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  • 特表-2成分(2K)硬化性接着剤組成物 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】2成分(2K)硬化性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20240312BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20240312BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240312BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240312BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20240312BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20240312BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20240312BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20240312BHJP
   C08K 5/18 20060101ALI20240312BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240312BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J175/08
C09J11/06
C09J11/04
C08G18/42
C08G18/48
C08L75/04
C08K5/3415
C08K5/18
C08K3/013
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560454
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2022056598
(87)【国際公開番号】W WO2022207300
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21165840.6
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】シュタップフ,シュテファニー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイト,エルケ
(72)【発明者】
【氏名】トプホーフェン,ニクラス
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】メラー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ズンダーマイアー,ウータ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J002AB012
4J002BB032
4J002BG102
4J002CK031
4J002CK041
4J002DA018
4J002DE068
4J002DE108
4J002DE118
4J002DE138
4J002DE148
4J002DE228
4J002DG048
4J002DJ008
4J002DJ018
4J002DJ038
4J002DJ048
4J002DL008
4J002EJ037
4J002EJ047
4J002EN067
4J002EN136
4J002ER026
4J002EU046
4J002EU116
4J002EU226
4J002EV326
4J002EW176
4J002FA042
4J002FA048
4J002FA088
4J002FD012
4J002FD018
4J002FD206
4J002FD207
4J002GJ01
4J034BA07
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DF01
4J034DF16
4J034DF20
4J034DG04
4J034DG08
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034MA04
4J034MA12
4J034MA14
4J034RA08
4J040EF111
4J040EF121
4J040EF131
4J040EF281
4J040JA13
4J040JB02
4J040KA32
4J040PA42
(57)【要約】
本発明は、i)脂肪族アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル-ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオール;ii)場合によりさらなる活性水素化合物;およびiii)非重合性電解質を含む第1成分;ならびに少なくとも1つのポリイソシアネートを含む第2成分を含む、硬化可能かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物を対象とし、前記組成物は、NCO基と活性水素原子のモル当量比が少なくとも1:1であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)脂肪族アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル-ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオール;
ii)場合によりさらなる活性水素化合物;および
iii)非重合性電解質;
を含む第1成分;ならびに
少なくとも1つのポリイソシアネートを含む第2成分
を含む、硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物であって、
NCO基と活性水素原子のモル当量比が少なくとも1:1であることを特徴とする、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、組成物の重量に基づいて、
20~80重量%、好ましくは20~60重量%のi)脂肪族アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル-ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオール;
ii)場合によりさらなる活性水素化合物;および
1~20重量%、好ましくは1~10重量%のiii)非重合性電解質;
を含む第1成分;ならびに
少なくとも1つのポリイソシアネートを含む第2成分
を含み、
NCO基と活性水素原子のモル当量比は、1:1~1.2:1であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物。
【請求項3】
i)部の前記または各ポリオールは、200~50,000g/モル、好ましくは200~8000g/モルの数平均分子量(Mn)を特徴とする、請求項1または2に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物。
【請求項4】
i)部の前記または各ポリオールは、2~850mgKOH/g、好ましくは25~500mgKOH/gのヒドロキシル価を特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物。
【請求項5】
前記i)部は少なくとも1つの脂肪族ポリオールを含む、請求項1~4のいずれかに記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物。
【請求項6】
前記電解質は、アンモニウム塩;ピリジニウム塩;ホスホニウム塩;イミダゾリウム塩;オキサゾリウム塩;グアジニウム塩;およびチアゾリウム塩からなる群から選択される少なくとも1つの非重合性塩を含む、請求項1~5のいずれかに記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物。
【請求項7】
前記電解質は、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-ウム メタンスルホネート、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-ウム メチルサルフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムイミド、1-ブチル-1-メチル-ピロリジニウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ブチル-1-メチル-ピロリジニウムイミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムトリフルオロアセテート、N,N-ジメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムオクタノエート、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-エチル-N-N-N-N-テトラメチルグアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、グアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウムエチルサルフェート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-エチル-メチルイミダゾリウムブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムクロリド、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムヨージド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチルイミダゾール、1-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムテトラフルオロボレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物。
【請求項8】
前記電解質は、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-ウム メタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-ウム メチルサルフェートおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物。
【請求項9】
組成物の重量に基づいて、0.5~5重量%の(v)モリン(2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-3,5,7-トリヒドロキシ-4H-1-クマロン-4-ケトン);3,7-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸;ピロガロールカルボン酸;3,4-ジヒドロキシ-ベンゼングアニジン酢酸;没食子酸;パラ-アミノサリチル酸;4,4’-メチレン-ビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;およびクエン酸からなる群から選択される、少なくとも1つの添加剤を含む、請求項1~8のいずれかに記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物。
【請求項10】
組成物の重量に基づいて、0.5~5重量%のパラアミノサリチル酸(PAS)を含む、請求項1~8のいずれかに記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物。
【請求項11】
組成物の重量に基づいて、0.005~5重量%、好ましくは0.1~1重量%の触媒を含む、請求項1~10のいずれかに記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物。
【請求項12】
組成物の重量に基づいて、0.5~10重量%の非導電性粒状充填剤を含む、請求項1~11のいずれかに記載の硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物。
【請求項13】
導電性表面を有する第1材料層;
導電性表面を有する第2材料層;
を含む接合構造体であって、
硬化した請求項1~12のいずれかに記載の電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物が第1材料層と第2材料層との間に配置される、接合構造体。
【請求項14】
請求項13に記載の接合構造体の剥離方法であって、前記方法は
1)両面に電圧を印加して、陽極界面および陰極界面を形成する工程;および
2)表面を剥離する工程
を含み、工程1で印加する電圧は、好ましくは0.5~200Vであり、好ましくは1秒~60分間印加する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適用される特定の基材から剥離できる接着剤組成物に関する。より具体的には、本発明は、2成分(2K)の硬化性かつ電気化学的に剥離可能なポリウレタン接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
接着結合とポリマーコーティングは、製造品の組み立てと仕上げに一般的に使用される。これらは、ねじ、ボルトおよびリベットなどの機械的締結具の代わりに使用され、機械加工コストを削減し、製造プロセスでの適応性を高めた結合を提供する。接着結合により応力が均等に分散され、疲労の可能性が軽減され、腐食種から接合部が遮断される。
【0003】
したがって、接着結合には機械的締結具に比べて多くの利点があるが、実際の適用で必要とされる場合、接着結合した物品を分解するのは困難になる傾向がある。サンドブラストやワイヤーブラシなどの機械的プロセスによる接着剤の除去は、1つには接着剤が基材の間に配置されているため、基材の表面を損傷することなくアクセスできない、または研磨することが難しいため多くの場合妨げられている。米国特許第4,171,240号(Wong)および米国特許第4,729,797号(Linde et al.)に開示されているような、化学薬品および/または高温の適用による分解は効果的かもしれないが、実行するには時間がかかり、複雑になる可能性がある。さらに、必要とされる攻撃的な化学薬品および/または過酷な条件により、分離される基材が損傷し、その後の適用に適さなくなる可能性がある。
【0004】
これらの問題に注目して、ある著者らは、硬化した組成物に電流を流すと、接着剤と基材との界面での結合が破壊するように作用する、電気化学的に剥離可能な接着剤組成物の開発を模索してきた。
【0005】
米国特許第7,465,492号(Gilbert)には、アクリル、メタクリルおよびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーを含む機能性マトリックス;フリーラジカル開始剤;および電解質を含む電気化学的に剥離可能な組成物が記載され、ここで前記電解質は、前記組成物と導電性表面との間に形成される結合におけるファラデー反応を支援するのに十分なイオン伝導性を前記組成物に提供し、したがって組成物が表面から剥離することを可能にする。
【0006】
米国特許出願公開第2007/0269659号(Gilbert)には、2つの界面で剥離可能な接着剤組成物が記載されており、前記組成物は、(i)ポリマーおよび電解質を含み;(ii)2つの表面の接合を容易にし;(iii)陽極界面と陰極界面とを形成するために両面に印加される電圧に応答して、陽極表面と陰極表面の両方から剥離する。
【0007】
国際公開第2007/142600号(Stora Enso AB)には、導電性表面への接着結合と、接着剤組成物に電圧を印加したときに前記接着結合の弱化を可能にする十分なイオン伝導特性とを提供する、電気化学的に弱化された接着剤組成物が記載されており、前記組成物は、前記イオン伝導特性を与えるのに有効な量の少なくとも1つのイオン性化合物を含み、前記イオン性化合物は120℃以下の融点を有する。
【0008】
欧州特許出願公開第3363875号明細書(Nitto Denko Corporation)は、高い接着力を有し、短時間の電圧の印加により容易に剥がすことができる接着層を形成する電気的に剥離可能な接着剤組成物を提供する。本発明の電気的に剥離可能な接着剤組成物は、ポリマーと、ポリマーの重量に基づいて0.5~30重量%のイオン性液体を含み、前記イオン性液体のアニオンはビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンである。
【0009】
国際公開第2017/133864号(Henkel AG & Co.KGaA)には、第1および第2基材を可逆的に結合するための方法が記載されており、少なくとも第1基材は非導電性基材であり、前記方法は、a)非導電性基材の表面を導電性インクでコートする工程;b)電気的に剥離可能なホットメルト接着剤組成物を、導電性インクでコートされた第1基材および/または第2基材の表面に適用する工程;c)電気的に剥離可能なホットメルト接着剤組成物が2つの基材の間に介在するように、第1基材と第2基材とを接触させる工程;d)2つの基材間に接着結合の形成を可能にして、結合した基材を提供する工程;およびe)結合した基材に電圧を印加する工程(これにより電気的に剥離可能なホットメルト接着剤組成物と基質表面との間の界面における接着が実質的に弱まる)を含む。
【0010】
国際公開第2013/135677号(Henkel AG & Co.KGaA)には、20~90重量%の、10,000~250,000g/モルの分子量(Mw)を有する少なくとも1つのポリアミド;1~25重量%の少なくとも1つの有機塩または無機塩;0~60重量%のさらなる添加剤を含むホットメルト接着剤が記載されており、前記接着剤は、100℃~220℃の軟化点を有する。
【0011】
米国特許出願公開第2008/0196828号(Gilbert)には、熱可塑性成分;および電解質を含むホットメルト接着剤組成物が記載されており、前記電解質は、組成物と導電性表面との間に形成される結合におけるファラデー反応を可能にするのに十分なイオン伝導性を組成物に提供し、組成物が表面から剥離することを可能にする。
【0012】
国際公開第2016/135341号(Henkel AG & Co.KGaA)には、電圧を印加すると少なくとも部分的にその接着性を失い、そのため前記接着剤を使用して接着された基材の剥離を可能にする反応性ホットメルト接着剤組成物が記載されている。より具体的には、前記反応性ホットメルト接着剤組成物は、a)少なくとも1つのイソシアネート官能性ポリウレタンポリマーおよびb)少なくとも1つの有機塩または無機塩を含む。
【0013】
構造用接着剤にポリウレタンを使用すると多くの利点が得られることが当技術分野で知られている。特に、ポリウレタンの耐久性、硬度、弾性率は、特定の用途に合わせて容易に調整できる。さらに、ポリウレタンは特に以下を提できる:温度安定性;弾性(resilience);弾性記憶(elastomeric memory);振動低減(vibration dampening);防音;耐溶剤性。加水分解安定性;および着色耐性。認められているとおり、国際公開第2016/135341号(Henkel AG & Co. KGaA)の電気化学的に剥離可能な接着剤は、ホットメルト接着剤内に予備形成ポリウレタンポリマーを適用している。これは、ポリウレタン接着剤の適用には特殊な装置が必要であることと、接着剤の有効性が適用温度に影響を受けやすいという欠点を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,171,240号
【特許文献2】米国特許第4,729,797号
【特許文献3】米国特許第7,465,492号
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0269659号
【特許文献5】国際公開第2007/142600号
【特許文献6】欧州特許出願公開第3363875号
【特許文献7】国際公開第2017/133864号
【特許文献8】国際公開第2013/135677
【特許文献9】米国特許出願公開第2008/0196828号
【特許文献10】国際公開第2016/135341号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
当該技術分野において、結合される基材の表面に都合よく適用することができ、硬化すると、前記基材を含む複合構造内に効果的な結合を提供できるが、硬化した接着剤全体に容易に電位を加えることで、これらの基材から効果的に剥離できる硬化性ポリウレタン接着剤組成物を提供する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、
i)脂肪族アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル-ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオール;
ii)場合によりさらなる活性水素化合物;および
iii)非重合性電解質;
を含む第1成分;ならびに
少なくとも1つのポリイソシアネートを含む第2成分
を含む、硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物が提供され、
ここで、前記組成物は、NCO基と活性水素原子のモル当量比が少なくとも1:1であることを特徴とする。モル当量比が1:1より大きい場合、化学量論的に過剰なイソシアネート(NCO)基により、第1成分と第2成分との反応時にNCO官能性ポリマーが形成される。
【0017】
硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物は、組成物の重量に基づいて、好ましくは、
20~80重量%、好ましくは20~60重量%のi)脂肪族アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル-ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオール;
ii)場合によりさらなる活性水素化合物;および
1~20重量%、好ましくは1~10重量%のiii)非重合性電解質;
を含む第1成分;ならびに
少なくとも1つのポリイソシアネートを含む第2成分
を含み、
ここで、前記組成物は、NCO基と活性水素原子のモル当量比が1:1~1.2:1であることを特徴とする。
【0018】
硬化性かつ電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物が、組成物の重量に基づいて
20~80重量%、好ましくは20~60重量%のi)脂肪族アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル-ポリエステルポリオール、およびポリカーボネートポリオールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオール;
ii)場合によりさらなる活性水素化合物;および
iii)1~20重量%、好ましくは1~10重量%の非重合性電解質、ここで、前記電解質は、アンモニウム塩;ピリジニウム塩;ホスホニウム塩;イミダゾリウム塩;オキサゾリウム塩;グアジニウム塩;および、チアゾリウム塩からなる群から選択される少なくとも1つの非重合性塩を含む
を含む、第1成分;ならびに
iv)少なくとも1つのポリイソシアネートを含む第2成分
を含み、
前記組成物が、組成物の重量に基づいて、
0.5~5重量%の(v)モリン(2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-3,5,7-トリヒドロキシ-4H-1-クマロン-4-ケトン);3,7-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸;ピロガロールカルボン酸;3,4-ジヒドロキシベンゼングアニジン酢酸;没食子酸;パラアミノサリチル酸;4,4’-メチレン-ビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;およびクエン酸からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤;
0.005~5重量%、好ましくは0.1~1重量%の触媒;および
0.5~10重量%の非導電性粒状充填剤
をさらに含み、
さらに、前記組成物は、NCO基と活性水素原子のモル当量比が1:1~1.2:1であることを特徴とする場合に、良好な結果が得られている。
【0019】
厳密に必要というわけではないが、前述の触媒は通常、組成物の第1のポリオール成分に配合されることになる。
【0020】
本発明の第2の態様によれば
導電性表面を有する第1材料層;および
導電性表面を有する第2材料層;
を含む接合構造体が提供され、
上記および添付の特許請求の範囲で定義した硬化した電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物は、前記第1材料層と第2材料層との間に配置される。
【0021】
本発明の第3の態様によれば、上記および添付の特許請求の範囲に定義される前記接合構造体の剥離方法が提供され、前記方法は
i)両面に電圧を印加して、陽極界面および陰極界面を形成する工程;および
ii)表面を剥離する工程
を含み、
この方法の工程i)は、好ましくは、
a)0.5~200Vの電圧で印加する;および
b)電圧は1秒~60分の間印加される
の少なくとも1つを特徴とする。
【0022】
組成物の接着特性は、組成物と導電性表面との間のボンドライン(bondline)に電位を印加することによって破壊される。理論に束縛されるつもりはないが、接着剤組成物と導電性表面との間の界面で起こるファラデー反応は、接着剤と基材との間の相互作用を破壊し、それによってそれらの間の結合を弱めると考えられる。この界面破壊は、例えば剥離性材料の化学劣化、界面でのガス発生、および/または接着剤組成物の架橋密度の変化による材料の脆化など、1つまたは複数のプロセスの結果であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0024】
本明細書で使用される「comprising(含む)」、「comprises(含む)」、および「comprised of(含んでなる)」という用語は、「including(含む)」、「includes(含む)」、「containing(含有する)」または「contains(含有する)」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていないメンバー、要素、または方法ステップを排除するものではない。
【0025】
本明細書で使用される場合、「consisting of(からなる)」という用語は、特定されていない任意の要素、成分、メンバー、または方法ステップを除外する。
【0026】
量、濃度、寸法、およびその他のパラメータが範囲、好ましい範囲、上限値、下限値、または好ましい上限値と限界値の形で表される場合、任意の上限値または好ましい値と任意の下限値または好ましい値とを組み合わせて得られるあらゆる範囲も、得られた範囲が文脈中で明確に言及されているかどうかに関係なく、具体的に開示されると理解すべきである。
【0027】
さらに、標準的な理解によれば、「0~x」として表される重量範囲には、具体的には0重量%が含まれる。前記範囲によって定義される成分は、組成物中に存在しなくてもよいし、組成物中にx重量%までの量で存在してもよい。
【0028】
「preferred(好ましい)」、「preferably(好ましくは)」、「desirably(望ましくは)」、および「particularly(特に)」という用語は、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る本開示の実施形態を指すために本明細書で頻繁に使用される。しかしながら、1つまたは複数の好ましい(preferable)、好ましい(preferred)、望ましい(desirable)、または特定の(particular)実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを意味するものではなく、それらの他の実施形態を本開示の範囲から除外することを意図するものではない。
【0029】
この出願全体で使用されている「may(し得る)」という用語は、強制的な意味ではなく、許容的な意味、すなわち可能性があるという意味で使用されている。
【0030】
本明細書で使用する室温は23℃±2℃である。本明細書で使用するとき、「周囲条件」とは、組成物が位置する環境、またはコーティング層もしくは前記コーティング層の基材が位置する環境の温度および圧力を意味する。
【0031】
硬化性組成物の高分子、オリゴマーおよびポリマー成分について説明するために本明細書で言及される分子量は、ASTM 3536に従って行われるような、ポリスチレン校正標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0032】
本明細書に記載のコーティング組成物の粘度は、特に規定しない限り、20℃、相対湿度(RH)50%の標準条件でブルックフィールド粘度計を使用して測定される。ブルックフィールド粘度計の校正方法、スピンドルの種類および回転速度は、測定する組成物に応じて製造業者の指示に従って選択される。
【0033】
本発明の文脈における「2成分(2K)組成物」は、第1成分(A)と第2成分(B)とが、それらの(高い)反応性のために別個の容器に保存されなければならない組成物であると理解される。2つの成分は適用の直前に混合され、通常は追加の活性化を行わずに反応して結合を形成し、それによりポリマーネットワークが形成される。ここで、架橋反応を促進するために、より高い温度を適用してよい。
【0034】
本明細書で使用する「電気化学的に剥離可能な」という用語は、接着剤の硬化後、70Vの電位を20分間印加すると、接合強度が少なくとも50%弱くなり得ることを意味する。電流が接着剤結合ラインを流れるように、硬化した接着剤は、該接着剤によって接合される2つの基材の間に適用される。接着強度は、ASTM D3163-01 「Standard Test Method for Determining Strength of Adhesively Bonded Rigid Plastic Lap-Shear Joints in Shear by Tension Loading」に基づいて室温で実施される引張重ねせん断(TLS)試験によって測定される。結合の重なり合う領域は2.50cm×1.25cm(1インチ×0.5インチ)で、結合の厚さは0.1cm(40mil)であった。
【0035】
本明細書で使用される「モノマー」という用語は、重合反応を受けてポリマーの化学構造に構成単位を与えることができる物質を指す。本明細書で使用される「単官能性」という用語は、1つの重合性部分を有することを指す。本明細書で使用される「多官能性」という用語は、2つ以上の重合性部分を有することを指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「当量(eq.)」という用語は、化学表記法では通常であるように、反応中に存在する反応性基の相対数を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「活性水素化合物」は、少なくとも1つの活性水素官能基を有する化合物である。そのような官能基には、容易に解離し得る少なくとも1つの水素原子が含まれる。好ましくは、前記水素原子は、窒素原子、酸素原子、リン原子、または硫黄原子に結合しており、したがって、例示的な活性水素官能基は、ヒドロキシル官能基、アミノ官能基およびチオール官能基である。
【0038】
本明細書で使用する「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシル基を含む任意の化合物を指す。したがって、この用語は、ジオール、トリオール、および4つ以上の-OH基を含む化合物を包含することを意図する。
【0039】
本明細書で使用する「脂肪」という用語は、脂肪酸の1つまたは複数の残基を含む任意の化合物を意味する。次に「脂肪酸」は、脂肪族炭化水素鎖および少なくとも1つのカルボキシル基、好ましくは単一の末端カルボキシル基を実質的に含む、好ましくはそれらからなる、主に非分岐で非環式(好ましくは実質的に直鎖)の脂肪族カルボン酸を意味する。脂肪酸は、ヒドロキシルなどの限られた数の他の置換基を含んでよく、飽和、一価不飽和、または多価不飽和であってよい。
【0040】
「電解質」という用語は、本明細書では、荷電キャリア種の置換によって電気を伝導できる遊離イオンを含む物質として、当該技術分野における標準的な意味に従って使用される。この用語は、溶融電解質、液体電解質、半固体電解質、および固体電解質を包含することを意図しており、電解質構造のカチオン成分またはアニオン成分の少なくとも1つは本質的に自由に置換され、したがって電荷キャリアとして機能する。
【0041】
本発明の硬化性接着剤組成物およびそれから得られる硬化接着剤は、接着材料がアニオン、カチオンまたはその両方のイオンの伝導を可能にするという点で「電解質機能」を有する。電解質機能は、組成物および硬化した接着剤が少なくとも1つの極性のイオンを溶媒和する能力に由来すると理解される。
【0042】
「ファラデー反応」という用語は、物質が酸化または還元される電気化学反応を意味する。
【0043】
本明細書で使用される、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および/または「メタクリル」を指す略語である。したがって、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートおよびメタクリレートを総称して指す。
【0044】
本明細書で使用する「C-Cアルキル」基は、1~n個の炭素原子を含む一価の基、すなわちアルカン基を指し、直鎖および分枝鎖の有機基を含む。したがって、「C-C18アルキル」基は、1~18個の炭素原子を含む一価の基、すなわちアルカン基を指し、直鎖および分枝鎖の有機基を含む。アルキル基の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;n-ブチル;イソブチル;sec-ブチル;tert-ブチル;n-ペンチル;n-ヘキシル;n-ヘプチル;および2-エチルヘキシル。本発明において、そのようなアルキル基は非置換であってもよく、または1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよい。所与の部分(R)に該当する場合、アルキル基内の1つまたは複数の非ハロゲン置換基に対して許容されるものが明細書に記載される。
【0045】
本明細書で使用される「C-C18ヒドロキシアルキル」という用語は、1~18個の炭素原子を有するHO-(アルキル)基を指す。ここで、置換基の結合点は酸素原子を介しており、アルキル基は上記で定義した通りである。
【0046】
「アルコキシ基」は、-OA(式中、Aはアルキル基であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基等が挙げられるがこれらに限定されない)で表される一価の基を指す。本明細書で使用される「C-C18アルコキシアルキル」という用語は、上で定義したアルコキシ置換基を有するアルキル基を指し、その部分(アルキル-O-アルキル)は合計1~18個の炭素原子を含む:そのような基には、メトキシメチル(-CHOCH)、2-メトキシエチル(-CHCHOCH)、および2-エトキシエチルが含まれる。
【0047】
本明細書で使用される「C-Cアルキレン」という用語は、2~4個の炭素原子を有する飽和二価炭化水素基として定義される。
【0048】
「C-C18シクロアルキル」という用語は、3~18個の炭素原子を有する飽和の単環式または多環式炭化水素基を意味すると理解される。本発明において、そのようなシクロアルキル基は非置換であってもよく、1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよい。所与の部分(R)に該当する場合、シクロアルキル基内の1つまたは複数の非ハロゲン置換基に対して許容されるものが本明細書に記載される。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;シクロオクチル;アダマンタン;およびノルボルナンが挙げられる。
【0049】
本明細書で使用される「C-C18アリール」基は、単独で、またはより大きな部分の一部として(「アラルキル基」の場合のように)使用され、単環式環系が芳香族であるか、または二環系もしくは三環系の環の少なくとも1つが芳香族である、単環式、二環式および三環式環系を指す。二環式および三環式の環系には、ベンゾ縮合した2~3員炭素環が含まれる。本発明において、そのようなアリール基は非置換であってもよく、1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよい。所与の部分(R)に該当する場合、アリール基内の1つまたは複数の非ハロゲン置換基に対して許容されるものが明細書に記載される。アリール基の例としては、フェニル;(C-C)アルキルフェニル、例えばトリルおよびエチルフェニル;インデニル;ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル;テトラヒドロアントラセニル;およびアントラセニルが挙げられる。フェニル基が好ましいことが留意され得る。
【0050】
本明細書で使用される「C-C24アルケニル」は、2~24個の炭素原子および少なくとも1単位のエチレン性不飽和を有するヒドロカルビル基を指す。アルケニル基は、直鎖、分枝鎖、または環状であってよく、場合により1つまたは複数のハロゲンで置換されていてもよい。所与の部分(R)に該当する場合、アルケニル基内の1つまたは複数の非ハロゲン置換基に対して許容されるものが本明細書に記載される。当業者に理解されるように、用語「アルケニル」は、「シス」および「トランス」配置、またはその代わりに「E」および「Z」配置を有する基も包含する。しかしながら、一般に、2~10個(C2-10)または2~8個(C2-8)の炭素原子を含む非置換アルケニル基が好ましいことに留意すべきである。前記C-C12アルケニル基の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:-CH=CH;-CH=CHCH;-CHCH=CH;-C(=CH)(CH);-CH=CHCHCH;-CHCH=CHCH;-CHCHCH=CH;-CH=C(CH;-CHC(=CH)(CH);-C(=CH)CHCH;-C(CH)=CHCH;-C(CH)CH=CH;-CH=CHCHCHCH;-CHCH=CHCHCH;-CHCHCH=CHCH;-CHCHCHCH=CH;-C(=CH)CHCHCH;-C(CH)=CHCHCH;-CH(CH)CH=CHCH;-CH(CH)CHCH=CH;-CHCH=C(CH;1-シクロペント-1-エニル;1-シクロペント-2-エニル;1-シクロペント-3-エニル;1-シクロヘキサ-1-エニル;1-シクロヘキサ-2-エニル;および1-シクロヘキシル-3-エニル。
【0051】
本明細書で使用される「アルキルアリール」は、アルキル置換アリール基を指し、両方の基は上記定義した通りである。さらに、本明細書で使用される「アラルキル」は、上記定義したアリール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0052】
本明細書で使用される「ヘテロ」という用語は、N、O、SiおよびSなどの1つまたは複数のヘテロ原子を含む基または部分を指す。したがって、例えば「複素環」は、例えばN、O、SiまたはSを環構造の一部として有する環状基を指す。「ヘテロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」および「ヘテロアリール」部分は、それぞれ、構造の一部としてN、O、SiまたはSを含む、上記定義したアルキル、シクロアルキルおよびアリール基である。
【0053】
本発明の組成物は、本明細書では、特定の化合物、元素、イオン、または他の同様の成分を「実質的に含まない」と定義してよい。「実質的に含まない」という用語は、化合物、元素、イオン、または他の同様の成分が組成物に意図的に添加されておらず、所望のコーティングの特性に(悪)影響を及ぼさない、せいぜい微量のみ存在することを意味することを意図している。例示的な微量は、組成物の重量の1000ppm未満である。「実質的に含まない」という用語は、特定の化合物、元素、イオン、または他の同様の成分が組成物中に完全に存在しない、または当技術分野で一般的に使用される技術によって測定可能な量で存在しない実施形態を包含する。
【0054】
発明の詳細な説明
1.2成分(2K)組成物の第1成分
組成物の第1成分は、i)脂肪族アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル-ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオール;ii)場合によりさらなる活性水素化合物;およびiii)非重合性電解質を含む。繰り返しになるが、本発明の組成物は、組成物の第2部によって提供される反応物のNCO基と活性水素原子とのモル当量比が少なくとも1:1、例えば1:1~1.5:1、好ましくは1:1~1.2:1であることを特徴とする。組成物の第1成分は、20~80重量%、例えば20~60重量%の、i)脂肪族アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル-ポリエステルおよびポリカーボネートポリオールからなる群から選択される前記少なくとも1つのポリオールを含むことによってさらに特徴付けられ得る。
【0055】
i)ポリオール
2成分(2K)組成物の少なくとも1つの反応物ポリオールは、脂肪族アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテル-ポリエステルポリオール、およびポリカーボネートポリオールからなる群から選択されなければならない。このようなポリオールは、好ましくは200~50,000g/モル、例えば200~8000g/モルの数平均分子量(Mn)を有するべきである。この分子量特性の代わりに、またはそれに加えて、反応物ポリオールのヒドロキシル価は、好ましくは2~850mgKOH/g、例えば25~500mgKOH/gであるべきである。
【0056】
ポリカーボネートジオールは、炭酸誘導体とジオールとを反応させることによって得てよい。例示的な炭酸誘導体は、ジフェニルカーボネート、ジ(C-C)アルキルカーボネートおよびホスゲンが挙げられるがこれらに限定されないジアリールカーボネートである。例示的なジオールとしては以下が挙げられるが、これらに限定されない:エチレングリコール;1,2-プロパンジオール;1,3-プロパンジオール;1,3-ブタンジオール;1,4-ブタンジオール;1,5-ペンタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;シクロヘキサンジメタノール;ジエチレングリコール;ジプロピレングリコール;ネオペンチルグリコール;およびそれらの混合物。
【0057】
ポリエステルジオールは、ジオールと脂肪族、芳香族もしくは脂環式ジカルボン酸、または状況によってはそれらの対応する無水物のいずれかと反応させることによって得てよい。反応は場合によりエステル化触媒の存在下で行ってよい。適切なジカルボン酸の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:アジピン酸;グルタル酸;ピメリン酸;スベリン酸;ノナンジカルボン酸;デカンジカルボン酸;コハク酸;マレイン酸;セバシン酸;アゼライン酸;テレフタル酸;イソフタル酸;o-フタル酸;テトラヒドロフタル酸;ヘキサヒドロフタル酸;トリメリット酸;および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸。適切な無水物の例としては、無水コハク酸、無水o-フタル酸および無水トリメリット酸が挙げられる。なお、ジカルボン酸としては、飽和(水素添加)または不飽和の形態の市販の種々のダイマー脂肪酸を使用することもできる。ポリエステルジオールの調製に適したジオールの例は以下の通りである:エタンジオール;ジ、トリ、またはテトラエチレングリコール;1,2-プロパンジオール;ジ、トリ、テトラプロピレングリコール;1,3-プロパンジオール;1,4-ブタンジオール;1,3-ブタンジオール;2,3-ブタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;1,5-ペンタンジオール;2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール);1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン;1,4-ジメチルシクロヘキサン;1,8-オクタンジオール;1,10-デカンジオール;1,12-デカンジオール;2,2,4-および/または2,4,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール;およびそれらの混合物。
【0058】
他の有用なポリエステルジオールは、2~12個の炭素原子を含むヒドロキシカルボン酸またはそのラクトンのジオール開始重合から得られるものである。ヒドロキシカルボン酸は、飽和または不飽和、直鎖または分枝鎖であってもよく、その例としては以下が挙げられる:グリコール酸;乳酸;5-ヒドロキシ吉草酸;6-ヒドロキシカプロン酸;リシノール酸;12-ヒドロキシステアリン酸;12-ヒドロキシドデカン酸;5-ヒドロキシドデカン酸;5-ヒドロキシデカン酸;および、4-ヒドロキシデカン酸。適切なラクトンの例は、β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、(C-C)アルキル-バレロラクトン、ε-カプロラクトンおよび(C-C)アルキル-ε-カプロラクトン。
【0059】
本発明において有用な例示的な市販のポリエーテル-ポリエステルポリオールには、BASFから入手可能なSolvermol(登録商標)805およびSolvermol(登録商標)750が含まれる。
【0060】
上記はさておき、ポリウレタンが誘導される少なくとも1つのポリオールがポリエーテルポリオール、特に2未満、好ましくは1.5未満、より好ましくは1.3未満の多分散度(PD)を有するポリエーテルポリオールであることが好ましい。完全を期すために、本発明の目的において、「ポリエーテル」は、その繰り返し単位が主鎖にエーテル官能基C-O-Cを含むポリマーとして理解される。したがって、側方エーテル基を有するポリマー、例えばセルロースエーテル、デンプンエーテル、およびビニルエーテルポリマー、ならびにポリアセタールは、この定義には含まれない。望ましくは、ポリエーテルポリオールはポリオキシアルキレングリコール、特にポリオキシ(C-C)アルキレングリコールである。完全を期すために、ポリオキシ(C-C)アルキレンという用語は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドの両方から誘導されるポリエーテル基を指す。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態では、第1成分は少なくとも1つの脂肪族ポリオールを含む。適切な脂肪ポリオールとしては、例えば、脂肪酸、脂肪酸のエステル、脂肪酸のアミド、および脂肪酸の二量体、三量体、オリゴマーまたはポリマーが挙げられる(ただし、前記化合物が2つ以上のヒドロキシル基を有することを条件とする)。適切な脂肪族ポリオールのヒドロキシル官能基は、脂肪酸残基、分子の他の部分、またはその両方に存在してよい。
【0062】
例示的な脂肪族ポリオールとしては、以下のものが挙げられ得る:ヒマシ油;不飽和または多価不飽和天然油の水酸化生成物;不飽和または多価不飽和ポリヒドロキシル天然油の水素化生成物;アルキルヒドロキシ脂肪酸のポリヒドロキシルエステル;重合天然油;および、脂肪酸のアルキルヒドロキシル化アミド。以下のものを単独でまたは組み合わせて使用することが好ましい:ヒマシ油;水酸化大豆油;硬化ヒマシ油;重合ヒマシ油;ヒドロキシエチルリシノレエート;およびヒドロキシエチルリシノールアミド。
【0063】
ii)任意のさらなる活性水素化合物
ある種のポリオールは、ポリウレタンの合成における反応物としてだけでなく、非重合性電解質の可溶化剤としても機能し得る。一般に、可溶化剤は、2つの成分の混合時に形成される接着剤組成物内の電解質の混和性を促進する機能を有する。可溶化剤は、それ自体、極性化合物であることが好ましく、室温で液体であることが望ましい。
【0064】
このカテゴリーでは、以下が挙げられ得る:ポリオキシアルキレングリコール;多価アルコール(polpolyhydric alcohols);および、糖。ポリオキシアルキレングリコールは上で言及されているが、そのような可溶化機能は、200~10000g/mol、例えば200~2000g/molの重量平均分子量を有するポリオキシ(C-C)アルキレングリコールの使用によって特に達成され得ることに留意されたい。
【0065】
可溶化剤としての有用性を有し、単独でまたは組み合わせて使用できる多価アルコールおよび糖には以下が含まれるが、これらに限定されない:エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、フロログルシノール、ピロガロール、ヒドロキシヒドロキノン、残りのベンゼン炭素原子に3つのメチルまたはエチル置換基が結合したトリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、グリセロール、シクロヘキサン-1,2,4-トリオール、1,3,5-シクロヘキサントリオール、ペンタン-1,2,3-トリオール、ヘキサン-1,3,5-トリオール、エリスリトール、1,2,4,5-テトラヒドロキシベンゼン、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、フルクトース、グルコース、マンノース、ラクトース、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、トリメチロールプロパン、ジ(トリメチロールプロパン)、トリメチロールプロパンエトキシレート、2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、ペンタエリスリトールアリルエーテルおよびペンタエリスリトール。
【0066】
ポリウレタンの合成において、少なくとも1つのモノオール(monol)をさらなる活性水素反応物ii)として好ましく使用できることに留意されたい。例えば、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンなどの単官能性の親水性ポリオキシアルキレンを、ラテックスの特性を改変し、エマルション形成の容易さを改善する手段としてポリウレタンに組み込むことができる。含まれる場合、モノオールは、i)前記少なくとも1つのポリオールの重量に基づいて、0.1~5重量%の量で存在すべきである。
【0067】
本発明は、特に第2成分のNCO官能性化合物がNCO官能性プレポリマーを含むか、またはNCO官能性プレポリマーからなる実施形態に関して、鎖延長剤の第1成分中の存在を排除するものではない。当業者には知られているように、典型的な鎖延長剤は、18~500g/モルの重量平均分子量(Mw)を有し、少なくとも2つの活性水素含有基を有する。したがって、水を鎖延長剤として使用してよいが、2成分(2K)組成物は実質的に水を含まないことが好ましい。しかしながら、ポリアミンの使用が提案される可能性があり、単独でまたは組み合わせて使用できる例示的なポリアミンとして、次のものが挙げられ得る:アミン化ポリプロピレングリコール、例えばHuntsman Chemical Company製のJeffamine D-400;ヒドラジン;ピペラジン;アミノエチルピペラジン;2-メチルピペラジン;1,5-ジアミノ-3-メチルペンタン;イソホロンジアミン;エチレンジアミン;ジアミノブタン;ヘキサンジアミン;ヘキサメチレンジアミン;テトラメチレンテトラアミン;アミノエチルプロピルトリメトキシシラン;ジエチレントリアミン;トリエチレンテトラミン;トリエチレンペンタミン;エタノールアミン;および、リジン。
【0068】
鎖延長剤が含まれる場合、その添加量は、2成分(2K)組成物中の活性水素原子とNCO基との前述のモル当量比によって制限される。
【0069】
iii)非重合性電解質
組成物は、2成分(2K)組成物の重量に基づいて、1~20重量%の非重合性電解質を含む。電解質は、前記組成物の好ましくは1~10重量%、例えば2~10重量%を構成し得る。
【0070】
重要な電解質には、次の非重合性塩が含まれる:アンモニウム;ピリジニウム;ホスホニウム;イミダゾリウム;オキサゾリウム;グアジニウム;および、チアゾリウム。より具体的には、本発明の電解質は、以下からなる群から選択される式を有する少なくとも1つの塩を含むべきである:
【0071】
【化1】
式中、R、R、R、R、RおよびRは、水素、C-C18アルキル、C-C18シクロアルキル、C-C18アリール、C-C24アラルキル、C-C20アルケニル、-C(O)R、-C(O)OH、-CN、および-NOから独立して選択され、
はC-Cアルキルである。
【0072】
アンモニウム塩が使用される場合、基R~Rのうち多くても3つ、望ましくは多くても2つが水素であってよいということを条件としてよい。
【0073】
前記部分R~Rに関して、C-C18アルキル、C-C18シクロアルキル、C-C18アリール、C-C24アラルキル、C-C20アルケニルという用語は、1つまたは複数の水素原子がハロゲン原子(例えば、C-C18ハロアルキル)またはヒドロキシル基(例えば、C-C18ヒドロキシアルキル)で置換されている基を明示的に含む。特に、R、R、R、R、RおよびRは、水素、C-C12アルキル、C-C12ハロアルキル、C-C12ヒドロキシアルキルおよびC-C12シクロアルキルから独立して選択されることが好ましい。例えば、R、R、R、R、RおよびRは、水素、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、およびC-Cヒドロキシアルキルから独立して選択されてよい。
【0074】
電解質に使用できる対アニオン(X-)を限定する意図は特にない。例示的なアニオンは以下から選択してよい:
・ハライド;
・式PF 、CFSO 、(CFSO、CFCO およびCClCO の擬ハライドおよびハロゲン含有化合物、
・CN、SCN、OCN
・フェナート;
・一般式SO 2-、HSO 、SO 2-、HSO 、ROSO およびRSO のサルフェート、サルファイトおよびスルホネート;
・一般式PO 3-、HPO 2-、HPO 、RPO 2-、HRPO およびRPO のホスフェート;
・一般式RHPO 、RPO およびRPO のホスホネートおよびホスフィネート;
・一般式:PO 3-、HPO 2-、HPO 、RPO 2-、RHPO およびRPO のホスファイト;
・一般式RPO 、RHPO 、RPOおよびRHPOのホスホナイトおよびホスフィナイト;
・一般式RCOOのカルボン酸アニオン;
【0075】
・ヒドロキシカルボン酸アニオンおよび糖酸アニオン;
・サッカリネート(o-安息香酸スルフィミドの塩);
・一般式BO 3-、HBO 2-、HBO 、RBO 、RHBO 、RBO 2-、B(OR)(OR)(OR)(OR、B(HSOおよびB(RSOのボレート;
・一般式RBO 2-およびRBOのボロネート;
・一般式HCO 、CO 2-およびRCO のカーボネートおよび炭酸エステル;
・一般式SiO 4-、HSiO 3-、HSiO 2-、HSiO 、RSiO 3-、RSiO 2-、RSiO 、HRSiO 2-、HSiO およびHRSiO のシリケートおよびケイ酸エステル;
・一般式RSiO 3-、RSiO 2-、RSiO、RSiO 、RSiO およびRSiO 2-のアルキルシラノレートおよびアリールシラノレート;
・ピリジネートおよびピリミジネート;
・一般式:
【化2】
【化3】
のカルボン酸イミド、ビス(スルホニル)イミドおよびスルホニルイミド
・一般式:
【化4】
のメチド
・一般式Rのアルコキシドおよびアリールオキシド;および
・一般式S2-、HS、[S2-、[HSおよび[RS]のスルフィド、硫化水素、多硫化物、多硫化水素およびチオレート。
一般式中、vは2~10の正の整数である。
、R、RおよびRは、水素、C-C12アルキル、C-C12シクロアルキル、C-C12ヘテロシクロアルキル、C-C18アリールおよびC-C18ヘテロアリールから独立して選択される。
【0076】
上記のリストの定義に基づいて、好ましいアニオンは以下からなる群から選択される:ハロゲン化物;上記で定義した擬似ハロゲン化物およびハロゲン含有化合物;カルボン酸アニオン、特にホルメート、アセテート、プロピオネート、ブチレートおよびオクタノエート;ヒドロキシカルボン酸アニオン、例えばラクテート;ピリジネートおよびピリミジネート;カルボン酸イミド、ビス(スルホニル)イミドおよびスルホニルイミド;サルフェート、特にメチルサルフェートおよびエチルサルフェート;サルファイト;スルホネート、特にメタンスルホネート;ホスフェート、特にジメチルホスフェート、ジエチルホスフェートおよびジ-(2-エチルヘキシル)-ホスフェート。
【0077】
第1部の電解質は、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-ウム メタンスルホネート、1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-ウム メチルサルフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムイミド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、1-ブチル-1-メチル-ピロリジニウムイミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホリウム2-(2-フルオロアニリノ)-ピリジネート、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムトリフルオロアセテート、N,N-ジメチル(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムオクタノエート、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-エチル-N-N-N-N-テトラメチルグアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、グアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-ヒドロキシメチルピリジニウムエチルサルフェート、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-エチルメチルイミダゾリウムブロミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムクロリド、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムヨージド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチルイミダゾール、1-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、テトラブチルホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムテトラフルオロボレートおよびそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-ウムメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネートおよび1-エチル-3-メチル-1H-イミダゾール-3-ウムメチルサルフェートのうちの少なくとも1つの使用が特に好ましいことが言及され得る。
【0078】
2.2成分(2K)組成物の第2成分
iv)ポリイソシアネート
組成物の第2成分は、少なくとも1つのポリイソシアネートを含む。本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」は、少なくとも2つの-N=C=O官能基、例えば2~5または2~4の-N=C=O官能基を含む化合物を意味する。適切なポリイソシアネートとしては、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式イソシアネート、それらの二量体および三量体、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0079】
脂肪族および脂環式ポリイソシアネートは、直鎖状または環状に結合した6~100個の炭素原子を含み、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を含むことができる。適切な脂肪族イソシアネートの例には、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビス(イソシアナトエチル)-カーボネート、およびビス(イソシアナトエチル)エーテルなどの直鎖イソシアネートが含まれるが、これらに限定されない。例示的な脂環式ポリイソシアネートとしては、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート(H12MDI)、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-1,5,5-トリメチル-シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート(HXDI)、1-メチル-2,4-ジイソシアナト-シクロヘキサン、m-またはp-テトラメチルキシレンジイソシアネート(m-TMXDI、p-TMXDI)およびダイマー脂肪酸ジイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
「芳香族ポリイソシアネート」という用語は、本明細書では、イソシアネート基が単核または多核芳香族炭化水素基の環に直接結合している有機イソシアネートを記述するために使用される。また、単核または多核の芳香族炭化水素基は、共役二重結合の本質的に平面状の環状炭化水素部分を意味し、これは単環であってもよいし、複数の縮合(condensed)[縮合(fused)]もしくは共有結合した環を含んでもよい。芳香族という用語には、アルキルアリールも含まれる。通常、炭化水素(主)鎖には、1つの環に5、6、7、または8個の主鎖原子が含まれる。このような平面環状炭化水素部分の例には、シクロペンタジエニル、フェニル、ナフタレニル-、[10]アヌレニル-(1,3,5,7,9-シクロデカペンタエニル-)、[12]アヌレニル-、[8]アヌレニル-、フェナレン(ペリナフテン)、1,9-ジヒドロピレンおよびクリセン(1,2-ベンゾフェナントレン)が含まれるが、これらに限定されない。アルキルアリール部分の例は、ベンジル、フェネチル、1-フェニルプロピル、2-フェニルプロピル、3-フェニルプロピル、1-ナフチルプロピル、2-ナフチルプロピル、3-ナフチルプロピルおよび3-ナフチルブチルである。
【0081】
例示的な芳香族ポリイソシアネートとしては以下が挙げられるが、これらに限定されない:異性体的に純粋な形態またはいくつかの異性体の混合物としてのトルエンジイソシアネート(TDI)のすべての異性体;ナフタレン1,5-ジイソシアネート;ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI);ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート、およびジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートと2,4’異性体の混合物またはより高官能性のオリゴマーとの混合物(いわゆる粗製MDI);キシリレンジイソシアネート(XDI);ジフェニル-ジメチルメタン4,4’-ジイソシアネート;ジ-およびテトラアルキル-ジフェニルメタンジイソシアネート;ジベンジル4,4’-ジイソシアネート;フェニレン1,3-ジイソシアネート;およびフェニレン1,4-ジイソシアネート。
【0082】
ポリイソシアネートは、必要に応じて、英国特許第889,050号に記載されているような一般に知られた方法によってビウレット化および/またはイソシアヌレート化されていてもよい。
【0083】
「ポリイソシアネート」という用語は、ここでは、前述の脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式イソシアネートとポリオールとの部分反応によって形成され、イソシアネート官能性オリゴマーを与えるプレポリマーも包含することを意図しており、このオリゴマーは、単独でまたは遊離イソシアネートと組み合わせて使用してよい。使用する場合、NCO官能性プレポリマーは、好ましくは次の少なくとも1つによって特徴付けられるべきである:a)プレポリマーの重量に基づいて5~30重量%、好ましくは10~25重量%のNCO含量;b)2.2~3.0、好ましくは2.2~または2.4~2.9のNCO官能性;c)20℃での粘度が300~35,000mPa・s、好ましくは1,000~10,000mPa・s;およびd)500~30,000、例えば500~15,000または500~10,000g/モルの数平均分子量(Mn)。完全を期すために、これらの特徴a)~d)は相互に排他的であることを意図したものではない。実際、プレポリマーはこれらの記載された特徴の1つ、2つ、3つまたは4つを満たしてよい。
【0084】
適切なポリイソシアネート(polyisocanates)の市販の例としては、本発明を限定する意図はないが、以下のものが挙げられる:Covestro Deutschlandから入手可能なDesmodur product series、例えばDesmodur E 744;Henkel Corporationから入手可能なHysol HF6005イソシアネート;The Dow Chemical Companyから入手可能なIsonate M product series;BASFから入手可能なLupranat product series;および、Huntsmanから入手可能なSuprase product series。
【0085】
添加物および補助成分
本発明で得られる前記組成物は、典型的には、これらの組成物に改善された特性を与えることができる補助剤および添加剤をさらに含む。例えば、補助剤および添加剤は、以下のうちの1つまたは複数を与え得る:改善された弾性特性;改善された弾性回復力;より長い有効な処理時間;より速い硬化時間;およびより低い残留タック。このような補助剤および添加剤には、以下のものが含まれる:触媒;可溶化剤;強化剤;導電性粒子;非導電性フィラー;可塑剤;UV安定剤を含む安定剤;酸化防止剤;反応性希釈剤;乾燥剤または湿気除去剤;接着促進剤;殺菌剤;難燃剤;レオロジー補助剤;カラー顔料またはカラーペースト;溶剤;および非反応性希釈剤。
【0086】
このような補助剤および添加剤は、組成物の性質および本質的な特性に悪影響を及ぼさない限り、所望の組み合わせおよび割合で使用できる。場合によっては例外が存在する可能性があるが、これらの補助剤および添加剤は全体として組成物全体の40重量%超を構成すべきではなく、好ましくは組成物の30重量%超を構成すべきではない。
【0087】
完全を期すために、一般に、反応性基を含む補助物質および添加剤は、その保存安定性を確保するために、2成分(2K)組成物の適切な部にブレンドされることに留意されたい。非反応性物質は、2つの成分のいずれかまたは両方に配合できる。
【0088】
組成物、および通常はその第1成分は、当技術分野で知られているように、ポリイソシアネートと活性水素化合物との間の反応のための標準的な触媒を含んでよい。このような触媒としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:カルボン酸のスズ塩、例えばスズオクトエート、スズオレエート、スズアセテートおよびスズラウレート(stannous laureate);ジアルキルスズジカルボキシレート、例えばジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジアセテート;第三級アミン;アルカノールアミン化合物;2,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン;テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド;アルカリ金属水酸化物;アルカリ金属アルコラート;スズアルコキシド、例えばジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジフェノキシドおよびジブチルスズジイソプロキシド;酸化スズ、例えばジブチルスズオキシドおよびジオクチルスズオキシド;ジブチルスズオキシドとフタル酸エステルの反応生成物;スズメルカプチド;アルキルチタネート;有機アルミニウム化合物、例えばアルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテートおよびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート;キレート化合物、例えばジルコニウムテトラアセチルアセトナートおよびチタンテトラアセチルアセトナート;有機ケイ素チタン化合物;ビスマストリス-2-エチルヘキサノエート、ビスマスネオデカノエート錯体、およびビスマスとヒドロキシプロピルエチレンジアミンおよびヒドロキシルエチルエチレンジアミンとの錯体、Everchem Specialty ChemicalsからBicat(登録商標)触媒として入手可能;酸化合物、例えばリン酸およびp-トルエンスルホン酸;トリフェニルボラン;トリフェニルホスフィン;1,8-ジアザビシクロウンデカ-7-エン(DBU);1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン;1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン;4-ジメチルアミノピリジン;1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン;7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン;1,8-ビス(テトラメチルグアニジノ)ナフタレン;および2-tert-ブチル-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン。イソシアネートの性質に応じて、使用される触媒の量は、典型的には2成分(2K)組成物の0.005~5重量%、例えば0.1~1重量%の範囲である。
【0089】
上で述べたように、可溶化剤は、その2つの成分の混合時に形成される接着剤組成物内の電解質の混和性を促進する機能を有する。可溶化剤は、接着剤組成物の硬化時に形成されるポリマーマトリックスの一部を形成してもしなくてもよいが、その中でのイオン移動を促進する働きをする。したがって、可溶化剤は極性化合物であることが好ましく、室温で液体であることが望ましい。
【0090】
上述のポリオール可溶化剤に加えて、ヒドロキシル官能基を有さない適切なクラスの可溶化剤には、以下が含まれる:ポリホスファゼン;ポリメチレンスルフィド;ポリエチレンイミン;シリコーン界面活性剤およびフッ素化シリコーン界面活性剤、例えばフッ素化ポリシラン、ポリアルキルシロキサンおよびポリオキシアルキレン変性ポリジメチルシロキサン;および官能化ポリアルアルキルシロキサンとエポキシ樹脂とのコポリマー、例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)とエポキシ樹脂とのコポリマー。ヒドロキシル官能基を有さないそのような可溶化剤は、典型的には、組成物の重量に基づいて0~5重量%の量で2成分(2K)組成物中に含まれてよい。
【0091】
本発明の組成物中の強化剤の存在は、特定の状況において、硬化した接着剤の剥離に有利となり得る。理論に束縛されるつもりはないが、強化剤は、電位の印加下で硬化した接着剤内の相分離を促進できる。したがって、例示的な実施形態では、本発明の接着剤は、組成物の重量に基づいて0.1~10重量%のポリブタジエン系強化剤を含んでよい。例示的な市販のポリブタジエン系強化剤としては、Cray Valleyから入手可能なPoly bd(登録商標)R20 LMおよびPoly bd(登録商標)15 HTが挙げられる。
【0092】
本発明の組成物は、導電性粒子を含んでよい。組成物は、例えば、組成物の重量に基づいて、0~10重量%または0~5重量%の導電性粒子を含んでよい。
【0093】
概して、導電性フィラーとして使用される粒子の形状を限定する特別な意図はなく、針状、球状、楕円体状、円筒状、ビーズ状、立方体状または小板状の粒子を単独でまたは組み合わせて使用してよい。さらに、2つ以上の粒子タイプの凝集体を使用してよいことが想定される。同様に、導電性フィラーとして使用される粒子のサイズを制限する特別な意図はない。しかしながら、そのような導電性フィラーは、従来、レーザー回折/散乱法により測定した場合、0.1~1500μm、例えば1~1250μmの平均体積粒径を有することになる。
【0094】
例示的な導電性微粒子フィラーとしては以下が挙げられるが、これらに限定されない:銀;銅;金;パラジウム;白金;ニッケル;金または銀でコーティングされたニッケル;カーボンブラック;カーボンファイバー;黒鉛;アルミニウム;インジウムスズ酸化物;銀でコーティングされた銅;銀でコーティングされたアルミニウム;金属コーティングされたガラス球;金属コーティングされたフィラー;金属コーティングされたポリマー;銀でコーティングされた繊維;銀でコーティングされた球体;アンチモンをドープした酸化スズ;導電性ナノスフェア;ナノ銀;ナノアルミニウム;ナノ銅;ナノニッケル;カーボンナノチューブ;およびそれらの混合物。導電性フィラーとして粒子状の銀および/またはカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0095】
本発明の組成物は、場合により、非導電性粒状フィラーを含んでよい。組成物は、例えば、組成物の重量に基づいて、0~10重量%、例えば0.5~10重量%、または0.5~5重量%の非導電性粒状フィラーを含んでよい。
【0096】
概して、非導電性フィラーとして使用される粒子の形状を制限する特別な意図はなく、針状、球状、楕円体、円筒状、ビーズ状、立方体状、または小板状の粒子を単独でまたは組み合わせて使用してよい。さらに、2つ以上の粒子タイプの凝集体を使用してよいことが想定される。同様に、非導電性フィラーとして使用される粒子のサイズを制限する特別な意図はない。しかしながら、そのような非導電性フィラーは、従来、レーザー回折/散乱法によって測定した場合、0.1~1500μm、例えば1~1250μmの平均体積粒径を有することになる。
【0097】
例示的な非導電性フィラーとしては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム(石灰粉末)、沈降ケイ酸および/または熱分解ケイ酸、ゼオライト、ベントナイト、ウォラストナイト、炭酸マグネシウム、珪藻土、硫酸バリウム、アルミナ、クレイ、タルク、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、砂、石英、フリント、マイカ、ガラスビーズ、ガラスパウダー、その他鉱物粉砕物質が挙げられるが、これらに限定されない。有機フィラー、特に木繊維、木粉、おがくず、セルロース、綿、パルプ、綿、木材チップ、刻んだ藁、もみがら、すりつぶしたクルミの殻、および他の刻んだ繊維も使用できる。ガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、ケブラー(登録商標)繊維、またはポリエチレン繊維等の短繊維を添加することもできる。
【0098】
熱分解および/または沈降ケイ酸は、有利には10~90m/gのBET表面積を有する。それらを使用した場合、それらは本発明による組成物の粘度をさらに増加させることはないが、硬化した組成物の強化に寄与する。
【0099】
より大きいBET表面積、有利には100~250m/gを有する熱分解ケイ酸および/または沈降ケイ酸をフィラーとして使用することも同様に考えられる。BET表面積がより大きいため、硬化した組成物を強化する効果が、ケイ酸のより少ない重量割合で達成される。
【0100】
非導電性フィラーとして同様に適しているものは、鉱物シェルまたはプラスチックシェルを有する中空球である。これらは、例えば、商品名Glass Bubbles(登録商標)で市販されている中空のガラス球であり得る。Expancel(登録商標)またはDualite(登録商標)などのプラスチックベースの中空球体を使用してよく、それらは欧州特許第0 520 426号に記載されている。それらは無機または有機物質で構成されており、それぞれの直径は1mm以下、好ましくは500μm以下である。
【0101】
組成物にチキソトロピー性を付与する非導電性フィラーは、多くの用途に好ましい。このようなフィラーは、レオロジー補助剤とも称され、例えば、硬化ヒマシ油、脂肪酸アミド、またはPVCなどの膨潤性プラスチックである。
【0102】
形成される硬化性組成物の所望の粘度は、使用されるフィラーの量によって決まり得る。後者の事項を考慮すると、組成物中に存在するフィラー(導電性および非導電性の両方)の総量は、組成物を基材に適用する選択された方法によって組成物が容易に適用されることを妨げてはならない。例えば、チューブなどの適切な分配装置から押し出すことを意図した硬化性組成物は、1000~150,000、好ましくは10,000~100,000mPasの粘度を有すべきである。
【0103】
特定の添加剤を添加すると、特定の基材に対するコーティング組成物の接着が促進され得る。これに関して、本発明の組成物は、組成物の重量に基づいて、0~5重量%、例えば0.5~5重量%の、(v)以下からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでよい:モリン(2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-3,5,7-トリヒドロキシ-4H-1-クマロン-4-ケトン);3,7-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸(3,7-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸);ピロガロールカルボン酸(2,3,4-トリヒドロキシ安息香酸);3,4-ジヒドロキシベンゼングアニジン酢酸;没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸);パラ-アミノサリチル酸(4-アミノ-2-ヒドロキシ安息香酸、PAS);フラッター酸(flutter acid)(4,4’-メチレン-ビス(3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸);および、クエン酸(2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸)。これらの化合物の中で、クエン酸、没食子酸、特にパラアミノサリチル酸(PAS)の単独でまたは組み合わせての使用が好ましいことが言及され得る。
【0104】
本発明の目的における「可塑剤」は、組成物の粘度を低下させ、したがってその加工性を促進する物質である。本明細書において、可塑剤は、組成物の総重量に基づいて、10重量%まで、または5重量%までを構成してよく、好ましくは、ジウレタン;単官能性の直鎖または分枝鎖C4-C16アルコールのエーテル、例えばCetiol OE(BASFから入手可能);アビエチン酸、酪酸、チオ酪酸、酢酸、プロピオン酸エステルおよびクエン酸のエステル;ニトロセルロースとポリ酢酸ビニルとに基づくエステル;脂肪酸エステル;ジカルボン酸エステル;OH基を有する脂肪酸またはエポキシ化脂肪酸のエステル;グリコール酸エステル;安息香酸エステル;リン酸エステル;スルホン酸エステル;トリメリット酸エステル;ポリエーテル可塑剤、例えばエンドキャップされたポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール;ポリスチレン;炭化水素系可塑剤;塩素化パラフィン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。基本的には、フタル酸エステルを可塑剤として使用できるが、これらは毒性の可能性があるため好ましくないことに留意されたい。
【0105】
本発明の目的における「安定剤」は、酸化防止剤、熱安定剤または加水分解安定剤として理解されるべきである。本明細書では、安定剤は、組成物の総重量に基づいて、合計で10重量%まで、または5重量%まで構成してよい。本明細書での使用に適した安定剤の標準的な市販例には以下が含まれる:立体障害フェノール;チオエーテル;ベンゾトリアゾール;ベンゾフェノン;ベンゾエート;シアノアクリレート;アクリレート;ヒンダードアミン光安定剤(HALS)タイプのアミン;リン;硫黄;およびそれらの混合物。
【0106】
保存寿命をさらに延ばすために、乾燥剤を使用して湿気の浸透に関して本発明の組成物をさらに安定させることがしばしば推奨される。適切な乾燥剤または水分捕捉剤の例としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:シリカゲル;無水硫酸カルシウム(硬石膏);硫酸カルシウム二水和物(石膏);酸化カルシウム;モンモリロナイトクレイ;天然または合成ゼオライトを含むモレキュラーシーブ;および活性化アルミナ。
【0107】
反応性希釈剤を使用することにより、特定の用途のために本発明による接着剤組成物の粘度を下げる必要性も時々存在する。存在する反応性希釈剤の総量は、組成物の総重量に基づいて、典型的には0~10重量%、例えば0~5重量%であり得る。
【0108】
本発明の組成物中の溶媒および非反応性希釈剤の存在も排除されず、これにより粘度が有効に緩和することができる。例えば、例示にすぎないが、組成物は以下の内の1つまたは複数を含んでよい:酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートおよびメトキシプロピルアセテート(MPA)などのアルキルアセテート溶媒;n-ブチルプロピオネート、およびn-ペンチルプロピオネート等のアルキルプロピオネート系溶媒;コハク酸ジメチル、グルタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル等の二塩基性エステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、およびジエチルカーボネート(DEC)等の(ジ)アルキルカーボネート溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、およびジメトキシエタン等のエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジフェニルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコール-モノメチルエーテル、ジエチレングリコール-モノエチルエーテル、ジエチレングリコール-モノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチリルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;アミド系溶媒、ジメチルアセトアミドおよびN-メチルピロリドン;アセトン、ジイソブチルケトン、イソブチルヘプチルケトン、イソホロン、メチルエチルケトン、メチルn-アミルケトン、およびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン;キシレン;ジフェニルメタン;ジイソプロピルナフタレン;石油留分、例えばSolvesso(登録商標)製品(Exxonから入手可能);およびクロロ炭化水素系溶媒、例えば4-クロロトリフルオロメチルベンゼン、および3,4-ビス(ジクロロ)トリフルオロメチルベンゼン。
【0109】
上記と別に、溶媒および非反応性希釈剤は、組成物の総重量に基づいて、全体で15重量%未満、特に10重量%未満を構成することが好ましい。
【0110】
方法および適用
定義した2成分(2K)硬化性組成物を形成するには、反応性成分を合わせて、その硬化を誘発するような方法で混合する。反応性化合物は、均一な混合物を得るために十分な剪断力下で混合すべきである。これは特別な条件または特別な装置を必要とせずに達成できると考えられる。そうは言うものの、適切な混合装置としては、次のものが挙げられ得る:静的混合装置;磁気撹拌子装置;ワイヤー泡立て装置;オーガー;バッチミキサー;プラネタリーミキサー;C.W. BrabenderまたはBanburry(登録商標)スタイルのミキサー;およびブレード型ブレンダーおよびロータリーインペラーなどの高剪断ミキサー。
【0111】
一般に2リットル未満の容量が使用される小規模適用の場合、2成分(2K)組成物に好ましいパッケージングは、並列したダブルカートリッジまたは同軸カートリッジであり、その中に2つの管状チャンバー(通常、体積は等しい)が、互いに並んで、または互いの内側に配置され、ピストンで密閉されている。これらのピストンの駆動により、有利には密接に取り付けられた静的または動的ミキサーを介して、部をカートリッジから押し出すことができる。より大容量適用の場合、組成物の2つの成分は、有利にはドラムまたはバケツに保管され得る。この場合、2つの成分は、油圧プレスを介して、特に従動プレートを介して押し出され、パイプラインを介して、2つの成分の十分均一な混合を確実とする混合装置に供給される。いずれにせよ、どのようなパッケージであっても、両方の成分を長期間、理想的には12か月以上保管できるように、成分を気密および防湿のシールで処理することが重要である。
【0112】
本発明に適し得る2部式分注装置および方法の非限定的な例としては、米国特許第6,129,244号および米国特許第8,313,006号に記載されているものが挙げられる。
【0113】
組成物の第1および第2成分は、通常、NCO基と活性水素原子との所望の比を達成する重量で混合されることになる。一例として、前記第1部と前記第2部との重量比は、4:1~1:4、好ましくは2:1~1:2の範囲、例えば1:1であってよい。
【0114】
該当する場合、2成分(2K)硬化性組成物は、初期粘度(混合直後、例えば混合後2分までに測定)が25℃で、200000mPa・s未満、例えば100000mPa.s未満を示すように幅広く調製されるべきである。前記粘度特性とは独立して、または前記粘度特性に加えて、2成分(2K)組成物は、混合およびその後の硬化時に気泡(泡)がないように調製されるべきである。
【0115】
本発明の最も広範なプロセスの態様によれば、上述の組成物は材料層に適用され、その後その場で硬化される。組成物を適用する前に、関連する表面を前処理してそこから異物を除去することが望ましい場合が多い。このステップは、該当する場合、その後の組成物の表面への接着を促進できる。このような処理は当技術分野で知られており、例えば以下のうちの1つまたは複数の使用によって構成される単一または多段階の方法で実施できる:基材に適した酸および場合により酸化剤でのエッチング処理;超音波処理;化学プラズマ処理、コロナ処理、大気プラズマ処理、および火炎プラズマ処理を含むプラズマ処理;水性アルカリ脱脂浴への浸漬;水性洗浄エマルジョンによる処理;アセトン、四塩化炭素、またはトリクロロエチレンなどの洗浄溶剤による処理;好ましくは脱イオン水または脱塩水による水洗。水系アルカリ性脱脂浴が使用される場合、表面に残っている脱脂剤は、基材表面を脱イオン水または脱塩水ですすぐことによって除去することが望ましい。
【0116】
ある実施形態では、好ましくは前処理された基材への本発明のコーティング組成物の接着は、プライマーを適用することによって促進されてよい。実際、プライマー組成物は、不活性な基材上での接着剤組成物の効果的な固定および/または硬化時間を確保するために必要であり得る。当業者は適切なプライマーを選択できるが、プライマーの選択に関する有益な参考文献としては以下が挙げられ、これらに限定されない:米国特許第3,855,040号;米国特許第4,731,146号;米国特許第4,990,281号;米国特許第5,811,473号;英国特許第2502554号明細書;および米国特許第6,852,193号。
【0117】
次いで、組成物を、好ましくは前処理され、必要に応じてプライマー処理された基材の表面に、以下のような従来の適用方法により適用する;ブラッシング;ロールコーティング;ドクターブレードアプリケーション;印刷法;および、エア霧化スプレー、エアアシストスプレー、エアレススプレー、および大量低圧スプレーが含まれるがこれらに限定されないスプレー法。
【0118】
上述のように、本発明は、以下を含む接合構造体を提供する:導電性表面を有する第1の材料層、および導電性表面を有する第2の材料層、ここで上記および添付の特許請求の範囲に定義されている硬化した電気化学的に剥離可能な2成分(2K)接着剤組成物は、前記第1材料層と第2材料層との間に配置されている。このような構造体を製造するために、接着剤組成物を第1および/または第2の材料層の少なくとも1つの内面に適用し、その後、場合により圧力を加えながら、電気化学的に剥離可能な接着剤組成物が2つの層の間に挟まれるように2つの層を接触させる。
【0119】
組成物は、10~500μmの湿潤膜厚で表面に適用されることが推奨される。この範囲内でより薄い層を適用すると、より経済的であり、有害な厚い硬化領域が生じる可能性が低減される。しかしながら、不連続な硬化膜の形成を避けるために、より薄いコーティングまたは層を適用する際には、細心の注意を払う必要がある。
【0120】
適用された本発明の組成物の硬化は、典型的には20~80℃の範囲の温度で起こる。適切な温度は、存在する特定の化合物および所望の硬化速度に依存し、必要に応じて簡単な予備試験を使用して当業者が個々の場合に決定できる。当然、前述の範囲内のより低い温度で硬化することは、通常一般的な周囲温度から混合物を実質的に加熱または冷却する必要がなくなるので有利である。しかしながら、該当する場合、マイクロ波誘導を含む従来の手段を使用して、2成分(2K)組成物のそれぞれの部から形成される混合物の温度を、混合温度および/または適用温度よりも高くしてもよい。
【0121】
本発明は、添付の図面を参照して説明される。
【0122】
図1aは、本発明の第1の実施形態による結合構造体を示す。
【0123】
図1bは、本発明の第2の実施形態による結合構造体を示す。
【0124】
図2aは、第1の実施形態の構造体に電流が流れたときのその構造体の最初の剥離を示す。
【0125】
図2bは、第2の実施形態の構造体に電流が流れたときのその構造体の最初の剥離を示す。
【0126】
添付の図1aに示すように、硬化した接着剤(10)の層が2つの導電性基材(11)の間に配置された結合構造体が提供される。非導電性材料の層(12)を導電性基材(11)上に配置して、図1bに示すように、より複雑な結合構造体を形成してよい。導電性基材(11)の各層は、電池またはAC駆動の直流(DC)源であってよい電源(13)と電気的に接触している。
【0127】
電源(13)の正および負の端子は1つの固定位置に示されているが、当業者であれば、システムの極性を反転できることを当然理解するであろう。
【0128】
2つの導電性基材(11)は、特に次のものによって構成されてよい層の形態で示されている:金属フィルム;金属メッシュまたはグリッド;堆積した金属粒子;内部に配置された導電性要素によって導電性が与えられた樹脂材料;または導電性酸化物層。導電性要素の例としては、銀フィラメント、単層カーボンナノチューブ、および多層カーボンナノチューブが挙げられ得る。例示的な導電性酸化物としては、以下のものが挙げられ得る:インジウムスズオキシド(ITO)などのドープされた酸化インジウム;ドープされた酸化亜鉛;アンチモンスズオキシド;カドミウムスタネート;およびジンクスタネート。導電性材料の選択とは別に、導電性基材(11)が、硬化した接着剤の層(10)との接触が制限されるグリッドまたはメッシュの形態である場合、剥離操作の有効性が低下し得ることを当業者は認識するであろう。
【0129】
各導電性基材(11)間に電圧が印加されると、それらの間に配置された接着剤組成物(10)に電流が供給される。これにより、基材(11)と接着剤組成物との界面で電気化学反応が誘発され、この電気化学反応は、正に帯電または陽極の界面では酸化的であり、負に帯電または陰極の界面では還元であると理解される。この反応は、基材間の接着結合を弱め、基材から剥離性組成物を容易に除去できるようにすると考えられる。
【0130】
図2aおよび図2bに示すように、剥離は、接着剤組成物(10)と正極と電気的に接触している導電性表面(11)との間の正の界面で起こる。基材を分離する前に電流の方向を逆転させることにより、両方の基材界面で接着結合が弱まり得る。
【0131】
しかしながら、接着剤層(10)の組成物は、剥離が正または負の界面のいずれかで、または両方から同時に起こるように調節され得ることに留意されたい。ある実施形態では、陽極界面および陰極界面を形成するために両面に電圧を印加すると、陽極と陰極の両方の接着剤/基板界面で剥離が同時に起こる。代替の実施形態では、組成物が両方の界面で直流に応答しない場合、両方の基材/接着剤界面を同時に剥離するために逆極性を使用してよい。剥離の発生が起こるように各極で十分な合計時間が与えられる限り、電流は任意の適切な波形で印加できる。この点に関して、正弦波、方形波、および三角波が適しており、制御された電圧または制御された電流源から印加してよい。
【0132】
本発明を限定する意図はないが、以下の条件の少なくとも1つ、好ましくは両方が引き起こされる場合、剥離操作は効果的に実行され得ると考えられる:a)0.5~200V、例えば10~100Vの印加電圧;およびb)電圧は1秒~120分間、例えば1秒~60分間印加される。硬化した接着剤からの導電性基材の剥離が、例えば重りやバネなどの力を加えることによって促進される場合、電位を加える必要があるのは数秒程度だけである。
【0133】
以下の実施例は本発明を説明するものであり、本発明の範囲をいかなる方法によっても限定するものではない。
【実施例
【0134】
実施例では以下の材料を使用した。
【0135】
この実施例の配合を以下の表1に記載する。
【表1】
【0136】
第1成分の調製では、すべての構成ポリオール化合物、4-アミノサリチル酸、Basionics BC 01、プロピレンカーボネート、Desmophen 4011Tおよびヒュームドシリカをビーカーに秤量し、バーで撹拌しながら可溶性材料を溶解した。次いで、ゼオライト粉末、ガラスマイクロビーズおよび触媒を加え、混合物をスピードミキサー(1200rpm、1分間)で均質化した。
【0137】
第2成分の調製では、イソシアネートとヒュームドシリカとをスピードミキサー(1200rpm、1分間)で別々に混合した。次いで、第1成分と第2成分とをスピードミキサー(1200rpm、1分間)で撹拌しながら混合した。
【0138】
テスト基材はステンレス鋼(1.4301)で、その表面はアセトンワイプで洗浄されていた。基材は0.1インチの厚さで提供され、引張試験のために6つの2.5cm×10cm(1インチ×4インチ)のサンプルに切断された。引張重ねせん断(TLS)試験は、ASTM D3163-01 Standard Test Method for Determining Strength of Adhesively Bonded Rigid Plastic Lap-Shear Joints in Shear by Tension Loadingに基づいて、室温で実行された。上記の各基材の接合重複領域は2.50cm×1.25cm(1インチ×0.5インチ)で、接合厚さは0.1cm(40ミル)であった。
【0139】
適用された2成分(2K)接着剤組成物は、80℃の温度を120分間適用することによって、重複領域で硬化された。次に、最初の引張試験の前に、接着構造体を30℃、相対湿度55%で一晩保管した。
【0140】
各接着基材について、前記24時間の保管期間の後、接着剤層に70Vの定電位を20分間印加する前と後の両方で引張重ねせん断強度を調査した。平均した結果を以下の表2に示す。
【0141】
【表2】
【0142】
前述の説明および実施例を考慮すると、特許請求の範囲から逸脱することなく同等の変更を行えることが当業者には明らかであろう。
図1a
図1b
図2a
図2b
【国際調査報告】