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特表2024-512946リチウム二次電池用正極活物質およびその製造方法
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  • 特表-リチウム二次電池用正極活物質およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240313BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240313BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240313BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20240313BHJP
   H01G 11/24 20130101ALI20240313BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
H01G11/30
H01G11/24
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558237
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 KR2022015604
(87)【国際公開番号】W WO2023063778
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0137697
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヨプ・ド
(72)【発明者】
【氏名】スン・シク・シン
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ソク・シン
【テーマコード(参考)】
4G048
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AB04
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5E078AA15
5E078AB01
5E078BA30
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050EA12
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質および前記正極活物質の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム以外の遷移金属の全モル数に対してニッケルを60モル%以上含有するリチウム遷移金属酸化物と、前記リチウム遷移金属酸化物の表面に位置し、金属酸化物を含むコーティング層とを含み、
前記リチウム遷移金属酸化物は、平均粒径(D50)が0.7~3μmである一次粒子を含む単粒子であり、
前記金属酸化物は、平均粒径(D50)が0.5μm以下である一次粒子であり、Ni、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む、正極活物質。
【請求項2】
前記コーティング層の厚さは、0.02~2.4μmである、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム遷移金属酸化物およびコーティング層の体積比は、50:50~95:5である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム遷移金属酸化物は、平均粒径(D50)が1~10μmである単粒子である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記単粒子1個は、2~30個の一次粒子からなる、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表される、請求項1に記載の正極活物質:
[化学式1]
Li1+aNiCoMn
前記化学式1中、
は、Al、Mg、V、TiおよびZrからなる群から選択される少なくともいずれか一つであり、
0≦a≦0.5、0.6≦x<1、0<y≦0.4、0<z≦0.4、0<w≦0.04、x+y+z+w=1である。
【請求項7】
(S1)遷移金属の全モル数に対してニッケルを60モル%以上含有する遷移金属水酸化物を準備するステップと、
(S2)前記遷移金属水酸化物とリチウム原料物質を混合し、800~890℃の温度で焼成して、単粒子のリチウム遷移金属酸化物を製造するステップと、
(S3)前記リチウム遷移金属酸化物を前記焼成温度より30~50℃高い温度で熱処理するステップと、
(S4)前記熱処理されたリチウム遷移金属酸化物と、Ni、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含むコーティング原料物質を混合し、熱処理するステップとを含む、正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(S4)において、熱処理は、600~700℃の温度で行われる、請求項7に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記焼成は、酸素または空気雰囲気下で行われる、請求項7に記載の正極活物質の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、リチウム二次電池用正極。
【請求項11】
請求項10に記載のリチウム二次電池用正極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年10月15日付けの韓国特許出願第10-2021-0137697号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質および前記正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に関する技術開発と需要の増加に伴い、エネルギー源として、二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化し、広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が用いられており、中でも、作用電圧が高く、容量特性に優れたLiCoOなどのリチウムコバルト複合金属酸化物が主に使用されている。しかし、LiCoOは、脱リチウムによる結晶構造の不安定化のため、熱的特性が非常に劣っている。また、前記LiCoOは、高価であるため、電気自動車などの分野の動力源として大量使用するには限界がある。
【0005】
前記LiCoOの代わりに使用するための材料として、リチウムマンガン複合金属酸化物(LiMnOまたはLiMnなど)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePOなど)またはリチウムニッケル複合金属酸化物(LiNiOなど)などが開発されている。中でも、約200mAh/gの高い可逆容量を有し、大容量の電池の実現が容易なリチウムニッケル複合金属酸化物に関する研究開発がより活発になされている。しかし、前記LiNiOは、LiCoOと比較して熱安定性が劣り、充電状態で外部からの圧力などによって内部短絡が生じると、正極活物質自体が分解されて電池の破裂および発火を引き起こす問題があった。そのため、前記LiNiOの優れた可逆容量は維持し、且つ低い熱安定性を改善するための方法として、Niの一部をCo、MnまたはAlで置換したリチウム遷移金属酸化物が開発されている。
【0006】
しかし、前記リチウム遷移金属酸化物の場合、容量特性を高めるために、ニッケルの含量を高める場合、熱安定性がより低下し、リチウム遷移金属酸化物中のニッケルがNi2+として維持される傾向によって、その表面にLiOHまたはLiCOなどのリチウム副生成物が多量生成される問題があった。このように、正極活物質として、表面にリチウム副生成物の含量が高いリチウム遷移金属酸化物を使用する場合、リチウム二次電池に注入された電解液と反応して、ガスの発生および電池のスウェリング(swelling)現象を引き起こし、電池寿命、安定性および電池抵抗特性などを低下させ得る。
【0007】
したがって、高容量特性を示し、粒子強度および構造的安定性を改善することで、抵抗特性およびサイクル性能が改善した二次電池を製造することができる正極活物質の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2014-0093529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、正極活物質の表面特性を改善して、岩塩構造(rock-salt structure)の形成を抑制し、抵抗特性およびサイクル性能が改善した正極活物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、リチウム以外の遷移金属の全モル数に対してニッケルを60モル%以上含有するリチウム遷移金属酸化物と、前記リチウム遷移金属酸化物の表面に位置し、金属酸化物を含むコーティング層とを含み、前記リチウム遷移金属酸化物は、平均粒径(D50)が0.7~3μmである一次粒子を含む単粒子であり、前記金属酸化物は、平均粒径(D50)が0.5μm以下である一次粒子であり、Ni、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む、正極活物質を提供する。
【0011】
また、本発明は、(S1)遷移金属の全モル数に対してニッケルを60モル%以上含有する遷移金属水酸化物を準備するステップと、(S2)前記遷移金属水酸化物とリチウム原料物質を混合し、800~890℃の温度で焼成して、単粒子のリチウム遷移金属酸化物を製造するステップと、(S3)前記リチウム遷移金属酸化物を前記焼成温度より30~50℃高い温度で熱処理するステップと、(S4)前記熱処理されたリチウム遷移金属酸化物と、Ni、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含むコーティング原料物質を混合し、熱処理するステップとを含む正極活物質の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によって正極活物質を製造した時に、過焼成を行うことで、単粒子形態の正極活物質を製造し、且つ正極活物質のコーティング層に位置した一次粒子の粒径と成分を制御することができる。
【0013】
本発明による正極活物質は、電池において優れた安定性を有することから、容量維持率および寿命特性などの電池性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の正極活物質を示したSEMイメージである。
図2】比較例1の正極活物質を示したSEMイメージである。
図3】比較例2の正極活物質を示したSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0017】
<正極活物質>
本発明の正極活物質は、リチウム以外の遷移金属の全モル数に対してニッケルを60モル%以上含有するリチウム遷移金属酸化物と、前記リチウム遷移金属酸化物の表面に位置し、金属酸化物を含むコーティング層とを含み、前記リチウム遷移金属酸化物は、平均粒径(D50)が0.7~3μmである一次粒子を含む単粒子であり、前記金属酸化物は、平均粒径(D50)が0.5μm以下である一次粒子であり、Ni、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含むことを特徴とする。
【0018】
前記リチウム遷移金属酸化物は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)およびマンガン(Mn)を含み、リチウム(Li)以外の遷移金属の全モル数に対してニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である、高含量ニッケル(High-Ni)NCM系リチウム遷移金属酸化物である。前記ニッケルの含量は、リチウム(Li)以外の遷移金属の全モル数に対して70モル%以上であることができ、または80モル%以上であることができる。前記のように、リチウム(Li)以外の遷移金属の全モル数に対してニッケル(Ni)の含量が60モル%以上を満たすことで、高容量の実現が可能であり、且つ優れた安定性を確保することができる。
【0019】
ただし、前記ニッケル含量に対するNi2+のモル分率が高すぎると、カチオン混合が増加して、局所的に電気化学的に反応がない岩塩構造が形成される可能性があり、これは、充電および放電を妨げるだけでなく、これによって放電容量が減少し得る。また、一度形成された岩塩構造は、粒子内で継続して拡散するため、性能をさらに悪化する問題がある。
【0020】
したがって、本発明では、後述するように、リチウム遷移金属酸化物の表面に位置するコーティング層に粒子径が小さい一次粒子を配置して、岩塩構造の拡散を抑制した。また、前記コーティング層に位置した一次粒子として、Ni、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む金属酸化物を使用することで、リチウム遷移金属酸化物に比べて表面のニッケル含量を下げて、岩塩構造の形成を効果的に防止する。
【0021】
前記リチウム遷移金属酸化物は、下記化学式1で表されることができる。
【0022】
[化学式1]
Li1+aNiCoMn
【0023】
前記化学式1中、
は、Al、Mg、V、TiおよびZrからなる群から選択される少なくともいずれか一つであり、
0≦a≦0.5、0.6≦x<1、0<y≦0.4、0<z≦0.4、0<w≦0.04、x+y+z+w=1である。
【0024】
前記化学式1中、前記1+aは、前記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物内のリチウムのモル比を示し、0≦a≦0.5、0≦a≦0.20、好ましくは0≦a≦0.15であることができる。
【0025】
前記xは、前記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物においてリチウム以外の金属成分のうちニッケルのモル比を示し、0.6≦x<1.0、好ましくは0.8≦x<1.0であることができる。
【0026】
前記yは、前記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物においてリチウム以外の金属成分のうちコバルトのモル比を示し、0<y≦0.4であり、Coを含むことによる容量特性の改善効果の顕著性を考慮すると、好ましくは、0<y≦0.2であることができる。
【0027】
前記zは、前記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物においてリチウム以外の金属成分のうちマンガンのモル比を示し、0<z≦0.4、好ましくは0<z≦0.2であることができる。
【0028】
前記Mは、化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物内の遷移金属サイト(site)に置換された元素であり、Al、Mg、V、TiおよびZrからなる群から選択される少なくともいずれか一つ以上を含むことができる。
【0029】
前記wは、前記化学式1で表されるリチウム遷移金属酸化物においてリチウム以外の金属成分のうちドーピング元素Mのモル比を示し、0<w≦0.04、好ましくは0≦w≦0.02であることができる。
【0030】
前記リチウム遷移金属酸化物は、平均粒径(D50)が0.7~3μmである一次粒子を含む単粒子である。
【0031】
前記「単粒子」は、従来、一般的に使用されていた数十~数百個の一次粒子が凝集して形成される二次粒子形態の正極活物質粒子と区別するために使用される用語であり、10個以下の一次粒子の凝集体粒子を含む概念である。前記「二次粒子」は、一次粒子に対する意図的な凝集または造粒工程なしにも、一次粒子間の物理的または化学的結合によって一次粒子同士が凝集した凝集体、すなわち、二次構造体を意味する。
【0032】
前記「一次粒子」は、走査電子顕微鏡(SEM)を介して正極活物質の断面を観察した時に、1つの塊として区別される最小粒子単位を意味し、一つの結晶粒からなることもでき、複数個の結晶粒からなることもできる。本発明において、前記一次粒子の平均粒径は、正極活物質粒子の断面SEMデータで区別されるそれぞれの粒子径を測定した後、これらの算術平均値を求める方法で測定されることができる。
【0033】
前記「平均粒径(D50)」は、体積累積粒径分布の50%基準での粒径と定義することができ、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的には、前記平均粒径(D50)は、対象粒子を分散媒の中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入して、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における粒径による粒子体積累積分布の50%基準での平均粒径(D50)を算出することができる。
【0034】
前記単粒子をなす一次粒子の平均粒径(D50)は、0.7~3μmである。より好ましくは、一次粒子の平均粒径(D50)は、1~3μm、最も好ましくは1.5~2.5μmであることができる。
【0035】
本発明の正極活物質に含まれたリチウム遷移金属酸化物は、前記範囲の平均粒径(D50)を有する一次粒子からなることで、充放電サイクルによるクラックの形成を抑制することができ、クラックの間に電解質が浸透することを防止して、電池の寿命特性を改善することができる。同時に、前記リチウム遷移金属酸化物のコーティング層には、リチウム遷移金属酸化物をなす一次粒子よりサイズが小さい一次粒子を配置することで、岩塩構造の拡散による性能の低下を最小化した。
【0036】
前記単粒子の平均粒径(D50)は、1~10μmであることを特徴とする。好ましくは、2~7μm、3~6μm、または3.5~5μmであることができる。本発明の正極活物質に含まれたリチウム遷移金属酸化物は、単粒子で形成されることで、平均粒径(D50)が1~10μmである小粒径であっても、その粒子強度に優れることができる。
【0037】
前記単粒子は2~30個の一次粒子からなることができ、具体的には、3~25個、または5~20個の一次粒子からなることができる。単粒子をなす一次粒子の個数が前記範囲内であるときに、一つの巨大な一次粒子のみで構成された形態の単粒子に比べて、電池の出力および抵抗特性が改善する効果を奏することができる。
【0038】
本発明の正極活物質は、前記リチウム遷移金属酸化物の表面に位置し、金属酸化物を含むコーティング層を含む。前記コーティング層は、リチウム遷移金属酸化物の単粒子形態と区別され、その表面において金属酸化物が位置する領域を指すことができる。
【0039】
ここで、前記金属酸化物は、平均粒径(D50)が0.5μm以下である一次粒子であり、Ni、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む。
【0040】
前記金属酸化物は、リチウム遷移金属酸化物の表面のリチウム副生成物と、Ni、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含むコーティング原料物質の反応から由来することができる。例えば、リチウム副生成物とNi、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含む金属酸化物が反応して形成されたリチウム-金属酸化物であることができる。
【0041】
本発明において、正極活物質内のコーティング層は、リチウム遷移金属酸化物の表面に位置して金属酸化物を含み、前記金属酸化物は、一次粒子として、平均粒径(D50)が0.5μm以下、好ましくは0.1~0.3μmであることができる。
【0042】
金属酸化物の形態が前記範囲の平均粒径(D50)を有する一次粒子であることから、本発明では、一次粒子の粒径が小さくて、岩塩構造の迅速な拡散を抑制し、岩塩構造の厚さの増加およびこれによる性能の劣化を最小化することができる。
【0043】
前記コーティング層内の金属酸化物が一次粒子であることは、一次粒子がコーティング層に存在する位置や形態には制限されない。具体的には、金属酸化物が前記平均粒径を有する一次粒子であれば、一次粒子が凝集しない状態で、リチウム遷移金属酸化物の表面に位置することができ、一部は凝集して凝集体をなし、一部は凝集していない状態で存在することができ、一次粒子の全部が凝集体をなすものもすべて本発明に含まれる。一次粒子の一部または全部が凝集している場合、一次粒子が凝集した凝集体と凝集していない一次粒子の相対的な割合や位置は制限されない。
【0044】
本発明において、リチウム遷移金属酸化物の表面に位置し、金属酸化物を含むコーティング層の厚さは、0.02~2.4μmであることができ、具体的には、0.1~1.2μm、または0.2~0.5μmであることができる。コーティング層の厚さが前記範囲内であるときに、リチウム遷移金属酸化物の表面で、岩塩構造の拡散を効果的に抑制し、且つ一次粒子の粒径が小さくてコーティング層の表面積が増加することで生じる副反応を最小化することができる。
【0045】
本発明において、前記リチウム遷移金属酸化物およびコーティング層の体積比は、50:50~95:5であることができ、具体的には、70:30~90:10であることができる。前記範囲内で、上述の単粒子の特性を維持し、且つリチウム遷移金属酸化物とコーティング層の一次粒子径の勾配による岩塩構造の拡散防止を効果的に実現することができる。
【0046】
前記コーティング層は、リチウム遷移金属酸化物の表面の全体にまたは部分的に形成されることもできる。前記コーティング層が前記リチウム遷移金属酸化物の表面に部分的に形成される場合、前記リチウム遷移金属酸化物の表面の全面積のうち20%以上~100%未満で形成されることができる。コーティング層の面積が前記のように20%以上である時に、コーティング層の形成による電池の寿命特性の向上および充填密度の改善効果を充分に奏することができる。
【0047】
<正極活物質の製造方法>
本発明の正極活物質の製造方法は、(S1)遷移金属の全モル数に対してニッケルを60モル%以上含有する遷移金属水酸化物を準備するステップと、(S2)前記遷移金属水酸化物とリチウム原料物質を混合し、800~890℃の温度で焼成して、単粒子のリチウム遷移金属酸化物を製造するステップと、(S3)前記リチウム遷移金属酸化物を前記焼成温度より30~50℃高い温度で熱処理するステップと、(S4)前記熱処理されたリチウム遷移金属酸化物と、Ni、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含むコーティング原料物質を混合し、熱処理するステップとを含む。
【0048】
ステップ(S1)において、遷移金属の全モル数に対してニッケルを60モル%以上含有する遷移金属水酸化物を準備する。
【0049】
前記遷移金属水酸化物は、市販の正極活物質前駆体を購入して使用するか、当該技術分野において周知の正極活物質前駆体の製造方法によって製造されることができる。
【0050】
例えば、前記遷移金属水酸化物は、ニッケル含有原料物質、コバルト含有原料物質およびマンガン含有原料物質を含む遷移金属溶液にアンモニウムカチオン含有錯体形成剤と塩基性化合物を添加して共沈反応させて製造されることができる。
【0051】
ステップ(S2)において、前記遷移金属水酸化物とリチウム原料物質を混合し、800~890℃の温度で焼成して、単粒子のリチウム遷移金属酸化物を製造する。
【0052】
すなわち、800~890℃の温度で焼成を行うことで、前記正極活物質が単粒子の形態に製造される。焼成温度が前記範囲内であるときに、高い結晶性を有する単粒子を提供し、単粒子の粒径を効果的に制御することができる。前記焼成温度は、800~890℃であり、好ましくは800~850℃であることができる。
【0053】
前記リチウム原料物質は、リチウム含有炭酸塩(例えば、炭酸リチウムなど)、水和物(例えば、水酸化リチウムI水和物(LiOH・HO)など)、水酸化物(例えば、水酸化リチウムなど)、硝酸塩(例えば、硝酸リチウム(LiNO)など)、塩化物(例えば、塩化リチウム(LiCl)など)などであることができるが、これに制限されるものではない。
【0054】
前記焼成は、酸素または空気(air)雰囲気下で行われることができ、5~25時間行われることができる。前記雰囲気下で焼成される場合、局所的な酸素分圧が高くなって正極活物質の結晶性が向上し、表面上の制御が容易であることができる。
【0055】
また、前記リチウム遷移金属酸化物の製造時に、リチウム遷移金属酸化物の構造的安定性の改善のために、必要に応じて、選択的にドーピング元素M(ここで、前記Mは、Al、Mg、V、TiおよびZrからなる群から選択される少なくともいずれか一つ以上)をドーピングすることをさらに含むことができる。例えば、リチウム遷移金属酸化物がドーピング元素Mでドーピングされる場合、前記ドーピング元素Mは、正極活物質前駆体の製造のための共沈反応時にドーピング元素M原料物質を投入することによってドーピングされることができ、または正極活物質前駆体とリチウム原料物質の焼成時に、ドーピング元素M原料物質を投入することによってMドーピングされたリチウム遷移金属酸化物を製造することができる。
【0056】
ステップ(S3)において、前記リチウム遷移金属酸化物を前記焼成温度より30~50℃高い温度で熱処理する。具体的には、リチウム遷移金属酸化物を焼成温度より30~50℃、または30~40℃、例えば、30℃高い温度に昇温させた後、温度を下げることができる。
【0057】
前記熱処理によりリチウム遷移金属酸化物の表面にLiOHまたはLiCOなどのリチウム副生成物を充分に生成させる。リチウム副生成物は、リチウム遷移金属酸化物の表面でコーティング原料物質と反応して、平均粒径(D50)が0.5μm以下である一次粒子形態の金属酸化物を形成し、コーティング層をなすことができる。
【0058】
前記熱処理過程を省略する場合、リチウム遷移金属化合物の表面にリチウム副生成物が充分に存在しなくなる。この場合、コーティング原料物質とリチウム副生成物の反応によって誘導される新たな一次粒子の形成が充分に行われることができず、概してコーティング原料物質がリチウム遷移金属酸化物を覆う形態の均一なコーティング層が形成される。これにより、コーティング層に位置する小粒径の一次粒子を用いた岩塩構造拡散の抑制効果を実現し難くなる。
【0059】
ステップ(S4)において、前記熱処理されたリチウム遷移金属酸化物と、Ni、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含むコーティング原料物質を混合し、熱処理する。
【0060】
前記熱処理により、リチウム遷移金属酸化物の表面においてリチウム副生成物とコーティング原料物質との反応を誘導することで、リチウム遷移金属酸化物の表面にドット(dot)形態、具体的には平均粒径(D50)が0.5μm以下である一次粒子形態の金属酸化物を安定的に形成することができる。これにより、本発明の正極活物質は、高い構造的安定性によって優れた粒子強度を示す。
【0061】
前記コーティング原料物質は、Ni、Co、Mn、Al、B、Ti、Ta、WおよびNbからなる群から選択される1種以上の金属元素を含み、リチウム副生成物との反応により金属酸化物を形成することができるものであれば、制限なく使用可能である。例えば、金属元素としてCoを含む場合、コーティング原料物質は、Co、Co(OH)、Co、Co(PO、CoF、CoOOH、Co(OCOCH・4HO、Co(NO)・6HO、Co、Co(SO・7HOおよびCoCであることができるが、これに制限されない。
【0062】
前記ステップ(S4)において、熱処理は、600~700℃の温度で行われることができ、酸素または空気(air)雰囲気下で行われることができる。前記雰囲気下で焼成される場合、局所的な酸素分圧が高くなって正極活物質の結晶性が向上し、表面上の制御が容易であることができる。
【0063】
また、本発明の製造方法は、前記のような方法により合成された正極活物質を水洗するステップをさらに含むことができる。
【0064】
例えば、前記正極活物質を水洗溶液(好ましくは、蒸留水)と混合し、水洗することで、前記正極活物質の表面に不純物として存在するリチウム副生成物を効果的に除去することができる。
【0065】
さらに、本発明の製造方法は、前記水洗するステップの後に、コーティング層を形成するステップをさらに含むことができる。好ましくは、前記コーティング層は、Bを含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0066】
例えば、前記コーティング元素を溶媒の中に分散させて製造したコーティング層形成用組成物を塗布、浸漬、噴霧などの通常のスラリーコーティング法を用いて、前記正極活物質上に表面処理した後、熱処理を行うことで、前記正極活物質の表面に前記コーティング層を形成することができる。
【0067】
前記コーティング層を形成するために、コーティング元素を分散させることができる溶媒としては、水、炭素数1~8のアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、n-メチルピロリドン、アセトン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の混合物が使用されることができる。また、前記溶媒は、適切な塗布性を示すことができ、以降、熱処理時に容易に除去されることができる量で含まれることができる。
【0068】
次いで、コーティング層を形成するための前記熱処理は、前記組成物の中に含まれた前記溶媒を除去することができる温度の範囲で行われることができ、具体的には100~500℃、好ましくは200~400℃で行われることができる。前記熱処理温度が100℃未満である場合、残留溶媒による副反応の発生およびこれによる電池特性の低下の恐れがあり、前記熱処理温度が500℃を超える場合、高温の熱による副反応の発生の恐れがある。
【0069】
<正極>
また、本発明は、上述の方法により製造された正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供する。
【0070】
具体的には、前記正極は、正極集電体と、前記正極集電体の少なくとも一面に位置し、上記の正極活物質を含む正極活物質層とを含む。
【0071】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素またはアルミニウムやステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、前記正極集電体は、通常、3~500μmの厚さを有することができ、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して、正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態で使用されることができる。
【0072】
前記正極活物質層は、正極活物質とともに、導電材およびバインダーを含むことができる。
【0073】
この際、前記正極活物質は、正極活物質層の全重量に対して、80~99重量%、より具体的には85重量%~98重量%の含量で含まれることができる。上記の含量範囲で含まれる時に、優れた容量特性を示すことができる。
【0074】
この際、前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こさず、電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記導電材は、正極活物質層の全重量に対して1~30重量%含まれることができる。
【0075】
前記バインダーは、正極活物質粒子の間の付着および正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの様々な共重合体などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記バインダーは、正極活物質層の全重量に対して1~30重量%含まれることができる。
【0076】
前記正極は、上記の正極活物質を用いる以外は、通常の正極の製造方法により製造されることができる。具体的には、上記の正極活物質および選択的に、バインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した正極合材を正極集電体上に塗布した後、乾燥および圧延することで製造されることができる。この際、前記正極活物質、バインダー、導電材の種類および含量は、上述のとおりである。
【0077】
前記溶媒としては、当該技術分野において一般的に使用される溶媒であることができ、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されることができる。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して、前記正極活物質、導電材およびバインダーを溶解または分散させ、以降、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0078】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極合材を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネートすることで製造されることもできる。
【0079】
リチウム二次電池
また、本発明は、前記正極を含む電気化学素子を製造することができる。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシタなどであることができ、より具体的には、リチウム二次電池であることができる。
【0080】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極と、前記正極と対向して位置する負極と、前記正極と負極との間に介在されるセパレータと、電解質とを含み、前記正極は、上述のとおりであるため、具体的な説明を省略し、以下、残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0081】
また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、および前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含むことができる。
【0082】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含む。
【0083】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面に、炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有することができ、正極集電体と同様、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して、負極活物質の結合力を強化することもできる。例えば、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0084】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに、選択的に、バインダーおよび導電材を含む。
【0085】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物が使用されることができる。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金など、リチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOβ(0<β<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のように、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。また、前記負極活物質として、金属リチウム薄膜が使用されてもよい。また、炭素質材料は、低結晶性炭素および高結晶性炭素などがいずれも使用可能である。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)および硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、鱗片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)および石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0086】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量に対して80~99重量%含まれることができる。
【0087】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体の間の結合を容易にする成分であり、通常、負極活物質層の全重量100重量部に対して0.1重量部~10重量部添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0088】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分であり、負極活物質層の全重量に対して10重量%以下、具体的には5重量%以下で添加されることができる。このような導電材は、当該電池において化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されず、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0089】
例えば、前記負極活物質層は、負極集電体上に、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を溶媒の中に溶解または分散させて製造した負極合材を塗布し乾燥することで製造されるか、または前記負極合材を別の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネートすることで製造されることができる。
【0090】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに、電解液の含湿能力に優れるものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてもよく、選択的に、単層または多層構造として使用されることができる。
【0091】
また、本発明で使用される電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0092】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる。
【0093】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと直鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液が優れた性能を示すことができる。
【0094】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAl0、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用されることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有することから優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0095】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などのために、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の全重量100重量部に対して0.1~5重量部含まれることができる。
【0096】
前記のように、本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性および寿命特性を安定的に示すことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0097】
したがって、本発明の他の一実施形態によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供される。
【0098】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられることができる。
【0099】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などであることができる。
【0100】
本発明によるリチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用されるだけでなく、多数の電池セルを含む中大型電池モジュールにおいて単位電池としても好ましく使用されることができる。
【0101】
実施例
以下、実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。しかしながら、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらのみに本発明の範囲が限定されない。
【0102】
実施例1
正極活物質前駆体Ni0.85Co0.05Mn0.10(OH)にリチウムソースLiOHを入れて混合し、熱処理のために混合した粉末をアルミナるつぼに投入した。次に、825℃、酸素雰囲気下で20時間焼成してリチウム遷移金属酸化物を製造した。
【0103】
以降、前記リチウム遷移金属酸化物を粉砕して855℃の酸素雰囲気下で熱処理した後、Coと混合して650℃の酸素雰囲気下で熱処理し、正極活物質を製造した。
【0104】
比較例1
855℃の酸素雰囲気下で熱処理するステップおよびCoと混合して650℃の酸素雰囲気下で熱処理するステップを行っていない以外は、実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0105】
比較例2
855℃の酸素雰囲気下で熱処理するステップを行っていない以外は、実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0106】
実験例1:正極活物質の表面確認
実施例1、比較例1および2の正極活物質の表面を確認し、これを図1図3に示した。
【0107】
図1図3に示したように、実施例1では、リチウム遷移金属酸化物が位置した内部は、単粒子形態であり、表面に行くほど、一次粒子径が小さくなるコーティング層が形成された。
【0108】
一方、比較例1は、リチウム遷移金属酸化物の表面に一次粒子からなるコーティング層が形成されず、ただし、単粒子として形成することができなかった少数の一次粒子だけが残留する様子が観察された。
【0109】
また、比較例2の場合、Coと混合して熱処理するコーティング層形成ステップを行っているが、実施例1とは異なり、一次粒子径に勾配がなく、均一で滑らかなコーティング層のみが表面に位置したことを確認した。これは、比較例2で熱処理を介してリチウム遷移金属酸化物の表面にリチウム副生成物を生成させるステップを省略したためである。
【0110】
実験例2:正極活物質の平均粒径
前記実施例1、比較例1および2で製造した正極活物質粒子を対象として、リチウム遷移金属酸化物(単粒子)をなす一次粒子の平均粒径、コーティング層に含まれた金属酸化物である一次粒子の平均粒径を測定した。平均粒径の測定にはSEM写真を用いた。
【0111】
【表1】
【0112】
上記表1のように、本発明による実施例1の正極活物質は、平均粒径が2.0μmである一次粒子からなる単粒子のリチウム遷移金属酸化物と、その表面に位置し、平均粒径が0.2μmである一次粒子の金属酸化物が位置することを確認した。このように、本発明の正極活物質は、コアをなす一次粒子の粒径と表面に位置した一次粒子の粒径が異なることが分かる。
【0113】
一方、比較例1および比較例2の正極活物質は、一次粒子の金属酸化物を含んでいないため、これに対応する平均粒径を測定することができなかった。
【0114】
実験例3:抵抗特性の評価
前記実施例1、比較例1および2の正極活物質を用いて、リチウム二次電池を製造し、それぞれに対して、抵抗特性を評価した。
【0115】
具体的には、実施例および比較例でそれぞれ製造した正極活物質、カーボンブラック導電材およびポリビニリデンフルオライド(PVdF)バインダーを96.5:1.5:2の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)溶媒の中で混合して正極スラリーを製造した。前記正極スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布してから、100℃で乾燥した後、圧延して正極を製造した。
【0116】
一方、負極としてリチウムメタルを使用した。
【0117】
前記で製造した正極と負極との間に多孔性ポリエチレンセパレータを介在して電極組立体を製造した後、これを電池ケースの内部に位置させた後、前記ケースの内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。ここで、電解液として、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート:ジエチルカーボネート(EC:EMC:DEC)を3:4:3の体積比で混合した有機溶媒に1.0Mのリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)を溶解させた電解液を注入し、リチウム二次電池を製造した。
【0118】
次に、リチウム二次電池を低温(-10℃)で、0.4Cの定電流で、SOC5、SOC50またはSOC95まで充電させた後、1,350秒間、0.4Cの定電流で放電させて、1,350秒間の電圧降下を測定し、これを電流値で除して低温での抵抗を測定し、これを下記表に示した。
【0119】
【表2】
【0120】
上記表2の結果のように、実施例の二次電池は、比較例に比べて低温抵抗が改善したことを確認した。
【0121】
実験例4:充放電サイクルによる容量および抵抗特性の評価
上記で製造したリチウム二次電池それぞれに対して、常温で0.2Cの定電流で、4.25Vまで0.05Cカットオフ(cut off)で充電した。次に、0.2Cの定電流で、2.5Vになるまで放電した。前記充電および放電挙動を1サイクルとし、2回目からは0.5Cの定電流で4.25Vまで0.05Cカットオフ(cut off)で充電および0.5Cの定電流で2.5Vまで放電することを1サイクルとした。
【0122】
このようなサイクルを30回繰り返して実施した後、前記二次電池のサイクルによる容量維持率および抵抗増加率を測定し、これを下記表3に示した。
【0123】
【表3】
【0124】
上記表3の結果のように、実施例の二次電池は、比較例に比べて、容量維持率が向上し、抵抗変化率が低くなり、寿命特性が改善したことを確認した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】