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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】低温堆積プロセス
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/42 20060101AFI20240315BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240315BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20240315BHJP
【FI】
C23C16/42
C23C16/455
H01L21/285 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560564
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 US2022022226
(87)【国際公開番号】W WO2022212295
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/168,090
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス, ブライアン シー.
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA03
4K030AA11
4K030AA13
4K030BA18
4K030BA29
4K030BA38
4K030EA03
4K030FA10
4K030JA01
4K030JA06
4M104BB36
4M104DD43
4M104DD45
(57)【要約】
本発明は、マイクロ電子デバイス上の基板表面等の基板上へのチタンケイ素窒化物(TiSiN)膜の堆積のためのプロセスを提供する。プロセスは、パルス蒸着条件下で反応ゾーンに化合物A、B、及びCを個々に導入して、パルスシーケンスを提供することであって、反応ゾーンが約250℃~約450℃であり、各化合物が、その後に任意選択的に、不活性ガスによるパージ工程が続き、Aは、ビス-t-アミルエチレンシリレン、SiI、及びSiIから選択され、BはTiClであり、Cは窒素含有還元ガスである、ことと、膜の所望の厚さが堆積されるまでパルスシーケンスを繰り返すことと、を含む。プロセスは、ケイ素前駆体に対して比較的低温で実行され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ゾーン内のマイクロ電子デバイス基板上にチタンケイ素窒化物膜を堆積するためのプロセスであって、
パルス蒸着条件下で前記反応ゾーンに化合物A、B、及びCを個々に導入して、パルスシーケンスを提供することであって、前記反応ゾーンが約250℃~約450℃であり、各化合物は、その後に任意選択的に、不活性ガスによるパージ工程が続き、Aは、ビス-t-アミルエチレンシリレン、SiI、及びSiIから選択され、BはTiClであり、Cは窒素含有還元ガスである、ことと、
前記膜の所望の厚さが堆積されるまで前記パルスシーケンスを繰り返すことと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記チタンケイ素窒化物膜の厚さが少なくとも約10Åである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記チタンケイ素窒化物膜の厚さが少なくとも約20Åである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記チタンケイ素窒化物膜の厚さが少なくとも約30Åである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記パルス蒸着条件が複数のパルスシーケンスを含み、前記パルスシーケンスがAのパルスと、それに続くBのパルスと、それに続くCのパルスとを含み、各パルスの後に任意選択的に、不活性ガスによるパージ工程が続く、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記パルス蒸着条件が複数のパルスシーケンスを含み、前記パルスシーケンスがAのパルスと、それに続くCのパルスと、それに続くBのパルスと、それに続くCのパルスとを含み、各パルスの後に任意選択的に、不活性ガスによるパージ工程が続く、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
Aがビス-t-アミルエチレンシリレンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
AがSiIである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
Bが四塩化チタンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記窒素含有還元ガスが、アンモニア;ヒドラジン;1,1-ジメチルヒドラジン;及び1,2-ジメチルヒドラジンから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記窒素含有還元ガスが、アンモニアである、請求項1に記載のプロセス。
前記パルス蒸着条件が、窒化チタンサブサイクルを提供するためのB及びCの導入を更に含み、B及びCのそれぞれの後に任意選択的に、不活性ガスによるパージが続く、請求項1に記載のプロセス。12.
【請求項12】
窒化チタンサブサイクルを提供するためのB及びCの導入を更に含み、B及びCの各々の後に任意選択的に、不活性ガスによるパージが続く、請求項5に記載のプロセス。
【請求項13】
Bが導入され、続いてCが導入される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
パルスシーケンスの数に対する、前記プロセスで利用される窒化チタンサブサイクルの数が、所望のケイ素重量パーセンテージを有するチタンケイ素窒化物膜を提供するように予め決定される、請求項11に記載のプロセス。
【請求項15】
パルスシーケンスの数に対する、前記プロセスで利用される窒化チタンサブサイクルの数が、所望のケイ素重量パーセンテージを有するチタンケイ素窒化物膜を提供するように予め決定される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項16】
前記膜中のケイ素のパーセンテージが、約5~約50重量パーセントである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記膜中のケイ素のパーセンテージが、約5~約50重量パーセントである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記膜中のケイ素のパーセンテージが、約15~約35重量パーセントである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記膜中のケイ素のパーセンテージが、約15~約35重量パーセントである、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、マイクロ電子デバイス基板上に特定の薄膜を形成するための方法論に関する。特に、本発明は、TiSiN膜の堆積のための方法論に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路の製造において、窒化チタンは、その比較的低い抵抗率及びCMOS(相補型金属酸化膜半導体(complementary metal oxide semiconductor))プロセスとの適合性を考慮すると、かなりの関心を集めてきた。したがって、窒化チタンは、ライナバリアとして使用されることが多く、ケイ素基板上に堆積され得る。そのような窒化チタン層は、バリア層の下にある領域への金属の拡散を抑制するためのバリア層として使用され得る。銅含有層又はタングステン含有層等の導電性金属層は、通常、窒化チタン層の上に堆積される。チタン層は、化学蒸着(CVD)法、原子層堆積(ALD)法、及び/又は物理蒸着(PVD)法によって形成され得る。例えば、CVD法において四塩化チタンとアンモニア等の還元剤とを反応させることによって窒化チタン層が形成され得、CVD法において四塩化チタンとアンモニアとを反応させることによって窒化チタン層が形成され得る。その後、導電性材料をマイクロ電子デバイス基板上に堆積させることができる。例えば、米国特許第7,838,441号を参照されたい。しかしながら、窒化チタン及びチタンケイ素窒化物等の材料の堆積は、マイクロ電子デバイス基板上への堆積の開始において困難に悩まされており、堆積シーケンスの数に基づく膜厚の構築は、いわゆる初期の非線形成長領域において比較的不十分である。例えば、“Growth Mechanism and Continuity of Atomic Layer Deposited TiN films on Thermal SiO”,A.Satta,et al.,Journal of Applied Physics,Volume 92,Number 12,pp.7641-7646(2002)を参照されたい。
【0003】
いくつかのマイクロ電子デバイス基板では、より低い温度、例えば250℃~450℃で膜を堆積しなければならない。このような低温では、これらのより低温でのケイ素前駆体の反応性の活性が低下するため、チタンケイ素窒化物膜にケイ素を組み込むことは特に困難である。したがって、堆積が、特定のマイクロ電子デバイス基板を収容するためにより低い温度で行われる、チタン含有膜、特にチタンケイ素窒化物の堆積のための改善された方法論が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
要約すると、本発明は、マイクロ電子デバイス上の基板表面等の基板上へのチタンケイ素窒化物(TiSiN)膜の堆積のためのプロセスを提供する。
驚くべきことに、プロセスは、本明細書に記載のケイ素前駆体について比較的低温で実行することができる。プロセスの一実施形態では、特定のケイ素前駆体を反応ゾーンに導入し、続いて塩化チタン又はヨウ化チタン、続いて窒素含有還元ガスを導入する。不活性ガスによる各前駆体の導入後の任意選択のパージ工程を利用してもよい。これらの比較的低い温度で、プロセスは、例えば、ビス-t-アミルエチレンシリレン(TAS)等のケイ素前駆体を使用して、約30%SiのTiSiN膜を達成することができる。得られたTiSiN膜中のケイ素のドーピングレベルは、プロセス(すなわち、塩化チタン又はヨウ化チタン、続いて窒素含有還元ガス)においてより多い又はより少ない窒化チタンサブサイクルを利用することによってより高い又はより低いように調整することができ(すなわち、「調節される」)、それによって膜中に存在するケイ素の全体的な相対的パーセンテージを低下させる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】窒化ケイ素堆積サブサイクルの数に対するオングストロームでの窒化ケイ素厚さのグラフであり、サブサイクルはTAS及び不活性ガスの導入によって定義される。厚さは、蛍光X線分光法(XRF)により測定される。
図2】窒化チタンのサブサイクル数に対するオングストロームでの窒化チタンの厚さのグラフであり、サブサイクルは、TiCl、不活性ガス、及び窒素含有還元ガス(NH)の導入によって定義される。
図3】TAS、TiCl及びNH図1及び図2のSiN及びTiNの厚さを組み合わせたもの)を使用した、オングストロームにおけるTiSiN膜厚の関数としてのSi%のグラフである。
図4】TAS、TiCl、及びNH図1及び図2のSiN及びTiNの厚さを組み合わせたもの)を使用したオングストロームでのTiSiN膜厚の関数としてのシート抵抗のグラフである。
図5】同様の厚さを有する純粋なTiNとTiSiNとの間の結晶化度の比較の図である。この測定にはX線回折(XRD)が使用される。純粋なTiNは特徴的なピークを有する多結晶であるが、TiSiNは目立ったピークを有さず非晶質である。TiNは、TiCl及びNHを使用して堆積される。TAS、TiCl、及びNHを使用してTiSiNが堆積される。
図6】窒化ケイ素サブサイクルの数に対するオングストロームでの窒化ケイ素厚さのグラフであり、サブサイクルはSiI及び不活性ガスの導入によって定義される。
図7】窒化チタンのサブサイクル数に対するオングストロームでの窒化チタンの厚さのグラフであり、サブサイクルは、TiCl、不活性ガス、及び窒素含有還元ガス(NH)の導入によって定義される。
図8】SiI、TiCl及びNH図6及び図7のSiN及びTiNの厚さを組み合わせたもの)を使用した、オングストロームでのTiSiN膜厚の関数としてのSi%のグラフである。
図9】SiI、TiCl、及びNH図6及び図7のSiN及びTiNの厚さを組み合わせたもの)を使用した、オングストロームでのTiSiN膜厚の関数としてのシート抵抗のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかに別のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「又は」という用語は、一般に、その内容が明らかに別のことを指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0007】
用語「約」は、一般に、列挙された値と等価である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考えられる数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を含み得る。
【0008】
端点を使用して表される数値範囲は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
【0009】
第1の態様では、本発明は、反応ゾーン内のマイクロ電子デバイス基板上にチタンケイ素窒化物(TiSiN)膜を堆積するためのプロセスであって、
パルス蒸着条件下で反応ゾーンに化合物A、B、及びCを個々に導入して、パルスシーケンスを提供することであって、反応ゾーンが約250℃~約450℃であり、各化合物は、その後に任意選択的に、不活性ガスによるパージ工程が続き、Aは、ビス-t-アミルエチレンシリレン、SiI、及びSiIから選択され、BはTiCl及びTiIから選択され、Cは窒素含有還元ガスである、ことと、膜の所望の厚さが堆積されるまでパルスシーケンスを繰り返すことと、
を含む、プロセスを提供する。
【0010】
一実施形態では、チタンケイ素窒化物膜の厚さは、少なくとも約10Åである。他の実施形態では、チタンケイ素窒化物膜の厚さは、少なくとも約20Å、少なくとも約30Å、少なくとも約40Å、少なくとも約50Å、少なくとも約60Å、少なくとも約70Å、少なくとも約80Å、少なくとも約90Å、又は少なくとも約100Åである。
【0011】
本発明のプロセスの結果として、膜中の非晶質特性の相対レベルが増加し、すなわち、相対結晶化度が低下する。
【0012】
本発明のプロセスでは、BからC(又は「B-C」)、すなわち塩化チタン又はヨウ化チタンの後に窒素含有ガスが続くシーケンスは、本明細書ではTiN(窒化チタン)サブサイクルと呼ばれる。上述したように、得られるTiSiN膜の全体的なケイ素パーセンテージをより低くすることが望まれる場合、このTiNサブサイクルを本発明の堆積プロセスにおいて所定の量で繰り返すことにより、膜中の窒化チタンの量を増加させることができ、したがって、窒化チタンが堆積されるにつれて膜中のケイ素の全体的な付随する減少をもたらす。したがって、一実施形態では、パルスシーケンスは、A、続いてB、続いてCであり、A、B、及びCの導入の間に任意選択のパージ工程を伴い、B-Cの少なくとも1つの窒化チタンサブシーケンスが続き、このサブシーケンス(複数可)は、各A-B-Cパルスシーケンスの間に導入することができ、又はシーケンスの任意の組合せで、A-B-CパルスシーケンスとC-Bサブサイクルとの全体比が(経験に基づいて)所定の方法で調整され、したがって窒化チタン層の形成が増加し、チタンケイ素窒化物(TiSiN)膜中の対応する全体のケイ素パーセンテージが減少するまで、次々に、すなわちB-C、続いてB-C等で繰り返すことができる。
【0013】
したがって、一実施形態では、パルス蒸着条件は、複数のパルスシーケンスを含み、パルスシーケンスは、Aのパルスと、それに続くBのパルスと、それに続くCのパルスとを含み、各パルスの後に任意選択的に、不活性ガスによるパージが続く。別の実施形態では、本発明は、窒化チタンサブサイクルを提供するためのB及びCの導入を更に含み、B及びCの各々の後に任意選択的に、不活性ガスによるパージが続く、上記プロセスを提供する。このようにして、気相堆積で利用されるAからBからCのパルスシーケンスに対して、ケイ素の所望のパーセンテージ及び所定数の窒化チタンサブサイクルに基づいて、ケイ素の約5~約50重量パーセントのチタンケイ素窒化物膜を形成することができる。特定の実施形態では、得られる膜中のケイ素のパーセンテージは、約5~約10、約10~約15、約15~約20、約20~約25、約25~約30、約30~約35、約35~約40、約40~約45、約45~約50、約10~約40、又は約15~約35重量パーセントである。
【0014】
特定の実施形態では、Aはビス-t-アミルエチレンシリレンであり、BはTiClであり、Cはアンモニアである。他の実施形態では、AはSiIである。他の実施形態では、AはSiIである。
【0015】
特定の実施形態では、上に示された化合物のパルス時間(すなわち、基板への前駆体(A、B、及びC)曝露の持続時間)は、約0.1~60秒の範囲である。パージ工程が利用される場合、当該パージ工程の持続時間は、利用される特定のツール及び前駆体化合物の同一性、並びに堆積が生じる基板に応じて、約1~60秒、1~4秒又は1~2秒である。他の実施形態では、各化合物を反応ゾーンに導入するためのパルス時間は、やはり利用されるツールに応じて、約0.1~60秒又は20~40秒の範囲である。他の実施形態では、各化合物のパルス時間は、約5~約10秒の範囲である。
【0016】
一実施形態では、蒸着条件は、約250℃~約450℃の温度を含む。特定の実施形態では、蒸着条件は、約0.5~約1000トール、又は1~30トールの圧力を含む。別の実施形態では、蒸着条件は、約350℃~約450℃の温度を含む。特定の温度及び圧力の選択は、堆積に利用される特定のツール、化合物A、B、及びCの実体、並びに堆積が起こる基板に依存する。いずれにせよ、本発明のプロセスは、驚くべき低温でチタンケイ素窒化物膜の形成を可能にする。
【0017】
高純度の薄い金属、例えばチタン含有膜を形成するために使用することができるプロセスは、デジタル又はパルスCVD又はALD等の任意の適切な熱蒸着技術を含む。そのような蒸着プロセスを利用して、マイクロ電子デバイスの少なくとも一方の基板表面上にチタンケイ素窒化物膜を形成して、約10オングストローム~約2000オングストロームの厚さを有する膜を形成することができる。
【0018】
本発明のプロセスでは、上記の化合物は、任意のパルス化レジーム、例えば、単一ウエハCVD、ALDチャンバ、又は複数のウエハを含む炉内で所望のマイクロ電子デバイス基板と反応させることができる。
【0019】
あるいは、本発明のプロセスは、ALD又はALD様プロセスとして行うことができる。本明細書で使用される場合、「ALD又はALD様」という用語は、(i)各反応物が、単一ウエハALD反応器、半バッチALD反応器、又はバッチ炉ALD反応器等の反応器に順次導入される、あるいは(ii)各反応物が、反応器の異なる切片に基板を移動又は回転させることによって基板又はマイクロ電子デバイス表面に露出され、各切片が不活性ガスカーテン、すなわち空間ALD反応器又はロールツーロール(roll to roll)ALD反応器によって分離される等のプロセスを指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「窒素含有還元ガス」という用語は、ヒドラジン(N)、メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジン、及びNHから選択されるガスを含む。
【0021】
本明細書に開示される堆積方法は、1つ又は複数のパージガスを含み得る。未消費の反応物及び/又は反応副生成物をパージするために使用されるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示的なパージガスには、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、Ar等のパージガスを約10~約2000sccmの範囲の流量で約0.1~1000秒間、反応器に供給し、それによって反応器内に残留し得る未反応材料及びあらゆる副生成物をパージする。同様に、そのような不活性ガスは、上述の様々な前駆体のキャリアガスとして使用され得る。濃度及び流量は、利用される特定のツールに応じて変化し得る。
【0022】
反応を誘導し、マイクロ電子デバイス基板上に金属窒化物含有膜を形成するために、前駆体化合物及び還元ガス、又はそれらの組合せにエネルギーが印加される。そのようなエネルギーは、熱的又はパルス熱的方法によって提供され得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「マイクロ電子デバイス」という用語は、マイクロ電子、集積回路、又はコンピュータチップ用途で使用するために製造された、3D NAND構造、フラットパネルディスプレイ、及び微小電気機械システム(Microelectromechanical System:MEMS)を含む、半導体基板に対応する。「マイクロ電子デバイス」という用語は、決して限定することを意味するものではなく、負チャネル金属酸化膜半導体(negative channel metal oxide semiconductor:nMOS)及び/又は正チャネル金属酸化膜半導体(positive channel metal oxide semiconductor:pMOS)トランジスタを含み、最終的にマイクロ電子デバイス又はマイクロ電子アセンブリになる任意の基板を含むことを理解されたい。そのようなマイクロ電子デバイスは、例えば、ケイ素、SiO、Si、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、及び他の高K酸化物、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止コーティング、フォトレジスト、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有、ホウ素含有、Ga/As、可撓性基板、多孔質無機材料、銅及びアルミニウム等の金属、並びにTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、又はWN等であるがこれらに限定されない拡散バリア層から選択され得る少なくとも1つの基板を含有する。膜は、例えば、化学機械平坦化(Chemical Mechanical Planarization:CMP)及び異方性エッチングプロセス等の様々な後続の処理工程に適合する。
【実施例
【0024】
実施例1-350℃でのTiSiN膜の調製
チタンケイ素窒化物膜は、四塩化チタン(TiCl)、TAS*、及びアンモニアを前駆体化合物として使用して、ALD法により堆積した。各堆積サイクルを以下のシーケンスに従って実施した:
1.0.2秒のTASのパルス
2.10秒のアルゴンのパルス
3.0.2秒のTiClのパルス
4.10秒のアルゴンのパルス
5.1秒のNHのパルス
*TAS(ビス-t-アミルエチレンシリレン)は、オルガノシリレンである。
【0025】
図1及び図2に示すデータから分かるように、個々の窒化ケイ素及び窒化チタンのサブサイクルが20未満であった場合、TAS及びTiClの両方に核生成遅延があり、その後、両方のサブサイクルについてほぼ線形成長が示される。図3及び図4に示すように、1:1の試験比は、20Åを超える厚さを有するTiSiN膜について約30%の均一なSiドーピングレベルをもたらし、これも伝導性になる。より多くのTiNサブサイクルを追加することにより、Siドーピングレベルを所望の目標まで容易に低下させることができる。図5に示すように、42Å窒化チタン膜の測定値は多結晶であり、39Åチタンケイ素窒化物膜の測定値は非晶質であった。
【0026】
実施例2-350℃におけるTiSiN膜の調製
チタンケイ素窒化物膜は、四塩化チタン(TiCl)、SiI、及びアンモニアを前駆体化合物として使用して、ALD法により堆積した。各堆積サイクルを以下のシーケンスに従って実施した:
1.0.2秒のSiIのパルス
2.10秒のアルゴンのパルス
3.0.2秒のTiClのパルス
4.10秒のアルゴンのパルス
5.1秒のNHのパルス
【0027】
図6及び図7に示すデータから分かるように、線形成長を伴う個々の窒化ケイ素及び窒化チタンのサブサイクルについて、SiI及びTiClの両方について核生成遅延はなかった。図8及び図9に示すように、1:1の試験比は、絶縁性であるTiSiN膜について約50%の均一なSiドーピングレベルをもたらす。より多くのTiNサブサイクルを追加することにより、Siドーピングレベルを所望の目標パーセンテージまで容易に低下させることができる。
【0028】
態様
第1の態様では、本発明は、反応ゾーン内のマイクロ電子デバイス基板上にチタンケイ素窒化物膜を堆積するためのプロセスであって、
パルス蒸着条件下で反応ゾーンに化合物A、B、及びCを個々に導入して、パルスシーケンスを提供することであって、反応ゾーンが約250℃~約450℃であり、各化合物が、その後に任意選択的に、不活性ガスによるパージ工程が続き、Aが、ビス-t-アミルエチレンシリレン、SiI、及びSiIから選択され、BはTiCl及びTiIから選択され、Cは窒素含有還元ガスである、ことと、膜の所望の厚さが堆積されるまでパルスシーケンスを繰り返すことと、
を含む、プロセスを提供する。
【0029】
第2の態様では、本発明は、チタンケイ素窒化物膜の厚さが少なくとも約10Åである、第1の態様のプロセスを提供する。
【0030】
第3の態様では、本発明は、チタンケイ素窒化物膜の厚さが少なくとも約20Åである、第1の態様のプロセスを提供する。
【0031】
第4の態様では、本発明は、チタンケイ素窒化物膜の厚さが少なくとも約30Åである、第1の態様のプロセスを提供する。
【0032】
第5の態様では、本発明は、パルス蒸着条件が複数のパルスシーケンスを含み、パルスシーケンスがAのパルスと、それに続くBのパルスと、それに続くCのパルスとを含み、各パルスの後に任意選択的に、不活性ガスによるパージ工程が続く、第1の態様のプロセスを提供する。
【0033】
第6の態様では、本発明は、Aがビス-t-アミルエチレンシリレンである、第1~第5の態様のいずれか1つのプロセスを提供する。
【0034】
第7の態様では、本発明は、AがSiIである、第1~第5の態様のいずれか1つのプロセスを提供する。
【0035】
第8の態様では、本発明は、Bが四塩化チタンである、第1~第7の態様のいずれか1つのプロセスを提供する。
【0036】
第9の態様では、本発明は、窒素含有還元ガスがアンモニア;ヒドラジン;1,1-ジメチルヒドラジン;及び1,2-ジメチルヒドラジンから選択される、第1~第8の態様のいずれか1つのプロセスを提供する。
【0037】
第10の態様では、本発明は、窒素含有還元ガスがアンモニアである、第1~第9の態様のいずれか1つのプロセスを提供する。
【0038】
第11の態様では、本発明は、パルス蒸着条件が、窒化チタンサブサイクルを提供するためのB及びCの導入を更に含み、B及びCの各々の後に任意選択的に、不活性ガスによるパージが続く、第1~第4の態様のいずれか1つのプロセスを提供する。
【0039】
第12の態様では、本発明は、パルス蒸着条件が複数のパルスシーケンスを含み、パルスシーケンスがAのパルスと、それに続くCのパルスと、それに続くBのパルスと、それに続くCのパルスとを含み、各パルスの後に任意選択的に、不活性ガスによるパージ工程が続く。
【0040】
第13の態様では、本発明は、窒化チタンサブサイクルを提供するためのB及びCの導入を更に含み、B及びCの各々の後に任意選択的に、不活性ガスによるパージが続く、第5の態様のプロセスを提供する。
【0041】
第14の態様では、本発明は、Bが導入され、続いてCが導入される、第12の態様のプロセスを提供する。
【0042】
第15の態様では、本発明は、パルスシーケンスの数に対するプロセスで利用される窒化チタンサブサイクルの数が、ケイ素の所望の重量パーセンテージを有するチタンケイ素窒化物膜を提供するように予め決定される、第11~第13の態様のいずれか1つのプロセスを提供する。
【0043】
第16の態様では、本発明は、膜中のケイ素のパーセンテージが約5~約50重量パーセントである、第11~第14の態様のいずれか1つのプロセスを提供する。
【0044】
第17の態様では、本発明は、膜中のケイ素のパーセンテージが約15~約35重量パーセントである、第11~第14の態様のいずれか1つのプロセスを提供する。
【0045】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内で更に他の実施形態を作成及び使用することができることを容易に理解するであろう。本文書によって網羅される本開示の多くの利点は、前述の説明に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で例示にすぎないことが理解されよう。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2024-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ゾーン内のマイクロ電子デバイス基板上にチタンケイ素窒化物膜を堆積するためのプロセスであって、
パルス蒸着条件下で前記反応ゾーンに化合物A、B、及びCを個々に導入して、パルスシーケンスを提供することであって、前記反応ゾーンが約250℃~約450℃であり、各化合物は、その後に任意選択的に、不活性ガスによるパージ工程が続き、Aは、ビス-t-アミルエチレンシリレン、SiI、及びSiIから選択され、BはTiClであり、Cは窒素含有還元ガスである、ことと、
前記膜の所望の厚さが堆積されるまで前記パルスシーケンスを繰り返すことと、を含み
前記化合物A、B、及びCは、A、B、及びCの順序で導入され、それらの間に任意選択的パージ工程のみを伴う、プロセス。
【請求項2】
前記パルス蒸着条件が複数のパルスシーケンスを含み、前記パルスシーケンスがAのパルスと、それに続くBのパルスと、それに続くCのパルスとを含み、各パルスの後に任意選択的に、不活性ガスによるパージ工程が続く、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
Aがビス-t-アミルエチレンシリレンである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
AがSiIである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記窒素含有還元ガスが、アンモニアである、請求項1に記載のプロセス。
【国際調査報告】