(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-25
(54)【発明の名称】有機光電子素子用化合物、有機光電子素子および表示装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/12 20230101AFI20240315BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240315BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240315BHJP
C09K 11/06 20060101ALI20240315BHJP
H10K 30/50 20230101ALN20240315BHJP
【FI】
H10K50/12
H10K85/60
H10K59/10
C09K11/06 690
H10K30/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560944
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 KR2022009714
(87)【国際公開番号】W WO2023282602
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0088619
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0082645
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】リム,ヨンムク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョンソン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ミジン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジンソク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ホグク
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,ヨンキョン
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107CC12
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD68
5F251AA11
5F251FA02
5F251FA06
5F251XA32
(57)【要約】
化学式1で表される有機光電子素子用化合物、これを含む有機光電子素子および表示装置に関する。化学式1に関する詳細内容は、明細書で定義したとおりである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表され、
[化学式1]
【化1】
前記化学式1で、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素、重水素または置換もしくは非置換のC6~C30アリール基であり、
Ar
3~Ar
6は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換のC6~C30アリール基であり、
m1およびm4は、それぞれ独立して、1~4の整数のうちの一つであり、
m2およびm3は、それぞれ独立して、1~3の整数のうちの一つであり、
R
1~R
4のうちの少なくとも一つは、重水素であり、
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、下記グループIおよびグループIIに羅列された置換基の中から選択される一つであり、
Ar
1およびAr
2のうちの少なくとも一つは、下記グループIIに羅列された置換基の中から選択される一つであり、
[グループI]
【化2】
[グループII]
【化3】
前記グループIおよび前記グループIIで、
R
aおよびR
bは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、または置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基であり、
R
c~R
eは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基または置換もしくは非置換のC6~C20アリール基であり、
Dは、重水素であり、
m5およびm8は、それぞれ独立して、1~5の整数のうちの一つであり、
m6およびm9は、それぞれ独立して、1~4の整数のうちの一つであり、
m7およびm10は、それぞれ独立して、1~3の整数のうちの一つである、有機光電子素子用化合物。
【請求項2】
前記化学式1は、下記化学式1-1~化学式1-10のうちのいずれか一つで表され、
[化学式1-1]
【化4】
[化学式1-2]
【化5】
[化学式1-3]
【化6】
[化学式1-4]
【化7】
[化学式1-5]
【化8】
[化学式1-6]
【化9】
[化学式1-7]
【化10】
[化学式1-8]
【化11】
[化学式1-9]
【化12】
[化学式1-10]
【化13】
前記化学式1-1~化学式1-10で、Ar
1~Ar
6、R
1~R
4およびm1~m4の定義は、請求項1の定義のとおりである、請求項1に記載の有機光電子素子用化合物。
【請求項3】
前記化学式1のAr
1およびAr
2は、それぞれ独立して、下記グループI-1およびグループII-1に羅列された置換基の中から選択される一つであり、
前記Ar
1およびAr
2のうちの少なくとも一つは、下記グループII-1に羅列された置換基の中から選択される一つであり、
[グループI-1]
【化14】
[グループII-1]
【化15】
【化16】
【化17】
前記グループI-1および前記グループII-1で、*は、連結地点である、請求項1に記載の有機光電子素子用化合物。
【請求項4】
前記化学式1は、下記化学式1-8aまたは化学式1-8eで表され、
[化学式1-8a]
【化18】
[化学式1-8e]
【化19】
前記化学式1-8aおよび化学式1-8eで、
Ar
1およびAr
2は、請求項1の定義のとおりであり、
Ar
6は、重水素で置換もしくは非置換のC6~C30アリール基である、請求項1に記載の有機光電子素子用化合物。
【請求項5】
下記グループ1に羅列された化合物の中から選択される一つである、請求項1に記載の有機光電子素子用化合物:
[グループ1]
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
。
【請求項6】
互いに向き合う陽極と陰極、および
前記陽極と前記陰極との間に位置する少なくとも1層の有機層を含み、
前記有機層は、請求項1~5のいずれか一項に記載の有機光電子素子用化合物を含む有機光電子素子。
【請求項7】
前記有機層は、発光層を含み、
前記発光層は、前記有機光電子素子用化合物を含む、請求項6に記載の有機光電子素子。
【請求項8】
請求項6に記載の有機光電子素子を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有機光電子素子用化合物、有機光電子素子および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機光電子素子(organic optoelectric diode)とは、電気エネルギーと光エネルギーとを互いに変換することができる素子である。有機光電子素子は、動作原理に応じて大きく2種類に分けることができる。一つは、光エネルギーにより形成されたエキシトン(exciton)が電子と正孔に分離され、電子と正孔がそれぞれ異なる電極に伝達されて電気エネルギーを発生する光電素子であり、他の一つは、電極に電圧または電流を供給して電気エネルギーから光エネルギーを発生する発光素子である。
【0003】
有機光電子素子の例としては、有機光電素子、有機発光素子、有機太陽電池および有機感光体ドラム(organic photo conductor drum)などが挙げられる。このうち、有機発光素子(organic light emitting diode、OLED)は、近年、平板表示装置(flat panel display device)の需要増加に伴って大きく注目されている。有機発光素子は、電気エネルギーを光に変換させる素子であって、有機発光素子の性能は、電極の間に位置する有機材料により大きな影響を受ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一実施形態は、低駆動、高効率および長寿命の有機光電子素子を実現することができる有機光電子素子用化合物を提供する。他の実施形態は、上記化合物を含む有機光電子素子を提供する。また他の実施形態は、上記有機光電子素子を含む表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態によると、下記化学式1で表される有機光電子素子用化合物を提供する。
[化学式1]
【0006】
【0007】
化学式1で、
R1~R4は、それぞれ独立して、水素、重水素または置換もしくは非置換のC6~C30アリール基であり、
Ar3~Ar6は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換のC6~C30アリール基であり、
m1およびm4は、それぞれ独立して、1~4の整数のうちの一つであり、
m2およびm3は、それぞれ独立して、1~3の整数のうちの一つであり、
R1~R4のうちの少なくとも一つは、重水素であり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、下記グループIおよびグループIIに羅列された置換基の中から選択される一つであり、
Ar1およびAr2のうちの少なくとも一つは、下記グループIIに羅列された置換基の中から選択される一つである。
【0008】
[グループI]
【0009】
【0010】
[グループII]
【0011】
【0012】
グループIおよびグループIIで、
RaおよびRbは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、または置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基であり、
Rc~Reは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基または置換もしくは非置換のC6~C20アリール基であり、
Dは、重水素であり、
m5およびm8は、それぞれ独立して、1~5の整数のうちの一つであり、
m6およびm9は、それぞれ独立して、1~4の整数のうちの一つであり、
m7およびm10は、それぞれ独立して、1~3の整数のうちの一つである。
【0013】
他の実施形態によると、互いに向き合う陽極と陰極、陽極と陰極との間に位置する少なくとも1層の有機層を含み、有機層は、有機光電子素子用化合物を含む有機光電子素子を提供する。また他の実施形態によると、有機光電子素子を含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
低駆動、高効率および長寿命の有機光電子素子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る有機発光素子を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明は、これによって制限されず、特許請求の範囲の範疇のみによって定義される。
【0017】
本明細書で「置換」とは、別途の定義がない限り、置換基または化合物のうちの少なくとも一つの水素が重水素、ハロゲン基、ヒドロキシル基、アミノ基、置換もしくは非置換のC1~C30アミン基、ニトロ基、置換もしくは非置換のC1~C40シリル基、C1~C30アルキル基、C1~C10アルキルシリル基、C6~C30アリールシリル基、C3~C30シクロアルキル基、C3~C30ヘテロシクロアルキル基、C6~C30アリール基、C2~C30ヘテロアリール基、C1~C20アルコキシ基、C1~C10トリフルオロアルキル基、シアノ基、またはこれらの組み合わせで置換されたことを意味する。
【0018】
本発明の一例で、「置換」とは、置換基または化合物のうちの少なくとも一つの水素が重水素、C1~C30アルキル基、C1~C10アルキルシリル基、C6~C30アリールシリル基、C3~C30シクロアルキル基、C3~C30ヘテロシクロアルキル基、C6~C30アリール基、C2~C30ヘテロアリール基、またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」とは、置換基または化合物のうちの少なくとも一つの水素が重水素、C1~C20アルキル基、C6~C30アリール基、またはシアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」とは、置換基または化合物のうちの少なくとも一つの水素が重水素、C1~C5アルキル基、C6~C18アリール基、シアノ基で置換されたことを意味する。また、本発明の具体的な一例で、「置換」とは、置換基または化合物のうちの少なくとも一つの水素が重水素、シアノ基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基またはナフチル基で置換されたことを意味する。
【0019】
本明細書で、「非置換」とは、水素原子が他の置換基で置換されずに水素原子で残っていることを意味する。
【0020】
本明細書で、「水素置換(-H)」とは、「重水素置換(-D)」または「三重水素置換(-T)」を含むことができる。
【0021】
本明細書で「ヘテロ」とは、別途の定義がない限り、一つの作用基内にN、O、S、PおよびSiからなる群より選択されるヘテロ原子を1~3個含有し、残りは炭素であることを意味する。
【0022】
本明細書で「アリール(aryl)基」とは、炭化水素芳香族モイエティを一つ以上有するグループを総括する概念であって、炭化水素芳香族モイエティの全ての元素がp-オービタルを有しており、これらp-オービタルが共役(conjugation)を形成している形態、例えばフェニル基、ナフチル基などを含み、2以上の炭化水素芳香族モイエティがシグマ結合を通じて連結された形態、例えばビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基などを含み、2以上の炭化水素芳香族モイエティが直接または間接的に融合された非芳香族融合環、例えばフルオレニル基などを含むことができる。アリール基は、モノサイクリック、ポリサイクリックまたは融合環ポリサイクリック(つまり、炭素原子の隣接した対を共有する環)作用基を含む。
【0023】
本明細書で「ヘテロ環基(heterocyclic group)」とは、ヘテロアリール基を含む上位概念であって、アリール基、シクロアルキル基、これらの融合環またはこれらの組み合わせのような環化合物内に炭素(C)の代わりにN、O、S、PおよびSiからなる群より選択されるヘテロ原子を少なくとも1個含有することを意味する。ヘテロ環基が融合環である場合、ヘテロ環基全体またはそれぞれの環ごとにヘテロ原子を1個以上含むことができる。
【0024】
一例として「ヘテロアリール(heteroaryl)基」とは、アリール基内にN、O、S、PおよびSiからなる群より選択されるヘテロ原子を少なくとも1個含有することを意味する。2以上のヘテロアリール基は、シグマ結合を通じて直接連結されるか、またはヘテロアリール基が2以上の環を含む場合、2以上の環は互いに融合されてもよい。ヘテロアリール基が融合環である場合、それぞれの環ごとにヘテロ原子を1~3個含むことができる。
【0025】
より具体的には、置換もしくは非置換のC6~C30アリール基は、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフェナントレニル基、置換もしくは非置換のナフタセニル基、置換もしくは非置換のピレニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のp-ターフェニル基、置換もしくは非置換のm-ターフェニル基、置換もしくは非置換のo-ターフェニル基、置換もしくは非置換のクリセニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレン基、置換もしくは非置換のペリレニル基、置換もしくは非置換のフルオレニル基、置換もしくは非置換のインデニル基、置換もしくは非置換のフラニル基、またはこれらの組み合わせでもよいが、これに制限されない。
【0026】
より具体的には、置換もしくは非置換のC2~C30ヘテロ環基は、置換もしくは非置換のチオフェニル基、置換もしくは非置換のピロリル基、置換もしくは非置換のピラゾリル基、置換もしくは非置換のイミダゾリル基、置換もしくは非置換のトリアゾリル基、置換もしくは非置換のオキサゾリル基、置換もしくは非置換のチアゾリル基、置換もしくは非置換のオキサジアゾリル基、置換もしくは非置換のチアジアゾリル基、置換もしくは非置換のピリジル基、置換もしくは非置換のピリミジニル基、置換もしくは非置換のピラジニル基、置換もしくは非置換のトリアジニル基、置換もしくは非置換のベンゾフラニル基、置換もしくは非置換のベンゾチオフェニル基、置換もしくは非置換のベンズイミダゾリル基、置換もしくは非置換のインドリル基、置換もしくは非置換のキノリニル基、置換もしくは非置換のイソキノリニル基、置換もしくは非置換のキナゾリニル基、置換もしくは非置換のキノキサリニル基、置換もしくは非置換のナフチリジニル基、置換もしくは非置換のベンズオキサジニル基、置換もしくは非置換のベンズチアジニル基、置換もしくは非置換のアクリジニル基、置換もしくは非置換のフェナジニル基、置換もしくは非置換のフェノチアジニル基、置換もしくは非置換のフェノキサジニル基、置換もしくは非置換のカルバゾリル基、置換もしくは非置換のジベンゾフラニル基、または置換もしくは非置換のジベンゾチオフェニル基、またはこれらの組み合わせででもよいが、これに制限されない。
【0027】
本明細書で、正孔特性とは、電場(electric field)を加えた時、電子を供与して正孔を形成することができる特性を言い、HOMO準位に応じて伝導特性を有し、陽極で形成された正孔の発光層への注入、発光層で形成された正孔の陽極への移動および発光層での移動を容易にする特性を意味する。また電子特性とは、電場を加えた時、電子を受けることができる特性を言い、LUMO準位に応じて伝導特性を有し、陰極で形成された電子の発光層への注入、発光層で形成された電子の陰極への移動および発光層での移動を容易にする特性を意味する。
【0028】
以下、一実施形態に係る有機光電子素子用化合物を説明する。
【0029】
一実施形態に係る有機光電子素子用化合物は、下記化学式1で表される。
[化学式1]
【0030】
【0031】
化学式1で、R1~R4は、それぞれ独立して、水素、重水素または置換もしくは非置換のC6~C30アリール基であり、Ar3~Ar6は、それぞれ独立して、水素、または置換もしくは非置換のC6~C30アリール基であり、m1およびm4は、それぞれ独立して、1~4の整数のうちの一つであり、m2およびm3は、それぞれ独立して、1~3の整数のうちの一つであり、R1~R4のうちの少なくとも一つは、重水素であり、Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、下記グループIおよびグループIIに羅列された置換基の中から選択される一つであり、Ar1およびAr2のうちの少なくとも一つは、下記グループIIに羅列された置換基の中から選択される一つである。
【0032】
[グループI]
【0033】
【0034】
[グループII]
【0035】
【0036】
グループIおよびグループIIで、RaおよびRbは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、または置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基であり、Rc~Reは、それぞれ独立して、水素、重水素、シアノ基、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基または置換もしくは非置換のC6~C20アリール基であり、Dは、重水素であり、m5およびm8は、それぞれ独立して、1~5の整数のうちの一つであり、m6およびm9は、それぞれ独立して、1~4の整数のうちの一つであり、m7およびm10は、それぞれ独立して、1~3の整数のうちの一つである。
【0037】
化学式1で表される化合物は、ビスカルバゾールを基本骨格とし、カルバゾールを構成するベンゼンモイエティが少なくとも一つの重水素で置換されると同時に、カルバゾールの9番(N-方向)置換基であるAr1およびAr2のうちの少なくとも一つが重水素で置換される構造を有する。カルバゾールを構成するベンゼンモイエティとカルバゾールの9番(N-方向)置換基が同時に重水素で置換されることによって化合物の零点エネルギーおよび振動エネルギーがより低くなることができる。これによって基底状態のエネルギーはより低くなり、分子間の相互作用が弱くなることによって、非結晶質状態の薄膜を作製できるため、耐熱性がより向上し、寿命向上に効果的である。つまり、これを適用する場合、低駆動、高効率、特に長寿命の有機発光素子を実現することができる。
【0038】
化学式1は、カルバゾールの連結位置により、例えば下記化学式1-1~化学式1-10のうちのいずれか一つで表すことができる。
【0039】
[化学式1-1]
【0040】
【0041】
[化学式1-2]
【0042】
【0043】
[化学式1-3]
【0044】
【0045】
[化学式1-4]
【0046】
【0047】
[化学式1-5]
【0048】
【0049】
[化学式1-6]
【0050】
【0051】
[化学式1-7]
【0052】
【0053】
[化学式1-8]
【0054】
【0055】
[化学式1-9]
【0056】
【0057】
[化学式1-10]
【0058】
【0059】
化学式1-1~化学式1-10で、Ar1~Ar6、R1~R4およびm1~m4の定義は、前述したとおりである。R1が2以上である場合、それぞれのR1は、互いに同一でも異なっていてもよい。R2が2以上である場合、それぞれのR2は、互いに同一でも異なっていてもよい。R3が2以上である場合、それぞれのR3は、互いに同一でも異なっていてもよい。R4が2以上である場合、それぞれのR4は、互いに同一でも異なっていてもよい。Ar3が2以上である場合、それぞれのAr3は、互いに同一でも異なっていてもよい。Ar4が2以上である場合、それぞれのAr4は、互いに同一でも異なっていてもよい。Ar5が2以上である場合、それぞれのAr5は、互いに同一でも異なっていてもよい。Ar6が2以上である場合、それぞれのAr6は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0060】
一例としてR1~R4のうちの少なくとも二つは、重水素でもよい。例えばR1~R4は、それぞれ重水素であり、m1およびm4は、それぞれ4の整数であり、m2およびm3は、それぞれ3の整数でもよい。例えばR1およびR2は、それぞれ重水素であり、m1は、1~4の整数のうちの一つであり、m2は、1~3の整数のうちの一つであり、R3およびR4は、それぞれ水素でもよい。例えばR3およびR4は、それぞれ重水素であり、m3は、1~3の整数のうちの一つであり、m4は、1~4の整数のうちの一つであり、R1およびR2は、それぞれ水素でもよい。例えばR1およびR4は、それぞれ重水素であり、m1およびm4は、それぞれ1~4の整数のうちの一つであり、R2およびR3は、それぞれ水素でもよい。例えばR1~R3は、それぞれ重水素であり、m2およびm3は、それぞれ1~3の整数のうちの一つであり、m1は、1~4の整数のうちの一つであり、R4は、重水素または重水素で置換もしくは非置換のC6~C30アリール基でもよい。
【0061】
一例としてR1~R4に置換される重水素の置換位置により、化学式1は、下記化学式1a~化学式1eのうちのいずれか一つで表すことができる。
【0062】
[化学式1a]
【0063】
【0064】
[化学式1b]
【0065】
【0066】
[化学式1c]
【0067】
【0068】
[化学式1d]
【0069】
【0070】
[化学式1e]
【0071】
【0072】
化学式1a~化学式1eで、Ar1~Ar6の定義は、前述したとおりである。Ar3~Ar6は、それぞれ独立して、水素または重水素で置換もしくは非置換のC6~C30アリール基であり、D3は、重水素が3個置換されたことを意味する。具体的な一例としてAr3~Ar6は、それぞれ独立して、水素または少なくとも一つの重水素で置換もしくは非置換のC6~C20アリール基でもよい。例えば、Ar3~Ar6は、それぞれ独立して、水素であるかまたは重水素で置換もしくは非置換のフェニル基、重水素で置換もしくは非置換のビフェニル基、重水素で置換もしくは非置換のターフェニル基、重水素で置換もしくは非置換のナフチル基、重水素で置換もしくは非置換のフェナントレニル基、重水素で置換もしくは非置換のアントラセニル基、重水素で置換もしくは非置換のトリフェニレン基、または重水素で置換もしくは非置換のフルオレニル基でもよい。例えば、化学式1のAr1およびAr2は、それぞれ独立して、下記グループI-1およびグループII-1に羅列された置換基の中から選択される一つであり、Ar1およびAr2のうちの少なくとも一つは、下記グループII-1に羅列された置換基の中から選択される一つでもよい。
【0073】
[グループI-1]
【0074】
【0075】
[グループII-1]
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
グループI-1およびグループII-1で、*は、連結地点である。
【0080】
一例として化学式1は、下記化学式1-8aまたは化学式1-8eで表すことができる。
【0081】
[化学式1-8a]
【0082】
【0083】
[化学式1-8e]
【0084】
【0085】
化学式1-8aおよび化学式1-8eで、Ar1およびAr2は、前述したとおりであり、Ar6は、重水素で置換もしくは非置換のC6~C30アリール基である。例えば、Ar6は、 重水素で置換もしくは非置換のフェニル基、重水素で置換もしくは非置換のビフェニル基、重水素で置換もしくは非置換のターフェニル基、重水素で置換もしくは非置換のナフチル基、重水素で置換もしくは非置換のフェナントレニル基、重水素で置換もしくは非置換のアントラセニル基、重水素で置換もしくは非置換のトリフェニレン基、または重水素で置換もしくは非置換のフルオレニル基でもよい。例えば化学式1で表される有機光電子素子用化合物は、下記グループ1に羅列された化合物より選択された一つでもよいが、これに限定されるのではない。
【0086】
[グループ1]
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
より具体的な一例として、本発明による有機光電子素子用化合物は、化学式1-8aで表され、Ar1およびAr2は、それぞれ少なくとも一つの重水素で置換されたフェニル基、少なくとも一つの重水素で置換されたビフェニル基、少なくとも一つの重水素で置換されたトリフェニレン基、少なくとも一つの重水素で置換されたジベンゾフラニル基、または少なくとも一つの重水素で置換されたジベンゾチオフェニル基でもよい。
【0108】
前述した有機光電子素子用化合物以外に、1種以上の化合物をさらに含むことができる。例えば前述した有機光電子素子用化合物は、公知のホスト材料をさらに含む組成物の形態で適用することができる。例えば前述した有機光電子素子用化合物は、ドーパントをさらに含むことができる。ドーパントは、例えば、燐光ドーパントでもよく、例えば赤色、緑色または青色の燐光ドーパントでもよく、例えば赤色燐光ドーパントでもよい。ドーパントは、有機光電子素子用化合物に微量混合されて発光を起こす物質であって、一般的に三重項状態以上に励起させる多重抗励起(multiple excitation)により発光する金属錯体(metalcomplex)のような物質を使用することができる。ドーパントは、例えば、無機、有機、有機-無機化合物でもよく、1種または2種以上含まれてもよい。ドーパントの一例として燐光ドーパントが挙げられ、燐光ドーパントの例としては、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pdまたはこれらの組み合わせを含む有機金属化合物が挙げられる。燐光ドーパントは、例えば、下記化学式Zで表される化合物を使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0109】
[化学式Z]
LMX
化学式Zで、Mは、金属であり、LおよびXは、互いに同一または異なり、Mと錯化合物を形成するリガンドである。Mは、例えば、Ir、Pt、Os、Ti、Zr、Hf、Eu、Tb、Tm、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pdまたはこれらの組み合わせでもよく、LおよびXは、例えば、バイデンテートリガンドでもよく。LおよびXで表されるリガンドの例としては、下記グループAに羅列された化学式より選択できるが、これに限定されるのではない。
【0110】
[グループA]
【0111】
【0112】
グループAで、R300~R302は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲンが置換もしくは非置換のC1~C30のアルキル基、C1~C30のアルキルが置換もしくは非置換のC6~C30アリール基またはハロゲンであり、R303~R324は、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは非置換のC1~C30のアルキル基、置換もしくは非置換のC1~C30アルコキシ基、置換もしくは非置換のC3~C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC2~C30のアルケニル基、置換もしくは非置換のC6~C30アリール基、置換もしくは非置換のC1~C30ヘテロアリール基、置換もしくは非置換のC1~C30アミノ基、置換もしくは非置換のC6~C30アリールアミノ基、SF5、置換もしくは非置換のC1~C30のアルキル基を有するトリアルキルシリル基、置換もしくは非置換のC1~C30のアルキル基とC6~C30のアリール基を有するジアルキルアリールシリル基、または置換もしくは非置換のC6~C30のアリール基を有するトリアリールシリル基である。
【0113】
一例として下記化学式Vで表されるドーパントを含むことができる。
[化学式V]
【0114】
【0115】
化学式Vで、R101~R116は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、または-SiR132R133R134であり、R132~R134は、それぞれ独立して、C1~C6アルキル基であり、R101~R116のうちの少なくとも一つは、下記化学式V-1で表される作用基であり、L100は1価陰イオンのバイデンテート(bidentate)リガンドであって、炭素またはヘテロ原子の非共有電子対を通じてイリジウムに配位結合するリガンドであり、m15およびm16は、互いに独立的に0~3の整数のうちのいずれか一つであり、m15+m16は、1~3の整数のうちのいずれか一つである。
【0116】
[化学式V-1]
【0117】
【0118】
化学式V-1で、R135~R139は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、または-SiR132R133R134であり、R132~R134は、それぞれ独立して、C1~C6アルキル基であり、*は、炭素原子と連結される部分を意味する。
【0119】
一例として下記化学式Z-1で表されるドーパントを含むこともできる。
[化学式Z-1]
【0120】
【0121】
化学式Z-1で、環A、B、C、およびDは、それぞれ独立して、五元または六元カルボサイクリックまたはヘテロサイクリック環を示す。RA、RB、RC、およびRDは、それぞれ独立して、一置換、二置換、三置換、または四置換、または非置換を示す。LB、LC、およびLDは、それぞれ直接結合、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO2、CRR’、SiRR’、GeRR’、およびその組み合わせからなる群より独立的に選択される。nAが1である場合、LEは、直接結合、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO2、CRR’、SiRR’、GeRR’、およびその組み合わせからなる群より選択され、nAが0である場合、LEは存在しない。RA、RB、RC、RD、R、およびR’は、それぞれ水素、重水素、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、アリールアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、シリル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、ヘテロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アシル基、カルボニル基、カルボン酸基、エステル基、ニトリル基、イソニトリル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびその組み合わせからなる群より独立的に選択される。任意の隣接したRA、RB、RC、RD、R、およびR’は、任意連結されて環を形成する。XB、XC、XD、およびXEは、それぞれ炭素および窒素からなる群より独立的に選択される。Q1、Q2、Q3、およびQ4は、それぞれ酸素または直接結合を示す。
【0122】
一実施例によるドーパントは、白金着物でもよく、例えば下記化学式VIで表すことができる。
[化学式VI]
【0123】
【0124】
化学式VIで、X100は、O、SおよびNR131の中から選択される。R117~R131は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換のC1~C10アルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、または-SiR132R133R134である。R132~R134は、それぞれ独立して、C1~C6アルキル基であり、R117~R131のうちの少なくとも一つは、-SiR132R133R134またはtert-ブチル基である。
【0125】
以下、前述した有機光電子素子用化合物を適用した有機光電子素子について説明する。有機光電子素子は、電気エネルギーと光エネルギーとを互いに変換することができる素子であれば、特に限定されず、例えば有機光電素子、有機発光素子、有機太陽電池および有機感光体ドラムなどが挙げられる。ここでは有機光電子素子の一例である有機発光素子を図面を参照して説明する。
【0126】
図1は一実施形態に係る有機発光素子を示す断面図である。
図1を参照すると、一実施形態に係る有機発光素子100は、互いに向き合う陽極120および陰極110と、そして陽極120と陰極110との間に位置する有機層105とを含む。
【0127】
陽極120は、例えば、正孔注入が円滑に行われるように仕事関数が高い導電体で形成することができ、例えば、金属、金属酸化物および/または導電性高分子で形成することができる。陽極120としては、例えば、ニッケル、白金、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属またはこれらの合金、亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物、ZnOとAlまたはSnO2とSbのような金属と酸化物の組み合わせ、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン)(polyehtylenedioxythiophene:PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などが挙げられるが、これらに限定されるのではない。
【0128】
陰極110は、例えば、電子注入が円滑に行われるように仕事関数が低い導電体で形成することができ、例えば金属、金属酸化物および/または導電性高分子で形成することができる。陰極110としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、錫、鉛、セシウム、バリウムなどのような金属またはこれらの合金、LiF/Al、LiO2/Al、LiF/CaおよびBaF2/Caのような多層構造物質が挙げられるが、これらに限定されるのではない。
【0129】
有機層105は、前述した有機光電子素子用化合物を含むことができる。有機層105は、発光層130を含み、発光層130は、前述した有機光電子素子用化合物を含むことができる。ドーパントをさらに含む有機光電子素子用組成物は、例えば、赤色発光組成物でもよい。発光層130は、例えば、前述した有機光電子素子用化合物を燐光ホストとして含むことができる。
【0130】
有機層は、発光層以外に電荷輸送領域をさらに含むことができる。電荷輸送領域は、例えば、正孔輸送領域140でもよい。正孔輸送領域140は、陽極120と発光層130との間の正孔注入および/または正孔移動性を一層高め、電子を遮断することができる。具体的には、正孔輸送領域140は、陽極120と発光層130との間の正孔輸送層、および発光層130と正孔輸送層との間の正孔輸送補助層を含むことができ、下記グループBに羅列された化合物のうちの少なくとも一つは、正孔輸送層、および正孔輸送補助層のうちの少なくとも一つの層に含まれてもよい。
【0131】
[グループB]
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
正孔輸送領域140には、前述した化合物以外にもUS5061569A、JP1993-009471A、WO1995-009147A1、JP1995-126615A、JP1998-095973Aなどに記載された公知の化合物およびこれと類似する構造の化合物も使用することができる。
【0138】
電荷輸送領域は、例えば、電子輸送領域150でもよい。電子輸送領域150は、陰極110と発光層130との間の電子注入および/または電子移動性を一層高め、正孔を遮断することができる。具体的には、電子輸送領域150は、陰極110と発光層130との間の電子輸送層、および発光層130と電子輸送層との間の電子輸送補助層を含むことができ、下記グループCに羅列された化合物のうちの少なくとも一つは、電子輸送層、および電子輸送補助層のうちの少なくとも一つの層に含まれてもよい。
【0139】
[グループC]
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
一実施形態は、有機層として発光層を含む有機発光素子でもよい。他の一実施形態は、有機層として発光層および正孔輸送領域を含む有機発光素子でもよい。また他の一実施形態は、有機層として発光層および電子輸送領域を含む有機発光素子でもよい。本発明の一実施形態に係る有機発光素子は、
図1のように有機層105として発光層130以外に正孔輸送領域140および電子輸送領域150を含むことができる。一方、有機発光素子は、前述した有機層として発光層以外に追加的に電子注入層(図示せず)、正孔注入層(図示せず)などをさらに含むこともできる。有機発光素子100は、基板上に陽極または陰極を形成した後、真空蒸着法(evaporation)、スパッタリング(sputtering)、プラズマメッキおよびイオンメッキのような乾式成膜法などで有機層を形成した後、その上に陰極または陽極を形成して製造することができる。前述した有機発光素子は、有機発光表示装置に適用することができる。
[実施例]
【0145】
以下、実施例を通じて前述した実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、権利範囲を制限するものではない。
【0146】
以下、実施例および合成例で使用された出発物質および反応物質は、特別な言及がない限り、Sigma-Aldrich社、TCI社、tokyo chemical industry社またはP&H tech社で購入した、あるいは公知の方法を通じて合成した。
【0147】
(有機光電子素子用化合物の製造)
本発明の化合物のより具体的な例として提示された化合物を下記段階を通じて合成した。
【0148】
合成例1:化合物1-38の合成
[反応式1]
【0149】
【0150】
1段階:化合物Int 1の合成
韓国公開公報2016-0049842に開示された方法を参考にして化合物Int 1を合成した。
【0151】
2段階:化合物1-38の合成
化合物Int 1 30g(0.0535mol)、トリフルオロメタンスルホン酸(Trifluoromethanesulfonic acid)40g(0.267mol)、およびD6-ベンゼン(D6-benzene)282g(3.35mol)を混合し、10℃で24時間攪拌した。精製水を投入し、飽和K3PO4溶液で中和した。有機層を濃縮し、カラム精製して化合物1-38 18g(白色固体、LC-Mass Mz 578.79、C42H10D18N2)を得た。
【0152】
合成例2:化合物1-98の合成
[反応式2]
【0153】
【0154】
Int 1の代わりにInt 2 30g(0.047mol)を使用することを除き、合成例1と同様な方法で合成し、化合物1-98 19g(白色固体、LC-mass Mz 655.29、C48H14D18N2)を得た。
【0155】
合成例3:化合物1-110の合成
[反応式3]
【0156】
【0157】
Int 1の代わりにInt 3 20g(0.036mol)を使用することを除き、合成例1と同様な方法で合成し、化合物1-110 15g(白色固体、LC-mass Mz 657.31、C48H13D19N2)を得た。
【0158】
比較合成例1:化合物Y1の合成
【0159】
【0160】
カルバゾール(Carbazole)47g(0.281mol)、ブロモベンゼン-D5(bromobenzene-D5)50g(0.310mol)、CuI 53g(0.028mol)、K2CO3 58g(0.42mol)、1,10-フェナントロニン(1,10-phenanthroline)5g(0.028mol)、およびDMF 560mlを混合し、還流攪拌した。反応が完結した後、常温で冷却し、精製水を投入して固体を析出させた。固体をカラム精製してInt 4 62g(分子量248.33)を得た。
【0161】
Int 4 62g(0.25mol)をDMFに加え、溶解した。0℃でNBS 45g(0.25mol)を徐々に投入し、常温で攪拌して反応を終結させた。反応液に精製水を投入して結晶を生成し、固体をカラム精製してInt 5 80g(分子量327.23)を得た。
【0162】
Int 5 80g(0.245mol)、4-ビフェニル-カルバゾール-3-ボロン酸エステル(4-biphenyl-carbazole-3-boronicester)120g(0.27mol)、K2CO3 68g(0.49mol)、Pd(PPh3)4 14g(0.0122mol)、精製水320ml、およびTHF 490mlを混合し、還流攪拌した。反応が終結した後に精製水を投入して抽出し、有機層を濃縮した。混合物をカラム精製して化合物Y1 90g(分子量565.72)を得た。
【0163】
比較合成例2:化合物Y2の合成
【0164】
【0165】
(フェニル-4-ボロン酸)-9H-カルバゾール(phenyl-4-boronic acid)-9H-carbazole)35g(0.095mol)、ブロモベンゼン-D5(bromobenzene-D5)17g(0.105mol)、Pd(PPh3)4 3.3g(0.0028mol)、K2CO3 32.7g(0.237mol)、精製水120ml、およびTHF320mlを混合し、還流攪拌した。反応が終結した後、冷却し、精製水を投入して有機層を分離し、濃縮した。濃縮物をカラム精製してInt 6 25g(分子量324.43)を得た。
【0166】
Int 6 20g(0.062mol)をDMF 200mlに溶解させ、0℃でNBS 11.5g(0.065mol)を徐々に投入した。常温で攪拌して反応を終結させ、精製水を投入して固体を生成させた。固体をカラム精製してInt 7 23g(分子量403.33)を得た。
【0167】
Int 7 20g(0.0496mol)、フェニル-9H-カルバゾール-3-ボロン酸エステル(phenyl-9H-carbazole-3-boronic ester)22g(0.06mol)、Pd(PPh3)4 1.72g(0.0015mol)、K2CO3 13.7g(0.099mol)、精製水50ml、およびTHF 165mlを混合し、還流攪拌した。反応が終結した後、冷却し、精製水を投入して有機層を分離して濃縮した。濃縮物をカラム精製して化合物Y2 11.5g(分子量565.72)を得た。
【0168】
比較合成例3:化合物Y3の合成
【0169】
【0170】
Int 1の代わりにInt 8を20g(0.036mol)使用することを除き、合成例1と同様な方法で合成し、化合物Y3 5g(白色固体、LC-mass Mz 659.78、C48H10D22N2)を得た。
【0171】
(有機発光素子の製作)
実施例1
ITO(Indium tin oxide)で薄膜コーティングされたガラス基板を蒸溜水超音波で洗浄した。蒸溜水洗浄が終了した後、イソプロピルアルコール、アセトン、メタノールなどの溶剤で超音波洗浄して乾燥させた。さらに、基板をプラズマ洗浄機に移送させ、酸素プラズマを利用して10分間洗浄した後、真空蒸着器に基板を移送した。このように準備されたITO透明電極を陽極として使用し、ITO基板上部に1%のNDP-9(Novaled社から市販される)でドーピングされた化合物Aを真空蒸着して100Åの厚さの正孔注入層を形成し、正孔注入層の上部に化合物Aを1350Åの厚さで蒸着して正孔輸送層を形成した。正孔輸送層上部に化合物Bを350Åの厚さで蒸着して正孔輸送補助層を形成した。正孔輸送補助層上部に合成例1で得られた化合物1-38をホストとして使用し、ドーパントとしてPhGDを7wt%でドーピングして真空蒸着で400Åの厚さの発光層を形成した。次に、発光層上部に化合物Cを50Åの厚さで蒸着して電子輸送補助層を形成し、化合物DとLiqを同時に1:1の重量比で真空蒸着して300Åの厚さの電子輸送層を形成した。電子輸送層上部に15ÅのLiQと1200ÅのAlを順次真空蒸着して陰極を形成することによって有機発光素子を製作した。
【0172】
ITO/化合物A(1% NDP-9 doping、100Å)/化合物A(1350Å)/化合物B(350Å)/EML[93wt%のホスト(化合物1-38):7wt%のPhGD](400Å)/化合物C(50Å)/化合物D:LiQ(300Å)/LiQ(15Å)/Al(1200Å)の構造で製作した。
化合物A:N-(biphenyl-4-yl)-9,9-dimethyl-N-(4-(9-phenyl-9H-carbazol-3-yl)phenyl)-9H-fluoren-2-amine
化合物B:N,N-bis(9,9-dimethyl-9H-fluoren-4-yl)-9,9-spirobi(fluorene)-2-amine
化合物C:2-[3’-(9,9-Dimethyl-9H-fluoren-2-yl)[1,1’-biphenyl]-3-yl]-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine
化合物D:2-[4-[4-(4’-Cyano-1,1’-biphenyl-4-yl)-1-naphthyl]phenyl]-4,6-diphenyl-1,3,5-triazine
[PhGD]
【0173】
【0174】
比較例1~3
下記表1および表2に記載した通りにホストを変更したことを除き、実施例1と同様な方法で比較例1~3の素子を製作した。
【0175】
評価
(1)電圧変化に応じた電流密度の変化測定
製造された有機発光素子に対して、電圧を0Vから10Vまで上昇させながら電流-電圧計(Keithley 2400)を利用して単位素子に流れる電流値を測定し、測定された電流値を面積で割って結果を得た。
【0176】
(2)電圧変化に応じた輝度の変化測定
製造された有機発光素子に対して、電圧を0Vから10Vまで上昇させながら輝度計(Minolta Cs-1000A)を利用してその時の輝度を測定して結果を得た。
【0177】
(3)発光効率の測定
上記(1)および(2)から測定された輝度と電流密度を利用して同一の電流密度(10mA/cm2)の発光効率(cd/A)を計算した。比較例3の発光効率を基準とした相対値を下記表2に示した。
【0178】
(4)寿命測定
輝度(cd/m2)を6,000cd/m2に維持し、発光効率(cd/A)が97%に減少する時間を測定した。比較例1の寿命を基準とした相対値を下記表1に示した。
【0179】
(5)駆動電圧測定
電流-電圧計(Keithley 2400)を利用して15mA/cm2で各素子の駆動電圧を測定して結果を得た。比較例3の駆動電圧を基準とした相対値を下記表2に示した。
【0180】
【0181】
【0182】
表1および表2を参照すると、本発明の実施例による有機発光素子は、比較例による有機発光素子に比べて駆動電圧、効率および寿命特性が非常に改善されたことを確認できる。
【0183】
実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0184】
100:有機発光素子
105:有機層
110:陰極
120:陽極
130:発光層
140:正孔輸送領域
150:電子輸送領域
【国際調査報告】