(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】リソグラフィシステムのミラーを製造する方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240313BHJP
【FI】
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561882
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2022056930
(87)【国際公開番号】W WO2022214289
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】102021203470.5
(32)【優先日】2021-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ツァツェック
(72)【発明者】
【氏名】エリック ロープシュトラ
(72)【発明者】
【氏名】エリック エヴァ
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197BA03
2H197BA21
2H197CA06
2H197CA10
2H197CB16
2H197CC16
2H197FB03
2H197GA10
2H197GA21
2H197GA23
(57)【要約】
本発明は、リソグラフィシステムのミラー(12)を製造する方法に関する。本発明による方法において、第1ミラー部品(13)及び第2ミラー部品(14)を用意し、第1ミラー部品(13)の第1接続面(15)の領域に細長い冷却チャネル開口(19)を有する冷却チャネル(18)を、第1ミラー部品(13)に形成し、且つ/又は第2ミラー部品(14)の第2接続面(16)の領域に細長い冷却チャネル開口(19)を有する冷却チャネル(18)を、第2ミラー部品(14)に形成する。第1ミラー部品(13)と第2ミラー部品(14)とを、最初に第1接続面(15)の部分領域と第2接続面(16)の部分領域とが接触して共通の接触面(24)を形成するように接近させ、第1ミラー部品(13)と第2ミラー部品(14)とを冷却チャネル開口(19)の長さ方向範囲に沿った方向(25)に接近させ続けることにより、共通の接触面(24)を拡大する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィシステムのミラー(12)を製造する方法であって、
第1ミラー部品(13)及び第2ミラー部品(14)を用意し、前記第1ミラー部品(13)の第1接続面(15)の領域に細長い冷却チャネル開口(19)を有する冷却チャネル(18)を、前記第1ミラー部品(13)に形成し、且つ/又は前記第2ミラー部品(14)の第2接続面(16)の領域に細長い冷却チャネル開口(19)を有する冷却チャネル(18)を、前記第2ミラー部品(14)に形成し、且つ
前記第1ミラー部品(13)と前記第2ミラー部品(14)とを、最初に前記第1接続面(15)の部分領域と前記第2接続面(16)の部分領域とが接触して共通の接触面(24)を形成するように接近させ、前記第1ミラー部品(13)と前記第2ミラー部品(14)とを前記冷却チャネル開口(19)の長さ方向範囲に沿った方向(25)に接近させ続けることにより、前記共通の接触面(24)を拡大する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記冷却チャネル開口(19)は、相互に平行に延びる方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記冷却チャネル開口(19)は、それぞれが第1ミラー部品(13)の前記第1接続面(15)及び/又は前記第2ミラー部品(14)の前記第2接続面(16)の中央の場所から一方向に径方向外方に延びる方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法において、隣接する冷却チャネル開口(19)間の縁間隔が、15mm以下である方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法において、前記第1ミラー部品(13)の前記第1接続面(15)の領域に細長い補助チャネル開口(27)を有する補助チャネル(26)を、前記第1ミラー部品(13)に形成し、且つ/又は前記第2ミラー部品(14)の前記第2接続面(16)の領域に細長い補助チャネル開口(27)を有する補助チャネル(26)を、前記第2ミラー部品(14)に形成する方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法において、前記第1ミラー部品(13)の前記第1接続面(15)及び/又は前記第2ミラー部品(14)の前記第2接続面(16)は、曲率を有する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記第1ミラー部品(13)の前記第1接続面(15)の曲率を、種々の平均曲率半径を有し且つ非回転対称であるように形成し、且つ/又は前記第2ミラー部品(14)の前記第2接続面(16)を、種々の平均曲率半径を有し且つ非回転対称であるように形成する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記第1ミラー部品(13)の前記第1接続面(15)及び/又は前記第2ミラー部品(14)の前記第2接続面(16)の平均曲率半径の絶対値が最小である方向に沿って、前記第1ミラー部品(13)及び前記第2ミラー部品(14)を接近させ続ける方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法において、光学面(17)の形成領域を、前記第2ミラー部品(14)の前記第2接続面(16)とは反対側の面に設ける方法。
【請求項10】
リソグラフィシステムのミラーであって、
第1ミラー部品(13)と、
第2ミラー部品(14)と、
光を反射する光学面(17)と、
複数の冷却チャネル(18)と、
複数の補助チャネル(26)と
を備え、前記第1ミラー部品(13)及び前記第2ミラー部品(14)は、前記第1ミラー部品(13)の第1接続面(15)及び前記第2ミラー部品(14)の第2接続面(16)の領域で相互に剛接続され、
前記冷却チャネル(18)は、前記第1接続面(15)又は前記第2接続面(16)の領域に細長い冷却チャネル開口(19)を有し、
前記補助チャネル(26)は、前記第1接続面(15)又は前記第2接続面(16)の領域に細長い補助チャネル開口(27)を有するミラー。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記冷却チャネル開口(19)の少なくともいくつかは、それぞれの長さ方向範囲の大部分が前記光学面(17)の横方向領域内にあり、前記補助チャネル開口(27)の少なくともいくつかは、それぞれの長さ方向範囲の大部分が前記光学面(17)の横方向領域外にあるミラー。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のミラーにおいて、前記冷却チャネル(18)及び前記補助チャネル(26)は、相互に流体的に分離されるミラー。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載のミラー(12)を有する照明システム。
【請求項14】
請求項10~12のいずれか1項に記載のミラー(12)を有する投影レンズ。
【請求項15】
請求項13に記載の照明システム(1)及び/又は請求項14に記載の投影レンズ(2)を有するリソグラフィシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィシステムのミラーを製造する方法に関する。本発明はさらに、リソグラフィシステムのミラー、照明システム、投影レンズ、及びリソグラフィシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィシステムは、特に半導体の製造に用いられ、概して照明システム及び投影レンズを有する。照明システムは、レチクルとも称することが多いマスクの照明に望ましい光分布を光源の光から生成する。光は、この場合は一般的な放射線の意味と理解されたく、すなわち特定の波長に制限されない。したがって、用語「光」及び「放射線」は、以下では同義に用いられ、すなわち光源を放射源とも称する場合があり、光分布を放射線分布とも称する場合があり、以下同様である。投影レンズを用いて、マスクは、特に半導体材料のウェーハ又は別の基板に例えば塗布された感光材料に結像される。このようにして、感光材料は、マスクによる所定のパターンに構造化して露光される。マスクは、基板への高精度の転写が意図される微細構造要素を有するので、照明システムは、所望の光分布を精密に且つ再現性よく生成する必要があり、投影レンズによる結像は、精密に且つ再現性よく行われる必要がある。
【0003】
さらに他の光学素子に加えて、照明システム及び投影レンズは、光学面での反射により光を指定されたように偏向する少なくとも1つのミラーを光路に有し得る。光の具体的な偏向の仕方は、光学面の形状に応じて変わる。光学面は、例えば、金属層として又は反射率が交互に変わる一連の層として形成され得る。
【0004】
ミラーは、光の一部を完全に反射するのではなく吸収して熱に変換するので、動作中に発熱する。この温度上昇は、ミラーの光学面の変形を招き、それにより光学面における光偏向に影響を及ぼす。ミラーが照明システムの構成部品である場合、照明システムにより生成された光分布は、ミラーの光学面が変形した場合に仕様からずれる。ミラーが投影レンズの構成部品である場合、ミラーの光学面が変形すると、投影レンズを用いた結像中に結像収差が起こる。
【0005】
半導体製造における益々の小型化に伴い、マスクの照明及び結像は、さらにより高精度に実行されなければならない。その結果、これまでは許容可能であった影響因子をより多く考慮しなければならないか、又は影響因子を補償する既存の措置を改善若しくはより良い措置に置き換えなければならない。
【0006】
ミラーの冷却によりリソグラフィシステムのミラーの加熱を打ち消すことは、既に知られている。例えば、未公開の特許文献1は、第1ミラー部品、第2ミラー部品、光を反射する光学面、及び複数の冷却チャネルを含むミラー本体を有するミラーを開示している。
【0007】
複数の部品から形成されたミラーで問題となるのは、リソグラフィ光学部品に対する高い要件を満たすような個々のミラー部品の接続である。例えば、ミラー部品間の接続には、空気又は他の何らかのガスがミラー部品間に閉じ込められて、例えば接続の強度を低下させるというリスクが伴う。さらに、ガス混入は、ミラーの干渉測定に悪影響を及ぼし得る。さらに、ガス混入は、閉じ込められたガスの雰囲気圧及び/又は温度に応じて変わり得るミラーの光学面の変形を引き起こし得る。ミラーの材料に溶解したガスが経時的にガス混入領域に蓄積し、結果として閉じ込められたガスの体積が増大してその悪影響も同様に大きくなるというさらなるリスクがある。さらに、ガス混入により生じた局部応力は、ミラー部品の接続領域でドリフト運動を引き起こす可能性があり、これがさらにミラーの光学面の変形を招き得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願第102020208648.6号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、リソグラフィシステムのミラーの製造を簡略化し、特に高精度且つ高い再現性で2つのミラー部品を接続できるようにするという目的に基づく。ミラー部品間のガス混入を防止するか又は少なくとも許容可能なレベルに低減することが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴の組合せにより達成される。
【0011】
本発明によるリソグラフィシステムのミラーを製造する方法において、第1ミラー部品及び第2ミラー部品を用意し、第1ミラー部品の第1接続面の領域に細長い冷却チャネル開口を有する冷却チャネルを、第1ミラー部品に形成し、且つ/又は第2ミラー部品の第2接続面の領域に細長い冷却チャネル開口を有する冷却チャネルを、第2ミラー部品に形成する。第1ミラー部品と第2ミラー部品とを、第1接続面の部分領域及び第2接続面の部分領域が最初に接触して共通の接触面を形成するように接近させ、冷却チャネル開口の長さ方向範囲に沿った方向に第1ミラー部品と第2ミラー部品とを接近させ続けることにより、共通の接触面を拡大する。
【0012】
本発明による方法には、リソグラフィシステムのミラーの製造が簡略化され、2つのミラー部品同士を高精度且つ高い再現性で接続できるという利点がある。本発明による方法を用いて、第2ミラー部品を第1ミラー部品に高度な制御下でオプティカルコンタクト接合する、すなわち第2ミラー部品の材料と第1ミラー部品の材料との間の共通の接触面の領域のファンデルワールス力により第1ミラー部品に接続することができる。ここで、ガスが冷却チャネル開口に沿って逃げることができるので、第1ミラー部品の第1接続面と第2ミラー部品の第2接続面との間のガス混入を概ね回避することができる。さらに別の利点は、第2ミラー部品と第1ミラー部品とを接近させ続ける際に、第2ミラー部品を第1ミラー部品により支持し続けることができることにある。
【0013】
第2ミラー部品が第1ミラー部品に既にオプティカルコンタクト接合されている共通の接触面と、オプティカルコンタクト接合されていない第1及び第2接続面の領域との間の移行区域を、オプティカルコンタクト接合フロントとも称する。第1ミラー部品と第2ミラー部品とを接近させ続けることで、オプティカルコンタクト接合フロントが制御下で所望の方向に移動するという効果が得られる。この連続的なオプティカルコンタクト接合には、オプティカルコンタクト接合動作全体で2つのミラー部品の相互に対する相対的なアライメントを非常に正確に制御することができ、望ましくない自然発生的なオプティカルコンタクト接合を回避できるという利点がある。オプティカルコンタクト接合フロントを冷却チャネル開口と平行に移動させることにより、横断する冷却チャネル開口により生じる可能性があるオプティカルコンタクト接合フロントのジャンプを回避し、且つ不連続なオプティカルコンタクト接合及びそれにより生じる材料応力の関連リスクを低く抑えることがさらに可能である。さらに、オプティカルコンタクト接合動作の任意の時点で、オプティカルコンタクト接合フロントの領域と環境との間に接続があり、したがってこの領域からガスが逃げることは常に確実である。
【0014】
第1ミラー部品と第2ミラー部品との接近は、冷却チャネル開口の長さ方向範囲に対して鋭角に延びる方向に続けることができる。特に、第1ミラー部品と第2ミラー部品との接近は、冷却チャネル開口の長さ方向範囲と平行な方向に続けることができる。結果として鋭角に、特に冷却チャネルと平行に、オプティカルコンタクト接合フロントが移動することで、第1接続面と第2接続面との間の中間空間のガス抜きが容易になり、ガス混入のリスクが低減する。
【0015】
第1ミラー部品と第2ミラー部品とを接近させる前に、第2ミラー部品を基板に仮接続することができる。これにより、ミラーの製造中の第2ミラー部品の機械的安定性を高めることができることで、例えば取り扱いを容易にすることができる。
【0016】
633nmの波長λに関して、第1ミラー部品の第1接触面及び/又は第2ミラー部品の第2接続面の形状は、指定の形状からλ/2未満、好ましくはλ/10未満の偏差があり得る。第1ミラー部品の第1接続面及び/又は第2ミラー部品の第2接続面は、5nm未満、好ましくは1nm未満の粗さがあり得る。用語「粗さ」は、この場合、平滑な表面からのランダムに分布した偏差を包含する。精密な形状の平滑な接続面は、オプティカルコンタクト接合を容易にし、ガス混入のリスクを低減し、接続部の耐荷力を増大させる。オプティカルコンタクト接合前に、2つの接続面の一方が、2つの接続面の他方の実際の形状に適合され得る。このようにして、精度をより一層高めることができる。
【0017】
冷却チャネル開口は、相互に平行に延びることができる。この構成では、第1ミラー部品と第2ミラー部品との間の共通の接触面は、最初に第1接続面及び第2接続面の周辺領域に形成することができる。
【0018】
冷却チャネル開口が、それぞれ第1ミラー部品の第1接続面及び/又は第2ミラー部品の第2接続面の中央の場所から一方向に径方向外方に延びることも可能である。この構成では、第1ミラー部品と第2ミラー部品との間の共通の接触面は、最初に第1接続面及び第2接続面の中央領域に形成することができる。
【0019】
一構成では、隣接する冷却チャネル開口間の縁間距離は、15mm以下である。隣接する冷却チャネル開口間の縁間距離は、5mm以下であることが好ましい。冷却チャネル開口間の距離が小さいと、オプティカルコンタクト接合中のガス抜きが容易になる。
【0020】
冷却チャネルの横断寸法は、0.2mm~10mmであり得る。冷却チャネルの深さ、すなわち第1ミラー部品の第1接続面及び第2ミラー部品の第2接続面に対して略垂直な横断寸法は、冷却チャネルの幅、すなわち深さに対して垂直な横断寸法よりも大きくすることができる。特に、冷却チャネルの深さは、冷却チャネルの幅の2倍よりも大きくすることができる。結果として、光学面と平行な冷却チャネルにより形成されたキャビティの表面積率は、深さが小さい幅広の冷却チャネルの場合よりも小さいので、同じ流通断面の場合、ミラーの光学面が変形するリスクが小さくなる。
【0021】
第1ミラー部品の第1接続面の領域に細長い補助チャネル開口を有する補助チャネルを、第1ミラー部品に形成することができ、且つ/又は第2ミラー部品の第2接続面の領域に細長い補助チャネル開口を有する補助チャネルを、第2ミラー部品に形成することができる。補助チャネルには、冷却チャネルが形成されない領域でもオプティカルコンタクト接合中に確実にガス抜きされるという利点がある。
【0022】
冷却チャネル開口及び補助チャネル開口は、少なくとも対で実質的に同一の向きを有することができる。このように、補助チャネルは、冷却チャネルの延長として働くことができる。
【0023】
補助チャネルは、冷却チャネルとは別個に形成することができる。補助チャネルは、冷却チャネルから流体的に分離することができる。結果として、冷却チャネルを通る流体の流れに対する悪影響を回避することができる。
【0024】
補助チャネルはさらに、ミラーの環境に流体的に接続することができる。これにより、製造中に第1ミラー部品と第2ミラー部品との間の領域をガス抜きすることが容易になり、完成したミラーでの環境との均圧が可能になり、圧力差の形成及び関連する望ましくない機械的効果が防止される。しかしながら、代替として、補助チャネルをミラーの環境から分離することも可能である。例えば、補助チャネルは、可撓性膜によりミラーの環境から分離することができる。これにより流体的な分離が得られるが、圧力のある程度の結合は許される。このように、補助チャネルの内部とミラーの環境との間の均圧がある程度まで可能である。しかしながら、環境からの補助チャネルのより強力な分離を実現することが可能であり、これは圧力に関する切り離しももたらす。この変形形態では、補助チャネルの内部で、雰囲気圧に関係なく、例えばミラーの光学面の変形につながることで圧力制御マニピュレータを実現する所望の圧力を設定することも可能である。ミラーの環境からの補助チャネルの分離は、ミラー部品の接続中に補助チャネルを介して行われるガス抜きに悪影響を及ぼさないように、通常はミラー部品の接続後にのみ行われる。
【0025】
第1ミラー部品の第1接続面及び/又は第2ミラー部品の第2接続面は、曲率を有し得る。これには、全ての冷却チャネルをミラーの光学面から略同一の距離に配置できるという利点がある。別の利点は、第2ミラーを実質的に一定の厚さで形成できることにある。曲率は、ミラーの光学面の曲率に対応することができる。特に、接続面の一方は凸面状とすることができ、他方は凹面状とすることができる。特に、この場合、凸曲率は凹曲率よりも顕著にすることができ、すなわち例えば絶対値がより小さい平均曲率半径を有することができる。これには、オプティカルコンタクト接合フロントからの距離が離れるほど2つの接続面間の間隔が大きくなるので、局所的に連続したオプティカルコンタクト接合を確保できるという利点がある。オプティカルコンタクト接合フロントから離れた位置での望ましくないオプティカルコンタクト接合のリスクが低減される。さらに、ガス混入のリスクが低減される。
【0026】
第1ミラー部品の第1接続面の曲率は、種々の平均曲率半径を有し且つ非回転対称であるように形成することができ、且つ/又は第2ミラー部品の第2接続面の曲率は、種々の平均曲率半径を有し且つ非回転対称であるように形成することができる。
【0027】
第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、第1ミラー部品の第1接続面及び/又は第2ミラー部品の第2接続面の平均曲率半径の絶対値が最小である方向に沿って接近させ続けることができる。したがって、絶対値が最小の平均曲率半径に沿ってオプティカルコンタクト接合を実行することができる。これには、接続面の接近及びガス抜きに関する利点がある。
【0028】
第1ミラー部品が、平面状に形成されるか、又は少なくとも1つの方向に沿って平均曲率半径の絶対値が大きい、特に平均曲率半径の絶対値が10mよりも大きい第1接続面を有する可能性もある。その場合、平面状に形成された第2接続面を有する薄い第2ミラー部品、特に厚さ0.5mm~10mmの第2ミラー部品を用いることができる。このような薄い第2ミラー部品には、その第2接続面を変形させる結果として第1ミラー部品の第1接続面の形状に適合させることができるという利点がある。つまり、湾曲した第2接続面を有する第2ミラー部品の製造のための支出をなくすことができる。
【0029】
光学面の形成領域が、第2ミラー部品の第2接続面とは反対側の面に設けられ得る。冷却チャネル開口は、それぞれがその長さ方向範囲の大部分をこの領域内に横方向に配置され得る。これにより、光学面の温度により誘発された変形に特に大きな影響を及ぼす領域の効率的な冷却が可能となる。補助チャネル開口は、それぞれの長さ方向範囲の大部分が光学面の形成領域の外側方にあり得る。
【0030】
さらに、冷却チャネルは、光学面と平行に延び得る。これは、光学面の特に均一な冷却を可能にする。特に、冷却チャネルは、光学面まで1mm~6mmの距離内に延び得る。第2ミラー部品の第2接続面と光学面との間の形状偏差は、3mm以下、好ましくは20μm以下であり得る。
【0031】
オプティカルコンタクト接合後に、第1ミラー部品及び第2ミラー部品を接着により相互に接続することができる。接着により、許容可能な支出で確立できる非常に強力な本接続が可能になる。接着を用いて、第1ミラー部品の材料を第2ミラー部品の材料に直接接続することができる。このようにして、接着剤の使用時に起こる欠点を回避することができる。特に、接着は、第1ミラー部品の材料と第2ミラー部品の材料との共有結合をもたらすことができる。
【0032】
本発明はさらに、リソグラフィシステムのミラーに関する。本発明によるミラーは、第1ミラー部品と、第2ミラー部品と、光を反射する光学面と、複数の冷却チャネルと、複数の補助チャネルとを有する。第1ミラー部品及び第2ミラー部品は、第1ミラー部品の第1接続面及び第2ミラー部品の第2接続面の領域で相互に剛接続される。冷却チャネルは、第1接続面又は第2接続面の領域に細長い冷却チャネル開口を有する。補助チャネルは、第1接続面又は第2接続面の領域に細長い補助チャネル開口を有する。
【0033】
本発明によるミラーは、比較的製造しやすく、第1接続面と第2接続面との間にガス混入がほとんどない。
【0034】
冷却チャネル開口の少なくともいくつかは、それぞれの長さ方向範囲の大部分が光学面の横方向領域内にあることができ、補助チャネル開口の少なくともいくつかは、それぞれの長さ方向範囲の大部分が光学面の横方向領域外にあることができる。
【0035】
さらに、冷却チャネル開口の少なくともいくつか又は補助チャネル開口の少なくともいくつかは、実質的に同一の向きを有することができる。冷却チャネル開口及び補助チャネル開口は、特に少なくとも対で実質的に同一の向きを有することができる。
【0036】
冷却チャネル及び補助チャネルは、相互に流体的に分離することができる。
【0037】
補助チャネルは、ミラーの環境に流体的に接続することができる。これにより、補助チャネルにおける均圧を可能にする。補助チャネルは、ミラーの環境から流体的に分離されるように形成することもできる。このようにして、汚染物質が補助チャネルに入ること及び/又は補助チャネルから環境に入り、例えば光学面を汚染することを防止することができる。特に、補助チャネルは、可撓性膜によりミラーの環境から分離することができ、これが補助チャネルと環境との間の少なくとも部分的な均圧を可能にする。
【0038】
さらに、補助チャネルをミラーの環境から圧力的に隔離することが可能である。この実施形態では、補助チャネルの圧力を制御し、このようにして圧力制御マニピュレータを実現することが可能である。
【0039】
第1ミラー部品は、第2ミラー部品よりも大きな厚さを有し得る。これにより、光学面を効率的に冷却すると共にミラーの機械的安定性を高めることが可能である。
【0040】
代替として又は追加として、ミラーは、本発明による方法に関して開示された任意のパラメータ及び/又は他の特徴の1つ又は複数を有することができる。
【0041】
本発明はさらに、本発明によるミラーを有する照明システムに関する。
【0042】
本発明はまた、本発明によるミラーを有する投影レンズに関する。
【0043】
最後に、本発明は、本発明による照明システム及び/又は本発明による投影レンズを有するリソグラフィシステムに関する。
【0044】
図面に示す例示的な実施形態に基づき、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明により具現されたリソグラフィシステムの例示的な実施形態の概略図を示す。
【
図2】本発明により具現されたリソグラフィシステムのさらに別の例示的な実施形態の概略図を示す。
【
図3】本発明による方法により製造されたミラーの例示的な要素の概略断面図を示す。
【
図4】
図3に示すミラーの例示的な第1実施形態のさらに別の概略断面図を示す。
【
図5】下側部品への上側部品のオプティカルコンタクト接合中のスナップショットを
図4に類似の概略断面図で示す。
【
図6】
図4に類似の上側部品及び下側部品の概略断面図を示す。
【
図7】下側部品への上側部品のオプティカルコンタクト接合中のスナップショットを概略上面図で示す。
【
図8】下側部品への上側部品のオプティカルコンタクト接合中のさらに別のスナップショットを
図7に対応する図で示す。
【
図9】下側部品への上側部品のオプティカルコンタクト接合中のさらに別のスナップショットを
図7に対応する図で示す。
【
図10】下側部品への上側部品のオプティカルコンタクト接合中のさらに別のスナップショットを
図7に対応する図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明により具現されたリソグラフィシステムの例示的な実施形態の概略図を示す。図示のリソグラフィシステムは、DUV域の光で動作するよう設計される。DUVは、ここでは「深紫外」を示す。特に、リソグラフィシステムは、193nmの波長の光で動作するよう設計され得る。
【0047】
リソグラフィシステムは、照明システム1及び投影レンズ2を有する。照明システム1の内部構造及び投影レンズ2の内部構造は、それぞれが例えば光学コンポーネント、センサ、マニピュレータ等を含み得るが、詳細には図示しない。投影レンズ2の場合、ミラーMが投影レンズ2の光学コンポーネントの代表として示される。ミラーMは、冷却装置3により供給される冷却媒体を用いて冷却され得る。冷却媒体は、流体、例えば水である。追加として又は代替として、照明システム1は、冷却されたミラーM及び関連する冷却装置3を有し得る。投影レンズ2及び/又は照明システム1は、複数の冷却されたミラーM及び冷却装置3も有し得る。例えば、レンズ素子と、冷却又は非冷却のさらなるミラーとが、照明システム1及び投影レンズ2のさらなる光学コンポーネントとして存在し得る。
【0048】
リソグラフィシステムの動作に必要な光は、光源4により生成される。光源4は、特に、波長193nmの光を発生するエキシマレーザ、例えばフッ化アルゴンレーザであり得る。
【0049】
照明システム1と投影レンズ2との間には、レチクルステージ5が配置され、その上にレチクルとも称するマスク6が固定される。レチクルステージ5は、駆動部7を有する。光の方向に見て投影レンズ2の下流には、基板ステージ8が配置され、これは基板9、例えばウェーハを担持し、駆動部10を有する。
【0050】
さらに
図1には、照明システム1、投影レンズ2、冷却装置3、光源4、レチクルステージ5又はその駆動部7、及び基板ステージ8又はその駆動部10に接続された制御装置11も示す。
【0051】
リソグラフィシステムは、基板9にマスク6を高精度に結像するよう働く。この目的で、マスク6は照明システム1を用いて照明され、照明されたマスク6は投影レンズ2を用いて基板9に結像される。具体的には、以下の手順が採用される。照明システム1は、光源4が発生した光をその光学コンポーネントにより正確に規定された方法で変換し、それをマスク6へ導く。実施形態に応じて、照明システム1は、マスク6全体又はマスク6の部分領域のみを照明するように形成され得る。照明システム1は、マスク6の各照明点で略同一の光条件があるようにマスク6を照明可能である。特に、入射光の光強度及び角度分布は、マスク6の各照明点で略同一である。
【0052】
照明システム1は、場合によっては複数の異なる角度分布の光でマスク6を照明可能である。光のこれらの角度分布を、照明設定とも称する。所望の照明設定は、概してマスク6に形成された構造要素に応じて選択される。例えば比較的頻繁に用いられるのは、二重極又は四重極照明設定であり、その場合、光をそれぞれ2つ又は4つの異なる方向からマスク6の各照明点に入射させる。照明システム1の形態に応じて、例えばズームアキシコン光学ユニットと組み合わせた異なる回折光学素子により、又は並べて配置されて角度位置に関して個別に調整可能な複数の小さなミラーをそれぞれが有するミラーアレイにより、異なる照明設定を生じさせることができる。
【0053】
マスク6は、例えば、照明システム1により供給された光に対して透明な、例えばクロムコーティングの形態の不透明構造が施されたガラス板として形成され得る。
【0054】
リソグラフィシステムは、マスク6全体が単一の露光ステップで照明システム1により同時に照明されて投影レンズ2により基板9に完全に結像されるように形成され得る。
【0055】
代替として、マスク6の部分領域のみが照明システム1により同時に照明され、且つ基板9の露光中にマスク6を照明システム1に対して移動させる結果として照明された部分領域がマスク6の全体にわたって移動するようにレチクルステージ5の駆動部7が制御装置11により制御されるように、リソグラフィシステムを形成することもできる。基板9は、投影レンズ2の結像特性も考慮した基板ステージ8の駆動部10の適切に整合した制御動作により、同期して移動させられ、マスク6のそれぞれ照明された部分領域は、それに対応する基板9の部分領域にこうして結像される。マスク6及び基板9のこの移動を走査とも称する。
【0056】
リソグラフィシステムの両方の変形実施形態において、基板9の露光により生成された潜像を物理構造に転写することができるようにするために、感光層が基板9に塗布される。マスク6の像は、露光によりこの感光層に形成され、後続の化学プロセスを用いてそこから基板9に永久的な構造を作成することができる。
【0057】
マスク6は、概して基板9に1回だけではなく複数回並べて結像される。この目的で、基板9へのマスク6の結像毎に、基板9上のマスク6の像のサイズに対応するように基板ステージ8を横方向に変位させる。マスク6の結像は、ここではそれぞれ全体として又は走査により順次行われ得る。基板9の化学処理は、基板9へのマスク6の結像が所望の回数実行された場合にのみ開始される。
【0058】
図2は、本発明により具現されたリソグラフィシステムのさらに別の例示的な実施形態の概略図を示す。
図2に示すリソグラフィシステムは、EUV域の光で動作するよう設計される。EUVは、「極紫外」を示す。特に、リソグラフィシステムは、波長13.5nmの光で動作するよう設計され得る。
【0059】
図1のリソグラフィシステムと同様に、
図2に示すリソグラフィシステムは、照明システム1、投影レンズ2、光源4、駆動部7を含むレチクルステージ5、及び駆動部10を含む基板ステージ8を有する。光源4は、特にプラズマ光源として具現することができる。マスクがレチクルステージ5に配置される。基板9が基板ステージ8に配置される。照明システム1は、ミラーM1、M2、M3、M4、M5、及びM6を有し、これらは光源4からマスク6までのビーム経路にこの順に配置される。投影レンズ2は、マスク6から基板9までのビーム経路に、ミラーM7、M8、M9、M10、M11、及びM12をこの順に有する。例えば、ミラーM8は、冷却装置3により供給された冷却媒体を用いて冷却することができる。冷却媒体は、この場合も流体、例えば水である。ミラーM8に加えて、又はミラーM8の代替として、投影レンズ2及び/又は照明システム1の別のミラーを冷却するか、又は投影レンズ2及び/又は照明システム1の複数のミラーを冷却することも可能である。
【0060】
図2の例示的な実施形態では、13.5nmの波長のリソグラフィシステムに適した透過又は他の光学特性を示す材料がないので、照明システム1も投影レンズ2もレンズ素子を有していない。マスク6も、透過ではなく反射で動作する。
【0061】
これは
図2には示されていないが、
図1の例示的な実施形態と同様に、
図2の例示的な実施形態でも制御装置11を設けることができる。
【0062】
露光動作は、
図1の例示的な実施形態に関して説明したものと同様に
図2の例示的な実施形態で行われ、概して走査動作が行われる。
【0063】
図3は、本発明による方法により製造されたミラー12の例示的な実施形態の概略断面図を示す。
図4は、
図3に示す断面線A-Aに沿って断面を取ったさらに別の概略的な断面図でミラー12の同じ例示的な実施形態を示す。ミラー12の細部をできる限り多く示すことができるように、断面線A-Aは、ミラー12を通過する際に横方向にオフセットする。
図3及び
図4において、ミラー12及びその構成部品の図示は一定の縮尺ではなく、本発明をできる限り明確に示すために非常に抽象的である。他の全ての図についても同様である。
【0064】
ミラー12は、
図1及び
図2に示すリソグラフィシステムの1つで用いることができ、下側部品13及び上側部品14を有し、これらはそれぞれ石英ガラス、Tiドープ石英ガラス、又はガラスセラミックから製造される。用語「下側部品」及び「上側部品」が選択された理由は、下側部品13が概して上側部品14よりもはるかに厚く形成され、したがっていわば上側部品14を支えるからである。しかしながら、これらの用語は、ミラー12の取付状態での重力方向に対するミラー12の向きとは無関係である。リソグラフィシステムの動作中に、上側部品14は、重力方向に関して下側部品13の上又は下又は横に配置されてもよく、又はそれに対して他の何らかの相対位置をとってもよい。下側部品13は、第1ミラー部品13とも称し、上側部品14は、第2ミラー部品14とも称する。
【0065】
下側部品13及び上側部品14は、以下でより詳細に説明する本発明による方法により、下側部品13の接続面15及び上側部品14の接続面16の領域で相互に剛接続される。図示の例示的な実施形態において、下側部品の接続面15は、凹湾曲状に形成される。曲率は、球面状に、非球面状に、又は自由曲面に従って形成され得る。上側部品14の接続面16は、下側部品13の接続面15と相補的に湾曲し、したがって球面状に、非球面状に、又は自由曲面に従って形成され得る凸曲率を有する。その結果として、上側部品14の接続面16及び下側部品13の接続面15は、当接して密着することができる。湾曲状に形成する代替として、下側部品13の接続面15及び上側部品14の接続面16は、平面状に形成することもできる。
【0066】
接続面15とは反対側の、
図3の下部に示す側では、下側部品13は平面状に形成される。接続面16とは反対側の、
図3の上部に示す側では、上側部品14は凹湾曲状に形成され、同一の曲率を有する反射光学面17を有する。その曲率は、球面状に、非球面状に、又は自由曲面に従って形成され得ると共に、特に上側部品14の接続面16の曲率に対応し得る。この代替として、光学面17が平面状に形成される可能性もある。これは、特に下側部品13の接続面15及び上側部品14の接続面16が平面状に形成される場合に当てはまる。
【0067】
光学面17は、上側部品14に塗布されたコーティングとして具現される。コーティングの形成は、光学面17がその反射効果を発揮することが意図される波長に応じて変わる。DUV域の反射が所望される場合、すなわち
図1のミラーMの場合、コーティングはアルミニウム層として形成され得る。一方、例えば
図2のミラーM8の場合のようにEUV域の反射が意図される場合、コーティングは、特にシリコン及びモリブデンの交互に連続した層、及び場合によっては、例えば保護層として働く異なる組成の1つ又は複数のさらなる層から形成することができる。
【0068】
上側部品14はさらに、複数の細長い冷却チャネル18を有し、これらは、相互に且つ光学面17と平行に延び、光学面17の領域で横方向に、場合によっては光学面17を若干越えて延びる。したがって、図示の例示的な実施形態の場合の冷却チャネル18は、湾曲状に形成される。冷却チャネル18は、光学面17まで約1mm~6mmの距離内に延び、上側部品14の接続面16に向かって開口するように形成される。したがって、冷却チャネル18は、上側部品14の接続面16の領域に細長い冷却チャネル開口19を有する。冷却チャネル18の横断寸法は、約0.2mm~10mmとすることができ、冷却チャネル18の深さ、すなわち上側部品14の接続面16に対して略垂直な寸法は、幅、すなわち上側部品14の接続面16と略平行な寸法よりも概して大幅に大きい。例えば、冷却チャネル18の深さは、冷却チャネル18の幅の2倍よりも大きくされ得る。
【0069】
上側部品14の接続面16を回転対称に形成しない場合、その平均曲率半径は、方位角によって、又は換言すれば方向によって異なり得る。この場合、平均曲率半径の絶対値が最小である方向は、冷却チャネル開口19の長さ方向範囲と平行に延び得る。原理上、上記方向が冷却チャネル開口19の長さ方向範囲を横断する方向に延びる可能性もある。下側部品13の接続面15及び上側部品14の接続面16の相互に隣接する領域は、非接続状態では僅かに異なる平均曲率半径を有する場合があり、凸面状に形成された面の領域の平均曲率半径は、概して凹面状に形成された面の対応する領域の平均曲率半径よりも絶対値が小さい。異なる方向で曲率半径が異なる場合、これは各方向について言える。
【0070】
下側部品13は、複数の分配チャネル20及び回収チャネル21を有し、これらは、下側部品13の接続面15から下側部品13の接続面15とは反対側の方向に下側部品13内に延びる。下側部品13内で、分配チャネル20は流体分配部22に通じており、回収チャネル21は流体回収部23に通じている。分配チャネル20及び回収チャネル21は、それぞれが下側部品13の接続面15に向かって階段状に広がり、そこで2つの冷却チャネル開口19の両端とそれぞれ重なる。換言すれば、1つの分配チャネル20が2つの冷却チャネル開口19の一端とそれぞれ重なり、1つの回収チャネル21が同じ2つの冷却チャネル開口19の2つの他端とそれぞれ重なる。したがって、1つの分配チャネル20は、その一端が流体分配部22に、その他端が2つの冷却チャネル18に流体的に接続される。同様に、1つの回収チャネル21は、その一端が流体回収部23に、その他端が2つの冷却チャネル18に流体的に接続される。
【0071】
したがって、流体分配部22及び分配チャネル20を通して冷却チャネル18に流体、例えば水を供給することが可能であり、各分配チャネル20はそれぞれ2つの冷却チャネル18に流体を供給し、流体分配部22は分配チャネル20の全てに水を供給する。流体は、冷却チャネル18を流れてから、回収チャネル21を介して流体回収部23に流入し、これを介して流体を除去することができる。この場合、2つの冷却チャネル18毎に1つの回収チャネル21に流体が流入し、全ての回収チャネル21の流体が流体回収部23に流入する。流体分配部22への流体の供給及び流体回収部23からの流体の除去は、この目的で流体分配部22及び流体回収部23に接続することができる冷却装置3を用いて行うことができる。
【0072】
供給された流体の温度を上側部品14の温度未満の温度に調整することで、流体が冷却チャネル18を流れる際に上側部品14から抜熱するという効果を達成することができる。この抜熱は、特に、リソグラフィシステムの動作中に光学面17に入射した光による入熱を補償するためのものである。光学面17は入射光を完全に反射しないので、光の一部は光学面17により吸収され、光学面17の形態によっては上側部品14によっても吸収され、熱に変換される。光学面17及び上側部品14は一定の熱伝導率を有するので、この熱の一部は、冷却チャネル18へ導かれ、そこで流体により取り込まれて運び去られる。このように、光により生じるミラー12の温度上昇を制限することができ、冷却されていないミラー12に比べて熱膨張効果により生じる光学面17の変形を低減することができる。結果として、変形により生じる結像収差も低減される。
【0073】
冷却チャネル18、分配チャネル20、回収チャネル21、流体分配部22、及び流体回収部23の形成及び配置は、様々な方法で変更され得る。例えば、冷却チャネル18は、下側部品13に配置されて下側部品13の接続面15に向かって開口するように形成されてもよいので、冷却チャネル18は、下側部品13の接続面15の領域で細長い冷却チャネル開口19を有する。分配チャネル20及び回収チャネル21が不要であってもよく、流体分配部2及び流体回収部23を冷却チャネル18等に直接接続してもよい。
【0074】
ミラー12を製造するために、下側部品13及び上側部品14は、別個の部品として製造されてから相互に接続される。光学面17は、特にその形状に関して可能な限り高い精度を達成すると共に接続プロセス中の光学面17の損傷を回避するために、概して下側部品13及び上側部品14の接続後にのみ形成される。熱膨張率が非常に低い材料が、下側部品13及び上側部品14の製造に用いられる。適切な材料は、例えば石英ガラス、酸化チタンをドープした石英ガラス、又は特殊ガラスセラミックスである。下側部品13及び上側部品14は、共通の材料ブランクから切り出され得る。しかしながら、下側部品13及び上側部品14が材料パラメータに関して相互に異なりすぎる場合、これらに異なる材料ブランクを用いる可能性もある。
【0075】
例えば、酸化チタンと混合され、下側部品13の体積で平均したゼロクロス温度が22℃~25℃である石英ガラスが、下側部品13の製造に用いられ得る。ゼロクロス温度は、ここでは、リソグラフィシステムの動作中のミラー12の冷却を考慮した下側部品13の予想温度に一致させてある。下側部品13に用いる材料を製造する方法に応じて、22℃での熱膨張率の上昇は、約1.35ppb/K2~1.8ppb/K2未満であることが好ましい。
【0076】
下側部品13は、材料ブランクから切り出されてから研削及び研磨により加工される。ここで特に、下側部品13の接続面15は、後で上側部品13に形成される光学面17の意図した形状に略対応する形状にされ得る。下側部品13の接続面15と光学面17との間の形状偏差は、3mm以下、好ましくは200μm以下である。下側部品13の接続面15が円形の周縁を有する場合、その直径は概して20cm~100cmであり、サグは直径3%以下である。下側部品13の接続面13の球面基本形態に任意所望の機能を重ねることができるので、自由曲面を得ることができる。
【0077】
測定に用いる633nmの波長λに関して、下側部品13の接続面15の研磨は、指定形状(外形)からの偏差をλ/2未満、好ましくはλ/10未満として実行され得る。さらに、5nm未満、好ましくは1nm未満の粗さがこの場合に達成され得る。用語「粗さ」は、この場合、平滑な表面からのランダムに分布した偏差を包含する。形状又は外形偏差は、指定の形状からの長波偏差と、ランダムな分布ではなくより局所的な短波偏差との両方を含むと考えられる。長波形状偏差は、上記値λ/2及びλ/10よりも若干大きくてもよい。しかしながら、短波偏差に関しては、上記値は可能な限り維持される。例えば、空間周波数が数cmの偏差は、このような破壊的効果を有していない。空間周波数が100μm未満の偏差は、概してはるかにより破壊的である。接合プロセスの一部としての下側部品13及び上側部品14の最終的な接続が非常に高い温度で、特に1000℃を超える温度で行われる場合、粗さ及び形状偏差に関する要件を若干緩和することができ、下側部品13の接続面15を代替的にラッピングにより加工することができる。下側部品13の材料に応じて、所要温度は1200℃以上とすることもできる。
【0078】
研削剤及び研磨剤の残留物の乾燥を回避するために、下側部品13は、研削及び研磨後に直接洗い落とされる。さらに、機械的な湿式洗浄が実行され得る。下側部品13の表面は、溶剤、有機及び無機洗浄剤で、又はプラズマ処理等によりさらに洗浄され得る。
【0079】
下側部品13の加工時に、少量の水、例えば研磨剤等の他のプロセス剤、又は汚染物質がマイクロクラックに残る可能性があり、それらが下側部品13の加熱時に蒸発して局所的な膨れにつながり得るので、深部の損傷を確実に回避しなければならない。生じ得る深部の損傷を回避又は排除するために、乾式及び/又は湿式エッチングステップ又は他の適切な光学加工ステップが用いられ得る。さらに、段階的な研削ステップを用いることができるか、又は例えば酸素プラズマエッチングによる非接触除去の後に研磨ステップを行うことができる。深部の損傷がないことは、例えばフッ酸での短時間エッチングにより証明され、これにより局所的なエッチピットは生じない。炭化水素を除去するための洗浄ステップと同時に、フッ酸浴が適している。
【0080】
研削及び研磨又はラッピング後に、必要に応じて、分配チャネル20及び回収チャネル21並びに流体分配部22及び流体回収部23が下側部品13に形成される。下側部品13の形成に応じて、冷却チャネル18は下側部品13に形成されてもよい。分配チャネル20及び回収チャネル21並びに流体分配部22及び流体回収部23は、冷却チャネル18の対応する寸法よりもはるかに大きな横断寸法、すなわち流体の流れ方向を横断する寸法を概して有する。
【0081】
各チャネルは、フライス加工、研削、穴あけ、レーザアブレーション、超音波アブレーション、若しくはエッチング、又はこれらの方法の組み合わせにより形成され得る。最後の方法ステップとして、その後の亀裂伝播を回避し、且つ流れを促すように極僅かに粗面化した表面をチャネルに形成するために、フッ酸でのエッチングをいずれの場合も行うことができる。
【0082】
下側部品13の加工済みの、特に研磨された表面を、例えば冷却チャネル開口19の周辺のエッジの欠け及び同様の損傷から保護するために、チャネルの形成前に下側部品13の表面に保護レジストが塗布され得る。この予防措置にもかかわらず生じるエッジの欠けは、例えば冷却チャネル開口19の周りに延びるベベルにより局所的に平滑化又は排除され得る。しかしながら、このベベルは、切欠き効果により流れ及び強度に関して不利であり、可能な限り回避すべきである。
【0083】
上述の手順の代替として、最初に下側部品13にチャネルを形成してから、研削、ラッピング、及び/又は研磨により下側部品13の表面を加工する可能性がある。しかしながら、例えば研磨ディスクは剛性が限られており、冷却チャネル開口19又は他の開口内まで膨らむので、これにより冷却チャネル開口19又は他の開口のエッジにある程度の丸みが生じる。エッジにおけるこの丸みは、下側部品13と同じ材料のプレースホルダを冷却チャネル開口19又は他の開口に挿入又はセメント固定することにより解消することができる。プレースホルダは、下側部品13の接続面15と共に研削且つ研磨され、冷却チャネル開口19又は他の開口により生じるギャップの幅を減らす。プレースホルダと下側部品13の周囲材料との間に残るギャップには、ガラス又はセラミック粉末充填パテを注入することもできるので、研磨中に僅かな膨らみがあったとしてもエッジの丸みはほとんどない。代替として、エッジの丸みを最小化するために、ロボット研磨又はイオンビーム研磨により局所的な再加工が行われ得る。下側部品13の表面の加工後に、プレースホルダ及び該当する場合は注入材が再度除去される。
【0084】
エッジの丸みを回避又は少なくとも低減するために、アブレーション又はエッチング法が機械的な表面加工の代替として用いられ得る。これらの方法において、加工対象でない領域にレジストマスクが塗布された場合、レジストマスクの周辺領域にアンダーエッチングが生じ得る。このアンダーエッチングの悪影響は、適切な機械的な、レーザアブレーションによる、又はエッチングによる再加工により打ち消すことができる。
【0085】
下側部品13に関して説明したのと同一又は同様の特性を有する材料を、上側部品14の製造に用いることができる。上側部品14の材料特性は、下側部品13の材料特性から指定の限度内でのみ逸脱することができる。材料ブランクからの上側部品14の切り出し後に、上側部品14の表面、特に接続面16を、下側部品13に関して説明したのと同様に再加工することができ、形状偏差及び粗さに関する類似の要件を満たさなければならない。下側部品13に関して説明したように、粗さ及び形状偏差に関する要件は、若干緩和することができ、下側部品13及び上側部品14の最終的な接続が接合プロセスの一部として非常に高い温度、特に1000℃を超えるか又は1200℃を超える温度で行われる場合、上側部品14の接続面16をラッピングにより加工することができる。上側部品14が比較的薄い場合、及び長波の形状偏差の場合にも、要件の緩和が可能である。
【0086】
実施形態の変形形態に応じて、上側部品14は、冷却チャネル18及び/又は他のチャネル、例えば分配チャネル20及び回収チャネル21等を有し得る。これらのチャネルの全てを、下側部品13に関して説明したのと同様に作製することができ、エッジの丸み等の低減に類似の措置を用いることができる。
【0087】
上側部品14は、概して厚さ10mm~40mmだが、特定の前提条件下ではより小さな厚さを有することもできる。厚さに応じて、精密な加工に十分な剛性を達成するために、上側部品14を加工のためにキャリア材料としてのガラス基板にセメント固定又はオプティカルコンタクト接合する必要があり得る。
【0088】
下側部品13の接続面15の加工用の工具と同じ又は酷似した公称曲率を有する工具を、研削、ラッピング、及び/又は研磨による上側部品14の接続面16の加工に用いることができる。場合によっては、下側部品13の接続面15及び上側部品14の接続面16の実際の形状を測定して、ロボット研磨、プラズマエッチング、イオンビームアブレーション、又は圧縮高エネルギー照射により上側部品14の接続面16を下側部品13の接続面15に局所的に適合させる、さらなるステップをその後に設けてもよい。
【0089】
下側部品13の接続面15が実質的に平面であるか、又は非常に小さな曲率を有するので少なくとも1つの方位角に対する平均曲率半径の絶対値が10mよりも大きいミラー12の実施形態の場合、厚さ0.5mm~10mmの比較的薄い上側部品14を用いると共に上側部品14の接続面16を平面状に形成する可能性がある。この場合、上側部品14が下側部品13への接続中に変形し得る結果として、上側部品14の接続面16が下側部品13の接続面15の形状に適合され得る。接続前に必要な加工のために、上側部品14は、十分な剛性のキャリア材料にセメント固定され得るか、又はキャリア材料にオプティカルコンタクト接合され得る。
【0090】
材料ブランクから切り出された上側部品14の使用の代替として、例えば溶融金属上への流し出し(フロートガラス)、長いブレイクアウェイエッジにわたる流し込み、ガラススートの加圧焼結により、又は灰色体により間接的に、チタンドープ石英ガラスの薄い上側部品14を製造することもできる。これらの方法には、上側部品14が材料パラメータに関して良好な均一性を達成できる数ミリメートル厚のシートから製造され、機械加工を省くことが可能であり得るという利点がある。このようなシートからできた上側部品14で下側部品13の場合と同様の熱膨張挙動を達成することができるように、シートのOH含有量は、下側部品13のOH含有量からのずれが5%以下であるべきであり、シートのチタン含有量は、下側部品13のチタン含有量からのずれが0.05%以下であるべきである。厚さ2mm未満の上側部品14が製造される非常に薄いシートの場合、これらの要件はもう少し緩和することができる。
【0091】
下側部品13及び上側部品14の加工が終了すると、これらをその接続面15、16の領域で相互に接続することができる。接続は2ステップで行われる。第1ステップにおいて、上側部品14を下側部品13にオプティカルコンタクト接合し、すなわち下側部品13に非常に接近させるので、下側部品13の原子と上側部品14の原子との間のファンデルワールス力の結果として上側部品14が下側部品13に付着する。第2ステップにおいて、上側部品と下側部品との間の接続を接合プロセスにより強化し、それにより下側部品13の原子と上側部品14の原子との間に共有結合が形成されるので、上側部品14及び下側部品13は相互に非常に強力に本接続される。
【0092】
オプティカルコンタクト接合の前に、下側部品13及び上側部品13の特に接続面15、16の領域を洗浄し、活性化し、且つ乾燥させる。例えば、下側部品13の接続面15及び上側部品14の接続面16は、例えばフッ酸でのエッチング、スパッタリング、又は水素又は酸素プラズマでのプラズマ処理により、同時に洗浄、アブレーション、及び活性化され得る。
【0093】
下側部品13にオプティカルコンタクト接合させるために、上側部品14の接続面16を下側部品13の接続面15に非常に接近させるので、上側部品14の表面付近の原子と下側部品13の表面付近の原子との間のファンデルワールス力の結果として強い引力が生じ、最終的に上側部品14と下側部品13とを相互に接続する。ファンデルワールス力は非常に短い距離でしか作用しないので、上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15とを非常に接近させる必要がある。上側部品14の接続面16及び下側部品13の接続面15が非常に滑らかで、略正確に同じ形状を有し、且つ汚染物質が概ねない場合にのみ、比較的大きな表面積内でこれが可能である。こうした理由で、オプティカルコンタクト接合プロセスの最適条件を作り出すためにオプティカルコンタクト接合前に上述の準備が行われる。
【0094】
上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15との間の空気又は他のガス混入は、接続面16、15の接近を妨げ、ミラー12のその後の使用に悪影響も及ぼし得る。こうした理由で、本発明による方法の一部として、下側部品13への上側部品のオプティカルコンタクト接合中に上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15との間の中間空間から空気又は別のガスを逃げやすくすると共にガス混入を概ね防止する措置が講じられる。
【0095】
これらの措置の1つは、上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15とを接近させる方法にある。
図5を参照してこれをより詳細に説明する。
【0096】
図5は、下側部品13への上側部品14のオプティカルコンタクト接合中のスナップショットを
図4に類似の概略断面図で示す。図示の例示的な実施形態の場合、下側部品13の接続面15及び上側部品14の接続面16は、少なくとも略相補的な曲率を有する。
図5から分かるように、上側部品14の接続面16が下側部品13の接続面15に全表面積にわたって平行に整列して接近するのではなく、接続面15、16が接近時に相互に対して角度を形成し、最初は
図5の左側に示す周面の領域でのみ合わさる。
図5では、効果を見ることができるように角度が誇張されている。接続面を接近させると、最初は上側部品14と下側部品13との間の接触は接続面15、16の小さな領域にしかないので、最初は比較的小さな接触面24のみが上側部品14と下側部品13との間に形成される。下側部品13の接続面15への上側部品14の接続面16のオプティカルコンタクト接合が接触面24の領域で生じるように、ファンデルワールス力が接触面24内で吸引効果をもたらす。
【0097】
上側部品14は、続いて下側部品13に向かってさらに連続的に枢動し、それにより下側部品13にさらに接近し、結果として接触面24のサイズが大きくなる。したがって、上側部品14が下側部品13にオプティカルコンタクト接合される表面積も大きくなる。接続面15、16のオプティカルコンタクト接合領域と接続面15、16の非オプティカルコンタクト接合領域との間の直線状に形成された移行部を、以下ではオプティカルコンタクト接合フロントと称する。
図5の図において、オプティカルコンタクト接合フロントは図平面に対して垂直に延びる。これは、少なくともオプティカルコンタクト接合フロントが図平面と交わる領域に当てはまる。オプティカルコンタクト接合フロントは、直線又は僅かな曲線として形成されることができ、上側部品14が下側部品13に接近するにつれて左から右へ移動し、すなわち下側部品13への上側部品14の接近が左から右へ連続的に進行する。漸進的な接近を以下では「ローリング」とも称し、したがって
図5の図示では、上側部品14は下側部品13に対して左から右へローリングされる。ローリング運動の方向を
図5に矢印で示し、以下ではローリング方向25と称する。
【0098】
直線状のオプティカルコンタクト接合フロントが徐々に移動する連続的なオプティカルコンタクト接合には、上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面16との間の中間空間からガスが連続的に押しのけられ続け、その結果としてガス混入のリスクが大幅に低減するという効果がある。オプティカルコンタクト接合動作は、上側部品14の接続面16が下側部品13の接続面15に全表面積にわたってオプティカルコンタクト接合されると終了する。
【0099】
上側部品14の接続面16及び下側部品13の接続面15が回転対称に形成されていない例示的な実施形態の場合、上側部品14の接続面16は、接続面15、16が平均曲率半径の最大の絶対値を有する方向と平行に下側部品13の接続面15に対してローリングされることが好ましい。
【0100】
上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15との間の中間空間からのガスの脱出は、上側部品14の接続面16及び下側部品13の接続面15が正確に同じ曲率を有していないことにより、ある程度は容易にすることができる。
図6を参照してこれをより詳細に説明する。
【0101】
図5から分かるように、ローリング方向25は冷却チャネル開口19の長さ方向範囲と平行に延びる。したがって、冷却チャネル18はオプティカルコンタクト接合動作全体でガス抜きされ続け、これによりガス混入のリスクが大幅に低減される。
図7を参照してこれをより詳細に説明する。冷却チャネル開口19の長さ方向範囲と平行なローリングのさらなる好影響は、ローリング中に上側部品14を下側部品13により支持し続けることができ、オプティカルコンタクト接合フロントが横断する冷却チャネル開口19により生じ得るジャンプを伴わずに進み続けることができることにある。結果として、制御されないオプティカルコンタクト接合とそれにより生じる材料応力とを防止することができる。
【0102】
図6は、
図4に類似の上側部品14及び下側部品13の概略断面図を示す。上側部品14は、下側部品13から非常に小さな距離で下側部品と平行に図示されている。しかしながら、これはオプティカルコンタクト中のスナップショットを表すのではなく、上側部品14の接続面16及び下側部品13の接続面15の幾何学的形状を示すのに役立つ。とはいえ、上側部品14及び下側部品13は、オプティカルコンタクト接合中のそれらの相対的な方位角回転方向で図示されており、図の断面はオプティカルコンタクト接合中のローリング方向25と平行に延びる。
【0103】
下側部分13の接続面15が、湾曲状に、特に凹湾曲状に形成されることは
図6から明らかである。上側部品14の接続面16は、下側部分13の接続面15の反対なので、凸湾曲状に形成される。上側部品14の接続面16が、
図6の断面で、したがってローリング方向25と平行な方向に、下側部品13の接続面15よりも顕著な曲率を有することが
図6からさらに明らかである。換言すれば、上側部品14の接続面16は、上記方向に関して、下側部品13の接続面15よりも絶対値の小さい平均曲率半径を有する。曲率の差は、誇張しなければ認識できないので、
図6では誇張してある。
【0104】
上側部品14の接続面16及び下側部品13の接続面15の曲率が異なる結果として、上側部品14を下側部品13に対してローリングさせると、上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15との間でオプティカルコンタクト接合フロントより先に楔状のギャップが残り続け、このギャップを介して上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15との間のガスが逃げることができる。このような配置は、接続面15、16のうち凸湾曲状のものが接続面15、16のうち凹湾曲状のものよりも絶対値の小さい平均曲率半径を有する場合に常に存在する。
【0105】
図7は、下側部品13への上側部品14のオプティカルコンタクト接合中のスナップショットを概略上面図で示す。
図5とは異なる状況で、
図7には光学面17の位置が描かれているが、光学面17は、概してオプティカルコンタクト接合後にのみ形成される。上から見て矩形である下側部品13、上側部品14、及び光学面17の形成を例として選択したのは、このようにすると、冷却チャネル18で上側部品14の接続面16の広域が覆われていることを、すなわち上側部品14の接続面16の横方向領域の略全体にわたる冷却チャネル18の分布を非常に説明的に示すことができるからである。上側部分14の接続面16は
図7では直接見えない。しかしながら、
図7が示す上側部品14は、接続面16を有し、図示の例示的な実施形態におけるその外輪郭は接続面16の周縁に一致する。下側部品13、上側部品14、及び光学面17の実際の形状は、それぞれが
図7の図示から逸脱し、例えば光学的且つ機械的状況、利用可能な設置空間等に応じて変わる可能性がある。
【0106】
図7の図示では、ローリング方向25は左から右に延びる。
図7において、上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15とが接触するまで、上側部品14の接続面16の左周辺を
図7の左側に示す下側部品13の接続面15の周辺に最初に接近させる。続いて、上側部品14の接続面16を下側部品13の接続面15に対して左から右へローリングさせ、したがって連続的にオプティカルコンタクト接合させ、すなわちオプティカルコンタクト接合は、
図7の図示で左から右へ延びる。
図7からさらに明らかなように、上側部品14に配置されて上側部品14の接続面16に向かって開口するように形成された冷却チャネル18と、特に冷却チャネル開口19の長さ方向範囲とは、ローリング方向25と平行に延びる。
【0107】
冷却チャネル開口19の長さ方向範囲と平行なローリング方向25での下側部品13への上側部品14のオプティカルコンタクト接合は、冷却チャネル開口19がさらにガス抜きを可能にしてガス混入のリスクを低減するので、上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15との間の中間空間からのガスの脱出をはるかに容易にする。
図7の例示的な実施形態の場合のように、冷却チャネル18が上側部品14の接続面16の横方向領域の略全体に延びる場合に、この効果は特に顕著である。不完全な順次のオプティカルコンタクト接合によりガス混入が一時的に生じた場合でも、閉じ込められたガスが冷却チャネル開口19を介して逃げることができるように冷却チャネル開口19の少なくとも1つがガス混入領域に少なくとも部分的に配置される可能性は十分にある。このガス抜きを可能な限り効率的に設計するために、冷却チャネル開口19間の縁間距離は、15mm以下、好ましくは5mm以下である。
【0108】
図8は、下側部品13への上側部品14のオプティカルコンタクト接合中のさらに別のスナップショットを
図7に対応する図で示す。
図8に示すスナップショットは、上側部品14及び下側部品13の構成が異なる点で
図7に示すスナップショットとは異なる。
図7に示す上側部品14は、上から見て矩形の形状を有し、相互に平行な冷却チャネル18及び冷却チャネル開口19を有する。下側部品13の冷却インフラは、この幾何学的形状に適合される。これに対して、
図8に示す上側部品14は、上から見て円形の外輪郭を有し、光学面17用の領域の中央の側方位置から径方向外方に延びる冷却チャネル18及び冷却チャネル開口19を有する。下側部品13の冷却インフラは、この場合もこの幾何学的形状に適合される。光学面17は後の時点まで形成されないが、方向付けを容易にするために、光学面17の輪郭が図示されている。
【0109】
図8によれば、上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15とを、オプティカルコンタクト接合動作の一部として、接触が達成されて接触面24が形成されるまで光学面17の中央の横方向領域で最初に接近させる。制御されないオプティカルコンタクト接合を防止するために、上側部品14の接続面16は、下側部品13の接続面15よりも顕著な曲率を有することができる。したがって、接触面24は、最初は中央及びそのすぐ近くに限定される。上側部品14の接続面16及び下側部品13の接続面15の曲率が異なることにより、中心からの距離が離れるにつれて接続面15、16間の間隔が大きくなり、そこではオプティカルコンタクト接合がまだ生じない。
【0110】
次に、上側部品14の接続面16を中心から径方向外方に連続的に延びる領域で下側部品13の接続面15に押し付ける結果として、接触面24のサイズが径方向外方に向かって大きくなり、それにより、上側部品14の接続面16が同心円状に大きくなる領域で下側部品13の接続面15にオプティカルコンタクト接合され、最終的に全域でオプティカルコンタクト接合が達成される。この過程で、中心から径方向外方に移動するオプティカルコンタクト接合フロントが形成される。これをローリング方向25の矢印で示す。オプティカルコンタクト接合フロントが冷却チャネル18と、特に冷却チャネル開口19の長さ方向範囲と平行に移動するので、上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15との間の領域からガスが容易に逃げることができる結果として、ガス混入を回避することができる。
【0111】
概して、冷却チャネル18及び冷却チャネル開口19は、上側部品14又は下側部品13の、完成したミラー12の光学面17内に横方向に配置される領域内にのみ配置され、わずかなはみ出し、すなわちこの領域外に僅かに広がることが可能である。したがって、光学面17の領域の外側方では、上側部品14の接続面16及び下側部品13の接続面15に、ガスがあまり逃げることができず、したがってガス混入のリスクが大きい領域が残り得る。
図8では、このような領域は、光学面17の外輪郭と上側部品14の外輪郭との間の径方向の環状空間である。この環状空間内又は冷却チャネル開口19がない他の領域のガス混入のリスクは、
図9に基づいて説明するさらなる措置により低減することができる。
【0112】
図9は、下側部品13への上側部品14のオプティカルコンタクト接合中のさらに別のスナップショットを
図7に対応する図で示す。光学面17は後の時点まで形成されないが、方向付けを容易にするために、光学面17の輪郭が図示されている。
図9に示すスナップショットは、矩形の外輪郭を有する上側部品14を示し、
図7に示すスナップショットとの相違点は、光学面17が上側部品14よりもはるかに小さな横寸法を有し、上側部品14が冷却チャネル18に加えて補助チャネル26を有することである。
【0113】
冷却チャネル18は光学面17の横方向領域内にのみ延びるので、冷却チャネル18及び冷却チャネル開口19がない領域が、光学面17と上側部品17の外輪郭との間の中間空間に残る。補助チャネル26はこの領域に配置される。補助チャネル26は、上側部品14内で光学面17用の領域外に完全に又は主に側方に配置され、上側部品14の接続面16に向かって開口しており、その結果として細長い補助チャネル開口27が接続面16に形成される。補助チャネル開口27の長さ方向範囲の方向は、冷却チャネル19の長さ方向範囲の方向に対応し、ローリング方向25と平行に延びる。補助チャネル開口27間の縁間隔は、冷却チャネル開口19間の縁間隔と同程度以下である。補助チャネル26は、オプティカルコンタクト接合中に冷却チャネル18と同じ機能、正確には下側部品13の接続面15と上側部品14の接続面16との間のガス除去を容易にしてガス混入を回避する機能を有する。したがって、可能であれば、上側部品14の接続面16の冷却チャネル18がない領域全てに、補助チャネル26が設けられる。
【0114】
補助チャネル26は、冷却チャネル18と同様に作製することができ、冷却チャネル18とは別個に形成され、冷却チャネル18に流体的に接続されない。補助チャネル26は、環境に流体的に接続される。これは、例えば、補助チャネル26が上側部品14の側面に向かって開口するように形成されるか、又は下側部品13の接続面15に向かって開口して下側部品13を貫通する下側部品13の穴を介してガス抜きされることにより達成することができる。ミラー12がリソグラフィシステムに取り付けられる前に、補助チャネル26は、例えばエッチング及び複数のフラッシング動作により徹底的に洗浄される。
【0115】
環境との流体的な接続の形成の代替として、補助チャネル26を閉じることも可能である。一変形形態において、補助チャネル26は、環境との一定の均圧を可能にする可撓性膜により閉じられる。さらに別の変形形態において、補助チャネル26は、流体を充填され、補助チャネル26内で所望の流体圧を設定して圧力制御マニピュレータを実現することが可能であるように閉じられる。ミラー12のさらなる冷却又は加熱に流体を用いることも可能である。ミラー12を加熱するために補助チャネル26に電熱線を導入することがさらに可能である。
【0116】
オプティカルコンタクト接合動作は、上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15とを
図9の左側に示すそれらの周面付近で接近させることにより開始され、上側部品14の接続面16が下側部品13の接続面15に完全にオプティカルコンタクト接合されるまで左から右へローリング運動をさせることにより続けられる。これにより、最初に補助チャネル開口27を通してから冷却チャネル開口19及び補助チャネル開口27を通して、最後に再び補助チャネル開口27を通した、上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15との間のガス抜きが促進される。その他の点では、
図7及び
図8に関して述べたものが同様に当てはまる。
【0117】
図10は、下側部品13への上側部品14のオプティカルコンタクト接合中のさらに別のスナップショットを
図7に対応する図で示す。光学面17は後の時点まで形成されないが、方向付けを容易にするために、光学面17の輪郭が図示されている。
図10に示すスナップショットは、円形の外輪郭を有する上側部品14を示し、
図8に示すスナップショットとの相違点は、上側部品14が冷却チャネル18に加えて補助チャネル26を有することである。補助チャネル26は、上側部品14内で光学面17用の領域の外側方に配置され、上側部品14の接続面16に向かって開口しており、その結果として細長い補助チャネル開口27が接続面16に形成される。補助チャネル開口27の長さ方向範囲の方向は、冷却チャネル19の長さ方向範囲の方向と同様に径方向外方に、したがってローリング方向25と平行に延びる。
【0118】
オプティカルコンタクト接合動作は、光学面17の中央で上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15とを横方向に接近させることにより開始され、上側部品14の接続面16が下側部品13の接続面15に完全にオプティカルコンタクト接合されるまで径方向外方に向けてローリング運動させることにより続けられる。これにより、最初に冷却チャネル開口19を通してから補助チャネル開口27を通した、上側部品14の接続面16と下側部品13の接続面15との間の領域のガス抜きが促進される。その他の点では、
図7、
図8、及び
図9に関して述べたものが同様に当てはまる。
【0119】
上記説明はそれぞれ、冷却チャネル18及び場合によっては補助チャネル26が上側部品14に配置されて上側部品14の接続面16に向かって開口するように形成される例示的な実施形態に関するものである。冷却チャネル18及び場合によっては補助チャネル26が下側部品13に配置されて下側部品13の接続面15に向かって開口するように形成される例示的な実施形態では、この相違を考慮して同様に進めることが可能である。
【0120】
上記例示的な実施形態はそれぞれ、ローリング方向25を横断して延びるチャネルが上側部品14に少なくとも一時的に設けられるように変更することができる。これらのチャネルは、上側部品14の柔軟性を高めて、上側部品14の接続面16が下側部品13の接続面15に当接しやすくする。上記チャネルが上側部品14の接続面16とは反対側に向かって開口するように形成される場合、チャネルは、光学面17の形成前に材料アブレーションにより平滑化することができる。
【0121】
本発明の全ての変形形態において、下側部品13への上側部品14のオプティカルコンタクト接合後に、製造された中間製品を接合プロセスに供することができる。接合プロセスの一部として、中間製品は熱処理を施され、上側部品14及び下側部品13を任意に圧着させることができる。このようにして、場合によっては既存の共有結合に加えて、上側部品14の接続面16及び下側部品13の接続面15の領域の原子間で共有結合が形成される。これにより、上側部品14と下側部品13との間の接続の耐久性が高まる。
【0122】
接合プロセスの後に、上側部品14は、冷却チャネル18の上方1mm~10mmの厚さに加工され得る。
【0123】
上側部品14の厚さ低減の加工ステップ後に、又はこの加工ステップの代わりに、上側部品14は、接続面16とは反対側の、光学面17が形成される側に高精度で指定の形状を有し、且つ指定の粗さ基準を満たすように再加工される。続いて、そこに光学面17が形成される。これは、例えばアルミニウム層の塗布又はモリブデン層及びシリコン層の交互塗布により行うことができる。
【符号の説明】
【0124】
1 照明システム
2 投影レンズ
3 冷却装置
4 光源
5 レチクルステージ
6 マスク
7 駆動部
8 基板ステージ
9 基板
10 駆動部
11 制御装置
12 ミラー
13 下側部品
14 上側部品
15 接続面
16 接続面
17 光学面
18 冷却チャネル
19 冷却チャネル開口
20 分配チャネル
21 回収チャネル
22 流体分配部
23 流体回収部
24 接触面
25 ローリング方向
26 補助チャネル
27 補助チャネル開口
M ミラー
M1 ミラー
M2 ミラー
M3 ミラー
M4 ミラー
M5 ミラー
M6 ミラー
M7 ミラー
M8 ミラー
M9 ミラー
M10 ミラー
M11 ミラー
M12 ミラー
【国際調査報告】