(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物、接着剤、及び、積層体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/30 20060101AFI20240313BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240313BHJP
C08G 18/61 20060101ALI20240313BHJP
C08G 18/50 20060101ALI20240313BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240313BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240313BHJP
C09J 183/06 20060101ALI20240313BHJP
C09J 175/06 20060101ALI20240313BHJP
C09J 175/08 20060101ALI20240313BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20240313BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240313BHJP
D06M 17/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
C08G18/30 070
C08G18/10
C08G18/61
C08G18/50 096
C08G18/48
C08G18/42
C09J183/06
C09J175/06
C09J175/08
B32B27/12
B32B27/40
D06M17/00 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548656
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-08-10
(86)【国際出願番号】 CN2021134838
(87)【国際公開番号】W WO2023097571
(87)【国際公開日】2023-06-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】金川 善典
(72)【発明者】
【氏名】竹中 雅美
(72)【発明者】
【氏名】タン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ジンジュウ
(72)【発明者】
【氏名】シ ルイユウ
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ジンチャン
【テーマコード(参考)】
4F100
4J034
4J040
4L032
【Fターム(参考)】
4F100AK41A
4F100AK46B
4F100AK51A
4F100AK54A
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4J034BA07
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4L032BA05
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4L032EA00
(57)【要約】
【課題】 本発明が解決しようとする課題は、生地(特に、撥水性生地)との接着性、及び、耐洗濯性に優れる湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、ポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)の反応物である、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ポリオール(A)が、下記一般式(1)で示される化合物(a1)を含有することを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供するものである。前記ポリオール(A)中における前記化合物(a1)の使用量は、0.5~30質量%の範囲が好ましい。前記ポリオール(A)は、更に、ポリエステルポリオール、及び/又は、ポリエーテルポリオールを含有することが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)の反応物である、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ポリオール(A)が、下記一般式(1)で示される化合物(a1)を含有することを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ炭素原子数1~6のアルキレン基を示し、m及びnはそれぞれの合計が10~40の整数を示し、aは5~30の整数を示す。)
【請求項2】
前記ポリオール(A)中における前記化合物(a1)の使用量が、0.5~30質量%の範囲である請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオール(A)が、更に、ポリエステルポリオール、及び/又は、ポリエーテルポリオールを含有するものである請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリオールが、ポリプロピレングリコールである請求項3記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項6】
少なくとも、生地(i)、及び、請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物を有することを特徴とする積層体。
【請求項7】
前記生地(i)が、撥水性生地である請求項6記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物、接着剤、及び、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
透湿性と防水性とを併せ持つ透湿防水機能性衣料は、透湿性フィルムを接着剤で生地に貼り合わせた構成体であり、前記接着剤としては、透湿性フィルムと生地との双方との密着性が良好な点から、ウレタン系接着剤が一般的に使用されている。また、前記ウレタン系接着剤の中でも、昨今の世界的な溶剤排出規制や残留溶剤規制から、無溶剤型である湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物の使用量が徐々に増加しつつある(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
一方で、使用される生地は、軽量化・高機能化から細デニール化と撥水度とが向上しており、先撥水処理布と接着剤との接着性が低下する課題があり、現行の湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物では、特に超撥水生地に対する高い密着性を発現するものは見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、生地(特に、撥水性生地)との接着性、及び、耐洗濯性に優れる湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)の反応物である、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ポリオール(A)が、下記一般式(1)で示される化合物(a1)を含有することを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【0007】
【化1】
(式(1)中、R
1及びR
2はそれぞれ炭素原子数1~6のアルキレン基を示し、m及びnはそれぞれの合計が10~40の整数を示し、aは5~30の整数を示す。)
【0008】
また、本発明は、前記湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤を提供するものである。更に、本発明は、少なくとも、生地(i)、及び、前記湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物の硬化物を有することを特徴とする積層体を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、溶剤を含まないものであり、環境対応型の材料である。また、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、様々な生地に対する接着性に優れるものであり、撥水性生地に対しても優れた接着性を有し、耐洗濯性にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、特定の化合物を含むポリオール(A)、及び、ポリイソシアネート(B)の反応物であり、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有するものである。
【0011】
前記ポリオール(A)は、優れた生地(特に、撥水性生地)への接着性、及び耐洗濯性を得る上で、前記した一般式(1)で示される化合物(a1)を含むことが必須である。
【0012】
前記ポリオール(A)として、前記化合物(a1)のような、水酸基を両末端に有し、かつシリコーン鎖、および長鎖アルキル基を有する化合物を導入することで、撥水性生地への浸透性(親和性)が向上し、優れた接着性及び耐洗濯性が発現すると考えられる。
【0013】
前記化合物(a1)としては、より一層優れた接着性、及び耐洗濯性が得られる点から、R1が炭素原子数1~2のアルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。また、R2は炭素原子数3~6のアルキレン基が好ましく、プロピレン基がより好ましい。また、mはそれぞれ5~20の整数が好ましく、5~15の整数がより好ましく、nはそれぞれ0~40の整数が好ましく、0~20の整数がより好ましい。また、aは5~30の整数が好ましく、10~20の整数がより好ましい。
【0014】
前記化合物(a1)の使用量としては、より一層優れた接着性、及び、耐洗濯性が得られる点から、ポリオール(A)中0.5~30質量%が好ましく、1.0~15質量%がより好ましい。
【0015】
前記ポリオール(A)としては、前記化合物(a1)以外のその他のポリオールを併用してもよい。前記その他のポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリルポリオールなどを用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた機械的強度などが得られる点から、ポリエステルポリオール、及び/又はポリエーテルポリオールが好ましい。
【0016】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と水酸基を2個以上有する化合物との反応物を用いることができる。
【0017】
前記多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、ダイマー酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、フタル酸化合物(フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)等を用いることができる。これらの多塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた接着性、機械的強度が得られる点から、アジピン酸、及び/又は、フタル酸化合物が好ましい。
【0018】
前記2個以上有する化合物との反応物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールAやビスフェノールF、及びそのアルキレンオキサイド付加物、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-イソプロピル-1,4-ブタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、3,5-ヘプタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量としては、より一層優れた接着性、機械的強度が得られる点から、500~10,000が好ましく、700~5,000がより好ましい。なお、前記ポリエステルポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0020】
前記ポリエステルポリオールを用いる場合の使用量としては、より一層優れた機械的強度などが得られる点から、ポリオール(A)中10~100質量%が好ましく、30~100質量%がより好ましい。
【0021】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどを用いることができる。これらは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層より一層優れた接着性、機械的強度が得られる点から、ポリプロピレングリコールが好ましい。
【0022】
前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量としては、より一層優れた接着性、機械的強度が得られる点から、500~10,000が好ましく、700~5,000がより好ましい。なお、前記ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0023】
前記ポリエーテルポリオールを用いる場合の使用量としては、より一層優れた機械的強度などが得られる点から、ポリオール(A)中0~90質量%が好ましく、0~70質量%がより好ましい。
【0024】
前記ポリイソシアネート(B)としては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた反応性、及び、生地への接着性が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0025】
前記ポリイソシアネート(B)の使用量としては、ウレタンプレポリマー(i)を構成する原料の合計質量中5~40質量%が好ましく、10~30質量%がより好ましい。
【0026】
前記ホットメルトウレタンプレポリマー(i)は、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるものであり、空気中や湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物が塗布される基材中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基を有するものである。
【0027】
前記ホットメルトウレタンプレポリマー(i)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(A)の入った反応容器に、前記ポリイソシアネート(B)を入れ、前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0028】
前記ホットメルトウレタンプレポリマー(i)を製造する際の、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(A)が有する水酸基との当量比(イソシアネート基/水酸基)としては、より一層優れた生地への接着性が得られる点から、1.1~5が好ましく、1.5~3.0がより好ましい。
【0029】
以上の方法によって得られたホットメルトウレタンプレポリマー(i)のイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、より一層優れた接着性が得られる点から、1.7~5の範囲が好ましく、1.8~3.0がより好ましい。なお、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(i)のNCO%は、JIS K1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0030】
本発明で用いる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、前記ウレタンプレポリマー(i)を必須成分として含有するものであるが、必要に応じて、その他の添加剤を用いてもよい。
【0031】
前記その他の添加剤としては、例えば、耐光安定性、硬化触媒、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス、熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
以上、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、溶剤を含まないものであり、環境対応型の材料である。また、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、様々な生地に対する接着性に優れるものであり、撥水性生地に対しても優れた接着性を有し、かつ耐洗濯性にも優れるものである。
【0033】
次に、本発明の積層体について説明する。
【0034】
本発明の積層体は、少なくとも、生地(i)、及び、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物を有するものである。
【0035】
前記生地(i)としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー、炭素繊維、それらの混紡繊維等による不織布、織布、編み物等の繊維基材;前記不織布にポリウレタン樹脂等の樹脂を含浸させたもの;前記不織布に更に多孔質層を設けたもの;樹脂基材などを用いることができる。
【0036】
また、本発明は前記生地(i)として、前記したものに撥水処理を施したもの(以下、「撥水性生地」と略記する。)であっても優れた接着性を示す。なお、本発明において前記撥水性生地の「撥水性」とは、下記計算により得られる表面自由エネルギーが50mJ/m2以下であるものを示す。
【0037】
前記生地(i)上での測定用液(水及びジヨードメタン)の接触角を、接触角計(協和界面科学社製「DM500」)を使用して測定した。この結果に基づき、下記の式(1)を用いて生地(i)の表面自由エネルギーを算出した。
(1+cosA)・γL/2=(γsd・γLd)1/2+(γsp・γLp)1/2
【0038】
A;生地(i)上の測定用液の接触角
γL;測定用液の表面張力
γLd;測定用液の表面自由エネルギーの分散力成分
γLp;測定用液の表面自由エネルギーの極性力成分
γsd;生地(i)の表面自由エネルギーの分散力成分
γsp;生地(i)の表面自由エネルギーの極性力成分
【0039】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、グラビアロールコーター、コンマコーター、T-ダイコーター、アプリケーター、ディスペンサー等を使用する方法が挙げられる。
【0040】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を塗工後は、公知の方法により乾燥・養生することができる。
【0041】
前記湿気硬化型ウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物の厚さとしては、例えば、5~300μmの範囲である。
【0042】
なお、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物が透湿防水機能性衣料の接着剤として用いられる場合には、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、グラビアロールコーター、ディスペンサーにより間欠塗布し、生地(i)と公知の透湿フィルムとを貼り合わせることが好ましい。係る場合の前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化物の厚さとしては、例えば、5~50μmの範囲である。
【0043】
前記透湿フィルムの上には、更に、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を間欠塗布によりメッシュ生地を貼り合わせてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【0045】
[実施例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、ポリエステルポリオール1(アジピン酸、及び、2-メチル-1,3-プロパンジオールを反応させたもの、数平均分子量;2,000)495質量部、ポリエステルポリオール2(無水フタル酸、ジエチレングリコール、及び、ネオペンチルグリコールを反応させたもの、数平均分子量;1,000)495質量部、式(1)において、R1がエチレン基、mが20、nが0、aが15を示す化合物(以下「a1-1」と略記する。)を10質量部を仕込み、110℃にて減圧乾燥して、水分量が0.05質量%以下となるまで脱水した 次いで、60℃に冷却後、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)331質量部加え、110℃まで昇温し、イソシアネート基含有量が一定となるまで2時間反応することで、ウレタンプレポリマー(1)を得て、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(1)とした。
【0046】
[実施例2]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、ポリエステルポリオール3(1,6-ヘキサンジオール及び無水フタル酸を反応させたもの、数平均分子量;2,000)150質量部、ポリエステルポリオール4(無水フタル酸、アジピン酸、テレフタル酸、及びエチレングリコールを反応させたもの、数平均分子量;3,500)700質量部、式(1)において、R1がエチレン基、mが15、nが5、aが15を示す化合物(以下「a1-2」と略記する。)を30質量部を仕込み、110℃にて減圧乾燥して、水分量が0.05質量%以下となるまで脱水した 次いで、60℃に冷却後、MDI200質量部加え、110℃まで昇温し、イソシアネート基含有量が一定となるまで2時間反応することで、ウレタンプレポリマー(2)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(2)とした。
【0047】
[実施例3]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、ポリポロピレングリコール1(数平均分子量;400)295質量部、ポリプロピレングリコール2(数平均分子量;1,000)295質量部、式(1)において、R1がエチレン基、mが10、nが10、aが15を示す化合物(以下「a1-3」と略記する。)を30質量部を仕込み、110℃にて減圧乾燥して、水分量が0.05質量%以下となるまで脱水した 次いで、60℃に冷却後、MDIを459質量部加え、110℃まで昇温し、イソシアネート基含有量が一定となるまで2時間反応することで、ウレタンプレポリマー(3)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(3)とした。
【0048】
[比較例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四口フラスコに、ポリエステルポリオール1(アジピン酸、及び、2-メチル-1,3-プロパンジオールを反応させたもの、数平均分子量;2,000)495質量部、ポリエステルポリオール2(無水フタル酸、ジエチレングリコール、及び、ネオペンチルグリコールを反応させたもの、数平均分子量;1,000)495質量部、110℃にて減圧乾燥して、水分量が0.05質量%以下となるまで脱水した 次いで、60℃に冷却後、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)331質量部加え、110℃まで昇温し、イソシアネート基含有量が一定となるまで2時間反応することで、ウレタンプレポリマー(R1)を得て、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(R1)とした。
【0049】
[数平均分子量の測定方法]
実施例及び比較例で用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0050】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0051】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0052】
[積層体の作製方法]
まず、溶剤型ポリウレタン樹脂「クリスボンS-525(DIC株式会社製)」と、メチルエチルケトンと、ジメチルホルムアミドとを混合したものを、ナイフコーターを用いて離型紙上に塗布量が100g/m2(wet)になるように均一に塗布した後、70℃で1分間、次いで120℃で2分間乾燥することで、厚さ15μmの透湿性ポリウレタンフィルムを作製した。
次いで、120℃で加熱溶融した前記湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物(1)~(3)および(R1)を、それぞれ120℃に加熱した格子状のグラビアロールを用いて、上記透湿性ポリウレタンフィルム1上に20g/m2で間欠塗布した後、繊維質基材である40デニールの撥水処理ナイロンタフタと貼り合わせ、温度23℃・相対湿度65%の環境下で3日間放置することにより積層体を作製した。
【0053】
[生地との接着性の評価方法]
得られた積層体を構成する透湿性ポリウレタンフィルム側に、1インチ幅のホットメルト布テープを130℃で5秒間かけて接着した後、JISK6854-2に準拠して、株式会社島津製作所製「オートグラフAG-1」(ヘッドスピード;200mm/分)を使用して、温度23℃及び相対湿度50%の状態での常態接着強度を測定し、6.0N/inch以上であるものは優れた撥水性生地との接着性を有すると判断した。
【0054】
[耐洗濯性の評価方法]
得られた積層体を、JIS L 1089-1970に準拠して、水洗濯を50回行い、洗濯後の外観を評価した。なお外観は下記の基準にしたがって目視で評価した。
「〇」;外観上、全く剥離していなかった。
「×」;外観上、接着面積の半分以上が剥離していた。
【0055】
【0056】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、撥水性生地との接着性、及び、耐洗濯性に優れることが分かった。
【0057】
一方、比較例1は、化合物(a1)を用いない態様であるが、撥水生地に対する接着性、及び、耐洗濯性が不良であった。
【国際調査報告】