(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステム
(51)【国際特許分類】
H01J 49/04 20060101AFI20240313BHJP
H01J 49/00 20060101ALI20240313BHJP
H01J 49/14 20060101ALI20240313BHJP
H01J 49/26 20060101ALI20240313BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240313BHJP
【FI】
H01J49/04 680
H01J49/00 590
H01J49/04
H01J49/14
H01J49/26
G01N27/62 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023552568
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-30
(86)【国際出願番号】 KR2022014146
(87)【国際公開番号】W WO2023113163
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0178827
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0118993
(32)【優先日】2022-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・シク・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジン・べ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・イム
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041GA14
2G041GA19
(57)【要約】
本発明は、遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステムに関するものであって、DART機器とMS機器との空間的な自由度を向上させ、試料に追加的な条件付与が可能な遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステムを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にサンプルが収容される下部チャンバと、
前記下部チャンバの上端部に結合され、内部に前記サンプルから脱着された成分が流入されるガイド流路が形成される上部チャンバと、を含み、
前記上部チャンバの内部には、前記脱着された成分を前記下部チャンバから伝達される第1空間が形成され、
前記下部チャンバの内部には、前記サンプルが収容される空間である第2空間が形成され、
前記第1空間と前記第2空間は、連結されて互いに通気する、遠隔チャンバ。
【請求項2】
前記上部チャンバは、
上部及び下部が開放される側壁部と、
前記側壁部の上端部に結合される天井部と、
運搬ガスが注入されるために、前記側壁部の一側壁に形成される注入口と、
前記運搬ガス及び前記サンプルから脱着された成分が排出されるために、前記側壁部の他側壁に形成される排出口と、
前記第1空間に挿入され、内部に前記ガイド流路が形成されるガスガイド部と、を含む、請求項1に記載の遠隔チャンバ。
【請求項3】
前記ガスガイド部は、
前記注入口と対面する第1開口部と、
前記排出口と対面する第2開口部と、
前記サンプルと対面する第3開口部と、を含み、
前記ガイド流路の一端部に前記第1開口部が位置し、
前記ガイド流路の他端部に前記第2開口部が位置し、
前記第3開口部は、前記ガイド流路の中心から下側に位置する、請求項2に記載の遠隔チャンバ。
【請求項4】
上下方向に垂直な方向を第1方向とし、
上下方向及び前記第1方向に垂直な方向を第2方向とする時、
前記ガイド流路は、前記第1方向に延び、
前記第1方向上で前記第3開口部は、前記第1開口部と前記第2開口部との間に位置し、
前記ガイド流路の前記第2方向への長さは、前記第3開口部の中心から前記第1開口部に近くなるほど短くなり、
前記ガイド流路の前記第2方向への長さは、前記第3開口部の中心から前記第2開口部に近くなるほど短くなる、請求項3に記載の遠隔チャンバ。
【請求項5】
前記ガスガイド部の上下方向に垂直な断面上で前記ガイド流路は、前記第1方向を長軸とし、前記第2方向を短軸とする流線状に設けられる、請求項4に記載の遠隔チャンバ。
【請求項6】
前記天井部には、透光素材からなるウィンドウが形成され、
前記ガスガイド部は、前記ウィンドウと対面する位置に第4開口部をさらに含み、
外部から照射されるレーザは、前記ウィンドウ、前記第4開口部及び前記第3開口部を通過して、前記サンプルに照射される、請求項3に記載の遠隔チャンバ。
【請求項7】
前記第2空間には、前記サンプルを加熱するヒーティング部が設けられ、
前記ヒーティング部は、下端部が前記下部チャンバの底面に固定され、
前記ヒーティング部の側面は、前記下部チャンバの内側面と互いに離隔する、請求項1から6のいずれか一項に記載の遠隔チャンバ。
【請求項8】
前記ヒーティング部は、前記サンプルの温度を20~1000℃に加熱する、請求項7に記載の遠隔チャンバ。
【請求項9】
前記ヒーティング部は、
熱を生成する発熱部材と、
前記発熱部材の上端部に固定されるサンプル据え置きディスクと、を含む、請求項8に記載の遠隔チャンバ。
【請求項10】
前記ヒーティング部は、前記サンプル据え置きディスクの円周に結合されるリング状のガイドリングをさらに含み、
前記ガイドリングの上下方向への長さは、前記サンプル据え置きディスクの上下方向への長さよりもさらに長い、請求項9に記載の遠隔チャンバ。
【請求項11】
前記サンプル据え置きディスク及び前記ガイドリングは、金メッキ銅またはステンレス鋼からなる、請求項10に記載の遠隔チャンバ。
【請求項12】
前記下部チャンバの底面には、前記第2空間を冷却する冷却流路が形成される、請求項7に記載の遠隔チャンバ。
【請求項13】
内部にサンプルを収容する遠隔チャンバと、
前記遠隔チャンバの上端部に形成されたウィンドウを通じて前記サンプルにレーザを照射する光源ユニットと、
前記遠隔チャンバに形成された注入口を通じて前記遠隔チャンバの内部空間に運搬ガスを供給する運搬ガス供給ユニットと、
一端部が前記遠隔チャンバに形成された排出口に連結され、前記サンプルから分離された分析対象物質を排出するガス移送チューブと、
前記ガス移送チューブの他端部に排出される前記分析対象物質にヘリウムビームを放出して、前記分析対象物質をイオン化させるイオン化ユニットと、
イオン化された前記分析対象物質を吸い込んで分析する質量分析ユニットと、を含み、
前記遠隔チャンバは、
前記ウィンドウ、前記注入口及び前記排出口が設けられ、内部に第1空間が形成される上部チャンバと、
前記上部チャンバの下端部に結合され、内部に前記サンプルが収容される第2空間が形成される下部チャンバと、を含む、DART-MSシステム。
【請求項14】
前記上部チャンバの下端部と前記下部チャンバの上端部は、開放されて前記第1空間と前記第2空間は、連結され、
前記ウィンドウは、前記上部チャンバの上端部に形成され、
前記光源ユニットは、前記遠隔チャンバの上部から下方に前記レーザを照射し、
前記レーザは、前記ウィンドウを通過して、前記サンプルに到達する、請求項13に記載のDART-MSシステム。
【請求項15】
前記遠隔チャンバの下端部には、前記遠隔チャンバの位置を調節する水平移動ステージが結合される、請求項13又は14に記載のDART-MSシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年12月14日付の大韓民国特許出願10-2021-0178827号及び2022年9月21日付の大韓民国特許出願10-2022-0118993号に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステムに係り、DART(direct analysis in real time)機器とMS(mass spectrometry)機器との空間的な自由度を向上させ、試料に追加的な条件付与が可能な遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
大気圧イオン化質量分析法(ambient ionization mass spectrometry)は、試料前処理過程が最小化され、大気中でのイオン化過程を通じて迅速に対象物質の分子量及び構造を分析することができる質量分析技法である。
【0004】
DART-MS(direct analysis in real time-mass spectrometry)は、イオンソース(ion source)から出る加熱された準安定状態のヘリウムガス(heated metastable He gas)とこれにより生成される反応性イオン(reactive ions)とを用いて対象物質を脱着及びイオン化させることにより、物質の分子量及び構造分析を行える装置である。大気圧下でイオンソースとMSとの間に試料を位置させることにより、簡単に分析を行えるという長所があるが、さらに広い範囲の試料に適用のためには、大気中で試料の濃度(concentration)の増大及びこれによるスペクトルの信号対ノイズ比(signal-to-noise ratio)の向上のための技術的開発が要求される。このような観点から試料の脱着効率(desorption efficiency)、イオン化効率(ionization efficiency)、生成されたイオンの効率的な収集(collection)及び伝達(transmission)などが検出感度の向上のための重要な因子になりうる。
【0005】
さらに、DART-MS、DESI-MS、LA-DART-MS、LAESI-MSのような大気圧質量分析法(ambient mass spectrometry)でのサンプリングは、開放された空間でなされるために、一定レベル以上の検出感度の確保のためには、装置が密集されて配されなければならず、このような配置は、光学顕微鏡(optical microscopy)のような追加的な分析機器及び試料に追加的な条件(光、熱、電気、真空など)付与のための装置の導入を妨害し、適用可能な試料のサイズを制限する。
【0006】
したがって、前記のような問題を解決して、試料が有する複雑性(complexity)を理解することができる分析装置が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステムに関するものであって、DART機器とMS機器との空間的な自由度を向上させ、試料に追加的な条件付与が可能な遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステムを提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題は、前述した技術的課題に制限されず、言及されていないさらに他の技術的課題は、下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の遠隔チャンバは、内部にサンプルが収容される下部チャンバ、及び前記下部チャンバの上端部に結合され、内部に前記サンプルから脱着された成分が流入されるガイド流路が形成される上部チャンバ、を含み、前記上部チャンバの内部には、前記脱着された成分を下部チャンバから伝達される第1空間が形成され、前記下部チャンバの内部には、前記サンプルが収容される空間である第2空間が形成され、前記第1空間と前記第2空間は、連結されて互いに通気するものである。
【0010】
本発明の遠隔チャンバで、前記上部チャンバは、上部及び下部が開放される側壁部と、前記側壁部の上端部に結合される天井部と、運搬ガスが注入されるために、前記側壁部の一側壁に形成される注入口と、前記運搬ガス及び前記サンプルから脱着された成分が排出されるために、前記側壁部の他側壁に形成される排出口と、前記第1空間に挿入され、内部に前記ガイド流路が形成されるガスガイド部と、を含むものである。
【0011】
本発明のDART-MSシステムは、内部にサンプルを収容する遠隔チャンバ、前記遠隔チャンバの上端部に形成されたウィンドウを通じて前記サンプルにレーザを照射する光源ユニット、前記遠隔チャンバに形成された注入口を通じて前記遠隔チャンバの内部空間に運搬ガスを供給する運搬ガス供給ユニット、一端部が前記遠隔チャンバに形成された排出口に連結され、前記サンプルから分離された分析対象物質を排出するガス移送チューブ、前記ガス移送チューブの他端部に排出される前記分析対象物質にヘリウムビームを放出して、前記分析対象物質をイオン化させるイオン化ユニット、及びイオン化された前記分析対象物質を吸い込んで分析する質量分析ユニット、を含み、前記遠隔チャンバは、前記ウィンドウ、前記注入口及び前記排出口が設けられ、内部に第1空間が形成される上部チャンバと、前記上部チャンバの下端部に結合され、内部に前記サンプルが収容される第2空間が形成される下部チャンバと、を含むものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステムは、DART機器とMS機器との空間的な自由度が向上し、試料に追加的な条件付与が可能なものである。
【0013】
本発明の遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステムは、光照射、温度及び真空制御、電気供給、ガスフロー(gas flow)が可能な遠隔チャンバを備えたものであって、これを通じてインサイチュ(in-situ)質量分析が可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のDART-MSシステムを示す概念図である。
【
図10】下部チャンバの底面が分離された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の遠隔チャンバは、内部にサンプルが収容される下部チャンバ、及び前記下部チャンバの上端部に結合され、内部に前記サンプルから脱着された成分が流入されるガイド流路が形成される上部チャンバ、を含み、前記上部チャンバの内部には、前記脱着された成分を下部チャンバから伝達される第1空間が形成され、前記下部チャンバの内部には、前記サンプルが収容される空間である第2空間が形成され、前記第1空間と前記第2空間は、連結されて互いに通気するものである。
【0016】
本発明の遠隔チャンバで、前記上部チャンバは、上部及び下部が開放される側壁部と、前記側壁部の上端部に結合される天井部と、運搬ガスが注入されるために、前記側壁部の一側壁に形成される注入口と、前記運搬ガス及び前記サンプルから脱着された成分が排出されるために、前記側壁部の他側壁に形成される排出口と、前記第1空間に挿入され、内部に前記ガイド流路が形成されるガスガイド部と、を含むものである。
【0017】
本発明の遠隔チャンバで、前記ガスガイド部は、前記注入口と対面する第1開口部と、前記排出口と対面する第2開口部と、前記サンプルと対面する第3開口部と、を含み、前記ガイド流路の一端部に前記第1開口部が位置し、前記ガイド流路の他端部に前記第2開口部が位置し、前記第3開口部は、ガイド流路の中心から下側に位置するものである。
【0018】
本発明の遠隔チャンバで、上下方向に垂直な方向を第1方向とし、上下方向及び前記第1方向に垂直な方向を第2方向とする時、前記ガイド流路は、前記第1方向に延び、前記第1方向上で前記第3開口部は、前記第1開口部と前記第2開口部との間に位置し、前記ガイド流路の前記第2方向への長さは、前記第3開口部の中心から前記第1開口部に近くなるほど短くなり、前記ガイド流路の前記第2方向への長さは、前記第3開口部の中心から前記第2開口部に近くなるほど短くなるものである。
【0019】
本発明の遠隔チャンバで、前記ガスガイド部の上下方向に垂直な断面上で前記ガイド流路は、前記第1方向を長軸とし、前記第2方向を短軸とする流線状に設けられるものである。
【0020】
本発明の遠隔チャンバで、前記天井部には、透光素材からなるウィンドウが形成され、前記ガスガイド部は、前記ウィンドウと対面する位置に第4開口部をさらに含み、外部から照射されるレーザは、前記ウィンドウ、前記第4開口部及び前記第3開口部を通過して、前記サンプルに照射されるものである。
【0021】
本発明の遠隔チャンバの前記第2空間には、前記サンプルを加熱するヒーティング部が設けられ、前記ヒーティング部は、下端部が前記下部チャンバの底面に固定され、前記ヒーティング部の側面は、前記下部チャンバの内側面と互いに離隔するものである。
【0022】
本発明の遠隔チャンバで、前記ヒーティング部は、前記サンプルの温度を20~1000℃に加熱するものである。
【0023】
本発明の遠隔チャンバで、前記ヒーティング部は、熱を生成する発熱部材と、前記発熱部材の上端部に固定されるサンプル据え置きディスクと、を含むものである。
【0024】
本発明の遠隔チャンバで、前記ヒーティング部は、前記サンプル据え置きディスクの円周に結合されるリング状のガイドリングをさらに含み、前記ガイドリングの上下方向への長さは、前記サンプル据え置きディスクの上下方向への長さよりもさらに長いものである。
【0025】
本発明の遠隔チャンバで、前記サンプル据え置きディスク及び前記ガイドリングは、金メッキ銅(gold coated copper)またはステンレス鋼(stainless steel)からなるものである。
【0026】
本発明の遠隔チャンバで、前記下部チャンバの底面には、前記第2空間を冷却する冷却流路が形成されるものである。
【0027】
本発明のDART-MSシステムは、内部にサンプルを収容する遠隔チャンバ、前記遠隔チャンバの上端部に形成されたウィンドウを通じて前記サンプルにレーザを照射する光源ユニット、前記遠隔チャンバに形成された注入口を通じて前記遠隔チャンバの内部空間に運搬ガスを供給する運搬ガス供給ユニット、一端部が前記遠隔チャンバに形成された排出口に連結され、前記サンプルから分離された分析対象物質を排出するガス移送チューブ、前記ガス移送チューブの他端部に排出される前記分析対象物質にヘリウムビームを放出して、前記分析対象物質をイオン化させるイオン化ユニット、及びイオン化された前記分析対象物質を吸い込んで分析する質量分析ユニット、を含み、前記遠隔チャンバは、前記ウィンドウ、前記注入口及び前記排出口が設けられ、内部に第1空間が形成される上部チャンバと、前記上部チャンバの下端部に結合され、内部に前記サンプルが収容される第2空間が形成される下部チャンバと、を含むものである。
【0028】
本発明のDART-MSシステムで、前記上部チャンバの下端部と前記下部チャンバの上端部は、開放されて前記第1空間と前記第2空間は、連結され、前記ウィンドウは、前記上部チャンバの上端部に形成され、前記光源ユニットは、前記遠隔チャンバの上部から下方に前記レーザを照射し、前記レーザは、前記ウィンドウを通過して、前記サンプルに到達するものである。
【0029】
本発明のDART-MSシステムで、前記遠隔チャンバの下端部には、前記遠隔チャンバの位置を調節する水平移動ステージが結合されるものである。
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明による実施例を詳しく説明する。この過程で図面に示された構成要素の大きさや形状などは、説明の明瞭性と便宜上、誇張して示されうる。また、本発明の構成及び作用を考慮して特別に定義された用語は、ユーザ、運用者の意図または慣例によって変わりうる。このような用語に対する定義は、本明細書の全般に亘った内容に基づいて下されなければならない。
【0031】
本発明の説明において、留意しなければならない点は、用語「中心」、「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「内側」、「外側」、「一面」、「他面」などが指示した方位または位置関係は図面で示す方位または位置関係、または、通常、本発明の製品使用時に配置する方位または位置関係に基づいたものであり、単に本発明の説明と簡略な説明のためのものであり、表示された装置または素子が、必ずしも特定の方位を有し、特定の方位で構成されるか、操作されなければならないということを提示または暗示するものではないので、本発明を制限すると理解してはならない。
【0032】
図1は、本発明のDART-MSシステムを示す概念図である。
図2は、遠隔チャンバ100を示す斜視図である。
図3は、遠隔チャンバ100を示す分解斜視図である。
図4は、上部チャンバ110の側壁部111を示す斜視図である。
図5は、上部チャンバ110の天井部112を示す斜視図である。
図6は、ガスガイド部113を示す斜視図である。
図7は、
図6のA-A断面図である。
図8は、
図6のB-B断面図である。
図9は、ヒーティング部121を示す分解斜視図である。
図10は、下部チャンバ120の底面が分離された状態を示す斜視図である。
図11は、下部チャンバ120の底面を示す平面図である。
図12は、水平移動ステージ130を示す斜視図である。
【0033】
以下、
図1ないし
図12を参照して、本発明の遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステムについて詳しく説明する。
【0034】
図1に示したように、本発明のDART-MSシステムは、内部にサンプルを収容する遠隔チャンバ100、前記遠隔チャンバ100の上端部に形成されたウィンドウ112aを通じて前記サンプルにレーザを照射する光源ユニット200、前記遠隔チャンバ100に形成された注入口111aを通じて前記遠隔チャンバ100の内部空間に運搬ガスを供給する運搬ガス供給ユニット300、一端部が前記遠隔チャンバ100に形成された排出口111bに連結され、前記サンプルから分離された分析対象物質を排出するガス移送チューブ400、前記ガス移送チューブ400の他端部に排出される前記分析対象物質にヘリウムビームを放出して、前記分析対象物質をイオン化させるイオン化ユニット500、及びイオン化された前記分析対象物質を吸い込んで分析する質量分析ユニット600、を含むものである。
【0035】
光源ユニット200は、レーザを出射するものであって、遠隔チャンバ100の上部から下方にレーザを出射し、光源ユニット200から出射されたレーザは、遠隔チャンバ100の上端部に設けられるウィンドウ112aを通過して遠隔チャンバ100の内部に位置するサンプルに到達することができる。光源ユニット200は、UVからIR領域までのレーザ光源のうちから選択されるものである。例えば、光源ユニット200は、約400nm帯の波長のレーザを出射する光源である。
【0036】
運搬ガス供給ユニット300は、サンプルから脱着された成分を運ぶガスを遠隔チャンバ100の内部に供給するものである。運搬ガス供給ユニット300を通じて遠隔チャンバ100の内部に注入された運搬ガスは、サンプルから脱着された成分をガス移送チューブ400に押し出してガス移送チューブ400の出口で加熱された準安定ヘリウムビーム(heated meta-stable beam)と合うようにする。運搬ガス供給ユニット300が供給する運搬ガスは、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどである。
【0037】
ガス移送チューブ400は、遠隔チャンバ100の内部で発生したエアロゾルがイオン化ユニット500がヘリウムビームを放出する位置まで移動するための流路である。例えば、ガス移送チューブ400は、テフロン(登録商標)チューブ、ウレタンチューブ、シリコンチューブなどである。ガス移送チューブ400は、数cmないし数十m程度の長さに設けられ、装置間の配置関係の自由度のために、可撓性材質からなることが望ましい。例えば、ガス移送チューブ400は、50~100cmの長さに設けられうる。
【0038】
イオン化ユニット500は、サンプルから脱着された成分に加熱された準安定ヘリウムビームを放出するものである。ヘリウムビームが放出されるイオン化ユニット500の放出口が、質量分析ユニット600の吸入口と対面するようにイオン化ユニット500は配置される。
【0039】
質量分析ユニット600は、質量分析器(mass spectrometer)であって、質量対電荷の比(m/z)が異なるイオン化された分子を分離及び検出することができるものである。
【0040】
図2及び
図3に示したように、前記遠隔チャンバ100は、前記ウィンドウ112a、前記注入口111a及び前記排出口111bが設けられ、内部に第1空間110aが形成される上部チャンバ110と、前記上部チャンバ110の下端部に結合され、内部に前記サンプルが収容される第2空間120aが形成される下部チャンバ120と、を含むものである。
【0041】
前記上部チャンバ110の下端部と前記下部チャンバ120の上端部は、開放されて前記第1空間110aと前記第2空間120aは、連結され、前記ウィンドウ112aは、前記上部チャンバ110の上端部に形成され、前記光源ユニット200は、前記遠隔チャンバ100の上部から下方に前記レーザを照射し、前記レーザは、前記ウィンドウ112aを通過して、前記サンプルに到達するものである。
【0042】
すなわち、遠隔チャンバ100で、下部チャンバ120は、内部にサンプルを収容し、サンプルに電圧または電流の印加、加熱、冷却などの条件付与になる空間であって、第2空間120aが形成されるものであり、上部チャンバ110は、下部チャンバ120の第2空間120aに位置するサンプルから脱着された成分を伝達されてガス排出チューブに排出する空間である第1空間110aが形成されるものである。
【0043】
図4に示したように、上部チャンバ110の側壁部111は、上部及び下部が開放される四角形のフレームとして設けられうる。側壁部111には、注入口111aと排出口111bとが設けられうる。さらに、具体的に、側壁部111の4個の側壁のうち、互いに対面する2個の側壁に注入口111aと排出口111bとがそれぞれ形成され、注入口111aと排出口111bは、それぞれの側壁で互いに対面するように位置しうる。したがって、注入口111aに流入された運搬ガスは、直線に流れて、サンプルから脱着された成分と共に排出口111bに排出される。
【0044】
必要に応じて、遠隔チャンバ100の内部に真空形成が要求される場合、注入口111aまたは排出口111bに真空ポンプを連結して遠隔チャンバ100の内部に真空を形成しうる。
【0045】
図5に示したように、側壁部111の上端部には、ウィンドウ112aが形成された天井部が結合されうる。天井部112は、ホールが形成された上下方向に垂直なプレートで形成され、ホールは、光透過性素材で覆われてウィンドウ112aで形成されうる。さらに具体的に、ウィンドウ112aは、光源ユニット200から生成されたレーザが透過可能な素材からなる。
【0046】
前記第1空間110aには、ガスガイド部113が挿入される。ガスガイド部113は、サンプルから脱着された成分を伴った運搬ガスが上部チャンバ110内で内壁と衝突して渦流の形成を防止し、実際の流体が流れる空間を限定させて検出感度を向上させるものである。
【0047】
図6ないし
図8に示したように、前記ガスガイド部113は、前記注入口111aと対面する第1開口部113aと、前記排出口111bと対面する第2開口部113bと、前記サンプルと対面する第3開口部113cと、前記ウィンドウ112aと対面する第4開口部113dと、前記第1開口部113a、前記第2開口部113b、前記第3開口部113c及び前記第4開口部113dと連結され、前記分析対象物質の流れをガイドするガイド流路113eと、を含むものである。
【0048】
具体的に、前記注入口111a及び前記排出口111bは、互いに対向する前記上部チャンバ110の一対の側壁のそれぞれに互いに対面するように形成されるものに対応するように、第1開口部113a及び第2開口部113bは、側面に位置し、第3開口部113cは、底面に形成され、第4開口部113dは、天井面に形成されうる。すなわち、ガイド流路113eは、
図6に示したように、x軸方向に延びる流線状の流路からなり、この際、ガイド流路113eの一端部に第1開口部113aが位置し、ガイド流路113eの他端部に第2開口部113bが位置し、第3開口部113cは、ガイド流路113eの中心から下側に位置し、第4開口部113dは、ガイド流路113eの中心から上側に位置しうる。
【0049】
すなわち、x軸方向を第1方向とし、y軸方向を第2方向とする時、前記ガイド流路113eは、前記第1方向に延びる形状からなる。前記第1方向上で前記第3開口部113cは、前記第1開口部113aと前記第2開口部113bとの間に位置しうる。
【0050】
前記ガイド流路113eの前記第2方向への長さは、前記第3開口部113cの中心から前記第1開口部113aに近くなるほど短くなり、前記ガイド流路113eの前記第2方向への長さは、前記第3開口部113cの中心から前記第2開口部113bに近くなるほど短くなるものである。すなわち、ガイド流路113eは、中心から注入口111aまたは排出口111bに近くなるほどその幅が狭くなる形状からなる。第1開口部113aと第2開口部113bとを連結する一対の側壁は、互いに面対称になる形状の曲面からなる。
【0051】
例えば、前記ガスガイド部113の上下方向に垂直な断面上で前記ガイド流路113eは、前記第1方向を長軸とし、前記第2方向を短軸とする流線状に設けられるものである。
【0052】
ガスガイド部113には、ガイド流路113eの両側に熱遮断中空113fが形成されうる。熱遮断中空113fは、ヒーティング部121から生成された熱がガスガイド部113を通じて周辺に伝達されることを最小化して、遠隔チャンバ100自体または遠隔チャンバ100に搭載または結合される器具の劣化を防止することができる。
【0053】
前記第2空間120aには、前記サンプルを加熱するヒーティング部121が設けられ、前記ヒーティング部121は、下端部が前記下部チャンバ120の底面に固定され、前記ヒーティング部121の側面は、前記下部チャンバ120の内側面と互いに離隔するものである。前記ヒーティング部121は、前記サンプルの温度を20~1000℃に加熱するものである。さらに他の例として、前記ヒーティング部121は、前記サンプルの温度を20~750℃に加熱するものである。
【0054】
図9に示したように、前記ヒーティング部121は、熱を生成する発熱部材121aと、前記発熱部材121aの上端部に固定されるサンプル据え置きディスク121bと、を含むものである。
【0055】
発熱部材121aは、セラミックヒーター、ペルチェ(peltier)ヒーターなどである。
【0056】
サンプル据え置きディスク121bは、上側面に溝が形成されて、パウダー状のサンプルを安定して据え置くことができる。
【0057】
前記ヒーティング部121は、前記サンプル据え置きディスク121bの円周に結合されるリング状のガイドリング121cをさらに含み、前記ガイドリング121cの上下方向への長さは、前記サンプル据え置きディスク121bの上下方向への長さよりもさらに長いものである。ガイドリング121cは、発熱部材121aの上端部にサンプル据え置きディスク121bを安定して固定させうる。
【0058】
前記サンプル据え置きディスク121b及び前記ガイドリング121cは、金メッキ銅またはステンレス鋼からなるものである。すなわち、サンプル据え置きディスク121b及び前記ガイドリング121cは、熱伝導性に優れた材質からなる。
【0059】
前記下部チャンバ120の底面には、前記第2空間120aを冷却する冷却流路122が形成されるものである。
【0060】
下部チャンバ120の側壁には、フィードスルー(feedthrough)123が設けられて外部の充放電装置を通じてサンプルに電気を供給することができる。フィードスルー123は、一対、すなわち、2個設けられ、2個のフィードスルー123のそれぞれは、下部チャンバ120のそれぞれ他の側壁に位置しうる。
【0061】
下部チャンバ120のさらに他の側壁には、ヒーティング部121と遠隔チャンバ100の外部に位置する温度コントローラを電気的に連結するためのヒーター端子124とが形成されうる。
【0062】
例えば、下部チャンバ120は、上側面に開放される直方体状からなる。この際、互いに対面する一対の側壁のそれぞれに2個のフィードスルー123がそれぞれ位置し、残りの側壁うち、1つにヒーター端子124が位置しうる。
【0063】
図10及び
図11に示したように、下部チャンバ120の底面は、2層のプレートが重なった構造であり、下側プレートの上面にU字状カーブ流路122aが溝で形成されうる。U字状カーブ流路122aに冷却流体が流れて遠隔チャンバ100を冷却させることができる。U字状カーブ流路122aの両端部には、冷却流体が注入される注入流路122bと冷却流体が排出される排出流路122cとがそれぞれ形成されうる。下側プレートの上面には、U字状カーブの溝を取り囲むシーリング部材挿入溝122dが形成されうる。
【0064】
図12に示したように、前記遠隔チャンバ100の下端部には、前記遠隔チャンバ100の位置を調節する水平移動ステージ130が結合されるものである。水平移動ステージ130は、上下方向に垂直な2つの直交軸上で遠隔チャンバ100の位置を調節することができる。
【0065】
具体的に、水平移動ステージ130は、地面に固定される固定台134と、前記固定台134の上端部に結合されて、前記固定台134に対して水平方向に相対移動可能な移動プレート131と、前記移動プレート131の水平移動を調節する第1水平調節部材132及び第2水平調節部材133と、を含みうる。
【0066】
以上、本発明による実施例が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これにより多様な変形及び均等な範囲の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、次の特許請求の範囲によって決定されねばならない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステムは、DART機器とMS機器との空間的な自由度が向上し、試料に追加的な条件付与が可能なものである。
【0068】
本発明の遠隔チャンバ及びそれを用いたDART-MSシステムは、光照射、温度及び真空制御、電気供給、ガスフローが可能な遠隔チャンバを備えたものであって、これを通じてインサイチュ質量分析が可能なものである。
【符号の説明】
【0069】
100:遠隔チャンバ
110:上部チャンバ
110a:第1空間
111:側壁部
111a:注入口
111b:排出口
112:天井部
112a:ウィンドウ
113:ガスガイド部
113a:第1開口部
113b:第2開口部
113c:第3開口部
113d:第4開口部
113e:ガイド流路
113f:熱遮断中空
120:下部チャンバ
120a:第2空間
121:ヒーティング部
121a:発熱部材
121b:サンプル据え置きディスク
121c:ガイドリング
122:冷却流路
122a:U字状カーブ流路
122b:注入流路
122c:排出流路
122d:シーリング部材挿入溝
123:フィードスルー
124:ヒーター端子
130:水平移動ステージ
131:移動プレート
132:第1水平調節部材
133:第2水平調節部材
134:固定台
200:光源ユニット
300:運搬ガス供給ユニット
400:ガス移送チューブ
500:イオン化ユニット
600:質量分析ユニット
【国際調査報告】