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特表2024-512708医療パラメータを定量的に決定するためのコンピュータ実装方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】医療パラメータを定量的に決定するためのコンピュータ実装方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 50/00 20180101AFI20240312BHJP
【FI】
G16H50/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560506
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2022058486
(87)【国際公開番号】W WO2022207749
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】21166119.4
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エラントコウスキー, マルシン
(72)【発明者】
【氏名】シミリオン, セドリック
(72)【発明者】
【氏名】チャン シェアラー, ヤン-ピン
(72)【発明者】
【氏名】ガンゼッティ, マルコ
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
(57)【要約】
疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのコンピュータ実装方法が、タッチスクリーンディスプレイを有するモバイルデバイスのユーザに遠位部運動テストを提供することであって、モバイルデバイスのタッチスクリーンディスプレイにテスト画像を表示させることを含む、遠位部運動テストを提供することと、モバイルデバイスのタッチスクリーンディスプレイから入力を受け取ることであって、入力は、第1の指をテスト画像内の第1の点に、第2の指をテスト画像内の第2の点に位置させ、第1の指と第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって第1の点と第2の点とを近づける、ユーザによる試行を表す、入力を受け取ることと、受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することとを含み、(i)抽出したデジタルバイオマーカ特徴データが、医療パラメータであるか、または(ii)本方法が、抽出したデジタルバイオマーカ特徴データから医療パラメータを計算することをさらに含むか、のいずれかである。
【選択図】図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのコンピュータ実装方法であって、
タッチスクリーンディスプレイを有するモバイルデバイスのユーザに遠位部運動テストを提供することであって、
前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイにテスト画像を表示させることを含む、遠位部運動テストを提供することと、
前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイから入力を受け取ることであって、前記入力は、第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによる試行を表す、入力を受け取ることと、
前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することと
を含み、
(i)前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データが、前記医療パラメータであるか、または
(ii)前記方法が、前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データから前記医療パラメータを計算することをさらに含むか
のいずれかである、コンピュータ実装方法。
【請求項2】
前記受け取った入力は、
前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点を表すデータと、
前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点を表すデータと
を含み、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点と、前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点との間の差を含む、請求項1に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記受け取った入力は、
前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第1の指の位置を表すデータと、
前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第2の指の位置を表すデータと
を含み、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第1の指の前記位置と、前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第2の指の前記位置との間の距離を含む、請求項1または2に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記受け取った入力は、
前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点から、前記第1の指が前記タッチスクリーンから離れた時点まで、前記第1の指が辿った第1の経路を表すデータであって、第1の開始点、第1の終了点、および第1の経路長を含むデータと、
前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点から、前記第2の指が前記タッチスクリーンから離れた時点まで、前記第2の指が辿った第2の経路を表すデータであって、第2の開始点、第2の終了点、および第2の経路長を含むデータと
を含み、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、第1の平滑度パラメータを含み、前記第1の平滑度パラメータは、前記第1の経路長と、前記第1の開始点と前記第1の終了点との間の距離との比であり、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、第2の平滑度パラメータを含み、前記第2の平滑度パラメータは、前記第2の経路長と、前記第2の開始点と前記第2の終了点との間の距離との比である、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイから複数の入力を受け取ることであって、前記複数の入力の各々は、前記第1の指を前記テスト画像内の前記第1の点に、前記第2の指を前記テスト画像内の前記第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによるそれぞれの試行を表す、複数の入力を受け取ることと、
前記受け取った複数の入力の各々から、それぞれのデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することにより、対応する複数のデジタルバイオマーカ特徴データを生成することと
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイから複数の入力を受け取ることであって、前記複数の入力の各々は、前記第1の指を前記テスト画像内の前記第1の点に、前記第2の指を前記テスト画像内の前記第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによるそれぞれの試行を表す、複数の入力を受け取ることと、
前記受け取った複数の入力のうちの成功した試行に対応するサブセットを決定することと、
前記受け取った複数の入力のうちの前記決定されたサブセットの各々から、それぞれのデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することにより、対応する複数のデジタルバイオマーカ特徴データを生成することと
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項7】
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データ、または
前記それぞれのデジタルバイオマーカ特徴データのうちの成功した試行に対応する決定されたサブセット
のいずれかから、統計パラメータを導出することをさらに含み、
前記統計パラメータは、
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データの平均、および/または
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データの標準偏差、および/または
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データの尖度、
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データの中央値、
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データのパーセンタイル
を含む、請求項5または6に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項8】
前記受け取った複数の入力は、第1の時間期間と、前記第1の時間期間に続く第2の時間期間とからなる総時間中に受け取られ、
前記受け取った複数の入力は、
前記第1の時間期間において受け取った入力の第1のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第1のサブセットのそれぞれを有する、受け取った入力の第1のサブセットと、
前記第2の時間期間において受け取った入力の第2のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第2のサブセットのそれぞれを有する、受け取った入力の第2のサブセットと
を含み、
前記方法は、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第1のサブセットに対応する第1の統計パラメータを導出することと、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第2のサブセットに対応する第2の統計パラメータを導出することと、
前記第1の統計パラメータと前記第2の統計パラメータとの間の差を計算し、随意により前記差を前記第1の統計パラメータによって除算することによって、疲労パラメータを計算することと
をさらに含む、請求項5~7のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記受け取った複数の入力のうち、前記第1の指および前記第2の指のみが前記タッチスクリーンディスプレイに触れたユーザの試行に対応する第1のサブセットを決定することと、
前記受け取った複数の入力のうち、ただ1本の指または3本以上の指のどちらかが前記タッチスクリーンディスプレイに触れたユーザの試行に対応する第2のサブセットを決定することと
をさらに含み、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、
前記受け取った入力の第1のサブセット内の受け取った入力の数、および/または
前記受け取った入力の第1のサブセットに含まれる受け取った入力の総数の割合
を含む、請求項5~8のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
(a)テスト全体の持続時間にわたる加速度の大きさから導出される統計パラメータ、
(b)前記第1の指、前記第2の指、または両方の指が前記タッチスクリーンディスプレイに触れている期間のみにおける加速度の大きさから導出される統計パラメータ、および
(c)いかなる指も前記タッチスクリーンディスプレイに触れていない期間のみにおける加速度の大きさの統計パラメータ
のうちの1つ以上を含む加速度データを取得すること
をさらに含み、
前記統計パラメータは、
平均、
標準偏差、
中央値、
尖度、および
パーセンタイル
のうちの1つ以上を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
加速度データを取得すること
をさらに含み、
前記加速度データは、
水平度パラメータであって、前記水平度パラメータを決定することは、
複数の時点の各々に関して、
加速度の大きさ、
z方向を前記タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な方向として定義する場合の前記加速度のz成分の大きさ、および
前記加速度のz成分と前記加速度の大きさとの比
を決定すること、および
前記決定された比の前記複数の時点にわたる平均を決定すること
を含む、水平度パラメータ、または
方向安定度パラメータであって、前記方向安定度パラメータを決定することは、
複数の時点の各々に関して、
加速度の大きさ、
z方向を前記タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な方向として定義する場合の前記加速度のz成分の大きさ、および
前記加速度のz成分と前記加速度の値の大きさとの比
を決定すること、および
前記決定された比の前記複数の時点にわたる標準偏差を決定すること
を含む、方向安定度パラメータ
のいずれかを含む、
請求項1~10のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
状態を予測すべき前記疾患は、多発性硬化症であり、前記医療パラメータは、総合障害度スケール(EDSS)値を含み、
状態を予測すべき前記疾患は、脊髄性筋萎縮症であり、前記医療パラメータは、努力肺活量(FVC)値を含み、または
状態を予測すべき前記疾患は、ハンチントン病であり、前記医療パラメータは、総合運動スコア(TMS)値を含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記デジタルバイオマーカ特徴データに少なくとも1つの分析モデルを適用するステップと、
前記少なくとも1つの分析モデルの出力に基づいて前記医療パラメータを決定するステップと
をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記分析モデルは、トレーニング済み機械学習モデルを含む、請求項13に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
前記分析モデルは、回帰モデルであり、前記トレーニング済み機械学習モデルは、
深層学習アルゴリズム、
k近傍法(kNN)、
線形回帰、
部分的最小二乗(PLS)、
ランダムフォレスト(RF)、および
エクストラツリー(XT)
というアルゴリズムのうちの1つ以上を備える、請求項14に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項16】
前記分析モデルは、分類モデルであり、前記トレーニング済み機械学習モデルは、
深層学習アルゴリズム、
k近傍法(kNN)、
サポートベクターマシン(SVM)、
線形判別分析、
二次判別分析(QDA)、
ナイーブベイズ(NB)、
ランダムフォレスト(RF)、および
エクストラツリー(XT)
というアルゴリズムのうちの1つ以上を備える、請求項15に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項17】
疾患の状態または進行を判断するコンピュータ実装方法であって、
請求項1~16のいずれか一項に記載のコンピュータ実装方法を実行することと、
決定された医療パラメータに基づいて前記疾患の状態または進行を判断することと
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項18】
疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのシステムであって、
タッチスクリーンディスプレイ、ユーザ入力インターフェース、および第1の処理ユニットを有するモバイルデバイスと、
第2の処理ユニットと
を含み、
前記モバイルデバイスは、前記モバイルデバイスのユーザに遠位部運動テストを提供するように構成され、前記遠位部運動テストを提供することは、
前記第1の処理ユニットが前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイにテスト画像を表示させること
を含み、
前記ユーザ入力インターフェースは、前記タッチスクリーンディスプレイから、第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによる試行を表す入力を受け取るように構成され、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出するように構成される、システム。
【請求項19】
疾患の状態または進行を判断するためのシステムであって、請求項18に記載のシステムを備え、前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データに基づいて前記疾患の状態または進行を判断するようにさらに構成される、システム。
【請求項20】
疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのコンピュータ実装方法であって、
モバイルデバイスから入力を受け取ることであって、前記入力は、
加速度計からの加速度データを含み、前記加速度データは、複数の点を含み、各点は、それぞれの時点における加速度に対応している、入力を受け取ることと、
前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することであって、
前記複数の点の各々について、前記それぞれの時点における前記加速度の大きさ全体と前記加速度のz成分の大きさとの比を決定すること、および
前記複数の決定された比から、平均、標準偏差、パーセンタイル、中央値、および尖度を含む統計パラメータを導出することと
を含む、デジタルバイオマーカ特徴データを抽出することと
を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項21】
疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのシステムであって、
加速度計と、第1の処理ユニットとを有するモバイルデバイスと、
第2の処理ユニットと
を含み、
前記加速度計は、加速度を測定するように構成され、前記加速度計、前記第1の処理ユニット、または前記第2の処理ユニットのいずれかが、複数の点を含む加速度データであって、各点がそれぞれの時点における加速度に対応している加速度データを生成するように構成され、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
前記複数の点の各々について、前記それぞれの時点における前記加速度の大きさ全体と前記加速度のz成分の大きさとの比を決定すること、および
前記複数の決定された比から、平均、標準偏差、パーセンタイル、中央値、および尖度を含む統計パラメータを導出すること
によって、受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出するように構成される、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、疾患のデジタル評価の分野に関する。とくには、本発明は、疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのコンピュータ実装方法およびシステムに関する。コンピュータ実装方法およびシステムを、多発性硬化症を表す総合障害度スケール(EDSS)、脊髄性筋萎縮症を表す努力肺活量、またはハンチントン病を表す総合運動スコア(TMS)を決定するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
背景技術
疾患、とりわけ神経疾患は、疾患の管理のために強力な診断手段を必要とする。疾患の発症後に、これらの疾患は、典型的には進行性疾患であり、正確な状態を判断するために病期分類システムによって評価される必要がある。これらの進行性神経疾患の中でも、顕著な例として、多発性硬化症(MS)、ハンチントン病(HD)、および脊髄性筋萎縮症(SMA)が存在する。
【0003】
現時点において、そのような疾患の病期分類は、多大な労力を必要とし、患者にとって、病院または医院の医療専門家を訪れる必要があり、面倒である。さらに、病期分類は、医療専門家において経験を必要とし、多くの場合に主観的であり、個人的な経験および判断に基づく。それにもかかわらず、疾患の病期分類からのパラメータであって、疾患の管理にとくに有用ないくつかのパラメータが存在する。さらに、SMAなどにおいて、努力肺活量などの臨床的に重要なパラメータを特殊な機器、すなわち肺活量測定装置によって明らかにする必要がある他の場合が存在する。
【0004】
これらの場合の全てについて、代用物を明らかにすることが有用となり得る。適切な代用物として、病期分類システムに相関させることが可能であり、あるいは医療パラメータの代用マーカとすることが可能である生物学的機能のパフォーマンスパラメータを明らかにすることを目的とするテストからのパフォーマンスパラメータなどのバイオマーカ、とりわけデジタル的に取得されるバイオマーカが挙げられる。
【0005】
スコアまたは他の医療パラメータなどの関心対象の実際の医療パラメータの間の相関を、さまざまな方法によってデータから導出することができる。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
本発明の第1の態様は、疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのコンピュータ実装方法を提供し、このコンピュータ実装方法は、タッチスクリーンディスプレイを有するモバイルデバイスのユーザに遠位部運動テストを提供することであって、前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイにテスト画像を表示させることを含む、遠位部運動テストを提供することと;前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイから入力を受け取ることであって、入力は、第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによる試行を表す、入力を受け取ることと;前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することと;を含み、(i)前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データが、前記医療パラメータであるか、または(ii)本方法が、前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データから前記医療パラメータを計算することをさらに含むか、のいずれかである。
【0007】
本発明の第2の態様は、疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのシステムを提供し、このシステムは、タッチスクリーンディスプレイ、ユーザ入力インターフェース、および第1の処理ユニットを有するモバイルデバイスと、第2の処理ユニットとを含み、前記モバイルデバイスは、前記モバイルデバイスのユーザに遠位部運動テストを提供するように構成され、前記遠位部運動テストを提供することは、前記第1の処理ユニットが前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイにテスト画像を表示させることを含み、前記ユーザ入力インターフェースは、前記タッチスクリーンディスプレイから、第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによる試行を表す、入力を受け取るように構成され、前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出するように構成される。
【0008】
本発明の第3の態様は、疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのコンピュータ実装方法を提供し、このコンピュータ実装方法は、モバイルデバイスから入力を受け取ることであって、前記入力は、加速度計からの加速度データを含み、前記加速度データは、複数の点を含み、各点は、それぞれの時点における加速度に対応している、入力を受け取ることと、前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することと、を含み、前記デジタルバイオマーカ特徴データを抽出することは、前記複数の点の各々について、前記それぞれの時点における前記加速度の大きさ全体と前記加速度のz成分の大きさとの比を決定することと、前記複数の決定された比から、平均、標準偏差、パーセンタイル、中央値、および尖度を含む統計パラメータを導出することと、を含む。
【0009】
本発明の第4の態様は、疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのシステムを提供し、このシステムは、加速度計および第1の処理ユニットを有するモバイルデバイスと、第2の処理ユニットとを含み、前記加速度計は、加速度を測定するように構成され、前記加速度計、前記第1の処理ユニット、または前記第2の処理ユニットのいずれかが、複数の点を含む加速度データであって、各点がそれぞれの時点における加速度に対応している加速度データを生成するように構成され、前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記複数の点の各々について、前記それぞれの時点における前記加速度の大きさ全体と前記加速度のz成分の大きさとの比を決定すること、および前記複数の決定された比から、平均、標準偏差、パーセンタイル、中央値、および尖度を含む統計パラメータを導出することによって、前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出するように構成される。
【0010】
以下で使用されるとき、用語「・・・を有する」、「・・・を備える」、または「・・・を含む」、あるいはこれらの任意の文法的変種は、非排他的なやり方で使用される。したがって、これらの用語は、これらの用語によって導入される特徴の他に、この文脈において説明されるエンティティにさらなる特徴が存在しない状況、および1つ以上のさらなる特徴が存在する状況の両方を指すことができる。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」、および「AはBを含む」という表現は、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、AがもっぱらBのみからなる状況)、および、B以外に、要素C、要素CおよびD、あるいはまたさらなる要素などの1つ以上のさらなる要素がエンティティAに存在する状況の両方を指すことができる。
【0011】
さらに、特徴または要素が1回または複数回存在してもよいことを示す「少なくとも1つの」または「1つ以上の」という用語あるいは同様の表現が、典型的には、それぞれの特徴または要素を導入する場合に一度だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴または要素に言及する場合に、「少なくとも1つの」または「1つ以上の」という表現を、それぞれの特徴または要素が1回または複数回存在してもよいという事実にもかかわらず、繰り返さない。
【0012】
さらに、以下で使用されるとき、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「とくには」、「より詳しくは」、「具体的には」、「より具体的には」、または同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、随意による特徴と共に使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、随意による特徴であり、特許請求の範囲の技術的範囲をいかなるやり方でも限定することを意図していない。本発明は、当業者であれば理解できるとおり、代替の特徴を使用することによって実行されてもよい。同様に、「本発明の実施形態において」という表現または同様の表現によって導入される特徴は、随意による特徴であるように意図され、本発明の他の実施形態に関していかなる制限も伴わず、本発明の技術的範囲に関していかなる制限も伴わず、そのようなやり方で導入される特徴を本発明の他の随意による特徴または随意ではない特徴と組み合わせる可能性に関していかなる制限も伴わない。
【0013】
要約すると、さらなる実施形態が可能であることを排除することなく、以下の実施形態を想定することができる。
【0014】
実施形態1:疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのコンピュータ実装方法であって、
タッチスクリーンディスプレイを有するモバイルデバイスのユーザに遠位部運動テストを提供することであって、
前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイにテスト画像を表示させることを含む、遠位部運動テストを提供することと、
前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイから入力を受け取ることであって、前記入力は、第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによる試行を表す、入力を受け取ることと、
前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することと
を含む、コンピュータ実装方法。
【0015】
実施形態2:前記第1の点および前記第2の点は、前記テスト画像内で指定および/または識別される、実施形態1に記載のコンピュータ実装方法。
【0016】
実施形態3:前記第1の点は、前記テスト画像内で指定されず、前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイに触れた点として定義され、
前記第2の点は、前記テスト画像内で指定されず、前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイに触れた点として定義される、実施形態1に記載のコンピュータ実装方法。
【0017】
実施形態4:前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データが、前記医療パラメータである、実施形態1~3のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0018】
実施形態5:前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データから前記医療パラメータを計算することをさらに含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0019】
実施形態6:前記受け取った入力は、
前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点を表すデータと、
前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点を表すデータと
を含む、実施形態1~5のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0020】
実施形態7:前記デジタルバイオマーカ特徴データは、前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点と、前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点との間の差を含む、実施形態6に記載のコンピュータ実装方法。
【0021】
実施形態8:前記受け取った入力は、
前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点を表すデータと、
前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点を表すデータと
を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0022】
実施形態9:前記デジタルバイオマーカ特徴データは、前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点と、前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点との間の差を含む、実施形態8に記載のコンピュータ実装方法。
【0023】
実施形態10:前記デジタルバイオマーカ特徴データは、
前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点および前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点の早い方と、
前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点および前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点の遅い方と
の間の差を含む、実施形態8または9に記載のコンピュータ実装方法。
【0024】
実施形態11:前記受け取った入力は、
前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第1の指の位置を表すデータと、
前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第2の指の位置を表すデータと
を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0025】
実施形態12:前記デジタルバイオマーカ特徴データは、前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第1の指の位置と、前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第2の指の位置との間の距離を含む、実施形態11に記載のコンピュータ実装方法。
【0026】
実施形態13:前記受け取った入力は、
前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点から、前記第1の指が前記タッチスクリーンから離れた時点まで、前記第1の指が辿った第1の経路を表すデータであって、第1の開始点、第1の終了点、および第1の経路長を含むデータと、
前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点から、前記第2の指が前記タッチスクリーンから離れた時点まで、前記第2の指が辿った第2の経路を表すデータであって、第2の開始点、第2の終了点、および第2の経路長を含むデータと
を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0027】
実施形態14:前記デジタルバイオマーカ特徴データは、第1の平滑度パラメータを含み、前記第1の平滑度パラメータは、前記第1の経路長と、前記第1の開始点と前記第1の終了点との間の距離との比であり、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、第2の平滑度パラメータを含み、前記第2の平滑度パラメータは、前記第2の経路長と、前記第2の開始点と前記第2の終了点との間の距離との比である、実施形態13に記載のコンピュータ実装方法。
【0028】
実施形態15:前記方法は、
前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイから複数の入力を受け取ることであって、前記複数の入力の各々は、第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによるそれぞれの試行を表す、複数の入力を受け取ることと、
前記受け取った複数の入力の各々から、それぞれのデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することにより、対応する複数のデジタルバイオマーカ特徴データを生成することと
を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0029】
実施形態16:前記方法は、
前記それぞれのデジタルバイオマーカ特徴データのうちの成功した試行に対応するサブセットを決定することをさらに含む、実施形態15に記載のコンピュータ実装方法。
【0030】
本発明の目的は、簡単なモバイルデバイスに基づくテストを使用して、ユーザの運動制御に影響を及ぼす疾患の進行を判定することである。これに鑑み、テストの成功は、どの程度ユーザがタッチスクリーンディスプレイの表面から指を持ち上げることなく第1の点と第2の点とをうまく近づけることができるかに依存する。試行が成功したか否かを判定するステップは、好ましくは、第1の指がタッチスクリーンディスプレイから離れた位置と、第2の指がタッチスクリーンディスプレイから離れた位置との間の距離を明らかにすることを含む。この距離が所定のしきい値を下回る試行を、成功した試行と定義することができる。あるいは、試行が成功したか否かを判定するステップは、第1の点の初期位置と第2の点の初期位置との間の中間点から、第1の指がタッチスクリーンディスプレイから離れた位置までの距離、および第1の点の初期位置と第2の点の初期位置との間の中間点から、第2の指がタッチスクリーンディスプレイから離れた位置までの距離を明らかにすることを含んでもよい。2つの距離の平均が所定のしきい値を下回る試行、あるいは両方の距離が所定のしきい値を下回る試行を、成功した試行と定義することができる。
【0031】
実施形態17:前記方法は、
前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイから複数の入力を受け取ることであって、前記複数の入力の各々は、第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによるそれぞれの試行を表す、複数の入力を受け取ることと、
前記受け取った複数の入力のうちの成功した試行に対応するサブセットを決定することと、
前記受け取った複数の入力のうちの前記決定されたサブセットの各々から、それぞれのデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することにより、対応する複数のデジタルバイオマーカ特徴データを生成することと
を含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0032】
実施形態18:前記方法は、
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データ、または
前記それぞれのデジタルバイオマーカ特徴データのうちの成功した試行に対応する前記決定されたサブセット
のいずれかから、統計パラメータを導出すること
をさらに含む、実施形態15~17のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0033】
実施形態19:前記統計パラメータは、
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データの平均、および/または
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データの標準偏差、および/または
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データの尖度、
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データの中央値、
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データのパーセンタイル
を含む、実施形態18に記載のコンピュータ実装方法。
【0034】
前記パーセンタイルは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、33%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、66%、67%、70%、75%、80%、85%、90%、95%であってよい。
【0035】
実施形態20:前記受け取った複数の入力は、第1の時間期間と、前記第1の時間期間に続く第2の時間期間とからなる総時間中に受け取られ、
前記受け取った複数の入力は、
前記第1の時間期間において受け取った入力の第1のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第1のサブセットのそれぞれを有する、受け取った入力の第1のサブセットと、
前記第2の時間期間において受け取った入力の第2のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第2のサブセットのそれぞれを有する、受け取った入力の第2のサブセットと
を含み、
前記方法は、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第1のサブセットに対応する第1の統計パラメータを導出することと、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第2のサブセットに対応する第2の統計パラメータを導出することと、
前記第1の統計パラメータと前記第2の統計パラメータとの間の差を計算し、随意により前記差を前記第1の統計パラメータによって除算することによって、疲労パラメータを計算することと
をさらに含む、実施形態14~19のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0036】
実施形態21:前記第1の時間期間と前記第2の時間期間とが、同じ持続時間である、実施形態20に記載のコンピュータ実装方法。
【0037】
実施形態22:前記受け取った複数の入力は、
利き手の第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、利き手の第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記利き手の第1の指と前記利き手の第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づけるユーザによる試行を各々が表している受け取った入力の第1のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちのそれぞれの第1のサブセットを有する受け取った入力の第1のサブセットと、
非利き手の第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、非利き手の第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記非利き手の第1の指と前記非利き手の第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づけるユーザによる試行を各々が表している受け取った入力の第2のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちのそれぞれの第2のサブセットを有する受け取った入力の第2のサブセットと
を含み、
前記方法は、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第1のサブセットに対応する第1の統計パラメータを導出することと、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第2のサブセットに対応する第2の統計パラメータを導出することと、
前記第1の統計パラメータと前記第2の統計パラメータとの間の差を計算し、随意により前記差を前記第1の統計パラメータまたは前記第2の統計パラメータによって除算することによって、利き手パラメータを計算することと
をさらに含む、実施形態15~21のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0038】
実施形態23:前記方法は、
前記受け取った複数の入力のうち、前記第1の指および前記第2の指のみが前記タッチスクリーンディスプレイに触れたユーザの試行に対応する第1のサブセットを決定することと、
前記受け取った複数の入力のうち、ただ1つの指または3つ以上の指のどちらかが前記タッチスクリーンディスプレイに触れたユーザの試行に対応する第2のサブセットを決定することと
をさらに含み、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、
前記受け取った入力の第1のサブセット内の受け取った入力の数、および/または
前記受け取った入力の第1のサブセットに含まれる受け取った入力の総数の割合
を含む、実施形態15~22のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0039】
実施形態24:前記受け取った複数の入力のうちの各々の受け取った入力は、
前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点を表すデータと、
前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点を表すデータと、
前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点を表すデータと、
前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点を表すデータと
を含み、
前記方法は、入力の連続ペアの各々について、
受け取った入力の第1の連続ペアにおける前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点および前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点の遅い方と、
受け取った入力の第2の連続ペアにおける前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点および前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点の早い方と
の間の時間間隔を決定することをさらに含み、
前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データは、
前記決定した時間間隔のセット、
前記決定した時間間隔の平均、
前記決定した時間間隔の標準偏差、および/または
前記決定した時間間隔の尖度
を含む、実施形態15~23のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0040】
実施形態25:加速度データを取得することをさらに含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0041】
実施形態26:前記加速度データは、
(a)テスト全体の持続時間にわたる加速度の大きさから導出される統計パラメータ、
(b)前記第1の指、前記第2の指、または両方の指が前記タッチスクリーンディスプレイに触れている期間のみにおける加速度の大きさから導出される統計パラメータ、および
(c)いかなる指も前記タッチスクリーンディスプレイに触れていない期間のみにおける加速度の大きさの統計パラメータ
のうちの1つ以上を含む、実施形態25に記載のコンピュータ実装方法。
【0042】
実施形態27:前記統計パラメータは、
平均、
標準偏差、
中央値、
尖度、および
パーセンタイル
のうちの1つ以上を含む、実施形態20に記載のコンピュータ実装方法。
【0043】
実施形態28:前記加速度データは、z軸偏差パラメータを含み、前記z軸偏差パラメータの決定は、
複数の時点の各々について、前記加速度のz成分の大きさを決定し、全ての時点にわたる前記加速度のz成分の標準偏差を計算することを含み、前記z方向は、前記タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な方向として定義される、実施形態25~27のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0044】
実施形態29:前記加速度データは、標準偏差ノルムパラメータを含み、前記標準偏差ノルムパラメータの決定は、
複数の時点の各々について、前記加速度のx成分の大きさを決定し、全ての時点にわたる前記加速度のx成分の標準偏差を計算することと、
複数の時点の各々について、前記加速度のy成分の大きさを決定し、全ての時点にわたる前記加速度のy成分の標準偏差を計算することと、
複数の時点の各々について、前記加速度のz成分の大きさを決定し、全ての時点にわたる前記加速度のz成分の標準偏差を計算することであって、前記z方向は、前記タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な方向として定義される、標準偏差を計算することと、
前記x成分、前記y成分、および前記z成分のそれぞれの標準偏差のノルムを、それらを求積にて加算することによって計算することと
を含む、実施形態25~28のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0045】
実施形態30:前記加速度データは、水平度パラメータを含み、
前記水平度パラメータを決定することは、
複数の時点の各々に関して、
前記加速度の大きさと、
z方向を前記タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な方向として定義する場合の前記加速度のz成分の大きさと、
前記加速度のz成分と前記加速度の大きさとの比と
を決定すること、および
前記決定された比の前記複数の時点にわたる平均を決定すること
を含む、実施形態25~29のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0046】
実施形態31:前記加速度データは、方向安定度パラメータを含み、
前記方向安定度パラメータを決定することは、
複数の時点の各々に関して、
前記加速度の大きさと、
z方向を前記タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な方向として定義する場合の前記加速度のz成分の大きさと、
前記加速度のz成分と前記加速度の大きさとの比と
を決定すること、および
前記決定された比の前記複数の時点にわたる標準偏差を決定すること
を含む、実施形態25~30のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0047】
実施形態32:前記デジタルバイオマーカ特徴データまたは前記デジタルバイオマーカ特徴データから導出された統計パラメータに、少なくとも1つの分析モデルを適用することと、
前記少なくとも1つの分析モデルの出力に基づいて前記少なくとも1つの医療パラメータの値を予測することと
をさらに含む、実施形態1~31のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0048】
実施形態33:前記分析モデルは、トレーニング済み機械学習モデルを含む、実施形態32に記載のコンピュータ実装方法。
【0049】
実施形態34:前記分析モデルは、回帰モデルであり、前記トレーニング済み機械学習モデルは、
深層学習アルゴリズム、
k近傍法(kNN)、
線形回帰、
部分的最小二乗(PLS)、
ランダムフォレスト(RF)、および
エクストラツリー(XT)
というアルゴリズムのうちの1つ以上を備える、実施形態33に記載のコンピュータ実装方法。
【0050】
実施形態35:前記分析モデルは、分類モデルであり、前記トレーニング済み機械学習モデルは、
深層学習アルゴリズム、
k近傍法(kNN)、
サポートベクターマシン(SVM)、
線形判別分析、
二次判別分析(QDA)、
ナイーブベイズ(NB)、
ランダムフォレスト(RF)、および
エクストラツリー(XT)
というアルゴリズムのうちの1つ以上を備える、実施形態33に記載のコンピュータ実装方法。
【0051】
実施形態36:状態を予測すべき前記疾患は、多発性硬化症であり、前記医療パラメータは、総合障害度スケール(EDSS)値を含み、
状態を予測すべき前記疾患は、脊髄性筋萎縮症であり、前記医療パラメータは、努力肺活量(FVC)値を含み、または
状態を予測すべき前記疾患は、ハンチントン病であり、前記医療パラメータは、総合運動スコア(TMS)値を含む、
実施形態1~35のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0052】
実施形態37:前記少なくとも1つの分析モデルを決定することをさらに含み、前記少なくとも1つの分析モデルを決定することは、
(a)少なくとも1つの通信インターフェースを介して入力データを受け取ることであって、前記入力データは、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットを含み、前記履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットは、予測すべき疾患の状態を表す複数の測定値を含む、受け取ることと、
(b)前記入力データセットから、少なくとも1つのトレーニング用データセットおよび少なくとも1つのテストデータセットを決定することと、
(c)前記トレーニング用データセットで少なくとも1つのアルゴリズムを備えている機械学習モデルをトレーニングすることによって、前記分析モデルを決定することと、
(d)前記決定した分析モデルを使用し、前記テストデータセットに基づいて前記医療パラメータを予測することと、
(e)前記予測した目標変数および前記テストデータセットの前記医療パラメータの真の値に基づいて、前記決定した分析モデルのパフォーマンスを判断することと
を含む、実施形態1~36のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0053】
実施形態38:ステップ(c)において、複数の分析モデルが、前記トレーニング用データセットで複数の機械学習モデルをトレーニングすることによって決定され、前記機械学習モデルは、それらのアルゴリズムによって区別され、ステップ(d)において、複数の医療パラメータが、前記決定した分析モデルを使用して前記テストデータセットに基づいて予測され、
ステップ(e)において、前記決定した分析モデルの各々のパフォーマンスが、前記予測した目標変数および前記テストデータセットの前記医療パラメータの真の値に基づいて判断され、前記方法は、最良のパフォーマンスを有する分析モデルを決定することをさらに含む、実施形態37に記載のコンピュータ実装方法。
【0054】
実施形態39:疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのシステムであって、
タッチスクリーンディスプレイ、ユーザ入力インターフェース、および第1の処理ユニットを有するモバイルデバイスと、
第2の処理ユニットと
を含み、
前記モバイルデバイスは、前記モバイルデバイスのユーザに遠位部運動テストを提供するように構成され、
前記遠位部運動テストを提供することは、
前記第1の処理ユニットが前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイにテスト画像を表示させること
を含み、
前記ユーザ入力インターフェースは、前記タッチスクリーンディスプレイから、第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによる試行を表す、入力を受け取るように構成され、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出するように構成される、システム。
【0055】
実施形態40:前記第1の点および前記第2の点は、前記テスト画像内で指定および/または識別される、実施形態39に記載のシステム。
【0056】
実施形態41:前記第1の点は、前記テスト画像内で指定されず、前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイに触れた点として定義され、
前記第2の点は、前記テスト画像内で指定されず、前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイに触れた点として定義される、実施形態39に記載のシステム。
【0057】
実施形態42:前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データが、前記医療パラメータである、実施形態39~41のいずれか1つに記載のシステム。
【0058】
実施形態43:前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データから前記医療パラメータを計算するように構成される、実施形態39~41のいずれか1つに記載のシステム。
【0059】
実施形態44:前記受け取った入力は、
前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点を表すデータと、
前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点を表すデータと
を含む、実施形態39~43のいずれか1つに記載のシステム。
【0060】
実施形態45:
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点と、前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点との間の差を含む、実施形態44に記載のシステム。
【0061】
実施形態46:前記受け取った入力は、
前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点を表すデータと、
前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点を表すデータと
を含む、実施形態39~45のいずれか1つに記載のシステム。
【0062】
実施形態47:前記デジタルバイオマーカ特徴データは、前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点と、前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点との間の差を含む、実施形態46に記載のシステム。
【0063】
実施形態48:前記デジタルバイオマーカ特徴データは、
前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点および前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点の早い方と、
前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点および前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点の遅い方と
の間の差を含む、実施形態46または47に記載のシステム。
【0064】
実施形態49:前記受け取った入力は、
前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第1の指の位置を表すデータと、
前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第2の指の位置を表すデータと
を含む、実施形態39~48のいずれか1つに記載のシステム。
【0065】
実施形態50:前記デジタルバイオマーカ特徴データは、前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第1の指の位置と、前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れたときの前記第2の指の位置との間の距離を含む、実施形態49に記載のシステム。
【0066】
実施形態51:前記受け取った入力は、
前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点から、前記第1の指が前記タッチスクリーンから離れた時点まで、前記第1の指が辿った第1の経路を表すデータであって、第1の開始点、第1の終了点、および第1の経路長を含むデータと、
前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点から、前記第2の指が前記タッチスクリーンから離れた時点まで、前記第2の指が辿った第2の経路を表すデータであって、第2の開始点、第2の終了点、および第2の経路長を含むデータと
を含む、実施形態39~50のいずれか1つに記載のシステム。
【0067】
実施形態52:前記デジタルバイオマーカ特徴データは、第1の平滑度パラメータを含み、前記第1の平滑度パラメータは、前記第1の経路長と、前記第1の開始点と前記第1の終了点との間の距離との比であり、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、第2の平滑度パラメータを含み、前記第2の平滑度パラメータは、前記第2の経路長と、前記第2の開始点と前記第2の終了点との間の距離との比である、実施形態51に記載のシステム。
【0068】
実施形態53:前記ユーザ入力インターフェースは、前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイから複数の入力を受け取るように構成され、前記複数の入力の各々は、第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによるそれぞれの試行を表し、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記受け取った複数の入力の各々から、それぞれのデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することにより、対応する複数のデジタルバイオマーカ特徴データを生成するように構成される、実施形態39~52のいずれか1つに記載のシステム。
【0069】
実施形態54:前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記それぞれのデジタルバイオマーカ特徴データのうちの成功した試行に対応するサブセットを決定するように構成される、実施形態53に記載のシステム。
【0070】
実施形態55:前記ユーザ入力インターフェースは、前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイから複数の入力を受け取るように構成され、前記複数の入力の各々は、第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記第1の指と前記第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づける、ユーザによるそれぞれの試行を表し、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
前記受け取った複数の入力のうちの成功した試行に対応するサブセットを決定し、
前記受け取った複数の入力のうちの前記決定されたサブセットの各々から、それぞれのデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することにより、対応する複数のデジタルバイオマーカ特徴データを生成する
ように構成される、実施形態39~52のいずれか1つに記載のシステム。
【0071】
実施形態56:前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データ、または
前記それぞれのデジタルバイオマーカ特徴データのうちの成功した試行に対応する前記決定されたサブセット
のいずれかから、統計パラメータを導出するように構成される、実施形態53~55のいずれか1つに記載のシステム。
【0072】
実施形態57:前記統計パラメータは、
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データの平均、および/または
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データの標準偏差、および/または
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データの尖度
を含む、実施形態56に記載のシステム。
【0073】
実施形態58:前記受け取った複数の入力は、第1の時間期間と、前記第1の時間期間に続く第2の時間期間とからなる総時間中に受け取られ、
前記受け取った複数の入力は、
前記第1の時間期間において受け取った入力の第1のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第1のサブセットのそれぞれを有する、受け取った入力の第1のサブセットと、
前記第2の時間期間において受け取った入力の第2のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第2のサブセットのそれぞれを有する、受け取った入力の第2のサブセットと
を含み、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第1のサブセットに対応する第1の統計パラメータを導出し、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第2のサブセットに対応する第2の統計パラメータを導出し、
前記第1の統計パラメータと前記第2の統計パラメータとの間の差を計算し、随意により前記差を前記第1の統計パラメータによって除算することによって、疲労パラメータを計算する
ように構成される、実施形態53~57のいずれか1つに記載のシステム。
【0074】
実施形態59:前記第1の時間期間と前記第2の時間期間とが、同じ持続時間である、実施形態58に記載のシステム。
【0075】
実施形態60:前記受け取った複数の入力は、
利き手の第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、利き手の第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記利き手の第1の指と前記利き手の第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づけるユーザによる試行を各々が表している受け取った入力の第1のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちのそれぞれの第1のサブセットを有する受け取った入力の第1のサブセットと、
非利き手の第1の指を前記テスト画像内の第1の点に、非利き手の第2の指を前記テスト画像内の第2の点に位置させ、前記非利き手の第1の指と前記非利き手の第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって前記第1の点と前記第2の点とを近づけるユーザによる試行を各々が表している受け取った入力の第2のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちのそれぞれの第2のサブセットを有する受け取った入力の第2のサブセットと
を含み、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第1のサブセットに対応する第1の統計パラメータを導出し、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第2のサブセットに対応する第2の統計パラメータを導出し、
前記第1の統計パラメータと前記第2の統計パラメータとの間の差を計算し、随意により前記差を前記第1の統計パラメータまたは前記第2の統計パラメータによって除算することによって、利き手パラメータを計算する
ように構成される、実施形態53~59のいずれか1つに記載のシステム。
【0076】
実施形態61:前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
前記受け取った複数の入力のうち、前記第1の指および前記第2の指のみが前記タッチスクリーンディスプレイに触れたユーザの試行に対応する第1のサブセットを決定し、
前記受け取った複数の入力のうち、ただ1つの指または3つ以上の指のどちらかが前記タッチスクリーンディスプレイに触れたユーザの試行に対応する第2のサブセットを決定する
ように構成され、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、
前記受け取った入力の第1のサブセット内の受け取った入力の数、および/または
前記受け取った入力の第1のサブセットに含まれる受け取った入力の総数の割合
を含む、実施形態53~60のいずれか1つに記載のシステム。
【0077】
実施形態62:前記受け取った複数の入力のうちの各々の受け取った入力は、
前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点を表すデータと、
前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点を表すデータと、
前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点を表すデータと、
前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点を表すデータと
を含み、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、入力の連続ペアの各々について、
受け取った入力の第1の連続ペアにおける前記第1の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点および前記第2の指が前記タッチスクリーンディスプレイから離れた時点の遅い方と、
受け取った入力の第2の連続ペアにおける前記第1の指が前記第1の点に最初に触れた時点および前記第2の指が前記第2の点に最初に触れた時点の早い方と
の間の時間間隔を決定するように構成され、
前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データは、
前記決定した時間間隔のセット、
前記決定した時間間隔の平均、
前記決定した時間間隔の標準偏差、および/または
前記決定した時間間隔の尖度
を含む、実施形態53~61のいずれか1つに記載のシステム。
【0078】
実施形態63:前記システムは、前記モバイルデバイスの加速度を測定するように構成された加速度計をさらに備え、
前記第1の処理ユニット、前記第2の処理ユニット、または前記加速度計のいずれかは、前記測定された加速度に基づいて加速度データを生成するように構成される、実施形態39~62のいずれか1つに記載のシステム。
【0079】
実施形態64:前記加速度データは、
(a)テスト全体の持続時間にわたる加速度の大きさから導出される統計パラメータ、
(b)前記第1の指、前記第2の指、または両方の指が前記タッチスクリーンディスプレイに触れている期間のみにおける加速度の大きさから導出される統計パラメータ、および
(c)いかなる指も前記タッチスクリーンディスプレイに触れていない期間のみにおける加速度の大きさの統計パラメータ
のうちの1つ以上を含む、実施形態63に記載のシステム。
【0080】
実施形態65:前記統計パラメータは、
平均、
標準偏差、
中央値、
尖度、および
パーセンタイル
のうちの1つ以上を含む、実施形態64に記載のシステム。
【0081】
実施形態66:前記加速度データは、z軸偏差パラメータを含み、前記z軸偏差パラメータの決定は、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、複数の時点の各々について、前記加速度のz成分の大きさを決定し、全ての時点にわたる前記加速度のz成分の標準偏差を計算することによって、前記z軸偏差パラメータを生成するように構成され、前記z方向は、前記タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な方向として定義される、実施形態63~65のいずれか1つに記載のシステム。
【0082】
実施形態67:前記加速度データは、標準偏差ノルムパラメータを含み、前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
複数の時点の各々について、前記加速度のx成分の大きさを決定し、全ての時点にわたる前記加速度のx成分の標準偏差を計算すること、
複数の時点の各々について、前記加速度のy成分の大きさを決定し、全ての時点にわたる前記加速度のy成分の標準偏差を計算すること、
複数の時点の各々について、前記加速度のz成分の大きさを決定し、全ての時点にわたる前記加速度のz成分の標準偏差を計算することであって、前記z方向は、前記タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な方向として定義される、標準偏差を計算すること、および
前記x成分、前記y成分、および前記z成分のそれぞれの標準偏差のノルムを、それらを求積にて加算することによって計算すること
によって前記標準偏差ノルムパラメータを決定するように構成される、実施形態63~66のいずれか1つに記載のシステム。
【0083】
実施形態68:前記加速度データは、水平度パラメータを含み、前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
複数の時点の各々に関して、
前記加速度の大きさと、
z方向を前記タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な方向として定義する場合の前記加速度のz成分の大きさと、
前記加速度のz成分と前記加速度の大きさとの比と
を決定すること、および
前記決定された比の前記複数の時点にわたる平均を決定すること
によって前記水平度パラメータを決定するように構成される、実施形態63~67のいずれか1つに記載のシステム。
【0084】
実施形態69:前記加速度データは、方向安定度パラメータを含み、前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
複数の時点の各々に関して、
前記加速度の大きさと、
z方向を前記タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な方向として定義する場合の前記加速度のz成分の大きさと、
前記加速度のz成分と前記加速度の大きさとの比と
を決定すること、および
前記決定された比の前記複数の時点にわたる標準偏差を決定すること
によって、前記方向安定度パラメータを決定するように構成される、実施形態63~68のいずれか1つに記載のシステム。
【0085】
実施形態70:前記第2の処理ユニットは、前記デジタルバイオマーカ特徴データまたは前記デジタルバイオマーカ特徴データから導出された統計的パラメータに少なくとも1つの分析モデルを適用し、前記少なくとも1つの分析モデルの出力に基づいて前記少なくとも1つの医療パラメータの値を予測するように構成される、実施形態39~69のいずれか1つに記載のシステム。
【0086】
実施形態71:前記分析モデルは、トレーニング済み機械学習モデルを含む、実施形態70に記載のシステム。
【0087】
実施形態72:前記分析モデルは、回帰モデルであり、前記トレーニング済み機械学習モデルは、
深層学習アルゴリズム、
k近傍法(kNN)、
線形回帰、
部分的最小二乗(PLS)、
ランダムフォレスト(RF)、および
エクストラツリー(XT)
というアルゴリズムのうちの1つ以上を備える、実施形態71に記載のシステム。
【0088】
実施形態73:前記分析モデルは、分類モデルであり、前記トレーニング済み機械学習モデルは、
深層学習アルゴリズム、
k近傍法(kNN)、
サポートベクターマシン(SVM)、
線形判別分析、
二次判別分析(QDA)、
ナイーブベイズ(NB)、
ランダムフォレスト(RF)、および
エクストラツリー(XT)
というアルゴリズムのうちの1つ以上を備える、実施形態71に記載のシステム。
【0089】
実施形態74:状態を予測すべき前記疾患は、多発性硬化症であり、前記医療パラメータは、総合障害度スケール(EDSS)値を含み、
状態を予測すべき前記疾患は、脊髄性筋萎縮症であり、前記医療パラメータは、努力肺活量(FVC)値を含み、または
状態を予測すべき前記疾患は、ハンチントン病であり、前記医療パラメータは、総合運動スコア(TMS)値を含む、
実施形態39~73のいずれか1つに記載のシステム。
【0090】
実施形態75:前記第1の処理ユニットと前記第2の処理ユニットとが、同じ処理ユニットである、実施形態39~74のいずれか1つに記載のシステム。
【0091】
実施形態76:前記第1の処理ユニットは、前記第2の処理ユニットとは別個である、実施形態39~74のいずれか1つに記載のシステム。
【0092】
実施形態77:疾患の状態を表す医療パラメータを予測するための前記少なくとも1つの分析モデルを決定するための機械学習システムをさらに備え、前記機械学習システムは、
入力データを受け取るように構成された少なくとも1つの通信インターフェースであって、前記入力データは、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットを含み、前記履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットは、予測すべき疾患の状態を表す複数の測定値を含む、少なくとも1つの通信インターフェースと、
少なくとも1つのアルゴリズムを備える少なくとも1つの機械学習モデルを含む少なくとも1つのモデルユニットと、
少なくとも1つの処理ユニットと
を備え、
前記処理ユニットは、前記入力データセットから少なくとも1つのトレーニング用データセットおよび少なくとも1つのテストデータセットを決定するように構成され、前記処理ユニットは、前記トレーニング用データセットで前記機械学習モデルをトレーニングすることによって、前記分析モデルを決定するように構成され、前記処理ユニットは、前記決定した分析モデルを使用し、前記テストデータセットの前記医療パラメータを予測するように構成され、前記処理ユニットは、前記予測した医療パラメータおよび前記テストデータセットの前記医療パラメータの真の値に基づいて、前記決定した分析モデルのパフォーマンスを判断するように構成され、前記処理ユニットは、前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットである、実施形態39~76のいずれか1つに記載のシステム。
【0093】
実施形態78:疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのコンピュータ実装方法であって、
モバイルデバイスから入力を受け取ることであって、前記入力は、
加速度計からの加速度データを含み、前記加速度データは、複数の点を含み、各点は、それぞれの時点における加速度に対応している、入力を受け取ることと、
前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することと
を含み、
前記デジタルバイオマーカ特徴データを抽出することは、
前記複数の点の各々について、前記それぞれの時点における前記加速度の大きさ全体と前記加速度のz成分の大きさとの比を決定すること、および
前記複数の決定された比から、平均、標準偏差、パーセンタイル、中央値、および尖度を含む統計パラメータを導出すること
を含む、コンピュータ実装方法。
【0094】
実施形態79:疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのシステムであって、
加速度計および第1の処理ユニットを有するモバイルデバイスと、
第2の処理ユニットと
を含み、
前記加速度計は、加速度を測定するように構成され、前記加速度計、前記第1の処理ユニット、または前記第2の処理ユニットのいずれかが、複数の点を含む加速度データであって、各点がそれぞれの時点における加速度に対応している加速度データを生成するように構成され、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
前記複数の点の各々について、前記それぞれの時点における前記加速度の大きさ全体と前記加速度のz成分の大きさとの比を決定すること、および
前記複数の決定された比から、平均、標準偏差、パーセンタイル、中央値、および尖度を含む統計パラメータを導出する
ことによって、前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出するように構成される、システム。
【0095】
実施形態80:疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのコンピュータ実装方法であって、
タッチスクリーンディスプレイを有するモバイルデバイスのユーザに遠位部運動テストを提供することであって、
前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイに、基準開始点、基準終了点、および前記開始点と前記終了点との間の辿るべき基準経路の指示を含む画像を表示させることを含む、提供することと、
前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイから、前記モバイルデバイスの前記ディスプレイ上の前記基準経路を辿ろうと試行するユーザが辿ったテスト経路を表す入力を受け取ることであって、前記テスト経路は、テスト開始点、テスト終了点、および前記テスト開始点と前記テスト終了点との間の辿ったテスト経路を含む、入力を受け取ることと、
前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することと
を含み、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、
前記テスト終了点と前記基準終了点との間の偏差、
前記テスト開始点と前記基準開始点との間の偏差、および/または
前記テスト開始点と前記基準終了点との間の偏差
を含む、コンピュータ実装方法。
【0096】
実施形態81:前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データが、前記医療パラメータである、実施形態80に記載のシステム。
【0097】
実施形態82:前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データから前記医療パラメータを計算することをさらに含む、実施形態80に記載のコンピュータ実装方法。
【0098】
実施形態83:前記基準開始点は、前記基準終了点と同じであり、前記基準経路は、閉じた経路である、実施形態80~82のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0099】
実施形態84:前記閉じた経路は、正方形、円形、または8の字である、実施形態83に記載のコンピュータ実装方法。
【0100】
実施形態85:前記基準開始点は、前記基準終了点と異なり、前記基準経路は、開いた経路であり、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、前記テスト終了点と前記基準終了点との間の偏差である、
実施形態80~82のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0101】
実施形態86:前記開いた経路は、直線またはらせんである、実施形態85に記載のコンピュータ実装方法。
【0102】
実施形態87:前記方法は、
前記タッチスクリーンディスプレイから複数の入力を受け取ることであって、前記複数の入力の各々は、前記モバイルデバイスの前記ディスプレイ上の前記基準経路を辿ろうと試行するユーザが辿ったそれぞれのテスト経路を表し、前記テスト経路は、テスト開始点、テスト終了点、および前記テスト開始点と前記テスト終了点との間の辿ったテスト経路を含む、複数の入力を受け取ることと、
前記受け取った複数の入力の各々からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することにより、対応する複数のデジタルバイオマーカ特徴データを生成することと
を含み、各々のデジタルバイオマーカ特徴データは、
前記それぞれの受け取った入力に関する前記テスト終了点と前記基準終了点との間の偏差、
前記テスト開始点と前記基準開始点との間の偏差、および/または
前記それぞれの入力に関する前記テスト開始点と前記テスト終了点との間の偏差
を含む、実施形態80~86のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0103】
実施形態88:前記方法は、
前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データから統計パラメータを導出すること
を含む、実施形態87に記載のコンピュータ実装方法。
【0104】
実施形態89:前記統計パラメータは、
平均、
標準偏差、
パーセンタイル、
尖度、および
中央値
のうちの1つ以上を含む、実施形態88に記載のコンピュータ実装方法。
【0105】
実施形態90:前記受け取った複数の入力は、
受け取った入力のうち、利き手を使用して前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイ上の前記基準経路を辿ろうと試行するユーザが辿ったそれぞれのテスト経路を各々が表す第1のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカデータの第1のサブセットのそれぞれを有する、第1のサブセットと、
受け取った入力のうち、非利き手を使用して前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイ上の前記基準経路を辿ろうと試行するユーザが辿ったそれぞれのテスト経路を各々が表す第2のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカデータの第2のサブセットのそれぞれを有する、第2のサブセットと
を含み、
前記方法は、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第1のサブセットに対応する第1の統計パラメータを導出することと、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第2のサブセットに対応する第2の統計パラメータを導出することと、
前記第1の統計パラメータと前記第2の統計パラメータとの間の差を計算し、随意により前記差を前記第1の統計パラメータまたは前記第2の統計パラメータによって除算することによって、利き手パラメータを計算することと
をさらに含む、実施形態87~89のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0106】
実施形態91:前記受け取った複数の入力は、
受け取った入力のうち、前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイ上の前記基準経路を第1の方向に辿ろうと試行するユーザが辿ったそれぞれのテスト経路を各々が表す第1のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカデータのそれぞれの第1のサブセットを有する、第1のサブセットと、
受け取った入力のうち、前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイ上の前記基準経路を前記第1の方向とは反対の第2の方向に辿ろうと試行するユーザが辿ったそれぞれのテスト経路を各々が表す第2のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカデータのそれぞれの第2のサブセットを有する、第2のサブセットと
を含み、
前記方法は、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第1のサブセットに対応する第1の統計パラメータを導出することと、
前記抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データのうちの第2のサブセットに対応する第2の統計パラメータを導出することと、
前記第1の統計パラメータと前記第2の統計パラメータとの間の差を計算し、随意により前記差を前記第1の統計パラメータまたは前記第2の統計パラメータによって除算することによって、方向性パラメータを計算することと
をさらに含む、実施形態87~90のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0107】
実施形態92:前記デジタルバイオマーカ特徴データに少なくとも1つの分析モデルを適用するステップと、
前記少なくとも1つの分析モデルの出力に基づいて前記医療パラメータを決定するステップと
をさらに含む、実施形態80~91のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0108】
実施形態93:前記分析モデルは、トレーニング済み機械学習モデルを含む、実施形態92に記載のコンピュータ実装方法。
【0109】
実施形態94:前記分析モデルは、回帰モデルであり、前記トレーニング済み機械学習モデルは、
深層学習アルゴリズム、
k近傍法(kNN)、
線形回帰、
部分的最小二乗(PLS)、
ランダムフォレスト(RF)、および
エクストラツリー(XT)
というアルゴリズムのうちの1つ以上を備える、実施形態93に記載のコンピュータ実装方法。
【0110】
実施形態95:前記分析モデルは、分類モデルであり、前記トレーニング済み機械学習モデルは、
深層学習アルゴリズム、
k近傍法(kNN)、
サポートベクターマシン(SVM)、
線形判別分析、
二次判別分析(QDA)、
ナイーブベイズ(NB)、
ランダムフォレスト(RF)、および
エクストラツリー(XT)
というアルゴリズムのうちの1つ以上を備える、実施形態93に記載のコンピュータ実装方法。
【0111】
実施形態96:状態を予測すべき前記疾患は、多発性硬化症であり、前記医療パラメータは、総合障害度スケール(EDSS)値を含み、
状態を予測すべき前記疾患は、脊髄性筋萎縮症であり、前記医療パラメータは、努力肺活量(FVC)値を含み、または
状態を予測すべき前記疾患は、ハンチントン病であり、前記医療パラメータは、総合運動スコア(TMS)値を含む、
実施形態80~95のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0112】
実施形態97:前記少なくとも1つの分析モデルを決定することをさらに含み、前記少なくとも1つの分析モデルを決定することは、
(a)少なくとも1つの通信インターフェースを介して入力データを受け取ることであって、前記入力データは、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットを含み、前記履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットは、予測すべき疾患の状態を表す複数の測定値を含む、受け取ることと、
(b)前記入力データセットから、少なくとも1つのトレーニング用データセットおよび少なくとも1つのテストデータセットを決定することと、
(c)前記トレーニング用データセットで少なくとも1つのアルゴリズムを備えている機械学習モデルをトレーニングすることによって、前記分析モデルを決定することと、
(d)前記決定した分析モデルを使用し、前記テストデータセットの前記医療パラメータを予測することと、
(e)前記予測した医療パラメータおよび前記テストデータセットの前記医療パラメータの真の値に基づいて、前記決定した分析モデルのパフォーマンスを判断することと
を含む、実施形態80~96のいずれか1つに記載のコンピュータ実装方法。
【0113】
実施形態98:ステップ(c)において、複数の分析モデルが、前記トレーニング用データセットで複数の機械学習モデルをトレーニングすることによって決定され、前記機械学習モデルは、それらのアルゴリズムによって区別され、ステップ(d)において、複数の医療パラメータが、前記決定した分析モデルを使用して前記テストデータセットに基づいて予測され、
ステップ(e)において、前記決定した分析モデルの各々のパフォーマンスが、前記予測した医療パラメータおよび前記テストデータセットの前記医療パラメータの真の値に基づいて判断され、前記方法は、最良のパフォーマンスを有する分析モデルを決定することをさらに含む、実施形態97に記載のコンピュータ実装方法。
【0114】
実施形態99:疾患の状態または進行を表す医療パラメータを定量的に決定するためのシステムであって、
タッチスクリーンディスプレイ、ユーザ入力インターフェース、および第1の処理ユニットを有するモバイルデバイスと、
第2の処理ユニットと
を含み、
前記モバイルデバイスは、前記モバイルデバイスのユーザに遠位部運動テストを提供するように構成され、
前記遠位部運動テストを提供することは、
前記第1の処理ユニットが、前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイに、基準開始点、基準終了点、および前記開始点と前記終了点との間の辿るべき基準経路の指示を含む画像を表示させることを含み、
前記ユーザ入力インターフェースは、前記タッチスクリーンディスプレイから、前記モバイルデバイスの前記ディスプレイ上の前記基準経路を辿ろうと試行するユーザが辿ったテスト経路を表す入力を受け取るように構成され、前記テスト経路は、テスト開始点、テスト終了点、および前記テスト開始点と前記テスト終了点との間の辿ったテスト経路を含み、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出するように構成され、前記デジタルバイオマーカ特徴データは、
前記テスト終了点と前記基準終了点との間の偏差、および/または
前記テスト開始点と前記テスト終了点との間の偏差
を含む、システム。
【0115】
実施形態100:前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データが、前記医療パラメータである、実施形態99に記載のシステム。
【0116】
実施形態101:前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記抽出したデジタルバイオマーカ特徴データから前記医療パラメータを計算するように構成される、実施形態99に記載のシステム。
【0117】
実施形態102:前記基準開始点は、前記基準終了点と同じであり、前記基準経路は、閉じた経路である、実施形態99~101のいずれか1つに記載のシステム。
【0118】
実施形態103:前記閉じた経路は、正方形、円形、または8の字である、実施形態102に記載のシステム。
【0119】
実施形態104:前記基準開始点は、前記基準終了点と異なり、前記基準経路は、開いた経路であり、
前記デジタルバイオマーカ特徴データは、前記テスト終了点と前記基準終了点との間の偏差である、
実施形態99~101のいずれか1つに記載のシステム。
【0120】
実施形態105:前記開いた経路は、直線またはらせんである、実施形態104に記載のシステム。
【0121】
実施形態106:前記ユーザ入力インターフェースは、前記タッチスクリーンディスプレイから複数の入力を受け取るように構成され、前記複数の入力の各々は、前記モバイルデバイスの前記ディスプレイ上の前記基準経路を辿ろうと試行するユーザが辿ったそれぞれのテスト経路を表し、前記テスト経路は、テスト開始点、テスト終了点、および前記テスト開始点と前記テスト終了点との間の辿ったテスト経路を含み、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記受け取った複数の入力の各々から、デジタルバイオマーカ特徴データを抽出することにより、対応する複数のデジタルバイオマーカ特徴データを生成するように構成され、デジタルバイオマーカ特徴データの各々は、
前記それぞれの受け取った入力に関する前記テスト終了点と前記基準終了点との間の偏差、
前記テスト開始点と前記基準開始点との間の偏差、および/または
前記それぞれの入力に関する前記テスト開始点と前記テスト終了点との間の偏差
を含む、実施形態99~105のいずれか1つに記載のシステム。
【0122】
実施形態107:前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、前記複数のデジタルバイオマーカ特徴データから統計パラメータを導出するようにさらに構成される、実施形態106に記載のシステム。
【0123】
実施形態108:前記統計パラメータは、
平均、
標準偏差、
パーセンタイル、
尖度、および
中央値
のうちの1つ以上を含む、実施形態107に記載のシステム。
【0124】
実施形態109:前記受け取った複数の入力は、
受け取った入力のうち、利き手を使用して前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイ上の前記基準経路を辿ろうと試行するユーザが辿ったそれぞれのテスト経路を各々が表す第1のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカデータの第1のサブセットのそれぞれを有する、第1のサブセットと、
受け取った入力のうち、非利き手を使用して前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイ上の前記基準経路を辿ろうと試行するユーザが辿ったそれぞれのテスト経路を各々が表す第2のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカデータのそれぞれの第2のサブセットを有する、第2のサブセットと
を含み、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データの前記第1のサブセットに対応する第1の統計パラメータを導出し、
抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データの前記第2のサブセットに対応する第2の統計パラメータを導出し、
前記第1の統計パラメータと前記第2の統計パラメータとの間の差を計算し、随意により前記差を前記第1の統計パラメータまたは前記第2の統計パラメータによって除算することによって、利き手パラメータを計算する
ように構成される、実施形態106~108のいずれか1つに記載のシステム。
【0125】
実施形態110:前記受け取った複数の入力は、
受け取った入力のうち、前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイ上の前記基準経路を第1の方向に辿ろうと試行するユーザが辿ったそれぞれのテスト経路を各々が表す第1のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカデータのそれぞれの第1のサブセットを有する、第1のサブセットと、
受け取った入力のうち、前記モバイルデバイスの前記タッチスクリーンディスプレイ上の前記基準経路を前記第1の方向とは反対の第2の方向に辿ろうと試行するユーザが辿ったそれぞれのテスト経路を各々が表す第2のサブセットであって、抽出されたデジタルバイオマーカデータのそれぞれの第2のサブセットを有する、第2のサブセットと
を含み、
前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットは、
抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データの前記第1のサブセットに対応する第1の統計パラメータを導出し、
抽出されたデジタルバイオマーカ特徴データの前記第2のサブセットに対応する第2の統計パラメータを導出し、
前記第1の統計パラメータと前記第2の統計パラメータとの間の差を計算し、随意により前記差を前記第1の統計パラメータまたは前記第2の統計パラメータによって除算することによって、方向性パラメータを計算する
ように構成される、実施形態106~109のいずれか1つに記載のシステム。
【0126】
実施形態111:前記第2の処理ユニットは、前記デジタルバイオマーカ特徴データまたは前記デジタルバイオマーカ特徴データから導出された統計的パラメータに少なくとも1つの分析モデルを適用し、前記少なくとも1つの分析モデルの出力に基づいて前記少なくとも1つの医療パラメータの値を予測するように構成される、実施形態99~110のいずれか1つに記載のシステム。
【0127】
実施形態112:前記分析モデルは、トレーニング済み機械学習モデルを含む、実施形態111に記載のシステム。
【0128】
実施形態113:前記分析モデルは、回帰モデルであり、前記トレーニング済み機械学習モデルは、
深層学習アルゴリズム、
k近傍法(kNN)、
線形回帰、
部分的最小二乗(PLS)、
ランダムフォレスト(RF)、および
エクストラツリー(XT)
というアルゴリズムのうちの1つ以上を備える、実施形態112に記載のシステム。
【0129】
実施形態114:前記分析モデルは、分類モデルであり、前記トレーニング済み機械学習モデルは、
深層学習アルゴリズム、
k近傍法(kNN)、
サポートベクターマシン(SVM)、
線形判別分析、
二次判別分析(QDA)、
ナイーブベイズ(NB)、
ランダムフォレスト(RF)、および
エクストラツリー(XT)
というアルゴリズムのうちの1つ以上を備える、実施形態112に記載のシステム。
【0130】
実施形態115:状態を予測すべき前記疾患は、多発性硬化症であり、前記医療パラメータは、総合障害度スケール(EDSS)値を含み、
状態を予測すべき前記疾患は、脊髄性筋萎縮症であり、前記医療パラメータは、努力肺活量(FVC)値を含み、または
状態を予測すべき前記疾患は、ハンチントン病であり、前記医療パラメータは、総合運動スコア(TMS)値を含む、
実施形態99~114のいずれか1つに記載のシステム。
【0131】
実施形態116:前記第1の処理ユニットと前記第2の処理ユニットとが、同じ処理ユニットである、実施形態99~115のいずれか1つに記載のシステム。
【0132】
実施形態117:前記第1の処理ユニットは、前記第2の処理ユニットとは別個である、実施形態99~115のいずれか1つに記載のシステム。
【0133】
実施形態118:疾患の状態を表す少なくとも1つの医療パラメータを予測するための前記少なくとも1つの分析モデルを決定するための機械学習システムをさらに備え、前記機械学習システムは、
入力データを受け取るように構成された少なくとも1つの通信インターフェースであって、前記入力データは、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットを含み、前記履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットは、予測すべき疾患の状態を表す複数の測定値を含む、少なくとも1つの通信インターフェースと、
少なくとも1つのアルゴリズムを備える少なくとも1つの機械学習モデルを含む少なくとも1つのモデルユニットと、
少なくとも1つの処理ユニットと
を備え、
前記処理ユニットは、前記入力データセットから少なくとも1つのトレーニング用データセットおよび少なくとも1つのテストデータセットを決定するように構成され、前記処理ユニットは、前記トレーニング用データセットで前記機械学習モデルをトレーニングすることによって、前記分析モデルを決定するように構成され、前記処理ユニットは、前記決定した分析モデルを使用し、前記テストデータセットの前記医療パラメータを予測するように構成され、前記処理ユニットは、前記予測した医療パラメータおよび前記テストデータセットの前記医療パラメータの真の値に基づいて、前記決定した分析モデルのパフォーマンスを判断するように構成され、前記処理ユニットは、前記第1の処理ユニットまたは前記第2の処理ユニットである、実施形態99~117のいずれか1つに記載のシステム。
【0134】
実施形態119:実施形態1~38のいずれか1つに記載のステップ、
実施形態78に記載のステップ、および
実施形態80~98のいずれか1つに記載のステップ
のうちの1つ、2つ、または全てを含む、コンピュータ実装方法。
【0135】
実施形態120:実施形態39~77のいずれか1つに記載のシステム、
実施形態79のシステム、および
実施形態99~118のいずれか1つに記載のシステム
のうちの1つ、2つ、または全てを備える、システム。
【0136】
疾患の状態または進行の予測
上記の開示は、主として、疾患の状態または進行を表す医療パラメータの決定に関する。しかしながら、いくつかの場合に、本発明は、疾患の状態または進行を判断するコンピュータ実装方法を提供することができ、このコンピュータ実装方法は、タッチスクリーンディスプレイを有するモバイルデバイスのユーザに遠位部運動テストを提供することであって、モバイルデバイスのタッチスクリーンディスプレイにテスト画像を表示させることを含む、遠位部運動テストを提供することと;モバイルデバイスのタッチスクリーンディスプレイから入力を受け取ることであって、入力は、第1の指をテスト画像内の第1の点に、第2の指をテスト画像内の第2の点に位置させ、第1の指と第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって第1の点と第2の点とを近づける、ユーザによる試行を表す、入力を受け取ることと;受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することであって、(i)抽出したデジタルバイオマーカ特徴データが、医療パラメータであるか、または(ii)本方法が、抽出したデジタルバイオマーカ特徴データから医療パラメータを計算することをさらに含むか、のいずれかである、デジタルバイオマーカ特徴データを抽出することと;決定した医療パラメータに基づいて疾患の状態または進行を判断することと、を含む。
【0137】
同様に、本発明のさらなる態様は、疾患の状態または進行を判断するためのシステムを提供し、このシステムは、タッチスクリーンディスプレイ、ユーザ入力インターフェース、および第1の処理ユニットを有するモバイルデバイスと、第2の処理ユニットとを含み、モバイルデバイスは、モバイルデバイスのユーザに遠位部運動テストを提供するように構成され、遠位部運動テストを提供することは、第1の処理ユニットがモバイルデバイスのタッチスクリーンディスプレイにテスト画像を表示させることを含み、ユーザ入力インターフェースは、タッチスクリーンディスプレイから、第1の指をテスト画像内の第1の点に、第2の指をテスト画像内の第2の点に位置させ、第1の指と第2の指とを互いに寄せてピンチすることによって第1の点と第2の点とを近づける、ユーザによる試行を表す、入力を受け取るように構成され、第1の処理ユニットまたは第2の処理ユニットは、受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出し、抽出したデジタルバイオマーカ特徴データに基づいて医療パラメータを決定するように構成され、第1の処理ユニットまたは第2の処理ユニットは、決定した医療パラメータに基づいて疾患の状態または進行を判断するように構成される。
【0138】
本発明のさらなる態様は、疾患の状態または進行を判断するためのコンピュータ実装方法を提供することができ、このコンピュータ実装方法は、モバイルデバイスから入力を受け取ることであって、入力は、加速度計からの加速度データを含み、加速度データは、複数の点を含み、各点は、それぞれの時点における加速度に対応している、入力を受け取ることと、受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出することであって、複数の点の各々について、それぞれの時点における加速度の大きさ全体と加速度のz成分の大きさとの比を決定すること、および複数の決定された比から、平均、標準偏差、パーセンタイル、中央値、および尖度を含む統計パラメータを導出することを含む、デジタルバイオマーカ特徴データを抽出することと、決定した統計パラメータに基づいて疾患の状態または進行を判断することと、を含む。
【0139】
本発明のさらなる態様は、疾患の状態または進行を判断するためのシステムを提供し、このシステムは、加速度計および第1の処理ユニットを有するモバイルデバイスと、第2の処理ユニットとを含み、加速度計は、加速度を測定するように構成され、加速度計、第1の処理ユニット、または第2の処理ユニットのいずれかが、複数の点を含む加速度データであって、各点がそれぞれの時点における加速度に対応している加速度データを生成するように構成され、第1の処理ユニットまたは第2の処理ユニットは、複数の点の各々について、それぞれの時点における加速度の大きさ全体と加速度のz成分の大きさとの比を決定すること、および複数の決定された比から、平均、標準偏差、パーセンタイル、中央値、および尖度を含む統計パラメータを導出することによって、受け取った入力からデジタルバイオマーカ特徴データを抽出するように構成され、第1の処理ユニットまたは第2の処理ユニットは、統計パラメータに基づいて疾患の状態または進行を判断するように構成される。
【0140】
ここに記載した本発明の4つの態様の特徴を、明らかに不適合である場合や、文脈からそのようでないことが明らかである場合を除き、上記の任意の「実施形態」の特徴と組み合わせることが可能であることを、明確に理解すべきである。さらに、本発明のこれら2つの態様の特徴を、後続の開示のいずれかと組み合わせることも可能である。
【0141】
本開示のさらなる関連の態様
本発明の関連の態様において、疾患の状態を表す少なくとも1つの目標変数を予測するための少なくとも1つの分析モデルを決定するための機械学習システムが提案される。この機械学習システムは、
- 入力データを受け取るように構成された少なくとも1つの通信インターフェースであって、入力データは、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットを含み、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットは、予測すべき疾患の状態を表す複数の測定値を含む、少なくとも1つの通信インターフェースと、
- 少なくとも1つのアルゴリズムを備える少なくとも1つの機械学習モデルを含む少なくとも1つのモデルユニットと、
- 少なくとも1つの処理ユニットと
を備え、
処理ユニットは、入力データセットから少なくとも1つのトレーニング用データセットおよび少なくとも1つのテストデータセットを決定するように構成され、処理ユニットは、トレーニング用データセットで機械学習モデルをトレーニングすることによって分析モデルを決定するように構成され、処理ユニットは、決定した分析モデルを使用してテストデータセットについて目標変数を予測するように構成され、処理ユニットは、予測した目標変数とテストデータセットの目標変数の真の値とに基づいて、決定した分析モデルのパフォーマンスを判断するように構成される。
【0142】
本明細書において使用されるとき、「機械学習」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、分析モデルの自動的なモデル構築のために人工知能(AI)を使用する方法を指すことができる。本明細書において使用されるとき、「機械学習システム」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、機械学習を行うように構成され、とくには所与のアルゴリズムにおいて論理を実行するように構成されたプロセッサ、マイクロプロセッサ、またはコンピュータシステムなどの少なくとも1つの処理ユニットを備えるシステムを指すことができる。機械学習システムは、少なくとも1つの機械学習アルゴリズムを実施および/または実行するように構成されてよく、機械学習アルゴリズムは、トレーニング用データに基づいて少なくとも1つの分析モデルを構築するように構成される。
【0143】
本明細書において使用されるとき、「分析モデル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの状態変数について少なくとも1つの目標変数を予測するように構成された数学モデルを指すことができる。分析モデルは、回帰モデルまたは分類モデルであってよい。本明細書において使用されるとき、「回帰モデル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、或る範囲内の数値を出力として有する少なくとも1つの教師あり学習アルゴリズムを含む分析モデルを指すことができる。本明細書において使用されるとき、「分類モデル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、「病気」または「健康」などの分類子を出力として有する少なくとも1つの教師あり学習アルゴリズムを含む分析モデルを指すことができる。
【0144】
本明細書において使用されるとき、「目標変数」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、予測すべき臨床値を指すことができる。予測すべき目標変数値は、存在または状態を予測すべき疾患に依存し得る。目標変数は、数値であっても、カテゴリであってもよい。例えば、目標変数は、カテゴリであってよく、疾患が存在する場合の「陽性」または疾患が存在しない場合の「陰性」であってよい。
【0145】
目標変数は、少なくとも1つの値および/または尺度値などの数値であってもよい。
【0146】
例えば、状態を予測すべき疾患は、多発性硬化症である。本明細書において使用されるとき、「多発性硬化症(MS)」という用語は、典型的には、これに罹患している対象者に長期かつ重度の障害を引き起こす中枢神経系(CNS)の疾患に関する。本発明に従って使用されるときのこの用語にやはり包含されるMSの4つの標準的なサブタイプ定義、すなわち再発寛解型、二次進行型、一次進行型、および再発進行型が存在する。再発型のMSという用語も使用され、再発寛解型および再発の重畳を伴う二次性進行型MSを包含する。再発寛解型というサブタイプは、予測不可能な再発と、その後の臨床疾患活動性の新たな徴候がない数ヵ月~数年の寛解期間とを特徴とする。発作(活性状態)の最中に被った欠損は、解消することも、後遺症を残すこともある。これは、MSに罹患している対象者の85~90%の初期経過を表す。二次進行型MSは、初期の再発寛解型MSを有し、その後に、明確な寛解期間を伴わない急性発作間の進行性の神経の衰えが始まった者を表す。時々の再発および軽度の寛解が現れることがある。疾患の発症と再発寛解型MSから二次進行型MSへの転換との間の時間の中央値は、約19年である。一次進行型というサブタイプは、最初のMS症状後に寛解を全く有さない対象者の約10~15%を表す。これは、寛解および改善が存在せず、あるいは時々の軽微な寛解および改善しか存在しない発症からの障害の進行を特徴とする。一次進行型というサブタイプの発症年齢は、他のサブタイプよりも遅い。再発進行型MSは、発症から神経の衰えが継続的に続き、明らかな重畳発作も伴う対象者を表す。この後者の再発進行型の表現型が、一次進行型MS(PPMS)の変種であり、McDonald 2010の基準によるPPMSの診断が、再発進行型の変種を含むことが、今や受け入れられている。
【0147】
MSに関連する症状として、感覚の変化(知覚低下および知覚異常)、筋力低下、筋攣縮、運動困難、協調およびバランスの困難(運動失調)、発話の問題(構音障害)または嚥下の問題(嚥下障害)、視覚的問題(眼振、視神経炎および視力低下、または複視)、疲労、急性または慢性の疼痛、膀胱、性的および腸の問題が挙げられる。さまざまな程度の認知障害、ならびにうつ病または気分不安定の情動性症状も、よく見られる症状である。障害の進行および症状の重症度の主な臨床的尺度は、総合障害度スケール(EDSS)である。MSのさらなる症状は、当該技術分野で周知であり、医学および神経学の標準的な教本に記載されている。
【0148】
本明細書において使用されるとき、「進行性MS」という用語は、疾患および/またはその1つ以上の症状が時間とともに悪化する状態を指す。典型的には、進行は、活性状態の出現を伴う。この進行は、疾患の全てのサブタイプにおいて起こり得る。しかしながら、典型的には、「進行性MS」は、再発寛解型MSに罹患している対象者において本発明に従って判断されるものとする。
【0149】
多発性硬化症の状態の判断は、一般に、微細運動能力の障害、しびれてぴりぴりする感覚、指のしびれ、疲労および日周リズムの変化、歩行の問題および歩行困難、処理速度の問題を含む認知障害、からなる群から選択される多発性硬化症に関連する少なくとも1つの症状を評価することを含む。多発性硬化症の障害を、Kurtzke JF,“Rating neurologic impairment in multiple sclerosis:an expanded disability status scale(EDSS)”,November 1983,Neurology.33(11):1444-52.doi:10.1212/WNL.33.11.1444.PMID 6685237に記載されているように、総合障害度スケール(EDSS)に従って定量化することができる。目標変数は、EDSS値であってもよい。
【0150】
したがって、本明細書において使用されるとき、「総合障害度スケール(EDSS)」という用語は、MSに罹患している対象者における障害の定量的評価に基づくスコアを指す(Krutzke 1983)。EDSSは、臨床医による神経学的検査に基づく。EDSSは、8つの機能システムにおける障害を、これらの機能システムの各々において機能システムスコア(FSS)を割り当てることによって定量化する。機能システムは、錐体システム、小脳システム、脳幹システム、感覚システム、腸および膀胱システム、視覚システム、脳システム、および他の(残りの)システムである。EDSSのステップ1.0~4.5は、歩行障害のないMSに罹患している対象者を指し、EDSSのステップ5.0~9.5は、歩行障害を有する対象者を表す。
【0151】
ありうる結果の各々の臨床的意味は、以下のとおりである:
・ 0.0:神経学的検査で正常
・ 1.0:障害なし;1つのFSで極軽度の徴候
・ 1.5:障害なし;2つ以上のFSで極軽度の徴候
・ 2.0:1つのFSで極軽度の障害
・ 2.5:1つのFSで軽度の障害または2つのFSで極軽度の障害
・ 3.0:歩行障害なし;1つのFSで中程度の障害、または3つ~4つのFSで軽度の障害
・ 3.5:歩行障害なし;1つのFSで中程度の障害および1つまたは2つのFSで軽度の障害、あるいは2つのFSで中程度の障害、あるいは5つのFSで軽度の障害
・ 4.0:補助なしで完全に歩行可能であり、比較的重度の身体障害にもかかわらず1日に12時間離床。補助なしで500メートル歩行可能
・ 4.5:補助なしで完全に歩行可能;1日の大部分において離床;終日働くことができる;完全な活動にいくつかの制限がある場合や、最小限の補助を必要とする場合がある。比較的重度の障害。補助なしで300メートル歩行可能
・ 5.0:約200メートルの補助なしでの歩行。障害により終日の活動が損なわれる
・ 5.5:100メートル歩行可能;障害により終日の活動はできない
・ 6.0:休息なし、あるいは休息しながら100メートル歩行するのに、時々または常時、片側に補助具(杖、松葉杖、または装具)が必要
・ 6.5:休息なしで20メートル歩行するのに、常時、両側に支持(杖、松葉杖、または装具)が必要
・ 7.0:補助があっても5メートルを超えて歩くことはできない;基本的に車椅子での生活;車椅子への移動・操作は自立;車椅子で1日約12時間活動
・ 7.5:数歩以上は歩くことができない;終日車椅子での生活;車椅子への移動に支援を必要とする場合がある;車椅子の操作はできるが、終日の活動には電動車椅子を必要とする場合がある
・ 8.0:基本的にベッド、椅子、または車椅子での生活だが、1日の大半をベッド外で生活することができる;身の回りの多くのことはできる;一般に上肢を使うことは可能
・ 8.5:1日の大半は基本的にベッドでの生活;上肢機能は或る程度残っている;身の回りのある程度のことはできる
・ 9.0:寝たきりの状態、コミュニケーションと食事は可能
・ 9.5:効果的なコミュニケーションまたは飲食が不可能
・ 10.0:MSによる死亡
【0152】
例えば、状態を予測すべき疾患は、脊髄性筋萎縮症である。
【0153】
本明細書において使用されるとき、「脊髄性筋萎縮症(SMA)」という用語は、典型的には脊髄における運動ニューロン機能の喪失を特徴とする神経筋疾患に関する。運動ニューロン機能の喪失の結果として、典型的には、筋委縮が生じ、罹患した対象者の早期の死亡につながる。この疾患は、SMN1遺伝子の遺伝性遺伝子異常によって引き起こされる。この遺伝子によってエンコードされたSMNタンパク質が、運動ニューロンの生存のために必要である。この疾患は、常染色体劣性型で遺伝する。
【0154】
SMAに関連する症状として、とりわけ四肢の反射消失、筋力低下および筋緊張不良、呼吸筋の衰弱の結果としての小児期における発達段階の完了の困難、呼吸の問題、ならびに肺における分泌物蓄積、ならびに吸引、嚥下、および摂取/摂食の困難が挙げられる。4つの異なるタイプのSMAが知られている。
【0155】
乳児型SMAまたはSMA1(ウェルドニッヒ・ホフマン病)は、通常は急かつ予想外の発症(「フロッピー乳児症候群」)を伴って生後数ヵ月で現れる重篤な形態である。急激な運動ニューロンの死が、主要な身体器官、とりわけ呼吸器系の非効率性を引き起こし、肺炎誘発性呼吸不全が、最も頻繁な死因である。人工呼吸を受けていない限り、SMA1と診断された乳児は、一般に2歳を過ぎて生存することがなく、SMA0と呼ばれることもある最も重度の症例では、数週間以内という早期に死亡する。適切な呼吸支援により、SMA1症例の約10%を占めるより軽度のSMA1表現型を有する者は、青年期および成人期まで生存することが知られている。
【0156】
中間型SMAまたはSMA2(デュボヴィッツ病)は、決して立ったり歩いたりすることができないが、生涯の少なくともしばらくの間は座位を維持することができる小児に発症する。衰弱の発症は、通常は、6ヵ月から18ヵ月までの間の或る時期に認められる。進行はさまざまであることが知られている。一部の者は、時間につれて徐々に弱く成長するが、他の者は、慎重な維持によって進行を回避する。これらの小児には、脊柱側弯症が存在することがあり、装具による矯正が、呼吸の改善に役立つことがある。筋肉が弱くなり、呼吸器系が大きな懸念事項となる。平均余命は幾分短くなるが、SMA2を有するほとんどの者は、成人期まで良好に生存する。
【0157】
若年性SMAまたはSMA3(クーゲルベルグ・ウェランダー病)は、典型的には12月齢後に現れ、或る時点においては支持を必要とせずに歩行することができるが、多くが後にこの能力を失ってしまうSMA3を有する者を表す。呼吸障害はあまり目立たず、平均余命は通常どおり、またはほぼ通常どおりである。
【0158】
成人のSMAまたはSMA4は、通常は、30代以降に現れ、筋肉が徐々に弱くなり、四肢の近位筋に影響が及び、移動のために車椅子の使用が必要になることが多い。他の合併症は稀であり、平均余命は影響を受けない。
【0159】
典型的には、本発明に係るSMAは、SMA1(ウェルドニッヒ・ホフマン病)、SMA2(デュボヴィッツ病)、SMA3(クーゲルベルグ・ウェランダー病)、またはSMA4である。
【0160】
SMAは、典型的には、低血圧の存在および反射の欠如によって診断される。双方とも、筋電図検査を含む病院の臨床医による標準的な技術によって測定可能である。場合によっては、血清クレアチンキナーゼが、生化学的パラメータとして増加することがある。さらに、とくには出生前診断またはキャリアスクリーニングとして、遺伝子検査も可能である。さらに、SMA管理における重要なパラメータは、呼吸器系の機能である。呼吸器系の機能を、典型的には、SMAの結果としての呼吸器系の障害の程度を表す対象者の努力肺活量を測定することによって判断することができる。
【0161】
本明細書において使用されるとき、「努力肺活量(FVC)」という用語は、対象者が完全な吸気後に強制的に吐き出すことができる空気の体積(単位は、リットル)を指す。典型的には、肺活量測定装置を使用して病院または医師の勤務先で肺活量測定によって決定される。
【0162】
脊髄性筋萎縮症の状態の判断は、一般に、筋緊張低下および筋力低下、疲労、ならびに日周リズムの変化からなる群から選択される脊髄性筋萎縮症に関連する少なくとも1つの症状を評価することを含む。脊髄性筋萎縮症の状態の尺度は、努力肺活量(FVC)であってよい。FVCは、完全な吸気後に強制的に吐き出すことができる空気の量(リットルを単位にして測定される)の定量的尺度であってよい(https://en.wikipedia.org/wiki/Spirometryを参照)。目標変数は、FVC値であってよい。
【0163】
例えば、状態を予測すべき疾患は、ハンチントン病である。
【0164】
本明細書において使用されるとき、「ハンチントン病(HD)」という用語は、中枢神経系における神経細胞死を伴う遺伝性神経障害に関する。最も顕著には、脳幹神経節が細胞死の影響を受ける。黒質、大脳皮質、海馬、およびプルキンエ細胞などの脳のさらなる領域も関係する。全ての領域は、典型的には、運動および行動制御において役割を果たす。この疾患は、ハンチンチンをエンコードする遺伝子の遺伝子変異によって引き起こされる。ハンチンチンは、さまざまな細胞機能に関与するタンパク質であり、100を超える他のタンパク質と相互作用する。変異ハンチンチンは、特定の神経細胞型に対して細胞傷害性であると思われる。変異ハンチンチンは、ハンチンチン遺伝子におけるトリヌクレオチド反復によって引き起こされるポリグルタミン領域を特徴とする。タンパク質のポリグルタミン領域内の36個を超えるグルタミン残基の反復は、ハンチンチンタンパク質を引き起こす疾患をもたらす。
【0165】
この疾患の症状は、最も一般的には中年期に顕著になるが、乳児期から高齢者までの任意の年齢で始まる可能性がある。初期段階において、症状は、性格、認知、および身体能力のわずかな変化を伴う。認知的および行動的症状は、一般に、この初期段階において単独で認識されるほどには重度でないため、通常は身体的症状が最初に注目される。HDを有するほぼ全ての者が、最終的には類似の身体的症状を示すが、認知的および行動的症状の発症、進行、および程度は、個人間で有意に異なる。最も特徴的な初期身体的症状は、舞踏病と呼ばれるぎくしゃくしたランダムな制御不能な運動である。舞踏病は、当初は、全体的な落ち着きのなさ、小さな意図せずに開始され、あるいは完了しない運動、協調の欠如、または衝動性眼球運動の遅延として現れることがある。これらの軽微な運動異常は、通常は、少なくとも3年、運動機能障害のより明白な徴候に先行する。硬直、身もだえ、または異常な姿勢などの症状の明確な出現は、障害が進行するにつれて現れる。これらは、運動を担う脳内の系が冒されたという徴候である。精神運動機能がますます損なわれ、筋肉制御を必要とするあらゆる動作が影響を受ける。一般的な結果は、身体的不安定、異常な顔つき、ならびに咀嚼、嚥下、および発話の困難である。結果として、摂食困難および睡眠障害も、この疾患に付随する。認知能力も、進行性の様相で損なわれる。実行機能、認知の柔軟性、抽象的な思考、ルールの習得、および適切な行動/反応能力が損なわれる。より顕著な段階では、短期記憶障害から長期記憶障害までを含む記憶障害が現れる傾向がある。認知の問題は時間とともに悪化し、最終的に認知症になる。HDに伴う精神医学的合併症は、不安、うつ病、感情の表出の減少(感情鈍麻)、自己中心性、攻撃性、および強迫行動であり、後者はアルコール依存症、賭け事、および色情症を含む中毒を引き起こし、あるいは悪化させる可能性がある。
【0166】
HDの治療法は存在しない。対処すべき症状に応じて、疾患管理に役立つ測定が存在する。さらに、疾患、その進行、または疾患に伴う症状を改善するために、いくつかの薬物が使用される。テトラベナジンが、HDの処置に関して承認され、神経弛緩薬を含み、ベンゾジアゼピンが、舞踏病の軽減に役立つ薬物として使用され、アマンタジンまたはレマセミドが、依然として研究中であるが、暫定的に肯定的な結果を示している。とりわけ若年の症例における運動機能低下および硬直を、抗パーキンソン薬で処置することができ、ミオクロニー性運動過多を、バルプロ酸で処置することができる。エチル-エイコサペント酸が、患者の運動症状を改善することが明らかになっているが、その長期効果を明らかにする必要がある。
【0167】
この疾患は、遺伝子検査によって診断することが可能である。さらに、疾患の重症度を、統一ハンチントン病評価尺度(UHDRS)に従って段階付けることができる。この尺度システムは、4つの構成要素、すなわち運動機能、認知、行動、および機能的能力に対処する。運動機能評価は、眼球追跡、サッカード開始、サッカード速度、構音障害、舌突出、最大ジストニア、最大舞踏病、後突引っ張り試験、指のタッピング、回内/回外手、ルリア、固縮アーム、運動緩徐体、歩行、およびタンデム歩行の評価を含み、総合運動スコア(TMS)として要約可能である。運動機能は、医師によって調査および判断されなければならない。
【0168】
ハンチントン病の状態の判断は、一般に、以下:精神運動遅滞、舞踏病(引きつり、身もだえ)、進行性構音障害、固縮およびジストニア、社会的引きこもり、処理速度、注意、計画、視覚空間処理、学習(完全な想起であるが)の進行性認知障害、疲労、および日周リズムの変化、からなる群から選択されるハンチントン病に関連する少なくとも1つの症状を評価することを含む。状態の尺度は、総合運動スコア(TMS)である。目標変数は、総合運動スコア(TMS)値であってよい。したがって、本明細書において使用されるとき、「総合運動スコア(TMS)」という用語は、眼球追跡、サッカード開始、サッカード速度、構音障害、舌突出、最大ジストニア、最大舞踏病、後突引っ張り試験、指タッピング、回内/回外手、ルリア、固縮アーム、運動緩徐体、歩行、およびタンデム歩行の評価に基づくスコアを指す。
【0169】
本明細書において使用されるとき、「状態変数」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、健康診断および/または対象者による自己診断によって導出されたデータなど、予測モデルに入力することができる入力変数を指すことができる。状態変数は、少なくとも1つの能動的試験および/または少なくとも1つの受動的監視において決定されてもよい。例えば、状態変数は、少なくとも1つの認知試験および/または少なくとも1つの手運動機能試験および/または少なくとも1つの運動性試験などの能動的試験で決定されてもよい。
【0170】
本明細書において使用されるとき、「対象者」という用語は、典型的には哺乳動物に関する。本発明に係る対象者は、典型的には、疾患に罹患している可能性があり、あるいは疾患に罹患している疑いがあり、すなわち、前記疾患に関連する負の症状の一部または全部をすでに示している可能性がある。本発明の実施形態において、前記対象者はヒトである。
【0171】
状態変数を、対象者の少なくとも1つのモバイルデバイスを使用することによって決定することができる。本明細書において使用されるとき、「モバイルデバイス」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、モバイル電子デバイス、より具体的には、少なくとも1つのプロセッサを備えるモバイル通信デバイスを指すことができる。モバイルデバイスは、具体的には、携帯電話機またはスマートフォンであってよい。モバイルデバイスは、タブレットコンピュータまたは任意の他の種類のポータブルコンピュータを指すこともできる。モバイルデバイスは、データ取得用に構成されてよいデータ取得ユニットを備えることができる。モバイルデバイスは、物理的パラメータを検出ならびに/あるいは定量的または定性的に測定し、それらをさらなる処理および/または分析などのための電子信号に変換するように構成されてよい。この目的のために、モバイルデバイスは、少なくとも1つのセンサを備えることができる。複数のセンサ、すなわち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10個、あるいはさらに多くの異なるセンサを、モバイルデバイスにおいて使用できることが理解されよう。センサは、少なくとも1つのジャイロスコープ、少なくとも1つの磁力計、少なくとも1つの加速度計、少なくとも1つの近接センサ、少なくとも1つの温度計、少なくとも1つの歩数計、少なくとも1つの指紋検出器、少なくとも1つのタッチセンサ、少なくとも1つのボイスレコーダ、少なくとも1つの光センサ、少なくとも1つの圧力センサ、少なくとも1つの位置データ検出器、少なくとも1つのカメラ、少なくとも1つのGPS、などからなる群から選択される少なくとも1つのセンサであってよい。モバイルデバイスは、プロセッサと、少なくとも1つのデータベースと、このデバイスに有形に埋め込まれ、このデバイス上で実行されたときにデータ取得のための方法を実行するソフトウェアとを備えることができる。モバイルデバイスは、例えば、データ取得のための方法において要求される少なくとも1つのタスクを実行するためのディスプレイおよび/または少なくとも1つのキーなどのユーザインターフェースを備えることができる。
【0172】
本明細書において使用されるとき、「予測する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの状態変数について疾患の状態を表す少なくとも1つの数値またはカテゴリ値を決定することを指すことができる。とくには、状態変数を入力として分析に記入することができ、分析モデルは、疾患の状態を表す少なくとも1つの数値またはカテゴリ値を決定するために状態変数について少なくとも1つの分析を実行するように構成されてよい。分析は、少なくとも1つのトレーニング済みアルゴリズムの使用を含むことができる。
【0173】
本明細書において使用されるとき、「少なくとも1つの分析モデルを決定する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、分析モデルの構築および/または作成を指すことができる。
【0174】
本明細書において使用されるとき、「疾患の状態」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、健康状態および/または医学的状態および/または疾患の段階を指すことができる。例えば、疾患の状態は、健康または病気ならびに/あるいは疾患の有無であってよい。例えば、疾患の状態は、疾患の段階を表す尺度に関する値であってよい。本明細書において使用されるとき、「疾患の状態を表す」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、疾患の状態に直接関連する情報および/または疾患の状態に間接的に関連する情報、例えば疾患の状態を導出するためのさらなる分析および/または処理を必要とする情報を指すことができる。例えば、目標変数が、疾患の状態を判断するためにテーブルおよび/またはルックアップテーブルとの比較を必要とする値であってよい。
【0175】
本明細書において使用されるとき、「通信インターフェース」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、情報を転送するように構成された境界を形成するアイテムまたは要素を指すことができる。とくには、通信インターフェースは、例えば別のデバイスに情報を送信または出力するなどの目的で、例えばコンピュータなどの計算デバイスから情報を転送するように構成されてよい。これに加え、あるいは代えて、通信インターフェースは、例えば情報を受け取るために、例えばコンピュータなどの計算デバイスに情報を転送するように構成されてよい。通信インターフェースは、具体的には、情報を転送または交換するための手段を提供することができる。とくに、通信インターフェースは、例えば、ブルートゥース、NFC、誘導結合、などのデータ転送接続を提供することができる。例として、通信インターフェースは、ネットワークまたはインターネットポート、USBポート、およびディスクドライブのうちの1つ以上を備える少なくとも1つのポートであってよく、あるいはそのような少なくとも1つのポートを備えることができる。通信インターフェースは、少なくとも1つのウェブインターフェースであってよい。
【0176】
本明細書において使用されるとき、「入力データ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、モデル構築に使用される実験データを指すことができる。入力データは、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットを含む。本明細書において使用されるとき、「バイオマーカ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、生物学的状態および/または生物学的状況の測定可能な特徴を指すことができる。本明細書において使用されるとき、「特徴」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、予測の基礎になる疾患の症状の測定可能な特性および/または特徴を指すことができる。とくには、全てのテストからの全ての特徴を考慮することができ、各々の予測のための特徴の最適なセットが決定される。したがって、全ての特徴を各々の疾患について考慮することができる。本明細書において使用されるとき、「デジタルバイオマーカ特徴データ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、疾患の症状に関する対象者ごとの複数の異なる測定値を含むモバイルデバイスなどの少なくとも1つのデジタルデバイスによって決定された実験データを指すことができる。デジタルバイオマーカ特徴データを、少なくとも1つのモバイルデバイスを使用することによって決定することができる。モバイルデバイスおよびモバイルデバイスを用いたデジタルバイオマーカ特徴データの決定に関しては、上記のモバイルデバイスでの状態変数の決定の説明が参照される。履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットは、予測すべき疾患の状態を表す対象者ごとの複数の測定値を含む。本明細書において使用されるとき、「履歴」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、このデジタルバイオマーカ特徴データが、少なくとも1つのテスト研究の最中など、モデル構築の前に決定および/または収集されたという事実を指すことができる。例えば、多発性硬化症を表す少なくとも1つの目標を予測するためのモデル構築の場合、デジタルバイオマーカ特徴データは、Floodlight POC研究からのデータであってよい。例えば、脊髄性筋萎縮症を表す少なくとも1つの目標を予測するためのモデル構築の場合、デジタルバイオマーカ特徴データは、OLEOS研究からのデータであってよい。例えば、ハンチントン病を表す少なくとも1つの目標を予測するためのモデル構築の場合、デジタルバイオマーカ特徴データは、HD OLE研究、ISIS 44319-CS2からのデータであってよい。入力データは、少なくとも1つの能動的テストおよび/または少なくとも1つの受動的監視において決定されてよい。例えば、入力データは、少なくとも1つの認知テストおよび/または少なくとも1つの手運動機能テストおよび/または少なくとも1つの運動性テストなどの少なくとも1つのモバイルデバイスを使用する能動的テストで決定されてよい。
【0177】
入力データは、目標データをさらに含むことができる。本明細書において使用されるとき、「目標データ」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、予測すべき臨床値、とくには対象者ごとに1つの臨床値を含むデータを指すことができる。目標データは、数値またはカテゴリのいずれかであってよい。臨床値は、疾患の状態を直接的または間接的に指すことができる。
【0178】
処理ユニットは、入力データから特徴を抽出するように構成されてよい。本明細書において使用されるとき、「特徴を抽出する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、入力データから特徴を決定および/または導出する少なくとも1つのプロセスを指すことができる。具体的には、特徴は、事前に定義されてよく、特徴のサブセットが、可能な特徴のセット全体から選択されてもよい。特徴の抽出は、データ集約、データ削減、データ変換、などのうちの1つ以上を含むことができる。処理ユニットを、特徴をランク付けするように構成することができる。本明細書において使用されるとき、「特徴をランク付する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、所定の基準に応じて、特徴の各々にランク、とりわけ重みを割り当てることを指すことができる。例えば、特徴を、それらの関連性に関して、すなわち目標変数との相関に関してランク付けすることができ、さらには/あるいは特徴を、冗長性に関して、すなわち特徴間の相関に関してランク付けすることができる。処理ユニットを、最大関連性-最小冗長性技術を使用して特徴をランク付けするように構成することができる。この方法は、関連性と冗長性との間のトレードオフを使用して全ての特徴をランク付けする。具体的には、特徴の選択およびランク付けを、Ding C.,Peng H.“Minimum redundancy feature selection from microarray gene expression data”,J Bioinform Comput Biol.2005 Apr;3(2):185-205,PubMed PMID:15852500に記載されているように実行することができる。特徴の選択およびランク付けを、Dingらに記載の方法と比較して修正された方法を使用して実行してもよい。平均相関係数ではなく、最大相関係数を使用してもよく、加算変換が適用されてもよい。分析モデルとしての回帰モデルの場合、変換は、平均相関係数の値を5乗に上げることができる。分析モデルとしての分類モデルの場合、平均相関係数の値に10を乗算してもよい。
【0179】
本明細書において使用されるとき、「モデルユニット」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの機械学習モデルを記憶するように構成された少なくとも1つのデータ記憶装置および/または記憶ユニットを指すことができる。本明細書において使用されるとき、「機械学習モデル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つのトレーニング可能なアルゴリズムを指すことができる。モデルユニットは、複数の機械学習モデル、例えば、回帰モデルを構築するための異なる機械学習モデルおよび分類モデルを構築するための機械学習モデルを含むことができる。例えば、分析モデルは、回帰モデルであってよく、機械学習モデルのアルゴリズムは、k近傍法(kNN);線形回帰;部分的最終二乗(PLS);ランダムフォレスト(RF);およびエクストラツリー(XT)からなる群から選択される少なくとも1つのアルゴリズムであってよい。例えば、分析モデルは、分類モデルであってよく、機械学習モデルのアルゴリズムは、k近傍法(kNN);サポートベクターマシン(SVM);線形判別分析(LDA);二次判別分析(QDA);ナイーブベイズ(NB);ランダムフォレスト(RF);およびエクストラツリー(XT)からなる群から選択される少なくとも1つのアルゴリズムであってよい。
【0180】
本明細書において使用されるとき、「処理ユニット」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、コンピュータまたはシステムの動作を実行するように構成された任意の論理回路、および/または一般に、計算または論理演算を実行するように構成された装置を指すことができる。処理ユニットは、少なくとも1つのプロセッサを備えることができる。とくに、処理ユニットは、コンピュータまたはシステムを駆動する基本的な命令を処理するように構成されてよい。例として、処理ユニットは、少なくとも1つの算術論理演算ユニット(ALU)と、数値演算コプロセッサまたは数値コプロセッサなどの少なくとも1つの浮動小数点ユニット(FPU)と、複数のレジスタと、キャッシュメモリなどのメモリとを備えてもよい。とくには、処理ユニットは、マルチコアプロセッサであってよい。処理ユニットは、機械学習のために構成されてもよい。処理ユニットは、中央処理装置(CPU)および/または1つ以上のグラフィック処理ユニット(GPU)および/または1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)および/または1つ以上のテンソル処理ユニット(TPU)および/または1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などを備えることができる。
【0181】
処理ユニットは、入力データを前処理するように構成されてもよい。前処理は、入力データが少なくとも1つの品質基準を満たすための少なくとも1つのフィルタ処理プロセスを含むことができる。例えば、入力データを、欠落変数を除去するためにフィルタにかけることができる。例えば、前処理は、予め定義された最小観察数未満の対象者からのデータを除外することを含むことができる。
【0182】
本明細書において使用されるとき、「トレーニング用データセット」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、機械学習モデルのトレーニングに使用される入力データのサブセットを指すことができる。本明細書において使用されるとき、「テストデータセット」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、トレーニング済み機械学習モデルをテストするために使用される入力データの別のサブセットを指すことができる。トレーニング用データセットは、複数のトレーニング用データセットを含むことができる。とくには、トレーニング用データセットは、入力データの対象者ごとのトレーニング用データセットを含む。テストデータセットは、複数のテストデータセットを含むことができる。とくには、テストデータセットは、入力データの対象者ごとのテストデータセットを含む。処理ユニットは、トレーニング用データセットおよびテストデータセットを入力データの対象者ごとに生成および/または作成するように構成されてよく、対象者ごとのテストデータセットが、その対象者のみのデータを含むことができる一方で、その対象者のためのトレーニング用データセットは、他の全ての入力データを含む。
【0183】
処理ユニットは、各々の対象者のためのトレーニング用データセットおよびテストデータセットの双方に対して少なくとも1つのデータ集約および/またはデータ変換を実行するように構成されてよい。変換および特徴のランク付けのステップは、トレーニング用データセットおよびテストデータセットへの分割を行うことなく実行されてよい。これは、例えばデータからの重要な特徴の干渉を可能にすることを許し得る。
【0184】
処理ユニットは、トレーニング用データセットおよびテストデータセットについて、少なくとも1つの安定化変換;少なくとも1つの集約;および少なくとも1つの正規化のうちの1つ以上のために構成されてよい。
【0185】
例えば、処理ユニットは、特徴の平均値を対象者ごとに決定するトレーニング用データセットおよびテストデータセットの双方の対象者ごとのデータ集約のために構成されてよい。
【0186】
例えば、処理ユニットは、各々の特徴に関して少なくとも1つの分散安定化関数が適用される分散安定化のために構成されてよい。分散安定化関数は、全ての値が300よりも大きく、かつ0と1との間の値が存在しない場合に使用され得るロジスティック;全ての値が0以上1以下である場合に使用され得るロジット;シグモイド;全ての値が0以上であると考えられる場合に使用され得るlog10からなる群から選択される少なくとも1つの関数であってよい。処理ユニットは、各々の分散変換関数を使用して各々の特徴の値を変換するように構成されてよい。処理ユニットは、特定の基準を使用して、元の分布を含む得られた分布の各々を評価するように構成されてよい。分析モデルとしての分類モデルの場合、すなわち目標変数が離散的である場合、前記基準は、得られた値が異なるクラスをどの程度分離することができるか、であってよい。具体的には、この目的のために、全てのクラスごとの平均シルエット値の最大値を使用することができる。分析モデルとしての回帰モデルの場合、基準は、分散安定化関数を適用して得られた値を目標変数に対して回帰させた後に得られる平均絶対誤差であってよい。この選択基準を使用して、処理ユニットは、トレーニング用データセット上で、最良の可能な変換(存在する場合)が元の値よりも良好であると決定するように構成されてよい。続いて、最良の可能な変換をテストデータセットに適用することができる。
【0187】
例えば、処理ユニットは、zスコア変換のために構成されてよく、変換された特徴ごとに、トレーニング用データセット上で平均および標準偏差が決定され、これらの値が、トレーニング用データセットおよびテストデータセットの双方のzスコア変換に使用される。
【0188】
例えば、処理ユニットは、トレーニング用データセットおよびテストデータセットの双方について3つのデータ変換ステップを実行するように構成されてよく、変換ステップは、以下を含む:1.対象者ごとのデータ集約;2.分散安定化;3.zスコア変換。
【0189】
処理ユニットは、ランク付けおよび変換ステップの少なくとも1つの出力を決定および/または提供するように構成されてよい。例えば、ランク付けおよび変換ステップの出力は、少なくとも1つの診断プロットを含むことができる。診断プロットは、ランク付け手順に関連する重要な統計を比較する少なくとも1つの主成分分析(PCA)プロットおよび/または少なくとも1つのペアプロットを含むことができる。
【0190】
処理ユニットは、機械学習モデルをトレーニング用データセットでトレーニングすることによって分析モデルを決定するように構成される。本明細書において使用されるとき、「機械学習モデルをトレーニングする」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、トレーニング用データセット上で機械学習モデルのアルゴリズムのパラメータを決定するプロセスを指すことができる。トレーニングは、最良のパラメータの組み合わせを決定する少なくとも1つの最適化または調整プロセスを含むことができる。トレーニングは、異なる対象者のトレーニング用データセットに上で反復的に実行されてよい。処理ユニットは、トレーニング用データセットを用いて機械学習モデルをトレーニングすることによって分析モデルを決定するために異なる数の特徴を考慮するように構成されてよい。機械学習モデルのアルゴリズムは、異なる数の特徴を、例えばそれらのランキングに応じて使用して、トレーニング用データセットに適用されてよい。トレーニングは、モデルパラメータのロバストな推定値を得るためのn倍交差検証を含むことができる。機械学習モデルのトレーニングは、少なくとも1つの制御された学習プロセスを含むことができ、少なくとも1つのハイパーパラメータが、トレーニングプロセスを制御するために選択される。必要に応じて、ハイパーパラメータの異なる組み合わせをテストするために、トレーニングステップが繰り返される。
【0191】
とくには、機械学習モデルのトレーニングに続いて、処理ユニットは、決定された分析モデルを使用してテストデータセット上で目標変数を予測するように構成される。本明細書において使用されるとき、「決定された分析モデル」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、トレーニングされた機械学習モデルを指すことができる。処理ユニットは、決定された分析モデルを使用して、各々の対象者の目標変数を、その対象者のテストデータセットに基づいて、予測するように構成されてよい。処理ユニットは、分析モデルを使用して、各々の対象者の目標変数を、それぞれのトレーニング用データセットおよびテストデータセット上で予測するように構成されてよい。処理ユニットは、例えば、少なくとも1つの出力ファイルに、対象者ごとの予測した目標変数および対象者ごとの目標変数の真の値の双方を記録および/または記憶するように構成されてよい。本明細書において使用されるとき、「目標変数の真の値」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、その対象者の目標データから決定されてよいその対象者の目標変数の現実の値または実際の値を指すことができる。
【0192】
処理ユニットは、予測した目標変数とテストデータセットの目標変数の真の値とに基づいて、決定された分析モデルのパフォーマンスを判断するように構成される。本明細書において使用されるとき、「パフォーマンス」という用語は、広義の用語であり、当業者にとっての一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味または特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、目標変数を予測するための決定された分析モデルの適切性を指すことができる。パフォーマンスを、予測した目標変数と目標変数の真の値との間の偏差によって特徴付けることができる。機械学習システムは、少なくとも1つの出力インターフェースを備えることができる。出力インターフェースは、通信インターフェースと同一に設計されてよく、さらには/あるいは通信インターフェースと一体に形成されてもよい。出力インターフェースは、少なくとも1つの出力を提供するように構成されてよい。出力は、決定された分析モデルのパフォーマンスに関する少なくとも1つの情報を含むことができる。決定された分析モデルのパフォーマンスに関する情報は、少なくとも1つのスコアチャート、少なくとも1つの予測プロット、少なくとも1つの相関プロット、および少なくとも1つの残差プロットのうちの1つ以上を含むことができる。
【0193】
モデルユニットは、複数の機械学習モデルを含むことができ、機械学習モデルは、それらのアルゴリズムによって区別される。例えば、回帰モデルを構築するために、モデルユニットは、k近傍法(kNN)、線形回帰、部分的最終二乗(PLS)、ランダムフォレスト(RF)、およびエクストラツリー(XT)というアルゴリズムを含むことができる。例えば、分類モデルを構築するために、モデルユニットは、k近傍法(kNN)、サポートベクターマシン(SVM)、線形判別分析(LDA)、二次判別分析(QDA)、ナイーブベイズ(NB)、ランダムフォレスト(RF)、およびエクストラツリー(XT)というアルゴリズムを含むことができる。処理ユニットは、機械学習モデルの各々について、それぞれの機械学習モデルをトレーニング用データセットでトレーニングすることによって分析モデルを決定し、決定された分析モデルを使用してテストデータセット上で目標変数を予測するように構成されてよい。
【0194】
処理ユニットは、予測した目標変数とテストデータセットの目標変数の真の値とに基づいて、決定された各々の分析モデルのパフォーマンスを決定するように構成されてよい。回帰モデルを構築する場合、処理ユニットによってもたらされる出力は、少なくとも1つのスコアチャート、少なくとも1つの予測プロット、少なくとも1つの相関プロット、および少なくとも1つの残差プロットのうちの1つ以上を含むことができる。スコアチャートは、各々の対象者について、テストデータセットおよびトレーニング用データセットの双方からの平均絶対誤差を示し、回帰器の各タイプ、すなわち使用されたアルゴリズムについて、選択された特徴の数を示すボックスプロットであってよい。予測プロットは、回帰器のタイプおよび特徴の数の各々の組み合わせについて、テストデータおよびトレーニング用データの双方に関して、目標変数の予測値が真の値とどの程度良好に相関するかを示すことができる。相関プロットは、各々の回帰器タイプについて、モデルに含まれる特徴の数の関数として、予測した目標変数と真の目標変数との間のスピアマン相関係数を示すことができる。残差プロットは、回帰器タイプおよび特徴の数の各々の組み合わせについて、テストデータおよびトレーニング用データの双方に関して、予測した目標変数と残差との間の相関を示すことができる。処理ユニットは、とりわけ出力に基づいて、最良のパフォーマンスを有する分析モデルを決定するように構成されてよい。
【0195】
分類モデルを構築する場合、処理ユニットによってもたらされる出力は、スコアリングチャートを含むことができ、これは、各々の対象者について、テストデータおよびトレーニング用データの双方から、ならびに回帰器のタイプおよび選択された特徴の数ごとに、FスコアまたはF尺度とも呼ばれる平均F1性能スコアをボックスプロットにて示す。処理ユニットは、とくには出力に基づいて、最良のパフォーマンスを有する分析モデルを決定するように構成されてよい。
【0196】
本開示のさらなる関連の態様において、疾患の状態を表す少なくとも1つの目標変数を予測するための少なくとも1つの分析モデルを決定するためのコンピュータ実装方法が提案される。本方法において、本発明に係る機械学習システムが使用される。したがって、本方法の実施形態および定義に関して、上述され、あるいは以下でさらに詳細に説明される機械学習システムの説明が参照される。
【0197】
本方法は、とくには所与の順序で実行されてよい以下の方法ステップを含む。しかしながら、別の順序も可能である。さらに、2つ以上の方法ステップを完全に、または部分的に同時に実行することが可能である。さらに、方法ステップのうちの1つ以上、または全てが、1回だけ実行されても、例えば1回または複数回繰り返されるなど、繰り返し実行されてもよい。さらに、本方法は、列挙されないさらなる方法ステップを含んでもよい。
【0198】
本方法は、以下のステップ:
a)少なくとも1つの通信インターフェースを介して入力データを受け取るステップであって、入力絵データは、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットを含み、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットは、予測すべき疾患の状態を表す複数の測定値を含む、ステップと、
少なくとも1つの処理ユニットにおいて、
b)入力データセットから、少なくとも1つのトレーニング用データセットおよび少なくとも1つのテストデータセットを決定するステップと、
c)トレーニング用データセットで少なくとも1つのアルゴリズムを備えている機械学習モデルをトレーニングすることによって、分析モデルを決定するステップと、
d)決定した分析モデルを使用し、テストデータセットに基づいて目標変数を予測するステップと、
e)決定した分析モデルのパフォーマンスを、予測した目標変数およびテストデータセットの目標変数の真の値に基づいて判断するステップと
を含む。
【0199】
ステップc)において、複数の分析モデルを、トレーニング用データセットで複数の機械学習モデルをトレーニングすることによって決定することができる。機械学習モデルは、それらのアルゴリズムによって区別されてよい。ステップd)において、決定した分析モデルを使用して、テストデータセット上で複数の目標変数を予測することができる。ステップe)において、決定した分析モデルの各々のパフォーマンスを、予測した目標変数とテストデータセットの目標変数の真の値とに基づいて決定することができる。本方法は、最良のパフォーマンスを有する分析モデルを決定することをさらに含むことができる。
【0200】
疾患の状態を表す少なくとも1つの目標変数を予測するための少なくとも1つの分析モデルを決定するためのコンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されたときに本明細書に含まれる実施形態のうちの1つ以上における本発明による方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含んでいるコンピュータプログラムが、本明細書においてさらに開示および提案される。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データ担体および/またはコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。コンピュータプログラムは、本明細書に含まれる実施形態のうちの1つ以上における本発明による方法の少なくともステップb)~e)を実行するように構成される。
【0201】
本明細書において使用されるとき、「コンピュータ可読データ担体」および「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、具体的には、コンピュータ実行可能命令を格納したハードウェア記憶媒体などの非一時的データ記憶手段を指すことができる。コンピュータ可読データ担体または記憶媒体は、具体的には、ランダムアクセスメモリ(RAM)および/または読み出し専用メモリ(ROM)などの記憶媒体であってよく、あるいはそのような記憶媒体を備えることができる。
【0202】
したがって、具体的には、上述したような方法ステップb)~e)のうちの1つ、2つ以上、または全てが、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用して、好ましくはコンピュータプログラムを使用して実行されてよい。
【0203】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されたときに本明細書に含まれる実施形態のうちの1つ以上における本発明による方法を実行するためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品が、本明細書においてさらに開示および提案される。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データ担体および/またはコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。
【0204】
コンピュータまたはコンピュータネットワークの作業メモリまたはメインメモリなどのコンピュータまたはコンピュータネットワークへとロードされた後に本明細書に開示の実施形態のうちの1つ以上による方法を実行することができるデータ構造を格納したデータ担体が、本明細書においてさらに開示および提案される。
【0205】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるときに本明細書に開示の実施形態のうちの1つ以上による方法を実行するためにプログラムコード手段を機械可読担体上に格納して有するコンピュータプログラム製品が、本明細書においてさらに開示および提案される。本明細書において使用されるとき、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、一般に、紙フォーマット、あるいはコンピュータ可読データ担体上および/またはコンピュータ可読記憶媒体上など、任意のフォーマットで存在してよい。具体的には、コンピュータプログラム製品は、データネットワーク上で配信されてもよい。
【0206】
最後に、本明細書に開示の実施形態のうちの1つ以上による方法を実行するためのコンピュータシステムまたはコンピュータネットワークによる読み取りが可能な命令を含む変調データ信号が、本明細書において開示および提案される。
【0207】
本発明のコンピュータ実装態様を参照すると、本明細書に開示の実施形態のうちの1つ以上による方法の方法ステップのうちの1つ以上または全てを、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行することができる。したがって、一般に、データの提供および/または操作を含む方法ステップのいずれも、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行することができる。一般に、これらの方法ステップは、典型的には試料の提供および/または実際の測定を実行する特定の態様などの手作業を必要とする方法ステップを除いて、任意の方法ステップを含み得る。
【0208】
具体的には、本明細書において、
- 少なくとも1つのプロセッサを備えており、プロセッサは、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成されているコンピュータまたはコンピュータネットワーク、
- コンピュータ上で実行されているときに、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成されたコンピュータロード可能データ構造、
- コンピュータ上で実行されているときに、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成されたコンピュータプログラム、
- コンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行されているときに、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するためのプログラム手段を備えるコンピュータプログラム、
- 先行の実施形態によるプログラム手段を備えており、プログラム手段はコンピュータにとって読み取り可能な記憶媒体に格納されているコンピュータプログラム、
- データ構造を格納しており、データ構造は、コンピュータまたはコンピュータネットワークの主記憶部および/または作業記憶部にロードされた後に、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するように構成されている記憶媒体、および
- プログラムコード手段を有しており、プログラムコード手段は、記憶媒体に格納可能または格納されており、コンピュータ上またはコンピュータネットワーク上で実行された場合に、本明細書に記載の実施形態のうちの1つによる方法を実行するコンピュータプログラム製品
がさらに開示される。
【0209】
本発明のさらなる態様において、多発性硬化症を表す総合障害度スケール(EDSS)値、脊髄性筋萎縮症を表す努力肺活量(FVC)値、またはハンチントン病を表す総合運動スコア(TMS)値のうちの1つ以上を予測するために、本明細書に開示の実施形態のうちの1つ以上による機械学習システムを使用することが提案される。
【0210】
本発明よる装置および方法は、疾患の状態を予測するための既知の方法を超えるいくつかの利点を有する。機械学習システムの使用は、いくつかの大規模なテスト研究において決定されたデータなどの大量の複雑な入力データを分析することを可能にでき、高速で信頼性があり正確な結果を提供することを可能にする分析モデルを決定することを可能にすることができる。
【0211】
要約すると、さらなる可能な実施形態を除外することなく、以下の追加の実施形態を想定でき、これらは、前述のあらゆる実施形態と組み合わせることが可能である。
【0212】
追加の実施形態1:疾患の状態を表す少なくとも1つの目標変数を予測するための少なくとも1つの分析モデルを決定するための機械学習システムであって、
- 入力データを受け取るように構成された少なくとも1つの通信インターフェースであって、入力データは、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットを含み、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットは、予測すべき疾患の状態を表す複数の測定値を含む、少なくとも1つの通信インターフェースと、
- 少なくとも1つのアルゴリズムを備える少なくとも1つの機械学習モデルを含む少なくとも1つのモデルユニットと、
- 少なくとも1つの処理ユニットと
を備え、
処理ユニットは、入力データセットから少なくとも1つのトレーニング用データセットおよび少なくとも1つのテストデータセットを決定するように構成され、処理ユニットは、トレーニング用データセットで機械学習モデルをトレーニングすることによって分析モデルを決定するように構成され、処理ユニットは、決定した分析モデルを使用してテストデータセットについて目標変数を予測するように構成され、処理ユニットは、予測した目標変数とテストデータセットの目標変数の真の値とに基づいて、決定した分析モデルのパフォーマンスを判断するように構成される、機械学習システム。
【0213】
追加の実施形態2:分析モデルは、回帰モデルまたは分類モデルである、先行の実施形態に記載の機械学習システム。
【0214】
追加の実施形態3:分析モデルが回帰モデルであり、機械学習モデルのアルゴリズムが、k近傍法(kNN);線形回帰;部分的最終二乗(PLS);ランダムフォレスト(RF);およびエクストラツリー(XT)からなる群から選択される少なくとも1つのアルゴリズムであるか、あるいは、分析モデルが分類モデルであり、機械学習モデルのアルゴリズムが、k近傍法(kNN);サポートベクターマシン(SVM);線形判別分析(LDA);二次判別分析(QDA);ナイーブベイズ(NB);ランダムフォレスト(RF);およびエクストラツリー(XT)からなる群から選択される少なくとも1つのアルゴリズムである、先行の実施形態に記載の機械学習システム。
【0215】
追加の実施形態4:モデルユニットは、複数の機械学習モデルを備え、機械学習モデルは、それらのアルゴリズムによって区別される、先行の実施形態のいずれか1つに記載の機械学習システム。
【0216】
追加の実施形態5:処理ユニットは、機械学習モデルの各々について、トレーニング用データセットでそれぞれの機械学習モデルをトレーニングすることによって分析モデルを決定し、決定した分析モデルを使用してテストデータセットにおいて目標変数を予測するように構成され、処理ユニットは、予測した目標変数とテストデータセットの目標変数の真の値とに基づいて、決定した分析モデルの各々のパフォーマンスを決定するように構成され、処理ユニットは、最良のパフォーマンスを有する分析モデルを決定するように構成される、先行の実施形態に記載の機械学習システム。
【0217】
追加の実施形態6:目標変数は、予測すべき臨床値であり、目標変数は、数値またはカテゴリのいずれかである、先行の実施形態のいずれか1つに記載の機械学習システム。
【0218】
追加の実施形態7:状態を予測すべき疾患は、多発性硬化症であり、目標変数は、総合障害度スケール(EDSS)値であり、あるいは、状態を予測すべき疾患は、脊髄性筋萎縮症であり、目標変数は、努力肺活量(FVC)値であり、あるいは、状態を予測すべき疾患は、ハンチントン病であり、目標変数は、総合運動スコア(TMS)値である、先行の実施形態のいずれか1つに記載の機械学習システム。
【0219】
追加の実施形態8:処理ユニットが、入力データの対象者ごとにトレーニング用データセットおよびテストデータセットを生成および/または作成するように構成され、テストデータセットは、一対象者のデータを含み、トレーニング用データセットは、他の入力データを含む、先行の実施形態のいずれか1つに記載の機械学習システム。
【0220】
追加の実施形態9:処理ユニットは、入力データから特徴を抽出するように構成され、処理ユニットは、最大関連性-最小冗長性技術を使用して特徴をランク付けするように構成される、先行の実施形態のいずれか1つに記載の機械学習システム。
【0221】
追加の実施形態10:処理ユニットは、トレーニング用データセットで機械学習モデルをトレーニングすることによって分析モデルを決定するために異なる数の特徴を考慮するように構成される、先行の実施形態に記載の機械学習システム。
【0222】
追加の実施形態11:処理ユニットは、入力データを前処理するように構成され、前処理は、入力データが少なくとも1つの品質基準を満たすための少なくとも1つのフィルタ処理プロセスを含む、先行の実施形態のいずれか1つに記載の機械学習システム。
【0223】
追加の実施形態12:処理ユニットは、トレーニング用データセットおよびテストデータセットに関して、少なくとも1つの安定化変換;少なくとも1つの集約;および少なくとも1つの正規化のうちの1つ以上を実行するように構成される、先行の実施形態のいずれか1つに記載の機械学習システム。
【0224】
追加の実施形態13:機械学習システムは、少なくとも1つの出力インターフェースを備え、出力インターフェースは、少なくとも1つの出力をもたらすように構成され、出力は、決定した分析モデルのパフォーマンスに関する少なくとも1つの情報を含む、先行の実施形態のいずれか1つに記載の機械学習システム。
【0225】
追加の実施形態14:決定した分析モデルのパフォーマンスに関する情報は、少なくとも1つのスコアチャート、少なくとも1つの予測プロット、少なくとも1つの相関プロット、および少なくとも1つの残差プロットのうちの1つ以上を含む、先行の実施形態に記載の機械学習システム。
追加の実施形態15:先行の実施形態のいずれか1つに記載の機械学習システムを使用し、疾患の状態を表す少なくとも1つの目標変数を予測するための少なくとも1つの分析モデルを決定するコンピュータ実装方法であって、以下のステップ:
a)少なくとも1つの通信インターフェースを介して入力データを受け取るステップであって、入力絵データは、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットを含み、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットは、予測すべき疾患の状態を表す複数の測定値を含む、ステップと、
少なくとも1つの処理ユニットにおいて、
b)入力データセットから、少なくとも1つのトレーニング用データセットおよび少なくとも1つのテストデータセットを決定するステップと、
c)トレーニング用データセットで少なくとも1つのアルゴリズムを備えている機械学習モデルをトレーニングすることによって、分析モデルを決定するステップと、
d)決定した分析モデルを使用し、テストデータセット上で目標変数を予測するステップと、
e)予測した目標変数とテストデータセットの目標変数の真の値とに基づいて、決定した分析モデルのパフォーマンスを決定するステップと
を含む、方法。
【0226】
追加の実施形態16:ステップc)において、複数の分析モデルを、トレーニング用データセットで複数の機械学習モデルをトレーニングすることによって決定し、機械学習モデルは、それらのアルゴリズムによって区別され、ステップd)において、決定した分析モデルを使用してテストデータセット上で複数の目標変数を予測し、ステップe)において、決定した分析モデルの各々のパフォーマンスを、予測した目標変数とテストデータセットの目標変数の真の値とに基づいて決定し、本方法は、最良のパフォーマンスを有する分析モデルを決定することをさらに含む、先行の実施形態に記載の方法。
【0227】
追加の実施形態17:疾患の状態を表す少なくとも1つの目標変数を予測するための少なくとも1つの分析モデルを決定するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されたときに、コンピュータまたはコンピュータネットワークに、方法に関する先行の実施形態のいずれか1つによる疾患の状態を表す少なくとも1つの目標変数を予測するための少なくとも1つの分析モデルを決定するための方法を完全に、または部分的に実行させるように構成されており、コンピュータプログラムは、方法に関する先行の実施形態のいずれか1つによる疾患の状態を表す少なくとも1つの目標変数を予測するための少なくとも1つの分析モデルを決定するための方法の少なくともステップb)~e)を実行するように構成されている、コンピュータプログラム。
【0228】
追加の実施形態18:コンピュータまたはコンピュータネットワークによって実行されたときに先行する方法の実施形態のいずれか1つによる方法の少なくともステップb)~e)を実行させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体。
【0229】
追加の実施形態19:多発性硬化症を表す総合障害度スケール(EDSS)値、脊髄性筋萎縮症を表す努力肺活量(FVC)値、またはハンチントン病を表す総合運動スコア(TMS)値のうちの1つ以上を予測するための分析モデルを決定するために、機械学習システムに関する先行の実施形態のいずれか1つに記載の機械学習システムを使用すること。
【図面の簡単な説明】
【0230】
さらなる随意による特徴および実施形態が、好ましくは従属請求項と併せて、実施形態の後続の説明においてさらに詳細に開示される。ここで、それぞれの随意による特徴は、当業者であれば理解できるとおり、独立した様相で実現されても、任意の実行可能な組み合わせで実現されてもよい。本発明の範囲は、好ましい実施形態によって限定されるわけではない。実施形態は、図中に概略的に示されている。ここで、これらの図における同一の参照番号は、同一または機能的に同等の要素を指す。
【0231】
図1】本発明による機械学習システムの例示的な実施形態を示している。
図2】本発明よるコンピュータ実装方法の例示的な実施形態を示している。
図3A-3C】分析モデルのパフォーマンスを評価するための相関プロットの実施形態を示している。
図4】本発明の方法を実行するために使用され得るシステムの例を示している。
図5A】ピンチテストの際のタッチスクリーンディスプレイの例を示している。
図5B】抽出され得るデジタルバイオマーカ特徴のいくつかを示すために、ピンチテストが実行された後のタッチスクリーンの例を示している。
図6A-6D】種々のパラメータを示すピンチテストのさらなる例を示している。
図7】形状描画テストの例を示している。
図8】形状描画テストの例を示している。
図9】形状描画テストの例を示している。
図10】形状描画テストの例を示している。
図11】終点トレース距離特徴を示している。
図12A-12C】始点-終点トレース距離特徴を示している。
図13A-13C】始点トレース距離特徴を示している。
図14A-14G】本発明のピンチテストの結果から抽出することができる種々のデジタルバイオマーカ特徴の定義を説明する表である。
図15】利き手および非利き手に関するPwMSにおけるピンチテストのベース特徴のテスト-再テスト信頼性ならびに9HPTおよびEDSSとの相関を示している。-ICC(2,1)が、(A)利き手および(B)非利き手について同等のテスト-再テスト信頼性を示している。
図16】PwMSにおけるテスト-再テスト信頼性を示している。(A)ベース特徴、(B)IMUに基づく特徴、および(C、D)疲労特徴のICC(2,1)値。少なくとも3回の有効なテスト実施(研究参加者ごと)を含む全ての連続する2週間のウィンドウが、分析に含まれている。特徴値を、(A~C)中央値または(D)標準偏差をとることによって2週間のウィンドウにわたって集約した。エラーバーは、ブートストラップによって推定された95%CIを示している。
図17】健常な対照におけるテスト-再テスト信頼性を示している。(A)ベース特徴、(B)IMUに基づく特徴、および(C、D)疲労特徴のICC(2,1)値。少なくとも3回の有効なテスト実施(研究参加者ごと)を含む全ての連続する2週間のウィンドウが、分析に含まれている。特徴値を、(A~C)中央値または(D)標準偏差をとることによって2週間のウィンドウにわたって集約した。エラーバーは、ブートストラップによって推定された95%CIを示している。
図18】ピンチテスト特徴と、PwMSにおける上肢機能および全体的な疾患重症度の標準的な臨床的尺度との間のクロスセクションスピアマン順位相関を示している。(A)ベース特徴、(B)IMUに基づく特徴、および(C、D)疲労特徴が、年齢および性別について調整した後に利き手の9HPT時間(青色)、EDSSスコア(赤色)、およびMSIS-29アーム項目(緑色)に対して相関していた。エラーバーは、ブートストラップによって推定された95%CIを示している。
図19】ピンチテスト特徴と、PwMSにおける情報処理速度および疲労の標準的な臨床的尺度との間のクロスセクションスピアマン順位相関を示している。(A)ベース特徴、(B)IMUに基づく特徴、および(C、D)疲労特徴が、年齢および性別について調整した後に口頭SDMTにおける正答数(青色)およびFSMC総スコア(赤色)に対して相関していた。エラーバーは、ブートストラップによって推定された95%CIを示している。
図20】ピンチテスト特徴と、PwMSにおける物理的および認知的疲労との間の断面スピアマン順位相関を示している。(A)ベース特徴、(B)IMUに基づく特徴、および(C、D)疲労特徴が、年齢および性別について調整した後にFSMC認知サブスケール(青色)、FSMC物理サブスケール(赤色)、およびFSMC総スコア(緑色)に対して相関していた。エラーバーは、ブートストラップによって推定された95%CIを示している。
図21】ピンチテスト特徴の間の関係を示している。(A)ペアワイズスピアマン順位相関分析が、スパースな相関行列をもたらし、ピンチテスト特徴が上肢障害における固有の情報を有することを示唆している。(B)反復測定相関分析が、単一のテスト実行内のピンチテスト特徴が互いに強くは相関しておらず、(A)よりもさらにスパースな相関行列をもたらすことを示している。(C)主成分分析が、ベース特徴の分散の約90%を説明するために6つの主成分が必要であることを明らかにした。(D)要因分析の負荷行列が、個々のベース特徴が全て上肢障害の異なる態様を捕捉するという考えをさらに裏付ける。
図22】ピンチテストの一連のスクリーンショットを示している。
図23】調査することができるピンチテスト特徴の種々の詳細を示している。
【発明を実施するための形態】
【0232】
実施形態の詳細な説明
図1が、疾患の状態を表す少なくとも1つの目標変数を予測するための少なくとも1つの分析モデルを決定するための機械学習システム110の実施形態をきわめて概略的に示している。
【0233】
分析モデルは、少なくとも1つの状態変数について少なくとも1つの目標変数を予測するように構成された数学モデルであってよい。分析モデルは、回帰モデルまたは分類モデルであってよい。回帰モデルは、或る範囲内の数値を出力として有する少なくとも1つの教師あり学習アルゴリズムを含む分析モデルであってよい。分類モデルは、「病気」または「健康」などの分類子を出力として有する少なくとも1つの教師あり学習アルゴリズムを含む分析モデルであってよい。
【0234】
予測すべき目標変数値は、存在または状態を予測すべき疾患に依存し得る。目標変数は、数値であっても、カテゴリであってもよい。例えば、目標変数は、カテゴリであってよく、疾患が存在する場合の「陽性」または疾患が存在しない場合の「陰性」であってよい。疾患の状態は、健康状態および/または医学的状態および/または疾患の段階であってよい。例えば、疾患の状態は、健康または病気ならびに/あるいは疾患の有無であってよい。例えば、疾患の状態は、疾患の段階を表す尺度に関する値であってよい。目標変数は、少なくとも1つの値および/または尺度値などの数値であってもよい。目標変数は、疾患の状態に直接関連してもよく、かつ/または疾患の状態に間接的に関連してもよい。例えば、目標変数は、疾患の状態を導出するためのさらなる分析および/または処理を必要としてもよい。例えば、目標変数は、疾患の状態を判断するためにテーブルおよび/またはルックアップテーブルとの比較を必要とする値であってよい。
【0235】
機械学習システム110は、とくには所与のアルゴリズムにおいて論理を実行するための機械学習のために構成されたプロセッサ、マイクロプロセッサ、またはコンピュータシステムなどの少なくとも1つの処理ユニット112を備える。機械学習システム110は、少なくとも1つの機械学習アルゴリズムを実施および/または実行するように構成されてよく、機械学習アルゴリズムは、トレーニング用データに基づいて少なくとも1つの分析モデルを構築するように構成される。処理ユニット112は、少なくとも1つのプロセッサを備えることができる。とくには、処理ユニット112は、コンピュータまたはシステムを駆動する基本的な命令を処理するように構成されてよい。例として、処理ユニット112は、少なくとも1つの算術論理演算ユニット(ALU)と、数値演算コプロセッサまたは数値コプロセッサなどの少なくとも1つの浮動小数点ユニット(FPU)と、複数のレジスタと、キャッシュメモリなどのメモリとを備えてもよい。とくには、処理ユニット112は、マルチコアプロセッサであってよい。処理ユニット112は、機械学習のために構成されてもよい。処理ユニット112は、中央処理装置(CPU)および/または1つ以上のグラフィック処理ユニット(GPU)および/または1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)および/または1つ以上のテンソル処理ユニット(TPU)および/または1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などを備えることができる。
【0236】
機械学習システムは、入力データを受け取るように構成された少なくとも1つの通信インターフェース114を備える。通信インターフェース114は、例えば別のデバイスに情報を送信または出力するなどの目的で、例えばコンピュータなどの計算デバイスから情報を転送するように構成されてよい。これに加え、あるいは代えて、通信インターフェース114は、例えば情報を受け取るために、例えばコンピュータなどの計算デバイスに情報を転送するように構成されてよい。通信インターフェース114は、具体的には、情報を転送または交換するための手段を提供することができる。とくに、通信インターフェース114は、例えば、ブルートゥース、NFC、誘導結合、などのデータ転送接続を提供することができる。例として、通信インターフェース114は、ネットワークまたはインターネットポート、USBポート、およびディスクドライブのうちの1つ以上を備える少なくとも1つのポートであってよく、あるいはそのような少なくとも1つのポートを備えることができる。通信インターフェース114は、少なくとも1つのウェブインターフェースであってよい。
【0237】
入力データは、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットを含み、履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットは、予測すべき疾患の状態を表す複数の測定値を含む。履歴デジタルバイオマーカ特徴データのセットは、予測すべき疾患の状態を表す対象者ごとの複数の測定値を含む。例えば、多発性硬化症を表す少なくとも1つの目標を予測するためのモデル構築の場合、デジタルバイオマーカ特徴データは、Floodlight POC研究からのデータであってよい。例えば、脊髄性筋萎縮症を表す少なくとも1つの目標を予測するためのモデル構築の場合、デジタルバイオマーカ特徴データは、OLEOS研究からのデータであってよい。例えば、ハンチントン病を表す少なくとも1つの目標を予測するためのモデル構築の場合、デジタルバイオマーカ特徴データは、HD OLE研究、ISIS 44319-CS2からのデータであってよい。入力データは、少なくとも1つの能動的テストおよび/または少なくとも1つの受動的監視において決定されてよい。例えば、入力データは、少なくとも1つの認知テストおよび/または少なくとも1つの手運動機能テストおよび/または少なくとも1つの運動性テストなどの少なくとも1つのモバイルデバイスを使用する能動的テストで決定されてよい。
【0238】
入力データは、目標データをさらに含むことができる。目標データは、予測すべき臨床値を含み、とくには対象者ごとに1つの臨床値を含む。目標データは、数値またはカテゴリのいずれかであってよい。臨床値は、疾患の状態を直接的または間接的に指すことができる。
【0239】
処理ユニット112は、入力データから特徴を抽出するように構成されてよい。特徴の抽出は、データ集約、データ削減、データ変換、などのうちの1つ以上を含むことができる。処理ユニット112を、特徴をランク付けするように構成することができる。例えば、特徴を、それらの関連性に関して、すなわち目標変数との相関に関してランク付けすることができ、さらには/あるいは特徴を、冗長性に関して、すなわち特徴間の相関に関してランク付けすることができる。処理ユニット110を、最大関連性-最小冗長性技術を使用して特徴をランク付けするように構成することができる。この方法は、関連性と冗長性との間のトレードオフを使用して全ての特徴をランク付けする。具体的には、特徴の選択およびランク付けを、Ding C.,Peng H.“Minimum redundancy feature selection from microarray gene expression data”,J Bioinform Comput Biol.2005 Apr;3(2):185-205,PubMed PMID:15852500に記載されているように実行することができる。特徴の選択およびランク付けを、Dingらに記載の方法と比較して修正された方法を使用して実行してもよい。平均相関係数ではなく、最大相関係数を使用してもよく、加算変換が適用されてもよい。分析モデルとしての回帰モデルの場合、変換は、平均相関係数の値を5乗に上げることができる。分析モデルとしての分類モデルの場合、平均相関係数の値に10を乗算してもよい。
【0240】
機械学習システム110は、少なくとも1つのアルゴリズムを備える少なくとも1つの機械学習モデルを含む少なくとも1つのモデルユニット116を備える。モデルユニット116は、複数の機械学習モデル、例えば、回帰モデルを構築するための異なる機械学習モデルおよび分類モデルを構築するための機械学習モデルを含むことができる。例えば、分析モデルは、回帰モデルであってよく、機械学習モデルのアルゴリズムは、k近傍法(kNN);線形回帰;部分的最終二乗(PLS);ランダムフォレスト(RF);およびエクストラツリー(XT)からなる群から選択される少なくとも1つのアルゴリズムであってよい。例えば、分析モデルは、分類モデルであってよく、機械学習モデルのアルゴリズムは、k近傍法(kNN);サポートベクターマシン(SVM);線形判別分析(LDA);二次判別分析(QDA);ナイーブベイズ(NB);ランダムフォレスト(RF);およびエクストラツリー(XT)からなる群から選択される少なくとも1つのアルゴリズムであってよい。
【0241】
処理ユニット112は、入力データを前処理するように構成されてもよい。前処理112は、入力データが少なくとも1つの品質基準を満たすための少なくとも1つのフィルタ処理プロセスを含むことができる。例えば、入力データを、欠落変数を除去するためにフィルタにかけることができる。例えば、前処理は、予め定義された最小観察数未満の対象者からのデータを除外することを含むことができる。
【0242】
処理ユニット112は、入力データセットから、少なくとも1つのトレーニング用データセットおよび少なくとも1つのテストデータセットを決定するように構成される。トレーニング用データセットは、複数のトレーニング用データセットを含むことができる。とくには、トレーニング用データセットは、入力データの対象者ごとのトレーニング用データセットを含む。テストデータセットは、複数のテストデータセットを含むことができる。とくには、テストデータセットは、入力データの対象者ごとのテストデータセットを含む。処理ユニット112は、トレーニング用データセットおよびテストデータセットを入力データの対象者ごとに生成および/または作成するように構成されてよく、対象者ごとのテストデータセットが、その対象者のみのデータを含むことができる一方で、その対象者のためのトレーニング用データセットは、他の全ての入力データを含む。
【0243】
処理ユニット112は、各々の対象者のためのトレーニング用データセットおよびテストデータセットの双方に対して少なくとも1つのデータ集約および/またはデータ変換を実行するように構成されてよい。変換および特徴のランク付けのステップは、トレーニング用データセットおよびテストデータセットへの分割を行うことなく実行されてよい。これは、例えばデータからの重要な特徴の干渉を可能にすることを許し得る。処理ユニット112は、トレーニング用データセットおよびテストデータセットについて、少なくとも1つの安定化変換;少なくとも1つの集約;および少なくとも1つの正規化のうちの1つ以上のために構成されてよい。例えば、処理ユニット112は、特徴の平均値を対象者ごとに決定するトレーニング用データセットおよびテストデータセットの双方の対象者ごとのデータ集約のために構成されてよい。例えば、処理ユニット112は、各々の特徴に関して少なくとも1つの分散安定化関数が適用される分散安定化のために構成されてよい。分散安定化関数は、全ての値が300よりも大きく、かつ0と1との間の値が存在しない場合に使用され得るロジスティック;全ての値が0以上1以下である場合に使用され得るロジット;シグモイド;全ての値が0以上であると考えられる場合に使用され得るlog10からなる群から選択される少なくとも1つの関数であってよい。処理ユニット112は、各々の分散変換関数を使用して各々の特徴の値を変換するように構成されてよい。処理ユニット112は、特定の基準を使用して、元の分布を含む得られた分布の各々を評価するように構成されてよい。分析モデルとしての分類モデルの場合、すなわち目標変数が離散的である場合、前記基準は、得られた値が異なるクラスをどの程度分離することができるか、であってよい。具体的には、この目的のために、全てのクラスごとの平均シルエット値の最大値を使用することができる。分析モデルとしての回帰モデルの場合、基準は、分散安定化関数を適用して得られた値を目標変数に対して回帰させた後に得られる平均絶対誤差であってよい。この選択基準を使用して、処理ユニット112は、トレーニング用データセット上で、最良の可能な変換(存在する場合)が元の値よりも良好であると決定するように構成されてよい。続いて、最良の可能な変換をテストデータセットに適用することができる。例えば、処理ユニット112は、zスコア変換のために構成されてよく、変換された特徴ごとに、トレーニング用データセット上で平均および標準偏差が決定され、これらの値が、トレーニング用データセットおよびテストデータセットの双方のzスコア変換に使用される。例えば、処理ユニット112は、トレーニング用データセットおよびテストデータセットの双方について3つのデータ変換ステップを実行するように構成されてよく、変換ステップは、以下を含む:1.対象者ごとのデータ集約;2.分散安定化;3.zスコア変換。処理ユニット112は、ランク付けおよび変換ステップの少なくとも1つの出力を決定および/または提供するように構成されてよい。例えば、ランク付けおよび変換ステップの出力は、少なくとも1つの診断プロットを含むことができる。診断プロットは、ランク付け手順に関連する重要な統計を比較する少なくとも1つの主成分分析(PCA)プロットおよび/または少なくとも1つのペアプロットを含むことができる。
【0244】
処理ユニット112は、機械学習モデルをトレーニング用データセットでトレーニングすることによって分析モデルを決定するように構成される。トレーニングは、最良のパラメータの組み合わせを決定する少なくとも1つの最適化または調整プロセスを含むことができる。トレーニングは、異なる対象者のトレーニング用データセットに上で反復的に実行されてよい。処理ユニット112は、トレーニング用データセットを用いて機械学習モデルをトレーニングすることによって分析モデルを決定するために異なる数の特徴を考慮するように構成されてよい。機械学習モデルのアルゴリズムは、異なる数の特徴を、例えばそれらのランキングに応じて使用して、トレーニング用データセットに適用されてよい。トレーニングは、モデルパラメータのロバストな推定値を得るためのn倍交差検証を含むことができる。機械学習モデルのトレーニングは、少なくとも1つの制御された学習プロセスを含むことができ、少なくとも1つのハイパーパラメータが、トレーニングプロセスを制御するために選択される。必要に応じて、ハイパーパラメータの異なる組み合わせをテストするために、トレーニングステップが繰り返される。
【0245】
とくには、機械学習モデルのトレーニングに続いて、処理ユニット112は、決定された分析モデルを使用してテストデータセット上で目標変数を予測するように構成される。処理ユニット112は、決定された分析モデルを使用して、各々の対象者の目標変数を、その対象者のテストデータセットに基づいて、予測するように構成されてよい。処理ユニット112は、分析モデルを使用して、各々の対象者の目標変数を、それぞれのトレーニング用データセットおよびテストデータセット上で予測するように構成されてよい。処理ユニット112は、例えば、少なくとも1つの出力ファイルに、対象者ごとの予測した目標変数および対象者ごとの目標変数の真の値の双方を記録および/または記憶するように構成されてよい。
【0246】
処理ユニット112は、予測した目標変数とテストデータセットの目標変数の真の値とに基づいて、決定された分析モデルのパフォーマンスを判断するように構成される。パフォーマンスを、予測した目標変数と目標変数の真の値との間の偏差によって特徴付けることができる。機械学習システム110は、少なくとも1つの出力インターフェース118を備えることができる。出力インターフェース118は、通信インターフェース114と同一に設計されてよく、さらには/あるいは通信インターフェース114と一体に形成されてもよい。出力インターフェース118は、少なくとも1つの出力をもたらすように構成されてよい。出力は、決定された分析モデルのパフォーマンスに関する少なくとも1つの情報を含むことができる。決定された分析モデルのパフォーマンスに関する情報は、少なくとも1つのスコアチャート、少なくとも1つの予測プロット、少なくとも1つの相関プロット、および少なくとも1つの残差プロットのうちの1つ以上を含むことができる。
【0247】
モデルユニット116は、複数の機械学習モデルを含むことができ、機械学習モデルは、それらのアルゴリズムによって区別される。例えば、回帰モデルを構築するために、モデルユニット116は、k近傍法(kNN)、線形回帰、部分的最終二乗(PLS)、ランダムフォレスト(RF)、およびエクストラツリー(XT)というアルゴリズムを含むことができる。例えば、分類モデルを構築するために、モデルユニット116は、k近傍法(kNN)、サポートベクターマシン(SVM)、線形判別分析(LDA)、二次判別分析(QDA)、ナイーブベイズ(NB)、ランダムフォレスト(RF)、およびエクストラツリー(XT)というアルゴリズムを含むことができる。処理ユニット112は、機械学習モデルの各々について、それぞれの機械学習モデルをトレーニング用データセットでトレーニングすることによって分析モデルを決定し、決定された分析モデルを使用してテストデータセット上で目標変数を予測するように構成されてよい。
【0248】
図2が、本発明による方法の例示的な一連のステップを示している。参照番号120で示されるステップa)において、入力データが通信インターフェース114を介して受信される。本方法は、参照番号122で示される入力データの前処理を含む。上記で概説したように、前処理は、入力データが少なくとも1つの品質基準を満たすための少なくとも1つのフィルタ処理プロセスを含むことができる。例えば、入力データを、欠落変数を除去するためにフィルタにかけることができる。例えば、前処理は、予め定義された最小観察数未満の対象者からのデータを除外することを含むことができる。参照番号124で示されるステップb)において、トレーニング用データセットおよびテストデータセットが、処理ユニット112によって決定される。本方法は、各々の対象者のためのトレーニング用データセットおよびテストデータセットの双方に対する少なくとも1つのデータ集約および/またはデータ変換をさらに含むことができる。本方法は、少なくとも1つの特徴抽出をさらに含むことができる。データ集約および/またはデータ変換ならびに特徴抽出のステップは、図2において参照番号126で示されている。特徴抽出は、特徴のランク付けを含むことができる。参照番号128で示されるステップc)において、分析モデルが、トレーニング用データセットで少なくとも1つのアルゴリズムを備える機械学習モデルをトレーニングすることによって決定される。参照番号130で示されるステップd)において、決定された分析モデルを使用して、テストデータセット上で目標変数が予測される。参照番号132で示されるステップe)において、決定された分析モデルのパフォーマンスが、予測された目標変数とテストデータセットの目標変数の真の値とに基づいて決定される。
【0249】
図3A図3Cが、分析モデルのパフォーマンスを評価するための相関プロットの実施形態を示している。
【0250】
図3Aは、多発性硬化症を表す総合障害度スケール値を予測するための分析モデル、とくには回帰モデルの相関プロットを示している。52人の対象者のFloodlight POC研究からのデータを入力データとした。
【0251】
有望な予備研究(FLOODLIGHT)において、多発性硬化症の患者におけるデジタル技術を用いたリモート患者監視の実現可能性を評価した。研究の集団を、以下の組み入れ基準および除外基準を使用することによって選択した:
主要な組み入れ基準:
署名済みインフォームドコンセントフォーム
研究の治験実施計画書を遵守できると治験責任医師が判断すること
18歳以上55歳以下
改訂版McDonald 2010基準に従って確認されたMSの確定診断を有すること
0.0以上5.5以下のEDSSスコア
体重:45~110kg
妊娠可能な女性の場合:試験期間中に許容可能な受胎調節方法を使用する旨の合意
主要な除外基準:
治験責任医師の裁量による重症および不安定患者
登録前の最後の12週間における投薬レジメンの変更または疾患修飾療法(DMT)の切り替え
妊娠中もしくは授乳中、または試験中に妊娠することを意図している
【0252】
この研究の主な目的は、コンプライアンスレベル(%)として定量化されたスマートフォンおよびスマートウォッチに基づく評価への遵守を示し、満足度アンケートを使用して、スマートフォンおよびスマートウォッチの評価スケジュールに対する患者および健常対照からのフィードバック、ならびに日常活動への影響を得ることである。さらに、さらなる目的が対処され、とくには、Floodlightテストを使用して行われた評価と従来のMS臨床転帰との間の関連性が判定され、Floodlight測定が疾患活動性/進行のマーカとして使用され得、経時的なMRIおよび臨床転帰の変化に関連するかどうかが確立され、FloodlightテストバッテリがMSを有する患者と有しない患者との間、およびMSを有する患者の表現型間で区別できるかどうかが判定された。
【0253】
能動的テストおよび受動的監視に加えて、以下の評価をスケジューリングされた各診療所訪問で実施した:
・ SDMTの口頭バージョン
・ 運動機能および認知機能の疲労尺度(FSMC)
・ 時限25フィート歩行テスト(T25-FW)
・ ベルグバランス尺度(BBS)
・ 9孔ペグテスト(9HPT)
・ 患者健康アンケート(PHQ-9)
・ MSのみを有する患者:
・ 脳MRI(MSmetrix)
・ 総合障害度スケール(EDSS)
・ 患者決定疾患ステップ(PDDS)
・ MSIS-29のペンおよび紙バージョン
【0254】
診療所でのテストを実施している間、患者および健常対照は、スマートフォンおよびスマートウォッチを携帯/装着して、診療所での測定とともにセンサデータを収集するように求められた。要約すると、テストの結果は、患者がスマートフォンおよびスマートウォッチベースの評価に非常に関与していることを示した。さらに、テストとベースラインで記録された診療所の臨床転帰測定との間には相関関係があり、これは、スマートフォンベースのFloodlightテストバッテリが現実世界のシナリオでMSを継続的に監視するための強力なツールになることを示唆している。さらに、歩行中およびUターン中のターン速度のスマートフォンに基づく測定は、EDSSと相関するように見えた。
【0255】
図3Aでは、本発明の方法を使用してモデル構築中に7つのテストからの合計889個の特徴を評価した。この予測に使用されたテストは、対象者が所与の時間スパンにおいて可能な限り多くの記号を数字に一致させなければならない記号数字モダリティテスト(SDMT);対象者が親指と人差し指を使用して所与の期間内に画面上に表示される可能な限り多くのトマトを潰さなければならないピンチテスト;対象者がスクリーン上の形状をトレースしなければならない形状描画テスト;対象者が30秒間直立しなければならない立位バランステスト;対象者が短いスパンを歩いた後に180度ターンしなければならない5回Uターンテスト;対象者が2分間歩行しなければならない2分間歩行テスト;最後に歩行の受動的監視であった。以下の表は、予測に使用された選択された特徴、特徴が導出されたテスト、特徴およびランク付けの簡単な説明を与える。
【0256】
図3Aは、各々の回帰器タイプについて、とくには左から右へとkNN、線形回帰、PLS、RF、およびXTについて、予測された目標変数と真の目標変数との間のスピアマン相関係数rを、それぞれの分析モデルに含まれる特徴の数fの関数として示している。上段は、テストデータセットに対してテストされたそれぞれの分析モデルのパフォーマンスを示している。下段は、トレーニング用データにおいてテストされたそれぞれの分析モデルのパフォーマンスを示している。下段の曲線は、トレーニング用データ上の目標変数の予測から得られた「全て」および「平均」の結果を示している。「平均」は、対象者あたりの全ての観察の平均値に対する予測を指す。「全て」は、全ての個々の観測値に対する予測を指す。任意の機械学習モデルのパフォーマンスの評価に関して、テストデータ(上段)からの結果がより信頼性が高いと考えられた。最良に機能する回帰モデルは、円および矢印で示される0.77のr値を有するモデルに含まれる32個の特徴を有するRFであることが分かった。
【0257】
以下で、テストをさらに詳細に説明する。テストは、典型的には、本明細書の他の箇所で指定されるようなモバイルデバイスなどのデータ取得デバイス上にコンピュータ実装される。
【0258】
(1)歩行および姿勢の受動的監視のためのテスト:受動的監視
【0259】
モバイルデバイスは、典型的には、活動の全てまたはサブセットの受動的監視からデータを実行または取得するように構成される。とくに、受動的監視は、歩行の測定値、日常ルーチン全般における移動量、日常ルーチンにおける移動のタイプ、日常生活における一般的な移動性、および移動行動の変化からなる群から選択される1日または数日あるいは1週間または数週間などの所定のウィンドウの間に実行される1つ以上の活動の監視を含むものとする。
【0260】
関心対象の典型的な受動的監視パフォーマンスパラメータ:
a.歩行の頻度および/または速度;
b.起立/着席、静止、およびバランスの量、能力、および/または速度
c.一般的な移動性の指標としての訪問場所の数;
d.移動行動の指標としての訪問場所の種類。
【0261】
(2)認知能力のテスト:SDMT(eSDMTとも呼ばれる)
さらに、モバイルデバイスは、典型的には、コンピュータ実装の符号数字モダリティテスト(eSDMT)を実行し、あるいはこのテストからデータを取得するように構成される。このテストの従来からの紙のSDMTバージョンは、最大90秒で表示される120個のシンボルのシーケンスと、所定の順序で9個のシンボルおよび1から9までのそれぞれの一致する数字を有する参照キーの凡例(3つのバージョンが利用可能である)とからなる。スマートフォンベースのeSDMTは、患者が自身で行うことを意図しており、一連のシンボル、典型的には同じ110個のシンボルのシーケンスと、文書/口頭バージョンのSDMTの参照キーの凡例、典型的には3個の参照キーの凡例の間のランダムな交替(或るテストから次のテストへの)とを使用する。eSDMTは、文書/口頭バージョンと同様に、90秒の時間などの所定の時間ウィンドウにおいて、抽象記号と特定の数字とを対にする速度(正しい対の応答の数)を測定する。テストは、典型的には毎週行われるが、代わりに、より高い頻度(例えば、毎日)またはより低い頻度(例えば、隔週)で行われてもよい。あるいは、テストは、110を超える記号および参照キーの凡例のより多くのおよび/または進化的バージョンを包含することもできる。また、記号シーケンスは、ランダムに、あるいは任意の他の修飾された予め指定されたシーケンスに従って、施され得る。
【0262】
関心対象の典型的なeSDMTパフォーマンスパラメータ:
1.正答数
a.90秒間の全正答(CR)の総数(口頭/紙SDMTと同様)
b.時刻0から30秒までの正答数(CR0~30
c.時刻30から60秒までの正答数(CR30~60
d.時刻60から90秒までの正答数(CR60~90
e.時刻0から45秒までの正答数(CR0~45
f.時刻45から90秒までの正答数(CR45~90
g.時刻iからj秒までの正答数(CRi~j)(i、jは、1から90秒の間であり、i<j)
2.エラー数
a.90秒間のエラーの総数(E)
b.時刻0から30秒までのエラー数(E0~30
c.時刻30から60秒までのエラー数(E30~60
d.時刻60から90秒までのエラー数(E60~90
e.時刻0から45秒までのエラー数(E0~45
f.時刻45から90秒までのエラー数(E45~90
g.時刻iからj秒までのエラー数(Ei~j)(i、jは、1から90秒の間であり、i<j)
3.回答数
a.90秒間の全回答の総数(R)
b.時刻0から30秒までの回答数(R0~30
c.時刻30から60秒までの回答数(R30~60
d.時刻60から90秒までの回答数(R60~90
e.時刻0から45秒までの回答数(R0~45
f.時刻45から90秒までの回答数(R45~90
4.正答率
a.90秒間にわたる平均正答率(AR):AR=CR/R
b.時刻0から30秒までの平均正答率(AR):AR0~30=CR0~30/R0~30
c.時刻30から60秒までの平均正答率(AR):AR30~60=CR30~60/R30~60
d.時刻60から90秒までの平均正答率(AR):AR60~90=CR60~90/R60~90
e.時刻0から45秒までの平均正答率(AR):AR0~45=CR0~45/R0~45
f.時刻45から90秒までの平均正答率(AR):AR45-90=CR45-90/R45-90
5.タスク終了時の疲労指数
a.最後の30秒間の速度疲労指数(SFI):SFI60~90=CR60~90/max(CR0~30,CR30~60
b.最後の45秒間のSFI:SFI45~90=CR45~90/CR0~45
c.最後の30秒間の精度疲労指数(AFI):AFI60~90=AR60~90/max(AR0~30,AR30~60
d.最後の45秒間のAFI:AFI45~90=AR45~90/AR0~45
6.最長連続正答シーケンス
a.90秒間の全体の最長の連続正答シーケンス内の正答数(CCR)
b.時刻0から30秒までの最長の連続正答シーケンス内の正答数(CCR0~30
c.時刻30から60秒までの最長の連続正答シーケンス内の正答数(CCR30~60
d.時刻60から90秒までの最長の連続正答シーケンス内の正答数(CCR60~90
e.時刻0から45秒までの最長の連続正答シーケンス内の正答数(CCR0~45
f.時刻45から90秒までの最長の連続正答シーケンス内の正答数(CCR45~90
7.回答間の時間ギャップ
a.2つの連続する回答間のギャップ(G)時間の連続変数分析
b.90秒間にわたる2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ(GM)時間
c.時刻0から30秒までの2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ時間(GM0~30
d.時刻30から60秒までの2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ時間(GM30~60
e.時刻60から90秒までの2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ時間(GM60~90
f.時刻0から45秒までの2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ時間(GM0~45
g.時刻45から90秒までの2つの連続する回答間で経過した最大ギャップ時間(GM45~90
8.正答間の時間ギャップ
a.2つの連続した正答間のギャップ(Gc)時間の連続変数分析
b.90秒間にわたる2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM)
c.時刻0から30秒までの2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM0~30
d.時刻30から60秒までの2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM30~60
e.時刻60から90秒までの2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM60~90
f.時刻0から45秒までの2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM0~45
g.時刻45から90秒までの2つの連続した正答間で経過した最大ギャップ時間(GcM45~90
9.eSDMT中に取り込まれた微細指運動スキル機能パラメータ
a.90秒にわたって回答をタイピングする場合のタッチスクリーン接触時間(Tts)、タッチスクリーン接触と最も近いターゲット数字キーの中心との偏差(Dts)、および誤ったタッチスクリーン接触(Mts)(すなわちキーヒットをトリガせず、あるいはキーヒットをトリガするが、スクリーン上での二次スライドを伴う接触)の連続変数分析
b.時刻0から30秒までのエポック別のそれぞれの変数:Tts0~30、Dts0~30、Mts0~30
c.時刻30から60秒までのエポック別のそれぞれの変数:Tts30~60、Dts30~60、Mts30~60
d.時刻60から90秒までのエポック別のそれぞれの変数:Tts60~90、Dts60~90、Mts60~90
e.時刻0から45秒までのエポック別のそれぞれの変数:Tts0~45、Dts0~45、Mts0~45
f.時刻45から90秒までのエポック別のそれぞれの変数:Tts45~90、Dts45~90、Mts45~90
10.単一記号または記号のクラスタによるパフォーマンスの記号固有分析
a.個別の9つの記号およびそれらの全ての可能なクラスタ化組み合わせの各々についてのCR
b.個別の9つの記号およびそれらの全ての可能なクラスタ化組み合わせの各々についてのAR
c.個別の9つの記号およびそれらの全ての可能なクラスタ化組み合わせの各々について、以前の回答から記録された回答までのギャップ時間(G)
d.個別の9つの記号および個別の9桁の回答について誤った置換のタイプを探索することによって優先的誤答を認識するためのパターン分析。
11.学習および認知予備力分析
a.eSDMTの連続実施間のCR(全体および#9に記載の記号ごと)のベースライン(最初の2回のテスト実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
b.eSDMTの連続実施間のAR(全体および#9に記載の記号ごと)のベースライン(最初の2回のテスト実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
c.eSDMTの連続実施間の平均GおよびGM(全体および#9に記載の記号ごと)のベースライン(最初の2回のテスト実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
d.eSDMTの連続実施間の平均GcおよびGcM(全体および#9に記載の記号ごと)のベースライン(最初の2回のテスト実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
e.eSDMTの連続実施間のSFI60~90およびSFI45~90のベースライン(最初の2回のテスト実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
f.eSDMTの連続実施間のAFI60~90およびAFI45~90のベースライン(最初の2回のテスト実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
g.eSDMTの連続実施間のTtsのベースライン(最初の2回のテスト実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
h.eSDMTの連続実施間のDtsのベースライン(最初の2回のテスト実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
i.eSDMTの連続実施間のMtsのベースライン(最初の2回のテスト実施からの平均パフォーマンスとして定義されるベースライン)からの変化
【0263】
(3)能動的歩行および姿勢能力のテスト:Uターンテスト(5回Uターンテスト(5UTT)とも表記される)および2MWT
歩行パフォーマンスならびに歩行およびストライドの動態の測定のためのセンサベース(例えば、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計、全地球測位システム[GPS])のコンピュータ実装テスト、とりわけ2分間歩行テスト(2MWT)および5回Uターンテスト(5UTT)。
【0264】
一実施形態において、モバイルデバイスは、2分間歩行テスト(2MWT)を実行し、あるいはこのテストからデータを取得するように構成される。このテストの目的は、2分間歩行テスト(2MWT)における歩行特徴を捕捉することによって、長距離歩行における困難性、疲労性、または異常なパターンを評価することである。データがモバイルデバイスから取り込まれる。障害の進行または新たな再発の場合に、ストライドおよびステップ長の減少、ストライドの持続時間の増加、ステップの持続時間の増加、ならびにストライドおよびステップの非対称性および低い周期性が観察され得る。歩行中の腕のスイングの動態も、モバイルデバイスを介して評価される。対象者は「2分間にわたって、できるだけ速く、かつ長く、しかしながら安全に歩く」ように指示される。2MWTは、屋内または屋外で、患者がUターンなしで200メートル以上まっすぐ歩くことができることを確認した場所の平坦な地面で、行われる必要がある単純なテストである。対象者は、必要に応じて、通常の履物ならびに補助装置および/または矯正器具を着用することができる。テストは、典型的には毎日行われる。
【0265】
特定の目的の典型的な2MWTパフォーマンスパラメータ:
1.歩行速度および痙縮の代わり:
a.例えば2分間で検出された総ステップ数(ΣS)
b.2分以内に停止が検出された場合の総停止回数(ΣRs)
c.2MWT全体の歩行ステップ時間(WsT)の持続時間の連続変数分析
d.2MWT全体の歩行ステップ速度(WsV)(ステップ/秒)の連続変数分析
e.2MWT全体のステップ非対称率(或るステップから次のステップまでのステップ持続時間の平均差を平均ステップ持続時間で割ったもの):SAR=平均Δ(WsT-WsTx+1)/(120/ΣS)
f.20秒の各エポックについて検出されたステップの総数(ΣSt,t+20
g.20秒の各エポックにおける平均歩行ステップ持続時間:WsTt,t+20=20/ΣSt,t+20
h.20秒の各エポックにおける平均歩行ステップ速度:WsVt,t+20=ΣSt,t+20/20
i.20秒の各エポックにおけるステップ非対称率:SARt,t+20=平均Δt,t+20(WsT-WsTx+1)/(20/ΣSt,t+20
j.生体力学的モデリングによる歩幅および総歩行距離
2.歩行疲労指数:
a.減速指数:DI=WsV100~120/max(WsV0~20,WsV20~40,WsV40~60
b.非対称指数:AI=SAR100~120/min(SAR0~20,SAR20~40,SAR40~60
【0266】
別の実施形態において、モバイルデバイスは、5回Uターンテスト(5UTT)を実行し、あるいはこのテストからデータを取得するように構成される。このテストの目的は、快適なペースで短距離を歩行しているときにUターンを行う際の困難性または異常なパターンを評価することである。5UTTは、屋内または屋外において平坦な地面で行われる必要があり、患者は、「安全に歩行し、数メートル離れた2つの地点の間を行き来するUターンを5回連続して行う」ように指示される。このタスクの最中の歩行特徴データ(Uターン中のステップカウント、ステップ持続時間、および非対称性の変化、Uターン持続時間、ターン速度、およびUターン中の腕振りの変化)が、モバイルデバイスによって取り込まれる。対象者は、必要に応じて、通常の履物ならびに補助装置および/または矯正器具を着用することができる。テストは、典型的には毎日行われる。
【0267】
関心対象の典型的な5UTTパフォーマンスパラメータ:
1.完全なUターンの開始から終了までに必要な平均ステップ数(ΣSu)
2.完全なUターンの開始から終了までに必要な平均時間(Tu)
3.平均歩行ステップ持続時間:Tsu=Tu/ΣSu
4.ターン方向(左/右)
5.ターン速度(度/秒)
【0268】
図3Bが、脊髄性筋萎縮症を表す努力肺活量(FVC)値を予測するための分析モデル、とくには回帰モデルの相関プロットを示している。14人の対象者のOLEOS研究からのデータを入力データとした。本発明による方法を使用して、モデル構築中に、9つのテストからの合計1326個の特徴を評価した。以下の表は、予測に使用された選択された特徴、特徴が導出されたテスト、特徴およびランク付けの簡単な説明を与える。
【0269】
図3Bは、各々の回帰器タイプについて、とくには左から右へとkNN、線形回帰、PLS、RF、およびXTについて、予測された目標変数と真の目標変数との間のスピアマン相関係数rを、それぞれの分析モデルに含まれる特徴の数fの関数として示している。上段は、テストデータセットに対してテストされたそれぞれの分析モデルのパフォーマンスを示している。下段は、トレーニング用データにおいてテストされたそれぞれの分析モデルのパフォーマンスを示している。下段の曲線は、トレーニング用データ上の目標変数の予測から得られた「全て」および「平均」の結果を示している。「平均」は、対象者ごとの全ての観察の平均値に対する予測を指す。「全て」は、全ての個々の観測値に対する予測を指す。任意の機械学習モデルのパフォーマンスの評価に関して、テストデータ(上段)からの結果がより信頼性が高いと考えられた。最良に機能する回帰モデルは、円および矢印で示される0.8のr値を有するモデルに含まれる10個の特徴を有するPLSであることが分かった。
【0270】
以下で、テストをさらに詳細に説明する。テストは、典型的には、本明細書の他の箇所で指定されるようなモバイルデバイスなどのデータ取得デバイス上にコンピュータ実装される。
【0271】
(1)中心運動機能のテスト:形状描画テストおよび形状潰しテスト
モバイルデバイスを、指の器用さおよび遠位部虚弱を測定するように構成された遠位部運動機能のさらなるテスト(いわゆる「形状描画テスト」)を実行し、あるいはこのテストからデータを取得するようにさらに構成することができる。そのようなテストから得られるデータセットによって、指の動きの精度、圧力プロファイル、および速度プロファイルを特定することが可能になる。
【0272】
「形状描画」テストの目的は、微細指制御およびストロークシーケンシングを評価することである。このテストは、手の運動機能障害の以下の態様、すなわち震えおよび痙縮ならびに手と眼の協調の障害を網羅すると考えられる。患者は、テスト対象ではない方の手でモバイルデバイスを保持し、モバイルデバイスのタッチスクリーン上に、次第に複雑になる事前に書かれた6つの交互の形状(直線、長方形、円形、正弦曲線、およびらせん(以下参照))を、テスト対象の手の中指で、例えば30秒の最大時間内で「できるだけ早く正確に」描くように指示される。形状を上手く描くために、患者の指は、タッチスクリーン上を継続的にスライドし、全ての示されたチェックポイントを通過し、書かれる経路の境界の内側を可能な限り保ちつつ、示された始点と終点とをつながなければならない。患者は、6つの形状の各々を上手く完成させるために最大2回の試行を有する。テストは、右手および左手で交互に実施される。ユーザは、毎日交互に行うように指示される。2つの直線形状はそれぞれ、つなぐべき特定の数「a」のチェックポイントを有し、すなわち「a-1」個のセグメントを有する。正方形形状は、つなぐべき特定の数「b」のチェックポイントを有し、すなわち「b-1」個のセグメントを有する。円形形状は、つなぐべき特定の数「c」のチェックポイントを有し、すなわち「c-1」個のセグメントを有する。8の字形状は、つなぐべき特定の数「d」のチェックポイントを有し、すなわち「d-1」個のセグメントを有する。らせん形状は、つなぐべき特定の数「e」のチェックポイントを有し、すなわち「e-1」個のセグメントを有する。したがって、6つの形状が完成したということは、合計で「(2a+b+c+d+e-6)」個のセグメントを描くのに成功したことを意味する。
【0273】
関心対象の典型的な形状描画テストパフォーマンスパラメータ:
形状の複雑さに基づいて、直線および正方形形状には1という重み付け係数(Wf)、円形および正弦曲線形状には2という重み付け係数、らせん形状には3という重み付け係数を関連付けることができる。2回目の試行で上手く完成した形状には、0.5という重み付け係数を関連付けることができる。これらの重み付け係数は、本発明の文脈において変更することが可能な数値例である。
【0274】
1.形状完成パフォーマンススコア:
a.テストごとの形状完成成功数(0~6)(ΣSh)
b.1回目の試行で上手く完成した形状の数(0~6)(ΣSh
c.2回目の試行で上手く完成した形状の数(0~6)(ΣSh
d.全ての試行で失敗した/完成しなかった形状の数(0~12)(ΣF)
e.上手く完成した形状の数をそれぞれの形状の異なる複雑さレベルに関する重み付け係数で調節したものを反映した形状完成スコア(0~10)(Σ[Sh×Wf])
f.上手く完成した形状の数をそれぞれの形状の異なる複雑さレベルに関する重み付け係数で調節したものを反映し、1回目の試行で完成したか、あるいは2回目の試行で完成したかも考慮に入れた形状完成スコア(0~10)(Σ[Sh×Wf]+Σ[Sh×Wf×0.5])
g.#1eおよび#1fに定義の形状完成スコアは、30/t(tは、テスト完了までの時間(単位は、秒)を表す)を掛けた場合に、テスト完了における速度を考慮することができる。
h.特定の期間内の複数のテストに基づく6つの個々の形状ごとの全体および1回目の試行の完成率:(ΣSh)/(ΣSh+ΣSh+ΣF)および(ΣSh+ΣSh)/(ΣSh+ΣSh+ΣF)。
2.セグメント完了および迅速性パフォーマンススコア/指標:
(適用可能であれば、各形状に関する2回の試行のうちの最良のもの[完成したセグメントの数が最大のもの]に基づく分析)
a.テストごとの上手く完成したセグメントの数(0~[2a+b+c+d+e-6])(ΣSe)
b.上手く完成したセグメントの平均迅速性([C]、セグメント/秒):C=ΣSe/t(tは、テスト(最大30秒)完了までの時間(単位は、秒)を表す)。
c.上手く完成したセグメントの数をそれぞれの形状の異なる複雑さレベルに関する重み付け係数で調節したものを反映するセグメント完成スコア(Σ[Se×Wf])
d.速度で調節されかつ重み付けされたセグメント完成スコア(Σ[Se×Wf]×30/t)(tは、テスト完了までの時間(単位は、秒)を表す)。
e.直線および正方形形状に関する形状ごとの上手く完成したセグメント数(ΣSeLS
f.円形および正弦曲線形状に関する形状ごとの上手く完成したセグメント数(ΣSeCS
g.らせん形状に関する形状ごとの上手く完成したセグメント数(ΣSe
h.直線および正方形形状のテストで行われた上手く完成したセグメントに関する形状ごとの平均直線迅速性:C=ΣSeLS/t(tは、これらの特定の形状内のそれぞれの上手く完成したセグメントの開始点から終了点までに経過した累積エポック時間(単位は、秒)を表す)。
i.円形および正弦曲線形状のテストで行われた上手く完成したセグメントに関する形状ごとの平均円形迅速性:C=ΣSeCS/t(tは、これらの特定の形状内のそれぞれの上手く完成したセグメントの開始点から終了点までに経過した累積エポック時間(単位は、秒)を表す)。
j.らせん形状のテストで行われた上手く完成したセグメントに関する形状ごとの平均らせん迅速性:C=ΣSe/t(tは、これらの特定の形状内のそれぞれの上手く完成したセグメントの開始点から終了点までに経過した累積エポック時間(単位は、秒)を表す)。
3.描画精度パフォーマンススコア/指標:
(適用可能であれば、各形状に関する2回の試行のうちの最良のもの[完成したセグメントの数が最大のもの]に基づく分析)
a.開始チェックポイントから各々の特定の形状に関して到達した終了チェックポイントまで、描かれた軌跡と目標描画経路との間の積分表面偏差の全曲線下面積(AUC)指標の合計を、これらの形状内のそれぞれの目標経路の全累積長で割ったものとして計算される偏差(Dev)。
b.#3aのDevとして、しかしながらとくに直線および正方形形状のテスト結果から計算される直線偏差(Dev)。
c.#3aのDevとして、しかしながらとくに円形および正弦曲線形状のテスト結果から計算される円形偏差(Dev)。
d.#3aのDevとして、しかしながらとくにらせん形状のテスト結果から計算されるらせん偏差(Dev)。
e.#3aのDevとして、しかしながら6個の個別の形状のテスト結果の各々から別々に計算され、ただし最良の試行において少なくとも3つのセグメントが上手く完成した形状のみに当てはまる形状ごとの偏差(Dev1~6)。
f.目標軌道からの形状ごとまたは形状によらない全体偏差を計算する任意の他の方法の連続変数分析。
4.)圧力プロファイル測定
i)加えられた平均圧力
ii)圧力の標準偏差として計算される偏差(Dev)
【0275】
遠位部運動機能(いわゆる、「形状潰しテスト」)は、指の器用さおよび遠位部虚弱を測定することができる。そのようなテストから取得されるデータセットは、指の動きの精度および速度ならびに関連の圧力プロファイルの特定を可能にする。このテストは、まず対象者の運動精度能力に対する較正を必要とし得る。
【0276】
形状潰しテストの目的は、ピンチ閉鎖指運動の精度を評価することによって、微細な遠位部運動操作(把持および把握)ならびに制御を評価することである。このテストは、手の運動機能の障害の以下の態様、すなわち把持/把握機能の障害、筋力低下、および手と眼の協調の障害を網羅すると考えられる。患者は、テストの対象ではない方の手でモバイルデバイスを保持し、同じ手の2つの指(親指+中指または親指+薬指が好ましい)でスクリーンに触れることによって、30秒の間にできるだけ多くの丸い形状(すなわち、トマト)を潰す/ピンチするように指示される。微細運動操作の障害は、パフォーマンスに影響を及ぼす。テストは、右手および左手で交互に実施される。ユーザは、毎日交互に行うように指示される。
【0277】
関心対象の典型的な形状潰しテストパフォーマンスパラメータ:
1.潰した形状の数
a.30秒間につぶしたトマト形状の総数(ΣSh)
b.最初の試行において30秒間に潰したトマトの総数(ΣSh)(最初の試行は、テストの真に最初の試行ではない場合、うまく潰した後のスクリーン上の最初のダブル接触として検出される)
2.ピンチ動作の精度指標:
a.ΣShをテストの全期間中のピンチ試行の総数(ΣP)(別個に検出されたスクリーン上のダブル指接触の総数として測定される)で割ったものとして定義されるピンチ成功率(PSR)。
b.検出された全てのダブル接触についてスクリーンへの第1の指タッチと第2の指タッチとの間の遅延時間として測定されるダブルタッチ非同期度(DTA)。
c.検出された全てのダブル接触について、ダブル接触における2つの指の開始タッチ点の間の等距離の点からトマト形状の中心までの距離として測定されるピンチ目標精度(PTP)。
d.ピンチ動作に成功する全てのダブル接触について、ダブル接触の開始点からピンチギャップに達するまで2つの指がスライドしたそれぞれの距離の間の比(最短/最長)として測定されるピンチ指運動非対称性(PFMA)。
e.ピンチ動作に成功する全てのダブル接触について、ダブル接触の時点からピンチギャップに達するまでスクリーン上をスライドする一方の指および/または両方の指の速度(mm/秒)として測定されるピンチ指速度(PFV)。
f.ピンチ動作に成功する全てのダブル接触について、ダブル接触の時点からピンチギャップに達するまでスクリーン上をスライドする個々の指それぞれの速度の間の比(最も低い速度/最も高い速度)として測定されるピンチ指非同期度(PFA)。
g.時間につれての2a~2fの連続変数分析、ならびに可変持続時間(5~15秒)のエポックによるそれらの分析。
h.全てのテスト形状(とくには、らせんおよび正方形)に関する目標描画軌跡からの偏差の積分指標の連続変数分析
3.)圧力プロファイル測定
i)加えられた平均圧力
ii)圧力の標準偏差として計算される偏差(Dev)
【0278】
より典型的には、形状潰しテストおよび形状描画テストは、本発明の方法に従って実施される。さらにより具体的には、以下の表1に列挙されるパフォーマンスパラメータが決定される。
【0279】
上記で概説した特徴に加えて、「形状潰し」または「ピンチ」テストの実行時に、さまざまな他の特徴も評価することができる。それらを以下で説明する。以下の用語が、追加の特徴の説明において使用される:
・ ピンチテスト:スクリーン状の丸い形状を潰す親指および人差し指によるピンチ動作を必要とするデジタル上肢/手の可動性テスト。
・ 特徴:遠位部運動テストの1回の実行中にスマートフォンによって収集された生データから計算されたスカラー値。これは、対象者のパフォーマンスのデジタル尺度である。
・ ストローク:スクリーン上に指で描かれた途切れのない経路。ストロークは、指が初めてスクリーンに触れたときに始まり、指がスクリーンから離れたときに終わる。
・ ジェスチャ:最初の指がスクリーンに触れてから最後の指がスクリーンを離れるまでに記録された全てのストロークの集合。
・ 試行:少なくとも2つのストロークを含む任意のジェスチャ。このようなジェスチャは、スクリーン上に見える丸い形状を潰そうとする試行であると考えられる。
・ 2指試行:正確に2つのストロークによる任意の試行。
・ 成功した試行:丸い形状が「潰された」として記録される任意の試行。
【0280】
特徴は以下のとおりである:
・ 最後の点の間の距離:各々の試行について、記録された最初の2つのストロークが保持され、各々のペアについて、両方のストロークの最後の点の間の距離が計算される。これを、全ての試行について行うことができ、あるいは成功した試行についてのみ行うことができる。
・ 終了非対称性:各々の試行について、記録された最初の2つのストロークが保持され、各々のペアについて、第1および第2の指がスクリーンを離れる時間差が計算される。
・ ギャップ時間:連続する試行の各ペアについて、それらの間のギャップの持続時間が計算される。換言すると、試行iおよびi+1の各ペアについて、試行iの終了と試行i+1の開始との間の時間差が計算される。
・ 試行回数:実行された試行の回数が返される。
・ 成功した試行回数:成功した試行の回数が返される。
・ 2指試行の回数:2指試行の回数が返される。これを試行の総数で除算して、2指試行の割合を返すことができる。
・ ピンチ時間:各々の試行について、試行の持続時間が計算される。持続時間は、最初の指がスクリーンに触れてから最後の指がスクリーンを離れるまでの時間に定義される。この特徴を、両方の指がスクリーン上に存在する持続期間と定義することもできる。
・ 開始非対称性:各々の試行について、記録された最初の2つのストロークが維持される。各々のペアについて、第1および第2の指がスクリーンに触れる時間差が計算される。
・ ストローク経路比:各々の試行について、記録された第1および第2のストロークが維持される。各々のストロークについて、2つの値、すなわちスクリーン上で指が移動した経路の長さ、およびストロークにおける最初の点と最後の点との間の距離が計算される。各々のストロークについて、比(経路長/距離)が計算される。これを、全ての試行について行うことができ、あるいは成功した試行についてのみ行うことができる。
【0281】
上記の全ての場合において、テストを数回行い、平均、標準偏差、尖度、中央値、およびパーセンタイルなどの統計パラメータを導出してもよい。このようにして複数の測定が行われる場合、一般的な疲労係数を決定することができる。
・ 一般的な疲労特徴:テストからのデータは、それぞれ例えば15秒などの所定の持続時間の2つの半分に分割される。上記で定義された特徴のいずれも、データの第1および第2の半分を別々に使用して計算され、2つの特徴値が得られる。第1の値と第2の値との間の差が返される。これを、第1の特徴値で除算することによって正規化することができる。
【0282】
場合によっては、モバイルデバイスなどのデータ取得デバイスは、テストの実行の期間において加速度データを測定するように構成されてよい加速度計を含むことができる。以下で説明されるように、加速度データから抽出することもできる種々の有用な特徴が存在する。
・ 水平度:各々の時点について、加速度のz成分が、全体の大きさで除算される。次いで、得られた時系列の平均をとることができる。絶対値をとってもよい。本出願の全体を通して、z成分は、タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な成分と定義される。
・ 方向安定度:各々の時点について、加速度のz成分が、全体の大きさで除算される。次いで、得られた時系列の標準偏差をとることができる。絶対値をとってもよい。ここで、z成分は、タッチスクリーンディスプレイの平面に垂直な成分と定義される。
・ z軸の標準偏差:各々の時点について、加速度のz成分が測定される。次いで、時系列における標準偏差を求めることができる。
・ 加速度の大きさの標準偏差:各々の時点について、加速度のx、y、およびz成分が取得される。x成分の標準偏差が求められる。y成分の標準偏差が求められる。z成分の標準偏差が求められる。次いで、標準偏差のノルムが、3つの別々の標準偏差を求積にて加算することによって計算される。
・ 加速度の大きさ:加速度の全体の大きさを、テストの持続時間について決定してもよい。次いで、統計パラメータを、テストの全期間にわたって導出することができ、あるいは指がスクリーン上に存在する時点についてのみ導出することができ、あるいは指がスクリーン上に存在しない時点についてのみ導出することができる。統計パラメータは、平均、標準偏差、または尖度であってよい。
【0283】
これらの加速度に基づく特徴は、どの種類のテストにおいて抽出されたかにかかわらず、臨床的に意味のある出力をもたらすことができるため、可能であれば、ピンチまたは形状潰しに限られずに取得されてよいことを、強調しておかなければならない。これは、水平度および方向安定度パラメータにとくに当てはまる。
【0284】
データ取得デバイスは、発声能力を測定することによって近位の中央運動機能を測定するように構成された中央運動機能のためのさらなるテスト(いわゆる「音声テスト」)を実行し、あるいはそのようなテストからデータを取得するようにさらに構成されてよい。
【0285】
(2)モンスター応援テスト、音声テスト:
本明細書において使用されるとき、「モンスター応援テスト」という用語は、持続性発声のテストに関し、これは、一実施形態において、腹部および胸部の障害に対処するための呼吸機能評価の代理テストであり、一実施形態において、筋疲労、中枢性緊張低下、および/または換気問題の指標としての音声ピッチ変動を含む。一実施形態において、モンスター応援は、「あー(aaah)」音の制御された発声を持続する参加者の能力を測定する。テストは、適切なセンサを使用し、一実施形態においてはマイクロフォンなどのボイスレコーダを使用して、参加者の発声を捕捉する。
【0286】
実施形態において、対象者によって実行されるべきタスクは、以下のとおりである:モンスター応援は、参加者が、ゴールに向かって走るモンスターの速度を制御することを必要とする。モンスターは、30秒でできるだけ遠くまで走ろうとしている。被験者は、できるだけ長い間、できるだけ大きな「あー」音を出すように求められる。音声の音量が決定され、キャラクタの走行速度を調整するために使用される。ゲーム時間は30秒であるため、必要に応じて複数回の「あー」音を使用してゲームを完了することができる。
【0287】
(3)モンスタータップテスト:
本明細書において使用されるとき、「モンスタータップテスト」という用語は、MFM D3(Berard Cら(2005)、Neuromuscular Disorders 15:463)に従って遠位部運動機能の評価のために設計されたテストに関する。一実施形態において、テストは、器用さ、遠位部の弱点/強度、およびパワーを評価するMFMテスト17(10枚のコインを取る)、18(指でCDの縁を一周する)、19(鉛筆を取ってループを描く)、および22(図面に指を置く)にとくに関係する。ゲームは、参加者の器用さおよび運動の速度を測定する。一実施形態において、対象者によって実行されるべきタスクは、以下のとおりである:対象者は、7つの異なるスクリーン位置にランダムに現れるモンスターをタップする。
【0288】
図3Cが、ハンチントン病を表す総合運動スコア(TMS)値を予測するための分析モデル、とくには回帰モデルの相関プロットを示している。46人の対象者のHD OLE研究、ISIS 44319-CS2からのデータを入力データとした。ISIS 443139-CS2研究は、研究ISIS 443139-CS1に参加した患者のオープンラベル拡張(OLE)である。研究ISIS 443139-CS1は、25歳以上65歳以下の早期発症HDを有する46人の患者における反復用量漸増(MAD)研究であった。合計で43個の特徴を、1つのテスト、すなわち形状描画テスト(上記を参照)から評価し、本発明による方法を使用してモデル構築中に評価した。以下の表が、予測に使用された選択された特徴、特徴が導出されたテスト、特徴およびランク付けの簡単な説明を与える。
【0289】
図3Cは、各々の回帰器タイプについて、とくには左から右へとkNN、線形回帰、PLS、RF、およびXTについて、予測された目標変数と真の目標変数との間のスピアマン相関係数rを、それぞれの分析モデルに含まれる特徴の数fの関数として示している。上段は、テストデータセットに対してテストされたそれぞれの分析モデルのパフォーマンスを示している。下段は、トレーニング用データにおいてテストされたそれぞれの分析モデルのパフォーマンスを示している。下段の曲線は、下段の「全て」および「平均」の結果を示しており、訓練データ上で目標変数を予測した結果である。「平均」は、対象者ごとの全ての観察の平均値に対する予測を指す。「全て」は、全ての個々の観測値に対する予測を指す。任意の機械学習モデルのパフォーマンスの評価に関して、テストデータ(上段)からの結果がより信頼性が高いと考えられた。最良に機能する回帰モデルは、円および矢印で示される0.65のr値を有するモデルに含まれる4個の特徴を有するPLSであることが分かった。
【0290】
図4以降は、ピンチテスト特徴、および形状描画テストから抽出できるオーバーシュート/アンダーシュート特徴に関する本発明の原理の多くを示す。
【0291】
図4は、本出願の発明を実行することができるハードウェアの例示的な配置の上位システム図を示している。システム100は、2つの主要な構成要素、すなわちモバイルデバイス102および処理ユニット104を含む。モバイルデバイス102は、有線ネットワークあるいはWi-Fiまたはセルラーネットワークなどの無線ネットワークであってよいネットワーク106によって処理ユニット104に接続されてよい。本発明のいくつかの実装形態においては、処理ユニット104は不要であり、その機能を、モバイルデバイス102上に存在する処理ユニット112によって実行することができる。モバイルデバイス102は、タッチスクリーンディスプレイ108、ユーザ入力インターフェースモジュール110、処理ユニット112、および加速度計114を含む。
【0292】
システム100を、本出願においてすでに説明したように、ピンチテストおよび/または形状描画テストの少なくとも一方を実施するために使用することができる。ピンチテストの目的は、摘まんで閉じる指の動きの正確さを評価することによって、微細な遠位部運動の操作(把持および把握)ならびに制御を評価することである。このテストは、手の運動機能の障害の以下の態様、すなわち把持/把握機能の障害、筋力低下、および手と眼の協調の障害を網羅することができる。テストを実行するために、患者は、モバイルデバイスをテスト対象ではない方の手に(あるいは、テーブルまたは他の表面に置くことによって)保持し、同じ手の2本の指(好ましくは、親指+人差し指/中指)でスクリーンに触れて、例えば30秒などの一定時間の間にできるだけ多くの丸い形状を圧迫/ピンチするように指示される。丸い形状は、ゲームエリア内のランダムな位置に表示される。微細運動機能の障害は、パフォーマンスに影響を及ぼす。左手および右手で交互にテストを行ってもよい。ピンチテストを説明する際に、以下の用語が使用される。
・ タッチイベント:いつ指がスクリーンに触れたか、およびスクリーンのどこに触れたかを記録するOSによって記録されたタッチ相互作用
・ 開始距離:2本の指の最初のタップによって識別される2点間の距離
・ 境界ボックス:潰されるべき形状を含むボックス
・ 初期指距離:2本の指がスクリーンにタッチしたときの初期距離
・ ゲームエリア:ゲームエリアは、潰されるべき形状を完全に含み、長方形によって境界付けられる。
・ ゲームエリアパディング:スクリーンのエッジと実際のゲームエリアとの間のパディング。このパディング領域には、形状は表示されない。
【0293】
以下のパラメータのうちのいずれかまたは全てを定義することができる。
・ 境界ボックス高さ
・ 境界ボックス幅
・ ピンチ前の2つのポインタ間の最小初期距離
・ 形状を潰すための2つのポインタ間の最小距離
・ 指間の隔たりの最小変化
【0294】
図5Aおよび図5Bが、ユーザがピンチテストの実行時に目にすることができるディスプレイの例を示している。具体的には、図5Aが、タッチスクリーンディスプレイ108を有するモバイルデバイス102を示している。タッチスクリーンディスプレイ108が、形状Sが2つの点P1およびP2を含む典型的なピンチテストを示す。場合によっては、ユーザに形状Sのみが提示される(すなわち、点P1およびP2は具体的には特定されない)。中間点Mも図5Aに示されているが、これもユーザに表示されなくてもよい。テストを行うために、デバイスのユーザは、2本の指を同時に使用して、効果的に点P1およびP2を可能な限り互いに近づけることによって、形状Sをできる限り「ピンチ」しなければならない。好ましくは、ユーザは2本の指のみを使用してこれを行うことができる。すでに述べたように、タッチスクリーンが受け取る入力からデジタルバイオマーカ特徴を抽出することができる。それらのいくつかを、図5Bを参照して以下で説明する。
【0295】
図5Bは、それぞれ経路1および経路2の終点である2つのさらなる点P1’およびP2’を示している。経路1および経路2は、ピンチテストの実行時にユーザの指が辿る経路を表す。図5Bの構成から導出することができるいくつかの特徴として、以下が挙げられる。
・ P1’とP2’との間の距離。
・ P1’とMとの間の平均距離、およびP2’とMとの間の距離。
・ 経路1の長さと、P1とP1’との間の距離(直線)との比。
・ 経路2の長さと、P2とP2’との間の距離(直線)との比。
・ 複数のテストに基づく上記から導出される統計パラメータ。
【0296】
本出願においてすでに論じた特徴の全ては、図5Aに示したシステム100と併せて使用されてもよく、図5Bに示される例に限定されないことを、強調しておかなければならない。
【0297】
図6A図6Eが、上記で言及した種々のパラメータ、ならびにこれらのパラメータをどのように使用して、テストが開始されたかどうか、テストが完了したかどうか、およびテストが上手く完了したかどうかを判断することができるのかの例を示している。これらの条件が、図面に示したピンチテストの具体例よりも一般的に適用されることを、強調しておかなければならない。ここで図6Aを参照すると、テストを、2本の指がスクリーンに触れているとき(図6Aの最も外側の円によって示されるとおり)、「初期指距離」が「最小開始距離」よりも大きいとき、2本の指の間の中心点(「初期指距離」の中点の点)が境界ボックス内に位置する場合、および/または指が異なる方向には移動していない場合に、開始すると考えることができる。
【0298】
次に、テストが「完了」したかどうかを判断するために使用することができる種々の特徴を説明する。例えば、テストを、指の間の距離が減少しており、指の間の距離がピンチギャップ未満になり、指の間の距離が少なくとも指の間の隔たりの最小変化だけ減少した場合に、完了したと見なすことができる。テストが「完了」したかどうかの判定に加えて、本出願を、テストが「上手くいった」かどうかを判断するように構成することができる。例えば、2本の指の間の中心点が形状の中心または境界ボックスの中心に所定のしきい値よりも近い場合に、試行が上手くいったと見なすことができる。この所定のしきい値は、ピンチギャップの半分であってよい。
【0299】
図6B図6Dは、テストが完了した場合、未完了の場合、上手くいった場合、および上手くいかなかった場合を示している。
図6Bでは、試行が完了していない。指の間の距離が減少しており、指の間の距離は、必要なしきい値を超えて減少している。しかしながら、指の間のギャップがピンチギャップよりも大きく、これは、テストが完了していないことを意味する。
図6Cでは、試行が完了している。指の間の距離が減少しており、指の間の距離はピンチギャップよりも小さく、指の間の隔たりは、しきい値を超えて減少している。この場合、指の間の中心点が、形状の中心からピンチギャップの半分未満であるため、試行は上手くいっている。
図6Dでは、指の間の距離が減少しており、指の間の距離がピンチギャップよりも小さく、指の間の隔たりが、しきい値の隔たりを超えて減少しているため、テストは完了している。しかしながら、指の間の中心点が、形状の中心(すなわち、境界ボックスの中心)からピンチギャップの半分よりも遠いため、試行は上手くいっていない。
【0300】
図7図10が、ユーザが形状描画テストの実行時に目にすることができるディスプレイの例を示している。図11以降は、ユーザの形状描画の試行から導出することができる結果を示し、これらの結果は、分析モデルに入力することができるデジタルバイオマーカ特徴データを形成する。
【0301】
図7は、ユーザがタッチスクリーンディスプレイ108上の線を上方から下方へと辿らなければならない形状描画テストの簡単な例を示している。図7の特定の事例において、ユーザに開始点P1、終了点P2、一連の中間点P、および辿るべき経路の一般的な表示(図7において灰色で示されている)が示される。さらに、ユーザに、経路を辿る方向を示す矢印が提供される。図8は、ユーザが線を下方から上方へと辿ることを除き、同様である。図9および図10も、これらの場合には形状がそれぞれ閉じた正方形および円形であることを除き、同様である。これらの場合、最初の点P1が終了点P1と同じであり、矢印が、形状を時計回りに辿るべきか、あるいは反時計回りに辿るべきかを示す。本発明は、線、正方形、および円形に限定されない。使用することができる他の形状(略して示す)は、8の字およびらせんである。
【0302】
本出願においてすでに論じたように、3つの有用な特徴を形状描画テストから抽出することができる。これらが、図11以降に示されている。図11は、所望の終点P2とユーザの経路の終点P2’との間の偏差である本明細書において「終点トレース距離」と呼ばれる特徴を示している。これは、ユーザのオーバーシュートを効果的にパラメータ化する。これは、ユーザの運動制御の程度の効果的な指標である移動の終点を制御するユーザの能力を測定する方法を提供するため、有用な特徴である。図12A図12Cの各々は、同様の特徴を示しており、「始点終点トレース距離」、すなわちユーザの経路P1’の開始点とユーザの経路P2’の終了点との間の距離である同様の特徴を示している。これは、図12A図12B、および図12Cにそれぞれ示される正方形、円形、および8の字などの閉じた形状から抽出するために有用な特徴であり、理由は、テストが完璧に実行された場合に、経路が終了点と同じ点で開始するからである。したがって、始点終点トレース距離という特徴は、前述の終点トレース距離と同じ有用な情報を提供する。しかしながら、この特徴は、ユーザが所望の開始位置P1に指をどの程度正確に置くことができるかに関する情報も提供し、これは、運動制御の別個の態様もテストする。図13A図13Cは、ユーザの開始点P1’と所望の開始点P1との間の距離である「始点トレース距離」を示している。説明したように、これは、ユーザが最初に指をどの程度正確に位置させることができるかに関する情報を提供する。
【0303】
さらなる実験結果
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の慢性炎症性自己免疫性脱髄疾患である。上肢機能を含むいくつかの機能領域の障害をもたらす可能性がある。研究が、MSを抱える者(PwMS)の最大60~76%が、疾患において上肢機能の障害に直面し、あるいは兆候を示すと示唆している。2-4そのような障害は、日常生活の活動を行う能力を制限し、したがって生活の質を低下させる可能性がある。したがって、上肢機能の評価は、疾患の監視において重要な役割を果たす。残念なことに、上肢機能は生活の質に強く影響し、より顕著な障害を有する患者にとって重要な測定値であるが、治療の試みのほとんどにおいて測定されることは稀である。上肢機能または手先の器用さを測定するために、いくつかの異なる評価が利用可能である。とりわけ、Strength-Dexterityテスト、Grooved Pegboard、Minnesota Dexterityテスト(および、その回転サブセット)、Functional Dexterityテスト10、11、およびNine-Hole Pegテスト(9HPT)が挙げられる。その使いやすさおよび好ましい精神測定特性ゆえに、9HPTが、上肢機能の一般的に使用される評価となっており、多発性硬化症機能コンポジット(MSFC)に含まれる。6、12、13しかしながら、9HPTなどの機能評価は、来院においてあまり行われていないため、その有用性が限られる。14したがって、患者の負担を最小限に抑えつつリモートで行うことができ、したがってより頻繁に行うことができる新しい評価が必要とされている。ピンチテストは、監督を必要とすることなく自宅においてリモートにてスマートフォン上で実行することができる上肢機能の客観的かつ生態学的に有効なセンサベースの評価として設計された。15スマートフォンデバイスに組み込まれたセンサを利用することにより、9HPTのような単一の要約スコアの提供とは対照的に、ピンチ動作の複数の特性の測定を可能にする。ピンチテストは、最初に臨床試験「Monitoring of Multiple Sclerosis Participants with the Use of Digital Technology(Smartphones and Smartwatches)-A Feasibility Study」(NCT02952911)において展開された。16この研究において、2つの特徴、すなわちピンチ成功数およびダブルタッチ非同期度が、9HPT、総合障害度スケール(EDSS)17、29項目の多発性硬化症影響スケール(MSIS-29)のうちのアーム関連の項目18、および全脳体積と相関し、中程度~良好なテスト-再テスト信頼性を示すことが以前に示された。15本明細書に提示される上肢機能に関するさらに豊富なデータを分析することにより、この先行の研究は、上肢機能の障害のさまざまな態様を明らかにし、ピンチテストの使用を上肢機能の客観的なリモート評価としてさらに特徴付けるように設計されたより広い範囲の特徴を探索することによって、拡張される。拡張された特徴空間のテスト-再テストの信頼性が、MS疾患状態の標準的な臨床測定との一致、およびPwMSを健康な対照(HC)と区別する能力と併せて調査される。さらに、ピンチテスト特徴間で捕捉された共有および補完情報も評価される。
【0304】
方法
24週間の予備研究で、支給スマートフォン上のFloodlight PoCアプリでのMSのリモート監視の実現可能性を評価した。完全な研究の設計、ならびに包含および除外基準は、以前に報告されている16。18~55歳の76人のPwMSおよび25人のHCを、2つの場所にわたって登録した。PwMSは、2010年改訂のMcDonald基準19で診断され、0.0~5.5の間のベースラインEDSSスコアを有していた。この研究は、全ての研究参加者が標準的な臨床測定を受ける3回の来院(ベースライン、第12週、および第24週[テスト終了])を含んだ。PwMSを、9HPT、EDSS、MSIS-29、口頭符号数字モダリティテスト(SDMT)、ならびに運動および認知機能の疲労スケール(FSMC)で評価する一方で、HCを、9HPT、口頭SDMT、およびFSMCのみで評価した。さらに、ベースライン来院時に、全ての研究参加者は、Floodlight PoCアプリが予めインストールされた支給Samsung Galaxy S7スマートフォンを受け取り、ピンチテストを含むスマートフォンベースのテストを毎日実行するように指示された。
【0305】
ピンチテスト:
本特許出願の主題を形成するピンチテストは、上肢機能の運動、視覚、および認知の態様をテストするように設計されている。152本の指(親指と人差し指または中指のいずれか)の協調を評価することによって、キー、ペン、またはドアハンドルなどの小さな物体を把持するために必要な能力が評価される。テストを行うために、参加者は一方の手でスマートフォンを持ち、他方の手を使用して30秒でできるだけ多くのトマト形状をピンチし、あるいは潰す(図22を参照)。テスト対象の手の2本の指を使用してトマト形状を上手くピンチすると、新たなトマト形状がスマートフォンディスプレイ上の新たなランダムな位置に現れる。利き手および非利き手を、交互のテスト実行で評価した。
【0306】
特徴抽出
テストの実例となる合計で13個のベース特徴、11個の慣性測定ユニット(IMU)に基づく特徴、および13個の疲労特徴が、生のタッチスクリーンおよび加速度計信号から抽出された(図23を参照)。
【0307】
本特許出願では、以下の特徴からの結果を考慮する。
・ 2指試行率
・ ピンチ時間
・ ギャップ時間
・ 最終点距離
・ 指経路比
・ 水平度
・ 方向安定度
・ 疲労成功試行率
・ 疲労2指試行率
・ 疲労ピンチ時間
・ 疲労ダブルタッチ非同期度
・ 疲労指経路長
【0308】
これらの特徴および他の比較の特徴の定義は、図14A図14Gに分散させた表に提示される。
【0309】
ベース特徴は、上肢の全体的な障害(実施されたピンチの数、成功したピンチの数、成功した試行の割合、および2指試行の割合)、指の協調(ダブルタッチ非同期度およびダブルリフト非同期度)、ピンチ応答性(ギャップ時間)、可動範囲またはピンチ精度(指経路長)、ならびに筋力低下、痙縮、または震え(指経路比、指経路速度、最初の点または最後の点の間の距離、ピンチ時間)を捕捉する。IMUに基づく特徴は、スマートフォンデバイスを保持するテスト対象でない方の手の加速度計の大きさの平均値、標準偏差、および尖度、あるいはスマートフォンの向きのいずれかに基づき、両手間の協調、筋力低下、または震えから生じる信号を捕捉するために開発された。疲労特徴を、各々のベース特徴について、テストの前半と後半との間のパフォーマンスの差を測定することによって計算した。
【0310】
データ処理
ピンチテストは監督なしであるため、テストの指示に従わずに実行された個々のテスト実行を識別することが重要である。15研究参加者は、ピンチテストを行う際にテスト対象ではない方の手で電話機を保持するように指示され、テーブルなどの硬い表面上に置かれた電話機を特徴とするテスト実行は、無視され、無効とみなされた。さらに、上肢機能の意味のある評価を可能にするために、少なくとも20回の有効なテスト実行に寄与した研究参加者のみを、分析のために保持した。最後に、データを以下のように集約した。
・ テスト-再テスト信頼性分析のために、ピンチテスト特徴を、平日と週末との間の差または患者の健康状態の変化に起因する一般的な疾患非依存性変動を減少させるために、2週間のウィンドウにわたって収集された少なくとも3つの有効な個別評価を使用して特徴値の中央値を計算することによって集約した。
・ PwMSの疲労レベルは日ごとに変動する可能性があるため20、疲労特徴を、2週間のウィンドウにわたって標準偏差を求めることによってさらに集約した。
・ 他の全ての分析について、ピンチテスト特徴を、研究期間全体にわたる中央値(ベース特徴、IMUに基づく特徴、および疲労特徴)または標準偏差(疲労特徴のみ)のいずれかを求めることによって集約した。
・ さらに、標準的な臨床測定(9HPT;EDSS;口頭SDMT;MSIS-29のアーム項目2、6、15;FSMC物理サブスケール)を、来院全体で平均を求めることによって集約した。
【0311】
統計分析
4つの別個の分析を行った。利き手および利き手でない手からのデータは、きわめて同等であったが(図15参照)、変動性は、利き手のデータの方がわずかに低かった。したがって、利き手について行われた分析のみが報告される。
【0312】
テスト-再テスト信頼性を、全ての連続する2週間のウィンドウを考慮したクラス内相関係数(2,1)(ICC[2,1])を計算することによってPwMSにおいて評価した。15各々の2週間のウィンドウについて、少なくとも3回の有効なテスト実行を必要とした。テスト-再テスト信頼性を、低い(ICC<0.05)、中程度(ICC=0.5~0.74)、良好(ICC=0.75~0.9)、または優秀(ICC>0.9)と考えた。21
【0313】
年齢および性別調整スピアマン順位相関分析が、標準的な臨床測定との一致を評価した。ピンチテストの特徴は、9HPT、EDSS、MSIS-29アーム項目、口頭SDMT、およびFSMCと相関していた。この分析は、EDDSおよびMSIS-29の両方がHCにおいては収集されなかったため、PwMSのみに限定された。相関の強さを、相関なし(|r|<0.25)、並(|r|=0.25~0.49)、中~良(|r|=0.5~0.75)、または良~優(|r|>0.75)と考えた。22
【0314】
さらに、2つの別々の年齢および性別調整部分的スピアマン順位相関分析を、1)ベース特徴が主に運動成分または認知成分(あるいは、両方)によって駆動されるのかどうかを評価するために、ベース特徴、9HPT、および口頭SDMTについて行い、2)疲労特徴が主に上肢機能または疲労を測定するのかどうかを研究するために、疲労特徴、9HPT、およびFSMCについて行った。
【0315】
年齢および性別を調整した既知群の妥当性分析が、HCサブグループとPwMSサブグループとを区別する能力を評価し、マン・ホイットニーのU検定、コーエンのd効果量、およびレシーバ動作曲線下面積(AUC)を使用して評価された。2つのPwMSサブグループ、すなわちベースラインにおいて9HPT時間が正常なPwMS(PwMS-正常)およびベースラインにおいて9HPT時間が異常なPwMS(PwMS-異常)が含まれていた。異常な9HPTのしきい値は、Erasmusら23から導出されたHCの利き手の標準データの平均+2標準偏差として定義された。したがって、利き手についてベースライン9HPT時間が22.15秒未満の全てのPwMSを、PwMS-正常とみなし、残りの全てのPwMSを、PwMS-異常とみなした。別の分析において、疲労特徴で、少なくとも軽度の疲労レベル(FSMC物理サブスケールで22ポイント以上)24として定義される物理的疲労のないPwMSと、そのような物理的疲労のあるPwMSとを区別できるかどうかを研究した。ピンチテスト特徴間の共有および補完情報を評価するために、クロスセクションペアワイズスピアマン順位相関および反復測定相関を実行した。ペアワイズ相関と比較して、反復測定相関分析は、各々の対象者について独立した切片を推定することにより、対象者間の疾患重症度の差によって導入され得るバイアスを最小化する。これを、主成分分析および因子分析を行うことによって補完した。
【0316】
統計的優位性が、特徴の各カテゴリ(ベース特徴、IMUに基づく特徴、疲労特徴)に別々に適用された偽陽性率(FDR)補正後のp<0.05に設定された。
【0317】
結果
合計で76人のPwMSおよび25人のHCが登録され、そのうちの67人のPwMSおよび18人のHCが、本明細書に提示される分析に含まれた。ここに含まれる参加者のベースライン人口統計および疾患特性(本特許出願の説明の最後に添付される表1を参照されたい)は、全研究集団のものと同様であった。162.4(1.4)という平均(SD)EDSSスコア、ならびに両手について22.3(4.2)秒、および利き手について22.1(4.7)という平均(SD)9HPT時間により、分析に含まれたPwMSは、ほとんどが軽度の疾患であり、上肢機能障害は限られていた。HCと比較して、PwMSコホートは、女性参加者の割合がより高く(68%対33%)、平均してわずかに高齢であった(39.2[7.8]歳対35.0[8.9]歳)。
【0318】
テスト-再テスト信頼性
PwMSのテスト-再テスト信頼性分析が図16に示される。ベースピンチテストの特徴は、中程度または良好なテスト-再テスト信頼性を示し、ICC(2,1)は0.55~0.81であった。3回の来院にわたる利き手の9HPT時間のICC(2,1)は0.83であった。IMUに基づく特徴は、0.51~0.81の範囲の同様のICC(2,1)を示した。全ての特徴にわたって、ICC(2.1)は、おそらくはこのコホートにおけるより低い対象者間変動性ゆえに、HCにおいてより小さい傾向があった(図17を参照)。
【0319】
相関分析
図18に示されるように、ほとんどのベース特徴は、上肢機能および全体的な疾患重症度の標準的な臨床測定値との並または中程度~良好な相関を示した。9HPTとの最も強い一致が、ダブルタッチ非同期度(r=0.54)、実施されたピンチの数(r=-0.48)、および成功したピンチの数(r=-0.48)について観察された。7つのさらなるベース特徴、すなわち2指試行割合、ピンチ時間、ギャップ時間、最終点距離、指経路長さ、指速度、および指経路比は、9HPTとの並の相関(|r|≦0.46)を示した。ベース特徴の大部分は、EDSSとの並の相関(|r|≦0.39)、およびMSIS-29アーム項目との並または中程度~良好な相関(|r|≦0.53)を示した。図19に示されるように、ベース特徴は、情報処理速度および疲労にも関連付けられた。13個全てのベース特徴が、口頭SDMTとの並または中程度~良好な相関(|r|≦0.55)を示したが、FSMC総スコアとの相関は、ほとんどのベース特徴について並または中程度~良好な強度(|r|≦0.52)に達した。方向安定度は、図18および図19に示されるように、少なくとも3つの臨床測定値との並の相関(9HPT:r=-0.27;MSIS-29アーム項目:r=-0.27;口頭SDMT:r=-0.28)を示した。図18に示されるように、疲労特徴は、とくには標準偏差の集約を適用した場合に、上肢機能および全体的な疾患重症度の臨床的尺度におおむね関連していた。この集約方法を使用して、9HPTとの相関は、ほとんどの疲労特徴について、並または中程度~良好な強度(|r|≦0.61)に達した。EDSSとの相関(|r|≦0.41)およびMSIS-29アーム項目との相関(|r|≦0.46)は、ほぼ並であった。また、図19に示されるように、標準偏差を求めることによって集約した疲労特徴は、情報処理および疲労とも関連していた。疲労特徴の大部分について、口頭SDMTとの相関は、並または中程度~良好(|r|≦0.63)であったが、FSMC総スコアとの相関は、並の強度(|r|≦0.47)に達した。図20に示されるように、ベース特徴、IMUに基づく特徴、および疲労特徴にわたって、FSMCの物理的および認知的サブスケールとの相関は、FSMCの総スコアとの相関にきわめて類似していた。
【0320】
次に、ベース特徴に対して部分相関分析を行って、それらが主に上肢機能および認知成分によって駆動されるのかどうかを評価した(図21のパートAおよびBを参照)。実施されたピンチの数、ダブルタッチ非同期度、ギャップ時間、および指経路比は全て、口頭SDMTにおける正しい応答の数を考慮した後に、9HPTと相関していた(r=-0.27、r=0.31、r=0.29、およびr=0.32)。別個の部分相関分析により、疲労疲労が主に疲労または上肢機能を捕捉するかどうかを評価した(図21のパートCおよびDを参照)。中央値集約法を使用すると、9HPT時間を考慮しても、疲労ピンチ時間(r=-0.29)、疲労経路長(r=-0.30)、および疲労ダブルリフト非同期度(r=-0.26)は、FSMC総スコアに相関していた。代わりに標準偏差集約法を適用した場合、9HPT時間を考慮した後、2つの疲労特性が、FMSC総スコアと相関していた(疲労成功試行率:r=-0.26;第1点距離:r=0.27)。
【0321】
HCおよびPwMSサブグループを区別および区分する能力
HC、PwMS-正常、およびPwMS-異常を区別および区分するピンチテスト特徴の能力が、本出願の明細書に添付した表2に要約される。全体として、ベース特徴は、PwMS-正常とPwMS-異常とを区別する最大の能力を示した。成功したピンチの数など、2つのサブグループ間で統計的に有意な差(表の緑色のセル;p<0.05)を示した8つのベース特徴について、AUCは0.68~0.79の範囲であり、Cohenのdは0.43~1.04の範囲であった。さらに、3つのベース特徴が、HCとPwMS-異常とを区別した(AUC=0.75~0.75;コーエンのd=0.35~0.79;3つの全ての特徴についてp<0.05)。いくつかの疲労特徴が、標準偏差集約法を代わりに使用したときに、PwMS-正常とPwMS-異常とを区別した。これらの2つのサブグループ間で統計的に有意な差(表の緑色のセル;p<0.05)を示した5つのベース特徴について、AUCは0.70~0.82の範囲であり、Cohenのdは0.38~1.10の範囲であった。さらに、これらの特徴のうちの3つが、PwMS-異常とHCも区別した(AUC=0.74~0.76;コーエンのd=0.52~0.64;3つの全ての特徴についてp<0.05)。
【0322】
ピンチテスト特徴の間の関係
ベース特徴間の関係も研究した。ペアワイズスピアマン順位相関分析により、図21のパートAに示されるように、いくつかの特徴が互いに独立していることが明らかになった。特徴間のいくつかの相関が認められたが、指経路比または疲労ピンチ時間については認められなかった。観察された相関は、疾患重症度によって影響され得る。評価した特徴の共通の個体内関連を決定するために、反復測定相関分析を行った。ペアワイズ相関分析とは異なり、反復測定相関分析は、2つの特徴が各々の対象者内でどの程度強く相関しているかを測定し、したがって疾患重症度によって混乱させられることがない。得られた相関行列を図21のパートBに示す。予想されるように、ピンチがより遅く、あるいはギャップ時間がより大きいほど、30秒の時間ウィンドウにおけるピンチがより少なくなるため、実行されたピンチの数は、ピンチ時間(相関係数[CC]=-0.58)、ギャップ時間(CC=-0.43)、および指速度(CC=0.58)に相関していた。より驚くべきことに、ギャップ時間は、ダブルタッチ非同期度に相関していた(CC=0.65)。この相関はまだ説明されていないが、ピンチ応答性(すなわち、ギャップ時間)と指の協調(すなわち、ダブルタッチ非同期度)の両方に影響を及ぼす共通の要因を指し示している。ほとんどの特徴が固有の情報を取り込むという考えも、主成分分析によって支持された。分散の約80%を説明するために4つの主成分が必要であったが、分散の90%を説明するためには6つの主成分が必要であった(図21のパートCを参照)。これは、ベース特徴によって捕捉されたデータを説明するために必要な因子が異なる負荷を有することを明らかにした要因分析にも反映された(図21のパートDを参照)。
【0323】
考察
単純かつ生態学的に有効なスマートフォンセンサベースのピンチテストからの信頼できる特徴を、上肢機能、全体的な疾患重症度、認知機能、および疲労の標準的な臨床測定と関連付け、上肢機能障害を伴うPwMSを識別した。ピンチテストは、物体を握ること、シャツのボタンを締めること、または食器を操ること、などの日常生活動作を実行する能力を測定するように設計されており、患者が自宅で頻繁かつ単独で実行することができる。市販のスマートフォンに組み込まれたセンサを利用することにより、ピンチの精度、効率、および滑らかさ、ならびに2本の指の動きおよび協調の範囲など、ピンチの複数の態様の評価を可能にする。理想的なピンチテストの特徴は、とりわけ以下の3つの基準、すなわち、テスト-再テストの信頼性、標準的な臨床的尺度との一致、ならびに上肢機能障害のあるPwMSと上肢機能障害のないPwMSとを区別および区分する能力を満たす。この研究において、(本出願の最後に添付された)表3に示されるように、3つの基準を全て満たす特徴を特定した。これらは、実行されたピンチの数、成功したピンチの数、2指試行率、ピンチ時間、ギャップ時間、ダブルタッチ非同期度、最終点距離、および指経路比など、ベース特徴の大部分を含む。これらの特徴は、中程度~良好なテスト-再テスト信頼性を示し、これは、MS25およびパーキンソン病26、27における上肢機能のスマートフォンセンサベースの評価に関する以前の研究と一致している。最も信頼できるピンチテスト特徴は、9HPTについて以前に報告28された0.84というICCに比肩する0.81というICC(2,1)を達成した。臨床医が報告した評価(9HPTおよびEDSS)および疾患の影響に関する患者の視点(MSIS-29のアーム関連項目)の両方との一致は、ベース特徴について一般に最も強かった。スマートフォンデバイス上で30秒以内にできるだけ多くのトマトをピンチするためには運動技能が必要であるが、高速な情報処理および注意力も必要であるため、多くのベース特徴が9HPTおよび口頭SDMTの両方と相関することは驚くべきことではない。さらに、両方の臨床的尺度は、疾患重症度によって乱される。したがって、口頭SDMTとの或る程度の相関が期待できる。結果として、主に運動成分を捕捉する特徴は、口頭SDMTを考慮した後でも9HPTとの有意な相関を保持するが、口頭SDMTとの相関は、9HPTを考慮した後に0になる傾向がある。実施されたピンチの数、ダブルタッチ非同期度、指経路比、およびギャップ時間は全て、この特性を示した。ダブルタッチ非同期度が、ピンチジェスチャの開始時のスマートフォンスクリーンへの親指のタッチと人差し指または中指のタッチとの間の持続時間を測定するがゆえに、主に運動成分によって駆動される特徴として識別されたことは、驚くべきことではない。したがって、それは、スクリーン上に現れる新しいトマト形状の認識に関与する認知タスクから独立するように設計された。また、ベース特徴は、PwMS-正常とPwMS-異常とを区別する最大の能力を示し、機能障害のレベルが高いほど、ピンチテストのパフォーマンスが劣ることを示した。これらの特徴のうちの3つ、すなわち2指試行割合、ギャップ時間、およびダブルタッチ非同期度は、HCとPwMS-異常も区別した。全体的な9HPTしきい値を使用して、PwMSをPwMS-正常またはPwMS-異常のどちらかに分類した。このしきい値は、本発明者らのPwMSコホートと同様の年齢および性別分布を示すがゆえにErasmusら23の標準的な集団から導出された。少数のHCおよびPwMS-異常、ならびに群間の年齢および性別の不均衡が、HCをPwMSサブグループから区別する能力を制限した。
【0324】
スマートフォンを保持する手の機能を評価するIMUに基づく特徴は、一般に、テスト-再テスト信頼性基準を満たした(本明細書に添付の表3を参照)。ICC(2,1)をベース特徴で得られたものと比較したが、臨床的尺度との一致およびHCサブグループとPwMSサブグループとを区別する能力に関するパフォーマンスは、劣っていた。この研究に登録されたほとんどのPwMSが再発寛解型疾患を有していたことを考慮すると、この研究で遭遇した運動異常または運動欠損の大きさは、これらの特徴で疾患関連シグナルを捕捉するのに充分な大きさではなかった可能性がある。最後に、疲労特性を調査した。これらの特徴を、テストの前半におけるテストパフォーマンスを後半におけるテストパフォーマンスを比較し、疲労を捕捉すると仮定した。表4に示されるように、個々のテストを標準偏差をとることによって集約すると、少数の疲労特性が3つの基準のうちの2つまでを満たした(疲労ピンチ時間が3つの基準全てを満たした)。標準偏差集約によるパフォーマンスの改善は、PwMSにおいて一般的に観察20されるように、疲労の変動を反映し得る。
【0325】
ピンチテストは、MSの標準的な臨床評価を補完することができる上肢機能の客観的かつ自身で行う評価を提供する。種々の特徴が調査され、ピンチの精度、効率、応答性、および滑らかさを含むピンチ動作の種々の態様の信頼できる尺度、上肢機能および全体的な疾患重症度の臨床的尺度との一致、および上肢機能障害を伴うPwMSと伴わないPwMSとを区別する能力を提供する特徴を特定することが可能であった。
【0326】
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【0327】
【表1】
【表2】
【表3】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B
図21C
図21D
図22
図23
【国際調査報告】