.Bioeng.73(2001)261-270に記載されている。一過性発現は、例えば、Durocher,Y.,et al.,Nucl.Acids.Res.30(2002)E9に記載されている。可変ドメインのクローニングは、Orlandi,R.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)3833-3837;Carter,P.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(1992)4285-4289;Norderhaug,L.,et al.,J.Immunol.Methods 204(1997)77-87に記載されている。好ましい一過性発現系(HEK 293)は、Schlaeger,E.-J.,and Christensen,K.、Cytotechnology 30(1999)71-83により記載され、またSchlaeger,E.-J.によるJ.Immunol.Methods 194(1996)191-199に記載されている。
【0093】
本発明による重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインは、プロモーター、翻訳開始、定常領域、3’非翻訳領域、ポリアデニル化、及び転写終結の配列と組み合わされて、発現ベクターコンストラクトを形成する。重鎖発現コンストラクト及び軽鎖発現コンストラクトを、単一のベクターに組み合わせることができ、共トランスフェクトすることができ、連続トランスフェクトすることができ、又は宿主細胞に別々にトランスフェクトすることができ、次いでそれらを融合させて、両方の鎖を発現する単一の宿主細胞を形成することができる。
【0094】
例えば、原核生物に好適な制御配列には、プロモーター、任意にオペレータ配列、及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、エンハンサー及びポリアデニル化シグナルを利用することが知られている。
【0095】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれると「作動可能に連結」される。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのためのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合に、ポリペプチドのためのDNAに作動可能に連結され、プロモーター又はエンハンサーは、配列の転写に影響する場合に、コード配列に作動可能に連結され、或いはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように位置付けられる場合に、コード配列に作動可能に連結される。一般的に、「作動可能に連結」とは、連結されるDNA配列が隣接しており、分泌リーダーの場合は隣接していてリーディングフレームにあることを意味する。しかしながら、エンハンサーは連続的である必要はない。連結は、簡便な制限部位でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプタ又はリンカーが従来の慣例に従って使用される。
【0096】
モノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、又はアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって培養培地から適切に分離される。モノクローナル抗体をコードするDNA及びRNAは、従来の手順を使用して容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNA及びRNAの供給源として機能することができる。単離されると、DNAは、発現ベクターに挿入され得、その後、宿主細胞、例えば、免疫グロブリンタンパク質を産生しないHEK 293細胞、CHO細胞又は骨髄腫細胞にトランスフェクトされて、宿主細胞における組換えモノクローナル抗体の合成が得られる。
【0097】
本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」という表現は、互換的に使用され、全てのそのような表記は子孫を含む。このため、「形質転換体」及び「形質転換細胞」という語は、移行の数にかかわらず初代対象細胞及びそれ由来の培養物を含む。また、全ての子孫は、意図的な、又は想定外の突然変異に起因して、DNA含量において厳密に同一でない場合があることが理解される。元々の形質転換された細胞についてスクリーニングされたものと同じ機能又は生物学的活性を有するバリアント子孫が含まれる。
【0098】
治療方法及び組成物
本発明は、治療を必要とする患者を治療する方法であって、治療有効量のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体との併用療法を患者に投与することを特徴とする方法を含む。
【0099】
本発明は、記載される併用療法のための本発明による抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体とのPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートの使用を含む。
【0100】
本発明の好ましい一実施形態は、がん又は腫瘍の治療における使用のための本発明の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体とのPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートの併用療法である。したがって、本発明の一実施形態は、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3抗体と組み合わせてがん又は腫瘍の治療における使用のための本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートである。本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと組み合わせた腫瘍のがんの治療における使用のための、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3抗体である。
【0101】
がん又は腫瘍は、腫瘍細胞環境、例えばPD-1+T細胞上に抗原を提示し得る。併用療法の標的としてのPD-1は、腫瘍細胞環境、例えばPD-1+T細胞に提示され得る。治療は、固形腫瘍の治療であり得る。治療は、癌腫の治療であり得る。がんは、結腸直腸がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、乳がん、膵臓がん、肝臓がん及び胃がんからなる群から選択され得る。がんは、肺がん、結腸がん、胃がん、乳がん、頭頸部がん、皮膚がん、肝臓がん、腎臓がん、前立腺がん、膵臓がん、脳がん及び骨格筋のがんからなる群から選択され得る。
【0102】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、例えば、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、肺細気管支肺胞がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部若しくは頸部のがん、皮膚若しくは眼内の黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰の癌腫、ホジキン病、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、前立腺がん、膀胱のがん、腎臓又は尿管のがん、腎細胞癌腫、腎盂の癌腫、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、多形膠芽細胞腫、星細胞種、神経鞘腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮癌腫、下垂体腺腫、リンパ腫、リンパ球性白血病(上述のがんのいずれかの難治性態様を含む)、又は上述のがんの1つ以上の組み合わせであってもよい。好ましい一実施形態では、そのようながんは、乳がん、結腸直腸がん、黒色腫、頭頸部がん、肺がん又は前立腺がんである。好ましい一実施形態では、そのようながんは、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、肺がん又は前立腺がんである。別の好ましい実施形態では、そのようながんは、乳がん、肺がん、結腸がん、卵巣がん、黒色腫のがん、膀胱がん、腎がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、膵臓がん、胃癌腫のがん、食道がん、中皮腫、前立腺がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫である。好ましい一実施形態では、そのようながんは、TYRP1発現がんである。
【0103】
本発明の一実施形態は、上記のがん又は腫瘍のいずれかの治療における使用のための、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせた、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートである。本発明の別の実施形態は、上記のがん又は腫瘍のいずれかの治療における使用のための、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと組み合わせた、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体である。本発明は、がんの治療のための、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体との、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートとの併用療法を含む。本発明は、転移の予防又は治療のための、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体との本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートとの併用療法を含む。
【0104】
本発明は、T細胞活性などの免疫応答又は機能の刺激における使用のための、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体との併用療法を含む。
【0105】
本発明は、それを必要とする患者におけるがんの治療のための方法であって、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及び本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体を患者に投与することを特徴とする方法を含む。本発明は、それを必要とする患者における転移の予防又は治療のための方法であって、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及び本明細書に記載されている抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体を患者に投与することを特徴とする方法を含む。本発明は、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及び本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体を患者に投与することを特徴とする、免疫応答又は機能、例えばT細胞活性を、それを必要とする患者において刺激するための方法を含む。
【0106】
本発明は、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたがんの治療における使用のための、或いは本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたがんの治療のための医薬品の製造のための、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを含む。
【0107】
本発明は、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせた転移の予防若しくは治療における使用のための、或いは本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせた転移の予防若しくは治療のための医薬品の製造のための、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを含む。
【0108】
本発明は、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせた、T細胞活性などの免疫応答若しくは機能の刺激における使用のための、或いは本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせた、T細胞活性などの免疫応答若しくは機能の刺激における使用のための医薬品を製造するための、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを含む。
【0109】
本発明は、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと組み合わせたがんの治療における使用のための、或いは本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと組み合わせたがんの治療のための医薬品を製造するための、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体を含む。
【0110】
本発明は、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと組み合わせた転移の予防若しくは治療における使用のための、或いは本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと組み合わせた転移の予防若しくは治療のための医薬品を製造するための、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体を含む。
【0111】
本発明は、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと組み合わせた、T細胞活性などの免疫応答若しくは機能の刺激における使用のための、或いは本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと組み合わせた、T細胞活性などの免疫応答若しくは機能の刺激における使用のための医薬品を製造するための、本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体を含む。
【0112】
本発明の好ましい実施形態では、異なる疾患の上記の併用治療及び医学的使用において使用されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートは、配列番号8、配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列を含むことを特徴とするPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートであり、そのような併用治療において使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体は、配列番号14、配列番号15、配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列を含むことを特徴とする。
【0113】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容され得る担体と共に製剤化された、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと、ヒトTYRP1及びCD3又は本明細書に記載のその抗原結合部分に結合する抗体とを含有する組成物、例えば医薬組成物を提供する。
【0114】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」は、生理学的に適合性のあるありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、並びに吸収/再吸収遅延剤などを含む。好ましくは、担体は注射又は注入に適している。
【0115】
本発明の組成物は、当技術分野で知られている種々の方法によって投与することができる。当業者に理解されるように、投与の経路及び/又は態様は、所望な結果に依存して変わり得る。
【0116】
薬学的に許容され得る担体としては、滅菌された水溶液又は分散液、及び滅菌された注射可能な溶液又は分散液を調製するための滅菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で公知である。水に加えて、担体は、例えば、等張緩衝生理食塩水であり得る。
【0117】
選択される投与経路にかかわらず、適切な水和形態で使用され得る本発明の化合物及び/又は本発明の医薬組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容され得る剤形に製剤化される。
【0118】
本発明の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に対して毒性になることなく、特定の患者、組成物、及び投与様式について所望の治療応答を達成するのに有効な有効成分の量(有効量)を得るように変化し得る。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物、又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排出速度、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態及び以前の病歴、並びに医学分野で周知の同様の因子を含む種々の薬物動態学的因子に依存する。
【0119】
一態様では、本発明は、疾患の治療を意図したキットであって、(a)本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと、(b)本明細書に記載のヒトTYRP1及びCD3に結合する抗体とを同じ容器内又は別個の容器内に含み、任意に、(c)疾患を治療するための方法としての併用治療の使用を指示する印刷された説明書を含む添付文書を更に含むキットを提供する。更に、キットは、(a)組成物が含有された第1の容器であって、該組成物が、本明細書に記載されるヒトTYRP1及びCD3に結合する抗体を含む、第1の容器と、(b)組成物が含有された第2の容器であって、該組成物が、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを含む、第2の容器と、任意に、(c)組成物が含有された第3の容器であって、該組成物が更なる細胞毒性薬又は他の治療薬を含む、第3の容器とを含んでもよい。本発明のこの実施形態におけるキットは、組成物が特定の症状を治療するために使用され得ることを示す添付文書を更に含み得る。代替的又は追加的に、本キットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液等の薬学的に許容され得る緩衝液を含む第3(又は第4)の容器を更に含んでもよい。本製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルタ、針及びシリンジを含む、商業的及びユーザーの観点から望ましい他の材料を更に備えてもよい。
【0120】
一態様では、本発明は、(a)本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを含む容器、及び(b)疾患を治療する方法として本明細書に記載の抗TYRP1/抗CD3抗体との併用療法におけるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートの使用を指示する説明書を含む添付文書を含む、疾患の治療を意図したキットを提供する。
【0121】
別の態様では、本発明は、(a)本明細書に記載の抗TYRP1/CD3抗体を含む容器、及び(b)疾患を治療するための方法として本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートとの併用療法における抗TYRP1/抗CD3抗体の使用を指示する添付文書を含む、疾患の治療を意図したキットを提供する。
【0122】
更なる態様では、本発明は、本明細書に記載のPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを含む、疾患の治療を意図した医薬品を提供し、当該医薬品は、本明細書に記載のヒトTYRP1及びCD3に結合する抗体との併用療法における使用のためのものであり、任意に、疾患を治療するための方法としての併用治療の使用を指示する印刷された説明書を含む添付文書を含む。
【0123】
なお更なる態様では、本発明は、本明細書に記載されるヒトTYRP1及びCD3に結合する抗体を含む、疾患の治療を意図した医薬品を提供し、当該医薬品は、本明細書に記載されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートとの併用療法における使用のためのものであり、任意に、疾患を治療するための方法としての併用治療の使用を指示する印刷された説明書を含む添付文書を含む。
【0124】
「治療する方法」という用語又はその同等物は、例えばがんに適用される場合、患者のがん細胞の数を減少させるか若しくは排除するか、又はがんの症候を緩和するように設計された手順又は一連の作用を指す。がん又は別の増殖性障害を「治療する方法」は、がん細胞若しくは他の障害が実際に排除されること、細胞障害の数が実際に減少すること、又はがん若しくは他の障害の症候が実際に緩和されることを必ずしも意味しない。多くの場合、がんを治療する方法は、成功の可能性が低い場合であっても実施されるが、患者の病歴及び推定生存予想を考慮すると、それにもかかわらず、全体的に有益な一連の作用を誘導すると考えられる。
【0125】
「と組み合わせて投与される」又は「同時投与」、「同時投与する」、「併用療法」又は「併用治療」という用語は、本明細書に記載されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及び本明細書に記載される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体の、例えば別個の製剤/用途(又は単一の製剤/用途)としての投与を指す。同時投与は、同時であっても順次であってもよく、好ましくは、両方(又は全て)の活性剤が同時にそれらの生物学的活性を発揮する期間が存在する。当該活性剤は、連続注入により同時又は逐次(例えば、静脈内(i.v.))のいずれかで同時投与される。両方の治療剤が順次に同時投与される場合、用量は2回の別々の投与で同じ日に投与されるか、又は薬剤の1つが1日目に投与され、2番目が2日目~7日目、好ましくは2日目~4日目に同時投与される。したがって、一実施形態では、「順次」という用語は、第1の成分の服用後7日以内、好ましくは、第1の成分の服用後4日以内を意味し、「同時に」という用語は同じ時を意味する。PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及び/又は抗TYRP1/抗CD3抗体の維持用量に関する「同時投与」という用語は、治療サイクルが両方の薬物に適切である場合、例えば毎週、維持用量を同時に同時投与することができることを意味する。又は維持用量を連続的に同時投与し、例えば、PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及び抗TYRP1/抗CD3抗体の用量を交互の週に投与する。
【0126】
抗体が、研究者、獣医、医師又は他の臨床医によって求められている組織、システム、動物又は人間の生物学的又は医学的応答を誘発するそれぞれの化合物又は組み合わせの量である「治療有効量」(又は単に「有効量」)で患者に投与されることは自明である。
【0127】
同時投与の量及び同時投与のタイミングは、治療される患者のタイプ(種、性別、年齢、体重など)及び状態、並びに治療される疾患又は状態の重症度に依存するであろう。当該PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及び/又は抗TYRP1/抗CD3抗体は、1回又は一連の治療にわたって、例えば同日又は翌日又は毎週間隔で患者に適切に同時投与される。
【0128】
抗TYRP1/抗CD3抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートに加えて、化学療法剤も投与することができる。
【0129】
一実施形態では、本明細書に記載されるPD-1標的化IL-2バリアント免疫細胞免疫コンジュゲート及び本明細書に記載される抗TYRP1/抗CD3抗体と共に投与され得るそのような追加の化学療法剤としては、限定されないが、以下を含むアルキル化剤を含む抗新生物剤が挙げられる:メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン及びクロラムブシル等のナイトロジェンマスタード;カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)等のニトロソ尿素;Temodal(商標)(テモゾールアミド)、トリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレン、チオホスホラミド(チオテパ)、ヘキサメチルメラミン(HMM、アルトレタミン)等のエチレンイミン/メチルメラミン;ブスルファン等のアルキルスルホネート;ダカルバジン(DTIC)等のトリアジン;メトトレキサート及びトリメトレキセートなどの葉酸類似体、5-フルオロウラシル(5FU)、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC、シタラビン)、5-アザシチジン、2,2’-ジフルオロデオキシシチジンなどのピリミジン類似体、6-メルカプトプリン、6-チオグアン、アザチオプリン、T-デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダラビン及び2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン、2-CdA)などのプリン類似体を含む代謝拮抗剤;パクリタキセルなどの抗有糸分裂薬、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、及びビノレルビンを含むビンカアルカロイド、タキソテール、エストラムスチン、及びリン酸エストラムスチンを含む天然産物;エトポシド及びテニポシドなどのピポドフィロトキシン;アクチノマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC及びアクチノマイシン等の抗生物質;L-アスパラギナーゼなどの酵素;インターフェロン-アルファ、IL-2、G-CSF及びGM-CSFなどの生物学的応答調節物質;オキサリプラチン、シスプラチン及びカルボプラチンなどの白金配位錯体、ミトキサントロンなどのアントラセンジオン、ヒドロキシ尿素などの置換尿素、N-メチルヒドラジン(MIH)及びプロカルバジンを含むメチルヒドラジン誘導体、ミトタン(o,p-DDD)及びアミノグルテチミドなどの副腎皮質抑制剤;プレドニゾン及び同等物、デキサメタゾン及びアミノグルテチミドなどの副腎皮質ステロイド拮抗薬を含むホルモン及び拮抗薬;Gemzar(商標)(ゲムシタビン)、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロール等のプロゲスチン;ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール等価物等のエストロゲン;タモキシフェンなどの抗エストロゲン;プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン/等価物を含むアンドロゲン;フルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモン類似体及びロイプロリド等の抗アンドロゲン;並びにフルタミド等の非ステロイド性抗アンドロゲン。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、脱メチル化剤(例えば、Vidaza)及び転写抑制の解除(ATRA)療法を含むがこれらに限定されないエピジェネティック機構を標的とする治療法もまた、抗原結合タンパク質と組み合わせることができる。一実施形態では、化学療法剤は、タキサン(例えば、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)、改変パクリタキセル(例えば、Abraxane及びOpaxio)など)、ドキソルビシン、スニチニブ(Sutent)、ソラフェニブ(Nexavar)及び他のマルチキナーゼ阻害剤、オキサリプラチン、シスプラチン及びカルボプラチン、エトポシド、ゲムシタビン及びビンブラスチンからなる群から選択される。一実施形態では、化学療法剤は、タキサン(例えば、タキソール(パクリタキセル)、ドセタキセル(タキソテール)、改変パクリタキセル(例えばAbraxane及びOpaxio)などからなる群から選択される。一実施形態では、追加の化学療法剤は、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン、イリノテカン又はオキサリプラチンから選択される。一実施形態では、化学療法剤は、5-フルオロウラシル、ロイコボリン及びイリノテカン(FOLFIRI)である。一実施形態では、化学療法剤は、5-フルオロウラシル及びオキサリプラチン(FOLFOX)である。
【0130】
追加の化学療法剤との併用療法の具体例としては、例えば、乳がんの治療のためのタキサン(例えば、ドセタキセル又はパクリタキセル)又は改変パクリタキセル(例えば、Abraxane又はOpaxio)、ドキソルビシン)、カペシタビン及び/又はベバシズマブ(Avastin)療法;卵巣がんに対するカルボプラチン、オキサリプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ドキソルビシン(又は改変ドキソルビシン(Caelyx又はDoxil))、又はトポテカン(Hycamtin)による治療法、腎臓がんの治療のためのマルチキナーゼ阻害剤、MKI(Sutent、Nexavar、又は706)及び/又はドキソルビシンによる治療法;扁平上皮癌腫の治療に対するオキサリプラチン、シスプラチン及び/又は放射線による治療法;肺がんの治療のためのタキソール及び/又はカルボプラチンによる治療法が挙げられる。
【0131】
したがって、一実施形態では、追加の化学療法剤は、乳がんの治療のためのタキサン(ドセタキセル若しくはパクリタキセル又は改変パクリタキセル(Abraxane又はOpaxio)、ドキソルビシン、カペシタビン及び/又はベバシズマブの群から選択される。
【0132】
一実施形態では、PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及び抗TYRP1/抗CD3抗体の併用療法は、化学療法剤を投与しないものである。
【0133】
本発明はまた、本明細書に記載のような疾患に罹患している患者を治療するための方法も含む。
【0134】
本発明は更に、有効量の本明細書に記載の本発明によるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及び本明細書に記載の本発明による抗TYRP1/抗CD3抗体を薬学的に許容され得る担体と共に含む医薬組成物を製造するための方法、並びにそのような方法のための本明細書に記載の本発明によるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及び抗TYRP1/抗CD3抗体の使用を提供する。
【0135】
本発明は更に、好ましくは薬学的に許容され得る担体と共に、がんに罹患している患者を治療するための医薬品の製造のための有効量での、本明細書に記載される本発明によるPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート及び本明細書に記載される本発明による抗TYRP1/抗CD3抗体の使用を提供する。
【0136】
細胞療法
いくつかの実施形態では、免疫療法は活性化免疫療法である。いくつかの実施形態では、免疫療法はがん治療として提供される。いくつかの実施形態では、免疫療法は養子細胞移入を含む。
【0137】
いくつかの実施形態では、養子細胞移入は、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)の投与を含む。当業者は、CARが、細胞外腫瘍結合部分、最も一般的にはモノクローナル抗体からの一本鎖可変断片(scFv)に融合した細胞内T細胞シグナル伝達ドメインから構成される抗原標的化受容体の一種であることを理解するであろう。
【0138】
CARは、MHC媒介提示とは無関係に細胞表面抗原を直接認識し、全ての患者において任意の所与の抗原に特異的な単一の受容体コンストラクトの使用を可能にする。初期CARは、抗原認識ドメインをT細胞受容体(TCR)複合体のCD3活性化鎖に融合した。これらの第一世代CARはin vitroでT細胞エフェクター機能を誘導したが、それらはin vivoでの抗腫瘍効果が低いことによって大きく制限された。その後のCAR反復は、CD28又は4-1BB(CD137)及びOX40(CD134)などの様々なTNF受容体ファミリー分子からの細胞内ドメインを含む、CD3と並行した二次共刺激シグナルを含んでいた。更に、第3世代受容体は、CD3に加えて、最も一般的にはCD28及び4-1BBからの2つの共刺激シグナルを含む。第2世代CAR及び第3世代CARは抗腫瘍効果を劇的に改善し、場合によっては進行がんを有する患者において完全寛解を誘導する。一実施形態では、CAR T細胞は、CARがその抗原に結合すると活性化されるCARを発現するように改変された免疫応答性細胞である。
【0139】
一実施形態では、CAR T細胞は、その受容体がその抗原に結合すると活性化される抗原受容体を含む免疫応答性細胞である。一実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法で使用されるCAR T細胞は、第一世代CAR T細胞である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法で使用されるCAR T細胞は、第2世代CAR T細胞である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法で使用されるCAR T細胞は、第3世代CAR T細胞である。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物及び方法で使用されるCAR T細胞は、第4世代CAR T細胞である。
【0140】
いくつかの実施形態では、養子細胞移入は、T細胞受容体(TCR)改変T細胞を投与することを含む。当業者は、TCR改変T細胞が、腫瘍組織からT細胞を単離し、それらのTCRa鎖及びTCRβ鎖を単離することによって製造されることを理解するであろう。これらのTCRa及びTCRβは、後にクローン化され、末梢血から単離されたT細胞にトランスフェクトされ、次いで、腫瘍を認識するT細胞からTCRa及びTCRβを発現する。
【0141】
いくつかの実施形態では、養子細胞移入は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を投与することを含む。いくつかの実施形態では、養子細胞移入は、キメラ抗原受容体(CAR)改変NK細胞を投与することを含む。当業者は、CAR改変NK細胞が、患者から単離されたNK細胞、又は腫瘍特異的タンパク質を認識するCARを発現するように操作された市販のNK細胞を含むことを理解するであろう。
【0142】
いくつかの実施形態では、養子細胞移入は、樹状細胞を投与することを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、がんワクチンの投与を含む。当業者は、がんワクチンが免疫系をがん特異的抗原及びアジュバントに曝露することを理解するであろう。いくつかの実施形態では、がんワクチンは、シプリューセル-T(sipuleucel-T)、GVAX、ADXS11-001、ADXS31-001、ADXS31-164、ALVAC-CEAワクチン、ACワクチン、タリモジーン・ラハーパレプベック(talimogene laherparepvec)、BiovaxID、Prostvac、CDX110、CDX1307、CDX1401、CimaVax-EGF、CV9104、DNDN、NeuVax、Ae-37、GRNVAC、タルモゲン、GI-4000、GI-6207、GI-6301、ImPACT療法、IMA901、ヘプコルテスペンリジムト-L(hepcortespenlisimut-L)、スチムバックス(Stimuvax)、DCVax-L、DCVax-Direct、DCVaxプロステート(Prostate)、CBLI、Cvac、RGSH4K、SCIB1、NCT01758328、及びPVX-410を含む群から選択される。
【0144】
以下の実施例、配列表及び図面は、本発明の理解を助けるために提供されており、本発明の真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載されている。本発明の思想から逸脱することなく、定められた手順に変更を加えることができると理解される。
【0145】
以下の記述では、本発明の実施形態を説明する。
【0146】
1.がんの治療における併用療法としての使用のための、転移の予防若しくは治療における併用療法としての使用のための、腫瘍免疫等の免疫関連疾患の治療若しくはその進行の遅延における併用療法としての使用のための、又はT細胞活性等の免疫応答若しくは機能の刺激における併用療法としての使用のための、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートであって、
前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、並びに配列番号3のポリペプチド配列を含み、
前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLを含む第2の抗原結合部分とを含む、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0147】
2.乳がん、肺がん、結腸がん、卵巣がん、黒色腫のがん、膀胱がん、腎がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、黒色腫、膵臓がん、胃癌腫のがん、食道がん、中皮腫、前立腺がん、白血病、リンパ腫、骨髄腫の治療における使用のための、先行する実施形態に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせた、PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0148】
3.前記免疫コンジュゲートの抗体成分及び前記抗体が、ヒトIgG又はヒトIgGサブクラスのものであることを特徴とする、先行する実施形態のいずれかに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0149】
4.前記抗体が、低下した又は最小のエフェクター機能を有することを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0150】
5.前記最小のエフェクター機能が、エフェクターレスFc突然変異に起因する、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0151】
6.前記エフェクターレスFc突然変異が、L234A/L235A又はL234A/L235A/P329G又はN297A又はD265A/N297Aである、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0152】
7.前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、
i)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、
ii)配列番号8、及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又は
iii)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列
を含み、
前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLを含む第2の抗原結合部分とを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0153】
8.前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、
i)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、
ii)配列番号8、及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又は
iii)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列
を含み、
前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、
i)配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16若しくは配列番号17のポリペプチド配列、
ii)配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列、又は
iii)配列番号18及び配列番号19及び配列番号20及び配列番号21のポリペプチド配列
を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0154】
9.i)腫瘍における腫瘍成長の阻害、並びに/又は
ii)腫瘍を有する対象の生存期間中央値及び/若しくは全生存期間の向上
における使用のための、抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートであって、
PD-1は、免疫細胞、特にT細胞上に、又は腫瘍細胞環境内で提示され、
前記併用療法において使用される前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、
i)配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、並びに配列番号3のポリペプチド配列、
ii)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、
iii)配列番号8、及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又は
iv)配列番号11及び配列番号12及び配列番号12のポリペプチド配列
を含むことを特徴とし、
前記併用療法において使用される抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、
i)配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLとを含む第2の抗原結合部分、
ii)配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16若しくは配列番号17のポリペプチド配列、
iii)配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列、又は
iv)配列番号18及び配列番号19及び配列番号20及び配列番号21のポリペプチド配列を含む
ことを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0155】
10.前記併用療法において使用される前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、配列番号1、配列番号2及び配列番号3のポリペプチド配列を含むことを特徴とし、前記併用療法において使用される前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列を含むことを特徴とする、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0156】
11.前記患者が免疫療法で治療されているか、又は免疫療法で前治療されている、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0157】
12.前記免疫療法が、養子細胞移入、モノクローナル抗体の投与、サイトカインの投与、がんワクチンの投与、T細胞係合療法、又はそれらの任意の組み合わせを含む、先行する実施形態に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0158】
13.前記養子細胞移入が、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)、T細胞受容体(TCR)改変T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、キメラ抗原受容体(CAR)改変ナチュラルキラー細胞、T細胞受容体(TCR)形質導入細胞、若しくは樹状細胞、又はそれらの任意の組み合わせを投与することを含む、先行する実施形態に記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0159】
14.(a)PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートと、(b)抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体とを含む併用療法を対象に投与することを含む治療方法であって、前記併用療法が、がんの治療、転移の予防若しくは治療、腫瘍免疫などの免疫関連疾患の治療若しくは進行の遅延、又はT細胞活性などの免疫応答若しくは機能の刺激のためのものであり、
前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、並びに配列番号3のポリペプチド配列を含み、
前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLを含む第2の抗原結合部分とを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0160】
15.前記がんが、乳がん、肺がん、結腸がん、卵巣がん、黒色腫のがん、膀胱がん、腎がん、腎臓がん、肝臓がん、頭頸部がん、結腸直腸がん、黒色腫、膵臓がん、胃癌腫のがん、食道がん、中皮腫、前立腺がん、白血病、リンパ腫、及び骨髄腫からなる群から選択される、先行する実施形態に記載の方法。
【0161】
16.前記免疫コンジュゲートの抗体成分及び前記抗体が、ヒトIgG又はIgGサブクラスのものである、先行する実施形態に記載の方法。
【0162】
17.前記抗体が、低下したエフェクター機能又は最小のエフェクター機能を有する、先行する実施形態に記載の方法。
【0163】
18.前記最小のエフェクター機能が、エフェクターレスFc突然変異に起因する、先行する実施形態に記載の方法。
【0164】
19.前記エフェクターレスFc突然変異が、L234A/L235A又はL234A/L235A/P329G又はN297A又はD265A/N297Aである、先行する実施形態に記載の方法。
【0165】
20.前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、
ii)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、
iii)配列番号8、及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又は
iii)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列
を含み、
前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLを含む第2の抗原結合部分とを含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0166】
21.前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、
iv)配列番号8若しくは配列番号8若しくは配列番号10のポリペプチド配列、
v)配列番号8、及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又は
vi)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列
を含み、
前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、
iv)配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16若しくは配列番号17のポリペプチド配列、
v)配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列、又は
vi)配列番号18及び配列番号18及び配列番号20及び配列番号21のポリペプチド配列
を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0167】
22.(i)腫瘍における腫瘍成長を阻害するための、及び/又は(ii)腫瘍を有する対象の生存期間中央値及び/若しくは全生存期間を向上するための治療方法であって、PD-1が免疫細胞、特にT細胞上又は腫瘍細胞環境内に提示され、前記方法が、(a)PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートを、(b)抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせて含む併用療法を対象に投与することを含み、
前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、
v)配列番号1の重鎖可変ドメインVH及び配列番号2の軽鎖可変ドメインVL、並びに配列番号3のポリペプチド配列、
vi)配列番号8若しくは配列番号9若しくは配列番号10のポリペプチド配列、
vii)配列番号8、及び配列番号9及び配列番号10のポリペプチド配列、又は
viii)配列番号11及び配列番号12及び配列番号13のポリペプチド配列を含み、
前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、
v)配列番号4の重鎖可変ドメインVH及び配列番号5の軽鎖可変ドメインVLを含む第1の抗原結合部分と、配列番号6の重鎖可変ドメインVH及び配列番号7の軽鎖可変ドメインVLとを含む第2の抗原結合部分、
vi)配列番号14若しくは配列番号15若しくは配列番号16若しくは配列番号17のポリペプチド配列、
vii)配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列、又は
viii)配列番号18及び配列番号19及び配列番号20及び配列番号21のポリペプチド配列
を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体と組み合わせたPD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲート。
【0168】
23.前記PD-1標的化IL-2バリアント免疫コンジュゲートが、配列番号1、配列番号2及び配列番号3のポリペプチド配列を含み、前記抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体が、配列番号14及び配列番号15及び配列番号16及び配列番号17のポリペプチド配列を含む、実施形態22に記載の方法。
【0169】
24.患者が免疫療法で治療されるか、又は免疫療法で前治療された、実施形態23に記載の方法。
【0170】
25.前記免疫療法が、養子細胞移入、モノクローナル抗体の投与、サイトカインの投与、がんワクチンの投与、T細胞係合療法、又はそれらの任意の組み合わせを含む、実施形態24に記載の方法。
【0171】
26.前記養子細胞移入が、キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR T細胞)、T細胞受容体(TCR)改変T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、キメラ抗原受容体(CAR)改変ナチュラルキラー細胞、T細胞受容体(TCR)形質導入細胞、若しくは樹状細胞、又はそれらの任意の組み合わせを投与することを含む、実施形態25に記載の方法。
【実施例
【0172】
実施例
B16-muFAP-Fluc転移性黒色腫同系モデル
PD1-IL2v免疫コンジュゲート単独及び抗TYRP1/抗CD3二重特異性抗体(TYRP1-TCB)と組み合わせたPD1-IL2v免疫コンジュゲートのin vivo有効性を、マウス腫瘍細胞株の同系モデルにおいて抗腫瘍有効性について試験した。マウスサロゲートPD1-IL2v免疫コンジュゲート(配列番号11、12及び13)、マウスサロゲートTYRP1-TCB(配列番号18、19、20及び21)、マウスサロゲートFAP-IL2v(配列番号24、25及び26)及びマウスサロゲート抗PD1(配列番号27及び28)を、Black6アルビノに静脈内注射したマウス黒色腫B16-muFAP-Fluc二重トランスフェクタント細胞株において試験した。
【0173】
B16細胞(マウス黒色腫)を最初にATCC(米国バージニア州マナッサス)から得て、増殖後にRoche-Glycart内部細胞バンクに寄託した。B16-muFAP-Fluc細胞株を、カルシウムトランスフェクション及びサブクローニング技術によって自社で作製した。B16-muFAP-Flucを、10%FCS(Sigma)、200μg/ml Zeocin、0.75μg/mlピューロマイシン及び1%Glutamaxを含有するRPMI培地中で培養した。細胞を、5%COの水飽和雰囲気中、37℃で培養した。継代13を移植に使用した。細胞生存度は、96.1%であった。0.3mlツベルクリンシリンジ(BD Biosciences、ドイツ国)を用いて、動物あたり2×10個の細胞を静脈内注射した。200マイクロリットル(RPMI培地中2×10個のB16-muFAP-Fluc細胞)の細胞懸濁液を尾静脈に注射した。
【0174】
実験開始時の10週齢~12週齢の雌性Black6アルビノマウス(Charles Rivers、フランス国リヨン)を、義務付けられたガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って12時間明期/12時間暗期の毎日のサイクルで特定病原体を含まない条件下で維持した。実験的研究プロトコルは、現地政府によって審査及び承認された(ZH193/2014)。到着した後、動物を、新しい環境に慣れさせ、観察するために1週間維持した。継続的な健康モニタリングが定期的に実施された。
【0175】
マウスに、研究0日目に、2×10個のB16-muFAP-Fluc細胞を静脈内注射し、ランダム化し、秤量した。腫瘍細胞注射の18日後、マウスに、muPD1-IL2v、muPD1又はmuTYRP1-TCBの単剤を週1回、3週間i.v.注射し、muPD1-IL2v+muTYRP1-TCB、muFAP-IL2v+muPD1、muTYRP1-TCB+muPD1及びmuFAP-IL2v+muPD1+muTYRP1-TCBの組み合わせと比較した。
【0176】
全てのマウスに、200μlの適切な溶液を静脈内注射した。ビヒクル群のマウスにヒスチジン緩衝液を注射し、治療群には1mg/kgのmuPD1-IL2v、10mg/kgのmuPD1、1.5mg/kgのmuFAP-IL2v及び10mg/kgのmuTYRP1-TCBを注射した。200μlあたり所望の量の免疫コンジュゲートを得るために、原液を必要に応じてヒスチジンバッファーで希釈した。
【表1】
【0177】
図1及び表2は、muPD1-IL2vとmuTYRP1-TCBとの組み合わせが、他の全ての治療群及びビヒクル群と比較して、生存期間中央値及び全生存期間の向上に関して有意に優れた有効性を媒介することを示す。ペアワイズログランク検定(多重検定レベル=0.00179)を統計分析に使用した。カイ二乗値は66.0720であり、Prob>ChiSqは<0001であった。
【表2】
【0178】
IVIS(登録商標)SPECTRUMによるバイオルミネセンス画像化のため、バイオルミネセンス画像化取得(BLI)の10分前にマウスの皮下に150mg/kgのD-ルシフェリンを注射し、その後4%イソフルランで麻酔する。その後、マウスを、IVIS(登録商標)スペクトルに位置する単離チャンバに移す。in vivo BLI取得は、10~50秒間発光シグナルを取得することによって行う。データは、放射輝度(光子)/秒/cm/srとして記憶される。in vivo BLIデータ分析を、Living Image(登録商標)4.4ソフトウェアを用いて行い、腫瘍阻害曲線によって表す。
【0179】
図2は、muPD1-IL2v+muTYRP1-TCBの組み合わせが、他の全ての単一薬剤群、ビヒクル群及び組み合わせ群と比較して、生物発光シグナル(光子/秒)を減少させる点で優れた効力を媒介することを示す。腫瘍細胞がルシフェラーゼを発現するように操作されていることから、生物発光シグナルの減少は、腫瘍負荷量の減少の読み出しである。
図1
図2
【配列表】
2024512382000001.app
【国際調査報告】