(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】改善された温度安定性を有する冷却剤
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20240315BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240315BHJP
【FI】
C09K5/10 F ZHV
H01M8/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558408
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2022056919
(87)【国際公開番号】W WO2022200155
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディートル,ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】ジーグ,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ラング,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュネル,サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,シュテファン
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127CC06
(57)【要約】
本発明は、改善された温度安定性を有する新規な水性冷却剤、その作製及び使用を記載する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性冷却剤であって、
(A)水、
(B)少なくとも1つのアルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル又はグリセロール、
(C)少なくとも1つのリン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩であって、その遊離酸又はその塩、特にそのアルカリ金属塩、特に好ましくはそのナトリウム若しくはカリウム塩の形態の少なくとも1つのリン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩、
(D)少なくとも1つの硬水安定化剤、
任意選択的に、更なる阻害剤及び典型的な冷却剤構成要素
を含み、前記硬水安定化剤(D)は、アクリル酸、及び/又はメタクリル酸、及び/又はマレイン酸、及び/又はイタコン酸を重合形態で含む少なくとも1つのホモ又はコポリマーであり、少なくとも3000g/モル、好ましくは少なくとも3500、特に好ましくは少なくとも4000、非常に特に好ましくは少なくとも4500g/モルの、GPCによって決定される重量平均分子量Mwを有し、且つ200℃~300℃の温度範囲において10重量%以下、好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下、非常に特に好ましくは5重量%以下、具体的には3重量%以下、特に2重量%以下の質量損失を有し、
前記質量損失は、40ml/分の流量において、アルゴン雰囲気中で5K/分の加熱速度において30℃~800℃の温度範囲で熱重量測定によって測定され、200℃において存在する質量は、基準値として取られ、及び300℃までの更なる加熱による減少は、前記質量損失として取られる、水性冷却剤。
【請求項2】
前記水(A)は、アルカリ土類金属イオンを含む水である、請求項1に記載の水性冷却剤。
【請求項3】
成分(B)は、単量体~四量体の1,2-エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール又は1,3-プロピレングリコール、そのモノ-C
1~C
4-アルキルエーテル及びグリセロールからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の水性冷却剤。
【請求項4】
成分(B)は、1,2-エチレングリコールである、請求項1又は2に記載の水性冷却剤。
【請求項5】
成分(C)は、遊離酸又はアルカリ金属塩としての一リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩及びオリゴリン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性冷却剤。
【請求項6】
好ましくはベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、(2-ベンゾチアジルチオ)酢酸及び3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸からなる群から選択される少なくとも1つのアゾール誘導体(E)を追加的に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性冷却剤。
【請求項7】
ケイ酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、モリブデン酸塩及びこれらの混合物であって、その遊離酸又はその塩の形態のケイ酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩、モリブデン酸塩及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの無機阻害剤(F)を追加的に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性冷却剤。
【請求項8】
2~18個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノカルボン酸(G1)及び/又は4~20個の炭素原子を有する少なくとも1つの有機ジカルボン酸(G2)を追加的に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性冷却剤。
【請求項9】
プロピオン酸、ペンタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、ヘキサン酸、2,2-ジメチルブタン酸、シクロヘキシル酢酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸(ヘプタン二酸)、アゼライン酸(ノナン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、並びにアルキル及びアルケニルコハク酸、並びにグルタル酸、例えば2-メチルブタン二酸、2-エチル-3-メチルブタン二酸、2-エチルペンタン二酸、2-ドデシルブタン二酸、2-ドデセニルブタン二酸、2-フェニルブタン二酸、2-(p-メチルフェニル)ブタン二酸、2,2-ジメチルブタン二酸、2,3,4-トリメチルペンタン二酸、2,2,3-トリメチルペンタン二酸、グルタコン酸(ペンタ-2-エン二酸)、イタコン酸、ヘキサ-2-エン二酸、ヘキサ-3-エン二酸、5-メチルヘキサ-2-エン二酸及び2,3-ジメチルペンタ-2-エン二酸からなる群から選択される少なくとも1つの有機カルボン酸(G)を追加的に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性冷却剤。
【請求項10】
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムで確立された4~11.5のpHを有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の水性冷却剤。
【請求項11】
- 少なくとも40重量%の水(A)、
- 少なくとも30重量%のアルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びグリセロール(B)、
- 0.01重量%~5重量%、好ましくは0.02重量%~2重量%、特に好ましくは0.03重量%~1重量%の少なくとも1つのリン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩(C)、
- 0.1重量%~2重量%の少なくとも1つの硬水安定化剤(D)、
- 0重量%~2重量%、好ましくは0.05重量%~1重量%、特に好ましくは0.1重量%~0.5重量%の少なくとも1つのアゾール(E)、
- 0重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~2重量%、特に好ましくは0.02重量%~1重量%の、ケイ酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩及びモリブデン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの無機化合物(F)、
- 0重量%~6重量%、好ましくは1重量%~5重量%、特に好ましくは2重量%~4重量%の少なくとも1つの有機カルボン酸(G)、
- 0重量%~0.2重量%、好ましくは0.001重量%~0.15重量%の、脱泡剤、染料及び苦味物質からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、並びに
- 0重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~8重量%、特に好ましくは1重量%~7重量%の少なくとも1つの無機塩基
を含むが、但し、
- 全成分の合計は、常に100重量%であることを条件とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の冷却剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の冷却剤を作製するための冷却剤濃縮物であって、
- 15重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下の水(A)、
- 少なくとも60重量%のアルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びグリセロール(B)、
- 0.02重量%~10重量%、好ましくは0.04重量%~4重量%、特に好ましくは0.06重量%~2重量%の少なくとも1つのリン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩(C)、
- 0.2重量%~4重量%の少なくとも1つの硬水安定化剤(D)、
- 0重量%~4重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%、特に好ましくは0.2重量%~1重量%の少なくとも1つのアゾール(E)、
- 0重量%~10重量%、好ましくは0.02重量%~4重量%、特に好ましくは0.04重量%~2重量%の、ケイ酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩及びモリブデン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの無機化合物(F)、
- 0重量%~12重量%、好ましくは2重量%~10重量%、特に好ましくは4重量%~8重量%の少なくとも1つの有機カルボン酸(G)、
- 0重量%~0.4重量%、好ましくは0.002重量%~0.3重量%の、脱泡剤、染料及び苦味物質からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、並びに
- 0重量%~20重量%、好ましくは1重量%~16重量%、特に好ましくは2重量%~14重量%の少なくとも1つの無機塩基
を含むが、但し、
- 全成分の合計は、常に100重量%であることを条件とする、冷却剤濃縮物。
【請求項13】
内燃機関を冷却する方法であって、熱源からの比較的高い温度の熱は、少なくとも1つの第1の熱交換器を介して冷却剤に伝達され、前記冷却剤は、冷却回路内において少なくとも1つの第2の熱交換器に渡され、及び前記第2の熱交換器内において、熱は、比較的低い温度で前記冷却剤から除去され、
- 請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物は、冷却剤として使用され、
- 前記比較的高い温度は、60℃~300℃、好ましくは70℃~280℃、特に好ましくは80℃~250℃であり、
- 前記比較的低い温度は、-50℃~100℃、好ましくは-40℃~90℃、特に好ましくは-30℃~80℃であり、及び
- 前記比較的低い温度は、前記比較的高い温度よりも少なくとも50℃低い、方法。
【請求項14】
壁部温度が高く、且つリン酸塩含有水性冷却剤で冷却される表面における熱伝達を増加させる方法であって、前記リン酸塩含有水性冷却剤は、アクリル酸、及び/又はメタクリル酸、及び/又はマレイン酸、及び/又はイタコン酸を重合形態で含む少なくとも1つのホモ又はコポリマーであり、少なくとも3000g/モル、好ましくは少なくとも3500、特に好ましくは少なくとも4000、非常に特に好ましくは少なくとも4500g/モルの、GPCによって決定される重量平均分子量Mwを有し、且つ200℃~300℃の温度範囲において10重量%以下、好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下、非常に特に好ましくは5重量%以下、具体的には3重量%以下、特に2重量%以下の質量損失を有する硬水安定化剤(D)を含む、方法。
【請求項15】
リン酸塩含有水性冷却剤からのアルカリ土類金属化合物の沈殿物を低減又は防止する方法であって、前記水性冷却剤に、アクリル酸、及び/又はメタクリル酸、及び/又はマレイン酸、及び/又はイタコン酸を重合形態で含む少なくとも1つのホモ又はコポリマーであり、少なくとも3000g/モル、好ましくは少なくとも3500、特に好ましくは少なくとも4000、非常に特に好ましくは少なくとも4500g/モルの、GPCによって決定される重量平均分子量Mwを有し、且つ200℃~300℃の温度範囲において10重量%以下、好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下、非常に特に好ましくは5重量%以下、具体的には3重量%以下、特に2重量%以下の質量損失を有する少なくとも1つの硬水安定化剤(D)が添加される、方法。
【請求項16】
内燃機関又は燃料電池及び/若しくはバッテリーと内燃機関とのハイブリッド内の熱を除去するための、請求項1~11のいずれか一項に記載の冷却剤の使用であって、前記内燃機関を冷却するための冷却系は、本発明による前記冷却剤を含む、使用。
【請求項17】
水性冷却剤、特にリン酸塩(C)を含有する冷却剤における、アクリル酸、及び/又はメタクリル酸、及び/又はマレイン酸、及び/又はイタコン酸を重合形態で含むホモ又はコポリマーであり、少なくとも3000g/モル、好ましくは少なくとも3500、特に好ましくは少なくとも4000、非常に特に好ましくは少なくとも4500g/モルの、GPCによって決定される重量平均分子量Mwを有し、且つ200℃~300℃の温度範囲において10重量%以下、好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下、非常に特に好ましくは5重量%以下、具体的には3重量%以下、特に2重量%以下の質量損失を有する硬水安定化剤(D)の使用。
【請求項18】
内燃機関又は燃料電池及び/若しくはバッテリーと内燃機関とのハイブリッドを有する車両であって、前記内燃機関を冷却するための冷却系は、本発明による冷却剤を含む、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された温度安定性を有する新規な水性冷却剤、その作製及び使用を記載する。
【背景技術】
【0002】
現代の内燃機関では、従来の機関よりも高い燃焼温度が達成され、そのため、熱管理において、放散すべき熱の量がより高くなるだけでなく、燃焼室の壁部と、冷却系中の冷却水路との間の温度差がより大きくなる。
【0003】
その結果、水性冷却剤は、より高い温度にさらされ、存在する構成要素は、より高い熱負荷にさらされるため、熱負荷に関してより高い要望が前記冷却剤に課される。
【0004】
現在、使用される水中でアルカリ土類金属イオンを錯体化するために水性冷却剤に添加される特定の安定化剤(硬水安定化剤)は、比較的高い熱安定性を有し、そのため、アルカリ土類金属化合物の沈殿を低減又は防止することが判明している。ポリマー鎖が熱分解する結果、冷却水路の壁部が高温になり、その結果、硬水安定化剤として使用されることの多い従来のポリ(メタ)アクリレートが分解し、そのため、水性冷却剤中に存在するアルカリ土類金属イオンが溶液状を維持できなくなり、冷却水路の壁部上にアルカリ土類金属化合物の沈着を形成し、したがって、これは、燃焼空間と冷却水路との間の壁部を通した熱伝達及び対応する熱伝達係数を悪化させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、壁部温度が高い場合でも、特にアルカリ土類金属化合物が沈殿した結果としての冷却水路壁部上の沈着形成を低減又は防止することが可能な水性冷却剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、水性冷却剤であって、
(A)水、
(B)少なくとも1つのアルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル又はグリセロール、
(C)少なくとも1つのリン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩であって、その遊離酸又はその塩、特にそのアルカリ金属塩、特に好ましくはそのナトリウム若しくはカリウム塩の形態の少なくとも1つのリン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩、
(D)少なくとも1つの硬水安定化剤、
任意選択的に、更なる阻害剤及び典型的な冷却剤構成要素
を含み、硬水安定化剤(D)は、アクリル酸、及び/又はメタクリル酸、及び/又はマレイン酸、及び/又はイタコン酸を重合形態で含む少なくとも1つのホモ又はコポリマーであり、少なくとも3000g/モル、好ましくは少なくとも3500、特に好ましくは少なくとも4000、非常に特に好ましくは少なくとも4500g/モルの、GPCによって決定される重量平均分子量Mwを有し、且つ200℃~300℃の温度範囲において10重量%以下、好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下、非常に特に好ましくは5重量%以下、具体的には3重量%以下、特に2重量%以下の質量損失を有する、水性冷却剤によって達成された。
【0007】
質量損失は、本明細書では、40ml/分の流量において、アルゴン雰囲気中で5K/分の加熱速度において30℃~800℃の温度範囲で熱重量測定によって測定され、200℃~300℃の温度範囲における質量損失は、本発明に従って使用可能な化合物(D)のために使用され、200℃において存在する質量は、基準値として取られ、及び300℃までの更なる加熱による減少は、質量損失として取られる。
【0008】
これらの特定の硬水安定化剤(D)を使用することで、冷却剤中でアルカリ土類金属化合物が沈殿することを低減又は防止することが可能となり、これにより冷却水路の壁部上の沈着形成が減少又は排除される。こうしたアルカリ土類金属化合物の沈殿物は、冷却水路壁部上に形成され得るだけでなく、沈殿物は、冷却系中の他の場所、例えば循環ポンプ(冷却剤ポンプ)、温度測定(熱スイッチ、温度プローブ)又は熱交換器の冷却水路(冷却器)でも発生し、そこで影響を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による冷却剤の個々の成分は、下記の通りである。
【0011】
水(A)
本発明に関連して使用される水は、約7のpHで中性であるべきである。これは、脱塩水又は蒸留水であり得るが、必ずしもそうである必要はない。硬水の使用も可能にするため、本発明の組成物は、少なくとも1つの硬水安定化剤(D)を含む。
【0012】
使用される水は、アルカリ土類金属イオン、例えばマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムイオンを含み得、後者は、通常、最大でも痕跡量で存在する。好ましくは、本質的にマグネシウム及び/又はカルシウムイオンのみが硬度形成剤として存在する。
【0013】
使用される水は、好ましくは、水硬度が8.4°dH以下、特に好ましくは10°dH以下、非常に特に好ましくは12°dH以下の軟水である。
【0014】
本発明の利点は、水硬度が14°dH以下、好ましくは17°dH以下、特に好ましくは20°dH以下、更に25°dH以下の水を使用することが可能であることである。
【0015】
硬度形成剤のために、冷却剤に使用される水は、成分(C)として冷却剤中に存在する炭酸塩及び/又は硫酸塩の通例の供給源である。
【0016】
本発明による冷却剤の利点は、アルカリ土類金属化合物の沈殿物を低減又は防止するために脱塩水又は蒸留水を使用する必要がないことである。
【0017】
したがって、本発明は、本発明に従う基準を有する少なくとも1つの硬水安定化剤(D)を水性冷却剤に添加することにより、リン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩を含有する水性冷却剤からのアルカリ土類金属化合物の沈殿物を低減又は防止する方法を提供する。
【0018】
アルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル又はグリセロール(B)
成分(B)は、冷却剤において主要な凝固点降下効果を有する。前記成分は、単量体~四量体の1,2-エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール又はそれほど一般的ではないが1,3-プロピレングリコール、好ましくは単量体~三量体の1,2-エチレングリコール又は1,2-プロピレングリコール、特に好ましくは単量体又は二量体の1,2-エチレングリコール、非常に特に好ましくは単量体の1,2-エチレングリコール及びいずれの場合にもこれらの混合物である。
【0019】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルは、上記のアルキレングリコールのモノC1~C4アルキルエーテル、好ましくはモノメチル、-エチル又は-n-ブチルエーテル、特に好ましくはモノメチル又は-n-ブチルエーテル、非常に特に好ましくはモノメチルエーテルである。
【0020】
更に、グリセロール又はグリセロールのオリゴマーも可能な成分(B)である。
【0021】
好ましいアルキレングリコール成分又は誘導体は、特にモノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びこれらの混合物のみならず、更にモノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びこれらの混合物、ポリグリコール、グリコールエーテル、例えばモノエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、モノエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテルモノエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル及びテトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル又はグリセロールであり、これらは、それぞれ単体で又はこれらの混合物として使用される。
【0022】
特に好ましくは、モノエチレングリコール単体又はモノエチレングリコールを主成分とした、すなわち混合物中の含有量が50重量%超、具体的には80重量%超、特に95重量%超であり、他のアルキレングリコール又はアルキレングリコールの誘導体を含む混合物である。
【0023】
リン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩(C)
アニオン(C)は、冷却剤中に存在する濃度及び冷却系の条件下において、アルカリ土類金属イオン、特にカルシウム又はマグネシウムカチオンと共に沈殿物を形成し得る化合物である。
【0024】
リン酸塩は、リン酸水素、リン酸二水素又はリン酸塩、特にアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩若しくはカリウム塩としての遊離酸(H3PO4)として使用される。リン酸塩中の酸性プロトンは、アルカリ金属塩によって部分的に又は完全に置換され得る。
【0025】
対応する二リン酸塩、三リン酸塩又はオリゴリン酸塩を一リン酸塩との混合物中でも使用することも考えられるが、これらは、単量体リン酸塩として使用されることが好ましい。
【0026】
遊離酸(H3PO4)、リン酸水素二ナトリウム又はリン酸三ナトリウムとしての使用が好ましい。
【0027】
同じことは、炭酸塩又は炭酸水素塩のアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム又はカリウム塩として存在し得る炭酸塩にも当てはまる。
【0028】
同じことは、硫酸塩又は硫酸水素塩のアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム又はカリウム塩として存在し得る硫酸塩にも当てはまる。
【0029】
炭酸塩及び/又は硫酸塩は、一般的に、冷却剤又は冷却剤濃縮物に添加されないが、希釈に使用される水(A)中に存在する。
【0030】
化合物(C)の中でも、炭酸塩及び/又はリン酸塩が好ましく、リン酸塩が特に好ましい。
【0031】
硬水安定化剤(D)
硬水安定化剤(D)は、アクリル酸、及び/又はメタクリル酸、及び/又はマレイン酸、及び/又はイタコン酸を重合形態で含む少なくとも1つのホモ又はコポリマーを含み、好ましくはそれからなり、少なくとも3000g/モル、好ましくは少なくとも3500、特に好ましくは少なくとも4000、非常に特に好ましくは少なくとも4500g/モルの、GPCによって決定される重量平均分子量Mwを有し、且つ200℃~300℃の範囲において10重量%以下、好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下、非常に特に好ましくは5重量%以下、具体的には3重量%以下、特に2重量%以下の質量損失を追加的に有する。
【0032】
前記硬水安定化剤(D)は、好ましくは、アクリル酸、及び/又はメタクリル酸、及び/又はマレイン酸を重合形態で含むホモ又はコポリマー、特に好ましくはアクリル酸及び/又はマレイン酸を重合形態で含むホモ又はコポリマー、非常に特に好ましくはアクリル酸を重合形態で含むホモ又はコポリマーである。
【0033】
こうしたホモ又はコポリマーを調製するために、下記で指定する条件下でモノエチレン性不飽和C3~C5カルボン酸を重合する。
【0034】
モノカルボン酸及びジカルボン酸の両方、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル乳酸、マレイン酸、フマル酸、アコニット酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸及びメチレンマロン酸が好適である。アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸若しくはイタコン酸のホモポリマー又はアクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、アクリル酸とマレイン酸とのコポリマー並びにアクリル酸とイタコン酸とのコポリマー、メタクリル酸とマレイン酸とのコポリマー及びメタクリル酸とイタコン酸とのコポリマーの調製が好ましい。言及されたカルボン酸は、所望の比率で互いに共重合され得る。当然のことながら、言及された2つのカルボン酸の代わりに、3つ又は4つの異なるカルボン酸を互いに共重合することが可能である。
【0035】
言及されるカルボン酸は、任意選択的に、カルボキシル基非含有の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーと重合され得る。形成されるコポリマーの溶解度に応じて重合で使用される好適なコモノマーの例は、エチレン性不飽和C3~C5カルボン酸のアミド、ニトリル又はエステル、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、メチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブタン-1,4-ジオールモノアクリレート、ブタン-1,4-ジオールモノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート並びにビニルエステル、例えばビニルアセテート、ビニルプロピオネート及びビニルブチレート並びに2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルグリコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、スチレン、メチルスチレン及びブタジエンである。
【0036】
言及されたモノマーの中でも、ビニルアセテート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びメチルアクリレートを使用することが好ましい。
【0037】
塩基性アクリレート、例えばジメチルアミノエチルアクリレートは、塩の形態又は例えば塩化ベンジル若しくは塩化メチルで四級化した四級化化合物の形態のいずれかで使用される。このコモノマーの群は、カルボキシル基含有ポリマーを修飾する役割を果たし、コポリマーの構造の0重量%~40重量%を占める。
【0038】
モノマーは、重合開始剤、好ましくは水溶性の開始剤、例えば過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、アゾビス(2-アミノプロパン)塩酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリド及び2,2’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)を使用して水溶液中で重合される。
【0039】
開始剤は、単体で又は混合物、例えば過酸化水素と過硫酸ナトリウムとの混合物中でのいずれかで使用される。水溶性の開始剤に加えて、水に難溶性に過ぎない有機ペルオキシド、ヒドロペルオキシド及びアゾ化合物を使用し得る。例としては、以下の化合物が挙げられる:tert-ブチルペルピバレート、2,2’-アゾビス(バレロニトリル)、tert-ブチルペル-2-エチルヘキサノエート、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、tert-ブチルペルベンゾエート、tert-ブチルヒドロペルオキシド及びp-メンタンヒドロペルオキシド。
【0040】
モノマーは、レドックス触媒を使用しても重合され得る。この目的のために、使用される還元剤は、例えば、アスコルビン酸、ベンゾイン、ジメチルアニリン並びに任意選択的に追加で可溶性複合体及び重金属の塩である。既に知られているように、これは、比較的低温での重合の実施を可能にする。
【0041】
重合中の温度は、60℃~160℃、好ましくは80℃~130℃である。100℃を超える温度では、当然のことながら、加圧下で重合を行う必要がある。水溶液中のモノマーの濃度は、20重量%~70重量%、好ましくは35重量%~60重量%である。
【0042】
化合物(D)の分子量Mwは、最大で100000g/モル、好ましく最大で75000g/モル、特に好ましく最大で50000g/モル、非常に特に好ましく最大で25000g/モル、特に最大で10000g/モルであり得る。
【0043】
化合物(D)の更なる特徴は、40ml/分の流量において、アルゴン雰囲気中で5K/分の加熱速度において30℃~800℃の温度範囲で熱重量測定によって測定される、200℃~300℃の温度範囲における化合物(D)の10重量%以下、好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下、非常に特に好ましくは5重量%以下、具体的には3重量%以下、特に2重量%以下の質量損失である。
【0044】
200℃未満の温度範囲では、熱重量測定における化合物の挙動は、作製の結果としてのホモ又はコポリマーが存在する水の蒸発によって判定される。
【0045】
300℃を超える、特に325℃を超える、具体的には350℃を超える温度では、ホモ又はコポリマーは、記載される熱重量測定の条件下で熱分解するものと思われる。
【0046】
反対に、200℃~300℃の温度は、沈殿物の形成との良好な相関を示す。下記の実施例を参照されたい。
【0047】
化合物(D)として特に好ましいのは、GPCによって判定される、少なくとも3500g/モル~25000g/モルの重量平均分子量Mw及び3重量%以下の質量損失を有する、非常に特に好ましくは少なくとも4000g/モル~10000g/モルの重量平均分子量及び2重量%以下の質量損失を有する、重合形態でアクリル酸を含むホモ又はコポリマーである。
【0048】
いかなる理論にも束縛されるものではないが、記載される最小限の分子量を有するホモ及びコポリマーは、重合度の指標として、それと共にアルカリ土類金属イオンが最初に錯化され、続いて水性媒体中で溶液状に保たれ得るカルボキシル基を十分な数だけ有するものと考えられる。熱重量測定による低い質量損失は、冷却剤が壁部温度の上昇にさらされるときの冷却系中の臨界温度範囲内における硬水安定化剤の温度安定性の指標である。本発明に従って使用される硬水安定化剤(D)は、最新型内燃機関の高い壁部温度で有意に分解することがないため、アルカリ土類金属イオンを錯化してこれらを溶液状に保つことが可能であり、そのため、難溶性のアルカリ土類金属化合物の沈殿物を低減又は防止する。
【0049】
更なる任意選択的な阻害剤及び典型的な冷却剤構成要素
更なる阻害剤及び典型的な冷却剤構成要素は、それぞれ互いから独立して任意選択的であり、以下からなる群から選択される:
(E)アゾール化合物、
(F)ケイ酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩及びモリブデン酸塩からなる群から選択される化合物(C)以外の無機化合物、
(G)有機カルボン酸、
(H)脱泡剤、染料及び苦味物質、並びに
(I)無機塩基。
【0050】
アゾール化合物(E)
本明細書に関連して、アゾール誘導体(E)は、環に組み込まれた硫黄原子を全く含まないか又は最大でも1つの硫黄原子を含み、任意選択的に芳香族又は飽和6員融合を有する、窒素及び硫黄の基に由来する2又は3つのヘテロ原子を有し得る5員の複素環式化合物を意味するものとして理解される。
【0051】
これらの5員の複素環式化合物(アゾール誘導体)は、通常、ヘテロ原子として2つのN原子を含み、S原子を含まないか、3つのN原子を含み、S原子を含まないか、又は1つのN原子及び1つのS原子を含む。
【0052】
言及されるアゾール誘導体の好ましい基は、以下の一般式
【化1】
の融合イミダゾール及び融合1,2,3-トリアゾールであり、式中、
変数Rは、水素又はC
1~C
10アルキルラジカル、具体的にはメチル又はエチルであり、
変数Xは、窒素原子又はC-H部分である。
【0053】
一般式(III)のアゾール誘導体の典型的且つ好ましい例は、ベンズイミダゾール(X=C-H、R=H)、ベンゾトリアゾール(X=N、R=H)及びトリルトリアゾール(X=N、R=CH3)である。一般式(IV)のアゾール誘導体の典型的な例は、水素化1,2,3-トリルトリアゾール(X=N、R=CH3)である。
【0054】
言及されるアゾール誘導体の更なる好ましい群は、一般式(V)
【化2】
のベンゾチアゾールのものであり、式中、
変数Rは、上記の定義を有し、
変数R’は、水素、C
1~C
10アルキルラジカル、具体的にはメチル若しくはエチル又は具体的にはメルカプト基(-SH)である。あまり好ましくないが、おそらく、R’は、式-(C
mH
2m)-COOR’’のカルボキシアルキルラジカルでもあり得、式中、mは、1~4の数字であり、R’’は、水素又はC
1~C
10アルキル、具体的にはメチル若しくはエチル又はC
6~C
12アリールである。これらの例は、(2-ベンゾチアジルチオ)酢酸、(2-ベンゾチアジルチオ)酢酸エステル、3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸又は3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸エステルである。これらの化合物が酸形態で使用される場合、これらは、本発明に従って除外されたカルボン酸のうちのものではない。一般式(V)のアゾール誘導体の典型的な例は、2-メルカプトベンゾチアゾールである。
【0055】
更に、一般式(VI)
【化3】
の非縮合アゾール誘導体も好ましく、式中、変数X及びYは、共に2つの窒素原子であるか、又は窒素原子及びC-H部分、例えば1H-1,2,4-トリアゾール(X=Y=N)若しくは好ましくはイミダゾール(X=N、Y=C-H)である。
【0056】
本発明のアゾール誘導体として極めて特に好ましいのは、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、水素化トリルトリアゾール又はこれらの混合物、具体的にはベンゾトリアゾール又はトリルトリアゾール、特にトリルトリアゾールである。
【0057】
言及されたアゾール誘導体は、商業的に入手可能あるか又は一般的な方法によって作製可能でもある。水素化トリルトリアゾールなどの水素化ベンゾトリアゾールも、同様に独国特許出願公開第1948794号明細書に従って入手可能であり、且つ商業的に入手可能でもある。
【0058】
アゾールは、好ましくは、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、(2-ベンゾチアジルチオ)酢酸、3-(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸及び2-メルカプトベンゾチアゾールからなる群から選択される。
【0059】
ケイ酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩及びモリブデン酸塩からなる群から選択される、化合物(C)以外の無機化合物(F)
無機阻害剤(F)は、ケイ酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩若しくはモリブデン酸塩又はこれらの混合物であって、その遊離酸又はその塩、特にそのアルカリ金属塩、特に好ましくはそのナトリウム若しくはカリウム塩の形態のケイ酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩若しくはモリブデン酸塩又はこれらの混合物である。これらが組成物、超濃縮物、濃縮物又は冷却剤に使用される形態(プロトン化又は塩形態)は、化合物又は組成物の対応するpKa及び塩基(D)の量によって確立された対応する培地のpHによって決まる。
【0060】
無機ケイ酸塩は、主にアルミニウムの腐食阻害剤として作用し、通常、アルカリ金属塩として使用されるか、又はより稀であるが、マグネシウム、カルシウム若しくはアルミニウム塩、好ましくはナトリウム塩若しくはカリウム塩として使用される。
【0061】
ケイ酸塩は、好ましくは、オルトケイ酸塩(SiO4
4-)、メタケイ酸塩(SiO3
2-)及びピロケイ酸塩(Si2O7
6-)からなる群から選択され、特に好ましくはメタケイ酸塩(SiO3
2-)であり、非常に特に好ましくはメタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)又はメタケイ酸カリウム(K2SiO3)であり、特にメタケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)である。
【0062】
記載された無機ケイ酸塩の代わりに又はそれに加えて、冷却剤は、一般式Si(OR)4の有機オルトケイ酸エステルも含み得、式中、各Rは、独立して、C1~C4アルキル、好ましくはメチル、エチル又はn-ブチル、特に好ましくはメチル若しくはエチル又はメチルとエチルとの混合物である。
【0063】
本発明の組成物が少なくとも1つのケイ酸塩を含む場合、好ましい実施形態では、2020年12月15日出願の未公開の欧州特許出願公開第20213979.6号明細書に記載されるように少なくとも1つのシリコホスホネートがケイ酸塩の他に添加される。
【0064】
シリコホスホネートは、好ましくは、以下の一般式
【化4】
の化合物であり、式中、
R
5は、二価の有機ラジカル、好ましくは1~6、好ましくは1~4つの炭素原子を有する1,ω-アルキレン基、特に好ましくはメチレン、1,2-エチレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレン又は1,4-ブチレン、非常に特に好ましくは1,2-エチレン又は1,3-プロピレン及び特に1,2-エチレンであり、
R
6は、独立して、水素、C
1~C
4アルキル又はヒドロキシ-C
2~C
4アルキル、好ましくは水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル若しくはtert-ブチル、2-ヒドロキシエチル又は2-ヒドロキシプロピル、特に好ましくは水素、メチル、エチル又はプロピルであり、
R
7は、C
1~C
4アルキル、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル又はn-ブチル、特に好ましくはメチル、エチル又はn-ブチル、非常に特に好ましくはメチル又はエチル及び特にメチルである。
【0065】
シリコホスホネートは、遊離酸又はアルカリ金属塩、好ましくはナトリウム塩若しくはカリウム塩、特に好ましくはナトリウム塩として使用され得る。
【0066】
ホウ酸塩は、好ましくは四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)又は四ホウ酸カリウムとして使用され、特に好ましくは四ホウ酸ナトリウムとして使用される。
【0067】
硝酸塩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属硝酸塩、好ましくは硝酸ナトリウム、硝酸カリウム又は硝酸マグネシウム、好ましくは硝酸ナトリウム又は硝酸カリウム、特に好ましくは硝酸ナトリウムとして使用される。
【0068】
成分(F)は、好ましくは、ケイ酸塩、ホウ酸塩又は硝酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、特に好ましくはケイ酸塩又は硝酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である。
【0069】
有機カルボン酸(G)
有機カルボン酸は、有機モノカルボン酸(G1)又はジカルボン酸(G2)であり得、好ましくは2~18個の炭素原子を有するモノカルボン酸及び4~20個の炭素原子を有する有機ジカルボン酸であり得る。
【0070】
(G1)2~18個の炭素原子を有するモノカルボン酸
好適なモノカルボン酸(G1)は、2~18個の炭素原子を有する、好ましくは5~16個、特に好ましくは5~15個、非常に特に好ましくは6~12個、特に8~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の脂肪族、脂環式又は芳香族モノカルボン酸であり得る。
【0071】
分岐鎖脂肪族モノカルボン酸は、対応する直鎖モノカルボン酸より好ましい。
【0072】
好適な直鎖又は分岐鎖脂肪族モノカルボン酸(G1)の例は、プロピオン酸、ペンタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、ヘキサン酸、2,2-ジメチルブタン酸、シクロヘキシル酢酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸及びドデカン酸である。
【0073】
1つの特に好適な芳香族モノカルボン酸(G1)は、安息香酸であり、C1~C8アルキル安息香酸、例えばo-、m-、p-メチル安息香酸若しくはp-tert-ブチル安息香酸、また同様にヒドロキシ基含有芳香族モノカルボン酸、例えばo-、m-、p-ヒドロキシ安息香酸、o-、m-、p-(ヒドロキシメチル)安息香酸又はハロ安息香酸、例えばo-、m-、p-フルオロ安息香酸も好適である。
【0074】
特に好ましいモノカルボン酸は、2-エチルヘキサン酸及びイソノナン酸である。
【0075】
本明細書に関連して、イソノナン酸は、9つの炭素原子を有する1つ以上の分岐鎖脂肪族モノカルボン酸を説明する。特に重視すべき異性体は、7-メチルオクタン酸(例えば、CAS番号693-19-6及び26896-18-4)、6,6-ジメチルヘプタン酸(例えば、CAS番号15898-92-7)、3,5,5-トリメチルヘキサン酸(例えば、CAS番号3302-10-1)、3,4,5-トリメチルヘキサン酸、2,5,5-トリメチルヘキサン酸、2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸(例えば、CAS番号3302-12-3)及びこうした異性体又はそれらの混合物を含有する混合物である。好ましい実施形態では、イソノナン酸異性体混合物は、主成分として90重量%を超える程度で7-メチルオクタン酸、6,6-ジメチルヘプタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、3,4,5-トリメチルヘキサン酸、2,5,5-トリメチルヘキサン酸及び2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸を含む。残部は、9つの炭素原子を有するモノカルボン酸の他の異性体及び微量の不純物によって形成される。更に好ましい実施形態では、イソノナン酸は、90重量%を超える程度、特に好ましくは少なくとも95重量%の程度で3,5,5-トリメチルヘキサン酸を含む。
【0076】
(G2)4~20個の炭素原子を有する有機ジカルボン酸
4~20個の炭素原子を有する有機ジカルボン酸は、直鎖又は分岐鎖状アルカンジカルボン酸、好ましくは直鎖状アルカン又はアルケンジカルボン酸、特に好ましくはアルカンジカルボン酸であり、特に好ましくは5~14個の炭素原子を有し、非常に特に好ましくは6~12個の炭素原子を有する。
【0077】
ジカルボン酸(G2)は、好ましくは、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸(ヘプタン二酸)、アゼライン酸(ノナン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、並びにアルキル及びアルケニルコハク酸、並びにグルタル酸、例えば2-メチルブタン二酸、2-エチル-3-メチルブタン二酸、2-エチルペンタン二酸、2-ドデシルブタン二酸、2-ドデセニルブタン二酸、2-フェニルブタン二酸、2-(p-メチルフェニル)ブタン二酸、2,2-ジメチルブタン二酸、2,3,4-トリメチルペンタン二酸、2,2,3-トリメチルペンタン二酸、グルタコン酸(ペンタ-2-エン二酸)、イタコン酸、ヘキサ-2-エン二酸、ヘキサ-3-エン二酸、5-メチルヘキサ-2-エン二酸及び2,3-ジメチルペンタ-2-エン二酸からなる群から選択される。
【0078】
とりわけ、6~12個の炭素原子を有するジカルボン酸が好ましく、とりわけ、特に6~12個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸が好ましく、6~12個の炭素原子を有する直鎖アルカンジカルボン酸が非常に好ましい。
【0079】
ジカルボン酸(G2)として特に好ましいのは、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸及びドデカンジカルボン酸である。
【0080】
脱泡剤、染料及び/又は苦味物質(H)
更なる慣習的補助剤として、本発明の組成物は、慣習的に少量の脱泡剤(一般的に希釈済みの冷却剤中で0.003重量%~0.008重量%の量において)並びに嚥下された場合の衛生及び安全性の理由により、苦味物質(例えば安息香酸デナトニウムのタイプの)及び染料も含み得る。
【0081】
無機塩基(I)
完成した冷却剤のpHは、通常、4~11.5、好ましくは5~10、特に6~9の範囲内である。
【0082】
したがって、冷却剤は、任意選択的に、適切に希釈されると冷却剤中でこの所望のpHを確立する無機塩基を一定の量で含む。このため、本発明の組成物は、好ましくは、アルカリ金属水酸化物、特に好ましくは固形の水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含み、これは、任意選択的に、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液の形態であり得る。
【0083】
リチウム、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩又は炭酸水素塩は、あまり好ましくない。
【0084】
好ましいアルカリ金属は、ナトリウム及びカリウムである。
【0085】
典型的には、冷却剤は、以下:
- 少なくとも40重量%の水(A)、
- 少なくとも30重量%のアルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びグリセロール(B)、
- 0.01重量%~5重量%、好ましくは0.02重量%~2重量%、特に好ましくは0.03重量%~1重量%の少なくとも1つのリン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩(C)、
- 0.1重量%~2重量%の少なくとも1つの硬水安定化剤(D)、
- 0重量%~2重量%、好ましくは0.05重量%~1重量%、特に好ましくは0.1重量%~0.5重量%の少なくとも1つのアゾール(E)、
- 0重量%~5重量%、好ましくは0.01重量%~2重量%、特に好ましくは0.02重量%~1重量%の、ケイ酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩及びモリブデン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの無機化合物(F)、
- 0重量%~6重量%、好ましくは1重量%~5重量%、特に好ましくは2重量%~4重量%の少なくとも1つの有機カルボン酸(G)、
- 0重量%~0.2重量%、好ましくは0.001重量%~0.15重量%の、脱泡剤、染料及び苦味物質からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、並びに
- 0重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~8重量%、特に好ましくは1重量%~7重量%の少なくとも1つの無機塩基
の通りに構成されるが、但し、
- 全成分の合計は、常に100重量%であることを条件とする。
【0086】
輸送する体積を低減させるために、通常、水分含量が省略又は大きく低減された濃縮物が販売されている。冷却剤は、エンドユーザーにより、濃縮物から、水(A)を添加することにより、好ましくは半分~2倍の量の水を添加することにより、特に好ましくは同量の水を添加することにより作製される。
【0087】
したがって、本発明は、典型的には、以下:
- 15重量%以下、好ましくは10重量%以下及びより好ましくは5重量%以下の水(A)、
- 少なくとも60重量%のアルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びグリセロール(B)、
- 0.02重量%~10重量%、好ましくは0.04重量%~4重量%、特に好ましくは0.06重量%~2重量%の少なくとも1つのリン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩(C)、
- 0.2重量%~4重量%の少なくとも1つの硬水安定化剤(D)、
- 0重量%~4重量%、好ましくは0.1重量%~2重量%、特に好ましくは0.2重量%~1重量%の少なくとも1つのアゾール(E)、
- 0重量%~10重量%、好ましくは0.02重量%~4重量%、特に好ましくは0.04重量%~2重量%の、ケイ酸塩、ホウ酸塩、硝酸塩及びモリブデン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの無機化合物(F)、
- 0重量%~12重量%、好ましくは2重量%~10重量%、特に好ましくは4重量%~8重量%の少なくとも1つの有機カルボン酸(G)、
- 0重量%~0.4重量%、好ましくは0.002重量%~0.3重量%の、脱泡剤、染料及び苦味物質からなる群から選択される少なくとも1つの化合物、並びに
- 0重量%~20重量%、好ましくは1重量%~16重量%、特に好ましくは2重量%~14重量%の少なくとも1つの無機塩基
の通りに構成されるが、但し、
- 全成分の合計は、常に100重量%であることを条件とする、冷却剤濃縮物を更に提供する。
【0088】
輸送する体積を更に低減させるために、水分含量のみならず、更にグリコール含量も省略又は大きく低減された、超濃縮物と称されるものが集約的に生産されることが多い。続いて、これらの超濃縮物は、配合者によってグリコールとブレンドすることによって濃縮物を作製するために局地的にのみ使用される。
【0089】
超濃縮物は、成分(B)を完全に又は部分的に欠く点で濃縮物と異なるため、他の成分は、それに応じたより高い濃度で存在する。上記の濃度の濃縮物は、したがって、成分(B)を混合することによってかかる超濃縮物から得られる。
【0090】
記載される組成物は、内燃機関又は燃料電池及び/若しくはバッテリーと内燃機関とのハイブリッド内の熱を除去するための冷却剤として使用され、内燃機関を冷却するための冷却系は、本発明による冷却剤を含む。
【0091】
従来の硬水安定化剤を含む冷却剤よりも高い熱安定性を有する、記載される組成物の結果として、本発明は、内燃機関を冷却する方法であって、熱源からの比較的高い温度の熱は、少なくとも1つの第1の熱交換器を介して冷却剤に伝達され、この冷却剤は、冷却回路内において少なくとも1つの第2の熱交換器に渡され、及び前記第2の熱交換器内において、熱は、比較的低い温度で冷却剤から除去され、
- 上記の組成物は、冷却剤として使用され、
- 比較的高い温度は、60℃~300℃、好ましくは70℃~280℃、特に好ましくは80℃~250℃であり、
- 比較的低い温度は、-50℃~100℃、好ましくは-40℃~90℃、特に好ましくは-30℃~80℃であり、及び
- 比較的低い温度は、比較的高い温度よりも少なくとも50℃低い、方法を更に提供する。
【0092】
本明細書では、比較的高い温度は、好ましくは、例えば内燃機関のみで動作する車両内又は燃料電池及び/若しくはバッテリーと内燃機関とを備える電気車両からなるハイブリッド車両内の内燃機関の壁部温度である。
【0093】
本発明は、内燃機関又は燃料電池及び/若しくはバッテリーと内燃機関とのハイブリッドを有する車両を更に提供し、内燃機関を冷却するための冷却系は、本発明による冷却剤を含む。
【0094】
本明細書では、比較的低い温度は、好ましくは、加熱された冷却剤が第2の熱交換器中で接触される雰囲気温度である。
【0095】
熱交換器の全ては、これらの目的に関して当業者に知られている、それ自体公知の構成要素であり得る。
【0096】
本発明は、壁部温度が高く、且つリン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩を含有する水性冷却剤で冷却される表面における熱伝達を増加させる一般的な方法を更に提供し、リン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩を含有する水性冷却剤は、アクリル酸、及び/又はメタクリル酸、及び/又はマレイン酸、及び/又はイタコン酸を重合形態で含む少なくとも1つのホモ又はコポリマーであり、少なくとも3000g/モル、好ましくは少なくとも3500、特に好ましくは少なくとも4000、非常に特に好ましくは少なくとも4500g/モルの、GPCによって決定される重量平均分子量Mwを有し、且つ200℃~300℃の温度範囲において10重量%以下、好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下、非常に特に好ましくは5重量%以下、具体的には3重量%以下、特に2重量%以下の質量損失を有する硬水安定化剤(D)を含む。
【0097】
本発明は、水性冷却剤、特にリン酸塩、炭酸塩及び/又は硫酸塩(C)を含有する冷却剤における、アクリル酸、及び/又はメタクリル酸、及び/又はマレイン酸、及び/又はイタコン酸を重合形態で含むホモ又はコポリマーであり、少なくとも3000g/モル、好ましくは少なくとも3500、特に好ましくは少なくとも4000、非常に特に好ましくは少なくとも4500g/モルの、GPCによって決定される重量平均分子量Mwを有し、且つ200℃~300℃の温度範囲において10重量%以下、好ましくは8重量%以下、特に好ましくは7重量%以下、非常に特に好ましくは5重量%以下、具体的には3重量%以下、特に2重量%以下の質量損失を有する硬水安定化剤(D)の使用を更に提供する。
【0098】
本明細書において、パーセント、ppm又は部の単位で報告される量は、特に指定のない限り、重量%、重量ppm又は重量部に関する。
【実施例】
【0099】
熱重量測定
50重量%水溶液形態の化合物(D)の試料の約20mgの重量変化を開口るつぼ中、40ml/分の流量において、アルゴン雰囲気中で5K/分の加熱速度において30℃~800℃の温度範囲で判定した。
【0100】
重量%単位のΔmとしての200℃~300℃の範囲の質量損失を下記の表に示し、200℃で存在する質量を基準として取った。
【0101】
ブックレットR 530/2005に従う、FVV[German Research Association for Combustion Engines]試験法に従うMHTA試験
モジュール式熱試験装置(MHTA)を、Institute for Materials Science of TU Darmstadtで開発した。
【0102】
動作条件下での冷却剤添加剤の性能を評価するためにモジュール式熱試験装置(MHTA)をFVV試験法ブックレットR 530/2005(Testing the suitability of coolant additives for coolants of internal combustion engines.Booklet R 530/2005 of the FVV,Frankfurt am Main,2005)に従って使用する。
【0103】
FVVブックレットR530/2005、ポイント8のCorrosion tests with heat transfer(hot test)からの逸脱では、使用される試験片は、8.2.1に記載される試験片ではなく、直径約3.4mmの中央冷却水路を備える試験片であった。これらの試験片は、Kirchentellinsfurtに所在するTheSys GmbHから商業的に入手される。
【0104】
循環装置として設計されたMHTA(
図1を参照されたい)は、実践志向の負荷条件及びサイクルのシミュレーションを可能とする、いくつかのモジュール式に使用可能な試験モジュールからなる。
【0105】
このモジュール式構造により、様々な動作条件を使用した冷却剤調製物の機構及び有効性の差別化された検査が可能となる。本質的に、冷却剤の熱流量密度又は体積流量は、様々な冷却剤を使用すると、互いに独立して異なり得る。
【0106】
実際の内燃機関と異なり、MHTAは、冷却ゾーンにわたる冷却剤の流動温度を制御することにより、加熱表面における一貫した高い熱流量密度及び同時に低い冷却剤流動温度の実現を可能にする(Christina Berger,Torsten Trossmann,Markus Kaiser,MTZ 2008,02,volume 69,page 148)。
【0107】
このため、様々な冷却剤体積流量並びに腐食挙動及び熱除去に関して様々な冷却剤の場合、MHTA中で異なる熱流量密度を検査することが可能となる。
【0108】
本方法の測定精度は、約+/-2℃である。
【0109】
使用される冷却剤の配合(単位は、重量%又は重量ppmである)
【0110】
【0111】
これから、表2に示す硬度を有する同量の水で希釈することにより水性冷却剤を作製し、前記水性冷却剤に、50%水溶液形態の表2に示す硬水安定化剤を更に0.3重量%だけ追加的に添加した。
【0112】
使用される硬水安定化剤(HWS)
使用される硬水安定化剤は、商業的に入手可能なポリアクリル酸又はポリカルボキシレートコポリマーであり、その分子量及び熱重量測定からのΔmの結果を表1に示す。
【0113】
【0114】
MHTA試験の結果
【0115】
【0116】
実施例1は、Ca2+及びMg2+カチオンの不在下での冷却剤に対する熱負荷の効果を判定するために、蒸留水を用いて実施した。
【0117】
沈着物のない試験プレートの場合、熱平衡は、試験開始から5時間後に210℃の温度で確立されることが分かる。30時間にわたる試験の過程では、の初期温度は+4℃上昇するが、これは、アルカリ土類金属化合物に基づかない沈着、例えば腐食防止剤の結果として抗腐食層の堆積の形成による、熱伝達の低下に起因し得る。
【0118】
実施例3では、アルカリ土類金属イオン含有水を含む冷却剤を、硬水安定化剤の不在下で検査した。沈着物が試験プレート上に形成し、これが試験プレートの温度を316℃に上昇させる程度まで熱伝達を減衰させ、その結果、試験装置の電源がオフとなった。
【0119】
沈着物の化学的分析により、これがリン酸カルシウムとリン酸マグネシウムとの混合物からなることが示された。
【0120】
実施例4及び5では、アルカリ土類金属イオン含有水を含む冷却剤を、本発明で必要とされる分子量を有さない硬水安定化剤(HWS3)又は熱重量測定基準を満たさない硬水安定化剤(HWS2)の存在下で検査した。
【0121】
試験プレートの初期温度は、実施例1のゼロ値の開始温度よりも著しく高いことが分かり、これは、好ましくない熱伝達を示唆する。
【0122】
実施例4の場合、試験期間にわたる温度上昇は、わずか+2℃のみであるが、熱伝達は、依然として好ましくないままである。
【0123】
実施例2及び6では、両方の基準(分子量及び熱重量測定)を満たす本発明の硬水安定化剤HWS1及びHWS4が使用される。
【0124】
開始温度は、測定精度の範囲内で実施例1のものに相当し、また試験の過程でそれぞれ+10℃又は+2℃のみ上昇する。
【0125】
これは、開始の時点で既に良好であった熱伝達が、冷却剤に熱負荷をかけた場合でも本質的に維持されることを示す。熱負荷がかかる場合でも、使用された硬水安定化剤は、水中でアルカリ土類金属イオンを錯化してこれらを溶液状に保つことができ、その結果、試験過程中にアルカリ土類金属化合物からなる有意な沈着が形成されなかった。観測された温度の増加は、ゼロ試料のもの(実施例1)を超えない(実施例6)か又はほとんど超えない(実施例2)。
【国際調査報告】